説明

弱毒化組換えヒトサイトメガロウイルス

【課題】ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)の複製能を抑制し、弱毒化ワクチンを提供する。
【解決手段】MIE遺伝子プロモーターのシス作用性エレメント(crs)配列の一部に突然変異を有し、これによってウイルス複製が不能ではないが抑制されていること、および野生型の表現型と同一または本質的に同一であることを特徴とする、弱毒化組換えヒトサイトメガロウイルス、このウイルスを含むワクチン、ならびに弱毒化組換えHCMVの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弱毒化組換えヒトサイトメガロウイルス、該ウイルスの作製方法、ならびに該ウイルスを含むワクチンを提供する。
【背景技術】
【0002】
ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)は、β−ヘルペスウイルス亜科に属するメンバーであり、多くのヒトに無症候的に感染し、健常人に対しては臨床障害をもたらす可能性は少ないが、AIDS患者、臓器移植患者などの免疫抑制患者、乳幼児、高齢者、重症患者などの抵抗性が低下したヒトに対し、肺炎、肝炎、網膜炎、胃腸炎などを含む広範な疾患を引き起こす。しかし、HCMV感染について、その潜伏期から発病へスイッチする機序は明らかになっていない(非特許文献1および2)。
【0003】
HCMVゲノムは、約230キロベース(kb)の二本鎖DNAからなり、エンベロープによってパッケージングされ、それによってHCMVの感染性粒子が形成される。HCMV遺伝子は、前初期(IE;immediate−early)遺伝子、初期(E;early)遺伝子および後期(L;late)遺伝子と称する3つの種類の遺伝子群に分類される。特に、IE遺伝子は、該ウイルスが宿主細胞に入った後で発現され、MIE(主要前初期;major immediate−early)プロモーターを含むエンハンサー内に特異的シス(cis)作用性エレメントを必要とする(非特許文献3)が、このエレメントの働きは不明であった。IE遺伝子からは、IE1(UL123)およびIE2(UL122)と称する2つのIE転写体が転写される。ヒトCMVのIE1およびIE2遺伝子はそれぞれIE72タンパク質およびIE86タンパク質をコードしており、これらのタンパク質は、後続のウイルス遺伝子発現の調節のために重要である。すなわち、IE72タンパク質は、低い感染多重度(MOI)で効率的なウイルス複製に寄与する(非特許文献4および5)。また、IE86タンパク質は、初期のウイルス遺伝子発現に必須である(非特許文献6)。
【0004】
MIEプロモーターは、転写開始部位を+1とするとき、−28から−22の間にTATAボックス、−15(または−13)から+1の間にシス作用性エレメント配列、および+1から+7の間にイニシエーター様配列を含む(非特許文献7)。IE86タンパク質は、DNAの配列および位置依存的な様式で上記シス作用性エレメントに結合することによって、MIEプロモーターを負に自己調節する(非特許文献8〜10)。IE86タンパク質はまた、DNA鋳型のマイナーなグローブコンタクトを利用してダイマーとしてシス作用性エレメントに結合する(非特許文献11および12)。さらに、MIEプロモーターのシス作用性エレメント特異的抑制には、IE86タンパク質のカルボキシル末端部分のみが必要であることも知られている(非特許文献13)。
【0005】
本発明者らは、今回、天然型と異なる配列によって置換されたシス作用性エレメントを含む組換えHCMVを構築し、シス作用性エレメントの機能を検討し、その結果、シス作用性エレメントが、TBP−TFIIB−DNA複合体の安定化と、IEプレmRNAの有効なスプライシングとによって、ヒトCMV感染の初期段階で、主要IE遺伝子の転写を容易にすることを見出した。シス作用性エレメントは感染初期で主要IE遺伝子発現を促進したのち、感染後期で、主要IE遺伝子転写の抑制のためにIE86タンパク質と結合するので、以下においては、このシス作用性エレメントをシス調節配列(crs;is egulatory equence)と称する。
【0006】
本発明者らはまた、今回、HCMVを弱毒化したウイルス粒子がワクチンとして使用できることを見出したが、HCMV粒子のワクチンとしての使用については、従来、例えばHCMV感染後に遊離されるウイルス粒子であって、ウイルス性DNAおよびカプシドを含有せず、かつウイルス性グリコプロテインの変異体を含む該ウイルス粒子をワクチンとして使用することが開示されている(特許文献1)。
【特許文献1】特表2002-537830号公報
【非特許文献1】Britt, W.J.およびAlford, C.A. (1996) In B.N. Fields, D.M. Knipe およびP.M. Howley(編), Fields Virology, 3版, Lippencott-Raven publishers, Philadelphia, Pa.:2493-2523, 1981-2010
【非特許文献2】Ho, M. (1991) Plenum Publishing Corp., New York
【非特許文献3】Isomura, H.ら(2005) J. Virol. 79:9597-9607
【非特許文献4】Gawn, J.M.およびGreaves, R.F. (2002) J. Virol. 76:4441-4455
【非特許文献5】Greaves, R.F.およびMocarski, E.S. (1998) J. Virol. 72:366-379
【非特許文献6】Marchini, A.ら(2001) J. Virol. 75:1870-1878
【非特許文献7】Macias, M.P.ら(1996) J. Virol. 70:3628-3635
【非特許文献8】Cherrington, J.ら(1991) J. Virol. 65:887-896
【非特許文献9】Liu, B.ら(1991) J. Virol. 65:897-903
【非特許文献10】Pizzorno, M.C.およびHayward, G.S. (1990) J. Virol. 64:6154-6165
【非特許文献11】Waheed, Iら(1998) Virology 252:235-257
【非特許文献12】Lang, D.ら(1992) Nucleic Acids Res. 20:3287-3295
【非特許文献13】Hernandez, N. (1993) Genes Dev. 7:1291-1308
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、複製能が抑制された組換えヒトサイトメガロウイルス(HCMV)を提供することである。この組換えHCMVは、HCMV感染症を治療または予防するためのワクチンとして利用可能である。
【0008】
本発明の別の目的は、上記組換えHCMVを作製する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、HCMVゲノム上のMIE遺伝子プロモーターのシス作用性エレメント(crs)配列の一部に突然変異を導入したとき、野生型と同一の表現型を有する一方で、野生型と比べて複製能が完全には抑制されないが1/10以下に抑制されるという特徴を有する、弱毒化ワクチンとして使用可能な組換えHCMVを見出した。
【0010】
したがって、本発明は、以下の特徴を有する。
