説明

微粒子の連続分離機構及び装置

【課題】合成高分子、無機粉体、金属粉体、動植物細胞、微生物、エマルジョンなどの粒子を、粒径の近い場合でも連続かつ正確に大きさによって分離すること。
【解決手段】入口22aおよび22bから,粒子を含む流体100Pと粒子を含まない流体100Nを導入すると同時に、部分27における流体100Pの幅が、分離対象とする最小の粒子の粒径よりも小さくする事により、部分27において流れと垂直な方向における粒子の位置を、粒子の大きさによって一定にし、粒子の中心位置が存在する領域の流れだけを効率良くそれぞれの出口流路に分配する事により、粒径の近い粒子も分離できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続粒子分離機構及びその装置に関し、詳細には、合成高分子、無機粉体、金属粉体、動植物細胞、微生物、エマルジョンなどの粒子を連続的に分級する際に用いて好適な連続粒子分離機構及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、合成高分子、無機粉体、金属粉体、動植物細胞、微生物、エマルジョンなどの粒子を分級する技術は、基礎研究のみならず、粉体工業、電子産業、食品産業、医薬品産業等における特定の大きさの粒子の選抜や、粒径分布の分析などの幅広い分野において重要であると認識されている。
【0003】
粒子を分級する従来の技術としては、例えば、液体サイクロンによる分級法、クロマトグラフィーを利用した分級法、フィールドフローフラクショネーションによる分級法、あるいはピンチドフローフラクショネーション(例えば非特許文献1参照)による分級法などが知られている。
【非特許文献1】M.Yamada,M.Nakashima,and M.Seki,Anal.Chem.76,5465−5471(2004)
【0004】
しかしながら、液体サイクロンによる分級法では、一度に大量処理が可能である反面、分級精度が低い、粒径が極めて小さい粒子の分級が困難、連続的な処理ができない、といった問題点があった。
【0005】
また、クロマトグラフィーやフィールドフローフラクショネーションを利用した分級法では、分級精度が高く、粒径1マイクロメートル以下の粒子にも対応しており、主に分析的な用途に用いられている反面、分離に長い時間がかかる、一度に処理できる量が少ない、連続的な処理ができない、といった問題点があった。
【0006】
また、ピンチドフローフラクショネーションを利用した分級法では、粒径1マイクロメートル程度の粒子にも対応し、連続的に粒子を導入することで、迅速かつ大量に分級できるが、粒径の近い粒子の分離が困難であるといった問題点があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来の技術の有する上記で述べたような種々の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、合成高分子、無機粉体、金属粉体、動植物細胞、微生物、エマルジョンなどの粒子を分級する際、高い分級精度で連続的に大量処理でき、また粒径の近い粒子についても分級することができるようにした連続粒子分離機構及びその装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、一本の流路に複数の分岐から流体を導入し、流れに垂直な方向における粒子の中心位置を制御し、その中心位置の違いによって複数の分岐に粒子を分離し導入する時に、それぞれの出口分岐に分配される流量を制御する事で効率的に粒子を分離できる事に着目してなされたものである。
【発明の効果】
【0009】
以下に本発明の特徴とその効果を示す。
【0010】
まず、流路内に粒子を含む流体と粒子を含まない流体をそれぞれ導入するためには、流路がその入口において複数の分岐を持つ必要がある。
【0011】
また、粒子を粒径の違いにより分離し、別々に回収するためには、流路がその出口において複数の分岐を持つ必要がある。
【0012】
