微粒子測定装置およびそれに用いる電極
【課題】電界の不均一性を誘起するための電極構造を簡素化してコストを低減することが可能な微粒子測定装置およびそれに用いる電極を提供する。
【解決手段】微生物測定装置は、基板31,32間に電極33,34を設け、一方の電極34上に電界歪を作るための構造体35を設けてチャンバ1を構成する。また、チャンバ1の一方の端に試料導入口37を設け、他方の端に流出口38を設ける。そして、チャンバ1内を懸濁液で満たし、電極33,34を泳動電源部4に接続して電界を印加する。これによれば、構造体35が一対の電極33,34間に配置され電界の不均一性を誘起するので、懸濁液中の微粒子に誘電泳動力を作用させる電極33,34の構造を簡素化して微粒子測定装置のコストを低減することが可能になる。
【解決手段】微生物測定装置は、基板31,32間に電極33,34を設け、一方の電極34上に電界歪を作るための構造体35を設けてチャンバ1を構成する。また、チャンバ1の一方の端に試料導入口37を設け、他方の端に流出口38を設ける。そして、チャンバ1内を懸濁液で満たし、電極33,34を泳動電源部4に接続して電界を印加する。これによれば、構造体35が一対の電極33,34間に配置され電界の不均一性を誘起するので、懸濁液中の微粒子に誘電泳動力を作用させる電極33,34の構造を簡素化して微粒子測定装置のコストを低減することが可能になる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電泳動を用いて懸濁液中の微粒子数を測定するための微粒子測定装置およびそれに用いる電極に関する。更に詳しくは、電界の不均一性を誘起するための電極構造を簡素化して簡易な製造を可能とし、コストを低減することが可能な微粒子測定装置およびそれに用いる電極に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、食中毒や感染症などの原因となり、人体に何らかの害を及ぼす可能性がある微生物を、迅速、簡便、高感度に定量測定するニーズは特に高い。食品の製造工程や微生物検査施設を備えない診療所などにおいて、その場で微生物検査を実施することで、食中毒や感染症などの防止、予防が可能になるためである。
【0003】
また、いわゆるバイオセンサにおいて、抗体など、測定対象に特異的に結合する物質を標識したポリスチレンなどの人工微粒子を用いて、検体中の生化学的物質を定量測定する際に、検体中の微粒子数あるいはその結合状態を定量測定する必要がある。このように、昨今、液体中に含まれる微粒子を迅速、簡便、定量的に測定する要求は高い。
【0004】
ここで、本願における微粒子の定義について説明する。本願で言う微粒子とは、ポリスチレンやそれらに何らかのコーティングを施した粒子、カーボンナノチューブ、金コロイドなどの金属粒子、細菌、真菌、放線菌、リケッチア、マイコプラズマ、ウイルス、として分類されているいわゆる微生物、原生動物や原虫のうちの小型のもの、生物体の幼生、動植物細胞、精子、血球、核酸、蛋白質等も含む広い意味での生体または生体由来の微粒子である。この他にも、本願で言う微粒子とは、誘電泳動可能な大きさのあらゆる粒子を意味する。本願では特に、微生物の測定を想定しており、以下、測定対象を微生物として説明を行う。
【0005】
従来、微生物の検査法として最も一般的に用いられるのは培養法である。培養法は、培地上に微生物検体を塗抹し、微生物が生育条件下で培養を行い、形成される培地上のコロニー数を計数することで微生物数を定量する方法である。
【0006】
しかし、コロニー形成までに通常1〜2日、微生物種によっては数週間を要するため、迅速な検査を実施できない問題があった。また、濃縮や希釈、培地への塗抹などが必要なため、専門家による操作が必要であり、簡便な検査が実施できない、あるいは操作上のバラツキによる精度低下の問題があった。
【0007】
これら従来の問題を解決するため、本発明者は他の発明者らと共に、迅速、簡便、高感度な微生物数測定法として、誘電泳動とインピーダンス計測を組み合わせたDEPIM(Dielectrophoretic Impedance Measurement Method)法を提案した(例えば、特許文献1を参照)。
【0008】
