説明

微生物分解実験用ポリウレタンシートの製造方法

【課題】 微生物分解実験に適した厚さ及び粒径のポリウレタンフォームからなる、均一なポリウレタンシートを提供する。
【解決手段】 粒径1000μm以下にポリウレタンフォームを微粉砕して、型内にほぼ均一に広げ、加温加圧することによってシート形成することを特徴とする微生物分解実験用ポリウレタンシートの製造方法、及びその方法によって製造される厚さが1mm以下の微生物分解実験用ポリウレタンシートを提供する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、微生物による生分解実験に使用するポリウレタンシート及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】プラスチック材料の再利用法は、原材料の資源節約及び処理を要するプラスチック材料の量を減らすために、さまざまに研究されている。熱可塑性プラスチックは、一般に元の製品と比較してほとんど材質を損なうことなく、再利用材を何パーセントか混ぜて射出成型により物品を製造してきた。しかし、熱硬化性プラスチックは、熱可塑性プラスチックと異なり、再利用法については、有効な再利用法はほとんど知られていない。
【0003】特開平4ー232703号公報では、熱硬化性ポリウレタン軟質フォームを再利用してシート材を形成する方法が開示されている。軟質フォーム(元の形状は問わない)を、ひらまめ程度の大きさの粒子までミルで粉砕し、必要に応じて、サイクロン分級にかけることによって硬い異物を除去する。粉砕した軟質フォームを温度180〜210℃、50〜150バール(約51〜153kgf/cm2 )で3〜5分間加温加圧下で圧縮し、密度400〜2, 000kg/m3 、厚さ1〜7mmのシート材を形成できる。
【0004】廃棄ポリウレタンの処理方法の一つとして、微生物による生分解が検討されている。この方法の開発のためのポリウレタンの微生物分解実験は、寒天培地上にポリウレタンシートを置き、そこに微生物を接種して、シートの劣化速度を調べるものである。
【0005】このような目的に用いるポリウレタンシートは、シートが厚いと寒天培地に固定しづらく、微生物による分解速度も遅いので、ある程度薄いものであり、かつ厚みが均一である必要がある。また、シートを構成するポリウレタンフォームの大きさが均一でないと、実験用のテストピースとして適さない。さらに、ポリウレタンフォームは微生物が分解しやすい形状、即ち、細かく、低分子量化されているのが望ましい。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来の方法で得られたポリウレタンシートは厚さが1〜7mmと厚いため、寒天培地へ安定して固定できず、その上、微生物による分解速度も遅い。さらに、従来の方法で得られたポリウレタンシートだと、粉砕したポリウレタンフォームの粒子が大きく、高分子量であるので、微生物の分解速度が遅く、判定時間が長くなる。また、ポリウレタンフォームの粒径も不均一であるため、シートを構成するポリウレタンの粒径がテストピースごとに異なり、実験の再現性が得られない。このような理由により、従来の方法で得られるポリウレタンシートは、微生物分解実験用のテストピースに用いるには適したものではなかった。したがって、本発明の目的は、微生物が分解しやすい粒径に粉砕されたポリウレタンフォームからなり、厚さが1mm以下である均一なポリウレタンシートを製造することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的達成のため、本発明は、粒径1000μm以下にポリウレタンフォームを微粉砕して、型内にほぼ均一に広げ、加温加圧することによってシート形成することを特徴とする微生物分解実験用ポリウレタンシートの製造方法を提供する。シート形成時の圧力は100〜700kgf/cm2 、温度が130〜200℃であることが望ましい。さらに、本発明は厚さが1mm以下であることを特徴とする上記の製造方法により製造された微生物分解実験用ポリウレタンシートを提供する。
【0008】
【発明の実施の形態】図1〜4を用いて、本発明によるポリウレタンフォームの製造方法を説明する。密度約50〜90kg/m3 のポリウレタンフォームを、セラミックス製の臼で粒径2〜1000μm、好ましくは3〜500μm、最も好ましくは約200μmに微粉砕する。微粉砕されたポリウレタンフォームは密度が約140kg/m3 となる。粉砕されたポリウレタンフォームの粒径が大きい場合、つまり、高分子である場合には、微生物が利用しにくいため、微生物分解実験用テストピースとして用いるのに適さない。ポリウレタンフォームを粉砕した後、必要に応じてふるいにかけて、粒径の大きいもの及び異物を除去するることが好ましい。
【0009】ポリウレタンフォームを粉砕した後、図1(A)に示すように、アルミ板1中央部に設置した筒上の型2内に、粉砕したポリウレタンフォーム3を注入し、図1(B)のように型2内に充填した高さHが2cm以下になるように均一に広げる。型の形、大きさは、希望する最終製品に沿って作成するものとし、特に限定されない。図2に示すように型2を除去した後、アルミ板1を上から重ねて、粉砕したポリウレタン3が2枚のアルミ板1の間に挟まれるようにする。
【0010】図3に示すように、圧縮成型機等で2枚のアルミ板1を上下から圧縮する。アルミ板1に直接加圧するのは圧縮成型機の加圧部4である。シートに気泡が生じるのを防ぐために、圧縮前に2分以内、好ましくは約1分の余熱時間を取ることが望ましい。加圧中の温度は130〜200℃、圧力は100〜700kgf/cm2 、圧縮時間は30秒〜6分以下、好ましくは1〜5分である。