本発明のうち請求項1に記載の発明は、流路Xの両端が複数に分岐し、片方の端からはそれぞれ別の入口につながる複数の分岐流路を有し、もう片方の端からはそれぞれ別の出口につながる複数の分岐流路を有した流路構造を利用し、前記入口のうち少なくとも一つ以上の入口から微粒子を含む流体を導入し、また前記入口のうち少なくとも一つ以上の入口から微粒子を含まない流体を導入し、導入する流体の流量をそれぞれ調節する事により、流路Xにおいて微粒子を流路壁面に並べ、粒径の違いによる粒子の中心位置の差を生じさせる事により、前記それぞれ別の出口につながる複数の分岐流路へと粒子を分離し導入するのであるが、その際に前記それぞれ別の出口につながる複数の分岐流路のうち少なくとも一つ以上の流路が、分配される流量が他の流路と異なる事によって、粒子の中心位置の差を効率的に増幅させ、粒子を粒径の違いによってそれぞれ別の出口につながる分岐流路に分離し導入するというものである。
【0013】
また、本発明のうち請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の連続粒子分離機構及びその装置において、分配される流量が他の流路と異なる流路として、流路の幅、深さ、長さ等が他の出口につながる複数の分岐流路と異なる流路を少なくとも一つ以上有する事を特徴としている。
【0014】
従って、本発明のうち請求項2に記載の発明によれば、それぞれの出口分岐に分配される流量を簡単に且つ大幅に変える事ができる。
【0015】
また、本発明のうち請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の連続粒子分離機構及びその装置において、分配される流量が他の流路と異なる流路として、流路内部もしくは流路下流に調節可能なバルブを持つ流路を少なくとも一つ以上有する事を特徴としている。
【0016】
従って、本発明のうち請求項3に記載の発明によれば、バルブを制御する事により、分級操作を実施している際にそれぞれの流路に分配される流量を制御でき、粒子の分級と回収をより正確に行うことができるようになる。
【0017】
また、本発明のうち請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の連続粒子分離機構及びその装置において、分配される流量が他の流路と異なる流路として、流路内部に流体を導入または排出する事のできる分岐流路Zを持つ流路を少なくとも一つ以上有する事を特徴としている。
【0018】
従って、本発明のうち請求項4に記載の発明によれば、分岐流路Zから流体を導入または排出する事により、分級操作を実施している際にそれぞれの流路に分配される流量を制御でき、粒子の分級と回収をより正確に行うことができるようになる。
【0019】
また、本発明のうち請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の連続粒子分離機構及びその装置において、分配される流量が他の流路と異なる流路として、流路の温度を制御する事により、流路内の流体の粘度を制御できる流路を少なくとも一つ以上有する事を特徴としている。
【0020】
従って、本発明のうち請求項5に記載の発明によれば、温度を制御する事により、分級操作を実施している際にそれぞれの流路に分配される流量を制御でき、粒子の分級と回収をより正確に行うことができるようになる。
【0021】
また、本発明のうち請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の連続粒子分離機構及びその装置において、請求項2、請求項3、請求項4及び請求項5に記載の連続粒子分離機構及びその装置のうち、少なくとも2つ以上を任意に組み合わせた事を特徴としている。
【0022】
また、本発明のうち請求項7に記載の発明は、請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5及び請求項6のいずれか1項に記載の連続粒子分離機構及びその装置において、前記流路の幅、深さ、直径などのいずれかのスケールがセンチメートル以下のオーダーであり、前記流路内において流体は安定な層流を保ちながら流れる事を特徴としている。
【0023】
従って、本発明のうち請求項7に記載の発明によれば、導入したそれぞれの流体は安定な層流を保って流れるため、粒子の位置のより安定な制御が可能となり、粒子の分級と回収をより正確に行うことができるようになる。
【0024】
また、本発明のうち請求項8に記載の発明は、請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6及び請求項7のいずれか1項に記載の連続粒子分離機構及びその装置において、導入される流体として液体を用いる事を特徴としている。
【0025】
従って、本発明のうち請求項8に記載の発明によれば、細胞やエマルジョン等、液体中に懸濁している粒子の分級を行うことができる。
