説明

弾性を有する末端部を備えるビロード人形並びにその製造方法

【課題】 弾性ゲルをビロード製玩具の織布製外皮に接合する改良された技術の提供。
【解決手段】 本発明は、玩具人形アセンブリとその製造方法を提供する。玩具人形は、外面に現れる外面部を有する本体構造部を備える。人形の外面に現れる外面部は、織布材からなる少なくとも1つの第1セクションと、弾性ゲル材からなる少なくとも1つの第2セクションを備える。第1セクションと第2セクションは少なくとも1つの共通シーム部に沿って接続する。織布材及び弾性ゲル材から玩具人形を形成することにより、対照的な触感的特性を備える外面を備える玩具人形を形成可能となる。これにより玩具人形の遊戯具としての価値が高まることとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体として、玩具人形の製造に用いられる製造技術に関する。より詳しくは、本発明は、織布構造材料と人工弾性構造材料を組合せ、異なる物理的特徴を備える人形を製造する技術に関する。
尚、本出願は、現在係属中の米国特許出願第11/237,817号(発明の名称:「Toy Figure That Combines Plush Construction With Elastomeric Gel」 出願日2005年9月29日)に基づく優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
玩具製造分野において、「ビロード玩具」との名称が、織布を基調とした構造を備える玩具に用いられている。このような玩具は、内部に詰め物をされた動物のぬいぐるみや人形及びこれらに類するものを含む。従来において、ビロード玩具は、適当な種類の材料からなる織布製外皮を互いに縫合することにより形成されている。この縫合に用いられる材料として、コットンや人工毛皮等を例示できる。
織布製外皮は、玩具の外側形状を形成する。織布製外皮は、その後、詰め物用材料と同様の種類のポリエステル繊維で充填される。硬い物質、例えば、ボタンで形成された目の部分などが、その後、織布製外皮に縫合或いは接着される。
【0003】
ビロード玩具の長い歴史を通じて、玩具メーカが柔らかいビロードの特徴と硬い非ビロード製の特徴を兼ね備えた玩具人形を製造しようとする多くの機会が存在する。例えば、硬い磁器製の頭部や手を備え、人形の残りの部分が従来のビロード製織布材料で構成された人形が多く存在する。
硬い部分を接合しようとする場合、例えば、人形の頭部をビロード織布製胴体部に取り付けようとする場合、この硬い部分は一般的に溝彫りされた基部を備える。ビロード部分の織布材料は、基部周囲に配され、螺子により踏締められる。
織布材料は、溝内で踏締められ、溝内部において、玩具のビロード部分と非ビロード部分との相互連結を作り出す。
【0004】
玩具用材料の発展に伴い、織布と異なる様々なプラスチック材料から製造された人形が多く登場する。例えば、硬質プラスチックで形成された胴体部を備える多くの人形である。人形の頭部は、柔らかく可撓性を有するプラスチック材料を成型することにより製造される。プラスチック材料を用いる一方で、異なる2つの種類のプラスチック製部品を接続する手法は従来の技術と差異はない。典型的には、硬質プラスチックから溝部を有する基部を備える玩具部品が成型される。
柔らかいプラスチック材料で形成された玩具部品は開口部を備え、この開口部は溝部が形成された基部周囲で伸長可能である。軟質プラスチック材料からなる開口部が、硬質プラスチックで形成される溝部内で収縮すると、機械的結合を生じ、プラスチック部分の接合がなされることとなる。
【0005】
玩具製造業界において、弾性ゲルの需要が高まってきている。弾性ゲルはトリブロック共重合体プラスチックを可塑化用オイルと混合して得られ、この混合物を弾性ゲル状としたものである。弾性ゲルは高い弾性率を備えるとともに非常に破断しにくい特性を有する。したがって、玩具製造分野において、弾性ゲルは好適に用いられる材料といえる。
現在、いくつかの種類の弾性ゲルが市場で入手可能である。最も初期型の弾性ゲルのうち1つが、米国特許第4,369,284号明細書(権利者:Chen 発明の名称:「Thermoplastic Elastomer Gelatinous Compositions」)に例示されている。
