説明

弱毒化S・パラチフスA菌株およびその使用

本発明は生菌弱毒化S・パラチフスA菌株、安定化されたプラスミド発現系を含む生菌弱毒化S・パラチフスA菌株及びこれらの菌株の使用方法に関する。1つの実施形態において、本発明のS・パラチフスA菌株はguaBA遺伝子座、guaB遺伝子、guaA遺伝子、clpP遺伝子及びclpX遺伝子における弱毒化突然変異よりなる群から選択される弱毒化突然変異少なくとも1つを有する。好ましい実施形態においては、S・パラチフスA菌株はguaB遺伝子、guaA遺伝子及びclpP遺伝子において弱毒化突然変異を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
この出願は、米国仮出願第60/731,349号(この全体が、本明細書に援用される)の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
チフス及びパラチフス熱を包含するサルモネラ属のメンバーにより誘発される腸熱は依然として開発途上国の集団に多大な疾患及び死亡率の重積を付しており(非特許文献1)、そして旅行者に対して顕著な危険を呈している(非特許文献2)。サルモネラ・エンテリカの血清型であるチフス及びパラチフスA(S.Typhi及びS.Paratyphi A)により誘発される腸熱の発生率は抗生物質耐性変異体の出現及び拡大のため上昇中である(非特許文献2)。S・パラチフスAにより誘発される臨床疾患は全体としてS・チフスによるもの余地幾分軽症であるが、前者はなお、複合的合併症を伴った樹立された腸熱をもたらし、そして、未治療又は不適切な治療の場合には、死亡をもたらす場合がある。サルモネラ感染症に対抗する場合に安全で有効であるワクチンが必要とされている。
【非特許文献1】Lancet 2005;366:749−762
【非特許文献2】Lancet Infect Dis.2005;5(10):623−628
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
(発明の要旨)
本発明は弱毒化S・パラチフスA菌株、好ましくは生菌弱毒化S・パラチフスA菌株に関する。
【0004】
1つの実施形態において、本発明のS・パラチフスA菌株はguaBA遺伝子座、guaB遺伝子、guaA遺伝子、clpP遺伝子及びclpX遺伝子における弱毒化突然変異よりなる群から選択される弱毒化突然変異少なくとも1つを有する。好ましい実施形態においては、S・パラチフスA菌株はguaB遺伝子、guaA遺伝子及びclpP遺伝子において弱毒化突然変異を有する。別の好ましい実施形態においては、サルモネラ・パラチフスA菌株はguaB遺伝子、guaA遺伝子及びclpX遺伝子において弱毒化突然変異を有する。更に別の好ましい実施形態においては、サルモネラ・パラチフスA菌株はguaB遺伝子、guaA遺伝子、clpP遺伝子及びclpX遺伝子において弱毒化突然変異を有する。
【0005】
1つの実施形態において、guaBA遺伝子座、guaB遺伝子、guaA遺伝子、clpP遺伝子及びclpX遺伝子の弱毒化突然変異は遺伝子座又は遺伝子の発現のレベルを低減するか、遺伝子座又は遺伝子の発現をブロックする弱毒化突然変異である。
【0006】
別の実施形態において、guaBA遺伝子座、guaB遺伝子、guaA遺伝子、clpP遺伝子及びclpX遺伝子の弱毒化突然変異は遺伝子座又は遺伝子によりコードされるポリペプチドの活性を低減するか、遺伝子座又は遺伝子によりコードされるポリペプチドを不活性化する弱毒化突然変異である。
【0007】
好ましい実施形態においては、サルモネラ・パラチフスA菌株はS・パラチフスA9150菌株である。
【0008】
本発明はまた、guaBA遺伝子座、guaB遺伝子、guaA遺伝子、clpP遺伝子及びclpX遺伝子における弱毒化突然変異よりなる群から選択される弱毒化突然変異少なくとも1つを有し、そして更に安定化されたプラスミド発現系を含むS・パラチフスA菌株を包含する。
【0009】
好ましい実施形態においては、安定化されたプラスミド発現系は(a)制限されたコピー数の複製起点カセット、(b)分離後殺傷(post−segregational killing)カセット少なくとも1つ、(c)分配カセット少なくとも1つ;及び、(d)発現カセットを有する発現ベクターを含む。
【0010】
好ましい実施形態においては、制限されたコピー数の複製起点カセットは、(i)細胞当たり約2〜75コピーの平均プラスミドコピー数に発現ベクターを制限する複製起点をコードするヌクレオチド配列、(ii)複製起点をコードするヌクレオチド配列の5’に位置する第1のユニークな制限酵素切断部位、及び、(iii)複製起点をコードするヌクレオチド配列の3’に位置する第2のユニークな制限酵素切断部位を含む。
【0011】
同様の実施形態において、分離後殺傷カセットは(i)分離後殺傷遺伝子座少なくとも1つをコードするヌクレオチド配列、(ii)分離後殺傷遺伝子座少なくとも1つをコードするヌクレオチド配列の5’に位置する第3のユニークな制限酵素切断部位、及び、(iii)分離後殺傷遺伝子座少なくとも1つをコードするヌクレオチド配列の3’に位置する第4のユニークな制限酵素切断部位を含む。
【0012】
同様の実施形態において、分配カセットは(i)分配機能少なくとも1つをコードするヌクレオチド配列、(ii)分配機能少なくとも1つをコードするヌクレオチド配列の5’の5のユニークな制限酵素切断部位、及び、(iii)分配機能少なくとも1つをコードするヌクレオチド配列の3’に位置する第6のユニークな制限酵素切断部位を含む。
【0013】
同様の実施形態において、発現カセットは(i)プロモーターに作動可能に連結した選択された抗原をコードするヌクレオチド配列、(ii)プロモーターに作動可能に連結した選択された抗原をコードするヌクレオチド配列の5’に位置する第7のユニークな制限酵素切断部位、及び、(iii)プロモーターに作動可能に連結した選択された抗原をコードするヌクレオチド配列の3’に位置する第8のユニークな制限酵素切断部位を含む。
【0014】
好ましい実施形態においては、複製起点をコードするヌクレオチド配列は配列番号28に示すoriE1配列、配列番号30に示すori101配列、及び配列番号29に示すori15A配列よりなる群から選択されるヌクレオチド配列である。
【0015】
好ましい実施形態においては、分離後殺傷遺伝子座をコードするヌクレオチド配列はssb平衡致死系をコードするヌクレオチド配列、asd平衡致死系をコードするヌクレオチド配列、phd−doc蛋白系をコードするヌクレオチド配列及びhok−sokアンチセンス系をコードするヌクレオチド配列よりなる群から選択されるヌクレオチド配列である。より好ましくは、分離後殺傷遺伝子座はシゲラ・フレクスナーssb遺伝子座、サルモネラ・チフスssb遺伝子座及びE・コリssb遺伝子座よりなる群から選択されるssb平衡致死系をコードするヌクレオチド配列である。更に好ましくは、ssb平衡致死系は、配列番号34に示すS・フレクスナー2a菌株CVD1208sのssb誘導性プロモーター、ssb構成的プロモーター及びssbコード領域を含むssb遺伝子座である。
【0016】
好ましい実施形態においては分配機能をコードするヌクレオチド配列は配列番号31に示すE・コリparA遺伝子座及び配列番号32に示すE・コリpSC101par遺伝子座よりなる群から選択されるヌクレオチド配列である。
【0017】
好ましい実施形態においては、プロモーターは誘導性プロモーターであり、より好ましくはompCプロモーターであり、更に好ましくは配列番号33に示すompCプロモーターである。
【0018】
1つの実施形態において、選択された抗原をコードするヌクレオチド配列は同種の抗原をコードするヌクレオチド配列である。別の実施形態においては、選択された抗原をコードするヌクレオチド配列は異種の抗原をコードするヌクレオチド配列である。
【0019】
好ましい実施形態においては、選択された抗原をコードするヌクレオチド配列はウィルス抗原、細菌抗原、癌抗原及び自己免疫抗原よりなる群から選択される非相同抗原をコードするヌクレオチド配列である。
【0020】
本発明はまた本発明の弱毒化サルモネラ・パラチフスA菌株1つ以上を含む医薬品製剤を包含する。好ましくは、医薬品製剤は経口用医薬品製剤である。
【0021】
本発明は更に、被験体に本発明の医薬品製剤の免疫学的有効量を投与することを含む被験体において免疫応答を誘導する方法を包含する。好ましくは、免疫応答は防御免疫応答である。
【0022】
医薬品製剤の免疫学的有効量は医薬品製剤内にS・パラチフスA菌株の約10cfu〜約1010cfu、より好ましくは約10cfu〜約10cfuを含有する。
【0023】
1つの実施形態において、免疫応答はサルモネラ・パラチフスAに対するものである。別の実施形態においては、免疫応答は選択された抗原に対するものである。更に別の実施形態においては、免疫応答はサルモネラ・パラチフスA及び選択された抗原の両方に対するものである。
【0024】
ラムダレッド媒介突然変異誘発系を使用することにより本発明のS・パラチフス菌株由来の種々の染色体の遺伝子座及び遺伝子を突然変異又は欠失させてよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(発明の詳細な説明)
A.弱毒化S・パラチフスA菌株
本発明は弱毒化S・パラチフスA菌株に関する。このような弱毒化S・パラチフスA菌株は被験体に疾患を誘発することなく被験体に免疫応答を誘導するために使用してよい。
【0026】
本発明の出発物質として使用するS・パラチフスA菌株は何れのS・パラチフスA菌株であってもよく、そして菌株の実体は重要ではない。好ましいS・パラチフスA菌株はS・パラチフスA9150菌株である。
【0027】
本発明のS・パラチフスA菌株は弱毒化されている。本明細書においては、S・パラチフスAの弱毒化菌株とは、被験体において疾患を誘発する能力が低減、減少又は沈静化されているもの、又は、被験体において疾患を誘発する能力を完全に喪失しているものである。弱毒化菌株は遺伝子1つ以上の発現の低減又は消失を呈するか、活性が低減又は消失している蛋白1つ以上を発現するか、生育して分裂する能力の低下を呈するか、又は、これらの特性の2つ以上の組合せを呈してよい。本発明の弱毒化菌株は生存又は死滅していてよい。
【0028】
本発明の弱毒化S・パラチフスA菌株の外に、他の腸病原菌(例えばサルモネラ・チフス、サルモネラ・パラチフスB、赤痢菌、コレラ菌)、片利共生菌(例えばラクトバチルス、Streptococcus gordonii)及び認可ワクチン菌株(例えばBCG)の弱毒化菌株も本発明の範囲に包含される。これらの追加的菌株は本発明のS・パラチフスA菌株の弱毒化突然変異の全てを有し、本発明の安定化プラスミド発現系で形質転換してよく、そして本明細書に記載する通り免疫化組成物として使用してよい。
