説明

微生物の分離、キャラクタリゼーションおよび/または同定に用いる分離装置

【課題】本発明は微生物を含むと分かっているまたはその恐れがある試験サンプルから該微生物を分離、単離、またはペレット化するために使用できる分離装置または容器である。
【解決手段】分離、単離、またはペレット化した微生物サンプルは、その後、微生物のキャラクタリゼーションおよび/または同定に用いる測定値を提供する一以上の解析工程を受ける。本発明の一態様として、解析ステップは本願明細書に記載する分離装置または容器においてそのまま行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その開示が本明細書に組み込まれる、2008年10月31日出願の米国仮特許出願第61/110,187号、"Method and System for Detection and/or Characterization of a Biological Particle in a Sample"の利益を主張する。
【0002】
本発明は微生物の分離に使用する分離装置に関する。特に、本発明の装置は、キャラクタリゼーションおよび/または同定のために微生物を分離するために使用することができる。
【背景技術】
【0003】
広範囲にわたる抗生物質が医師に利用可能であるにもかかわらず、依然として死亡率が高い敗血症の場合は特に、体液中の病原微生物の検出はできる限り早く行われなければならない。例えば患者の体液中、特に血液中の微生物のような生物学的に活性な病原体の存在は、通常、血液培養ボトルを使用して判定される。血流感染は高い罹患率および死亡率を伴うけれども、生化学的同定および抗菌感染性試験を伴う培養による現在の診断法では数日かかり得る。一般的に、臨床症状に基づいて経験的治療を始め、初期の治療が失敗した際にのみ試験結果が臨床治療の判断に影響する。陽性血液培養結果後、最初の数時間以内、好ましくは1時間以内に血流感染症が評価できることは、提供された診断情報の臨床的意義を非常に高くする。分子増幅方法は、このニーズを満たすために提案されたが、このアプローチには重大な難題が依然として残っている。陽性の血液培養液自体は、種々の速やかな同定(ID)試験に使用できる可能性のある、自然増殖した微生物集団である。
【0004】
例えばVitek(登録商標)システム、Phoenix(商標)システムおよびMicroscan(登録商標) システムのような従来のオートメーション化した表現型のID試験、または例えばAPIのような手作業による表現型の試験は、確固とした結果を提示するには、微生物が適切な増殖期にあり、且つ培地および血液製剤の干渉がない状態であることが必要となる。これらのシステムは、陽性の培養液から採取してプレート培地上にて18〜24時間培養したコロニーが必要である。しかしながら、より速く結果を得るための試行錯誤にて、いくつかの研究室が、陽性の血液培養ボトルから単離した微生物を利用した上述のシステムを用いて報告してきた。これらの「ダイレクトフロムボトル試験(direct-from-the-bottle test)」は、全ての微生物(例えばグラム陽性の球菌)に適当ではなく、試験メーカーによって検証されているわけではなく、そして、一般に結果を出力するのに3〜8時間かかる。陽性の培養結果後数時間以内で、好ましくは1時間以内で、臨床的意義のある結果を医師に提供するために、より速く、且つ広く特異的な試験が早急に必要とされている。
【0005】
光学分光学方法、例えば内在蛍光(IF)、赤外分光(FTIR)またはラマン分光法、および、MALDI-TOF(Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization−Time Of Flight)のような質量分析方法は、微生物の同定が非常に速くできる可能性があるが、これらの方法は、液体微生物学的な培養液中に、および例えばその血液のような臨床試料中、またはそれらの組合せに存在する非常に高い蛍光性および吸収性の化合物からの干渉を受けるおそれがある。陽性の血液培養液から直接微生物を回収するために最も一般的に採用された方法は、二段階分画遠心分離および血清分離管中での遠心分離である。しかしながら、これらの方法は、いくつかの欠点を有する。結果として生じる微生物の試料には、たいてい赤血球、血小板、脂質分子、血漿酵素および細胞破片が混入しており、それによって従来の表現型ID試験で不十分な結果が生じ得る。また、これらの方法には非常に労力がかかり、そして、潜在的に危険な病原体への空気曝露がその使用者に起こり得るステップのため、安全でない。簡易で安全で信頼性が高い方法が、血液培養液および他の複合サンプルから、これらの干渉物質を含まない速やかな同定技術を実施することができる微生物を単離するために必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、微生物を含んでいる、または含んでいる疑いがあるサンプルから微生物を分離するために使うことができる分離装置または容器を目的とする。本発明によれば、分離装置は、未知の微生物を分離するため、またはペレット化し、そして、分離したサンプルまたはペレットの未知の微生物のキャラクタリゼーションおよび/または同定のための解析に用いることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一つの様態では、本発明は微生物を単離し、および同定するための容器を目的とする。前記容器は以下を備える。
(a) 広い内径を有する上部、
(b) 狭い内径を有する下部、および、
(c)容器の底面、上面および/または1以上の側面上の光学窓であって、近赤外、可視、および/または、紫外光スペクトルの少なくとも一部を透過する、光学窓。当該容器は、任意で、下部の狭い内径と上部の広い内径をつなげる中間の先細の部分を更に有してもよい。
【0008】
別の態様においては、本発明は、次から成る使い捨ての分離装置を目的とする。
(a)縦軸を持つ本体を有する円柱状容器であって、前記本体は、第1端部および第2端部を有する前記縦軸方向に細長い内部キャピラリ管を画定し、前記キャピラリ管の前記第1端部に連結された貯蔵器を更に画定する、円柱状容器。
