説明

影響を受けた部分に代わる代替部位への刺激を介して運動制御を回復させるためのシステム

【課題】本発明は一般に、神経障害および発語障害を治療するための方法およびデバイスに関する。
【解決手段】神経障害によって影響を受けた患者の体内の部分の運動制御を回復させる方法であって、前記部分に代わる代替部位を刺激し、それによって前記影響を受けた部分の運動制御を回復させることを含み、前記代替部位を前記刺激することが、前記患者によって随意的に制御される方法について記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、神経障害および発語障害を治療するための方法およびデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
現在の医療技術で十分に対処されない、広範囲の神経疾患および障害が存在する。それらの中で、嚥下困難は、人々を誤嚥性肺炎のリスクにさらす、特に生命を危うくする障害である。誤嚥性肺炎のリスクにさらされた患者は、17%の3年超生存率を有する(Pick等、1996年)。米国内の300万を超える人々が、脳卒中、外傷性脳損傷、脳腫瘍、パーキンソン病、多発性硬化症、および他の神経疾患などの神経疾患または障害の結果として嚥下困難を有し、米国では毎年、30万を超える人々が、神経疾患または障害の結果として嚥下障害を発症していると推定される。神経疾患または障害のある患者の50%超が、その嚥下の中枢神経系制御を喪失しており、その結果、舌骨喉頭複合体(hyolaryngeal complex)の挙上が遅延または低下し、そのことが、患者が食物または液体が気道に入らないようにすることを可能にさせないため、誤嚥性肺炎のリスクにさらされている(Lundy等、1999年)。通常は、嚥下中に舌骨および喉頭が約20mmだけ引き上げられて、喉頭蓋の反転をもたらし、上部食道括約筋が開くのを助ける。多くの治療技法が、舌骨喉頭の挙上を改善すること、および嚥下困難における誤嚥のリスクを低減することを目指している(Logemann、1998年)。
【0003】
特に脳卒中および他の神経疾患の結果としての他の多くの障害が、治療を必要とする。こうした治療の必要性に対処している中で、体性感覚刺激が脳卒中後の手の運動の回復を促進できることが研究で実証されてきた(例えば、Conforto等、2002年;van Dijk等、2002年;Struppler等、2003年;Peurala等、2002年)。
【0004】
麻痺手に印加された体性感覚刺激が、脳卒中患者において、麻痺手のつまみ力に対する一過性の有益な効果があることを示してきた人もいる(Conforto、Kaelin-LangおよびCohen、2002年)。口中の口峡柱(faucial pillar)への電気刺激により、嚥下を誘発させることができる(Pommerenke、1927年)一方で、喉頭の感覚遮断(sensory block)が、正常な成人において、随意嚥下を激しく損なわせる(Jafari、Prince、KimおよびPaydarfar、2003年)ことが、これまでに示されてきた。咽頭刺激が、動物において、嚥下のための喉頭の閉鎖および挙上を開始させることができる(Jean、1984年)一方で、喉頭刺激が嚥下を誘発させる(Nishino、TagaitoおよびIsono、1996年)。ヒトでは、嚥下とは独立した期間中に中咽頭の感覚刺激がもたらされると、それが嚥下部内の皮質活動を高める(Fraser等、2003年;Hamdy等、2003年;M. Power等、2004年)が、嚥下困難患者では、後続の嚥下に恩恵をもたらさない(M. L. Power等、2006年)。したがって、この分野ではさらなる発見が必要である。
【0005】
嚥下困難などの神経筋障害の治療に向けて、広範な方法およびデバイスが呈示されている。重度の嚥下困難患者は、訓練を用いて、その嚥下中に神経筋刺激開始を調整することができるようになり、それによって、患者の誤嚥のリスクを大幅に低減させることができる。これは、図3に示してある。患者自身の嚥下を刺激と調和させるように患者を訓練することによって、訓練後の刺激なしで、患者の中枢随意制御が大幅に改善もする(p=0.0025)ことが分かった。これは、図4に示してある。被験者は、嚥下しようとするのと同時に刺激を誘発させるその能力を、迅速に改善することができた。正常者が、ボタン押圧の開始を、嚥下の咽頭構成要素に関する筋活動の開始と容易に自発的に調和させることができることを示す結果もある(Burnett等、2005年)。したがって、嚥下困難のある患者は、ボタン押圧などの筋運動を、嚥下の開始と調和させることができるようになる(C.L. Ludlow等、2005年)。他の諸実施形態では、他の筋運動も同様に、同じようにして迅速に学習される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第10/529,401号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態では、本発明は、神経障害によって影響を受けた患者の体内の部分の運動制御を回復させる方法であって、影響を受けた部分に代わる代替部位を刺激し、それによって影響を受けた部分の運動制御を回復させることを含み、代替部位を刺激することが、前記患者によって随意的に制御される方法に関する。神経障害は、脳外傷、脳卒中、パーキンソン病、脳性麻痺、脳腫瘍、先天異常、多発性硬化症、ALS、核上性麻痺、および脳出血などの状態に関連することができる。刺激は、振動性、触覚性、圧力、電気的、聴覚性、嗅覚性、味覚性、視覚性、温度、およびそれらの任意の組合せとすることができる。一実施形態では、刺激は振動触覚性である。
【0008】
別の実施形態では、本発明は、嚥下困難のある患者において誤嚥性肺炎のリスクを低減させる方法であって、そのような患者に、喉頭の上の喉部を刺激するデバイスを備える、嚥下を随意的に制御するための手段を提供することを含み、デバイスが、患者によって活性化され得る方法に関する。一実施形態では、このデバイスは、約30〜50Hzの周波数での振動刺激をもたらすバイブレータである。
【0009】
別の実施形態では、本発明は、嚥下困難のある患者において、嚥下の随意制御を改善させる方法であって、そのような患者に、喉頭の上の喉を刺激するデバイスを備える、嚥下を随意的に制御するための手段を提供することを含み、そのようなデバイスが、患者によって活性化されることができ、刺激が、反射性嚥下の惹起を強化する方法を対象とする。
【0010】
この実施形態では、患者がそのようなデバイスを、嚥下の咽頭期の直前に活性化させる。そのような患者は、随意運動制御訓練を受けた可能性がある。
【0011】
別の実施形態では、本発明は、発語運動制御障害のある患者を治療する方法であって、前記患者に、喉頭の上の喉の部分を刺激するデバイスを提供することを含み、デバイスが、そのような患者によって活性化されることができ、刺激が、発語を制御する筋肉内の活動を惹起させる方法に関する。
【0012】
別の実施形態では、本発明は、嚥下するように患者を訓練するためのシステムであって、患者に喉頭の上の喉の部分を刺激するデバイスを装着すること、患者にデバイスを活性化させるための手段を提供すること、および患者に、嚥下しようとする直前にデバイスを活性化させるように教示することを含むシステムに関する。
【0013】
別の実施形態では、本発明は、嚥下困難または発語障害のある患者を治療するためのデバイスであって、デバイスを患者の頸部の、患者の喉頭のほぼ上に取り付けるためのコネクタと、患者の喉頭の上の頸部に接触するための接触部と、少なくとも1つの刺激を患者の喉頭に印加するための刺激器と、患者の喉頭の上でデバイスの位置を移動させるための調整機構とを備えるデバイスに関する。図1に示される。調整機構は、デバイスの位置を、0.01〜10cm2の面積内、または0.25〜5cm2の面積内で移動させることができ、あるいは0.5〜2.5cm2の、または好ましくは約2cm2の面積を有することができる。
【0014】
別の実施形態では、本発明は、患者の喉頭の随意制御のためのデバイスであって、患者の喉頭にかかる圧力を監視するための運動センサと、圧電伸張受容器(piezoelectric stretch receptor)をさらに備える嚥下検出器と、運動センサに結合された、嚥下前に患者の喉頭に圧力を印加するための刺激器と、刺激器内に含まれたバッテリなどの電源と、刺激器に電気的に結合された1つまたは複数の生理学的センサと、実質的にスプーンの柄のような形でよい制御デバイスであって、患者が嚥下しようと、または話そうとする前に、信号を刺激器に送出するための、患者によって活性化される磁気増幅器をさらに備える制御デバイスと、刺激のタイプ、ペースおよび振幅を選択するための制御ボックスとを備えるデバイスに関する。制御デバイスは、任意のタイプのスイッチを有することができるが、好ましくは、ボタンの形をとるスイッチを有する。デバイスは、患者が使用していないときにときにボタンを保護するためのカバーをさらに備えることができる。
【0015】
別の実施形態では、本発明は、患者により制御される刺激を喉頭にもたらすための振動触覚刺激器であって、第1の周波数範囲を有する初期クロック信号を発生させるためのデジタルクロック発生器と、初期クロック信号を受け取るための、また第2の周波数範囲を有する連続したパルスを発生させるためのデジタル10進カウンタと、患者の喉頭に対して第3の周波数範囲を有する振動を発生させるための、連続したパルスに応答するモータとを備える振動触覚刺激器に関する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】代替感覚システムを使用して、随意嚥下再訓練を使用する様子を示す図である。
【図2】(ボタン押圧訓練後に)手の制御を使用して、嚥下の皮質制御を高めるのと同時に、(喉部の刺激からの)感覚入力の代替を使用して、脳幹回路を作動させることによって、随意嚥下と同時の反射性嚥下を誘発させる際に関与する神経回路を示す図である。
【図3】個々の患者の、嚥下中の誤嚥のリスクの程度を示す、刺激またはボタン押圧訓練なしの訓練前ベースライン合計得点と、嚥下を筋肉内刺激と調和させるためのボタン押圧訓練後の、訓練後合計得点とを示すグラフであり、より高い得点が、嚥下中の誤嚥のリスクがより大きいことを表すグラフである。
【図4】個々の患者の、ボタン押圧訓練前のベースラインでの、訓練前ベースライン嚥下NIH安全性得点(より高い得点が、嚥下中および訓練後に誤嚥のリスクがより大きいことを表す)と、嚥下を調整するためのボタン押圧トレーニング後の合計得点とを示すグラフであり、合計得点が大幅に低減したので、ボタン押圧訓練だけで嚥下の安全性を改善することができることを示すグラフである。
【図5】オフ刺激状態およびオン刺激状態の間の各参加者についての平均値を示す図であり、平均値が、頸部に対する高レベルの電気刺激による、y軸上での舌骨位置の頸部内への低下を示す図である。
【図6】高運動刺激「オン」中、次いで刺激が「オフ」にされた間と、それに続く刺激「オン」中の舌骨位置のトレースが、研究に参加した各参加者について示された様子を示す図であり、喉部に対する高レベルの電気刺激が、刺激が「オン」ときに舌骨を低下させるので、有害な影響を及ぼし、舌骨は、刺激が「オフ」のときにしか、頸部内の正常な位置に戻ることができず、この作用のため、高運動レベルの電気刺激が、嚥下に必要な舌骨の通常の挙上の妨げとなることを示す図である。
