強化パッチコードによるエイリアン・クロストーク抑制
【課題】通信におけるエイリアン・クロストークを抑制するためのシステムおよび方法を提供する。
【解決手段】追加の減衰を導入する強化パッチコードを使用する。好ましくは、これら強化パッチコード22、24をシールドすることによって、それらの長さに沿ってエイリアン・クロストークを低減し、また、それを通る信号を、標準の通信パッチコードよりも大きく減衰させる。2つの強化パッチコードの相互作用は、エイリアン・クロストークに対する2つの抑制ステップと、通信ケーブル18を通過する意図した信号に対する1つのみの抑制ステップをもたらす。
【解決手段】追加の減衰を導入する強化パッチコードを使用する。好ましくは、これら強化パッチコード22、24をシールドすることによって、それらの長さに沿ってエイリアン・クロストークを低減し、また、それを通る信号を、標準の通信パッチコードよりも大きく減衰させる。2つの強化パッチコードの相互作用は、エイリアン・クロストークに対する2つの抑制ステップと、通信ケーブル18を通過する意図した信号に対する1つのみの抑制ステップをもたらす。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には通信システムに関し、より詳細には、通信におけるエイリアン・クロストークを抑制するためのシステムおよび方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通信システムにおけるクロストークの抑制は、システムの信頼性並びに通信の品質を改善するための措置として益々重要になってきている。通信システムの帯域幅が大きくなるにつれ、信号クロストークを低減あるいは除去する重要さが増している。
【0003】
有線の通信システムにおいては、クロストークは、通信ケーブル内あるいは多数のケーブル間における電磁干渉により生じる。ケーブル間の相互作用から生ずるクロストークは、エイリアン・クロストークとして知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
1つのケーブル内を走る信号がこの同じケーブル内の信号と干渉することから生ずるクロストークは、電子的なクロストーク低減方法を使用してうまく処理することができるが、エイリアン・クロストークは別の問題を呈し、それは、その干渉するあるいは妨害する信号の品質が未知であるからである。エイリアン・クロストークは、インストールされたCat6またはCat5eのケーブル・ベースを通しての10Gbpsのイーサネット通信のような実装例において問題があることが分かっている。そのようなケーブルでは、エイリアン・クロストークは、通信性能を相当奪ってしまうことがある。特別に設計されたケーブルを使ってエイリアン・クロストークを減少させることもできるが、既存のケーブルを新たに設計したケーブルに置き換えることは、相当の出費を伴う。
【0005】
このため、インストールされたケーブルで使用できる、エイリアン・クロストーク抑制の方法およびシステムに対するニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1実施形態によれば、増強した減衰をもつ改良したパッチコードによってインストールされたケーブル・システムの性能を改善する。
本発明の別の実施形態によれば、通信ケーブル間のエイリアン・クロストークは、通信ケーブルに接続した減衰用パッチケーブルを使用するという方法によって減少する。
【0007】
本発明の別の実施形態によれば、ケーブル・システムは、改良したパッチコードを用いて、通信ケーブル間のエイリアン・クロストークを減少させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の1実施形態による通信システムのプラン図。
【図2】図2は、エイリアン・クロストーク抑制を提供するため改良したパッチコードを備えたケーブル・インストレーションの概略図。
【図3】図3は、本発明による強化パッチコードを使用する通信システムにおける、増強した信号対ノイズ比を示すグラフ。
【図4】図4は、本発明の1実施形態による導体および損失導体絶縁を示す横断面図。
【図5】図5は、損失導電性コーティングをもつストランデッド・ワイヤの横断面図。
【図6】図6は、図5の細部“A”の詳細図。
【図7a】図7aと図7bは、2つのケーブル・ペアの比較を示す横断面図であり、図7bのケーブル・ペアは、クロストーク・ペアの距離が増している。
【図7b】図7bと図7aは、2つのケーブル・ペアの比較を示す横断面図であり、bのケーブル・ペアは、クロストーク・ペアの距離が増している。
【図8】図8は、包囲シールドをもつケーブルの横断面図。
【図9】図9は、変更した包囲シールドをもつケーブルの横断面図。
