説明

微生物培養装置

【課題】 自然エネルギーを利用して微生物の撹拌培養を行うことができる微生物培養装置を提供する。
【解決手段】
微生物培養装置は、海水に浮遊可能に構成され、微生物を培養するための培養液が充填される培養槽1と、係留索3を介して培養槽1の移動範囲を規制するアンカー2とを備えている。培養槽1は海水の流動に応じて揺動し、これによって培養槽1内の培養液が撹拌される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物プランクトンなどの微生物を培養する微生物培養装置に関し、特に自然エネルギーを利用して撹拌培養を行う微生物培養装置に関する。
【背景技術】
【0002】
植物プランクトンなどの微生物を培養する方法の一つとして、撹拌子やスクリュー等を用いて培地を撹拌しながら微生物を培養する撹拌培養がある。この撹拌培養を行うための微生物培養装置として、これまで種々のものが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、培養タンク内に撹拌子を置き、その培養タンク底下方に配置した電動式のスターラーを作動させることにより、培養液を撹拌するように構成された微生物培養装置が開示されている。この微生物培養装置によれば、電力を用いることによって、培養タンク内の培養液を容易に撹拌することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−161132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、特許文献1に記載の微生物培養装置では、培養液を撹拌するために電力を必要とする。そのため、培養タンクが大型の場合は相当な消費電力を要するという問題がある。他方、培養タンクが小型の場合は比較的小さい電力で足りるため省電力化を図ることも可能であるが、その場合は大量の微生物を培養することが困難であるという問題が生じる。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、自然エネルギーを利用して培養液の撹拌を行うことによって、上記課題を解決することができる微生物培養装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の一の態様の微生物培養装置は、海水に浮遊可能に構成され、微生物を培養するための培養液が充填される培養槽と、係留索を介して前記培養槽の移動範囲を規制する係留手段とを備え、海水の流動に応じて前記培養槽が揺動することにより、当該培養槽内の培養液が撹拌される。
【0008】
このように構成すると、自然エネルギーである海水の流動を利用して培養液の撹拌を行うことができる。そのため、従来のように電気や石油などの人工エネルギーを用いることなく、微生物の撹拌培養を行うことが可能になる。
【0009】
上記態様において、前記培養槽の表面の少なくとも一部が透光性を有する材質により構成されていることが好ましい。培養対象の微生物が光合成を行うものである場合、このような構成であることが望ましい。
【0010】
また、上記態様において、前記培養槽が直方体形状をなしていてもよい。また、前記培養槽の断面形状が左右非対称であってもよく、前記培養槽の表面の一部に凹凸構造が形成されていてもよい。さらに、前記培養槽の表面に海水の流動を受ける鍔部が形成されていてもよい。
【0011】
また、上記態様において、前記培養槽内には当該培養槽内の培養液を撹拌するための撹拌子が設けられていることが好ましい。ここで、その撹拌子は棒状体であってもよく、培養液が通流可能な空隙を有する網状体であってもよい。
【0012】
また、上記態様の微生物培養装置が、複数の前記培養槽を備えており、当該複数の培養槽の少なくとも一部が連結索を介して互いに連結されていてもよい。
【0013】
さらに、上記態様において、海水面に沿って連結された複数の前記培養槽と、当該海水面と直交する方向に沿って連結された複数の前記培養槽とを備えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る微生物培養装置によれば、自然エネルギーを利用することによって、電力等を用いることなく微生物の撹拌培養を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】海水域で使用されている場合における本発明の実施の形態1に係る微生物培養装置の構成を示す斜視図。
