説明

循環式分散システム

【課題】 スラリー状又は液体状の混合物を循環させながら該混合物内の物質を分散させる循環式分散システムであって、分散装置の軸封部の構造を簡素化し且つ寿命を延ばす循環式分散システムを提供する。
【解決手段】 送液ポンプ、ローター型且つ連続型の分散装置、貯蔵タンクを接続した循環式分散システムにおいて、前記分散装置は、オイルシール構造を有し、ローター部への混合物流入量よりも、ローター部からの混合物流出量を大きくとり、ローター部への溜めをなくし、シール部への接液がないようにされたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラリー状又は液体状の混合物を循環させながら該混合物内の物質を分散させる循環式分散システムに関する。
【背景技術】
【0002】
スラリー状の混合物や、液体状の混合物を循環させながら分散させるシステムとして、例えば特許文献1に記載されたものがある。このような循環式分散システムにおいて、ローター型且つ連続型の分散装置を採用するにあたり、以下のようなことを検討する必要がある。すなわち、ローター型且つ連続型の分散装置において、軸からの混合物の漏れを防ぐ軸封部として、Oリング、オイルシール、グランドパッキン、メカニカルシール等がある。固形分濃度が例えば40〜50%以上の高濃度のスラリー等を軸封する場合は、メカニカルシールを使う場合が多い。
【0003】
しかし、メカニカルシールは、構造が複雑でシール部分の寸法も大きく、コストも高いという問題がある。また、シール部に混合物が到達し、微粒子が混入するとシール面(軸封面)が傷み、機能が損なわれる可能性がある。そのため、ダブルメカニカルシール等の特別な高価で複雑な構成が必要になってしまうという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−267991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、分散装置の軸封部の構造を簡素化し且つ寿命を延ばす循環式分散システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る循環式分散システムは、送液ポンプ、ローター型且つ連続型の分散装置、貯蔵タンクを接続した循環式分散システムにおいて、前記分散装置は、オイルシール構造を有し、ローター部への混合物流入量よりも、ローター部からの混合物流出量を大きくとり、ローター部への溜めをなくし、シール部への接液がないようにされたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、軸封部に混合物を到達させないことで、分散装置の軸封部の構造を簡素化し、低コスト化を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明を適用した循環式分散システムを説明するための概要図である。
【図2】図1の循環式分散システムを構成する分散装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を適用した循環式分散システム30について、図面を参照して説明する。分散とは、該混合物内の物質を分散させること、すなわち、該混合物内の各物質が均一に存在するように混ぜることを意味する。
【0010】
循環式分散システム30は、図1に示すように、混合物31を分散させるローター型且つ連続型の分散装置3と、分散装置3の出口側に接続されるタンク1と、タンク1の出口側に接続され混合物31を循環させる循環ポンプ2と、分散装置3、タンク1及び循環ポンプ2を直列的に接続する配管32とを備える。この分散装置3は、オイルシール構造を有し、ローター部への混合物流入量よりも、ローター部からの混合物流出量を大きくとり、ローター部への溜めをなくし、シール部への接液がないようにされている。ここで、接液とは、混合物がかかることや、付着することを意味するものとする。
【0011】
尚、ここで、タンク1や分散装置3や配管32内を循環する流体は、最初は原料であり、分散装置3を経由する毎に添加原料が次第に分散された混合物となり、最終的には分散処理済みの混合物となるが、上述及び以下の説明では、最初の「原料」も、処理途中の「混合物」も併せて「混合物」と呼ぶこととする。
【0012】
すなわち、循環式分散システム30は、中空の回転軸の中空部から混合物を供給する方式のローター型の連続分散装置3において、混合物を循環ポンプ2で分散装置3に供給し、分散装置3のケーシング19から排出される混合物排出速度(「流出量」ともいう。)Qoutを循環ポンプ2による混合物供給速度(「流入量」ともいう。)Qinよりも大きくすることによって、ケーシング19内に混合物を滞留させず、更に、回転するローター13,14の遠心力を利用することで、軸封部16に混合物を到達させないシステムである。
【0013】
以下、さらに具体的に説明する。図1に示すように、混合物の入っている貯蔵タンクとしてのタンク1は、その排出口が、循環ポンプ(送液ポンプ)2に接続される。循環ポンプ2は、混合物を搬送して循環させる。循環途中の配管に設けられた供給装置6は、ホッパ4に貯蔵されている添加物5(液体または粉粒体)を、循環している混合物(最初は原料)に注入させる。添加物が添加された後の混合物は、タンク1の垂直(鉛直)方向の上側に設置されたローター型の連続分散装置3内に、供給される。
