説明

形質転換植物に対するジノテフランの使用

【課題】本発明は、通常の天然の作物と異なる形質転換作物に対して悪影響を与えず、形質転換作物内及び/または作物上の有害生物を防除する方法を提供する。
【解決手段】活性成分として遊離形または農芸化学的に有用な塩の形のジノテフランを含む農薬組成物又は活性成分として遊離形または農芸化学的に有用な塩の形のジノテフランを含み、少なくとも一つの他の物質を添加して処理上容易な形態に加工された農薬組成物を、有害生物またはそれらの環境に適用することを特徴とする、形質転換作物における有害生物を防除する方法。
【効果】本発明の方法によれば、ジノテフランの殺虫効果が期待される使用量の減少、殺虫スペクトルの拡大、作物の育成速度の向上、作物商品価値としての外観の向上、収穫量の向上、有益生物への影響の低減等の望ましい効果が発現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形質転換作物内および作物上の有害生物をジノテフラン(1−メチル−2−ニトロ−3−(テトラヒドロ−3−フリルメチル)グアニジン)で防除する新規な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジノテフランを活性成分として含む有害生物防除方法が、各種文献、特許において提案されている。しかしながら、形質転換作物内及び/または作物上に存在する有害生物が防除できるとする報告例は見当たらない。形質転換作物は、遺伝子等を人工的に操作することにより生み出された植物であり、自然界に元来存在するものではなかった。これら形質転換作物には種類によって育成条件が異なる地方での生育抑制や不稔などが見られる場合があり、天然の従来作物と全く同列に論じることは妥当ではない。従って、これまでの方法が、これら作物に悪影響を与えず、作物内及び/または作物上の有害生物を防除する方法として一義的に適用できるわけではない。これら形質転換作物を保護するために有害生物を防除する方法の選択肢は多い方がよく、これまでの方法に新たに選択肢を与える技術は常に求められている。
【特許文献1】特表2002−509865号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、通常の天然の作物と異なる形質転換作物に対して悪影響を与えず、形質転換作物内及び/または作物上の有害生物を防除する方法を提供するものである。天然の作物とは異なる性質(例えば、除草剤耐性、寒冷地適応、殺虫物質生産など)を付与した形質転換作物(例えば、トウモロコシ、穀類、大豆、トマト、綿、ジャガイモ、イネ、サトウダイコン等)は、従来と異なる環境で育成されることも多く、その環境中での挙動は現在も様々に研究されている。中にはそれ自体で有害生物を防除することが可能な殺虫物質を生産する形質転換作物もあるが、全ての病害虫を防除できるものではない。通常の天然作物に通常使用される農薬組成物を、その有害生物またはそれらの環境、特にその作物植物自体に適用すること自体は公知の技術である。しかしながら、形質転換作物に通常使用される農薬組成物を処理して、全く悪影響を及ぼさないとはされていない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らがジノテフランを、トウモロコシ、穀類、大豆、トマト、綿、ジャガイモ、イネ、サトウダイコン等の形質転換作物に、様々な方法(例えば、スプレー、湿潤、噴霧、粉体散布、塗布、種子粉衣、散布または注入等)で処理したところ、驚くべきことにジノテフランはこれら形質転換作物に悪影響を与えない上、予想と異なる効果の発現を認めた。
【0005】
即ち、本発明は、トウモロコシ、穀類、大豆、トマト、綿、ジャガイモ、イネ、サトウダイコン等の形質転換作物上、該作物内、土壌、水耕の水、環境中の空気中等の様々な環境に、スプレー、湿潤、噴霧、粉体散布、塗布、種子粉衣、散布または注入等の様々な方法で適用することによる、これら形質転換作物に悪影響を与えない、有害生物の防除方法であり、詳しくは以下のとおりである。
【0006】
[1] 活性成分として遊離形または農芸化学的に有用な塩の形のジノテフランを含む農薬組成物を、有害生物またはそれらの環境に適用することを特徴とする、形質転換作物における有害生物を防除する方法。
[2] 活性成分として遊離形または農芸化学的に有用な塩の形のジノテフランを含み、少なくとも一つの他の物質を添加して処理用上容易な形態に加工された農薬組成物を、有害生物またはそれらの環境に適用することを特徴とする、形質転換作物における有害生物を防除する方法。
[3] 形質転換作物が処理されることを特徴とする請求項[1]または[2]に記載の方法。
[4] 形質転換作物がトウモロコシ、穀類、大豆、トマト、綿、ジャガイモ、イネ、サトウダイコンから選ばれる一種である、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の方法。
[5] 形質転換作物の繁殖材料が処理されることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一項記載の方法。
[6] ジノテフランを含む農薬組成物が処理されることを特徴とする形質転換作物の繁殖材料。
【発明の効果】
【0007】
本発明の方法によれば、ジノテフランの殺虫効果が期待される使用量の減少、殺虫スペクトルの拡大、作物の育成速度の向上、作物商品価値としての外観の向上、収穫量の向上、有益生物への影響の低減等の望ましい効果の単独または複数が発現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
ジノテフランは遊離の形態で使用可能であるが農園芸用途に使用し得る塩として用いることもできる。農園芸用途に使用しうるジノテフランの塩としては、例えば、無機および有機酸の酸付加塩、特に塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、リン酸、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、マロン酸、トルエンスルホン酸または安息香酸の塩である。
【0009】