【図7】刺激なしの嚥下と、〜2mAでの低レベルの電気刺激を喉に対して印加した嚥下との関係の比較において見られる、個々の患者の誤嚥の低減を呈示する図であり、感覚レベルの刺激が、嚥下の安全性を高めることを示す図である。
【図8】運動レベルの刺激での、刺激を受けた嚥下および刺激されない嚥下中の個々の参加者の、NIH Swallowing Safety Scale(8A)上およびPenetration-Aspirationスケール(8B)上での評点を示す線グラフであり、各グラフは、この2つの状態におけるデータの範囲に自動スケール変更され、したがって(8A)は(8B)よりも大きなスケール上にあり、高運動レベル(>8mA)の刺激が、嚥下に恩恵をもたらさないことを示す線グラフである。
【図9】気管切開術を伴う抜管後に、上気道内の求心性神経刺激が低減し、また経口摂取が制限されて反射性嚥下の回復が制限されるため、患者を高い誤嚥のリスクにさらす、脳損傷後の各事象を概念化したものを示すグラフである。
【図10】電気表面神経筋刺激を用いた、Humbert等(検討中)の、正常なボランティアにおける測定された喉頭のピーク挙上(LYPEAKCHNG)、および嚥下中の舌骨のピーク挙上(HYPEAKCHNG)のプロットであり、運動レベルの表面電気刺激(8mA以上)が、健康な成人において、嚥下中の舌骨喉頭の挙上を低減させることを示すプロットである。
【図11A】本発明の一実施形態による振動触覚刺激器の図であり、振動触覚刺激器のブロック図である。
【図11B】本発明の一実施形態による振動触覚刺激器の図であり、振動触覚刺激器用回路の図である。
【図11C】本発明の一実施形態による振動触覚刺激器の図であり、クロックベースの順次バイブレータ制御を示す図である。
【図11D】本発明の一実施形態による振動触覚刺激器の図であり、振動触覚デバイス用のコントローラボックスの図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
嚥下困難のある患者が、嚥下する準備ができたと患者が感じたときを知らせるためにボタンを押圧するなどの運動行為習慣(motor act habituation)によって、嚥下の自発的な開始を改善し、したがって嚥下中に患者が誤嚥するリスクを軽減できることが分かった。この実施形態に関するいずれか1つの理論に束縛されることを望まないが、そのような運動訓練が、嚥下に関連する影響をもたらす患者の脳幹内の中枢パターン発生器を誘発させる感覚入力のため、脳の活性化を同時にもたらすと考えられる。この原理は、他の神経障害、それらに付随する運動行為習慣、および関連する感覚刺激に適用可能である。意図される神経障害は、脊髄でのまたは脳幹内での、求心性経路と遠心性経路の間の相互作用が関係する反射運動、ならびに脳半球の一次運動皮質内のより高次の相互作用を含む。この原理は、吃音や喉頭ジストニーなどのさまざまな発語運動制御障害の治療にも適用可能である。これは、図2に示してある。
【0018】
嚥下反射の惹起および嚥下の安全性は、上気道内の感覚機械受容器(sensory mechanoreceptor)から脳への感覚フィードバックに依存する(Jafari、Prince、KimおよびPaydarfar、2003年)。感覚入力が取り上げられた場合、人はもはや嚥下することができないと感じ、嚥下中の誤嚥が大幅に増加する状態にある(Jafari、Prince、KimおよびPaydarfar、2003年)。脳卒中後に嚥下困難を有する患者は、上気道内で刺激を感知するその能力を喪失してしまっている(Aviv等、1996年;Aviv、Sacco、Mohr等、1997年;Aviv、Sacco、Thomson等、1997年)。一実施形態では、本発明は、(約2mAの)低レベルの電気感覚刺激を喉にもたらすことに関する。これにより、図7に示すように、重度の嚥下障害のある患者における誤嚥のリスクが大幅に低減する(C. L. Ludlow等、2006年)。
【0019】
本発明の方法は、挿管に関連する嚥下困難に適用可能である。多くの患者が、脳損傷または脳卒中による意識喪失後、あるいは冠動脈バイパス移植後に、換気用に気道を維持するために挿管される。患者が認知機能を回復したとき、気管内チューブの抜管が行われる。現時点では、嚥下反射が低減されることが分かっている(de Larminat、Montravers、DureuilおよびDesmonts、1995年)。恐らく、この一因となるいくつかの要因がある。まず、上気道から脳への感覚フィードバックが、場合によっては気管内チューブによる粘膜損傷の結果、上気道内粘膜の感覚機能が変化することにより低減され、感覚器またはそうした感覚器に供給する神経終末が、粘膜にかかる気管内チューブの圧力、または結果として生ずる上気道内の浮腫のため低減される。一部の患者では、気管内チューブが(1週間を超える)長期間定位置にあるとき、組織の肉芽化/潰瘍化が生ずる。そのような患者はしばしば、抜管するとすぐに、十分な気道をもたらすために、気管切開術を受ける。抜管後のこの期間中、患者において正常な嚥下反射が低減され、それによって患者が患者自身の唾液を誤嚥するリスクが増大することが示されてきた(de Larminat、Montravers、DureuilおよびDesmonts、1995年)。嚥下反射の喪失に加えて、そのような患者が気管切開術を受ける場合、下咽頭を通る空気流が不足するため、患者の上気道への感覚入力がさらに低減される。さらに、そのような患者はしばしば、誤嚥を防止するために、制限された経口摂取状態に置かれる。そのような患者は、「絶食」(NPO)状態にある結果嚥下しておらず、鼻腔栄養チューブを通じて、または長期間経腸手段によって数日または数週間栄養補給されることがある。これらの要因全てが、反射性嚥下を低減させる。この実施形態の目的は、嚥下の惹起を助けると共に、患者の喪失した反射性嚥下の代わりとなるように、嚥下を随意的に制御するように患者を訓練するための代替知覚を提供することである。これらの事象は、図9に示してある。
【0020】
感覚入力の喪失、起こり得る粘膜損傷、および嚥下反射の低減がこのように組み合わさり、任意の脳損傷の嚥下に対する影響をさらに悪化させる。そのような患者は通常、患者自身の唾液を誤嚥する高いリスクにさらされているが、それにもかかわらず嚥下のリハビリテーションが、患者がNPO状態にあるため差し控えられる。患者が嚥下することが可能にならない結果、患者の嚥下の反射的および随意的な制御がどちらも喪失される。
【0021】
これが、予防的な感覚運動性の嚥下治療により、随意嚥下を強化することができる期間である。本発明によるシステムは、嚥下したいと望む直前にボタンを押圧するように患者を訓練し、また振動触覚刺激(または他の類似の感覚様式)を介した代替感覚入力を喉部にもたらし、それによって唾液を嚥下する随意制御を高める。抜管後の期間の早いうちに、随意嚥下を練習する機会を提供するために、嚥下再訓練システムが患者およびその介護者に提供される。代替感覚入力を脳にもたらすデバイスを用いて運動開始を練習することによって、患者は、随意嚥下制御を取り戻して、まずは患者自身の唾液を用いて安全に嚥下し、後に少量の食物を制御された随意的な形で摂取する準備をすることができる。嚥下に対する随意制御を備えることによって、患者は、その喪失した反射性嚥下を自発的嚥下に置き換えることができる。
【0022】
したがって、一実施形態では、本発明は、神経障害によって影響を受けた患者の体内の部分の運動制御を回復させる方法であって、その部分に代わる代替部位を刺激し、それによって影響を受けた部分の運動制御を誘発させることを含む方法に関する。「回復させること」とは、運動機能を随意的に制御する能力を得ることを意味する。随意的とは、患者の意のままであることを意味する。本発明は、運動機能を自発的に制御する能力を喪失または部分的に喪失した患者に適用することが意図されるが、自発的な運動制御を有することがそのために妨げられてきた先天異常をもって生まれた患者にも適用することが意図される。
【0023】
本発明の本質的な態様は、本発明のデバイスが、口または咽頭の内側ではなく、喉部に適用されることである。これについては、2つの重要な理由がある。第1に、口または中咽頭の内側に配置された任意のデバイスは、摂食の妨げになる。これは、Park等によって使用されたデバイス(Park、O'NeillおよびMartin、1997年)の場合であり、そのデバイスは、口の一部分内の粘膜を覆い、または口蓋を覆い、それによって、口中の食物または液体の移動を、舌と口蓋の間の感覚フィードバックを使用して制御するための正常な知覚を妨げる。感覚刺激を口腔部にもたらすために最近開発された別のデバイスが、Theurer等により開発されたものであり、そのデバイスでは、義歯床を構築して、それを下顎歯上に配置する必要がある。このデバイスは、口を閉じる妨げとなり、したがって、患者がその口中の液体を制御するのを困難にする。口中にデバイスを配置すると、患者における口腔感覚機能も変わり(Theurer、Bihari、BarrおよびMartin、2005年)、口咽頭の感覚欠損を既に有する人々における口腔感覚機能も変わる(HaggおよびLarsson、2004年;Aviv、Sacco、Mohr等、1997年;Setzen等、2003年)。類似のシステムが、プローブを口中に配置する必要がある、口中の口峡柱の電気刺激であり、これは、患者が嚥下することを不可能にし、したがってこの方法は、患者に嚥下するように求めるのとは別の時にしか使用することができなかった(Fraser等、2003年;Hamdy等、2003年;M. Power等、2004年)。
【0024】
第2に、嚥下困難のある多くの患者が、口腔感覚欠損を既に有する(Logemann、1993年;Logemann等、1995年)。したがって、既に知覚の面で損なわれた部分に刺激をもたらすと、影響を受けていない部分に対する感覚刺激よりも少ない、随意的および反射的な嚥下の感覚促進(sensory facilitation)がもたらされることが予想できる。したがって、本発明は、同時感覚促進を、喉部を覆う皮膚などの感覚欠損によって影響を受けていない部分にもたらし、振動センサを、喉部内の筋肉組織および軟骨内、特に甲状軟骨に備えることを目的とする。甲状軟骨および胸骨甲状筋の振動刺激は、発声に対する強力な効果を有することが既に示されている(Loucks、Poletto、SaxonおよびLudlow、2005年)。
【0025】
要約すると、本発明は、患者が嚥下の直前に刺激を患者自身で開始し、そのような刺激は、口腔および咽頭の運動、ならびに嚥下中の知覚の妨げにならない部分に向けられるという点で、他の以前の手法とは異なる。
【0026】
障害のある患者のタイプ
例えば任意の脳卒中、脳出血、外傷性脳損傷、脳術後、パーキンソン、多発性硬化症、先天異常、ALS、脳性麻痺、核上性麻痺、あるいは他の神経疾患または損傷、および随意運動制御に影響を及ぼす他の任意の神経障害、ならびに先天異常を経験した、ヒトおよび動物を含む、多種多様な患者を、本明細書において企図されるデバイスおよび方法を用いて治療することができる。「運動制御」という用語は、意のままに筋活動を制御する能力を意味する。例えば、一実施形態では、本発明は、意のままに嚥下する能力に適応可能である。したがって、嚥下する能力の完全なまたは部分的な喪失である嚥下困難のある患者を、本発明の方法を用いて治療することができる。
【0027】
