説明

往復運動装置

【課題】いわゆる金魚運動と呼ばれる左右往復運動を行うための運動装置において、使用者を飽きさせず、運動に持続性を持たせられるようにする。
【解決手段】往復運動装置1は、設置基部2と、この設置基部2上を左右方向に所定ストロークで往復動作可能に設けられた身体支持台3と、設置基部2と身体支持台3との上下間に設けられて上記身体支持台3を左右方向へ往復動作させる左右動機構5と、設置基部2と身体支持台3との上下間に設けられて上記身体支持台3を昇降動作させる上下動機構6と、上記左右動機構5と上下動機構6とを同時に動作可能にする駆動部7とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、往復運動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
仰向けに寝ころんだ人の両足首を支持して、これを左右方向に往復動させる往復運動装置は公知である(例えば、特許文献1等参照)。
この種の往復運動装置は、設置基部と、この設置基部上を左右方向に所定ストロークで往復動作可能に設けられた身体支持台と、設置基部と身体支持台との上下間に設けられて上記身体支持台を左右方向へ往復動作させる左右動機構とを有し、この左右動機構を電動モータで駆動させるようになっている。
この往復運動装置の使用者は、腰又は尻を支点として下半身が一定振幅で左右方向へ周期的に揺さぶられる、いわゆる金魚運動(「金魚のような魚が泳ぐときに尾ひれを左右にくねらせる」に似た揺動運動)を受けるようになる。これにより、内蔵機能の活発化や有酸素運動の増進、血行促進や脂肪燃焼など、健康管理に好適とされる。
【特許文献1】特開2002−291821号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
最近のユーザからの要望には多様なものがあり、なかには、単一動作を延々と繰り返すだけの金魚運動には飽きてしまうといった指摘がなされることがある。使用者が飽きてしまうと、運動に持続性が得られないことから、運動としても、また健康管理の面でも十分な効果が得られないことは言うまでもない。
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、使用者が受ける動作内容に幅を広げることにより、使用者を飽きさせず、運動に持続性を持たせられることを意図した往復運動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記目的を達成するために、本発明は次の手段を講じた。
すなわち、本発明に係る往復運動装置は、設置基部と、この設置基部上を左右方向に所定ストロークで往復動作可能に設けられた身体支持台と、前記設置基部と身体支持台との上下間に設けられて前記身体支持台を左右方向へ往復動作させる左右動機構と、前記設置基部と身体支持台との上下間に設けられて身体支持台を上下昇降動作させる上下動機構と、前記左右動機構と上下動機構とを同時に動作可能にする駆動部とを有していることを特徴とする。
【0005】
好ましくは、前記左右動機構は、水平回転軸まわりで回転可能に設けられた円筒カムと、この円筒カムの外周面に形成された左右の波形状で且つ無端状のカム路と、該カム路に係合した状態で前記円筒カムの回転に伴う左右動成分だけを取り出して前記身体支持台に伝える左右動部材と、を有しているとよい。
さらに好ましくは、前記上下動機構は、水平回転軸まわりを偏心状態で回転可能に設けられた偏心リンクと、該偏心リンクに係合した状態で当該偏心リンクの偏心回転に伴う上下動成分だけを取り出して前記身体支持台に伝える上下動部材と、を有しているとよい。
【0006】
前記駆動部は、1つの電動モータを有したものとするのが好適である。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る往復運動装置では、使用者が飽きずに継続した運動を行えるようになり、もって期待する運動又は健康管理が十分に得られるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1〜図7は、本発明に係る往復運動装置の一実施形態を示している。この往復運動装置1は、設置基部2と、身体支持台3と、左右動機構5と、上下動機構6と、駆動部7とを有している。
設置基部2の上方に身体支持台3が設けられており、これら設置基部2と身体支持台3との上下間に、左右動機構5及び上下動機構6が設けられている。また、これら左右動機構5及び上下動機構6に対して駆動部7が設けられている。設置基部2には、身体支持台3を除き、左右動機構5や上下動機構6、更には駆動部7をも覆うようにしてケーシング8が設けられている。
【0009】