典型的なジノテフラン使用濃度は、0.1〜1000ppmの間、好ましくは0.1〜500ppmの間である。また、ジノテフランの適用量は、形質転換作物の種類、対象とする有害生物、葉、種子、土壌等の適用方法、適用時期、土壌構成、作物の栽培される気候、温度等により広範囲から選択される。その範囲は一般に1〜2000g/ha、特に10〜1000g/ha、好ましくは10〜500g/ha、さらに好ましくは10〜200g/haの適用量である。
【0010】
本発明における形質転換作物の例としては、例えば、植物病原菌や昆虫、ダニといった有害生物の防除を目的として毒素または阻害物質を産生するようにあるいは有害生物の生理・代謝を撹乱するように、あるいは特定の除草剤に対する耐性の付与を目的として標的酵素の除草剤への感受性を低下するようにあるいは代謝改変により除草剤を解毒するように、組換えDNA技術により作出された植物またはそれらの繁殖材料である。ここで繁殖材料とは植物が繁殖する目的で産生する形態と解釈され、例えば種子、果実、種芋等の塊茎を含む地下茎、塊根、担体根または根、または植物切片などを指す。このような形質転換作物の例は、例えばUS5550318、US5489520、EP0374753、WO9307278、WO9534656、EP0427529およびEP451878において開示され、このような形質転換作物を作出する方法は当業者に周知であり、例えば上記した刊行物に記述されている。
【0011】
このような形質転換作物により産生可能な毒素、阻害物質または代謝撹乱物質の例として、CrylA(a)、CryIA(b)、CryIA(c)、CryIIA、CryIIIA、CryIIIB2、CytA等のバチルス・チュリンジェンシス由来のエンドトキシン(B.t.)、VIP1、VIP2、VIP3、バチルスセレウス蛋白質またはバチルスポピリアエ由来の蛋白質、線虫類に対して殺虫活性を示す蛋白質、トリプシンインヒビター、セリンプロテアーゼインヒビター、パタチン、シスタチン、パパインインヒビター等のプロテアーゼインヒビター、リシン、トウモロコシRIP、アブリン、ルフィン、サポリン、ブリョジン等のリボソーム不活性化蛋白質、エンドウレクチン、大麦レクチンまたはスノードロップレクチン等の植物レクチン、またはアグルチニン類、サソリ毒、蜘蛛毒、スズメバチ等の蜂毒および他の虫特異的なニューロトキシン等の動物により生産された毒、3−ヒドロキシステロイドオキシダーゼ、エクジステロイドUDP−グリコシルトランスフェラーゼ、コレステロールオキシダーゼ、エクジソンインヒビター、HMG−COAレダクターゼ、ナトリウムおよびカルシウム等のイオンチャネル遮断剤、幼若ホルモンエステラーゼ、利尿ホルモンレセプター、スチルベンシンターゼ、ビベンジルシンターゼ、キチナーゼおよびグルカナーゼ等のステロイド代謝酵素が挙げられる。
【0012】
除草剤耐性の形質転換作物を作出するために遺伝子組換えの対象となりうる標的酵素あるいは解毒酵素の例としては、アセト乳酸合成酵素(ALS)、アセチルCoAカルボキシラーゼ(ACCase)、ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼ(HPPD)、ホスフィノトリシン(PPT)アセチルトランスフェラーゼ、O−メチルトランスフェラーゼ、グルタミンシンテターゼ、アデニロコハク酸リアーゼ(ADSL)、アデニロコハク酸シンターゼ、アントラニレートシンターゼ、ニトリラーゼ(Nitrilase)、5−エノールピルビルシキミ酸−3−リン酸合成酵素(EPSPS)、グリホセートキシドレダクターゼ、プロトポルフィリノーゲンオキシダーゼ(PROTOX)、チトクロームP450酵素が挙げられる。
【0013】
これらの形質転換を受ける作物の例としては、例えば、トウモロコシ等のモロコシ類、小麦、大麦、イネ等の穀類、セイヨウアブラナ、キャベツ、芽キャベツ、ブロッコリ等のアブラナ科植物、リンゴ、ナシ等の梨果類、大豆、ジャガイモ、トマト、コショウ、ブドウ、メロン、バナナ、綿、サトウキビ、ヒマワリ、サトウダイコン、ビート、サツマイモ、アルファルファ、パパイヤ等が挙げられる。
上記の毒素を発現する遺伝子を含む形質転換作物の例としては、Attribute Bt Sweet (登録商標)(トウモロコシ)、NK YieldGard (登録商標)(トウモロコシ)、YieldGard Corn Borer (登録商標)(トウモロコシ)、YieldGard Rootworm (登録商標)(トウモロコシ)、Herculex I(登録商標)(トウモロコシ)、VipCot (登録商標)(綿)、Bollgard (登録商標)(綿)、WideStrike (登録商標)(綿)が挙げられる。
【0014】
上記の除草剤耐性付与に関わる標的酵素の遺伝子あるいは解毒酵素の遺伝子を含む形質転換作物の例としては、LibertyLink (登録商標)(トウモロコシ、綿、大豆)、RoundupReady (登録商標)(トウモロコシ、セイヨウアブラナ、綿、大豆)が挙げられる。
本発明に従う方法により防除可能な有害動物は、例えば虫、ダニ目の代表的なもの、および線形動物門の代表的なもの、特に、学名の属または属種で以下に列記したものを含む。
【0015】
鱗翅目(Lepidoptera)から Acleris、Adoxophyes、特に Adoxophyes reticulana; Aegeria、Agrotis、特に Agrtis spinifera; Alabama argillaceae、Amylois、Anticarsia gemmatalis、Archips、Argyrotaenia、Autographa、Busseola fusca、Cadra cautella、Carposina nipponensis、Chilo、Choristoneura、Clysia ambiguella、Cnaphalocrocis、Cnephasia、Cochylis、Coleophora、Crocidolomia binotalis、Cryptophlebia leucotreta、Cydia、特に Cydia pomonella; Diatraea、Diparopsis castanea、Earias、Ephestia、特に E.khueniella; Eucosma、Eupoecilia ambiguella、Euproctis、Euxoa、Grapholita、Hedya nubiferana、Heliothis、特に