【0029】
好ましい実施形態においては、本発明の弱毒化S・パラチフスA菌株はS・パラチフスAのguaBA遺伝子座、guaB遺伝子、guaA遺伝子、clpP遺伝子及びclpX遺伝子の1つ以上において突然変異を有する。例えば、本発明の弱毒化S・パラチフスA菌株は(i)guaB遺伝子及びclpP遺伝子において、(ii)guaA遺伝子及びclpP遺伝子において、(iii)guaB遺伝子、guaA遺伝子及びclpP遺伝子において、(iv)guaBA遺伝子座及びclpP遺伝子において、(v)guaB遺伝子及びclpX遺伝子において、(vi)guaA遺伝子及びclpX遺伝子において、(vii)guaB遺伝子、guaA遺伝子及びclpX遺伝子において、(viii)guaBA遺伝子座及びclpX遺伝子において、(ix)guaB遺伝子、clpP遺伝子及びclpX遺伝子において、(x)guaA遺伝子、clpP遺伝子及びclpX遺伝子において、(xi)guaB遺伝子、guaA遺伝子、clpP遺伝子及びclpX遺伝子において、(xii)guaBA遺伝子座、clpP遺伝子及びclpX遺伝子において、突然変異を有してよい。
【0030】
本明細書に記載する遺伝子座及び遺伝子の突然変異は何れかの突然変異、例えば核酸の欠失、挿入又は置換の1つ以上であってよい。突然変異は、遺伝子座又は遺伝子からの発現の低減又は非存在、又は遺伝子座又は遺伝子によりコードされるポリペプチドの活性の低減又は非存在をもたらす遺伝子座又は遺伝子の何れかの欠失、挿入又は置換であってよい。突然変異は遺伝子座又は遺伝子のコーディング又は非コーディング領域におけるものであってよい。
【0031】
好ましくは、本発明においては、S・パラチフスA菌株の染色体ゲノムは、guaBA遺伝子座を除去するか、何らか別の方法で修飾すること、そしてこれによりグアニンヌクレオチドの新規生合成をブロックすることにより修飾される。より好ましくは、guaBA遺伝子座における突然変異はプリン代謝経路酵素IMPデヒドロゲナーゼ(guaBによりコードされる)及びGMP合成酵素(guaAによりコードされる)を不活性化する。これらの突然変異の結果、S・パラチフスAは新規のGMP延いてはGDP及びGTPヌクレオチドを合成できなくなり、このために哺乳類組織における細菌生育が激しく制限される。インビトロにおいては、本発明のΔguaBA S・パラチフスA突然変異体はグアニンを補給しない限り最小培地中で生育することはできない。組織培養においては、本発明のΔguaBA S・パラチフスA突然変異体はその侵襲能力の顕著な低下を示すことがわかっている。ΔguaBA S・パラチフスA突然変異体は哺乳類宿主の組織に由来するグアニンヌクレオチドを捕獲する場合がある。しかしながら、そのS・パラチフスAへの同化は、グアニンサルベージ経路内にヌクレオチド前駆体として取り込まれるべきペリプラズムヌクレオチダーゼによるヌクレオシドへの脱ホスホリル化を予め必要とする。従って、ヌクレオチドは哺乳類宿主の細胞内環境において容易に使用できるため、グアニンヌクレオチドの新規合成による弱毒化はサルベージ経路の不全によるか、又は、依然として不明確な理由の何れかによるものである。
【0032】
GMP合成酵素をコードするS・パラチフスA9150のguaA遺伝子は1578bpの大きさ(配列番号36)であり、そしてNCBI BLASTヌクレオチド比較により測定した場合S・チフスTy2のguaA遺伝子に98%相同である。欠失突然変異体はGuaAの適切な折畳又は活性が防止されるようにS・パラチフスAのguaA遺伝子のコーディング領域の一部を排除することにより作成できる。例えばコーディング領域の約25〜約1500bp、約75〜約1400bp、約100〜約1300bp、又は全てを欠失させることができる。或いは、欠失突然変異は遺伝子の適切な読み枠がシフトするようにS・パラチフスAのguaA遺伝子の例えば1〜100bpフラグメントを排除することにより作成できる。後者の例においては、非センスポリペプチドを作成するか、フレームシフト誘導終止コドンによりポリペプチド合成を中断させてよい。欠失の好ましい大きさは約75〜750bpである。guaA遺伝子を超えて伸びるような欠失、即ちリボソーム結合部位におけるもののような、guaA遺伝子の翻訳を制御するエレメントにおける欠失を作成することもできる。
【0033】
IMPデヒドロゲナーゼをコードするS・パラチフスA9150のguaB遺伝子は1467bpの大きさ(配列番号35)であり、そしてNCBI BLASTヌクレオチド比較により測定した場合S・チフスTy2のguaB遺伝子に98%相同である。欠失突然変異体はGuaBの適切な折畳又は活性が防止されるようにS・パラチフスAのguaB遺伝子のコーディング領域の一部を排除することにより作成できる。例えばコーディング領域の約25〜約1400bp、約75〜約1300bp、約100〜約1200bp、又は全てを欠失させることができる。或いは、欠失突然変異は遺伝子の適切な読み枠がシフトするようにS・パラチフスAのguaB遺伝子の例えば1〜100bpフラグメントを排除することにより作成できる。後者の例においては、非センスポリペプチドを作成するか、フレームシフト誘導終止コドンによりポリペプチド合成を中断させてよい。欠失の好ましい大きさは約75〜750bpである。guaB遺伝子を超えて伸びるような欠失、即ちプロモーターにおけるもののような、guaB遺伝子の転写を制御するエレメントにおける欠失を作成することもできる。
【0034】
セリンプロテアーゼをコードするS・パラチフスA9150のclpP遺伝子は624bpの大きさ(配列番号37)であり、そしてNCBI BLASTヌクレオチド比較により測定した場合S・チフスTy2のclpP遺伝子に99%相同である。欠失突然変異体はClpPの適切な折畳又は活性が防止されるようにS・パラチフスAのclpP遺伝子のコーディング領域の一部を排除することにより作成できる。例えばコーディング領域の約25〜約600bp、約75〜約500bp、約100〜約400bp、又は全てを欠失させることができる。或いは、欠失突然変異は遺伝子の適切な読み枠がシフトするようにS・パラチフスAのclpP遺伝子の例えば1〜100bpフラグメントを排除することにより作成できる。後者の例においては、非センスポリペプチドを作成するか、フレームシフト誘導終止コドンによりポリペプチド合成を中断させてよい。欠失の好ましい大きさは約25〜600bpである。clpP遺伝子を超えて伸びるような欠失、即ちプロモーターにおけるもののような、clpP遺伝子の転写を制御するエレメントにおける欠失を作成することもできる。
【0035】
シャペロンATPaseをコードするS・パラチフスA9150のclpX遺伝子は1272bpの大きさ(配列番号38)であり、そしてNCBI BLASTヌクレオチド比較により測定した場合S・チフスTy2のclpX遺伝子に99%相同である。欠失突然変異体はClpXの適切な折畳又は活性が防止されるようにS・パラチフスAのclpX遺伝子のコーディング領域の一部を排除することにより作成できる。例えばコーディング領域の約25〜約1200bp、約75〜約1100bp、約100〜約1000bp、又は全てを欠失させることができる。或いは、欠失突然変異は遺伝子の適切な読み枠がシフトするようにS・パラチフスAのclpX遺伝子の例えば1〜100bpフラグメントを排除することにより作成できる。後者の例においては、非センスポリペプチドを作成するか、フレームシフト誘導終止コドンによりポリペプチド合成を中断させてよい。欠失の好ましい大きさは約75〜750bpである。clpX遺伝子を超えて伸びるような欠失、即ちプロモーターにおけるもののような、clpX遺伝子の転写を制御するエレメントにおける欠失を作成することもできる。
【0036】
欠失は、本明細書に記載した遺伝子座又は遺伝子のいずれかにおいて、遺伝子座又は遺伝子内に位置する好都合な制限部位を用いるか、又は、オリゴヌクレオチドを用いた部位指向性の突然変異誘発により行うことができる(Sambrookら、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Eds.,Cold Spring Harbor Publications(1989))。
【0037】
遺伝子座又は遺伝子の不活性かはまた、何れかの好都合な制限部位を用いた外来性DNAの挿入により、又は、オリゴヌクレオチドを用いた部位指向性の突然変異誘発(Sambrookら、上出)により、遺伝子座又は遺伝子の正しい転写を妨害するように行うこともできる。遺伝子座又は遺伝子を不活性化できる挿入の典型的な大きさは1塩基対〜100kbpであるが、100kbpより小さい挿入が好ましい。挿入は遺伝子座又は遺伝子のコーディング領域の内部、又はコーディング領域とプロモーターとの間の何れかにおいて行うことができる。
【0038】
遺伝子座及び遺伝子の不活性化のための他の方法は他の腸内細菌のguaBA遺伝子座、guaA、guaB、clpP及びclpX遺伝子において起こした欠失又は挿入のサルモネラへの転移、トランスポゾン発生欠失及びDNA挿入部の不正確な切り出しを包含する。
【0039】
好ましくは、細菌の遺伝子座及び遺伝子はラムダレッド媒介突然変異誘発を用いて突然変異させる(Datsenko and Wanner,PNAS USA 97:6640−6645(2000))。慨すれば工程1において突然変異の為にターゲティングされた宿主細菌をλRedリコンビナーゼをコードする温度感受性プラスミドで形質転換する。これらの細菌をアラビノースの存在下に生育させることによりλRed生産を誘導する。標的配列の染色体突然変異誘発は標的遺伝子が抗生物質耐性マーカーにより置き換えられている線状DNAによる宿主のエレクトロポレーションにより達成する。このDNAはまたλレッド媒介相同組み換えによる耐性マーカーの染色体組み込みを可能にするフランキング染色体配列の短鎖領域をコードしている。組み換え体は適切な抗生物質を含有する固体培地上で選択し、λRedリコンビナーゼをコードするプラスミドの消失を促進する温度においてインキュベートする。工程2においては、宿主染色体中にこの時点で存在する抗生物質耐性マーカー内のユニークな配列をターゲティングするFLPリコンビナーゼをコードする温度感受性プラスミドで細菌を形質転換することにより染色体耐性マーカーの除去を促進する。形質転換体は構成的に発現されるFLPリコンビナーゼの存在を可能にする温度において生育させる。突然変異体をPCRによりスクリーニングし、FLPリコンビナーゼをコードするプラスミドの消失を促進する温度において生育させ、そして選択して保存に付す。
【0040】