本発明は、第1の態様において、MIE遺伝子プロモーターのシス作用性エレメント(crs)配列の一部に突然変異を有し、これによってウイルス複製が不能ではないが抑制されていることを特徴とする、弱毒化組換えヒトサイトメガロウイルス(HCMV)を提供する。
【0011】
本発明の実施形態において、前記crs配列が、HCMVの野生型crs配列との同一性が約30〜約80%である突然変異を有するものである。
【0012】
本発明の別の実施形態において、前記crsの突然変異が、HCMV感染初期で、HCMVのIE86タンパク質の発現の低下を引き起こすものである。
【0013】
本発明の別の実施形態において、前記crsの突然変異が、HCMV感染初期で、HCMVのIE72タンパク質の発現の低下をさらに引き起こすものである。
【0014】
本発明の別の実施形態において、前記crsの突然変異が、マウスCMVのcrs配列によるHCMVの野生型crs配列の置換に基づくものである。
【0015】
本発明の別の実施形態において、前記マウスCMVのcrs配列が、5'−cccagcgtcggtaccg−3'(配列番号1)を含む。
【0016】
本発明の別の実施形態において、前記ウイルス複製が、HCMVの野生型と比べて1/10〜1/50またはそれ以下に抑制されている。
【0017】
本発明はまた、第2の態様において、上記の弱毒化組換えヒトサイトメガロウイルスを含むことを特徴とする、HCMV感染症を治療または予防するためのワクチンを提供する。
【0018】
本発明の実施形態において、前記ワクチンは賦形剤をさらに含む。
本発明の実施形態において、前記ワクチンはアジュバントをさらに含む。
【0019】
本発明はまた、第3の態様において、HCMVゲノムのMIE遺伝子プロモーターのシス作用性エレメント(crs)配列の一部に突然変異を導入すること、およびウイルス複製が不能ではないが抑制されている、かつ、野生型の表現型と同一または本質的に同一である突然変異ウイルスを選択し、該ウイルスを回収することを含む、弱毒化組換えヒトサイトメガロウイルスの作製方法。
【0020】
本発明の別の実施形態において、前記突然変異が突然変異誘発法によって導入される。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、HCMVのMIE遺伝子プロモーターのシス作用性エレメント(crs)配列の一部に突然変異を導入することによって、HCMVの複製能を著しく抑制できる。本発明の組換えHCMVは、野生型と比べて表現型が同一または本質的に同一である一方、ウイルス複製能が約1/10以下に抑制されているため、感染性や病原性または再活性化のリスクが非常に低い弱毒化HCMVである。また、ウイルス複製が完全に不能となっていないため、弱毒化ウイルスの産生も可能であることから、ワクチンとして使用したときに、免疫誘導が持続的となり、効率的な免疫化が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本明細書で使用する用語は、以下の定義を包含する。
「ヒトサイトメガロウイルス」または「HCMV」は、β−ヘルペスウイルス亜科に属するウイルスの1種であり、本発明ではすべての天然型およびそれらの変異型、ならびにそれらのすべての型(type)およびそれらのすべての亜型(subtype)を包含するものとする。HCMVのゲノムは約230kbの二本鎖DNAからなり、その全ゲノム配列は、例えばGenBank等の配列データベースから入手可能である(例えば、GenBank登録番号:NC_001347;AY315197;AY446894など)。さらに、本明細書で使用される「組換えHCMV」は、MIEプロモーター内のシス作用性エレメントの一部に突然変異を誘発させ、これによってウイルスの遺伝子型が変化する一方で、表現型は野生型と同一または本質的に同一である、遺伝子工学的に組換えられたウイルスである。
【0023】
「MIE遺伝子」は、HCMVが感染宿主細胞に入った後で転写、発現される遺伝子であり、この遺伝子からIE1(UL123)およびIE2(UL122)と称する2つのIE転写体が形成される。ヒトCMVのIE1およびIE2遺伝子はそれぞれIE72タンパク質およびIE86タンパク質をコードしており、これらのタンパク質は、後続のウイルス遺伝子発現の調節のために重要である。IE72タンパク質は、低い感染多重度(MOI)で効率的なウイルス複製に寄与する。また、IE86タンパク質は、初期のウイルス遺伝子発現に必須である。このため、HCMVのMIE遺伝子は、ウイルス複製の効率を決定する重要な役割を果たしていると考えられる(非特許文献4〜6)。
【0024】
HCMVの「MIEプロモーター」は、転写開始部位を+1とするとき、−28から−22の間にTATAボックス、−15(または−13)から+1の間にシス作用性エレメント(crs)配列、および+1から+7の間にイニシエーター様配列を含む(非特許文献7)。野生型のHCMV Towne株のcrs配列は、例えば5’−ctcgtttagtgaaccg−3’(配列番号2)である。
【0025】
「突然変異」なる用語は、野生型のHCMVのcrs配列について、その配列に置換、欠失、挿入、付加、あるいはそれらの組み合わせなどの変異が導入されることを意味する。本発明では、この突然変異の導入によって、組換えHCMVの複製能が約1/10以下に抑制される。
【0026】
「ウイルス複製が不能ではないが抑制されている」なる用語は、完全に複製不能にならない程度に、ウイルス複製が抑制されていることを意味する。これによって、組換えHCMVは、感染および病原性のリスクを大きく減弱させる一方で、ウイルスの産生が可能であるため、ワクチンとして使用できる。
【0027】
「弱毒化」なる用語は、ウイルスの毒性(すなわち、感染性および病原性)を減弱することを意味する。
【0028】
本明細書で使用される「同一性」なる用語は、HCMVの野生型と組換え型との間のcrs配列の同一性に関して使用される用語である。この用語は、野生型crs配列の全塩基数に対する、組換え型crs配列のうち野生型と同一の塩基数のパーセンテージである。
【0029】
以下において、本発明をさらに詳細に説明する。
1.弱毒化組換えHCMVの特性
本発明の弱毒化組換えHCMVは、上述したとおり、MIE遺伝子プロモーターのシス作用性エレメント(crs)配列の一部に突然変異を有し、これによってウイルス複製が不能ではないが抑制されていること、および野生型の表現型と同一または本質的に同一であることを特徴とする。
【0030】
本発明におけるcrsは、MIE遺伝子プロモーター内に存在し、具体的には、MIE遺伝子の転写開始部位(+1位)と-15位との間に位置する。野生型のヒトCMV(Towne)、サルCMVおよびマウスCMVの各crs配列は、それぞれ以下のとおりである(図1(a)参照)。
5’−ctcgtttagtgaaccg−3’(配列番号2)
5’−ctcgtttagggaaccg−3’(配列番号3)
5'−cccagcgtcggtaccg−3'(配列番号1)
ヒトとサルのcrs配列は、-6位の1塩基に違いがあるだけであるが、ヒトとマウスのcrs配列間には、9塩基の違いが存在する。
【0031】
後述の実施例で実証するように、野生型crs配列を突然変異すると、MIE遺伝子転写体のレベルが約1/10以下に顕著に減少することから、crsは、CMV感染の初期段階でMIEプロモーターからのMIE遺伝子の転写を容易にする(または、促進する)はたらきを有することが今回判明した。
【0032】
