説明

形状保持型吊上げ式直方体バック

【課題】 土嚢の内部の土砂が固められ、形状が安定し、積み重ね作業が容易に行える形状保持型吊上げ式直方体バックを提供する。
【解決手段】 内部に土砂が詰め込まれた直方体形状の直方体バック11の対角線上に基底バンド24を設け、基底バンド24が交差する交点に四角柱形状のリフトバンド30を固定し、トラスバンド21の一端をリフトバンド30の四角柱の周囲を取り巻く固定バンド31で固定し、その他端をリフトバンドの中心から所定距離隔たった点で基底バンドに固定することによって、垂直方向のリフトバンド30に複数本のトラスバンドが設置でき、トラスバンド一本にかかる重量が分散し、形状保持型吊上げ式直方体バック1の形状が維持される。このため、複数の形状保持型吊上げ式直方体バックを整然と積み重ねることができ、作業時間が大幅に低減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として灌漑や治水工事、のり面補強や擁壁工事、道路や建物の地盤補強や、埋め立て工事、自然災害の復旧工事等で用いられる超大型土嚢に関するもので、特に、直方体の土嚢を複数個積み重ねて使用するときに、積み重ね易い安定した形状を維持しながら、一本の吊下体で施工できる形状保持型吊上げ式直方体バックに関する。また、小型土嚢袋を用いた土嚢工法との併用も可能で、一度に大きな面積を施工出来るため、作業効率を上げる事が出来る。その他本発明の特性を生かした使い方として、小麦、大豆などの粒形状の物資を搬送する際などにも利用可能である。従来の土嚢の形状は、通常円柱形か、風船を逆さにしたような形(巾着形)になるため、袋間に空隙が生じていたが、本発明の形状保持型吊上げ式直方体バックは、物資の積み込みやストックなどを四角形による効率の良い形で置く事ができる。
【背景技術】
【0002】
灌漑や治水工事、台風や大雨にともなう自然災害の復旧工事等で、土嚢の積み上げ作業が行われる。従来の土嚢は、図13に示すように、麻袋やポリエチレン製やポリプロピレン製等の袋状、網状等の耐久性に優れた土嚢101に、土砂を詰め込み、マジックテープ(登録商標)105等によりその袋の口を塞ぐようにしたものである。工事用の土嚢では、大きいものになるとその重さが1トン以上にもなり、土嚢の運搬には、クレーン車やバックホーが使用されている。台風や大雨にともなう自然災害の復旧工事等では、図14に示すように、複数の土嚢101を並べて、積み重ねて使用することが多い。
【0003】
図11は、本件発明者の特許(特許文献1)である。直方体バック11の底面12内の中心部19にリフトバンド30の一端を固定し、直方体バック11内の底面の4つの頂点18a〜18dの対角線上で各頂点から所定距離隔たった点18a1、18b1、18c1、18d1に第1〜第4の4本のトラスバンド21a〜21dの各一端を固定し、底面12の中心部19と4つの頂点18a〜18dと5点で直方体バック11を支え、トラスバンド21a〜21dの他端は、リフトバンド30上の固定点30aに固定されている。リフトバンド30によって直方体バックを引き上げると、直方体バックの内部の土砂は圧縮され、直方体形状に固まり、直方体バックの形状が安定したものとなる。このため、複数の形状保持型吊上げ式直方体バックを整然と積み重ねることができ、作業時間が大幅に低減される。
【0004】
図12は、従来の形状保持型吊上げ式直方体バックの原理を説明する図である。図12において、点18a及び18bは、点30aとの間に張られたリフトバンド21a、21bによって引っ張られるので、上向きの力と横向きの力が働き、ハッチングを施した部分の土砂が圧縮され固められるので、直方体バック1は安定した形状を維持することができる。
【特許文献1】特許3949156号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示される従来の直方体バックでは、形状が1m角程度までは使用できるが、1mを超すと形状が安定せず、複数の土嚢を積み重ねて使用することが困難である。すなわち、クレーン車等により土嚢の運搬や積み上げ作業を行う際に、土嚢の中の土砂が動き、土嚢の形状が変形するという欠点があった。すなわち、袋の大型化にともない、袋の垂直方向の距離が長くなる為、袋中央部から垂直に取り付けられた吊り下げ用のバンドが、内部資材を押し上げ、対角に取り付けられたトラスバンドとの間で十分な摩擦を発生するまでの必要距離が長くなる為、全体がへの字に変形してしまうという欠点があった。すなわち、土嚢袋の横幅が広くなるに従って少ない数のトラスバンドだけでは土嚢袋の形状を直方体形状に維持できなくなる。
【0006】
本発明は、上述の課題を鑑み、1mを超す超大型の偏平の直方体バックであっても直方体形状を維持できる積み重ね易い土嚢を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために、本発明は、内部に土砂が詰め込まれる直方体形状の直方体バックと、前記直方体バックの対角線上に設けられた基底バンドと、前記基底バンドが交差する交点に一端が接続され、他端は吊り下げ部に接続される四角柱形状のリフトバンドと、前記リフトバンドの四角柱の周囲を取り巻く複数の固定バンドと、各固定バンド毎に、前記四角柱形状の各面において、その各一端が前記リフトバンドと前記固定バンド間に固定され、その各他端はリフトバンドの中心から所定距離隔たった点で前記基底バンドに固定される複数のトラスバンドとを備えるようにしたことを特徴とする。