本発明の弱毒化S・パラチフスA菌株は追加的遺伝子1つ以上において突然変異を含有してよい。サルモネラsppの追加的弱毒化突然変異の広範な考察は米国特許6,682,729に示されており、例示される遺伝子は種々の生化学的経路、全般的調節系、熱ショック蛋白、他の調節遺伝子、及び推定ビルレンス特性をコードするものを包含する。このような弱毒化突然変異の特定の例は、限定しないが(i)栄養要求性突然変異、例えばaro、gua、nad、thy及びasd突然変異;(ii)全般的調節機能を不活性化させる突然変異、例えばcya、crp、phoP/phoQ、phoP及びompR突然変異;(iii)ストレス応答を改質する突然変異、例えばrecA、htrA、htpR、hsp及びgroEL突然変異;(iv)特定のビルレンス因子における突然変異、例えばpag及びprg;(v)DNAトポロジーに影響する突然変異、例えばtopA突然変異;(vi)表面多糖類の生物発生をブロックする突然変異、例えばrfb、galE及びvia突然変異;(vii)自殺系を改質する突然変異、例えばsacB、muc、hok、gef、kil及びphlA突然変異;(viii)P22によりコードされるリソゲン、λネズミトランスグリコシラーゼ及びS−遺伝子のような自殺系を導入する突然変異;及び(ix)正しい細胞周期を途絶又は改質させる突然変異、例えばminB突然変異を包含する。
【0041】
B.安定化された発現プラスミド系
本発明の弱毒化S・パラチフスA菌株は選択されたポリペプチド(抗原)を発現するように操作された菌株を包含する。このような弱毒化S・パラチフスA菌株はS・パラチフスそのものへの免疫応答を誘導するため、又は、弱毒化S・パラチフスA菌株により発現される選択された抗原に対する免疫応答を油どうするため、又は両方の為に使用できる。
【0042】
そのような弱毒化S・パラチフスA菌株は安定化された発現プラスミド系により形質転換される。安定化された発現プラスミド系は選択された抗原をコードする。
【0043】
安定化された発現プラスミド系はプラスミド維持系(PMS)及び選択された抗原をコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターを含む。
【0044】
安定化された発現プラスミド系は細菌における発現ベクターの維持を、2つの独立したレベルにおいて、(1)平衡致死維持系に対する単独依存を除去すること;及び(2)プラスミド分画系を取り込むことにより発現ベクターのランダムな分離を防止し、これによりその固有性及び安定性を増強することにより最適化する。
【0045】
PMSは(a)複製起点、(b)分離後殺傷機能少なくとも1つ、及び(c)分画機能少なくとも1つを包含する。PMSの記載したエレメントの各々は安定化された発現プラスミド系の個々のカセットであってよい。カセットの各々はカセットの5’及び3’末端に位置するユニークな制限酵素切断部位を含んでよい。
【0046】
好ましい安定化された発現プラスミド系は参照により全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願11/542,264に記載されているものである。
【0047】
1.複製起点
PMSは細胞当たり一定範囲のプラスミドコピーにまで発現ベクターを限定する制限コピー数の複製起点を包含する。種々の選択された抗原に伴う毒性は様々な程度(例えばPlasmodium falciparumのような寄生性の生物から誘導される抗原に関するより高い毒性〜破傷風毒素のフラグメントCに関する実質的無毒性)に渡っているため、本発明の安定化された発現プラスミド系は低又は中コピー数の発現ベクター(プラスミド)の何れかに基づいている。当業者の知る通り、複製起点の選択は毒性の程度に依存することになり、即ちコピー数は細菌株に対する毒性が上昇するに従って低下しなければならない。
【0048】
複製起点は細胞当たり約2〜約75コピー、細胞当たり約5〜約60コピー、細胞当たり約5〜約30コピー又は細胞当たり約5〜約15コピーである平均コピー数を与えることが好ましい。本明細書に包含される複製起点はE・コリプラスミドpAT153(oriE1、染色体当たり約60コピー相当)、E・コリプラスミドpACYC184(ori15A、染色体当たり約15コピー相当)、及び、サルモネラ・ネズミチフス菌プラスミドpSC101(ori101、染色体当たり約5コピー相当)から誘導される。pSC101、pACYC184及びpAT153に関する複製カセットの操作された起点の構造上組織は構造及び機能において類似している。
【0049】
本発明の複製起点は天然に存在する複製起点並びに天然に存在する複製起点をコードするヌクレオチド配列に実質的に相同であり、そして天然に存在する複製起点の示す機能を保持しているヌクレオチド配列によりコードされる複製起点の両方を包含する。
【0050】
好ましい実施形態においては、複製起点をコードするヌクレオチド配列は配列番号28のoriE1配列、配列番号30のori101配列及び配列番号29のori15A配列よりなる群から選択されるヌクレオチド配列である。
【0051】
別の好ましい実施形態においては、複製起点は配列番号28に示すゲノム当たり約5コピー相当のコピー数を与えるpSC101由来のoriE1遺伝子座である。
【0052】
2.分配機能
PMSはまた、当該分野でも知られており、そして本明細書においては「分離系」及び「分配系」とも称する分配機能を包含する。分配機能は、その機能の非存在下における相当するプラスミドの送達の頻度と比較した場合に各新規分裂細菌細胞に対するプラスミドの良好な送達の頻度を増大させる作用を有する何れかのプラスミド安定性増強機能である。分配機能は、例えば等分配系、対部位(pair−site)分配系、及びPartition Systems of Bacterial Plasmids.B.E.Funnell and R.A.Slavcev,Plasmid Biology,2004,BE Funnell and GJ Phillips, eds.ASM Press,Washington DCの第5章の表1に記載の系を包含する。
【0053】
本発明の分配系は天然に存在する分配系、並びに天然に存在する分配系をコードするヌクレオチド配列に実質的に相同であり、そして天然に存在する分配系の示す機能を保持しているヌクレオチド配列によりコードされる分配系の両方を包含する。
【0054】
例示される分配機能は限定しないがpSC101、F因子、P1プロファージ及びIncFII薬剤耐性プラスミドの系を包含する。
【0055】
特に、par受動分配遺伝子座を使用できる。par遺伝子座の機能はDNAジャイレースの結合部位でも有る複製起点における増大するプラスミドスーパーコイル化に関連していると考えられる。例示されるpar配列番号は配列番号32に示すE・コリのものである(Millerら、Nucleotide sequence of the partition locus of Escherichia coli plasmid pSC101,Gene 24:309−15(1983);ゲンバンクアクセッション番号X01654、ヌクレオチド4524〜4890))。
【0056】
活性分配のparA遺伝子座も又使用してよい。例示されるparA遺伝子座配列は配列番号31に示す。
【0057】
3.分離後殺傷機能
PMSは更に分離後殺傷(PSK)機能少なくとも1つを誘導する。PSK機能は目的のプラスミドを継承しない何れかの新規分裂細菌細胞の死滅をもたらす機能であり、そして特に、平衡致死系、例えばasd又はssb、蛋白性系、例えばphd−doc、及びアンチセンス系、例えばhok−sokを包含する。
【0058】
本発明のPSK機能は天然に存在するPSK機能、並びに天然に存在するPSK機能をコードするヌクレオチド配列に実質的に相同であり、そして天然に存在するPSK機能の示す機能を保持しているヌクレオチド配列によりコードされるPSK機能の両方を包含する。
【0059】
好ましい実施形態においては、PSK機能はssb平衡致死系である。S・チフス由来の1本鎖結合蛋白(SSB)を使用することにより染色体ssb遺伝子内に導入された他の態様では致死性となる突然変異をトランス補完する。E・コリSSB蛋白の生化学的及び代謝的な役割はLohmanら、Annual Reviews in Biochemistry 63:527,1994及びChaseら、Annual Reviews in Biochemistry 55:103,1986(参照により本明細書に組み込まれる)において広範に考察されている。
【0060】
PSK昨日がssb平衡致死系である安定化された発現プラスミド系を含む本発明のS・パラチフスA菌株においては、細菌のネイティブのssb遺伝子座が不活性化される。ネイティブssb遺伝子座は何れかの当該分野で知られた手段、例えば温度感受性複製起点を含む自殺ベクター又はラムダレッド媒介突然変異誘発により不活性化してよい(Datsenko and Wanner,PNAS USA 97:6640−6645(2000))。好ましい態様において、ラムダレッド媒介突然変異誘発を用いることにより本発明の弱毒化S・パラチフスA菌株のssb遺伝子座を不活性化する。
【0061】
本発明の別の態様において、PSK機能は、誘導的及び構成的ssb遺伝子プロモーターの両方がssb PSK機能のプロモーターとして使用されるssb遺伝子座である。好ましい実施形態においては、PSK機能はssb誘導性プロモーター、ssb構成的プロモーター及びssbコード領域を含む。好ましくは、ssb遺伝子座はシゲラ・フレクスナー、サルモネラ・チフス及びE・コリの何れか1つのssb遺伝子座である。1つの実施形態において、ssb遺伝子座は配列番号34に示すS・フレクスナー2a菌株CVD1208sのssb遺伝子座である。
【0062】
本発明の関連する態様において、突然変異した対立遺伝子、例えばssb−1(又はこの対立遺伝子に機能的に同等である何れかの突然変異、例えばW54S;Carliniら、Mol.Microbiol.10:1067−1075(1993))を安定化された発現プラスミド系内に取り込むことにより、SSB1様蛋白の過剰発現により高コピー数プラスミドを増強し、これによりSSBの所望の生物学的に活性な4量体を形成してよい。
【0063】
別の実施形態において、PMSは2PSK機能を含む。
【0064】
4.選択された抗原
安定化された発現プラスミド系はまたプロモーター制御下に選択された抗原をコードするポリヌクレオチドを含む。
【0065】
プロモーターは好ましくはオスモル濃度のような生物学的に該当するシグナルにより制御される環境上調節可能なプロモーターである。好ましい実施形態においては、プロモーターはompCプロモーターである。ompC遺伝子は細菌細胞の該膜内に3量体として挿入するポーリン蛋白をコードする。ompCの発現及び制御はPrattら、Molecular Microbiology 20:911,1996及びEggerら、Genes to Cells 2:167,1997においてかなり詳細に考察されている。好ましい実施形態においては、E・コリ由来のompCプロモーターフラグメントは配列番号33において示される。参照により全体が本明細書に組み込まれる米国特許6,703,233を参照できる。このカセットの転写はtrpA転写ターミネーターにより3’遠位領域において終止してよい。