本発明による方法は、嚥下困難を治療する際に有用であるため、言語障害を患う患者において、食物を誤嚥するリスクを低減させる際にも同様に有用である。というのも、それらの方法は、そのような患者に、嚥下に対するより大きな運動制御をもたらすためである。実施例1を参照されたい。
【0028】
本発明は、発語および発声に影響を及ぼす運動制御障害のある患者のための、随意制御の強化にも適用可能である。吃音者には通常、発語開始困難があり、患者が特に喉頭筋に対する随意制御の喪失を受けたとき、発語の「遮断」がある。随意制御のこうした喪失は、筋収縮または声帯運動の自発的開始の遅延として、あるいは慢性的な喉頭筋収縮または持続した声帯閉鎖による妨害として現れる。いくつかの研究が、吃音成人が発語中に運動感覚刺激または振動刺激に対するしきい値を増大させた可能性があることを示唆してきた(De NilおよびAbbs、1991年)。本発明のデバイスは、吃音者に対する振動感覚入力を高める。最近の研究では、吃音者が、発語中にその声帯振動の開始に遅延を有することが示された。本発明は、吃音者において、中枢神経系への振動触覚入力を増大させ、その発語の随意制御を高める。喉頭は、機械的変位が加えられると、帯状筋内の自己受容器を刺激して、反射的な胸骨甲状筋の収縮をもたらす。これは、外喉頭筋が高い筋紡錘密度を有し、伸張または振動刺激が、その部分の筋活動を高める働きをするためである。
【0029】
本発明は、痙攣性発声障害および喉頭ジストニーのある患者に関する随意制御の強化にも適用可能である。痙攣性発声障害は、喉頭限局性ジストニーであり、これは、吃音に類似した、発語中の発声異常を引き起こす。こうした患者は、発語中に発声を開始するのが特に困難である(BielamowiczおよびLudlow、2000年;C. L. Ludlow、Baker、NauntonおよびHallett、1988年;C. L. LudlowおよびConnor、1987年;C. L. Ludlow、Hallett、Sedory、FujitaおよびNaunton、1990年)。患者はしばしば、喉頭筋活動を開始するのが遅く、発語中に声帯振動を維持することに問題がある。多くの限局性ジストニーには、付随する感覚異常、および体性感覚部内の皮質反応の低減がある(Bara-Jimenez、Catalan、HallettおよびGerloff、1998年;Bara-Jimenez、Shelton、SangerおよびHallett、2000年)。増大された振動刺激を喉頭部にもたらすことによって、皮質体性感覚部への入力により、痙攣性発声障害のある人において発語の随意発声制御が高まる。
【0030】
吃音を治療する従来の方法では、話者の発語の変換聴覚入力、聴覚マスキング、あるいは遅延または周波数変換フィードバックを話者にもたらすために、多くのデバイスが開発されてきた。例には、Edinburgh Masker、Phonic Ear社によるDelayed Auditory Feedback、Pacemaster、Casa Futura System、Vocaltech、Fluency Master(登録商標)、およびSpeechEasy(登録商標)が含まれる。これらの1つであるVocalTech(登録商標)は、振動センサデバイスを含み、これは音声を検出し、次いで話者が既に話し始めてから、遅延聴覚信号または聴覚マスキングを話者に印加する目的で、喉に適用された。このデバイスは、その人の音声を喉上のセンサから拾い上げ、次いで聴覚マスキングまたは遅延された発語を、発語中のフィードバックを妨害するために、吃音者にもたらすものであった。
【0031】
本発明のさまざまな実施形態は、患者/利用者が、発語開始の随意的な誘発を助けるために、発語/発声開始前にボタンを押圧して振動触覚刺激を開始させるという点で、概念面でも機能面でも、従来のシステムとは異なる。対照的に、VocalTech(登録商標)は、その始動後に発語を検出するだけであり、患者/利用者自身の発語によってのみ作動される。VocalTech(登録商標)は、発語のための皮質制御中枢(cortical control center)への感覚入力を強化するための感覚デバイスではなく、患者/利用者の発語のフィードバックを妨害するためのマスキングデバイスであった。本発明は、日常の話す状況において使用される、患者/利用者のデバイスである。他の聴覚マスキングデバイス、あるいは遅延または周波数変換フィードバックデバイスが、吃音において使用されており、それらは、耳中で聴覚フィードバックまたは発語を変換する、あるいは話者自身の発語のフィードバックを遅延させるために使用されるものであり(例えば、SpeechEasy(登録商標)デバイス)、それらのデバイスは、概念面でも機能面でも、本発明とは異なる。
【0032】
一実施形態では、本発明は、吃音成人および発声障害のある人に、発声開始の誘発および制御、ならびに発語の維持を強化するために提供することができる、可搬式デバイスである。患者は、デバイスを購入して、日常生活において使用することによって、話す間の随意制御を強化することができる。
【0033】
刺激のタイプ
本発明の方法は、当業者に知られる任意のタイプの刺激の使用を企図する。そのような刺激は、振動刺激、圧力刺激、聴覚刺激、温度刺激、視覚刺激、電気刺激、嗅覚刺激、味覚刺激、および/またはそれらの組合せを含むがそれらに限定されない。刺激は、電気的、機械的、化学的、生物学的に制御しても、当業者に知られる他の任意の方法によって制御してもよい。
【0034】
刺激の位置
刺激のための部位は、所望の運動制御に応じて調整される。運動障害を引き起こす疾患の経験のある治療医師または他の関連保健専門家などの当業者なら、刺激をどこに位置付けるべきかを理解するであろう。嚥下困難の場合、喉頭の上の喉部に対する刺激が企図される。
【0035】
上記で論じたように、刺激部位は「代替部位」と呼ばれる。代替部位は、所望の反射を惹起することができる体の部分であるが、障害のある患者において反射を惹起することができる感覚部ではない。例えば、神経疾患後に嚥下困難のある患者は通常、口咽頭部内に感覚喪失があり(Aviv等、1996年;Aviv、Sacco、Mohr等、1997年;Aviv、Sacco、Thomson等、1997年)、口咽頭部は、正常なボランティアでは、誤嚥することなく安全な嚥下を惹起するために、知覚があることが通常求められる(Jafari、Prince、KimおよびPaydarfar、2003年)。嚥下困難のある患者(Park、O'NeillおよびMartin、1997年)、および正常なボランティア(Theurer、Bihari、Barr、およびMartin、2005年)において、嚥下を強化するために、感覚機能が低減した部分に刺激をもたらそうと試みた人もいるが、刺激に対するそれらの手法は、口腔内にデバイスを配置するものであり、そのデバイスが、食物および液体の摂食の妨げとなり、残っている残留感覚機能があればそれを妨害する。
【0036】
対照的に、本発明は、「代替部位」における感覚の誘発を使用し、代替部位は、上喉頭部内に含まれる喉頭部からの求心性神経の刺激など、反射性嚥下の惹起も強化する(Jean、1984年)、(Dubner、SessleおよびStorey、1978年)、(Dick、Oku、RomaniukおよびCherniack、1993年;Ootani、Umezaki、ShinおよびMurata、1995年)。基礎研究では、上喉頭神経内の求心性神経によって興奮する二次ニューロンが、特定の周波数で選択的に興奮しやすいこと(Mifflin、1997年)、また約30Hzの刺激が、脳幹内の嚥下システムを興奮させるのに好ましくあり得ること(Dubner、SessleおよびStorey、1978年)が示唆されている。患者はしばしば、口腔中および咽頭腔中の刺激に反応しないが、皮膚および皮膚の下にある喉頭軟骨を含む喉部への振動刺激に対しては依然として知覚がある。したがって、喉は代替部位であり、喉に感覚刺激をもたらすことによって、「意のままに」嚥下すること、または随意嚥下を惹起できることが可能になる。
【0037】
方法
本発明の方法によれば、神経障害によって影響を受けた患者が、スイッチを活性化して、代替部位を刺激し始める。例えば、嚥下困難のある患者では、患者が、喉頭部分の上の頸部に対して振動または圧力、あるいはその両方をもたらすデバイスを作動させるスイッチを活性化することができる。そのような活性化は、患者の嚥下の随意制御を促進するために、患者が嚥下しようとしている間である嚥下の直前および嚥下中に行うことができる。しかし、デバイスの活性化の正確なタイミングは、患者および疾患に応じて変化してよい。当業者なら、活性化を必要に応じてどのように修正するかについて理解されよう。一実施形態では、スイッチが、運動の随意的な試行の0〜5秒前、別の実施形態では10ミリ秒(「ms」)〜1.5秒前、別の実施形態では50ms〜750ms前、別の実施形態では100ms〜500ms前、好ましくは200ms〜400ms前に活性化される。
【0038】
デバイス
本発明の一実施形態は、図11に示す振動刺激器システムである。このデバイスの目的は、患者/利用者の随意制御下で、振動触覚刺激を喉上の皮膚、ならびに舌骨喉頭筋および喉頭筋にもたらすことである。感覚刺激を喉部にもたらすことによって、患者/利用者は、脳幹内にも皮質内にもある中枢神経系の中心への感覚入力を開始して、嚥下、発語および/または発声の開始の随意制御を強化することができる。
【0039】
したがって、図11のデバイスは、本発明のデバイスを例示するものであるが、それを限定するものではない。このデバイスは、振動触覚刺激器であり、これは、小型直流バイブレータのモータを順次活性化させるバッテリ式デバイスである。30〜60Hzの範囲内の振動周波数が、嚥下反射を惹起させる際に特に効果的である。こうした低周波数振動を発生させるためには、遊星ギヤボックス付きの、小型の低電圧直流モータ(直径10mm×長さ25.4mm)を探し出すことが必要であった。ギヤボックスは、出力毎分回転数を所望の範囲に低減させ、利用可能なトルクを増大させる。振動を発生させるために、偏心載荷された質量が出力軸に取り付けられる。質量の重量は、振動振幅を増大または低減させるように変更することができる。軽量の、密閉されたアルミニウムチューブが、モータ組立体を封入する。振動周波数制御は、調整可能な定電流回路を使用して達成される。個々のモータは、薄いベルクロストリップを用いて、喉部を覆って配置することができる弾性ラップに取り付けられる。
【0040】
別々の事象に関するタイミングを設定する調整可能なデジタルクロックが、回路の中心にある。クロック周波数は、1〜10Hzの間で調整することができる。このクロックは、デジタル10進カウンタと共に、個々のバイブレータの「オン」および「オフ」持続時間を制御する、連続したパルスを発生させる。パルスサイクルの終わりに、10進カウンタをリセットして、パルスの次のサイクルを開始するために、短いリセットパルスが発生される。
【0041】
被験者が、外部押しボタンの「オン」スイッチを押圧することによって、刺激器回路を制御する。スイッチはまた、LED表示灯を活性化させ、さまざまな記録デバイスの調整に使用することができるデジタルパルスを発生させる。ボタンが解除されると、振動パルスが停止する。「オン」スイッチの押圧と喉に対する第1の振動との間に、知覚される遅延はない。
【0042】
