説明

弦楽器のトレーニング器

【課題】本発明は、バイオリンなどの弦楽器のトレーニングを行う器具に関するもので、手や指の関節の屈曲角度を拡大でき、効果的な運指練習を行うことのできる弦楽器用の運指練習具を提供するものである。
【解決手段】指板の凹部に指先を当接させ、さらに凹部8に指の側面を当接させる。任意の指の間隔や角度で、指を列置して完全固定でき、そして本体26の案内体27に連結されてバイオリンの理想的な演奏の疑似動作をすることが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビオラやバイオリン等の弦楽器の運指を練習するため弦楽器のトレーニング器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
弦楽器の演奏では、楽譜の運指指示に従って弦の所定場所(被運指部)を正確に又滑らかに運指することが求められる。そのためには各指が演奏に適した形を形成できるような指の各部関節の柔軟さが必要である。
【0003】
このような運指の練習具として、特開2007−079520公報、特開2008−040439公報があった。 これらのトレーニング器では指を所定の形にして運指するトレーニングが可能であり、一応の効果があった。しかし、特開2007−079520のトレーニング器では、指仕切りの位置や角度が自在に無段階に変える事ができるが、指の側面だけが当接する構造であったため、図3に示すように指先の位置を1線上に列置しにくく、効果的な運指練習を行い難い問題があった。また、特開2008−040439公報については、指板上に設けられた凹部で指を位置決めし一線上に列置できるが、指の間隔の調節ができず効果的な運指練習を行い難い問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−079520号公報、特開2008−040439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記の問題点を改善して開発されたものであり、バイオリンなどの弦楽器の押弦の時の手や指の関節の屈曲角度を拡大でき、効果的な運指練習を行うことのできる楽器のトレーニング器の提供を課題とするものである。又の理想的な演奏の押弦状態の感触がバイオリンの指板全域で疑似体験できる練習効果を一層向上させることのできる弦楽器のトレーニング器の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
バイオリンなどの弦楽器のネック模った指板1と前記指板1に設置された指仕切2と前記指板1に前記指仕切2設置面に凹部8を設け指仕切2の間に指を入れてさらに設置面の凹部8に指を当てて弦を楽に押さえるためのストレッチングができるようにする。
【0007】
また指仕切2を複数個設け前記複数の指仕切2の全域に渡って凹部8を形成し、凹部8に指を当接させてトレーニングを行う。
【0008】
また凹部8は複数列設け、指の位置を変えてトレーニングする。
【0009】
また指仕切2を移動させ間隔や角度を変える位置調節手段を備け、指仕切2の移動に伴って指位置が変化し、その位置での凹部8に指を当接させてトレーニングをする。
【0010】
また凹部8と指板1とを貫通する長孔3を設け前記凹部8と指板1をネジなどで固定できるようにする。
【0011】
また凹部の高さが異なるようにして、各指の指位置を異なる高さで固定してトレーニングする事も出来る。
【0012】
また、指仕切19を指板の凹部25がある位置以外に設置して指仕切20に指板19の凹部25のある面に対して傾斜角度を付けるようにする事もできる。
【0013】
またバイオリンなどの弦楽器のネックを模った指板1を傾斜角度を変えずに水平に回転する方向転換板16を連結させてトレーニングする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のトレーニング器は、指板上に設置された指仕切2とこの指仕切3設置面の指板1部分に凹部を形成したので、弦を押さえるトレーニングの際に指の側面を指仕切2で固定させ、さらに指の先端部を凹部8で固定させて位置決めをすることが出来るので正しい演奏時の指位置を覚えこませる事が出来、上達を早める事が出来る。また複数の指仕切2の両側の全域にわたって凹部8を形成したので加工が容易で指位置が自由に配置できる。また、凹部8を複数列設ける事により、バイオリン等の複数の弦を想定して指位置を変化させながらトレーニングできる。また、指仕切2位置や角度の調節可能にした場合にも、凹部の形成を変更することなく対応が可能である。
【0015】
本発明の弦楽器のトレーニング器は、指の側面、指の先端部を、凹部8、指仕切2で、固定できるので緻密に指位置をコントロールし、体感によって指の筋肉に覚え込ませる事が出来る。さらに指仕切2は、自由に位置や角度を調節できる構成であるので、指間を所要に広げる運指練習を通して、手や各指の筋肉を、弦楽器等の演奏に最適化できる。又、運指練習の繰り返しによって、各々の指の各部関節の柔軟性を増すと共に指の筋肉の強化や持久力の向上が図られる。