【0006】
弾性ゲルは、従来から用いられている射出成型技術を用いて、ボールや空飛ぶ円盤といった玩具に成型される。射出成型技術を用いた場合、弾性ゲルを直接非プラスチック製のビロード材料上に成型することはできない。
工業的には、弾性ゲル材料が織布製物体に対して用いられることがある。このような場面として、靴下を例示することができる。靴下に弾性ゲルを用いた場合、靴下のクッション性を確保することが可能となる。このような技術を、米国特許第6,406,499号明細書(権利者:Kania 発明の名称:「Gel And Cushioning Devices」)は開示する。
このような方法においては、織布製部材は、溶融した弾性ゲル材中に含浸される。その後、弾性ゲル材は所定時間織布製部材上に留め置かれることとなる。
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,369,284号明細書
【特許文献2】米国特許第6,406,499号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
玩具製造者が、一部がビロードからなり、一部が弾性ゲル材からなる人形を作り出そうとする場合、1つの問題点が存在する。即ち、従来の機械的取付技術を利用できないという点である。なぜなら、弾性ゲルは、非常に弾性特性が高く、このため、弾性ゲル部分が伸長すると、溝部により結合された部分から弾性ゲルが簡単に離脱してしまうこととなる。
更には、弾性ゲルはビロード製玩具上で成型することはできず、また、ビロード製玩具の部品を溶融したゲルに含浸することにより作り出すことはできない。現状における唯一の解決手法として、弾性ゲル材を織布に接着する方法が挙げられる。この接着には、従来から用いられているアクリルベースの接着剤が利用される。
しかしながら、この従来から用いられているアクリル製接着剤は時間経過とともに硬化するので、硬化した接着剤下で弾性ゲルが伸長及び変形すると、接着剤が容易に弾性ゲルから剥離することとなる。したがって、弾性ゲルからなる玩具部品は玩具の他の部分から簡単に外れることとなり、このことは、外れた玩具部品を喉に詰まらせるといった事故の原因となる。
【0009】
したがって、弾性ゲルをビロード製玩具の織布製外皮に接合する改良された技術が必要とされる。このような課題は、本発明により解消され、このことは、以下の記載並びに請求の範囲で説明される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、玩具人形アセンブリとその製造方法を提供する。玩具人形は、外面に現れる外面部を有する本体構造部を備える。人形の外面に現れる外面部は、織布材からなる少なくとも1つの第1セクションと、弾性ゲル材からなる少なくとも1つの第2セクションを備える。第1セクションと第2セクションは少なくとも1つの共通シーム部に沿って接続する。
共通シーム部は、接着剤、熱接着或いは縫合といった手法により閉じられる。織布材料で形成された玩具人形のセクションは、乾燥した充填材により充填されることとなる。弾性ゲル材料で形成された玩具人形のセクションは、乾燥した充填材或いは流体充填材(液体や空気など)のいずれかで充填される。
織布材及び弾性ゲル材から玩具人形を形成することにより、対照的な触感的特性を備える外面を備える玩具人形を形成可能となる。これにより玩具人形の遊戯具としての価値が高まることとなる。
【0011】
玩具人形は、少なくとも1つの伸長可能な末端部を備える形態であってもよい。伸長可能な末端部は玩具人形の腕脚部或いは他の身体部位の特徴部分の役割を担うものであってもよい。伸長可能な末端部それぞれは、第1端部と第2端部を備える。伸長可能な末端部それぞれは、開口部を介してビロード製の本体部に延出する。したがって、伸長可能な末端部それぞれは、ビロード製本体部内部に配される第2端部と、ビロード製本体部の外側に延出する第1端部を備えることとなる。
織布製フラップ部が、末端部の第2端部に固定される。織布製フラップ部は、ビロード製本体部内において、少なくとも1つのシーム部に縫合されることとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の理解のために、図面を参照しつつ以下の実施例の説明を行う。