使用の際には、1つまたは複数のバイブレータが、頸部正面上の甲状軟骨部分の上に配置され、剛性/半剛性のホルダまたはストラップによって、定位置に保持されることができる。バイブレータは、個々の患者/利用者の頸部寸法に合うように、ホルダの内側上に配置することができる。弾性ストラップをホルダの外側に取り付けることができ、弾性ストラップは、ホルダを定位置に保持するために、患者/利用者の頸部背面に付くように巻きつけられる。小型のバッテリ式可搬ボックスが、バイブレータを駆動するために押圧されるボタンに接続する。このデバイスは、医療言語聴覚士、あるいは嚥下、発語、または発声障害の知識のある他の専門家によってその使用が訓練される患者/利用者に供給される。
【0043】
振動刺激を患者の頸部にもたらすことによって、皮膚内の機械受容器が活性化され、それにより脳幹および脳にフィードバックがもたらされて、嚥下、発語、または発声の自発的開始を誘発させる助けとなる。振動振幅がより大きなときには、機械的刺激が甲状軟骨の運動、ならびに広頸筋、胸骨舌骨筋、胸骨甲状筋、甲状舌骨筋、輪状甲状筋、および恐らく甲状披裂筋を含む部分内の外喉頭筋および内喉頭筋の運動を誘発させる。これらの筋肉のいくつかは筋紡錘を含み、筋紡錘の求心性神経も、中枢神経系に感覚フィードバックをもたらして、嚥下、発語、および発声を開始するための筋肉の自発的開始を誘発させる助けとなる。
【0044】
手順
一実施形態では、嚥下または話すことなど、生理学的に障害のある機能を動かすまたは実施しようとする随意的な試みの直前に、刺激がアサートされる。一実施形態では、その試みの1〜10秒前、0.1〜1秒前、0.2秒〜0.5秒前、または0.2〜0.4秒前に、刺激がアサートされる。刺激は、同時にアサートされてよいが、好ましくは、影響を受けた体部位に対して定位置に保持されたデバイスを介して、この定められた時間によって予め行われる。他の時間およびデバイスが、本発明の当業者(すなわち、神経生理学研究者と共に働き、神経生理学研究者から情報が与えられる生物医学エンジニア)には理解されよう。
【0045】
嚥下困難治療の場合、望ましくは、1つまたは複数の膨張性バルーンが喉頭の上に配置された状態で、頸部の周りに帯を巻きつけることができる。利用者(デバイスを着用している人、または着用者からの指示の下にある人)により(例えばボタンなどのスイッチによって)活性化されるとすぐに、バルーンが膨張し、喉頭に対して圧力をかける。刺激のタイプ、刺激のペース(固定または増加)および振幅(固定または増加)のパラメータ、ならびに持続時間が固定であるか、それとも2〜6秒間またはボタンが押圧されている限りとどまるかに対して設定されることができる制御ボックスが企図される。
【0046】
本発明の一実施形態では、嚥下などの運動行為を患者自身が開始する直前に感覚刺激を開始することを、場合によっては頸部ラップ内にやはり含まれる圧電センサからの運動フィードバック信号を見ることによって練習するための指示が、患者に提供される。運動フィードバック信号は、運動行為動作がいつ開始したかを、ディスプレイ画面上に表示するものである(Burnett、Mann、Stoklosa、およびLudlow、2005年;Sedory-HolzerおよびLudlow、1996年)。運動行為または嚥下の開始に対して、感覚刺激を求めてボタン押圧またはスイッチがいつ活性化されたかを患者および訓練者が観測することができるように、感覚刺激を開始させるスイッチデバイスからの信号が、同じディスプレイ上に呈示される。このようにして、患者は感覚スイッチのタイミングが、嚥下するという患者の運動行為の開始より600〜200ms前に生ずるように最適化することができるようになる。患者を有線式デバイスから解放するために、スイッチと刺激器の間の通信は、有線式デバイスではなく遠隔測定法によるものでよく、同様に運動センサとディスプレイの間の通信も、遠隔測定法によるものでよい。
【0047】
図11A〜11Dは、本発明の一実施形態による振動触覚刺激器のブロック図を示す。
【0048】
一実施形態では、代替部位を刺激するデバイスが、例えばベルクロ、ストラップ、ゴムバンド、ベルト、包帯、衣服、エース包帯、針金、ひも、圧電バンドまたはフィルム、ならびに/あるいはそれらの組合せ、または本発明の当該技術において知られる他の任意の方法によって体に付く、圧力印加デバイスである。例えば、刺激デバイスは、バルーン、所望の圧力または体積に膨張する膨張性チューブなどの、接触圧力ビルダを含むことができる。血圧計の技術に、本発明のデバイスの一部として使用することができるデバイスおよび方法が含まれている。圧力印加デバイスを喉頭より上の喉部に配置し、ベルクロまたは他の任意の調整手段を介して調整可能な頸部ラップが、好ましくは使用される。喉頭の上の喉上の、0.02平方センチメートルほども狭い面積などの小さな点を押圧することができるが、例えば01.〜10cm2、0.25〜5cm2、0.5〜2.5cm2の面積という、より広い面積を使用してもよい。望ましい範囲は、2cmの円である。好ましい実施形態では、(圧力かける表面積の積分和測定値として計算される)合計圧力の少なくとも25%、35%、50%、75%、85%、90%、98%、またはそれより多くが、喉頭軟骨の上であり、かつ周囲の筋肉の上ではない喉に対してかけられる。別の実施形態では、満足のいく結果を得るために、そのような選択的圧力が達成される。別の実施形態では、振動エネルギーが同様に、周囲の筋肉ではなく喉頭の上の喉上に選択的に閉じ込められる。望ましくは、50%未満、25%未満、10%未満、5%未満、またはさらに小さな圧力が、頸筋に印加される。別の実施形態では、刺激を冷刺激、振動刺激、熱刺激、または電気刺激、あるいはそれらの組合せとすることができる。
【0049】
神経障害が嚥下困難を生ずる場合、本発明によるデバイスは、喉頭の上の喉に接触して配置されるバイブレータとすることができる。そのようなバイブレータは、(3〜5本の長楕円形のバーなどの)バーを横切る圧力の連続した波を、1秒あたり約0.5〜30回、より好ましくは2〜25回、より好ましくは1秒あたり5〜10回で発生させることができる。望ましくは、圧力は、1〜14psiであり、上昇時間は25〜500ms、より望ましくは上昇時間は75〜150msである。バイブレータは、電気的皮膚表面刺激器(同じタイミングまたは異なるタイミング)など、別の刺激器と組み合わせることができる。50〜2000Hzの振動のペースが好ましく、20〜1000(例えば50Hz)が最も好ましい。振動の振幅は、好ましくは、例えば1ミクロン〜2mmとすることができる。100ミクロン〜1mmの振幅が有用である。一般に、皮膚内の求心性神経の感覚作用を得るための電気刺激は、最も望ましくは、50および200マイクロ秒パルスとしての、15〜60Hzで電流が1〜5ミリアンペアの二相パルスを含み、より望ましくはそれを用いる。
【0050】
あらゆる刺激タイプ(圧力、振動、電気的など)に適用可能な好ましい一実施形態では、(エネルギー出力として、あるいはより直接的に電流または振動変位などとして測定される)刺激の振幅、および/または刺激パルスのペースが、嚥下活動中に増大する。別の実施形態では、刺激の持続時間が、患者の嚥下の測定された平均値、または期待される持続時間に設定される。別の実施形態では、嚥下が行われたことが感知される限り、またはスイッチが活性化される限り、刺激が続く。しかし、刺激に対する中枢神経系の順応を防止するために、刺激は、嚥下の際にしか、患者によってオンにされず、患者が嚥下していないときは、オフのままである。
【0051】
他の実施形態では、刺激デバイスが、プラスチックまたは布などの使い捨てカバーによって覆われる。空気圧バーなどの刺激器は、好ましくは、(バイブレータおよび電気刺激器が使用される場合はそれらが皮膚に最も近い状態で)ベルクロの付いた、個々の患者の体に合わせて調整可能なラップなどの、伸縮性のデバイス内に含むことができる。別の実施形態では、スイッチは、使用していないときに覆われる、ボタンまたは他の電気デバイスである。一実施形態では、スイッチは、小さなカバー内に入ったボタンでよく、カバーは、スプーンの柄、またはスプーンの柄の形をした取付台の上面の上で可逆的にスライドされる。したがって、一実施形態では、刺激デバイスを活性化させるためのスイッチは、刺激デバイスの一部ではなく、刺激デバイスに物理的に接続することができる、または接続することができない、遠隔スイッチである。
【0052】
刺激の周波数、持続時間
圧力および/または電気刺激は、望ましくは、1〜100Hz、5〜50Hzの周波数で印加され、より望ましくは、30〜50Hzの周波数で印加される。電気刺激が使用される場合それは、舌骨を下方に頸部内に引っ張るので嚥下に有害な、皮膚の下に潜在する筋肉の活性化を惹起しないように、低レベルであるべきである(Ludlow等、2006年)。電気刺激は、広い面積(10cm2)にわたって25mA未満でなければならず、あるいは面積がより狭い場合は、0.01〜10mA、0.1〜7mA、0.5〜5mA、または1〜3mAなど、より少なくなければない。10mA、7mA、5mA、4mA、3mA、より望ましくは2mAを超えないレベルが、特に有用である。20〜70Hzの刺激が、いくつかの低コストの実施形態では望ましい。というのも、その要件の場合、機器が容易に入手可能なためである。
【0053】
治療キット
一実施形態では、本発明は、喉頭など、影響を受けた体部位に接触して配置されるように適合された少なくとも1つの刺激デバイスと、患者によって活性化されるスイッチと、使用に関する指示と、デバイス用の容器とを含むキットに関する。指示は、望ましくは、本明細書に列記される1つまたは複数の方法ステップに対応する少なくとも1つの指示を含む。一実施形態では、バッテリなどの電源が、刺激デバイス内にある。一実施形態では、使用中に刺激器を覆う使い捨てカバーが含まれる。一実施形態では、刺激デバイスが、1つまたは複数のバルーンあるいは1つまたは複数のチューブなど、チャンバ内の圧力を増大させる少なくとも1つのポンプを含む。デバイスはさらに、デバイスによって作用された圧力を監視するための、圧力、伸張、体積、電力、または他のセンサを含むことができる。一実施形態では、デバイスは、所望の圧力または運動、ならびに/あるいは電気刺激の量を設定するためのスイッチをさらに含む。スイッチは、刺激の周波数および/または振幅を設定するためにあってもよい。別の実施形態では、皮膚に接触するデバイスは、温度、皮膚色、ヘマトクリット、酸素化、血圧など、1つまたは複数の生理学センサをさらに含む。一実施形態では、デバイスは、ディスプレイおよび/または電磁伝送によって、結果を報告する。一実施形態では、デバイスは、嚥下事象を監視および/または記録する。例えば、デバイスは、望ましくは嚥下事象の存在(および任意選択で深さ)を、頸部周囲の帯上または帯内にあり、かつ/または喉頭の上の表面のところの、圧電伸張受容器または他のセンサを介して監視する(HolzerおよびLudlow、1996年;Burnett等、2005年を参照されたい)。
【0054】
本明細書において呈示された実施形態に対する変更および修正は、本明細書を読んだ後に、当業者に容易に理解される。具体的には、各条件を、本明細書において述べられる他の条件と組み合わせることができる。
【0055】
以下の実施例は、本発明およびその根底にある原理をさらに示すものであるが、上述の実施形態のいずれも限定するものではない。
【0056】
(実施例)
(実施例1)
嚥下の時点でボタンを押圧するように患者を訓練することにより、患者の安全に嚥下する能力が高まったことを示す研究
【0057】
背景