また、野生型crs配列を含むHCMVと、突然変異crs配列を含むHCMVを、初代ヒト包皮線維芽細胞(HFF)に感染し、該crs配列がプレmRNAのスプライシングに及ぼす影響を調べた結果、野生型crs配列を含むHCMVでは、MIE遺伝子のエクソン2とエクソン3の間およびエクソン3とエクソン4の間のプレmRNAのスプライス形態が高い割合で形成されるのに対して、突然変異crs配列を含むHCMVでは、逆に非スプライス形態が高い割合で検出された。このことから、MIE遺伝子の転写において、crsがプレmRNAのスプライシングに何らかの影響を及ぼしていることが判った。
【0033】
さらにまた、HCMVの野生型crsを含むMIEプロモーターにTFIIBタンパク質(すなわち、TATAエレメントのTBPの結合を安定化するタンパク質)が配列特異的に結合してMIE遺伝子の転写を開始するが、このときTFIIBは、TATAボックスを認識するTBP(TATA−binding protein)タンパク質と結合して複合体を形成するため、該転写を開始する時にはTBP−TFIIB−DNA複合体が形成される。今回、crsを含むTATAエレメントがTBP−TFIIB−DNA複合体の形成に対し2〜3倍高い親和性を示したことから、野生型crsはDNA鋳型上で該複合体の形成を安定化することが判明した。
【0034】
このように、HCMVの野生型crsは、感染の初期段階で、効率的なMIE遺伝子の転写とプレmRNAのスプライシングのための転写開始複合体の形成を容易にする機能をもつことが判った。
【0035】
したがって、HCMVの野生型crs配列に、その配列との同一性が約25〜約90%、好ましくは約30〜約80%、さらに好ましくは約30〜約50%、最も好ましくは約30%〜約45%となる範囲内で突然変異を導入するときには、HCMVの複製が約1/10以下、例えば約1/10〜約1/20またはそれ以下、あるいは約1/10〜約1/30またはそれ以下、あるいは約1/10〜約1/40またはそれ以下、あるいは約1/10〜約1/50またはそれ以下に抑制される。
【0036】
本発明において、突然変異は、好ましくは、HCMVの野生型crs配列(−15位〜+1位)の16塩基のうち2〜9個の塩基の変異を含むことができる。突然変異は、塩基の置換、欠失または付加(もしくは挿入)からなる変異である。塩基置換による変異の場合、野生型crs配列において、例えば、+1、−1、−2、−3、−5および−13位の塩基を保存しながら、それ以外の塩基を、C、T、GおよびAから選ばれる野生型と異なる塩基によって置換することができる。例えば、後述の実施例で例証するように、HCMVの野生型crs配列を、マウスCMVcrs配列(配列番号1)によって置換するときには、ウイルス複製が約1/10〜約1/20以下に低下した。これに対して、該野生型HCMVcrs配列を、サルCMVcrs配列(配列番号3;野生型HCMVcrs配列と1塩基の違い)によって置換したときには、野生型と同等の複製を示し、実質的な複製の抑制が認められなかった。
【0037】
本発明において、ウイルスの複製は、完全に不能になるように抑制されないが、感染後に非効率的なあるいはかなり遅い速度でのウイルス複製が起こる。これは、ウイルス複製に関与するIE86およびIE72タンパク質の発現レベルの対野生型の約1/2〜約1/5またはそれ以下の低下とも関係している。
【0038】
本発明の組換えHCMVは、上記のとおり、その複製が野生型と比べて約1/10以下、好ましくは約1/20またはそれ以下に抑制されているため、結果として感染性および病原性からなる毒性が著しく減弱、すなわち弱毒化されているという特徴を有している。これに加えて、本発明の組換えHCMVは、野生型と同一のまたは本質的に同一の表現型を有している。ここで、「本質的に同一」とは、組換えHCMVをワクチンとして使用したときに、その効能に影響を及ぼさない程度のマイナーな表現型の変化を含んでもよいことを意味する。それゆえに、本発明の組換えHCMVは、後述するように、HCMVに関連する疾患を予防または治療するために有効に使用可能である。
【0039】
2.弱毒化組換えHCMVの作製
本発明の組換えHCMVは、HCMVゲノムのMIE遺伝子プロモーターのcrs配列の一部に突然変異を導入すること、およびウイルス複製が不能ではないが抑制されている、かつ、野生型の表現型と同一または本質的に同一である突然変異ウイルスを選択し、該ウイルスを回収することを含む方法によって作製することができる。
【0040】
HCMVは、ヘルペスウイルス科βヘルペスウイルス亜科に属する、直径約180nm、約230kbpからなる二本鎖DNAウイルスである。HCMVの株には、AD169株,Towne株,Major株,BT1943株,Davis株,Merlin株,Toledo株,3157株,6397株,3301株などが知られている(Dolan,A.ら(2004)J.Gen.Virol.85:1301−1312;Chee,M.S.ら(1990)Curr.Top.Microbiol.Immunol.154:125−169)。HCMVは、ヒト線維芽細胞、例えばヒト包皮線維芽(HFF)細胞、ヒト胎児線維芽細胞などに感染することができる。
【0041】
本発明の組換えHCMVは、野生型HCMVのMIE遺伝子プロモーターのcrs配列の一部に突然変異を導入したゲノムDNAを、適当なベクターを利用して作製し、これを適当な宿主細胞に感染し、組換えウイルス粒子を回収することを含む手順によって作製することができる。
【0042】
突然変異は、例えば突然変異誘発法、好ましくはPCRを利用した部位特異的突然変異誘発法によって導入しうる。
【0043】
部位特異的突然変異誘発法は、例えば、野生型HCMVのMIE遺伝子プロモーターのcrs配列の一部に突然変異を導入し、それに隣接して野生型と同一の十分な長さの配列を配置したヌクレオチド配列を合成し、サブクローニングベクターに導入してサブクローニングすること、野生型HCMVゲノムDNAを含む人工染色体ベクター、例えば細菌人工染色体を作製すること、上記ヌクレオチド配列を人工染色体ベクターにアニーリングし、PCRを行ない、目的DNAを増幅することを含む(西郷薫および佐野弓子訳、Current Protocolsコンパクト版 分子生物学実験プロトコールI、丸善、1997年)。
【0044】
具体的な方法は以下のとおりである。
大腸菌内でバクテリオファージλ組換えタンパク質exo、betaおよびgamを発現するための迅速相同組換え系(Ellis, H.M.ら(2001) Proc. Natl.Acad.Sci.USA98:6742−6746)、ならびにHCMV のBAC (細菌人工染色体;acterial rtificial hromosome)DNA(Dunn,Wら(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.USA100:14223−14228;Lee, E−C.ら(2001)Genomics73:56−65;Borst,E−Mら(1999)J.Virol.73(10):8320−8329など)を使用して突然変異誘発を行うことができる。
【0045】
