説明

引手

【課題】スライド式扉の厚さに違いがあっても、その違いを自動的に吸収して手掛けを扉にワンタッチで取り付けられる安価な引手を提供する。
【解決手段】引戸ガイド装置Rは、引戸の吊り込み時に床面fとの間の隙間dが所定高さ以下のときは、第1係止凸部70を第1受け止め部65に係止して吸着台45を格納空間Sに納まる上段位置に保持する一方、所定高さ以上のときは、外部操作部材50を操作穴55に押し込んで弾性押圧片60を弾性変位させ、第1受け止め部65から第1係止凸部70を外して第2係止凸部75を第2受け止め部66に係止し、吸着台45を先端部45dが昇降口34から所定高さ突出する下段位置に受け止めて保持し、吸着台45の保持高さ位置を隙間dの高さに応じて上段位置と下段位置の2段階に調整可能な構成になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引戸、折戸、襖、障子等のスライド式扉に開閉操作の手掛りのためにねじなどを用いずにワンタッチで取り付ける引手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の引手の中には、通常、引戸が経時に材質上1mmほど収縮すると「ガタツキ」を生ずるし、規定厚さサイズも23mm〜27mmといった1mm単位でも厚さが異なると、そのたびに対応する手掛けを用意して取り付ける必要があったので、その問題を解決するために、扉の両面に取り付ける双方の手掛けを、扉を間に挟んで扉厚方向に移動可能に連結して手掛けの取付位置を扉厚に応じて自動的に調整できるようにしたものがある(特許文献1参照)。
【0003】
従来の引手は、図10に示すように、一方の手掛け1を引戸dの取付穴aに挿入し、他方の手掛け2に有するガイド孔3の左右のガイド面3aに、ねじりコイルばね4の一対の弾性片4a先端の当接部4bが当接するように位置合わせしてから、他方の手掛け2を取付穴aに押し込むと、一対の弾性片4aがガイド面3aに案内されて相互に近接する方向に弾性変形しながらガイド孔3に対して挿通し、この一対の弾性片4aが相互に離反する方向に戻ろうとする弾性復元力により、双方の手掛け1・2が相互に引き寄せられて引戸dに取り付けられる構造になっている。従って、従来の引手は、双方の手掛け1・2が個々に扉厚方向に移動可能に連結され、且つ、ねじりコイルばね4の付勢力によって相互に引き寄せられる方向に付勢されているので、引戸が収縮したりした場合、ねじりコイルばね4の付勢力によって両手掛け1・2の扉厚方向の間隔が自動的に狭まり、ガタ付くことがないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−188255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来の引手は、一方の手掛け1に、ねじりコイルばね4のコイル部4cを収容する収容部1aを形成する一方、他方の手掛け2には、ねじりコイルばね4の一対の弾性片4aを案内するガイド孔3を形成するなど、肝心の連結部分において、双方の手掛け1・2の形状が異なる構造であるため、手掛け1・2を所定形状に成型するには、個別の形状に対応させた金型を鋳造する必要があり、それだけコストが著しく高くなるという課題があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、スライド式扉の厚さに違いがあっても、その違いを自動的に吸収して手掛けを扉にワンタッチで取り付けられる安価な引手を提供することにある。
【0007】
そのため、請求項1に記載の発明は、たとえば以下に示す図示実施の形態のとおり、 。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の引手において、たとえば以下に示す図示実施の形態のとおり、 。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の引手において、たとえば以下に示す図示実施の形態のとおり、 。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、 することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、 ことができる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、 ことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一例である引手の取付構造を示す図2中線X−Xに沿って得た断面図、図2は引手を取り付けた引戸の一部を示す正面図、図3は引手の分解斜視図、図4は引手の組立斜視図である引戸ガイド装置を示す斜視図である。
