説明

強度を段階的に変化させる圧反射活性化治療

本発明では、圧反射活性化システムを用いて患者の圧反射系を活性化する(刺激する)ためのシステム、デバイス、およびそれらを用いるための方法を提供する。感知したデータを感知/監視/解釈することによって、治療強度を段階的に変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、心臓血管障害、神経障害、および腎臓障害の治療および/または管理のための医療デバイスおよび方法に関する。より詳細には、本発明は、心臓血管障害、神経障害、および腎臓障害、ならびにそれらの内在する原因および状態の治療および/または管理のための、患者の圧反射系を制御するためのデバイスおよび方法に関する。特に、本発明は、患者の状態の変化に対し所定の応答を提供するように医師がデバイスをプログラムすることを可能とする圧反射システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高血圧症(すなわち、高血圧)は、米国だけでも6500万人に影響を与えると推定される主要な心臓血管疾患であり、心不全および卒中の主要原因である。それは、米国だけでも年間200,000人を超える患者における、主要死因または補助死因として挙げられている。高血圧症は、部分的には、身体のより小さな血管(小動脈)が収縮する結果、血圧の上昇を引き起こすときに発生する。血管が収縮するため、心臓はより高い圧力で血流を維持するために、より激しく働く必要がある。持続性の高血圧症は、最終的には、腎臓、脳、眼、および他の組織を含む複数の身体器官に対する損傷を生じ、それに関連した様々な疾患を生じる場合がある。上昇した血圧によって血管の内側が損傷を受けることで、アテローム性動脈硬化症の進行を加速させ、血栓が生じる可能性を増加させる場合もある。これによって、心臓発作および/または卒中が導かれることがある。
【0003】
持続性の高血圧は、やがて拡大し損傷した心臓(肥大)を生じ、これが心不全を導く場合がある。心不全は、虚血性心疾患を含む様々な心臓血管疾患の一般的な最終的な現れである。心不全は、身体の必要を満たすのに十分な血液を心臓が送り出せないことを特徴としており、疲労、運動能力の低下、および生存率の低下を生じる。鬱血性心不全(CHF)はポンプ機能の不均衡であり、その場合、心臓は血液循環を適切に維持することができない。CHFの最も重篤な現れである肺水腫では、この不均衡によって肺への肺毛細管からの漏れによる肺液の増加が生じる。心不全の最も一般的な原因は、冠動脈疾患である。これは次いで、左心室筋肉の損失、進行性の虚血、または心拡張期の心室伸展性の低下を生じる。他のCHFの原因には、高血圧症、心臓弁膜症、先天性心疾患、他の心筋症、心筋炎、および感染性心内膜炎が含まれる。
【0004】
1つの好適な心不全治療方法は、ペースメーカおよび組み合わせペースメーカ/除細動器(「ICD」)を用いる心臓再同期療法(「CRT」)など、心臓リズム管理デバイス(「心臓リズム管理デバイス」)を用いることである。提案されている別のCHF治療方法は、患者の血圧を制御することによって、圧反射系に影響を与え、心臓がより効率的に機能するのを支援することである。圧反射活性化は、一般に、神経ホルモンの活性化を減少させるため、心臓の後負荷、心拍数、心臓に対する交感神経ドライブなどを減少させる場合がある。心臓に課される要求を減少させることによって、圧反射活性化はCHFの防止または治療を支援し得る。
【0005】
多くの様々な治療法では、心不全を治療するために、拡張した心臓の大きさを減少させるための治療薬、心臓の機械的制限、外科的処置などが試みられる場合がある。それらには、血圧を減少させて心臓の負荷を緩和するための血管拡張剤、体液過剰を減少させる利尿薬、身体の神経ホルモン応答の阻害剤および遮断薬、および他の医薬が含まれる。様々な外科的処置も、これらの疾患用に提案されている。例えば、心臓移植は、重症の難治性心不全を患う患者のために提案されている。これに代えて、心臓のポンプ作用を増加させるために、補助心臓(VAD)など植込型医療デバイスが胸部に移植される場合もある。
これに代えて、短期間(通常、1ヶ月以内)の心機能の維持のため、大動脈内バルーンポンプ(LABP)が用いられる場合もある。
【0006】
当然のことながら、心不全の「完全な」治療方法は未だ開発されていない。上述の治療のうちの幾つかは一部の場合には極めて有効であるが、望ましくない副作用を有する場合や、一部の患者にほとんど利益を与えない場合もある。CHFは、このように高い罹病率、死亡率、および社会に対するコストを有する、浸透した健康問題であるので、改良された治療方法が絶えず求められている。これに加えて、そのようなデバイスの使用では、患者の生理学的な状態が内部的および/または外部的な条件に応じて急速に変化する場合があるので、患者に最適な成績を与えるように治療の進路は再調整される必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、自身の動作を制御するためのスマートな処理を有する改良された方法および装置を提供することは、望ましい。理想的には、そのような方法および装置は侵襲性が最小であり、有意な副作用が存在するとしても、わずかである。理想的には、心不全を引き起こす1つ以上の内在する機構が一部の場合には治療される。これらの目的のうちの少なくとも一部は、本発明によって満たされる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
高血圧症、心不全、他の心臓血管疾患、神経系疾患、および腎臓疾患の問題に対処するため、本発明では、過剰な血圧、自律神経系活動、および神経ホルモン活性化を減少させることを含む効果を得るように患者の身体内の1つ以上の圧反射系が活性化される方法と、同方法を実施するためのデバイス(すなわち、圧反射活性化デバイス)とを提供する。そのような活性化系では、脳の血圧が上昇し、次いで脳が交感神経系および神経ホルモンの活性化のレベルを調節し(例えば、減少させ)、副交感神経系活性化を増進するため、血圧を減少させ循環系および他の身体系に有益な効果が得られることが示唆されている。
【0009】
本発明による方法およびデバイスは、圧受容器、機械的刺激受容器、圧受容体、または動脈管における圧受容器に類似した手法により、血圧、神経系活動および神経ホルモンの活動に影響を与える他の静脈心もしくは心肺受容体を活性化するために用いられてもよい。簡単のため、そのような静脈の受容体(および/またはそのような受容体からの信号を運ぶ神経)全てを、本明細書では集合的に「圧受容器」と呼ぶ。
【0010】
本発明では、システム、デバイス、およびそれらを使用するための方法を提供する。本発明の特徴を具体化する方法、デバイス、およびシステムは、患者の生理学的な状態を表すパラメータに関連した感知データを感知/監視/解釈するとともにそのパラメータの変化の大きさおよび/または変化率にしたがって治療の進路を調節する圧反射活性化デバイスを用いて、患者の圧反射系を活性化する(刺激する)ことを可能とする。例として、システムは、時間を通じて所与のパラメータの大きさが変化しているか否か、変化している場合、そのような変化は増加であったか、減少であったかに応じて、治療の強度を増加させるか、減少させる。
【0011】
