説明

微小着色パターン欠陥修正用インキ、及び微小着色パターン欠陥修正方法

【課題】塗布量及び塗布サイズの変動が小さく、塗布器具の目詰まりが発生し難く、且つ、塗布後に塗布スポットが広がることによる混色欠陥の発生や着色濃度の低下が起こり難い、長時間連続使用可能な微小着色パターン欠陥修正用インキ、及び微小着色パターン欠陥修正方法を提供する。
【解決手段】少なくとも、着色剤と、分散剤と、反応性官能基を有するモノマーと、溶剤を含有し、前記溶剤が、沸点が160℃〜250℃で、且つ比蒸発速度が40以下の溶剤(A)を溶剤全量に対して40重量%〜100重量%の範囲で含有することを特徴とする、微小着色パターン欠陥修正用インキ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に形成された所定のパターンにおけるパターン欠陥を修正するための
微小着色パターン欠陥修正用インキ、及び当該インキを用いた微小着色パターン欠陥修正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば液晶表示素子用カラーフィルターなどのように、基板上にBk(黒)、R(赤)、G(緑)、B(青)の微小着色パターンを形成する場合には、製造工程中、あるいは材料中に存在する微小な異物などに起因して、ある程度の確率でパターン欠陥が生じる。パターン欠陥は、主として、微小な異物等の付着等に起因する黒欠陥と、白っぽく色が抜ける白欠陥(色抜け欠陥、あるいはパターン欠け欠陥)に分類され、白欠陥は、黒欠陥部分の付着物が除去される際にも生じる。黒欠陥は、視覚的に黒っぽい点として認識されるだけでなく、突起がある欠陥のため、カラーフィルターをTFT基板と貼り合わせ表示パネルを組んだ際に、その突起がTFT基板にまで到達してしまい短絡を起こし、重大な製品不良の原因になり得る。白欠陥は、液晶表示素子を組み立て、表示した場合に、たとえそれが数十ミクロンの小さい欠陥でもピンホールのように光り、目立つため、避けるべき欠陥である。最近では液晶表示素子の大画面化に伴うパターン面積の増大に伴い、黒欠陥や白欠陥も生じやすくなってきており、そのような問題解決に対する重要度はますます増してきている。
【0003】
欠陥部を生じても、歩留まりを向上させて生産性を損なわないために、特許文献1に示されるような部分的に欠陥部を修正する技術が確立されるようになった。この欠陥部修正装置は、黒欠陥部をレーザーで焼いて揮散させたり、白欠陥の色抜け部にカラー紫外線硬化性樹脂を塗布して、紫外線で硬化させるものである。
【0004】
カラー紫外線硬化樹脂を塗布する手段としては、上記公報のようにディスペンサによってペーストを必要量吐出する方法、インクジェットによる方法、または特許文献2に提示されているような、先端が平面を形成している針状物の先端にカラー紫外線硬化性樹脂を付着させ、それを欠陥部に押しつける手段等がある。この中で針状物により直接カラー紫外線硬化性樹脂を塗布する方法は、より微小な白欠陥に対応できるので好ましいとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−109919号公報
【特許文献2】特開平8−182949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の微小着色パターン欠陥修正インキは、乾燥速度が速いため、例えば、塗布器具として針状物を用いた欠陥部修正装置では、インキツボ内でインキの乾燥が起こり、当該インキの粘度が上昇するため、当該インキの塗布量や塗布サイズが変動しやすくなったり、塗布性が低下して中央部にインキが付着せず周囲のみインキが付着するため、塗布部がドーナツ形状となることがある。また、針状物の先端に付着させたインキが乾燥することで、当該インキの流動性が低下するため、針先からインキが基板に転移し難くなって針先に溜まり過ぎ、当該インキがぼた落ちすることがある。また、ディスペンサ式の欠陥部修正装置では、ディスペンサノズル先端でインキが乾燥することによって、ノズルの目詰まりが発生しやすくなり、これを解消するために、定期的にインキを吐出する必要がある。
【0007】
また、粘度の低い着色組成物を微小着色パターン欠陥修正インキとして用いる場合、塗布後に塗布スポットが広がり、隣の正常な色画素部分に重なることで、新たな混色欠陥を生じたり、塗布した部分を充分に厚くすることができず、着色濃度を低下させるという問題がある。
【0008】
上記実情に鑑み、本発明は、塗布量及び塗布サイズの変動が小さく、塗布器具の目詰まりが発生し難く、且つ、塗布後に塗布スポットが広がることによる混色欠陥の発生や着色濃度の低下が起こり難い、長時間連続使用可能な微小着色パターン欠陥修正用インキ、及び微小着色パターン欠陥修正方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討の結果、特定の範囲の沸点、及び比蒸発速度を有する溶剤を用いることにより、上記課題が解決されるという知見を見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明に係る微小着色パターン欠陥修正用インキは、少なくとも、着色剤と、分散剤と、反応性官能基を有するモノマーと、溶剤を含有し、前記溶剤が、沸点が160℃〜250℃で、且つ酢酸ブチルの蒸発速度を100としたときの比蒸発速度が40以下の溶剤(A)を溶剤全量に対して40重量%〜100重量%の範囲で含有することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、インキ中に、特定の範囲の沸点、及び比蒸発速度を有する溶剤を含有させることで、当該インキの乾燥速度を最適化することにより、当該インキの粘度変化を抑えることができる。これにより、インキの塗布量や塗布サイズの変動が抑えられ、塗布器具の目詰まりも発生し難くすることができる。また、適度な乾燥性を有するため、塗布後に塗布スポットが広がり過ぎることがなく、混色欠陥の発生や着色濃度の低下を抑制することができる。