【図10】図10は、各ワイヤ・ペアを包囲するシールディングをもつケーブルの横断面図。
【図11】図11は、導電性スプラインをもつケーブルの横断面図。
【図12】図12は、ケーブルの長さに沿った変化するケーブル・レイを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、図1を参照すると、これには通信システム10が示されている。この通信システム10においては、10Gb/sイーサネット・スイッチ12のようなネットワーク・デバイスは、それぞれ、第1および第2の通信ケーブル18および20によりパーソナル・コンピュータ(“PC”)14および16に接続されている。理解されるべきであるが、図1は、1つのネットワーク・デバイスから2つのデバイスへ延びた通信ケーブル18および20を示しているが、本発明によるシステムおよび方法は、通信ケーブル間のエイリアン・クロストークについて、それらケーブルが接続されているデバイスのタイプにかかわらずそのクロストークの抑制を可能にする。
【0010】
一般に、通信ケーブル18と20との間の相互作用により生ずるエイリアン・クロストークは、ケーブル18および20の全長にそって結合されることになる。ケーブル18および20は、これらを伝搬する信号をある程度抑制するように働き、これにより、イーサネット・スイッチ12により近いそれらケーブル間に生ずるエイリアン・クロストークは、PC14および16において幾分減衰されることになる。
【0011】
クロストーク抑制は、図1のシステムにおいては、第1および第2の強化パッチコード22および24により強化される。強化パッチコード22および24は、例えば追加のシールディングを提供することにより、それらの全長にそってクロストークを抑制するように設計されている。加えて、強化パッチコード22および24は、それらを伝搬する通信信号およびクロストークのようなノイズを減衰させる。パッチコード22および24における減衰は、多くの方法で実現することができる。例えば、パッチコード22および24内にフィンガ・ゲージ・ワイヤを使用することにより、あるいはパッチコード22および24内に含まれたワイヤにおけるインチ当たりのツイストの数を増やすことにより、減衰を増大させることができる。
【0012】
エイリアン・クロストークの強さは、干渉するあるいは妨害する信号の強さに依存する。このため、第1強化パッチコード22により提供される増加した減衰は、第1通信ケーブル18における信号レベルを低減させる。その結果、この第1通信ケーブルから第2通信ケーブル20に結合されるエイリアン・クロストークは、第1強化パッチコード22による減衰に起因して低減される。第2通信ケーブル20における第1通信ケーブル18により生ずるエイリアン・クロストークは、第2通信ケーブル20において両方向に伝わるため、エイリアン・クロストークは、第2強化パッチコード24における抑制を受けることになる。
【0013】
例えば、1ボルトのピーク・ピークの信号強度をもつ信号がイーサネット・スイッチ12を出て、しかも第1強化パッチコード22がその初期強度の10パーセントに減衰させた場合、イーサネット・スイッチ12から第1PC14へ行く信号は、0.1ボルトのピーク・ピークの信号強度をもつことになる。この信号の10パーセントがエイリアン・クロストークとして第2通信ケーブル20に結合する場合、この第2ケーブルにおけるエイリアン・クロストークは、0.01ボルトのピーク・ピークの信号強度を有することになる。もし第2強化パッチコード24もまた初期強度の10パーセントに信号を低下させる減衰特性を有する場合、そのエイリアン・クロストークは、第2通信ケーブル20において0.001ボルトのピーク・ピークに抑制される。このため、エイリアン・クロストークは、2つのパッチコード22および24の作用にさらされたことになり、イーサネット・スイッチ12から第2通信ケーブル20を通過する信号は、第2強化パッチコード24の作用にのみさらされたことになる。オプションの強化パッチコード26は、PC14および16への接続のために示しているが、同様に働いて通信接続のユーザ側においてエイリアン・クロストークを低減する。
【0014】
本発明による強化パッチコードは、図2に示したように多数の接続に一体化させることができ、そしてこれにおいて、複数のケーブルをもつ水平のケーブル・プラント28は、通信経路の第1と第2の端部に設けた強化パッチコード30および32によって強化されている。
【0015】
図3には、本発明による強化パッチコードを使用しての信号対ノイズ比の強化を示している。点線は、通信周波数にわたる、強化パッチコードから生ずる低下した信号対ノイズを示している。エイリアン・クロストークに起因したノイズは、信号よりも大きく減衰されるため、利用可能な帯域幅および信号対ノイズ比の両方が、本発明による強化パッチコードを用いるシステムにおいて改善される。