さらに当業者には、本発明による、方法、デバイス、およびシステムが、患者の神経系活動、患者の自律神経系活動、患者の交感神経/副交感神経系活動、および患者の代謝活性のうちの1つ以上を変更することに、さらに適用可能であることが理解される。
【0012】
幾つかの実施形態では、本発明は、圧反射活性化デバイスによる患者の圧反射系の活性化を提供する。患者に対する治療は、通常、医療サービス提供者によって決定および選択される。患者の1つ以上の生理学的な状態を表す1つ以上のパラメータが選択され、その
ようなパラメータに対する目標値が選択される。限定ではなく例として、このパラメータは、患者の血液におけるCO2レベル(血圧を表す)であってよい。そのようなパラメータの他の例には、次に限定されないが、心拍数、血圧、ECG、酸素飽和度、血液pH、活動レベル(例えば、運動、休息)、伏臥位、仰臥位、体幹温、呼吸速度、および呼吸深度が含まれる。幾つかの実施形態では、1つ以上のパラメータの別の数に対する初期の目標範囲(本明細書では、目標範囲とは、他に記載のない限り、ベースライン、またはベースラインもしくは下限値から上限値までの範囲を指して用いられる)数が設定され、その値は1つ以上のセンサによって感知される。パラメータは、システムがそのパラメータの値または状態を認識するように感知されてもよい。幾つかの実施形態では、このパラメータは医療サービス提供者によって決定された期間に感知/監視される。本発明の特徴を具体化する方法は、この値の現在の変化および/または監視されたパラメータの変化率を要素とする分類に応答して、圧反射活性化治療を変更/調節する。本明細書では、感知および監視は、他に記載のない限り区別せずに用いられる。
【0013】
幾つかの実施形態では、圧反射活性化治療は1つ以上の治療レジメンを備え、このレジメンは、圧反射系が異なる程度まで活性化される(刺激される)ように、異なる用量/強度で圧反射活性化治療を提供する。幾つかの実施形態では、レジメンの用量/強度を変化させることは、パルス発生器によって発生されたパルスの1つ以上の特徴を変化させて圧反射活性化デバイスを活性化することを含む。そのような特徴には、デューティサイクル、パルス振幅、パルス幅、パルス周波数、パルス間隔、パルス波形、パルス極性、パルス形状、およびパルス位相のうちの1つ以上が含まれる。幾つかの実施形態では、圧反射活性化治療は、効率的治療を「ランプアップ」または「ランプダウン」させるために増加させることまたは減少させることのいずれかにより、用量を段階的に変化させて送達される。段階的に変化する用量により治療を提供することは、治療に対する患者の応答を監視して、各患者に対し治療をカスタマイズすることを可能とする。幾つかの実施形態では、患者の圧反射系が治療の変化に過応答しないように(例えば、治療が休止または不活性化されるときに患者において血圧急上昇を引き起こすことによって)、圧反射活性化治療レジメンは異なる用量/強度で送達される。
【0014】
幾つかの実施形態では、1つ以上のパラメータは1つ以上のセンサによって感知される。パラメータは、システムがそのパラメータの値または状態を認識するように感知されてもよい。幾つかの実施形態では、このパラメータは医療サービス提供者によって決定された期間に感知/監視される。本発明の特徴を具体化する方法では、監視されるパラメータにおける変化の分類に応じて圧反射活性化治療が変更/調節される(本明細書では、他に記載のない限り、分類は、特定の数に限定されず、特定の使用法、適用、または治療に応じた範囲であってよい)。一部の実施形態では、治療は初期の用量/強度で送達される。パラメータの変化を感知すると、この方法では、感知したパラメータの値の変化を1つ以上の所定の分類と比較する。一部の有用な実施形態では、所定の強度ステップの大きさは、1つ以上の所定の分類の各々に関連付けられている。
【0015】
一部の実施形態では、感知/監視されるパラメータの値は、そのパラメータの目標値と比較され、この比較の結果に基づき、パラメータの値(大きさ)が変化したか否かが判定され、変化していた場合、増加したか減少したかが判定される。圧反射活性化治療の強度は、このパラメータの大きさの変化を要素とする分類に応答して、治療中に変化する。
【0016】
一部の実施形態では、この大きさの変化は比較的大きく、対応する圧反射活性化治療強度の変化は比較的大きい。一部の実施形態では、この大きさの変化は比較的小さく、対応する圧反射活性化治療強度の変化は比較的小さい。
【0017】
一部の実施形態では、本発明の特徴を具体化する方法には、圧反射活性化治療にしたが
って圧反射活性化デバイスを用いて患者の圧反射系を活性化し、生理学的な状態を表すパラメータについての初期の目標範囲を決定することが含まれる。この生理学的なパラメータが監視され、監視されたパラメータの値の現在の変化を要素とする変化の分類に応じて、圧反射活性化治療の強度が変更される。例えば、監視された生理学的なパラメータの大きさの増加が分類「大きな変化」の要素であると判定される場合、圧反射活性化治療強度は、監視された生理学的なパラメータの大きな変化に関連した所定の大きなステップの大きさだけ増加される。
【0018】
しかしながら、監視された生理学的なパラメータの大きさの増加が分類「小さな変化」の要素であると判定される場合、圧反射活性化治療強度は、監視された生理学的なパラメータの小さな変化に関連した所定の小さなステップの大きさだけ増加される。第2の例として、監視された生理学的なパラメータの大きさの減少が分類「大きな変化」の要素であると判定される場合、圧反射活性化治療強度は、監視された生理学的なパラメータの大きな変化に関連した所定の大きなステップの大きさだけ減少される。しかしながら、監視された生理学的なパラメータの大きさの減少が分類「小さな変化」の要素であると判定される場合、圧反射活性化治療強度は、監視された生理学的なパラメータの小さな変化に関連した所定の小さなステップの大きさだけ減少される。
【0019】
一部の実施形態では、この生理学的なパラメータは時間を通じて監視され、その大きさの変化が識別される。一部の実施形態では、この生理学的なパラメータの様々な変化は所定の分類体系へと分類される。変化は、例えば、大きな変化または小さな変化として分類される。一部の実施形態では、強度を増加させるまたは減少させるための所定の一連のステップの大きさが決定される。一部の有用な実施形態では、これらの強度ステップの大きさの各々は、特定の分類の生理学的なパラメータの変化に関連付けられている。これらの強度ステップの大きさの大きさは、実験を通じて、および/または医療サービス提供者/患者によって、および/またはメモリ/プロセッサの履歴データおよび利用可能となる新たな情報を通じて学習する圧反射活性化治療システムによって決定されてよい。一部の実施形態では、パラメータの変化が検出されると、そのパラメータの分類に基づき、特定の圧反射活性化治療強度ステップの大きさが適用される。
【0020】
一部の実施形態では、本発明の特徴を具体化する方法には、第1の変化率を有する患者のパラメータに関連した所定の圧反射活性化治療強度ステップの大きさを決定することが含まれる。この方法には、さらに、第2の変化率を有する患者のパラメータに関連した所定の圧反射活性化治療強度ステップの大きさを決定することが含まれる。初期の圧反射活性化治療強度が決定され、患者のパラメータについて初期の目標範囲が決定される。圧反射活性化治療が患者へ送達され、この間、患者のパラメータは監視されている。