(b)前記キャピラリ管の前記第2端部付近くの前記本体は、光学的に透明な物質からなる。
(c)前記貯蔵器への接近を可能にして、液体サンプルの供給を可能にする前記貯蔵器のカバー。
任意で、円柱状容器は、貯蔵器中に密度クッションを含んでもよい。加えて、容器は、貯蔵器およびキャピラリ管をつなぐ先細の部分を有してもよい。
【0009】
本発明の一実施形態では、微生物病原体は、本願明細書において記述されている方法で分離装置または容器にあるキャピラリ管の底で分離またはペレット化する。分離またはペレット化した微生物病原体は、微生物病原体のキャラクタリゼーションおよび/または同定のために調べることができる。
【0010】
他の実施形態では、分離装置は閉鎖することができ、例えば、装置は密閉することができる。潜在的感染性の病原体を扱う場合、かかる装置は安全面での有利性を提供することができる。他の可能な実施形態において、分離装置は、分離、単離、または、ペレット化した微生物サンプルを取り出す手段を提供することができ、このことにより、サンプルを調べる前に、または更なる試験のために分離装置から取り除くことができる
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に従う、分離装置の斜視図である。
【図2】図1の分離装置の断面図である。
【図3】本発明の他の実施形態に従う、分離装置の斜視図である。
【図4】図3に示される分離装置の上部部分の断面図である。
【図5】図3に示される分離装置の底面部分の断面図である。分離装置の底面部分は、図4の分離装置の上部部分の下端にはめ込まれる。
【図6】分離装置のキャピラリ管部分で分離された微生物の病原体(例えば遠心分離後のペレット)を示す、図3の分離装置の断面図である。
【図7】図3の分離装置の底面部分の他の実施形態の断面図である。図示のように、この実施形態は、隣接した狭い側壁につながる2つのくぼんだ向かい合う側面を有し、したがって分離装置の側面から解析を行うキャピラリ管部分中に微生物の病原体を分離することが可能である。
【図8】解析モジュールによって管の底面を通して解析される、図6の分離装置中の濃縮微生物剤の概略図である。
【図9】本発明の分離装置のさらなる他の実施形態の斜視図である。
【図10】図9の分離装置の断面図である。
【図11】本発明の分離装置用の別の蓋の斜視図である。
【図12】本発明の一実施形態に従う分離装置の写真を示す。本発明によれば、溶解したサンプル、密度クッションおよび微生物ペレットは、写真においてはっきり見える。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、異なる態様において実施されることができ、本願明細書において記載される実施形態に限られると解釈されてはならない。むしろ、これらの実施形態は、この開示が完璧でおよび完成していることおよび当業者に本発明の範囲を十分に伝えるために提供される。例えば、一実施形態に関して示される特徴は他の実施形態に組み込むことができ、および、一つの特定の実施形態に関して示される特徴はその実施形態から削除することができる。加えて、本願明細書において提案される実施形態に対する、本発明から逸脱しない多数の変化および付加は、本開示を考慮して当業者にとって明らかであろう。
【0013】
微生物の分離、キャラクタリゼーションおよび/または同定のための方法は、以下に示す、同一出願人による米国特許出願において開示される。(1)2009年10月30日に出願された、第xxxxx号「Method for the Isolation and Identification of Microorganisms」、(2)2009年10月30日に出願された第xxxxx号「Method for Separation, Characterization and/or Identification of Microorganisms using Spectroscopy」、(3)2009年10月30日に出願された第xxxxx号「Method for Separation, Characterization and/or Identification of Microorganisms using Mass Spectrometry」、および(4)2009年10月30日に出願された第xxxxx号「Method for Separation, Characterization and/or Identification of Microorganisms using Raman Spectroscopy」である。これらの出願は、参照により本願明細書に組み込まれる。簡潔に言えば、これらの発明は、サンプル中の微生物を単離、キャラクタリゼーション、および/または同定する方法を開示する。その方法は、従来技術よりもさらに迅速な、微生物の分離、キャラクタリゼーションおよび/または同定を可能にして、より迅速な診断(例えば、敗血症を有するまたは有する疑いがある被検者の診断)、および混入した物質(例えば食品および医薬)の同定を可能にする。これらの方法や、微生物をキャラクタリゼーションし、および/または同定する他の方法において、分離、単離、または、ペレット化した微生物サンプルを提供することは、その後のキャラクタリゼーションおよび/または同定処理のために大抵必要である。本発明は、サンプルから微生物を分離、単離および/またはペレット化するために使用することができる分離装置を開示する。例えば、本発明の分離装置は、液体培養(例えば血液培養)から、微生物をペレット化する(例えば、遠心分離によって)ために用いることができる。微生物ペレットは、微生物のキャラクタリゼーションおよび/または同定のために有効な測定を行う、一つ以上の解析ステップに供され得る。
【0014】