【0016】
図8に示すように、指の側面の指板19に対する角度を調節できるので、指の関節をより細かくストレッチで演奏時の細かい指先位置の微調節が出来るようになる。
【0017】
回転方向転換板16を使用し、手を回転させれば指の各関節が屈曲角度を拡張する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の弦楽器のトレーニング器の実施例示す斜指図。
【図2】同実施例を示す平面図。
【図3】同指板A−A断面図。
【図4】同実施例の指板の使用状態を示す図。
【図5】同実施例を用いて演奏のトレーニングを示す図。
【図6】本発明の弦楽器のトレーニング器の他の実施例を示す斜指図。
【図7】同実施例を示す図。(図6のE矢視図)
【図8】同実施例の指板の使用状態を示す図。
【図9】同実施例を示すD−D断面図。
【図10】本発明の弦楽器のトレーニング器の他の実施例の方向転換板を示す図。
【図11】同実施例を示す平面図。(図10のF矢視図)
【図12】同実施例を示す背面図。(図10のG矢視図)
【図13】同実施例を示す断面拡大図。(図11のB−B断面図)
【図14】同実施例を示す断面拡大図。(図11のC−C断面図)
【図15】同実施例の方向転換板16の使用状態を示す図。
【図16】本発明の弦楽器のトレーニング器の他の実施例の方向転換板を示す図。
【図17】図16の使用状況を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
バイオリンを演奏する際、左腕を湾曲させて、さらに左手をバイオリンのネックの方に捩じって演奏する。演奏動作のために関節を柔らかくできると共に、指の筋肉強化や持久力の向上を図ることができるトレーニング器を具体的に説明する。
【0020】
図1において、バイオリンのネックの一部を模った指板1に指仕切2a,2b,2c,2dを設け、図2〜図3に示すようにこの指仕切2に設けられたネジ孔7と指板1に設けられた長孔3を貫通したネジ5をナット4で締結することにより指仕切2は指板1に固定されている。指仕切2の取付面には凹部8が形成されており、この凹部8は図2に示すように複数の指仕切2a〜2dまでの取付幅全域に連なって設けられている。凹部8は指先の一部分が入る程度の大きさであり、指先を挿入することにより、指の位置決めを行う事ができる。6は案内体挿入孔であり、後述の案内体に挿入することによってトレーニングを行う。複数の指仕切2は、ナット4を緩める事により位置を変更することができ、また指仕切2間の間隔を変える事ができる。この場合は長孔3と凹部8とは連続して設けられているので、指仕切2の移動にも適用できる。指板1に着色や目印等で、音の変化の間隔を付けておくこともできる。
【0021】
図2は指板1を上から見た(H矢視)図である。長孔3、凹部8が指板の全域に設けられている。
【0022】
図3は、図2のA―A断面図である。指板1の長孔3と、指仕切2のネジ孔5をネジ5に貫通させナット4で固定する。従って指仕切2の位置や角度を調節した後固定する事ができる。
【0023】
図4は指板1に指をあてた図である。指板1の凹部8に指先が当たり、指仕切2に指の側面が当たる。従って指先を所定の間隔や高さに拡げる事が出来、加えて凹部8に指を挿入して当接させるので、2本から4本の指の先端部を一線上に列置することが出来る。なお、実施例ではナット4を蝶ねじの構成にしたが、通常の円形や6角形のナットでもよい。
【0024】
なお長孔3と凹部8は同一幅の寸法にしておくと、加工が容易にできる。凹部8の深さはトレーニングする人の指先が入って引っかかる程度の物が好ましく、指が接触する部分は面取りをして指を傷つけないようにする事が好ましい。凹部8は、複数の指仕切2の両端間に連続して設ける事が望ましい。
【0025】
図5は、指板1を用いてトレーニングしている状態を示した図である。バイオリンを模った本体26に取り付けられた案内体27に指板1の案内体挿入孔6を挿入して取り付け、左手指を複数の指仕切2の間に入れて、指先を凹部8に当接させて位置決めをして、手を前後に移動させて、指板1をスライドさせてトレーニングを行う。バイオリンの理想的な演奏フォームは左手指をバイオリンのネック方向に楽に湾曲させる事ができないと難しい。本発明は指の側面を指仕切2で理想的な演奏フォームへ矯正でき、その上で弦に見立てた凹部8に列置することができる。従って、実際のバイオリン演奏における理想的な疑似動作ができる。
【0026】
