説明

循環型ヒートパイプ

【課題】部品数を少なくして構造を簡単にすることができる循環型ヒートパイプを提供する。
【解決手段】循環経路を構成し、この循環経路の一部の長さ範囲が低温部を通り、他の長さ範囲が高温部を通るように配置される循環管路30と、循環管路30内の一部の長さ範囲に封入される作動流体32と、循環管路30の低温部を通る任意の長さ範囲の部屋の両端部に設けられ、作動流体32の循環方向を一方向に規制するための一対の逆止弁34,36とを備え、作動流体の液相部分32bの長さ範囲の一方の液面の高さが、循環管路30における下流側の逆止弁36より下流側において基準高さ25よりも上方に設定され、作動流体の液相部分32bの長さ範囲の他方の液面の高さが、循環管路30における上流側の逆止弁34より上流側において基準高さ25よりも下方に設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、夏季の気温のような高温部と地中の温度のような低温部との間の温度差を利用した熱輸送システムに用いられる循環型ヒートパイプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の循環型ヒートパイプとしては、例えば、冷却システムに用いられるトップヒート型の循環型ヒートパイプがあった(特許文献1参照)。この従来の循環型ヒートパイプは、ヒートパイプの高さを高くとることができることや、それが安定的に作動することを意図したトップヒート型のヒートパイプ、及びそれを用いた冷却システムに関するものである。
【特許文献1】特開2005−221200号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記特許文献1に係る循環型ヒートパイプにおいては、熱交換タンク11、熱交換ゾーン13、及び貯液タンク15を備え、かつ、それらの間を結ぶ温熱液管12、冷熱液管14、気体連結管16、及び液体供給管17が別々に設けられる等により、部品数が多くなっていると共に、その構造が複雑になっているという問題があった。
【0004】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みて、部品数を少なくして構造を簡単にすることができる循環型ヒートパイプを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明による循環型ヒートパイプは、
循環経路を構成し、この循環経路の一部の長さ範囲が低温部を通り、他の長さ範囲が高温部を通るように配置される循環管路と、
前記循環管路内の一部の長さ範囲に封入される作動流体と、
前記循環管路の前記低温部を通る任意の長さ範囲の部屋の両端部に設けられ、前記作動流体の循環方向を一方向に規制するための一対の逆止弁とを備え、
前記作動流体の液相部分の長さ範囲の一方の液面の高さが、前記循環管路における下流側の前記逆止弁より下流側において基準高さよりも上方に設定され、
前記作動流体の液相部分の長さ範囲の他方の液面の高さが、前記循環管路における上流側の前記逆止弁より上流側において基準高さよりも下方に設定されている
ことを特徴とするものである。
【0006】
また、本発明による循環型ヒートパイプは、
前記逆止弁は、
前記循環管路の略上下方向に伸びる長さ部分の途中に設けられ、
前記循環管路を上流側と下流側に仕切る隔壁と、前記隔壁に形成された貫通孔をその上方から自重により塞ぐ弁体とを備えて構成され、
前記弁体は、前記作動流体の液相部分の比重と同じ大きさか又は僅かに大きい比重のものが用いられていることを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明による循環型ヒートパイプは、
前記循環管路における、前記下流側の逆止弁より下流側の略上下方向に伸びる長さ部分の前記高温部における位置に、前記作動流体の液相部分の液面の水平方向の面積を広くする蒸発槽を設けたことを特徴するものである。
【0008】
また、本発明による循環型ヒートパイプは、
