説明

引掛装置

【課題】使い勝手を向上し得る引掛装置を提供する。
【解決手段】引掛装置1は、傾斜状に配設される竿体30と、前記竿体の上側面30aから突出しないように配置される引掛不能位置と前記竿体の上側面から突出して物品の引っ掛けが可能な引掛可能位置とこの引掛可能位置からさらに突出した物品引掛位置とを変位自在とされ、前記竿体の長手方向に沿って間隔を空けて設けられた複数の引掛部40と、下段側の引掛部の前記物品引掛位置への変位に伴って、この引掛部に隣接する上段側の引掛部を前記引掛不能位置から前記引掛可能位置へと変位させる連動部46と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣服等を吊るしたハンガー等の吊下具等の物品が引っ掛けられる引掛装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建物等の壁面等に設置され、ハンガー等の物品を引っ掛けるための装置が提案されている。
例えば、下記特許文献1では、壁面に固定されるブラケットと、このブラケットに連結され、ハンガーのフックを掛け止め可能にした支持腕とを備えた掛止装置が提案されている。この掛止装置では、支持腕の長手方向に沿って、通孔を有する複数の操作片を回動可能に連結し、使用時に、この操作片を操作して突出させることで、各操作片の通孔が突出部に位置し、この通孔にハンガーのフックを掛け止め可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−112609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された掛止装置では、使用時に各操作片を個別に操作して突出させる必要があり、使い勝手が悪く更なる改善が望まれていた。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、使い勝手を向上し得る引掛装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る引掛装置は、傾斜状に配設される竿体と、前記竿体の上側面から突出しないように配置される引掛不能位置と前記竿体の上側面から突出して物品の引っ掛けが可能な引掛可能位置とこの引掛可能位置からさらに突出した物品引掛位置とを変位自在とされ、前記竿体の長手方向に沿って間隔を空けて設けられた複数の引掛部と、下段側の引掛部の前記物品引掛位置への変位に伴って、この引掛部に隣接する上段側の引掛部を前記引掛不能位置から前記引掛可能位置へと変位させる連動部と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
本発明においては、前記竿体を、壁面に設置される取付本体に下端部が回動自在に連結され、この取付本体に沿うように配置される収納位置及び前記傾斜状に配設される使用位置で保持される構造とし、前記竿体の前記収納位置から前記使用位置への移動に伴って、前記複数の引掛部のうちの最下段の引掛部を前記引掛不能位置から前記引掛可能位置へと変位させる最下段連動部を備えたものとしてもよい。
また、本発明においては、前記竿体を、前記収納位置と前記使用位置との間の途中位置で保持する途中保持機構を備えたものとしてもよい。
また、本発明においては、前記引掛部を、前記竿体に回動自在に連結する一方、前記連動部を、隣接する引掛部間に位置するように前記竿体内にスライド自在に収容されたスライド体とし、下段側の引掛部の前記物品引掛位置への回動を伴って、この引掛部の上側に配設された前記スライド体がスライドすることで、隣接する上段側の引掛部が前記引掛不能位置から前記引掛可能位置へと回動する構造としてもよい。
また、本発明においては、前記引掛部を、前記竿体が前記傾斜状に配設された状態で、前記引掛不能位置を維持する方向に向けて自重によって付勢されるものとしてもよい。
また、本発明においては、前記引掛部を、前記竿体内において該竿体に回動自在に連結される連結片と、この連結片の回動に伴って前記竿体の上側面に対して上端側が離接するように起倒する羽根状引掛片とを有したものとし、前記引掛不能位置では、この羽根状引掛片が前記竿体の上側面と略平行となるように倒伏状態とされる一方、前記引掛可能位置及び前記物品引掛位置では、この羽根状引掛片の外側表面と前記竿体の上側面とのなす角が鋭角となるように起立状態とされるものとしてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る引掛装置は、上述のような構成としたことで、使い勝手を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(a)〜(d)は、本発明の一実施形態に係る引掛装置の一例を模式的に示す概略斜視図である。
【図2】同引掛装置を模式的に示し、図1(b)に対応させた概略平面図である。
【図3】(a)は、図2におけるX1−X1線矢視に対応させた概略縦断面図、(b)は、図1(a)に示す状態に対応させた(a)と略同様の概略縦断面図である。
【図4】(a)は、図3(b)におけるW1部に対応させた一部破断概略拡大縦断面図、(b)は、図3(b)におけるY1−Y1線矢視に対応させた一部省略概略拡大横断面図、(c)は、図3(b)におけるY2−Y2線矢視に対応させた一部省略概略拡大横断面図である。
【図5】(a)は、図3(b)におけるW2部に対応させた一部破断概略拡大縦断面図、(b)は、図3(a)におけるW3部に対応させた一部破断概略拡大縦断面図である。
【図6】(a)〜(d)は、図5に対応させた他の状態を示す一部省略概略拡大縦断面図である。
【図7】(a)〜(d)は、図5に対応させた他の状態を示す一部省略概略拡大縦断面図である。
【図8】(a)、(b)は、同引掛装置が備える竿体の一例を模式的に示し、(a)は、同竿体の一部分解概略側面図、(a)は、同竿体の一部分解概略背面(上側面)図である。
【図9】(a)、(b)は、図3(a)におけるW4部に対応させた一部破断概略拡大縦断面図である。
【図10】(a)は、同竿体の先端部を図3(a)におけるV1方向から見た状態を示す一部破断概略正面(下側面)図、(b)は、(a)におけるX2−X2線矢視に対応させた一部破断概略縦断面図、(c)は、(a)におけるX3−X3線矢視に対応させた一部破断概略縦断面図、(d)は、図1(d)に示す状態に対応させた(b)と略同様の一部破断概略縦断面図である。
【図11】(a)、(b)は、図1(d)に示す状態に対応させた図10(c)と略同様の一部破断概略縦断面図である。
【図12】(a)は、図4(b)におけるZ−Z線矢視に対応させた一部破断概略縦断面図、(b)は、図4(b)におけるV2方向から見た状態を示す一部破断概略正面(前側面)図、(c)は、図1(b)示す状態に対応させた(a)と略同様の一部破断概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
なお、一部の図では、他図に付している詳細な符号の一部を省略している。
また、以下の実施形態では、引掛装置が壁面に設置された状態において、壁面側を後方、その逆側を前方として説明し、また、壁面に設置された引掛装置に対面した状態を基準として上下、左右方向等を原則的に説明する。
【0011】
図1〜図12は、本実施形態に係る引掛装置の一例について説明するための概念的な説明図である。
引掛装置1は、図2及び図3に示すように、上下方向を長手方向として、住居等の建物の内壁等の壁面2に設置される本体(取付本体)10と、本体10に連結された竿体30と、本体10に連結された小物引掛部材としての小物引掛バー60とを備えている。
本体10は、図3に示すように、竿体30の基端部が連結され、下側部位に設けられた竿体ベース11と、この竿体ベース11を覆うように設けられた竿体ベースカバー19とを備えている(図5も参照)。また、本体10は、小物引掛バー60の基端部が連結され、竿体ベース11の上側に連なるように設けられた小物引掛ベース20と、この小物引掛ベース20を覆うように設けられた小物引掛ベースカバー29とを備えている(図4も参照)。つまり、小物引掛バー60は、本体10の竿体30との連結部よりも上方側部位に基端部が連結されている。
【0012】
竿体ベース11は、図3及び図5に示すように、壁面2に当接して配置される背板部12と、この背板部12の左右両側から前方に向けて突出するように形成された両側板部14,14(右側の側板部14は不図示)とを備えている。竿体ベース11は、前方、下方及び上方に向けて開口しており、これら背板部12及び両側板部14,14によって竿体30の基端部を受け入れる空間を形成している。
この竿体ベース11の両側板部14,14には、これら両側板部14,14間に架け渡されるようにして、竿体30を連結する連結軸15が設けられている。
【0013】
竿体ベースカバー19は、竿体ベース11の前方及び下方の開口並びに両側板部14,14を覆うように形成され、上方及び後方に向けて開口する形状とされている。この後方開口から竿体ベース11を受け入れ、上方開口から竿体30の基端部を受け入れる構成とされている。この竿体ベースカバー19は、竿体ベース11の両側板部14,14に形成された係合孔に、左右両内側面に設けられた係合突起を係合させ、竿体ベース11に取り付けられている(図3参照)。
この竿体ベースカバー19は、竿体30の後記する竿体カバー37に係合しており、竿体30の後記する変位に追従するように変位する(図3参照)。この竿体ベースカバー19の移動を許容し得るように、竿体ベース11の両側板部14,14の係合孔が長孔とされている(図3参照)。
【0014】
竿体30は、本実施形態では、図1及び図3に示すように、本体10の竿体ベース11に、連結軸15を介して回動自在に基端部が連結されており、竿体30の基端部には、図5に示すように、連結軸15が挿通される軸孔32が設けられている。
この竿体30は、図1(a)及び図3(b)に示すように、本体10に沿うように配置される収納位置と、図1(b)、(d)、図2及び図3(a)に示すように、前方に向けて突出した使用位置(引掛位置)との間を変位自在とされている。本実施形態では、竿体30は、上記収納位置において、本体10の小物引掛ベースカバー29の手前側に沿うように配置される構成とされている。また、本実施形態では、竿体30は、上記使用位置において、先端が基端部よりも上方位置となるように傾斜状に保持される構成とされている。つまり、竿体30は、上記使用位置では、基端側を下方側、先端側を上方側として傾斜状に配設される構成とされている。