【図2】本発明の実施の形態1に係る微生物培養装置が備える培養槽の詳細な構成の一例を示す斜視図。
【図3】本発明の実施の形態1に係る微生物培養装置が備える培養槽の詳細な構成の他の例を示す斜視図。
【図4】本発明の実施の形態1に係る微生物培養装置が備える培養槽の変形例1の構成を示す正面図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る微生物培養装置が備える培養槽の変形例2の構成を示す正面図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係る微生物培養装置が備える培養槽の変形例3の構成を示す斜視図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る微生物培養装置が備える培養槽の構成の一例を示す斜視図。
【図8】本発明の実施の形態2に係る微生物培養装置が備える培養槽の構成の他の例を示す斜視図。
【図9】本発明の実施の形態2に係る微生物培養装置が備える培養槽の構成の他の例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の微生物培養装置は、自然エネルギーを用いることによって、植物プランクトンなどの微生物を撹拌培養するためのものである。以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
(実施の形態1)
実施の形態1の微生物培養装置は、海水域で使用される装置であって、海水の流動を利用することにより培養槽に充填された培養液を撹拌するものである。
【0018】
図1は、海水域で使用されている場合における本発明の実施の形態1に係る微生物培養装置の構成を示す斜視図である。図1に示すとおり、本実施の形態の微生物培養装置は、微生物培養のための培養液が充填された培養槽1と、海底に設置されたアンカー2と、培養槽1及びアンカー2を連結するための係留ロープ3とを備えている。このようにして培養槽1がアンカー2に係留されることにより、培養槽1の移動する範囲が所定の範囲に規制されることになる。
【0019】
培養槽1は、密閉可能な直方体形状の容器であり、微生物の培養液を充填することができる内部空間を有する本体部1aと、本体部1aの上部に配置された蓋部1bとを具備している。なお、培養槽1のサイズについては、大きいほど培養効率が高まるため望ましいものの、大きすぎるとその取扱いが困難になる等の不都合が生じ得る。また、微生物培養装置が海水域で使用されることを考慮すると、船舶等の往来の妨げになりにくいサイズであることが望ましい。以上より、培養槽1のサイズの例として幅2m・奥行き2m・高さ1m又は幅1m・奥行き1m・高さ0.5m等が挙げられる。
【0020】
上記の培養槽1は、当該培養槽1が海水に浮遊するために必要な浮力を得ることができる材質で構成されている。培養対象が海洋性微細藻類などの光合成を行う微生物の場合、太陽光が透過可能な透光部材で培養槽1が構成されることによって、増殖速度の促進を図ることができる。そのため、培養槽1は、透明または半透明な材質で構成されることが望ましい。この場合、培養槽1の全面が透明または半透明な材質で構成されていなくてもよく、例えばプラスチック、ガラス又は合成樹脂製の透光性を有する窓部が培養槽1の表面に部分的に設けられるような構成であってもよい。
【0021】
係留ロープ3は上述したように培養槽1とアンカー2とを連結するためのものであり、その一端は培養槽1の下端一側縁部に設けられた係合部1cに、他端はアンカー2に設けられた係合部2aにそれぞれ係合されている。係留ロープ3の長さは、海底に設けられたアンカー2から海水面Sまでの距離よりもやや長く、海水の流動を受けたときに生じる培養槽1の揺動を妨げない程度であることが好ましい。なお、係留ロープ3の長さを、海底に設けられたアンカー2から海水面Sまでの距離とほぼ同じ程度にすること等により、培養槽1の揺動を制約するような構成であってもよい。このような構成の場合、例えば海水の流動が一時的に大きくなったときに、係留ロープ3の長さに余裕がなくなったために培養槽1の揺動が急激に停止するという現象が起こり得る。その結果、培養槽1内の撹拌が促進されることが期待できる。
【0022】