DEPIM法は、微生物を誘電泳動力によってマイクロ電極に捕集し、同時にマイクロ電極のインピーダンス変化を測定することによって試料液中の微生物数を定量測定する方法である。以下、その測定原理について概説する。
【0009】
微生物は一般に、イオンリッチで誘電率および導電率の高い細胞質および細胞壁が、比較的誘電率および導電率の低い細胞膜に囲まれた構造を有し、誘電体粒子とみなすことができる。DEPIM法では、電界中で分極した誘電体粒子に一定方向に働く力である誘電泳動力を利用し、誘電体粒子である微生物をマイクロ電極のギャップ間に捕集する。
【0010】
誘電体粒子に働く誘電泳動力FDEPは、以下の(数1)で与えられることが公知である(例えば、非特許文献1を参照)。以下、誘電体粒子が、微生物である場合を例として説明する。
【0011】
【数1】
【0012】
ここで、a:球形近似したときの微生物の半径、ε0:真空の誘電率、εm:試料液の比誘電率、E:電界強度であり、▽は演算子で勾配(gradient)を表す。この場合、▽E2は、電界E2の勾配なので、その位置でどれだけE2が傾斜を持っているか、つまり電界Eが空間的にどれだけ急に変化をするかを意味する。また、Kはクラウジウス・モソッティ数と呼ばれ、(数2)で表され、Re[K]>0は正の誘電泳動を表し、微生物は電界勾配と同方向、つまり、電界集中部に向かって泳動される。Re[K]<0は負の誘電泳動を表し、電解集中部から遠ざかる方向、すなわち弱電界部に向かって泳動される。
【0013】
【数2】
【0014】
ここで、εb*およびεm*はそれぞれ、微生物および溶液の複素誘電率を表し、一般に複素誘電率εr*は(数3)で表される。
【0015】
【数3】
【0016】
ここで、εr:微生物あるいは試料液の比誘電率、σ:微生物あるいは試料液の導電率、ω:印加電界の角周波数を表す。
【0017】
(数1)(数2)(数3)から、誘電泳動力は、微生物の半径、クラウジウス・モソッティ数の実部(以下、Re[K]と表す)および電界強度に依存することが分かる。また、Re[K]は、試料液および微生物の複素誘電率、電界周波数に依存して変化することが分かる。
【0018】
そのため、DEPIM法では、これらのパラメータを適切に選択し、微生物に働く誘電泳動力を十分大きくし、微生物を電極ギャップに確実に捕集する必要がある。また、DEPIM法では、上記誘電泳動による電極への微生物捕集と同時に、電気的計測を行い、試料液中の微生物数を定量測定することを特徴としている。
【0019】
微生物は、前述した構造を有するため、電気的には固有のインピーダンスを持った微粒子と考えることができる。そのため、誘電泳動によりマイクロ電極のギャップ間に捕集される微生物数が増加すると、その捕集数に応じて電極間のインピーダンスが変化する。
【0020】
従って、電極間インピーダンス時間変化の傾きは、単位時間当たりに電極ギャップ間に捕集される微生物数に応じた値となり、傾きの大きさは試料液中の微生物濃度に対応する。よって、電極間インピーダンス時間変化の傾きを測定することで、試料液中の微生物濃度、言い換えれば微生物数を測定することが可能となる。
【0021】
更に、DEPIM法では、誘電泳動を開始直後のインピーダンス時間変化の傾きから微生物数を定量することで、短時間での微生物測定を実現している。以上、DEPIM法の測定原理について概説したが、詳しくは非特許文献2を参照されたい。
【0022】
一方、媒体中の物体、特にはセル、リポソームもしくは同様な微小物体の電気的測定をするための装置及び方法が知られている。図11は、チャンネル内に満たされた液体51のインピーダンスを測定する装置を示す。この装置では、電極52がチャンネル内の液体にそれぞれ電気接触するよう設けられ、さらに電極52がその電流及び電圧を測定するために図示しない電気的測定装置に接続されている(例えば、特許文献2参照)。
【0023】
【特許文献1】特開2000−125846号公報
【特許文献2】特表2003−527581号公報
【非特許文献1】Hywel Morgan、他:「AC Electrokinetics:colloids and nanoparticles」、RESERCH STUDIES PRESS LTD.2003年出版、pp.15〜63
