説明

微生物及び空気中の健康有害物質の広がりを低減するための並びに/又は微生物及び空気中の健康有害物質から保護するための装置及び方法

可搬式であり、かつ/又は、備品に、例えばベッドの頭領域のキャビネットに取り付けるか若しくは一体化することができる、空気分配制御ユニット又は濾過/換気ユニットを開示する。この濾過/換気ユニットは、人/患者の呼気を該濾過/換気ユニットに吸い込むことによって人/患者からの空気を浄化する。少なくとも部分的に隔離されたエリアを患者の周りに構築するために、濾過した空気を例えば濾過/換気ユニットの外へ垂直方向に方向付けてエアカーテンを作り出すことができる。 濾過/換気ユニットの使用により、空気感染病及び健康有害物質が拡散する危険性が減り、患者のいる室を換気するための空気の量が減る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気を換気し清浄にするとともに、或る者から他の者へ拡散する微生物、ウイルス又は任意の他の健康に有害な空気中の物質の危険性を最小限に抑えるための、濾過/換気ユニット、濾過/換気システム及び方法に関する。濾過/換気ユニット及び濾過/換気システムは、例えば呼気である排出空気を、該排出空気をもたらす源(個体)から短い距離内で除去及び/又は濾過することが可能である。濾過/換気ユニット及び濾過/換気システムは、微生物、ウイルス及び/又は任意の他の空気中の健康有害物質から清浄にすべきエリア、又は、微生物、ウイルス及び/又は任意の他の空気中の健康有害物質をなくすべきエリアを部分的に隔離することができるエアカーテンを作り出すことも可能である。本発明はまた、感染患者によって息で吐かれたか又は咳で出された空気を排出し、それを空気中の病原体及び健康有害物質からパージし、かつ、ベッドのわきの1つ又は複数の水平スロットから上方へ、全体換気又は局部排気換気によって機械的に排気することができる室の上層部に向けて、方向付けることに関する。
【0002】
本願に引用されている特許文献及び非特許文献は全て、それらの全体が参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
患者、医者、看護師、外来者、毒物の極近くにいる者等を、空気を介して広がる微生物、ウイルス及び/又は有害粒子状物質による空気感染病又は中毒症に罹ることから隔離及び/又は保護する必要性がある。インフルエンザウイルスA型H1N1のような高感染性ウイルス、又は変異型の豚インフルエンザウイルスのような他の豚インフルエンザウイルス、SARS(重症急性呼吸器症候群)若しくは他のコロナウイルス、高病原性H5N1ウイルス、又は他の変異型の鳥インフルエンザウイルスのような他の鳥インフルエンザウイルス、生物兵器(炭疽菌、天然痘)を用いたテロリスト攻撃、薬剤耐性結核菌、ブドウ球菌等に関して、健康な者を保護する必要性又は呼気を清浄にする必要性があることは明らかである。また、あまり重症でない疾病に罹患している者に関して、それら患者を看護している者を保護すること又は患者自身を保護することは、患者が他の疾病に罹る危険性を減らすために極めて重要であろう。
【0004】
例えば天井に設置された排気口を通して空気を吸い込むことによる換気が、室内の空気浄化を行うのに一般に用いられている。しかしながら、排気口に向かう空気流は、例えば排気口から1〜4mのところにいる疾病患者によって運ばれた汚染空気を除去するには効果的ではない。
【0005】
排気口近くの空気流に関して、排気口の汚染物質捕捉効率は、排気設計、汚染物質源(例えば空気接触感染症に罹っている病気の患者)近くでの配置及び排気空気流に依存する。一点排気の流れを、表面の上に突出している排気口近くの空気流に近づかせることができる。一点排出は、半径rの仮想球の面積に等しい面積を通過する全ての方向から均等に空気(Q)を引き出す。排出口の半径方向速度vrはvr=Q/(4πr2)として示される。排気口付近の空気の動きは非常に複雑である。一般的に、排気面に交差する空気速度分布は均一ではなく、排気口の側面近くでのウェーク形成又は縮流に影響されて、その結果、排気口の有効な表面積が低減することになる。これにより、排気面から更に遠くにいくにつれて急速な速度減衰が生じる(図24)。
【0006】
排気による換気の一代替は、生命を脅かす空気感染病に感染している患者のために隔離室が用いられていることである。一般的に、感染隔離ユニット/感染隔離室の換気の目的は、病気の患者によって息で吐き出されたか又は咳で出された病原体の空気感染から病院の残りの者を保護又は隔離することである。それにもかかわらず、感染隔離ユニット内で働く医療スタッフは罹患と疾病拡散の高いリスクの状況下にある。近年、結核の多剤耐性菌株が、換気回数、濾過、空気分布設計及び与圧の重要性を高めている。
【0007】
今日、感染病棟では混合型の空気分配が用いられている。これは、室の天井に配置されているか又はその真下に配置されている換気ディフューザーを通して室から排気して、と同時に室に清浄な空気を供給することによって得ることができる。高速で供給される清浄な空気により室内で空気の混合が促されるため、空気中の病原体を希釈して室外へ排出する。問題は、完全な混合で、室内の病原体の濃度は占めている空間全体では同じであることであろう。したがって、感染の空気伝播の危険性を減らすには、高頻度の換気回数が必要である。供給される空気が多いほど良く希釈される。1時間あたり最低12回の換気が隔離病棟の場合では空気中の病原体を希釈するために推奨されている(ASHRAE Handbook 2007, ISIAQ Review 2003)。いくつかのガイドラインによっては、最低要件として1時間あたり15回もの換気を推奨してさえもいる(WHO 2002)。推奨されている高流量が、隔離室内の空気を21〜24℃の推奨範囲の室内温度内に調節するのに非常に多量のエネルギーを消費することをほのめかしていることは明白である。また、換気システムに必要とされるダクト、ファン及びHVAC(暖房、換気及び空調)ユニットは高価であり、非常に多くのスペースを占める。別の重大な問題は、この種の換気が100%外気で作動することであり、これにより、ユニットのランニングコストが更に上がり、エネルギー効率の非常に悪いものにしている。HEPAフィルター自体の使用が、定期的にフィルターの交換をしなければ、病原体の二次的な感染拡大の源となる可能性がある。通常、HEPAフィルターは、汚染の危険性、すなわち感染の危険性が高い換気エリアの外に置かれる。これは、そのようなシステムを維持管理するため、別のコストに関連する問題である。UVGIの使用は、換気エリアに配置される場合、病原体発生源が換気スペースのより低い高さに位置しているのに対し、安全性の理由からUVGIユニットは一般には高いゾーン(床面よりも1.7m以上高い)に離れて設置されることから、あまり効率的ではない。
【0008】
一部の肺活動、すなわち咳/くしゃみは、30m/秒もの速さの初速度で非常に強力な空気の動きを発生させ、これが室内における換気パターンを完全に壊し、その場にいる者の間における空気による交差感染の危険性を高める。感染隔離ユニットのための病院の換気システムにおける固有の問題を改善するために、本発明を患者のベッド内に組み入れることができ、あるいは患者のベッドに固定することができる。病人の頭に極めて近い換気ユニットにより、肺活動による病原体を含んでいる空気の大部分をうまく排出し、パージし、かつ、例えば1つ又は複数の水平スロットを通して高速で全体換気の排気ベントに向けて上方に方向付けることが保証される。
【0009】
特に、病院、混雑した良く訪問される場所及び換気を受けるその他の建物又は設備において、ここに記載の方法により、全体換気のために必要とする新鮮な空気の2倍もの量を減らすことで、該方法を用いない場合での外気供給の調節に用いられるエネルギーをかなり節約することが可能となる。さらに、本方法は、混合換気のみと比較してはるかにより清浄な空気を室内に確保し、したがって、病院スタッフ(医者、看護師等)への、クリーンルームでは免疫無防備状態の患者(HIV陽性又は先天性免疫不全症を有する患者)への、又は、人々が互いに接近する可能性のある他の室又はエリアにおいて、感染病の空気感染を低減する。
【0010】
以下に、病院による空気分布の状況及びシミュレーションを説明するが、本明細書に記載の本発明は、人々が互いに比較的接近するか又は互いに接触する様々な用途又は場所において用いることができる。ここに記載の濾過/換気ユニット又は幾つかのユニットとシステムとの組合せを用いることができるそのような用途又は場所の例は、様々な種類の病院、航空機、待合室、列車、バス、レストラン、歯科クリニック、ホテルのベッド、家庭における高齢者向けベッド、車椅子、託児所、動物農場(農夫及び動物を保護するために設置されている)、公衆トイレ等におけるものである。
しかしながら、ここに記載の濾過/換気ユニットは、食品又は食品成分を取り扱う際に、又は、食品成分、食品、飲料、医薬品(ピル、ワクチン等)、化粧品、電子部品及びコンピューター部品等の製造及び/又は包装の際に、弱い免疫システムを有する対象物及び個体を保護するために用いることもできる。 濾過/換気ユニットはまた、台所又は台所エリアに発生する香り及び/又は匂い、不快なガス又は匂い臭い等の取り扱いを伴う生産物を除去するのに用いることができる。
【0011】
空気を清浄にする換気装置である従来技術の製品は存在するが、これらの換気装置は、空気感染の広がりにより罹患しているか又は疾病に罹る危険性のある個体を部分的に又は完全に隔離するのに用いることができるエアカーテンを作り出さない。
【0012】
食品を取り扱う際に及び感染空気が食品成分、食品又は飲料と接触する場合、汚染が生じることで、微生物等の増殖により製品が売り物とならなくなることが起きる可能性があるか、又は製品が食べるのに安全でなくなる可能性がある。したがって、ここに記載の濾過/換気ユニットは、微生物等の排除、匂いの排除、空気又はガス、例えば酸素量が増した空気のような特別な組成を有するガスの流入のような、食品生産物又は食品製造における多数の用途に用いることで、1人又は複数人の個体を保護し、食品生産物のような物品を保護することができる。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、空気を換気し清浄にし、そして微生物、ウイルス、又は粒子状物質を含む任意の他の空気中の健康有害物質が或る者から他の者に拡散し、人から物品へ、物品から人へ又は物品から物品へ拡散する危険性を最小限にとどめて、香り、匂い又は品質の問題を最小限にとどめ、かつ/又は制御された組成の空気又はガスを物品若しくは人に供給するための、空気分配制御ユニット又は濾過/換気ユニット、濾過/換気システム及び方法に関する。
【0014】
空気を濾過するための空気分配制御及び/又は濾過/換気ユニットの形態である本発明は、以下を含む;
・キャビネットと、
・濾過/換気ユニットの中にかつ/又は濾過/換気ユニットの外に空気を方向付ける前記キャビネット内の少なくとも1つの第1の空気スロットと、
・前記キャビネットを通る空気を方向付ける少なくとも1つのファンと、
・空気中に存在する微生物又はウイルスの増殖能力を殺すか又は阻害する少なくとも1つの手段であって、前記キャビネットの内側に設置され、かつ/又は前記キャビネットの内面の一部である、微生物又はウイルスの増殖能力を殺すか又は阻害する手段と、
・濾過/換気ユニットの中に、かつ/又は濾過/換気ユニットの外に空気を方向付ける前記キャビネット内の少なくとも1つの第2の空気スロットと、
を含むことができ、なお、
・濾過/換気ユニットは可搬式であり、かつ/又は
・濾過/換気ユニットは浄化された排出空気を所定の一方向又は複数の方向に方向付けることが可能である。
【0015】
空気分配制御ユニット及び/又は濾過/換気ユニットは、ここに記載されるような特徴を任意に組み合わせた移動可能なユニットとすることができる。ユニットは、ホイール付きとすることができ、可搬式とすることができ、締結手段を有することができ、かつ/又は、様々な数の入口スロット及び出口スロットを通して空気を方向付けるための複数の可能性を有することができる。これによって、ユニットは複数の場所において用いられるように設計することができ、又はユニットは一箇所だけの場所用に若しくは数箇所の場所用に設計することができる。
【0016】
濾過/換気ユニットは、キャビネットを通して方向付けられる空気中に存在する微生物又はウイルスに殺菌効果のある波長の電磁波を発することが可能な少なくとも1つの手段(UVライト等)、又は他の浄化技法を含むこともでき、電磁波を発することが可能な少なくとも1つの手段又は他の浄化方法は、キャビネットの内側に設置することができる。
【0017】
1つ又は複数の空気分配制御ユニット及び/又は濾過/換気ユニットを用いて、空気分配システム又は濾過システムを製造することができる。システムは、空気を用いて或る容積を隔離する又は部分的に隔離することができるか、又は空気を用いて微生物、ウイルス及び/又は任意の他の空気中の健康有害物質を濾過/換気ユニットの入口へ向けて方向付ける非常に多くの場所に設計することができる。
【0018】
濾過/換気ユニットは、浄化された排出空気を所定の一方向に又は複数の方向に方向付けることができるものと説明される。所定の方向は、ユニットを使用する状況及び場所に依存する。ベッドで使用する場合、所定の方向(複数可)は垂直方向上方及び/又は水平方向とすることができる。航空機で使用する場合、1つのユニットを前の座席の後側に設置することができ、第2のユニットを、乗客の頭の2つの側に2つのセクションから構成することができ、例えば、座席のヘッドレストに設置することができる。この場合では、頭側に2つのセクションを有するユニットによって発生する空気流は、咳で出された/息で吐き出された空気を、前座席の後に設置されたユニットへ向けてうまく移動させるとともに該ユニットによって排気することを支援し、又はそれとは逆に、前座席の後側に設置されたユニットから乗客に対して供給される清浄な空気が、咳で出された/息で吐き出れた空気を後方へ、排気されることになる頭の両側に設置された2つのセクションに搬送する。頭の領域に設置されるユニットは単独で使用されるように設計することができる。この場合、このユニットの2つのセクション(頭の左側と右側)は独立して機能することができ、すなわち、一方のセクションが換気空気を供給し、第2のセクションが汚染された排気と混合された換気空気を吸い込む。双方の解決策において、浄化された空気をキャビンの座席の下又は手荷物室に上方へ排出することができ、又はキャビンの床面の下に再循環させることができる。歯科用椅子で使用する場合、所定の方向は、患者自身が水平に横たわっている場合に水平方向とすることができる。また、浄化された排出空気は傾斜方向を所定方向(複数可)とすることができる。
【0019】
空気分配を制御し、かつ/又は或るエリアを部分的に隔離し、かつ/又は空気中の微生物及び/若しくはウイルスをエリアから除去する方法も記載される。この方法は、以下を含む;
・部分的に隔離すべきエリアを局部に限定すること、
・少なくとも1つの可搬式濾過/換気ユニットを備えること、
・濾過システムを前記エリアの周りに又は該エリアに関連して設置すること、
・空気を前記エリアから前記少なくとも1つの濾過/換気ユニットに方向付けること、
・前記少なくとも1つの濾過/換気ユニットへ方向付けられた空気の全体的な方向又は中心方向と比較した場合に、0°〜360°の方向に前記濾過/換気ユニットの外へ空気を方向付け、かつ/又は、前記少なくとも1つの濾過/換気ユニットの外へ、さらに管内に方向付けて、より大きな換気システムへ空気を方向付けること、これによって、
・前記エリアを部分的に隔離し、かつ/又は該エリアから空気中の微生物及び/若しくはウイルスを除去すること。
【0020】
空気配分制御ユニット及び/又は濾過/換気ユニットの使用の1つの可能性はベッドにおけるもの、すなわちベッド用である。少なくとも1つの濾過/換気ユニットは、ベッドの少なくとも頭領域に設置することができ、その場合、ベッドの一体化部分とすることができ、又はベッドに取り外し可能に取り付けることができる。そのようなベッドは例えば病院において用いられ、微生物、ウイルス又は任意の他の空気中の健康有害物質を或る者から他の者へ拡散することを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】濾過/換気ユニットの構成を示す図である。
【図2】濾過/換気ユニットの正面図及び覆い蓋が取り外された状態の正面図である。
【図3】濾過/換気ユニットから方向付けられた出口空気の方向及び接続の様々な可能性を示す図である。
【図4】a)混合換気のみ、及びb)患者の頭におけるユニット(ボックス)内に設置された浄化(濾過)ユニットを用いる混合換気を有する、病室の概略を図解する。
【図5】12ACH(1時間あたりの換気回数)での混合換気のみを用いた室内における、或る患者から咳で出された空気の別の患者へのコンピューターシミュレートされた分布を図解する。
【図6】患者の頭の周りのキャビネットに設置された浄化(濾過)ユニットを備えた2つのベッドを有する、6ACH(1時間あたりの換気回数)での混合換気を備えた室内での、或る患者から咳で出された空気の別の患者へのコンピューターシミュレートされた分布を図解する。
【図7】ベッドのうち患者の頭が位置している部分の「仕切り壁」内に設置された濾過/換気ユニット(ボックス)を備えた隔離病棟の概観を示す図である。
【図8】頭の両側に設置された濾過/換気ユニットを有するベッドに横たわっている患者の周りの空気分配制御策の幾つかの可能性を示す図である。
【図9】実験時のベッドの構成を示す図である。