【0008】
前記の中心から所定距離隔たった点は、前記複数の固定バンドのうち上方の固定バンドにその一端が固定されたリフトバンドの他端が下方の固定バンドにその一端が固定されたリフトバンドの他端よりも、前記中心からより遠い距離に設定されることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、内部に土砂が詰め込まれる直方体形状の直方体バックと、前記直方体バックの対角線上に設けられた基底バンドと、前記基底バンドが交差する交点に一端が接続され、他端は吊り下げ部に接続される四角柱形状のリフトバンドと、前記リフトバンドの四角柱の周囲の各面で高さが異なる位置に取りつけられた複数の上吊り輪と、前記基底バンド上でリフトバンドの中心から異なる所定距離隔たった点に取りつけられた複数の下吊り輪と、前記リフトバンドの各面において、その各一端が前記各上吊り輪に固定され、その各他端が各下吊り輪に固定される複数のトラスバンドとを備えるようにしたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、内部に土砂が詰め込まれる直方体形状の直方体バックと、前記直方体バックの対角線上に設けられた基底バンドと、前記基底バンド上で上記直方体バックの中心から異なる所定距離隔たった点に対向して取りつけられた複数の下吊り輪固定部と、前記対向する下吊り輪固定部の一方に設けられた下吊り輪にその一端が固定され、他方に設けられた下吊り輪にその他端が固定され、所定の位置に設けられたリフトバンド固定部で固定され、その中間点で折り返されて吊り下げ部を構成する複数のトラスバンドとを備えるようにしたことを特徴とする。
【0011】
好ましくは、前記吊り下げ部の先端はフックを取り付けるためにアーチ形状に形成されるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、内部に土砂が詰め込まれる直方体形状の直方体バックと、前記直方体バックの対角線上に設けられた基底バンドと、前記基底バンドが交差する交点に一端が接続され、他端は吊り下げ部に接続される四角柱形状のリフトバンドと、前記リフトバンドの四角柱の周囲を取り巻く複数の四角柱枠型固定バンドと、各固定バンド毎に、前記リフトバンドの各面において、その各一端が前記リフトバンドと前記固定バンド間に固定され、その各他端はリフトバンドの中心から所定距離隔たった点で前記基底バンドに固定される複数のトラスバンドとを備えるようにしている。このように、複数のトラスバンドを用いることにより、直方体バックの内部のトラスバンドの周囲の土砂の圧縮範囲を中央部から段階的に広げることができるので、大型の形状保持型吊上げ式直方体バックが得られる。
【0013】
また、本発明によれば、中心から所定距離隔たった点は、複数の固定バンドのうち上方の固定バンドにその一端が固定されたリフトバンドの他端が下方の固定バンドにその一端が固定されたリフトバンドの他端よりも、中心からより遠い距離に設定されるようにしている。このために、高さ方向に複数のトラスバンドを設けることができ、土砂の粒子間に生じる摩擦力により固形化できる範囲が拡大され、大型の形状保持型吊上げ式直方体バックに対応できる。
【0014】
また、本発明によれば、内部に土砂が詰め込まれる直方体形状の直方体バックと、前記直方体バックの対角線上に設けられた基底バンドと、前記基底バンドが交差する交点に一端が接続され、他端は吊り下げ部に接続される四角柱形状のリフトバンドと、前記リフトバンドの四角柱の各面で高さが異なる位置に取りつけられた複数の上吊り輪固定部と、前記基底バンド上でリフトバンドの中心から異なる所定距離隔たった点に取りつけられた複数の下吊り輪固定部と、前記リフトバンドの各面において、その各一端がフックを介して前記各上吊り輪固定部に固定され、その各他端がフックを介して各下吊り輪固定部に固定される複数のトラスバンドとを備えるようにしているので、トラスバンドの取りつけ作業が容易になる。
【0015】
また、本発明によれば、内部に土砂が詰め込まれる直方体形状の直方体バックと、前記直方体バックの対角線上に設けられた基底バンドと、前記基底バンド上で上記直方体バックの中心から異なる所定距離隔たった点に対向して取りつけられた複数の下吊り輪固定部と、前記対向する下吊り輪固定部の一方に設けられた下吊り輪にその一端が固定され、他方に設けられた下吊り輪にその他端が固定され、所定の位置に設けられたリフトバンド固定部で固定され、その中間点で折り返されて吊り下げ部を構成する複数のトラスバンドとを備えるようにしているので、トラスバンドの取りつけ作業がさらに容易になる。
【0016】
また、本発明によれば、リフトバンドの先端はフックを取り付けるためにアーチ形状に形成される。このため、クレーン車等により、形状保持型吊上げ式直方体バックを簡単に引き上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
実施形態.
