説明

復水器の漏洩冷却管特定方法

【課題】火力又は原子力プラントの復水器において、管板における一部の管口にラップフィルムを張付けるだけで漏洩冷却管の管口位置を特定できる方法を提供する。
【解決手段】復水器2の入口側及び出口側水室4A,4B,5A,5Bから,海水Wの水位を段階的に低下させながら排出させるとともに、復水滞留部15における塩分濃度を,それぞれの水位毎に検出する海水排出・検塩工程と、この海水排出・検塩工程において、海水Wの水位を1段階低下させた場合で,かつ,水位を1段階低下させた後の新たな水位において復水滞留部15における塩分濃度の時間勾配の変化率がマイナスになる場合に、1段階分の水位の変化領域内に配置される全ての管口10にラップフィルムを貼付するフィルム貼付工程と、管口10のラップフィルムの形状が所定の状態に変化した場合にその冷却管6が漏洩管であると判断する漏洩判定工程と、を備える復水器の漏洩冷却管特定方法による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、復水器の漏洩冷却管の特定方法に関し、特にその作業効率を向上するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火力発電プラントや原子力発電プラントでは、発電機に結合されたタービン用いた水の循環システムを備えている。この循環システムは、例えば、水をボイラで加熱して蒸気とし、この蒸気をタービンに噴出させてタービンを回転させる構造になっている。そして、タービンを回転させた後の蒸気は、海水を冷却水として使用する復水器により凝集されて、復水される。そして、この復水は、ボイラで再び加熱されることにより蒸気にされ、再度蒸気タービンに噴出されている。
つまり、火力発電プラントや原子力発電プラントでは、海水を冷却水として用いる復水器により、蒸気を復水し、復水された水を循環水として発電プラント内を循環させている。
上述のような発電プラントでは、稀ではあるが、冷却用の海水を流通する冷却管から海水が漏洩することがあり、この場合、復水器内部に海水が浸入して復水に海水が混入してしまう場合があった。
そして、復水は発電プラント内を循環するので、発電プラントの構成機器や配管等において腐食が起こる原因となる恐れがあり好ましくなかった。このため、発電プラントでは、復水器内部に海水が漏洩しているか否かは重要な問題であり、常時、復水への海水漏洩の有無を監視している。
また、復水への海水の漏洩が検知された場合には、直ちに海水漏洩にかかる冷却管を補修する必要があり、その際に、複数の冷却管の中から、海水が漏洩している冷却管を特定する方法がいくつか開示されている。
【0003】
特許文献1には「復水器の漏洩冷却管の特定方法」という名称で、復水器の漏洩冷却管の特定方法に関する発明が開示されている。
特許文献1に開示される発明は、対の水室を有する復水器の一方の入口側及び出口側水室、又は他方の入口側及び出口側水室から海水を排出させる海水排出工程と、海水を排出させた一方又は他方の入口側水室、若しくは一方又は他方の出口側水室の管板における冷却管の管口に所定のラップフィルムを貼付するフィルム貼付工程と、管口のラップフィルムの形状が所定の状態に変化した場合に当該冷却管が漏洩管であると判断する漏洩判定工程と、を備えることを特徴とすることである。
上記構成の特許文献1に開示される発明によれば、発電プラントのタービンを停止させることなく、早急かつ確実に復水器の漏洩冷却管を特定することができる。
【0004】
特許文献2には「復水器の冷却管の漏水判定方法」という名称で、蒸気タービン等に利用される蒸気を冷却して復水する復水器における冷却管の漏水の有無を判定する方法に関する発明が開示されている。
特許文献2に開示される発明は、文献中に使用される符号をそのまま用いて説明すると、判定の対象となる第1の冷却管群15Aへの冷却水の供給を停止し、胴体部13内を蛍光塗料が溶解された水30で満たし、第1の冷却管群15A内部に端部よりブラックライト31を照射し、冷却管14内部においてブラックライト31に照射されることによる水30に溶解された蛍光塗料の発光が確認できるか否かにより冷却管14の漏水の有無を判定することを特徴とするものである。
上記構成の特許文献2に開示される発明によれば、胴体部内を蛍光塗料が混入された水で満たすことで、蛍光塗料を含んだ水が漏洩冷却管内に侵入し、冷却管に漏水箇所がある場合には、各冷却管内をブラックライトで照射すると冷却管内に浸入した水に含まれる蛍光塗料が発光するため、容易に漏水の有無を判定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−106985号公報
【特許文献2】特開2009−133568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、復水器における冷却管における海水の漏洩個所を特定するためには、タービンを停止させる必要があった。これに対し、特許文献1に開示される発明によれば、タービンを停止させることなく海水が漏洩している冷却管を特定することができるので、その点では大幅に作業効率を改善することができた。
しかしながら、特許文献1に開示される発明では、冷却水である海水の出入り口に当たる入口側水室及び出口側水室内の海水を全て抜き取り、管板に配設される冷却管の管口の全てにラップフィルムを張ってその表面の変化を観察する必要があり、通常、管口は多数あるため、全ての管口へのラップフィルムを貼付ける作業は極めて煩雑であった。