一実施形態において、分離、単離またはペレット化した微生物サンプルが分離装置中にとどまった状態で、解析ステップは実施できる。例えば、封止分離装置(例えば、密閉装置)は、分離、単離またはペレット化した微生物サンプルの調整のために使うことができ、および、その後に分離、単離またはペレット化した微生物サンプルは、微生物のキャラクタリゼーションおよび/または同定ができるデータまたは計測値を提供するために、非侵襲性解析技術にかけることができる。他の実施形態では、分離、単離またはペレット化した微生物サンプルは、解析の前に分離装置から取り除くことができる。例えば、分離、単離またはペレット化した微生物は、適切なバッファで再懸濁することができ、および装置または容器から取り出す(例えば、ピペットによって取り出す)ことができる。更に他の実施形態では、本願明細書において開示されるように、分離装置または容器は、当該分離装置または容器から、取りはずすことができる下部または折って取り外すことができる下部(すなわち取り外し可能な下部)を含んでもよい。動作中、この下部は、その中の分離されたまたは単離された微生物に接近できるようにするために、分離装置または容器からスナップオフ(snap off)することができる。
【0015】
一般に、分離装置または本発明の容器は、微生物を含んでいるまたは含んでいる疑いがある試験サンプルから微生物の分離、単離またはペレット化するために有効なあらゆる装置または容器であってよい。例えば、分離装置または容器は、単一のまたは複数の部分からなる本体および閉鎖具即ち蓋を含んでもよい。装置の本体は、鋳型形成、ブロー形成、またはその他の本技術分野にて周知の技術を使用して形成することができる。一般に、あらゆる既知のプラスチック、ガラスまたは透明材料などは、分離装置のために用いることができる。分離装置は、形成される一端に開口部を有し、試験サンプルの充填および/または取り出しのために、装置または容器の内部へのアクセスを提供する。実施形態において、分離装置または容器は円柱形の本体から成り、それは一端で閉鎖していておよび逆の一端で開いている。一般的に、閉鎖具または蓋は、閉鎖するため、すなわち外側の環境から装置または容器の内部を遮断するために、あらゆる公知の機構を採用することができる。例えば、閉鎖具または蓋は、閉鎖するため、すなわち外側の環境から装置の内部を遮断するために、装置または容器の本体に取り付けられ、装置または容器の開口部にかみ合わせる(snap)ことができるスナップ式の蓋であってもよい。あるいは、閉鎖具は、装置または容器にねじこんで装置/容器を閉鎖することができるねじこみ式蓋であってもよい。本技術分野で既知のように、蓋は、装置または容器の外壁にあるねじ山に差し込むまたはねじ込むために、蓋の内部側壁上にねじ山を有してもよい。一実施形態において、周知のように、蓋は、その内側に一つ以上のゴムオーリングを含んでもよい。一つ以上のオーリングの使用により、封止(例えば密閉)がもたらされる。図11に示すように、他の実施形態で、閉鎖具、即ち蓋100は、例えば、針などにより貫通され得る貫通可能な隔壁104を有してもよく、このことにより密封された装置または容器への試験サンプルの注入を可能にできる。貫通可能な隔壁104を使用することで、感染の可能性がある物質を扱うときの安全面の効果を使用者または技術者に提供することができ、および同定方法の自動化を可能にする。貫通可能な隔壁104は、装置または容器が封止(例えば、密閉)されたままであることも保証し、従って、分離装置で起こりうる汚染からの保護をもたらす。
【0016】
本発明の分離装置または容器中にて分離、単離、またはペレット化する試験サンプルは、臨床的および非臨床的サンプルを含む。これらのサンプルは、定期的または不定期的に微生物の存在を試験される物質サンプルと同様に、微生物の存在し、および/または増殖する、またはその疑いがある。例えば、試験サンプルは、臨床的または非臨床的標本サンプルの培養組織からの培養液であってもよい。典型的標本サンプルであって、培養され、その後、当該標本サンプルに含まれる微生物の分離、単離、ペレット化のための分離技術が適用され得る標本サンプルには、血液、血清、血漿、血液画分、滑液、尿、精液、唾液、糞便、脳脊髄液、胃内容物、膣分泌物、組織ホモジェネート、骨髄穿刺液、骨ホモジェネート、痰、吸引物、スワブおよびスワブリンス液、他の体液、などが含まれ得る。
【0017】
更に本願明細書において記述されているように、一実施例において、分離装置または容器は、試験サンプルからの微生物の、分離用、単離用またはペレット用に密度クッション(density cushion)を使用してもよい。ここで使用しているように、用語「密度クッション」は、完全に均一の密度を有している溶液を指す。有効な密度クッションは、本願明細書において更に記述されている。例えば、微生物を含むと知られているまたは含むかもしれない試験サンプルは、装置または容器中に含まれる密度クッション上に装填され、そして、装置の容器によって遠心分離され、微生物を単離またはペレット化することができる。この実施形態によれば、分離装置または容器は、密度クッションおよびサンプルを保持するために、充分な体積を有するであろう。一実施形態では、容器は、遠心機ローターにはめ込んでまたははめ込まれることができる。容器の体積は、約0.1mlから約25mlまででよく、例えば約1mlから約15mlまで、例えば約1.5mlから約8mlまででありうる。分離がマイクロスケールで実施される場合、容器の体積は、約2μlから約100μlまででよく、例えば、約5μlから約50μlまででよい。いくつかの実施形態では、本願明細書において更に詳細に議論したように、分離装置または容器は密度クッションを先に装填することができる。いくつかの実施形態では、あらゆる密度クッションおよびサンプルが混合するのを防ぐために、サンプルが上部に配置される前にまたは重ねられる前に、中間層(液体のまたは固形の)は、密度クッションの上に配置することができる。例えば、あとで加えられる試験サンプルを有する密度クッションの混合を予防するために、薄い膜を装填済みの密度クッションの上に配置することができる。さらにもう一つの実施形態において、分離装置または容器は、密度クッションを予め装填し、その後溶解溶液を予め装填できる。有用な溶解溶液は、本願明細書で言及した同一出願人による米国特許出願に開示されている。この実施形態によれば、薄い膜は、密度クッションおよび溶解溶液を分離し、混合を予防するために用いることができる。
【0018】