【図10】患者が各ベッドにおり、そして医者が2つのベッドの間にいる、実験時のベッドの構成を示す図である。浄化装置(濾過/換気ユニット)はない。
【図11】患者が各ベッドにおり、そして医者が2つのベッドの間にいる、実験時のベッドの構成を示す図である。浄化装置(濾過/換気ユニット)が患者の頭に隣接してある。
【図12】患者が各ベッドにいる、実験時のベッドの構成を示す図である。浄化装置(濾過/換気ユニット)はない。
【図13】患者が各ベッドにいる、実験時のベッドの構成を示す図である。浄化装置(濾過/換気ユニット)が患者の頭に隣接してある。
【図14】患者の頭に浄化装置がある状態及びない状態での、咳で出された病原体を含んでいる空気の医者への曝露(図10及び図11における)を示す図である。
【図15】患者の頭に浄化装置がある状態及びない状態での、咳で出された病原体を含んでいる空気の一方の患者への曝露(図12及び図13における)を示す図である。
【図16】歯科用椅子への応用を示す図である。この場合、装置の端を患者に応じて調整可能であるように伸縮式にすることができる。
【図19】病気の患者がベッドに横たわっており、そして上方へ咳又は呼吸をしている、濾過/換気ユニットを備えた室を示す図である。
【図20】病気の患者がベッドに横たわっており横向きに咳又は呼吸をしている、濾過/換気ユニットを備えた室を示す図である。
【図21】濾過/換気ユニットのアタッチメントストラップを示す図である。
【図22】ホイール及び脚を有する濾過/換気ユニットを示す図である。
【図23】食品産業及び飲料産業における濾過/換気ユニットの使用を示す図である。
【図24】空気を吸い込む排気口の位置近くの空気分布を示す図である。
【図25】1時間あたりの換気回数(ACH)3回/時、6回/時及び12回/時で換気される病室内での「咳をしている患者」の正面から0.55mのところに立っている場合の、咳で出された病原体を含んでいる空気の医者への曝露を示す図である。
【図26】一方の側に横たわっており、そして医者と第2の患者に対して咳をしている患者の横に立っている場合の、咳で出された病原体を含んでいる空気の医者への曝露を示す図である。
【図27】咳で出された病原体を含む空気の医者への曝露、第2のベッドに横たわっており、そして横向きに横たわって咳をしている患者に向かい合っている「被曝露患者」の口元におけるCO2濃度の経時変化を示す図である。3つの異なる1時間あたりの換気回数(ACH)3回/時、6回/時及び12回/時で得た結果が比較されている。
【図28】a)医者に向かい合って横たわっている場合、及びb)仰向けに横たわっており、そして上方へ咳をしている場合、咳をしている患者から0.55mの距離のところに立っている場合の、咳で出された病原体を含んでいる空気の医者への曝露、及びc)第2のベッドにいる被曝露患者の口元における曝露、を示す図である。
【図29】咳で出された病原体を含んでいる空気の医者と患者への曝露を示す図である。咳をしている患者は横向きに横たわっており、そして医者と第2の患者に向かい合っている。
【図30】呼吸している病気の患者から0.55mの距離のところに立っており、そして該患者に向かい合っている場合の「医者」の呼吸ゾーンでの換気効果を示す図である。
【図31】感染患者から1.3mの距離のところにあるベッドに横たわっており、そして該感染患者に向かい合っている場合での、第2の/「被曝露」患者の呼吸ゾーンでの換気効果を示す図である。
【図32】呼吸している病気の患者から0.55mの距離のところに立っており、そして該病気の患者に向かい合っている場合の「医者」の呼吸ゾーンでの換気効果を示す図である。この結果は、ベッドの両側に設置された濾過/換気ユニット(HBIVCU)を用いて得られる。
【図33】感染患者から1.3mの距離のところにあるベッドに横たわっており、そして該患者に向かい合っている場合の第2の「被曝露」患者の呼吸ゾーンでの換気効果を示す図である。この結果は、ベッドの両側に設置された濾過/換気ユニット(HBIVCU)を用いて得られる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一態様は、空気を濾過及び/又は換気するための空気分配制御ユニット及び/又は濾過/換気ユニットに関し、該濾過/換気ユニットは、以下を含む;
・キャビネットと、
・キャビネット内にあり、濾過/換気ユニットの中に及び/又は外に空気を方向付けるための少なくとも1つの第1の空気スロットと、
・キャビネットを通る空気を方向付ける少なくとも1つのファンと、
・空気中に存在する微生物又はウイルスの増殖能力を殺し又は阻害する少なくとも1つの手段であって、上記キャビネットの内側に設置され、かつ/又はキャビネットの内面の一部である、微生物又はウイルスの増殖能力を殺し又は阻害する手段と、
・キャビネット内にあり、濾過/換気ユニットの中に及び/又は外に空気を方向付ける少なくとも1つの第2の空気スロットと、
を含み、かつ、なお
・濾過/換気ユニットは可搬式であり、かつ/又は
・濾過/換気ユニットは浄化された排出空気を垂直方向及び/若しくは水平方向に、又は、ガイドベーンを介して垂直方向と水平方向の間の少なくともあらゆる任意の角度で方向付けることが可能であり、かつ/又は
・濾過/換気ユニットは使用時に、第2の空気スロット又はさらに多くの空気スロットを通して方向付けられた空気によって該濾過/換気ユニットの外側にエアカーテンを作り出す。
【0023】
好ましくは、第1の空気スロットは空気を濾過/換気ユニットの中へ方向付けるのに用いられ、第2の空気スロットは空気を濾過/換気ユニットの外へ方向付けるのに用いられる。更なるスロットをそれらの使用に応じて他の方法で用いることができる。
【0024】
以下に、濾過/換気ユニットを特に病気の患者向けのベッドと関連して説明しているが、濾過/換気ユニットの特徴の多くに関して、同様の特徴が、食品及び本明細書のどこかに記載される他の物品のような1つ又は複数の物品の保護及び/又は隔離に使用される濾過/換気ユニットに関連することができる。
【0025】
好ましい実施形態では、濾過/換気ユニットの外へ方向付けられる空気の少なくとも一部はエアカーテンを作り出すのに用いられる。
【0026】
「エアカーテン」とは、建物筐体の外側からの、又は建物若しくは占めているスペース内の2つのゾーン間の空気又は空気中の粒子の進入(侵入)を阻止するか又は減らすように開口又はスペースにわたって吹き付けられる空気のジェットを意味する。
【0027】
エアカーテンを作り出す空気流の速度はエアカーテンの最大5m/秒までの初期速度とすることができる。初期速度はジェット流が出て行く開口(供給口)で決まる。空気流の好適な速度はエアカーテンの最大3m/秒までの初期速度である。しかしながら、空気流の速度はエアカーテンを作る目的に応じて決めることができる。
【0028】
供給口での初期速度がv0=3m/秒であり、排出スロット(第2の空気スロット)の寸法が0.05m(幅)及び0.50m(長さ)であるカーテンの場合、v50%=1.5m/秒が、三次元ジェットの理論(Awbi 2003)を用いて排出スロットよりも上で2.45mの高さにて達成される。
【0029】
供給ノズル/排出スロット/第2の空気スロットの幅に対する長さの比が10であり、かつ初期速度が3m/秒である場合、供給ノズルから様々の距離でのカーテンの軸上の速度は表1に示すように予測することができる。
【0030】

【表1】

【0031】
エアカーテンは、空気が高速で第2の空気スロットから外へ方向付けられた際に設置される。エアカーテンを作り出す空気の速度は、空気スロットを出る際、好ましくは少なくとも0.55m/秒、少なくとも1.4m/秒又は少なくとも2.8m/秒である。述べた速度は実際の速度とすることもでき、すなわち、エアカーテンを作り出す空気の速度は、空気スロットを出る際、好ましくは約0.55m/秒、約1.4m/秒又は約2.8m/秒である。速度は、ファンを調整することによって又は第2の空気スロットの幅を調整することによって調整することができる。好ましくは、エアカーテンを作り出す空気の速度は、例えば笛のようなノイズが生じる閾値以下である。好ましくは、空気の速度は空気が空気スロットを出る場所で6m/秒以下である。より好ましくは、速度は5m/秒以下である。更により好ましくは4m/秒以下である。更に好ましくは3m/秒以下である。速度は好ましくは0.1m/秒よりも高い。好適な速度は0.5〜3.5m/秒である。より好適には1〜3m/秒である。更に好適には、速度は1〜2.5m/秒である。また更に好適には、速度は1〜2m/秒である。空気流の好適な速度はエアカーテンの最大3m/秒までの初期速度である。速度がより高ければ、エアカーテンの近くにいる者に影響を及ぼし、局部的な熱による不快をもたらすであろう。
【0032】
ここに記載の濾過/換気ユニットによって作り出されるエアカーテンは好ましくは、空気が少なくとも1つの第2の空気スロットを通して濾過/換気ユニットを出る位置から測定した高さが少なくとも0.5mである。より好ましくは、高さは少なくとも0.75m、例えば少なくとも1m、例えば少なくとも1.25m、例えば少なくとも1.5m、例えば少なくとも1.5m、例えば少なくとも2mである。エアカーテンの高さは、空気速度が濾過/換気ユニットを出る空気の速度の半分である高さであるように定めることができる。
【0033】
一方のゾーンが汚染空気源を含む2つのゾーンの間にエアカーテンを作り出すのに濾過/換気ユニットを用いる場合、汚染空気は好ましくは、局部的にその空気源すなわち患者(人間若しくは動物)又は物品の近くで排気されてから、空気が浄化されて室内空気と混合される。
【0034】
ここに記載の濾過/換気ユニットの設計により、以下のように最適な空気流分配が確実となる:すなわちa)病気の患者が横向きに寝ている場合に、息で吐かれた/咳で出された空気がユニットの排気口(第1の空気スロットすなわち空気入口)に向けて方向付けられ、これにより、室内空気と混合されずに効率的な吸引が確実となり(図20)、b)患者が仰向けに寝ており、そして息を吐き/咳をしている場合に、発生した上方への流れは、キャビネットから排出される浄化空気の上方への流れによって支援され、室内空気と混合しないうちに、天井に設置された排気口に向けて方向付けられる(図19)。同様に、再循環流の場合(図8h)、ボックスによって生成された流れは、呼気/咳の流れの方向であり、したがって、汚染空気流を室内空気と混合させることなくユニットの吸い込み側に向けて方向付けるのを援助、支援する。したがって、ここに記載の濾過/換気ユニットの設計を汚染空気源からの短い距離と組み合わせることによって、汚染空気源から遠く(1mを超える場合が多い)離れて配置されている排気口、例えば天井の排気口を通しての換気による空気浄化と比較した場合、濾過空気の浄化効果は増加する。
【0035】
個体(例えば、1つ又は複数の濾過/換気ユニットの近くにいる患者、患者の隣のベッドにいる個体、患者を検査するスタッフ等)の保護を高めるために、エアカーテンは好ましくは、細長く伸長した空気スロットから作り出されるが、円形の(又は細長い全体形態を有しない任意の他の形態の)空気スロットを単独で又は2つ以上の空気スロットが互いに近くに設置された状態で用いることもできる。エアカーテンを作り出す空気スロットの全長は好ましくは少なくとも15cmであり、例えば少なくとも20cm、例えば少なくとも30cm、例えば少なくとも40cm、例えば少なくとも50cm、例えば少なくとも60cm、例えば少なくとも70cm、例えば少なくとも80cm、例えば少なくとも90cmである。「全長」とは、単一の空気スロットの長さ、又は約8cm未満の内部間隔で互いの近くに設置されたより小さな空気スロットの長さを意味する。好ましくは、空気スロットの全長は20〜80cm、より好ましくは25〜70cm、より好ましくは30〜60cmである。
【0036】
しかしながら、エアカーテンは、上述の空気スロットの全長よりもはるかに長いものであっても良い。エアカーテンは、空気スロットに関して述べた長さのいずれかとして空気出口に定められた長さを有することができる。エアカーテンは少なくとも1m、少なくとも1.5m、少なくとも2mの長さを有することもできる。 エアカーテンを設置する目的はエアカーテンの長さを定めることができることである。
【0037】
エアカーテンを作り出す空気スロットは好ましくは幅が1〜15mmであるが、最大で例えば40mmの又は更に広い幅を用いることができる。空気スロットの幅は、1mmから例えば10〜40mmといったはっきりしたスロットの考えられ得る最も広いスロットとの間の任意の幅を可能にするスライドによって調節することができる。したがって、スライドは1〜15mm又はそれ以上の幅を可能にすることができる。好ましくは、エアカーテンは1〜10mm、より好ましくは1〜5mの幅を有する。
【0038】
キャビネット又はハウジング又はボックスの外寸は、濾過/換気ユニットの外寸とすることができるが、例えば該ユニットを運ぶ備品及び/又はハンドルに該ユニットを固定するために例えばヒンジのような締結手段をキャビネットの外側に設置することができる。
【0039】
キャビネットは任意の適切な寸法を有することができるが、好ましくはボックス形キャビネットには10〜250cmの長さであり、例えば11〜225cm、例えば12〜200cm、例えば13〜190cm、例えば14〜180cm、例えば15〜170cm、例えば16〜160cm、例えば17〜150cm、例えば18〜140cm、例えば19〜130cm、例えば20〜120cm、例えば21〜110cm、例えば22〜100cm、例えば23〜90cm、例えば24〜80cm、例えば25〜70cm、例えば26〜60cm、例えば27〜50cm、例えば30〜40cmの長さである。好ましくは、可搬式キャビネットの長さは30〜60cmである。
【0040】
キャビネットは2〜50cm、例えば3〜45cm、例えば4〜40cm、例えば5〜35cm、例えば6〜30cm、例えば7〜25cm、例えば8〜20cm、例えば10〜15cmの幅を有することができる。好ましくは、可搬式キャビネットの幅は8〜20cmである。
【0041】
キャビネットは5〜80cm、例えば7〜70cm、例えば10〜65cm、例えば12〜60cm、例えば15〜55cm、例えば20〜50cm、例えば25〜45cm、例えば30〜40cmの高さを有することができる。好ましくは、可搬式キャビネットの高さは30〜70cmである。
【0042】
キャビネットの長さ、幅及び高さに関して上述した寸法のいずれかを組み合わせることができる。キャビネットの寸法は長さが20〜150cm、高さが20〜150cmかつ幅が2〜30cmとすることができる。ボックスのような形状となっているキャビネットの寸法の好適な組合せは、長さが30〜60cm、幅が8〜20cmかつ高さが30〜70cmである。ボックスのような形状となっているキャビネットの寸法の好適な組合せは、0.6m×0.15m×0.62m(長さ×幅×高さ)である。
【0043】
ベッド又はエリアの長さ全体に、ここに記載の濾過/換気ユニットを設けることになる場合、これは1つの長いユニットもしくは2つ以上のより短いユニットを用いれば可能となる。
キャビネットは円筒形、円錐形状であってもよく、又は、設計により又は濾過/換気ユニットを使用することになる利用可能なスペースの量によりある適用分野に該キャビネットを適切にする別の形状を有することができる。
【0044】
キャビネットは、少なくとも1つの空気入口スロット及び少なくとも1つの空気出口スロットを有する。
各タイプの2つ以上のスロットが一エリアのより良好な保護/換気を得るのに適するものとすることができる。
また、ある時には、空気入口スロットとして機能したスロットが、別の時点で空気出口スロットとして機能することができる。
内部風向装置は、スロットが空気入口スロットとして機能するとき又は空気出口スロットとして機能するときを決めることができるが、
濾過/換気ユニットを通り方向付けられる空気の全体的な方向を変えるすなわち向きを変えることもでき、これによって、空気入口スロットが空気出口スロットとして機能することができ、逆もまた同様である。したがって、「スロット」又は「空気スロット」という用語を用いる場合、これは、濾過/換気ユニットを通る空気流の方向に応じて「空気入口スロット」又は「空気出口スロット」を意味することができる。
【0045】
スロットの形状は、キャビネットの外側から見た場合、例えば正方形又は長方形である四角形とすることができるが、三角形、円形、楕円形又は卵形のような他の形状を用いることもできる。キャビネットの外側では1つのスロットであるように見えるスロットは、例えばスロットの一部分では空気入口としての機能を有するとともにスロットの他の部分では空気出口としての機能を有することによって、2つ以上のスロットとすることができる。
【0046】
空気スロットは、或る特定の寸法のキャビネット内に作ることが可能な任意の寸法を有することができる。好ましくは、空気スロットの長さはキャビネットの長さよりも5〜20cm短く、病原を含んだ空気を受け入れる空気スロット(すなわち第1の空気スロット)の高さは好ましくは、キャビネットの高さよりも30〜50cm低く、空気をキャビネットの外へ方向付ける空気スロット(すなわち第2の空気スロット)の幅は好ましくは、キャビネットの幅よりも5〜15cm小さい。一例として、0.6m×0.15m×0.62m(長さ×幅×深さ/高さ)のキャビネットを有する濾過/換気ユニットは、0.50m×0.14m(長さ×幅)の第1のスロット(空気入口)及び0.54m×0.05m(長さ×幅)の第2のスロット(空気出口)を有することができる。空気スロットは図17に示すように位置付けることができる。
【0047】