【図2】引手の一方の手掛りを取り付けた引戸の一部を示す正面図である。
【図3】引手を示す分解斜視図である。
【図4】引手を示す組立斜視図である。
【図5】弾性体を示す平面図である。
【図6】(A)一方の手掛けを示す平面図、(B)側面図、(C)正面図である。
【図7】(A)他方の手掛けを示す平面図、(B)側面図、(C)正面図である。
【図8】(A)双方の手掛けを対向させて配置した引手の正面図、(B−1)手掛けの連結前の状態を示す図8(A)中線W−Wに沿って得た断面図、(B−2)手掛けの連結中の状態を示す図8(A)中線W−Wに沿って得た断面図、(B−3)手掛けの連結後の状態を示す図8(A)中線W−Wに沿って得た断面図である。
【図9】手掛け取付状態の引手を示す縦断面図である。
【図10】従来の引手の取付構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
【0015】
図1は、本発明の引手の取付構造を示す図2中線X−Xに沿って得た断面図、図2は引手を取り付けた引戸の一部を示す正面図、図3は引手の分解斜視図、図4は引手の組立斜視図である。図中符号Dは、スライド式扉の引戸を示す。引戸Dの戸先側端部には、手掛け10の手掛け凹部11の外形状に合わせて扉厚方向に貫通する縦長な取付穴eが穿設されている。
【0016】
図示例の引手は、引戸Dを間に挟んで一方を片面に、他方を他面の対向位置に取り付ける一対の手掛け10と、それら手掛け10を連結する弾性体20とで構成されている。
【0017】
図示例の手掛け10は、引戸Dに対して片面に取り付ける手掛け10Aと、他面の対向位置に取り付ける手掛け10Bとを一組にして備え、いずれも金属製で、例えばアルミダイキャストを素材とし、同じ金型を用いて同一の所定形状に一体成形したものからなる。
【0018】
即ち、手掛け10(10A・10B)は、大人と子供の手掛け高さ位置の違いに対応して比較的長尺で片面側を開口した矩形箱状の手掛け凹部11と、手掛け凹部11の四方周壁を形成する長尺な対向側壁11aと短尺な対向端壁11bの各壁縁から外向きに延びるフランジ12と、手掛け凹部11の上下の端壁11bとそれらの壁縁から延びるフランジ12の上下の鍔部12aに沿って形成する上下に一対のホルダ部15とからなる所定形状に成型する。
【0019】
ホルダ部15は、手掛け凹部11の端壁11bと、フランジ12の鍔部12aと、その鍔部12aから手掛け凹部11の端壁11bに沿って底壁11c側に延びるように突出した押え壁25とで形成されている。押え壁25は、フランジ12の鍔部12aから手掛け凹部11の端壁11bに沿って底壁11c側に向けて延びる一対の板片部30・35を有し、板片部30・35を互いの間隔が突出方向に向かうに従い次第に狭まるテーパになった逆ハ字状に成形する。この押え壁25には、板片部30・35の先端上部に互いに向き合う内側に弾性体20の浮き上がりを抑える浮き止め凸部30a・35aを突設している。また、ホルダ部15は、フランジ12の鍔部12aに近接した手掛け凹部11の端壁11bにばね掛け突起15aを端壁11bから鍔部12aの高さ方向に沿って凸設している。なお、手掛け10は、樹脂材を素材とし、上述したと同様に金型を用いて同一の所定形状に一体成形してもよい。
【0020】
一方、図示例の弾性体20は、細長い板バネを曲げ成形し、図5に示すように、自然状態において、楕円形状に屈曲した取付部20aと、取付部20aから延伸する先端が互いに向き合う方向に円弧状に屈曲した一対の有端状係止部20bと、係止部20bと取付部20aとの間で中央部が細く括れた鼓状に湾曲した胴部20cとで全体に瓢箪形に形成してなる。弾性体20としては、板バネに限らず、樹脂バネやその他のバネ材等、各種の弾性材を使って構成することもできる。