例えば、復水器において冷却管を支持する管板に配設される管口群において、仮に、水平配置行における最下行に漏洩冷却管があり、全管口群の最上水平配置行から順次ラップフィルムを貼付けて漏洩冷却管の特定を行う場合、結果として、大多数の管口へのラップフィルムの貼付け作業が無駄になってしまい、作業効率を向上しがたいという課題があった。
【0007】
特許文献2に開示される発明の場合、管口へのラップフィルムの貼付け作業を行う必要がないものの、復水器の胴体部内を蛍光塗料を溶解した水で満たす必要があり、漏洩冷却管を特定した後の、胴体部から蛍光塗料入りの水を抜き取る作業や、胴体部内及び冷却管群の表面を洗浄する等の作業が煩雑であった。
【0008】
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものでありその目的は、タービンを停止させることなしに復水器において,冷却管の管口にラップフィルムを張ってその表面の変化を観察して,海水が漏洩している冷却管を特定する復水器の漏洩冷却管特定方法において、漏洩冷却管の管口を含む一部の管口群を正確に抽出し、その管口群にラップフィルムを貼付けるだけで確実に漏洩冷却管の管口を特定することができる復水管の漏洩冷却管特定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため請求項1記載の発明である復水器の漏洩冷却管特定方法は、蒸気タービンから排出される蒸気を凝縮させる冷却水として使用される海水を通過させ、複数の冷却管からなる一方及び他方の冷却管群と、この冷却管群が配置される胴体部と、冷却管へ海水を供給する一方及び他方の入口側水室と、冷却管を通過した海水を受け入れる一方及び他方の出口側水室と、冷却管の両端部を固定し、胴体部と,一方及び他方の入口側水室及び一方及び他方の出口側水室のそれぞれと,を隔離する一対の管板と、を備え、一方の入口側水室は一方の出口側水室と一方の冷却管群を介して接続されるとともに,他方の入口側水室は他方の出口側水室と他方の冷却管群を介して接続される復水器の冷却管のうち、蒸気タービンが稼働している間に海水が漏洩している冷却管を特定する方法であって、一方の入口側及び一方の出口側水室,又は,他方の入口側及び他方の出口側水室から,海水の水位を段階的に低下させながら排出させるとともに、胴体部下方の復水滞留部における塩分濃度を,海水を排出する際のそれぞれの水位毎に検出する海水排出・検塩工程と、この海水排出・検塩工程において、海水の水位を1段階低下させた場合で,かつ,水位を1段階低下させた後の新たな水位において復水滞留部における塩分濃度の時間勾配の変化率がマイナスになる場合に、管板上における1段階分の水位の変化領域内に配置される全ての管口にラップフィルムを貼付するフィルム貼付工程と、管口のラップフィルムの形状が所定の状態に変化した場合にその冷却管が漏洩管であると判断する漏洩判定工程と、を備えることを特徴とするものである。
上記構成の発明において、海水排水・検塩工程は、次の工程において管板に配設される一部の冷却管の管口群にラップフィルムを貼付可能にするために、一方の入口側及び一方の出口側水室,又は,他方の入口側及び他方の出口側水室から海水を抜き取るとともに、その海水の抜き取り作業を段階的に行い,かつ,水位を1段階低下させる毎に復水滞留部における塩分濃度の時間勾配の変化率を観察することで、管板に配設される全ての管口ではなく、それから抽出され全ての管口よりも少ない数の管口からなる管口群をラップフィルム貼付け対象として抽出するという作用を有する。
この工程に続く、フィルム貼付工程は、先の海水排水・検塩工程において抽出された管口群にのみラップフィルムを貼付ける工程であり、管板に配設される全ての管口にラップフィルムを貼る場合に比べて、作業員の負荷が軽減されるという作用を有する。
そして、最後の漏洩判定工程では、ラップフィルムが貼付けられた管口群の中から、ラップフィルムの貼付け形状が変化したものを、漏洩冷却管として特定するという作用を有する。
【0010】
請求項2記載の発明である復水器の漏洩冷却管特定方法は、請求項1記載の復水器の漏洩冷却管特定方法であって、海水排出・検塩工程において、水位は、管板に配設される管口群の水平配置行間に設定されることを特徴とするものである。
上記構成の発明は、請求項1記載の発明と同じ作用に加えて、海水排出・検塩工程において海水を段階的に低下させる際の水位を,管板上における管口群の水平配置行間に設定することで、ラップフィルム貼付け対象として抽出された管口群中に、漏洩冷却管の管口が含まれるか否かの判定の精度を高めるという作用を有する。
【0011】
請求項3記載の発明である復水器の漏洩冷却管特定方法は、請求項2記載の復水器の漏洩冷却管特定方法であって、海水排出・検塩工程において、水位は、管板に配設される管口群の1水平配置行毎に設定されることを特徴とするものである。
上記構成の発明は、請求項2記載の発明と同じ作用に加えて、海水排出・検塩工程において海水を段階的に低下させる際の水位を1水平配置行毎に設定することで、ラップフィルムを貼付ける管口の最大数を、1水平配置行を構成する全ての管口数にするという作用を有する。