ビロード製玩具には無数の種類が存在する。一つの形態のビロード製玩具を例にとって本発明を説明する。この形態は一例に過ぎず、ビロード製玩具はいかなる形態の玩具であってもよく、この他の形態のビロード製玩具への本発明の適用を制限するものではない。
【0013】
図1は玩具人形(10)を示す。
玩具人形(10)は従来の方法で製造されたビロード製胴体部を備える。ビロード製セクション(12)は、縫合された織布製外皮(14)に乾燥した充填剤を充填してなる。乾燥した充填剤としては例えばポリエステル繊維が挙げられる。図示例においては、玩具人形(10)はアライグマの縫いぐるみである。この縫いぐるみのアライグマのビロード製本体部(12)は、玩具人形(10)のトルソー(首と四肢を除いた胴体部分)(16)と頭部(18)の少なくとも一部を備える。
【0014】
玩具人形(10)は更に、少なくとも1つの伸長可能な末端部(20)を備える。伸長可能な末端部(20)は弾性ゲル材からなる。図示例においては、伸長可能な末端部(20)は腕部と足部を備える。しかしながら、末端部をこのような形状とする例は一例に過ぎず、玩具のモチーフによって末端部は耳、鼻、牙、角、翼、及びこれらに類するものを模したものであってもよい。
【0015】
伸長可能な末端部(20)のそれぞれは、非常に高い弾性を有する。したがって伸長可能な末端部(20)のそれぞれは、元の長さの少なくとも2倍に伸長可能である。伸長可能な末端部(20)は細長い形状を有し、2つの端部(22)及び(24)を備える(図2)。伸長可能な末端部(20)のそれぞれの第1端部(22)は、玩具人形(10)の外部に露出した端部である。伸長可能な末端部(20)の第2端部(24)(図2)は、玩具人形(10)の外部からは見ることのできない側の端部である。すなわち、伸長可能な末端部(20)の第2端部(24)(図2)は、玩具人形(10)のビロード製セクション(12)に埋設されており、図示されない。
【0016】
開口部(26)が玩具人形(10)のビロード製構造内に形成される。伸長可能な末端部(20)はこれら開口部を介して玩具人形(10)のビロード製セクション(12)内部に取付けられる。
【0017】
図2及び図3は、伸長可能な末端部(20)の第2端部(24)を示す。
伸長可能な末端部(20)は、腕部、足部、或いは適宜上記したその他の種類の末端部であってもよい。伸長可能な末端部(20)は、第2端部近傍において、管状の構造をなすとともに中央コンジット(28)を備える。中央コンジット(28)を設けることにより、伸長可能な末端部(20)を軽量化でき、また製造コストを低減できる。中央コンジット(28)を設けることにより更に、伸長可能な末端部(20)の弾性が増し、小さい力でより長く伸長可能となる。
【0018】
伸長可能な末端部(20)は適切なトリブロック共重合体材料を押出成型して形成される。伸長可能な末端部(20)は、弾性ゲル材からなることから、非常に高い弾性率を備えるとともに非常に破断しにくい特性を有する。
【0019】
玩具人形(10)は織布製フラップ部(30)を備える。織布製フラップ部(30)は、例えばキャンバス地などの強度の高い織物材料からなる。織布製フラップ部(30)の1つのセクションは、円筒状に丸められる。織布製フラップ部(30)の円筒状セクション(32)は、伸長可能な末端部(20)の第2端部(24)内の中央コンジット(28)内に挿入される。円筒状セクション(32)が中央コンジット(28)内に挿入されると、織布製フラップ部(30)の円筒状セクション(32)は伸長可能な末端部(20)をなす材料に熱接着される。
【0020】
織布製フラップ部(30)を伸長可能な末端部(20)に熱接着する場合、次の2つの手法のうちいずれかを用いて行う。第1の場合、まず伸長可能な末端部(20)を完全に成型する。次に、織布製フラップ部(30)の円筒状セクション(32)を第2端部(24)の中央コンジット(28)に挿入する。発熱体を円筒状セクション(28)に挿入する。発熱体は周囲の弾性材料を溶融する。溶融した弾性材料は、織布製フラップ部(30)の織り目に流れ込む。その後発熱体を取り出して、弾性材料を固化させる。一度固化すると、伸長可能な末端部(20)の弾性材料は、織布製フラップ部の円筒状セクション(32)の織り目に入り込んで、脱落することはない。