【0021】
そこで、上述した構成の引手を引戸Dに取り付ける場合は、上述のように同一の所定形状に成型された手掛け10を用い、その中の1つを、例えば図6に示すように一方の手掛け10Aとし、他の1つを、図7に示すように他方の手掛け10Bとし、まず、一方の手掛け10Aのホルダ部15に、図6および図8に示すように予め弾性体20を装着する。そのとき、弾性体20は、取付部20aを、いったん萎ませた状態にしてから、ばね掛け突起15aに掛けてフランジ12の鍔部12aとの間に挟み込みながら、押え壁25の板片部30・35間に、押し拡がる方向に働くばね付勢力に抗して押し込み、先端側の係止部20bが前方に突き出た状態でホルダ部15にて保持する。そのとき、ホルダ部15は、図8(B−1)に示すように、押え壁25の浮き止め凸部30a・35aで胴部20cを押えて弾性体20が浮き上がって外れないように保持する。
【0022】
次いで、一方の手掛け10Aを、図8(B−1)および図9に示すように、弾性体20の係止部20bが前に突き出た状態で、例えば引戸Dの内側から取付穴eに嵌入し、フランジ12を取付穴eの穴縁に当接させて、引戸Dの片面に配置する一方、外側からは、図8(B−2)に示すように、他方の手掛け10Bを、ホルダ部15が一方の手掛け10A側から突き出た弾性体20と対向するように位置合わせしてから、取付穴eに押し込む。すると、弾性体20は、図8(B−3)に示すように、一対の係止部20aが向い側の板片部30・35間に、押し拡がる方向に働くばね付勢力に抗して入り込み押え壁25に係止する。そのとき、弾性体20は、板片部30・35の対向間隔が突出方向に向かうに従い次第に狭まる逆ハ字状にテーパの押え壁25間に、一対の係止部20bを押し拡がる方向に働くばね付勢力に抗して押し込むから、押え壁25の傾きに従って一対の係止部20bが互いに近接する方向に弾性変形しながら入り込み押え壁25に係止する。すると、弾性体20は、向い合う一対の係止部20bが相互に押し開いて離れる方向に戻ろうとする弾性復帰力を発生し、その弾性復帰力により手掛け10A・10Bを相互に引き寄せて、図1および図9に示すように、取付穴eを通して引戸Dの厚さ方向に移動可能に連結し、以って、引戸Dに固定する。
【0023】
従って、図示例の引手は、そのように手掛け10A・10Bを弾性体20の弾性復帰力により互いに引き寄せられる方向に付勢して移動可能に連結して引戸Dに固定するため、引戸が、経時、例えば収縮した場合でも、手掛け10A・10Bは引き寄せる弾性体20の付勢力により収縮量に追従して扉厚方向に移動することにより対向間隔が自動的に狭まり、手掛け10A・10Bはガタ付くことがない。反対に、引戸Dが膨張した場合は、手掛け10A・10Bは引き寄せる弾性体20の付勢力に抗して膨張量に追従して扉厚方向に移動することにより対向間隔が自動的に拡がり、手掛け10A・10Bはガタ付くことがない。
【0024】
更に、図示例の引手では、例えば23mm〜27mmの規定範囲の中で、厚さ寸法が異なる引戸に対しても、弾性体20の付勢力により手掛け10A・10Bが厚さの違いに追従して扉厚方向に移動し、厚さの違いを自動的に吸収するため、取り替える必要がなく、そのまま同じ手掛けを取り付けて使用することができる。なお、23mm〜27mmの規定範囲を超えて厚さが大きく異なる(例えば36mm〜44mm)引戸に対しては、例えば板バネは安価であるため、長さの違いに対応する弾性体20に取り替えて廉価に対応することができる。
【0025】
一方、そのように弾性体20を取り替えるためなど、図示引手を引戸Dから取り外す場合は、一方の手掛け10Aに対し他方の手掛け10Bを弾性体20の付勢力に抗して引き離す方向に強制的に引っ張ることにより、引戸Dや手掛け10A・10Bを壊すことなく簡単に取り外すことができる。
【0026】
