説明

強度比較学習用器具

【課題】骨組みと面材との接続構造の差違によってその強度の違いを感覚的に学習することのできる強度比較学習用器具を提供する。
【解決手段】この強度比較学習用器具には、第1芯材を挟む一対の第1面材に対して、金属製の係止片が複数打ち込まれることで前記第1芯材と第1面材とが接合されてなる第1模型と、第2芯材を挟む一対の第2面材に対して、第2芯材との接触面に接着剤を塗布することで、第2芯材と第2面材とが接合されてなる、第1模型と外観上略同一な第2模型とを備えている。第1模型及び第2模型のそれぞれに対して、厚さ方向に所定の加重を付与することで、両者の撓み具合がどの程度異なるかについて比較学習可能としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨組みと面材との接続構造の違いによる強度差を感覚的に学習することのできる共同比較学習用器具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、建物等の構造物の場合、そのもの自体が大きいために新たな技術を用いたとしても、顧客にはその技術によってどれほどの強度が高まったのか理解しにくい状況である。特に、住宅の購入を考えている専門知識のない一般の顧客であると、その差違をデータで提示されたとしても、なかなか実感が得られないのが実状である。このため、構造上の差違を感覚的に顧客に訴えることのできる学習器具が開発されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3723394号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記した学習用器具は、構造上の差違によりねじり強度にどれほどの違いが生ずるかを感覚的に学習するものであるが、近年ではそれ以外の構造上の差違による強度差も感覚的に学習することのできる学習用器具の開発が望まれている。
そこで、本発明の課題は、骨組みと面材との接続構造の差違によってその強度の違いを感覚的に学習することのできる強度比較学習用器具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1記載の発明に係る強度比較学習用器具は、例えば図1,2に示すように、
第1芯材11を挟む一対の第1面材12に対して、金属製の係止片13が複数打ち込まれることで前記第1芯材11と前記第1面材12とが接合されてなる第1模型10と、
第2芯材21を挟む一対の第2面材22に対して、前記第2芯材21との接触面に接着剤(接着剤層23)を塗布することで、前記第2芯材21と前記第2面材22とが接合されてなる、前記第1模型10と外観上略同一な第2模型20とを備え、
前記第1芯材11と前記第2芯材21とが同一素材からなる同一形状の芯材であるとともに、前記第1面材12と前記第2面材22とが同一素材からなる同一形状の面材であり、
前記芯材は、前記面材よりも剛性が弱く、なおかつ当該面材よりも厚く、
前記第1模型10及び前記第2模型20のそれぞれに対して、厚さ方向に所定の加重を付与することで、両者の撓み具合がどの程度異なるかについて比較学習可能としたことを特徴としている。
【0005】
請求項1記載の発明によれば、第1模型10が、第1芯材11を挟む一対の第1面材12に対して、金属製の係止片13が複数打ち込まれることで第1芯材11と第1面材12とが接合されてなっているので、合板を釘によって芯材に接合する合板釘留め工法で製作されたパネルを模していることになる。一方、第2模型20が、第2芯材21を挟む一対の第2面材22に対して、第2芯材21との接触面に接着剤を塗布することで、第2芯材21と第2面材22とが接合されてなっているので、合板を接着剤によって芯材に接合する木質パネル接着工法で製作されたパネルを模していることになる。そして、第1模型10と第2模型20とが外観上略同一であって、これらのそれぞれに対して、厚さ方向に所定の加重を付与することで、両者の撓み具合がどの程度異なるかについて比較学習可能となっているので、合板釘留め工法によるパネルの強度と、木質パネル接着工法によるパネルの強度との異なりを専門的な知識がない顧客に対しても感覚的に学習させることができる。
【0006】
また、第1芯材11と第2芯材21とが同一素材からなる同一形状の芯材であり、第1面材12と第2面材22とが同一素材からなる同一形状の面材であるので、比較対象である第1模型10と第2模型20とを工法以外の部分では同一にすることができ、強度比較の正確性を高めることができる。