H.virescena および H.zea; Hellula undalis、Hyphantria cunea、Keiferia lycopersicella、Leucoptera scitella、Lithocollethis、Lobesia、Lymantria、Lyonetia、Malacosoma、Mamestra brassicae、Manduca sexta、Operophtera、Ostrinia nubilalis、Pammene、Pandemis、Panolis flammea、Pectinophora、Phthorimaea operculella、Pieris rapae、Pieris、Plutella xylostella、Prays、Scirpophaga、Sesamia、Sparganothis、Spodoptera littoralis、Synanthedon、Thaumetopoea、Tortrix、Trichoplusia ni および Yponomeuta、
甲虫目(Coleoptera)から、例えば Agriotes、Anthonomus、Atomaria linearis、Chaetocnema tibialis、Cosmopolites、Curculio、Dermestes、Diabrotica、Epilachna、Eremnus、Leptinotarsa decemlineata、Lissorhoptrus、Melolontha、Oryzaephilus、Otiorhynchus、Phlyctinus、Popillia、Psylliodes、Rhizopertha、Scarabeidae、Sitophilus、Sitotroga、Tenebrio、Tribolium および Trogoderma、
直翅目(Orthoptera)から、例えば Blatta、Blattella、Gryllotalpa、Leucophaca maderae、Locusta、Periplaneta および Schistocerca、
シロアリ目(Isoptera)から、例えば Reticulitermes、
チャタテムシ目(Psocoptera)から、例えば Liposcelis、
シラミ目(Anoplura)から、例えば Haematopinus、Linognathus、Pediculus、Pemphigus および Phylloxera、
ハジラミ目(Mallophaga)から、例えば Damalinea および Trichodectes、
アザミウマ目(Thysanoptera)目から、例えば Frankliniella、Hercinothrips、Taeniothrips、Thripas palmi、Thrips tabaci および Scirtothrips aurantii、
半翅目異翅類(Heteroptera)から、例えば Cimex、Diatantiella theobroma、Dysdercus、Euchistus、Eurygaster、Leptocorisa、Nezara、Piesma、Rhodnius、Sahlbergella singularis、Scotinophara および Triatoma、
半翅目同翅類(Homoptera)から、例えば Aleurothrixus floccosus、Aleyrodes brassicae、Aonidiella aurantii、Aphididae、Aphis craccivora、A.fabae、A.gossypii; Aspidiotus、Bemisia tabaci、Ceroplaster、Chrysomphalus aonidium、Chrysomphalus dictyospermi、Coccus hesperidum、Empoasca、Eriosoma lanigerum、Erythroneura、Gascardia、Laodelphax、Lecanium corni、Lepidosaphes、Macrosiphus、Myzus、特に M.persicae; Nephotettix、特に N.cincticeps; Nilaparvata、特に N.lugens; Paratoria、Pemphigus、Planococcus、Pseudaulacaspis、Pseudococcus、特に P.fragilis、P.citriculus および P.comatocki; Psylla、特に P.pyri; Pulvinaria aethiopica、Quadraspidiotus、Rhopalosiphum、Saissetia、Scaphoideus、Schizaphis、Sitobion、Trialeurodes vaporariorum、Trioza erytreae および Unaspis citri、
膜翅目(Hymenoptera)から、例えば Acromyrmex、Atta、Cephus、Diprion、Diprionidae、Gilpinia polytoma、Hoplocampa、Lasius、Monomorium pharaonis、Neodiprion、Solenopsis および Vespa、
双翅目(Diptera)から、例えば Aedes、Antherigona soccata、Bibio hortulanus、Calliphora erythrocephala、Ceratitis、Chrysomyia、Culex、Cuterebra、Dacus、Drosophila melanogaster、Fannia、Gastrophilus、Glossina、Hypoderma、Hyppobosca、Liriomyza、Lucilia、Melanagromyza、Musc、Oestrus、Orseolia、Oscinella frit、Pegomyia hyoscyami、Phorbia、Rhagoletis pomonella、Sciara、Stomoxys、Tabanus、Tannia および Tipula、
ノミ目(Siphonaptera)から、例えば Ceratophyllus および Xenopsylla cheopis、
シミ目(Thysanura)から、例えば Lepisma saccharina、