【0015】
この竿体30には、図2及び図3に示すように、長手方向に沿って間隔を空けて複数(図例では、10個)の引掛部40が設けられている。なお、引掛部40の具体的構成については後述する。
また、竿体30は、本実施形態では、図3及び図4に示すように、長尺に形成された竿本体31と、この竿本体31を収納するように覆う竿体カバー37とを備えている。
竿本体31は、図例では、中空で横断面略正方形状とされている。このように竿本体31を中空のものとすることで、軽量化を図ることができる。
【0016】
竿体カバー37は、図4(b)、(c)に示すように、収納位置における後方側及び下方側に向けて開口する凹溝状の形状とされ、図例では、横断面略U字状の形状とされている。この竿体カバー37の凹溝状の空間(竿本体収納空間)内に竿本体31が収納される。この竿体カバー37の竿本体収納空間の内壁上端部(先端部)には、図4(a)及び図8に示すように、収納位置における下方側に向けて突出する一対の係止突起37c,37cが設けられている。この係止突起37c,37cは、竿本体31の上端開口に挿入され、竿本体31の上端部(先端部)に形成された係止孔に係止される。
【0017】
また、竿体カバー37の竿本体収納空間の溝底面(収納位置において後方に向く面)には、収納位置における後方側に向けて突出する竿本体保持突起37dが長手方向に沿って複数箇所に設けられている。この竿本体保持突起37dは、図4(c)及び図8に示すように、竿本体31を、左右両側から挟むように竿体カバー37の竿本体収納空間の溝底面の左右方向(幅方向)両側に設けられて左右一対とされている。図例では、左右一対の竿本体保持突起37d,37dを、竿体カバー37の左右方向(幅方向)に重合しないように長手方向に沿って左右互い違いとなる位置に設けている。これら一対の竿本体保持突起37d,37dは、複数の引掛部40の間に位置するように複数箇所に設けられている。
また、これら一対の竿本体保持突起37d,37dには、抜止カバー47が被せられるようにして取り付けられている。
【0018】
抜止カバー47は、図4(c)に示すように、収納位置における前方側に向けて開口する形状とされており、図例では、横断面略コ字状(U字状乃至はC字状)とされている。この抜止カバー47は、左右一対の竿本体保持突起37d,37dの外側面(竿本体収納空間の左右内側面に対向する面)の後側部位を覆うように、これらに係合し、取り付けられ、複数の引掛部40の間に位置するように複数箇所に設けられている。
また、この抜止カバー47は、竿体カバー37の収納位置における後側面(使用位置における上側面)30aから突出しないように取り付けられている。図例では、抜止カバー47の使用位置における上側面と、竿体カバー37の使用位置における上側面30aとが略同一平面状となるように取り付けた例を示している。
このような抜止カバー47、一対の竿本体保持突起37d,37d及び上端の一対の係止突起37c,37cによって竿体カバー37と竿本体31とが強固に組み付けられている。
【0019】
また、竿体カバー37の上端部には、収納位置における前方側に向けて開口し、後記する第1引掛部53及び第2引掛部56の保持部としてのフック保持ケース50を収納するケース収納凹所38が設けられている。なお、これらの具体的構成については後述する。
また、この竿体カバー37の下端部(基端部)には、図5及び図8に示すように、竿体ベースカバー19の左右両側の前方側上端縁に係合する係合突起37bが左右両側に向けて突出するように形成されている。この係合突起37bによって竿体カバー37が竿体ベースカバー19に係合し、竿体ベースカバー19が竿体30の変位に追従するように変位する構成とされている。
【0020】
小物引掛バー60は、本実施形態では、竿体30と同様、図1及び図3に示すように、本体10の小物引掛ベース20に基端部が回動自在に連結されている。
この小物引掛バー60は、図1(a)、(c)及び図3(b)に示すように、本体10に収納される収納位置と、図1(b)、(d)、図2及び図3(a)に示すように、前方に向けて突出した使用位置(引掛位置)との間を変位自在とされている。
また、本実施形態では、図1及び図2に示すように、本体10の上下方向(長手方向)に沿って複数(図例では、5本)の小物引掛バー60を設けている。これら複数の小物引掛バー60は、上記使用位置において、本体10に対して斜め左右方向に互い違いに突出するように、本体10の長手方向に沿って間隔を空けて設けられている。図例では、平面視して、使用位置における左右の小物引掛バー60,60同士のなす角が略90度程度となるように左右の小物引掛バー60,60を配置した例を示している(図2参照)。
この小物引掛バー60の長さ寸法は、引っ掛ける対象等にもよるが、例えば、100mm〜300mm程度としてもよく、図例では、200mm程度とした例を示している。
【0021】
図例では、使用位置において、右斜め前方(本体10に対して左斜め前方)に向けて突出する3本の小物引掛バー60,60,60を本体10の長手方向に沿って間隔を空けて設けた例を示している。また、これらの間に位置するように使用位置において、左斜め前方(本体10に対して右斜め前方)に向けて突出する2本の小物引掛バー60,60を設けた例を示している。また、図例では、これら複数の小物引掛バー60の各基端部を、本体10の長手方向に沿って略等間隔で小物引掛ベース20に連結した例を示している。また、これら小物引掛バー60は、図3(b)に示すように、収納位置とされた状態では、隣接する小物引掛バー60同士が上下方向に僅かな空間を隔てて収納されるように設けられている。なお、小物引掛バー60の具体的構成については後述する。
【0022】
小物引掛ベース20は、図5に示すように、竿体ベース11の上側に連なるようにして溶接やねじ等の固定止具によって下端部が固着されている。
この小物引掛ベース20は、図3及び図4に示すように、壁面2に当接して配置される背板部22と、この背板部22の左右両側から前方に向けて突出するように形成された両側板部24,24とを備えている。
背板部22には、長手方向に沿って間隔を空けて、厚さ方向に貫通する複数の止具挿通孔23が設けられている(図5も参照)。なお、竿体ベース11にも同様の止具挿通孔を設けるようにしてもよい。このような複数の止具挿通孔23を長手方向に沿って設けることで、これらを利用して当該引掛装置1の本体10を壁面2にねじ等の固定止具によって固定することができる。
なお、これら複数の止具挿通孔23のうちの一つを、ダルマ孔状の挿通孔としてもよい。これによれば、ダルマ孔状の挿通孔を利用して本体10の仮止めができ、本体10が長手方向に沿って垂直となるように容易に位置決めを行うことができる。
【0023】
小物引掛ベース20の両側板部24,24は、図4(b)、(c)に示すように、前方に向けて拡開するテーパ状に形成されており、これら両側板部24,24と背板部22とによって前方に向けて開口する横断面略ハット状の形状とされている。
この両側板部24,24には、小物引掛バー60の基端部を回動自在に連結する連結軸25の一端部を支持する軸受孔が設けられている。この軸受孔は、上記のように使用位置において斜め左右方向に互い違いに突出するように設けられる小物引掛バー60の基端部の位置に対応させて、長手方向に沿って左右互い違いとなるように各側板部24,24に千鳥状に設けられている。図例では、一方の側板部(右側の側板部)24に、3つの軸受孔を長手方向に沿って間隔を空けて設け、これらの間に位置するように他方の側板部(左側の側板部)24に2つの軸受孔を設けた例を示している(図3参照)。
【0024】
小物引掛バー60の連結軸25の他端部は、小物引掛ブラケット26(図5及び図12も参照)に設けられた軸受孔に支持されている。この小物引掛ブラケット26は、上記のように千鳥状に左右の両側板部24,24に設けられた軸受孔の高さ位置に対応させて、当該軸受孔が設けられていない側の側板部24に、溶接やねじ等の固定止具によって固定されている。なお、小物引掛ブラケット26の具体的構成については後述する。また、小物引掛ベース20は、竿体ベース11と一体的に形成するようにしてもよい。
【0025】
小物引掛ベースカバー29は、図4(b)、(c)に示すように、小物引掛ベース20の前方開口及び両側板部24,24を覆うように形成され、後方に向けて開口する形状とされており、この後方開口から小物引掛ベース20を受け入れる構成とされている。図例では、前方側部位が前方に向けて先細りの横断面略尖頭形状とされた前板部とされ、全体の横断面形状がホームベース状の形状とされている。この小物引掛ベースカバー29の左右両側内壁には、長手方向に沿って係止突起29c,29cが複数設けられている。この係止突起29c,29cを小物引掛ベース20の両側板部24,24の前端縁に係止させて、小物引掛ベースカバー29が小物引掛ベース20に取り付けられている。
【0026】
この小物引掛ベースカバー29が小物引掛ベース20に取り付けられた状態では、小物引掛ベース20の拡開状の両側板部24,24と、小物引掛ベースカバー29の尖頭形状の前板部とによって横断面略菱形状の空間が区画形成される。この空間が小物引掛バー60の収納空間となる。また、この小物引掛ベースカバー29の尖頭形状とされた前板部には、小物引掛バー60を出し入れするバー開口29bが小物引掛バー60の位置に対応させて複数設けられている(図3(a)も参照)。
小物引掛バー60が収納位置とされた状態では、図4(b)、(c)に示すように、本体10の前面となる小物引掛ベースカバー29の前面29aと小物引掛バー60の収納位置における前面60aとが略同一平面状となる。つまり、バー開口29bの周囲の前面29aと、小物引掛バー60の収納位置における前面60aとが略同一平面状となるように小物引掛バー60が収納される構造とされている。
【0027】
なお、上記した竿体ベース11、小物引掛ベース20及び竿本体31は、ステンレスや鋼板等の金属板を折り曲げ加工やプレス加工、切削加工等することによって形成するようにしてもよい。また、竿本体31は、中空状の炭素鋼鋼管等の金属管からなるものとしてもよい。また、これらを覆う各カバー19,29,37,47は、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂やポリアセタール(POM)樹脂などの硬質の合成樹脂系材料から射出成型等によって上記形状とされたものとしてもよい。または、金属系材料から形成されたものとしてもよい。
【0028】