つまり、漏洩冷却管の管口が、全管口群のうちのどの水平配置行中にあるかを判別可能にするという作用を有する。
【0012】
請求項4記載の発明である復水器の漏洩冷却管特定方法は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の復水器の漏洩冷却管特定方法であって、海水排出・検塩工程において、水位を1段階低下させた際に少なくとも10分間はその水位を維持することを特徴とするものである。
上記構成の発明は、請求項1乃至3のそれぞれに記載の発明と同じ作用に加えて、水位を1段階低下させた際に少なくとも10分間その水位を維持することで、塩分濃度の時間勾配の変化率の検出精度を高めるという作用を有する。
これにより、請求項1乃至3のそれぞれに記載される方法により、管板に配設される全ての管口から,ラップフィルムを貼付ける管口群を抽出する際の、判定ミスが生じるリスクを軽減するという作用を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1記載の復水器の漏洩冷却管特定方法によれば、従来のように(特許文献1に開示される発明の場合のように)、管板に配設される全ての管口にラップフィルムを貼付ける必要がない。すなわち、漏洩冷却管の管口を含む一部の管口にだけラップフィルムを貼付ければよいので、復水器における漏洩冷却管の特定作業の作業効率を向上することができる。
また、ラップフィルムを貼付ける管口群を全管口から抽出する作業を、復水器の一方の入口側及び一方の出口側水室,又は,他方の入口側及び他方の出口側水室から冷却水を排出する作業と併せて行うことができる。
さらに、海水排出・検塩工程において用いられる検塩手段は、復水器に常設されるものであるため、請求項1に係る復水器の漏洩冷却管特定方法を実施するにあたり、新たに設備を追加する必要がない。
従って、請求項1記載の発明によれば、設備投資を何ら行うことなく復水器の漏洩冷却管の特定作業の作業効率を向上することができる。
【0014】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明と同じ効果に加えて、海水排出・検塩工程において、管板上における1段階分の水位の変化領域内に配置される管口中に、漏洩冷却管の管口が含まれるか否かを判定する際にその判定の精度を高めることができる。
これにより、復水器の漏洩冷却管の特定作業の作業効率を向上するとともに、その精度も高めることができる。
【0015】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明と同じ効果に加えて、ラップフィルムを貼付ける管口の数を、最少で管板に配設される全ての管口における1水平配置行分にすることができる。
従来技術においては、漏洩冷却管の管口を特定するにあたり、管板に配設される全ての管口にラップフィルムを貼付ける必要があったが、請求項3記載の発明によれば、最少の場合、管板に配設される管口のうち1水平配置行分の管口にラップフィルムを貼付けるだけで、漏洩冷却管を正確に特定することができる。
従って、従来技術に比べて漏洩冷却管の特定作業の作業効率を大幅に向上することができる。
【0016】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至請求項3のそれぞれの発明の効果に加えて、海水排出・検塩工程における、塩分濃度の時間勾配の変化率の読み取りミスが生じるリスクを低減できる。この結果、ラップフィルムの貼付けが必要な管口群を正確に抽出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施の形態に用いられる復水器の断面斜視図である。
【図2】本実施の形態に用いられる復水器の断面図である。
【図3】本発明の実施例1に係る復水器における入口側水室又は出口側水室における水位の変化を説明するための矢視図である。
【図4】本発明の実施例1に係る復水器の漏洩冷却管特定方法の工程を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施例2に係る復水器における入口側水室又は出口側水室における水位の変化の例を説明するための矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態に係る復水器の漏洩冷却管特定方法について実施例1及び実施例2を参照しながら詳細に説明する。
本発明に係る復水器の漏洩冷却管特定方法は、先に述べた特許文献1に開示される発明の利用発明であり、火力発電プラントのおおまかな構成については特許文献1に開示されるものとほぼ同じであるためその詳細な説明については省略する。
【0019】
まず、本発明に係る復水器の漏洩冷却管特定方法の実施対象である復水器について図1,2を参照しながら詳細に説明する。
図1は本実施の形態において用いられる復水器の一部を欠いた断面斜視図である。また、図2は図1中のP−P線矢視断面図である。なお、図2においては入口及び出口側水室がともに冷却水である海水Wで満たされた状態を示している。