【0026】
また、本発明のうち請求項9に記載の発明は、請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6及び請求項7のいずれか1項に記載の連続粒子分離機構及びその装置において、導入される流体として気体を用いる事を特徴としている。
【0027】
従って、本発明のうち請求項9に記載の発明によれば、粒子を液体へ懸濁させることなく分級を行うことが可能となる。
【0028】
また、本発明のうち請求項10に記載の発明は、請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6、請求項7、請求項8及び請求項9いずれか1項に記載の連続粒子分離機構及びその装置において、流路Xの幅、深さ、直径等のうち少なくとも一つのスケールが異なる複数の前記流路構造を、複数直列に接続することにより、多段階で分級を行う事を特徴としている。
【0029】
従って、本発明のうち請求項10に記載の発明によれば、広い粒度分布を持つ粒子群を分級する際においても、精度の高い分級が可能となる。
【0030】
また、本発明のうち請求項11に記載の発明は、請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6、請求項7、請求項8、請求項9及び請求項10のいずれか1項に記載の連続粒子分離機構及びその装置において、前記流路構造がマイクロチップに形成されたチャネルである事を特徴としている。
【0031】
従って、本発明のうち請求項11に記載の発明によれば、流路の形状を正確にコントロールする事ができ、また流路の多段化及び並列化も容易になるため、分級精度の向上や、処理量の向上が期待できる。
【0032】
また、本発明のうち請求項11に記載の発明によれば、流路のスケールがナノメートルからマイクロメートルのオーダーになるため、非常に微小な粒子の正確な分離も可能となる。
【0033】
また、本発明のうち請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の連続粒子分離機構及びその装置において、請求項3に記載のバルブがマイクロ膜バルブである事を特徴としている。
【0034】
従って、本発明のうち請求項12に記載の発明によれば、バルブの作製や制御を簡単に行う事ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、添付の書類に基づいて、本発明による連続粒子分離機構及びその装置の最良の形態を説明するものとする。
【0036】
図1に本発明による連続粒子分離機構及びその装置の最良の形態である流路構造の模式図を示す。
【0037】
流路構造11の一方の端は、2つの分岐(分岐14a、14b)になっており、もう一方の端は5つの分岐(分岐15a、15b、15c、15d、15e)になっており、それぞれ流体の入口及び出口へとつながっているが、出口分岐の数は多ければ多いほど精密な分級が可能となり、必要に応じて任意の数に決める事ができ、流路の幅、深さ、長さ等も必要に応じて任意の値に設定する事が可能である。
【0038】
また、流体100Qと、流体100Rは、それぞれ粒子を含む流体と、粒子を含まない流体であり、粒子200a、200b、200cは、それぞれ相対的に大きな粒子、中ぐらいの粒子及び小さな粒子を示している。
【0039】
ここで、分岐14a側から粒子を含む流体を導入し、14b側から粒子を含まない流体を導入し、導入する流体の流量を調節する事により、部分17において流れと垂直な方向における粒子の位置を粒子の大きさによって制御する。
【0040】
その際に、部分17における粒子の中心位置が存在しない領域の流れを、請求項2に記載の方法によって、分岐15eに多く分配されるように設計する事により、粒子の中心位置の存在する領域の流れを効率よく残りの分岐(分岐15a、15b、15c、15d)に分配する事ができるため、粒径の近い粒子の分離が可能となる。
【0041】
また、少なくとも請求項3、請求項4及び請求項5のいずれか一項に記載の連続粒子分離機構及びその装置を分岐15a、15b、15c、15dに設ける事によって、分配される流れを分級操作を実施している際に微調整でき、粒径の違いによって、より正確に粒子を分級し別々に取り出す事ができる。
【実施例】
【0042】
以下、添付の書類に基づいて、本発明による連続粒子分離機構及びその装置の実施例を詳細に説明するものとする。
【0043】