本実施形態に係る引掛装置1では、上記した竿体30及び小物引掛バー60を上記使用位置とすることで、多様な物品を引っ掛けることができる。つまり、本体10の下側部位に連結された竿体30の引掛部40に、衣服等を吊るしたハンガー等の吊下具3(図9(b)参照)を引っ掛けることができる。また、竿体30との連結部よりも上方側部位に連結された小物引掛バー60に、時計、ネックレス、ネクタイ、スカーフ、帽子、手袋等の小物4(図12(c)参照)や、ハンガー等の吊下具を引っ掛けることができる。つまり、竿体30よりも上方側部位の空間を利用して小物等を引っ掛けることができる。
これにより、日常的に良く使用する衣服や小物等、または翌日等に使用する予定の衣服や小物等を準備したりする際や、これらをコーディネートしたり、さらにはこれらを干したりする際等に、各部に引っ掛けることができるので使い勝手を向上させることができる。
【0029】
また、本実施形態では、複数の小物引掛バー60を設けているので、複数の小物等の物品を引っ掛けることができる。
また、これら複数の小物引掛バー60は、使用位置において本体10に対して斜め左右方向に互い違いに突出するように設けられている。従って、複数の小物引掛バー60を長手方向に沿って設ける本体10の上下長さを比較的に短くすることが可能でありながらも引っ掛けられた物品同士の干渉を抑制することができる。
また、本実施形態では、竿体30に、長手方向に沿って間隔を空けて複数の引掛部40を設けているので、これら複数の引掛部40を利用して複数のハンガー等の吊下具を引っ掛けることができる。
【0030】
また、本実施形態では、小物引掛バー60は、本体10に収納された収納位置で保持されるので、小物引掛バー60を使用しない際には、収納位置とでき、小物引掛バー60が邪魔になるようなことを防止できる。また、すっきりとした印象を与えることができ、見栄えを向上させることができる。特に、本実施形態では、小物引掛バー60は、その収納位置における前面60aが、小物引掛ベースカバー29の前面29aと略同一平面状となるように、小物引掛ベースカバー29に設けられたバー開口29bを介して本体10に収まる構成とされている。従って、よりすっきりとした印象を与えることができ、より見栄えを向上させることができる。
さらに、本実施形態では、竿体30は、収納位置とされた小物引掛バー60の手前側で本体10に沿うように配置される収納位置で保持されるので、これらを収納位置とした状態では、すっきりとした印象を与えることができ、見栄えを向上させることができる。また、この状態では、当該引掛装置1全体が上下に長尺の細長状でコンパクトになり、室内空間等のスペースを有効利用することができる。
【0031】
また、本実施形態では、竿体30は、上記使用位置において、竿体30の先端が基端部よりも上方位置となるように傾斜状に保持されるので、竿体30の長さを比較的に長尺にすることが可能でありながらも壁面2からの突出寸法を小さくすることができる。この結果、竿体30が使用位置において邪魔になるようなことを抑制することができ、室内空間等のスペースを有効利用することができる。なお、上記使用位置における竿体30と本体10との連結角や、竿体30の長さ寸法等は、本体10の設置高さ等にもよるが、成人が手を伸ばして作業できる程度の高さ(1800mm前後)以下に竿体30の先端が位置するように設定するようにしてもよい。例えば、上記連結角を、20度〜60度程度とし、竿体30の長さ寸法を、800mm〜1200mm程度としてもよい。上記連結角が大き過ぎれば、水平方向への竿体30の突出量が大きくなり、竿体30が邪魔になったり、竿体30に人等が接触し易くなったりする傾向がある。また、後述するようにハンガー等の吊下具を竿体30の上方から滑らせるようにして各引掛部40に引っ掛ける際に、スムーズに滑り難くなる傾向がある。一方、上記連結角が小さ過ぎれば、竿体30に引っ掛けた吊下具に吊るされた衣服等が近接して重なり合う傾向があり、衣服等が見難くなり、また、物干しとして利用する場合には乾き難くなる傾向がある。なお、図例では、上記使用位置における竿体30と本体10との連結角を30度程度とした例を示している。
【0032】
次に、竿体30の上記収納位置及び上記使用位置の保持態様の一例について説明する。
竿体30の上記収納位置の保持は、当該引掛装置1に設けられた竿体収納位置保持部によってなされる。本実施形態では、竿体収納位置保持部は、図4(a)に示すように、本体10の上端部に設けられた上端保持係合部21と、竿体30の先端(収納位置における上端)に設けられた上端係合部37aとからなる。竿体30側の上端係合部37aは、竿体カバー37の先端面(上端面)の収納位置における後側の縁部に設けられるとともに、竿体30の長手方向先側に向けて突出するように設けられた係止突部(係止突条)37aとされている。一方、本体10側の上端保持係合部21は、小物引掛ベース20の上端片に連結固定されており、前方に向けて突出するように形成された庇状部を有している。この庇状部には、下方側に向けて開口する係止凹部21aが設けられている。
【0033】
使用位置とされた竿体30を収納位置とする際には、図4(a)に示すように、本体10の上端保持係合部21の弾性変形を伴い、この上端保持係合部21の係止凹部21aに竿体30の係止突部37aが係止し、竿体30が収納位置で保持される。
一方、収納位置から使用位置とする際には、竿体30を手前側に向けて引くようにして回動させれば、本体10の上端保持係合部21の弾性変形を伴い、係止凹部21aと係止突部37aとの係止状態が解除され、使用位置に向けて回動させることができる。
【0034】
なお、竿体30の収納位置を保持する竿体収納位置保持部としては、上記した態様に限られず、例えば、係止突部及び係止凹部をそれぞれ逆側に設ける態様としてもよい。また、本体10及び竿体30のそれぞれの上端に設けられた係合部の形状は、図例のものに限られず、互いに係合し、竿体30の収納位置を保持し得るものであればどのような形状のものでもよい。また、それぞれの上端に係合部を設ける態様に限られず、途中部位や下側部位等に係合部を設けるようにしてもよい。さらには、竿体収納位置保持部としては、上記のような弾性変形を伴い係合するものに限られず、竿体30の収納位置を規制するロック機構や、プッシュオープン式のラッチ機構、マグネットキャッチ等を竿体収納位置保持部として設けるようにしてもよい。
【0035】
竿体30の上記使用位置の保持は、当該引掛装置1に設けられた竿体使用位置保持部によってなされる。本実施形態では、竿体使用位置保持部は、図5(b)に示すように、本体10の下端部近傍に設けられた下端保持係合部13と、竿体30の基端部(収納位置における下端部)に設けられた下端係合部33とからなる。本体10側の下端保持係合部13は、竿体ベース11の背板部12の上端から前方に向けて突出するように形成された規制突片13とされている。一方、竿体30側の下端係合部33は、竿本体31の下端部に後方側に向けて折り曲げられるように設けられたストッパー片33とされている。このストッパー片33が、図5(b)に示すように、竿体ベース11の規制突片13に当接することで、竿体30の手前側への回動が規制され、竿体30が上記使用位置で保持される。
【0036】
なお、本体10の規制突片13及び竿体30のストッパー片33のいずれか一方に、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等からなる制振ゴムを設けるようにしてもよい。これによれば、竿体30の使用位置への変位に伴う騒音や衝撃を緩和することができる。
また、竿体30の使用位置を保持する竿体使用位置保持部としては、上記した態様に限られない。例えば、竿体30の長手方向途中部位と、本体10の長手方向途中部位とを連結する連結アーム等を設け、この連結アームによって竿体30を使用位置で保持する態様としてもよく、その他、種々の態様の採用が可能である。
【0037】
また、本実施形態では、引掛装置1は、上記のように使用位置と収納位置とを変位自在とされた竿体30を、図1(c)に示すように、使用位置と収納位置との間の途中位置で保持する途中保持機構を備えている。
この途中保持機構は、本実施形態では、図5に示すように、竿体30の下端部に設けられた途中保持係合部34と、竿体ベース11に設けられた回転係止駒16とを備えている。
回転係止駒16は、竿体ベース11の両側板部14,14に架け渡されるように設けられるとともに、竿体30の連結軸15の下方側に配設された駒軸に回転自在に保持されている。また、回転係止駒16は、軸方向一方側(右側、図示手前側)に設けられた第1回転係止部17と、軸方向他方側(左側、図示奥側)に設けられた第2回転係止部18とを軸方向に沿って有している。これら第1回転係止部17及び第2回転係止部18は、偏心異形状とされており、図5(a)に示すように、竿体30が収納位置において、上記駒軸を挟んで上下両側に突出するように長尺片状とされている。
【0038】
竿体30の途中保持係合部34は、中空とされた竿本体31の下端開口に挿入される挿入部を有し、この挿入部が挿入されて竿本体31の下端に固定されている。この途中保持係合部34は、下方側に向けて突出する後方側の第1係合突部35と前方側の第2係合突部36とを有しており、側面視して二股状に形成されている。
第1係合突部35は、回転係止駒16の第1回転係止部17に係合するように、上記駒軸の軸方向と同方向一方側(右側)に設けられ、第2係合突部36は、回転係止駒16の第2回転係止部18に係合するように、他方側(左側)に設けられている。
第1係合突部35の下端には、前方に向けて突出するように形成された係止爪35aが設けられている。
【0039】
回転係止駒16の第1回転係止部17には、竿体30の第1係合突部35の係止爪35aに係止する係止凹部17aが長手方向一端側に設けられている。この係止凹部17aに隣接する両側部には、傾斜状の係止面と突湾曲状の案内面とが設けられている。
回転係止駒16の第2回転係止部18には、竿体30の第2係合突部36の下端の後方側の係止角部36aに係止する係止凹部18aが長手方向他端側に設けられている。つまり、第2回転係止部18の係止凹部18aと、第1回転係止部17の係止凹部17aとは、長手方向逆側位置となるように設けられている。また、この係止凹部18aに隣接する両側部には、突湾曲状及び凹湾曲状の案内面がそれぞれに設けられている。
【0040】