図1,2に示すように、本実施の形態に係る復水器2は主に、胴体部3と、この胴体部3の一方側に設けられる第1及び第2の入口側水室4A,4Bと、胴体部3の他方側に設けられる第1及び第2の出口側水室5A,5Bからなり、第1の入口側水室4Aと第1の出口側水室5A、そして、第2の入口側水室4Bと第2の出口側水室5Bは、複数の冷却管6によりそれぞれ連結されて、冷却水である海水Wが第1及び第2の入口側水室4A,4Bから、冷却管6を介して第1及び第2の出口側水室5A,5Bに流入するよう構成され、冷却管6により海水Wが胴体部3を通過する際に、蒸気供給部20から胴体部3に送給される発電用タービンにおいて使用済の水蒸気を冷却して凝集させる構成となっている。
【0020】
より具体的には、本実施の形態に係る復水器2では、冷却水として使用される海水Wが供給される入口側に、第1入口側水室4Aと第2入口側水室4Bが併設され、海水Wが排出される出口側には、第1出口側水室5Aと第2出口側水室5Bとが併設されており、第1入口側水室4Aと第1出口側水室5Aとをつなぐ冷却管6が胴体部3内において多数並列に配置されて第1の冷却管群7Aを形成し、第2入口側水室4Bと第1入口側水室4Aとをつなぐ冷却管6が胴体部3内において多数並列に配置されて第2の冷却管群7Bを形成し、胴体部3は第1及び第2の冷却管群7A,7Bからなる管巣8をなしている。
また、第1及び第2の入口側水室4A,4Bと胴体部3、及び、第1及び第2の出口側水室5A,5Bと胴体部3は、ともに管板9で間仕切られており、この管板9で冷却管6の一端6aと他端6bが支えられて、胴体部3内に平行に冷却管6が配設されている。そして、第1及び第2の入口側水室4A,4Bと、第1及び第2の入口側水室4A,4Bの管板9には、冷却管6の管口10が規則的に並んでいる。
【0021】
また、第1及び第2の入口側水室4A,4Bのそれぞれには、冷却水供給弁11を備えた冷却水供給管12が連結され、この冷却水供給管12を介して第1及び第2の入口側水室4A,4Bのそれぞれに海水Wが供給されている。
そして、第1及び第2の出口側水室5A,5Bのそれぞれには、冷却水排水弁13を備えた冷却水排水管14が連結されており、冷却管6を介して第1及び第2の入口側水室4A,4Bから第1及び第2の出口側水室5A,5Bに
流入した海水Wが、冷却水排水管14を介して復水器2の外に排出される仕組みになっている。
【0022】
また、復水器2の下部には、胴体部3の管巣8において水蒸気が冷却されて凝集してなる復水17を貯留するための復水滞留部15が設けられている。さらに、復水滞留部15の底部15aには復水器出口16が設けられており、復水器2において凝集された復水17は、再び加熱されてタービンに送給されて発電プラント内を循環する。
なお、復水滞留部15は、仕切り板18により仕切られており、第1の冷却管群7Aにより冷却されて凝集してなる復水17と、第2の冷却管群7Bにより冷却されて凝集してなる復水17とが互いに混じり合わないようになっている。
また、第1の冷却管群7A側の第1の滞留部15Aと、第2の冷却管群7B側の第2の滞留部7B(図示しないが、第1の滞留部15Aと区別するために便宜上符号を付与している)のそれぞれの底部15aには、検塩計19が設けられており、復水17中の塩分濃度を監視することにより冷却管6からの海水Wの漏れを検知可能に構成されている。
つまり、復水滞留部15は、仕切り板18により仕切られているので、第1の滞留部15Aにおいて塩分濃度の異常が検出された場合には、第1冷却管群7Aに漏洩管が存在することになり、他方、第2の滞留部15Bにおいて塩分濃度の異常が検出された場合には、第2冷却管群7Bに漏洩管が存在することになる。
なお、ここでは、第1冷却管群7Aに漏洩管があり、その位置を特定する場合を例に挙げて説明する。
【0023】
また、図1及び図2には特に示していないが、復水滞留部15(15A,15B)に集められた復水17の一部は、復水滞留部15(15A,15B)から抜き取られ、図示しない復水脱塩装置において脱塩された後、再び復水滞留部15(15A,15B)に戻される。
より具体的には、復水17の一部は、復水滞留部15(15A,15B)から復水ポンプ(図示せず)により抜き取られて復水脱塩装置に送られ、ここで脱塩処理された後、図示しない、低圧ヒータ、脱気器、給水ポンプ、高圧ヒータ、ボイラを経てタービンに供給され、蒸気供給部20を介して再び復水器2に戻される。
従って、復水脱塩装置に送給するために復水滞留部15(15A,15B)から抜き取られる復水17の抜き取り量にもよるが、第1冷却管群7Aに漏洩管がある場合、復水脱塩装置が作動していても,復水滞留部15Aには海水が一定の速度で供給され続けることになる。このため、復水滞留部15Aの検塩計19において検出される復水17中の塩分濃度は、海水の供給量がかなりの長時間に亘って脱塩装置の処理能力が低下しない限り一定の値で推移することになる。
つまり、復水器2の第1冷却管群7Aにおける漏洩管の管口10の位置を特定する場合、復水脱塩装置が一定の処理能力で尚も作動していたとしても、漏洩管のレベルまで海水が満たされており、漏洩管から供給される海水が一定量で復水滞留部15Aに流入し続ける限り、復水滞留部15Aの復水17の塩分濃度は、一定の値で推移することになる。
しかしながら、漏洩管からの海水の漏れがなくなると、塩分が供給されないので、塩分濃度の上昇速度が低下,又は,塩分濃度の上昇が停止,あるいは塩分濃度が下降する。すなわち、いずれも塩分濃度の時間勾配の変化率はマイナスとなるのである。
【実施例1】
【0024】
本発明の実施例1に係る復水器の漏洩冷却管特定方法について図1乃至4を参照しながら詳細に説明する。