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態の形状保持型吊上げ式直方体バック1の斜視図を示し、図2は、その形状保持型吊上げ式直方体バック1の平面図を示すものである。
【0018】
図1及び図2において、1は形状保持型吊上げ式直方体バック、11は形状保持型吊上げ式直方体バック1を構成する直方体バックである。直方体バック11としては、耐久性のある可撓性の素材、例えば、麻等の天然素材やポリエチレンやポリプロピレン等の化学繊維他、袋形状が製作可能な材料が用いられる。直方体バック11は、直方体をなしており、その上部に、左右の蓋部13a及び13b、前後の蓋部14a及び14b、及び前後の蓋部14a及び14bを閉じるためのベルト15及びロック部材16が設けられる。また、ベルト15は中に投入する資材の種類や重量に応じて本数を増やすこともできる。なお、形状保持型吊上げ式直方体バックの重量が1t程度の場合にはベルト15は4本程度必要である。また、図示されていないが、左右の蓋部13a及び13bを閉じるためのベルト15及びロック部材16を左右の蓋部13a及び13bに取り付けることもできる。また、13a、13b及び14a、14bの蓋部を直方体バック11と一体として製作も可である。
【0019】
30はリフトバンドであり、21a〜21d、22a〜22dはトラスバンドである。リフトバンド30及びトラスバンド21a〜21d、22a〜22dは、直方体バック11を吊り下げるためのものである。リフトバンド30は四角柱に構成され、トラスバンド21a〜21d、22a〜22dは、紐又はベルト状のもので、それぞれ耐久性のある素材から形成されている。17は、前後の蓋部14a及び14bを閉じたときに、リフトバンド30を引き出す開口をつくるための溝である。
【0020】
トラスバンド21の一端は、直方体バック11内の底面12に対角線状に設けられた2つの基底バンド24の交差する部分に固定されている。トラスバンド21a〜21d、22a〜22dの各一端は、後述するように、リフトバンド30と固定バンド31間に固定され、それらの各他端はリフトバンド30の中心から所定距離隔たった点で前記基底バンドに固定されている。
【0021】
図3は、本発明の実施形態における2段のトラスバンドの取りつけ状態を示す図である。図3(A)はリフト固定バンドを2段に設けた図である。上述のように、トラスバンド21a、21cは、その一端がリフトバンド30とリフト固定バンド31の間に固定され、トラスバンド22a、22cは、その一端がリフトバンド30とリフト固定バンド32の間に固定されている。一方、トラスバンド21a、21cは、その他端が基底バンド24上の一点でそれぞれ固定され、トラスバンド22a、22cは、その他端がそれぞれ基底バンド24上の他の一点で固定されている。図3においては、トラスバンド21、22の両先端が折り曲げてあり、リフトバンド30、リフト固定バンド31との接続及び基底バンド24との接続を簡略化して示してある。この接続の詳細は、後述するように、図4で説明する。
【0022】
図3(B)はリフト固定バンド31を3段に設けた図である。このように、リフト固定バンドは複数段設けることができ、直方体バックの形状が大きくなるとリフト固定バンドの段数を増やしそこに固定されるトラスバンドを増やすことによって、直方体バック1の形状を一定の型に保つことができる。また、垂直方向のリフトバンドに複数本のトラスバンドを設置するため、トラスバンド一本にかかる重量が分散し、安全性が増す。
【0023】
図3(B)において、上述と同じように、トラスバンド21a、21cは、その一端がリフトバンド30とリフト固定バンド31の間に固定され、トラスバンド22a、22cは、その一端がリフトバンド30とリフト固定バンド32の間に固定され、トラスバンド23a、23cは、その一端がリフトバンド30とリフト固定バンド33の間に固定されている。一方、トラスバンド21a、21cは、その他端が基底バンド24上の一点18a1、18c1でそれぞれ固定され、トラスバンド22a、22cは、その他端が基底バンド24上の一点19a1、19c1でそれぞれ固定され、トラスバンド23a、23cは、その他端がそれぞれ基底バンド24上の一点19a1、19c1で固定され、ている。図3(B)においても、トラスバンド21、22の両先端は折り曲げられており、リフトバンド30、リフト固定バンド31、32、33との接続及び基底バンド24との接続を簡略化して示してある。この接続の詳細は、後述するように、図4で説明する。