ダニ目(Acarina)から、例えば Acarus siro、Aceria sheldoni; Aculus、特に A.schlechtendali; Amblyomma、Argas、Boophilus、Brevipalpus、特に B.caiflornicus および B.phoenicis; Bryobia praetiosa、Calipitrimerus、Chorioptes、Dermanyssus gallinae、Eotetranychus、特に E.carpini および E.orientalis; Eriophyes、特に E.vitis; Hyalomma、Ixodes、Olygonychus pratensis、Ornithodoros、Panonychus、特に P.ulmi および P.citri; Phyllocoptruta、特に P.oleivora; Polyphagotarsonemus、特に P.latus; Psoroptes、Rhipicephalus、Rhizoglyphus、Sarcoptes、Tarsonemus および Tetranychus、とりわけ T.urticae、T.cinnabarinus および T.kanzawai、
線形動物門(Nematoda)の代表的なもの、
(1)root knot線虫類、シスト形成線虫類、stem eelworms および foliar nematodes からなる群から選ばれた線虫類、
(2)Anguina; Aphelenchoides; Ditylenchus; Globodera、例えば Globodera rostochiensis; Heterodera、例えば Heterodera avenae、Heterodera glycines、Heterodera schachtii または Heterodera trifolii; Longidorus; Meloidogyne、例えば Meloidogyne incognita または Meloidogyne javanica; Pratylenchus、例えば Pratylenchus neglectans または Pratylenchus penetrans; Radopholus、例えば Radopholus similis; Trichodorus; Tylenchulus、例えば Tylenchulus semipenetrans; および Xiphinema からなる群から選ばれた nematodes、
(3)Heterodera、例えば Heterodera glycines; および Meloidogyne、例えば Meloidogyne incognita からなる群から選ばれた nematodes、
【0016】
本発明は、有用植物、特にその形質転換植物の全体あるいはその一部、例えば種子、果実、花、茎、根、塊茎また塊根等に発生する上記の有害生物を防除する方法を提供する。これらの有害生物に対する防除は、農薬組成物を適用された後に形成される植物の部分にも及ぶ。
【0017】
本発明に従う方法は、例えば、イネ、トウモロコシまたはモロコシ等の穀類において;果実、例えばリンゴ、西洋ナシ、プラム、桃、アーモンド、サクランボまたはイチゴ、キイチゴおよびブラックベリー等の石果、梨状果、および柔果において;ヒラマメ、エンドウまたは大豆等のマメ科植物において;セイヨウアブラナ、マスタード、ポピー、オリーブ、ヒマワリ、ココナッツ、ヒマシ油植物、カカオまたはピーナッツ等の油作物において;カボチャ、キュウリまたはメロン等のカボチャ科において;綿、亜麻、大麻またはジュート等の繊維植物において;オレンジ、レモン、グレープフルーツまたはタンジェリン等の柑橘類果実において;ホウレンソウ、レタス、アスパラガス、キャベツ種、ニンジン、タマネギ、トマト、ジャガイモ、ビートまたはトウガラシ等の野菜において;アボガド、シナモンまたはカンファー等の月桂樹科において;またはタバコ、ナッツ、コーヒー、ナス植物、サトウダイコン、茶、コショウ、ブドウの木、ホップ、バナナ科、天然ゴム植物、サツマイモ、アルファルファ、パパイヤまたは鑑賞植物において;主に、トウモロコシ、穀類、大豆、トマト、綿、ジャガイモ、イネ、サトウダイコンにおいて;特に、イネ・トウモロコシ・大豆・サトウダイコンにおける有害生物を防除するために有利に使用可能である。
【0018】
本発明者らは、上記有害生物の防除においてジノテフランの効果が期待される使用量の減少、殺虫スペクトルの拡大、作物の育成速度の向上、作物商品価値としての外観の向上、収量の向上、有益生物への影響の低減等への望ましい効果の単独または複数が発現することを認めた。
【0019】
ジノテフランはそれ自体で適用することも可能であるが、適用する植物や環境に従い、適宜加工された形態で適用することができる。加工の例ととしては、乳化可能な濃縮物、懸濁可能な濃縮物、直接スプレー可能または希釈可能な溶液、拡展可能なペースト、希釈したエマルション、水和剤、溶解性粉末、分散性粉末、水和剤、粉剤、粒剤またはジノテフランを含むポリマー性物質におけるカプセル化物等が挙げられる。
【0020】
ジノテフランは、これらの組成物において、従来から製剤化に用いられる各種助剤等と共に使用が可能である。
【0021】
用いられる製剤化助剤は、例えば、各種の担体、溶媒、安定剤、徐放化助剤、着色剤類、および界面活性物質(界面活性剤)等である。通常、農薬製剤として従来から用いられる適当な担体および助剤と解釈される。以下に例を挙げるがこれらに限定されるものではない。
【0022】
担体としては、通常農薬製剤に使用されるものであるならば固体または液体のいずれでも使用でき、特に限定されるものではない。例えば、固体担体としては、ベントナイト、モンモリロナイト、カオリナイト、珪藻土、白土、タルク、クレー、バーミキュライト、石膏、炭酸カルシウム、シリカゲル、硫安等の無機物質、大豆粉、鋸屑、小麦粉、乳糖、ショ糖、ぶどう糖等の植物性有機物質および尿素等が挙げられる。液体担体としては、トルエン、キシレン、クメン等の芳香族炭化水素類およびナフテン類、n−パラフィン、iso−パラフィン、流動パラフィン、ケロシン、鉱油、ポリブテン等のパラフィン系炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジオキサン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、エタノール、プロパノール、エチレングリコール等のアルコール類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートなどのカーボネート類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性溶媒および水等が挙げられる。