一実施形態例にて、装置または容器は、試験サンプルおよび密度クッションの大部分を保持するための広い直径を有する上部の内部チャンバまたは貯蔵器、および分離された、単離されたまたはペレット化された微生物を集めるための細い直径を有する下部の内部チャンバまたはキャピラリ管を有する。上部の内部チャンバまたは貯蔵器は、約0.32〜約0.40インチ、例えば約0.34〜約0.38インチ、例えば約0.36インチの内径を有することができる。マイクロスケール分離のために、内径はさらに小さくすることができる。例えば、細い部分の内径は、約0.001〜約0.04インチ、例えば約0.002〜約0.01インチであればよい。下部の内部チャンバまたはキャピラリ管は、約0.04〜約0.12インチ、例えば約0.06〜約0.10インチ、例えば約0.08インチの内径を有することができる。
【0019】
他の実施形態では、装置または容器は、縦軸を持つ本体を有する管状容器を備える使い捨ての分離装置であり、該本体は、第1端部および第2端部を有する、軸に沿って方向付けられた細長い内側キャピラリ管を画定し、更に、該本体はキャピラリ管の第1端部に連結された貯蔵器を画定する。この実施形態の一態様において、キャピラリ管の第2端部にすぐ近い本体は、光学的に透明な物質からなる。取り外し可能な閉鎖具またはカバーは、貯蔵器に提供されておよび貯蔵器に分配される流体サンプルを容れている貯蔵器へのアクセスを可能にする。任意で、密度クッションは、装置または容器に前もって装填することができる。
【0020】
分離装置または容器は、また、下部の内部チャンバまたはキャピラリ管と上部の内部チャンバまたは貯蔵器をつなぐ中間の先細部分またはチャンバを有してもよい。中間の先細部分の内部側壁は先細であってもよく、または下部の内部チャンバまたはキャピラリ管を有する上部の内部チャンバまたは貯蔵器間で直径を小さくすることができる。先細部分の内部側壁は、約20〜約70度、例えば約30〜約60度の角度を有することができる。一実施形態において、下部の細い部分は容器の全体の高さの半分より小さく、例えば容器の全体の高さの約40%未満、30%、20%または10%である。
【0021】
特定の実施例において、分離された、単離された、またはペレット化した微生物が分離の後、(技術者が容器内容物に暴露されないために)マニュアルまたはオートメーション化した方法どちらかで、容器から容易に回収できるように、容器は設計される。例えば、容器は、ペレットを含み、残りの容器から切り離すことができる取り外し可能な部分または切断部(break-away portion)を備えうる。他の実施形態では、容器は、注射器または他のサンプリングデバイスを挿入し、またはペレットを除去するための、一つ以上の引き込み口(port)または浸透性の界面のような、分離後にペレットを取り出す手段を備える。一実施形態において、容器は管、例えば遠心管にすることもできる。他の実施形態では、容器は、チップまたはカードにすることもできる。一実施形態において、容器は独立型(stand alone)容器、すなわち単一のサンプルを切り離すための装置である。
【0022】
容器は、光学窓を備え、当該窓を通じて解析をすることができるようにする。光学窓は、容器の底面、上部および/または側面にあってもよい。領域は、光を透過するあらゆる物質により構成され得る(例えば少なくとも一部の近赤外(NIR;700 nm-1400 nm)、紫外(UV;190 nm-400 nm) および/または、可視(VIS;400 nm-700 nm)光スペクトル)。適切な物質の実施例としては、アクリル、メタクリル酸エステル、クォーツ、石英ガラス、サファイヤ、環状オレフィン共重合体(COC)および/またはシクロオレフィンポリマー(COP)(例えばZeonex(登録商標) (Zeonex(登録商標)社, San Diego, CA))が挙げられるが、これに限定されるものではない。一実施形態では、全ての容器は、光学窓の物質でできている。他の実施形態では、容器は、2つ以上の独立した部分から形成(例えば、成形)されてもよく、例えば、光学窓のための光学的UV-VIS-NIR透過成分と残りの容器を作製するための他の物質(例えば、より低コストな標準的成形プラスチック)で形成されてもよい。一実施形態において、光学窓は分光学的解析ができる程度に十分薄く、その薄さは窓の材料によって決まる。他の実施形態では、分光学的解析による干渉を減らすために、光学窓は可能な限り薄くしている。例えば、窓は、約0.20インチ未満(例えば約0.15、0.10または0.05インチ未満)の厚さとなりうる。
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の分離装置または容器のいくつかの可能な構成について更に説明する。分離装置の可能な実施例の1つを図1〜2に示す。図1および2に示すように、分離装置2は、一般に円柱形状を有する下部6、および、外側に突出した隆起構造、即ち突出部(ledge)8、開口部9および封止蓋4により画定される上部を備えている。下部6は、容器本体10を備え、当該容器本体10は、上部貯蔵器14、中間の先細部16および下部のキャピラリ管18を備え、それらすべて容器の縦軸の周囲に配置している内部チャンバを内包している。図示のように、中間の先細部16は、比較的直径の大きい直上方貯蔵器14と、比較的直径の小さいキャピラリ管18とを連結している。一般に、容器本体10は、成形されるか、あるいは、従来技術において周知のいかなるプラスチック材料から形成され得る。外側に突出した隆起構造すなわち突出部8は、封止蓋4のおさえとして機能でき、および/または使用者が装置をつかみやすい構造を与えることができる。装置の上部はまた、装置2の外壁上にねじ山12を設けてもよく、これにより、封止蓋4を装置2にねじ込むまたは回してはめ込むことが可能になり、内部チャンバを閉鎖し、または密閉できるようになる。装置は、薄い光学窓19を更に備え、当該光学窓19を通じて解析が実施できるようにする。実施例において、光学窓19の直径は、光ファイバーケーブルに適合させるように設計することができ、分光器への装置の正確な連結を容易にすることができる。前述したように、光学窓19は光を透過する物質から成る装置部位を備えており、それを通して解析ができる。他の実施態様では、解析を可能とする、光を透過する材料から装置全体が構成されていてもよい。
【0024】