0.6m×0.15m×0.62m(長さ×幅×深さ/高さ)のキャビネットを有する濾過/換気ユニットはまた、それぞれが0.50m×0.14m(長さ×幅)の2つの第1のスロット(空気入口)及び0.54m×0.05m(長さ×幅)の第2のスロット(空気出口)を、排気口への空気出口と同様に有することができる。空気スロットの考えられ得る配置は図18に見ることができるが、その使用は、図18に示されるベッドのためだけでなく、ここで述べる他の状況のためとすることもできる。空気スロットのエッジまで正確な間隔は図17に示すようなものとすることができる。
【0048】
図18に示すように、2つの空気入口スロット及び2つの空気出口スロット又は1つの空気出口スロット、並びに、排気口への1つの接続部を有する濾過/換気ユニットは、該濾過/換気ユニットの内部の2つのコーナーの間に対角線上に設置された仕切りによって2つのセクションに区切ることができる。そのような仕切りを気密材料から作製することで、2つのセクション内での空気の混合を回避する。
【0049】
一実施形態では、少なくとも1つの第1の空気スロット及び/又は少なくとも1つの第2の空気スロットは、空気が空気スロットから出るときに空気の方向をガイドするガイド手段を有する。ガイド手段、例えばベーンはスロットの長さ方向に対して平行又は垂直に設置することができ、あるいはスロットが該スロットの長さ方向に対して平行に設置されたガイド手段及び垂直に設置されたガイド手段を双方とも有することができ、その場合、平行なガイド手段及び垂直なガイド手段は互いに並んで設置されて、出口空気の一部分を或る方向に方向付けるとともに出口空気の別の部分を別の方向に方向付けることを可能にする。
【0050】
また、空気入口(複数可)は、特定の場所からの吸い込みを行うことができるように調整可能なガイド手段を有することができる。空気入口のガイド手段は、流出空気をガイドするガイド手段に対して本明細書の他の所に記載されるのと同じ角度で調整することができる。
【0051】
スロットのガイド手段はその位置を変えて、キャビネットの出口に対して垂直なラインに比較した場合いずれかの方向に最大90度の方向に流出空気をガイドすることができる。空気の流出方向は、ガイド手段を調整することによって、例えばノブを回すことによる調整によって手動で決定することができ、又は調整は濾過/換気ユニット内に設置された制御部によって自動的に決定することができる。これによって、ベッドに設置されている濾過/換気ユニットは、ベッドの頭部分を昇降させて、患者の上体部分を起こすか又は倒す場合であっても、空気を例えば垂直方向にユニットの外へ方向付けし続けることができる。
【0052】
一実施形態では、濾過/換気ユニットは、空気を該濾過/換気ユニットの中に及び/又は外に方向付けるために第3のスロット及び/又は第4のスロットを有することができる。本明細書の他の所に記載されるように、スロットの数は様々な濾過/換気ユニットによって様々であり、また風向は多様であり、調整することができる。1つ又は複数のスロットは、例えばダンパー又はキャップ又はカバーによって一時的に閉じることもでき、このスロット/これらのスロットを通して空気の進入又は排出のいずれをも避けることができる。2つの出口を有する濾過/換気ユニットの例は図8e及び図8gに見ることができる。
【0053】
第2の空気入口又は更なる空気入口を用いて、第1の空気入口又は第2の空気入口への低空気流を得ることができ、それによって、低空気流が患者の頭上で得られる。2つ又は複数の空気流から本流へ空気流を集めることによって、濾過/換気ユニットから垂直方向に方向付けられる高空気流を得ることができる。
【0054】
好ましい実施形態では、空気は空気スロットに対して同時に出入りするようには方向付けられない。これの一つの例外は、濾過/換気ユニットの外側から空気スロットが1つの空気スロットであるように見えるが実際には2つ以上の空気スロットである場合である。
【0055】
好ましくは、空気入口スロットは、濾過/換気ユニットが1つの空気入口スロットしか有しない場合、該ユニットの底部(すなわち、該ユニットが機能している場合に床面に面するキャビネットの側面)には設置されない。しかしながら、濾過/換気ユニットが個体の頭のレベルに又はそのレベルよりも高く設置されることになる場合、空気入口スロットを濾過/換気スロットの底面の別の側に設置することができ、その場合、底面はユニットが機能している場合に床面に面する側面である。好ましくは、入口スロットが濾過/換気ユニットに1つだけしかない場合の空気入口スロットは、ユニットが床面から80cm下の距離のところで機能することになる場合、例えば床面から60cm下、より好ましくは床面から40cm下、更に好ましくは床面から20cm下の距離のところで機能することになる場合はキャビネットの底面には設置されない。空気入口が床面に非常に近くに設置される場合、塵埃及び他の粒子が濾過/換気ユニットに入り込む危険性があり、これによりユニット内のフィルターの寿命が短くなる可能性がある。
【0056】
ファンは、濾過/換気ユニットを通りいずれかの方向に空気を方向付けることが可能である。したがって、ファンは双方向に機能する能力を有することができる。代替的に、2つ以上のファンを1つのキャビネットに組み入れることができる。1つのキャビネットが2つ以上のファンを有する場合、これらのファンを同時に用いて、ともに機能させて空気を全体に同じ方向にすなわちキャビネットを通る主要な流れに方向付けることができ、あるいは、一方のファンが濾過/換気ユニットを通る一つの方向に空気を方向付けることが可能であり、そして他方のファンが他方の方向に空気を方向付けることが可能である。
【0057】
濾過/換気ユニットのファン(複数可)は速度の調整が可能である。キャビネットを通して方向付けられる空気の平均速度は例えば0.1〜10m/秒、例えば0.2〜10m/秒、例えば0.3〜9m/秒、例えば0.4〜8m/秒、例えば0.5〜7m/秒、例えば0.6〜6m/秒、例えば0.7〜5m/秒、例えば0.8〜4m/秒、例えば0.9〜3m/秒まで変化させることができる。0.5〜3m/秒の平均速度が好適である。
【0058】
好ましい実施形態では、入口における平均速度は出口における平均速度よりも低い。これは、出口スロット(複数可)のエリアと比較した場合に入口スロット(複数可)のエリアがより大きいことによって得ることができる。入口スロットにおける流入空気の速度は、出口スロットにおける流出空気の速度の95%未満とすることができるが、流入空気の速度はまた、流出空気の90%未満、例えば70%未満、例えば80%未満、例えば60%未満、例えば80%未満、例えば40%未満、例えば50%未満、例えば20%未満、例えば30%未満とすることもできる。好ましくは、流入空気の速度は流出空気の速度の40〜90%である。より好ましくは、流入空気の速度は流出空気の速度の45〜85%である。更により好ましくは、流入空気の速度は流出空気の速度の50〜80%である。また更に好ましくは、流入空気の速度は流出空気の速度の55〜75%である。
【0059】
濾過/換気ユニットは、エアカーテンを作り出す空気の方向及び/又は速度を調節する手段を更に含むことができる。エアカーテンを作り出す空気の方向及び/又は速度を調節するこれらの手段は、自動調節することができ、エアカーテンを作り出す空気の方向及び/又は速度を調節する。そしてこの調節は、本明細書中の他の所に記載されているようにセンサーによって測定された情報に基づく。
【0060】
濾過/換気ユニットのファンは、感染の広がりを回避する/最小限にとどめるよう、交換可能であるようにかつ/又は浄化が容易であるように構成することができ、さらに、微生物又はウイルスの増殖能力を殺すか又は阻害する手段、例えばUVGIライトが微生物侵入の危険性を最小限にとどめる。
【0061】
濾過/換気ユニットが2つ以上の空気入口及び2つ以上のファンを有する場合、ファンは2つ以上の入口を通して空気流を供給することができるとともに、これらの2つの空気流を、空気の濾過及び浄化が本明細書中の他の所に記載されるように行われる濾過/換気ユニット内の主要な空気流へ方向付けることができる。単一の入口からの空気流は2つ以上の出口に分割することもできる。
【0062】
濾過/換気ユニットが2つ以上の空気出口及び2つ以上のファンを有する場合、ファンは2つ以上の出口を通して外へ出る空気流を備えることができる。
【0063】
濾過/換気ユニットの空気入口(複数可)及び空気出口(複数可)は、空気感染病の感染性物質から隔離及び/又は保護すべき対象物を取り巻く空気の適当な濾過/浄化プロセスを確保するために任意の適切な寸法を有することができる。一実施形態では、少なくとも1つの空気入口は少なくとも1つの空気出口よりも大きいものとすることができる。空気入口の寸法に比して空気出口の寸法がより小さいことにより、空気出口を通して外へ方向付けられる空気の速度を増大させることができる。
【0064】
微生物又はウイルスの増殖能力を殺すか又は阻害する手段には、電解液と接触するガルバニ素子を形成するカソード材料及びアノード材料を設けることができる。これは欧州特許第1575550号に更に記載されている。欧州特許第1575550号に記載されているような材料がキャビネットの内面の一部又は全体を覆うことができる。欧州特許第1575550号の材料を、濾過/換気ユニットの内側の空気流が例えばキャビネットの内側のボトルネック/絞り構造部により該材料を通って方向付けられるように設置することもできる。欧州特許第1575550号に記載されているような材料をフィルターに組み込むこともできる。キャビネット内の空気はこのフィルターを通り抜けるることができる。
【0065】
微生物又はウイルスの増殖能力を殺すか又は阻害する手段をフィルターとすることもできる。濾過/換気ユニットの好適なフィルターはHEPA(H10−H14)又はULPA(U15−U17)フィルターとすることができる。フィルターは電気フィルターとすることもできる。
【0066】
高性能エア(HEPA)フィルター及び超高性能エア(ULPA)フィルターはエアフィルターの種類である。エアフィルターは、バクテリア、チリダニ及び動物のフケなどの微細粒子を空気から除去する。HEPAフィルターを、ここに記載の濾過/換気ユニットにおいて使用することができ、例えば0.3μm以上の粒子を除去することによって感染、疾病及び/又はアレルギーの拡散を防止するのを助けることができる。ULPAフィルターによって除去される粒子の範囲は0.12μm以上とすることができる。HEPA/ULPAフィルターの寿命性能を高めるために、取り外しが可能で容易に清浄できるより粗いフィルタープレートを濾過/換気ユニットのちょうど取入口にて用いて、咳及びくしゃみから生じる痰/粘液又は唾液の一部を阻止することができる。
【0067】
HEPAフィルターは、0.3μm幅である室内空気中浮遊粒子を99%を超えて除去することができる。これにはチリダニ、花粉、動物のフケ及びカビ、並びにバクテリア及びウイルス等のアレルゲンが含まれる。このサイズの粒子は、最大透過粒子径(MPPS)とも呼ばれ、濾過が最も困難なものである。
【0068】
濾過/換気ユニットの少なくとも1つのフィルターを、キャビネットの任意の適切な場所に、例えば、入口スロットと、電磁波を発することが可能な手段、例えば本明細書の他の所に記載されるようなUVランプとの間に設置することができ、フィルターを出口スロット(複数可)に設置することもできる。1つ又は複数のファンをスロットとフィルターとの間に、又は、フィルターと電磁波を発することが可能な手段との間に設置することができる。
【0069】
フィルターは、任意の形状、例えば入口スロット若しくは出口スロットのような形状又は該フィルターの簡便な交換を確保するのに適した形状を有することができる。フィルターの好ましい形状は円形、卵形又は四角形である。
【0070】
フィルターは、それを容易に取り扱えるフレーム内に設置することができる。フレームは1つ又は2つ(フィルターの各側に1つ)のカーテンを備えることができ、このカーテンは手動で動かすことができるか、又はキャビネットからフィルターを取り外すことにより、フィルターの片側又は両側の正面に引っ張ることができる。こうして疾病が広がる危険性を減らすことができる。
【0071】
濾過/換気ユニットは、上記キャビネットを通る方向付けられた空気中に存在する微生物又はウイルスに殺菌効果のある電磁波を発することが可能な少なくとも1つの手段を含むことができる。電磁波を発することが可能な少なくとも1つの手段はキャビネットの内側に設置することができる。電磁波を発することが可能な手段は、1つ又は複数の白熱電球、電球、LED、キセノンランプ、ハロゲンランプ、UVライトバルブのような電球とすることができる。濾過/換気ユニットに用いられるUV光は10〜400nmの波長を有することができる。微生物にとって致命的となるような225〜302nmの範囲の紫外線放射が好適であり、紫外線殺菌照射(UVGI)と呼ばれる。好ましくは約265nmの波長であり、バクテリアDNA及びウイルスDNAに対して最も破壊的である。UVGIライトからの望ましくない照射からその場にいる者を保護するために、装置の排気ルーバーにUVフィルターシールドを適用することができる。
【0072】
好適な電球は100〜280nmを発するUV−C電球である。また、280〜320nmのUV−B光を使用することもできる。
【0073】
濾過/換気ユニット内では、通過する空気は非常に短い曝露時間、UV光を受けることができる。曝露時間は0.1〜60秒でよく、例えば0.15〜30秒、例えば0.2〜20秒、例えば0.25〜15秒、例えば0.3〜10秒、例えば0.35〜5秒、例えば0.4〜3秒、例えば0.5〜1.5秒とすることができる。0.25〜1秒の曝露時間が好適である。そのような短い曝露時間は、UV光区画のボックス内側の高反射性ライニングによって得ることができる。
【0074】
15〜30秒の処理時間により少なくとも40%のバクテリアを死滅させることができ、254nmに1分間曝露させたバクテリアを少なくとも95%死滅させることができる。
【0075】
本明細書に記載される特徴のいずれかを有する、ここに記載の濾過/換気ユニットの重量は100kg以下でよく、例えば1〜100kg、例えば75kg以下、例えば50kg以下、例えば40kg以下、例えば30kg以下、例えば25kg以下、例えば20kg以下、例えば15kg以下、例えば10kg以下、例えば9kg以下、例えば8kg以下、例えば7kg以下、例えば6kg以下、例えば5kg以下、例えば4kg以下とすることができる。
【0076】
ホイール付きの濾過/換気ユニットは上記のようないずれもの重量を有することができる。
濾過/換気ユニットが可搬式である場合、重量は好ましくは15kg以下であり、例えば10kg以下、例えば9kg以下、例えば8kg以下、例えば7kg以下、例えば6kg以下、例えば5kg以下、例えば4kg以下である。好ましくは、可搬式ユニットは1〜10kg、より好ましくは1〜8kgの重量を有する。1kg未満のより軽い型は内部にUVGIを有しない場合に達成することができ、これは、キャビネットが全体換気口に接続可能である、すなわち換気口から空気を供給するとともに換気口へ排気する場合に参考になりえる。
【0077】
上述したように、キャビネットは、少なくとも1つの締結手段、例えばヒンジを備えることができ、濾過/換気ユニットを備品、天井、フレーム又は他のタイプの支持体に取り付けることを可能にする。また、キャビネットは、濾過/換気ユニットを運ぶためのハンドルを含むことができる。
【0078】
少なくとも1つの締結手段、例えばヒンジは、キャビネットの後側及び/又はキャビネットの底に設置することができる。「キャビネットの後側」とは、キャビネットのうち、空気入口スロット(空気出口スロットとして機能することもできる)が設置されている側とは反対側を意味する。別の実施形態では、キャビネットは、ユニットを水平方向及び垂直方向にガイドさせる装置(ガイドライン)に取り付けることができる。
【0079】
キャビネットに取り付けることができるヒンジにより、濾過/換気ユニットが取り付けられている支持体から該ユニットを取り外すことなく該ユニットの向きを変えることを可能にすることができる。例えば、キャビネットの底に設置された締結手段を有し、かつ病院ベッドに取り付けられている濾過/換気ユニットは向きを下方へ180°近く変えて、医者/看護師/血縁者が患者に話しかけるための又は患者を扱うためのスペースをより多く作ることができる。備品又はキャビネットに取り付けられたトラックがあることにより、キャビネットを滑動させて或る場所から離し、その後になって再び戻すことを可能にすることができる。ベッド上で使用されるキャビネットに関して、キャビネットの底にはいかなる出口スロットもないことが好ましい。好ましくは、キャビネットの底には同様にいかなる入口スロットもない。
【0080】
濾過/換気ユニットは測定手段を含むことができる。測定手段は、カメラ又は赤外センサー、例えば、横たわっている者の顔の位置(すなわち左、右又は上向き)を特定することが可能な赤外線温度センサーを含むセンサーとすることができる。関連する特徴、例えば個体の顔の位置の特定に基づき、コンピューター(濾過/換気ユニットの一体化部分とすることができる)に信号を送ることができ、このコンピューターが、関連する濾過/換気ユニットのスロットをいつ調節するかを判断することができる。この調節により、例えばスロットからの流出空気流の方向を変えることができるか、又はユニットのどのスロットが空気を吸い込むか又は吹き付けるかを調節することができる。このことは、提示されているシステムの高いエネルギー効率及びより良好な性能を示唆する。
【0081】