【0011】
本発明に係る微小着色パターン欠陥修正用インキにおいては、前記溶剤(A)が、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−エトキシプロピオン酸エチル、及びジプロピレングリコールジメチルエーテルよりなる群から選ばれる1種以上を含むことが、当該インキの乾燥速度を最適化する点から好ましい。
【0012】
本発明に係る微小着色パターン欠陥修正用インキにおいては、ポリマーを含有することが、粘度を適度に上げ、塗布性を向上させることができる点から好ましい。
【0013】
本発明に係る微小着色パターン欠陥修正用インキにおいては、前記ポリマーが、少なくともジアリルフタレートプレポリマーを含むことが、熱硬化性の点から好ましい。
【0014】
本発明に係る微小着色パターン欠陥修正方法は、本発明に係る微小着色パターン欠陥修正用インキを微小着色欠陥部に塗布する工程と、当該微小着色パターン欠陥修正用インキを塗布した微小着色欠陥部を光照射及び/又は加熱して硬化させる硬化工程を含むことを特徴とする。本発明によれば、上記微小着色パターン欠陥修正用インキを用いることにより、修正部と正常部との色度差が小さく、当該修正部を当該正常部とほぼ同等の性能に修正することができる。
【0015】
本発明に係る微小着色パターン欠陥修正方法においては、前記硬化工程において、当該微小着色パターン欠陥修正用インキを塗布した微小着色欠陥部に光照射した後、加熱することが液晶表示装置での表示不良防止の点から好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る微小着色パターン欠陥修正用インキによれば、当該インキ中に、特定の範囲の沸点、及び比蒸発速度を有する溶剤を含有させることで、当該インキの乾燥速度を最適化することにより、当該インキの粘度上昇を抑えることができる。これにより、インキの塗布量や塗布サイズの変動が抑えられ、ドーナツ形状の塗布やぼた落ちといった塗布異常を発生し難くすることができる。また、塗布器具の目詰まりも発生し難くすることができる。また、適度な乾燥性を有するので、塗布後に塗布スポットが広がり過ぎることがなく、混色欠陥の発生や着色濃度の低下を抑制することができる。従って、本発明によれば、長時間連続使用可能な微小着色パターン欠陥修正用インキを提供することができる。
また、本発明に係る微小着色パターン欠陥修正方法によれば、上記微小着色パターン欠陥修正用インキを用いることにより、修正部と正常部との色度差が小さく、当該修正部を当該正常部とほぼ同等の性能に修正することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の微小着色パターン欠陥修正用インキ、及び微小着色パターン欠陥修正方法について順に説明する。
なお、本明細書中において(メタ)アクリルはアクリル及びメタクリルを表し、(メタ)アクリレートはアクリレート及びメタクリレートを表す。また、本明細書中において光とは、光反応性官能基に光反応を引き起こさせることが可能な可視及び非可視領域の波長が全て含まれ、例えばマイクロ波、可視光、紫外線、電磁波、電子線等が全て含まれるが、主に紫外線、電子線等が用いられる。
【0018】
I.微小着色パターン欠陥修正用インキ
本発明に係る微小着色パターン欠陥修正用インキは、少なくとも、着色剤と、分散剤と、反応性官能基を有するモノマーと、溶剤を含有し、前記溶剤が、沸点が160℃〜250℃で、且つ酢酸ブチルの蒸発速度を100としたときの比蒸発速度が40以下の溶剤(A)を溶剤全量に対して40重量%〜100重量%の範囲で含有することを特徴とする。
【0019】
以下、このような本発明の微小着色パターン欠陥修正用インキに用いられる成分を説明する。
<溶剤>
本発明に用いる溶剤は、沸点が160℃〜250℃、好ましくは沸点が160℃〜200℃で、且つ比蒸発速度が40以下、好ましくは1以上20以下の溶剤(A)を、溶剤全量に対して40重量%〜100重量%の範囲で含有する。
【0020】
沸点が160℃〜250℃で、且つ比蒸発速度が40以下の溶剤(A)は、適度な乾燥性及び蒸発性を有している。そのため、このような溶剤を用いることで、インキツボ内や塗布針上のインキの粘度上昇を抑えることができる。これにより、インキの塗布量や塗布サイズの変動が抑えられ、ドーナツ形状の塗布やぼた落ちといった塗布異常を発生し難くすることができる。また、塗布器具の目詰まりも発生し難くすることができる。また、塗布後に塗布スポットが広がり過ぎることがなく、混色欠陥の発生や着色濃度の低下を抑制することができる。
尚、ここで比蒸発速度とは、n−酢酸ブチルの蒸発速度を100とした時の相対蒸発速度をいい、ASTM D3539−87に準拠して測定される蒸発速度、下記式(1)により算出される。具体的には、25℃、乾燥空気下におけるn−酢酸ブチルの蒸発時間と各試料の蒸発時間を測定し算出する。
【0021】
【数1】

【0022】
本発明に用いられる溶剤(A)は、上記した沸点、及び比蒸発速度を有する溶剤であれば1種であっても又は2種以上の混合溶剤であっても良い。上記溶剤(A)は、溶剤全量に対して40重量%〜100重量%の割合で使用する必要がある。当該溶剤(A)の割合が、溶剤全量の40重量%以上の場合には、インキの粘度変化が少なく、インキの塗布量や塗布サイズの変動を少なくすることができる。また、上記溶剤(A)の割合は、溶剤全量の50重量%〜100重量%、更に70重量%〜100重量%とすることが好ましい。
【0023】
