説明

弾性舗装表面の膨れ修復方法

【課題】
弾性舗装の表面に部分的に生じる膨れを、簡単な方法で、平坦な表面に修復する方法を提供すること。
【解決手段】
アスファルトコンクリート層上に弾性舗装層を打設した弾性舗装の表層に生じた膨れ部分を該膨れ部分内部の気体又は気体及び液体を真空ポンプで吸引除去して、真空状態でアスファルトコンクリート層と弾性舗装層とを密着・接着させて、弾性舗装の表面を平坦な表面に修復することを特徴とする弾性舗装表面の膨れを修復する方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性舗装の表層に生じた膨れを修復する方法に関する。より詳細には、弾性舗装において、該舗装の表層に生じる膨れをその内部の気体又は気体及び液体を真空ポンプで吸引除去して平坦な表面に戻し、膨れのない弾性舗装表面へ修復する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
弾性舗装の表層に生じる膨れは、舗装表面の外観を損なうだけではなく、その膨れに基因して表層が大きく剥離、破壊され、重大な事故を引き起こしたり、弾性舗装を使用不可能にしたり、さらには、大々的な改修舗装工事を余儀なくされることになり、大きな問題とされている。
この膨れの現象は、特に弾性舗装において、アスファルトコンクリート層と弾性舗装層を含んで構成される弾性舗装において見られる現象である。このような構成からなる弾性舗装では、特に、ポリウレタン等の弾性舗装層では、表面層は殆ど通気性がなく、一方、弾性舗装層は太陽の輻射熱等により温度上昇し、該層とアスファルトコンクリート層との間に、層内水分や下地水分が蒸発して膨張し、これらが弾性舗装表層を押し上げて膨れを生じるとされている。
このような現象を根本的に防止するため、アスファルトコンクリート層と弾性舗装層との間に下地水分が浸入したり、溜まらないようにしたり、排水やエアー抜き等の工夫や、アスファルトコンクリート層と弾性舗装層の接着力を強化した開粒度アスファルトコンクリート層により層内を通気し易いようにする等の工夫がなされている。
しかしながら、このような方法を採用しても、膨れ現象を根本的に解消することは困難であり、実際施工された弾性舗装には、舗装表層の大きな剥離に繋がりかねない部分的膨れが生じることを避けることができない。
【0003】
このような膨れが見出されたとき、膨れを対症療法的に修復する方法が採られている。
従来、膨れを修復するには、膨れ部分のそれぞれに数箇所の小さな孔を開け、膨れ部分の表面を押圧して、これらの孔から膨れ内部の気体又は気体及び液体を押出して除去し、その後、それらの孔から接着剤を注入して膨れ部分の表面を押圧し、内部を接着させる施工方法が採用されていた。
しかしながら、この方法で、注入した接着剤により膨れ内部を十分に接着させるには、膨れ部分の表面を押圧し、さらに膨れ部分の上に重しを載せて接着が完了するのを待たなければならなかった。そのため膨れの数に応じた多数の重しを施工現場に運搬する作業、修復しようとする膨れ部分のそれぞれに重しを載せる作業などの多大の労力、及び接着が完了するまでに相当の時間を必要としていた。また、この方法では膨れ内部に注入された接着剤のために膨れを平坦に修復することが困難であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、弾性舗装の表層、特にポリウレタン弾性舗装やゴム系シート弾性舗装等の表層に生じた膨れを簡単な方法で修復し、平坦な表面に戻す方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、この課題に関し鋭意検討し、特殊な装置や薬剤を使用せず簡単な方法及び操作により弾性舗装の膨れを修復する方法を見出した。
すなわち、本発明は、弾性舗装の表層に生じた膨れを、該膨れ部分内部の気体又は気体及び液体を吸引除去して平坦な表面に戻すことを特徴とする弾性舗装表面の膨れ修復方法である。
膨れの内部に生じた気体又は気体及び液体を吸引除去するには、弾性舗装の膨れ部分の表面層に小径の挿入管を挿し込み、この管を通して真空ポンプを用いて行う。
【発明の効果】
【0006】