なお、以下では説明の便宜上、図1における左右方向を「左右方向」と言い、図1における上下方向を「上下方向」と言い、図1における紙面貫通方向を「前後方向」と言う。
図1に示すように、設置基部2は、左右動機構5及び上下動機構6を設置し得る大きさのプレートによって形成されている。この設置基部2は、往復運動装置1の使用時に、使用者の支持荷重や動作に伴う慣性力が負荷しても、床上などで装置全体を安定的に載置できるよう、そのプレート面積を十分広く形成させたりプレート裏面にゴム脚を設けたりして安定化対策が図られている。
【0010】
身体支持台3は、使用者の両足首など、身体の一部位を支持可能となっている。従ってこの身体支持台3は、支持する身体の部位に合わせて上面の形状や大きさが設定されている。
本実施形態の身体支持台3は、左右の足首を支持し易く、且つ往復動作(横揺れ)時に左右の足が互いに接触しないようにするため、左右一対の足入れ凹部10L,10Rが区画丘部11を介して並設され、また足入れ凹部10L,10Rの左右両外側に脱落防止壁12が立設されたものとしてある。
【0011】
また、身体支持台3の少なくとも上面(足入れ凹部10L,10Rの内面)は適度なクッション性を有したものとされている。なお、身体支持台3の上面は、足先側が高く脹ら脛側が低くなるように、なだらかな傾斜(図2参照)を設けておくのが好適である。
身体支持台3の下面にはスライダ部15が固定されており、このスライダ部15に対して、前後2本の互いに平行なガイドバー16が左右方向に貫通している。両ガイドバー16は、それらの両端部が左右一対の伸縮ブラケット17L,17Rによって水平状態を維持するように支持されている。
【0012】
伸縮ブラケット17L,17Rは、設置基部2に立設されたガイドスタンド20と、このガイドスタンド20に保持された可動片21とを有している。図3,図4に示すように、ガイドスタンド20には、上向きに開放されたスライド溝23が形成されており、このスライド溝23内に可動片21が上下摺動自在に差し込まれている。
左右の伸縮ブラケット17L,17R相互間にあって、可動片21同士を連結する状態で上記したガイドバー16が架設されている。すなわち、スライダ部15及びガイドバー16を介して、可動片21と身体支持台3との上下距離が固定されるようになっている。
【0013】
このようなことから、この身体支持台3は、設置基部2の上方を両ガイドバー16,16に沿って左右動自在であると共に、伸縮ブラケット17L,17Rのスライド溝23に沿って上下動自在となっている(図1は右端位置で身体支持台3が上昇した状態であり、図6は左端位置で身体支持台3が下降した状態である)。
左右動機構5は、身体支持台3に対して所定ストロークの左右往復動作を付与させるための機構である(右端時の図1及び左端時の図6参照)。この左右動機構5は、上記のようにスライダ部15とガイドバー16との組み合わせで身体支持台3を左右動自在に保持させている。
【0014】
本実施形態の左右動機構5は、円筒カム27と左右動部材28とを有している。
円筒カム27は、第1水平回転軸30(水平回転軸)まわりで回転可能に設けられており、そのドラム外周面にはカム路31が一周して無端状に形成されている。第1水平回転軸30は、それらの両端部が左右の伸縮ブラケット17L,17Rをそれぞれ貫通しており、それらの左右両外側で、設置基部2上に固定された左右一対のブラケット32L,32Rによって支持されている。
円筒カム27と第1水平回転軸30とは一体回転可能とされ、左右の伸縮ブラケット17L,17Rを第1水平回転軸30が貫通する部分、及び左右のブラケット32L,32Rが第1水平回転軸30を支持する部分は、いずれも相対回転自在な状態に保持されている。特に、左右のブラケット32L,32Rが第1水平回転軸30を支持する部分にはベアリング等の軸受具(図示略)が設けられ、第1水平回転軸30が芯ブレを生じることなく安定回転するようになっている。
【0015】
カム路31は凹溝として形成されていて、円筒カム27の外周面を一周しつつ左右方向に蛇行して一定振幅の波形を形成するようになっている。
左右動部材28は、円筒カム27の回転に伴って周回走行するカム路31から、左右動成分だけを取り出すと共に、この取り出した左右動成分を身体支持台3に伝えるようになったものである。
この左右動部材28は、身体支持台3のスライダ部15から下方へ向けて突設された前後2本の互いに平行な昇降ガイド35と、この昇降ガイド35に沿って昇降自在に保持された補助スライダ36と、この補助スライダ36から下向きに突設された状態で円筒カム27のカム路31内に摺動しつつ係合する従節部37とを有している。
【0016】
本実施形態において従節部37は、水平回転自在なカムフォロワーにより形成されたものとしたが、これに限定されず、ピンや突起のようなものでもよい。