組換えのためのHCMVの二本鎖DNAは、カナマイシン耐性遺伝子などの薬剤耐性遺伝子と70bp程度の相同ウイルスDNA配列を含み、この耐性遺伝子には、34bpの最小FRT部位(配列番号4)をフランキングさせる。crs配列の突然変異体を作製するために、後述の実施例中の表1に記載のプライマー対として、BAC crs+FRTF、BACsimian crs+FRTR、BACmurine crs+FRTRおよびBACcrsmut+FRTRを使用し、PCRによる増幅を行う。PCR条件は、例えば、94℃2分の変性の1サイクル、94℃15秒の変性、55℃30秒のアニーリングおよび72℃5分の伸長の40サイクル、72℃7分または94℃2分の1サイクル、94℃2分、55℃2分および72℃2分の30サイクル、72℃7分の1サイクルからなる。DNAをフェノール−クロロホルムで抽出し、95%エタノールで沈澱する。
【0046】
残存する鋳型DNAを除くために、PCR産物を、制限酵素(DpnI)を用いて消化したのち、得られたDNA断片を、HCMV-BAC DNAを含むコンピテント大腸菌(例えばE coli DY380)中へエレクトロポレーション、リポフェクション、リン酸カルシウム法などの手法、好ましくはエレクトロポレーションを用いて形質転換する。エレクトロポレーションは、例えばBio−Rad Gene Pulser III(2.5kV,200Ωおよび25μF)またはBTX ECM 830 エレクトロポレーター(3kV,100μs,10パルス)を使用して行うことができる。
【0047】
カナマイシン耐性遺伝子を欠失するために、組換えHCMV-BAC DNAを大腸菌に形質転換する。また、リコンビナーゼを発現するプラスミドpCP20(Hahn,W.ら(2003)Virology307:164−177)を、組換えHCMV-BAC DNAを含む大腸菌(DH10B)に形質転換する。カナマイシン耐性遺伝子を含まないヒトCMV-BAC DNAを、アンピシリンおよびクロラムフェニコール含有のLBプレート上で選択する。
【0048】
HFF細胞を、GrahamおよびVan der Ebのリン酸カルシウム沈殿法(Graham,F.L.およびvan der Eb,A.J.(1973)Virology52:456−467)によって、プラスミドpSVpp71の存在中、上記の各組換えBACでトランスフェクションする。約10日後に、ウイルスプラークが出現し、100%細胞変性作用(CPE)の7日後に、細胞外液を回収し、約1:10に希釈したものと未希釈のものを調製し、HFF細胞に感染し、組換えウイルスを回収する。
【0049】
このとき、ウイルスの選択は、crs配列に目的の変異が導入されていることを配列分析によって確認すること、HFF細胞に導入または感染させて複製が不能ではないが抑制されている、すなわち複製が野生型の約1/10以下であることを確認すること、ならびに、野生型の表現型と同一または本質的に同一であることを確認することによって行うことができる。
【0050】
3.弱毒化組換えHCMVを含むワクチン
本発明はさらに、上で説明した弱毒化組換えHCMVを含むことを特徴とする、HCMV感染症を治療または予防するためのワクチンを提供する。
本発明のワクチンは、AIDS患者、臓器移植患者などの免疫抑制患者、胎児、乳幼児、高齢者、重症患者などの抵抗性が低下したヒトに対し、肺炎、肝炎、網膜炎、胃腸炎などを含む広範な疾患を引き起こす可能性のあるHCMV感染の予防および治療のために使用可能である。HCMVは、血液、尿、唾液などを介して感染するウイルスであり、上記のヒトに感染すると、重症になる場合がある。そのような感染を抑制するために、本発明のワクチンは有効である。
【0051】
ワクチンは、適当な賦形剤、特に希釈剤、例えば滅菌水、生理食塩水、リンゲル液、緩衝液などに処方されうる。希釈剤には、ブドウ糖、トレハロース、エタノール、グリセリンなどの添加剤を含有させることができる。また、免疫力を向上させるためのアジュバント、例えば水酸化アルミニウム(Alum)、ムラミルジペプチドなどを含有させてもよい。
【0052】
投与方法は、例えば皮下、筋肉内または皮内注射、鼻腔内などの粘膜投与などを含む。鼻腔内投与の場合、噴霧器による投与が好ましい。
【0053】
投与量は、例えば103〜1011PFUウイルス/kg体重の用量であるが、この範囲に制限されない。ワクチンの投与量は、患者などの受容者の状態、例えば年齢、体重、性別、重症度などを考慮に入れて、医師の裁量で判断されるべきである。受容者は、1回又は2回以上の投薬を受容でき、複数回投与の場合、1週間〜1か月以上の間隔、例えば2,3,6,12,18又は24か月間隔で投与しうる。
【0054】
本発明を以下の実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例によって制限されないものとする。
【実施例】
【0055】
材料および方法
細胞およびウイルス
初代ヒト包皮線維芽(HFF)細胞を、従来記載のように維持した(Stinski,M.F.(1978)J.Virol.26:686−701)。野生型(wt)ヒトCMV Towneおよび組換えウイルスのウイルス力価を、従来記載のように、HFF細胞での標準プラークアッセイによって測定した(Meier,J.L.およびStinski,M.F.(1997)J.Virol.71:1246−1255)。組換えウイルスの力価は、記載されるようにして、野生型ウイルスに対して標準化した(Isomura,H.ら(2004)J.Virol.78:12788−12799)。導入したウイルスDNAの相対量は、従来記載のものと同様にした(Isomura,H.ら(2004),上記)。
【0056】
プラスミド構築
pCATwt crsは、従来記載されたpCATTATA+Spl(−55)+Spl(−75)と同じである(非特許文献3)。pCATmurine crsのプラスミドは、pCATwt crsのcrs配列を突然変異するために構築された。突然変異誘発は、製造者の使用説明書にしたがって、Quik ChangeTM Site−Directed Mutagenesis(Stratagene,La Jolla,Ca)によって行った。突然変異誘発のプライマー対は、表1に記載のIE1Emurine crsFおよびIE1EMmurine crsRであった。小文字は変異塩基を示す。増幅および変異産物は、DNA配列決定によって確認された(愛知県がんセンター中央研究所中央施設利用)。
【0057】
【表1】

【0058】
CATアッセイ
トランスフェクションを、製造者の使用説明書にしたがって、リポフェクタミンとPlus試薬(Invitrogen,Carlsbad,Ca)を用いて、HFF細胞の60mm直径プレート上で三連で行った。各発現プラスミド2μgでHFF細胞を感染させ、感染の72時間後に細胞を回収した。ついで、細胞溶解物を調製し、従来記載のようにCATアッセイにかけた(Isomura,H.ら(2004),上記)。プラスミドpSV40β−galを、内部対照に使用した(非特許文献12)。Statview4.02を使用するFisherのPLSDによって統計解析を行った。
【0059】
電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)
TBP結合アッセイのために、wt crsおよびマウスcrsのDNA配列を上記表1に記載した。小文字は変異塩基を示す。等モル比の各対のセンスおよびアンチセンスオリゴヌクレオチドを混合し、95℃で変性し、室温(RT)まで徐々に冷却することによってアニーリングした。32P標識プローブは、従来記載のようにして調製された(非特許文献3)。
【0060】