図3は本発明の実施例1に係る復水器における入口側水室又は出口側水室における水位の変化を説明するための矢視図である。つまり、図3は、図1中の符号Qで示す方向から見た矢視図である。なお、図1又は図2に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
図1乃至3に示すように復水器2においては、胴体部3と第1の入口側水室4A,第2の入口側水室4B、及び、胴体部3と第1の出口側水室5A,第2の出口側水室5Bを間仕切るそれぞれの管板9に、例えば、水平方向に6行、垂直方向に5列の合計30ヶ所に管口10が配設されているとする。そして、この管口10群において水平方向に配置されるそれぞれの行を鉛直上方から順にA行、B行、C行、…、F行と呼ぶ。
【0025】
まず、実施例1に係る復水器の漏洩冷却管特定方法により、漏洩冷却管を含む水平配置管口行が抽出される原理について説明する。
図2に示すように、第1の入口側水室4Aと第1の出口側水室5Aにおける管板9に配設される全ての管口10が水没するように海水Wで満たした場合に、すなわち、図3中の符号iで示す位置まで海水Wを満たした場合で、かつ、検塩計19により復水中の塩分の濃度の異常(上昇)が検出された場合、A〜F行のいずれかの水平配置行に属する管口10に漏洩管の管口10が含まれることになる。
次に、海水Wの水位を、図3に示す管口群において、A行とB行の間、すなわち、図3中の符号iiで示す位置にまで1段階低下させた場合で、検塩計19において検出される塩分濃度の時間勾配の変化率がマイナスにならない場合は、A行に属する管口10がなくとも海水からの塩分が供給されるが故に塩分濃度の時間勾配の変化率に変化がないと考えられるため、A行には漏洩管の管口10は含まれていないと判断できる。この場合、漏洩管の管口10は、残りのB〜F行の水平配置行に属する管口10に含まれると判断できる。
他方、図3中の符号iiで示す位置にまで海水Wの低下させた際に、検塩計19において検出される塩分濃度の時間勾配の変化率がマイナスになった場合は、A行に属する管口10群に漏洩管の管口10が存在すると判断できる。なぜならば、A行に属する管口10群からの海水が漏洩しなくなったことで塩分の供給も止まり、塩分濃度の時間勾配の変化率がマイナスとなるためである。また、残りのB〜F行の水平配置行に属する管口10に、別の漏洩管の管口10が含まれないとは言い切れないので、引き続き段階的な水位の低下と、それぞれの水位における検塩計19による塩分濃度の時間勾配の変化率を観察する必要がある。
なお、本願明細書及び特許請求の範囲において、「1段階」とは、このように管口群における、ある水平配置行に属する管口間から、隣接する水平配置行に属する管口間への移動の単位を意味するものである。例えば、A行とB行の間にあった水位をB行とC行の間に移動させる場合が相当する。また、塩分濃度の時間勾配の変化率とは、塩分濃度の加速度、すなわち、塩分濃度の時間勾配の時間変化率である。従って、供給される塩分が停止した場合はもちろん、複数の管口10の行に漏洩管が含まれるような場合に、最初の漏洩管を含む行を通過して供給される塩分量が少なくなったものの完全に停止しないような場合においても、塩分濃度の時間勾配は緩慢になってその変化率はマイナスとなるのである。
【0026】
続いて、今度は、海水Wの水位を、図3に示す管口群において、B行とC行の間、すなわち、図3中の符号iiiで示す位置にまで低下させた場合で、検塩計19において検出される塩分濃度の時間勾配の変化率がマイナスにならない場合は、B行に属する管口10には漏洩管の管口10は含まれていないと判断できる。
他方、図3中の符号iiiで示す位置にまで海水Wを1段階低下させた場合で、検塩計19において検出される塩分濃度の時間勾配の変化率がマイナスになった場合は、B行に属する管口10群に漏洩管の管口10が存在すると判断できる。また、残りのC〜F行の水平配置行に属する管口10に、漏洩管の管口10が含まれないとは言い切れないので、引き続き段階的な水位の低下と、それぞれの水位における検塩計19による塩分濃度の時間勾配の変化率を観察する必要がある。
【0027】
さらに、海水Wの水位を、図3に示す管口群において、C行とD行の間、すなわち、図3中の符号ivで示す位置にまで1段階低下させた場合で、検塩計19において検出される塩分濃度の時間勾配の変化率がマイナスにならない場合は、C行に属する管口10には漏洩管の管口10は含まれていないと判断できる。
他方、図3中の符号iiiで示す位置にまで海水Wを低下させた場合で、検塩計19において検出される塩分濃度の時間勾配の変化率がマイナスになった場合は、C行に属する管口10群に漏洩管の管口10が存在すると判断できる。また、残りのD〜F行の水平配置行に属する管口10に、漏洩管の管口10が含まれないとは言い切れないので、引き続き段階的な水位の低下と、それぞれの水位における検塩計19による塩分濃度の時間勾配の変化率を観察する必要がある。
【0028】
このように、海水Wの水位を1段階低下させた場合に、第1の滞留部15Aに設けられる検塩計19により検出される塩分濃度の時間勾配の変化率がマイナスになるということは、海水Wの水位を1段階低下させる前よりもその後の方が、第1の滞留部15Aにおける復水17中の塩分濃度の上昇速度が低下,又は, 塩分濃度の変化が停止あるいは塩分濃度が減少していることを意味している。