【0023】
更に本発明化合物の効力を増強するために、製剤の剤型、処理方法等を考慮して目的に応じてそれぞれ単独に、または組み合わせて次のような補助剤を使用することもできる。
【0024】
補助剤として通常農薬製剤に乳化、分散、拡展、湿潤などの目的で使用される界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン樹脂酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸ジエステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルのホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、アルキルポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーエーテル、アルキルフェニルポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンビスフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンベンジルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンスチリルフェニルエーテル、高級アルコールのポリオキシアルキレン付加物およびポリオキシエチレンエーテルおよびエステル方型シリコンおよびフッ素系界面活性剤などの非イオン性界面活性剤、アルキルサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート、ポリオキシエチレンベンジルフェニルエーテルサルフェート、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルサルフェート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーサルフェート、パラフィンスルホネート、アルカンスルホネート、AOS、ジアルキルスルホサクシネート、アルキルベンゼンスルホネート、ナフタレンスルホネート、ジアルキルナフタレンスルホネート、ナフタレンスルホネートのホルマリン縮合物、アルキルジフェニルエーテルジスルホネート、リグニンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルスルホネート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホコハク酸ハーフエステル、脂肪酸塩、N−メチル−脂肪酸サルコシネート、樹脂酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレンフェニルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレンジアルキルフェニルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレンベンジル化フェニルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレンベンジル化フェニルフェニルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレンスチリル化フェニルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレンスチリル化フェニルフェニルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーホスフェート、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールイミン、アルキルホスフェート、トリポリ燐酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤、アクリル酸とアクリロニトリル、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸から導かれるポリアニオン型高分子界面活性剤、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、メチルポリオキシエチレンアルキルアンモニウムクロライド、アルキルN−メチルピリジニウムブロマイド、モノメチル化アンモニウムクロライド、ジアルキルメチル化アンモニウムクロライド、アルキルペンタメチルプロピレンアミンジクロライド、アルキルジメチルベンザルコニウムクロライド、ベンゼトニウムクロライドなどのカチオン性界面活性剤、ジアルキルジアミノエチルベンタイン、アルキルジメチルベンジルベンタインなどの両性界面活性剤などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0025】
結合剤としては、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、アラビアゴム、CMCナトリウム、ベントナイトなどがあげられる。崩壊剤としてCMCナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、安定剤としてはヒンダードフェノール系の酸化防止剤やベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系の紫外線吸収剤等があげられる。pH調整剤としてリン酸、酢酸、水酸化ナトリウムを用いたり、防菌防黴のために1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン等の工業用殺菌剤、防菌防黴剤等を添加することもできる。増粘剤としてはキサンタンガム、グアーガム、CMCナトリウム、アラビアゴム、ポリビニルアルコール、モンモリロナイトなどを使用することもできる。消泡剤としてシリコーン系化合物、凍結防止剤としてプロピレングリコール、エチレングリコール等を必要に応じて使用しても良い。