【0066】
1つの態様において、誘導性プロモーターは突然変異したPompC1又はPompC3プロモーターである。プロモーターは選択された抗原の下流の転写のみを制御するために使用してよい。
【0067】
本発明は自身を発現する弱毒化S・パラチフスA菌株を破壊せず、そして、抗原を発現している弱毒化S・パラチフスA菌株を被験体に投与した場合に免疫応答を誘発する何れかの抗原の発現を包含する。選択された抗原は相同(S・パラチフスA由来)又は非相同であってよい。
【0068】
選択された抗原の非限定的な例は:シガ毒素1(Stx1)抗原、シガ毒素2(Stx2)抗原、B型肝炎、ヘモフィルス・インフルエンザb型、A型肝炎、無細胞百日咳(acP)、水痘、ロタウィルス、ストレプトコッカス・ニューモニア(ニューモコッカル)及びナイセリア・メニンギティディス(髄膜炎菌)を包含する。Ellisら、Advances in Pharm.,39:393423,1997を参照できる(参照により本明細書に組み込まれる)。抗原がシガ毒素2抗原である場合、シガ毒素2抗原は例えばBサブユニット5量体又は遺伝子的に脱毒素化されたStx2であることができる。生体防御に関連する別の抗原は、1)炭疽毒素保護抗原PA83部分のドメイン1つ以上、例えば限定しないがドメイン4(真核生物細胞結合ドメイン;D4),PA83のプロセシングされた63kDaの生物学的に活性な形態、又は、完全長PA83;及び2)何れかの組合せにおける何れかの神経毒血清型A、B、C、D、E、F又はGの真核生物細胞結合重鎖フラグメントを含むクロストリジウム・ボツリナム抗原を包含する。他の選択された抗原は参照により本明細書に組み込まれる米国特許6,190,669に開示されているものの各々を包含する。
【0069】
1つの態様において、選択された抗原は癌に対する免疫応答を誘導する抗原である。別の態様においては、選択された抗原は自己抗原、自己免疫又は免疫学的疾患に関与するとされているB細胞受容体及び/又はT細胞受容体に対する免疫応答を誘発するように設計される。例えば身体組織又は環境の抗原に対抗して不適切な免疫応答が生じた場合、本発明の免疫化組成物を用いることにより自己抗原、B細胞受容体及び/又はT細胞受容体に対する免疫応答を誘導し、これにより応答をモジュレートして疾患を緩解してよい。例えばこのような手法は重症筋無力症、全身エリテマトーデス、慢性関節リウマチ、多発性硬化症、アレルギー及び喘息を治療する場合に効果的である。
【0070】
本発明の別の態様において、安定化された発現プラスミド系は選択可能なマーカー又は温度感受性マーカー、例えば薬剤耐性マーカーをコードするポリヌクレオチドを包含してよい。薬剤耐性マーカーの非限定的な例はアミノグリコシドカナマイシン及び/又はネオマイシンに対する耐性を付与することが当該分野で知られているaphを包含する。
【0071】
本明細書においてヌクレオチド配列又はアミノ酸配列に言及している場合の「実質的に相同」又は「実質的な相同体」という用語は、核酸配列又はアミノ酸配列が、相当するレファレンス配列と同じ基本的機能をその配列が果たすことができる程度に十分な相同性を、レファレンス配列と比較した場合に有していることを指し;実質的に相同な配列は典型的にはレファレンス配列と比較した場合に少なくとも約70パーセント配列上同一であり、レファレンス配列と比較した場合に、典型的には少なくとも約85パーセント配列上同一であり、好ましくは少なくとも約90又は95パーセント配列上同一であり、そして最も好ましくは約96、96、98又は99パーセント配列上同一である。明細書全体を通じて、特定のヌクレオチド配列及び/又はアミノ酸配列に言及する場合は、そのようなヌクレオチド配列及び/又はアミノ酸配列は実質的に相同な配列と置き換えてよい。
【0072】
C.免疫応答を誘導する方法
本発明はまた被験体における免疫応答を誘導する方法を包含する。免疫応答は弱毒化S・パラチフスA菌株自体、安定化された発現プラスミド系により形質転換された弱毒化S・パラチフスA菌株により発現される選択された抗原、又は両方に対するものであってよい。
【0073】
1つの実施形態において免疫応答を誘導する方法は、本発明の菌株1つ以上を被験体において免疫応答を誘導するために十分な量で被験体に投与することを含む。本明細書においては、本発明の菌株は未形質転換及び形質転換された弱毒化S・パラチフスA菌株の両方を包含する。
【0074】
さらなる実施形態において、免疫応答を誘導する方法は、本発明の菌株1つ以上を含む医薬品製剤を被験体において免疫応答を誘導するために十分な量(免疫学的有効量)で被験体に投与することを含む。
【0075】
簡便の為に、本発明の菌株及び菌株を含む医薬品製剤を本明細書においては「免疫化組成物」と称する。当業者の知る通り、免疫化組成物はワクチンと同義語である。
【0076】
本明細書においては、「免疫応答」とは免疫化組成物に対する被験体の免疫系の生理学的応答を指す。免疫応答は先天免疫応答、適応免疫応答又は両方を包含してよい。
【0077】
本発明の好ましい実施形態においては、免疫応答は保護免疫応答である。保護免疫応答は被験体に対して免疫学的な細胞記憶を付与するものであり、同じか同様の抗原への二次的曝露が以下の特性、即ち:免疫化組成物への以前の曝露が非存在の場合の選択された抗原への曝露に起因する誘導期より短い誘導期;免疫化組成物への以前の曝露が非存在の場合の選択された抗原への曝露に起因する抗体生産よりも長期間継続する抗体生産;免疫化組成物への以前の曝露が非存在の場合の選択された抗原への曝露により生産される抗体の型及び質と比較した場合に生産された抗体の型及び質が変化していること;免疫化組成物への以前の曝露が非存在の場合の選択された抗原への曝露に応答して生じる場合よりも、IgG抗体がIgMより高濃度及び長期持続において生じるクラス応答のシフト;免疫化組成物への以前の曝露が非存在の場合の選択された抗原への曝露に起因する抗原に対する抗体の平均親和性と比較した場合の抗原に対する抗体の増大した平均親和性(結合定数);及び/又は二次免疫応答を特徴付ける当該分野で知られた他の特性の1つ以上を特徴とする作用を有する。
【0078】
免疫化組成物を投与してよい被験体は好ましくはヒトであるが、他の哺乳類、例えばサル、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ又はブタ、又はトリ、例えばニワトリであってもよい。
【0079】
1つの実施形態において、被験体はS・パラチフスA感染症を発症する危険性のある被験体である。別の実施形態においては、被験体はS・チフス感染症又はS・パラチフスA感染症に対して免疫学的にナイーブであるか、又は、既存の免疫を呈する。
【0080】
さらなる実施形態においては、本発明の菌株を投与する被験体はパラチフス熱に対して保護免疫応答を発生させる。
【0081】
D.製剤、用量及び投与様式
本発明の弱毒化菌株は、未形質転換及び安定化された発現プラスミド系で形質転換されたものの両方とも、免疫応答を誘導するために被験体に投与してよい。好ましい実施形態においては本発明の菌株は医薬品製剤において投与する。
【0082】
本発明の医薬品製剤は製薬上許容しうる担体、賦形剤、他の成分、例えばアジュバントを包含してよい。製薬上許容しうる担体、賦形剤、他の成分は本発明の菌株と適合性があり、そしてそのレシピエントに対して予定外の有害性を呈さない化合物、溶液、物質又は材料である。特に、本発明の担体、賦形剤、他の成分は、一般的に安全、非毒しえ及び生物学的にも他の点においても有害とならず、そして薬理学的に好適なプロファイルを呈する医薬品製剤の調製において有用なものであり、そして、家畜用並びにヒト用の医薬品用途において許容される担体、賦形剤、他の成分を包含する。
【0083】
適当な製薬上許容しうる担体及び賦形剤は当該分野で良く知られており、そして臨床上今日の必要性に応じて当業者が決定できる。当業者の知る通り、希釈剤は担体及び賦形剤の用語の範囲内に包含される。適当な担体及び賦形剤の例は、食塩水、緩衝食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノール、より詳細には(1)約1mg/mL〜25mg/mLヒト血清アルブミンを含有するDulbeccoのリン酸塩緩衝食塩水、pH約7.4、(2)0.9%食塩水(0.9%w/vNaCl)、(3)5%(w/v)デキストロース及び(4)水を包含する。
【0084】
本発明の免疫化組成物の投与の様式は、被験体への免疫応答の誘導をもたらすような何れかの適当な送達手段及び/又は方法であってよい。送達手段は、限定しないが、非経腸投与方法、例えば皮下(SC)注射、静脈内(IV)注射、経皮、筋肉内(IM)、皮内(ID)、並びに経腸、例えば、経口、経鼻、膣内、肺(吸入)、眼内、直腸投与、又は粘膜組織に接触する免疫化組成物を生じさせる何れかの他の様式によるものを包含してよい。好ましくは投与は経口である。
【0085】
本発明の1つの実施形態において、免疫化組成物は吸入による送達のための霧状化分散体として存在する。種々の液体及び粉末の製剤を治療すべき被験体の肺内への吸入のために従来の方法により調製できる。免疫化組成物の霧状化分散体は典型的には霧状化又はエアロゾル化分散体に共通の担体、例えば緩衝食塩水及び/又は当該分野で良く知られている他の化合物を含有する。吸入による免疫化組成物の送達は粘膜組織の広範な領域に免疫化組成物を急速に分散させること、並びに、免疫化組成物の循環のための血液による急速な取り込みという作用を有する。
【0086】
更に又、免疫化組成物はまた液体形態で存在する。液体は経口投薬用、眼内又は鼻内等薬用に滴下剤として、又は浣腸又は圧注剤としての用途であることができる。免疫化組成物を液体として製剤する場合、液体は免疫化組成物の溶液又は懸濁液の何れかであることができる。当該分野で良く知られている免疫化組成物の溶液又は懸濁液のための適当な製剤はその意図される用途に応じて種々のものが存在する。水又は他の水性ベヒクル中に調製される経口投与用の液体製剤は種々の懸濁剤、例えばメチルセルロース、アルギネート、トラガカント、ペクチン、ケルギン、カラギーナン、アカシア、ポリビニルピロリドン、及びポリビニルアルコールを含有してよい。液体製剤はまた、免疫化組成物と共に水和剤、甘味料及び着色フレーバー剤を含有する溶液、乳液、シロップ及びエリキシルを包含してよい。
【0087】