TBPおよびTFIIBタンパク質は和光純薬工業(東京)およびPromega(Madison,WI)からそれぞれ購入した。TBPを2ng、TFIIBを示したngで、176fmolのDNAプローブ(約50,000cpm)と一緒に30℃、30分インキュベートした。反応混合物は、20mMのHEPES、2mMのMgCl、25mMのKCl、0.5mMのEDTA、1mMのジチオスレイトール、100μg/mlのBSA、2mMのスペルミジン、0.2%のNonidet P−40、10%のグリセロールおよび1μgのpoly dG−dC(Amersham,Pitcataway,NJ)(全量20μl、TBP結合用)であった。DNA−タンパク質複合体を、電気泳動により、0.5×TBE中の6%非変性ポリアクリルアミドゲルにて室温で、遊離のプローブから分離した。DNA−タンパク質複合体のシグナル強度を、Image guider(BAS 2500;富士フィルム、東京)を用いて定量した。値は、(TBP−TFIIB−DNA)対(TBP−DNA複合体)の比として算出した。
【0061】
比較アッセイのために(全量20μl)、2ngのTBPを、反応混合物中過剰モル比の非放射性競合体二本鎖(ds)DNAと一緒に、室温で30分間プレインキュベートした。その後、反応混合物に176fmolの放射性プローブを加え、室温で30分間インキュベートした。電気泳動とバンド強度の定量を上記と同様に行った。
【0062】
ヒトCMV BAC DNAの突然変異誘発
大腸菌内でバクテリオファージλ組換えタンパク質exo、betaおよびgamを発現するための迅速相同組換え系(D.Court博士(NIH,米国)から供与された)を従来記載のように使用した(Ellis,H.M.ら(2001)Proc.Natl.Acad.Sci.USA98:6742−6746)。ヒトCMV TowneのBAC DNAは、F.Liu博士(カリフォルニア大学、Berkley,CA)から供与された(Dunn,Wら(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.USA100:14223−14228)。組換えのためのHCMV二本鎖DNAは、カナマイシン耐性遺伝子と70bpの相同ウイルスDNA配列を含み、この耐性遺伝子には、34bpの最小FRT部位(5'−GAAGTTCCTATTCTCTAGAAAGTATAGGAACTTC−3'(配列番号4))をフランキングした。crs配列の突然変異体を作製するために、プライマー対としてBAC crs+FRTF、BACsimiancrs+FRTR、BACmurinecrs+FRTRおよびBACcrsmut+FRTRを使用した(表1)。PCRによる増幅を、従来記載のように行った(Isomura,Hら(2004)、上記)。残存する鋳型DNAを除くために、PCR産物を、DpnIを用いて37℃で1.5時間消化した。約100ngの各DNA断片を、ヒトCMV Towne−BAC DNAを含むコンピテントなE coli DY380中へのエレクトロポレーションにかけた。エレクトロポレーションは、従来記載のように行った(Isomura,Hら(2004)、上記)。
【0063】
カナマイシン耐性遺伝子の切断
カナマイシン耐性遺伝子を欠失するために、組換えヒトCMV BAC DNAをE. coli DH10Bに形質転換した。リコンビナーゼを発現するプラスミドpCP20(Hahn,W.ら(2003)Virology307:164−177)を、組換えヒトCMV BAC DNAを含むDH10Bに形質転換した。カナマイシン耐性遺伝子を含まないヒトCMV BAC DNAを、アンピシリンおよびクロラムフェニコール含有のLBプレート上で選択した。
【0064】
組換えウイルス単離
HFF細胞を、GrahamおよびVan der Ebのリン酸カルシウム沈殿法(Graham,F.L.およびvan der Eb,A.J.(1973)Virology52:456−467)によって、2μgのプラスミドpSVpp71(Isomura,Hら(2004)、上記)の存在中、5μgまたは10μgの各組換えBACでトランスフェクションした。10日後、ウイルスプラークが出現した。100%細胞変性作用(CPE)の7日後に、細胞外液を回収し、HFF細胞の感染のために、1:10に希釈したものと未希釈のものを調製した。100%CPEの5〜7日後に、ウイルス含有の細胞外液を、使用まで50%仔ウシ血清中−80℃で保存した。
【0065】
PCR分析
従来記載のようにしてPCR分析を行った(Isomura,Hら(2004)、上記)。PCR産物を、TAクローニングべクター中にクローン化し、愛知県がんセンター中央研究所中央施設にて配列決定し、これによって組換えおよび切断を確認した。
【0066】
サザンおよびノーザンブロット分析
組換えBAC DNAを、NucleoBondキット(Macherey−Nagel Duren,Germany)を用いて精製し、制限エンドヌクレアーゼBlpIおよびXhoIで消化し、従来記載のようにして1.0%アガロースゲル電気泳動にかけた(Isomura,Hら(2004)、上記)。サザンおよびノーザンブロットは、従来記載のように行った(Isomura,Hら(2004)、上記)。プローブについては、pKS−583/+78のDNA断片(EagI−SpeI)を従来記載のようにして標識した(Isomura,H.およびStinski,M.F.(2003)J. Virol.77:3602−3614)(図1a参照)。IE1 DNAを、プライマー対ex4Fおよびex4Rを用いるPCRによって増幅し(上記の表1参照)、従来記載のようにしてTAクローニングベクター(Invitrogen)にクローン化した(Isomura,Hら(2004)、上記)。
【0067】
ウエスタンブロット分析
従来記載のようにしてウエスタンブロット分析を行った(Isomura,Hら(2004)、上記)。IE1およびIE2によってそれぞれコードされるpIE72およびpIE86あるいはUL44によってコードされるp52タンパク質を検出するために、モノクローナル抗体NEA−9221(Perkin Elmer,Boston,MA)およびM0854(Dako,Carpinteria,Ca)をそれぞれ使用した。製造者の使用説明書にしたがって、増強化学発光検出試薬(Amersham)および第二西洋ワサビペルオキシダーゼ標識抗マウスIgG抗体(Zymed,San Francisco,Ca)を使用した。
【0068】
リアルタイムPCRおよびRT−PCR分析
MIE RNAの検出のために、全細胞RNAを、TRI試薬(Invitrogen)を用いて、示した時間に精製し、DNaseで処理し、逆転写酵素を用いてcDNAに変換した。逆転写酵素非含有の対照では、導入ウイルスDNAが検出されず、mock対照と同様であった。RT反応は、従来記載のようにして行った(Isomura,Hら(2004)、上記)。ウイルスDNAの検出のために、60mmプレート中の細胞を、感染の4時間後に、50μg/mlのプロテイナーゼKを含有する3つのPCR溶解バッファー中のそれぞれに回収した。従来記載のようにして増幅を行った(Isomura, HおよびStinski,M.F.(2003)J.Virol.77:3602−3614;White,E.A.ら(2004)J.Virol.78:1817−1830;Meier,J.L.ら(2002)J.Virol.76:313−326)。相対MIE RNAまたはgB DNAの定量は、従来記載されるような標準曲線解析にしたがって実施された(Isomura,HおよびStinski,M.F.(2003)J.Virol.77:3602−3614;Meier,J.L.ら(2002)J.Virol.76:313−326)。
【0069】
RT−PCR分析