前記循環管路における、前記下流側の逆止弁より下流側の略上下方向に伸びる長さ部分に、前記低温部から前記高温部にわたって所定の長さ範囲に断熱材を巻き付けたことを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明による循環型ヒートパイプは、
前記循環管路における、前記上流側の逆止弁よりも上流側の略上下方向に伸びる長さ部分における、前記基準高さよりも下方の位置に放熱用フィンを設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
このような本発明に係る循環型ヒートパイプによれば、
循環経路を構成し、この循環経路の一部の長さ範囲が低温部を通り、他の長さ範囲が高温部を通るように配置される循環管路と、
前記循環管路内の一部の長さ範囲に封入される作動流体と、
前記循環管路の前記低温部を通る任意の長さ範囲の部屋の両端部に設けられ、前記作動流体の循環方向を一方向に規制するための一対の逆止弁とを備え、
前記作動流体の液相部分の長さ範囲の一方の液面の高さが、前記循環管路における下流側の前記逆止弁より下流側において基準高さよりも上方に設定され、
前記作動流体の液相部分の長さ範囲の他方の液面の高さが、前記循環管路における上流側の前記逆止弁より上流側において基準高さよりも下方に設定されていることにより、
部品数を少なくして構造を簡単にすることができる。
【0011】
また、本発明に係る循環型ヒートパイプによれば、
前記逆止弁は、
前記循環管路の略上下方向に伸びる長さ部分の途中に設けられ、
前記循環管路を上流側と下流側に仕切る隔壁と、前記隔壁に形成された貫通孔をその上方から自重により塞ぐ弁体とを備えて構成され、
前記弁体は、前記作動流体の液相部分の比重と同じ大きさか又は僅かに大きい比重のものが用いられていることにより、
前記高温部と前記低温部との温度差の変化による動作上の応答性を向上させることができる。
【0012】
また、本発明に係る循環型ヒートパイプによれば、
前記循環管路における、前記下流側の逆止弁より下流側の略上下方向に伸びる長さ部分の前記高温部における位置に、前記作動流体の液相部分の液面の水平方向の面積を広くする蒸発槽を設けたことにより、
当該循環型ヒートパイプによる熱輸送の効率を向上させることができる。
【0013】
また、本発明に係る循環型ヒートパイプによれば、
前記循環管路における、前記下流側の逆止弁より下流側の略上下方向に伸びる長さ部分に、前記低温部から前記高温部にわたって所定の長さ範囲に断熱材を巻き付けたことにより、
前記所定の長さ範囲の断熱材の上端部において、作動流体の液相部分の吸熱動作を急速に低減させることができる。
【0014】
また、本発明に係る循環型ヒートパイプによれば、
前記循環管路における、前記上流側の逆止弁よりも上流側の略上下方向に伸びる長さ部分における、前記基準高さよりも下方の位置に放熱用フィンを設けたことにより、
当該循環型ヒートパイプによる熱輸送の効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る循環型ヒートパイプを実施するための最良の形態について、図面に基づいて具体的に説明する。
図1から図3は、本発明の第1の実施の形態に係る循環型ヒートパイプ20について説明するために参照する図である。
【0016】
本実施の形態に係る循環型ヒートパイプ20は、トップヒート型のヒートパイプに分類されるものである。
本実施の形態に係る循環型ヒートパイプ20は、図1に示すように、循環管路30、作動流体32、及び2つの逆止弁34,36を備えている。
【0017】
循環型ヒートパイプ20の循環管路30は、略上下方向に配置される管路38,40と、管路38,40の上端部同士を連通する管路42と、管路38,42の下端部同士を連通する管路44を備えて構成されており、これにより、循環管路30は循環経路を構成するようになっている。管路42には、作動流体32を注入する他、循環管路30内の圧力を調整したり或は真空にするための注入口45が設けられている。この注入口45は、蓋46により封止されている。
【0018】