【0021】
第2の製造方法の場合、伸長可能な末端部(20)は押出成型装置内で部分的に成型される。所望の形状に成型したら、弾性材料が完全に固化する前に、織布製フラップ部(30)を押出成型用金型内に配置する。まだ固化していない弾性材料は織布製フラップ部(30)の織り目に流れ込み、そこで固化する。伸長可能な末端部(20)が成型装置から取り出されるときには、織布製フラップ部(30)は弾性材料に不可逆的に固定した状態となっている。
【0022】
玩具人形(10)のビロード製セクション(12)は様々な織布片からなる。これら織布片は互いに縫合され、織布製外皮(14)をなす。その後織布製外皮(14)に充填材を充填してビロード製セクション(12)全体に膨らみと重みを持たせる。図示例においては、玩具人形(10)のビロード製セクション(12)はアクセス開口部(26)を備える。アクセス開口部(26)は玩具人形(10)の内部と連通する。ビロード製セクション(12)は互いに縫合されているから、ビロード製セクション(12)の外表面及び内表面に全長にわたって様々なシーム部(36)が存在する。織布製フラップ部(30)の伸長可能な末端部(20)から延出する部分は、ビロード製セクション(12)に縫合される。この縫合は好ましくは既存のシーム部(36)に沿って行われる。
【0023】
一度織布製フラップ部(30)は玩具人形(10)のビロード製セクション(12)に縫合されると、織布製フラップ部(30)は玩具人形(10)の伸長可能な末端部(20)とビロード製セクション(12)を機械的に接続する。織布製フラップ部(30)は、ビロード製セクション(12)の内部において、玩具人形のビロード製セクション(12)と縫合される。結果として、取付け箇所は外観に現れない。人形の使用者には、玩具人形(10)の伸長可能な末端部(20)が、玩具人形(10)のビロード製セクション(12)内に挿入されているようにしか見えないが、伸長可能な末端部(20)が引張られたり伸長されたりしても、ビロード製セクション(12)と強固に固定されていることがわかる。
【0024】
本発明のこの実施形態は、新規な玩具人形構造を示す。玩具人形は従来のビロード製構造からなる外部領域と、弾性ゲルからなる末端部を備える。玩具人形は、互いに物理的特性が大きく異なる外部領域を備える。
【0025】
再び図1を説明する。玩具人形(10)はビロード製本体部(12)と織布片からなる頭部セクションを備える。ビロード製本体部(12)と頭部セクションは、共通シーム部(縫目)に沿って互いに縫合される。縫合する断片の全てが従来の織布からなってもよいが、弾性材料を成型したシートを頭部と本体部のいずれかの構造に縫合してもよい。
【0026】
図1は、玩具人形(10)の頭部及び/本体部が少なくとも1つの伸長可能なセクション(60)を備える実施形態を示す。この伸長可能なセクション(60)は弾性ゲルからなる。玩具人形(10)は伸長可能な末端部(20)を備える。伸長可能な末端部(20)は、上記した方法に従って弾性材料から形成される。しかしながら、図示例において、玩具人形(10)の頭皮部(61)、髪部(62)、耳部(64)もまた弾性ゲルからなる。
【0027】
伸長可能なセクション(60)は弾性ゲルから成型される。伸長可能なセクション(60)は、玩具人形(50)の組立前に予め成型される。玩具人形(10)の伸長可能なセクション(60)は弾性ゲルからなるので、高い弾性を有する。したがって、玩具人形(10)の髪部(62)、頭皮部(61)、耳部(64)は、人がこれら要素を引張ることにより、伸縮自在に伸長する。
【0028】
玩具人形(10)の伸長可能なセクション(60)は、少なくとも1つの共通シーム部(66)に沿って玩具人形(10)のビロード製本体部(12)に接続する。伸長可能なセクション(60)とビロード製本体部(12)の物理的接続には様々な手法を使用可能である。
【0029】
