説明

微粒子捕集装置

【課題】 0.1〜10μm程度の微粒子を高効率で分離・回収することができる、新規な微粒子捕集装置の開発を技術課題とした。
【解決手段】 機密性を維持することのできる筐体2と、この筐体2内に配されたフィルタユニット5とを具え、前記筐体2に形成された給気口20またはフィルタユニット5に形成された流入口57に供給される被処理気体A中の微粒子Gを分離するように構成された装置において、前記フィルタユニット5に具えられるフィルタエレメント55は中空糸膜によって形成されたものであることを特徴として成るものであり、0.1〜10μm程度の微粒子を高効率で気体中から分離することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は気体中の微粒子を分離・除去するための装置に関するものであり、特に0.1〜10μm程度の微粒子を高効率で分離することができるとともに、これを回収することのできる装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、気体中の粉塵等の微粒子を分離・除去するための装置には種々のものがあるが、現在報告されている分離限界径のおおよそはサイクロン方式の装置で5μm、スクラバ方式の装置で1μm、静電気方式の装置で0.2μm、バグフィルタ方式の装置で0.1μm、高性能フィルタでサブミクロンオーダーとされている。
【0003】
しかしながら0.1〜10μm程度の微粒子を気体中から高効率で分離するとともに、これを製品等として回収しようとした場合、現実には十分な能力を有する装置がないのが実情である。
まず慣性力によるサイクロンや重力沈降によるレシーバ等の装置は、処理風量の適応範囲が広いものの、0.1〜10μm度の微粒子の分離・回収は困難なものである。
またバグフィルタ方式の装置は、濾布に付着した微粒子を濾過層として利用することにより微粒子の捕集を行うものであるため、原理的に100%の捕集は不可能なものであって、更にまた湿った微粒子を扱うのは不可である。
また静電気方式の装置は、イニシャルコストが高く、更にまた大風量向きの装置であるため小風量には不向きである。また高性能フィルタの中には0.1μm以下の微粒子の捕集ができるものもあるが、回収することは困難であり、更にまた湿った微粒子を扱うのは不可である(例えば特許文献1、2、3、4及び非特許文献1参照)。
【0004】
このように既存の集塵機等の微粒子捕集装置では、0.1〜10μm程度の微粒子を高効率で分離するとともに、回収することには限界がある。
【特許文献1】特開平6−285321号公報
【特許文献2】特開平7−96127号公報
【特許文献3】特開平8−281041号公報
【特許文献4】特開2000−262829公報
【非特許文献1】化学装置 1998年4月号第84頁表
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような背景を認識してなされたものであって、特に0.1〜10μm程度の微粒子を高効率で分離・回収することができる、新規な微粒子捕集装置の開発を技術課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち請求項1記載の微粒子捕集装置は、機密性を維持することのできる筐体と、この筐体内に配されたフィルタユニットとを具え、前記筐体に形成された給気口またはフィルタユニットに形成された流入口に供給される被処理気体中の微粒子を分離するように構成された装置において、前記フィルタユニットに具えられるフィルタエレメントは中空糸膜によって形成されたものであることを特徴として成るものである。
この発明によれば、0.1〜10μm程度の微粒子を高効率で気体中から分離することができる。
【0007】
また請求2記載の微粒子捕集装置は、前記要件に加え、前記中空糸膜によって分離された微粒子を回収するための機構を具えたことを特徴として成るものである。
この発明によれば、フィルタエレメントに付着した微粒子を回収することができるため、微粒子捕集装置を医薬品等の粉体製品の製造に適用することが可能となる。
【0008】
更にまた請求3記載の微粒子捕集装置は、前記請求項2記載の要件に加え、前記微粒子を回収するための機構は、フィルタユニットを加振するものであることを特徴として成るものである。