嚥下中に筋刺激するこれまでの手法では、筋疲労を引き起こすことがある、嚥下訓練中の長期間の連続刺激を使用し(Freed、Freed、ChatburnおよびChristian、2001年)、またはオトガイ下筋の表面筋電図検査(EMG)を使用して、活動を検出しようと試みてきた(Leelamanit、LimsakulおよびGeater、2002年)。しかし、オトガイ下EMG信号はしばしば、嚥下の口腔期中に行われる咀嚼活動によって混乱する。我々は、正常なボランティアにおいて、筋肉内刺激が舌骨喉頭複合体の挙上をもたらし得ること(Burnett、Mann、CornellおよびLudlow、2003年)、ならびに正常なボランティアが、筋肉内刺激を誘発させるためのボタン押圧を、嚥下の咽頭期の開始と同時に正確に同期させることを容易に学習できること(Burnett、Mann、StoklosaおよびLudlow、2005年)をこれまでに示してきた。
【0058】
重度の咽頭嚥下困難は、嚥下の随意制御の問題をもたらす。しばしば、嚥下の咽頭期開始の遅延、気道を保護するための舌骨喉頭複合体の挙上の低減、または咽頭からの食塊の不完全な除去のため、誤嚥(食塊の気管への侵入)が発生する。目標は、嚥下の咽頭期中にボタンを押圧して筋肉内刺激を誘発させるように患者を訓練することによって、患者の嚥下の咽頭期開始の随意制御を改善し、舌骨喉頭の挙上を増大させることであった。
【0059】
仮説
本研究は、次の、a)訓練後に、嚥下中の筋肉内刺激を用いて気道保護が改善する、b)嚥下訓練により、刺激なしで嚥下中の患者の気道保護が改善する、またc)訓練後に、刺激を受けた嚥下中の方が、疑似刺激嚥下に対して気道保護が改善される、という仮説についてテストした。
【0060】
方法
経口栄養補給のできない、重度の慢性嚥下困難のある10人の患者が、嚥下中の気道侵入および誤嚥に対する筋肉内刺激の影響の実現可能性を研究するために選択された。患者は、この研究に参加する前に、注射器から少量(2〜3ml)の水を嚥下しようとする間に、ボタンを押圧する、または咽頭期の開始時間を合図することができるかどうかを判定するためのテストを受けた。
【0061】
この研究中、かぎ形ワイヤ電極を、オトガイ下喉頭筋および外喉頭筋(顎舌骨筋、オトガイ舌骨筋、舌骨舌筋、および甲状舌骨筋)内に挿入した。電極の位置の精度を、200μsの二相パルスを4s間使用した、30Hzでの単極電極刺激3〜7mA中に誘発される運動を観測することによって検証した。安静時刺激中のビデオフルオログラフィ(videofluorographic)画像により、筋刺激のどの組合せが、嚥下なしで舌骨喉頭の挙上を誘発させるのに最も効果的であるかを決定した。
【0062】
任意の訓練または筋肉内刺激をしない嚥下のサンプルを得るために、3〜10mlの液体バリウムのボーラス投与を施した。これに続いて、患者は、患者の嚥下咽頭期の開始を、刺激の開始と調和させるための訓練の試行を、5(5)回受けた。患者は、刺激と同時に3mlの水を嚥下しようと試みた。訓練後、ビデオフルオログラフィを使用して、3〜10mlの液体バリウム嚥下中の、刺激なしの試行(疑似試行)と共にランダムに指示された筋肉内刺激の試行(刺激を受けた試行)を記録した。
【0063】
4人の医療言語聴覚士が、採点システムを使用して、液体が声帯を通過して気管内に入る誤嚥の発生回数、および喉頭蓋谷内に貯留があるかどうか、口腔または下咽頭から喉頭前庭内への液体の侵入があるかどうか、梨状陥凹内に貯留があるかどうか、また上部食道括約筋を通る食物の侵入があるかどうかを、各試行に対して判定した。全ての採点を、被験者の識別および状態(訓練前および訓練後の、ベースライン、刺激を受けた試行、または疑似試行)に対して盲検化された医療言語聴覚士によって行った。各試行について、嚥下中の誤嚥のリスクを示すために、合計得点を得た。得点が低い方が、誤嚥のリスクがより少ないことを示した。
【0064】
各患者の訓練前ベースライン嚥下、ならびに訓練後の刺激試行および疑似試行について、平均合計得点を得た。反復分散分析で、1)ベースラインと訓練後刺激との間で、合計得点に低減が生ずる、2)訓練前ベースラインと訓練後疑似試行との間で、合計得点に低減が生ずる、また3)訓練後の刺激を受けた嚥下と疑似嚥下との間で低減が生ずる、という各方向性仮説についてテストした。
【0065】
結果
慢性咽頭嚥下困難のある患者全員が、少なくとも5回の連続試行に対して、ボタン押圧を患者が嚥下の咽頭期を開始しようとする試みに正確に同期させるという実験前の基準を満たすことができ、20回の訓練試行中に80%の精度を有した。
【0066】
反復分散分析により、訓練前のベースライン嚥下と訓練後の刺激嚥下との間で、合計得点の大幅な低減(t=6.285、p≦0.00025)が示された。合計得点は、10人の患者のうち1人を除き全員において低減された。最も影響を受けていない患者だけが、嚥下中にその患者が誤嚥するリスクをその合計得点上で低減しなかった(図3)。
【0067】
訓練前ベースラインと訓練後疑似試行との間の反復分散分析を、7人の患者内の比較について入手することができ、それは統計的に有意であった(t=3.33, p=0.0025)が、5人の患者においては、低めの改善を示した。(図4)。
【0068】
訓練後の疑似嚥下と刺激を受けた嚥下とを比較すると、刺激した場合、誤嚥のリスクが大幅に低減することが分かった(F=3.718、df=1、8、p=0.045)。
【0069】
考察および結論
これらの結果は、筋肉内刺激を患者自身の嚥下と調和させるように患者を訓練することが、重度の慢性嚥下困難において、嚥下中の気道保護の改善をもたらすことを示す。これらの患者はそれぞれ、その嚥下困難が開始した直後(脳卒中後、パーキンソン病中、外傷性脳損傷、または脳腫瘍の手術後)に、嚥下困難の徹底的な治療を以前に受けていた。早期の介入にも関わらず、各患者は、開始後6ヶ月間、誤嚥の大きなリスクにさらされたままであり、経腸栄養補給を必要とし続けていた。大多数の人は、その人自身の唾液に対処することができず、一部の人は、唾液を制御するために、吸引することが必要であった。ベースライン嚥下と比較した、筋肉内刺激による気道保護の改善は、改善した軽度の患者を除く全員において有望であった。ベースライン嚥下の測定に比べて、訓練後の刺激なしの嚥下の改善が低めであったことが予想外であった。これは、慢性咽頭嚥下困難のある人において、刺激と、患者が嚥下の咽頭期の随意制御をしようとする試みとの間の調整を改善するための5回の訓練試行で、筋肉内刺激による舌骨喉頭運動の改善の増大に加えて、ある程度の治療上の利点が生じた可能性があることを示唆した。
【0070】
これらの患者は、髄質内にある、嚥下のための中枢パターン発生器を混乱させ、または皮質ベースの嚥下の随意制御と、髄質内にある患者の嚥下パターン発生器との間の切断をもたらす恐れのある、脳損傷を有する。これらの予備的な結果は、患者自身の嚥下を筋肉内刺激と調和させるように患者を訓練することによって、患者の中枢随意制御も改善され得ることを示唆している。
【0071】
多くの患者が、その障害にも関わらず、患者自身の運動に対して制御したいという望みを表明してきたので、運動が得られるように電気刺激を開始するための、患者により制御されるデバイスを提供することは、気道保護を増大させることにも、嚥下の随意制御を改善することにも役立ち得る。
【0072】
(実施例2)
重度の慢性咽頭嚥下困難のある患者における、喉部への低レベルの感覚刺激が、患者の安全に嚥下する能力を強化するが、喉の筋肉を活性化させる高レベルの電気刺激が、それらの患者において嚥下を強化しないことを示した研究
【0073】
仮説
慢性咽頭嚥下困難において、表面電気刺激を使用して、刺激が1)安静時に印加されたとき、舌骨および/または喉頭を低下させる、また2)嚥下中の誤嚥、侵入、または咽頭の貯留を増加させるという2つの仮説についてテストした。双極表面電極を、下顎下部および喉頭部を覆う皮膚上に配置した。患者が安静時にその口を閉じた状態に保つ間、最大許容レベルの刺激を印加した。ビデオ蛍光透視記録を使用して、刺激がオンおよびオフの間に、上下方向(s-i)寸法および前後方向(a-p)寸法における舌骨の運動、ならびに声門下の 気柱の(s-i)位置を測定した。患者は、刺激がオフのとき、低感覚刺激レベル時、および最大許容レベル(運動)時に、5mlの液体を嚥下した。状態に対して盲検化された医療言語聴覚士が、嚥下のビデオフルオログラフィ記録から、誤嚥、侵入、貯留、および食道への侵入の頻度を記録した。安静時刺激中に、大幅な(p=0.0175)舌骨沈下だけが生じた。誤嚥および貯留は、低感覚しきい値レベルの刺激を用いてのみ大幅に低減され(p=0.025)、最大レベルの表面電気刺激中には大幅に低減されなかった。刺激を用いて嚥下中の誤嚥および侵入が低減したこれらの患者には、安静時刺激中に、舌骨のより大きな沈下があった(p= 0.006)。刺激は、嚥下中の患者の舌骨挙上に抵抗するように作用した可能性がある。
【0074】
背景
表面電気刺激は、近年、嚥下困難における嚥下治療を補助するものとして、さらに高く注目されてきている(Freed、Freed、ChatburnおよびChristian、2001年;Leelamanit、LimsakulおよびGeater、2002年;Park、O'NeillおよびMartin、1997年;Power等、2004年)が、嚥下の生理学に対する経皮刺激の影響については、ほとんど知られていない。電気刺激は、舌骨喉頭挙上を増大させることによって(Freed、Freed、ChatburnおよびChristian、2001年;Leelamanit、LimsakulおよびGeater、2002年)、または中枢神経系への感覚入力を増大させて、嚥下の惹起を強化することによって(Park、O'NeillおよびMartin、1997年;Power等、2004年)、嚥下を助けることができると仮説が立てられてきた。
【0075】
電気刺激は、皮膚または口腔粘膜に低電流レベルで印加されると、表面層内の感覚神経終末を活性化させて、中枢神経系に感覚フィードバックをもたらす。電流振幅の増大に伴って、電界が、皮膚表面の下に横たわる筋肉内の神経終末を脱分極させることができ(LoebおよびGans、1986年)、また密度の減少と共に広がって、筋収縮を発生させることができる。
【0076】
したがって、電極がオトガイ下部内に配置される場合、電流密度が皮膚表面で最も大きく、皮膚の下にある広頸筋および皮下脂肪を通って深さと共に減少する(Sobotta、1990年)。したがって、電流が振幅面で増大されるとき、より低い効率を伴ってではあるが、ますます深くにある筋肉を加入させることができる。そのような筋肉は、口が閉じた状態に保たれているかどうかに応じて、下顎を低下させる、または舌骨を上方に引っ張ることができる、顎二腹筋前腹を含む。顎舌骨筋およびオトガイ舌骨筋がさらに深くにあり、それぞれ舌骨を上方に、また下顎の方に引っ張る。しかし、これらの筋肉は、そのより一層の深さのため、表面刺激によって活性化される可能性がずっと低い。
【0077】
同様に、電極が頸部内の甲状軟骨を覆う皮膚上に配置される場合、電流が皮膚のところでより大きくなり、下にある広頸筋に対して強度がより小さく、その下にある、舌骨を胸骨に向かって下方および後方に引っ張る胸骨舌骨筋および肩甲舌骨筋に対してさらに低減する(Sobotta、1990年)。電界強度は、喉頭と舌骨を引き寄せるより深い甲状舌骨筋、および喉頭を胸骨に向かって低下させる胸骨甲状筋に達する場合、さらに減少される。胸骨舌骨筋はより大きく、甲状舌骨筋および胸骨甲状筋を覆っているので、我々は、頸部に対する高レベルの表面電気刺激により、胸骨舌骨筋またはその下にある胸骨甲状筋が刺激されるため、舌骨が下方に引っ張られる可能性があるが、正常な嚥下中に生ずるように、喉頭が舌骨に向かって引き上げられる可能性はずっと低いはずであると予想する。