【非特許文献2】J.Suehiro, R.Yatsunami, R.Hamada, M,Hara,J.Phys. D: Appl. Phys. 32(1999)2814-2820
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
従来、DEPIMに用いる電極は、電極ギャップ間に生じる電界歪を利用した誘電泳動により細菌をトラップするために微細なギャップ(5μm程度)を用いる必要があるため製造上の困難がある。また、電極ギャップ間に生じる電界歪みは、電極エッジの限られた領域のみであるため、トラップの空間的な効率も悪く、測定感度が制限されている。
【0025】
また、電極を櫛歯状に形成して電界歪を生成していたが、電極を櫛歯状に加工することは製造上の困難性がありコストの上昇を招いていた。特に、電極は測定の都度交換することが望ましく、構造を簡素化してコストを低減させることが望まれていた。
【0026】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、電界の不均一性を誘起するための電極構造を簡素化してコストを低減することが可能な微粒子測定装置およびそれに用いる電極を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明の微粒子測定装置は、微粒子含有の液体を導入するチャンバと、前記チャンバ内に設けられた少なくとも一対の電極と、前記一対の電極間に配置され、電界の不均一性を誘起する構造体と、前記一対の電極間に交流電圧を印加し、前記微粒子に誘電泳動力を作用させる泳動電源部と、前記一対の電極間のインピーダンスの時間変化を演算し、前記チャンバ内の微粒子数を算出するインピーダンス計測装置とを備える。
【0028】
上記構成によれば、構造体が一対の電極間に配置され電界の不均一性を誘起するので、懸濁液中の微粒子に誘電泳動力を作用させる電極の構造を簡素化しつつ、微生物をトラップする空間を多く取れるため、微粒子測定装置のコストを低減しながらも測定感度を向上することが可能になる。
【0029】
また、本発明の微粒子測定装置は、前記構造体が微細孔を持つフィルタである。
【0030】
上記構成によれば、簡単な構造で微粒子を微細孔に泳動させ、懸濁液のインピーダンスを変化させることができる。
【0031】
また、本発明の微粒子測定装置は、前記微細孔の有効径が異なる複数のフィルタを備え、前記複数のフィルタに対応させて、前記一対の電極を複数組設ける。
【0032】
上記構成によれば、微細孔の有効径によってトラップする菌の種類を変えることができ、測定のダイナミックレンジを向上することができる。また、大きさの異なる測定対象を選択的に検出することができる。
【0033】
また、本発明の微粒子測定装置は、前記構造体中あるいはその表面にインピーダンス計測電極を含む。
【0034】
上記構成によれば、懸濁液のインピーダンスを測定するインピーダンス計測電極を容易に製造することができ、微粒子測定装置のコストを低減することが可能になる。
【0035】
また、本発明の微粒子測定装置は、前記構造体がイオン吸着体で構成されるものあるいはイオン吸着体を一部に含むものである。
【0036】
上記構成によれば、イオン吸着体が懸濁液中のイオンを吸着し、懸濁液の導電率を下げることができるため、導電率の上昇による誘電泳動力の低下を防ぎ、高い導電率の測定試料も高感度に測定することが可能になる。
【0037】
また、本発明の微粒子測定装置は、前記フィルタが前記一対の電極の表面にある。
【0038】
上記構成によれば、フィルタの微細孔に微粒子を泳動させ、簡素な構成で懸濁液のインピーダンスを変化させることができる。
【0039】
また、本発明の微粒子測定装置は、前記フィルタが前記一対の電極の両方の電極の表面にある。
【0040】
上記構成によれば、一対の電極の両方に設けられたフィルタの微細孔に微粒子を泳動させ、懸濁液のインピーダンスを効率よく変化させることができる。
【0041】
また、本発明の微粒子測定装置は、前記フィルタが前記一対の電極の中間に位置する。
【0042】
上記構成によれば、フィルタを一対の電極の中間に配置し、フィルタの両側に微粒子をトラップすることができ、微粒子のトラップ効率を向上させることができる。