【0026】
本発明は、ジノテフラン以外の他の殺虫剤、殺ダニ剤および/又は殺菌剤等の活性成分を加えることにより実質的に拡張することが可能である。新たに加えられる活性成分は適宜選択が可能であり、以下の化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
殺虫剤として、アジンホス・メチル、アセフェート、イソキサチオン、イソフェンホス、エチオン、エトリムホス、オキシジメトン・メチル、オキシデプロホス、キナルホス、クロルピリホス、クロルピリホスメチル、クロルフェンビンホス、シアノホス、ジオキサベンゾホス、ジクロルボス、ジスルホトン、ジメチルビンホス、ジメトエート、スルプロホス、ダイアジノン、チオメトン、テトラクロルビンホス、テメホス、テブピリムホス、テルブホス、ナレッド、バミドチオン、ピラクロホス、ピリダフェンチオン、ピリミホスメチル、フェニトロチオン、フェンチオン、フェントエート、フェンスルフォチオン、フルピラゾフォス、プロチオホス、プロパホス、プロフェノホス、ホキシム、ホサロン、ホスメット、ホルモチオン、ホレート、マラチオン、メカルバム、メスルフェンホス、メタミドホス、メチダチオン、パラチオン、メチルパラチオン、モノクロトホス、トリクロルホン、EPN、イサゾホス、イサミドホス、カズサホス、ジアミダホス、ジクロフェンチオン、チオナジン、フェナミフォス、ホスチアゼート、ホスチエタン、ホスホカルブ、DSP、エトプロホス、アラニカルブ、アルジカルブ、イソプロカルブ、エチオフェンカルブ、カルバリル、カルボスルファン、キシリルカルブ、チオジカルブ、ピリミカーブ、フェノブカルブ、フラチオカルブ、プロポキスル、ベンダイオカルブ、ベンフラカルブ、メソミル、メトルカルブ、XMC、カルボフラン、 アルドキシカルブ、オキサミル、アクリナトリン、アレスリン、エスフェンバレレート、エンペントリン、シクロプロトリン、シハロトリン、ガンマ・シハロトリン、ラムダ・シハルトリン、シフルトリン、ベータ・シフルトリン、シペルメトリン、アルファシペルメトリン、ゼタ・シペルメトリン、シラフルオフェン、テトラメトリン、テフルトリン、デルタメトリン、トラロメトリン、ビフェントリン、フェノトリン、フェンバレレート、フェンプロパトリン、フラメトリン、プラレトリン、フルシトリネート、フルバリネート、フルブロシスリネート、ペルメトリン、レスメトリン、メトフルトリン、ジメフルトリン、プロフルトリン、エトフェンプロックス、カルタップ、チオシクラム、ベンズルタップ、アセタミプリド、イミダクロプリド、クロチアニジン、ジノテフラン、チアクロプリド、チアメトキサム、ニテンピラム、クロルフルアズロン、ジフルベンズロン、テフルベンズロン、トリフルムロン、ノバルロン、ノビフルムロン、ビストリフルロン、フルアズロン、フルシクロクスロン、フルフェノクスロン、ヘキサフルムロン、ルフェヌロン、クロマフェノジド、テブフェノジド、ハロフェノジド、メトキシフェノジド、ジオフェノラン、シロマジン、ピリプロキシフェン、ブプロフェジン、メトプレン、ハイドロプレン、キノプレン、トリアザメート、エンドスルファン、クロルフェンソン、クロルベンジレート、ジコホル、ブロモプロピレート、アセトプロール、フィプロニル、エチプロール、ピレトリン、ロテノン、硫酸ニコチン、アバメクチン、BT剤、スピノサド、アセキノシル、アミドフルメット、アミトラズ、エトキサゾール、キノメチオネート、クロフェンテジン、酸化フェンブタスズ、ジエノクロル、シヘキサチン、スピロジクロフェン、スピロメシフェン、テトラジホン、テブフェンピラド、ビナパクリル、ビフェナゼート、ピリダベン、ピリミジフェン、フェナザキン、フェノチオカルブ、フェンピロキシメート、フルアクリピリム、フルアジナム、フルフェンジン、ヘキシチアゾクス、プロパルギット、ベンゾメート、ポリナクチン複合体、ミルベメクチン、ルフェヌロン、メカルバム、メチオカルブ、メビンホス、ホルメタネート、ハルフェンプロックス、アザディラクチン、ジアフェンチウロン、インドキサカルブ、エマメクチン ベンゾエート、オレイン酸カリウム、オレイン酸ナトリウム、クロルフェナピル、トルフェンピラド、ピメトロジン、フェノキシカルブ、ヒドラメチルノン、ヒドロキシプロピルデンプン、ピリダリル、フルフェネリム、フルベンジアミド、フロニカミド、メタフルミゾン、レピメクチン、TPIC、塩酸レバミゾール、酒石酸モランテル、ダゾメット、メタム・ナトリウム
また、一般式(A)(化1)
【0028】
【化1】

【0029】
[式中、R11はメチル基またはクロル基を表し、R12はメチル基、クロル基、ブロモ基またはシアノ基を表し、R13はクロル基、ブロモ基、トリフルオロメチル基またはシアノメトキシ基を表し、R14はメチル基またはイソプロピル基を表す。]で表される化合物が挙げられる。この化合物はWO2003315519に記載されており、殺虫活性並びに製造法が記載されている。
【0030】
並びに、一般式(B)(化2)
【0031】
【化2】

【0032】
[式中、R21は1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロ−2−プロピル基または1,1,2,2,3,3,3−ヘプタフルオロ−1−プロピル基を表す。]で表される化合物。この化合物は特開2001−342186に記載されており、殺虫活性並びに製造法が記載されている。
【0033】