【0016】
パッチコードおよびその他の通信ケーブルに対し、様々な方法で減衰を導入することができる。損失パッチコードの設計において考慮すべき設計パラメータが2つある。1つのパラメータは、ケーブルに含ませるべき挿入損失の量であり、第2は、ケーブルにおいて持たせるべきエイリアン・クロストークの抑制または感受性の量である。両方のパラメータは、好ましくはあるケーブル設計において対処される。
【0017】
誘電損失は、図4に示すように、損失導体絶縁36または38内に導体34を設けることにより増加させることができる。また、誘電損失は、以下のような方法を使用することによっても増加させることができる。すなわち、(a)ケーブル・ジャケットの誘電損失材料、(b)ケーブル・スプラインの誘電損失材料、および(c)ワイヤ・ペア・シールド(これはE&Mフィールドをそのワイヤ絶縁を通るように集中させる)。
【0018】
導電性のより低いワイヤ(例えば、銅ワイヤではなくアルミニウム・ワイヤ)の使用もまた、導体損失を増加させる。上述のように、導体ワイヤの径を小さくしたりあるいは単位長さ当たりのツイストを大きくすることにより、導体損失を増加させることもできる。ツイスト量を大きくすると、コードの実効長が増し、したがって導体損失が大きくなる。
【0019】
また、導体損失は、金属ワイヤにスズめっきすることによっても多くすることができる。ワイヤの外周における低い導電性のコーティングは、導体損失を大きくするが、その理由は、電流密度が(表皮効果により)表面近くに集まりそしてスズめっきされた材料を通してより高い損失を受けることになるからである。ストランデッド・ワイヤの使用もまた、導体損失を増加させ、その再、匹敵するワイヤ・ゲージに対し損失がおよそ20パーセント増加する。図5は、スズめっきおよびストランデッド・ワイヤを用いたケーブル40の横断面図を示している。図5の実施形態においては、ストランデッド銅導体42は、スズの表皮44内に設けている。図6は、図5の細部“A”の詳細図である。表皮は、深さdsで設けている。
【0020】
また、粗表面のワイヤの使用は、このワイヤを通しての導体損失を増大させることができる。
図7aおよび図7bは、クロストーク・ペア間の物理的距離を大きくすることにより、ケーブルの感受性を減少させる技法を示している。第1と第2のケーブル46および48は、接触関係で配置されている。ケーブル・ジャケット材料50の例えば厚さを図7bに示したジャケット52のように増すと、クロストーク・ペア間の距離は図7aに示すd1から図7bに示すd2の大きくなる。1実施形態によれば、このケーブル・ジャケット材料50は、発泡ジャケット材料である。また、ケーブル・セパレータを使用することによって、隣り合うケーブル間の分離を増すことができる。
【0021】
また、金属シールディングを使って、信号ケーブル・ペア中へのエイリアン信号の感受性を減少させることができる。図8は、導電性シールドの組み込みによりケーブルの感受性を減少させる技法を示す横断面図である。図8においては、導電性ペア52を、導電性シールド54全体内に設けている。次に、導電性シールド54は、ジャケット56内に設けている。図9(これは、詳細図を含む)に示すように、別の実施形態においては、全体シールディング54の層を、ジャケット材料の第1と第2の層58および60間に設けることができる。
【0022】
図10は、別の実施形態を示しており、この実施形態では、個々のシールディング62は、各々のワイヤ・ペアを取り囲んでいる。
図11には、別の実施形態を示しており、これは、導電性スプライン64または導電性ペア・セパレータの使用を示しており、これらは、感受性を減少させるのに使用される。
【0023】
別の実施形態においては、ケーブルのその長さに沿ったレイを変更することにより、クロストークを減少させることもできる。ケーブルのレイは、ケーブルのその長さに沿ったツイスティングを指している。この実施形態では、固定のツイスト・ペア長を、ケーブルの長さに沿って設けている。提案された10Gb/sイーサネット近端クロストーク(NEXT)仕様を満足する、ケーブルの長さ全体にわたりツイスト・ペア長をもった4ペア・ケーブルを提供する、4つまたはそれより多いケーブル・レイ値を選択する。任意の4つまたはそれより多いケーブル・レイ値をランダムに選択し、その選択プロセスは、以下に示す。
【0024】
1.ケーブル・レイ(A,B,C,D,…)を選択する(それらレイの各々は、10Gb/sイーサネットNEXT仕様を満たす)。
2.それら4つのケーブル・レイのうちの任意のものを、ケーブル・レイ・プロセスの間において非復元で選択する。
【0025】
3.その選択したケーブル・レイを、10メートルあるいはこれ未満のケーブルの均一なあるいはランダムな長さにわたって設ける。