測定手段、例えば毛髪又は皮膚からの反射に基づく光学センサーは、空気流、温度、色、皮膚対非皮膚すなわち皮膚対毛髪を検出することができる。測定手段はまた、1つ又は複数の運動センサーとすることもできる。測定手段は呼吸活動による速度を検出することができる。CO2測定センサーを使用することができ、このCO2測定センサーは高レベルのCO2を感知するとすぐに排気を開始する。呼気は40000ppmのCO2を含有しているため、4000ppmを超えるレベルを、排気を始動させる閾値とすることができる。皮膚温度センサー又は患者のガウン/枕に配置することができるとともに圧力に反応する圧力/姿勢測定センサー又は他の手段は、患者がいるかどうかを検出することができ、患者がいる場合にのみ濾過/換気ユニットをオンにすることができる。
【0082】
ガス供給部を濾過/換気ユニットに接続して、空気出口スロットを通して濾過/換気ユニットを出る空気流の組成を制御することを可能にすることができる。流出空気に酸素及び/又は他のガスを供給することによって、この空気流中の酸素及び/又は他のガスの含量を増加させることができる。したがって、流出空気中の酸素及び/他のガスの含量は少なくとも20%とすることができ、例えば少なくとも25%、例えば少なくとも30%、例えば少なくとも35%、例えば少なくとも40%とすることができる。濾過/換気ユニットはまた、二酸化炭素及び/又は窒素、NOx及びエアカーテン流中の他の物質の量等、エアカーテン中の他のガスの組成を調節することもできる。
【0083】
濾過/換気ユニットは、該ユニットの外へ方向付けられた空気を加湿する加湿器を含むこともできる。
【0084】
濾過/換気ユニットは、該ユニットの外へ方向付けられた空気を加熱する加熱手段を含むこともできる。
【0085】
エアカーテンの空気が加熱されるときの目標温度(被加熱ジェットが初めて人に当たる距離での該ジェットの断面における平均温度)は、恒温(室温に等しい供給されたジェットの温度)から最大35℃までとするものとする。
【0086】
エアカーテンを作り出す前に空気の冷却を行うときの目標温度(冷却ジェットが初めて人に当たる距離での該ジェットの断面における平均温度)は、恒温(室温に等しい供給されたジェットの温度)から18℃まで下がるものとする。好ましくは、特にネック領域の後側に空気を供給する場合に局部的な熱による不快を回避するよう、温度は18℃以下ではないものとする。
【0087】
局部化した冷却及び加熱は、ASHRAE 55-2004及びEN 15251-2007が推奨するように夏の最高室内温度及び冬の最低室内温度を保つことによって一部の省エネに役立たせるのを助けることができる。
【0088】
ここに記載の濾過/換気ユニットを用いる場合、排気及び供給について他の所に記載される全体換気回数は1ACH(1時間あたりの換気回数)未満から最大で基準(ASHRAE 170-2008, DS 2451-9, 2003)が推奨している値までとすることができる。
【0089】
身体を包む湿度の高い空気及び/又は暖かい空気及び/又は冷たい空気を必要とする個体、例えば身体に重篤な火傷を負った患者の場合に、これは加湿器及び/又は加熱手段を有する濾過/換気ユニットを装備することによって可能にすることができる。ファンコイルユニット又は他の手段を組み入れることによって、冷却及び加熱を同時に行うことも可能である。
【0090】
濾過/換気ユニットは、キャビネットの外へ通り抜ける空気を乾燥させる手段、及び/又はキャビネットの外へ通り抜ける空気を加湿する手段を含むことができる。
【0091】
濾過/換気ユニットはまた、エアカーテン中のガスの組成を調節する手段を含むこともできる。これによって、酸素、二酸化炭素及び他のガスの量を、既設ガス管路(病院、工場等)との又はガス容器にプラグ接続することによって調節することができる。
【0092】
キャビネットの内側は高反射性材料からなることができ、電磁波を発することが可能な手段の効果を高めることができる。特に、フィルターの後かつストレートナーの前のボックスにおける表面を高反射性材料から作製することができる。
【0093】
濾過/換気ユニットは、バッテリー(単数/複数)、燃料電池又は光起電性コレクター、例えば一体型であるが交換可能な充電式バッテリーを備えることができる。バッテリーは、電気出力部から遠く離れた場所において、又は、囲まれたエリア/室を再配置する場合、患者のいるベッドを例えば或る室から別の室へ再配置する場合に、濾過/換気ユニットを使用することを可能にする。
【0094】
濾過/換気ユニットは、ここに記載されるいずれもの特徴及び記載される特徴の任意の組合せを含むことができる。
【0095】
濾過システム
別の態様では、本発明は、本明細書に記載されるように少なくとも1つの可搬式濾過/換気ユニットを含む濾過/換気システムに関する。濾過/換気システムは、スペース(エリア/容積/空間)を設けるように製造されることができ、この場合、該システムを用いて、このスペースから微生物及び空気中の健康有害物質の拡散を低減し、かつ/又はこのスペースを周囲からの微生物及び空気中の健康有害物質から保護する。
【0096】
ベッドの一方の側に設置された1つの濾過/換気ユニットをベッドのもう一方の側の別の濾過/換気ユニットと一緒に用いて、ユニットと天井との間に周囲から少なくとも部分的に隔離されたエリア又は空間を作ることができる。隔離は、濾過/換気ユニットの空気出口からの垂直方向の空気流又はエアカーテンによって形成することができる。
【0097】
濾過システムは少なくとも2つの可搬式濾過/換気ユニットとすることができ、該ユニットは或るエリアの各側に設置されて該エリアを周囲から部分的に隔離し、かつ/又は感染性微生物及び/若しくは感染性ウイルスを含む危険性のあるエリアの各側に設置されて室内への侵入を防止する。少なくとも1つ又は2つ以上の濾過/換気ユニットの使用によって、或るエリアを部分的に又は全体的に取り囲んで周囲から少なくとも部分的に隔離するか又は周囲を該エリアから保護することが可能である。汚染された室の空気/隔離されたエリアの空気からの隔離は、濾過/換気ユニットの空気出口から空気流又はエアカーテンを作り出すことによって行われる。
【0098】
濾過システム内の少なくとも2つの濾過/換気ユニットがそれぞれ、囲まれたエリア/室内に負圧を作る場合、この室内の空気が浄化され、したがって、ウイルスを含む感染性生物の拡散の危険性を減らすことができる。「囲まれた」とは、最小限の空気しか濾過/換気ユニットを通る通過を免れない空間を作るものと理解されるべきである。これによって、壁と単一の濾過/換気ユニットとの間のエリア若しくは空間、又は2つの濾過/換気ユニット間のエリア若しくは空間は囲まれたエリア/空間として理解するべきであるが、2つの濾過/換気ユニットはおそらく、全体のうち、囲まれたエリアの断面を示す円形又は正方形/矩形の例えば約30〜50%しか構成しないであろう。したがって、「囲まれた」とは完全に囲まれているものと解釈すべきではない。
【0099】
特に、濾過システムの少なくとも2つの可搬式濾過/換気ユニットがそれぞれ、出口空気を該濾過/換気ユニットの外へ実質的に垂直方向に方向付ける場合、囲まれたエリア/空間は部分的に隔離されることができる。出口空気は、垂直方向の空気流に対して20°の方向に部分的に隔離されたエリアに対して接離するように方向付けられることができ、部分的に隔離されたエリアを確保することができる。垂直方向のエアカーテンに対して各方向に0°〜90°まで方向を調整することも可能とすることもできるが、これによってスロットが180°内で調整可能となるため、流出ジェットをボックスのリムに衝当させるように調整することができ、又は人体に当たるように調整することができる。
【0100】
少なくとも2つの濾過/換気ユニットを含む濾過システムでは、該ユニットのうちの少なくとも1つが、囲まれたエリア内に負圧を作ることができ、そして該濾過/換気ユニットのうちの少なくとも1つの別のものが、エリア内に正圧を作ることができる(例えば図8a参照)。正圧は、一つの濾過/換気ユニットから別の濾過/換気ユニットへ向けて方向付けられる空気流を構成することができ、該別のユニットが同時にエリア内に負圧を作り出すため、囲まれたエリアから濾過/換気ユニットへ空気を吸い込むことができる。
【0101】
囲まれたエリアの内側に位置する空気源(例えば呼吸している個体)を含む囲まれたエリア内で少なくとも1つの濾過/換気ユニットが負圧を作り出すとともに、少なくとも1つの濾過/換気ユニットが正圧を作り出す濾過システムを作る場合、負圧を作り出す濾過/換気ユニットは好ましくは:
・正圧を作り出す少なくとも1つの濾過/換気ユニットよりも、エリアの内側に位置する空気源(例えば個体の顔面)の近くに設置され、かつ/又は
・濾過/換気ユニットの少なくとも1つの空気入口がエリアの内側に位置する空気源から出る空気の方向に向かい合うように設置される。
【0102】
上記の濾過システムは、ベッドの頭領域側に、患者の両側に1つずつ設置された、少なくとも2つの濾過/換気ユニットを有するベッドとすることができる。上記の濾過システムは、ベッドの頭領域側に、患者の頭の後側に1つ、及び両側に1つずつ設置された、少なくとも3つの濾過/換気ユニット有するベッドとすることもできる。呼吸している患者が、囲まれたエリアの内側に位置する空気源である。一方の濾過/換気ユニットは、空気が患者の頭を通過する場合に空気を濾過/換気ユニットの外へ方向付けることができ、もう一方の濾過/換気ユニットが、患者の頭領域から空気を吸い込んで空気を浄化することができる。ベッドの個体の各側に設置された2つの濾過/換気ユニット及び異なる方向の空気流を用いる幾つかの可能性は、図8に見ることができる。これらの状況は、ベッドの端に、個体の頭の後ろに設置される濾過/換気ユニットと組み合わせることができる。好ましくは、個体の頭の後ろに設置されるユニットはベッドのマットレスに対して平行に空気を吸い込み、ユニットから流出する空気流により垂直方向のエアカーテンを作り出す。
【0103】
例えば個体の位置である状況により、空気の流入及び流出に用いられる濾過ユニットのスロットに対して濾過システムをフレキシブルにするために、各濾過/換気ユニットを制御ユニットに接続(無線又は有線)することができる。制御ユニットは信号を各濾過ユニットに送信して、方向に対する空気流(空気流の流出対流入、オン対オフ又は角度調整)及び空気流の速度を調節することができる。
【0104】
少なくとも1つの濾過/換気ユニットが、囲まれたエリア内に正圧を作り出す、及び少なくとも1つの濾過/換気ユニットが、囲まれたエリア内に負圧を作り出す濾過システムでは、測定手段を濾過システム内に又はその近くに設置して、囲まれたエリアの内側に位置する空気源から出る空気の方向を測定することができ、内側に位置する汚染空気源から出る空気の方向により、どの濾過/換気ユニット(単数又は複数)が負圧を作り出し、どの濾過/換気ユニット(単数又は複数)が正圧を作り出すのかを判断する。
【0105】
囲まれたエリアの内側に位置する汚染空気源が人間である場合、測定手段は、どの方角に患者の頭が向いているのかを検出し、これによって、どの濾過/換気ユニットが負圧を作り出すべきであり、どの濾過/換気ユニットが正圧を作り出すべきかを判断することができる。例は図8に見ることができる。
【0106】
ガス供給部は上述のように濾過/換気ユニットに接続することができる。特に、例えば図8a、図8f及び図8hに示されているように、患者の頭の傍を通過する空気又は特定の組合せのガスについて、患者へ向けて方向付けられる空気流は、増量した酸素を、例えば上述の量で含むことができる。酸素量を増加した空気を、図8a、図8f及び図8hに示す濾過/換気ユニットの上部の出口スロットから外に方向付けることができ、かつ/又は図8a及び図8hに示す濾過/換気ユニットの下部の出口スロットから外に方向付けることができる。図16に示されている例では酸素を供給することもできる。酸素の供給は、航空機、バス、列車、待合室、ダイニングルーム、リビングルーム、室内遊戯場等のような、人が長時間滞在する空間等の他の状況に適することができる。
【0107】
濾過システムは、本明細書の他の所で記載されるいずれもの特徴及び記載される特徴の任意の組合せを有する濾過/換気ユニットを含むことができる。
【0108】
ここに記載の濾過/換気ユニットの使用は、例えば病院において全体換気用に、より小さな寸法の管が必要とされるという影響があり得る。ここでもやはり2つの層(storeys)間の距離をより短くすることが可能となる。
【0109】
方法
本発明の一態様は、エリア/空間を部分的に隔離し、並びに/又は、エリア/空間から空気中の微生物及び/若しくはウイルス及び/若しくは健康有害物質を除去するための方法に関し、該方法は以下を含む:
・少なくとも部分的に隔離すべきエリアを局部化すること、
・ここに記載する少なくとも1つの濾過/換気ユニットを得ること、
・本明細書の他の所に記載されるような濾過/換気システムをエリアの周り又はエリアに接続して設置すること、
・囲まれたエリア/空間から少なくとも1つの濾過/換気ユニットへ空気を方向付けること、
・少なくとも1つの濾過/換気ユニットの中へ方向付けられる空気の全体方向又は中心方向と比較した場合に0°〜90°の方向に該濾過/換気ユニットの外へ空気を方向付け、かつ/又は、
少なくとも1つの濾過/換気ユニットの外へ、さらに、より大きな換気システムに空気を方向付ける例えば天井の管又は開口の中へ空気を方向付けること、これによって、
・エリアを部分的に隔離し、かつ/又は該エリアから微生物及び/若しくはウイルス及び/若しくは空気中の健康有害物質を除去すること。
【0110】
本方法と一緒に記載されている濾過/換気ユニット及び/又は濾過/換気システムは、本明細書の他の所に記載されるいかなる特徴及びその記載される特徴のいかなる組合せを有する濾過/換気ユニットを含むことができる。
【0111】
好ましい実施形態では、局部化したエリアは室内エリアである。好ましいエリアは、ここに記載の濾過/換気ユニットの好適な使用により実現することができる。最も好ましくは、このエリアは、空気感染病又は汚染物質を拡散する危険性のある者/対象物が占めるべきエリアであり、かつ/又は、空気感染病又は汚染物質中毒に罹る危険性から隔離すべき者/対象物が占めるべきエリアである。
【0112】
したがって、本方法を用いて、囲まれたエリアからの微生物及び空気中の健康有害物質の拡散を低減し、かつ/又は、囲まれたエリアの外側の室内空気中に存在する可能性がある微生物及び空気中の健康有害物質から、囲まれたエリアを保護することができる。
【0113】
咳で出された空気の分散を抑制する1つの方法は、この空気を局部的に、すなわち、例えば疾病患者である個体の口元の近くで排気することである。咳をしている個体の近くでは咳のジェットが周囲空気と混ざることがさらに少ない。個体に向けて設置される第1の空気スロットを有する、ここに記載の濾過/換気ユニットを、空気源、例えば口及び鼻から第1の空気スロットまでの距離が1m以下であるように、例えば90cm以下、例えば80cm以下、例えば70cm以下、例えば60cm以下、例えば50cm以下、例えば40cm以下、例えば30cm以下、例えば20cm以下であるように、設置することが好ましい。好ましくは、空気源から濾過/換気ユニットの第1の空気スロットまでの距離は約10cm〜約60cmであり、より好ましくは約15cm〜約55cm、更に好ましくは約20cm〜約50cm、また更に好ましくは約20cm〜約45cm、更にいっそう好ましくは約20cm〜約40cm、最も好ましくは、約20cm〜約35cmである。距離が短ければ、濾過/換気ユニットが空気源からの空気を捕捉する可能性、したがって、空気中の感染性物質を捕捉する可能性が増す。好ましくは、患者の頭から濾過/換気ユニットまでの距離は、最大のベッド幅を1mとした場合0.2〜0.6mである。
【0114】
病室において感染者は大半の時間を各自のベッドで横たわって過ごす。これは、個体が高い接触感染性の場合の疾患の徴候段階時に特に当てはまる。そのような症状の例は、麻疹、天然痘、結核等のような、空気による接触感染症であろう。ここに記載の濾過/換気ユニットを疾病患者の頭の極近くで使用することにより、肺活動による病原体を含んでいる空気のうちの少なくとも大部分の排出を成功裏に改善する。この空気を(例えばUVGIを介して)パージし、濾過/換気ユニットの1つ又は複数の水平スロットを通して、全体換気の排気ベントに向けて高速で例えば上方へ方向付けることができる。上方へ方向付けられた清浄な空気は、患者が横たわっているベッドの近くにいる例えば医療スタッフ員である個体との間のバリアーとして働くことができる。さらに、排出された空気ジェット(エアカーテンとして働く)が咳で出された空気を同伴して、該空気を上方へ向けて排気口へ方向付けて動かす。
【0115】
本方法はまた、ここに記載される他のいずれの状況においても用いることができ、特に濾過/換気ユニットの使用に関して説明される状況において用いることができる。
【0116】
浄化ユニットが一体化した病院ベッド
本発明の一実施形態は、本明細書の他の所に記載されるような少なくとも1つの濾過/換気ユニットが少なくとも頭領域に設置されているベッドに関し、少なくとも1つの濾過/換気ユニットをベッドの一体化部分とすることができ、又は、少なくとも1つの濾過/換気ユニットがベッドと一緒に再配置されることができるように該少なくとも1つの濾過/換気ユニットをベッドに取り付けることができる、ベッドに関する。ベッドは病院ベッドを意味するものとすることができるが、そのようなベッドは病院以外の他の場所で使用することができる。場所の例は本明細書の他の所で述べる。
【0117】