図4は、共通シーム部(66)の一部を示す。共通シーム部のこの部分において、弾性ゲル材料(70)の薄い層が、織布材料(72)の一部と重なり合っている。弾性ゲル材料(70)と織布材料(72)は、熱硬化型接着剤(74)を用いて接着される。熱硬化型接着剤(74)はトリブロック重合体と、樹脂、及び必要ならば少量の可塑化用オイルの混合物からなる。このような接着剤は市場で入手可能である。米国特許第6,391,960号明細書(権利者:Sambasivam 発明の名称:Multipurpose Hot Melt Adhesive)はこのような接着剤の一例を開示している。熱硬化型接着剤(74)は加熱溶融した状態で共通シーム部(66)に塗布される。したがって、熱硬化型接着剤(74)は織布材料(72)の織目に流れ込む。熱硬化型接着剤(74)が冷却して固化すると、織布材料(72)と熱硬化型接着剤(74)の間に非常に強固な結合が生じる。これは、熱硬化型接着剤(74)が織布材料(72)の織目を湿潤するからである。
【0030】
熱硬化型接着剤(74)はトリブロック重合体からなる。弾性ゲル材料(70)は、これと同様の材料からなる。したがって、弾性材料(70)は熱硬化接着剤(74)と容易に結合する。更に、熱硬化型接着剤(74)が加熱溶融した状態で塗布されるから、熱硬化型接着剤(74)はこれと接触する弾性ゲル材料を瞬間的に溶融する。したがって弾性ゲル材料(70)と熱硬化型接着剤(74)が直接的に熱接着される。
【0031】
熱硬化型接着剤(74)は主にトリブロック共重合体と、樹脂及び可塑化剤の混合物からなる。したがって熱硬化型接着剤(74)は、弾性ゲル材料(70)と比して、高い可撓性を備えるとともに非常に破断しにくい特性を有する。結果として、共通シーム部(66)は弾性ゲル材料(70)及び織布材料(72)の両方と強固に結合される。熱硬化型接着剤(74)は、弾性ゲル材料(70)が伸長するのにしたがって屈曲し捩れるから、弾性ゲル材料(70)或いは織布材料(72)と分離することがない。
【0032】
図6は共通シーム部(76)の一部の変更形態を示す。この形態においても、共通シーム部(76)において、弾性ゲル材料(70)の層は織布材料(72)と重なり合う。弾性ゲル材料(70)と織布材料(72)の間に第2の接着剤を使用せず、弾性ゲル材料(70)は織布材料(72)が互いに接する状態とする。その後、共通シーム部(76)にエネルギを加える。このとき加えるエネルギは、熱エネルギ、超音波エネルギ、或いはマイクロ波エネルギのいずれのエネルギであってもよい。このエネルギは、織布材料(72と接触する弾性ゲル材料(70)を瞬間的に溶融するために用いられる。結果として、弾性ゲル材料(70)は、溶融して織布材料(72)の繊維に入り込む。溶融エネルギを加える間、織布材料(72)を弾性ゲル材料(70)に対して押圧する。溶融エネルギを加えるのを中止すると、弾性ゲル材料(70)は固化して織布材料の織目と結合する。結果として、共通シーム部(76)に沿った結合部が形成され、この結合部は弾性ゲル材料(70)の伸長時にも分離することはない。
【0033】
図6は、共通シーム部(80)の一部の変更形態を示す。共通シーム部(80)はこの部分において、弾性ゲル材料(70)の層が、織布材料(84)の2つのフラップ部(81)及び(82)の間に配される。一般的に、弾性ゲル材料を縫合すると、時間の経過とともに、縫合に使用した糸が弾性ゲル材料を破断する。このような現象は、弾性ゲル材料(70)をシーム部に沿って伸長させることにより助長される。弾性ゲル材料(70)を織布材料(84)の2つのフラップ部(81)と(82)の間に配することにより、共通シーム部(80)が効果的に縫合される。弾性ゲル材料(70)が2つのフラップ部(81)と(82)の間に配されることにより、縫合用糸(86)は弾性ゲル材料(70)を通じて横方向に引張られることはない。縫合用糸(86)は弾性ゲル材料(70)を垂直方向のみに貫通する。縫合用糸(86)は上部フラップ部(82)の上方と、下部フラップ部(81)の下方でのみ、横方向に縫目を形成する。共通シーム部(80)を縫合することにより、弾性ゲル材料(70)が織布(84)の2つのフラップ部(81)と(82)の間に圧縮される。弾性ゲル材料(70)は共通シーム部(80)を縫合することにより再圧縮されるから、玩具人形(10)の伸長可能なセクションが引張られ、或いは伸長されても、弾性ゲル材料(70)が更に大きく変形することはない。結果として弾性ゲル材料(70)と織布材料(84)の間に強固な機械的接続が形成される。この接続部は、弾性ゲル材料(70)が引張られ、或いは伸長されても、分離することはない。
【0034】