いくつかの実施例において、微生物の分離、単離またはペレット化することを容易にするため、この実施例の分離装置2には、密度クッション43(例えば、図6-7に示す)を予め装填することができる。もう一つの実施例では、密度クッションは、本願明細書に記述されている分離ステップにかけられるサンプルの充填する直前に、分離装置2に加えることができる。さらにもう一つの実施例において、参照として本明細書に組み入れた米国特許出願に記載されているように、分離装置2には、密度クッション43および溶解溶液(図示せず)を先に充填し、サンプル溶解および微生物の分離、単離またはペレット化を容易にすることができる。
【0025】
もう一つの実施例では、図3-6および8に示すように、分離装置20は、単一の分離装置20を構成するように、互いにかみ合うかまたは取り付けることができる上部セクション22および下部セクション24である2つの独立したセクションで作製できる。一般に、従来技術で既知のあらゆる周知の手段により、下部のセクション24は上部のセクション22に着脱可能に取り付けられ、または固定して取り付けられ得る。上部のセクション22は、通常、円柱形状、外側に突出した隆起構造または突出部30および開口部29を備えた、本体上部32を備えている。開口部は、閉鎖具即ち蓋52を使用して、閉鎖または密閉することができる(図8を参照)。本体上部32は、更に内部チャンバの上部を画定する。内部チャンバは、上部貯蔵器40、中間の先細部42およびキャピラリ管45の上部44を備えており、それらすべて容器の縦軸の周囲に形成した。本体下部34は、キャピラリ管45の下部46を備えている。本体上部32および本体下部34が互いにかみ合うか、または取付けられる場合、それらは上部チャンバを包含し、ここでも、貯蔵器上部40、中間の先細部42およびキャピラリ管45を備える。図示のように、中間の先細部42は、比較的直径の大きい貯蔵器上部40および比較的直径の小さいキャピラリ管45を連結する。例えば、本体下部34の上に形成された突出隆起部36は、本体上部32の底面で対応する凹部38にはめ込むことができる(例えば、かみ合うかまたは取り付けられる)。装置20の本体下部34は、解析を可能にする薄い光学窓26を更に含んでもよい。前述したように、光学窓26は、光を透過し、および解析することができる物質から成る装置部分を備える。他の実施形態において、装置は全てが光を透過する材料からなってもよく、それを通じて解析ができるようにする。前述したように、分離、単離またはペレット化した微生物が、分離後、手動または自動の方法のどちらかで(技術者が容器内容物に暴露しないように)容器から容易に回収することができるように、容器は設計されている。例えば、下部のセクション24は、分離ステップの後に、取り外しができてもよく、このことにより、使用者は、分離されたまたはペレット化された、下部セクション24の中の、キャピラリ管45の下部46に含まれる微生物を取り出すことができる。
【0026】
いくつかの実施形態では、微生物を分離、単離またはペレット化することを容易にするために、この実施形態の分離装置20は、密度クッション43(例えば、図6〜7に示す)を予め装填することができる。他の実施形態では、密度クッションは、本願明細書において記述されている分離ステップにかけるサンプルを充填する直前に、分離装置20に加えられることができる。さらに他の実施形態では、サンプル溶解および微生物の分離、単離またはペレット化を容易にするために、分離装置20は、密度クッション43および溶解溶液(図示せず)によって予め装填することができる。
【0027】
分離装置の下部部分の他の実施例は、図7に示す。下部のセクション48は、上部のセクション22に着脱可能にまたは固定的に取り付けることができ、本発明による分離装置39を形成する。上部セクション22および下部セクション47は、それぞれ、本体上部32と本体下部49を備え、内部チャンバを形成する。内部チャンバは、上部の貯蔵器(図示せず)、中間の先細部42およびキャピラリ管45を備えている。図示のように、本体下部34は、内向きに傾斜して、内側のキャピラリ管45の底部の対向側の薄い側壁となる外壁部48を更に備える。これらの薄い側壁により、分離、単離またはペレット化した微生物50を、分離装置のこの側面を通じて解析することができるようにする。
【0028】
分離のさらにもう一つの実施形態における分離装置60は、図9〜10に示される。これらの図を参照して、分離装置60は、貯蔵器上部80、中間の先細部82およびキャピラリ管の下部84を画定する本体62を含む。中間の先細部82は、比較的直径の大きい貯蔵器上部80をキャピラリ管の下部84に接続する。貯蔵器上部80には、着脱可能な閉鎖具、即ち、本体62の一番上の外壁で形成されるねじ山66にねじ込むことができ、または回してはめ込むことができる蓋72を通じて、アクセス可能である。この実施形態によると、本体62の下部は、例えばテーブルの上に垂直に立たせる場合に分離装置60を安定性を持たせるために用いる、4つの安定化ウィング68を備えている。他の実施形態では、ウィング68の底面上の4つの凸部は、光ファイバープローブを正確に連結させるための凹部領域をつくる。このようにして励起ビームをセンタリングすることで、蛍光再現性が改善し、および迷散乱光による発光シグナルの混入が減少した。更に分離装置60は、キャピラリ管の下部84に、本体62に形成される光学窓70を備えている。光学窓70は、本体62上の厚み薄い小セクションを含み、それを通じて、分離、単離、または、ペレット化した微生物を調べることができる。本明細書に記述されているように、光学窓70は光学的に透過する材料からなってもよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、この実施形態の分離装置60は、微生物を分離、単離またはペレット化することを容易にするために、密度クッション85(例えば、図10において示すもの)を予め装填することができる。他の実施形態では、密度クッションは、本願明細書に記述する分離ステップにかけるサンプルの装填の直前に、分離装置60に加えることができる。さらに別の実施形態では、分離装置60は、密度クッション、および、サンプル溶解並びに微生物の分離、単離またはペレット化を容易にするための溶解溶液を予め装填されることができる。