本発明に用いられる溶剤(A)としては、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−エトキシプロピオン酸エチル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、3−メトキシブタノール、プロピオン酸n−ペンチル、酢酸オキソヘキシル、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、乳酸ブチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、イソホロン、3,5,5−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−オン、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテル、1,3−ブチレングリコールジアセテート、3−メトキシブタノール、シクロヘキサノールアセテートなどを挙げることができる。
上記溶剤(A)は、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−エトキシプロピオン酸エチル、及びジプロピレングリコールジメチルエーテルよりなる群から選ばれる1種以上を含むことが、当該インキの乾燥速度を最適化する点から好ましい。
【0024】
本発明に係る微小着色パターン欠陥修正用インキは、上記本発明の効果が損なわれない限り、他の溶剤を含んでいてもよい。
本発明において用いることができる他の溶剤としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピオン酸n−ブチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン等が挙げられる。
【0025】
また、全溶剤の配合量は、微小着色パターン欠陥修正用インキ中に25重量%〜70重量%であり、25〜55重量%が更に好ましく、30〜50重量%が特に好ましい。25重量%未満では、修正用インキの流動性が不足する恐れがあり、70重量%超過では、修正箇所の膜厚が薄くなり、修正箇所がへこんだ形状となったり、正常部よりも色が薄いものとなる恐れがある。
【0026】
<着色剤>
本発明の微小着色パターン欠陥修正用インキに使用できる着色剤としては、特に限定されないが、修正される着色パターンの色に応じて選択されるのが好ましく、種々の有機又は無機顔料を用いることができる。有機顔料の具体例としては、カラーインデックス(C.I.;The Society of Dyers and Colourists 社発行)においてピグメント(Pigment)に分類されている化合物、すなわち、下記のようなカラーインデックス(C.I.)番号が付されているものを挙げることができる。具体的には、例えば、C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185等のイエロー系ピグメント;C.I.ピグメントレッド1、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド224、C.I.ピグメントレッド242等のレッド系ピグメント;C.I.ピグメントオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ71等のオレンジ系ピグメント;及び、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6等のブルー系ピグメント;C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36、C.I.ピグメントグリーン58等のグリーン系ピグメント;C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット23:19等のバイオレット系ピグメントを挙げることができる。
【0027】
また、前記無機顔料の具体例としては、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、亜鉛華、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑、アンバー、チタンブラック、合成鉄黒、カーボンブラック等を挙げることができる。本発明において顔料は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができ、上記に限定されずに種々の顔料を使用することができる。なお、顔料は必要に応じて、ロジン処理、酸性処理、塩基性処理などの表面処理が施されているものを使用しても良い。
【0028】
上記着色剤の配合量は、微小着色パターン欠陥修正用インキ中に5重量%〜50重量%が好ましく、7重量%〜45重量%が更に好ましく、10重量%〜40重量%が特に好ましい。
また、本発明の微小着色パターン欠陥修正用インキにおいては、P/V比を、0.1〜0.9の範囲に調製する。ここで、P/V比とは、インク中の顔料以外の固形分量(V:ビヒクル)に対する、顔料含有量(P:ピグメント)の重量比である。
【0029】
<分散剤>
本発明の微小着色パターン欠陥修正用インキには、着色剤を良好に分散させるために分散剤を配合する。分散剤としては、例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性、シリコーン系等の界面活性剤などを使用できる。界面活性剤の中でも、次に例示するような高分子界面活性剤(高分子分散剤)が好ましい。また、特殊アクリル系重合体などの分散補助樹脂を更に用いても良い。
すなわち、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類;ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のポリエチレングリコールジエステル類;ソルビタン脂肪酸エステル類;脂肪酸変性ポリエステル類;3級アミン変性ポリウレタン類などの高分子界面活性剤が好ましく用いられる。
上記顔料分散剤の配合量は、微小着色パターン欠陥修正用インキ中に1重量%〜25重量%が好ましく、1重量%〜15重量%が更に好ましく、1重量%〜10重量%が特に好ましい。