図5(a)に示すように、竿体30が収納位置では、回転係止駒16の第1回転係止部17の係止凹部17aが上方に向けて開口するように、回転係止駒16が長手方向を上下方向に沿わせるようにして位置づけられる。また、この状態では、回転係止駒16の上側部位が二股状に形成された竿体30の各係合突部35,36間に位置づけられる。また、第1回転係止部17の突湾曲状の案内面が竿体30の第1係合突部35の係止爪35aに近接対向乃至は当接するように位置づけられる。
一方、図5(b)に示すように、竿体30が使用位置では、回転係止駒16の第1回転係止部17の係止凹部17aが後方に向けて開口するように、回転係止駒16が長手方向を前後方向に沿わせるようにして位置づけられる。また、第2回転係止部18の凹湾曲状の案内面が竿体30の第2係合突部36に近接対向乃至は当接するように位置づけられる。
【0041】
使用位置とされた竿体30を、途中位置で保持させる際には、本体10の回転係止駒16及び竿体30の途中保持係合部34の互いの案内、回転、係止作用を伴って、以下のようになされる。
図5(b)に示す使用位置から図6(a)に示すように、連結軸15廻りに収納位置側に向けて竿体30を回動させれば、竿体30の第1係合突部35の係止爪35aが前方に向けて移動し、後方に向けて開口する第1回転係止部17の係止凹部17aに近接する。
そして、図6(b)に示すように、竿体30をさらに収納位置側に向けて回動させれば、竿体30の第1係合突部35の係止爪35aと第1回転係止部17の係止凹部17aの側面の案内作用によって、第1回転係止部17の係止凹部17aが斜め後下方側に向けて開口する位置に向けて回転係止駒16が回動する。これにより、第1回転係止部17の係止凹部17aに第1係合突部35の係止爪35aが係止する。この状態では、竿体30の収納位置側への回動が互いの係止によって規制乃至は抑制される。また、この状態では、第2回転係止部18の係止凹部18aが、竿体30の第2係合突部36の係止角部36aに対向するように斜め前上方側に開口するように位置づけられる。
【0042】
次いで、図6(c)に示すように、竿体30を、少許、使用位置側に向けて回動させれば、または手放せば、竿体30の第2係合突部36の係止角部36aが第2回転係止部18の係止凹部18aに近接する。
そして、図6(d)に示すように、竿体30をさらに使用位置側に向けて回動させれば、または、そのまま手放せば、竿体30の第2係合突部36の係止角部36aと第2回転係止部18の係止凹部18aの側面との案内作用によって、第2回転係止部18の係止凹部18aがさらに斜め上方側に向けて開口する位置に向けて回転係止駒16が少許、回動する。これにより、第2回転係止部18の係止凹部18aに第2係合突部36の係止角部36aが係止する。この状態では、竿体30の使用位置側への回動が互いの係止によって規制される。つまり、竿体30の自重による使用位置側への回転モーメントによって、竿体30の第2係合突部36が第2回転係止部18の係止凹部18aに押し付け状態で互いに係合し、これにより、回転係止駒16の回転が規制される。この結果、竿体30の使用位置側への回動が規制され、図1(c)及び図6(d)に示すように、竿体30が途中位置で保持される。
【0043】
上記途中位置とされた竿体30を収納位置とする際には、上記同様、本体10の回転係止駒16及び竿体30の途中保持係合部34の互いの案内、回転、係止作用を伴って、以下のようになされる。
図7(a)に示すように、上記途中位置から竿体30を少許、収納位置側に向けて回動させれば、竿体30の第1係合突部35の係止爪35aが第1回転係止部17の傾斜状の係止面に近接して係止し、竿体30の収納位置側への回動が規制乃至は抑制される。この状態では、竿体30の第2係合突部36と第2回転係止部18の係止凹部18aとの係合が解除され、竿体30の第2係合突部36の内側面と第2回転係止部18の突湾曲状の案内面とが対面するように近接する。
【0044】
そして、図7(b)、(c)に示すように、竿体30を使用位置側に向けて回動させれば、竿体30の第2係合突部36と第2回転係止部18の案内面との案内作用によって、第2回転係止部18の係止凹部18aが後方側に向けて開口する位置に向けて回転係止駒16が回動する。図7(c)に示すように、竿体30を使用位置とした状態では、竿体30の第2係合突部36と第2回転係止部18の突湾曲状の案内面とが近接乃至は当接し、第1回転係止部17の突湾曲状の案内面が上方を向くように位置づけられる。
次いで、図7(d)に示すように、竿体30を収納位置側に向けて回動させれば、竿体30の第1係合突部35の係止爪35aが第1回転係止部17の案内面に向けて移動する。そして、竿体30の第1係合突部35の係止爪35aと第1回転係止部17の案内面との案内作用によって、第1回転係止部17の係止凹部17aが上方に向けて開口する位置に向けて回転係止駒16が回動し、図5(a)に示す位置に復帰する。
【0045】
本実施形態に係る引掛装置1は、上記のように竿体30を途中位置で保持する途中保持機構を備えているので、例えば、竿体30の各引掛部40に、衣服等を吊るしたハンガー等の吊下具を引っ掛けた状態で途中位置とすることができる。これにより、竿体30やこれに引っ掛けられた物品等が邪魔になるようなことを抑制でき、当該引掛装置1が設置される室内空間等のスペースを有効利用することができる。
なお、上記のように途中位置で保持される竿体30と本体10との途中位置連結角は、竿体30の各引掛部40に衣服等を吊るしたハンガー等の吊下具を引っ掛けた状態で言わば半開き状に竿体30を保持し得る角度としてもよい。例えば、上記途中位置連結角を5度〜20度程度としてもよく、図例では、10度とした例を示している。
【0046】
また、竿体30を上記途中位置で保持する途中保持機構としては、上記した例に限られず、例えば、竿体30及び本体10の一方に引掛アームを回動自在に設け、他方にこの引掛アームに係止する係止部を設けるような態様としてもよい。または、山形状に屈曲させた板バネ状部材を一方に設け、竿体30が途中位置に向けて変位する際に、この板バネ状部材に係止する係止凹部を他方に設けるような態様としてもよい。この場合、係止凹部を複数設け、多段階的に竿体30を途中位置で保持し得る態様としてもよい。さらには、竿体30の各引掛部40に衣服等を吊るしたハンガー等の吊下具を引っ掛けた状態で、途中位置で竿体30を保持し得るように、粘性抵抗や摩擦抵抗等を利用したダンパー機構を途中保持機構として竿体30の下端部や軸部等の適所に設ける態様としてもよい。これによれば、上記例のように確実な途中位置の保持がなされ難い傾向はあるが、任意の途中位置で竿体30を保持させることができる。なお、このような竿体30を途中位置で保持する途中保持機構を設けないようにしてもよい。
【0047】
次に、竿体30に設けられた複数の引掛部40の具体的構成の一例について説明する。
引掛部40は、図2及び図3に示すように、竿体30の長手方向に沿って間隔を空けて複数設けられている。これら複数の引掛部40を設ける間隔(ピッチ)は、各引掛部40に引っ掛けられた吊下具に吊るされた衣服等が互いに干渉しないよう、例えば、50mm〜200mm程度としてもよく、図例では、100mm程度とした例を示している。
【0048】
これら引掛部40のそれぞれは、本実施形態では、図5及び図9に示すように、竿体30の使用位置における上側面(収納位置における後側面)30aから出没自在となるように竿体30に設けられている。これら引掛部40のそれぞれは、竿体30の上側面30aから突出しないように配置される引掛不能位置と竿体30の上側面30aから突出して物品の引っ掛けが可能な引掛可能位置とこの引掛可能位置からさらに突出した物品引掛位置とを変位自在とされている。
本実施形態では、引掛部40は、回動自在に竿体30に連結されており、上記各位置に回動して変位する構造とされている。また、これら引掛部40は、本実施形態では、竿体30内において竿体30に回動自在に連結される連結片42と、この連結片42の回動に伴って竿体30の上側面30aに対して上端側が離接するように起倒する羽根状引掛片41とを有した引掛フック40とされている。この引掛フック40は、上記同様の金属系材料や硬質の合成樹脂系材料等から形成するようにしてもよい。
【0049】
この引掛フック40の連結片42は、図5及び図8に示すように、薄平板状の羽根状引掛片41の下側部位の左右両側から竿体30の収納位置における前方に向けて突出するように設けられて左右一対とされている。これら左右一対の連結片42,42の間に竿本体31が配置される(図4(b)参照)。また、これら連結片42,42には、フック軸孔43,43がそれぞれ設けられている。竿体カバー37には、上記竿本体収納空間の左右内側面から内方側(竿体カバー37の左右方向中心側)に向けて突出するフック軸39,39が設けられている。これらフック軸39,39を、引掛フック40の連結片42,42に設けられたフック軸孔43,43に挿通して、引掛フック40が竿体30に対して回動自在に連結されている。
また、これら連結片42,42の前方側縁部には、内方側に向けて折り曲げられるように突出する連動片部44,44がそれぞれに設けられている。この連動片部44,44は、フック軸39,39の前方位置となるように設けられている。また、この連動片部44,44は、竿体カバー37の上記竿本体収納空間の溝底面と竿本体31の使用位置における下側面(収納位置における前側面)との間の空間に配置されている。
【0050】
この引掛フック40は、羽根状引掛片41が竿体30の上側面30aと略平行となるように倒伏した状態が引掛不能位置となる(図9(a)の上段側2つの引掛フック40,40参照)。この状態では、引掛フック40が竿体30の上側面30aから突出せず、物品等の引掛が不能な状態となる。また、この状態では、引掛フック40の羽根状引掛片41の内側面(竿本体31の使用位置における上側面側に向く面)が竿本体31の上側面に当接し、引掛フック40の羽根状引掛片41が前方側へ向かう方向(倒伏方向)への引掛フック40の回動が規制されている。なお、この倒伏方向への回動の規制態様としては、他の規制態様を採用するようにしてもよい。
【0051】
また、引掛フック40は、上記引掛不能位置から引掛フック40の羽根状引掛片41の上端側が竿体30の上側面30aに対して離間する方向(開き方向)に向けてフック軸39廻りに少許、回動し、起立した状態が引掛可能位置となる(図9(a)の最下段の引掛フック40参照)。この状態では、竿体30の上側面30aから引掛フック40の羽根状引掛片41の上端側が突出する。また、この状態では、竿体30の上側面30aと引掛フック40の羽根状引掛片41の上記内側面との間にハンガー等の吊下具3(図9(b)参照)の引掛が可能な状態となる。