RT−PCRは、最終容量10μlのPCR混合液(0.5μMプライマー、0.2mM dNTPs、1.5mM MgClおよび0.5U Taqポリメラーゼ(AmpliTaq GoldTM,Roche))中で行った。エクソン2と3、またはエクソン3と4の間のスプライスRNAを検出するためのプライマーは、ex2−3R,ex2−3R,ex3−4Fおよびex3−4Rであった(上記の表1参照)。加熱サイクル条件は、最初に95℃15分加熱し、ついで95℃15分および60℃1分の35サイクルからなった。5μgのRT−PCR産物を12%ポリアクリルアミドゲル中の電気泳動にかけた。RT−PCR産物もまた、別個にTAクローニングベクターにクローン化し、配列決定された。
【0070】
結果
1.crs変異を有する組換えヒトCMVの単離
従来の報告により、ヒトCMVのMIEプロモーターが、ウイルスIE86タンパク質と結合するシス作用性エレメントをもつことが示された(非特許文献11および12)。crsは部分的パリンドローム様構造を形成するが、この構造は、MIEプロモーターに、配向非依存的であるが位置依存的な様式でIE86タンパク質依存的抑制を付与する(非特許文献9)。マウスCMVは、MIEプロモーターの転写開始部位からの同じ位置に配列相同体を有するが、しかし、一時的転写アッセイではIE86タンパク質による抑制に対し反応が乏しかった(非特許文献9)。ヒトCMV感染の初期段階でのcrsの役割を決定するために、本発明者らは、野生型と異なる配列で置換されたcrsを有する組換えヒトCMV BAC DNAを構築した(図1a)。野生型ヒトCMVcrsとサルCMVcrsとの間には、わずかに1塩基対(bp)の相違があるが、野生型ヒトCMVcrsとマウスCMVcrsとの間には9bpの相違がある。カナマイシン耐性遺伝子を切断するために、本発明者らはFLP仲介組換え法を使用したが、この方法では34bpのFRT配列が残った(図1a)。FRTがMIE転写およびウイルス複製に何らかの作用を持つ可能性を避けるために、本発明者らはまた、他の組換えウイルスと同じ位置に野生型(wt)crs配列とFRTを有する組換えウイルスを構築した。BlpIおよびXhoIによる組換えBAC DNAの制限酵素消化によって、組換えの間にHCMVゲノムの大きな欠失または転座が全く生じなかったこと、ならびに、予想したサイズのDNA断片が生成したことが証明された(図1b)。プライマー対であるUL127RおよびHCMVFを使用するPCR分析(図1a)を行い、増幅されたDNA断片を配列決定し、正しい組換えと切断を確認した(データを示さず)。組換えヒトCMV BAC DNAでHFF細胞をトランスフェクトした。Rwt crs、Rsimian crsおよびRmurine crsは培養細胞中で複製したが、Rmut crsは複製しなかった。各変異に関する2つの独立の単離物を別々に作製し特性決定したが、これらの2つの独立の組換えウイルス単離物の間では、表現型に差はなかった。
【0071】
2.ウイルス感染中のMIE転写の遮断に対するcrs置換の影響
組換えウイルスによる感染がMIE転写の遮断を示すかどうかを決定するために、HFF細胞を、約5のMOIでRwt crs、Rsimian crsまたはRmurine crsに感染させ、感染後に種々の回数でIE1 RNAのレベルを分析した。IE1 RNAの定常状態レベルは、Rwt crsおよびRsimian crsについて、またRmurine crsについても、6時間で最も高く(図2のレーン1、3および5)、感染の24時間後にはそれより低かった(図2のレーン2、4および6)。これらの知見は、マウスcrsもin vivoでMIE遺伝子転写に対して遮断機能を有していることを示した。しかしながら、シス作用性エレメントが完全に突然変異を受けたときには、組換えウイルスは単離されなかった。このことと加えて、MIE転写の遮断はcrsに依存することが分かった。
【0072】
3.感染初期段階でのMIE遺伝子転写に対するcrs置換の影響
MIE遺伝子の転写に対するcrs置換の影響を調べるために、1のMOIでHFF細胞に組換えウイルスを感染させ、感染後1、2、4、7および11時間目に細胞を採取し、エクソン1とエクソン2との間に位置するプローブおよびプライマーを用いるリアルタイムRT−PCRによってMIE遺伝子転写体の相対レベルについてアッセイした。図3aに示されるように、Rmurine crsを感染させた細胞からのMIE RNAの相対量は、感染後4、7および11時間目のRwt crsと比べて、約1/10〜1/20に減少した。これらのデータは、crs置換がウイルス感染の初期段階でMIE転写に影響することを示している。MIE遺伝子転写体のレベルを確認するために、ノーザンブロット分析も実施した。0.1のMOIでRwt crsまたはRmurine crsを感染したのち、感染後6時間目に細胞を採取した。図3bに示されるように、Rwt crs感染細胞から定常状態の細胞質IE1 mRNAが検出されたが、Rmurine crs感染細胞からは、オートラジオグラムの長時間露光ではじめて該mRNAが検出された。この結果から、wt crsは感染の初期段階でMIEプロモーターからの転写を容易にすることが結論された。
【0073】
4.crs配列はMIE遺伝子転写体のスプライシング効率に影響する
mRNAのプロセシング反応は、転写の間に、統制的に行われる(Proudfoot, N.J.ら(2002) Cell 108:501-512)。crsがMIEプロモーターからの転写を容易にするため、crs配列はプレmRNAのプロセシングに影響する。スプライスされたRNAを検出するために、エクソン2とエクソン3の間およびエクソン3とエクソン4の間のプライマー対を用いてRT−PCRを行った。HFF細胞に、0.1のMOIで感染させ、感染6時間後に、感染細胞からRNAを精製した。エクソン2とエクソン3の間およびエクソン3とエクソン4の間の、プレmRNA由来のスプライス形態の量が、Rwt crsに感染させたHFF細胞における感染6時間後の相対量で20倍高い値を示した。HFF細胞にRmurine crsを感染したときには、エクソン2とエクソン3の間およびエクソン3とエクソン4の間の非スプライス形態が90倍多い量で検出された(図3c)。これらのデータは、crsが転写の間にプレmRNAのスプライシングにも影響することを示している。
【0074】
5.マウスcrsによる置換が他のウイルスタンパク質の非存在下でMIE遺伝子転写に影響する
ウイルスのテグメントタンパク質pp71は、MIEプロモーターからの転写を活性化する(Liu, B.およびStinski, M.F. (1992) J. Virol. 66:4434-4444)。他のウイルスタンパク質の非存在下でcrsがMIEプロモーターからの転写に影響を及ぼすかどうかを決定するために、また、in vivoでの組換えウイルス結果を実証するために、一過的トランスフェクションアッセイを、図4aに示される2つのSp−1部位を有するMIEプロモーター下流のCAT遺伝子を用いて実施した。CAT活性は、MIEプロモーターからの転写の累積的作用を示したが、これは、CATが哺乳類細胞で非常に安定であるからである。wt crsをもつCAT活性は、マウスcrsをもつCAT活性よりも統計的に高かった(p=0.0041)。これらのデータから、wt crsは、他のウイルスタンパク質の非存在下でMIEプロモーターからの転写を容易にすることが示唆された。
【0075】
6.TBP−TFIIB−DNA相互作用に対するcrs配列の影響