【0024】
リフトバンド30の先端には吊り下げ部29が接続され、吊り下げ部29の先端はアーチ状に形成され、クレーンやバックホーなどの重機のフック等で吊り下げられる。吊り下げ部29の形状はフック状にしてもよく、輪状にしてもよい。
【0025】
図4は、本発明の実施形態におけるトラスバンドの取りつけの詳細を示す図である。図4(A)は、リフトバンド30、トラスバンド21a、21c、リフト固定バンド31及び基底バンド24を側面から見た状態を示す図である。図4(B)は、リフトバンド30、トラスバンド21a〜21d、リフト固定バンド31及び基底バンド24を斜め上からみた斜視図である。
【0026】
図4(A)及び図4(B)において、トラスバンド21cの上端42cと下端43cが折り曲げられ、上端42cはリフト固定バンド31とリフトバンド30間に挿入され、かしめ鋲やネジや接着剤やその他十分な強度のある樹脂系糸などで縫いつけるなどして固定される。一方、下端43cは基底バンド24の一端にかしめ鋲34やネジや接着剤やその他十分な強度のある樹脂系糸などで縫いつけるなどして固定される。ここで、リフトバンド30の下端は縦横の基底バンド24の交差した点、すなわちリフトバンドの固定点26で基底バンド24に固定される。もちろん基底バンド24は直方体バック1の底面に固定されているので、 基底バンド24に固定することは直方体バック1の底面にも固定されることになる。また、リフト固定バンド31を使用せず、各トラスバンドとリフトバンド30を直接縫い合わせてもかまわない。そのような実施形態を以下に説明する。なお、図4においては、トラスバンド21のみの1段の場合が示されているが、図3(b)に示すように、複数段のトラスバンドを設けることもできる。
【0027】
図5は、本発明の実施形態におけるさらに他のトラスバンドの詳細を示す図である。図5(A)は、リフトバンド30、トラスバンド21a、21ac、21c、リフト固定バンド31及び基底バンド24を側面から見た状態を示す図である。図5(B)は、リフトバンド30、トラスバンド21a〜21d、21ac、21bd、リフト固定バンド31及び基底バンド24を斜め上からみた斜視図である。
【0028】
図5(A)及び図5(B)において、トラスバンド21は斜線部のトラスバンド21a、トラスバンド21c及び吊り下げ部29を形成するトラスバンド21acから形成される1本のバンドとして製作される。すなわち、トラスバンド21acはトラスバンド21aとトラスバンド21cが連続している部分である。図5に示すトラスバンド21は、図4に示すトラスバンド21ほぼ同じ構成になっているが、図4中のトラスバンド21は、リフト固定バンド31の部分で終端されるが、図5中のトラスバンド21は、リフト固定バンド31の部分で終端されずに、吊り下げ部29であるトラスバンド21acを介して連続に構成されている。上述のように、図5のトラスバンド21は図4のトラスバンド21と一部の構造が異なっているので、以下においては図4と異なるところのみについて説明する。
【0029】
図5においては、トラスバンド21aはトラスバンド21cの上端が曲げられリフト固定バンド31とリフトバンド30間に挿入され、かしめ鋲やネジや接着剤やその他十分な強度のある樹脂系糸などで縫いつけるなどして固定される。また、リフト固定バンド31とリフトバンド30間に挿入されたトラスバンド21aとトラスバンド21cの上端は、連続するトラスバンド21ac部によって吊り下げ部29を形成している。なお、トラスバンド21bとトラスバンド21dとに連続される部分はトラスバンド21bdによって吊り下げ部29bdを形成するが、図面が複雑になるので吊り下げ部29bdは省略している。リフト固定バンド31とリフトバンド30間に挿入されたトラスバンド21acは、リフト固定バンド31の部分でかしめ鋲やネジや接着剤やその他十分な強度のある樹脂系糸などで縫いつけるなどして固定される。また、リフト固定バンド31を使用せず、各トラスバンドとリフトバンド30を直接縫い合わせてもかまわない。このような構造によれば、トラスバンド21a、トラスバンド21c、トラスバンド21acは、一本のバンドとして製作される。この場合には、吊り下げ部は、吊り下げ部29ac及び吊り下げ部29bdの2つで構成されるので、吊り下げに対し安全性が大きくなる。なお、図5においては、トラスバンド21のみの1段の場合が示されているが、図3(b)に示すように、複数段のトラスバンドを設けることもできる。