【0021】
一部の実施形態では、次いで、パラメータの値が変化しているか否かが判定され、変化している場合、どの方向に変化しているかが判定される。変化が存在しない場合、以前のように圧反射活性化治療が継続され、パラメータの監視が継続される。パラメータの大きさが増加している場合、その率はどの分類であると考えられるかが判定される。例えば、変化率は、分類「大きな率」の要素であるか、分類「小さな率」の要素であってよい。変化率が大きい変化率であると判定される場合、圧反射活性化治療強度はそのカテゴリに対する所定のステップの大きさだけ増加される。変化率が小さい変化率であると判定される場合、圧反射活性化治療強度はそのカテゴリに対する所定のステップの大きさだけ増加される(例えば、比較的小さなステップの大きさ)。一部の実施形態では、圧反射活性化治療強度が再調節されると、患者のパラメータを監視しつつ、その圧反射活性化治療が継続される。
【0022】
一実施形態では、本発明の特徴を具体化する、患者を治療するためのシステムは、圧反
射活性化治療にしたがって患者の圧反射を活性化するための圧反射活性化デバイスを含む。一部の実施形態では、この圧反射活性化治療は複数の用量/強度レジメンを含む。例として、このシステムはさらに、治療を発生させるための治療回路や、治療回路へ接続可能であり、信号と信号および活性化パルスを発生させるための対応する命令とを与えるように構成されているコントローラを含む。このデバイスは、コントローラと通信状態にあり、圧反射活性化治療に関する情報を記憶するように構成されているメモリシステムも備える。
【0023】
一部の実施形態では、治療回路は、患者の圧反射系を様々な程度に活性化するための様々な用量/強度レベルを有する刺激パルスを発生させるように構成されている、パルス発生器を備える。一部の実施形態では、治療は複数のレジメンを含み、このレジメンのうちの1つ以上は別のレジメンと異なる。
【0024】
この本発明の特徴を具体化するシステムは、患者の1つ以上の圧受容器近傍に配置可能な1つ以上の電極アセンブリをさらに含んでよい。このシステムは、一部の実施形態では、コントローラへ接続可能であり患者のパラメータを監視するように構成されている1つ以上の監視システムを含む。システムは、一部の実施形態では、コントローラへ接続可能でありパラメータを感知するように構成されている1つ以上感知システムをさらに含む。このコントローラは、感知したデータから受信される情報に基づき治療を調節/変更するように構成されている。この治療が、次いで、1つ以上の電極アセンブリを介して患者へ送達される。
【0025】
一実施形態では、このシステムは、様々な構成要素および他の回路との間で必要な情報を配信した後、1つ以上の電極アセンブリを介して患者に治療を送達するように監視回路および治療回路に接続可能である、切替回路をさらに含む。
【0026】
一般に、圧反射活性化を提供するように、数々の適切な解剖学的構造のうちのずれが活性化されてもよい。例えば、様々な実施形態では、圧反射系を活性化することには、1つ以上の圧受容器、圧受容器に結合された1つ以上の神経、頸動脈洞枝、またはそれらの何らかの組み合わせを活性化することが含まれてよい。1つ以上の圧受容器が活性化される実施形態では、圧受容器は、次に限定されないが、頚動脈洞、大動脈弓、心臓、総頸動脈、鎖骨下動脈、肺動脈、大腿動脈、および/または腕頭動脈など、動脈管に位置することがあってもよい。これに代えて、圧反射活性化デバイスは、米国特許出願第10/284,063号明細書(引用によって援用する)に記載されているように、下大静脈、上大静脈、門脈、頚静脈、鎖骨下静脈、腸骨静脈、奇静脈、肺静脈、および/または大腿静脈などの場所において、心臓または血管の低圧側に配置されてもよい。圧反射活性化は、様々な実施形態では、電気的な活性化、機械的な活性化、熱による活性化、および/または化学的な活性化によって達成されてよい。さらに、圧反射活性化は、様々な実施形態では、連続的であっても、パルス化されていても、定期的であっても、またはそれらの何らかの組み合わせであってもよい。
【0027】
圧反射活性化デバイスは、機械的、電気的、熱的、化学的、生物学的、または他の手段を利用して圧反射を活性化する種々のデバイスのうちのいずれを含んでもよいが、本発明の記載では、電気的な活性化が用いられる。圧反射は、直接的に活性化されても、隣接した血管組織を介して間接的に活性化されてもよい。一部の実施形態では、本発明の特徴を具体化するシステムにおいて、圧反射活性化デバイスは、患者の静脈内または動脈内など患者内に植込可能である。例えば、このデバイスは静脈内または動脈内に植込可能である。様々な実施形態では、圧反射活性化デバイスは、血管の管腔内(すなわち、血管内)、血管の壁外(すなわち、血管外)、または血管壁内(すなわち、壁内)に配置されてよい。治療効果を最大とするため、圧反射活性化デバイスを精密に位置特定または配置するた
めにマッピング方法が用いられてよい。電気的な手段を利用して圧反射を活性化する実施形態では、様々な電極設計が提供される。この電極設計は、頚動脈洞またはその近傍の頚動脈に対する接続に特に適切であってもよく、外来の組織刺激を最小化するように設計されてもよい。
【0028】
一部の実施形態では、パラメータを感知することは、1つ以上の適切な生理学的センサを介して達成される。このセンサは、患者の身体内において外部的または内部的に位置を特定できてもよい。一部の実施形態では、このセンサは、心臓外心電図計、心臓内心電図計、圧力センサ、および加速度計のうちの1つ以上を備える。さらに、このセンサは、任意の適切な特徴、状態、変化などを感知するように適合されてもよい。さらに、このセンサは、次に限定されないが、心内圧、心拍数、ならびに心臓の心房および心室の収縮のタイミングなど、数々の様々な患者のパラメータのうちのいずれを感知するように適合されてもよい。
【0029】
一部の実施形態では、このセンサは、圧反射活性化デバイスのバッテリの1つ以上のパラメータを感知するように構成されている。このセンサは、バッテリ電力源が交換時期に近付いていることを判定してもよい。例えば、デバイスは、そのデバイスを(現在プログラムされているように)さらなる60日間有効に動作するのに十分な充電量をバッテリが有するときを感知するようにプログラムされてよい。
【0030】
一部の実施形態では、患者を治療するためのシステムは、1つ以上の圧反射活性化デバイスと、この圧反射活性化デバイスに結合された1つ以上のセンサと、この1つ以上の圧反射活性化デバイスおよび1つ以上のセンサに結合された、センサから受信される感知されたデータを処理するため、および/または圧反射活性化デバイスの活性化を変更するため、および/または適切な圧反射活性化治療を与えるためのプロセッサと、を含む。
【0031】