循環管路30は、その上下方向に配置される管路38,40のそれぞれにおける長さ中間位置よりも上側の、循環経路の一部が地表面25よりも上側に露出するように配置され、管路38,40のそれぞれにおける長さ中間位置よりも下側の長さ部分と、それらの下端部同士を連通する管路44とが、所定深さの地中(低温部)を通るように配置されている。
【0019】
そして、循環型ヒートパイプ20は、循環管路30のうちの地表面25よりも上側を通るように配置されている部分が、夏季の図示しない家屋の室内や、エアコンの室外機等の高温部を通るように設置されている。
【0020】
また、循環型ヒートパイプ20の作動流体32は、循環管路30内に封入され、この循環管路30内において、気相状態となっている気相部分32aと、液相状態となっている液相部分32bに分かれて充填されている。作動流体32は、循環管路30内の2つの逆止弁34,36の作用により、この循環管路30の循環経路を、図1中時計回り方向にのみ循環することができるように規制されている。
【0021】
作動流体32としては、例えば、その作動温度範囲の低いものから高いものの順に挙げるとすると、ヘリウム、水素、ネオン、窒素、アルゴン、メタン、エタン、フレオン−22、アンモニア、フレオン−21、フレオン−11、フレオン−113、ペンタン、アセトン、メタノール、エタノール、ヘプタン、水、ナフタリン、ダウサムA、硫黄、水銀、セシウム、ルビジウム、カリウム、ナトリウム、リチウム、カルシウム、鉛、インジウム、銀等が用いられ、或はこれらの作動流体物質のいずれかのもの同士を組み合わせた混合物等を用いることができる。
【0022】
また、逆止弁36は、循環管路30の上下方向に伸びる管路40の長さ部分の下端側に設けられている。逆止弁36は、図2に示すように、管路40内の流路を上流側(図2中、下側)と下流側(図2中、上側)に仕切る隔壁50と、球形の弁体52を備えて構成されている。この逆止弁36の隔壁50には、下方に窪んで形成され、その最深部に貫通孔56が形成された弁体受部54が形成されている。
【0023】
弁体52は、上記弁体受部54内に容易に出入りできるよう緩やかに嵌合し、その自重により弁体受部54の貫通孔56を塞ぐようになっている。これにより、逆止弁36は、作動流体の液相部分32bが流れる方向を、上流側から下流側に向かう方向(図2中、下側から上側に向かう方向)だけ許容し、逆方向に流れるのを禁止するようになっている。
【0024】
ここで、図1に示すように、作動流体32のうちの気相部分32aの圧力をP1で表すこととし、また、作動流体32のうちの液相部分32bであって、逆止弁36と、後述するクランク状流路48に設けた他方の逆止弁34との間に挟まれている長さ部分の内部の部屋の圧力をP2で表すこととする。
【0025】
また逆止弁36は、図2に示すように、その下流側(図中上側)にある作動流体の液相部分32bの重さによる圧力をW1、逆止弁36の弁体52自体の重さをG、逆止弁36の弁体受部54から弁体52への反作用力をF1で表すものとすると、作動流体の液相部分32bが逆止弁36をその下流側に通過することができるためには、F1が0になることが必要なので、(P1+W1+G)<P2の関係を満たす必要がある。同様に、後述する、図3に示すような逆止弁34においても、F2が0になることが必要なので、(P2+G)<(P1+W2)の関係を満たす必要がある。
【0026】
作動流体の液相部分32bが逆止弁36をその下流側に通過し易くなるようにするために、逆止弁36の弁体52には、作動流体の液相部分32bの比重とほぼ同じ大きさか、又は僅かに大きい比重を有するものが用いることができる。
【0027】
また、図1に示すように、循環管路30の略上下方向に配置される管路38内の、作動流体の液相部分32の液面より下方には、クランク状流路48が設けられている。このクランク状流路48は、上記液相部分32bの流路が、管路38内において、その管路38の長さ方向に2回折り返すようなクランク状に形成されている。
【0028】
このクランク状流路48は、その2箇所の折り返し部分に挟まれる中間流路部分48aにおいて、管路38内のクランク状流路48よりも上流側から下流側へ作動流体の液相部分32bの流れる方向(図1中、上から下に向かう方向)とは逆方向(図1中、下から上に向かう方向)に、上記液相部分32bが流れるようになっている。