【0043】
また、本発明の微粒子測定装置において、前記インピーダンス計測装置は、インピーダンスの初期変化により前記微粒子数を測定する。
【0044】
上記構成によれば、インピーダンスの初期変化により微粒子数を測定するので、測定時間を短縮することができる。
【0045】
また、本発明の微粒子測定装置は、検出物質に特異的に結合し、凝集塊を形成する試薬を含む。
【0046】
上記構成によれば、検出物質に特異的に結合し凝集塊を形成するので、凝集塊の大きさに応じて誘電泳動力が大きくなり、他の物質が混在した中でも、検出物質を特異的に測定することが可能になる。
【0047】
また、本発明の微粒子測定装置は、前記一対の電極が透明であり、前記構造体を透明基板上に構成し、前記チャンバ内の微粒子数を光学測定する。
【0048】
上記構成によれば、チャンバ内の微粒子数を光学測定するので、懸濁液の導電率に依存することなく微粒子数を測定することができる。
【0049】
また、本発明は、上記の微粒子測定装置に用いる電極である。
【0050】
上記構成によれば、電極の構造を簡素化して微粒子測定装置のコストを低減することが可能になる。
【発明の効果】
【0051】
本発明によれば、構造体が一対の電極間に配置され電界の不均一性を誘起するので、懸濁液中の微粒子に誘電泳動力を作用させる電極の構造を簡素化して微粒子測定装置のコストを低減することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
以下、本発明の実施の形態の微生物測定装置について、図面を用いて説明する。図1は、本実施形態の微生物測定装置の構成図である。
【0053】
図1において、1は測定対象の微生物が含まれる懸濁液2を保持するチャンバ、3は誘電泳動で微生物を捕集する電極対を含む電極、4は泳動電源部、5は誘電泳動によってトラップされた微生物によって生じた光学的あるいは電気的な変化を測定する測定部、6は微生物測定装置全体の制御や測定結果の解析演算や入出力処理などを行う制御演算部、7は試料液2の導電率を入力するための導電率入力手段である。
【0054】
図2(a)は、本実施形態の微生物測定装置におけるチャンバ1の構成を説明するための図である。本実施形態のチャンバ1は、基板31,32間に平面電極33,34を設け、一方の平面電極34上に電界歪を作るための構造体35(絶縁体など)を設ける。そして、平面電極33と構造体35の間を懸濁液2で満たし、平面電極33,34に泳動電源部4を接続して電界を印加する。
【0055】
誘電泳動は、空間的に不均一な電界が形成された箇所で働く力なので、通常のDEP(誘電泳動)では、薄膜電極が対向した構成として、断面で見た鋭利なエッジ同士の対向部分で不均一な電界を作る。本実施形態では、電界中にメンブレンフィルタなどの構造体35を配置することで不均一な電界(電界歪)を作り、そこで誘電泳動を働かせる現象(iDEP;insulator-based DiElectroPhoresis)を利用する。構造体35は、不均一な電界を形成させられればいずれの材料も使用できるが、試料液(懸濁液2)との誘電率の差が大きいほど、大きな電界歪を形成することができるため、そのような材料が望ましい。本実施の形態では、懸濁液を比誘電率80程度の水と想定しているため、比誘電率の小さな樹脂材料などの絶縁体、もしくは比誘電率が無限大とみなせる金属で形成するのが望ましい。
【0056】
本実施の形態では、構造体35として、一般的な材料で簡易に入手可能なフィルタを用いている。フィルタとは、その面に垂直な方向に微細な孔を有する構造体であって、一般的にはメンブレンフィルタなどが容易に入手可能である。メンブレンフィルタの材料は様々であり、ポリカーボネイトなどの樹脂材料などがある。樹脂材料の比誘電率は2〜3程度であるので、電界歪を形成するために好適である。入手性と物理的な特性により、本実施の形態では、ポリカーボネイト性のメンブレンフィルタを用いている。
【0057】