この発明によれば、微粒子を迅速に回収することができる。
【0009】
更にまた請求4記載の微粒子捕集装置は、前記請求項2記載の要件に加え、前記微粒子を回収するための機構は、フィルタユニットをパージするものであることを特徴として成るものである。
この発明によれば、微粒子を迅速に回収することができる。
【0010】
更にまた請求5記載の微粒子捕集装置は、前記請求項1、2、3または4記載の要件に加え、前記フィルタユニットは、メンテナンス時に洗浄されるものであることを特徴として成るものである。
この発明によれば、製品の品替えやフィルタユニットの交換等のメンテナンスを安全且つ確実に行うことができる。
そしてこれら各請求項記載の発明の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、0.1〜10μm程度の微粒子を気体中から高効率で分離・回収することができる新規な微粒子捕集装置を提供することができる。そしてこのような微粒子捕集装置を医薬品等の製造に適用することにより、製品の回収率が高くなり生産効率を高めることが可能となる。またメンテナンスを安全且つ確実に行うことができる。更に人体や自然に影響を及ぼす微粒子(有害物質)の放出・飛散を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の微粒子捕集装置の最良の形態は以下の実施例に説明するとおりであって、形態を異ならせた複数の実施例毎に説明するものとする。なお詳しくは後述するが、本発明の微粒子捕集装置には、膜外捕集型のものと、膜内捕集型のものとがある。
また以下に示す実施例に対して、本発明の技術的思想の範囲内において適宜変更を加えることも可能である。
【実施例1】
【0013】
まずはじめに本発明の微粒子捕集装置1のうち、一般家庭用や小型の無菌室内の雰囲気を浄化する場合のように、比較的小風量の被処理気体Aを扱うのに適した小型の装置について説明すると、このものは図1に示すように、一例として中空円筒状の筐体2内にフィルタユニット5が具えられて成るものである。
【0014】
〔膜外捕集型の微粒子捕集装置〕
このような小型の微粒子捕集装置1のうち膜外捕集型の装置は図1(a)に示すように構成されるものであり、前記筐体2は機密性を維持することのできるように構成され、この筐体2に対し、微粒子Gを伴う被処理気体Aの給気口20と、洗浄液Lの給液口21及びドレン口22が形成される。
なお前記筐体2の容積は、後述するフィルタエレメント55に対して必要最低限の容積となるようにするものであり、これにより内部雰囲気の加熱、メンテナンスが容易に行われるようにするものであり、更に洗浄液Lの使用量を少なくすることができる。
【0015】
また前記フィルタユニット5は図2(a)に示すように、一例として一対の円形側板51、52の間を三本のポール53によって連結して成るハウジング50内に、中空糸膜をフィルタエレメント55として具えて成るものである。
前記中空糸膜は、一例としてシリコーンゴムを素材とし、柔軟性に富み、優れた破断強度と耐屈曲性を有するとともに、孔のない均質膜として形成されたものである。このため湿った微粒子Gであっても問題なく捕集することができるものである。
そして個々の中空糸膜は、一方の円形側板51に形成された流出口56に連通されるものであり、中空糸膜の表面からその内部に侵入した被処理気体Aが流出口56を通じて外部に排気されるように構成されるものである。
なお前記フィルタユニット5は図1(a)に示すように、円形側板51が筐体2の天板23に形成された孔に内嵌めされ、更に円形側板52が底板23aに形成された孔に内嵌めされて適宜シーラ等によって気密処理が施される。
またこの状態で筐体2内において前記フィルタユニット5を囲繞するように、パンチングメタル等によって形成された通気性の分散板3が配されるものであり、この分散板3の孔からフィルタエレメント55にパージエアを吹き付けるためのパージ機構6が具えられる。なお前記分散板3には、中空糸膜への微粒子Gの固着防止のため適宜伝熱線等の加熱手段を具えるようにしてもよい。
【0016】
そして前記給気口20、給液口21及びドレン口22に対して、それぞれバルブV1、V2、V3を具えた管路が接続される。また前記流出口56には排気ポンプPを具えた管路が接続される。