【0029】
逆止弁34は、このようなクランク状流路48の中間流路部分48aに設けられ、逆止弁36と同様に、作動流体32の流れる方向を上流側から下流側に向かう方向だけ許容し、逆方向に流れるのを禁止するようになっている。この逆止弁34と逆止弁36の間の、管路44を含む長さ範囲の内部に部屋が形成されているので、結局、この長さ範囲の部屋の両端部に逆止弁34,36が設けられていることになる。そして上述したように、この部屋の圧力はP2で表すものとする。
【0030】
また、循環型ヒートパイプ20内における作動流体32の液相部分32bの液面の高さは、循環管路30の管路40における逆止弁36の下流側において地表面25(基準高さ)よりも上方に設定され、循環管路30の管路38における逆止弁34の上流側において地表面25よりも下方に設定されている。
【0031】
次に、循環型ヒートパイプ20の動作について説明する。
夏季のように、地表面25よりも上方の気温が地中の温度よりも高い場合には、循環型ヒートパイプ20内における作動流体の液相部分32bは、循環管路30の管路40内における地表面25よりも上側の高さ範囲内において、周囲の空気中から熱を吸収することにより、その液面から蒸発し、作動流体の液相部分32bから気相状態の気相部分32aに変化するようになる。この作動流体32の気相部分32aは、蒸発潜熱を蓄えた状態で、循環管路30の管路42内に移動し、さらに管路38内に移動していく。
【0032】
管路38内に移動した作動流体の気相部分32aの先端部は、この管路38の地中の長さ範囲を通る途中において冷却されることにより、凝縮して液化し、その液相部分32bに変化する。作動流体の気相部分32aが液化する際には、その凝縮潜熱が地中に放出(放熱)される。
【0033】
また、循環管路30の管路42内における作動流体の気相部分32aの圧力P1は、管路40内における作動流体の液相部分32bの液面から蒸発した気相部分32aが膨張することにより上昇し、管路38内における液相部分32bの液面を押し下げるように作用する。
【0034】
その結果、前記(P2+G)<(P1+W2)の関係を満たすことになるので、液相部分32bは逆止弁34を通って、逆止弁34,36間の管路44内に流れ込む。
【0035】
上記管路40の作動流体の液相部分32bの液面から蒸発する状態が続くと、管路40内の液相部分32bの液面が下がり、図3に示すように、その液面が地表面25と同じ高さになる。すると、管路40内での液相部分32bの液面からの蒸発量が減るが、管路38内での放熱による気相部分32aの液化量は減らないで、放熱による液化が続く状態となる。
【0036】
このため、作動流体の気相部分32aの圧力P1が下がって、やがては、(P1+W1+G)<P2の関係を満たすことになるので、管路44内の液相部分32bが逆止弁36を通って、管路40内の逆止弁36より下流側(図中上側)に流れ込む。
【0037】
これにより、管路40内における作動流体の液相部分32bの液面は、地表面25よりも上側に押し上げられるようになるので、管路40内における地表面25よりも上側の高さにおける範囲内において液相部分32bの吸熱動作が行なわれ、管路40内における液相部分32bの液面から蒸発が行なわれるようになる。
【0038】
そしてまた、上記圧力P2よりも圧力P1の方が高くなると、上述したような動作を繰り返す。
循環型ヒートパイプ20は、上述した動作を継続的に繰り返すことにより、作動流体の液相部分32bが地表面25の上側から熱を奪って、作動流体の気相部分32aが地中側に熱を供給する熱輸送を継続的に行なうようになっている。
【0039】
このような本実施の形態に係る循環型ヒートパイプ20によれば、冷却システムに用いられる当該循環型ヒートパイプ20の作動流体32の循環経路を1本の循環管路30だけで構成することができるので、その部品数を少なくして構造を簡単にすることができる。
【0040】
また、本実施の形態に係る循環型ヒートパイプ20によれば、その逆止弁34,36の弁体52に、作動流体の液相部分32bの比重と同じ大きさか、又は僅かに大きい比重のものが用いられることにより、その液相部分32bが逆止弁34,36を通過し易くすることができるので、結局、気温と地中の温度との間の温度差の変化による循環型ヒートパイプ20の動作上の応答性を向上させることができる。