様々な実施形態では、制御システムは、圧反射活性化デバイスの活性化、不活性化、またはその他の調整を行う、制御信号を発生させるために用いられてもよい。この制御システムは、開ループまたは閉ループモードで動作してよい。例えば、開ループモードでは、患者および/または医師は直接的または遠隔的に制御システムと接触し、制御信号を規定してよい。閉ループモードでは、制御信号がセンサからのフィードバックに応答してもよく、この応答は、刺激/活性化治療および複数のレジメンを定義するプリセットまたはプログラム可能なアルゴリズムによって記述されている。刺激(活性化)治療は、好適には、長期有効性を促進し、かつ電力要求を最小とするように選択される。理論的には、圧反射活性化が途切れないと、時間を通じて圧反射および/または中枢神経系の応答性が低下することによって、治療の有効性が減少する。したがって、刺激治療は、圧反射が時間を通じてその応答性を維持するような手法によって圧反射活性化デバイスを調整するように選択されてよい。長期有効性を促進する刺激レジメンの特定の例は、引用によって本明細書にその全体を援用した上述の出願に記載されている。
【0032】
一実施形態では、この制御システムは、感知した情報に基づき圧反射活性化治療を調節する制御信号を発生させるために用いられてもよい。一実施形態では、圧反射活性化治療は、バッテリ消耗または治療を減少させる必要を表す別のパラメータなど、感知した情報に基づき調節され、治療におけるそのような調節は、治療の休止、停止、または不活性化が行われるときの血圧の一時的な超過を防止するよう、患者を効果的に治療から「引き離す」ために実行される。この治療の調節は、患者に対して特異的に実行され、患者が治療の休止、停止、または不活性化にどのように応答するのかに関する決定に基づいてよい。
【0033】
上述において示唆されるように、本発明のデバイスの様々な実施形態は、完全に血管内であっても、完全に血管外であってもよく、部分的に血管内かつ部分的に血管外であって
もよい。さらに、デバイスは、完全に動脈中または動脈上にあってもよく、完全に静脈中または静脈上にあってもよく、両者の何らかの組み合わせの中または上にあってもよい。一部の実施形態では、例えば、移植型デバイスが動脈内または静脈内に配置され、他の実施形態では、デバイスが動脈または静脈の外側に、血管外に配置される。さらに他の実施形態では、電極、コントローラ、またはその両方など、デバイスの1つ以上の構成要素は患者の身体の外に配置されてよい。本発明のデバイスの導入および配置では、任意の適切な技術および接近経路が用いられてよい。例えば、一部の実施形態では、開胸外科的処置を用いて移植型デバイスが配置されてもよい。これに代えて、移植型デバイスは経血管の静脈内手法を介して動脈または静脈内に配置されてもよい。さらに別の実施形態では、移植型デバイスは最小侵襲性の手段を介して血管へ導入され、血管を通じて治療位置まで進行され、次いで、動脈外または静脈外への配置のため、血管外へ進行されてよい。例えば、移植型デバイスは、静脈へ導入され、静脈を通じて進行され、静脈壁から出され、動脈上の血管外の部位に配置される。これらのおよび他の本発明の態様ならびに実施形態について、添付の図面を参照して、さらに詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】主要な動脈および静脈ならびに関連する組織を示す人体の胴体上部の概略図。
【図2A】頚動脈洞および血管壁内の圧受容器の概略的な断面図。
【図2B】血管壁内の圧受容器および圧反射系の例の概略図。
【図3】本発明の特徴を具体化する一処理のフローチャート。
【図4】本発明の特徴を具体化する一処理のフローチャート。
【図5】本発明の特徴を具体化する一処理のフローチャート。
【図6】本発明の特徴を具体化する圧反射活性化治療システムのブロック図。
【図7】本発明の特徴を具体化するための、圧反射活性化治療システムのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0035】
ここで図1,2A,2Bを参照すると、大動脈弓12、総頸動脈14/15(右頚動脈洞20および左頚動脈洞の近傍)、鎖骨下動脈13/16、および腕頭動脈22の動脈壁内には、圧受容器30が存在する。例えば、図2Aに最も良く見られるように、頚動脈洞20の血管壁内には圧受容器30が存在する。圧受容器30は、身体が血圧を感知するために用いる、一種の伸展受容器である。血圧の上昇は動脈壁を伸展させ、血圧の低下は動脈壁をその元の大きさへ復帰させる。そのようなサイクルが各心拍とともに繰り返される。右頚動脈洞20、左頚動脈洞、および大動脈弓12に位置する圧受容器30は、圧反射系50に影響を与える血圧を感知する際、最も有意な役割を担う。これについて、図2Bを参照し、より詳細に記載する。
【0036】
ここで図2Bを参照すると、概略図には、一般的な血管壁40に配置された圧受容器30と、圧反射系50の概略的なフローチャートとが示されている。圧受容器30は、上述の主要な動脈の動脈壁40内に豊富に分布しており、一般にアーバ32を形成する。この圧受容器アーバ32は複数の圧受容器30を含み、圧受容器30は各々、神経38を介して脳52へ圧受容器信号を送る。圧受容器30が非常に豊富に分布され、血管壁40内で樹枝状となっているので、個々の圧受容器アーバ32は容易に区別できない。この目的のため、図2Bに示す圧受容器30は、図示のために主として概略的である。
【0037】
圧受容器に加えて、他の神経系組織が圧反射活性化を誘導することが可能である。例えば、様々な実施形態では、圧反射活性化は、1つ以上の圧受容器、1つ以上の圧受容器に結合された1つ以上の神経、頸動脈洞枝、またはそれらの何らかの組み合わせを活性化することによって達成されてよい。したがって、「圧反射活性化」の語は、一般に任意の手
段による圧反射系の活性化を意味し、直接的に圧受容器を活性化することに限定されない。以下の記載では、多くの場合、圧反射活性化/刺激および圧受容器信号の誘導に焦点を置いているが、これに代えて、本発明の様々な実施形態によって、他の適切な組織または構造を活性化することによる圧反射活性化が達成されてもよい。
【0038】
圧反射信号は、数々の身体系(集合的に圧反射系50と呼ばれる)を活性化するために用いられる。圧受容器30は神経系51を介して脳52へ接続されており、この神経系51が、神経ホルモンの活動を介して、心臓11、腎臓53、血管54、および他の器官/組織を含む、数々の身体系を活性化する。そのような圧反射系50の活性化は本発明の発明者による他の特許出願の課題であったが、本発明では、一定の条件における自動的な遮断を可能とすることにより、脳52に対する圧反射活性化の効果が不利に働くことを防止または最小化する、圧反射系および圧反射系を用いる方法に焦点を置いている。
【0039】
ここで図3を参照する。図3には、本発明の特徴を具体化する一方法のフローチャートを示す。示すように、患者における生理学的な状態へ応答するパラメータに対する変化の範囲の定義および理解を有する、圧反射活性化治療プログラムが決定される。この生理学的な状態へ応答するパラメータは、治療中に監視され(ボックス1)、その値の変化について検査される。変化が検出される場合、その変化が出発点(または目標値)からの増加であるか、減少であるかが判定される(ボックス2)。変化が存在しないと判定される場合(ライン3)、治療は継続され、以前のように監視され(ボックス1)、パラメータの監視および変化についての検査が継続される(ボックス2)。
【0040】
増加変化が存在すると判定される場合(ボックス2)、この方法では、増加の性質、例えば、それが大きな増加であるか小さな増加であるか(ボックス4)が識別される。増加が大きい場合、この方法では、圧反射活性化治療強度に対し大きな漸増が行われる(ボックス6)。増加が小さい場合、この方法では、圧反射活性化治療強度に対し小さな漸増が行われる(ボックス7)。