経口投薬を介した液体形態における記載した免疫化組成物の送達は、胃腸及び泌尿器の管の粘膜を免疫化組成物に曝露する。胃のpH範囲に抵抗できるように安定化された適当な用量は、胃腸管の全ての部分、特にその上部に対し、免疫化組成物を送達する。組成物の有効な送達が胃腸管に沿って分布するように液体経口剤型の免疫化組成物を安定化させる何れかの方法が本明細書に記載した免疫化組成物と共に使用されることを意図しており、酸性pHに対して弱毒化細菌を保護するためのカプセル及び再懸濁緩衝液が包含される。使用される特定の製薬上許容しうる担体又は希釈剤は本発明にとって重要ではなく、当該分野で慣用的なものである。希釈剤の例は、胃内の胃酸に対して緩衝作用を示すための緩衝液、例えばスクロースを含有するクエン酸塩緩衝液(pH7.0)、重炭酸塩緩衝液(pH7.0)単独又はアスコルビン酸、乳糖及び場合によりアスパルテームを含有する重炭酸塩緩衝液(pH7.0)を包含する(Levineら、Lancet,II:467−470(1988))。担体の例は、蛋白、例えば脱脂乳中に存在するもの;糖類、例えばスクロース;又はポリビニルピロリドンを包含する。
【0088】
点眼液を介した液体形態における記載した免疫化組成物の送達は眼及び関連組織の粘膜を免疫化組成物に曝露させる。点眼液用の典型的な液体担体は緩衝性付与され、そしてよく知られた当業者が容易に発見できる他の化合物を含有する。
【0089】
点鼻薬を介した液体形態における記載した免疫化組成物の送達は鼻及び副鼻腔及び関連組織の粘膜を免疫化組成物に曝露させる。点鼻液用の液体担体は典型的には種々の形態の緩衝食塩水である。
【0090】
免疫化組成物の注射用製剤は種々の担体、例えば植物油、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムミド、乳酸エチル、炭酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコール)等を含有してよい。生理学的に許容される賦形剤は例えば5%デキストロース、0.9%食塩水、リンゲル液又は他の適当な賦形剤を包含してよい。筋肉内投与用の調製品は製薬用賦形剤、例えば注射用水、0.9%食塩水又は5%グルコース溶液中において投与できる。
【0091】
本発明の弱毒化S・パラチフスA菌株は他の適当な薬理学的又は生理学的に活性な薬剤、例えば抗原性及び/又は他の生物学的に活性な物質と連携して被験体に投与してよい。
【0092】
安定化された発現プラスミド系を含む弱毒化S・パラチフスA菌株は選択された抗原の発現が開始される前、同時、又は後に被験体に投与してよい。例えば、安定化された発現プラスミド系を含む弱毒化S・パラチフスA菌株は、細菌の投与時に選択された抗原に対して免疫応答が生じるように十分な量の選択された抗原を細菌が生産できるように被験体への投与の前に培養してよい。
【0093】
本発明の免疫化組成物の投与の量及び速度は例えば従来の抗体力価測定手法及び従来の生物薬効/生体適合性のプロトコルを用いることにより、予定外の実験を行うことなく当業者が容易に決定してよい。投与の量及び速度は被験体の体重及び健康状態、被験体に投与する細菌の実体、選択された抗原を発現するように操作された菌株において発現されるポリペプチドの実体、所望の治療効果、所望の生物活性持続時間、及び、免疫化組成物の投与の様式のような要因に基づいて変動する。
【0094】
一般的に、被験体に投与する免疫化組成物の量は、S・パラチフスA菌株に対し、又は、S・パラチフスA菌株により発現されるべき選択された抗原に対し、被験体において免疫応答を誘導するために十分な量である(免疫学的有効量)。好ましくは、免疫応答は保護免疫応答である。
【0095】
一般的に使用される用量はS・パラチフスA菌株約10cfu〜1010cfu、好ましくは約10cfu〜10cfu又は、約10cfu〜10cfuを含有する。経口投与用の製剤はS・パラチフスA菌株約10cfu〜1010cfu、好ましくは約10cfu〜10cfuを含有し、そして製剤は胃内の酸性pHに対して弱毒化細菌を保護するためにカプセル化又は緩衝溶液中に再懸濁する。経鼻投与用の製剤はS・パラチフスA菌株約10cfu〜1010cfu、好ましくは約10cfu〜10cfuを含有し、そして点鼻薬中又はエアロゾル中で細菌を与える鼻内投与の為に使用される。
【0096】
免疫化組成物は単一用量において、又は多用量において、長期間に渡り投与してよい。特に免疫化組成物は1週間、2週間、3週間、1ヶ月、6週間、2ヶ月、10週間、3ヶ月、4ヶ月、6ヶ月、1年の期間に渡り、又は1年より長期の延長された期間、投与してよい。
【0097】
免疫化組成物は均一用量及び簡易投薬のための投与単位において提供してよい。各単位剤型は製薬上許容しうる担体、賦形剤又は他の成分と共に、所望の免疫応答をもたらすように計算された本発明の菌株の所定量を含有する。
【0098】
本発明はまた、本発明の免疫化組成物1つ以上、及び場合により組成物を投与するための手段、及び、組成物を投与するための説明書を含むキットを包含する。
【実施例】
【0099】
1.細菌株及び培養条件
エシェリシア・コリ菌株DH5アルファを全プラスミド構築の為に使用した。生菌弱毒化S・チフス菌株CVD908−htrAは欠失突然変異を、芳香族化合物生合成経路を中断するaroC及びaroDにおいて、そして、ストレス応答蛋白をコードするhtrAにおいて保有している(Infect Immun.60:2(1992),pp.536−541及びJ.Biotechnol.44:1−3(1996),pp.193−196参照)。S・パラチフスA9150ロット番号11848はAmerican Type Culture Collection(Manassas,VA)より購入し、CV223及びCV224として保存した。CV223を全実験において使用した。
【0100】
E・コリDH5アルファは必要に応じて、抗生物質カルベニシリン(carb;50μg/mL)、カナマイシン(kan;50μg/mL)又はクロラムフェニコール(cml;25μg/mL)を添加したLuria Bertani(LB)液体培地又は観点(Difco,Detroit,Mich)を用いて生育させた。CD908−htrA及びS・パラチフスA 9150及びその誘導体はグアニン(0.001%v/v)及び必要に応じて添加した抗生物質を含有する2xダイズ培地(リットル当たり20gHy−soyペプトン、10gHy−soyコウボエキス、3gNaCl、±15gの顆粒化寒天(Difco))と共に生育させた。液体培養物は特段の記載が無い限り16〜24時間250rpmにおいて30℃又は37℃でインキュベートした。
【0101】
補完性分析のために使用した変性最小培地(MMM)の組成はM9塩(K2HPO4、7g/L;KH2PO4、3g/L;(NH4)2SO4、1g/L(pH7.5))、0.5%(w/v)カザミノ酸(Difco)、0.5%(w/v)グルコース、0.01%(w/v)MgSO4・7H2O、顆粒化寒天(Difco)リットル当たり15g及び1μg/mLビタミンB1とした。
【0102】
2.プラスミド及び分子遺伝子的手法
本発明に記載したプラスミドのコンストラクトのためには標準的な手法を使用した(例えば参照により全体が本明細書に組み込まれるSambrookら、1989参照)。プラスミドの抽出及びDNAフラグメントのゲル精製は、製造元の指示に従ってそれぞれQIAprep Spin Miniprep及びQIAquick Gel Extractionキットを用いて実施した(Qiagen Inc.,Valencia,CA)。プラスミドpCR−Blunt II−TOPO(Invitrogen,Carlsbad,CA)、pGEM(登録商標)−T又はpGEM(登録商標)−TEasy(Promega,Madison,WI)は、VentTM DNAポリメラーゼ(New England Biolabs,Ipswich,MA)を用いて形成したブラント末端のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)産物をクローニングするための中間体として使用した。プラスミドpLowBlu184(E.M.Barry,未公開データ;CVD、University of Maryland,Baltimore)はpACYC184(ATCC)に基づいた低コピー数プラスミドであるが、AvaIとHindIIIの間にテトラサイクリン耐性遺伝子の変わりにpGEM(登録商標)−5Zf(+)由来のラクトースオペロン配列(2767−273bp;Promega,Madison,WI)を含有している。Taq−ProTMDNAポリメラーゼ(Denville Sci.,Metuchen、NJ)をラムダレッド媒介突然変異誘発のため、及び、滅菌水20μL中に希釈した細菌単コロニー5μLを用いた診断PCRの為に使用した。Taq−ProTMDNAポリメラーゼはまた、pGEM(登録商標)−T又はpGEM(登録商標)−TEasy内へのクローニングの前にVentTM DNAポリメラーゼにより形成した前処理PCRフラグメントに添加するために使用した。全ての制限酵素はNew England Biolabsより購入した。T4 DNAポリメラーゼ(NEB)を用いてブラント末端を有するDNAフラグメントを作成した。菌株のエレクトロポレーションは2.5kV、200Ω及び25μFに設定したGene Pulser装置(Bio−Rad)において実施した。DNAゲル電気泳動において使用した分子量マーカーは直ぐに使用できるO’GeneRulerTM 1kb DNA Ladder(#SM1163、Fermentas,Hanover,MD)である。
【0103】
3.ラムダレッド媒介突然変異誘発
この手法はDatsenko and Wanner(Proc Natl Acad Sci USA.2000 Jun 6;97(12):6640−50)に記載の通り、特定の変更を加えながら実施した。慨すれば、レッドヘルパープラスミドpKD46(このプラスミドに関する詳細はDatsenko and Wannerの参考文献を参照)を担持した細菌10コロニーをカルベニシリン及びL−アラビノース(0.2%)を添加した2xダイズ培地20mLに添加し、3時間250rpmで30℃において生育させた(〜0.6のOD600nm)。冷却滅菌水で3回洗浄し、100倍濃縮することにより細菌を電気コンピテントとした。コンピテント細胞をゲル精製PCR産物100ηg〜1μgでエレクトロポレーションに付した。エレクトロポレーションの後、グアニンの存在下又は非存在下に2xダイズ培地を用いながら細菌を修復した。細胞を3時間37℃で2xダイズ培地中インキュベートした後に、一夜、グアニン及びcmlを含有する2xダイズ寒天上にプレーティングした。抗生物質耐性コロニーを選択し、目的の染色体領域中の改変があるものをPCRによりスクリーニングした。陽性コロニーをcmlを含有するがカルベニシリンを含有しない2xダイズ培地上に再植菌し、pKD46の消失を確認した。cml耐性カセットの除去はDatsenko and Wannerの記載に従って実施し、pCP20を使用した。所望の遺伝子型を示したコロニーを、抗生物質を含有しない2xダイズ培地に再植菌し、抗生物質耐性表現型の消失を確認した。保存の為に選択したものをPCRにより再スクリーニングした後に20%(v/v)グリセロールを含有する2xダイズ培地中−70℃で凍結した。