【0041】
また、本実施の形態に係る循環型ヒートパイプ20によれば、クランク状流路48における逆止弁34に、逆止弁36と全く同一タイプのものを用いることができるため、逆止弁34と36の動作上の応答性が異なることがないようにして、循環型ヒートパイプ20の動作を円滑に行わせることができる。
【0042】
次に、図5は、本発明の第2の実施の形態に係る循環型ヒートパイプ60について説明するために参照する図である。
前記第1の実施の形態に係る循環型ヒートパイプ20と同様の部分や構成についての重複する説明は省略するものとする。
【0043】
本実施の形態に係る循環型ヒートパイプ60は、同図に示すように、前記第1の実施の形態に係る循環型ヒートパイプ20の循環管路30の代わりに、循環管路62を備えたものである。
【0044】
この循環管路62は、図中略上下方向に配置される管路64,66と、管路64,66の上端部同士を連通する管路68と、管路64,66の下端部同士を連通する管路70を備えて構成されている。
【0045】
この循環管路62の管路66の図中下端部には、前記第1の実施の形態に係る循環型ヒートパイプ20における逆止弁36と同様の、逆止弁36が設けられている。また、この循環管路62の管路66における地表面25の上側の途中位置には、作動流体の液相部分32bの上端液面の、水平方向の面積を広くする蒸発槽72が設けられている。
【0046】
また、循環管路62の管路66は、その図中下端部の、管路70との連続部からその下流側(図中上側)の逆止弁36から少し下流側までの長さ範囲の管路66aと、この管路66aより下流側の端部から蒸発槽72までの長さ範囲の管路66bと、蒸発槽72から管路68との連続部までの長さ範囲の管路66cとに区分される。
【0047】
この管路66における管路66b及び66cは、管路66aよりも、その直径が細くなるように形成されていている。また、管路66b内には、毛細管構造74(ウイック)が設けられている。この毛細管構造74は、銅、ステンレス鋼又はニッケルなどの金網、フェルト、フォームメタル、細線、或いは焼結体などを用いて構成することができる。
【0048】
また、管路66における管路66bには、地中の所定の深さから、地表面25の上側の所定の高さまでの長さ範囲にわたって、その外周には断熱材76が巻き付けられている。この管路66b内の作動流体32は、地中から地表面25より上側にわたって断熱材76が巻き付けられた長さ範囲において、その周囲の空気の熱を吸収できないようになっている。
【0049】
次に、循環管路62の管路64は、その断面積の大きさにより2つの長さ範囲に区分される。すなわち、管路64は、その流路方向(図中、上下方向)における管路68との連続部からその下流側の地中の所定深さまでの長さ範囲の、細い直径の管路64aと、この管路64aの下流側の端部から管路70との連続部までの長さ範囲の、管路64aよりも大きい断面積を有する管路64bに区分される。
【0050】
この管路64の管路64b内の作動流体の液相部分32bの液面より下方には、前記第1の実施の形態に係る循環型ヒートパイプ20におけるクランク状流路48及び逆止弁34と同様の、クランク状流路48及び逆止弁34が設けられている。また、この管路64bのクランク状流路48よりも管路64a寄りの上端部には、複数の放熱用フィン78が設けられている。
【0051】
このような本実施の形態に係る循環型ヒートパイプ60によれば、前記第1の実施の形態と同様に、冷却システムに用いられる当該循環型ヒートパイプ60の作動流体32の循環経路を1本の循環管路62だけで構成することができるので、部品数を少なくしてその構造を簡単にすることができる。
【0052】
また、本実施の形態に係る循環型ヒートパイプ60によれば、その逆止弁34,36の弁体52が、作動流体の液相部分32bの比重と同じ大きさか又は僅かに大き目の比重のものが用いられていることにより、その液相部分32bが逆止弁34,36を通過し易くすることができるので、結局、気温と地中の温度との間の温度差の変化による循環型ヒートパイプ20の動作上の応答性を向上させることができる。