多数の濾過/換気ユニットをベッドに取り付けて、ベッドのマットレスの周りに濾過システムを設置することができる。該システムは少なくとも2つの濾過/換気ユニットを含むことができ、該濾過/換気ユニットは、少なくとも1つの濾過/換気ユニットをベッドの頭部領域の各側に設置することができる。
【0118】
ベッドは、そのベッドの少なくとも1つの端に濾過/換気ユニットを更に含むことができる。濾過/換気ユニットがベッドの頭部端に配置される場合、ベッドは該ベッドに横たわっている患者の頭の両側に及び患者の頭の後ろに、濾過/換気ユニットを有することができる。濾過/換気ユニットがベッドの脚に配置される場合、ベッドは該ベッドに横たわっている患者の頭の両側に及び患者の足元に、濾過/換気ユニットを有することができる。また、濾過/換気ユニットは患者の頭の両側、患者の頭の後ろ及び患者の足元に配置することもできる。
【0119】
病院ベッド用の濾過/換気ユニットのキャビネットは、例えば0.6m×0.15m×0.62m(長さ×幅×深さ/高さ)の寸法を有するボックスのような形状とすることができる。ユニットは、病院ベッドの両側及び/又は頭側に設置することができる。他に記載されているように、濾過/換気ユニットは疾病患者/患者の肺活動(呼吸、咳、くしゃみ等)による空気を排出するのを助けることができ、ユニットは、フィルター及びUVC光を介して病原体を除去/死滅させることによって空気を清浄にし、次いで、1つ又は複数の空気出口スロットを通して実質的に垂直方向に(又は例えば図8に示す他の方向に)空気を排出する。濾過/換気ユニットを出る空気は、高い初期速度、及び天井に向かう方向を有し、その場合、空気を全体換気(背景換気)によって排出することができる。空気入口スロットは、図18に示すように、装置に作られた、ボックスの各側に1つずつ、2つのスロット(0.50m×0.14m(長さ×幅))、及び、頂部の排出開口(0.54m×0.05m(長さ×幅))とすることができる。状況によっては、空気入口スロット(複数可)は、空気出口スロット(複数可)として使用することができる。上述した特許出願において特許請求されているこれらの用途は、限られた時間により検討されていない。図18に示すような濾過/換気ユニットは、堅固な仕切りによって互いに分離された2つの異なるセクションを有するように設計することができ、これによって、一方のセクションは清浄な空気を供給するのに用いられ、他方のセクションは病原を含んでいる空気又は病原を含んでいる可能性のある空気を排気するに用いられる。仕切りは、濾過/換気ユニットの内部の2つの隅の間の対角線上に配置することができる。
【0120】
濾過/換気ユニットは、ヒンジ又はトラック等の締結手段によりベッドに取り付けることができ、該濾過/換気ユニットをベッドから全体ごと取り外すことが可能となり、及び/又は垂直方向に約180°下方に傾斜/滑動させることが可能となる。締結手段は、ユニットの方向を上方/下方及び/又は前方/後方に調整することを可能にするタイプのものとすることもできる。濾過/換気ユニットの取り外し又は傾斜/滑動は、例えば病院のスタッフに患者を扱うための改善されたスペースを与えることができる。自動制御ユニットにより、濾過/換気ユニットが傾斜する場合、該濾過/換気ユニットを止めることができ、かつ/又は入口の高さを摺動ラッチによって変えることができ、かつ/又は自動制御ユニットは浄化された排出空気の適正な方向付けを得るように出力スロットを調整することができる。
【0121】
濾過/換気ユニットを取り付けることができるベッドは、どんな種類のベッド、例えば、病院ベッド、介護ベッド、養護施設のベッド、介護施設のベッド、老人ホームのベッド、家庭用途向けの市販ベッド等のような、人間が長時間休むベッドでよい。
【0122】
本明細書の他の所に記載されるような1つ、2つ、3つ又はそれよりも多くの濾過/換気ユニットを有する、ここに記載の濾過/換気システムを配置するのに適したベッドは、シングルユーザー向けのベッドである。しかしながら、ダブルベッドに関して、濾過/換気ユニットを頭領域の両側及び頭領域の該ベッドの端に配置することができる。
【0123】
ここに記載の濾過/換気ユニットに用いるべきベッドは好ましくは、長さが約2mであり、幅が約1mである。しかしながら、子供用はサイズを小さくすることができ、肥満者又は長身者の場合はサイズを大きくすることができる。
【0124】
ここに記載されるようなベッドは、本明細書の他の所に記載される特徴のうちのいずれかを有する濾過/換気ユニットを含むことができ、それらの特徴は以下のようなものである:
・濾過/換気ユニットは、該濾過/換気ユニットを通って方向付けられる空気を濾過するフィルターのような、微生物又はウイルスの増殖能力を殺すか又は阻害する少なくとも1つの手段を含み、
・濾過/換気ユニットは、該濾過/換気ユニットの外へ空気を方向付ける少なくとも1つの空気出口を含み、該空気出口は、空気入口及び/又は出口空気の方向を制御する手段及び/又は出口空気の速度を制御する手段よりも小さな寸法を有することができ、
・濾過/換気ユニットが、該濾過/換気ユニットの中に空気を方向付ける少なくとも1つの空気入口を含み、かつ/又は
・濾過/換気ユニットが、該濾過/換気ユニットを通って空気を方向付ける少なくとも1つのファンを含み、
・濾過/換気ユニットが、本明細書の他の所に記載されるような特徴を有する少なくとも1つのエアカーテンを作り出すことが可能である。
【0125】
濾過/換気ユニットはまた、該濾過/換気ユニット内に方向付けられた空気中に存在する微生物に殺菌効果のある光を発することが可能な電球のような、電磁波を発することが可能な少なくとも1つの手段を含むことができる。
【0126】
濾過/換気ユニットは壁又は壁内の小さなニッチに組み入れることもでき、そこにベッドをドッキングさせることができる。このようにして、ボックスが空気を全体換気排気口に直接排出し、かつ/又は実質的に垂直方向のエアカーテンを作り出すことができる。ベッド用の小さなニッチを備えた室は図7に示す。
【0127】
ベッドの濾過/換気ユニットは赤外線温度センサーを有することで、横たわっている者の顔の位置(すなわち左、右又は上方に向いている頭)を特定することを可能にするとともに、したがって、必要とされるサイドボードユニット(濾過/換気ユニット)を起動させることができる。このことは、記載されているシステムのエネルギー効率及び良好な性能を示唆する。ここに記載されるような他のセンサーも濾過/換気ユニットの一部とすることもできる。
【0128】
濾過/換気ユニットシステムの別の改良変更は、頭の後ろのリアボードにユニットを1つ設置するとともに頭の両側にユニットを1つずつ設置することである。この場合、空気を例えば2つのサイドボードから連続吸引することができ、又は患者が現に向かい合っている開口を通して空気を吸引するように自動制御することができる。この場合、及び同様に他の配置/システムにおいて、入口空気(吸引強度)及び出口空気の、空気の速度の自動制御を行うことができ、この自動制御は、活動、したがって呼気活動及び/又は咳の頻度に、並びに患者の頭の位置に依存することができる。ユニットは速度検出センサーを有して作製されることができ、そのため、患者が咳をした場合に入口空気(吸引強度)の量及び出口空気の量は最大限に増加されて、放出された病原体を捕捉するときにより迅速な排出及びより良好な効果を可能にする。
【0129】
バックボード(患者の頭の後ろに設置された濾過/換気ユニット)に設置された1つだけの浄化セクション、及びバックボードの頂部に配置された1つの空気排出スロットを使用することも可能である。これにより、ユニットの設計を簡素化することができ、良好な美的デザインを与えることができる。この改良はまた医療操作手順を邪魔することが少ないものとすることができる。
【0130】
ユニットのサイズ及び形状は、患者が横たわっているときに、ベッドの一部を、すなわち上半身よりも下のセクションを持ち上げることを可能にするものとする。この場合では、排出スロット内に配置されているルーバー/薄板/スラットが自動的に(機械的な機構又は別の方法で)起動して空気を垂直方向に排出する。
【0131】
濾過/換気ユニットは隔離室の壁にしっかりと取り付けられて作製でき、病院ベッドをドッキングし、又はユニットから容易に外すことが可能となり、必要に応じて患者の容易な搬送を提供する。また、可搬式型の濾過/換気ユニットは、充電可能なバッテリーを有して製造することができ、病院の病棟間の又は例えば救急車から病棟までの間の感染患者の搬送を確実にする。
【0132】
交差感染からの効率的な保護を人に与えること及び各自の生活の質を改善すること(心理的なストレスの減少)とは別に、本発明は病棟内でのエネルギー消費を低くする大きな可能性を有している。背景換気システムの空気流量を減らすことにより省エネは2倍もの高さとすることができる。エネルギー低減の別の理由は、濾過/換気ユニットはまた空気中の病原体もパージするので、全体システムを運転するのに再循環を適用することができるという事実によるものである。
【0133】
通常、病院内では、空気感染病を患っている者は1人又は2人の患者用の室に入れられる。しかしながら、病気の流行又は大流行の状況では、病院は1人又は2人の患者用の室では不十分であろう。そのような状況では、より大きな室内のベッドに、ここに記載の濾過/換気ユニットを取り付けて、該濾過/換気ユニットが作り出すエアカーテンによって患者を互いから隔離することができる。これによって、病院スタッフ及び見舞客も同様に、エアカーテンによって空気感染病から保護される。
【0134】
濾過/換気ユニットの使用
本発明の一態様は、ここに記載の濾過/換気ユニット及び/又は濾過/換気システムの使用に関する。
【0135】
上記ユニット及び/又はシステムの使用の例は、例えば以下のとおりである:
・病院、託児所、未熟児室、新生児室、子ども部屋、術後室、及び術後の覚醒室におけるベッドにおいて、包帯の交換時、免疫無防備状態の患者又は体に火傷を広範に負った患者を治療するための加圧室において。
なお、病院におけるベッドはどんなベッドであってもよく、又は、空気感染病を有する患者用のベッドであってもよい、移植例えば肝臓移植又は心臓移植を受ける患者用のベッド、HIV又はAIDSに罹る患者用のベッド、インフルエンザ例えば鳥インフルエンザ、豚インフルエンザ(例えばH1N1)、及び重症急性呼吸器症候群(SARS)に罹っている患者用のベッド。
・家庭及び救急車内のベッドにおいて。
・デイケアセンター、例えば休眠室内において。
・航空機、バス、列車及び他の輸送手段の、乗客の正面の座席内、壁内、天井から懸下して、廊下に向けてエアカーテンを作り出す座席内、及び/又は乗客の間において。
・デイケアセンター又は託児所、店内等の遊び場のような、子どもの遊び場スペース又は託児センター内において。
・オフィス内の、例えば机上及び/又はコンピュータースクリーンに取り付け。その場合、濾過/換気ユニットは、コンピュータースクリーンの上の領域で空気を吸い込むとともに机の両端で垂直方向に空気を吹き付けるか又はコンピュータースクリーンの傍の領域から水平方向に空気を吹き付ける。
・コンピュータースクリーンに一体化されており、その場合、空気がコンピューター画面の頂部で吸い込まれることができ、コンピュータースクリーンの側部に吹き出される。
その濾過/換気ユニットのサイズ及び重量は、例えばベッドに接続するのに適したキャビネットに関して記載されるものよりもより小さいものとすることができる。
・モバイル使用、すなわち、濾過/換気ユニットを所望の場所に配置することができ、他の場所、例えば家庭、オフィス、病院に移動させることができる。モバイルユニットは可搬式とすることができ、内部バッテリーに基づき作動することができ、かつ/又は電源に接続することができる。モバイルユニットはまた、ホイール及びバッテリー及び/又は電源に接続すべき手段も有することができる。
・公衆トイレ(航空機、列車、バス、船の)において、又は他の場所、例えば、病院、デイケアセンター、リタイアメントホームのトイレの、トイレの壁に組み入れられた又はトイレの傍に設置された便座の両側。
・歯科クリニック(歯科用椅子への適用の一例は図16に示されている)において。この場合、装置の端は患者に応じて調整可能であるように伸縮式にすることができる。
・動物小屋、例えば、或る動物から他の動物に、かつ/又は一群の動物から他の群の動物に、かつ/又は1匹又は複数匹の動物から人間に微生物、ウイルス又は任意の他の空気中の健康有害物質を拡散する危険性を最小限にとどめるための畜舎において。濾過/換気ユニットは、動物のいる小屋の間、及び/又は小屋と飼料場又は動物を扱う人間が用いる別のエリアとの間に設置することができる。浄化された空気の方向は例えば水平方向、上方垂直方向とすることができ、又は空気を例えば換気システムを通して畜舎の外へ方向付けることができる。
・濾過/換気ユニット又はシステムは、動物が生活する他の場所、例えば動物病院、動物園、犬舎、猫舎等において使用することもできる。本明細書の他の所に記載されるような濾過/換気システムは、1匹又は複数匹の動物用のエリア、例えばケージの周りに設置することができる。病院ベッドを記載している本文ではこれらの状況を動物に関して記載されるシステム、例えば小屋及びケージに置き換えることができる。
・死んだ個体、例えば死んだ動物又は死んだ人を囲むために。囲むこと(部分的又は完全に囲むこと)は死んだ個体を扱う任意の段階で行うことができる。
・仮設病院又は病院の仮設セクションにおいて。仮設病院は例えば陸軍病院、被災したエリア内に設置された病院とすることができる。そのような病院では、ここに記載の濾過/換気ユニットは、限定された隔離室しかないか又は隔離室が全くない場合に、人を隔離する唯一の可能性であるものとすることができる。
・患者とスタッフとの間にエアカーテンを作るために救急車において。
・食品及び飲料産業において用いられて、食品をパック詰めする場合及び飲料をパック/ボトルに入れる場合に、また、パック/ボトルに被せる蓋等を取り付けるための場所に向けて飲料が方向付けられる場合に、汚染から食品及び飲料を保護する。濾過/換気ユニットは、食品又は飲料製品を搬送する搬送ベルトの両側に設置することができる。したがって、濾過/換気ユニットは、搬送ベルトの隣に設置することができ、又は食品/飲料搬送ベルトの一体化部分とすることができる。特に、濾過/換気ユニットは、食品又は飲料が密封されておらず食品の汚染及び中毒の危険性がある場合に、搬送ベルトと接続して又は搬送ベルトの一体化部分とすることができる。
・食品及び飲料産業の用途と同様の医薬品産業において。空気感染経路を介する汚染に関する場合に、充填及び取扱いに清浄な環境及び特別な状況を必要とする、ワクチン及びピルの生産サイクルにおける実施。
・クリーンルームでの電子部品の製造のための電子・コンピューター産業において。
・香り又は匂いを除去するために、例えば台所における食品又は任意の他の臭気汚染する製品(皮なめし等)の匂いを除去するために。食品を調理する/匂いを生じる製品を扱うエリアの外のエリアから空気を吸い込むことができ、その場合、ここに記載の少なくとも1つの濾過/換気ユニットに空気が入り、該空気を天井に向けて方向付けてエアカーテンを作り出すことで、微生物が調理エリアに侵入する危険性を減らすとともにスペースを匂い移りから密閉することができる。
【0136】
上記ユニット及び/又は上記システムを使用する場合の利点のいくつかは以下のようなものとすることができる:
・医療スタッフ及び患者の保護の改善、
・病院内の全体換気における漏れ及び機能不全による空気感染及び院内感染の危険性の低減、
・人の健康改善、
・エネルギー消費の低減、
初期投資コストの低減(例えば隔離室内に占める者が2人以上)
・メンテナンスコストの低下。
【0137】
参考文献
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【0138】
図の詳細な説明
図1は、濾過/換気ユニットの一実施形態を示す。患者からの呼気は、ファン1によって作り出される負圧により濾過/換気ユニットにその側面から入る。その空気は、微生物又はウイルスの増殖能力を殺し、又は阻害する手段2、例えばフィルター、ここではHEPAフィルターを通して方向付けられる。この空気が、電磁波、例えば、ここでは紫外線殺菌照射(UVGI)で示されている紫外線光を発するライトを発することが可能な手段3を通る。ストレートナー4又はスタビライザーが、ユニットの形状を確保するように設置されている。ガイドベーン5は、ここでは真上方向で示されている特定方向に出口空気をガイドする。ダンパー6がユニットのスロットに出入りする空気の量を調整することができる。図3の可能性4に示すように、ドッキング7を用いて濾過/換気ユニットを排気システムに又は建物の外側に接続することができる。
【0139】
図2は、濾過/換気ユニットの正面図及び覆い蓋が取り外された状態の正面図を示す。ファン1がユニットを通る空気を方向付ける。、微生物又はウイルスの増殖能力を殺すか又は阻害する手段2、例えばHEPAフィルターが空気を濾過する。電磁波を発することが可能な手段3、例えばUVGIライトもまた、有害な生物又は粒子の排除に関与する。
【0140】
図3は、濾過/換気ユニットから排出される出口空気の方向についての様々な可能性を示す。可能性1では、空気が真上に方向付けられ、ジェットの広がりを変える可能性がある。可能性2は、排出開口の幅を変えることが可能であることを示す。可能性3は、排出角度を変えることが可能であることを示す。可能性4では、排気が排気システムに又は建物/室の外側に方向付けられ、室内に戻って再循環するのに用いられる。
【0141】