【0052】
また、引掛フック40は、上記引掛可能位置から引掛フック40の羽根状引掛片41が上記開き方向に向けてフック軸39廻りにさらに回動し、起立した状態が物品引掛位置となる(図9(b)の最下段の引掛フック40参照)。この状態では、竿体30の上側面30aから引掛フック40の羽根状引掛片41の上端側が上記引掛可能位置からさらに突出した状態となる。また、この状態では、引掛フック40の羽根状引掛片41の下端縁が竿本体31の使用位置における上側面に当接し、これ以上の上記開き方向への回動が規制される。なお、この開き方向への回動の規制態様としては、他の規制態様を採用するようにしてもよい。
【0053】
また、上記引掛可能位置及び上記物品引掛位置では、引掛フック40の羽根状引掛片41の外側表面(竿体30の収納位置における後方側の面)41aと竿体30の上側面30aとのなす角が鋭角となるように起立状態とされる。本実施形態では、羽根状引掛片41を薄平板状としているので、羽根状引掛片41の外側表面41aと竿体30の上側面30aとのなす角は、実質的にはこの羽根状引掛片41と竿体30の上側面30aとの開き角である。
この開き角を上記のように鋭角とすることで、竿体30の複数の引掛フック40に引っ掛けた複数本のハンガー等の吊下具3を外す際に、下段側から竿体30に沿わせて斜め上方側に向けて抜き取るようにして一度の動作で外すことができ、使い勝手が良い。つまり、いずれかの上段側の引掛フック40が引掛不能位置とされていない場合でも、上記開き角が鋭角であるため、下段側から竿体30に沿わせて斜め上方側に向けて吊下具3を移動させる際に、上段側の引掛フック40を比較的に容易に乗り越えさせることができる。
【0054】
なお、上記開き角は、上記のように吊下具3をスムーズに外すことができる角度で、物品の引掛が可能な程度とすればよい。例えば、上記引掛可能位置における上記開き角を、10度〜30度程度とし、上記物品引掛位置における上記開き角を、30度〜60度程度としてもよい。図例では、上記引掛可能位置における上記開き角を20度程度とし、上記物品引掛位置における上記開き角を40度程度とした例を示している。
【0055】
また、本実施形態では、この引掛フック40は、竿体30が使用位置において、上記引掛不能位置を維持する方向(上記倒伏方向)に向けて自重によって付勢されている。つまり、竿体30が使用位置とされた状態で、少なくとも上記引掛不能位置における引掛フック40の重心が、回動支点(フック軸39の軸心)よりも前方側に位置している。これによれば、簡易な構造で、引掛フック40を引掛不能位置に維持させることができ、意図しない引掛フック40の上記開き方向への回動を防止することができる。なお、このように自重によって上記倒伏方向に向けて付勢する態様に限られず、ゴム部材やばね部材等の付勢部材によって引掛フック40を上記倒伏方向に向けて付勢する態様としてもよい。さらには、後記する連動部46のようなスライド体によって、引掛フック40の連動片部44,44を下方側に向けて付勢することで上記倒伏方向に向けて付勢する態様としてもよい。また、このような引掛フック40の倒伏方向への付勢は、少なくとも上記引掛不能位置を維持するように付勢すればよく、上記引掛可能位置または上記物品引掛位置から上記倒伏方向に向けて、常時付勢する態様としてもよい。
【0056】
また、本実施形態に係る引掛装置1は、下段側(竿体30の傾斜方向における下段側)の引掛フック40の上記物品引掛位置への変位に伴って、この引掛フック40に隣接する上段側(竿体30の傾斜方向における上段側)の引掛フック40を上記引掛不能位置から上記引掛可能位置へと変位させる連動部46を備えている。
この連動部46は、本実施形態では、隣接する引掛フック40,40間に位置するように竿体30内にスライド自在に収容されたスライド体とされ、図例では、プレート状の連動プレート46とされている。
また、本実施形態では、竿体30の上記収納位置から上記使用位置への移動に伴って、複数の引掛フック40のうちの最下段の引掛フック40を上記引掛不能位置から上記引掛可能位置へと変位させる最下段連動部45を備えている。この最下段連動部45は、上記同様、竿体30内にスライド自在に収容されたスライド体とされ、図例では、プレート状の最下段連動プレート45とされている。
【0057】
これら連動プレート46及び最下段連動プレート45は、図4、図5及び図8に示すように、竿体カバー37の上記竿本体収納空間の溝底面と竿本体31の使用位置における下側面との間に収納されるようにして配設されている。竿体カバー37には、上記竿本体収納空間の溝底面と竿本体31の使用位置における下側面との間にこれらの配設空間が形成されるように、例えば、上記した左右一対の竿本体保持突起37d,37dの基端部等にリブ等の凸部を設けている。
また、これら連動プレート46及び最下段連動プレート45の上端には、各引掛フック40の連動片部44,44が近接乃至は当接して配置されている。なお、これら連動プレート46及び最下段連動プレート45は、上記同様の金属系材料や硬質の合成樹脂系材料等から形成するようにしてもよい。また、これら連動プレート46及び最下段連動プレート45には、錘等を埋め込むように設けるようにしてもよい。
【0058】
連動プレート46には、図8に示すように、竿体カバー37の左右両側に設けられた左右一対の竿本体保持突起37d,37dに対応させて、後記するスライドが可能なようにこれらを受け入れる切欠部が形成されている。これら連動プレート46の下端は、竿本体保持突起37d,37d乃至は下側の引掛フック40の連動片部44,44に当接して下方側への移動が規制されている。
最下段連動プレート45の下端部には、左右方向に向けて突出する突部が設けられており、図5に示すように、この突部が竿体ベース11の両側板部14,14の上縁に当接して下方側への移動が規制されている。竿体ベース11の両側板部14,14の前上縁角部はR形状の湾曲部14a,14aとされている。
【0059】
本実施形態では、竿体ベース11の両側板部14,14の上縁及び湾曲部14a,14aが竿体30の変位を伴ってカム面のように最下段連動プレート45に作用し、最下段連動プレート45をスライドさせる構成としている。つまり、図5(a)に示す収納位置とされた状態から図5(b)に示す使用位置に竿体30を移動させることで、最下段連動プレート45が竿体30に対して竿体30の長手方向先側(斜め前上方側)に向けてスライドする。これにより、図5(a)に示すように、引掛不能位置とされた最下段の引掛フック40は、その連動片部44,44が最下段連動プレート45によって押され、図5(b)に示すように、引掛可能位置へと回動して変位する。なお、最下段連動プレート45のスライド量や、カム面のように作用する両側板部14,14の上縁及び湾曲部14aから竿体30の連結軸15までの寸法等は、最下段の引掛フック40が竿体30の変位に伴って上記のように変位するように設定されている。
【0060】
この最下段の引掛フック40の引掛不能位置から引掛可能位置への変位に伴って、この引掛フック40の連動片部44,44が斜め前上方側に向けて少許、移動する。これにより、この連動片部44,44の上側に配設された連動プレート46が当該連動片部44,44によって押され、上記同様、竿体30に対して竿体30の長手方向先側(斜め前上方側)に向けてスライドする。この状態では、図9(a)に示すように、最下段の引掛フック40に隣接する上段側の引掛フック40(図示中段の引掛フック40)は、引掛不能位置に維持されたままである。本実施形態では、下段側の引掛フック40が引掛不能位置とされた状態で、その上側の連動プレート46の上端と、隣接する上段側の引掛フック40の連動片部44,44との間に所定の隙間を形成することで、この隣接する上段側の引掛フック40への連動プレート46の干渉を防止している(図9(a)参照)。この所定の隙間は、下段側の引掛フック40の引掛不能位置から引掛可能位置への変位に伴う連動プレート46のスライドによって、隣接する上段側の引掛フック40が引掛可能位置に変位しないような隙間とすればよい。
【0061】
上記のように引掛可能位置とされた引掛フック40(図示最下段の引掛フック40)に、図9(b)に示すように、ハンガー等の吊下具3を引っ掛ければ、その重みによって当該引掛フック40が物品引掛位置へと回動する。この引掛フック40の物品引掛位置への回動を伴って、この引掛フック40の上側に配設された連動プレート46がスライドすることで、隣接する上段側の引掛フック40(図示中段の引掛フック40)が引掛不能位置から引掛可能位置へと回動する構造とされている。
つまり、下段側の引掛フック40が引掛可能位置から物品引掛位置へと回動することで、この引掛フック40の連動片部44,44が斜め前上方側に向けてさらに移動する。これにより、この連動片部44,44の上側に配設された連動プレート46が当該連動片部44,44によって押され、上記同様、斜め前上方側に向けてさらにスライドする。この連動プレート46に、隣接する上段側の引掛フック40の連動片部44,44が押され、この引掛フック40が引掛不能位置から引掛可能位置へと変位する。
【0062】
以下同様にして、下段側の引掛フック40が物品引掛位置へと変位することで、これに隣接する上段側の引掛フック40が引掛不能位置から引掛可能位置へと変位する。
一方、下段側の引掛フック40が物品引掛位置から引掛可能位置または引掛不能位置へと変位すれば、その上側に配設された連動プレート46が自重によって竿体30内を下方側に向けて移動する。これにより、隣接する上段側の引掛フック40の規制が解除され、この引掛フック40が引掛不能位置へと変位可能となる。
【0063】
本実施形態に係る引掛装置1は、上記のように変位する引掛フック40を備えているので、使い勝手を向上させることができる。つまり、下段側の引掛フック40から物品を引っ掛けることで、隣接する上段側の引掛フック40が引掛可能位置となり、順次、上段側の引掛フック40に物品を引っ掛けることができる。つまり、各引掛フック40を個別に引掛不能位置から引掛可能位置等に手動操作する必要が抑制され、使い勝手を向上させることができる。
また、竿体30は、使用位置において傾斜状に配設されているので、ハンガー等の吊下具3のフック等を、この竿体30の上側面30aを滑らせるようにして移動させ、竿体30の上側面30aから突出して引掛可能位置とされた引掛フック40に引っ掛けることもできる。つまり、上記のように、引掛可能位置とされた引掛フック40の上段側の引掛フック40は、引掛不能位置で維持されている。従って、上記のように、吊下具3のフック等を、竿体30の上側面30aを滑らせるようにしてスムーズに移動させることができる。