【0041】
減少変化が存在すると判定される場合(ボックス2)、この方法では、減少の性質、例えば、それが大きな減少であるか小さな減少であるか(ボックス5)が識別される。減少が大きい場合、この方法では、圧反射活性化治療強度に対し大きな漸減が行われる(ボックス8)。減少が小さい場合、この方法では、圧反射活性化治療強度に対し小さな漸減が行われる(ボックス9)。
【0042】
ここで図4を参照する。図4には、本発明の特徴を具体化する一方法のフローチャートを示す。示すように、ボックス1,2では、所定の圧反射活性化治療が医師によって、患者のパラメータのより速い変化に関連した圧反射活性化治療の強度ステップの大きさ(ボックス1)および患者のパラメータのより遅い変化に関連した強度ステップの大きさ(ボックス2)を用いて、決定される。生理学的な状態を表すパラメータが監視され(ボックス3)、監視されたパラメータの変化率が算出される(ボックス4)。このパラメータの変化率が分類される(ボックス5)。その後、前のステップ(ボックス5)にて行なわれた分類に基づき、所定の圧反射活性化治療強度ステップの大きさが選択される(ボックス6)。
【0043】
ここで図5を参照する。図5には、本発明の特徴を具体化する一方法のフローチャートを示す。示すように、大小の患者のパラメータ変化に関連した所定の圧反射活性化治療強度ステップの大きさが決定され、システムへプログラムされる(ボックス1,2)。初期の圧反射活性化治療強度(ボックス3)や患者のパラメータに対する目標値(ボックス4)が決定される。圧反射活性化治療が患者へ送達され(ボックス5)、この間、パラメータは監視されている(ボックス6)。パラメータの大きさに変化が存在するか否か、また
変化が存在する場合、そのような変化が増加であるか減少であるかが判定される(ボックス7)。変化が存在しない場合(ライン8)、圧反射活性化治療は以前のように継続され(ボックス5)、パラメータはその大きさの変化について監視される(ボックス6)。
【0044】
減少変化が存在すると判定される場合(ボックス7)、この方法では、変化率がどうであるか(例えば、大きいか小さいか)が識別される(ボックス9)。変化率が大きいと判定される場合、圧反射活性化治療強度は大きな変化率に対する所定のステップだけ減少される(ボックス12)。変化率が小さいと判定される場合、圧反射活性化治療強度は小さな変化率に対する所定のステップだけ減少される(ボックス11)。その後、圧反射活性化治療は新たなレジメン(ボックス5)下で継続され(ライン15)、パラメータの測定が継続される(ボックス6)。
【0045】
増加変化が存在すると判定される場合(ボックス7)、この方法では、変化率がどうであるか(例えば、大きいか小さいか)が識別される(ボックス10)。変化率が大きいと判定される場合、圧反射活性化治療強度は大きな変化率に対する所定のステップだけ増加される(ボックス14)。変化率が小さいと判定される場合、圧反射活性化治療強度は小さな変化率に対する所定のステップだけ増加される(ボックス13)。その後、圧反射活性化治療は新たなレジメン(ボックス5)下で継続され(ライン15)、パラメータの測定が継続される(ボックス6)。
【0046】
図6を参照する。図6には、一実施形態における、患者の圧反射系の活性化/刺激用のシステム200を示す。システム200は圧力センサ203を備え、圧力センサ203は圧力監視回路206へ接続されており、圧力監視回路206はコントローラ210へ接続されている。治療回路213もコントローラ210へ接続されている。メモリ216はコントローラへ接続されており、コントローラ210へ命令および治療アルゴリズムを提供する。電極アセンブリ220,230は一端にてコントローラへ接続されており、患者側の別の端部にて、患者の圧反射系に対し圧反射刺激を提供する。
【0047】
ここで図7を参照すると、本発明の実施において使用可能な圧反射活性化システムの一般的な特徴および本発明の1つ以上の特徴を組み込むことが示されている。このシステムは、本発明の1つ以上の特徴を含むように変更されてよい。システム120は、プロセッサ63、圧反射活性化デバイス70、およびセンサ80を含む。簡単のため、センサ80を患者外に位置する1つのユニットとして示す(センサ80が外部心電図(ECG)デバイスを備える場合などが該当する)。代替の実施形態では、しかしながら、センサ80(1つ以上のセンサ)は、心臓11上または中に位置してもよく、患者内の他の適切な場所に位置してもよい。随意では、プロセッサ63は、制御システム60(制御ブロック61(ハウジングプロセッサ63およびメモリ62)、ディスプレイ65、および/または入力デバイス64を含む)の一部であってもよい。プロセッサ63は、電気センサケーブルまたはリード82によってセンサ80と結合され、電気制御ケーブル72によって圧反射活性化デバイス70へ結合される(代替の実施形態では、リード82は、遠隔信号送信装置など、任意の適切なコード接続手段またはリモート接続手段であってよい)。したがって、プロセッサ63はセンサリード82を介してセンサ80からセンサ信号を受信し、制御ケーブル72を介して圧反射活性化デバイス70へ制御信号を送信する。代替の一実施形態では、プロセッサ63は圧反射活性化デバイス70をともに1つの単一体のデバイスに組み合わせられる。
【0048】
上述の通り、一実施形態では、一般に、心臓11は、ECGデバイスによってなど、1つ以上のリード124を介してセンサ80に結合されてよい。他の実施形態では、センサ80は、心臓11の壁または他の適切な解剖学的構造へ直接的に取り付けられてよい。
【0049】
上述のように、センサ80は、一般に、次に限定されないが、心拍数の変化、心臓の圧力の変化、心臓の心室および心房のうちの一方または両方の収縮タイミングの変化、心電図形状(T波形状など)の変化、血圧の変化など、1つ以上のパラメータを感知および/または監視する。センサ80によって感知されたパラメータは、次いで、プロセッサ63へ送られ、受信されたセンサ信号に応じて制御信号が発生される。制御信号は、通常、例えば、センサ信号が患者の生理学的な状態を表すと判定されるとき、発生される。心臓効率の低下が、例えば、心不全の発症の進行インジケータであると判定される場合、感知および処理されて、効率の低下を表すと判定されたデータは、プロセッサ63に制御信号を発生させる。この制御信号によって、圧反射活性化デバイス70の強度またはタイミングの活性化、不活性化、変更など、調整が行われる。一部の実施形態では、例えば、圧反射活性化デバイス70は、デバイス70に圧反射活性化の強度を増加または減少させる制御信号を受信するまで、進行中の圧反射を一定の率で活性化してもよい。別の実施形態では、圧反射活性化デバイス70はプロセッサ63からの制御信号によって活性化されるまで、停止モードのままであってもよい。別の実施形態では、センサ80が正常な身体機能(例えば、安定した心拍数および/または安定した心内圧)を表すパラメータを検出するとき、プロセッサ63は、制御信号を発生させて圧反射活性化デバイス70を調整(例えば、不活性化)する。任意の適切な組み合わせが様々な実施形態において想定される。
【0050】