【0030】
図8は、分離装置60の中で濃縮微生物剤50を調べる動作を示す。一実施形態では、分離、単離または、ペレット化した微生物は、従来技術において既知のあらゆる手段を使用して解析することができる(本明細書では、解析方法58と表す)。例えば、2009年10月30日に出願された同時係属の米国特許出願第xxxxx号"Method for the Isolation and Identification of Microorganisms"に開示したように、解析ステップは、内在蛍光分光学、ラマン分光法または他の光学技術を使用して実施することができる。
【0031】
上述の実施形態では、分離装置中で濃縮微生物剤を解析するとともに、分離、単離、またはペレット化した微生物サンプルを分離装置から取り出し、そして、例えば、2009年10月30日に出願された、同時係属の米国特許出願第xxxxx号「Method for Separation, Characterization and/or Identification of Microorganisms using Mass Spectrometry」に記載したような、質量分析法を使用して解析できるようにすることも意図している 。
【0032】
前述のように、分離、単離またはペレット化するステップは、微生物をサンプルの他の構成成分(例えば、非微生物またはその成分)から分離し、そして、微生物を濃縮して、分離、単離またはペレット化された、同定およびキャラクタリゼーション目的で解析することができるサンプルを得るために実施することができる。分離またはペレット化するステップは完璧である必要はない、すなわち、100%の分離は必要ではない。サンプルの他の成分からの微生物の分離は、他の成分からの重大な干渉なく微生物の解析ができるようにするために十分な程度であることが求められる。例えば、分離によって、少なくとも約10、20、30、40、50、60、70、80、90、95、96、97、98または99%、またはこれらより高い純度で微生物ペレットを得ることができる。
【0033】
一実施形態では、本願明細書において記載した同一出願人による米国特許出願にて、さらに詳細に記載されているように、分離は、試験サンプル(例えば溶解サンプル)を分離容器の密度クッション上に配置し、その容器を微生物を単離できる条件下(例えば、微生物は容器の底面および/または側面でペレットとなる)にて遠心分離することを含む遠心分離ステップによって実施される。この実施例によれば、サンプルの他の成分(例えば非微生物またはサンプル培地に存在し得るその成分)は密度クッションの上にまたは密度クッションの一番上の部分の中にとどまる。この分離ステップは、サンプルの物質、例えば内在蛍光などによって微生物を調べるのに干渉し得る、培地、細胞残屑および/または他の構成成分から、微生物を単離する。また、一実施形態では、密度クッションは、死んだ微生物から生きた微生物(密度クッションを通過しない)を分離するのに役立つ。他の一実施例において、密度クッションは遠心分離の前後に密度勾配がない。言い換えれば、分離容器は、密度クッションの物質が密度勾配を形成するほどの時間および/または加速度では遠心分離しない。
【0034】
クッションの密度は、サンプルの微生物がクッションを通過し、他のサンプルの成分(例えば血液培養液、細胞残屑)がクッションの上に残るか、またはすべてが密度クッションを通過しないように選択される。密度クッションは、また、クッションを通過する生きた微生物を、クッションを通過しない死んだ微生物から分離するために選択されてもよい。適切な密度は、密度クッションに使用する物質および分離するサンプルによって決まる。一実施形態において、クッションの密度は、約1.025〜約1.120g/mlの範囲内、例えば、約1.030〜約1.070g/ml、約1.040〜約1.060g/mlまたは約1.025〜約1.120g/mlの間のあらゆる範囲である。他の一実施形態において、クッションの密度は、約1.025、1.030、1.035、1.040、1.045、1.050、1.055、1.060、1.065、1.070、1.075、1.080、1.085、1.090、1.095、1.100、1.105、1.110、1.115または1.120g/mlである。
【0035】
密度クッションの物質は、本発明の方法の適切な密度範囲を有するあらゆる物質であってよい。一実施形態では、該物質はコロイダルシリカである。コロイダルシリカは、コーティングしていなくてもよい(例えばLudox(登録商標)(W.R. Grace, CT))または、例えば、シラン(例えばPureSperm(登録商標)(Nidacon Int'l, Sweden)またはIsolate(登録商標)(Irvine Scientific, Santa Ana, CA))、またはポリビニルピロリドンでコーティングされていてもよい(例えばPercoll(商標), Percoll(商標)Plus(Sigma- Aldrich, St. Louis, MO))。一実施形態では、分光学的解析で最少の干渉を示す、すなわち、最も低い内在蛍光を有する物質であるコロイダルシリカが選択された。コロイダルシリカは、適当な密度を形成するために、例えば均衡塩類溶液、生理的食塩水および/または0.25Mのショ糖などのあらゆる適切な媒体に希釈されてもよい。適切な密度は、約15%〜約80%v/v(例えば約20%〜約65%v/v)の濃度のコロイダルシリカにより得ることができる。密度クッションに適切な他の物質は、ヨード化造影剤、すなわち、例えばイオヘキソール(Omnipaque(商標) NycoPrep(商標)またはNycodenz(登録商標))およびイオジキサノール(Visipaque(商標)またはOptiPrep(商標))である。適切な密度は、血液培養サンプルに対して約10%〜約25%w/v、例えば約14%〜約18%w/v濃度のイオヘキソールまたはイオジキサノールにより得られることができる。血液培養サンプルに対して約10%〜約30%w/v、例えば、約15%〜約20%w/v濃度の密度クッションとして、ショ糖を使うことができる。密度クッションを調製するために用いることができる他の適切な物質は、低粘性で高比重の油、例えば顕微鏡用液浸油(例えば、Type DF、Cargille Labs、New York)、鉱油(例えば、Drakeol (登録商標)5, Draketex 50, Peneteck(登録商標)、Penreco Co.、Pennsylvania)、シリコンオイル(ポリジメチルシロキサン)、血液培養サンプル(