【0064】
さらに、本実施形態では、竿体30を収納位置から使用位置へと移動させることで、最下段の引掛フック40が引掛不能位置から引掛可能位置へと変位するので、より使い勝手を向上させることができる。つまり、竿体30を使用位置とし、吊下具3のフック等を竿体30に引っ掛けて竿体30の上側面30aを滑らせるようにすれば、当該吊下具3のフック等が引掛可能位置とされた最下段の引掛フック40に引っ掛かる。これにより、上記のように、当該引掛フック40が引掛可能位置から物品引掛位置へと変位する。また、これにより、上記のように、この最下段の引掛フック40に隣接する上段側の引掛フック40が引掛不能位置から引掛可能位置へと変位し、以下、同様にしてハンガー等の吊下具3を次々に引っ掛けることができ、極めて使い勝手が良いものとなる。なお、このような竿体30の変位に伴って最下段の引掛フック40を引掛不能位置から引掛可能位置へと変位させる最下段連動部45を設けないようにしてもよい。この場合においても下段側の引掛フック40を物品引掛位置へと変位させれば、隣接する上段側の引掛フック40が引掛不能位置から引掛可能位置へと変位するので、個別に手動操作するものと比べて使い勝手を向上させることができる。
【0065】
さらにまた、本実施形態では、引掛フック40を竿体30に回動自在に連結し、連動部46及び最下段連動部45をスライド体としてのプレート状としているので、引掛部及びこれを変位させる連動部材を簡易な構造とすることができる。なお、このようなスライド体としては、プレート状のものに限られず、棒状(アーム状)のものとしてもよい。また、本実施形態では、簡易な構造とする観点等から、各引掛フック40と各スライド体(連動プレート46及び最下段連動プレート45)とを非連結とした例を示しているが、各スライド体と上側及び下側の両方または一方の引掛フックとを連結するようにしてもよい。各スライド体と上側の引掛フックとを連結する場合は、スライド体のスライド量を適宜、設定したり、下段側の引掛フックが引掛可能位置に変位した際に、隣接する上段側の引掛フック40が竿体30の上側面30aから突出しないように、引掛フックの引掛不能位置における遊び代を比較的に大きくするようにしたりしてもよい。さらには、連動部46及び最下段連動部45としては、竿体30内にスライド自在に収納されるスライド体に限られず、引掛フック40の各部に連結されたリンクアーム等によって構成するようにしてもよい。
【0066】
また、本実施形態では、竿体30の上側面30aから出没する引掛部として、竿体30に回動自在に連結された引掛フック40とした例を示しているが、このような態様に限られない。例えば、上記各連動部46及び最下段連動部45がスライドすることで竿体30の上側面30aから出没するスライド式の引掛片等としてもよく、その他、種々の態様としてもよい。
【0067】
次に、竿体30の上端部(先端部)に設けられたフック保持ケース50並びにこれに保持される第1引掛部53及び第2引掛部56の具体的構成の一例について説明する。
フック保持ケース50は、図3及び図10に示すように、上記した竿体カバー37の上端部に設けられたケース収納凹所38に収納されて固定されている。第1引掛部53は、このフック保持ケース50に対して高さ位置が略固定的とされた固定フック部53とされている。本実施形態では、固定フック部53は、フック保持ケース50に収納された収納位置とフック保持ケース50から突出した引掛可能位置とを変位自在とされている。一方、第2引掛部56は、フック保持ケース50から紐状部材としての吊下ワイヤー49を介して吊り下げられた使用位置とフック保持ケース50に収納された収納位置とを変位自在とされた可動フック部56とされている。また、この可動フック部56が収納位置となるように吊下ワイヤー49を付勢する付勢手段48を備えている。なお、可動フック部56を吊下げる紐状部材としては、吊下ワイヤー49に限られず、ロープ等としてもよい。
【0068】
本実施形態では、付勢手段48は、図10(d)に示すように、吊下ワイヤー49の一端部49aに連結され、竿体30内を長手方向に沿って移動自在とされた錘部材48とされている。
この錘部材48は、図4(b)、(c)に示すように、竿本体31の中空内に収納されている。また、錘部材48は、図10(d)に示すように、細長状に形成された錘ケース48aと、この錘ケース48aに収納された錘48bと、錘ケース48aの長手方向両端部に回動自在に連結されたコロ48cとを備えている。この錘ケース48aの上端部に吊下ワイヤー49の一端部49aが結び付けられている。
【0069】
フック保持ケース50には、図10に示すように、竿体30の使用位置における前方側に向けて開口する固定フック収納凹所51と可動フック収納凹所52とが左右方向に並設されている。これら各フック収納凹所51,52は、図10(b)、(c)に示すように、各フック部53,56に対応した形状とされ、これら各フック部53,56の略全体を収納し得る形状とされている。
また、可動フック収納凹所52には、吊下ワイヤー49が挿通されるワイヤー孔52aが形成されており、このワイヤー孔52a及び竿体カバー37に形成されたワイヤー孔を介して吊下ワイヤー49が竿本体31内に挿通されている。また、可動フック収納凹所52には、吊下ワイヤー49が掛けられたプーリー55が設けられている。
【0070】
可動フック部56は、吊下ワイヤー49の他端側に連結されており、吊下ワイヤー49のフック保持ケース50からの繰り出し及びフック保持ケース50内への引き込みに伴って、上下に変位する。
この可動フック部56は、無負荷の状態(物品等の荷重や使用者による引き出し等が作用していない状態)では、錘部材48によって、図10(a)、(b)に示す収納位置に付勢されている。この状態では、錘部材48は、図3に示すように、竿本体31内の比較的下方側に位置づけられる。
一方、この可動フック部56を錘部材48の付勢(自重)に抗して引き出し、または物品等を引っ掛ければ、可動フック部56がフック保持ケース50から下方側に向けて移動し、図10(d)に示す使用位置となる(図1(d)も参照)。この状態では、錘部材48は、図10(d)に示すように、竿本体31内の上端に位置づけられる。なお、錘部材48の質量は、可動フック部56に衣服等を吊るした吊下具3を引っ掛けた状態で、可動フック部56が上記使用位置となるように設定されている。
【0071】
また、本実施形態に係る引掛装置1は、フック保持ケース50の高さ位置に対して可動フック部56の上記使用位置の高さ位置を調整可能な高さ調整手段を備えている。本実施形態では、可動フック部56のフック本体57に設けられたチャック状部58と、このチャック状部58を囲むように設けられたスリーブ59とによって高さ調整手段を構成している。
可動フック部56のフック本体57及びチャック状部58には、吊下ワイヤー49が挿通される挿通孔が設けられている。チャック状部58は、この挿通孔を中心に複数に分割されており、吊下ワイヤー49を挟むように保持する複数のチャック爪を有している。スリーブ59の内側周面59aは、このチャック状部58のチャック爪を上記挿通孔の径方向に拡縮可能なように多段階的乃至は無段階的に下方側が先細り(小径)となるように形成されている。
【0072】
可動フック部56の使用位置における高さ位置を調整する際には、スリーブ59をチャック状部58に対して移動させ、チャック状部58のチャック爪を拡開させることで、吊下ワイヤー49の移動を可能とする。そして、図10(d)に示すように、例えば、吊下ワイヤー49の他端部49b等を把持し、この吊下ワイヤー49に対して可動フック部56を上下の所望の高さ位置となるように移動させる。次いで、スリーブ59をチャック状部58に対して移動させ、チャック状部58のチャック爪を収縮させ、吊下ワイヤー49を保持(挟持)させれば、可動フック部56を所望の高さ位置の使用位置に位置づけることができる。なお、可動フック部56の上記使用位置の高さ位置を調整可能な高さ調整手段としては、上記した例に限られず、種々の手段の採用が可能である。例えば、上記のように吊下ワイヤー49に対して可動フック部56の高さ位置を調整する態様に代えて、吊下ワイヤー49が掛けられたプーリー55等の案内部材に対してストッパー片等を圧接またはその解除をすることで、吊下ワイヤー49自体の繰り出し量を可変とする態様としてもよい。
【0073】
固定フック部53は、本実施形態では、フック保持ケース50に連結軸53bによって回動自在に連結され、収納位置と引掛可能位置とを変位自在とされている。この固定フック部53の連結軸53bは、固定フック収納凹所51に左右方向に架け渡されるようにして支持されている。
また、本実施形態に係る引掛装置1は、可動フック部56の収納位置から使用位置への移動に伴う錘部材48の竿体30の先端側への移動を伴って、固定フック部53を収納位置から引掛可能位置に変位させる第1引掛部連動部54を備えている。本実施形態では、第1引掛部連動部54は、固定フック収納凹所51に設けられたピン孔51a及び竿体カバー37に設けられたピン孔に挿通された固定フック連動ピン54とされている。この固定フック連動ピン54は、これらピン孔51aを介して竿本体31内に延びるように設けられ、また、固定フック部53の連結軸53bよりも竿体30の収納位置における前後方向に沿って後方側に設けられている。
【0074】
固定フック部53には、この固定フック連動ピン54に係合するピン係合部53cが設けられている。このピン係合部53cは、固定フック部53の連結軸53bよりも竿体30の収納位置における前後方向に沿って後方側に膨出するように設けられている。
固定フック連動ピン54は、図10(c)に示すように、固定フック部53が収納位置とされた状態では、上端の抜止部がピン係合部53cに当接し、上下方向への移動が規制されている。
一方、図11(a)に示すように、可動フック部56の収納位置から使用位置への移動に伴って錘部材48が竿体30の先端側へ移動すれば、固定フック連動ピン54が、錘部材48の上端によって押され、上方に向けて移動する。これにより、固定フック部53のピン係合部53cが固定フック連動ピン54によって押され、固定フック部53が連結軸53b廻りに引掛可能位置に向けて回動する。つまり、引掛片53aがフック保持ケース50から突出して露出し、物品等の引掛が可能な状態となる。これにより、図11(b)に示すように、衣服等を吊るした吊下具3を固定フック部53に引っ掛けることができる。なお、本実施形態では、固定フック部53に物品が引っ掛けられた物品引掛位置では、引掛可能位置からさらに固定フック部53が回動するように構成されている。