また、センサ80は、圧反射活性化を変更する必要を表すパラメータの測定または監視を行う、任意の適切なデバイスまたは監視を備えてもよい。例えば、センサ80は、ECGなど、心臓活動または上述の他の生理学的な活動を測定する、生理学的なトランスデューサまたはゲージを備えてもよい。これに代えて、センサ80は、心内圧などの変化を測定することによってなど、他の技術によって心臓の活動を測定してもよい。センサ80に適切なトランスデューサまたはゲージの例には、ECG電極などが含まれる。1つのセンサ80しか示していないが、同じ場所または異なる場所において同じ種類または異なる種類の複数のセンサ80を利用することも可能である。センサ80は、好適には、患者の心臓もしくはその近傍、胸大動脈など1つのもしくは近くの主要な血管構造物、または心臓活動(増加した心拍数または圧力変化など)を測定する別の適切な場所に配置される。センサ80は、様々な実施形態では、利用されるトランスデューサまたはゲージの種類に応じて、身体の内部または外部に配置されてよい。センサ80は、図6に概略的に示したように、圧反射活性化デバイス70から分離していてもよく、これに代えて、1つのデバイスにおいて圧反射活性化デバイス70と組み合わせられてもよい。
【0051】
圧反射活性化デバイス70の圧反射活性化部は、機械的、電気的、熱的、化学的、生物学的、または他の手段を利用して圧受容器30および/または他の組織を活性化する種々のデバイスを含んでよい。多くの実施形態(特に機械的な活性化の実施形態)では、圧反射活性化デバイス70は、圧受容器30を包囲する血管壁40を伸展その他変形することによって、間接的に1つ以上の圧受容器30を活性化する。他の一部の例(特に、非機械的な活性化の実施形態)では、圧反射活性化デバイス、デバイス70は、圧受容器30を通じた電気的、熱的、もしくは化学的な環境、またはポテンシャルを変化させることによって、直接的に1つ以上の圧受容器30を活性化してもよい。また、圧受容器30を包囲する組織を通じた電気的、熱的、または化学的なポテンシャルを変化させることによって、この包囲する組織を伸展その他変形させることにより、機械的に圧受容器30を活性化することも可能である。他の例(特に、生物学的な活性化の実施形態)では、圧受容器30の機能または感度の変化は、圧受容器30における生物学的活動を変化させ、その細胞内の組織および機能を変更することによって誘導されてもよい。
【0052】
圧反射活性化デバイス70の多くの実施形態は、移植に適切であり、好適には、デバイス70が血管内に配置されているか、血管外に配置されているか、または血管壁40内に配置されているかに応じて、最小侵襲性の経皮的な経管腔的手法および/または最小侵襲
性の外科的手法を用いて移植される。圧反射活性化デバイス70は、心臓11、大動脈弓12、頚動脈洞20の近傍の総頸動脈18/19、鎖骨下動脈13/16、または腕頭動脈22においてなど、圧反射系50に影響を与える圧受容器30が多く存在する任意の場所に配置されてよい。圧反射活性化デバイス70は、デバイス70が圧受容器30の直ぐ近傍に配置されるように移植されてもよい。これに代えて、デバイス70は、先に引用によって援用した米国特許出願第10/284,063号明細書に記載されているように、圧受容器の近傍の心臓または血管の低圧側に配置されてもよい。実際、圧反射/CRTデバイス70は、デバイス70が圧受容器30から短い距離にただし近傍に位置するように、身体の外に配置されてもよい。一実施形態では、圧反射活性化デバイス70は、圧受容器30が圧反射系50に有意な影響を有する、右頚動脈洞20および/または左頚動脈洞(総頸動脈の分岐部近傍)および/または大動脈弓12の近傍に移植される。単なる例示の目的で、頚動脈洞20の近傍に配置された圧反射活性化デバイス70に関して本発明について説明する。
【0053】
メモリ62は、センサ信号、制御信号、ならびに/または入力デバイス64によって提供される値および命令に関連したデータを格納してよい。また、メモリ62は、1つ以上の機能または制御信号とセンサ信号との間の関係を定義する1つ以上のアルゴリズムを含むソフトウェアも含んでよい。このアルゴリズムは、センサ信号またはその数学的な派生物に応じて制御信号の活性化または非活性化を指図してよい。このアルゴリズムは、センサ信号が所定の下側閾値下未満に低下するとき、所定の上側閾値を超えて上昇するとき、またはセンサ信号が特定の生理学的事象の発生を示すとき、制御信号の活性化または非活性化を指図してよい。
【0054】
上述のように、圧反射活性化デバイス70は、圧受容器30を機械的、電気的、熱的、化学的、生物学的にその他、活性化することができる。しかしながら、圧反射活性化デバイス70にエネルギーを与える制御信号が電気信号であることが一般に想定される一部の例では、制御システム60は、圧反射活性化デバイス70に所望の電力モードを提供するための駆動部66を含む。例えば、圧反射活性化デバイス70が気圧または液圧作動を利用する場合、駆動部66は圧力/真空源を備えてよく、ケーブル72は流体ラインを備えてよい。圧反射活性化デバイス70が電気的または熱的作動を利用する場合、駆動部66はパワーアンプなどを備えてよく、ケーブル72は電気リードを備えてよい。圧反射活性化デバイス70が化学的または生物学的作動を利用する場合、駆動部66は流体貯蔵部および圧力/真空源を備えてよく、ケーブル72は流体ラインを備えてよい。他の例では、駆動部66が必要でなくてもよい(特に、プロセッサ63が圧反射活性化デバイス70の低レベルな電気的または熱的作動に充分に強い電気信号を発生させる場合)。
【0055】
制御システム60は、センサ80からのフィードバックを利用する閉ループとして動作してもよく、入力デバイス64によって受信される命令を利用する開ループとして動作してもよい。制御システム60の開ループ動作は、好適には、センサ80からの何らかのフィードバックを利用するが、フィードバックなしで動作してもよい。入力デバイス64によって受信される命令は、直接的に制御信号に影響を与えてもよく、メモリ62に格納されているソフトウェアおよび関連するアルゴリズムを変更してもよい。患者および/または治療する医師が入力デバイス64に対し命令を与えてもよい。ディスプレイ65は、センサ信号、制御信号、および/またはメモリ62に含まれるソフトウェア/データを見るために用いられてもよい。
【0056】
制御システム60によって生成される制御信号は、メモリ62に格納されているアルゴリズムによって指図されるように、連続的、定期的、一時的(エピソード的)、またはそれらの組み合わせであってよい。メモリ62に格納されているアルゴリズムは、時間の関数として制御信号の特徴を指図する刺激レジメンを定義するため、時間の関数として圧反
射活性化を指図する。連続的な制御信号は、パルス、パルス列、トリガパルス、およびトリガパルス列を含み、それらは全て連続的に生成される。定期的な制御信号の例には、所定の開始時刻(例えば、各分、時、または日の開始時)および所定の継続時間(例えば、1秒、1分、1時間)を有する上述の連続的な制御信号の各々が含まれる。一時的な制御信号の例には、症状の発現(エピソード)(例えば、患者/医師による活性化、一定の閾値を超える血圧の上昇など)をトリガとして生じる上述の連続的な制御信号の各々が含まれる。
【0057】