図1に示すとおり、係合部1cは、培養槽1の下端一側縁部の中心から少しずれた位置に設けられている。このようにすると、その下端一側縁部の中心に係合部が設けられる場合と比較して、海水の流動を受けたときに培養槽1が不規則に揺動しやすくなる。そのため、撹拌効率を向上させることができる。
【0023】
図2は、培養槽1の詳細な構成を示す斜視図である。図2に示すとおり、培養槽1が具備する蓋部1bは、本体部1aの上端一側縁にヒンジ(図示せず)を介して接続されており、このヒンジによって回動可能とされている。蓋部1bの下面の四方縁部に沿って、四角形状を形成するように可撓性を有するシリコンゴム等で構成された開閉パッキン10が配設されている。この開閉パッキン10により、蓋部1bが閉じた状態のときには、本体部1aの内部空間が水密状態に保持される。
【0024】
培養槽1の本体部1aの略直方体形状をなす内部空間には、棒状体である撹拌子11a,11bが設けられている。これらの撹拌子11a,11bはそれぞれ、その両端が本体部1a内部の角部に固着されており、互いが交差するように対角線上に配されている。培養槽1が海水の流動を受けて揺動したとき、本体部1a内に充填された培養液100がこれらの撹拌子11a,11bに衝突する。これにより、培養液100の撹拌が促進されることになる。
【0025】
なお、本実施の形態では2本の棒状体である撹拌子11a,11bが培養槽1の本体部1a内に設けられているが、本発明はこの態様に限定されるわけではなく、1本又は3本以上の棒状体の撹拌子が設けられる構成であってもよい。また、撹拌子が配される位置も対角線上に限られるわけではなく、例えば各辺に平行になるようにして配設されていてもよい。
【0026】
上記のような棒状体以外の形状の撹拌子を用いることも可能である。図3は、他の態様の撹拌子を備えた培養槽1の詳細な構成を示す斜視図である。図3に示すように、培養槽1の本体部1aの内部空間には、本体部1aの凹部断面と略同じ大きさの矩形状の網状体である撹拌子12が設けられている。この撹拌子12は、培養液100が通流可能な程度の空隙を有している。そのため、培養槽1が海水の流動を受けて揺動したときに、培養液100が撹拌子12に衝突しながら撹拌子12の一方側と他方側との間を往復することになる。これにより、培養液100の撹拌が促進される。
【0027】
なお、図3に示す例では1枚の網状体の撹拌子12が培養槽1の本体部1a内に設けられているが、本発明はこの態様に限定されるわけではなく、2枚以上の撹拌子12が設けられるような構成であってもよい。また、撹拌子12が設けられる位置も適宜変更することが可能である。
【0028】
培養槽1内に充填される培養液100の量は全体容量の半分程度が目安となるが、これに限定されるわけではない。ただし、満量になると撹拌が抑制されることが考えられるため、多少の空き容量があることが好ましい。
【0029】
上述したように構成された本実施の形態の微生物培養装置を海水域に設置した場合、海水の流動に応じて培養槽1が揺動することによって、電力等を用いなくても、培養液の撹拌が行われることになる。培養対象の微生物の種類、培養槽1のサイズ・形状等により培養時間は異なるものの、一般的に1日〜3日程度で微生物の増殖が限界に達するため、海水域に設置してから1日〜3日程度経過した後に培養槽1を陸地に引き上げるようにすればよい。
【0030】
[培養槽1の形状の変形例]
本実施の形態において、培養槽1は上述したとおり直方体形状をなしているが、培養槽1の形状はこれに限定されるわけではない。例えば、球状又は楕円状等であってもよく、本体部1aの内部を水密状態に維持することができる密閉可能な容器であればどのような形状であってもよい。ただし、本体部1a内に充填された培養液の撹拌が促進されるために、海水の流動を受けたときに培養槽が様々な方向に不規則に揺動しやすい形状であることが望ましい。以下、そのような形状の例について説明する。
【0031】
図4は、培養槽1の変形例1の構成を示す断面図である。図4に示すように、変形例1における培養槽1の一方の側面(図面上左側の側面)は弧状の膨出面となっており、他方の側面(図面上右側の側面)は平坦状の面となっている。このような構成とした場合、一方の側面は海水の流動に対する抵抗が小さく、それと比べて他方の側面は海水の流動に対する抵抗が大きくなるため、培養槽1は海水の流動に応じて不規則に揺動することになる。そのため、培養液100の撹拌が促進される。
【0032】