図4は、a)天井に配置されている2つの空気出口及び1つの空気入口を用いての混合換気のみ、及びb)患者の頭部のキャビネット内に設置された浄化(濾過)ユニットとの混合換気を用いた、病室の概略図を示す。この例では、ベッドの左にある浄化(濾過)ユニットは、患者の方へ向いている吸引スロット、及び出口空気用の水平スロットを有する。b)におけるベッドは、両方の側部パネルとベッドの端(個体の頭の後ろ)のパネルとに、本明細書の他の所に記載されるような濾過/換気ユニットを有することができる。ここに記載の濾過/換気ユニットを備えた2つの側部パネルのみを有してベッドの端のパネルはないものとすることも可能である。パネルが濾過/換気ユニット自体であってもよい。
【0142】
図5は、感染病棟のための最低限の換気要件である、12ACH(1時間あたりの換気回数)での混合換気のみを用いた室(図4aに示す)内での、別のベッドにいる患者に向けられた1人の患者による咳で出された空気の分布のコンピューターシミュレーション(CFD)を示す。
【0143】
図6は、患者の頭に設置され、6ACH(1時間あたりの換気回数)の混合換気を有するそれぞれ2つの濾過/換気ユニットを有する1つの室(図4aに示す)内での、別の患者に向けられた1人の患者による咳で出された空気の分布のコンピューターシミュレーション(CFD)を示す。
【0144】
図7は、6つのベッドとニッチ壁に組み入れられた浄化ボックスとが示されている隔離病棟の概観を示す。浄化ボックスは、本明細書の他の所に記載されるようにベッドに直接取り付けることもできる。
【0145】
図8は、患者の頭の両側に設置されている浄化ユニットを用いての頭の周りの空気排出方向の幾つかの可能性を示す。状況a)では、空気が頭の後ろに向けて方向付けられそして頭の前から排気されると同時に患者の頭の上に水平方向のエアカーテンが作り出される。この状況は、垂直方向のエアカーテン及び/又は状況d)、e)又はg)にも示すような対角線方向のエアカーテンと組み合わせることができる。状況b)では、空気は患者の頭の両側から排気され、浄化ユニットから外へ垂直方向かつ上方にただし空気流の対角線に方向付けられる。状況c)では、空気は患者の頭の両側から排気され、浄化ユニットから外へ垂直方向に方向付けられて患者の頭の両側に垂直方向のエアカーテンを作り出す。状況d)では、空気は患者の頭の両側から排気され、浄化ユニットから外へ上方にただし空気流の対角線に方向付けられる。空気はボックスの頂部から浄化ユニットの外へ方向付けられる。状況e)では、空気は患者の頭の両側から排気され、浄化ユニットから外へ垂直方向かつ互いに向かって水平方向に、横たわっている患者の頭の上に方向付けられる。状況f)では、空気は患者の頭の両側から排気され、浄化ユニットから外へ上方にただし空気流の対角線に方向付けられる。空気は、患者の頭に面するボックスの側面の上部から浄化ユニットの外へ方向付けられる。状況g)では、空気は患者の頭の両側から排気され、浄化ユニットから外へ上方にただし空気流の対角線に方向付けられる。空気は、ボックスの頂部から、かつ患者の頭に面するボックスの側面の上部から浄化ユニットの外へ方向付けられる。状況h)では、ベッドに取り付けられた2つの濾過/換気ユニットが接続されて再循環空気流を生成する。状況i)では、ベッドに取り付けられた2つのユニットを背景換気システムの排気口に接続することができる場合の設置を示す。この図は、患者からの空気を排気すること及び濾過/換気ユニットの外へ空気を方向付けることに関する可能性の幾つかを示しているにすぎず、濾過/換気ユニットに出入りする空気の方向に関する他の可能性も存在する。
【0146】
図9は、実験時のベッドの構成を示す。この図は実施例2において更に説明する。
【0147】
図10は、2人の患者と1人の医者がいる、実験時のベッドの構成を示す。浄化装置(濾過/換気ユニット)はない。この図は実施例2において更に説明する。
【0148】
図11は、2人の患者と1人の医者がいる、実験時のベッドの構成を示す。浄化装置(濾過/換気ユニット)が患者の頭の隣にある。この図は実施例2において更に説明する。
【0149】
図12は、2人の患者がいる、実験時のベッドの構成を示す。浄化装置(濾過/換気ユニット)はない。この図は実施例2において更に説明する。
【0150】
図13は、2人の患者がいる、実験時のベッドの構成を示す。浄化装置(濾過/換気ユニット)が患者の頭の隣にある。この図は実施例2において更に説明する。
【0151】
図14は、患者の頭に浄化装置がある状態及びない状態での、咳で出された病原体を含んでいる空気の医者(図10及び図11)への曝露を示す。この図は、浄化ユニットが一体化したベッドを用いた状態及び用いない状態でのベッドの脇に立っている場合のサーマルマネキンによって似せた医者の口元での濃度を示す。サーマルマネキンは、ベッドに横たわっている病人をシミュレートする被加熱ダミーと一体化した咳発生機の開口に向かい合っている。この結果は実施例2において更に説明する。
【0152】
図15は、患者の頭に浄化装置がある状態及びない状態での、咳で出された病原体を含む空気の患者(図12及び図13)の一方への曝露を示す。この図は、咳をしている患者のベッドのそばのベッドにいる患者をシミュレートしたサーマルマネキンの口元でのCO2の濃度を示す。結果は、浄化ユニットを一体化したベッドを用いた状態及び用いない状態で得た。サーマルマネキンは、ベッドに横たわっている病人をシミュレートする被加熱ダミーと一体化した咳発生機の開口に向かい合っている。この結果は実施例2において更に説明する。
【0153】
図16は、歯科用椅子への応用を示す。
濾過/換気ユニット1は、椅子2に座っている個体/患者の頭の周りに設置される。分配ヘッド3が患者の頭の両側に設置されて、座っている/横たわっている患者の頭上に空気流を作り出すことを可能にする、すなわち、一方の分配ヘッドは空気を吸い込むために用いられ、もう一方の分配ヘッドは浄化された空気を出すために用いられる。空気は椅子の周りに設置されたチューブ内で浄化される。チューブは、存在する微生物又はウイルスの増殖能力を殺すか又は阻害する手段と、本明細書の他の所に記載されるように、微生物又はウイルスに殺菌効果のある或る波長の電磁波を発することが可能な手段とを有することができる。空気流の方向は逆にすることができる。分配ヘッド3にある装置の端は、患者のサイズに応じて調整可能であるように伸縮式に作ることができる。
【0154】
図17は、濾過/換気ユニットの外寸を示す。以下の寸法は、ここに記載の濾過/換気ユニットの一実施形態の例である:長さ60cm、高さ60cm、幅14.5cm。第1の空気スロット、すなわち吸引側のスロットは長さが50cmかつ高さが13.5cmであるものとして示されている。第1の空気スロットの最も下の部分がボックス(濾過/換気ユニット)の頂部から19.5cmのところに設置されている。第2の空気スロットは長さが53.5cmかつ幅が5cmであるとして示されている。しかしながら、ボックス及び空気スロットはその他の寸法も可能である。また、空気スロットはこの他の場所及び数も可能である。
【0155】
図18は、ベッドに横たわっている個体(患者)の頭の両側に濾過/換気ユニットを備えたベッドを示す。この例では、エアカーテン(天井に向けて排出される空気)は清浄空気供給源から作られるが、その一方で濾過/換気ユニット(複数可)に入る空気は排気システムに導かれ、したがって、その室/場所から空気を除去する。濾過/換気ユニットによって排気システムに導かれる空気の量は、エアカーテンを作り出すのに濾過/換気ユニットの中に方向付けられる清浄な空気の量と同様であることが示される。図8に示すa〜hの状況のいずれも図18に示す状況と組み合わせることができる。そのような状況では、エアカーテンを作り出す空気は好ましくは、外部供給源からの清浄な空気であり、第2の空気スロットを通して濾過/換気ユニットに入る空気は排気システムに導かれ、換気チャネル又はチューブを通ってその室/場所から除去される。
【0156】
図19は、換気浄化ユニットが一体化した病院ベッド(HBIVCU)5として濾過/換気ユニットを有する室内での空気分布を示す。病気の患者1及び3がベッドに横たわっており、全体換気の排気口4に向かって上方に咳又は呼吸をしている。ある個体、例えば医者2が、HBIVCU5によって作られるエアカーテンによる清浄なゾーン内にシールされ/保護されている。矢印は空気の方向を表す。濾過/換気ユニットは本明細書の他の所に記載されるようなものとすることができる。
【0157】
図20は、換気浄化ユニットが一体化した病院ベッド(HBIVCU)5として濾過/換気ユニットを有する室内での空気分布を示す。病気の患者1及び3がベッドに横たわっており、横向きに咳又は呼吸をしている。ある個体、例えば医者2は、HBIVCU5によって作られるエアカーテンによる清浄なゾーン内にシールされ/保護されている。汚染空気は浄化され、天井に向かって上方へ全体換気排気口4に方向付けられる。矢印は空気の方向を表す。濾過/換気ユニットは本明細書の他の所に記載されるようなものとすることができる。
【0158】
図21は、本明細書の他の所に記載されるような濾過/換気ユニット/ボックスをベッドに、例えば患者のベッドに取り付けることができる方法を示す。雄型−雌型要素として取り付けストラップ(取り付け手段)が示されている。雌型要素はボックス上に示されており、雄型要素はベッド側のリムに示されているが、逆も可能である。接続は滑動によって行われる。他の締結手段も可能である。
【0159】
図22は、ホイール及び脚の付いた、起立配置された濾過/換気ユニットを示す。ホイールは安定した姿勢を確保するためにブレーキ付きとすることができ、脚は病院ベッドの高さにボックスの入口エリアを調整するように又は別の状況、例えば個体が椅子に座っている場合に関して高さを調整するように、伸縮式とすることができる。
【0160】
図23は、食品及び飲料産業における濾過/換気ユニットの応用を示す。濾過/換気ユニット1が、食品又は飲料のためのボトル又はパック/容器を搬送するコンベヤーベルト2の両側に設けられている。濾過/換気ユニット1は、飲料/食品の容器3の周りに、これらが飲料又は食品を充填される前、これらがインジェクター4を通じて食品又は飲料を充填されている間、かつ/又は少なくともボトル/容器/パックが密封されるまで清浄な/浄化されたゾーンを作ることができる。
【0161】
図24は、空気を吸い込む排気口の位置近くの空気分布を示す。排気口によって吸い込まれる空気の等速度線が円形に諸スロット入口、すなわち、(a)シャープなエッジの開口、(b)フランジ付き開口、及び(c)二次元開口について示されている。矢印は空気移動を表す。円形模様は、排気口の入口における速度に関して空気が減速していることで示されている。
【0162】
図25は、3回/時、6回/時及び12回/時の1時間あたりの換気回数(ACH)で換気されたモックアップ病室において、「咳をしている患者」の直前0.55mのところに立っている「医者」の口元での、CO2濃度の経時変化を示す。濾過/換気ユニットはない。例では構成は概ね記載されている。12ACHであっても、6400ppmのCO2が医者の口元で測定された。
【0163】
図26は、2人の患者の横に立って患者を診ている「医者」の口元での、CO2濃度の経時変化を示す。咳をしている患者が一方の側に横たわっており、別の患者に対して咳をしている。医者が患者に向かい合って/患者を診ている場合と比較した場合、医者が横に立っている場合にはるかに少ないCO2濃度が測定された。濾過/換気ユニットはない。その構成は概ね例に記載されている。
【0164】
図27は、一方の側に横たわっており、第2のベッドに横たわっている「被曝露患者」に向かって咳をしている患者に向かい合っている、「被曝露患者」の口元での、CO2濃度の経時変化を示す。濾過/換気ユニットはない。結果は、3回/時、6回/時及び12回/時の3つの異なる1時間あたりの換気回数(ACH)で得た。「被曝露患者」では、1800〜5600ppmの最大CO2濃度が測定された。その構成は概ね例に記載されている。
【0165】
図28は、a)患者が医者に向かい合って横たわっている場合の、及びb)患者が仰向けに横たわって、上方へ咳をしている場合の、咳をしている患者から0.55mmの距離に立っている「医者」の口元での、並びにc)第2のベッドにいる被曝露患者の口元での、CO2濃度の経時変化を示す。結果は、濾過/換気ユニット(HBIVCU)を用いて排出速度0m/秒(HBIVCUが妨げとなっている)、1.8m/秒及び2.8m/秒で、及び3回/時(1時間あたりの換気回数(ACH))で得た。濾過/換気ユニット(HBIVCU)を用いない参照例も示す。その構成は概ね例に記載されている。
【0166】
図29は、咳をしている患者から0.55mの距離に立っている「医者」の口元での、及び第2のベッドにいる被曝露患者の口元での、CO2濃度の経時変化を示す。咳をしている患者は横向きに横たわっており、医者及び別の患者に向かい合ている。結果は、濾過/換気ユニット(HBIVCU)を用いて1.4m/秒の排出速度でかつ6回/時のACHで得た。濾過/換気ユニット(HBIVCU)を用いず、かつ6回/時のACHの参照例も示す。その構成は概ね例に記載されている。
【0167】
図30は、実施例3からの結果を示す。呼吸をしている病気の患者から0.55mの距離に立っており、かつ該患者に向かい合っている場合の「医者」の呼吸ゾーンでの換気効果を示す。連続呼気及び過渡呼吸(2.5秒の吸気、2.5秒の呼気及び1秒の中断)の2つの呼吸モードでの換気効果が、異なる背景換気回数で示されている。
【0168】
図31は、実施例3からの結果を示す。感染患者から1.3mの距離のベッドに横たわっており、かつ該感染患者に向かい合っている場合の第2の/「被曝露」患者の呼吸ゾーンでの換気効果を示す。連続呼気及び過渡呼吸(2.5秒の吸気、2.5秒の呼気及び1秒の中断)の2つの呼吸モードでの換気効果が、異なる背景換気回数で示されている。
【0169】
図32は、実施例3からの結果を示す。呼吸している病気の患者から0.55mの距離に立っており、かつ該病気の患者に向かい合っている場合の「医者」の呼吸ゾーンでの換気効果を示す。結果は、ベッドの両側に設置された濾過/換気ユニット(HBIVCU)を用いて得た。連続呼気及び過渡呼吸(2.5秒の吸気、2.5秒の呼気及び1秒の中断)の2つの呼吸モードでの換気効果が、異なる背景換気回数で示されている。
【0170】
図33は、実施例3からの結果を示す。向かい合っている場合の第2の「被曝露」患者の呼吸ゾーンでの換気効果を示す。結果は、ベッドの両側に設置された濾過/換気ユニット(HBIVCU)を用いて得た。連続呼気及び過渡呼吸(2.5秒の吸気、2.5秒の呼気及び1秒の中断)の2つの呼吸モードでの換気効果が、異なる背景換気回数で示されている。
【実施例】
【0171】
咳をすることは呼吸器系疾患の最も明らかな症状であり、ゆえに、実験は咳をしている者のシミュレーション、すなわち「咳をしているダミー」を用いて行った。咳をすることは特徴的なボルテックスリングによってもたらされる衝撃ジェットであり、これは周囲空気の中に散らばる前に非常に遠くに突き抜ける可能性がある。咳をしたときのピーク速度は6m/秒から30m/秒まで様々である。咳は、1回の咳あたり5.2個/cm3の濃度で最大2085個の飛沫を含んでいる可能性がある。咳は、その高い初期運動量により、咳をしている疾患個体から生じる空気浮遊粒子にとって室内での支配的な搬送機構の1つとなる。
呼吸は生きていることの自然な作用であり、すなわち、通常のあまり動かない活動での呼吸により毎分6リットルの空気が人肺を通っており、このため、この自然の肺の作用は人体の周りの空気流分布にとって非常に重要なものとなる。口及び鼻からの呼気は双方とも、非常に高い初期運動量を有し、人体を囲む自由対流層を突き抜けることができる。ゆえに、呼気から生じる汚染物質及び粒子状物質は全て体から押し出され、ほんの僅かな量だけが再吸気されるか又は対流層によって引き戻される。飛沫及びサブミクロン粒子が生じる最も一般的な道筋の1つは、呼気によるものである。人が病気である場合、この粒子状物質には病原体が含まれている。
【0172】
実施例1
この実施例は、図4a及び図4bに示されるような構成を用いて得た結果、そして図5及び図6に示すその結果を記載する。
【0173】
本発明のこの実施例では、ベッド一体化型濾過/換気ユニットは、病院ベッドのサイドヘッドボード内に組み入れられており、濾過/換気ユニットは患者の肺活動(呼吸、咳、くしゃみ等)からの空気を排気し、該空気を病原体や他の健康有害物質(毒素)の存在から浄化し、次いで、空気を水平スロットを通して垂直方向に、かつ全体換気によって排気する天井に向けて高初期速度で排出した。システムは、図4に示すような全体換気に連動して稼動するように設計することができる。
【0174】
実験の濾過/換気ユニットを、ファン(低エネルギー消費及び低ノイズレベル)がそれぞれのユニットのサイドエレメント内に設置されている2つの直線ユニットから構成した。患者から息で吐かれた/咳で出された空気を、左右のキャビネット(ベッドにいる患者の頭の隣の)に配置された2つの側面吸引開口を通して吸引した。この空気を清浄にし、同じボードの頂部に配置されている水平スロットから上方に排出した。
【0175】
病原体及び健康有害物質を捕捉してそれらを放出及びパージするために、UV−C発光ダイオード/ライトと、HEPAフィルターとからなる浄化ユニットを、サイドキャビネット(ユニット)内に配置した。これは、小さなフィルターの使用を実施するが、このことは交換が容易でもあることで病原体の放出の危険性を減らす(フィルターはそれ自体が感染隔離ユニット内にある)。
【0176】