図2(a)(b)(c)には、本発明による連続粒子分離機構及びその装置の実施形態を備えたマイクロチップ20が示されており、図2(b)は図2(a)における部分Aの拡大図であり、図2(c)は図2(b)における部分Bの拡大図である。
【0044】
このマイクロチップ20は、粒子をその大きさにより分離するためのマイクロチップであり、例えば、PDMS(ポリジメチルシロキサン)などの高分子の基板の片面に流路構造21が形成されており、流路構造21が形成されている面と平らな基板をはりあわせる事により流路構造は形成されている。
【0045】
流路構造21の深さは20μm程度であるが、この値は100nmから1cmまでの任意の値に設定することが可能である。
【0046】
流路構造21は、入口側ポート22a、22b、及び出口側ポート23a、23b、23c、23d、23e、23f、23g、23h、23i、23j、23k、23l、23mを有し、入口側ポート22a、22bは、それぞれ粒子を含む流体と粒子を含まない流体の入口であり、出口側ポート23a、23b、23c、23d、23e、23f、23g、23h、23i、23j、23k、23l、23mは流体の出口である。
【0047】
また、流路構造21の一方の端は、2つの分岐(分岐24a、24b)になっており、もう一方の端は13個の分岐(分岐25a、25b、25c、25d、25e、25f、25g、25h、25i、25j、25k、25l、25m)とそれに続く12個の流路(流路26a、26b、26c、26d、26e、26f、26g、26h、26i、26j、26k、26l)になっている。
【0048】
ここで、分岐24a、24bは、それぞれ入口側ポート22a、22bへ接続されており、また分岐25a、25b、25c、25d、25e、25f、25g、25h、25i、25j、25k、25lは、それぞれ26a、26b、26c、26d、26e、26f、26g、26h、26i、26j、26k、26lを経て出口側ポート23a、23b、23c、23d、23e、23f、23g、23h、23i、23j、23k、23lへ接続されており、分岐25mは出口側ポート23mに接続されている。
【0049】
なお、流路構造21の全体の長さ、つまり、入口側ポート22a、22bのある一方の端から、出口側ポート23gの端までの長さは21mmであり、部分27の長さは100μmであり、分岐25a、25b、25c、25d、25e、25f、25g、25h、25i、25j、25k、251の長さは3mmであり、分岐25mの長さは1.5mmであり、流路26a、26b、26c、26d、26e、26f、26g、26h、26i、26j、26k、26lの長さは10.6mmであるが、これらの値は1μm以上の任意の値に設定することが可能である。
【0050】
また、部分27の幅は20μmであり、分岐25a、25b、25c、25d、25e、25f、25g、25h、25i、25j、25k、25l、25mの幅は200μmであり、流路26a、26b、26c、26d、26e、26f、26g、26h、26i、26j、26k、26lの幅は50μmであるが、これらの値はそれぞれ100nm以上の任意の値に設定することが可能である。
【0051】
また分岐24a、24bの幅は、100μmであるが、これらの値はそれぞれ100nm以上の任意の値に設定することが可能である。
【0052】
本実施例では、出口分岐の数は13個であるが、出口分岐が多い方が、より精密な分級が可能となり、分岐の数は任意の値に設定する事が可能である。
【0053】
以上の構成において、上記で示したマイクロチップ20を用いて合成高分子、無機粉体、金属粉体、動植物細胞、微生物、エマルジョンなどの粒子を分離する連続粒子分離機構及びその装置について説明する。
【0054】
流路構造21に導入された粒子は、流体の流れと共に下流方向に移動するが、この時、2つの入口側ポート22a、22bから導入された流体の流量を適切に調節することで、流路構造21における部分27において、流れと垂直な方向における粒子の位置を粒子の大きさによって制御することができる。
【0055】
以下に、図2(c)を用いて粒子の位置を制御する機構を説明する。ここで、流体100Pと、斜線で示した流体100Nは、それぞれ粒子を含む流体と、粒子を含まない流体であり、粒子200d、200eは、それぞれ相対的に大きな粒子と相対的に小さな粒子を示している。
【0056】