この変形例1における培養槽1のように、その断面形状が左右非対称となっている構成の場合、断面形状が左右対称の構成と比べて、より不安定な状態で海水面上に浮遊したり、海水の流動を受けたときの抵抗が左右の各部分で異なったり等の現象が生じ得る。その結果、培養槽1が海水の流動を受けたときに、より不規則に揺れやすくなるため、撹拌効率を向上させることができる。
【0033】
培養槽1の断面形状を左右非対称とするためには、上述したように一方の側面のみを弧状の膨出面とする以外にも様々な実現態様があることは言うまでもない。例えば、左右何れか一方側にのみ所定形状の切り欠き部を設ける構成等が考えられる。
【0034】
図5は、培養槽1の変形例2の構成を示す断面図である。図5に示すように、変形例2における培養槽1の本体部1aの下面には凹凸構造21が設けられている。この凹凸構造21は、本体部1aの下面に不均一に形成された断面が矩形状の複数の凹部によって構成されている。培養槽1が海水の流動を受けたときに、この凹凸構造21が海水の流動に対する抵抗部材として機能する。これにより、このような凹凸構造21を設けていない場合と比べて、海水の流動を受けたときに培養槽1が不規則に揺れやすくなる。そのため、本体部1a内の培養液100の撹拌が促進されることになる。
【0035】
なお、ここでは凹凸構造21を構成する凹部の断面が矩形状であるが、その他の形状であってもよく、例えば半円状等であってもよい。また、凹凸構造が形成されている位置も培養槽1の本体部1aの下面に限定されるわけではなく、その側面等に凹凸構造が形成されていてもよい。
【0036】
図6は、培養槽1の変形例3の構成を示す斜視図である。図6に示すように、変形例3における培養槽1の本体部1a下面には、細長い板状の鍔部22が設けられている。この鍔部22が海水の流動を受けることにより、鍔部22を設けていない場合と比べて、培養槽1が揺れやすくなる。ここで、鍔22は、本体部1a下面の左右方向中央位置から一方側にずれた位置に形成されていることが望ましい。このような構成とすることにより、海水の流動を受けたときに培養槽1が不規則に揺れやすくなるため、本体部1a内の培養液100の撹拌が促進される。
【0037】
なお、鍔部22の形状及び形成位置は上記に限定されるわけではない。例えば、鍔部22が円板状等の形状であってもよく、また、培養槽1の本体部1aの側面等に鍔部22が設けられていてもよい。
【0038】
(実施の形態2)
実施の形態1の微生物培養装置は上述したように一つの培養槽を備えている。これに対し、実施の形態2の微生物培養装置は、互いに連結された複数の培養槽を備えるものである。
【0039】
図7は、本発明の実施の形態2に係る微生物培養装置が備える培養槽の構成を示す斜視図である。図7に示すとおり、本実施の形態の微生物培養装置は、5行3列のマトリクス状に配置された合計15個の培養槽30,30,…を備えており、これらの培養槽30,30,…は矩形状の枠体40内に配されている。この枠体40は、海水面に浮遊可能な材質で構成されている。
【0040】
直方体形状をなしている培養槽30の4側面の下端各側縁部には、連結ロープ41を係合するための係合部30cがそれぞれ設けられている。なお、蓋部及び本体部を備えている等、培養槽30のその他の構成については実施の形態1における培養槽1の場合と同様であるので、説明を省略する。
【0041】
図7においては、係合部30cが設けられている位置がすべての培養槽30において同じであるが、培養槽30によって当該位置が異なるようにしてもよい(例えば、異なる高さに係合部30cが設けられている等)。また、上下方向に沿って複数の係合部30cが設けられており、隣り合う培養槽30,30においては異なる高さの係合部30cに係留ロープ40が係合されるような構成であってもよい。
【0042】
15個の培養槽30,30,…のうち、行方向(矢印Aが示す方向)にそれぞれ並べられた5個の培養槽30,30,…は連結ロープ41を介して互いに連結されている。同様にして、列方向(矢印Bが示す方向)にそれぞれ並べられた3個の培養槽30,30,…も互いに連結されている。さらに、外側に配されている12個の培養槽30,30,…は、枠体40の適宜の位置に内側に突出するようにして形成された係合部40aと連結ロープ41を介して連結されている。これにより、15個の培養槽30,30,…はすべて、直接的または間接的に枠体40と連結されることになる。
【0043】
