説明

復水水質監視装置

【課題】ボイラ及び蒸気使用設備から復水への不純物の混入を感度良く監視する装置を提供する。
【解決手段】蒸気使用設備4から排出された復水の一部が導入管6から分取され、熱交換器11及び空冷カラム13を経て設定温度とされた後、計測器17に導入して性状測定が行われる。測定結果は、計測器17から制御手段20に送信される。測定結果が基準値を超えると、制御手段20から弁5a、7a,8aに信号が送信されると共に、管理センタにアラームが送信される。これにより、弁5aが閉弁すると共に弁7aが開弁し、蒸気使用設備4から排出される復水は、原水配管1に供給されることなく、排水配管7から系外に排出される。また、弁8aの開度を大きくし、配管8からの水処理薬剤の薬注量を増大させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラで発生した蒸気が凝縮してなる復水の水質を監視する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラ給水中の不純物は、ボイラ内にスケールを発生させる原因となり得る。
【0003】
例えば、ボイラ給水中に、溶解度の非常に小さい物質、すなわちカルシウムやマグネシウム等の硬度成分などが含まれていると、温度上昇や濃縮によって不溶性の固形物が生じ、その一部はスラッジとしてボイラ内に堆積したりスケールとしてボイラ内壁に付着したりする。特に、伝熱面では濃縮が著しくなり、スケール化が促進される。
【0004】
また、ボイラ給水中に有機系不純物が含まれていると、該有機系不純物がボイラ内で濃縮して腐食の原因となったり、ボイラ水が泡立って蒸気中に混入するキャリーオーバーが発生したりすることがある。
【0005】
従来、ボイラ内にこのようなスケール、腐食、キャリーオーバー等が発生するのを防止するために、原水中の不純物を除去してからボイラに給水することが行われている。
【0006】
例えば、特許第4139938号には、原水を軟水器で軟水化してからボイラに給水することが記載されている。同号では、この軟水器で処理した後の原水の硬度成分濃度を硬度検出器で測定し、該硬度成分濃度が設定値よりも高い場合には、原水のボイラ装置への供給を停止している。
【特許文献1】特許第4139938号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
省エネルギー対策として、ボイラで製造した蒸気を蒸気使用設備で使用することによって排出される復水(ドレン)を回収し、この復水をボイラ用の原水に混合してボイラ給水として使用することがある。これにより、蒸気使用設備から排出された復水の高い熱量を有効利用することができると共に、補給水の使用量を削減することも可能となる。
【0008】
しかしながら、かかる復水はボイラや蒸気使用設備を経由しているため、ボイラや蒸気使用設備からの不純物が復水に混入していることがある。例えば、ボイラや蒸気使用設備内における熱交換器のチューブが破孔しており、該破孔部から復水に不純物が混入することがある。
【0009】
このように復水を回収して補給水に混合して給水として使用する場合にあっては、特許文献1のように補給水の不純物のみを監視する方法によると、復水中の不純物を監視することができない。このため、この復水に起因する不純物がボイラに持ち込まれてスケール発生の原因となる等の問題がある。
【0010】
また、復水と補給水との混合水の性状を監視する方法が行われることもある。しかしながら、このように混合水の性状を監視する場合、復水が補給水で希釈されているため、復水に起因する不純物の検出感度が低くなるという問題がある。
【0011】
本発明は、上記従来技術に鑑み、ボイラ及び蒸気使用設備から復水への不純物の混入を感度良く監視する装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明(請求項1)の復水水質監視装置は、ボイラで発生した蒸気が凝縮してなる復水の水質を監視する装置であって、該復水を冷却する空冷式冷却器と、該空冷式冷却器で冷却された復水の水質を測定する計測器とを有することを特徴とするものである。
【0013】
請求項2の復水水質監視装置は、請求項1において、該計測器で水質が測定された後の復水と、該空冷式冷却器に導入される復水とを熱交換させる熱交換手段を有することを特徴とする。