【0007】
ここで、芯材の剛性が高ければ、第1模型10と第2模型20それぞれの強度は芯材に依存している印象を顧客に与えてしまい、工法の違いによる強度差を印象づけにくい。しかしながら、請求項1記載の発明のように、面材よりも芯材の剛性が弱ければ、より工法の違いによる強度差を印象づけることができる。
【0008】
そして、上記したように面材のほうが芯材よりも剛性が高いと、第1模型10と第2模型20それぞれの強度は面材に依存している印象を与えてしまうおそれがある。これは芯材の厚さが面材の同等以下であればその印象は強まってしまう。しかしながら、請求項1記載の発明のように、芯材が面材よりも厚ければ、第1模型10と第2模型20それぞれの強度が面材に依存しているように思われにくくなり、工法の違いによる強度差をより印象付けることができる。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の強度比較学習用器具において、例えば図1,2に示すように、
前記第1模型10及び前記第2模型20が長尺状であることを特徴としている。
【0010】
例えば、第1模型10及び第2模型20をそれぞれ個別に指等で厚さ方向に押圧してみても、その強度の違いは実感することが可能である。しかしながら、強度差を定量的に比較することが求められる場合も想定される。請求項5記載の発明のように、第1模型10及び第2模型20が長尺状であれば、両者をそれぞれ両端支持ばりとして容易に設置することができる。そして、設置後、それぞれの略中央部に所定重さの錘を載せ、その数を増やしていけば定量的に撓み具合を比較することが可能である。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の強度比較学習用器具において、例えば図1,2に示すように、
前記面材(第1面材12、第2面材22)が木板であるとともに、前記芯材(第1芯材11、第2芯材21)が樹脂材であることを特徴としている。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、面材が木板であるとともに、芯材が樹脂材であるので、身近な材料で第1模型10及び第2模型20を作成することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、第1模型が、第1芯材を挟む一対の第1面材に対して、金属製の係止片が複数打ち込まれることで第1芯材と第1面材とが接合されてなっているので、合板を釘によって芯材に接合する合板釘留め工法で製作されたパネルを模していることになる。一方、第2模型が、第2芯材を挟む一対の第2面材に対して、第2芯材との接触面に接着剤を塗布することで、第2芯材と第2面材とが接合されてなっているので、合板を接着剤によって芯材に接合する木質パネル接着工法で製作されたパネルを模していることになる。そして、第1模型と第2模型とが外観上略同一であって、これらのそれぞれに対して、厚さ方向に所定の加重を付与することで、両者の撓み具合がどの程度異なるかについて比較学習可能となっているので、合板釘留め工法によるパネルの強度と、木質パネル接着工法によるパネルの強度との異なりを専門的な知識がない顧客に対しても感覚的に学習させることができる。
【0014】
また、第1芯材と第2芯材とが同一素材からなる同一形状の芯材であり、第1面材と第2面材とが同一素材からなる同一形状の面材であるので、比較対象である第1模型と第2模型とを工法以外の部分では同一にすることができ、強度比較の正確性を高めることができる。
【0015】
ここで、芯材の剛性が高ければ、第1模型と第2模型それぞれの強度は芯材に依存している印象を顧客に与えてしまい、工法の違いによる強度差を印象づけにくい。しかしながら、本発明のように、面材よりも芯材の剛性が弱ければ、より工法の違いによる強度差を印象づけることができる。
【0016】