【0030】
図6は、本発明の実施形態における他のトラスバンドの詳細を示す図である。図6(A)は、リフトバンド30、トラスバンド21、フック36、吊り輪37、38、上吊り輪固定部39、下吊り輪固定部40及び基底バンド24を側面から見た状態を示す図である。図6(B)は、リフトバンド30、トラスバンド21、フック36、上吊り輪37、下吊り輪38、上吊り輪固定部39、下吊り輪固定部40及び基底バンド24を斜め上からみた斜視図である。
【0031】
図6(A)及び図6(B)において、トラスバンド21cの上端下端にフック36cが設けられる。トラスバンド21cの上端のフック部36cは上吊り輪37cで止められ、上吊り輪37cは上吊り輪固定部39cに止められ、この上吊り輪固定部39cはリフトバンド30に固定される。また、トラスバンド21cの下端のフック36cは下吊り輪38cで止められ、下吊り輪38cは下吊り輪固定部40cに止められ、この下吊り輪固定部40cは基底バンド24に固定される。上吊り輪固定部39c及び下吊り輪固定部40cは、かしめ鋲34やネジや接着剤やその他十分な強度のある樹脂系糸などでそれぞれリフトバンド30及び基底バンド24に縫いつけるなどして固定される。上記では、トラスバンド21cについて説明したが、他のトラスバンド21a,21b,21dについても同様であるので説明を省略する。このような構造によれば、トラスバンド21は、各上下吊り輪37、38をあらかじめ上吊り輪固定部39及び下吊り輪固定部40にそれぞれ取りつけておき、後から上端下端のフック36を各上下吊り輪37、38に取りつけることができる。したがって、トラスバンド21の取りつけ作業が容易になる。なお、図6においては、トラスバンド21のみの1段の場合が示されているが、図3(b)に示すように、複数段のトラスバンドを設けることもできる。
【0032】
図7は、本発明の実施形態におけるさらに他のトラスバンドの詳細を示す図である。図7(A)は、トラスバンド21、22、フック36、下吊り輪38、下吊り輪固定部40及び基底バンド24を側面から見た状態を示す図である。図7(B)は、トラスバンド21、22、フック36、下吊り輪38、下吊り輪固定部40及び基底バンド24を斜め上からみた斜視図である。
【0033】
図7(A)及び図7(B)において、2段に設けられたトラスバンド21a及び22aの下端にそれぞれフック36aが設けられ、トラスバンド21c及び22cの下端にそれぞれフック36cが設けられる。トラスバンド21a、21c、22a、22cの上端はリフトバンド固定部44で止められる。ここで、トラスバンド21a、21c及びトラスバンド22a、22cはそれぞれ1本のバンド、紐、ロープ等(以下バンドという)で形成され、それぞれ上方で折り返されて吊り下げ部29を構成する。全てのトラスバンド21a、21c、22a、22cはリフトバンド固定部44でリングや紐等で固定される。リフトバンド固定部44でトラスバンド21a、21c、22a、22cを縛って固定しても良い。トラスバンド21a、21cの下端の各フック36a、36cは下吊り輪38a、38cにそれぞれ止められ、下吊り輪38a、38cは下吊り輪固定部40a、40cにそれぞれ止められ、この下吊り輪固定部40a、40cは基底バンド24にそれぞれ固定される。上記では、トラスバンド21a、21c及びトラスバンド22a、22cについて説明したが、他のトラスバンド21b,21d及び22b,22dについても同様であるので説明を省略する。このような構造によれば、トラスバンド21、22は、各下吊り輪38をあらかじめ下吊り輪固定部40にそれぞれ取りつけておき、後からトラスバンド21、22の先端を各下吊り輪38に取りつけることができる。したがって、トラスバンド21の取りつけ作業が容易になる。なお、上記の説明では、トラスバンド21、22の先端にはフック36を設けるように説明したが、フック36を設けないで、トラスバンド21、22の先端を直接下吊り輪38に結びつけて、トラスバンド21、22と下吊り輪38とを接続してもよい。なお、図7においては、トラスバンド21、トラスバンド22の2段の場合が示されているが、図3(b)に示すように、複数段のトラスバンドを設けることもできる。