まず、粒子を含む流体100P及び粒子を含まない流体100Nを、シリンジポンプなどを用いて2つの入口側ポート22a、22bからそれぞれ連続的に供給する。この時、流路構造21内では、それぞれの流体が安定な層流を保ちながら流れる。
【0057】
そして、粒子を含む流体100P及び粒子を含まない流体100Nの流量を調節することで、部分27における流体100Pの幅が、分離対象とする最小の粒子の粒径よりも小さくなるようにする。この操作により、分離対象とする全ての粒子は、部分27における片方の壁27aに沿って流れるようになり、部分27において流れと垂直な方向における粒子の位置を、粒子の大きさによって一定にすることができる。
【0058】
そして、部分27における流れが、分岐25a、25b、25c、25d、25e、25f、25g、25h、25i、25j、25k、25l、25mに分配される時に、粒子はその中心位置が存在する流れに乗ってそれぞれの分岐に分離し、導入される。
【0059】
流路構造21では、粒子の中心位置が存在しない壁27b側の流れの80%が25mに流れるように設計されているので、粒子の中心位置の存在する残りの20%の流れを分岐25a、25b、25c、25d、25e、25f、25g、25h、25i、25j、25k、25lに分配するため、粒径の近い粒子の分離が可能となる。
【0060】
実際に、このマイクロチップ20を用い、流体としては0.5wt%ツイーン80水溶液を用いて、直径1.0μm及び2.1μmのポリスチレン−ジビニルベンゼンビーズ混合物の分級に成功している。
【0061】
これ以外にも、血液中からの血球の分離や酵母と大腸菌の分離などにも成功している。
【0062】
上記で述べた連続粒子分離機構及びその装置の実施形態を備えた流路構造21は、請求項2に記載の連続粒子分離機構及びその装置であるが、これに限られるものではないことは勿論であり、請求項2及び請求項3に記載の連続粒子分離機構及びその装置の組み合わせを図3(a)(b)に示す。
【0063】
図3(a)(b)には、本発明による連続粒子分離機構及びその装置の実施形態を備えたマイクロチップ30が示されており、図3(b)は、図3(a)におけるC−C線による断面図である。
【0064】
このマイクロチップ30は、粒子をその大きさにより分離するためのマイクロチップであり、例えば、PDMS(ポリジメチルシロキサン)などの高分子の基板38の下面38aに流路構造31aが形成されており、また基板39の上面39aに流路31bが形成されており、基板38aと基板39aはPDMS(ポリジメチルシロキサン)などの高分子の薄膜300を介して貼り合わせられている。
【0065】
流路構造31aの深さは15μm程度であり、流路構造31bの深さは35μm程度であるが、この値は100nmから1cmまでの任意の値に設定することが可能である。
【0066】
流路構造31aは、入口側ポート32a、32b、及び出口側ポート33a、33b、33cを有し、入口側ポート32a、32bは、それぞれ粒子を含む流体と粒子を含まない流体の入口であり、出口側ポート33a、33b、33cは流体の出口である。
【0067】
また、流路構造31aの一方の端は、2つの分岐(分岐34a、34b)になっており、もう一方の端は3つの分岐(分岐35a、35b、35c)になっている。
【0068】
ここで、分岐34a、34bは、それぞれ入口側ポート32a、32bへ接続されており、また分岐35a、35b、35cはそれぞれ出口側ポート33a、33b、33cへ接続されている。
【0069】
なお、流路構造31aの全体の長さ、つまり、入口側ポート32a、32bのある一方の端から、出口側ポート33bの端までの長さは20.3mmであり、部分37の長さは50μmであり、分岐35a、35bの長さは12mmであり、分岐35cの長さは5mmであるが、これらの値は1μm以上の任意の値に設定することが可能である。
【0070】
また、部分37の幅は20μmであり、分岐35a、35bの幅は100μmであり、分岐35cの幅は200μmであるが、これらの値はそれぞれ100nm以上の任意の値に設定することが可能である。
【0071】
また分岐34a、34bの幅は、50μmであるが、これらの値はそれぞれ100nm以上の任意の値に設定することが可能である。
【0072】
また、流路構造31bの一方の端はポート32cへ接続されており、もう一方の端は閉鎖されている。
【0073】
また流路構造31bの幅は300μmであるが、この値は100nm以上の任意の値に設定することが可能である。
【0074】