【0011】上記に示したような方法で、図4に示すように周辺部6が粉状で中央部5が半透明のシートが得られる。このシートは、厚さ0. 2〜1mm、好ましくは0.3〜0. 4mmで均一になるよう上記条件を設定できるため、重量もほぼ一定である。シートを構成するポリウレタンフォームの粒径も均一であるため、微生物分解実験テストピースとして適したものである。厚さが1mmより厚いと寒天培地上に固定しにくい上に、微生物分解実験を行う際の評価時間が長くなり不都合である。また0. 2mmより薄い場合も物理的に弱くなりすぎて培養後の処理により崩壊するのでよくない。
【0012】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、これらにより本発明を制限するものではない。以下に述べる実施例では、ポリウレタンフォームは、株式会社スニックの製品であるホットキュアポリウレタン及びコールドキュアポリウレタンを用いたが、これらは車両の座席等に使用されるものである。ホットキュアポリウレタン及びコールドキュアポリウレタンの原料は以下の通りである。
【0013】ホットキュアポリウレタンエーテル系ポリオールを約60%、及びトルエンジイソシアネート(TDI)を約30%の配合比で含み、触媒、シリコン及び難燃剤を合計約6%、発泡剤を約4%含む。触媒には3級アミン、難燃剤には縮合リン酸エステル、発泡剤には水をそれぞれ用いる。
【0014】コールドキュアポリウレタンエーテル系ポリオールを約65%、及びTDIとジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を合計約30%の配合比で含み、触媒及びシリコンを合計約2%、発泡剤を約3%含む。触媒には3級アミン及び2級アミン、発泡剤には水をそれぞれ用いる。
【0015】実施例1上記のホットキュアポリウレタンからなるポリウレタンフォームを増幸産業(株)のスーパーマスコロイダーによって微粉砕し、ふるいにかけることによって粒径710μm以下のものを得た。この粒径710μmのポリウレタンフォームを3g量り、直径9cmの型内に注入して均一に広げた後、型を除去した。さらに、アルミ板をもう1枚上に載せ、2枚のアルミ板でポリウレタンフォームを挟んだ。余熱時間を1分間とり、160℃でプレス圧力100kgf/cm2 、プレス時間5分の条件で圧縮成型して、直径約10cmのシートを得た。圧力は東邦工業(株)型式T10−100型の圧締圧力計で測定した。上記条件で生成したポリウレタンシートの厚さはほぼ均一であった。シートの端部分及び中央部分の各3カ所の厚さを測定し、その平均を計算すると、端部分は0. 436mm、中央部分は0. 476mmであった。
【0016】実施例2コールドキュアポリウレタンからなるポリウレタンフォームを実施例1同様な処理をして、2枚のアルミ板に挟んだ。余熱時間を1分間とり、150℃でプレス圧力100kg/cm2 、プレス時間4分30秒の条件で圧縮成型して、直径約10cmのシートを得た。圧力は東邦工業(株)型式T10−100型の圧締圧力計で測定した。上記条件で生成したポリウレタンシートの厚さはほぼ均一であった。シートの端部分及び中央部分の各3カ所の厚さを測定し、その平均を計算すると、端部分は0. 450mm、中央部分は0. 600mmであった。
【0017】
【発明の効果】上記したところから明らかなように、本発明によれば、微粉砕したポリウレタンフォームを型内に均一に広げ、成型時に加温加圧することによって微生物分解実験用のテストピースとして用いることができるポリウレタンシートを得ることができる。また、本発明のポリウレタンシートは、シートの厚さが1mm以下なので寒天培地上に安定に固定できる上に、シートが半透明なのでシート上に生育する微生物の観察が容易に行えるなど、実験操作の点で好都合である。なお、熱硬化性ポリウレタンフォームを再利用しても、本発明のポリウレタンシートが得られるので、本発明の方法によって、資源の有効な活用方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】ポリウレタンシート製造過程で、微粉砕ポリウレタンフォームが型内に注入される様子(A)及び均一に充填される様子(B)を示す。
【図2】ポリウレタンシート製造過程で、ポリウレタンフォームが2枚のアルミ板に挟まれる様子を示す。
【図3】ポリウレタンシート製造過程で、ポリウレタンフォームが加温加圧下で圧縮される様子を示す。
【図4】本発明によって得られたポリウレタンシート。
【符号の説明】
1 アルミ板
2 型
3 粉砕したポリウレタンフォーム
4 圧縮成形機の加圧部
5 シートの中央部
6 シートの周辺部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 粒径1000μm以下にポリウレタンフォームを微粉砕して、型内にほぼ均一に広げ、加温加圧することによってシート形成することを特徴とする微生物分解実験用ポリウレタンシートの製造方法。
【請求項2】 シート形成時の圧力が100〜700kgf/cm2 、温度が130〜200℃であることを特徴とする請求項1記載の微生物分解実験用ポリウレタンシートの製造方法。
【請求項3】 厚さが1mm以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の製造方法により製造された微生物分解実験用ポリウレタンシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開平9−28394
【公開日】平成9年(1997)2月4日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−181194
【出願日】平成7年(1995)7月18日
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)