図2(b)は、構造体35の穴のエッジにp-DEP(positive DiElectroPhoresis;正の誘電泳動)が作用し菌がトラップされている顕微鏡写真を示す。誘電泳動は、電界の周波数、粒子・溶液の物性値(誘電率、導電率)の条件によって、正の誘電泳動(p-DEP)と負の誘電泳動(n-DEP ; negative DiElectroPhoresis)の2つの現象が見られる。正の誘電泳動は、電界が集中する箇所に向かって粒子が動き、負の誘電泳動は、電界が集中する箇所から遠ざかる方向(つまり、正の誘電泳動と逆方向)に向かって粒子が動く。この場合、穴のエッジが電界集中部になり、ここに向かって誘電泳動力が働き、菌がトラップされる。
【0058】
図2(c)は、チャンバ1のインピーダンス等価回路を示す。懸濁液2のインピーダンスをZm、構造体35のインピーダンスをZs、菌のインピーダンスをZbとすると、チャンバ1のインピーダンスZcは、
【数4】
で表わされる。懸濁液2のインピーダンスZmおよび構造体35のインピーダンスZsは略一定なので、チャンバ1のインピーダンスの時間変化は、菌のインピーダンスZbの増分に依存する。
【0059】
また、本実施形態の微生物測定装置において、構造体35をイオン吸着体で構成することもできる。前述した通り、誘電泳動力は懸濁液2の導電率に依存して変化する力であり、一般的には導電率が高くなると、誘電泳動力は低下する傾向にある。そこで、この構成によれば、イオン吸着体が懸濁液2中のイオンを吸着し、懸濁液2の導電率を下げることができるため、導電率の上昇による誘電泳動力の低下を防ぎ、測定を行うために必要十分な微生物を、十分な強度の誘電泳動力によってトラップすることができるため、高い導電率の測定試料も高感度に測定することが可能になる。
【0060】
図3は、本実施形態の微生物測定装置におけるチャンバ1の具体的構成を説明するための図である。本実施形態の微生物測定装置は、基板31,32間に電極33,34を設け、一方の電極34上に電界歪を作るための構造体35を設けてチャンバ1を構成する。また、チャンバ1の一方の端に試料導入口37を設け、他方の端に流出口38を設ける。そして、チャンバ1内を懸濁液で満たし、電極33,34を泳動電源部4に接続して電界を印加する。
【0061】
図4(a)は、本実施形態の微生物測定装置におけるチャンバ1のバリエーション(1)を示す。バリエーション(1)は、懸濁液36内に中空状態でフィルタ41(構造体)を配置してトラップ効率を更に向上させるものである。フィルタ41を中空状態にすることで、フィルタ41の図4中の上側および下側の両方に微生物をトラップすることが可能となる。
【0062】
図4(b)は、本実施形態の微生物測定装置におけるチャンバ1のバリエーション(2)を示す。バリエーション(2)は、基板31,32上に電極33,34を配置し、電極33,34の両方にフィルタ42,43を配置し、フィルタ42,43間に懸濁液36を満たすものである。この構成によれば、一対の電極33,34の両方に設けられたフィルタ42,43の微細孔に微粒子を泳動させ、懸濁液のインピーダンスを効率よく変化させることができる。
【0063】
図4(c)は、本実施形態の微生物測定装置におけるチャンバ1のバリエーション(3)を示す。バリエーション(3)は、複数の電極対33a,34a,33b,34bの間に、それぞれ目の粗さが異なるフィルタ41a,41bを設け、電極対33a,34aおよびフィルタ41aと、電極対33b,34bおよびフィルタ41bを仕切り板45,46,47で区分するものである。
【0064】
バリエーション(3)によれば、フィルタ41a,41bの径によってトラップする菌の種類を変えることができ、測定のダイナミックレンジを向上することができる。また、大きさの異なる測定対象を選択的に検出することができ、免疫凝集した粒子を検出することができる。
【0065】
電極33,34はそれぞれ泳動電源部4に接続されており、泳動電源部4は電極33,34間に特定周波数の交流電圧を印加する。なお、ここで交流電圧というのは、正弦波のほか、ほぼ一定の周期で流れの向きを変える電圧のことであり、かつ両方向の電流の平均値が等しいものである。後述するが、泳動電源部4が印加する周波数は、制御演算部6(図1参照)によって適切に決定される。
【0066】
電極33,34が懸濁液36に接した状態で、電極33,34間に交流電圧が印加されると、懸濁液36中に含まれる微生物が、電極33,34に挟まれた構造体41等の微細孔に誘電泳動力によって捕捉される。