以上のように、本発明の図示引手では、引戸Dの両面に取り付ける手掛け10(10A・10B)の双方ともに、それらを連結する共通の弾性体20を保持するホルダ部15に、対向間隔が突出方向先端に向かうに従い次第に狭まるように逆ハ字状のテーパをなす押え壁25を突設するなど、弾性体20による肝心の連結部分を含めて、双方の手掛け10A・10Bの形状を同一にするが、そうであっても、手掛け10A・10Bの取付時、一方の手掛け10Aの押え壁25間に弾性体20の取付部20aを、押し拡がる方向に働くばね付勢力に抗し押し込んで嵌着し、他方の手掛け10Bの同じ押え壁25に弾性体20の一対の有端状係止部20bを、押し拡がる方向に働くばね付勢力に抗して押し込んで係止すれば、弾性体20の係止部20bが相互に押し開いて離れる方向に戻ろうとする弾性復帰力により手掛け10A・10Bの双方を相互に引き寄せて、引戸Dの厚さ方向に移動可能に連結することにより引戸Dに固定するため、引戸が伸縮したり厚さが違ったりしても、双方の手掛け10A・10Bが相互に引き寄せられる方向に弾性体20の付勢力により移動して自動的に引戸の伸縮量や厚さの違いを吸収し、双方の手掛け10A・10Bはガタ付くことがなくワンタッチで取り付けられる。
【0027】
とすれば、本発明の引手によれば、双方の手掛け10A・10Bの形状を同一にし、1種類の手掛け10を共通の弾性体20を用いて引戸などスライド式扉の両面に、上述のようにワンタッチでガタなく取り付けられる以上、同一形状の手掛け10を成型するには対応する金型が1種類で済み、それだけ金型の製造の手間が少なくなると共にコストを飛躍的に下げることができる。
【0028】
なお、本発明による引手は、上述した引戸に限らず、折戸・障子・襖等の各種のスライド式扉に取り付けて使用するが、その扉の両面に手掛けを取り付けるだけでなく、戸棚の引戸用の引手のように扉の片面にだけ手掛けを取り付けて使用することもできる。その場合、上述のように所定の同一形状に成型した手掛け10を1つ使用する一方、引戸Dに設ける取付穴eを貫通穴に代えて凹みとし、凹みの底部に取付座を固着し、取付座に弾性体20を先端側の係止部20bが前方に突き出た状態で装着する。一方、手掛け10は、外側からホルダ部15が取付座側から突き出た弾性体20と対向するように位置合わせしてから凹みに押し込み、係止部20aをばね付勢力に抗して押え壁13に対し係止する。すると、手掛け10は、向い合った弾性体20の係止部20bが相互に離れる方向に戻ろうとする弾性復帰力により取付座側に引き寄せられて扉厚方向に移動可能に取付座に連結し、以って、引戸の片面に固定される。
【符号の説明】
【0029】
D 引戸
e 取付穴
10 手掛け
10A 一方の手掛け
10B 他方の手掛け
11 手掛け凹部
12 フランジ
15 ホルダ部
20 弾性体
20a 取付部
20b 係止部
20c 胴部
25 押え壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型を用いて所定形状に成形する一対の手掛けの一方をスライド式扉の片面に、他方を他面の対向位置に配置し、双方を前記扉を間に挟んで扉厚方向に移動可能に連結して前記扉に取り付ける両面引手において、
双方の前記手掛けは、それらを連結する共通の弾性体を保持するホルダ部を設け、該ホルダ部に、互いに向い合う方向に漸次間隔が狭まるテーパになった対称な押え壁をそれぞれ突設した同一形状に成型する一方、
前記弾性体は、前記手掛けの取付時に一方の前記手掛けの押え壁間にばね付勢力に抗して嵌め込む無端状の取付部と、他方の前記手掛けの押え壁にそれぞればね付勢力に抗して係止する先端側の有端状に伸びる一対の係止部と、双方の前記手掛けの押え壁先端に押し込まれる該係止部と前記取付部間で括れた胴部とで形成してなることを特徴とする、引手。
【請求項2】
前記弾性体は、前記係止部20bの先端を互いに向き合う方向に円弧に曲げて、全体に瓢箪形状の板バネからなることを特徴とする、請求項1に記載の引手。
【請求項3】
前記係止壁は、逆ハ字状に突設し、先端に前記弾性体の浮き上がりを抑える浮き止め凸部を設けてなることを特徴とする、請求項1又は2に記載の引手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−104264(P2013−104264A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250314(P2011−250314)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(592114703)株式会社ベスト (69)