図7は、共通シーム部(90)の一部の更に別の実施形態を示す。共通シーム部(90)のこの部分において、織布製の補強用パッチ(92)が、弾性ゲル材料(70)の層に取付けられる。この取付けは、上記した接着による接続或いは上記した熱接着のいずれの方法によってもよい。弾性ゲル材料(70)の層はその後織布材料(94)と重ね合わされる。織布材料(94)は玩具人形(10)の残りの部分を形成する。縫合用糸(96)は共通シーム部(90)を通じて縫目を形成する。縫合用糸は補強パッチ(92)を貫通する。結果として、補強パッチ(92)が存在することにより、弾性ゲル材料(94)が縫目の間で横方向に動かされても、縫合用糸(96)が弾性ゲル材料(94)を破断することがない。
【0035】
図8は、本発明の玩具人形(100)の変更形態を示す。この実施形態において、玩具人形(100)は弾性サブアセンブリ(102)とビロード製構造(106)を組み合わせてなる。弾性サブアセンブリ(102)は、弾性ゲル材料からなるとともにシールされる袋体(104)を備える。袋体(104)は気体、液体、ゲル、或いはこれらに類するその他の流体材料を充填される。弾性サブアセンブリ(102)を握り締めると、弾性サブアセンブリ(102)は変形して、圧力下にない他の領域に拡張する。
【0036】
ビロード製構造(106)に従来の充填材を最大限まで充填せず、ビロード製構造(106)の少なくとも一部は中空に保つ。このように、ビロード製構造(106)を部分的に中空とされ、弾性ゲルからなるとともにシールされた袋体(104)の略全体がビロード製構造(106)内に挿入される。ビロード製構造(106)の一端部は、1若しくはそれ以上のシーム線(108)に沿って、弾性サブアセンブリ(102)と接触する。シーム線(108)それぞれにおいて、ビロード製構造(106)の織布材料が、シールされた袋体(104)をなす弾性材料に取付けられる。この取付けには、上記した接続方法のいずれかを用いる。
【0037】
図9を参照する。図9に示すごとく、弾性サブアセンブリ(102)の一部がビロード製構造(106)内に配されるから、ビロード製構造(106)を握り締めると、弾性サブアセンブリ(102)の露出部分が膨張する。ビロード製構造(106)は複数の開口部を備える。これら開口部は弾性サブアセンブリ(102)の異なるセクションにおいて開口している。結果として、ビロード製構造(106)を握り締めるとき、ビロード製構造(106)に設けられたこれら開口部により、弾性サブアセンブリ(102)がどの位置で変形するかが制御される。例えば、図示例においては、玩具人形(100)はアライグマの形状の縫いぐるみである。玩具人形(100)は頭部(111)と、胴体部(112)を備える。胴体部(112)は従来のビロード製構造からなる。頭部(111)は部分的にビロード製構造からなる。頭部(111)の残りの部分は、弾性サブアセンブリ(102)の露出部分からなる。弾性サブアセンブリ(102)は部分的にビロード製構造により被覆される。玩具人形(100)を握り締めると、弾性サブアセンブリ(102)の露出部分が膨張する。弾性サブアセンブリ(102)は、ビロード製構造により制限されない領域において膨張する。図示例において、これら制限されない領域は、耳部及び目部からなる。これにより、玩具人形(100)の胴体部(112)を握り締めると、玩具人形(100)の耳部及び目部が膨張する。
【0038】
本発明の実施形態は、新規な玩具人形構造を示す。玩具人形は、従来のビロード製構造からなる外面領域と、弾性ゲルからなる他の領域を備える。弾性ゲルの内側に充填される充填材とビロード製構造の内側に充填される充填材として、異なる充填材を用いてもよい。したがって玩具人形は対照的な触感的特性を有する外面領域を備える。
【0039】
以上で説明した実施形態は単に例示の目的で示されたものであり、当業者であれば本発明の要旨を離れることなく変更形態を想到できる。本発明の玩具人形はいかなる形状を有してもよく、例えば人間、動物、或いは非生物を模した形状を有する。玩具人形の形状はデザインの選択の問題である。重要な点は、弾性材料と、織布材料の両方を用いて玩具人形を形成することである。本発明の玩具人形の弾性材料とビロード製構造は互いに独立しておらず、これらは一体化して独特な物理的特性を有する玩具人形をなす。したがって、上記で説明した実施形態の変更例は、以下の請求の範囲の範囲内であるものとする。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、玩具製造の分野に好適に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係る玩具人形の一実施形態の正面図である。