枠体40には、係合部40aとは別に、外側に突出するように形成された係合部40bが設けられており、この係合部40bに係留ロープ(図示せず)の一端が係合され、その他端が海底に設けられたアンカー(図示せず)と係合される。これにより、実施の形態1において培養槽1がアンカー2に係留される場合と同様に、複数の培養槽30,30,…がアンカーに係留された上で、海水に浮遊することになる。
【0044】
本実施の形態のように、互いに連結された複数の培養槽30,30,…を備える構成とした場合、各培養槽30が受けた海水の流動が連結ロープ41を介して他の異なる培養槽30に伝達されることになる。海水においては、同じ海水面付近であっても位置により異なる方向及び大きさの流動が起きると考えられるため、その流動の影響を受けにくい培養槽30が存在する可能性がある。しかし、そのような場合であっても、本実施の形態のように複数の培養槽30,30,…が互いに連結されることにより、各培養槽30が受けた海水の流動が連結ロープ41を介して他の異なる培養槽30に伝達されるため、すべての培養槽30,30,…が海水の流動に応じて揺動することが可能になる。
【0045】
上述したとおり、本実施の形態の場合、複数の培養槽30,30,…のすべてが互いに連結されているが、これらの一部のみが連結される構成であってもよい。図8は、そのような構成を示す斜視図である。
【0046】
図8に示すとおり、5行3列のマトリクス状に配置された合計15個の培養槽30,30,…において、行方向(矢印Aが示す方向)にそれぞれ並べられた5個の培養槽30,30,…は連結ロープ41を介して互いに連結されている。これに対し、列方向(矢印Bが示す方向)にそれぞれ並べられた3個の培養槽30,30,…は一部のみが連結ロープ41を介して互いに連結されており、その残りは連結されていない。また、外側に設けられている12個の培養槽30,30,…のうちの4個の培養槽30,30,…のみが枠体40に連結されており、その他の培養槽30,30,…は連結されていない。
【0047】
このように、培養槽30,30,…のうちの一部のみが互いに連結されている構成とした場合、各培養槽30が受けた海水の流動の伝達が他の培養槽30、30,…に対して不均一に行われることになるため、すべての培養槽30,30,…が互いに連結されている構成と比べると、より不規則的な揺動が生じることになる。そのため、培養槽30内の培養液の撹拌効率を高めることが可能になる。
【0048】
上記の例では、複数の培養槽30,30,…が海水面と平行な面内にマトリクス状に配されているが、海水面と直交する方向に更なる培養槽30を連結するような構成であってもよい。図9は、そのような構成を示す斜視図である。
【0049】
図9に示すとおり、図面上左側の列に配設されている5個の培養槽30,30,…の下方には、5個の培養槽31,31,…が更に設けられている。なお、ここでは説明の便宜上異なる符号が付されているが、培養槽31は培養槽30と同様の構成である。これらの培養槽31,31,…の上面には係合部30cが形成され、また、それぞれの上方に位置する5個の培養槽30,30,…の下面にも係合部(図示せず)が形成されている。そして、連結ロープ41の両端がこれらの係合部に係合されることにより、当該培養槽31,31,…とその上方に位置する培養槽30,30,…とが連結ロープ41を介してそれぞれ連結されている。
【0050】
なお、培養槽31,31,…は、その他の培養槽30,30,…と比べてその浮力が小さくなるようにするために、所定重量の重りを備えている。そのため、海水域で使用される場合においても、図9に示すとおり、図面上左側の列に配設されている5個の培養槽1,1,…の下方に5個の培養槽31,31,…が位置する。そのため、培養槽31,31,…は、海水面ではなく水中に浮遊することになる。
【0051】
海水面と水中とでは海水の流動の大きさ及び方向等が異なるため、海水面に浮遊する他の培養槽30,30,…と水中に浮遊する培養槽31,31,…とでは、異なる大きさ及び方向の流動を受けることになる。そして、培養槽30,30,…が受けた流動が連結ロープ41を介して培養槽31,31,…へ伝達されるとともに、培養槽31,31,…が受けた流動が培養槽30,30,…へ伝達される。これにより、培養槽30,30,…及び31,31,…の揺動が変化に富んだものとなるため、培養槽30,30,…及び31,31,…内の培養液の撹拌がより一層促進されることになる。
【0052】