【0078】
VitalStim(登録商標) Therapy(WijtingおよびFreed、2003年)では、オトガイ下部内の顎舌骨筋(舌骨を挙上させるため)および頸部内の甲状舌骨筋(喉頭を舌骨の方に挙上させるため)の同時収縮をもたらすことを目的として、電極が喉上のオトガイ下部および喉頭部の上で同時に活性化される。しかし、これらの筋肉は、顎二腹筋前腹、胸骨舌骨筋、および肩甲舌骨筋の下深くにあるので、我々は、安静時の2対の電極を用いた同時経皮刺激が、1)(胸骨舌骨筋の活動のため)舌骨を頸部内に下降させる、2)(肩甲舌骨筋の活動のため)舌骨を後方に移動させる、また3)(電流が胸骨舌骨筋または胸骨甲状筋を活性化させる場合に)喉頭を下降させると仮説を立てた。さらに、我々は、重度の慢性嚥下困難において、4)同じアレイが、感覚しきい値のすぐ上の、知覚するには十分であるが筋肉を活性化しない低レベルの刺激において使用される場合、患者の嚥下が、感覚促進のため改善する可能性があるが、5)運動刺激に必要なより高いレベルにおいては、舌骨の下降が嚥下の妨げになり、侵入および誤嚥の増加を引き起こす可能性があると仮説を立てた。
【0079】
方法
参加者の選択基準は、慢性安定咽頭嚥下困難があること、6ヶ月以上誤嚥のリスクにさらされていること、ミニメンタルステート検査(Folstein、FolsteinおよびMcHugh、1975年)上で21点以上の得点があること、厳しく食事制限されていること、および/または経腸栄養補給を通じて栄養を受けていること、ならびに研究の時点で医学的に安定していることを含んでいた。研究に対して加えられるためには、全ての参加者は、研究のスクリーニング部分の間に、ビデオ蛍光透視検査上で、液体の場合の誤嚥のリスクを実演しなければならなかった。
【0080】
手順
参加前に、参加者には説明と同意が施され、参加者は、同意内容を理解していることを示すために、10の質問に正確に答えなければならなかった。VitalStim(登録商標)電極(Chattanooga Group、テネシー州ヒクソン、#59000)およびVitalStim(登録商標) Dual Channel Unitを、この研究のために使用した。2セットの電極を使用し、上部セットを、顎舌骨筋部の上のオトガイ下部内の、舌骨の上方に水平に配置した(図5)。底部セットを、甲状軟骨の上の皮膚上の、正中線の両側の、甲状舌骨筋中央から胸鎖乳突筋までの部分の上に配置した。この電極アレイは、最初の2人の著者(WijtingおよびFreed、2003年)の認定訓練中に効果的であるとして推奨されたものであった。直径19mmのボールベアリングを、測定の較正のために、頸部の側面にテープ留めした。
【0081】
参加者をデバイスに慣れさせた後、参加者が皮膚に対する「チクチクする」感覚を報告した最低電流レベルである感覚しきい値を特定した。感覚しきい値レベルでの刺激は、ビデオ蛍光透視記録上に運動をもたらさず、参加者が皮膚に対して刺激を感知した最低のレベルであった。参加者が「引っ張る」感覚を初めて報告したとき、通常7〜8mAあたりに、運動が初めて観測された。最大運動レベルは、頸部に対する刺激中に参加者が不快感なく耐えることのできる最高電流レベルであった。各電極セットについて独立に、感覚レベルおよび運動レベルを決定した。VitalStim(登録商標)デバイスは、毎分1秒間、「オン」から「オフ」へ、さらにまた「オン」へと自動的に循環する。刺激の変化に傾斜が付けられるので、この循環プロセスには最大4sかかる。安静試行時刺激の場合、参加者は、顎が開かないようにするために、歯を食いしばった状態に保つように告げられ、刺激が、両電極セットについて最大許容レベルに同時に設定された。刺激持続時間が55sに達したとき、ビデオ蛍光透視検査をオンにし、我々は、参加者が安静位にあり、デバイスが自動的に「オン」から「オフ」に、次いで再度「オン」に循環する間に、蛍光透視画像をS-VHSビデオテープ上に記録した。検査員が、刺激のオフセットの時点でボタンを押圧して、ビデオテープ上に目に見える目印を付けた。
【0082】
ビデオ蛍光透視スクリーニング検査の間、我々は、5または10mlのどちらの量の液体バリウムのボーラス投与が、テスト中に使用する場合に、より困難であるか、また参加者を誤嚥のリスクにさらすかについて判定した。テスト中、次の、1)刺激なし状態、2)両電極セットが、感覚しきい値レベルにおいてオンの状態、3)両セットが、最大許容刺激レベルにある状態のそれぞれにおいて、ランダムな順序で1〜3回の嚥下を記録した。刺激は、刺激を受ける嚥下の前、その間、およびその後に、オンのままであった。ビデオテープに録画された記録は、ドキュメンテーション用の聴覚チャネル、およびいつ刺激が変化したかを特定するためのフレームカウンタ表示を含んでいた。
【0083】
この研究中の放射線照射は、研究目的のためだけに施され、必要な医療のためではないので、放射線安全委員会(Radiation Safety Committee)は我々を、全研究について、1参加者あたり短い照射時間に制限した。したがって、研究の各部分における放射線照射時間に応じて、我々は、各参加者について、安静時刺激に加えて、1状態あたり1〜3回の試行しか実施することができなかった。
【0084】
運動分析
各試行のビデオを、2次元運動測定システムであるPeak Motus 8(ViconPeak、コロラド州センテニアル、80112)を使用して、オフラインで取り込んだ。このシステムには、〜60フィールド/s(〜30フレーム/s)の、またフレームサイズが608×456ピクセルのビデオキャプチャボードが装備されていた。ボールベアリングの半径(9.5mm)が、水平方向および垂直方向のあらゆる測定の較正に使用された。研究者が、各ビデオフレーム上で、カーソルを使用して第2および第4椎骨の最前下コーナの点を特定し、これらの2点間に直線を引いてy軸を定義した。第2または第4椎骨が見えない場合、第1および第3椎骨の底部前下コーナを、同じようにして使用した。下部椎骨の前下コーナのところでy軸に垂直な線が、x軸となった。全ての点に関するx座標およびy座標を、起点である第2椎骨の前下コーナに対して、舌骨の運動方向に関して前点および上点が正となり、後点および下点が負となる状態で、mm単位で決定した。4つの点、すなわち2つの点在する椎骨それぞれの前下点、舌骨の前下点、および声門下の気柱内の最後上点(喉頭の位置を追跡するため)を、各フレームについて印付けした。
【0085】
舌骨のx点およびy点、ならびに喉頭のy座標の時系列プロットを、Peak MotusからMicrosoft Excelにエクスポートし、次いで解析のために、Systat 11(Systat Software, Inc.、カリフォルニア州リッチモンド)にエクスポートした。刺激が「オン」から「オフ」に循環したときのフレームをファイルに追加して、測定を刺激「オン」および刺激「オフ」にソートするために使用した。次いで、各被験者について、全ての位置データを、開始位置がx軸上でもy軸上でも0のところに置かれるように補正し、次いで、被験者ごとの刺激「オン」および刺激「オフ」状態について、舌骨(x、y)および喉頭(y)の平均位置を計算した。
【0086】
嚥下困難の評点
4人の経験を積んだ認定医療言語聴覚士が、評点システムを決定するために、ランダムに選択された被験者のスクリーニングビデオテープを初めに検査した。いくつかの嚥下を、Rosenbek Penetration-Aspiration Scale(Rosenbek、Robbins、Roecker、CoyleおよびWood、1996年)(Pen-Asp)を用いて評価した後、その誤嚥のリスクのため経腸栄養補給状態にある参加者の多くが、正常範囲内で、すなわちそのスケール上で得点1を得点できることが指摘された。これは、梨状陥凹内に極度の残留貯留があっても侵入または誤嚥が発生せず、またボーラスが少しも食道に入らない場合に生じた。これらの参加者は、試行後に残留物質があればそれを口中に吐き戻し、液体を少しも嚥下しなかったが、物質が気道に入らなかったため、正常として得点した。Pen-Aspスケール上での得点1は上限(正常)であり、改善の測定を可能にしないため、このスケールでは、これらの患者において、嚥下の悪化を測定することしかできなかった。したがって、上限の影響のないもう1つのスケールが開発された。NIH Swallowing Safety Scale(SSS)は、この患者グループに見られる、侵入および誤嚥を伴う、またそれらを伴わない、貯留と食道への侵入の欠如とが関係する異常を捕らえた。嚥下を採点する際、得点1を、次の異常、すなわち喉頭蓋谷内の貯留、下咽頭から前庭内への侵入、梨状口内の貯留、および梨状口から喉頭前庭内への後退侵入(back up penetration)のそれぞれの発生に対して割り当てた。上部食道から入り、そこから除去するボーラス物質の量を、上部食道を通じて何も入らなかった場合に3、最少量が入った場合に2、中程度の量が入った場合に1、および全てのボーラスが除去された場合に0として評点した。さらに、各嚥下サンプルにおける誤嚥の合計数を計数した。正常な嚥下だけに、このスケール上で合計0が与えられ、最大得点は、単一の嚥下中に発生した誤嚥回数または他のボーラス流の異常に応じて、13もの高得点に達し得た。
【0087】
4人の医療言語聴覚士全員が、状態の知識なしで各ビデオ蛍光透視記録を見て、得点を割り当てる前に、全ての指摘された挙動およびPen-Asp評点に対して合意に達した。信頼性を確立するために21回の試行に対して評点を繰り返した後、同じ嚥下の評点の差が指摘され、得点を割り当てる際に従うべき1組の一律のルールが開発された。これらのルールは、後に、本研究における各試行に対して評点を割り当てるために使用された。次いで、18回の試行からなるもう1つの組が、測定の信頼性を判定するために繰り返し行われた。
【0088】
統計的分析
位置測定の信頼性を判定するために、2人の検査員が、10人の被験者のうち4人に対して、x軸およびy軸上の舌骨、ならびにy軸上の喉頭に関する位置を各フレーム上で測定し、次いで、刺激を受けた状態および刺激されない状態の間の、それぞれについての平均値を計算した。General Linear Model Systat 11(Systat Software, Inc.、カリフォルニア州リッチモンド)からの出力を使用して、被験者因子内、および被験者因子間に関する平均平方差を計算した。被験者間の平均平方差を得て、被験者内の平均平方差を減算し、次いでその結果を、被験者間の平均平方差と被験者内の平均平方差との和で除算することによって、級内相関係数(ICC)を計算した(Fleiss、1999年)。
【0089】
Pen-AspスケールおよびNIH-SSSを使用して行われた評点の信頼性を判定するために、再分析された第1の21回の試行からの、各スケール上の2組の評点間でICCを計算した。信頼できない項目を特定するために、NIH-SSSの各構成要素項目の2組の評点に関して、Systat 11(Systat Software, Inc.、カリフォルニア州リッチモンド)を使用してコーエンのカッパを計算した。低信頼性を有する項目を採点するためのルールを開発した後、Pen-AspスケールとNIH-SSSの両方について繰り返し行われた評点の第2組に対してICCを計算した。