殺菌剤として、チフルザミド、フルトラニル、メプロニル、ペンシクロン、エタボキサム、オキシカルボキシン、カルボキシン、シルチオファム、カルプロパミド、ジクロシメット、トリシクラゾール、ピロキロン、フェノキサニル、フサライド、アゾキシストロビン、メトミノストロビン、オリサストロビン、クレソキシムメチル、フルオキサストロビン、トリフロキシストロビン、ジモキシストロビン、ピラクロストロビン、ピコキシストロビン、カスガマイシン、バリダマイシン、ブラストサイジンSベンジルアミノベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシン、テクロフタラム、オキシテトラサイクリン、ストレプトマイシン、ブラストサイジンS、ミルディオマイシン、ポリオキシン類、フェリムゾン、フェナリモル、ピリフェノックス、ヌアリモル、ブピリメート、シメコナゾール、フラメトピル、イプコナゾール、トリフルミゾール、プロクロラズ、ペフラゾエート、イマザリル、イミベンコナゾール、エトリジアゾール、エポキシコナゾール、オキスポコナゾールフマル酸塩、ジニコナゾール、ジフェノコナゾール、シプロコナゾール、チフルザミド、テトラコナゾール、テブコナゾール、トリアジメノール、トリアジメホン、トリティコナゾール、ビテルタノール、ヒメキサゾール、フェンブコナゾール、フルキンコナゾール、フルシラゾール、フルトリアフォル、プロチオコナゾール、プロピコナゾール、ブロムコナゾール、ヘキサコナゾール、ペンコナゾール、メトコナゾール、銅、ノニルフェノールスルホン酸銅、塩基性塩化銅、塩基性硫酸銅、オキシン銅、DBEDC、無水硫酸銅、水酸化第二銅、チオファネートメチル、ベノミル、チアベンダゾール、チオファネート、カルベンダジム、フベリダゾール、EDDP、IBP、ホルペット、トルクロホスメチル、ホセチル、ジノキャップ、ピラゾホス、メタラキシル、オキサジキシル、ベナラキシル、メタラキシルーM、イプロジオン、プロシミドン、ビンクロゾリン、クロゾリネート、チウラム、マンゼブ、プロピネブ、ジネブ、メチラム、マンネブ、ジラム、アンバム、ヒドロキシイソキサゾール、メタスルホカルブ、クロルピクリン、フルスルファミド、ダゾメット、メチルイソチオシアネート、ヒドロキシイソキサゾールカリウム、エクロメゾール、1,3−ジクロロプロペン、カーバム、TPN、キャプタン、メパニピリム、シプロジニル、ピリメタニル、ナタネ油、マシン油、硫黄、石灰硫黄合剤、硫酸亜鉛、フェンチン、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、次亜塩素酸塩、ジメトモルフ、フェンプロピジン、フェンプロピモルフ、スピロキサミン、トリデモルフ、ドデモルフ、フルモルフ、オキソリニック酸、シュードモナスCAB−02、トリコデルマ・アトロビリデ、フルジオキソニル、DPC、4−[3−(3,4−ジメトキシフェニル)−3−(4−フルオロフェニル)アクリロイル]モルホリン、アニラジン、イプロバリカルブ、イマザリル・S、イミノクタジンアルベシル酸塩、キノキシフェン、キノメチオネート、金属銀、キントゼン、グアザチン、クロロタロニル、クロロネブ、シアゾファミド、ジエトフェンカルブ、ジクロフルアニド、ジクロラン、ジチアノン、ジフルメトリム、ジメチリモル、シモキサニル、シルチオファム、スピロキサミン、ゾキサミド、チアジアジン、ドジン、トリホリン、トリルフルアニド、ニトロタルイソプロピル、ファモキサドン、フェナミドン、フェニトロパン、フェンピクロニル、フェンヘキサミド、フォルペット、フルアジナム、フルオピコリド、フルオルイミド、プロパモカルブ、プロパモカルブ塩酸塩、プロピレングリコール脂肪酸エステル、プロヘキサジオンカルシウム塩、ベンチアゾール、ベンチアバリカルブイソプロピル、ミクロブタニル、有機ニッケル、レスベラトロール、ジクロメジン、イミノクタジン酢酸塩、イソプロチオラン、チアジニル、プロベナゾール、アシベンゾラルSメチルで表される化合物。
【0034】
特に好ましい成分は、例えば、アバメクチン、エマメクチン、スピノサド、ピメトロジン、フェノキシカーブ、フィプロニル、ピリプロキシフェン、ダイアジノン、ジアフェンチウロン、ヒドロキシイソキサゾール、または一般式(A)(化3)
【0035】
【化3】

【0036】
[式中、R11はメチル基またはクロル基を表し、R12はメチル基、クロル基、ブロモ基またはシアノ基を表し、R13はクロル基、ブロモ基、トリフルオロメチル基またはシアノメトキシ基を表し、R14はメチル基またはイソプロピル基を表す。]で表される化合物(この化合物はWO2003315519に記載されており、殺虫活性並びに製造法が記載されている。)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
一般に、ジノテフランは0.1〜99%の含量で適用される。助剤を含む場合は、1〜99.9%、特に5〜99.9%の少くとも一つの固体または液体の助剤を含み、一般に、組成物の0〜25%、特に0.1〜20%は、界面活性剤であってもよい(個々の場合の「%」は、質量%(重量%)を意味する)。商業的な製品としては、濃縮された組成物がより好ましいが、適用される場合には適宜、上記の範囲以上に希釈した組成物を用いてもよい。
【0038】
本発明に従う組成物はその目的に応じて、例えば特定の粒径にするため、公知の方法で、助剤または複数の助剤との混合前後に、その活性成分、助剤および/またはその混合物を摩砕、篩いがけおよび/又は圧縮等をすることにより、および/又はその活性成分を充分にその助剤または複数の助剤と混合および/又は摩砕することにより製造される。
【0039】
上記したタイプの有害生物を防除するための本発明に従う方法は、適用作物や環境に応じ、および/または慣行に従い、当業者に公知の方法で適用することができる。例えば、その組成物を、スプレー、湿潤、噴霧、粉体散布、塗布、種子粉衣、散布または注入することにより行われる。ジノテフランの適用量は、形質転換作物の種類、対象とする有害生物、葉、種子、土壌等の適用方法、適用時期、土壌構成、作物の栽培される気候、温度等により広範囲から選択される。その範囲は一般に1〜2000g/ha、特に10〜1000g/ha、好ましくは10〜500g/ha、さらに好ましくは10〜200g/haの適用量である。
【0040】
本発明は有害生物および/またはその環境に適用できるが、好ましい適用方法は、葉への適用(葉適用)である。
【0041】
しかしながら、植物の部位を液体製剤で灌注することにより、またはその活性成分を土壌中で固体の形、例えば粒剤の形で適用すること(土壌適用)により、土壌から根系を介して植物に入れることもできる。
【0042】
本発明に従う組成物は、有害動物、特に、虫およびダニ目の代表的なものから、形質転換作物の繁殖材料、例えば種子、果実、塊茎を含む地下茎、塊根、担体根または根、または植物切片等を保護することに適している。繁殖材料は適用に先立ち、その組成物で処理することが可能である。例えば種蒔きに先立ち活性成分を含む組成物で種子を粉衣することができる。また、その種子を活性成分を含む液体組成物に浸漬したり、活性成分を固体の組成物で種子にコーティングしてもよい。繁殖材料に適用する際には、その組成物は適用部位、例えば、種蒔きの間の種すじ内へ適用してもよい。植物繁殖材料のこれらの処理方法、およびこのように処理された植物繁殖材料も、本発明の範囲内である。