PolymorphoPrep(商標))に対して例えば約75%〜約100%の濃度の、フルオロシリコンオイル、シリコーンゲル、メトリゾ酸-Ficoll(登録商標) (LymphoPrep(商標))、血液培養サンプルに対して例えば約25%〜約50%濃度のジアトリゾ酸-デキストラン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレンオキシド(高分子量)、Pluronic(登録商標) F127、Pluronic(登録商標) F68、Pluronic(登録商標)化合物の混合物、ポリアクリル酸、クロス結合ポリビニルアルコール、クロス結合ポリビニルピロリジン、PEGジメチルエーテルメタクリル酸、ペクチン、アガロース、キサンタン、ゲラン、Phytagel(登録商標)、ソルビトール、Ficoll(登録商標)(血液培養サンプルに対して例えば約10%〜約15%濃度のFicoll(登録商標)400)、グリセリン、デキストラン(例えば、血液培養サンプルに対して約10%〜約15%濃度)、グリコーゲン、塩化セシウム(例えば、血液培養サンプルに対して約15%〜約25%濃度)、パーフルオロカーボン液体(例えばペルフルオロ-n-オクタン)、ヒドロフルオロカーボン液体(例えばVertrel XF)などの周知の物質を含む。一実施形態で、密度クッションは、一つ以上のコロイダルシリカ、イオジキサノール、イオヘキソール、塩化セシウム、メトリゾ酸-Ficoll(登録商標)、ジアトリゾ酸-デキストラン、ショ糖、Ficoll(登録商標) 400および/またはあらゆる組合せのデキストランから選択する。密度クッションはまた、物質の組合せ、例えばコロイダルシリカおよび油の組合せから作製することができる。上記の化合物の特定の組合せは、本発明の分離および読出ステップのために有益である。例えば、異なるUV消光性の化合物、例えば塩化セシウムおよびイオヘキソールの組合せである。
【0036】
密度クッションの体積/高さは、他のサンプル構成成分から微生物の分離を成し遂げるために十分でなければならない。体積は、分離容器のサイズおよび形状に依存する。一般に、約0.1〜約5mlの体積を使うことができ、例えば、約0.2〜約1ml、例えば約0.2ml〜約0.5mlである。分離がマイクロスケールで実行される際、密度クッションの体積は約1μl〜約100μl、例えば約5μl〜約50μlであればよい。密度クッションの上に設置したまたは重ねたサンプルの体積は、解析に適したペレットの作製に十分な微生物を作製するのに十分でなければならない。一般に、容器に合うあらゆる体積で使用することができる。例えば、約0.1ml〜約5ml、例えば約0.2ml〜約1ml、例えば約0.2ml〜約0.5mlの体積で使うことができる。分離がマイクロスケールで実行される場合、サンプルの体積は、約1μl〜約100μl、例えば約5μl〜約50μlでよい。サンプルのための容器の有効空間は、容器のサイズおよび形状に依存する。いくつかの実施形態では、密度クッションおよびサンプルのあらゆる混合を予防するためにサンプルを上部に設置するまたは重ねる前に、中間層(液体のまたは固形の)を、密度クッションの上に配置できる。一実施形態において、中間層はポリエチレンビーズであってもよい。他の実施形態において、小さい気泡は密度クッションおよびサンプルの間の混合を予防するために配置することができる。さらなる実施形態において、密度クッションおよび高比重物質間の界面で分離および収集する間に、微生物が密度クッションを通過するように、密度クッションは高比重物質(例えばパーフルオロカーボン液体)の上に重ねることができる。
【0037】
本発明の一実施形態では、微生物のペレットを直接容器の底面上に形成するために、分離容器はローターで遠心分離される。容器は、例えば、ペレット状のサンプル中の他の成分から微生物を分離するのに十分な加速度でおよび十分な時間で遠心分離する。遠心分離加速度は、約1,000xg〜約20,000xg、例えば約2,500xg〜約15,000xg、例えば約7,500xg〜約12,500xgである。遠心分離時間は、約30秒〜約30分、例えば約1分〜約15分、例えば約1分〜約5分でよい。遠心分離は、約2℃〜約45℃、例えば約15℃〜約40℃、例えば約20°C〜約30℃の温度で実施可能である。一実施形態において、分離容器は閉鎖具を備え、および、その閉鎖具は遠心分離の前に容器に取り付けられ、容器を密閉する。閉鎖具の存在は、サンプルが汚染するリスクと同様に、感染性および/または有害であるおそれのある微生物を扱うリスクを減少させる。本発明の方法における利点のうちの1つは、封止容器(例えば、密閉容器)内の微生物について該方法ステップ(例えば溶解、分離、照合および/または同定)の一つ以上を実施できる機能である。自動化システムの使用を含む本方法は、例えば直接的にテストするときにサンプルから微生物が回復するなどの、毒性の高い微生物の取扱いに伴う健康および安全面のリスクを回避する。一実施形態では、容器は密度クッション内に密度勾配を形成するのに十分な時間および/または力では遠心分離されない。本発明は、例えば約100,000xgより大きい力の遠心分離でのサンプルの超遠心を含まない。更に、本発明は等密度(平衡)遠沈またはバンディングを含まない。
【0038】
一旦分離し、単離しまたはペレット化した微生物サンプルが調製されると、その後の検
査ステップは、微生物のキャラクタリゼーションおよび/または同定に有効な計測を提供するために実施することができる。有効な解析手段は、従来技術で既知である。更なる解析手段は、先に記載した本発明の譲受人に譲渡された米国特許出願中に記述されている。
【0039】
(実施例1)
精製された微生物ペレットの生体内同定用装置および方法