また前記筐体2は、偏芯モータ等の適宜の加振機構を具えた加振器7に載置されるものである。
【0017】
本発明の微粒子捕集装置1のうち、小型の装置であり、且つ膜外捕集型の装置は一例として上述したように構成されるものであり、以下この装置の作動態様について説明する。
まずバルブV2、V3を閉じた状態でバルブV1を開放するとともに、排気ポンプPを起動すると、被処理気体Aは微粒子Gを伴って給気口20から筐体2の内部に導入される。そして被処理気体A及び微粒子Gは分散板3の作用によってフィルタエレメント55の全域にわたって分散されるものであり、図2(a)に拡大して示すように、被処理気体Aのみが中空糸膜の内部に侵入し、微粒子Gは中空糸膜の外側に付着することとなる。
一方、中空糸膜を通過した被処理気体Aは排気ポンプPによって吸引され、外部に排気される。
【0018】
このような処理を継続し、フィルタエレメント55が飽和した時点であるいはその前の段階で排気ポンプPを停止し、微粒子Gの回収が図られるものである。具体的にはパージ機構6を機能させ、フィルタエレメント55に対して気流を吹き付けるものであり、この気流によって中空糸膜の外側に付着していた微粒子Gは筐体2内に落下することとなる。
更に続いて、加振器7を機能させて筐体2に振動を加えると、この振動はフィルタユニット5に伝わり、中空糸膜の外側に付着していた微粒子Gは筐体2内に落下することとなる。
そしてドレン口22から、あるいは天板23を取り外すとともに適宜フィルタユニット5を筐体2から取り外す等して微粒子Gを回収するものである。
またメンテナンス時には、給液口21から微粒子Gの溶剤を洗浄液Lとして筐体2内に供給し、この洗浄液Lに微粒子Gを溶解させてフィルタエレメント55の洗浄を行うとともに、ドレン口22から外部に排出し、微粒子G(溶質)の回収を行うものとする。
【0019】
〔膜内捕集型の微粒子捕集装置〕
次に小型の微粒子捕集装置1のうち膜内捕集型の装置について説明すると、このものは図1(b)に示すように構成されるものであり、前記筐体2は機密性を維持することのできるように構成され、この筐体2に対し、排気口24が形成される。
なお前記筐体2の容積は、後述するフィルタエレメント55に対して必要最低限の容積となるようにするものであり、これにより内部雰囲気の加熱、メンテナンスが容易に行われるようにするものであり、更に洗浄液Lの使用量を少なくすることができる。
【0020】
また前記フィルタユニット5は図2(b)に示すように、一例として一対の円形側板51、52の間を三本のポール53によって連結して成るハウジンク50内に、中空糸膜をフィルタエレメント55として具えて成るものである。
前記中空糸膜は、一例としてシリコーンゴムを素材とし、柔軟性に富み、優れた破断強度と耐屈曲性を有するとともに、孔のない均質膜として形成されたものである。
そして個々の中空糸膜は、円形側板51に形成された流入口57及び円形側板52に形成された流出口56に対して連通されるものであり、流入口57から中空糸膜の内部に侵入した被処理気体Aが中空糸膜を通過して外部に排気されるように構成されるものである。
なお前記フィルタユニット5は図1(b)に示すように、円形側板51が筐体2の天板23に形成された孔に内嵌めされ、更に円形側板52が底板23aに形成された孔に内嵌めされて適宜シーラ等によって気密処理が施される。
またこの状態で筐体2内において前記フィルタユニット5を囲繞するように、パンチングメタル等によって形成された通気性の分散板3が配されるものであり、この分散板3には中空糸膜への微粒子Gの固着防止のため適宜伝熱線等の加熱手段を具えるようにしてもよい。
【0021】
そして前記流入口57に対して、それぞれバルブV4、V2を具えた管路が接続され、流出口56に対してバルブV5を具えた管路が接続される。また前記排気口24には排気ポンプPを具えた管路が接続される。
更に前記流入口57に接続された管路には、フィルタエレメント55内にパージエアを吹き付けるためのパージ機構6が具えられる。
また前記筐体2は、偏芯モータ等の適宜の加振機構を具えた加振器7に載置されるものである。
【0022】