【実施例】
【0043】
本発明に従う方法で使用可能なジノテフランの製剤は、通常農薬製剤に使用される公知の方法で調製が可能であり、例えば以下の方法に従い製造が可能である。
製剤例1: 本発明化合物10部、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム2部、リグニンスルホン酸ナトリウム1部、ホワイトカーボン5部、ケイソウ土82部、以上を均一に攪拌混合して水和剤100部を得た。
【0044】
製剤例2:本発明化合物2部、ホワイトカーボン2部、リグニンスルホン酸ナトリウム2部、ベントナイト94部、以上を均一に粉砕混合後、水を加えて混練し、造粒乾燥して粒剤100部を得た。
【0045】
製剤例3:本発明化合物20部およびポリビニルアルコールの20%水溶液5部を充分攪拌混合した後、キサンタンガムの0.8%水溶液75部を加えて再び攪拌混合してフロアブル剤100部を得た。
【0046】
実施例1:Nephotettix cincticepsに対する作用
区画(a)上のδ−エンドトキシンCryIA(b)を発現しているイネ植物と、区画(b)上の形質転換を行っていないイネ植物とを400ppmのジノテフランを含む製剤例1でスプレーする。その直後に、区画(b)を、δ−エンドトキシンCryIA(b)400ppmを含むスプレー混合物で処理する。乾燥させた後、これらの植物を第2期および第3期のNephotettix cincticepsに感染させる。区画(a)および(b)の実生を20℃でインキュベートし、21日後に評価する。個体Nephotettix cincticepsに対する密度抑制は、区画(a)、と区画(b)の死虫数を比較することにより決定する。
Nephotettix cincticepsに対して区画(a)は高い防除効果が認められ他方、区画(b)は60%以下の防除効果であった。
【0047】
実施例2:Oulema oryzaeに対する作用
区画(a)上のδ−エンドトキシンCryIA(c)を発現しているイネ植物と、区画(b)上の形質転換を行っていないイネ植物とを200、100、50、10ppmのジノテフランを含む製剤例1でスプレーする。その直後に、区画(b)を、δ−エンドトキシンCryIA(c)400ppmを含むスプレー混合物で処理する。乾燥させた後、これらの植物にOulema oryzaeの成虫を感染させる。区画(a)および(b)の実生を20℃でインキュベートし、7日後に評価する。
Oulema oryzaeに対して区画(a)は高い防除効果が認められ他方、区画(b)は60%以下の防除効果であった。
【0048】
実施例3:Acdia leucomelasに対する作用
区画(a)上のδ−エンドトキシンCryIA(b)を発現しているサツマイモと、区画(b)上の形質転換を行っていないサツマイモとを200、100、50、10ppmのジノテフランを含む製剤例1でスプレーする。その直後に、区画(b)を、δ−エンドトキシンCryIA(b)400ppmを含むスプレー混合物で処理する。乾燥させた後、これらの植物にAcdia leucomelasの2令幼虫を感染させる。区画(a)および(b)の実生を25℃でインキュベートし、7日後に評価する。個体Acdia leucomelasに対する密度抑制は、区画(a)、と区画(b)の死虫数を比較することにより決定する。
Acdia leucomelasに対して区画(a)は高い防除効果が認められ他方、区画(b)は60%以下の防除効果であった。
【0049】
実施例4:Euscepes postfasciatusに対する作用
区画(a)上のδ−エンドトキシンCryIA(b)を発現しているサツマイモと、区画(b)上の形質転換を行っていないサツマイモとを200、100、50、10ppmのジノテフランを含む製剤例1でスプレーする。その直後に、区画(b)を、δ−エンドトキシンCryIA(b)400ppmを含むスプレー混合物で処理する。乾燥させた後、これらの植物にEuscepes postfasciatusの成虫を感染させる。区画(a)および(b)の実生を25℃でインキュベートし、2日後に評価する。個体Euscepes postfasciatusに対する密度抑制は、区画(a)、と区画(b)の死虫数を比較することにより決定する。
Euscepes postfasciatusに対して区画(a)は高い防除効果が認められ他方、区画(b)は60%以下の防除効果であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性成分として遊離形または農芸化学的に有用な塩の形のジノテフランを含む農薬組成物を、有害生物またはそれらの環境に適用することを特徴とする、形質転換作物における有害生物を防除する方法。
【請求項2】
活性成分として遊離形または農芸化学的に有用な塩の形のジノテフランを含み、少なくとも一つの他の物質を添加して処理上容易な形態に加工された農薬組成物を、有害生物またはそれらの環境に適用することを特徴とする、形質転換作物における有害生物を防除する方法。
【請求項3】
形質転換作物が処理されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
形質転換作物がトウモロコシ、穀類、大豆、トマト、綿、ジャガイモ、イネ、サトウダイコンから選ばれる一種である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
形質転換作物の繁殖材料が処理されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ジノテフランを含む農薬組成物が処理されることを特徴とする形質転換作物の繁殖材料。

【公開番号】特開2008−133236(P2008−133236A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−321400(P2006−321400)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】