【0014】
請求項3の復水水質監視装置は、請求項1又は2において、該計測器の測定結果に基づいて、該復水が添加されたボイラ給水又はボイラ缶水に水処理薬剤を注入する手段を有することを特徴とする。
【0015】
請求項4の復水水質監視装置は、請求項1ないし3のいずれか1項において、該計測器の測定結果に基づいて、該復水を該ボイラへの供給水として回収することなく系外に排出する手段を有することを特徴とする。
【0016】
請求項5の復水水質監視装置は、請求項1ないし4のいずれか1項において、該計測器の測定結果に基づいて警報を発する手段を有することを特徴とする。
【0017】
請求項6の復水水質監視装置は、請求項1ないし5のいずれか1項において、該計測器の測定結果を管理センタへ送信する送信手段を有することを特徴とする。
【0018】
請求項7の復水水質監視装置は、請求項1ないし6のいずれか1項において、該計測器は電気伝導率計測器、硬度成分計測器、吸光度計測器、溶存酸素濃度計、pH計、色度計測器、シリカ濃度計測器、塩化物イオン濃度計測器及びMアルカリ度計測器の少なくとも1種であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、ボイラで発生した蒸気が凝縮してなる復水の水質を監視するので、ボイラ及び蒸気使用設備からの復水への不純物の混入を感度良く監視することが可能である。
【0020】
また、計測器で連続的に復水の水質を測定することにより、復水への不純物の混入を早期に検知することが可能となる。
【0021】
本発明において、計測器で水質が測定された後の復水を、空冷式冷却器に導入される復水と熱交換させるための熱交換手段を有するのが好ましい。これにより、復水(ドレン)の冷却効率が向上する。
【0022】
本発明において、計測器の測定結果に基づいて、復水が添加されたボイラ給水又はボイラ缶水に水処理薬剤を注入する手段を有するのが好ましい。これにより、復水の水質が低下(悪化)した場合に迅速に水処理薬剤の薬注を開始したり、薬注量を増加させたりすることができ、ボイラ缶内におけるスケールの発生を防止ないし抑制することができる。
【0023】
本発明において、計測器の測定結果に基づいて、復水を系外に排出する手段を有するのが好ましい。これにより、復水の水質が低下した場合に、復水を速やかに系外に排出し、該復水がボイラ内に供給されることが防止される。その結果、ボイラ缶内におけるスケールの発生を防止ないし抑制することができる。
【0024】
本発明において、計測器の測定結果に基づいて警報を発する手段を有していてもよく、また、計測器の測定結果を管理センタへ送信する送信手段を有していてもよい。これにより、復水の水質低下が、作業員や管理センタの管理者らに確実に認識されることになる。
【0025】
計測器としては、電気伝導率計測器、硬度成分計測器、吸光度計測器、溶存酸素濃度計、pH計、色度計測器、シリカ濃度計測器、塩化物イオン濃度計測器及びMアルカリ度計測器の少なくとも1種が好適に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。第1図は実施の形態に係る復水水質監視装置が設置されたボイラシステムの系統図、第2図は第1図の復水水質監視装置の系統図、第3図は計測器による模式的な測定結果を示すグラフである。
【0027】
第1図の通り、補給水(ボイラ用水)が給水配管1を介してボイラ2に供給され、蒸気とされる。この蒸気は、蒸気配管3を介して蒸気使用設備4に供給される。この蒸気使用設備4内で使用された蒸気は、凝縮して復水となり、復水配管5を介して給水配管1内の原水と混合された後、ボイラ2に供給される。なお、給水タンクを設置し、この給水タンクに復水を戻すようにしてもよい。
【0028】
給水配管1には、弁8aを備えた水処理薬剤注入用の配管8が接続されている。復水配管5には、導入管6を介して復水水質監視装置10が接続されていると共に、弁7aを備えた排水配管7が接続されている。復水配管5には、排水配管7の分岐箇所よりも下流側に弁5aが設けられている。なお、弁5a、7aの代わりに、排水配管7の分岐部に三方弁を設けてもよい。
【0029】
次に、復水水質監視装置10の構成を説明する。
【0030】