制御システム60によって支配される刺激レジメンは、長期有効性を促進するように選択されてよい。理論的には、圧受容器30の活性化が途切れない、その他変化しないと、時間を通じて圧受容器および/または圧反射系の応答性が低下することによって、治療の長期的な有効性が減少する。したがって、刺激レジメンは、治療効果が長期に維持されるような手法によって、圧反射活性化デバイス70の活性化、不活性化、その他の調整を行うように選択されてよい。簡単のため、刺激および活性化の語や、治療および刺激レジメンの語は交換可能に用いられる場合があることを述べておく。治療には、複数の用量レジメンが含まれてもよく、異なる用量/強度を送達するレジメンが含まれてもよい。
【0058】
時間を通じて治療効果を維持することに加え、本発明の刺激レジメンは制御システム60の電力要求/消費を減少させように選択されてよい。より詳細に説明するように、刺激レジメンは、圧反射活性化デバイス70が比較的高いエネルギーおよび/または電力レベルで初期に活性化され、続いて、比較的低いエネルギーおよび/または電力レベルで活性化されるように指図してよい。第1のレベルは所望の初期の治療効果を達成し、第2の(より低い)レベルは所望の治療効果を長期に維持する。所望の治療効果が初期に達成された後にエネルギーおよび/または電力レベルを減少させることによって、デバイス70の必要とするまたは消費する電力も長期間減少される。これは、より長い寿命および/または減少した寸法(電源および関連する構成要素の寸法の減少による)を有するシステムに相当する。
【0059】
本発明の刺激レジメンの別の利点は、望ましくない付随的な組織刺激の減少である。上述のように、刺激レジメンは、圧反射活性化デバイス70が所望の効果を達成するように比較的高いエネルギーおよび/または電力レベルで初期に活性化され、続いて、所望の効果を維持するように比較的低いエネルギーおよび/または電力レベルで活性化されるように指図してよい。出力エネルギーおよび/または電力レベルを減少させることによって、刺激が目標部位から遠くへ移動せず、これによって、頚部および頭部の筋肉など隣接組織を不注意に刺激する可能性を減少させることができる。
【0060】
本明細書に記載の刺激レジメンは、キーバル(Kieval)らの米国特許第6,073,048号明細書(その全体を引用によって本明細書に援用する)に開示されているバロペーシング(baropacing)システムのようなバロペーシング(すなわち、頸動脈洞枝の電気刺激)に適用されてもよい。
【0061】
代表的な一実施形態では、刺激レジメンは、パルス周波数(例えば、約20Hz(ヘルツ)のオーダー。50ms(ミリ秒)毎のパルスに相当)、およびパルス幅PW1,PW2によって表される(プログラム可能であるが、例えば、1ミリ秒未満。Δ1は30〜250μs(マイクロ秒)、Δ2,Δ3はμs以上)。例えば、電荷平衡間隔CBWは8±2ミリ秒に設定可能である。公称心拍数は、1〜1.2Hz(0.83〜1秒のバースト間隔)であるので、代表的なバースト間隔は、最初の250〜350ミリ秒を通じて20Hzの6〜8個のパルスを含み、続くバースト間隔の残りを通じてより低い周波数ではパルスを含まない。これらの数字は例であり、決して必須なものではない。
【0062】
圧反射活性化治療強度を含む刺激レジメンは、監視されたパラメータの変化またはその他治療を調節もしくは変更する必要に関連する、所定の小さなまたは大きなステップの大きさだけ増加または減少されてよい。例えば、治療を減少させる必要が判定される場合、治療はそのような小さなまたは大きな段階的変化により減少させる必要に基づき、小さなまたは大きな段階的変化により減少させることが可能である。例えば、治療を増加させる必要が判定される場合、治療は小さなまたは大きな段階的変化により増加させる必要に基づき、小さなまたは大きな段階的変化により増加させることが可能である。したがって、治療の初期は、治療に対する患者の応答を測定するように小さな段階的変化により送達されてよい。治療を減少させる必要が判定される場合(例として、バッテリ交換または他の何らかの理由のために患者が治療休止する必要があるとき)、治療は、治療の電流または電圧を減少させることなど、小さなまたは大きな段階的変化により振幅を減少させることによって減少されてよい。そのような電流または電圧は、治療の減少に対する患者の応答に応じて、例えば、7〜14日間に渡って、約0.1〜1ボルト/日または1〜2Hz/日の小さな段階的変化により減少されてよい。小さな段階的変化の代表的な一実施形態では、5.5ボルトのプログラムされた治療を受け取る患者において、治療は、7〜10日間の期間を通じて、5.5ボルトから0.1ボルトまで減少される。代表的な一実施形態では、20Hzのプログラムされた治療を受け取る患者において、治療は、7〜10日間の期間を通じて、20Hzから10Hzまで減少される。治療は、より短い時間を通じたより大きな電流または電圧の降下によってなど、より大きな段階的変化により減少されてもよいが、「大きな」および「小さな」段階的変化が異なる患者については異なって定義されてよいことが理解される。
【0063】
刺激レジメンは、圧反射活性化デバイス70からの制御信号および/または出力信号に関して記述されてもよい。一般的には、制御信号の変化によって、圧反射活性化デバイス70の出力には対応する変化が生じ、これによって圧受容器30の対応する変化に影響が与えられる。制御信号の変化と圧反射活性化デバイス70の変化との間の相関関係は、比例的であっても比例的でなくてもよく、直接的または間接的(逆)であってもよく、他の既知または予測可能な数学的関係であってもよい。単なる例示として、刺激レジメンは、本明細書においては、圧反射活性化デバイス70の出力が制御信号に正比例すると仮定するような手法により、記述されてよい。代表的な刺激レジメンのさらなる詳細は、例えば、米国特許出願第60/584,730号(引用によって援用する)に見ることができる。
【0064】
制御システム60は全体的または部分的に移植されてもよい。例えば、制御システム60全体が、センサリード82および制御リード72に対する経皮的な接続を利用する患者によって、外部的に運ばれてもよい。これに代えて、制御ブロック61および駆動部66が移植され、入力デバイス64およびディスプレイ65がそれらの間の経皮的な接続を利用する患者によって外部的に運ばれてもよい。さらなる一代替形態として、経皮的な接続は、制御システム60の構成要素および/またはセンサ80と圧反射活性化デバイス70との間で遠隔的に通信を行うように送信器/受信機を協働させることによって、置き換えられてよい。
【0065】
代表的な圧反射活性化デバイスのさらなる詳細については、引用によって援用する米国特許第6,522,926号明細書、米国特許第6,616,624号明細書、米国特許出願第09/964,079号明細書、第09/963,777号明細書、第09/963,991号明細書、第10/284,063号明細書、第10/453,678号明細書、第10/402,911号明細書、第10/402,393号明細書、第10/818,738号明細書、および第60/584,730号明細書に参照される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者を治療するためのシステムであって、
複数の用量/強度レジメンを含む圧反射活性化治療によって患者の圧反射を活性化するための圧反射活性化デバイスと、適用される治療の前記強度は生理学的な状態に応答するパラメータの変化の大きさおよび変化率の一方または両方に応答することと、