【図2】図1に示す一実施例に係る玩具人形の部分を現わす断面図である。
【図3】図2に示す部品の分解図である。
【図4】シーム部の第1実施形態を示す断面図である。
【図5】シーム部の第2実施形態を示す断面図である。
【図6】シーム部の第3実施形態を示す断面図である。
【図7】シーム部の第4実施形態を示す断面図である。
【図8】本発明に係る玩具人形の他の実施形態を現わす部分破断図である。
【図9】図8に示す玩具人形を握り締めた状態を現わす正面図である。
【符号の説明】
【0042】
10・・・・・玩具人形
12・・・・・ビロード製胴体部
18・・・・・頭部セクション
20・・・・・末端部
28・・・・・中央コンジット
30・・・・・織布製フラップ部
61・・・・・顔面部
62・・・・・髪部
66・・・・・共通シーム部
70・・・・・弾性ゲル材
72・・・・・織布材料
92・・・・・補強用パッチ
104・・・・袋体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外面に現れる外面部を備える本体構造部を備え、
前記外面部は、織布材からなる少なくとも1つの第1セクションと、弾性ゲル材からなる少なくとも1つの第2セクションからなり、
前記少なくとも1つの第1セクションと前記少なくとも1つの第2セクションが少なくとも1つの共通シーム部に沿って接合し、
乾燥したビロード製充填材が前記本体構造部の少なくとも一部に充填されることを特徴とする玩具人形アセンブリ。
【請求項2】
前記織布材と前記弾性ゲル材が前記少なくとも1つの共通シーム部に沿って接着剤により接合されることを特徴とする請求項1記載の玩具人形アセンブリ。
【請求項3】
前記弾性ゲル材からなる前記第2セクションが、弾性ゲル材からなるとともにシールされる袋体の一部をなし、
前記袋体が、該袋体内部に配された液体充填剤を取り囲むことを特徴とする請求項1記載の玩具人形アセンブリ。
【請求項4】
前記織布材と前記弾性ゲル材が前記少なくとも1つの共通シーム部に沿って熱接着により接続ことを特徴とする請求項1記載の玩具人形アセンブリ。
【請求項5】
前記織布材と前記弾性ゲル材が前記少なくとも1つの共通シーム部に沿って縫合により接続することを特徴とする請求項1記載の玩具人形アセンブリ。
【請求項6】
補強用パッチを更に備え、
該補強用パッチは前記弾性ゲル材に接続し、
前記補強用パッチの領域内で、前記織布材が前記弾性ゲル材に縫合されることを特徴とする請求項5記載の玩具人形アセンブリ。
【請求項7】
頭部セクションと胴部セクションを備え、
前記胴部セクションが、主として織布からなる外面部を備え、
前記頭部セクションが、少なくとも部分的に弾性ゲルからなる外面部を備えることを特徴とする玩具人形。
【請求項8】
前記頭部セクションが、髪部並びに顔面部の特徴を備えることを特徴とする請求項7記載の玩具人形。
【請求項9】
前記髪部が、弾性ゲルからなる細長く延びる要素であることを特徴とする請求項8記載の玩具人形。
【請求項10】
前記顔面部の特徴部分のうち少なくとも複数部分が弾性ゲルからなることを特徴とする請求項8記載の玩具人形。
【請求項11】
前記織布が、少なくとも1つの共通シーム部に沿って前記弾性ゲルに接続することを特徴とする請求項8記載の玩具人形。
【請求項12】
複数の織布からなるセグメントで構成されるビロード製本体部を備え、
前記織布からなるセグメントは、複数のシーム部に沿って互いに縫合され、
前記ビロード製本体部は、内部領域と、該内部領域に連通する少なくとも1つの開口部を備え、
更に、少なくとも1つの伸長可能な末端部を備え、
該伸長可能な末端部それぞれは、第1端部と第2端部を備え、
前記少なくとも1つの伸長可能な末端部は、前記少なくとも1つの開口部を介して、前記ビロード製本体部の内部領域に延出し、前記伸長可能な末端部それぞれの前記第2端部が前記ビロード製本体部内に存在し、前記伸長可能な末端部それぞれの前記第1端部が前記ビロード製本体部の外側に存在し、