第2図の通り、復水配管5内の復水は、該配管5から分岐した導入管6及び熱交換器11を介して空冷式冷却器12の螺旋状の金属細管コイル14の一端側に導入される。この金属細管コイル14は円筒状の空冷カラム13内に配設されており、該空冷カラム13の一端側に送風機15が設置されている。
【0031】
上記の金属細管コイル14としては、内径が0.1〜2.0mm、特に0.5〜1.0mmのものが好ましい。
【0032】
復水の水質を正確に観測するために、計測器17に導入される復水の温度が一定の範囲となるように冷却器12で冷却を行うのが好ましい。本発明では水冷却器12を水冷でなく空冷としているため、冷却された復水を目的の温度範囲に維持しやすい。
【0033】
この金属細管コイル14の他端側が、配管16を介して計測器17の流入口に接続されている。この計測器17の流出口は、排水配管18を介して熱交換器11の冷却媒体流路11aに接続されている。
【0034】
計測器17としては、電気伝導率計測器、硬度成分計測器、吸光度計測器、溶存酸素濃度計、pH計、色度計測器、シリカ濃度計測器、塩化物イオン濃度計測器及びMアルカリ度計測器の少なくとも1種が好適に用いられる。
【0035】
測定器17による測定に際しては、測定器17内に定期的に復水を導入してバッチ式に測定してもよいが、測定器17内に復水を常時通水して連続的に測定するのが好ましい。
【0036】
この計測器17の計測信号が制御手段20に入力される。この制御手段20は、計測器17からの測定結果に基づいて、上記弁5a、7a,8aに制御信号を発信すると共に、図示しない管理センタへ測定結果を発信するように構成されている。
【0037】
なお、導入管6からは枝状に分岐配管19が分岐され、この分岐配管19に開閉弁19aが設けられている。この開閉弁19aは試験開始時と終了時における残留復水の除去に用いられる。
【0038】
このように構成された復水水質監視装置10を用いた水質監視方法の一例を説明する。
【0039】
蒸気使用設備4から復水配管5を介して排出された復水の一部が導入管6から分取され、熱交換器11及び空冷式冷却器12で冷却された後、計測器17に導入され、水質測定が行われる。なお、導入管6への復水(ドレン)の分取量は5〜10mL/分程度の少量で足りる。測定結果は、計測器17から制御手段20に送信されると共に、該制御手段20から図示しない管理センタに送信される。
【0040】
第3図の通り、計測器17による測定値が基準値を超えるようになると、制御手段20から弁5a、7a,8aに信号が送信されると共に、管理センタにアラーム信号が送信される。これにより、弁5aが閉弁すると共に弁7aが開弁し、蒸気使用設備4から排出される復水は、原水配管1に供給されることなく、排水配管7から系外に排出される。また、弁8aの開度が増大し、配管8から原水配管1への水処理薬剤の薬注量を増大させる。
【0041】
なお、復水の水質が低下(悪化)するほど復水の原水への返送量を低下させるように弁5a、7aの開度を制御し、復水水質が基準値を超えたときに復水の返送を停止するように制御してもよい。また、復水の水質が低下するほど、弁8aの開度を大きくして薬注量を多くするようにしてもよい。
【0042】
本実施の形態では、補給水に添加される復水の水質を監視するようにしているため、復水と補給水とが混合された後の水の水質を監視する場合と比べて、復水の水質を感度良く監視することが可能である。
【0043】
また、本実施の形態では、計測器17で連続的に復水の水質を測定することにより、復水への不純物の混入を早期に検知することが可能となる。
【0044】
本実施の形態では、計測器17の測定値に変化が生じたときに、復水を排水配管7から系外に排出している。これにより、ボイラ2や蒸気使用設備4に起因して復水に混入した不純物がボイラ内に供給されることが防止される。その結果、ボイラ缶内におけるスケールの発生を防止ないし抑制することができる。
【0045】
本実施の形態では、計測器17の測定値に変化が生じたときに管理センタにアラーム信号を送信するので、復水への不純物の混入が、管理センタの管理者らに確実に認識されることになる。インターネット等を経由して水処理薬剤や機器のメーカーに連絡を行うようにしてもよい。なお、計測器17の近傍にアラーム装置を設置し、計測値17の測定値に変化が生じたときに、該アラーム装置からアラームを発するようにしてもよい。これにより、計測器17の近傍の作業員に、復水への不純物の混入が確実に認識されることになる。