また、分岐35aの一部と流路構造31bの一部は膜300を介して重なっている。
【0075】
ここで、ポート32cから圧力制御する事により流路35aと流路構造31bとに挟まれた部分の膜300が上下に移動し、分岐35aへ流れる流量を制御できる。
【0076】
これによって、それぞれの出口につながる分岐流路に流れる流量を微調整する事ができ、粒子を粒径の違いによって別々に回収しやすくなる。
【0077】
実際に、このマイクロチップ30を用い、流体としては0.5wt%ツイーン80水溶液を用いて、直径1.0μm及び5.0μmのポリスチレン−ジビニルベンゼンビーズ混合物の分級に成功している。
【0078】
上記の発明による連続粒子分離機構及びその装置の実施形態を備えたマイクロチップ30は、請求項2及び請求項3に記載の連続粒子分離機構及びその装置の組み合わせであるが、出口やバルブの数は任意に設定する事が可能である。
【0079】
上記の発明による連続粒子分離機構及びその装置の実施形態を備えたマイクロチップ20及び30では、分離対象とする粒子の最大直径が図2及び図3における部分27及び部分37の幅よりも小さくなくてはならないが、分級する目的の粒子の径に合わせてそれらの幅を変えることで、例えば1ナノメートルから1センチメートルの、任意の大きさの粒子を分級することができる。
【0080】
また、分離対象とする粒子群の粒度分布が広い場合には、分級された後に複数の出口側ポートから回収された粒子を、続いて、図2及び図3における部分27及び部分37の幅を変えた流路に導入し、更なる分級を行えばよい。
【0081】
さらに、分級処理量は流路の数に比例するため、大量処理を目的とする場合には同型の流路を並列化すればよく、流路がマイクロチップ上に形成されたマイクロチャネルの場合には、一つのマイクロチップ上に容易に多数の同型の流路を並列化することができる。
【0082】
これ以外にも、分級対象とする粒子の最大直径が、図2及び図3における部分27及び部分37の幅以下であれば、任意の大きさの粒子を分級する事ができる。
【0083】
また、粒子を懸濁させる流体には、任意の液体または気体を用いることができる。
【0084】
なお、粒子を含む流体と粒子を含まない流体は、どちらも同じ流体から構成されていても良く、また、それぞれ2種類以上の異なる流体から構成されていても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による連続粒子分離機構及びその装置の最良の形態を示す模式図である。
【図2】本発明による連続粒子分離機構及びその装置を備えたマイクロチップ20を示し、(b)は(a)における部分Aの拡大図であり、(c)は(b)における部分Bの拡大図である。
【図3】本発明による連続粒子分離機構及びその装置を備えたマイクロチップ30を示し、(b)は(a)におけるC−C線による断面図である。
【符号の説明】
11 流路構造
14a〜14b 入口側分岐
15a〜15e 出口側分岐
17 流路11の部分
20 マイクロチップ
21 流路構造
22a〜22b 入口側ポート
23a〜23m 出口側ポート
24a〜24b 入口側分岐
25a〜25m 出口側分岐
26a〜26l 出口側流路
27 流路21の部分
27a〜27b 部分27の内壁
30 マイクロチップ
31a 流路構造
31b 流路構造
32a〜32b 入口側ポート
33a〜33c 出口側ポート
34a〜34b 入口側分岐
35a〜35c 出口側分岐
37 流路31aの部分
38 基板
38a 基板38下面
39 基板
39a 基板39上面
100Q 流体
100R 流体
100P 流体
100N 流体
200a〜e 粒子
300 膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路Xの両端が複数に分岐し、片方の端からはそれぞれ別の入口につながる複数の分岐流路を有し、もう片方の端からはそれぞれ別の出口につながる複数の分岐流路を有した流路構造を利用し、前記入口のうち少なくとも一つ以上の入口から微粒子を含む流体を導入し、また前記入口のうち少なくとも一つ以上の入口から微粒子を含まない流体を導入し、導入する流体の流量をそれぞれ調節する事により、流路Xにおいて微粒子を流路壁面に並べ、粒径の違いによる粒子の中心位置の差を生じさせる事により、前記それぞれ別の出口につながる複数の分岐流路へと粒子を分離し導入するのであるが、その際に前記それぞれ別の出口につながる複数の分岐流路のうち少なくとも一つ以上の流路が、分配される流量が他の流路と異なる事によって、粒子の中心位置の差を効率的に増幅させ、粒子を粒径の違いによってそれぞれ別の出口につながる分岐流路に分離し導入する連続粒子分離機構及びその装置。