空気を浄化後に高速(例えば約3m/秒)で排気し/上方に方向付けた。濾過/換気ユニットの効率を高めるために、吸引エリア(入口スロット)を室の排出オリフィス(出口スロット)よりも大きくし、より大きなエリアを覆うとともにUV−Cライトが1回の通過(およそ0.5m/秒)でより効果的であるように低吸引速度も有することとした。UV−B/Cライトの効率を更に高めるために、サイドキャビネットの内側を高反射性面のライナーで覆うことができる。
【0177】
濾過/換気ユニットの性能効率
この実施例では、濾過/換気ユニットはコンピューターシミュレーション、すなわち計算流体力学(CFD)によって検討した。1人の患者が22m/秒の速度で「連続的に咳をする」ものとした。CFDシミュレーションは、基準のレイノルズ数k−εモデル(Launder and Spalding, 1974)及び陰的SIMPLEアルゴリズム(Patankar, 1980)を採用した。その上、一次風上法(UD)による有限体積法を支配方程式の離散化に採用した。市販のCFD用ソフトウェア、すなわちSTARCDによって行ったシミュレーションの結果は、提案された濾過/換気ユニットは感染隔離ユニットでの混合換気の従来の換気実施に勝って有利であることを示した。このシミュレーション結果は、1時間あたり6回のみの換気(図4b)で用いた混合換気に関連した濾過/換気ユニットは、呼吸活動(呼吸、咳)によりベッドにいる患者により生じた病原体のバックグラウンド濃度を下げることができるであろうことを、1時間あたり12回の換気(病院内の隔離室に関する現在の基準及びガイドラインの最低要件である)で作動する混合換気のみ(図4a)と実質的に比較して、明らかにした。
【0178】
図5及び図6は、2人の患者のいる室について得られたシミュレーション結果の一部を示す。1人の横たわっている患者から咳で出された空気の、室への及び別の患者への広がりが図に示されている。異なる等高線とグレースケールを用いて、室内における咳で出された空気の濃度(数を100で乗算した場合のパーセント)を明らかにした。室内の2つの平面における咳で出された空気の広がりが示されている:すなわち、咳をしている患者の頭の場所の垂直面(図5a及び図6aでは0.2×と記載)及び咳をしている患者の口の場所の水平面(図5b及び図6bでは0.66zと記載)。結果の比較は、提案した濾過/換気ユニットを備えた室内で咳で出された空気の広がりにおいて劇的な低減、すなわち疾病の空気感染の危険性の劇的な低減を示している。このシミュレーションは、濾過/換気ユニットを全く用いなければ、患者の咳で出された空気中に存在する病原体及び他の健康有害物質の8%が、別の患者の頭の周りのエリアを通過する可能性があることを示す。濾過/換気ユニットを使用した場合、咳で出された空気中に存在する病原体及び他の健康有害物質の2%未満、すなわち4分の1しか他方の患者を通らないであろう。
【0179】
実施例2
一組の実験を行って、装置を組み入れたベッドの効率を立証した。測定は、患者のいる2つのベッドを有する病院隔離室をシミュレートした人工気象室で開始した(図9)。天井に設置された1つの矩形の供給ディフューザー及び2つの矩形の排気ユニットによる混合換気を用いて室を換気した。給気ディフューザーは天井の中央に設置されており、一方2つの排気口は各ベッドの上及び各ダミー(患者)の頭上に1つずつ設置した。
【0180】
図9は、実験時の構成を示す。咳をしているダミー1が医者(サーマルマネキン)2に向かい合っており、「被曝露」ダミー3が第2のベッドにいる。
【0181】
2つのシナリオ、すなわち、2人の患者及び1人の医者をシミュレートしたシナリオ1及び2人の患者のみをシミュレートしたシナリオ2を試験した。シナリオ1の実験中、医者は、平均的スカンジナビア人婦人のような体のサイズ及び体形を有するサーマルマネキンによってシミュレートした。2人の患者は人体の体形によく似た体形を有する2体のサーマルダミーによってシミュレートした。双方のダミーは、各ベッドに1人ずつ横たえた。ダミーのうちの一方には、咳を発生せるのに用いる咳発生機を装備した。発生させた咳(直径21mmの「口」の開口及び2.5L/咳の咳量)は100%CO2ガスから構成され、これを用いて咳の結果としてのエアロゾル放出をシミュレートした(2μmよりも小さなエアロゾルが空気浮遊しているものとし、かつトレーサーガスとして挙動するものとみなす)。マネキン及びダミーによって発生される熱は、低活動レベルの者が発生する熱と同じにした。シナリオ2の実験中、サーマルマネキンを用いて、被曝露患者をシミュレートした。
【0182】
各ベッドに2つずつ、各ベッドに横たわっている「患者」の頭の場所で、ベッドの両側に設置された、4つの濾過/換気ユニットを用いて、咳で出された空気を排出することに関してこれらのユニットの効率を試験した。実験のため、4つのベッドの一体型病院ユニット(濾過/換気ユニット)を別個の供給・排気システムに接続したが、実際には、それらは、それらの内部に設置された一組のHEPA/ULPAフィルター及びUVGIユニットを介して室内空気を再循環及び浄化することができる。これにより室内空気の再循環及び更なる利用が可能となり、省エネが実現する。これらのユニットはまた、全体排気システムにも接続することもできる。
【0183】
浄化ユニットを組み入れたベッドが隔離室内で病人を介護する医療スタッフに対する感染の危険性を低減するのを役立つかどうかを確認するために、医者を表しているサーマルマネキンの口元でCO2のレベルを測定した(シナリオ1、図10)。このため、サールマネキンを、「咳をしている」ダミーのいるベッドの近くに配置した。この場合、ダミーは医者に向い合わせた。咳発生機の口をシミュレートした開口からマネキンのボディ面との水平距離を0.55mに一定に保った。シナリオ2での測定中、サーマルマネキンは、「咳をしている患者」、すなわち咳発生機を有するダミーの隣のベッドに横たわっている患者をシミュレートした(図12)。この場合、咳をしているダミー及びサーマルマネキンは互いに向い合わせた。サーマルマネキン(「被曝露患者」)の口を咳発生機の放出開口に、すなわち放出されるジェットの軸上に一直線に並べた。2つのベッド間の距離は1.3mに保った。「医者」はこの室内にいないものとした。その目的は、特に、室内の2人の患者について感染症の段階が異なっている、すなわち、1人がほぼ快復しておりそしてもう一人が潜伏期である場合に、咳で出されたジェットが隔離室/占拠スペースを突き抜けることを阻止するとともに再汚染から第2の患者を保護するための濾過/換気ユニットの効率を検討することであった。この後者の場合、多くの人が疾病の進行の異なる段階で互いに密接状態に置かれるであろう流行病又はさらには非常に広域に及ぶ流行病の場合、その状況をより厳密に表しているであろう。
【0184】
図10は、シナリオ1の際の構成、すなわち、2人の患者(咳をしている患者1及び第2の患者3)並びに咳をしている患者1の近くの1人の医者2を示す。医者は咳で出された空気に曝露されている。4はTV供給ディフューザーであり、5はTV排気ディフューザーである。
【0185】
図11は、シナリオ1、すなわち、2人の患者(咳をしている患者1及び第2の患者3)並びに咳をしている患者1の近くの1人の医者2を示す。医者は咳で出された空気から浄化装置6によって保護されている。4はTV供給ディフューザーであり、5はTV排気ディフューザーである。
【0186】
図12は、シナリオ2の際の構成、すなわちa)室内に2人の患者だけを示す。咳をしている患者1及び「被曝露」患者2は互いに向かい合っている。4はTV供給ディフューザーであり、5はTV排気ディフューザーである。
【0187】
図13は、室内に2人の患者だけがいるシナリオ2の構成を示す。咳をしている患者1及び「被曝露」患者2は浄化装置によって保護される。「被曝露」患者2は浄化装置6によって咳で出された空気から保護されている。4はTV供給ディフューザーであり、5はTV排気ディフューザーである。
【0188】
浄化装置(濾過/換気ユニット)を用いて得られた結果を、室を3ACH又は6ACH又は12ACHで換気した場合(この場合、12ACHは感染病棟の換気に対して現在の基準(ASHRAE 170−2008)において推奨されている最小限のACH回数である)、浄化ユニットを用いない参照例と比較した。室温は22℃に保った。12ACHは184L/秒±3L/秒に相当し、空気の排気量は195L/秒に設定し、これにより、室内を周囲に対して1.6Paの圧力下とした。浄化ユニットを用いての測定は、同じ1.6Paの圧力下とするように、供給される空気について室を3ACH(46L/秒±3L/秒)で換気するとともに排気が55L/秒である場合で行った。
【0189】
図14は、シナリオ1、すなわち、2つのダミーがベッドにおり、サーマルマネキンが咳をしている「患者」のベッドの隣に立っている医者を表している場合での測定から得た結果を示している。参照例では「医者」は咳で出された病原体を含んでいる空気(12ACHで示されている点刻線)に大いに曝露されていることがはっきりと分かり、すなわち、マネキンの口元で測定されたCO2の濃度は、CO2のバックグラウンド濃度よりも8倍高い。しかしながら、浄化ユニットが「咳をしている患者」のベッドの頭側の傍に設置され、1.4m/秒の出口速度で動作する場合、口元で測定されたCO2の濃度は、バックグラウンドにおけるのと同じであり、すなわち、咳で出された空気は全く医者にまで至らず(3ACHで示された実線及び病院ボックス)、すなわち、咳で出された空気はベッドに一体化した浄化ユニットによって排気された(図14)。
【0190】
浄化装置を用いての改善はまた、咳をしている患者の隣のベッドに患者が横たわっている場合に、すなわち、サーマルマネキンが隣のベッドに置かれている場合の、シナリオ2においても観察された(図15)。しかしながら、参照例(シナリオ2)では、横たわっているサーマルマネキンが吸い込んだ空気中のCO2の濃度は、立っている「医者」のいる場合(シナリオ1)の2分の1と測定された(12ACHの場合で示す点刻線)。これは、2つのベッド間の距離が比較的長いため、咳で出された空気ジェットが、横たわっているサーマルマネキンの呼吸ゾーンに達する時間までに部分的に希釈されたからである。患者が吸い込んだ空気中のCO2濃度は依然として非常に高かった。感染の危険性/毒性の高い特定の疾病(結核、SARS、コロナウイルス等)の場合に、汚染又は再汚染の原因となる可能性があることが予期され得る。また、病気の流行/大流行の場合では、人々が同じ室内に入れられるときに、或る疾病の幾つかの良性形態の類似の徴候により誤診される健康な人でさえ空気による交差感染が予期され得る(SARSが発生した際の香港において、SARSに感染していないがSARSの徴候と類似の徴候があった人々は入院させられ、SARS患者と同じ室に入れられた)。図の結果から分かるように(3ACHで示す実線及び病院ボックス)、浄化装置の使用は効率的であり、咳で出された空気は「被曝露患者」によってほとんど全く吸い込まれず、サーマルマネキンの口元で測定されたCO2濃度はこの気体のバックグラウンドレベルのままであった。
【0191】
測定の結果は、隔離病棟の病人の呼吸活動により放出される空気浮遊病原体を効果的に捕捉及び排気する際の浄化装置の大きな可能性を証明している。これは、医療従事者及び他の患者に対する接触感染症の空気感染の危険性の低減をもたらす。この装置の性能は、今日推奨されている12ACHの換気に比して、全体換気(3ACHのみ)によって供給される清浄な空気の量が少ないことにより実現される確かな省エネにつながる。初期投資コストの低減(個室の代わりに多床隔離室を使用、ダクト用スペースの低減、より小型のHVACユニット等)により、更なる節約も達成することができる。
【0192】
ここに記載の換気ユニットの効果を示す更なる実験は、デンマーク工科大学の博士論文においてZhecho Bolashikovが提示している。この論文は試験を行う際の条件を更に説明している。この論文の結論を下記に挙げる。
【0193】
咳をしている間に発生した病原体に起因する、空気による交差感染の危険性が、ベッドに横たわっている2人の患者と立っている1人の医者がいる病室の実物大モックアップにおいて検討された。
以下の結論を、ここに記載の換気ユニットを使用せずに行った実験から描くことができる:
・病室の背景換気によって供給される流量にかかわらず、咳をしている患者の極近くに立っている医療スタッフについて、空気による交差感染の高い危険性がある;
・背景換気回数を増やすことにより、咳で出された空気の下流の或る特定の距離まで、占めている場所での交差感染の危険性が増す可能性がある。これは、咳で出された空気が高速であることにより、背景換気システムによって作り出された境界層が剥離する可能性があり、高濃度の病原体を含む咳で出された流れに人が曝露されたままとなる可能性があるからである。この距離以降は、背景換気の高い流量により、咳で出された流れからの空気の希釈が良好となり、交差感染の危険性が低くなる。
・同様の背景換気流量で行った実験と比較した場合、病人と医者/看護師との間の距離が長くなると、医者が咳で出された汚染空気に曝露される危険性は減る。危険性の低減は空気の希釈に起因する;
・咳をしている患者の姿勢及び医者の位置が重要な因子である、すなわち、咳をした患者に医者が向かい合っている場合に最大限の曝露が生じる。咳をしている者の横に立っていれば曝露の危険性は大幅に減る。咳で出された空気への直接曝露の危険性は、咳をしている者が仰向けに横たわっている場合に最小となる。
・現在の基準及びガイドラインにおいて推奨されている12回/時の換気回数では、空気による交差感染の危険性は下がらない。したがって、病院内での現在の空気分配又は換気方法は、空気感染病の広がりを低減させるのに効率的ではない。
【0194】
病室内で咳をしている病気の患者のベッド付近での局部的な換気によって空気による交差感染の危険性を下げるため、ここに記載の換気ユニットを用いて同様の実験を行った場合、以下の結論を下すことができる:
・換気ユニットの使用は、ベッドに横たわっている患者から咳で出された空気の、近くに立っているその場にいる者への曝露に対する保護手段として働く;
・換気ユニットの性能は、換気ユニットの局部的な吸引が十分に強力なものであるか又は換気ユニットが汚染源の十分に近くにすなわち患者の頭の十分に近くに設置されていれば、背景換気流の回数に影響を受けない;
・咳で出された空気に関して、感染病棟の換気のために今日用いられているような12回/時の背景換気回数を大幅に下げることができ、換気ユニットを用いてエアカーテンを作り出す場合、空気による交差感染の危険性を減らすことができる。この方策は省エネをもたらすこともできる。
【0195】
実施例3
呼吸の場合に息で吐かれた感染空気を排除するベッドに組み込まれた濾過/換気ユニットの能力を実証するために一組の実験を行った。実験の構成は、実施例2(図9)に記載されているものと非常によく似たものとした。この場合では、2体のサーマルマネキンを使用し、すなわち、医者に似せた1体と、疾病を拡散させる病気の患者を模倣した第2の1体とした。
【0196】
図9は実験時の構成を示す。咳をしているダミー1を、医者(第2のサーマルマネキン)2と第2のベッドにいる「被曝露」ダミー3に向かい合って呼吸をしているサーマルマネキンに変えた。
【0197】
2つのシナリオ、すなわち、シナリオ1は2人の患者と1人の医者がおり、シナリオ2は室内に2人の患者しかいないシナリオを試験した。シナリオ1(図10)の実験中、医者2は現実的な体形を有するサーマルマネキンによってシミュレートした。感染患者を第2の呼吸しているサーマルマネキン1と入れ替えた。第2の患者は、単純な体形であるが人体の体形に近いサーマルダミー3とした。「患者」はどちらもベッドに横たわっていた。感染患者をシミュレートしているサーマルマネキンは、人が息で吐いた実際の空気と同じ条件で口を通して呼気を加熱し、供給する人工肺を設けた(Melikov 2004, Melikov and Kaczmarczyk 2007)。人工肺を用いて安静時の平均的な人の呼吸サイクル、すなわち1秒当たり6Lである、2.5秒の吸気、2.5秒の呼気及び1秒の中断(Hyldgaard 1998)をシミュレートした。息で吐かれた空気をR134aトレーサーガス(フレロン)でマーキングして、呼吸の結果としてエアロゾル放出を模した。(以下に明記するよう)様々な状況下で行った実験も病原体への最大の曝露のケースを検討するために、連続呼気を用いて繰り返し、ヘルスケアワーカー又は他の患者の口元での一回呼気量のピークを試験した。濾過/換気ユニットの設置及びそれらの動作は実施例2に記載されているものと同じとした。濾過/換気ユニットが医者(他のヘルスケアワーカーとすることもできる)に対する感染の危険性を減らすのを助けるか否かを確認するために、トレーサーガス濃度をサーマルマネキン2(シナリオ1(図10))の口元で測定した。医者を感染患者(マネキン1)に向い合わせて口の開口から0.55mのところに配置した。
【0198】
シナリオ2(図11)での測定中、医者をシミュレートするためにシナリオ1で使用されたサーマルマネキンを用いて、第2のベッドに横たわっている第2の/被曝露患者を模した。2つのベッド間の距離は1.3mに一定に保った。2体のマネキンを各自の口をそろえて向い合わせ横たえて置いた。「医者」は室内にいないものとした。これらの実験の目的は、2人の患者が異なる疾病段階にある、すなわち1人が快復に近く、1人が依然として感染しているという条件で、病原体を含んでいる呼気の病室への広がり及び拡散を阻止することにおいて、したがって、他のその場にいる者/患者を再感染から保護するための濾過/換気ユニットの効果を示すことであった。このことは、疾病の流行又はさらには大流行の場合に関連し、多くの人々が異なる疾病進行段階でごく接近して一緒に置かれ、一部の者は類似の徴候により誤診される可能性さえもある。
【0199】