【0046】
この実施の形態では、金属細管コイル14の前段に熱交換器11が設置されているので、復水(ドレン)の冷却効率が向上する。
【0047】
なお、本実施の形態では、水処理薬剤の注入ポイントは、原水配管1のうち復水配管5の接続箇所よりも下流側(ボイラ側)であるが、これに限定されるものでななく、例えば、ボイラ2内に直接注入するようにしてもよく、原水配管1のうち復水配管5の接続箇所よりも上流側に注入するようにしてもよい。
【実施例】
【0048】
第1図及び第2図のボイラシステムを用いて復水の水質の監視を行った。本実施例では、測定器17として、電気伝導率計測器、Mアルカリ度計測器、硬度成分計測器、塩化物イオン濃度計測器及びシリカ濃度計測器を設置した。
【0049】
なお、蒸気使用設備4は、市水から温水を製造する熱交換器である。導入管6内の復水流量は5mL/分とした。また、運転中にわたり、弁5aは開とし、弁7a,8aは閉弁しておいた。
【0050】
各計測器の検出値の経時変化を第4図に示す。
【0051】
運転開始から9日目に、熱交換器(蒸気使用設備4)が破孔した。第4図から明らかな通り、熱交換器(蒸気使用設備4)の破孔までは復水の性状が安定していたが、破孔後に復水の電気伝導率、Mアルカリ度、全硬度、塩化物イオン濃度及びシリカ濃度のいずれもが大きく増加した。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】実施の形態に係る復水水質監視装置を備えたボイラシステムの系統図である。
【図2】第1図の復水水質監視装置の系統図である。
【図3】計測器による測定結果を示すグラフである。
【図4】試験結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0053】
2 ボイラ
4 蒸気使用設備
10 復水水質監視装置
11 熱交換器
13 空冷カラム
14 金属細管コイル
15 送風機
17 計測器
20 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラで発生した蒸気が凝縮してなる復水の水質を監視する装置であって、
該復水を冷却する空冷式冷却器と、
該空冷式冷却器で冷却された復水の水質を測定する計測器と
を有することを特徴とする復水水質監視装置。
【請求項2】
請求項1において、該計測器で水質が測定された後の復水と、該空冷式冷却器に導入される復水とを熱交換させる熱交換手段を有することを特徴とする復水水質監視装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、該計測器の測定結果に基づいて、該復水が添加されたボイラ給水又はボイラ缶水に水処理薬剤を注入する手段を有することを特徴とする復水水質監視装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、
該計測器の測定結果に基づいて、該復水を該ボイラへの供給水として回収することなく系外に排出する手段を有することを特徴とする復水水質監視装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、該計測器の測定結果に基づいて警報を発する手段を有することを特徴とする復水水質監視装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、該計測器の測定結果を管理センタへ送信する送信手段を有することを特徴とする復水水質監視装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項において、該計測器は電気伝導率計測器、硬度成分計測器、吸光度計測器、溶存酸素濃度計、pH計、色度計測器、シリカ濃度計測器、塩化物イオン濃度計測器及びMアルカリ度計測器の少なくとも1種であることを特徴とする復水水質監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−144947(P2010−144947A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−319712(P2008−319712)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)