wt crsがMIEプロモーターからの転写に正に影響を及ぼすかどうかを決定するために、また、in vivoでの組換えウイルス結果を実証するために、EMSAをTBPおよびTFIIBを用いて実施した。TBP−DNA複合体を、wt crsまたはマウスcrsとTATAエレメントを含むプローブを用いて形成した。TBP−DNA複合体はともに、15、30および60倍モル過剰の非放射性マウスcrs競合体を用いたとき、同等に減少した(図4b)。wt crsまたはマウスcrsのいずれかを有するTATAエレメントへのTBPの結合効率に全く差がなかった。
【0076】
結晶学的構造分析により、TFIIBがTBPおよび鋳型DNAと相互作用することが示されている(Tsai,F.T.およびSigler,P.B.(2000)Embo J.19:25−36)。TFIIBは、TATAエレメントのすぐ上流のDNA鋳型の主要グローブと相互作用するし、また、TATAエレメントのすぐ下流のマイナーなグローブと相互作用する。本発明者らは、TBP−TFIIB複合体形成におけるwt crsの役割を決定した。EMSAを、wt crsまたはmurine crsのいずれかを有するTATAエレメントを含む32P標識プローブを用いて実施した。7、14または21ngのTFIIBをTBP−DNA複合体に加えたとき、TBP−TFIIB−DNA複合体に相当する上のバンドが検出された。wt crsを有するTATAエレメントは、TBP−TFIIB−DNA複合体形成に対し2〜3倍高い親和性を有した(図4c)。wt crsは、DNA鋳型上でTBP−TFIIB−DNA複合体の形成を安定化した。
【0077】
7.ウイルスのDNA合成および遺伝子発現に対するcrs置換の影響
組換えウイルスのウイルス複製を比較するために、HFF細胞に、1のMOIで野生型(wt)ウイルスまたは組換えウイルスを感染した。gBプライマーを用いるリアルタイムPCRを実施し、感染後2、3および4日目にウイルスDNAレベルを測定した。18Sプライマーおよびプローブを用いるリアルタイムPCRアッセイを、等量の導入DNAについて対照に対して行った(図5a、下のパネル)。サルcrsを有する組換えウイルスは、Rwt crsと同じレベルに複製した。これに対して、マウスcrsを有する組換えウイルスはほとんど非効率的な複製を行なった。Rwt crsとRmurine crsとの間で、ウイルスDNAレベルに約20倍の差があった(図5a、上のパネル)。したがって、Rmurine crsは、感染後、より遅い速度でウイルスDNA複製に入った。
【0078】
Rmurine crsによるウイルスDNA複製の速度が遅い理由が低いレベルのウイルス遺伝子発現によるものであるかどうかを決定するために、HFF細胞に、1のMOIで組換えウイルスを感染し、ウイルスタンパク質pIE72(UL123)、pIE86(UL122)およびp52(UL44)に対するモノクローナル抗体、あるいは負荷対照としての細胞p36GAPDHに対するモノクローナル抗体を用いてウエスタンブロット分析を行った。サルcrsを有する組換えウイルスのpIE72、pIE86およびp52のタンパク質レベルは、感染全体を通して、Rwt crsの該タンパク質レベルと類似していた(図5b)。これに対して、Rmurine crs感染細胞でのpIE72のタンパク質レベルは、感染後1日目で、Rwt crsの該タンパク質レベルより低く、その1/1.94であった。さらに、pIE86およびp52タンパク質のレベルは、感染後2日目および4日目でそれぞれ1/2.76および1/3.24、1/5.85および1/3.63の低さであった。したがって、crsは、ヒトCMV感染の初期段階で、MIE mRNAおよびタンパク質産生に対する正のシス作用性エレメントであると結論される。
【0079】
考察
ヒトCMV MIE遺伝子の転写調節は、潜伏からの再活性化と生産的感染において中心的な役割を有している。TBPによるTATAボックスの認識は、開始前の複合体形成に向かう最初のステップを構成する(非特許文献13および,Orphanides, G.ら(1996)Genes Dev.10:2657−2683)。TBPの生成後、TFIIBが複合体に入いり、より安定な三元複合体を形成する。in vitro分析により、wt crsがTBP−TFIIB−DNA複合体を安定化することが示された。TFIIBがTATAボックスの上流と下流の両方でDNA鋳型と接触する。TATAボックスの上流で、TFIIBが配列特異的DNA接触をすることができる(Lagrange,T.ら(1998)Genes Dev.12:34−44;Tsai,F.T.およびSigler,P.B.(2000)、上記;Qureshi,S.A.およびJackson,S.P.(1998)Mol.Cell1:389−400)。このTFIIB認識エレメント(BRE)は、真核生物プロモーターのサブセット中に存在することが報告されている。例えば、アデノウイルス主要後期プロモーターは、TFIIBにより高親和性結合を付与するBREを含む(Lagrange,T.ら(1998)、上記)。ヒトCMV wt crsは、BREエレメントと相同な配列を共有しないけれども、本発明者らのデータから、TFIIBが、wt crsを含むMIEプロモーターと効率的な配列特異的接触をすることが示された。TBP−TFIIB−DNA複合体の結合は、wt crsが存在するとき、より安定であった。したがって、本発明者らは、ヒトCMV wt crsが、感染の初期段階で、効率的なMIE転写とプレmRNAのスプライシングのための転写開始複合体の形成を容易にすることを提案する。
【0080】
RT−PCRによって、エクソン2とエクソン3の間で、およびエクソン3とエクソン4の間でスプライスされたMIE mRNA、ならびに、スプライスされないMIE mRNAを検出し、このことから、wt crsが、プレmRNAスプライシングの相対量に影響することが示された。キャッピング、スプライシングならびに3’末端プロセシングおよびポリアデニル化などのプレmRNAプロセシングを含む反応は、RNA Pol II転写複合体と密接に結びついていると、互いにモジュレートする(Bentley,D.L.(2005)Curr.Opin.Cell Biol.17:251−256;Maniatis,TおよびReed,R.(2002)Nature416:499−506;Dye,M.J.およびProundfoot,N.J.(2001)Cell105:669−681)。したがって、Pol IIホロ酵素と、crs含有のMIEコアプロモーター領域との間の相互作用は、遺伝子転写の全3つの段階、すなわち開始、伸長および終結で、mRNAプロセシング活性と直接関係している可能性がある。
【0081】