【0104】
4.凝集
S・パラチフスA菌株は市販の血清(DifcoTM Salmonella O Antiserum Group A,Becton Dickson,Sparks,MD,ロット番号#4092221)を用いて試験した。慨すれば新しいプレートから採取した細菌の少量種菌をスライドガラス上のPBS 20μL中に懸濁した。抗血清5μLを添加し、凝集が観察されるまでスライドを穏やかに振とうした。S・フレクスナーワクチン菌株CVD1208(J Infect Dis.2004 Nov 15;190(10):1745−54)又はE・コリDH5アルファを陰性対照細菌として使用した。
【0105】
5.マウス腹腔内接種によるビルレンスの試験
サルモネラのビルレンスはInfect Immun.2001 Aug;69(8):4734−41において報告されている通り試験した。慨すれば、6〜8週齢の雌性BALB/cマウス(Charles River Breeding Laboratories,Inc.,Wilmington,Mass)(群当たりマウス3匹、ワクチン菌株当たり3群)に最終容量0.5mLにおいて10%(w/v)ブタ胃ムチン(Difco,ロット番号4092018)と混合した細菌(必要に応じてグアニン及び抗生物質の存在下に生育させ、そしてリン酸塩緩衝食塩水PBSに再懸濁した)の種々の10倍希釈物を腹腔内(ip)注射した。マウスは接種後72時間に渡り24時間毎に極限的瀕死状態(死亡直前)又は死亡に関してモニタリングした。マウス各群に関する50%致死用量(LD50)を直線回帰分析により計算した。
【0106】
6.guaBAの欠失の構築
S・パラチフスAゲノムの配列決定は本プロジェクト開始時には完了していなかった。従って、ラムダレッド媒介突然変異誘発用の全てのオリゴヌクレオチドプライマー及びその後のDNA鋳型はアノテーションされているS・チフスTy2ゲノム配列(ゲンバンクアクセッション番号NC_004631、2004年12月16日バージョン)に基づいて構築した。S・パラチフスAにおいて突然変異した領域をS・チフスのものと配列比較したところ、99%超のDNA配列同一性が判明した。
【0107】
イノシン−5’−モノホスフェートデヒドロゲナーゼ(guaB)及びグアノシンモノホスフェート合成酵素(guaA)をコードする遺伝子はオペロンを形成し、そしてS・チフスTy2ゲノム上の414059〜417178bpに位置している(配列番号26;guaBA遺伝子座に関する詳細な情報は米国特許6,190,669も参照できる)。プライマーCVOL13およびCVOL15(表1)は突然変異の為に設計された領域の外部の配列に結合する。プライマーCVOL28及びCVOL32はラムダレッド鋳型プラスミドpKD3の領域に結合するように設計した。得られたPCR産物はそれぞれS・チフスTy2ゲノム上の413846〜413945(CVOL28)及び417109〜417010(CVOL32)の位置においてguaBAに相同な配列の100bpにより何れかの側がフランキングされたcml耐性カートリッジをコードしていた。
【0108】
【化1】

【0109】
【化2】

a.プライマーは5’>3’の方向に列挙し、制限酵素切断部位は下線を付した。b.S・チフスTy2ゲノム(ゲンバンクアクセッション番号NC_004631)又はプラスミドpKD3(ゲンバンクアクセッション番号AY048742)に相同な領域を示す。
【0110】
S・パラチフスA9150を電気コンピテントとし、pKD46で形質転換することにより、CV250菌株を得た。ラムダレッド突然変異誘発はcml耐性マーカーを含有する鋳型pKD3と共にプライマーCVOL28及びCVOL32を用いながら形成したPCR産物を用いてCV250上で実施した(このプラスミドに関する追加的情報はDatsenko and Wannerの参考文献を参照)。形質転換体は37℃でプレーティングし、cml耐性を示したものをCVOL13及びCVOL15を用いたPCRによりスクリーニングした。S・パラチフスA9150から増幅した未修飾のguaBAは〜3.5kb(図1、レーン1)であることが解ったのに対し、〜1.4kbのフラグメントが突然変異したguaBA領域を有する2つのクローンにおいて観察された(図1、レーン2及び3)。これらの突然変異体はそれぞれCV411及びCV412と命名した。pCP20(このプラスミドに関する追加的情報はDatsenko and Wannerの参考文献を参照)によるこれらの突然変異体の処理によりcml耐性カートリッジが遊離した。4種の欠失株をプライマーCVOL13及びCVOL15を用いたPCRにより分析したところ、guaBA::cml先祖(図2、レーン1)と比較して〜0.5kbバンド(図2、レーン2〜4)を有していることが解った。得られたS・パラチフスA9150のguaBA欠失体はC415〜CV418と命名した。CV415において突然変異したguaBA領域をCVOL13及びCVOL15を用いてPCR増幅し、産物を配列決定し(ポリヌクレオチド配列、配列番号1);配列番号1の5’及び3’領域はguaBAに相同であるのに対し、中央領域はpKD3に相同である。後の全ての試験について菌株CV415を選択した。
7.guaBAにおける欠失のインビトロ補完
S・パラチフスA9150は明確化されていない栄養要求性を含有しているため、カザミノ酸を添加することなく最小培地上で生育させることはできない。ATCC菌株11511及びCVD S・パラチフスA単離株516もまた最小培地中では生育できず、それらがS・パラチフスA9150で観察されたものと同様の栄養要求性を有していることが示唆される。
【0111】
CV415においてguaBAのみをラムダレッド媒介突然変異誘発がターゲティングすることを明らかにするために、ラクトースプロモーター(PlacZ)の制御下においてguaBAをコードする最小フラグメントを含有するpLowBlu184系(低コピー数)プラスミドを設計した。プライマーCVOL13及びCVOL41を用いながら、開始コドンの8bp上流に最適化リボソーム結合部位(GAAGGAG)を有するguaBAをコードする〜3.1kbフラグメントを増幅し、その際、CVD908−htrAの染色体を鋳型として使用した。このフラグメントをpGEM(登録商標)−TEasyにサブクローニングし、RcoRIで切り出し、T4 DNAポリメラーゼでブラント末端化し、そしてpLowBlu184のNotI部位にクローニングすることによりpATGguaBAを作成した(CV295中に保存)。
【0112】
CV415はpATGguaBA又はpLowBlu184(対照)の何れかとエレクトロポレーションに付し、そしてグアニン及びcmlを含有する2xダイズ培地上にプレーティングすることにより、菌株CV486及びCV487をそれぞれ作成した。グアニンを含有しない2xダイズ培地はguaBA欠失S・パラチフスAの生育を支援することができない。各々の単コロニーをcmlを含有するMMM上に再植菌し、一夜37℃にてインキュベートした。図3に示す通り、CV486は対照(CV487;プレート1)とは対照的にMMM上で生育することができ(プレート2)、pATGguaBAにクローニングされた最小フラグメントがCV415の染色体からのguaBAの欠失を補完できることを示している。
8.CV415における第2欠失の構築
野生型(wt)の遺伝子型へのguaBA欠失S・パラチフスA9150の復帰を最小限にするために、第2弱毒化マーカーとして別の遺伝子をターゲティングした。これらの遺伝子はclpP及びclpXであり、これらはそれぞれセリンプロテアーゼ及びシャペロンATPaseをコードしている(Structure(Camb).2004 Feb;12(2):175−83参照)。clpP及び/又はclpXの欠失はマウスにおいてサルモネラ・ネズミチフス菌のコロニー形成能力を有意に低減することがわかっている(Infect Immun.2001 May;69(5):3164−74)。S・チフスTy2において、clpX(配列番号39)及びclpP(配列番号40)は両方とも、それぞれ染色体の相補鎖上の2483597〜2485743(配列番号27)の間に位置しており、そして個別のプロモーターから発現される。clpX又はclpPの何れかにおける単一の欠失を含有する突然変異体のビルレンスをマウスにおいて比較できるように野生型S・パラチフスA9150もまた突然変異誘発に付した。
【0113】
clpXを欠失させるために、CVOL85及び86がCVD908−htrA由来の開始コドンを欠失したclpXをコードする〜1.3kbのフラグメントを増幅するように設計した。このフラグメントをカラム精製し、Taq−ProTMDNAポリメラーゼ処理し、pGEM(登録商標)−T内にクローニングした(CV472中保存)。得られたベクターpGEM(登録商標)−T::clpXをNruI及びEcoRIで消化して〜0.9kbのフラグメントを除去し、T4 DNAポリメラーゼで処理することによりブランと末端を作成した。EcoRIフラグメントとしてpCR−Blunt II−TOPOから単離したcmlカートリッジをブラント末端化し、pGEM(登録商標)−T::clpX内に挿入した。このcmlカートリッジは鋳型としてのpKD3と共にCVOL25及びCVOL26を用いたPCRにより予め作成しておいた(CV134中に保存)。ライゲーション及び形質転換の後、プライマーCVOL26及びCVOL85と共にPCRを使用することによりラムダレッド突然変異誘発に関して正しい方向におけるcmlカートリッジの挿入を確認した。陽性クローンを発見し、pGEM(登録商標)−T::(clpX::cml)と命名し、CV481中に保存した。
【0114】
guaBA欠失S・パラチフスA(CV415)をpKD46で形質転換し、CV421として保存した。CV421及びCV250(pKD46で形質転換された野生型S・パラチフスA9150)をラムダレッド突然変異誘発に付し、〜1.4kbのPCR産物をCVOL85及びCVOL86を用いながらpGEM(登録商標)−T::(clpX::cml)から増幅した。cml耐性突然変異体を単離し、CVOL85及びCVOL86に相同な領域外の領域に結合するCVOL87及びCVOL88を用いてPCRによりスクリーニングした。正しいPCRプロファイルを示す突然変異体をcmlカートリッジを除去するためのpCP20処理のために選択した。図4は改変されたclpX遺伝子を含有する突然変異体は未改変のS・パラチフスA9150(パネルA、レーン7)で観察されたものと比較して、PCRにより、より小さい〜0.6kbのバンド(パネルA、レーン1〜6)を呈したことを示している。CVOL13及び15による同じ菌株のPCR分析ではguaBAがCV415から誘導された菌株からのみ欠失し、CV250の場合は欠失しなかったことが確認された(パネルB、レーン4〜6vsレーン1〜3及び7)。clpX及びclpXとguaBAの両方を欠失した突然変異体はそれぞれCV532及びCV534として保存した。CV532及びCV534内の突然変異したclpX領域をプライマーCVOL87及びCVOL88でPCR増幅し、産物を配列決定(配列番号2)し;配列番号2の5’及び3’領域はclpXに相同であるのに対し、中央領域はpKD3に相同である。