【請求項2】
請求項1に記載の連続粒子分離機構及びその装置において、分配される流量が他の流路と異なる流路として、流路の幅、深さ、長さ等が他の出口につながる複数の分岐流路と異なる流路を少なくとも一つ以上有する事を特徴とした連続粒子分離機構及びその装置。
【請求項3】
請求項1に記載の連続粒子分離機構及びその装置において、分配される流量が他の流路と異なる流路として、流路内部もしくは流路下流に調節可能なバルブを持つ流路を少なくとも一つ以上有する事を特徴とした連続粒子分離機構及びその装置。
【請求項4】
請求項1に記載の連続粒子分離機構及びその装置において、分配される流量が他の流路と異なる流路として、流路内部に流体を導入または排出する事のできる分岐流路Zを持つ流路を少なくとも一つ以上有する事を特徴とした連続粒子分離機構及びその装置。
【請求項5】
請求項1に記載の連続粒子分離機構及びその装置において、分配される流量が他の流路と異なる流路として、流路の温度を制御する事により、流路内の流体の粘度を制御できる流路を少なくとも一つ以上有する事を特徴とした連続粒子分離機構及びその装置。
【請求項6】
請求項1に記載の連続粒子分離機構及びその装置において、請求項2、請求項3、請求項4及び請求項5に記載の連続粒子分離機構及びその装置のうち、少なくとも2つ以上を任意に組み合わせた事を特徴とした連続粒子分離機構及びその装置。
【請求項7】
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5及び請求項6のいずれか1項に記載の連続粒子分離機構及びその装置において、前記流路の幅、深さ、直径などのいずれかのスケールがセンチメートル以下のオーダーであり、前記流路内において流体は安定な層流を保ちながら流れる事を特徴とした連続粒子分離機構及びその装置。
【請求項8】
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6及び請求項7のいずれか1項に記載の連続粒子分離機構及びその装置において、導入される流体として液体を用いる事を特徴とした連続粒子分離機構及びその装置。
【請求項9】
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6及び請求項7のいずれか1項に記載の連続粒子分離機構及びその装置において、導入される流体として気体を用いる事を特徴とした連続粒子分離機構及びその装置。
【請求項10】
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6、請求項7、請求項8及び請求項9のいずれか1項に記載の連続粒子分離機構及びその装置において、流路Xの幅、深さ、直径等のうち少なくとも一つのスケールが異なる複数の前記流路構造を、複数直列に接続することにより、多段階で分級を行う事を特徴とした連続粒子分離機構及びその装置。
【請求項11】
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6、請求項7、請求項8、請求項9及び請求項10のいずれか1項に記載の連続粒子分離機構及びその装置において、前記流路構造がマイクロチップに形成されたチャネルである事を特徴とした連続粒子分離機構及びその装置。
【請求項12】
請求項11に記載の連続粒子分離機構及びその装置において、請求項3に記載のバルブがマイクロ膜バルブである事を特徴とした連続粒子分離機構及びその装置。

【図1】
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【図2】
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【図2】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−263693(P2006−263693A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−120286(P2005−120286)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【出願人】(504402474)
【Fターム(参考)】