【0034】
図8及び図9は、本発明の実施形態の形状保持型吊上げ式直方体バック1の使用時の説明に用いる斜視図である。図8(A)に示すように、本発明の実施形態の形状保持型吊上げ式直方体バック1を使用する場合には、左右の蓋部13a及び13b、前後の蓋部14a及び14bを開いた状態とし、その上から、土砂25を詰め込む。
【0035】
直方体バック11に十分な土砂25を詰め込んだら、土砂25の中から吊り下げ部29を引き出す。次に、図8(B)に示すように、左右の蓋部13a及び13bを閉じ、ベルト15及びロック部材16により蓋部13a及び13bをロックする。さらに、前後の蓋部14a及び14bを閉じ、直方体バック11の上部表面の中心の溝17で形成された開口から、吊り下げ部29を引き出して、ベルト15及びロック部材16により、蓋部14a及び14bをロックする。ただし、ベルト15及びロック部材16により蓋部13a及び13bをロックした状態は、蓋部14a及び14bに隠れて図8(B)では見えない状態にある。
【0036】
このように、直方体バック11に十分な土砂25を詰め込み、左右の蓋部13a及び13b、前後の蓋部14a及び14bを閉じ、吊り下げ部29を溝17で形成された開口から引き出した後、図9(A)に示すように、吊り下げ部29の先端に、クレーン車(図示せず)のフック28を通し、吊り下げ部29で直方体バック11を引き上げて、所定の位置まで形状保持型吊上げ式直方体バック1を運搬し、図9(B)に示すように複数の直方体バック1を積層する。図9(B)は積層の一例を示した図であるが、通常は奇数段である第1段と第3段は上下に同じように積み重ね、偶数段である第2段は奇数段と直方体バックの半分の幅だけずらせて積層する。図9は直方体バックの積層の一例を示したものであり、縦方向への積層は図のように3段に限らず必要に応じて何段にでも積層することができる。また、横方向に対しても図のように一列ではなく面状に何列にでも積層することができる。
【0037】
以上のように、本発明の実施形態の形状保持型吊上げ式直方体バック1では、直方体バック11内の基底バンド24のリフトバンドの固定点26にリフトバンド30の一端を固定し、トラスバンド21の各一端をリフトバンド30に固定し、トラスバンド21の各他端を基底バンド24の一点に固定して直方体バック11を支えている。このため、吊り下げ部29で形状保持型吊上げ式直方体バック1を引き上げると、直方体バック11の内部のリフトバンド30及びトラスバンド21の周囲の土砂25が圧縮され、直方体バック11は持ち上げられて空中にあるときでも、直方体形状の形状を維持し、形状保持型吊上げ式直方体バック1の形状が安定したものとなる。このことについて、以下に説明する。
【0038】
本発明の実施形態の形状保持型吊上げ式直方体バック1の構造を、図1における矢印A方向から見ると、図10(A)に示すように、トラスバンド21aと、リフトバンド30と、底面12とにより、三角形T1の構造が生じる。同様に、トラスバンド21cと、リフトバンド30と、底面12とにより、三角形T2の構造が生じる。トラスバンド22aと、リフトバンド30と、底面12とにより、三角形T3の構造が生じる。トラスバンド22cと、リフトバンド30と、底面12とにより、三角形T4の構造が生じる。
【0039】
ここで、吊り下げ部29で直方体バック11を引き上げると、その自重による力F0を受けて、トラスバンド21a及び21cに引張力F2が加わる。トラスバンド21a及び21cは、底面12に対して角度θ1を有しているので、トラスバンド21a及び21cの引張力F2は、トラスバンド21a及び21cが底面12を吊り下げている点18a1及び18c1では、直方体バック11を上側に引き上げる力F3と、内側に引き込む力F4とに分解される。直方体バック11を上側に引き上げる力F3が生じることにより、トラスバンド21a及び21cが底面12を吊り下げている点18a1及び18c1は持ち上げられ、これにより、直方体バック11内に詰められた土砂25は、上側に押し上げられ、圧縮されて固められる。また、内側に引き込む力F4により、点18a1及び18c1周辺の土砂25は、横方向に圧縮されて固められる。
【0040】