本発明の微粒子捕集装置1のうち、小型の装置であり、且つ膜内捕集型の装置は一例として上述したように構成されるものであり、以下この装置の作動態様について説明する。
まずバルブV2、V5を閉じた状態でバルブV4を開放するとともに、排気ポンプPを起動すると、被処理気体Aは微粒子Gを伴って流入口57からフィルタエレメント55の中空糸膜の内部に導入される。
そして図2(b)に拡大して示すように被処理気体Aのみが中空糸膜の外部に流出し、微粒子Gは中空糸膜の内側に付着することとなる。
一方、中空糸膜を通過した被処理気体Aは排気ポンプPによって吸引され、排気口24から外部に排気される。
【0023】
このような処理を継続し、フィルタエレメント55が飽和した時点であるいはその前の段階で排気ポンプPを停止し、微粒子Gの回収が図られるものである。具体的にはバルブV5を開放した状態でパージ機構6を機能させ、フィルタエレメント55の中空糸膜内に気流を吹き付けるものであり、この気流によって中空糸膜の内側に付着していた微粒子Gは流出口56から外部に取り出されることとなる。
更に続いて、加振器7を機能させて筐体2に振動を加えると、この振動はフィルタユニット5に伝わり、中空糸膜の内側に付着していた微粒子Gは流出口56から外部に取り出されることとなる。
またメンテナンス時には、流入口57から微粒子Gの溶剤を洗浄液Lとして中空糸膜内に供給し、この溶剤に微粒子Gを溶解させてフィルタエレメント55の洗浄を行うとともに、流出口56から外部に排出し、微粒子G(溶質)の回収を行う
ものとする。
【実施例2】
【0024】
次に本発明の微粒子捕集装置1のうち、二酸化炭素ガス中に含まれる異物等を分離回収する場合のように、比較的大風量の被処理気体Aを扱うのに適した中型の装置について説明すると、このものは図3、4に示すように、一例として支持脚8によって支持された筐体2内に濾過面積数十平方メートルのフィルタユニット5が具えられて成るものである。
【0025】
〔膜外捕集型の微粒子捕集装置〕
このような中型の微粒子捕集装置1のうち膜外捕集型の装置は図3に示すように構成されるものであり、前記筐体2は機密性を維持することのできるように構成され、この筐体2に対し、微粒子Gを伴う被処理気体Aの給気口20と、洗浄液Lの給液口21及びドレン口22が形成される。
なお前記筐体2の容積は、後述するフィルタエレメント55に対して必要最低限の容積となるようにするものであり、これにより内部雰囲気の加熱、メンテナンスが容易に行われるようにするものであり、更に洗浄液Lの使用量を少なくすることができる。
【0026】
また前記フィルタユニット5は実施例1で説明するとともに図2(a)に示したものが用いられる。前記フィルタユニット5は図3に示すように、筐体2の天板23に形成された孔に円形側板51が内嵌めされ、適宜シーラ等によって気密処理が施される。
【0027】
更にこの実施例では、図2(c)に示すようなフィルタユニット5も併用するものであり、このものは図2(a)に示したフィルタユニット5をU字型に屈曲させたような形状を有する。
なおこのフィルタユニット5は図3に示すように、円形側板51が筐体2の天板23に形成された孔に内嵌めされ、適宜シーラ等によって気密処理が施される。
【0028】
そしてこの状態で筐体2内において前記フィルタユニット5を囲繞するように、パンチングメタル等によって形成された通気性の分散板3が配されるものであり、この分散板3の孔からフィルタエレメント55にパージエアを吹き付けるためのパージ機構6が具えられる。なお前記分散板3には適宜中空糸膜への粉粒体Gの固着防止のため伝熱線等の加熱手段を具えるようにしてもよい。
【0029】
そして前記給気口20、給液口21及びドレン口22に対して、それぞれバルブV1、V2、V3を具えた管路が接続される。また前記流出口56には排気ポンプPを具えた管路が接続される。
また前記フィルタユニット5には、偏芯モータ等の適宜の加振機構を具えた加振器7が接続されるものである。
【0030】
本発明の微粒子捕集装置1のうち、中型の装置であり、且つ膜外捕集型の装置は一例として上述したように構成されるものであり、以下この装置の作動態様について説明する。