【0053】
また、本実施の形態に係る循環型ヒートパイプ60によれば、管路66における管路66bの径を、管路66における管路66aの径よりも小さくして、逆止弁36より下流側(図中上側)の作動流体の液相部分32bの重さを小さくすることにより、その液相部分32bはさらに逆止弁36を通過し易くすることができる。
【0054】
また、本実施の形態に係る循環型ヒートパイプ60によれば、蒸発槽72を設け、作動流体の液相部分32bの上端液面の水平方向の面積を広くすることにより、蒸発作用の効率を向上させることができるので、当該循環型ヒートパイプ60による熱輸送の効率を向上させることができる。
【0055】
また、本実施の形態に係る循環型ヒートパイプ60によれば、管路66における管路66bには、地中の所定の深さから、地表面25の上側の所定の高さまでの長さ範囲にわたって、その外周には断熱材76が巻き付けられていることにより、前記所定の長さ範囲の断熱材76の上端部において、作動流体の液相部分32bの吸熱動作を急速に低減させることができる。
【0056】
また、本実施の形態に係る循環型ヒートパイプ60によれば、管路66b内には、毛細管構造74が設けられていて、この毛細管構造74は、銅、ステンレス鋼又はニッケルなどの金網、フェルト、フォームメタル、細線、或いは焼結体等を用いて構成されているので、作動流体の液相部分32bが下流側(図中上側)に流れる際に、毛細管現象によりその液相部分32bの流れる効率を向上させることができる。
【0057】
またこのように、毛細管現象を利用することにより、逆止弁36より下流側(図中上側)の作動流体の液相部分32bの重さW1も減るので、この点からもその液相部分32bが逆止弁36を通り易くすることができる。
【0058】
また、本実施の形態に係る循環型ヒートパイプ60によれば、その循環管路62中の管路64における管路64bの上端部に放熱用フィン78を複数設けたことにより、管路64bの上端部の内外周面の表面積を増大して放熱効率を増大させることができる。このため、作動流体の気相部分32aの凝縮作用が促進されて、管路64bの内周面に付着して結露する作動流体の液相部分32bを増加させ、当該循環型ヒートパイプ60による熱輸送の効率を向上させることができる。
【0059】
なお、上記本実施の形態に係る循環型ヒートパイプ60においては、蒸発槽72、毛細管構造74、断熱材76、及び放熱用フィン78が設けられていたが、これらのいずれかが設けられないようになっていてもよい。
【0060】
また、前記第1及び上記第2の実施の形態に係る循環型ヒートパイプ20,60においては、図2に示すような、板状の隔壁50及び球形の弁体52を備える構造の逆止弁34,36が用いられるようになっていたが、このような構造とは異なる他の構造又は他の種類の逆止弁が用いられるようになっていてもよい。
【0061】
また、前記第1及び第2の実施の形態に係る循環型ヒートパイプ20,60においては、2つの逆止弁34,36が設けられていたが、他の実施の形態として、逆止弁34,36のそれぞれに並列して開閉弁付きバイパス流路が設けられるようになっていてもよい。
【0062】
このような逆止弁34,36のそれぞれに並列して複数の開閉弁付きのバイパス流路が設けられた循環型ヒートパイプによれば、夏季には作動流体32の液相部分32bがそれらのバイパス流路を通らないようにその開閉弁を閉じて、前記第1及び第2の実施の形態に係る循環型ヒートパイプ20,60と同様に逆止弁34,36を使用して、トップヒート型のヒートパイプとして冷却システムに用いることができる。
【0063】
また冬季には、開閉弁付きのバイパス流路それぞれの開閉弁を開放することにより、逆止弁34,36を使用しないで、作動流体32の液相部分32bが上記開閉弁を開放したバイパス流路を通れるようにすることにより、ボトムヒート型のヒートパイプとして、地中の熱を地表面25よりも上側に輸送することができる熱輸送システムとしても用いることができる。
【0064】