つまり、第1の滞留部15Aにおける復水17中の塩分濃度の上昇速度の低下,又は, 塩分濃度の変化の停止あるいは塩分濃度が減少という現象は、海水Wの水位の変化に伴って第1冷却管群7Aからの海水Wの漏出量が減ったという事実を裏付けている。
すなわち、1段階分の海水Wの水位の変化領域内に配置される管口10に、漏洩管の管口10が少なくとも1つ含まれていると言える。
【0029】
他方、海水Wの水位を1段階低下させた場合に、第1の滞留部15Aに設けられる検塩計19により検出される塩分濃度の時間勾配の変化率がマイナスにならない場合は、海水Wの水位を1段階低下させる前と後とで、第1の滞留部15Aにおける復水17中の塩分濃度の増加(上昇)のスピードに変化がないことを意味している。
つまり、海水Wの水位を変化させても第1の滞留部15Aにおける復水17中の塩分濃度の増加(上昇)のスピードに変化が生じない原因は、第1冷却管群7Aからの海水Wの漏出が起こっていないことに他ならない。
すなわち、1段階分の海水Wの水位の変化領域内に配置される管口10には、漏洩管の管口10が存在しないことを意味している。
【0030】
ここで、実施例1に係る復水器の漏洩冷却管特定方法の流れを、図4を参照しながら詳細に説明する。
図4は本発明の実施例1に係る復水器の漏洩冷却管特定方法の工程を示すフローチャートである。なお、図1乃至図3に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
まず、図4を参照ながら平常運転時、すなわち、第1の冷却管群7Aを構成する冷却管6に漏洩が発生してない状態について説明する。
平常運転時においては、復水器2の復水滞留部15(第1の滞留部15A)において、常時又は一定時間ごとに検塩計19において復水17中の塩分濃度が検出され(ステップS0)、復水17中の塩分濃度の異常が(塩分濃度の上昇が)検出されない場合は、このステップS0が繰り返される。
【0031】
他方、先のステップS0において復水17中の塩分濃度の上昇が検出された場合には、第1の冷却管群7Aを構成する冷却管6に漏洩が生じていると判定され、実施例1に係る復水器の漏洩冷却管特定方法1により、漏洩管が特定される。
実施例1に係る復水器の漏洩冷却管特定方法1では、まず、第1の入口側水室4A及び第1の出口側水室5Aを満水にした状態での復水17中の塩分濃度が検出され(ステップS1)、このステップS1において塩分濃度の時間勾配の変化率がマイナスになった場合は、先のステップS0における判定は誤判定とされて再びステップS0に戻る。
【0032】
他方、このステップS1において再度復水17中の塩分濃度に異常が検出された場合、すなわち、塩分濃度の時間勾配の変化率がマイナスにならない場合は、漏洩管の管口10を含む水平配置行の管口10群を特定するために、下記の工程が実施される。
まず、第1の入口側水室4A及び第1の出口側水室5Aにおいて満水時の状態から1段階水位を下げるとともに(ステップS2)、一定時間その状態を維持して検塩計19により計測される復水17の塩分濃度の時間勾配の変化率がマイナスになるか否かを観察する(ステップS3)。
このステップ2において海水Wの水位を1段階低下させる場合、低下後の水位を、図3に示すように、管口10群における水平配置行間21に設定するとよい。この場合、管板9に配設される管口10を、海水W中に完全に水没している状態と、海水Wから完全に露出している状態の2種類のみにすることができるので、各水平配置行を構成する管口10群中に漏洩管の管口10が含まれるか否かを正確に判定することができる。
【0033】
このことは、以下に示す例から明らかである。例えば、管口10の一部のみが海水Wに水没した状態となるように水位を設定すると、その管口10につながる冷却管6内が海水Wで満たされないので、冷却管6内に漏洩個所が存在しても冷却管6からの海水Wの漏洩が起こらない場合もあり、この場合、復水17中の塩分濃度の時間勾配の変化率に変化が起こらず、その水平配置行を構成する管口10群が、漏洩管の管口10を含むか否かを正確に判定できなくなってしまう。
従って、ステップ2において海水Wの水位を1段階低下させる場合は、低下後の水位を、図3に示すように、管口10群の水平配置行間21に設定することが望ましい。
また、図4に示すステップS3を実施する際に、先のステップS2において低下させた水位を少なくとも10分以上維持しておくことが望ましい。これは、水位を低下させた後のその水位の維持時間が10分以内だと、復水17中の塩分濃度の時間勾配の変化率の変化が正確に反映されず、誤判定が起こるおそれがあり好ましくない。
【0034】
そして、ステップ3において復水17中の塩分濃度の時間勾配の変化率がマイナスにならなかった場合は、管板9上における1段階分の水位の変化領域内に配置される管口10群、すなわち、実施例1においては1水平配置行を構成する管口10群内に、漏洩管の管口10は含まれていないと判定することができる。
【0035】
他方、ステップS2を実施した後のステップS3において、復水17中の塩分濃度の時間勾配の変化率がマイナスになった場合は、その直前のステップS2における管板9上の1段階分の水位の変化領域内に配置される管口10群(実施例1においては1水平配置行を構成する管口10群)内に、漏洩管の管口10が含まれていると判定することができる。