そして、上記したように面材のほうが芯材よりも剛性が高いと、第1模型と第2模型それぞれの強度は面材に依存している印象を与えてしまうおそれがある。これは芯材の厚さが面材の同等以下であればその印象は強まってしまう。しかしながら、本発明のように、芯材が面材よりも厚ければ、第1模型と第2模型それぞれの強度が面材に依存しているように思われにくくなり、工法の違いによる強度差をより印象付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本実施形態の強度比較学習用器具について説明する。この強度比較学習用器具には、合板を釘によって芯材に接合する合板釘留め工法で製作されたパネルを模した第1模型10(図1参照)と、合板を接着剤によって芯材に接合する木質パネル接着工法で製作されたパネルを模した第2模型20(図2参照)とが備えられている。第1模型10及び第2模型20は、いずれも長さ300mm〜600mm、幅20〜30mm、厚さ10mm前後のサイズで形成されていることが好ましい。具体的に本実施形態では、第1模型10及び第2模型20のサイズは、長さ400mm、幅20mm、厚さ10mmに設定されている。
【0018】
図1は、第1模型10の概略構成を示す説明図であり、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。この図1に示すように、第1模型10は、長尺な四角柱状の第1芯材11と、第1芯材11を上下方向から挟む一対の第1面材12とを備え、この一対の第1面材12に対して、金属製の係止片13が複数打ち込まれることで第1芯材11と第1面材12とが接合されている。なお、本実施形態では、係止片13としてステープラ用つづり針を用いており、接合時に当該ステープラ用つづり針をステープラによって第1面材12及び第1芯材11に打ち込むことで、第1芯材11と第1面材12とを接合している。
【0019】
図2は、第2模型20の概略構成を示す説明図であり、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。この図2に示すように、第2模型20は、長尺な四角柱状の第2芯材21と、第2芯材21を上下方向から挟む一対の第2面材22とを備え、第2面材22に対して、第2芯材21との接触面に接着剤(接着層23)を塗布することで、第2芯材21と第2面材22とが接合されている。
【0020】
第1芯材11と第2芯材21とは、いずれも同一素材からなる同一形状の芯材により形成されている。芯材の素材としては例えば発泡ウレタン等の樹脂材などが挙げられる。一方、第1面材12と第2面材22とは、いずれも同一素材からなる同一形状の面材により形成されている。面材の素材としては芯材よりも剛性の強い例えばバルサ材などの木板が挙げられる。そして、面材は、その表面が平滑とされているとともに、芯材よりも幅広となされている。また、芯材の厚みは、面材の厚みよりも厚く設定されている。これらのことにより、第1模型10と第2模型20とが外観上略同一な形状となる。
【0021】
そして、第1模型10及び第2模型20のそれぞれに対して、厚さ方向に所定の加重を付与することで、両者の撓み具合がどの程度異なるかについて比較学習が可能となっている。
【0022】
以下、本実施形態の強度比較学習用器具を用いた強度比較学習方法について具体的に説明する。まず、顧客に強度の違いを体感させるには、一対の面材(第1面材12及び第2面材12)が上下方向に配置されるように1模型10及び第2模型20をそれぞれ台座上に載置して、指等で個別に厚さ方向に押圧してもらう。これだけでも、第2模型20の方が第1模型10よりも固くなっていることが体感できる。
【0023】
さらに、両者の強度の違いを定量的に比較する場合には、図3に示すように第1模型10及び第2模型20を両端支持ばりとして設置する。設置後、それぞれの略中央部に所定重さの錘30を載せ、その数を増やしていけば定量的に撓み具合を比較することが可能である。図3では、第1模型10が点線で示されており、例えば第2模型20が撓まない程度の錘30を第1模型10と第2模型20のそれぞれに載せた場合は、第1模型10のみが撓んでしまう。さらに錘の量を同量ずつ増やしていけば、第1模型10のたわみ量が第2模型20よりも大きくなる。これにより両模型10,20の強度を比較することができる。
【0024】
以上のように、本実施形態によれば、第1模型10が、合板を釘によって芯材に接合する合板釘留め工法で製作されたパネルを模しているとともに、第2模型20が、合板を接着剤によって芯材に接合する木質パネル接着工法で製作されたパネルを模しているので、これらのそれぞれに対して、厚さ方向に所定の加重を付与すれば、両者の撓み具合がどの程度異なるかについて比較学習が可能となる。したがって、合板釘留め工法によるパネルの強度と、木質パネル接着工法によるパネルの強度との異なりを専門的な知識がない顧客に対しても感覚的に学習させることができる。
【0025】