【0090】
最大レベルの安静時刺激を用いて、舌骨が頸部内に下降するという第1の仮説に取り組むために、1サンプル方向性t検定を使用して、「オフ」と「オン」刺激の間のy軸上での舌骨の低下に関して検定した。舌骨が後方に移動するという第2の仮説に取り組むために、1サンプル方向性t検定を使用して、被験者内の、「オフ」刺激状態および「オン」刺激状態中のx軸上での舌骨の後退に関して検定した。刺激中に喉頭が下降するかどうかを判定するために、1サンプル方向性t検定を使用して、2状態間での声門下の気柱の低下に関して検定した。
【0091】
感覚レベルの刺激により嚥下が改善するかどうかを判定するために、1サンプル方向性t検定を使用して、Pen-AspスケールおよびNIH-SSS上での、参加者内の刺激されない嚥下と刺激を受けた嚥下との間の参加者の評点の平均変化を、0.05/2=0.025のボンフェローニ補正されたp値を用いて検定した。最後に、最大レベルの運動刺激中に嚥下が悪化したかどうかを判定するために、1サンプル方向性t検定を使用して、Pen-AspスケールおよびNIH-SSS上での、参加者内の刺激されない嚥下と刺激を受けた嚥下との間の参加者の評点の平均変化を、0.05/2=0.025のボンフェローニ補正されたp値を用いて検定した。
【0092】
参加者の特徴が恩恵の程度を予知するかどうかを判定するために、統計的有意性を得る目的で0.025のボンフェローニ補正されたp値を使用したピアソンの相関係数を、Pen-AspスケールおよびNIH-SSS上での参加者の平均初期重度と、感覚刺激中の平均評点の変化との間で計算した。同様に、ピアソンの相関係数を、統計的有意性を得る目的で0.025のボンフェローニ補正されたp値を使用して、安静時刺激中に舌骨が頸部内に引き下げられる程度と、Pen-AspスケールおよびNIH-SSS上での嚥下に関する参加者の平均評点の変化との間で計算した。
【0093】
結果
参加者
11人の参加者全員に、慢性長期嚥下困難があった(表1)。参加者の障害は、6人がCVA後(6ヶ月超後)、2人が良性腫瘍のための開頭術後(2および4年後)、または2人が外傷性脳損傷後(2および3年後)であった。1人の患者だけが、慢性進行性神経疾患、20年を上回るパーキンソン病、および2年を上回る持続期間にわたる嚥下困難を有していた。
【0094】
11人の参加者のうち10人が、安静試行時刺激に参加したが、1人は時間の制約のため参加しなかった。嚥下刺激試行中、参加者のうち1人に、初期嚥下試行に対して激しい誤嚥があり、安全上の理由で、その参加者については研究を中止した。したがって我々は、運動刺激嚥下試行において、10人の参加者を含めることができた。時間の制約のため、参加者のうち2人が低感覚レベルの刺激に参加せず、8人の参加者が研究に残った。
【0095】
測定信頼性
オン刺激状態およびオフ刺激状態における、y軸上での舌骨の運動に関するICCはそれぞれ、0.99および0.94であり、x軸上での舌骨の運動に関しては、0.94および0.87であった。刺激「オン」および「オフ」位置における、y軸上での喉頭に関するICCはそれぞれ、0.58および0.66であり、それらの測定に対して信頼性がずっと少ないことを示した。喉頭の運動は極めて小さく、刺激「オン」における0.4mmの平均位置から「オフ」状態における0.18mmの範囲であるので、測定の変動性が、この測定上の変動の一因となった。
【0096】
安静時刺激によって誘発される運動
第1の仮説について取り上げると、「オフ」刺激状態と「オン」刺激状態の間の平均位置を比較する片側方向性t検定により、y軸上での舌骨位置の大幅な低下が示された(t=-2.523、df=9、p=0.016)(図5を参照されたい)。図6では、刺激器が「オン」にされ、次いで「オフ」にされ、次いで再度「オン」にされたときの、各患者における舌骨の運動の個々のトレーシングが示してあり、刺激器が「オフ」にされたとき、舌骨が挙上することが示されている。安静時刺激を用いて舌骨が後方に移動するという第2の仮説について取り上げると、被験者内の「オフ」刺激状態および「オン」刺激状態における平均位置を比較する方向性t検定が、有意ではなかった(t=-0.102、df=9、p=0.460)。同様に、方向性t検定では、刺激中のy軸上での喉頭位置の下降がないことが分かった(t=0.696、df=9、p=0.748)。
【0097】
Pen-AspおよびNIH-SSS上での評点の信頼性
21回繰り返し行われた評点からなる第1組の後、ICCはPen-Aspスケール上で0.965であり、NIH-SSS上で0.764であった。NIH-SSSの信頼性に関する懸念のため、我々は、不一致が生じた各項目について、より詳細な判定ルールを実施した。新しい判定ルールを使用した18回の信頼性測定からなる第2組は、NIH-SSSに関して0.925のICCをもたらし、判定ルールが開発され、実施された後にそのスケールを使用する際の十分な信頼性を示した。
【0098】
嚥下中の低感覚刺激レベルの影響
時間の制約のため、10人の参加者のうち8人だけが感覚状態を完了した。感覚レベルの刺激を用いて嚥下が改善するという第4の仮説について取り上げると、参加者内の刺激されない嚥下と刺激を受けた嚥下との間の評点の平均変化を比較するように、1サンプル方向性t検定を計算した。結果は、0.05/2=0.025のボンフェローニ補正されたp値を使用して、Pen-Aspスケール上では有意ではなかった(t=0.336、df=7、p=0.373)が、NIH-SSS上では有意であった(t=.2.355、df=7、p=0.025)。これは図7に示してある。8人の参加者のうち6人が、嚥下中の感覚刺激によってNIH-SSS上で低減を示し、一方8人の参加者のうち5人が、Pen-Aspスケール上で低減を示した。
【0099】
嚥下中の運動刺激レベルの影響
刺激中に誤嚥のリスクおよび嚥下の安全性が悪化するという第5の仮説について取り上げると、参加者内の刺激されない嚥下と刺激を受けた嚥下との間の評点の平均変化を調べるように、1サンプル方向性t検定を計算した。結果は、0.05/2=0.025のボンフェローニ補正されたp値において、Pen-Aspスケール(t=0.363、df=9、p=0.637)上でもNIH-SSS (t=-0.881、df=9、p=0.201)上でも有意ではなかった。NIH-SSSスケール上では、10人の参加者のうち5人が、運動レベルの刺激でリスクを増大させ(図8A)、一方Pen-Asp上では、等しい数の参加者が、運動レベルの刺激で増大または低減した(図8B)。
【0100】
嚥下困難の重度と、刺激を用いた嚥下の変化との関係
Pen-Aspスケール上での参加者の初期重度と、感覚刺激を用いた嚥下の変化との間のピアソン相関係数は、有意ではなかった(r=0.142、p=0.737)。同様に、NIH-SSS上での患者の初期重度および感覚刺激を用いた嚥下の変化(r=0.701、p=0.053)も、統計的有意性を得る目的で0.025のボンフェローニ補正されたα値を使用して有意ではなかった。統計的有意性を得る目的で0.025のボンフェローニ補正されたα値を使用して、Pen-Aspスケール上での参加者の初期重度と運動刺激を用いた嚥下の変化との間のピアソン相関係数は、有意ではなく(r=-0.501、p=0.140)、NIH-SSS上での参加者の初期重度と、運動刺激を用いた嚥下の変化との間の相関もまた、有意ではなかった(r=-0.190、p=0.599)。
【0101】
安静時刺激中の運動と、刺激を用いた嚥下の変化との関係
ピアソン相関係数を、統計的有意性を得る目的で0.025のボンフェローニ補正されたα値を使用して、安静時刺激中に舌骨が頸部内に引き下げられる程度と、Pen-AspおよびNIH-SSS上での嚥下の変化との間で計算した。NIH-SSS上での改善の程度と、運動レベルの安静時刺激中に舌骨が沈下する程度との間に、有意な関係は見い出されなかった(r=-0.388、n=9、p=0.302)。運動刺激中のPen-Aspスケール内での改善は、運動レベルの安静時刺激中に舌骨が沈下する程度に対して、有意に逆相関した(r= -0.828、n=9、p=0.006)。この関係は、安静時に最も大きな舌骨沈下のある人が、嚥下する間の運動レベルの刺激中に、Pen-Aspスケール上で最も大きな低減を有することを示した。
【0102】
考察
本研究の第1の目的は、頸部内の舌骨および喉頭の位置に対する、表面電気刺激の生理学的な影響を明らかにすることであった。我々は、オトガイ下電極対と喉頭電極対の両方が、参加者の最大許容レベルで刺激しているとき、恐らく胸骨舌骨筋の刺激のため、舌骨が下方に引っ張られると予測した。データにより、この仮説が支持され、参加者のうち2人を除き全員に、安静時刺激中に5〜10mmほどもの舌骨の沈下があった(図6Aおよび6B)。我々は、舌骨が後方に引っ張られる可能性があるとも予測したが、舌骨では、限られた前後方向の運動が発生した。3人の参加者に、一事例では5mmもの舌骨の前方運動があったが、残りの参加者では、後方に最小限の運動があった。2人の参加者の喉頭において、最小限の上昇運動(2〜3mm)が発生したが、他の参加者のだれもが、少しの評価可能な喉頭の運動も経験せず(図6D)、この2〜3mmの変化は、場合によっては測定変動によるものであった。これらの知見をまとめると、表面電気刺激の唯一評価可能な運動の影響は、舌骨を頸部内に下降させて、嚥下に必要な方向とは反対方向の運動をもたらすことであった。
【0103】
これらの結果は、表面刺激が安静時の頸部に印加されると、刺激が、顎舌骨筋や甲状舌骨筋など、それぞれ舌骨および喉頭の挙上をもたらす筋肉を神経支配する軸索を刺激するには弱すぎた、またはそうするのに十分なほど深くなかったことを示唆している。安静時表面刺激を用いて、喉頭の位置の変化は観測されなかった。
【0104】
本研究の第2の目的は、慢性咽頭嚥下困難のある参加者において、嚥下に対する表面刺激の直接の影響を明らかにすることであった。患者の嚥下の随意制御を増大させるための、口腔および咽頭腔内での感覚刺激のこれまでの使用(Hamdy等、2003年;Park、O'NeillおよびMartin、1997年)に基づき、我々は、皮膚に対するチクチクする感覚を検出するために、参加者の感覚しきい値のすぐ上で感覚レベルの電気刺激を比較して、嚥下中の大幅な改善をNIH-SSSスケール上で見い出した(図7)。NIH-SSS上の改善は、より高い初期得点に関連する傾向があった。すなわち、より重度に影響を受けた患者が、刺激を用いて最も大きな改善を得た患者であった。NIH-SSSは、誤嚥および侵入を測定するだけのPen-Aspスケールとは対照的に、咽頭の貯留および不成功に終わった食道への侵入を捕らえるので、気道から食塊を除去する能力が低減した患者において、感覚刺激が幾分助けになり得る。
【0105】
運動レベルの刺激で舌骨が低下するという予想に基づいて、我々は、グループが、運動刺激を用いた嚥下中に侵入および誤嚥を増加させるであろうという仮説を立てた。運動レベルの刺激では、どちらのスケール上でも、グループの誤嚥の変化は指摘されなかった。運動レベルの刺激を用いた、Pen-Aspスケール上での改善の程度を、舌骨が沈下する程度に対して調べた際、我々は、運動レベルの安静時刺激中に舌骨の最も大きな沈下のある患者が、同じレベルの刺激を用いた嚥下中に最も大きな改善を得たことを示す、予想外の関係を見い出した。刺激を用いて舌骨が沈下した際、患者は恐らく、嚥下中に舌骨喉頭の挙上に対するより大きな抵抗を経験したであろう。恐らく、刺激が最大レベルでオンにされたとき舌骨に対してより大きな下方の引っ張りを感じた患者は、嚥下の際に、刺激の影響に打ち勝とうとして、舌骨喉頭複合体を挙上させようと一層努力したであろう。その舌骨喉頭筋内により大きな残留パワーを有する患者の方が、刺激を用いて舌骨のより大きな下降を経験したはずであるだけでなく、嚥下中に、舌骨喉頭の挙上が刺激により誘発される下降に対して対抗する力を患者が高めることのできるより大きな残留パワーを有する可能性もある場合もあり得る。