前記治療を送達するための治療回路と、
前記患者へ前記圧反射活性化治療を適用するように構成されており、前記治療回路へ接続可能なコントローラと、
前記コントローラと通信状態にあり、前記圧反射活性化治療に関する情報を記憶するように構成されたメモリシステムと、を備え、前記強度の変化との関係における前記パラメータの変化の大きさおよび変化率の一方または両方の間の関係は前記メモリへプログラム可能である、システム。
【請求項2】
前記治療回路は、刺激パルス列を発生させて前記患者の圧反射系を活性化するように構成されたパルス発生器を備え、前記パルス発生器は異なる強度レベルを有するパルス列を送達するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記治療は複数の用量/強度レジメンを含み、同複数の用量/強度レジメンのうちの1つ以上は別の用量/強度レジメンと異なる、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
1つ以上の電極アセンブリをさらに備える、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記電極アセンブリは前記患者の1つ以上の圧受容器近傍に配置可能である、請求項2に記載のシステム。
【請求項6】
前記コントローラへ接続可能な監視システムをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記監視システムへ接続可能なセンサをさらに備え、同センサは生理学的な応答を表す患者のパラメータを感知するように構成されている、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記センサは、心臓外心電図計、心臓内心電図計、圧力センサ、および加速度計のうちの1つ以上を備えるデバイスを含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記コントローラは、前記センサを介して受信された情報に基づき前記圧反射活性化治療を調節するように構成されている、請求項6に記載のシステム。
【請求項10】
前記監視回路および前記治療回路に接続可能であり、前記監視回路および前記治療回路から受信された情報に基づき前記治療を調節するための切替回路をさらに備える、請求項6に記載のシステム。
【請求項11】
前記切替回路は前記患者の1つ以上の圧受容器近傍に配置可能な1つ以上の電極アセンブリに接続可能である、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
単一のハウジング内に収容されており、植込可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
患者に植込可能である請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
心臓リズム管理(CRM)デバイスと通信を行うようにさらに構成されている、請求項
1に記載のシステム。
【請求項15】
前記CRMデバイスは、心臓ペースメーカ、植込型除細動器、カーディオバータ、心臓再同期デバイス、またはそれらの組み合わせのデバイスのうちの1つ以上を含む、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
患者における治療を調節するための方法であって、
患者における治療の強度を調節する必要を表すパラメータを識別することと、
前記患者へ複数の用量応答試験を提供することと、
前記用量応答試験に対する前記患者の応答を測定し、同測定の結果を用いて治療における調節に対する前記患者の見込み応答を決定することと、
所定の強度ステップの大きさおよび調節目標を含む、圧反射活性化治療レジメンを決定することと、前記強度ステップの大きさおよび調節目標の両方は、用量応答試験に対する前記患者の応答に基づきプログラム可能であることと、
前記調節目標に達するまで前記圧反射活性化治療レジメンを送達することと、を含む方法。
【請求項17】
圧反射活性化治療レジメンを決定することは、治療調節継続時間を決定することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記強度ステップの大きさは、デューティサイクル、パルス振幅、パルス幅、パルス周波数、パルス間隔、パルス波形、パルス極性、パルス形状、およびパルス位相である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記強度ステップの大きさは電流振幅である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記強度ステップの大きさは電圧振幅である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記電圧は7〜14日間に渡り1日当たり約0.1〜1ボルトだけ減少される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記電流振幅は約7〜14日の持続時間に渡り1日当たり約1〜2Hzだけ減少される、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
患者を治療するためのシステムであって、
治療を変更する必要を表すパラメータを監視するためのセンサと、
複数の用量/強度レジメンを含む圧反射活性化治療によって患者の圧反射を活性化するための圧反射活性化デバイスと、適用される治療の強度は、治療を変更する必要が感知されることと、前記患者に対する治療を変更することの見込み効果とに応じて変化することと、
大きさを段階的に変化させて前記治療を送達するための治療回路と、
前記患者へ前記圧反射活性化治療を適用するように構成されており、前記治療回路へ接続可能なコントローラと、
前記コントローラと通信状態にあり、前記圧反射活性化治療およびデバイスに関する情報を記憶するように構成されたメモリシステムと、を含み、治療の強度と前記患者に対する治療を変更することの見込み効果との間の関係は前記メモリへプログラム可能である、システム。
【請求項24】
前記大きさの段階的な変化は、前記患者に対する前記治療を変更することの前記見込み効果によって、大小のいずれかとして決定される、請求項23に記載のシステム。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−534516(P2010−534516A)
【公表日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518334(P2010−518334)
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【国際出願番号】PCT/US2008/070770
【国際公開番号】WO2009/015147
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(508343467)シーブイレクス インコーポレイテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】CVRX,INC.
【Fターム(参考)】