また、第1芯材11と第2芯材21とが同一素材からなる同一形状の芯材であり、第1面材12と第2面材22とが同一素材からなる同一形状の面材であるので、比較対象である第1模型10と第2模型20とを工法以外の部分では同一にすることができ、強度比較の正確性を高めることができる。
【0026】
ここで、芯材の剛性が高ければ、第1模型10と第2模型20それぞれの強度は芯材に依存している印象を顧客に与えてしまい、工法の違いによる強度差を印象づけにくい。しかしながら、上述のように、面材よりも芯材の剛性が弱ければ、より工法の違いによる強度差を印象づけることができる。
【0027】
そして、上記したように面材のほうが芯材よりも剛性が高いと、第1模型10と第2模型20それぞれの強度は面材に依存している印象を与えてしまうおそれがある。これは芯材の厚さが面材の同等以下であればその印象は強まってしまう。しかしながら、上述のように、芯材が面材よりも厚ければ、第1模型10と第2模型20それぞれの強度が面材に依存しているように思われにくくなり、工法の違いによる強度差をより印象付けることができる。
【0028】
また、第1模型10及び第2模型20が長尺状であれば、両者をそれぞれ両端支持ばりとして容易に設置することができる。そして、設置後、それぞれの略中央部に所定重さの錘を載せ、その数を増やしていけば定量的に撓み具合を比較することが可能である。
【0029】
そして、面材が木板であるとともに、芯材が樹脂材であるので、身近な材料で第1模型10及び第2模型20を作成することができる。
また、面材の表面が平滑とされているので、作業者が触ったときに痛みを感じることを防止することができる。さらに、面材が芯材よりも幅広となされているので、模型が転がってしまうことをも防止することができる。
【0030】
なお、本発明は上記実施形態に限らず適宜変更可能であるのは勿論である。
例えば、指等による押圧のみで第1模型10と第2模型20との強度を比較する場合においては、第1模型10及び第2模型20が外観上略同一な形状であれば長尺状に形成しなくともよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本実施形態に係る第1模型の概略構成を示す説明図であり、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。
【図2】本実施形態に係る第2模型の概略構成を示す説明図であり、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。
【図3】第1模型及び第2模型を両端支持ばりとして設置し、所定の錘を載せた際の撓み具合の差を示す説明図である。
【符号の説明】
【0032】
10 第1模型
11 第1芯材
12 第1面材
13 係止片
20 第2模型
21 第2芯材
22 第2面材
23 接着層(接着剤)
30 錘

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1芯材を挟む一対の第1面材に対して、金属製の係止片が複数打ち込まれることで前記第1芯材と前記第1面材とが接合されてなる第1模型と、
第2芯材を挟む一対の第2面材に対して、前記第2芯材との接触面に接着剤を塗布することで、前記第2芯材と前記第2面材とが接合されてなる、前記第1模型と外観上略同一な第2模型とを備え、
前記第1芯材と前記第2芯材とが同一素材からなる同一形状の芯材であるとともに、前記第1面材と前記第2面材とが同一素材からなる同一形状の面材であり、
前記芯材は、前記面材よりも剛性が弱く、なおかつ当該面材よりも厚く、
前記第1模型及び前記第2模型のそれぞれに対して、厚さ方向に所定の加重を付与することで、両者の撓み具合がどの程度異なるかについて比較学習可能としたことを特徴とする強度比較学習用器具。
【請求項2】
請求項1記載の強度比較学習用器具において、
前記第1模型及び前記第2模型が長尺状であることを特徴とする強度比較学習用器具。
【請求項3】
請求項1又は2記載の強度比較学習用器具において、
前記面材が木板であるとともに、前記芯材が樹脂材であることを特徴とする強度比較学習用器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−300808(P2009−300808A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−156151(P2008−156151)
【出願日】平成20年6月16日(2008.6.16)
【出願人】(307042385)ミサワホーム株式会社 (569)
【Fターム(参考)】