【0106】
本研究では、安静時および嚥下中の表面電気刺激の使用が与える、直接の生理学的な影響について取り組んだ。本研究では、電気刺激を、患者のタイプおよび嚥下困難の程度に応じて、思慮深く使用すべきであると提案する。舌骨喉頭複合体を引き上げる幾らかの能力を既に有する患者では、刺激を用いた舌骨の沈下が、治療中に「抵抗」として働く可能性がある。一方、患者が、舌骨喉頭複合体のどんな挙上ももたらすことができず、したがって、刺激によって誘発される舌骨の沈下に抵抗することができない場合、舌骨喉頭複合体が嚥下中に押し下げられるので、刺激により、そうした患者がより大きな誤嚥のリスクにさらされる可能性がある。これは、より重度に影響された患者の一部において生じた可能性があり、それらの患者は、より障害を受けていない患者が変化しないのに対して、運動レベルの刺激を用いてPen-AspおよびNIH-SSS上で重度が増大した(図8Aおよび8B)。
【0107】
本研究では、VitalStim(登録商標) Therapyに推奨されているように、オトガイ下および喉頭の電極対を両方同時に使用した。この同時刺激が、舌骨の低下をもたらした可能性がある。というのも、より表面の、より大きな胸骨舌骨筋および胸骨甲状筋に対するより強い刺激が、オトガイ下部内の顎舌骨筋または喉部内の胸骨舌骨筋の下の甲状舌骨筋の刺激によって誘発された可能性があるどんな作用にも打ち勝ったためである。オトガイ下刺激を単独で使用して、顎二腹筋前腹および顎舌骨筋を活性化させることによって、舌骨を上方に引っ張ることを提案してきた人もいる。しかし、喉頭を引き上げるための甲状舌骨筋の同時刺激をせずに舌骨を挙上させると、喉頭が下がったままになり、それにより前庭がさらに開き、誤嚥のリスクが増大する。胸骨舌骨筋が収縮することなく顎舌骨筋および甲状舌骨筋が一緒に活性化された場合にだけ、筋肉内刺激を用いてこれまでに示されてきたように、舌骨も喉頭も一緒に引き上げられる(Burnett、Mann、CornellおよびLudlow、2003年)。これは、表面刺激を使用して達成することはできない。というのも、より大きな胸骨舌骨筋が甲状舌骨筋を覆い、舌骨を下方に引っ張るためである。
【0108】
グループ全体として、感覚レベルの刺激だけを用いて、Pen-Asp上で改善したことが分かったことは、幾分予想外であった。これまでの研究では、前口峡柱および後口峡柱(anterior and posterior faucial pillars)の刺激が、正常者において嚥下反射を惹起するのに最も効果的な刺激であることが示されてきた(Pommerenke、1927年)。生理学的には研究されていないが、喉部を軽擦することが、乳児および一部の哺乳類において、嚥下の自発的な惹起を助けると知られている。舌咽神経または上喉頭神経の刺激が、動物において嚥下を惹起し(Jean、1984年)、上喉頭神経の両側性化学的遮断が、正常者において嚥下を途絶させることが示されてきた(Jafari、Prince、KimおよびPaydarfar、2003年)。喉の表面への感覚刺激が、成人において嚥下を反射的に誘発させることは観測されていないが、喉内の皮膚に対する感覚レベルの電気刺激が、嚥下困難において嚥下の随意的な誘発を促進させる可能性がある。これらの結果は、皮膚に対する低レベルの電気刺激が、一部の患者において有利となり得ることを示唆している。そのような低レベルの電気刺激が、舌骨の沈下を誘発させることは観測されなかったので、我々は、どの患者も、低感覚レベルの刺激を使用して誤嚥のリスクの増大にさらされないはずであると考える。表面電気刺激が使用される前に、患者は、舌骨を低下させる手順を用いて誤嚥のリスクの増大にさらされることになるかどうかを判定するために、注意深くスクリーニングされなければならない。
【0109】
【表1】

【0110】
*激しい誤嚥のため、嚥下中の感覚または運動刺激の影響を研究することができなかった。
【0111】
(参考文献)
具体的に列記されていない参考文献は、著者を検索することによって文献内で探し出すことができる。2005年3月28日出願の、Methods and Devices for Intramuscular Stimulation of Upper Airway and Swallowing Muscle Groupという名称の米国特許出願公開第10/529,401号明細書が、参照によりその全体が組み込まれる。その特許出願内に見られる参考文献は、本明細書において呈示された諸実施形態で使用することが企図される刺激デバイスおよび方法の詳細に関して特に関連するものであり、それらに関して参照により組み込まれる。
【0112】
本明細書において引用される全ての参考文献がここに、参照によりその全体が組み込まれる。
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の喉部に対する刺激を提供するためのシステムにおいて、
振動触覚刺激器と、
被験者の喉部の上で前記振動触覚刺激器を位置決めするように構成されているストラップと、
被験者によって随意操作されるように構成されているボタンと、
前記振動触覚刺激器およびボタンと通信して、被験者によるボタンの随意操作時に振動触覚刺激器に対して刺激信号を送信するように構成されているコントローラと
を備えていることを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記振動触覚刺激器は、20Hzから1000Hzまでの間の振動周波数を有していることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記振動触覚刺激器は、50Hzから2000Hzまでの間の振動周波数を有していることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記振動触覚刺激器は、30Hzから60Hzまでの間の振動周波数を有していることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記振動触覚刺激器は、30Hzから50Hzまでの間の振動周波数を有していることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記振動触覚刺激器は、刺激信号を受信すると約2秒から6秒の間動作するように構成されていることを特徴とする請求項1から5のうちのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記振動触覚刺激器は、刺激信号を受信すると約0秒から5秒の間動作するように構成されていることを特徴とする請求項1から5のうちのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
振動触覚刺激器の速度および持続時間のうちの少なくとも1つの選択を可能にするように構成されているコントロールボックスを更に備えていることを特徴とする請求項1から7のうちのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記コントローラは、振動触覚刺激器と有線で通信することを特徴とする請求項1から8のうちのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記コントローラは、振動触覚刺激器と無線で通信することを特徴とする請求項1から8のうちのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記コントローラは、ボタンと有線で通信することを特徴とする請求項1から10のうちのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記コントローラは、ボタンと無線で通信することを特徴とする請求項1から10のうちのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記振動触覚刺激器は、1つのバイブレータモータを含むことを特徴とする請求項1から12のうちのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記振動触覚刺激器は、複数のバイブレータモータを含むことを特徴とする請求項1から12のうちのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記振動触覚刺激器は、偏心載荷された質量を有していることを特徴とする請求項1から14のうちのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
前記振動触覚刺激器は、ギヤボックスを有していることを特徴とする請求項1から15のうちのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項17】
前記デバイスは、生理学的センサを含むことを特徴とする請求項1から16のうちのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項18】
前記デバイスは、運動センサを含むことを特徴とする請求項1から17のうちのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項19】
前記振動触覚刺激器は、嚥下困難の治療に役立つ振動を発生するように構成されていることを特徴とする請求項1から18のうちのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項20】
前記振動触覚刺激器は、発声障害の治療に役立つ振動を発生するように構成されていることを特徴とする請求項1から18のうちのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項21】
前記ボタンの位置を示すランプを更に備えていることを特徴とする請求項1から20のうちのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項22】
実質的に明細書および添付図面に開示されているシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【公開番号】特開2013−99600(P2013−99600A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−25371(P2013−25371)
【出願日】平成25年2月13日(2013.2.13)
【分割の表示】特願2008−520302(P2008−520302)の分割
【原出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(508004775)ザ・ユーエスエー・アズ・リプリゼンティド・バイ・ザ・セクレタリー・デパートメント・オブ・ヘルス・アンド・ヒューマン・サーヴィスィズ (2)
【Fターム(参考)】