【0115】
clpPを欠失させるために、CVOL89及び90がCVD908−htrA由来の開始コドンを欠失したclpPをコードする〜0.7kbのフラグメントを増幅するように設計した。このフラグメントをカラム精製し、pGEM(登録商標)−T内にクローニングし、pGEM(登録商標)−T::clpPを作成した(CV470中保存)。pGEM(登録商標)−T::clpPをPstI及びNsiIで消化し、T4 DNAポリメラーゼで処理し、再ライゲーション(pGEM(登録商標)−T::clpPmを作成、CV484として保存)することによりベクター骨格からNdeI及びHincII部位を除去した。次にpGEM(登録商標)−T::clpPmをNdeI及びHincIIで消化することにより合計〜0.5kbの大きさのDNAフラグメントを除去し、T4 DNAポリメラーゼ処理した。上記と同様にして、EcoRIフラグメントとしてpCR−Blunt II−TOPOから単離したcmlカートリッジをT4 DNAポリメラーゼ処理し、そしてpGEM(登録商標)−T::clpPmから除去したフラグメントを置き換えるために使用した。ライゲーション及び形質転換の後、プライマーCVOL26及びCVOL85と共にPCRを使用することによりラムダレッド突然変異誘発に関して正しい方向におけるcmlカートリッジの挿入を確認した。陽性クローンを発見し、pGEM(登録商標)−T::(clpPm::cml)と命名し、CV501中に保存した。
【0116】
野生型及びpKD46を含有するguaBA欠失S・パラチフスA9150(それぞれCV250及びCV421)をラムダレッド突然変異誘発に付し、〜1.4kbのPCR産物をCVOL89及びCVOL90を用いながらpGEM(登録商標)−T::(clpPm::cml)から増幅した。cml耐性突然変異体を単離し、CVOL89及びCVOL90に相同な領域外の領域に結合するCVOL91及びCVOL92を用いてPCRによりスクリーニングした。正しいPCRプロファイルを示す突然変異体をcmlカートリッジを除去するためのpCP20処理のために選択した。
【0117】
図5は改変されたclpP遺伝子を含有する突然変異体は未改変のS・パラチフスA9150(パネルA、レーン7)で観察されたものと比較して、PCRにより、より小さい〜0.4kbのバンド(パネルA、レーン1〜6)を呈したことを示している。CVOL13及び15による同じ菌株のPCR分析ではguaBAがCV415から誘導された菌株からのみ欠失し、CV250によるものの場合は欠失しなかったことが確認された(パネルB、レーン4〜6vsレーン1〜3及び7)。clpP及びclpPとguaBAの両方を欠失した突然変異体はそれぞれCV528及びCV530として保存した。CV528及びCV530内の突然変異したclpP領域をプライマーCVOL87及びCVOL88でPCR増幅し、産物を配列決定(ポリヌクレオチド配列、配列番号3)し;配列番号3の5’及び3’領域はclpPに相同であるのに対し、中央領域はpKD3に相同である。
【0118】
9.補完性分析のための低コピープラスミドの構築
上記において実施した通り、ラムダレッド媒介突然変異誘発は特定の遺伝子座のみをターゲティングしたことを確認するために、clpX又はclpP、又はclpX又はclpPの何れかの直ぐ下流のguaBAをコードするに最小フラグメントを含有するモノ又はビシストロン性のpLowBlu184系(低コピー数)プラスミドを設計した。これらのプラスミドにおける遺伝子の構成的発現はPlacZにより指向した。
【0119】
プライマーCVOL64及びCVOL65を用いることにより、5’及び3’末端においてそれぞれNdeI及びNsiI制限部位を有する増強されたリボソーム結合部位を含有するCVD908−htrA由来のguaBAをPCR増幅した。産物をカラム精製し、pCR−Blunt II−TOPO内にライゲーションし(CV394として保存)、〜3.5kbのNdeI−NsiIフラグメントとして切り出し、pLowBlu 184内のNdeI及びNsiI部位にクローニングし、pguaBAV.2を作成した(CV482として保存)。
【0120】
clpPをコードする低コピー数プラスミドを作成するために、プライマーCVOL122及びCVOL123を用いることにより、5’及び3’末端においてそれぞれNotI及びNruI部位を有するCVD908−htrA由来の増強されたリボソーム結合部位を有するclpPを増幅した。〜0.7kbの産物をカラム精製し、pCR−Blunt II−TOPO内にライゲーションし(CV567として保存)、NotI−NruIフラグメントとして切り出し、予めNotI及びNdeIで切断しておいたpLowBlu 184内にライゲーションし、pATGclpPを作成した(CV584として保存)。clpP及びguaBAを含有するビシストロン性のプラスミドを構築するために、5’及び3’末端の両方においてNotI部位を有するCVD908−htrA由来の増強されたリボゾーム結合部位を有するclpPを増幅するようにプライマーCVOL122及びCVOL128を設計した。〜0.7kbの産物をカラム精製し、pCR−Blunt II−TOPO内にライゲーションし(CV600として保存)、NotIフラグメントとして切り出し、予めNotIで切断しておいたpguaBAV.2内にライゲーションし、pATGclpPATGguaBAを作成した(CV603として保存)。
【0121】
clpXをコードする低コピープラスミドを作成するために、プライマーCVOL124及びCVOL125を用いることにより、5’及び3’末端においてそれぞれNotI及びNdeI部位を有するCVD908−htrA由来の増強されたリボソーム結合部位を有するclpXを増幅した。〜1.3kbの産物をカラム精製し、pCR−Blunt II−TOPO内にライゲーションし(CV569として保存)、NotI−NdeIフラグメントとして切り出し、予めNotI及びNdeIで切断しておいたpLowBlu 184又はpguaBAV.2内にライゲーションし、pATGclpX(CV582として保存)及びpATGclpXATGguaBA(CV573として保存)を作成した。
【0122】
10.マウスにおけるS・パラチフスA及び突然変異体のビルレンスの試験
野生型S・パラチフスA9150のビルレンスを腹腔内注射マウスにおける各突然変異体のものと比較するためにLD50試験を実施した。
【0123】
図6は野生型及びguaBA欠失S・パラチフスAを注射したマウスにおいて得られたLD50データを示す。野生型S・パラチフスAはマウス当たり10細菌未満のLD50値を有していた。これとは対照的に、guaBA欠失S・パラチフスAは〜4.5対数高値のLD50値を有していた。pLowBlu 184によるguaBA突然変異体の補完はLD50値を改変しなかったのに対し、pATGguaBAによる形質転換は野生型ビルレンスを回復させた。
【0124】
図7はS・パラチフスA、clpX欠失S・パラチフスA又はclpX−guaBA欠失S・パラチフスAを注射したマウスにおいて得られたLD50データを示す。野生型及びguaBA欠失S・パラチフスAのLD50値は以前に達成されたものと合致していた。clpX欠失S・パラチフスAはguaBA突然変異体と比較して〜1対数高値のLD50値を示し、clpXにおける欠失がguaBAにおけるものほどは弱毒化をもたらさないことを示している。pLowBlu 184によるclpX欠失又はclpX−guaBA欠失菌株の補完は無効であったのに対し、pATGclpX及びpATGclpXATGguaBAによる形質転換はそれぞれ野生型ビルレンスを回復させた。
【0125】
図8は野生型S・パラチフスA、clpP欠失S・パラチフスA又はclpP−guaBA欠失S・パラチフスAを注射したマウスにおいて得られたLD50データを示す。野生型及びguaBA欠失S・パラチフスAのLD50値は以前に達成されたものと合致していた。clpX欠失菌株の場合と同様、clpP欠失S・パラチフスAはguaBA突然変異体と比較して高値のビルレンスを示した。このことはclpPにおける欠失がguaBAにおけるものほどは弱毒化をもたらさないことを示している。pLowBlu 184によるclpX又はclpX−guaBA欠失菌株の補完はビルレンスに対する作用を有さなかった。pATGclpP及びpATGclpPATGguaBAによるこれらの菌株の形質転換はそれぞれ野生型ビルレンスを完全には回復させなかった。如何なる理論にも制約されないが、clpPの調節された発現は、pATGclpP及びpATGclpPATGguaBAによりコードされた場合の調節不能の発現とは逆に。clpP突然変異を完全に補完するために必要である。
【0126】
(引用された文献)
全ての刊行物、特許、書籍、論文、および他の書類がこの出願で言及されそして全体にわたって示されるように、以下の参考文献の開示は、それらの全体が本明細書に援用される。
【0127】
【化3】

【0128】
【化4】

【0129】
【化5】

【0130】
【化6】

【0131】
【化7】

【0132】
【化8】

【0133】
【化9】

【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】図1はguaBA及びguaBA::cmlのPCR増幅産物を示す。レーン1は野生型のguaBA;レーン2及び3はguaBA::cmlである。矢印は3kb(上)及び1.5kb(下)の分子量マーカーバンドを示す。
【図2】図2はguaBA::cml及びguaBA欠失のPCR増幅産物を示す。レーン1はguaBA::cml;レーン2〜5はguaBA欠失である。矢印は1.5kb(上)及び0.5kb(下)の分子量マーカーバンドを示す。
【図3】図3はguaBA欠失の補完性試験の結果を示す。プレート1はpLowBlu184で形質転換されたguaBA突然変異体であり;プレート2はpATGguaBAで形質転換された同じ突然変異体である。