本発明者らは、かなりの努力にも拘らず、mut crsを含む完全組換えウイルスを単離することができなかったが、これらの結果について、2つの説明ができる。1つは、crsが、感染の初期で、ヒトCMV IE72およびIE86タンパク質の発現に重要である、ということである。2つ目は、感染の後期で、野生型IE86タンパク質の連続発現が、宿主細胞にとって有害である、ということである。これらの知見は、wt crsが、MIEプロモーターおよび後続のウイルス感染に必須の制御エレメントであることを示唆している。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の弱毒化組換えHCMVは、ワクチンとして、免疫抑制患者や弱抵抗性のヒトに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】組換えヒトCMV BAC DNAの構造を示す。(a)Rwt crsの組換えBAC DNAの組換えの概略位置を示す。転写開始部位を+1としたときの−48と+1との間のcrsを含む領域を、置換配列およびカナマイシン耐性遺伝子(KanR)で置換し、その後、KanRをFLP仲介組換えにより切断した。ここで、置換配列は、図示されるように、サルCMVcrs(配列番号3)またはマウスCMVcrs(配列番号1)、あるいは完全に変異されたcrs(mut crs;配列番号5)であった。配列中の小文字は、変異塩基を示す。(b)親の野生型crs、mut crs、サルCMVcrsおよびマウスCMVcrsプラスFRT配列(ただし、KanR含有配列とKanR非含有配列)のサザンブロット分析を示す。Bac DNAをBlpIおよびXhoIで消化した。標準分子サイズは塩基対(bp)で示した。また、BAC DNAは、ブロットの最上部に同定された。
【図2】MIE遺伝子転写の遮断に対するcrs置換の影響を示す。HFF細胞に、約5のMOIで、図に示した組換えウイルスを感染させ、図に示した時間に細胞を採取した。材料および方法に記載したようにして、細胞質IE1 RNAを精製し、ノーザンブロット分析にかけた。
【図3】MIE遺伝子転写およびRNAスプライシングに対するcrs置換の影響を示す。(a)HFF細胞に、1のMOIで組換えウイルスを感染し、材料および方法に記載したリアルタイムPCRによって、IE遺伝子転写体のレベルについて分析した。各RT−PCRを三連で行い、感染の7時間後に、Rwt crsを感染させたHFF細胞から回収したMIE RNAについて閾値サイクル値に標準化した。RNAは、細胞GAPDH RNAに対して標準化された。(b)ノーザンブロット分析を行い、細胞質IE1 RNAのレベルを比較した。HFF細胞に、0.1のMOIでウイルスを感染し、感染の6時間後に、全細胞RNAを回収した。(c)MIE遺伝子転写体のスプライシング効率の分析を示す。HFF細胞に、0.1のMOIでウイルスを感染し、感染の6時間後に細胞を回収した。細胞から全細胞RNAを精製し、MIE RNAを、エクソン2と3の間、あるいはエクソン3と4の間のmRNAに特異的なプライマー対を用いるRT−PCRによって分析した(上記の表1参照)。矢印で示した上と下のバンドはそれぞれ、スプライスされていないMIE RNA、スプライスされたMIE RNAを表す。
【図4】別のウイルスタンパク質の非存在下での、MIE転写ならびにTBPおよびTFIIBの結合に対するcrsの影響を示す。(a)CAT遺伝子構築物の概略的構造を示す(上のパネル)。CAT活性は三連で測定された。値は、非アセチル化クロラムフェニコール形態からアセチル化形態への転換率(%)を示す。ここで、**は、P<0.01である。(b)TBPとTATAエレメントとの結合活性を示す。2ngのTBPを、反応混合液中、室温で30分間、増加量の過剰モル比の非放射性競合体dsDNA(X15, X30およびX60)と一緒にインキュベートした。その後、176fmolの放射性プローブを反応混合物に添加し、室温、30分間さらにインキュベートした。(c)TFIIBの存在下でのTBPのTATAエレメントへの結合活性の定量分析を示す。2ngのTBPと、増加量のTFIIB(7、14および21ng)を、反応中でインキュベートした。各バンドの強度は、材料および方法で記載したBAS2500画像解析機(富士フィルム)を用いてアッセイされ、グラフ上にプロットされた。
【図5】ウイルスDNAおよびタンパク質合成に対するcrs置換の影響を示す。(a)1のMOIで、Rwt、Rsimian crsまたはRmurine crsを感染し、感染の2日後(2d.p.i.)、3日後(3d.p.i.)および4日後(4d.p.i.)に細胞を回収した。感染の4時間後のRwt crs DNAのレベルに対する各値が計算されプロットされた。データは、3回の独立の実験の平均である。18Sプライマーとプローブを用いるリアルタイムPCRを、等しい導入DNAを対照として行った(下のパネル)。(b)IEおよび初期遺伝子発現のウエスタンブロット分析を示す。HFF細胞に、1のMOIで組換えウイルスに感染させ、感染後の図示した日に採取した。モノクローナル抗体NEA−9221が、IE72およびIE86タンパク質を検出し、一方、M0854はp52初期タンパク質を検出した。pGAPDH(p36)は、タンパク質負荷対照として使用された。
【配列表フリーテキスト】
【0084】
配列番号5: 人工配列の説明:mut crs
配列番号6〜22: 人工配列の説明:プライマー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
MIE遺伝子プロモーターのシス作用性エレメント(crs)配列の一部に突然変異を有し、これによってウイルス複製が不能ではないが抑制されていること、および野生型の表現型と同一または本質的に同一であることを特徴とする、弱毒化組換えヒトサイトメガロウイルス(HCMV)。
【請求項2】
前記crs配列が、HCMVの野生型crs配列との同一性が30〜80%である突然変異を有する、請求項1記載の組換えヒトサイトメガロウイルス。
【請求項3】
前記crsの突然変異が、HCMV感染初期で、HCMVのIE86タンパク質の発現の低下を引き起こす、請求項1または2記載の組換えヒトサイトメガロウイルス。
【請求項4】
前記crsの突然変異が、HCMV感染初期で、HCMVのIE72タンパク質の発現の低下をさらに引き起こす、請求項3記載の組換えヒトサイトメガロウイルス。
【請求項5】
前記crsの突然変異が、マウスCMVのcrs配列によるHCMVの野生型crs配列の置換に基づく、請求項1〜4のいずれか1項記載の組換えヒトサイトメガロウイルス。
【請求項6】
前記マウスCMVのcrs配列が、5'−cccagcgtcggtaccg−3'(配列番号1)を含む、請求項5記載の組換えヒトサイトメガロウイルス。
【請求項7】
前記ウイルス複製が、HCMVの野生型と比べて1/10〜1/50またはそれ以下に抑制されている、請求項1〜6のいずれか1項記載の組換えヒトサイトメガロウイルス。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項記載の弱毒化組換えヒトサイトメガロウイルスを含むことを特徴とする、HCMV感染症を治療または予防するためのワクチン。
【請求項9】
賦形剤をさらに含む、請求項8記載のワクチン。
【請求項10】
アジュバントをさらに含む、請求項8または9記載のワクチン。
【請求項11】
HCMVゲノムのMIE遺伝子プロモーターのシス作用性エレメント(crs)配列の一部に突然変異を導入すること、およびウイルス複製が不能ではないが抑制されている、かつ、野生型の表現型と同一または本質的に同一である突然変異ウイルスを選択し、該ウイルスを回収することを含む、請求項1〜7のいずれか1項記載の弱毒化組換えヒトサイトメガロウイルスの作製方法。
【請求項12】
前記突然変異が、突然変異誘発法によって導入される、請求項11記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−92854(P2008−92854A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−277793(P2006−277793)
【出願日】平成18年10月11日(2006.10.11)
【出願人】(304031427)愛知県 (36)
【Fターム(参考)】