なお、本実施の形態においては培養槽30(31)の数が15個又は20個であるが、これは例示であり、他の数の培養槽30,30,…を備えるような構成であってもよいことは勿論である。さらに、複数の培養槽30,30,…がマトリクス状に配置される構成に限定されるわけではなく、一列に配置される構成であってもよい。
【0053】
また、本実施の形態においては枠体40内に複数の培養槽30,30,…が配置されているが、このような枠体40を備えずに、単に培養槽30,30,…が連結されるのみの構成であってもよい。そのような構成とする場合、培養槽30,30,…のすべてがアンカーに係留されるようにしてもよく、その一部のみがアンカーに係留されるようにしてもよい。
【0054】
実施の形態1にて説明した係留ロープの長さをアンカーから海水面までの距離とほぼ同じ程度にする等の構成を本実施の形態において採用した場合、ある培養槽の揺動が急激に停止したときに、その衝撃が当該培養槽と連結されている他の培養槽へ伝達されることが考えられる。これにより、培養槽内の撹拌がより一層促進されることが期待できる。
【0055】
(その他の実施の形態)
上記の各実施の形態では、培養槽を係留するための手段としてアンカーを用いているが、これに限定されるわけではない。例えば、海底に打ち込まれた杭等に培養槽を係留するようにしてもよい。その他にも、橋桁、橋脚又はブイ等と培養槽とを係留ロープで連結するような構成であってもよい。
【0056】
なお、上記の各実施の形態における各種の構成を適宜組み合わせることにより、新たな実施の形態を実現することが可能である。したがって、例えば、培養槽が凹凸構造及び鍔部の両方を備える構成とすることもでき、また、そのような構成の培養槽が複数連結される構成とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の微生物培養装置は、植物プランクトンなどの微生物を撹拌培養する微生物培養装置などとして有用である。
【符号の説明】
【0058】
1 培養槽
1a 本体部
1b 蓋部
1c 係合部
2 アンカー
2a 係合部
3 係留ロープ
10 開閉パッキン
11a,11b 撹拌子
12 撹拌子
21 凹凸構造
22 鍔部
30(31) 培養槽
30c 係合部
40 枠体
40a,40b 係合部
41 連結ロープ
100 培養液


【特許請求の範囲】
【請求項1】
海水に浮遊可能に構成され、微生物を培養するための培養液が充填される培養槽と、
係留索を介して前記培養槽の移動範囲を規制する係留手段と
を備え、
海水の流動に応じて前記培養槽が揺動することにより、当該培養槽内の培養液が撹拌される、微生物培養装置。
【請求項2】
前記培養槽の表面の少なくとも一部が透光性を有する材質により構成されている、請求項1に記載の微生物培養装置。
【請求項3】
前記培養槽が直方体形状をなしている、請求項1又は2に記載の微生物培養装置。
【請求項4】
前記培養槽の断面形状が左右非対称である、請求項1又は2に記載の微生物培養装置。
【請求項5】
前記培養槽の表面の一部に凹凸構造が形成されている、請求項1又は2に記載の微生物培養装置。
【請求項6】
前記培養槽の表面に海水の流動を受ける鍔部が形成されている、請求項1乃至5の何れかに記載の微生物培養装置。
【請求項7】
前記培養槽内には当該培養槽内の培養液を撹拌するための撹拌子が設けられている、請求項1乃至6の何れかに記載の微生物培養装置。
【請求項8】
前記撹拌子は棒状体である、請求項7に記載の微生物培養装置。
【請求項9】
前記撹拌子は、培養液が通流可能な空隙を有する網状体である、請求項7に記載の微生物培養装置。
【請求項10】
複数の前記培養槽を備えており、当該複数の培養槽の少なくとも一部は連結索を介して互いに連結されている、請求項1乃至9の何れかに記載の微生物培養装置。
【請求項11】
海水面に沿って連結された複数の前記培養槽と、当該海水面と直交する方向に沿って連結された複数の前記培養槽とを備える、請求項10に記載の微生物培養装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−152071(P2011−152071A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−15519(P2010−15519)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(302064762)株式会社日本総合研究所 (367)
【Fターム(参考)】