【0030】
<反応性官能基を有するモノマー>
本発明の微小着色パターン欠陥修正用インキにおいて、反応性官能基を有するモノマーは、成膜性や被塗工面に対する密着性を付与するためのバインダー成分を構成し、特に硬化反応性を付与する作用をもつ。また、インキの粘度等の物性を調整するための成分でもある。
従って、本発明の微小着色パターン欠陥修正用インキに使用できる反応性官能基を有するモノマーは、重合反応の構成単位となり得る化合物であり、例えば、2以上のモノマーが重合したオリゴマーであっても反応性官能基を有するものであれば、本発明において、モノマーとして用いることができ、常温で流動性があるものが好ましい。
また、このような反応性官能基を有するモノマーは、単独で又は2種以上混合して用
いることができる。
【0031】
反応性官能基を有するモノマーとして、反応性官能基を1分子内に2以上有する多官能の反応性モノマーを用いる場合には、高い架橋密度が得られ、十分な硬化性を示すので好ましい。
【0032】
反応性官能基の反応形式は硬化反応であれば特に限定されず、例えば、反応エネルギーの点では光反応又は熱反応のいずれに属するものであってもよいし、活性種の点ではラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、光二量化反応等のいずれに属するものであってもよい。具体的には、例えば、モノマーが反応性官能基としてエチレン性不飽和結合を有する場合には光ラジカル重合及び熱ラジカル重合が可能であり、モノマーが反応性官能基としてエポキシ基を有する場合には熱硬化及び光カチオン重合が可能である。
【0033】
光反応性のモノマーとしては、エチレン性不飽和結合を有するモノマーが好ましく用いられる。光ラジカル重合性基としてのエチレン性不飽和結合を有するモノマーは、光照射により直接、又は重合開始剤の作用を受けて間接的に重合反応を生じるものであり、微小着色パターン欠陥部に修正用インキを塗布した後、光照射により短時間にインキを定着させるのに好ましく用いられる。
【0034】
エチレン性不飽和結合を有するモノマーとして具体的には、次のような多官能アクリレート系のモノマー、すなわち、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートプロピレンオキサイド付加物、エチレングリコール(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンテトラ(メタ)アクリレート、テトラトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、などを例示することができるが、中でも、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートが、高い架橋密度が得られ、十分な硬化性を示すので好ましい。
【0035】
光カチオン重合反応性モノマーとしては、例えば、エポキシ基、オキセタニル基等の環状エーテル基、チオエーテル基、ビニルエーテル基等を有するモノマーが挙げられる。
光アニオン重合性モノマーとしては、例えば、電子吸引性基をもつビニル基、環状ウレタン基、環状尿素類、環状シロキサン基等を有するモノマーが挙げられる。
【0036】
熱反応性の系としては、例えば、エポキシ基と活性水素、環状尿素基と水酸基等の開環付加反応系等を用いることができる。特に好ましくは、経時安定性の点からグリシジル基、脂環式エポキシ基、オキセタニル基を有するモノマー(オリゴマーも含む)と多価カルボン酸無水物又は多価カルボン酸の組み合わせを例示することができる。また、硬化性の点からは、グリシジル基、脂環式エポキシ基、オキセタニル基を有するモノマーと第2682256号、第2850897号、第2894317号、特開2001−350010号公報に開示されているようなブロックカルボン酸の組み合わせを使用するのが特に好ましい。
【0037】
また、グリシジル基、脂環式エポキシ基、オキセタニル基を有するモノマーとしては、常温で液状のノボラック系エポキシ、脂環式エポキシ、カルドエポキシ等を例示でき、例えば具体的には、商品名BPEFG(ナガセケムテックス製)、セロキサイド2021P、3000、2000、スチレンオキサイド、エポリードGT300、GT400(以上、ダイセル化学工業製)、エピコート901、801P、802、802XA、806、806L、807、815、819、825、827、828、815XA、828EL、828XA、152、604、630(以上、油化シェルエポキシ製)等を例示することができる。中でも、脂環式エポキシであるエポリードGT400が、粘度、反応性の点から、好ましい。
【0038】
エポキシ基を有するモノマーと組み合わせて用いる多価カルボン酸無水物の具体例としては、無水フタル酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水シトラコン酸、無水ドデセニルコハク酸、無水トリカルバリル酸、無水マレイン酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水ジメチルテトラヒドロフタル酸、無水ハイミック酸、無水ナジン酸などの脂肪族または脂環族ジカルボン酸無水物;1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物などの脂肪族多価カルボン酸二無水物;無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸などの芳香族多価カルボン酸無水物;エチレングリコールビストリメリテイト、グリセリントリストリメリテイトなどのエステル基含有酸無水物を挙げることができ、特に好ましくは、芳香族多価カルボン酸無水物を挙げることができる。また、市販のカルボン酸無水物からなるエポキシ樹脂硬化剤も好適に用いることができる。
【0039】