トラスバンド22a及び22cについても同様である。すなわち、吊り下げ部29で直方体バック11を引き上げると、その自重による力F0を受けて、トラスバンド22a及び22cに引張力F5が加わる。トラスバンド22a及び22cは、底面12に対して角度θ2を有しているので、トラスバンド22a及び22cの引張力F5は、トラスバンド22a及び22cが底面12を吊り下げている点19a1及び19c1では、直方体バック11を上側に引き上げる力F6と、内側に引き込む力F7とに分解される。直方体バック11を上側に引き上げる力F6が生じることにより、トラスバンド22a及び22cが底面12を吊り下げている点19a1及び19c1は持ち上げられ、これにより、点19a1及び19c1周辺の土砂25は、上側に押し上げられ、圧縮されて固められる。また、内側に引き込む力F7により、点19a1及び19c1周辺の土砂25は、横方向に圧縮されて固められる。
【0041】
また、直方体バック11の底面12のリフトバンドの固定点26には、リフトバンド30の先端が固定されており、底面12のリフトバンドの固定点26には、直方体バック11を上側に引き上げる力F1が働く。このため、底面12の中心は、上側に引き上げられ、直方体バック11に詰められた土壌は、圧縮されて固められる。すなわち、リフトバンド30で直方体バック11を引き上げると、直方体バック11は、図10(B)に示すように、トラスバンドが底面12を吊り下げている点18a1及び18c1、点19a1及び19c1は持ち上げられ、これにより、点18a1及び18c1、点19a1及び19c1周辺の土砂25は、上方及び横方向に圧縮されて固められる。図10(B)に示すように、複数のトラスバンドにより、段階的に圧縮範囲を広げる為、吊上げた状態で起こる、下部中央リフトバンド取付け位置のくぼみが小さくなる為、吊り降ろして設置した際、土嚢下部に空隙が発生しない。すなわち、設置後の変形がほとんど無く、寸法管理が容易となる。
【0042】
図10(B)では、点18a1及び18c1、点19a1及び19c1が上方向に引っ張られる様子を誇張して描いた図であり、実際にはこの形状は点18a1及び18c1、点19a1及び19c1の位置、トラスバンド21の張力等によって変化するのでこの図と同じにはならない。図10(B)において、ハッチングを施した部分の土砂が圧縮され固められるので、直方体バック1は安定した形状を維持することができる。
【0043】
なお、本発明の第1の実施形態では、リフトバンド30により直方体バック11を吊り下げると、底面12の中心部19に凹部35が生じる。この底面12の凹部35は、直方体バック11の中心部19の位置を正確に反映して生じるものであるから、この凹部35を位置決めに利用すれば、複数の形状保持型吊上げ式直方体バックを正確に敷き詰めることができる。
【0044】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、灌漑や治水工事、のり面補強や擁壁工事、道路や建物の地盤補強や、埋め立て工事、自然災害の復旧工事等で用いられる土嚢として使用可能である。また、小型土嚢袋を用いた土嚢工法との併用も可能で、一度に大きな面積を施工出来るため、作業効率を上げる事が出来る。その他本発明の特性を生かした使い方として、小麦、大豆などの粒形状の物資を搬送する際などにも利用可能で、物資の積み込みやストックなどを四角形による効率の良い形で置く事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施形態の形状保持型吊上げ式直方体バックの斜視図である。
【図2】本発明の実施形態の形状保持型吊上げ式直方体バックの平面図である。
【図3】本発明の実施形態におけるトラスバンドの取りつけ状態を示す図である。
【図4】本発明の実施形態におけるトラスバンドの取りつけの詳細を示す図である。
【図5】本発明の実施形態における他のトラスバンドの取りつけの詳細を示す図である。
【図6】本発明の実施形態におけるさらに他のトラスバンドの取りつけの詳細を示す図である。
【図7】本発明の実施形態におけるさらに他のトラスバンドの取りつけの詳細を示す図である。
【図8】本発明の実施形態の形状保持型吊上げ式直方体バックの使用時の説明に用いる斜視図である。
【図9】本発明の実施形態の形状保持型吊上げ式直方体バックの使用時の説明に用いる図である。
【図10】本発明の実施形態の形状保持型吊上げ式直方体バックの原理を説明する図である。
【図11】従来の形状保持型吊上げ式直方体バックの斜視図である。