本発明の方法によれば、弾性舗装表層の膨れ部分に殆ど損傷を与えず、平坦な表面に修復することが可能であり、膨れが生じていた弾性舗装表層の状態を殆ど原状に修復することができる。
使用する装置又は器具として、通常の各種施工に使用される小〜大型、特に小型の真空ポンプ等を用い、及び弾性舗装表層の膜を通すことができる挿入管を用いれば、特に、接着剤を膨れ内部に注入することなく、膨れ内部の気体又は気体及び液体を吸引除去するだけで、また膨れ部分の表面を押圧することなく、膨れ内部の弾性舗装層とアスファルトコンクリート層を密着させ、膨れを修復することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の方法は、アスファルトコンクリート層(以下、単にアスコン層と言う)上に弾性舗装層を打設した弾性舗装の表層に生じる膨れを、該膨れ部分の内部に存在する気体又は気体及び液体を吸引除去することを特徴とする弾性舗装表面の膨れを修復する方法である。
本発明における弾性舗装とは、特にポリウレタン弾性舗装層やクロロプレン等のゴム系シート弾性舗装層を用いる弾性舗装であって、基盤上にアスコン層を積層しその上に、ポリウレタン弾性層、更にエンボス層及びトップコート層等、又はゴム系シートを積層して得られる弾性舗装である。
また、弾性舗装に生じる膨れとは、弾性舗装表面が部分的に膨れ上がる現象を言う。本発明に於いて、弾性舗装表層の膨れは大きさや数等が特定されるものではない。
この膨れは、ブリスタリング現象と称され、弾性舗装であるポリウレタン弾性舗装やゴム系シート弾性舗装層では、舗装の運営・維持管理上、極めて大きな問題であり、この現象の発生の確認と速やかな修復は弾性舗装表面の安全な維持管理には必要不可欠である。
ブリスタリング現象は、太陽光の副射熱により温度上昇し、弾性舗装層表面が膨張したり、及び内部のアスコン層も軟化したり、同時にアスコン層と弾性舗装層間内部に残存していた水分や下地を通して齎される地下水分が、蒸発、気化して膨張し、軟化した弾性舗装層表面に膨れとして現れる現象である。
すなわち、本発明で言う膨れとは、弾性舗装内部のアスコン層と弾性舗装層内に生じた気体、又は気体及び液体が、舗装層内で膨張して弾性を有する弾性舗装の表面が部分的に膨れ上がる現象である。
【0008】
本発明に於いては、膨れの原因であるアスコン層と弾性舗装層間に生成して存在する気体又は気体及び液体を吸引除去するために真空ポンプを用いる。
真空ポンプは、特に限定されるものではない。弾性舗装層の膨れ部分の内部から気体又は気体及び液体を排出除去できるものであれば、舗装表面に膨れの大きさに応じて適切な種類と規模の真空ポンプを選択して使用できる。
膨れは、発生原因、発生から発見までの時間の経過等により形、大きさは種々様様である。したがって、修復に用いる真空ポンプは、膨れの規模や状態に応じて、簡易に使用できる手動式吸引ポンプ、小型から大型の揺動ピストン型真空ポンプ、ダイアフラム真空ポンプ等の往復動式ポンプ、油回転真空ポンプ、ドライポンプ等の回転式ポンプ等から選択することができる。また、膨れ部分の大きさによっては、通常、自転車タイヤ、球技用ボール等の空気入れとして使用されるポンプを真空ポンプ用として改造して吸引のために使用することもできる。
【0009】
真空ポンプの吸気口側に繋いだ耐圧ゴム管の先端に、膨れ内部の気体又は気体及び液体を吸入除去するため耐圧性の小径の挿入管、例えば、注射針や注入針のような小径の管を取り付ける。
この挿入管を弾性舗装表層の膨れ部分の任意の個所に挿入する。膨れ部分の空間まで十分に挿入した後、真空ポンプを稼動させて膨れ部分内部の気体又は気体及び液体を吸引除去して真空状態とする。また、膨れ部分内部の気体が液体を含む場合は、真空ポンプと挿入管を繋ぐ耐圧管の途中に液体を除去するためのトラップを設置する。
真空ポンプで膨れ部分内部の気体又は気体及び液体を吸引した後、挿入管を抜いた孔は自然に塞がれるか、または必要により接着剤で塞ぐことにより弾性舗装層とアスコン層との空間は真空状態となる。
真空状態となることにより、弾性舗装層とアスコン層は膨れを生じていた状態から、弾性舗装竣工時のほぼ原状に戻り、内部はアスファルト固有の接着性により強固に接着し、膨れ部分の表面を平坦な表面に修復させる。この際、膨れ部分の表面からの押圧や、通常使用される装置を用いて転圧する必要はない。