また、エポキシ基を有するモノマーと組み合わせて用いる多価カルボン酸の具体例としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ブタンテトラカルボン酸、マレイン酸、イタコン酸などの脂肪族多価カルボン酸;ヘキサヒドロフタル酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸などの脂肪族多価カルボン酸、およびフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸などの芳香族多価カルボン酸を挙げることができ、好ましくは芳香族多価カルボン酸を挙げることができる。
【0040】
これら多価カルボン酸無水物および多価カルボン酸は、1種単独でも2種以上の混合でも用いることができる。硬化剤の配合量は、エポキシ基を有するモノマー100重量部当たり、通常は50〜200重量部の範囲とする。
【0041】
また、光反応及び熱反応性モノマーとしては、エチレン性不飽和結合とエポキシ基を有するモノマーが挙げられ、具体的には、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸グリシジル、α−n−プロピルアクリル酸グリシジル、α−n−ブチルアクリル酸グリシジル、アクリル酸−3,4−エポキシブチル、メタクリル酸−3,4−エポキシブチル、メタクリル酸−4,5−エポキシペンチル、アクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、メタクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、α−エチルアクリル酸−6,7−エポキシヘプチルなどの(メタ)アクリレート類;o−ビニルフェニルグリシジルエーテル、m−ビニルフェニルグリシジルエーテル、p−ビニルフェニルグリシジルエーテル、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテルなどのビニルグリシジルエーテル類;2,3−ジグリシジルオキシスチレン、3,4−ジグリシジルオキシスチレン、2,4−ジグリシジルオキシスチレン、3,5−ジグリシジルオキシスチレン、2,6−ジグリシジルオキシスチレン、5−ビニルピロガロールトリグリシジルエーテル、4−ビニルピロガロールトリグリシジルエーテル、ビニルフロログリシノールトリグリシジルエーテル、2,3−ジヒドロキシメチルスチレンジグリシジルエーテル、3,4−ジヒドロキシメチルスチレンジグリシジルエーテル、2,4−ジヒドロキシメチルスチレンジグリシジルエーテル、3,5−ジヒドロキシメチルスチレンジグリシジルエーテル、2,6−ジヒドロキシメチルスチレンジグリシジルエーテル、2,3,4−トリヒドロキシメチルスチレントリグリシジルエーテル、及び、1,3,5−トリヒドロキシメチルスチレントリグリシジルエーテル、脂環式エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0042】
反応性官能基を有するモノマーの配合量は、微小着色パターン欠陥修正用インキ中に5重量%〜60重量%が好ましく、7重量%〜50重量%が更に好ましく、10重量%〜40重量%が特に好ましい。
【0043】
<ポリマー>
本発明の微小着色パターン欠陥修正用インキにおいて、ポリマーを含有することが好ましい。当該ポリマーは、成膜性や被塗工面に対する密着性を付与し、インキの状態のときにモノマーと比べて高粘度であることから、インキの粘度等物性を調整するための成分として配合される。
【0044】
使用できるポリマーとしては、特に限定されるものではなく、使用する溶剤に溶解するものであるか、使用する反応性官能基を有するモノマーに相溶するものであれば良い。
使用するポリマーは、インキの状態のときにモノマーと比べて高粘度であり、粘度を高く調整するのに用いられるため、重量平均分子量は30,000以上(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算重量平均分子量)が好ましく、50,000以上がより好ましい。このような場合には、少量で充分な粘度上昇効果を得られる場合が多い。
尚、上記ポリマーは、単独で又は2種以上混合して用いることができる。
【0045】
また、特に修正しようとする着色パターンに用いられているポリマーと同じ種類のポリマーである方が修正用カラーペーストの修正部位へのなじみ、密着性などの面で好ましい。例えば、カラーフィルターに着色パターンに一般的に用いられているポリマーはアクリル樹脂等であり、カラーフィルターの着色パターンを修正しようとする場合は、これらを好ましく用いることができる。
【0046】
ポリマーは、反応性のものでも非反応性のものでも使用できるが、反応性ポリマーを用いる場合には、塗膜を反応硬化させて膜強度を上げることができるので、好ましい。反応性官能基の反応形式は、上記反応性官能基を有するモノマーと同様であり、特に限定されない。
【0047】
ここで、非反応性ポリマーとしては、例えば、次のモノマーからなる重合体、又は2種以上のモノマーを用いた共重合体:(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、ポリスチレンマクロモノマー、及びポリメチルメタクリレートマクロモノマー、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、α−ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、α−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデニカル(メタ)アクリレート;等を用いることができる。
【0048】