まずバルブV2、V3を閉じた状態でバルブV1を開放するとともに、排気ポンプPを起動すると、被処理気体Aは微粒子Gを伴って給気口20から筐体2の内部に導入される。そして被処理気体A及び微粒子Gは分散板3の作用によってフィルタエレメント55の全域にわたって分散されるものであり、図2(a)(c)に拡大して示すように、被処理気体Aのみが中空糸膜の内部に侵入し、微粒子Gは中空糸膜の外側に付着することとなる。
一方、中空糸膜を通過した被処理気体Aは排気ポンプPによって吸引され、外部に排気される。このものは適宜回収されて再利用されることが好ましい。
【0031】
このような処理を継続し、フィルタエレメント55が飽和した時点であるいはその前の段階で排気ポンプPを停止し、微粒子Gの回収が図られるものである。具体的にはパージ機構6を機能させ、フィルタエレメント55に対して気流を吹き付けるものであり、この気流によって中空糸膜の外側に付着していた微粒子Gは筐体2内に落下することとなる。
更に続いて、加振器7を機能させて筐体2に振動を加えると、この振動はフィルタユニット5に伝わり、中空糸膜の外側に付着していた微粒子Gは筐体2内に落下することとなる。
そしてドレン口22から、あるいは天板23を取り外すとともに適宜フィルタユニット5を筐体2から取り外す等して微粒子Gを回収するものである。
またメンテナンス時には、給液口21から微粒子Gの溶剤を洗浄液Lとして筐体2内に供給し、この洗浄液Lに微粒子Gを溶解させてフィルタエレメント55の洗浄を行うとともに、ドレン口22から外部に排出し、微粒子G(溶質)の回収を行うものとする。
【0032】
〔膜内捕集型の微粒子捕集装置〕
次に中型の微粒子捕集装置1のうち膜内捕集型の装置について説明すると、このものは図4に示すように構成されるものであり、前記筐体2は機密性を維持することのできるように構成され、この筐体2に対し、給気口20、洗浄液Lの給液口21、ドレン口22及び排気口24が形成される。また前記給気口20の下方にはバッフル板20aが具えられる。 なお前記筐体2の容積は、後述するフィルタエレメント55に対して必要最低限の容積となるようにするものであり、これにより内部雰囲気の加熱、メンテナンスが容易に行われるようにするものであり、更に洗浄液Lの使用量を少なくすることができる。
【0033】
また前記フィルタユニット5は、中空糸膜をフィルタエレメント55として具えて成るものであり、この実施例では筐体2の内部空間のほぼ半分をフィルタエレメント55が占めるように多量の中空糸膜が使用される。
そして個々の中空糸膜は、筐体2内をダイアフラム状に仕切るように配された円形側板51に形成された流入口57及び同様に筐体2内をダイアフラム状に仕切るように配された円形側板52に形成された流出口56に連通されるものであり、流入口57から中空糸膜の内部に侵入した気体が中空糸膜を通過し、排気口24から外部に排気されるように構成されるものである。なお図示は省略するが、前記流出口56は開閉が可能な構成とするものである。
またこの状態で筐体2内において前記フィルタユニット5を囲繞するように、パンチングメタル等によって形成された通気性の分散板3が配されるものであり、この分散板3には中空糸膜への粉粒体Gの固着防止のため適宜伝熱線等の加熱手段を具えるようにしてもよい。
【0034】
そして前記給液口21、給気口20及びドレン口22に対して、それぞれバルブV2、V4、V5及び流出口56を具えた管路が接続される。また前記排気口24には排気ポンプPを具えた管路が接続される。
更に前記給気口20に接続された管路には、フィルタエレメント55内にパージエアを吹き付けるためのパージ機構6が具えられる。
【0035】
本発明の微粒子捕集装置1のうち、中型の装置であり、且つ膜内捕集型の装置は一例として上述したように構成されるものであり、以下この装置の作動態様について説明する。
まずバルブV2、V5を閉じた状態でバルブV4を開放するとともに、排気ポンプPを起動すると、被処理気体Aは微粒子Gを伴って給気口20から筐体2の内部に導入される。
そして被処理気体A及び微粒子Gはバッフル板20aの作用によってフィルタエレメント55内の全域にわたって分散されるものであり、図2(b)に拡大して示すように被処理気体Aのみが中空糸膜の外部に流出し、微粒子Gは中空糸膜の内側に付着することとなる。
一方、中空糸膜を通過した被処理気体Aは排気ポンプPによって吸引され、排気口24から外部に排気される。
【0036】