また、前記第1及び第2の実施の形態においては、気温と地中の温度との温度差を利用した冷却システムについて説明したが、本出願の発明はこれに限定せず、気温と水温との温度差や、水温と水温との温度差、或は気温と気温との温度差を利用した熱輸送システムに適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る循環型ヒートパイプ20を示す正面断面図である。
【図2】図1に示す逆止弁36の拡大断面図である。
【図3】図1に示す逆止弁34の拡大断面図である。
【図4】図1に示す循環型ヒートパイプ20の動作を説明するための正面断面図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る循環型ヒートパイプ60を示す正面断面図である。
【符号の説明】
【0066】
20 循環型ヒートパイプ
25 地表面
30 循環管路
32 作動流体
32a 作動流体の気相部分
32b 作動流体の液相部分
34,36 逆止弁
38,40,42,44 管路
45 注入口
46 蓋
48 クランク状流路
50 隔壁
52 弁体
54 弁体受部
56 貫通孔
60 循環型ヒートパイプ
62 循環管路
64,64a,64b,66,66a,66b,66c,68,70 管路
72 蒸発槽
74 毛細管構造
76 断熱材
78 放熱用フィン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
循環経路を構成し、この循環経路の一部の長さ範囲が低温部を通り、他の長さ範囲が高温部を通るように配置される循環管路と、
前記循環管路内の一部の長さ範囲に封入される作動流体と、
前記循環管路の前記低温部を通る任意の長さ範囲の部屋の両端部に設けられ、前記作動流体の循環方向を一方向に規制するための一対の逆止弁とを備え、
前記作動流体の液相部分の長さ範囲の一方の液面の高さが、前記循環管路における下流側の前記逆止弁より下流側において基準高さよりも上方に設定され、
前記作動流体の液相部分の長さ範囲の他方の液面の高さが、前記循環管路における上流側の前記逆止弁より上流側において基準高さよりも下方に設定されている
ことを特徴とする循環型ヒートパイプ。
【請求項2】
前記逆止弁は、
前記循環管路の略上下方向に伸びる長さ部分の途中に設けられ、
前記循環管路を上流側と下流側に仕切る隔壁と、前記隔壁に形成された貫通孔をその上方から自重により塞ぐ弁体とを備えて構成され、
前記弁体は、前記作動流体の液相部分の比重と同じ大きさか又は僅かに大きい比重のものが用いられている
ことを特徴とする請求項1に記載の循環型ヒートパイプ。
【請求項3】
前記循環管路における、前記下流側の逆止弁より下流側の略上下方向に伸びる長さ部分の前記高温部における位置に、前記作動流体の液相部分の液面の水平方向の面積を広くする蒸発槽を設けた
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の循環型ヒートパイプ。
【請求項4】
前記循環管路における、前記下流側の逆止弁より下流側の略上下方向に伸びる長さ部分に、前記低温部から前記高温部にわたって所定の長さ範囲に断熱材を巻き付けた
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の循環型ヒートパイプ。
【請求項5】
前記循環管路における、前記上流側の逆止弁よりも上流側の略上下方向に伸びる長さ部分における、前記基準高さよりも下方の位置に放熱用フィンを設けた
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の循環型ヒートパイプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−162462(P2009−162462A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−2908(P2008−2908)
【出願日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(592040826)住友不動産株式会社 (94)