4.残りの3つあるいはこれより多いケーブル・レイのうちの任意のものを選択し、ステップ3で説明したようにケーブル構成に適用する。
【0026】
5.このプロセスを、すべてのケーブル・レイを割り当てるまで繰り返す。
図12には、ケーブル長の図を示しており、これでは、ケーブル・レイ遷移間にランダムな距離を用い、また4つの異なったケーブル・レイを使用している。
【0027】
以上、本発明の特定の実施形態および応用について図示し説明したが、理解すべきように、本発明は、ここに開示した構成および組合せそのものに限定されるものではなく、また、添付の特許請求の範囲のおいて定められる本発明の要旨および範囲から逸脱せずに種々の修正、変形、変更が以上の説明から明かである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には通信システムに関し、より詳細には、通信におけるエイリアン・クロストークを抑制するためのシステムおよび方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通信システムにおけるクロストークの抑制は、システムの信頼性並びに通信の品質を改善するための措置として益々重要になってきている。通信システムの帯域幅が大きくなるにつれ、信号クロストークを低減あるいは除去する重要さが増している。
【0003】
有線の通信システムにおいては、クロストークは、通信ケーブル内あるいは多数のケーブル間における電磁干渉により生じる。ケーブル間の相互作用から生ずるクロストークは、エイリアン・クロストークとして知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
1つのケーブル内を走る信号がこの同じケーブル内の信号と干渉することから生ずるクロストークは、電子的なクロストーク低減方法を使用してうまく処理することができるが、エイリアン・クロストークは別の問題を呈し、それは、その干渉するあるいは妨害する信号の品質が未知であるからである。エイリアン・クロストークは、インストールされたCat6またはCat5eのケーブル・ベースを通しての10Gbpsのイーサネット通信のような実装例において問題があることが分かっている。そのようなケーブルでは、エイリアン・クロストークは、通信性能を相当奪ってしまうことがある。特別に設計されたケーブルを使ってエイリアン・クロストークを減少させることもできるが、既存のケーブルを新たに設計したケーブルに置き換えることは、相当の出費を伴う。
【0005】
このため、インストールされたケーブルで使用できる、エイリアン・クロストーク抑制の方法およびシステムに対するニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1実施形態によれば、増強した減衰をもつ改良したパッチコードによってインストールされたケーブル・システムの性能を改善する。
本発明の別の実施形態によれば、通信ケーブル間のエイリアン・クロストークは、通信ケーブルに接続した減衰用パッチケーブルを使用するという方法によって減少する。
【0007】
本発明の別の実施形態によれば、ケーブル・システムは、改良したパッチコードを用いて、通信ケーブル間のエイリアン・クロストークを減少させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の1実施形態による通信システムのプラン図。
【図2】図2は、エイリアン・クロストーク抑制を提供するため改良したパッチコードを備えたケーブル・インストレーションの概略図。
【図3】図3は、本発明による強化パッチコードを使用する通信システムにおける、増強した信号対ノイズ比を示すグラフ。
【図4】図4は、本発明の1実施形態による導体および損失導体絶縁を示す横断面図。
【図5】図5は、損失導電性コーティングをもつストランデッド・ワイヤの横断面図。
【図6】図6は、図5の細部“A”の詳細図。
【図7a】図7aと図7bは、2つのケーブル・ペアの比較を示す横断面図であり、図7bのケーブル・ペアは、クロストーク・ペアの距離が増している。
【図7b】図7bと図7aは、2つのケーブル・ペアの比較を示す横断面図であり、bのケーブル・ペアは、クロストーク・ペアの距離が増している。
【図8】図8は、包囲シールドをもつケーブルの横断面図。
【図9】図9は、変更した包囲シールドをもつケーブルの横断面図。
【図10】図10は、各ワイヤ・ペアを包囲するシールディングをもつケーブルの横断面図。
【図11】図11は、導電性スプラインをもつケーブルの横断面図。