【0075】
上記のように物品引掛位置乃至は引掛可能位置とされた固定フック部53を、収納位置側に向けて回動させれば、ピン係合部53cによって固定フック連動ピン54が竿本体31内側に向けて押されて上記位置に復帰する。
つまり、本実施形態では、固定フック部53のピン係合部53cがカム面のように作用し、固定フック部53の回動変位と固定フック連動ピン54のスライド変位とが連動する構成とされている。
【0076】
なお、可動フック部56の収納位置から使用位置への移動に伴う錘部材48の竿体30の先端側への移動を伴って、固定フック部53を収納位置から引掛可能位置に変位させる第1引掛部連動部としては、上記態様に限られず、種々の態様の採用が可能である。例えば、錘部材48によって押移動されるリンクアーム等を第1引掛部連動部として固定フック部53に連結して設ける態様としてもよい。また、物品引掛位置乃至は引掛可能位置とされた固定フック部53を、収納位置側に向けて付勢する付勢部材を設けるようにしてもよい。
【0077】
本実施形態に係る引掛装置1は、上記のようにフック保持ケース50並びにこれに保持される固定フック部53及び可動フック部56を備えているので、例えば、上下の衣服をコーディネート等する際における使い勝手を向上させることができる。
つまり、可動フック部56を上記のように使用位置とし、この可動フック部56に、スカートやパンツ等の下衣等を吊るしたハンガー等の吊下具3を引っ掛けることができる。また、可動フック部56に引っ掛けた吊下具3を外せば、付勢手段としての錘部材48によって可動フック部56が収納位置に向けて戻り、フック保持ケース50に収納することができるので、可動フック部56が邪魔になるようなことを防止することができる。
また、所定の高さ位置に配設されるフック保持ケース50に設けられた固定フック部53に、シャツやカットソー、セーター、ジャケット等の上衣等を吊るした吊下具3を引っ掛けることができ、可動フック部56に引っ掛けた吊下具3に吊るされた下衣等とのコーディネート等を行うことができる。
【0078】
さらに、可動フック部56に下衣等を吊るした吊下具3を引っ掛けた状態で、固定フック部53に引っ掛けられた上衣等を吊るした吊下具3を、異なる上衣等を吊るした吊下具3に容易に取り替えて引っ掛けることができる。また、逆も同様、固定フック部53に上衣等を吊るした吊下具3を引っ掛けた状態で、可動フック部56に引っ掛けられた下衣等を吊るした吊下具3を、異なる下衣等を吊るした吊下具3に容易に取り替えて引っ掛けることができる。つまり、上下の衣服の組み合わせ変更を容易に行うことができる。
さらにまた、これら固定フック部53及び可動フック部56の一方を単独でハンガー掛けとして利用することもでき、固定フック部53を利用する際には可動フック部56を収納位置とすることで、可動フック部56や吊下ワイヤー49が邪魔になるようなことがない。
【0079】
また、本実施形態では、フック保持ケース50を、複数の引掛フック40を長手方向に沿って有した竿体30の先端部に設けている。従って、この竿体30の引掛フック40に引っ掛けられ、上衣や下衣等の衣服を吊るした吊下具3と、各フック部53,56に引っ掛けられ、上衣や下衣等の衣服を吊るした吊下具3とを、容易に取り替えることができる。従って、上下の衣服を組み合わせてコーディネート等する際の使い勝手をより向上させることができる。
さらに、本実施形態では、竿体30が連結された本体10に小物引掛バー60を設けているので、これに引っ掛けた上述のような小物等とのトータルコーディネート等も容易に行うことができる。
【0080】
さらにまた、本実施形態では、フック保持ケース50の高さ位置に対して可動フック部56の上記使用位置の高さ位置を調整可能な高さ調整手段を備えているので、上下の衣服をディスプレイする際やコーディネートする際等に、サイズ等に応じて下衣の引っ掛け位置を調整することができる。なお、このような高さ調整手段を設けないようにしてもよい。
【0081】
また、本実施形態では、可動フック部56が収納位置となるように吊下ワイヤー49を付勢する付勢手段を、竿体30内を長手方向に沿って移動自在とされた錘部材48としている。従って、例えば、渦巻きばね等によって吊下ワイヤー49を巻取付勢する付勢手段と比べてフック保持ケース50が大型化せず、竿体30の先端部に設けられるフック保持ケース50を小型化することができ、また、簡易な構造とできる。
また、本実施形態では、錘部材48にコロ48cを設けているので、当該錘部材48を竿本体31内においてスムーズに移動させることができる。
なお、この付勢手段としては、竿体30内を長手方向に沿って移動自在とされた錘部材48に限られない。例えば、フック保持ケース50に、吊下ワイヤー49を巻き取る巻取ドラム等を設け、この巻取ドラムを巻取方向に付勢する渦巻きばね等のばね部材を付勢手段として設けるようにしてもよい。この場合は、上記した使用位置において可動フック部56が停止するように適宜のロック機構等を設けるようにしてもよい。
【0082】
さらに、本実施形態では、固定フック部53を、フック保持ケース50に収納された収納位置とフック保持ケース50から突出した引掛可能位置とを変位自在としている。従って、固定フック部53を使用しない際にはフック保持ケース50に収納でき、固定フック部53が邪魔になるようなことを防止でき、また、見栄えを向上させることができる。
さらにまた、この固定フック部53は、上記のように、可動フック部56の収納位置から使用位置への移動に伴って、収納位置から引掛可能位置へと変位するので、使い勝手をより向上させることができる。この結果、可動フック部56を先に使用位置とし、吊下具3を可動フック部56に引っ掛ける使用態様が好ましく採用される。この場合には、固定フック部53に吊下具3を先に引っ掛ける場合と比べて、可動フック部56を収納位置から使用位置とする際に、固定フック部53に引っ掛けた吊下具3が邪魔にならず、使い勝手の良いものとなる。
【0083】
なお、本実施形態では、固定フック部53を、フック保持ケース50に回動自在に連結して、収納位置と引掛可能位置とを変位自在とした例を示しているが、このような態様に限られない。例えば、フック保持ケース50に対して前方に向けて出没するようにスライドすることで、収納位置と引掛可能位置とを変位自在とされた固定フック部としてもよい。
また、本実施形態では、可動フック部56の収納位置から使用位置への移動に伴って、固定フック部53を収納位置から引掛可能位置へと変位させる第1引掛部連動部を設けた例を示しているが、このような第1引掛部連動部を設けないようにしてもよい。
さらに、固定フック部53を収納可能とする態様に代えて、固定フック部53を常時、引掛可能位置乃至は物品引掛位置とする態様としてもよい。
【0084】
次に、本体10に設けられた小物引掛バー60及び小物引掛ベース20に設けられた小物引掛ブラケット26の具体的構成の一例について説明する。
小物引掛バー60は、本実施形態では、図5及び図12に示すように、収納位置における下側部位を回動支点として、本体10の小物引掛ベース20に回動自在に連結されている。また、小物引掛ベース20及び小物引掛バー60には、互いに係合し、小物引掛バー60を収納位置に保持する係合保持部27,64が設けられている。また、この小物引掛バー60の収納位置における下端部61が本体10内に押し込まれることで係合保持部27,64の互いの係合が解除され、小物引掛バー60が収納位置から使用位置に向けて変位する構造とされている。このような構成とすることで、小物引掛バー60を収納位置から使用位置に容易に変位させることができる。
【0085】
本実施形態では、小物引掛バー60を、収納位置における上下方向に少許の移動が可能なように小物引掛ベース20に連結している。図例では、小物引掛バー60の下側部位に、収納位置における上下方向に沿う長孔63を設け、この長孔63に、上記した連結軸25を挿通して、小物引掛バー60を上下方向に少許の移動を可能としている。なお、このような態様に代えて、小物引掛バー60に固定的に連結軸を設け、小物引掛ベース20側に、この連結軸の上下方向への移動を許容するガイド孔やガイド溝等を設ける態様としてもよい。
【0086】
小物引掛バー60を収納位置に保持する係合保持部の一方は、収納位置とされた小物引掛バー60の回動支点(連結軸25、長孔63)の上方側かつ後方側に位置するように設けられ、小物引掛バー60の変位軌跡に沿わせるようにして傾斜状に形成された係合保持突片27とされている。本実施形態では、この係合保持突片27を、小物引掛ベース20に固定された小物引掛ブラケット26に設けている。この係合保持突片27は、図12に示すように、小物引掛ベース20の拡開状に形成された一方の側板部24から斜め前上方に向けて突出するように傾斜状に形成されている。
【0087】
また、この小物引掛ブラケット26の係合保持突片27の下方側には、図12に示すように、小物引掛バー60の使用位置を保持する規制突片28が前方に向けて突出するように設けられている。これら係合保持突片27及び規制突片28は、切り起こし加工等によって小物引掛ブラケット26に設けられている。
また、小物引掛ブラケット26には、当該小物引掛ブラケット26が固定された一方の側板部24とは異なる他方の側板部24に対面するように配設され、連結軸25の上記した他端部を支持する軸受孔を有した軸片部が設けられている。この軸片部は、小物引掛ベースカバー29の前板部の内側面に沿うように配設される(図4(a)及び図5(b)参照)。
【0088】
小物引掛バー60を収納位置に保持する係合保持部の他方は、係合保持突片27を受け入れる係合保持凹溝64とされており、本実施形態では、小物引掛バー60の下側部位に設けられている。この係合保持凹溝64は、図12(a)に示すように、収納位置とされた小物引掛バー60の回動支点(連結軸25、長孔63)の上方側かつ後方側に位置するように設けられ、小物引掛バー60の変位軌跡に沿わせるようにして傾斜状に細長状に形成されている。また、この係合保持凹溝64は、小物引掛バー60の収納位置における斜め後下方側に向けて開口しており、この開口を介して小物引掛ブラケット26の係合保持突片27を受け入れる構成とされている。