【図4】図4はwt、clpX及びclpX−guaBA弱毒化S・パラチフスAのPCR増幅産物を示す。パネルAはclpXに特異的なプライマーを用いて製造したPCR産物を示し、パネルBはguaBAに特異的なプライマーを用いて製造したPCR産物を示す。矢印はパネルA上の1.5kb(上)及び0.5kb(下)の分子量マーカーバンド及びパネルB上の3kb(上)及び0.5kb(下)の分子量マーカーバンドを示す。
【図5】図5はwt、clpP及びclpP−guaBA弱毒化S・パラチフスAのPCR増幅産物を示す。パネルAはclpPに特異的なプライマーを用いて製造したPCR産物を示し、パネルBはguaBAに特異的なプライマーを用いて製造したPCR産物を示す。矢印はパネルA上の1kb(上)及び0.5kb(下)の分子量マーカーバンド及びパネルB上の3kb(上)及び0.5kb(下)の分子量マーカーバンドを示す。
【図6】図6はwt、guaBA−欠失S・パラチフスA、pLowBlu184補完のguaBA−欠失、及び、pATGguaBA補完のguaBA−欠失を注射したマウスにおけるLD50試験から得られたデータのグラフ表示である。
【図7】図7はwt、clpX欠失S・パラチフスA、guaBA欠失S・パラチフスA又はclpX−guaBA欠失S・パラチフスAを注射したマウスにおけるLD50試験から得られたデータのグラフ表示である。データはpLowBlu184又はpATGclpX補完のclpX欠失S・パラチフスA、並びにpLowBlu184又はpATGclpXATGguaBA補完のclpX−guaBA欠失S・パラチフスAを注射したマウスを包含する。
【図8】図8はwt、clpP欠失S・パラチフスA、guaBA欠失S・パラチフスA又はclpP−guaBA欠失S・パラチフスAを注射したマウスにおけるLD50試験から得られたデータのグラフ表示である。データはpLowBlu184又はpATGclpP補完のclpP欠失S・パラチフスA、並びにpLowBlu184又はpATGclpPATGguaBA補完のclpP−guaBA欠失S・パラチフスAを注射したマウスを包含する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サルモネラ・パラチフスA菌株であって、ここで該菌株はguaBA遺伝子座、guaB遺伝子、guaA遺伝子、clpP遺伝子及びclpX遺伝子における弱毒化突然変異よりなる群から選択される弱毒化突然変異少なくとも1つを有する、サルモネラ・パラチフスA菌株。
【請求項2】
前記菌株が前記guaB遺伝子、前記guaA遺伝子及び前記clpP遺伝子において弱毒化突然変異を有する、請求項1記載のサルモネラ・パラチフスA菌株。
【請求項3】
前記菌株が前記guaB遺伝子、前記guaA遺伝子及び前記clpX遺伝子において弱毒化突然変異を有する、請求項1記載のサルモネラ・パラチフスA菌株。
【請求項4】
前記菌株が前記guaB遺伝子、前記guaA遺伝子、前記clpP遺伝子及び前記clpX遺伝子において弱毒化突然変異を有する、請求項1記載のサルモネラ・パラチフスA菌株。
【請求項5】
前記弱毒化突然変異が前記遺伝子座又は前記遺伝子の発現のレベルを低減するか、該遺伝子座又は該遺伝子の発現をブロックする弱毒化突然変異である請求項1記載のサルモネラ・パラチフスA菌株。
【請求項6】
前記弱毒化突然変異が前記遺伝子座又は前記遺伝子によりコードされるポリペプチドの活性を低減するか、該遺伝子座又は該遺伝子によりコードされるポリペプチドを不活性化する弱毒化突然変異である請求項1記載のサルモネラ・パラチフスA菌株。
【請求項7】
前記菌株がS・パラチフスA9150菌株である請求項1記載のサルモネラ・パラチフスA菌株。
【請求項8】
サルモネラ・パラチフスA菌株であって、該菌株がguaBA遺伝子座、guaB遺伝子、guaA遺伝子、clpP遺伝子及びclpX遺伝子における弱毒化突然変異よりなる群から選択される弱毒化突然変異少なくとも1つを有し、そして該菌株が安定化されたプラスミド発現系を含む、サルモネラ・パラチフスA菌株。
【請求項9】
前記安定化されたプラスミド発現系が、以下:
(a)以下:
(i)細胞当たり約2〜75コピーの平均プラスミドコピー数に発現ベクターを制限する複製起点をコードするヌクレオチド配列、
(ii)該複製起点をコードするヌクレオチド配列の5’に位置する第1のユニークな制限酵素切断部位、及び、
(iii)該複製起点をコードするヌクレオチド配列の3’に位置する第2のユニークな制限酵素切断部位、
を含む制限されたコピー数の複製起点カセット;
(b)以下:
(i)分離後殺傷遺伝子座少なくとも1つをコードするヌクレオチド配列、
(ii)該分離後殺傷遺伝子座少なくとも1つをコードするヌクレオチド配列の5’に位置する第3のユニークな制限酵素切断部位、及び、
(iii)該分離後殺傷遺伝子座少なくとも1つをコードするヌクレオチド配列の3’に位置する第4のユニークな制限酵素切断部位
を含む分離後殺傷カセット少なくとも1つ;
(c)以下:
(i)分配機能少なくとも1つをコードするヌクレオチド配列、
(ii)該分配機能少なくとも1つをコードするヌクレオチド配列の5’に位置する第5のユニークな制限酵素切断部位、及び、
(iii)該分配機能少なくとも1つをコードするヌクレオチド配列の3’に位置する第6のユニークな制限酵素切断部位、
を含む分配カセット少なくとも1つ;及び、
(d)以下:
(i)プロモーターに作動可能に連結した選択された抗原をコードするヌクレオチド配列、
(ii)該プロモーターに作動可能に連結した選択された抗原をコードするヌクレオチド配列の5’に位置する第7のユニークな制限酵素切断部位、及び、
(iii)該プロモーターに作動可能に連結した選択された抗原をコードするヌクレオチド配列の3’に位置する第8のユニークな制限酵素切断部位、
を含む発現カセット;
を含む発現ベクターを含む、請求項8記載のサルモネラ・パラチフスA菌株。
【請求項10】
前記複製起点をコードするヌクレオチド配列が配列番号28に示すoriE1配列、配列番号30に示すori101配列、及び配列番号29に示すori15A配列よりなる群から選択されるヌクレオチド配列である請求項9記載のサルモネラ・パラチフスA菌株。
【請求項11】
前記分離後殺傷遺伝子座少なくとも1つをコードするヌクレオチド配列がssb平衡致死系をコードするヌクレオチド配列、asd平衡致死系をコードするヌクレオチド配列、phd−doc蛋白系をコードするヌクレオチド配列及びhok−sokアンチセンス系をコードするヌクレオチド配列よりなる群から選択されるヌクレオチド配列である請求項9記載のサルモネラ・パラチフスA菌株。
【請求項12】
前記ssb平衡致死系がシゲラ・フレクスナーssb遺伝子座、サルモネラ・チフスssb遺伝子座及びE・コリssb遺伝子座よりなる群から選択されるssb遺伝子座である請求項11記載のサルモネラ・パラチフスA菌株。
【請求項13】
前記ssb平衡致死系が、配列番号34に示すS・フレクスナー2a菌株CVD1208sのssb誘導性プロモーター、ssb構成的プロモーター及びssbコード領域を含むssb遺伝子座である請求項11記載のサルモネラ・パラチフスA菌株。
【請求項14】
前記分配機能少なくとも1つをコードするヌクレオチド配列が配列番号31に示すE・コリparA遺伝子座及び配列番号32に示すE・コリpSC101 par遺伝子座よりなる群から選択されるヌクレオチド配列である請求項9記載のサルモネラ・パラチフスA菌株。
【請求項15】
前記プロモーター(d)(i)が誘導性プロモーターである請求項9記載のサルモネラ・パラチフスA菌株。
【請求項16】
前記プロモーター(d)(i)が配列番号33に示すompCプロモーターである請求項15記載のサルモネラ・パラチフスA菌株。
【請求項17】
前記選択された抗原(d)(i)をコードするヌクレオチド配列が同種の抗原をコードするヌクレオチド配列である請求項9記載のサルモネラ・パラチフスA菌株。
【請求項18】
前記選択された抗原(d)(i)をコードするヌクレオチド配列が異種の抗原をコードするヌクレオチド配列である請求項9記載のサルモネラ・パラチフスA菌株。
【請求項19】
前記選択された抗原(d)(i)をコードするヌクレオチド配列がウィルス抗原、細菌抗原、癌抗原及び自己免疫抗原よりなる群から選択される抗原をコードするヌクレオチド配列である請求項9記載のサルモネラ・パラチフスA菌株。
【請求項20】
請求項1記載のサルモネラ・パラチフスA菌株及び製薬上許容しうる担体を含む医薬品製剤。
【請求項21】
請求項8記載のサルモネラ・パラチフスA菌株及び製薬上許容しうる担体を含む医薬品製剤。
【請求項22】
前記医薬品製剤が経口用医薬品製剤である請求項20記載の医薬品製剤。
【請求項23】
前記医薬品製剤が経口用医薬品製剤である請求項21記載の医薬品製剤。
【請求項24】
請求項20記載の医薬品製剤の免疫学的有効量を被験体に投与することを含む弱毒化したサルモネラ・パラチフスA菌株に対する被験体における免疫応答を誘導する方法。
【請求項25】
請求項21記載の医薬品製剤の免疫学的有効量を被験体に投与することを含む選択された抗原に対する被験体における免疫応答を誘導する方法。
【請求項26】
前記免疫応答が防御免疫応答である請求項24記載の方法。
【請求項27】
前記免疫応答が防御免疫応答である請求項25記載の方法。
【請求項28】
前記免疫応答が前記選択された抗原に対する免疫応答である請求項25記載の方法。
【請求項29】
前記免疫応答が前記選択された抗原に対する免疫応答及びサルモネラ・パラチフスA菌株に対する免疫応答である請求項25記載の方法。
【請求項30】
前記医薬品製剤の免疫学的有効量がS・パラチフスA菌株の約10cfu〜約1010cfuを含有する請求項24記載の免疫応答を誘導する方法。
【請求項31】
前記医薬品製剤の免疫学的有効量がS・パラチフスA菌株の約10cfu〜約10cfuを含有する請求項24記載の免疫応答を誘導する方法。
【請求項32】
前記医薬品製剤の免疫学的有効量がS・パラチフスA菌株の約10cfu〜約1010cfuを含有する請求項25記載の免疫応答を誘導する方法。
【請求項33】
前記医薬品製剤の免疫学的有効量がS・パラチフスA菌株の約10cfu〜約10cfuを含有する請求項25記載の免疫応答を誘導する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−516503(P2009−516503A)
【公表日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−538041(P2008−538041)
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【国際出願番号】PCT/US2006/042148
【国際公開番号】WO2007/053489
【国際公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(301033248)ユニバーシティ オブ メリーランド, ボルチモア (7)
【Fターム(参考)】