このような処理を継続し、フィルタエレメント55が飽和した時点であるいはその前の段階で排気ポンプPを停止し、微粒子Gの回収が図られるものえである。具体的にはバルブV5及び流出口56を開放した状態でパージ機構6を機能させ、フィルタエレメント55の中空糸膜内に気流を吹き付けるものであり、この気流によって中空糸膜の内側に付着していた微粒子Gはドレン口22から外部に取り出されることとなる。
またメンテナンス時には、給液口21から流入口57を通じて微粒子Gの溶剤を洗浄液Lとして中空糸膜内に供給し、この溶剤に微粒子Gを溶解させてフィルタエレメント55の洗浄を行うとともに、流出口56を通じてドレン口22から外部に排出し、微粒子G(溶質)の回収を行うものとする。
【実施例3】
【0037】
次に図5に示すように、本発明の微粒子捕集装置1を、超臨界微粒子製造装置を用いて医薬品等の微粒子Gを製造する際の捕集器1Aとして適用した実施例について説明する。
なお前記捕集器1A内は、その内部においてアセチルサリチル酸等の医薬品類の微粒子Gを生成するとともに、この微粒子Gを被処理気体A(ここでは超臨界流体F及び助溶媒Hが気化したもの)から分離するとともに、これを回収して製品とするために供されるものである。
【0038】
なお前記超臨界微粒子製造装置についての詳しい説明はここでは省略するが、このものは溶質Mを助溶媒Hに溶解させるとともに、超臨界流体Fに混合させて得られた溶質溶解超臨界流体Sを、捕集器1A内にノズル25から噴霧して急速に膨張させることにより、所望性状の微粒子Gを得るための装置である。
そして前記超臨界微粒子製造装置には、前記超臨界流体Fを得るための系が具えられるものであり、図示は省略するが一例としてボンベ内に充填された二酸化炭素をチラーユニットにおいて冷却し、次いでポンプ及び予熱器によって昇圧、昇温することにより臨界点を超えさせるような構成が採られるものである。
因みに二酸化炭素は比較的安価で入手することができ、更に臨界温度が31.1℃、臨界圧力が7.38MPaであり、常温、常圧で気体となるため分離操作が容易に行える溶媒である。
【0039】
次に前記捕集器1Aについて説明すると、このものは図5に示すように、気密状態を維持できるように形成された筐体2と、この筐体2の内部に噴出部を臨ませるようにして配されるノズル25とを具えて成るものである。
前記ノズル25は前出の予熱器に接続されるものであり、ここから筐体2内に溶質溶解超臨界流体Sが噴出される。
【0040】
また筐体2の天板23に形成された排気口24の下方にはフィルタユニット5が接続されるものであり、この実施例では図2(a)に示したフィルタユニット5を二基具えるようにした。
なおこの実施例では膜外捕集型を採用したため、図2(a)に示したフィルタユニット5を用いたが、同じく膜外捕集型を採用する場合に図2(c)に示したフィルタユニット5を用いてもよく、更には膜内捕集型を採用する場合に図2(b)に示したフィルタユニット5を用いるようにしてもよい。
【0041】
この実施例で示す微粒子捕集装置1たる捕集器1Aは一例として上述のようにして構成されるものであり、以下、この装置の作動態様について説明する。なおこの実施例では、溶質Mとしてアセチルサリチル酸を用い、溶媒として二酸化炭素の超臨界流体Fを用い、更に助溶媒Hとしてエタノールを用い、最終的に粒径0.01mmφ程度の微粒子Gを得るとともに、このものを回収する工程について説明を行う。
【0042】
まず二酸化炭素ガスを、超臨界流体Fの圧力が15MPaG、温度が45〜60℃となるように昇圧、昇温し、この超臨界流体Fと溶質Mを溶解させた助溶媒Hとを混合して溶質溶解超臨界流体Sを生成する。
【0043】
次いで筐体2内を大気圧とするとともに、ノズル25から溶質溶解超臨界流体Sを噴霧させるものであり、このものは急速に膨張し、溶質溶解超臨界流体S中の超臨界流体Fは瞬時に気化し、更に助溶媒Hが速やかに気化し、このとき溶質Mたるアセチルサリチル酸が析出されて所望性状の微粒子Gが得られることとなる。
そして微粒子Gは筐体2の底面及びその付近に堆積して捕集されることとなる。
【0044】
一方、前記気化した超臨界流体F及び助溶媒H、すなわち溶媒ガスFG及び助溶媒ガスHGは、フィルタエレメント55の中空糸膜の内部に侵入し、これら溶媒ガスFG及び助溶媒ガスHG中の微粒子Gは中空糸膜の外側に付着することとなる。