また、反応性ポリマーとしては、反応性官能基を有するポリマーであればよく、例えば、エチレン性不飽和結合を有するポリマー、エポキシ基を有するポリマー、オキサゾリン基を有するポリマー、環状尿素基を有するポリマー、環状エステル基を有するポリマー、ポリイミド前駆体(ポリアミック酸)、メラミン樹脂等を用いることができるが、安定性と反応性の点から、エチレン性不飽和結合を有するポリマー、エポキシ基を有するポリマーが好ましく用いられる。
【0049】
エチレン性不飽和結合を有するポリマーとしては、上記エチレン性不飽和結合を含有するモノマーの1種又は2種以上用いた重合体及び共重合体を用いることができる。その中でも特に、ジアリルフタレートプレポリマー、特開2000−239497で示されるポリマーは、熱硬化性の点から、好ましく用いられる。
【0050】
ポリマーの配合量は、微小着色パターン欠陥修正用インキ中に2重量%〜40重量%が好ましく、3重量%〜30重量%が更に好ましく、4重量%〜25重量%が特に好ましい。
【0051】
<その他の成分>
本発明に係る微小着色パターン欠陥修正用インキには、重合禁止剤及び/又は重合開始剤等を配合することが好ましい。
【0052】
重合禁止剤は、反応性官能基を有するモノマーを必須成分として含有するので、インキのゲル化を防止して保存時の安定性を向上させるために、含有することが好ましい。重合禁止剤としては、特に限定されず、ジフェニルピクリルヒドラジド、トリ−p−ニトロフェニルメチル,p−ベンゾキノン、p−tert−ブチルカテコール、ピクリン酸、塩化銅、メチルハイドロキノン、メトキノン、tert−ブチルハイドロキノン等の反応の重合禁止剤を用いることができるが、中でも保存安定性の点からハイドロキノン系重合禁止剤が好ましく、メチルハイドロキノンを用いるのが特に好ましい。
【0053】
重合禁止剤の配合量は、微小着色パターン欠陥修正用インキ中に0.01重量%〜1重量%が好ましく、0.01重量%〜0.5重量%が更に好ましく、0.01重量%〜0.05重量%が特に好ましい。
【0054】
重合開始剤は、反応性官能基を有するモノマーや、反応性ポリマーの反応性を向上させる目的で、配合することが好ましい。
【0055】
例えば、エチレン性不飽和結合のようなラジカル重合性基を有するモノマー及び/又はポリマーを用いる場合には、通常、ラジカル重合開始剤を添加する。ラジカル重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、チウラム化合物類、フルオロアミン化合物などが用いられる。より具体的には、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケトン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ベンゾフェノン等を例示できる。これらのうちでも、アセトフェノン類、チオキサントン類化合物の開始剤が好ましく用いられ、具体的には、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)2−モルフォリノ−プロパンー1−オン、ジエチルチオキサントンが、感度、酸素低阻害性の点から、本発明において好ましく用いられる。これらは、いずれか一方を単独で、又は、両方を組み合わせて用いることができる。
【0056】
光カチオン重合開始剤としては、スルホン酸エステル、イミドスルホネート、ジアルキル−4−ヒドロキシスルホニウム塩、アリールスルホン酸−p−ニトロベンジルエステル、シラノール−アルミニウム錯体、(η6-ベンゼン)(η-シクロペンタジエニル)鉄(II)等が例示され、さらに具体的には、ベンゾイントシレート、2,5−ジニトロベンジルトシレート、N−トシフタル酸イミド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
光ラジカル重合開始剤としても、光カチオン重合開始剤としても用いられるものとしては、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ホスホニウム塩、トリアジン化合物、鉄アレーン錯体等が例示され、更に具体的には、ジフェニルヨードニウム、ジトリルヨードニウム、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム、ビス(p−クロロフェニル)ヨードニウム等のヨードニウムのクロリド、ブロミド、ホウフッ化塩、ヘキサフルオロホスフェート塩、ヘキサフルオロアンチモネート塩等のヨードニウム塩、トリフェニルスルホニウム、4−tert−ブチルトリフェニルスルホニウム、トリス(4−メチルフェニル)スルホニウム等のスルホニウムのクロリド、ブロミド、ホウフッ化塩、ヘキサフルオロホスフェート塩、ヘキサフルオロアンチモネート塩等のスルホニウム塩、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン等の2,4,6−置換−1,3,5トリアジン化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0058】
光アニオン重合開始剤としては、例えば紫外線照射によりアミンを発生する化合物、より具体的には、1,10−ジアミノデカンや4,4’−トリメチレンジピペリジン、カルバメート類及びその誘導体、コバルト−アミン錯体類、アミノオキシイミノ類、アンモニウムボレート類等を例示することができ、市販品としては、みどり化学(株)NBC−101がある。
【0059】
重合開始剤の配合量は、微小着色パターン欠陥修正用インキ中に2重量%〜20重量%が好ましく、2重量%〜15重量%が更に好ましく、4重量%〜9重量%が特に好ましい。
【0060】
また、本発明に係る微小着色パターン欠陥修正用インキには、他にも、界面活性剤、架橋剤等を配合しても良い。
【0061】
<微小着色パターン欠陥修正用インキの製造方法>