【図12】図12は、ケーブルの長さに沿った変化するケーブル・レイを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、図1を参照すると、これには通信システム10が示されている。この通信システム10においては、10Gb/sイーサネット・スイッチ12のようなネットワーク・デバイスは、それぞれ、第1および第2の通信ケーブル18および20によりパーソナル・コンピュータ(“PC”)14および16に接続されている。理解されるべきであるが、図1は、1つのネットワーク・デバイスから2つのデバイスへ延びた通信ケーブル18および20を示しているが、本発明によるシステムおよび方法は、通信ケーブル間のエイリアン・クロストークについて、それらケーブルが接続されているデバイスのタイプにかかわらずそのクロストークの抑制を可能にする。
【0010】
一般に、通信ケーブル18と20との間の相互作用により生ずるエイリアン・クロストークは、ケーブル18および20の全長にそって結合されることになる。ケーブル18および20は、これらを伝搬する信号をある程度抑制するように働き、これにより、イーサネット・スイッチ12により近いそれらケーブル間に生ずるエイリアン・クロストークは、PC14および16において幾分減衰されることになる。
【0011】
クロストーク抑制は、図1のシステムにおいては、第1および第2の強化パッチコード22および24により強化される。強化パッチコード22および24は、例えば追加のシールディングを提供することにより、それらの全長にそってクロストークを抑制するように設計されている。加えて、強化パッチコード22および24は、それらを伝搬する通信信号およびクロストークのようなノイズを減衰させる。パッチコード22および24における減衰は、多くの方法で実現することができる。例えば、パッチコード22および24内にフィンガ・ゲージ・ワイヤを使用することにより、あるいはパッチコード22および24内に含まれたワイヤにおけるインチ当たりのツイストの数を増やすことにより、減衰を増大させることができる。
【0012】
エイリアン・クロストークの強さは、干渉するあるいは妨害する信号の強さに依存する。このため、第1強化パッチコード22により提供される増加した減衰は、第1通信ケーブル18における信号レベルを低減させる。その結果、この第1通信ケーブルから第2通信ケーブル20に結合されるエイリアン・クロストークは、第1強化パッチコード22による減衰に起因して低減される。第2通信ケーブル20における第1通信ケーブル18により生ずるエイリアン・クロストークは、第2通信ケーブル20において両方向に伝わるため、エイリアン・クロストークは、第2強化パッチコード24における抑制を受けることになる。
【0013】
例えば、1ボルトのピーク・ピークの信号強度をもつ信号がイーサネット・スイッチ12を出て、しかも第1強化パッチコード22がその初期強度の10パーセントに減衰させた場合、イーサネット・スイッチ12から第1PC14へ行く信号は、0.1ボルトのピーク・ピークの信号強度をもつことになる。この信号の10パーセントがエイリアン・クロストークとして第2通信ケーブル20に結合する場合、この第2ケーブルにおけるエイリアン・クロストークは、0.01ボルトのピーク・ピークの信号強度を有することになる。もし第2強化パッチコード24もまた初期強度の10パーセントに信号を低下させる減衰特性を有する場合、そのエイリアン・クロストークは、第2通信ケーブル20において0.001ボルトのピーク・ピークに抑制される。このため、エイリアン・クロストークは、2つのパッチコード22および24の作用にさらされたことになり、イーサネット・スイッチ12から第2通信ケーブル20を通過する信号は、第2強化パッチコード24の作用にのみさらされたことになる。オプションの強化パッチコード26は、PC14および16への接続のために示しているが、同様に働いて通信接続のユーザ側においてエイリアン・クロストークを低減する。
【0014】
本発明による強化パッチコードは、図2に示したように多数の接続に一体化させることができ、そしてこれにおいて、複数のケーブルをもつ水平のケーブル・プラント28は、通信経路の第1と第2の端部に設けた強化パッチコード30および32によって強化されている。
【0015】
図3には、本発明による強化パッチコードを使用しての信号対ノイズ比の強化を示している。点線は、通信周波数にわたる、強化パッチコードから生ずる低下した信号対ノイズを示している。エイリアン・クロストークに起因したノイズは、信号よりも大きく減衰されるため、利用可能な帯域幅および信号対ノイズ比の両方が、本発明による強化パッチコードを用いるシステムにおいて改善される。
【0016】
パッチコードおよびその他の通信ケーブルに対し、様々な方法で減衰を導入することができる。損失パッチコードの設計において考慮すべき設計パラメータが2つある。1つのパラメータは、ケーブルに含ませるべき挿入損失の量であり、第2は、ケーブルにおいて持たせるべきエイリアン・クロストークの抑制または感受性の量である。両方のパラメータは、好ましくはあるケーブル設計において対処される。