【0014】
分散装置3は、軸を平行に設置したローター13,14が互いに逆方向に回転するように構成されている。ローター13,14は、原料に添加物が均一に分散された状態とする。分散装置3のローター13,14間で分散処理された混合物は、分散装置3のケーシング内で滞留することなく重力によってタンク1に戻される。タンク1の中の混合物は、攪拌機7による攪拌で偏析などが防止される。
【0015】
ここで、添加原料5の供給装置6としては、スクリューフィーダ、ロータリーバルブ、プランジャーポンプなどを適宜用いることができる。また、供給装置6の設置場所としては、配管32中の任意の場所を選ぶことができる。また、供給装置6は、タンク1の上部等に設置してもよい。
【0016】
タンク1には、真空ポンプ8が接続される。この真空ポンプ8は、分散装置3からの排出量が不足する場合に、タンク内を減圧して、排出を補助することができる。また、この真空ポンプ8による減圧は、混合物に気泡が混入した場合の脱泡処理用としても機能する。
【0017】
以上のような循環式分散システム30において、運転時には、バルブ9は、常時開とされ、バルブ10、11は、常時閉とされている。分散処理が終了したらバルブ9は、閉とされ、バルブ10は、開とされる。これにより、バルブ10から処理物を排出・回収することができる。また、分散装置3や配管32の中に残った混合物は、バルブ11を開とすることで排出、回収される。なお、混合物の排出・回収用のバルブはタンクや配管の任意の場所に取り付けることができる。
【0018】
次に、分散装置3のローター部における混合物の流れについて、図2を用いて説明する。まず、循環ポンプ2から送られた混合物は、図1に示す電動機Mによって回転する中空軸の中心を通って一対の回転するローター13、14の隙間(せん断部)に供給される。供給された混合物は、遠心力により一対のローター13、14の隙間を通ってローター外周から放射状に放出される。このとき、混合物には、ローター13、14からせん断応力がかかり、分散が行われる。ローター13,14から放出された原料は、分散装置3の排出口22から排出される。
【0019】
分散装置3の排出口から流れる混合物の速度(流出速度)は、循環ポンプ2から送られる混合物の流入速度よりも大きくなるように構成されているため、分散装置3のケーシング内部に滞留することはない。尚、この流出速度(流出量)を大きくするため、例えば、配管の径を大きくする等の手法がある。また、この分散装置3には、軸受15や、シール押さえ部材18、回転軸20,21が設けられている。
【0020】
混合物や原料の粘度が大きくなって流体抵抗のために混合物等が流れにくくなり、ケーシングの排出口が重力だけでは十分な流量を確保するほど大きくとれなくなって、循環ポンプ2からの供給量がケーシングからの排出量よりも定常的に大きくなる場合は、図1においてタンク1の内部を真空ポンプ8で引いて減圧状態にし、ケーシング内部からの排出を促進してもよい。この真空ポンプ8は、液に混入した気泡を脱泡する機能もあり、脱泡を主な目的としてタンクを減圧状態にしてもよい。なお、この場合には、ローター軸のシール部に減圧状態を保つようなシールを設置する必要がある。このように真空ポンプ8は、タンク1内部を減圧する減圧ポンプとして機能する。
【0021】
図1において、Mは、電動機を示し、Pはポンプを示す。このポンプPとしては、軸封部のないポンプ、例えばチューブポンプやホースポンプを用いることが望ましい。もしポンプに液と接する軸封部があると、この軸封部が劣化する可能性があるからである。
【0022】
以上のように、本発明を適用した循環式分散システム30は、循環ポンプ2、ローター型且つ連続型の分散装置3、タンク1を接続した循環式分散システムにおいて、分散装置3は、オイルシール構造を有し、ローター部への混合物流入量よりも、ローター部からの混合物流出量を大きくとり、ローター部への溜めをなくし、シール部への接液がないようにされたことを特徴とする。
【0023】
本発明を適用した循環式分散システム30によれば、軸封部に混合物を到達させないことで、分散装置の軸封部の構造を簡素化し、低コスト化を実現する。
【符号の説明】
【0024】
1 タンク
2 循環ポンプ
3 分散装置
30 循環式分散システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送液ポンプ、ローター型且つ連続型の分散装置、貯蔵タンクを接続した循環式分散システムにおいて、前記分散装置は、オイルシール構造を有し、ローター部への混合物流入量よりも、ローター部からの混合物流出量を大きくとり、ローター部への溜めをなくし、シール部への接液がないようにされたことを特徴とする循環式分散システム。
【請求項2】
前記分散装置は、前記貯蔵タンクより上側に配置されていることを特徴とする請求項1記載の循環式分散システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−35186(P2012−35186A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−176780(P2010−176780)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(000191009)新東工業株式会社 (474)
【Fターム(参考)】