本発明に係る微小着色パターン欠陥修正用インキの製造には、着色剤と反応性官能基を有するモノマーと溶剤とその他の成分とを全体で混合して分散する方法、あるいは、各成分を予め別々に混合してから全体を合わせて混合する方法等を用いることができる。これら製造方法の選択については、主に、着色剤の種類により、適宜適当なものを選ぶのが好ましい。また、上記その他の任意成分は、その機能を発現するように、適宜配合するようにする。
【0062】
本発明に係る微小着色パターン欠陥修正用インキの製造においては、インキ中又は着色剤の分散液中における着色剤の分散方法は、特に限定されず、ニーダー、ロールミル、アトライタ、スーパーミル、ディゾルバ、ホモミキサー、サンドミル等の公知の分散機等、種々の方法をとり得る。
【0063】
このようにして得られた微小着色パターン欠陥修正用インキは、固形分濃度が、30重量%〜80重量%であることが好ましく、40重量%〜70重量%であることがより好ましく、50重量%〜65重量%であることが更に好ましい。
なお、ここで固形分濃度とは、溶剤以外のインキ含有物、すなわち着色剤、反応性官能基を有するモノマー、その他の任意成分の正味の重量のインキ総重量に対する重量%のことである。
【0064】
<物性>
本発明に係る微小着色パターン欠陥修正用インキの粘度は、40〜300mPa・secであることが好ましく、50〜150mPa・secであることがより好ましく、55〜90mPa・secであることが特に好ましい。インキ粘度が低すぎると塗布後にスポットがにじんで広がって混色欠陥を起こしやすくなり、逆にインキ粘度が高すぎると、塗布スポットの膜厚は大きくなり色は濃くなるものの、塗布スポット上面がなだらかでなくなり、突起の高さが大きくなる。インキの粘度が上記範囲にあれば、なだらかな形状の塗布スポットになり、にじみも起こらず、突起の高さも許容範囲内となる。また、インキの粘度の調整は、溶剤添加量の調整で行うのが好ましい。
尚、本発明でいうインキの粘度は、25℃において、B型粘度計(例えばTOKIMEC製、商品名:VISCOMETER TV−20)を用いて、BLアダプター、M1ローター、又はM2ローターを使用して1分間測定して、その値を求める。
【0065】
II.微小着色パターン欠陥修正方法
次に、本発明に係る微小着色パターン欠陥修正用インキを用いた修正方法について説明する。
本発明に係る微小着色パターン欠陥修正方法は、本発明に係る微小着色パターン欠陥修正用インキを微小着色欠陥部に塗布する工程と、当該微小着色パターン欠陥修正用インキを塗布した微小着色欠陥部を光照射及び/又は加熱して硬化させる硬化工程を含むことを特徴とする。
本発明によれば、上記微小着色パターン欠陥修正用インキを用いることにより、修正部と正常部との色度差が小さく、当該修正部を当該正常部とほぼ同等の性能に修正することができる。
【0066】
以下、各工程についてそれぞれ説明する。
(1)本発明に係る微小着色パターン欠陥修正用インキを微小着色欠陥部に塗布する工程
本工程においては、まず、上記の微小着色パターン欠陥修正用インキを微小着色欠陥部に塗布する。
修正用インキを塗布する方法としては、特に限定はないが、特開平8−182949号公報に開示されているように、針状の塗布媒体にインキを付着させ、続いて微小着色パターン欠陥部に塗布する方法が、微小な修正スポットに対応できるため好ましい。インキを付着させる側の針状部材の先端が平面状に加工されていると、針先端部へのインキの付着量が増え、塗布性が向上するので、さらに好ましい。修正すべき欠陥の大きさに合わせて針状塗布媒体先端の径を変化させると、様々な大きさの欠陥に対応できるため、さらに好ましい。
【0067】
本工程においては、修正用インキを塗布した後、乾燥工程を行っても良い。乾燥する方法としては、特に限定はなく、例えば、風乾、加熱乾燥、真空乾燥などにより乾燥する。加熱乾燥の場合、オーブン、ホットプレートなどを使用し、50〜300℃の範囲で1分〜3時間行うのが好ましい。また、修正の場合、局所的かつ短時間での乾燥が要求されることが多いので、例えば赤外線スポットヒーターなどを用いて、修正箇所だけを加熱して乾燥する方法も好ましく使用できる。
【0068】
(2)硬化工程
本工程は、塗布した修正用インキを硬化させて、修正部を形成する工程である。
上記修正用インキを硬化させる方法としては、加熱する方法、及び/又は光照射する方法が挙げられる。
【0069】
本発明に係る修正用インキ中に、熱反応性官能基を有するモノマー又はポリマーを有する場合には、修正用インキを欠陥部に塗布した後に、加熱する工程を備える。加熱条件は、100〜250℃の温度で、1〜60分間である。
また、本発明に係る修正用インキ中に、光反応性官能基を有するモノマー又はポリマーを有する場合には、修正用インキを欠陥部に塗布した後に、光照射する工程を備えることが好ましい。これにより、修正部の表面を瞬時に一次硬化させたり、又は修正部の全体を短時間に硬化させることができる。修正部の表面を瞬時に一次硬化させる場合には、インキの流動性を瞬時にとめることができ、修正部のインキ形状の安定化が図れるというメリットがあり、好ましい。
更に、光照射後に、加熱工程を備えることで、硬化を充分に行うことができる。
【0070】
以上の方法により、本発明に係る微小着色パターン欠陥修正用インキの硬化物によって微小着色パターン欠陥部を補填して修正を行い、必要があれば、平滑のためのオーバーコート層、保護膜、透明導電膜を形成し、無欠陥品と同等の性能を有するカラーフィルターを製造することができる。
【0071】
本発明に係るカラーフィルターは、前記微小着色パターン欠陥修正用インキで修正された部分とその周囲との段差は、平滑性の点では周囲との厚みの差がないことが好ましいが、着色濃度とのバランスを考慮し、微小着色パターン欠陥修正用インキで修正された部分とその周囲との段差が−2μm〜+1μmであることが好ましく、−1.5μm〜+0.5μmであることがさらに好ましく、−1μm〜+0.4μmであることが特に好ましい。
上記範囲にある場合には、色抜け部に補充した部分の膜厚が充分に厚く、補充した部分の着色が充分であり、又、新たな突起による製品不良を起こすこともないため、好ましい。