【0017】
誘電損失は、図4に示すように、損失導体絶縁36または38内に導体34を設けることにより増加させることができる。また、誘電損失は、以下のような方法を使用することによっても増加させることができる。すなわち、(a)ケーブル・ジャケットの誘電損失材料、(b)ケーブル・スプラインの誘電損失材料、および(c)ワイヤ・ペア・シールド(これはE&Mフィールドをそのワイヤ絶縁を通るように集中させる)。
【0018】
導電性のより低いワイヤ(例えば、銅ワイヤではなくアルミニウム・ワイヤ)の使用もまた、導体損失を増加させる。上述のように、導体ワイヤの径を小さくしたりあるいは単位長さ当たりのツイストを大きくすることにより、導体損失を増加させることもできる。ツイスト量を大きくすると、コードの実効長が増し、したがって導体損失が大きくなる。
【0019】
また、導体損失は、金属ワイヤにスズめっきすることによっても多くすることができる。ワイヤの外周における低い導電性のコーティングは、導体損失を大きくするが、その理由は、電流密度が(表皮効果により)表面近くに集まりそしてスズめっきされた材料を通してより高い損失を受けることになるからである。ストランデッド・ワイヤの使用もまた、導体損失を増加させ、その再、匹敵するワイヤ・ゲージに対し損失がおよそ20パーセント増加する。図5は、スズめっきおよびストランデッド・ワイヤを用いたケーブル40の横断面図を示している。図5の実施形態においては、ストランデッド銅導体42は、スズの表皮44内に設けている。図6は、図5の細部“A”の詳細図である。表皮は、深さdsで設けている。
【0020】
また、粗表面のワイヤの使用は、このワイヤを通しての導体損失を増大させることができる。
図7aおよび図7bは、クロストーク・ペア間の物理的距離を大きくすることにより、ケーブルの感受性を減少させる技法を示している。第1と第2のケーブル46および48は、接触関係で配置されている。ケーブル・ジャケット材料50の例えば厚さを図7bに示したジャケット52のように増すと、クロストーク・ペア間の距離は図7aに示すd1から図7bに示すd2の大きくなる。1実施形態によれば、このケーブル・ジャケット材料50は、発泡ジャケット材料である。また、ケーブル・セパレータを使用することによって、隣り合うケーブル間の分離を増すことができる。
【0021】
また、金属シールディングを使って、信号ケーブル・ペア中へのエイリアン信号の感受性を減少させることができる。図8は、導電性シールドの組み込みによりケーブルの感受性を減少させる技法を示す横断面図である。図8においては、導電性ペア52を、導電性シールド54全体内に設けている。次に、導電性シールド54は、ジャケット56内に設けている。図9(これは、詳細図を含む)に示すように、別の実施形態においては、全体シールディング54の層を、ジャケット材料の第1と第2の層58および60間に設けることができる。
【0022】
図10は、別の実施形態を示しており、この実施形態では、個々のシールディング62は、各々のワイヤ・ペアを取り囲んでいる。
図11には、別の実施形態を示しており、これは、導電性スプライン64または導電性ペア・セパレータの使用を示しており、これらは、感受性を減少させるのに使用される。
【0023】
別の実施形態においては、ケーブルのその長さに沿ったレイを変更することにより、クロストークを減少させることもできる。ケーブルのレイは、ケーブルのその長さに沿ったツイスティングを指している。この実施形態では、固定のツイスト・ペア長を、ケーブルの長さに沿って設けている。提案された10Gb/sイーサネット近端クロストーク(NEXT)仕様を満足する、ケーブルの長さ全体にわたりツイスト・ペア長をもった4ペア・ケーブルを提供する、4つまたはそれより多いケーブル・レイ値を選択する。任意の4つまたはそれより多いケーブル・レイ値をランダムに選択し、その選択プロセスは、以下に示す。
【0024】
1.ケーブル・レイ(A,B,C,D,…)を選択する(それらレイの各々は、10Gb/sイーサネットNEXT仕様を満たす)。
2.それら4つのケーブル・レイのうちの任意のものを、ケーブル・レイ・プロセスの間において非復元で選択する。
【0025】
3.その選択したケーブル・レイを、10メートルあるいはこれ未満のケーブルの均一なあるいはランダムな長さにわたって設ける。
4.残りの3つあるいはこれより多いケーブル・レイのうちの任意のものを選択し、ステップ3で説明したようにケーブル構成に適用する。
【0026】
5.このプロセスを、すべてのケーブル・レイを割り当てるまで繰り返す。