吸引終了後、更に押圧又は転圧によって内部のアスコン層を接着させる必要はないが、膨れを内部の気体又は気体及び液体を吸引除去して、平坦な表面に戻した後、接着剤を注入して、表面を押圧する方法を併用してもよい。
この際使用する接着剤は特に限定されず、ポリウレタン弾性層の施工に適切な接着剤を適宜選択して使用できる。
【実施例】
【0010】
本発明の方法で、弾性舗装表面の膨れを修復した例を以下説明する。
長さ300mm×幅300mm×高さ50mmの金枠を用いて密粒度アスコンを作製した。これに水分を含ませ、上部表面の除く5面に2液型エポキシを塗布硬化させ、塗膜面とした。ついで下地処理剤、2液型ウレタンを5mmの厚さに塗布した試料を調製した。これらの試料を、室温40℃にし、次いで試料上部に設置した赤外線ランプで照射し、試料の温度を50〜70℃まで上げて弾性層表面に強制的に膨れを生じさせた。
手動式真空ポンプ(アルベック社製真空ポンプG−5)の吸気口側に耐圧管を取り付け、その先端に内径約1mmの注入針を取り付けた。また、耐圧管の途中にトラップを取り付け、膨れ内部に気体とともに含まれる液体を捕集できるようにした。
挿入管を膨れの任意の個所に挿し込み、真空ポンプを作動させた。膨れ部分内の気体及び液体は吸引除去され、膨れ部分は平坦となった。真空ポンプを止めて挿入管を抜き取った。挿入管を挿入した孔は瞬間接着剤で塞いだ。
このよう方法による膨れ部分内の気体及び液体の吸引除去は瞬時に完結し、膨れ部分は、平坦となりその表面を小太鼓のバチで叩いても内部に空間があるような音は認められず、修復後の膨れ内部に空隙がないことを示した。修復前では膨れ部分を叩くとあたかも太鼓を叩いているような音を発する。
【0011】
比較のため、試料の表面の膨れ部分の任意位置に数箇所の孔をあけ、膨れ部分の表面を押して膨れ内部の気体と液体を押出した。膨れを平坦な表面にするには、かなりの圧力で押さえつける必要があった。押えて平坦にした後、注入針を用いて液状の接着剤を注入し、その後、この膨れ部分上面を押圧又は転圧して平坦にした。
さらにその後、その部分に板を置き、さらにその上に重しを載せて数時間放置し、膨れ内部が完全に接着するのを待った。
この方法では、注入した接着剤により膨れ部分を完全に平坦にするのが困難である。また、この方法では、膨れの数に応じた重しを予め準備しておくことや接着剤の硬化まで放置しておく時間が必要であるなどの問題がある。
又、修復の度合いを確かめる定性的な方法として上記のような小太鼓のバチで修復後の膨れ部分の表面を叩くと、修復後の膨れ部分の中には内部に空隙が残っているような音を発するものが残り、これらは再度修復作業を行い、膨れ部分内部を十分に接着させねばならなかった。
【0012】
上記の本発明の修復方法は、従来実施していた修復方法に比べ、著しく優れた特徴を有する。この方法で、予想外であった効果は、吸引で膨れ内部空間を真空状態とすると、アスコン層と弾性舗装層が密着して、アスファルト固有の接着性により強固に接着するためか、弾性舗装表面の膨れが、平坦で且つ安定な表面に修復されることである。また、作業は簡潔であり、従来実施していた方法に比べ、時間と手間を省くことができる。
【産業上の利用可能性】
【0013】
弾性舗装のアスコン層と弾性舗装層との間で、この層間に浸透してくる地下水分が弾性舗装表面からの太陽輻射熱により気化して生じる弾性舗装の表面に膨れを、簡単な方法で確実に、且つ平坦な表面に修復できる本発明の方法は、弾性舗装の維持管理上、大きな問題である弾性舗装表面の膨れを修復する方法として極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルトコンクリート層上に弾性舗装層を打設した弾性舗装の表層に生じた膨れ部分を、該膨れ部分内部の気体又は気体及び液体を真空ポンプで吸引除去して平坦な表面に戻すことを特徴とする弾性舗装表面の膨れ修復方法。

【公開番号】特開2006−144232(P2006−144232A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−331607(P2004−331607)
【出願日】平成16年11月16日(2004.11.16)
【出願人】(597000906)東洋スポーツ施設株式会社 (6)
【Fターム(参考)】