【実施例】
【0072】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。これらの記載により本発明を制限するものではない。
【0073】
(1)顔料分散液の調製
表1に示す配合量により、顔料、分散剤、溶剤を秤量し混合した。この混合液を、直径0.3mmのジルコニアビーズを使用して、ペイントシェーカー(浅田鉄工製、商品名:PAINT SHAKER)にて、3時間分散し、顔料分散液を得た。尚、用いた溶剤の沸点及び比蒸発速度を表2に示す。
【0074】
【表1】

【0075】
【表2】

【0076】
(2)樹脂溶液の調製
表3に示す配合量により、ポリマー、反応性官能基を有するモノマー、重合禁止剤を混合した。この混合液を、110℃まで加熱し、ポリマーを反応性官能基を有するモノマーに溶解させ、樹脂溶液を得た。
【0077】
【表3】

【0078】
(3)微小着色パターン欠陥修正インキの調製
表4に示す配合量により、製造例1〜15で得られた顔料分散液、製造例16で得られた樹脂溶液、反応性官能基を有するモノマー、重合開始剤、及び溶剤を混合し、各微小着色パターン欠陥修正用インキを得た。
【0079】
【表4】

【0080】
(評価方法)
1.粘度
インキの粘度は、25℃において、B型粘度計(TOKIMEC製、商品名:VISCOMETER TV−20)を用いて、BLアダプター、M1ローター、M2ローターを使用して、1分間測定し、その値を求めた。
2.修正部の目視評価
カラーフィルターの画素に、レーザーを照射して、当該画素を60μm角に除去し、先端が直径50μmの円形の修正用針を使用して、当該除去部に修正用インキを塗布した。尚、修正用インキの塗布条件は下記のとおりである。
<塗布条件(1)>
修正用インキをインキツボに深さ5mmになるまで充填し、充填直後に、修正用針を浸漬、次いで、上記除去部に当該インキを塗布した。
<塗布条件(2)>
充填直後のインキを用いて、上記除去部1箇所につき連続2回塗布し、これを連続して繰り返して除去部5箇所に塗布した。即ち、10回の連続塗布を行った。
尚、修正用針のインキへの浸漬は、塗布毎に行った。
<塗布条件(3)>
修正用インキをインキツボに充填し、5時間放置した後、当該インキを上記除去部に塗布した。
修正したカラーフィルターをバックライト上におき、修正箇所を観察することにより評価を行った。インキのにじみにより修正面積が広くなりすぎたり、色が薄すぎたりするために、目視で修正個所がはっきりわかる場合を、不良「×」とした。
3.修正部の段差測定及び評価
上記塗布条件(1)〜(3)によって修正したカラーフィルターについて、修正部の段差を触針式形状測定装置(ケーエルエー・テンコール製、商品名:P−1LongScanProfiler)による膜厚測定により測定した。段差が−1.0μm以上+0.4μm以下である場合を、良「○」とした。
【0081】
実施例1〜13、及び比較例1について、上記で求めた粘度、修正部の目視評価、及び修正部の段差測定の結果を、表5に示す。
【0082】
【表5】

【0083】
上記表5より、実施例1〜13では、修正部の段差が極めて小さく、修正、硬化後の目視外観も良好な修正を行うことができた。一方、比較例1では、修正インキを除去部に連続して10回塗布する際、修正用針の先端に修正用インキが溜まり、ぼた落ちが発生した。また、修正用インキをインキツボに充填し、5時間放置した後、当該インキを除去部に塗布した結果、塗布部の中央部にインキが付着せず、ドーナツ形状となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、着色剤と、分散剤と、反応性官能基を有するモノマーと、溶剤を含有し、前記溶剤が、沸点が160℃〜250℃で、且つ酢酸ブチルの蒸発速度を100としたときの比蒸発速度が40以下の溶剤(A)を溶剤全量に対して40重量%〜100重量%の範囲で含有することを特徴とする、微小着色パターン欠陥修正用インキ。
【請求項2】
前記溶剤(A)が、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−エトキシプロピオン酸エチル、及びジプロピレングリコールジメチルエーテルよりなる群から選ばれる1種以上を含むことを特徴とする、請求項1に記載の微小着色パターン欠陥修正用インキ。
【請求項3】
ポリマーを含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の微小着色パターン欠陥修正用インキ。
【請求項4】
前記ポリマーが、少なくともジアリルフタレートプレポリマーを含むことを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の微小着色パターン欠陥修正用インキ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の微小着色パターン欠陥修正用インキを微小着色欠陥部に塗布する工程と、当該微小着色パターン欠陥修正用インキを塗布した微小着色欠陥部を光照射及び/又は加熱して硬化させる硬化工程を含むことを特徴とする、微小着色パターン欠陥修正方法。
【請求項6】
前記硬化工程において、当該微小着色パターン欠陥修正用インキを塗布した微小着色欠陥部に光照射した後、加熱することを特徴とする、請求項5に記載の微小着色パターン欠陥修正方法。

【公開番号】特開2010−231147(P2010−231147A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81465(P2009−81465)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000183923)株式会社DNPファインケミカル (268)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】