図6は本発明の他の実施例を示す図であり、指板19は凹部25が設けられた面に対して側面に指仕切20を設けたものである。指仕切20は側面に設けられた長孔21により図9に示すようにネジ22で固定させる。指仕切20は図7に示すようにそれぞれ角度を変えて取り付ける事ができ、この状態で指を入れてトレーニングを行うと、図8に示すように指の角度がそれぞれ変わった状態でトレーニングを行う事ができる。指仕切を傾斜させる事によって左手指を捩じるストレッチをすることができる。この動作を繰り返しトレーニングすれば、手の先端部分が数ミリ単位で押さえ位置をコントロールできるようになり演奏技術が上達する。
凹部25が設けられた面と長孔21を有する側面とは90度程度の角度を有する物が制作上容易であるが、トレーニング者の好みによって角度を変更して製作しても良い。
【0027】
図8に示すように、指の側面の指板19に対する角度を調節できる。
【0028】
図9は、指板19に指仕切20をセットした時の断面図である。
【0029】
図10〜図14は方向転換板16の構成を示した図であり、指板1全体を基面9に取り付けて回動させようとするものである。図12に示すように基面9に指板1がL字型基軸14で取り付けられている。基面9には図11と図14に示すように回転板A10と回転板B11と軸心13とが一体に取り付けられており、全体が基面9上を摺動して回動する。回転板A10にl字型基軸14がネジC12で固定されており指板1を図12の矢印方向に回動させる事ができる。
【0030】
図12は、方向転換板16の裏側を示す図である。回転板A10が基面9に接して軸回転する。
両回転板A10に回転可能にL字型基軸14をネジC12で固定する。L字型基軸14の所定の場所に指板1を固定する。
【0031】
図13は、方向転換板16に指板1を取り付けたB−B断面図である。回転板A10は、軸芯
13を中心に軸回転する。図14は、方向転換板16に指板1を取り付けたC−C断面図である。L字型基軸14が、回転板の回転に伴って回転する。案内体挿入孔15に案内体27を挿入してバイオリンの演奏時のフォームで、トレーニングする。
【0032】
図15は、方向転換板16に指板1を連結して、トレーニングしている手の状況を示す図である。
指を弦に見立てた凹部8に入れる事で長手方向に指を直線状に列置でき、高さも所定の場所に揃える事ができる。さらに加えて指仕切2で、指の側面を押し所定の場所に置く事が可能である。
その状態で、方向転換板16で手を回転させ関節の筋肉に負荷を掛けストレッチングをする。
【0033】
図16、図17は、指板1の摺動方向をスライドレールを用いて所定の角度に変化させたものであり、図17に示す矢印のように上下に往復させる。また一定方向に往復させるだけでは同じ筋肉ばかりストレッチされ、ストレッチの必要なアングルには個人差があり、個人の必要性に適応して摺動方向を変更する事も可能である。
【0034】
又、回転板を用いた円運動とスライドレールを用いた直線運動の組合わせも可能である。
【符号の説明】
【0035】
1、指板
2、指仕切
3、長孔
8、凹部
9、基面
10、回転板
13、軸芯
16、方向転換板
19、指板
20、指仕切
21、長孔
25、凹部
26、本体
27、案内体
28、スライドレール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオリンなどの弦楽器のネックを模った指板と、前記指板上に設置された指仕切と、前記指板の前記指仕切設置面に設けられた領域に設けられた凹部を備え、指仕切間の凹部に指を入れて弦の押さえ方を練習する弦楽器のトレーニング器。
【請求項2】
前記指仕切を複数個有する請求項1記載の弦楽器のトレーニング器。
【請求項3】
凹部は複数列設けられた請求項1〜2のいずれか記載の弦楽器のトレーニング器。
【請求項4】
指仕切を移動させ間隔を変える位置調節手段を備えた請求項2〜3のいずれか1項記載の弦楽器のトレーニング器。
【請求項5】
凹部は指板を貫通する長孔で形成される請求項1〜4のいずれか1項に記載の弦楽器のトレーニング器。
【請求項6】
凹部の高さが異なる事を特徴とする請求項2〜5記載の弦楽器のトレーニング器。
【請求項7】
バイオリンなどの弦楽器のネック模った指板と前記指板以外の面に設けられた指仕切と前記指板に凹部を備え指仕切間に指を入れて弦の押さえ方を練習する弦楽器のトレーニング器。
【請求項8】
バイオリンなどの弦楽器のネックを模った指板を傾斜角度を変えずに水平に回動または所定方向または水平回動と所定方向の組み合わせた方向に転換する方向転換板を有する請求項1〜4記載の弦楽器のトレーニング器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−137627(P2012−137627A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290181(P2010−290181)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(505090562)