【図12】従来の形状保持型吊上げ式直方体バックの原理を説明する図である。
【図13】従来の形状保持型吊上げ式直方体バックの使用時の説明に用いる図である。
【図14】従来の形状保持型吊上げ式直方体バックを積層した状況を説明する図である。
【符号の説明】
【0047】
1 形状保持型吊上げ式直方体バック
11 直方体バック
12 底面
13a,13b,14a,14b 蓋部
15 ベルト
16 ロック部材
17 溝
18a1〜18d1 トラスバンドの固定点
19a1、19c1 トラスバンドの固定点
20a1、20c1 トラスバンドの固定点
21a〜21d トラスバンド
22a〜22d トラスバンド
23a〜23d トラスバンド44
24 基底バンド
25 土砂
26 リフトバンドの固定点
27 リング
28 フック
29 吊り下げ部
30 リフトバンド
30a リフトバンド上の固定点
31 リフト固定バンド
32 リフト固定バンド
33 リフト固定バンド
34 かしめ鋲
35 凹部
36 フック
37 上吊り輪
38 下吊り輪
39 上吊り輪固定部
40 下吊り輪固定部
42 トラスバンドの上端
43 トラスバンドの下端
44 リフトバンド固定部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に土砂が詰め込まれる直方体形状の直方体バックと、
前記直方体バックの対角線上に設けられた基底バンドと、
前記基底バンドが交差する交点に一端が接続され、他端は吊り下げ部に接続される四角柱形状のリフトバンドと、
前記リフトバンドの四角柱の周囲を取り巻く複数の四角柱枠型固定バンドと、
各固定バンド毎に、前記リフトバンドの各面において、その各一端が前記リフトバンドと前記固定バンド間に固定され、その各他端はリフトバンドの中心から所定距離隔たった点で前記基底バンドに固定される複数のトラスバンドと
を備えるようにしたことを特徴とする形状保持型吊上げ式直方体バック。
【請求項2】
前記の中心から所定距離隔たった点は、前記複数の固定バンドのうち上方の固定バンドにその一端が固定されたリフトバンドの他端が下方の固定バンドにその一端が固定されたリフトバンドの他端よりも、前記中心からより遠い距離に設定されることを特徴とする請求項1に記載の形状保持型吊上げ式直方体バック。
【請求項3】
内部に土砂が詰め込まれる直方体形状の直方体バックと、
前記直方体バックの対角線上に設けられた基底バンドと、
前記基底バンドが交差する交点に一端が接続され、他端は吊り下げ部に接続される四角柱形状のリフトバンドと、
前記リフトバンドの四角柱の各面で高さが異なる位置に取りつけられた複数の上吊り輪固定部と、
前記基底バンド上でリフトバンドの中心から異なる所定距離隔たった点に取りつけられた複数の下吊り輪固定部と、
前記リフトバンドの各面において、その各一端がフックを介して前記各上吊り輪固定部に固定され、その各他端がフックを介して各下吊り輪固定部に固定される複数のトラスバンドと
を備えるようにしたことを特徴とする形状保持型吊上げ式直方体バック。
【請求項4】
内部に土砂が詰め込まれる直方体形状の直方体バックと、
前記直方体バックの対角線上に設けられた基底バンドと、
前記基底バンド上で上記直方体バックの中心から異なる所定距離隔たった点に対向して取りつけられた複数の下吊り輪固定部と、
前記対向する下吊り輪固定部の一方に設けられた下吊り輪にその一端が固定され、他方に設けられた下吊り輪にその他端が固定され、所定の位置に設けられたリフトバンド固定部で固定され、その中間点で折り返されて吊り下げ部を構成する複数のトラスバンドと
を備えるようにしたことを特徴とする形状保持型吊上げ式直方体バック。
【請求項5】
前記吊り下げ部の先端はフックを取り付けるためにアーチ形状に形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の形状保持型吊上げ式直方体バック。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−46911(P2009−46911A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−214962(P2007−214962)
【出願日】平成19年8月21日(2007.8.21)
【出願人】(506304325)
【出願人】(592158844)
【Fターム(参考)】