分離装置中の微生物の速やかなin situ分離および同定の可能性を探求するため、本発明に従って、いくつかの装置をUV透過プラスチックから設計及び成形した。これらの装置は、閉鎖具、サンプル貯蔵器、下部および/または側面から沈殿した微生物のペレットを分光学的解析できるようにする先細の光学品質下部領域、および装置を分光蛍光計に連結することを容易にする構造等のいくつかの共通構造を有する。装置は、また、分離ステップの間、比較的大きい重力加速度に耐えることができなければならない。このチューブのいくつかの反復(iteration)は、微生物の回収および蛍光再現性を高め、および、迷散乱光の混入を減らすように設計された。当該チューブはまた、封止できるように設計された。
【0040】
沈殿した微生物のペレットの光学解析は、分光蛍光計のサンプルコンパートメントの中に配置されたカスタムメイドのアダプタに分離装置を挿入することにより、または分離装置を、分光蛍光計(Fluorolog(登録商標) 3、HORIBA Jobin Yvon Inc., New Jersey)に取り付けた二叉の6-1型 300-400ミクロン光ファイバーケーブル(Ocean Optics, Dunedin, FL)に直接連結することにより、行った。スリーミラー光ファイバアダプタは、両方のシステム検出器(PMTおよびCCD)の使用を可能にするために造られた。完全な励起蛍光マトリクス(EEM)スペクトルは各微生物のペレットについて収集された(走査範囲:励起260-800nm;発光260-1100nm;増加5nm)。
【0041】
ゲージ再現性および信頼性検査は、精製したトリプトファンおよびリボフラビン溶液を用い、使い捨ての装置-光ファイバーケーブル構成で行われた。両方の蛍光プローブの目標変動係数は2.5%未満を得、使い捨て装置および解析プラットフォームの品質を確認した。
【0042】
これらの装置は培養液からの微生物の分離および解析に役立った。図12は、黄色ブドウ球菌(S. aureus)を含む溶解血液培養液サンプルを、密度クッションを用いて遠心分離した分離後の、本実施例による装置を示す。本発明に従う、溶解サンプル、密度クッションおよび微生物ペレットは、写真においてはっきり見える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物を単離および同定するための容器であって、
前記容器は、
(a)広い内径を有する上部、
(b)狭い内径を有する下部、および
(c)前記容器の底面、上部および/または1以上の側面上の光学窓であって、近赤外、可視、および/または、紫外光スペクトルの少なくとも一部を透過する光学窓、
を備える、微生物を単離および同定するための容器。
【請求項2】
前記容器は、微生物のペレットを作製するのに十分なサンプルを保持するために十分な体積を有する請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記上部および下部は、中間の先細部分によって連結される、請求項1に記載の容器。
【請求項4】
前記下部は、容器全体の高さの半分未満である、請求項1に記載の容器。
【請求項5】
前記容器は、当該容器を封止するように、閉鎖具を備え、又は閉鎖具を受けるようにねじ山を有する、請求項1に記載の容器。
【請求項6】
前記光学窓は、クォーツ、石英ガラス、サファイヤ、アクリル、メタクリル酸エステル、環状オレフィン共重合体、シクロオレフィンポリマーまたはそれらのあらゆる組合せから成る、請求項1に記載の容器。
【請求項7】
前記容器は、内部に密度溶液を含む、請求項1に記載の容器。
【請求項8】
前記容器は、選択的な溶解溶液を更に含む、請求項7に記載の容器。
【請求項9】
前記装置は、密度クッションおよび溶解溶液を分離する薄い膜を更に備える、請求項8に記載の分離装置。
【請求項10】
前記容器は、ポリプロピレン・ボールを更に備える、請求項7に記載の容器。
【請求項11】
使い捨ての分離装置であって、
(a)縦軸を持つ本体を有する円柱状容器であって、前記本体は、第1端部および第2端部を有する前記縦軸方向に細長い内部キャピラリ管を画定し、前記キャピラリ管の前記第1端部に連結された貯蔵器を更に画定する、円柱状容器を形成し、
(b)前記キャピラリ管の前記第2端部付近の前記本体は、光学的に透明な物質からなり、
(c)前記貯蔵器への接近を可能にして、液体サンプルの供給を可能にする前記貯蔵器のカバー
を備える、分離装置。
【請求項12】
前記装置は、貯蔵器の中に含まれる密度クッションを更に備える、請求項11の分離装置。
【請求項13】
前記装置は、前記密度クッション上部に重ねられる溶解溶液を更に含む、請求項12に記載の分離装置。
【請求項14】
前記装置は、密度クッションおよび溶解溶液を分離する薄膜を更に備える、請求項13に記載の分離装置
【請求項15】
前記貯蔵器は、0.5〜15mlの液体容量を有する、請求項11に記載の分離装置。
【請求項16】
前記装置は、本体に固定される末端部であって、前記キャピラリ管の前記第2端部を閉鎖し、光学的に透明な物質からなる末端部を更に有する、請求項11に記載の分離装置。
【請求項17】
前記装置は、前記貯蔵器および前記キャピラリ管の間にある先細部を更に備える、請求項11に記載の分離装置。
【請求項18】
前記容器は、該容器内に密度クッションを含む、請求項11に記載の分離装置。
【請求項19】
前記貯蔵器は、選択的な溶解溶液を更に含む、請求項11に記載の分離装置。
【請求項20】
前記貯蔵器は、ポリプロピレン・ボールを更に備える、請求項11に記載の分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2012−507284(P2012−507284A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−534515(P2011−534515)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【国際出願番号】PCT/US2009/005888
【国際公開番号】WO2010/062353
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(502073946)バイオメリュー・インコーポレイテッド (28)
【氏名又は名称原語表記】bioMerieux, Inc.
【Fターム(参考)】