織布製フラップ部を更に備え、
該織布製フラップ部は、前記伸長可能な末端部の第2端部近傍に接続し、
前記織布製フラップ部は、前記ビロード製本体部の前記内部領域内で、前記シーム部のうち少なくとも1つに縫合されることを特徴とする玩具人形アセンブリ。
【請求項13】
前記伸長可能な末端部が、該末端部の前記第2端部近傍で、中央コンジットを備えることを特徴とする請求項12記載の玩具人形アセンブリ。
【請求項14】
前記織布製フラップが、前記中央コンジット内で前記伸長可能な末端部に接続することを特徴とする請求項13記載の玩具人形アセンブリ。
【請求項15】
ビロード製の玩具人形に弾性を有する腕脚部を取付ける方法であって、
該方法は、内部領域に連通する開口部を備えるビロード製玩具の本体部を準備する工程と、
弾性材料から成型される腕脚部を準備する工程と、
織布製フラップを前記腕脚部に接続する工程と、
前記織布製フラップを前記ビロード製胴体部の前記内部領域に縫合する工程からなり、前記腕脚部が前記開口部のうち1つを介して前記内部領域から延出することを特徴とする方法。
【請求項16】
前記腕脚部を準備する工程が、第1端部と第2端部を備える腕脚部を用意する段階を備え、
前記第2端部が、管状の構造をなすとともに中央コンジットを備えることを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記織布製フラップを前記腕脚部に接続する工程が、
前記織布製フラップの一部を前記中央コンジットに挿入するとともに、該中央コンジット内で前記織布製フラップを前記腕脚部に熱接着することを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項18】
前記ビロード製玩具の本体部を準備する工程が、複数のシーム部に沿って互いに縫合された織布からなるセグメントから構成される玩具本体部を準備する段階を備えることを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項19】
前記ビロード製玩具の本体部の前記内部領域に前記フラップを縫合する工程が、前記シーム部のうち少なくとも1つに前記織布製フラップを縫合する段階を備えることを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項20】
複数のシーム部に沿って互いに縫合された材料からなるビロード製本体部を形成する工程を備え、前記ビロード製本体部は、内部領域及び該内部領域に連通する開口部を備え、
更に弾性ゲルからなる末端部を準備する工程を備え、該末端部が第1端部と該第1端部の反対側に存する第2端部を備え、
更に、前記末端部の前記第2端部を前記開口部を介して挿入し、前記末端部の第2端部を前記内部領域に配するとともに前記第1端部を前記ビロード製本体部の外側に配する工程を備え、
更に、前記末端部の前記第2端部が前記内部領域内で、前記ビロード製本体部に前記末端部の第2端部を取付ける工程を備えることを特徴とする玩具人形を製造する方法。
【請求項21】
織布製フラップを前記末端部の前記第2端部に取付ける工程を更に備えることを特徴とする請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記末端部を準備する工程が、管状構造をなして、中央コンジットが形成される末端部を準備する段階を備えることを特徴とする請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記織布製フラップを前記末端部の前記第2端部に取付ける工程が、前記中央コンジット内で、前記織布製フラップの一部を前記前記末端部に熱接着する段階を備えることを特徴とする請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記末端部の前記第2端部を前記ビロード製本体部に取付ける工程が、前記内部領域内で、前記シーム部のうち1つに前記織布製フラップを縫合する段階を備えることを特徴とする請求項20記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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