【0036】
このように、実施例1に係る復水器の漏洩冷却管特定方法1においては、上述のステップS2及びステップS3を繰り返すことで、すなわち、全ての第1冷却管群7Aに対して、管板9上における海水Wの水位を低下させる前と、水位を1段階低下させた後の、復水17中の塩分濃度の時間勾配の変化率を観察することにより、次のステップS4においてラップフィルムを貼付けるべき管口10群を抽出することができる。
そして、上述のように、管板9における満水の状態から1段階ずつ(実施例1においては1水平配置行ずつ)海水Wの水位を、管板9に配設される管口10群の最下段下まで(図4中の符号viiで示す位置まで)低下させ(ステップS2)、その都度、復水17中の塩分濃度の時間勾配の変化率を観察して(ステップS3)、1段階分の水位の変化領域内に配置される管口10群に、漏洩管の管口10が含まれるか否かを判定する工程が、海水排水・検塩工程23である。
そして、続くステップS4において漏洩管の管口10が含まれると考えられる全ての管口群を構成する全ての管口10にラップフィルムを貼付け、このステップS4の後に、管口10に貼付けられたラップフィルムが所定の形状に変形するのが確認された場合に、その管口10につながる冷却管6を漏洩管と特定することができる(ステップS5)。
より具体的には、例えば、管口10に貼付けられたラップフィルムが冷却管6内に引っ張られて凹状に変化するか、若しくは、管口10に貼付けられたラップフィルムが破れる等の状態の変化を起こした場合に、その冷却管6が漏洩管であると判定することができる。
【0037】
従来技術に係る(特許文献1に開示される)復水器の漏洩冷却管の特定方法の場合、第1の冷却管群7Aから漏洩管を特定するのに当たり、第1の入口側水室4A及び第1の出口側水室5Aのそれぞれの管板9に配設される全ての管口10にラップフィルムを貼付ける必要があり煩雑であった。
これに対して、実施例1に係る復水器の漏洩冷却管特定方法1によれば、第1の入口側水室4A及び第1の出口側水室5Aから冷却水である海水Wを抜き取る作業を段階的に行い、かつ、海水Wの水位を1段階下げる毎に復水滞留部15(第1の滞留部15A)に設置される検塩計19により復水17中の塩分濃度を計測し、水位を1段階下げる前に計測される塩分濃度の時間勾配の変化率と,水位を低下させた後の塩分濃度の時間勾配の変化率の変化を観察することで、ラップフィルムを貼付けるべき管口10を限定してその数を大幅に少なくすることができる。
特に、実施例1に係る復水器の漏洩冷却管特定方法1の場合、管板9上における海水Wの水位の変化を1水平配置行分の管口10群としているので、ラップフィルムを貼付ける管口10の数を1水平配置行の倍数にすることができる。
このような実施例1に係る復水器の漏洩冷却管特定方法1によれば、精度を低下させることなく,少ない作業量で漏洩管の管口位置を特定することができる。従って。漏洩管の特定作業の作業効率を向上することができる。
また、実施例1に係る復水器の漏洩冷却管特定方法1によれば、発電プラントにおいてタービンを稼働させたまま漏洩管の管口10を特定することができるので、漏洩管の交換等のメンテナンスにおいてタービンを停止させる時間を短くすることができる。
【0038】
なお、特に図示していないが、第1の入口側水室4A,第1の出口側水室5A、及び、第2の入口側水室4B,第2の出口側水室5Bの水位を、復水器2の外から監視可能にするための水位計又は水位センサが設けられている。
この水位計は、第1の入口側水室4A,第1の出口側水室5A,第2の入口側水室4B,第2の出口側水室5Bのそれぞれに対して個別かつ独立して設けても良いし、第1の入口側水室4A,第1の出口側水室5Aに対して1つの水位計又は水位センサを、また、第2の入口側水室4B,第2の出口側水室5Bに対して別に他の水位計又は水位センサを設けてもよい。
この場合、復水器2の第1の入口側水室4A,第1の出口側水室5A,第2の入口側水室4B,第2の出口側水室5Bから海水Wの水位を段階的に低下させる際に、その作業をスムースかつ正確に行うことができる。
また、下記の実施例2に係る復水器の漏洩冷却管特定方法を実施する際にも、上述のような水位計又は水位センサを設けた復水器2を用いることが望ましい。
なお、本願明細書における水位計及び水位センサを設けるという概念には、予め常設されている場合をはじめとして、仮設で点検時にのみ設ける場合も含まれるものである。
【実施例2】
【0039】
実施例2に係る復水器の漏洩冷却管特定方法について図5を参照しながら詳細に説明する。
図5は本発明の実施例2に係る復水器における入口側水室又は出口側水室における水位の変化の例を説明するための矢視図である。つまり、図5も図1中の符号Qで示す方向から見た矢視図である。
先の実施例1に係る復水器の漏洩冷却管特定方法1では、第1の入口側水室4A及び第1の出口側水室5Aの海水Wを、管板9に配設される管口10群の1水平配置行ずつ段階的に低下させる場合を例に挙げて説明したが、海水Wの水位の変化量は、必ずしも1水平配置行ずつにする必要はない。
また、管板9に配設される管口10群の水平配置行数が多い場合に、実施例1に係る復水器の漏洩冷却管特定方法1を実施すると、段階的に水位を低下させる際の水位の変位量は1水平配置行分ずつであり、かつ、1段階水位を低下させる毎に最低10分間はその水位を維持することが望ましいため、結果として、第1の入口側水室4A及び第1の出口側水室5Aからの海水Wを排出するのに多くの時間を要してしまい、かえって作業効率が低下することも考えられる。