補助スライダ36には、昇降ガイド35と係合するガイド溝40が形成されており、スライダ部15(身体支持台3)と前後方向及び左右方向の相対移動が生じないようにしつつ、上下方向への相対移動だけを許容させるようになっている。
また補助スライダ36には、前後2本の互いに平行する補助ガイドバー41が左右方向に貫通しており、これら両補助ガイドバー37の両端部が左右一対のブラケット42L,42Rによって支持されている。これら左右のブラケット42L,42Rは、左右の伸縮ブラケット17L,17Rに対し、それらの対向する内面側に寄り添うような配置で設置基部2上に固定されている。
【0017】
上下動機構6は、身体支持台3に対して昇降動作を付与させるための機構である(上昇時の図1、図4及び下降時の図6、図7参照)。この上下動機構6は、上記のように、左右の伸縮ブラケット17L,17Rにおけるガイドスタンド20(スライド溝23)と可動片21との組み合わせで身体支持台3を上下動自在に保持させている。
本実施形態の上下動機構6は、長手方向を左右方向へ向けた棒状の偏心リンク45と、この偏心リンク45の左右両側に設けられた一対の上下動部材46L,46Rとを有している。
【0018】
偏心リンク45の左端部には左のロータ50Lが連結されており、このロータ50Lの中心から左方へ向けて左の第2水平回転軸47Lが一体回転可能に連結されている。この第2水平回転軸47Lは、左のブラケット32Lに回転自在に支持されている。
ここにおいて左のロータ50Lの中心、即ち、第2水平回転軸47Lの軸心から偏心した位置に偏心リンク45が設けられていることになり、且つ、第2水平回転軸47Lと偏心リンク45とは互いに平行する関係に保持されている。
また偏心リンク45の右端側には右のロータ50Rが連結されており、このロータ50Rの中心から右方へ向けて右の第2水平回転軸47Rが一体回転可能に連結されている。この第2水平回転軸47Rは、右のブラケット32Rに回転自在に支持されている。この右のロータ50Rは、上記した左のロータ50Lの中心と同軸である。即ち、第2水平回転軸47L,47Rは同軸状に位置する。
【0019】
このようなことから、第2水平回転軸47L,47Rが互いに一体回転するときに、そのまわりを偏心リンク45が偏心回転するようになっている。
上下動部材46L,46Rは、偏心リンク45に係合した状態で、この偏心リンク45の偏心回転に伴って上下動成分だけを取り出し身体支持台3に伝えるようになったものである。
本実施形態において、上下動部材46L,46Rは、左右の伸縮ブラケット17L,17Rが有する可動片21と一体化されたものとしてある。すなわち、可動片21には水平方向で前後に長い長孔52が形成されており、この長孔52内を上記した偏心リンク45が貫通するようになっている。
【0020】
長孔52の前後方向長さは、偏心リンク45が偏心回転するときの軌道直径と同等以上に形成されており、また長孔52の開口高さは、偏心リンク45が上下方向にガタツキを生じない程度の孔幅とされている。
そのため偏心リンク45が偏心回転するとき、この偏心リンク45は、長孔52内を前後に移動しながら長孔52内の上下面に上昇力や下降力を交互に作用させるようになり、これによって可動片21が上下動するようになる。
このような長孔52の開口形状と偏心リンク45との貫通関係と、これに応じた可動片21の上下運動との関係において、上下動部材46L,46Rが構成されているものである。
【0021】
なお、可動片21については身体支持台3の上下動をガイドするものとしての機能に専用させておき、この可動片21と別個独立させて上下動部材46L,46Rを形成させることも可能である。
駆動部7は、左右動機構5と上下動機構6とを同時に動作可能にするものである。本実施形態では、単独、すなわち両機構で共用する1台の電動モータ60を有している。
この駆動部7は、左右動機構5の第1水平回転軸30が右のブラケット32Rを突き抜けて更に延長させることで第1入力軸61を形成させ、この第1入力軸61に連結した第1ギヤ部62へ電動モータ60からの出力ギヤ63(図例ではウォームギヤ)を噛合させている。
【0022】
またこの駆動部7は、上下動機構6の第2水平回転軸47L,47Rのうち、右の第2水平回転軸47Rが右のブラケット32Rを突き抜けて更に延長させることで第2入力軸65を形成させ、この第2入力軸65に連結した第2ギヤ部66へ電動モータ60からの出力ギヤ63を噛合させている。
この駆動部7において、出力ギヤ63から第1ギヤ部62への減速比と、出力ギヤ63から第2ギヤ部66への減速比とは、同じとしても異なるものとしてもよい。
これらの減速比を同じにすれば、左右動機構5によって身体支持台3が左右動する動作サイクルと、上下動機構6によって身体支持台3が上下動する動作サイクルとが同期するようになる。すなわち、身体支持台3は左右方向を1往復する間に1回、上下動をするようになる。