この小物引掛バー60の基端(収納位置における下端)には、小物引掛ブラケット26の規制突片28に当接するストッパー片62が設けられている。
また、この小物引掛バー60の先端部(収納位置における上端部)には、図12(c)に示すように、使用位置において上方に向けて開口する引掛凹部65が設けられている。このような引掛凹部65を設けることで、小物4を安定的に引っ掛けることができる。
【0089】
この小物引掛バー60を収納位置から使用位置とする際には、図12(a)に示すように、小物引掛バー60の収納位置における連結軸25よりも下側の下端部61を本体10内に押し込む。これにより、図12(c)に示すように、小物引掛バー60が連結軸25廻りに回動しながら、手前側に向けて回動し、使用位置となる。この際、小物引掛バー60は、係合保持凹溝64に挿入された小物引掛ブラケット26の係合保持突片27の案内作用を伴って、回動支点を変位させるようにして連結軸25に対して少許、上方に移動しながら、使用位置に向けて回動する。また、この小物引掛ブラケット26に対する小物引掛バー60の移動に伴って、これらの係合保持凹溝64及び係合保持突片27の互いの係合が解除される。
【0090】
使用位置とされた小物引掛バー60は、小物引掛ブラケット26の規制突片28にストッパー片62が当接し、その使用位置が保持される。なお、小物引掛バー60の使用位置の保持態様としては、他の保持態様を採用するようにしてもよい。
一方、小物引掛バー60を使用位置から収納位置とする際には、小物引掛バー60を収納位置側に向けて回動させ、係合保持凹溝64に、小物引掛ブラケット26の係合保持突片27を受け入れさせるようにして係合させる。これにより、小物引掛バー60が収納位置で保持される。
【0091】
なお、使用位置とされた小物引掛バー60と本体10との連結角は、小物4を安定的に引っ掛けが可能なように、70度〜90度程度としてもよく、図例では、80度程度とした例を示している。
また、この小物引掛バー60は、上記同様の金属系材料や硬質の合成樹脂系材料等から形成するようにしてもよい。また、各図に示すように、低コスト化や軽量化を図る観点等から適宜、肉盗み状の凹部を両側面に設けたものとしてもよい。
【0092】
上記のように、本実施形態では、小物引掛バー60の収納位置を保持する係合保持部を、傾斜状の係合保持突片27と係合保持凹溝64としている。従って、小物引掛バー60の収納位置を安定的に保持することが可能でありながらも、上記のようにスムーズに小物引掛バー60を使用位置に向けて変位させることができる。なお、本実施形態では、傾斜状の係合保持突片を本体10(小物引掛ベース20)側に設け、傾斜状の係合保持凹溝を小物引掛バー60に設けた例を示しているが、これらを逆側に設ける態様としてもよい。また、小物引掛バー60の収納位置を保持する係合保持部としては、図例のような形状とされたものに限られず、小物引掛バー60の収納位置における下端部61が本体10内に押し込まれることで互いの係合が解除されるものとしてもよい。
【0093】
また、本実施形態に係る引掛装置1では、収納位置とされた小物引掛バー60の下端部61を本体10内に押し込むことで使用位置に向けて変位させることができるので、小物引掛バー60を使用位置にするための把手や操作片等の操作部を設ける必要がない。従って、上述のように、小物引掛バー60の収納位置における前面60aを、本体10(小物引掛ベースカバー29)の前面29aと略同一平面状となるように本体10に収納し得る構造とできる。
【0094】
なお、本実施形態では、本体10に基端部が連結された小物引掛部材として、角柱状の小物引掛バー60を例示しているが、丸棒状やフック状、さらには平板状の形状とされた小物引掛部材を採用するようにしてもよい。また、本実施形態では、小物を主に引っ掛ける小物引掛部材とした例を示しているが、比較的に大きな物品を引っ掛け得る引掛部材としてもよい。
また、本実施形態では、複数の小物引掛バー60を使用位置において本体10に対して斜め左右方向に互い違いに突出するように本体10の長手方向に沿って間隔を空けて設けた例を示しているが、これらを同じ方向(例えば、前方のみ)に突出するように設けるようにしてもよい。この場合は、小物引掛バー60に引っ掛けられる物品同士が干渉しないように、小物引掛バー60を長手方向に沿って設ける間隔を比較的に大きくするようにしてもよい。また、この場合は、本体10を適宜、変形するようにすればよい。
さらには、このように複数の小物引掛バー60を設ける態様に代えて、単一の小物引掛バー60を設ける態様としてもよい。この場合は、本体10を適宜、変形するようにすればよい。
【0095】
また、本実施形態では、小物引掛バー60の収納位置を保持する係合保持部として、小物引掛バー60の収納位置における下端部61が本体10内に押し込まれることで互いの係合が解除されるものとした例を示しているが、このような態様に限られない。例えば、上記した竿体30の収納位置の保持態様等を適宜、変形して採用するようにしてもよい。
さらに、本実施形態では、小物引掛バー60を、使用位置と収納位置とを変位自在とした例を示しているが、常時、使用位置(引掛位置)において保持される態様としてもよい。
さらには、このような小物引掛バー60を本体10に設けないようにしてもよい。この場合は、本体10を適宜、変形するようにすればよい。
また、本実施形態では、竿体30の先端部に、フック保持ケース50並びにこれに保持される固定フック部53及び可動フック部56を設けた例を示しているが、これらを設けないようにしてもよい。
【0096】
さらに、本実施形態では、本体10の下側部位に、竿体30の基端部を連結した例を示しているが、例えば、本体10の上端部等の上側部位に竿体30の基端部を連結するようにしてもよい。つまり、基端側が上方側、先端側が下方側となるように、使用位置において竿体30を傾斜状に保持し得る態様としてもよい。この場合は、例えば、竿体30の基端部や本体10の連結軸、これらの周囲等に、紐状部材やリンクアーム等を設け、これを最下段連動部45に連結して、竿体30の収納位置から使用位置への変位に連動させて最下段連動部45をスライドさせ得るような態様としてもよい。
さらにまた、本実施形態では、本体10を壁面2に設置した例を示しているが、例えば、天井面等に設置するようにしてもよい。この場合は、上記同様、基端側が上方側、先端側が下方側となるように、使用位置において竿体30を傾斜状に保持し得る態様としてもよい。
さらに、このように竿体30を、使用位置と収納位置とを変位自在とする態様に代えて、常時、傾斜状に保持乃至は配設する態様としてもよい。この場合は、上記のような長尺の本体10を設けずに、竿体30の基端部を支持する固定ブラケット等の固定具を設け、これを壁面や天井面等に固定する態様としてもよい。
【符号の説明】
【0097】
1 引掛装置
2 壁面
3 ハンガー(物品)
10 本体(取付本体)
16 回転係止駒(途中保持機構)
30 竿体
30a 竿体の使用位置における上側面(竿体の上側面)
34 途中保持係合部(途中保持機構)
40 引掛フック(引掛部)
41 羽根状引掛片
41a 外側表面
42 連結片
45 最下段連動プレート(最下段連動部)
46 連動プレート(スライド体、連動部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜状に配設される竿体と、
前記竿体の上側面から突出しないように配置される引掛不能位置と前記竿体の上側面から突出して物品の引っ掛けが可能な引掛可能位置とこの引掛可能位置からさらに突出した物品引掛位置とを変位自在とされ、前記竿体の長手方向に沿って間隔を空けて設けられた複数の引掛部と、
下段側の引掛部の前記物品引掛位置への変位に伴って、この引掛部に隣接する上段側の引掛部を前記引掛不能位置から前記引掛可能位置へと変位させる連動部と、
を備えていることを特徴とする引掛装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記竿体は、壁面に設置される取付本体に下端部が回動自在に連結され、この取付本体に沿うように配置される収納位置及び前記傾斜状に配設される使用位置で保持される構造とされており、
前記竿体の前記収納位置から前記使用位置への移動に伴って、前記複数の引掛部のうちの最下段の引掛部を前記引掛不能位置から前記引掛可能位置へと変位させる最下段連動部を備えていることを特徴とする引掛装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記竿体を、前記収納位置と前記使用位置との間の途中位置で保持する途中保持機構を備えていることを特徴とする引掛装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項において、
前記引掛部は、前記竿体に回動自在に連結されている一方、
前記連動部は、隣接する引掛部間に位置するように前記竿体内にスライド自在に収容されたスライド体とされており、
下段側の引掛部の前記物品引掛位置への回動を伴って、この引掛部の上側に配設された前記スライド体がスライドすることで、隣接する上段側の引掛部が前記引掛不能位置から前記引掛可能位置へと回動する構造とされていることを特徴とする引掛装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記引掛部は、前記竿体が前記傾斜状に配設された状態で、前記引掛不能位置を維持する方向に向けて自重によって付勢されていることを特徴とする引掛装置。
【請求項6】
請求項4または5において、
前記引掛部は、前記竿体内において該竿体に回動自在に連結される連結片と、この連結片の回動に伴って前記竿体の上側面に対して上端側が離接するように起倒する羽根状引掛片とを有し、前記引掛不能位置では、この羽根状引掛片が前記竿体の上側面と略平行となるように倒伏状態とされる一方、前記引掛可能位置及び前記物品引掛位置では、この羽根状引掛片の外側表面と前記竿体の上側面とのなす角が鋭角となるように起立状態とされることを特徴とする引掛装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−223423(P2012−223423A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94859(P2011−94859)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】