【0040】
このような事情に鑑み、実施例2に係る復水器の漏洩冷却管特定方法は、先の図4に示す実施例1に係る復水器の漏洩冷却管特定方法1と同じであるが、ステップS2において低下させる水位の変位量を実施例1の場合よりも大きく設定したものである。
例えば、図5中に符号I,II,III,IVで示すように、水位の変位量を2水平配置行毎に設定した場合には、ラップフィルムを貼付ける管口10の数は、実施例1の場合に比べて2倍になるものの、第1の入口側水室4A及び第2の入口側水室4Bから海水Wを排出するのに要する時間は実施例1の場合の約半分となる。
【0041】
このような実施例2に係る復水器の漏洩冷却管特定方法は、ステップS2における水位の変位量が違う以外はすべて実施例1に係る復水器の漏洩冷却管特定方法1と同じであるため、実施例1に係る復水器の漏洩冷却管特定方法1と同じ効果を有する。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上説明したように、本発明は、タービンを停止させることなしに復水器において,冷却管の管口にラップフィルムを張ってその表面の変化を観察して,海水が漏洩している冷却管を特定する復水器の漏洩冷却管特定方法において、漏洩管の管口を含む一部の管口群にのみラップフィルムを貼付けるだけで確実に漏洩管の管口を特定できる復水管の漏洩冷却管特定方法に関するものであり、火力発電プラントや原子力発電プラント等の設備の分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0043】
1…復水器の漏洩冷却管特定方法 2…復水器 3…胴体部 4A…第1の入口側水室 4B…第2の入口側水室 5A…第1の出口側水室 5B…第2の出口側水室 6…冷却管 6a…一端 6b…他端 7A…第1冷却管群 7B…第2冷却管群 8…管巣 9…管板 10…管口 11…冷却水供給弁 12…冷却水供給管 13…冷却水排出弁 14…冷却水排出管 15…復水滞留部 15A…第一の滞留部 15B…第二の滞留部(図示せず) 15a…底部 16…復水器出口 17…復水 18…仕切り板 19…検塩計 20…蒸気供給部 21…水平配置行間 22…平常運転時 W…海水 23…海水排水・検塩工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気タービンから排出される蒸気を凝縮させる冷却水として使用される海水を通過させ、複数の冷却管からなる一方及び他方の冷却管群と、この冷却管群が配置される胴体部と、前記冷却管へ前記海水を供給する一方及び他方の入口側水室と、前記冷却管を通過した海水を受け入れる一方及び他方の出口側水室と、前記冷却管の両端部を固定し、前記胴体部と,前記一方及び他方の入口側水室及び前記一方及び他方の出口側水室のそれぞれと,を隔離する一対の管板と、を備え、
前記一方の入口側水室は前記一方の出口側水室と前記一方の冷却管群を介して接続されるとともに,前記他方の入口側水室は前記他方の出口側水室と前記他方の冷却管群を介して接続される復水器の前記冷却管のうち、前記蒸気タービンが稼働している間に前記海水が漏洩している冷却管を特定する方法であって、
前記一方の入口側及び一方の出口側水室,又は,前記他方の入口側及び他方の出口側水室から,前記海水の水位を段階的に低下させながら排出させるとともに、前記胴体部下方の復水滞留部における塩分濃度を,前記海水を排出する際のそれぞれの前記水位毎に検出する海水排出・検塩工程と、
この海水排出・検塩工程において、前記海水の前記水位を1段階低下させた場合で,かつ,前記水位を1段階低下させた後の新たな前記水位において前記復水滞留部における前記塩分濃度の時間勾配の変化率がマイナスになる場合に、前記管板上における1段階分の前記水位の変化領域内に配置される全ての前記管口にラップフィルムを貼付するフィルム貼付工程と、
前記管口の前記ラップフィルムの形状が所定の状態に変化した場合にその冷却管が漏洩管であると判断する漏洩判定工程と、を備えることを特徴とする復水器の漏洩冷却管特定方法。
【請求項2】
前記海水排出・検塩工程において、前記水位は、前記管板に配設される管口群の水平配置行間に設定されることを特徴とする請求項1記載の復水器の漏洩冷却管特定方法。
【請求項3】
前記海水排出・検塩工程において、前記水位は、前記管板に配設される管口群の1水平配置行毎に設定されることを特徴とする請求項2記載の復水器の漏洩冷却管特定方法。
【請求項4】
前記海水排出・検塩工程において、前記水位を1段階低下させた際に少なくとも10分間はその水位を維持することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の復水器の漏洩冷却管特定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−172946(P2012−172946A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37864(P2011−37864)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)