一方、中空糸膜を通過した溶媒ガスFG及び助溶媒ガスHGは排気ポンプPによって吸引され、外部に排気されるとともに適宜回収・再利用される。
【0045】
このような処理を継続し、フィルタエレメント55が飽和した時点であるいはその前の段階で排気ポンプPを停止し、微粒子Gの回収が図られるものである。
具体的には天板23を取り外すとともに、筐体2の底面及びその付近に堆積していた微粒子Gを回収するものである。
もちろんこのような作業に先立って、実施例1及び2で説明したパージ機構6あるいは加振器7を機能させ、フィルタエレメント55に対して気流を吹き付け、この気流によって中空糸膜の外側に付着していた微粒子Gを筐体2内に落下させておくようにすることもできる。
【0046】
更にまたフィルタユニット5を筐体2から取り外し、微粒子Gの溶剤たる洗浄液Lによって洗浄し、この洗浄液Lに微粒子Gを溶解させるとともに、この溶液から洗浄液Lを気化させて微粒子G(溶質)の回収を行うものとする。
もちろん実施例1及び2で説明したように、筐体2に対して給液口21及びドレン口22を設け、天板23を取り外すことなく洗浄を行えるようにすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の微粒子捕集装置のうち、小型のものを示す縦断側面図である。
【図2】フィルタユニットを示す縦断側面図である。
【図3】本発明の微粒子捕集装置のうち、中型であり膜外捕集型の装置を示す縦断側面図である。
【図4】本発明の微粒子捕集装置のうち、中型であり膜内捕集型の装置を示す縦断側面図である。
【図5】本発明の微粒子捕集装置を、超臨界微粒子製造装置を用いて医薬品等の微粒子を製造する際の捕集器として適用した実施例を示す縦断側面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 微粒子捕集装置
1A 捕集器
2 筐体
20 給気口
20a バッフル板
21 給液口
22 ドレン口
23 天板
23a 底板
24 排気口
25 ノズル
3 分散板
5 フィルタユニット
50 ハウジング
51 円形側板
52 円形側板
53 ポール
55 フィルタエレメント
56 流出口
57 流入口
6 パージ機構
7 加振器
8 支持脚
A 被処理気体
F 超臨界流体
FG 溶媒ガス
G 微粒子
H 助溶媒
HG 助溶媒ガス
L 洗浄液
M 溶質
P 排気ポンプ
S 溶質溶解超臨界流体
V1 バルブ
V2 バルブ
V3 バルブ
V4 バルブ
V5 バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機密性を維持することのできる筐体と、この筐体内に配されたフィルタユニットとを具え、前記筐体に形成された給気口またはフィルタユニットに形成された流入口に供給される被処理気体中の微粒子を分離するように構成された装置において、前記フィルタユニットに具えられるフィルタエレメントは中空糸膜によって形成されたものであることを特徴とする微粒子捕集装置。
【請求項2】
前記中空糸膜によって分離された微粒子を回収するための機構を具えたことを特徴とする請求項1記載の微粒子捕集装置。
【請求項3】
前記微粒子を回収するための機構は、フィルタユニットを加振するものであることを特徴とする請求項2記載の微粒子捕集装置。
【請求項4】
前記微粒子を回収するための機構は、フィルタユニットをパージするものであることを特徴とする請求項2記載の微粒子捕集装置。
【請求項5】
前記フィルタユニットは、メンテナンス時に洗浄されるものであることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の微粒子捕集装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−247600(P2006−247600A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−70770(P2005−70770)
【出願日】平成17年3月14日(2005.3.14)
【出願人】(000149310)株式会社大川原製作所 (64)
【Fターム(参考)】