図12には、ケーブル長の図を示しており、これでは、ケーブル・レイ遷移間にランダムな距離を用い、また4つの異なったケーブル・レイを使用している。
【0027】
以上、本発明の特定の実施形態および応用について図示し説明したが、理解すべきように、本発明は、ここに開示した構成および組合せそのものに限定されるものではなく、また、添付の特許請求の範囲のおいて定められる本発明の要旨および範囲から逸脱せずに種々の修正、変形、変更が以上の説明から明かである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信ネットワークにおけるエイリアン・クロストークを低減するためのシステムであって、
第1の強化パッチコードを介して第1のネットワーク・デバイスに接続された第1の通信ケーブルであって、該第1強化パッチコードが、前記第1通信ケーブルにおける減衰よりも大きな度合いで、前記強化パッチコードを通して伝わる信号を減衰させるように構成された減衰用パッチコードである、前記の第1の通信ケーブルと、
第2の強化パッチコードを介して第2のネットワーク・デバイスに接続された第2の通信ケーブルであって、該第2強化パッチコードが、前記第2通信ケーブルにおける減衰よりも大きな度合いで、前記強化パッチコードを通して伝わる信号を減衰させるように構成された減衰用パッチコードである、前記の第2の通信ケーブルと、
を備えたシステム。
【請求項2】
請求項1記載のシステムにおいて、前記第1パッチコードは複数のツイスト通信ワイヤを含み、前記第1通信ケーブルは複数のツイスト通信ワイヤを含み、前記第1パッチコードの前記ツイスト通信ワイヤは、前記第1通信ケーブルの前記ツイスト通信ワイヤよりも、単位長あたりより多いツイストを有する、システム。
【請求項3】
請求項1記載のシステムにおいて、前記第1パッチコードは複数の通信ワイヤを含み、前記第1通信ケーブルは複数の通信ワイヤを含み、前記第1パッチコードの前記通信ワイヤは、前記第1通信ケーブルの前記ツイスト通信ワイヤよりもより狭いゲージを有する、システム。
【請求項1】
通信ネットワークにおけるエイリアン・クロストークを低減するためのシステムであって、
第1の強化パッチコードを介して第1のネットワーク・デバイスに接続された第1の通信ケーブルであって、該第1強化パッチコードが、前記第1通信ケーブルにおける減衰よりも大きな度合いで、前記強化パッチコードを通して伝わる信号を減衰させるように構成された減衰用パッチコードである、前記の第1の通信ケーブルと、
第2の強化パッチコードを介して第2のネットワーク・デバイスに接続された第2の通信ケーブルであって、該第2強化パッチコードが、前記第2通信ケーブルにおける減衰よりも大きな度合いで、前記強化パッチコードを通して伝わる信号を減衰させるように構成された減衰用パッチコードである、前記の第2の通信ケーブルと、
を備えたシステム。
【請求項2】
請求項1記載のシステムにおいて、前記第1パッチコードは複数のツイスト通信ワイヤを含み、前記第1通信ケーブルは複数のツイスト通信ワイヤを含み、前記第1パッチコードの前記ツイスト通信ワイヤは、前記第1通信ケーブルの前記ツイスト通信ワイヤよりも、単位長あたりより多いツイストを有する、システム。
【請求項3】
請求項1記載のシステムにおいて、前記第1パッチコードは複数の通信ワイヤを含み、前記第1通信ケーブルは複数の通信ワイヤを含み、前記第1パッチコードの前記通信ワイヤは、前記第1通信ケーブルの前記ツイスト通信ワイヤよりもより狭いゲージを有する、システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−190801(P2012−190801A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−88336(P2012−88336)
【出願日】平成24年4月9日(2012.4.9)
【分割の表示】特願2006−520221(P2006−520221)の分割
【原出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(507202736)パンドウィット・コーポレーション (70)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−88336(P2012−88336)
【出願日】平成24年4月9日(2012.4.9)
【分割の表示】特願2006−520221(P2006−520221)の分割
【原出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(507202736)パンドウィット・コーポレーション (70)
【Fターム(参考)】
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