図10は、シナリオ1の際の構成:呼吸をしているサーマルマネキン1、すなわち感染患者1、第2の患者3、及びサーマルマネキン2、すなわち呼吸をしているマネキン1の近くの「医者」を示す。医者は呼気に曝露されている。背景換気給気ディフューザー4及び排気ディフューザー5もまたこの図に示されている。
【0200】
図11は、シナリオ1:呼吸しているサーマルマネキン1、すなわち感染患者、第2の患者3、及び呼吸しているマネキン1の近くの医者2を示す。この場合では、浄化装置6が感染患者のベッドに設置されている。背景換気給気ディフューザー4及び排気ディフューザー5もまたこの図に示されている。
【0201】
図12は、室内に2人の者だけがいる場合のシナリオ2の際の構成:呼吸をしているサーマルマネキン1、すなわち感染患者、及びサーマルマネキン2、すなわち第2のベッドに横たわっている「被曝露」患者を示す。2体のマネキンは互いに向かい合っている。背景換気給気ディフューザー4及び排気ディフューザー5もまたこの図に示されている。
【0202】
図13は、室内に2人の患者だけがいるシナリオ2の設定を示す。呼吸をしている患者1及び「被曝露」患者2は浄化装置によって保護した。「被曝露」患者2は咳で出された空気から浄化装置6によって保護されている。4はTV供給ディフューザーであり、5はTV排気ディフューザーである。
【0203】
濾過/換気ユニットの性能を評価するために、換気効果を計算した(CEN CR 1752−1998)。これは、呼気中の汚染物質濃度と測定地点での汚染物質濃度との間の関係を評価する。
【0204】

【数1】

換気効果は、室内の空気分布及びスペース内の汚染源の位置に依存する。空気と汚染物質とが完全に混合する場合、換気効果は1である。測定地点「i」での空気の質が排気口におけるよりも高い(地点「i」で測定された汚染レベルがより低い)場合、その効果は1よりも高い。1よりも低い換気効果は、汚染物質がそのスペースから効果的に排出されないことを意味する。通常、換気効果は0.4(混合換気)〜1.4(置換換気)(CEN CR 1752−1998)の範囲である。
【0205】
濾過/浄化ユニットを用いて得た、「医者」(シナリオ1)の口元及び「第2の被曝露患者」の口元での換気効果を、濾過/換気ユニットを備えていないベッドを用いた場合の参照例と比較した。この比較は3回、6回及び12回の1時間あたりの換気回数(ACH)の3つの異なる換気回数で行った。他の条件は全て、実施例2において既に明記したものと同じにした。
【0206】
図30は、シナリオ1及びシナリオ2での測定から得た換気効果を提示している。3ACH及び6ACHでは、「医者」(シナリオ1)の口元での換気効果は、「医者」の体の周りの既存の対流層が、吐かれた病原体の大部分を捕捉し、そしてそれらを医者の呼吸ゾーンに運び、空気感染を受ける危険性の高いものにすることに起因して、非常に低い(およそ0.3)。12ACHでは、効果は、背景換気速度が上がったこと及び室内での希釈が改善されたことにより2倍となる。シナリオ2での第2の「被曝露」患者の口元で得た換気効果はより高いものであったが1よりは依然として低かった(図31)。このことは、2人の患者間の距離が比較的長いことに起因する。換気回数を12回に増やすことでは換気効果は僅かしか増大しない。
【0207】
濾過/換気ユニット(ここではHBIVCU、すなわち病院ベッド一体型換気浄化ユニットと称される)の使用は、病気の患者の呼気を排出するのを助ける(図32及び図33)。「医者」の口元での(図32)及び「被曝露患者」の口元での(図33)実質的により高い換気効果は、吐かれた「感染」空気の極僅かな量のみが、HBIVCUによって局部的に捕捉されることを免れることを示す。
【0208】
以下の結論を、ここに記載の換気ユニットを使用せずに行った実験から引き出すことができる:
・病室内において背景換気によって供給される流量にかかわらず、呼吸している患者の極近くに立っている医療スタッフについて、空気による交差感染の危険性が高い;
・現在の基準及びガイドラインにおいて推奨されている12回/時の換気回数では、呼吸の場合でさえ、すなわち初期運動量が低い呼気流の場合であっても、空気による交差感染の危険性は下がらない。したがって、病院内での現在の空気分配又は換気方法は、空気感染病の広がりを低減させるのに効率的ではない。
・濾過/換気ユニットHBIVCUの使用により、感染患者の近くに立っている医療スタッフ及び室内の他の患者への交差感染の危険性が大幅に減る。
・HBIVCUの使用により、空気による交差感染のより低い危険性で感染病棟を換気するために今日必要とされているような12ACHという背景換気回数の実質的な低減をもたらすことができる。この方策は、省エネ、低初期投資及び容易で安価なメンテナンスをももたらす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を濾過するための空気分配制御及び/又は濾過/換気ユニットであって、
・キャビネットと、
・該キャビネット内にあり、前記濾過/換気ユニットに空気を方向付ける少なくとも1つの第1の空気スロットと、
・前記キャビネットを通って空気を方向付ける少なくとも1つのファンと、
・空気中に存在する微生物又はウイルスの増殖能力を殺すか又は阻害する少なくとも1つの手段であって、前記キャビネットの内側に設置され、かつ/又は前記キャビネットの内面の一部である、微生物又はウイルスの増殖能力を殺すか又は阻害する少なくとも1つの手段と、
・前記キャビネット内にあり、前記濾過/換気ユニットの外へ空気を方向付ける少なくとも1つの第2の空気スロットと、
を含み、
なお、前記濾過/換気ユニットは使用時に、前記第2の空気スロットを通して方向付けられた空気により該濾過/換気ユニットの外側にエアカーテンを作り出す、
空気分配制御及び/又は濾過/換気ユニット。
【請求項2】
前記エアカーテン中の空気は、該空気が前記少なくとも1つの第2の空気スロットを通して前記濾過/換気ユニットを出る位置で少なくとも0.1m/秒の速度を有する、請求項1に記載の濾過/換気ユニット。
【請求項3】
前記エアカーテンは、前記空気が前記少なくとも1つの第2の空気スロットを通して前記濾過/換気ユニットを出る位置から測定して少なくとも0.5mの高さを有する、請求項1又は2に記載の濾過/換気ユニット。
【請求項4】
前記少なくとも1つの第2の空気スロットは、空気が前記空気スロットから外へ方向付けられる場合、該空気の方向付けをガイドするガイド手段を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の濾過/換気ユニット。
【請求項5】
スロットの前記ガイド手段はその位置を変えることができ、流出空気を0°まで下方向にいずれの方向にもガイドすることができる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の濾過/換気ユニット。
【請求項6】
更に第3のスロット及び/又は第4のスロットを、前記濾過/換気ユニットの中に及び/又は外へ空気を方向付けるために含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の濾過/換気ユニット。
【請求項7】
前記ファンは、前記濾過/換気ユニットを通していずれの方向にも空気を方向付けることが可能である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の濾過/換気ユニット。
【請求項8】
加熱手段及び/又は冷却手段を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の濾過/換気ユニット。
【請求項9】
前記キャビネットの外へ通過する空気を乾燥する手段及び/又は前記キャビネットの外へ通過する空気を加湿する手段を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の濾過/換気ユニット。
【請求項10】
前記エアカーテン中のガスの組成を調節する手段を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の濾過/換気ユニット。
【請求項11】
前記エアカーテン中のガスの組成を調節する手段は、前記エアカーテン中の酸素、二酸化炭素及び/又は窒素の量を調節する、請求項10に記載の濾過/換気ユニット。
【請求項12】
前記キャビネットは、前記濾過/換気ユニットを備品、天井、フレーム又は支持体に取り付けることを可能にする少なくとも1つの締結手段を含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の濾過/換気ユニット。
【請求項13】
前記少なくとも1つの締結手段は、前記キャビネットの後及び/又は底に設置されたヒンジである、請求項6に記載の濾過/換気ユニット。
【請求項14】
前記キャビネットの寸法は長さが20〜150cm、高さが20〜150cm、及び幅が2〜30cmである、請求項1〜13のいずれか一項に記載の濾過/換気ユニット。
【請求項15】
前記濾過/換気ユニットの重量は2〜100kgである、請求項1〜14のいずれか一項に記載の濾過/換気ユニット。
【請求項16】
前記濾過/換気ユニットは更に、エアカーテンの全体的な方向が水平方向及び/又は垂直方向であるように、前記キャビネットのうち前記第2の空気スロットの反対側及び/又は前記第2の空気スロットの隣の側にホイールを、含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載の濾過/換気ユニット。
【請求項17】
前記濾過/換気ユニットは、更に少なくとも1つのセンサーを、・空気源が前記第1の空気スロットまで1mの距離内に位置しているかどうかを判断し、・空気源からの空気が前記第1の空気スロットに向けて方向付けられているかどうかを判断し、かつ/又は・空気源から前記第1の空気スロットに向けて方向付けられた空気の速度を求めるために含む、請求項1〜16のいずれか一項に記載の濾過/換気ユニット。
【請求項18】
前記少なくとも1つのセンサーはCO2センサー及び/又は赤外線温度センサーである、請求項17に記載の濾過/換気ユニット。
【請求項19】
更に前記エアカーテンを作り出す空気の方向及び/又は速度を調節する手段を含む、請求項1〜18のいずれか一項に記載の濾過/換気ユニット。
【請求項20】
前記エアカーテンを作り出す空気の方向及び/又は速度を調節する手段は、前記エアカーテンを作り出す空気の方向及び/又は速度を自動調節し、この調節は、請求項17に記載の前記センサーによって判断される情報に基づく、請求項19に記載の濾過/換気ユニット。
【請求項21】
前記ファンは、前記ユニットの一体型バッテリーから又は電源に接続して得られる電気によって駆動される、請求項1〜20のいずれか一項に記載の濾過/換気ユニット。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれか一項に記載の少なくとも1つの空気分配制御ユニット及び/又は濾過/換気ユニットを含む、濾過システム。
【請求項23】
少なくとも2つの可搬式濾過/換気ユニットが、或るエリアを周囲から部分的に隔離するように該エリアの各側に、かつ/又は、感染性の微生物、ウイルス及び/若しくは健康有害物質を含有している危険性のあるエリアの各側に設置される、請求項22に記載の濾過システム。
【請求項24】
前記少なくとも2つの濾過/換気ユニットはそれぞれ、前記エリア内に負圧を作る、請求項22又は23に記載の濾過システム。
【請求項25】
前記少なくとも2つの可搬式濾過/換気ユニットはそれぞれ、該濾過/換気ユニットの外へ垂直方向に出口空気を方向付け、かつ/又は該出口空気はその全体的な方向が前記エリアの内部に向けて傾斜している、請求項24に記載の濾過システム。
【請求項26】
前記少なくとも2つの濾過/換気ユニットのうちの少なくとも1つが、前記エリア内に負圧を作り、また、前記少なくとも2つの濾過/換気ユニットのうちの少なくとも別のものが、前記エリア内に正圧を作る、請求項23に記載の濾過システム。
【請求項27】
前記負圧を作り出す少なくとも1つの濾過/換気ユニットは、
・前記正圧を作り出す少なくとも1つの濾過/換気ユニットよりも、前記エリアの内側に位置する空気源の近くに設置され、かつ/又は
・前記濾過/換気ユニットが前記エリアの内側に位置する空気源から出る空気の方向に向かい合うように設置される、
請求項26に記載の濾過システム。
【請求項28】
測定手段が前記濾過システム内に設置されて、前記エリアの内側に位置する空気源から出る空気の方向を測定し、前記内側に位置する空気源から出る空気の方向を用いて、どの濾過/換気ユニット(複数可)が負圧を作り出し、どの濾過/換気ユニット(複数可)が正圧を作り出すのかを判断する、請求項22〜27のいずれか一項に記載の濾過システム。
【請求項29】
前記空気源は個体からの呼気である、請求項22〜28のいずれか一項に記載の濾過システム。
【請求項30】
空気分配制御を制御し、かつ/又は或るエリアを部分的に隔離し、かつ/又はエリアから空気中の微生物及び/若しくはウイルスを除去する方法であって、
・部分的に隔離すべきエリアの位置を特定すること、
・請求項1〜21のいずれか一項に記載の少なくとも1つの濾過/換気ユニットを準備すること、
・請求項22〜29のいずれか一項に記載の濾過システムを前記エリアの周りに又
は該エリアに接続して設置すること、
・空気を前記エリアから前記少なくとも1つの濾過/換気ユニットに方向付けること、
・前記少なくとも1つの濾過/換気ユニットへ方向付けられた空気の全体的な方向又は中心方向と比較した場合に
0°〜120°の方向で前記濾過/換気ユニットの外へ空気を方向付け、かつ/又は、
前記少なくとも1つの濾過/換気ユニットの外へ空気を方向付け、
さらに管の中に方向付け、より大きな換気システムに空気を方向付けること、これによって、
・前記エリアを部分的に隔離し、かつ/又は該エリアから空気中の微生物及び/若しくはウイルスを除去すること、
を含む、方法。
【請求項31】
請求項1〜21のいずれか一項に記載されるような少なくとも1つの濾過/換気ユニットを備えたベッドであって、該少なくとも1つの濾過/換気ユニットは少なくとも該ベッドの頭領域に設置され、前記少なくとも1つの濾過/換気ユニットは該ベッドの一体化部分であるか、又は前記少なくとも1つの濾過/換気ユニットは該ベッドと一緒に再配置されることができるように該ベッドに取り外し可能に取り付けられる、ベッド。
【請求項32】
前記少なくとも1つの濾過/換気ユニットは少なくとも2つの濾過/換気ユニットであり、前記換気ユニットは前記ベッドの前記頭領域の各側の少なくとも1つの濾過/換気ユニットに設置される、請求項31に記載のベッド。
【請求項33】
前記ベッドの少なくとも一方の端に濾過/換気ユニットを更に含む、請求項31又は32に記載のベッド。
【請求項34】
前記少なくとも1つの濾過/換気ユニットはヒンジで前記ベッドに接続され、該濾過/換気ユニットが前記ベッドから全部取り外されることが可能になり、かつ/又は垂直方向に約180°下方に傾斜/滑動することが可能となる、請求項31〜33のいずれか一項に記載のベッド。
【請求項35】
前記ベッドは人の長期休息用のベッド(病院ベッド、介護ベッド、養護施設、介護施設又は老人ホームのベッド)である、請求項31〜34のいずれか一項に記載のベッド。
【請求項36】
前記濾過/換気ユニットは、該濾過/換気ユニットを通り方向付けられた空気を濾過する少なくとも1つのフィルターを備える、請求項31〜35のいずれか一項に記載のベッド。
【請求項37】
前記濾過/換気ユニットは、該濾過/換気ユニットを通り方向付けられた空気中に存在する微生物に殺菌効果のある光を発することが可能な少なくとも1つのライトバルブを更に含む、請求項31〜36のいずれか一項に記載のベッド。
【請求項38】
前記濾過/換気ユニットは、更に
・前記濾過/換気ユニットの外へ空気を方向付ける少なくとも1つの空気出口であって、前記空気入口よりも小さな寸法を有する、少なくとも1つの空気出口、及び/又は
・前記出口空気の方向を制御する手段、及び/又は
・前記出口空気の速度を制御する手段、
を含む、請求項31〜37のいずれか一項に記載のベッド。
【請求項39】
請求項1〜21のいずれか一項に記載の濾過/換気ユニットによって作り出された少なくとも1つのエアカーテンを患者と職員との間に確立することによって、少なくとも1人の患者と共に働く職員を保護する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28a】
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【図28b】
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【図28c】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−533720(P2012−533720A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519887(P2012−519887)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【国際出願番号】PCT/DK2010/050189
【国際公開番号】WO2011/006509
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(512013477)テクニカル ユニバーシティ オブ デンマーク (2)
【氏名又は名称原語表記】TECHNICAL UNIVERSITY OF DENMARK
【Fターム(参考)】