【0023】
これに対して減速比を異ならせれば、左右動機構5によって身体支持台3が左右動する動作サイクルと、上下動機構6によって身体支持台3が上下動する動作サイクルとにズレが生じ、独特のリズムが発せられるものとなる。例えば、身体支持台3が左右方向を1往復する間に複数回の上下動(小刻みな上下動)をしたり、或いは身体支持台3が左右方向へ複数回往復する間に1回の上下動(ゆったりとした上下動)をしたりするといった具合に、種々様々な動作パターンを設定することができる。左右往復の周期と上下往復の周期とを2:1とすることで、図1における身体支持台3の動きを8字揺動とすることも可能である。
【0024】
以上、詳説したところから明かなように、本発明に係る往復運動装置1では、身体支持台3が左右往復運動と上下運動とを同時に行うようになる。そのため、図2や図7の如く、この身体支持台3上に両足首などを載せた使用者は、左右往復運動と上下運動とが組み合わさった飽きの来ない運動を受けることになる。そのため、使用者は継続した運動を苦もなく行うこととなり、所期の運動乃至健康管理が十分に得られるようになる。図7に示すように、使用者は、臀部にマットや上下軸心回りに回転可能となっている回転プレートを敷くことで、臀部を中心としたツイスト運動を行いやすくなる。
【0025】
本発明は、上記実施形態以外にも、実施の形態に応じて部材形状、構造、材質など適宜変更可能なものである。
例えば、身体支持台の形状などは特に限定されるものではなく、腰などをも支持できるように上面を扁平に形成されることなどでもよい。
左右動機構や上下動機構は、従来公知の各種機構に置換することも可能である。
駆動部において、左右動機構と上下動機構とに対して各別に電動モータを具備させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る往復運動装置の一実施形態を示した正面図である。
【図2】本発明に係る往復運動装置の使用態様を示した図である。
【図3】図1のB−B線断面図である。
【図4】図1のC−C線断面図である。
【図5】図1のD−D線断面図である。
【図6】図1の状態から円筒カムが半回転した状態を示した正面図である。
【図7】図6のE−E線断面図である。
【図8】本発明に係る往復運動装置の使用態様を示した図である。
【符号の説明】
【0027】
1 往復運動装置
2 設置基部
3 身体支持台
5 左右動機構
6 上下動機構
7 駆動部
27 円筒カム
28 左右動部材
30 水平回転軸(第1水平回転軸)
31 カム路
45 偏心リンク
46L,46R 上下動部材
47L,47R 水平回転軸(第2水平回転軸)
60 電動モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置基部と、この設置基部上を左右方向に所定ストロークで往復動作可能に設けられた身体支持台と、前記設置基部と身体支持台との上下間に設けられて前記身体支持台を左右方向へ往復動作させる左右動機構と、前記設置基部と身体支持台との上下間に設けられて身体支持台を上下昇降動作させる上下動機構と、前記左右動機構と上下動機構とを同時に動作可能にする駆動部とを有していることを特徴とする往復運動装置。
【請求項2】
前記左右動機構は、水平回転軸まわりで回転可能に設けられた円筒カムと、この円筒カムの外周面に形成された左右の波形状で且つ無端状のカム路と、該カム路に係合した状態で前記円筒カムの回転に伴う左右動成分だけを取り出して前記身体支持台に伝える左右動部材と、を有していることを特徴とする請求項1に記載の往復運動装置。
【請求項3】
前記上下動機構は、水平回転軸まわりを偏心状態で回転可能に設けられた偏心リンクと、該偏心リンクに係合した状態で当該偏心リンクの偏心回転に伴う上下動成分だけを取り出して前記身体支持台に伝える上下動部材と、を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の往復運動装置。
【請求項4】
前記駆動部は、1つの電動モータを有していることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の往復運動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−268712(P2009−268712A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−121914(P2008−121914)
【出願日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(592009214)大東電機工業株式会社 (106)