【0067】
微生物に十分な大きさの正の誘電泳動力が働く場合は、図2(a)のように電界集中部である孔のエッジ部に微生物がトラップされる。
【0068】
測定部5は、このようにして構造体35にトラップされた微生物によるインピーダンス変化を測定する。具体的には、図6に示すように、泳動電源部4と電極3の間に、測定部5を電極3間のインピーダンスを測定する回路を構成する。
【0069】
この場合、測定部5は電極3間に流れる電流値と、泳動電源部4が印加した電圧と電流の位相差を測定するための回路等から構成される。測定部5は、誘電泳動によって微生物が移動し電界集中部近傍に濃縮されることに起因する電極3間の電流および位相差の変化を測定する。
【0070】
測定部5で測定した電流値と位相差は、制御演算部6に渡される。制御演算部6は、これら電流、位相差、および、泳動電源部4が印加している電圧および周波数の情報から、電極3間のインピーダンス値を計算する。
【0071】
電圧印加前、電極3間の懸濁液36のみで満たされた領域が、誘電泳動によるトラップによって誘電率の異なる微生物で置き換えられることで、電極3間のインピーダンスはトラップされた微生物数に応じて変化する。
【0072】
従って、ある時間におけるインピーダンス値と、電圧印加直後の初期インピーダンス値との差分、言い換えれば変化分から、微細孔にトラップされた微生物数を推定することが可能である。そして、トラップされた微生物数は懸濁液中に含まれる微生物濃度に依存するものであるから、懸濁液中の微生物数を測定することが可能になる。
【0073】
測定部5はまた、図7に示すように、光学的測定手段によっても実現可能である。この場合、光源21と受光部22の光路内にギャップが含まれるような位置関係にチャンバ1を配置する。ギャップにトラップされた微生物数によって、受光部21に入射する光量が変化することを利用して、ギャップにトラップされた微生物数を推定することができる。
【0074】
あるいは、受光部22の情報を制御演算部6に渡して画像化し、制御演算部6が粒子判定アルゴリズムなどを用いて直接粒子数を計数してもよいし、視野面積に対する微粒子面積を求めることで微粒子数に換算してもよい。このようにして得られたギャップにトラップされた微生物数は懸濁液中に含まれる微生物濃度に依存するものであるから、懸濁液中の微生物数を測定することが可能になる。
【0075】
以上のように微生物をギャップにトラップするためには、微生物に働く粘性力や重力、ブラウン運動など、誘電泳動以外の全ての外力に対して十分大きな誘電泳動力を誘起する必要がある。これが不十分であれば、測定部5が測定できる微生物数が減少するため、測定感度および精度が著しく低下し、測定部5が測定可能な信号の大きさを下回ると微生物の測定が出来なくなる。
【0076】
従って、本実施の形態では、微生物をギャップにトラップするために十分な誘電泳動力が働くような周波数を、制御演算部6が適切に決定し、泳動電源部4が決定した周波数の電圧を印加する。これにより、測定部5が十分に検出可能な信号を取り出すことが出来るため、微生物濃度の測定が高精度かつ高感度に行える。
【0077】
制御演算部6は、図示しないCPUや、一連の動作を規定するプログラムや各種データが格納されたメモリ6aなどの回路から構成され、一連の測定動作を制御する。導電率入力手段7は、懸濁液の導電率を、測定前に入力できるようになっている。例えば、テンキーで数値入力する方法や、「0〜50μS/cm」、「50〜100μS/cm」など複数の導電率範囲に対応したスイッチを押下するなどの方法で実現できる。
【0078】
メモリ6aは、導電率入力手段7から与えられた懸濁液の導電率の値から、泳動電源部4が印加する電圧の適切な周波数を選択するための周波数選択テーブルを有する。周波数選択テーブルには、懸濁液の導電率毎に、微生物に十分な誘電泳動力が働く最適な周波数と印加電圧値がテーブル化されている。
【0079】
ここで、メモリ6aに格納されている周波数選択テーブルについて詳説する。表1に示すように、周波数選択テーブルは少なくとも、懸濁液の導電率、印加する交流電圧の振幅、最適周波数が互いに関連付けられて格納されている。懸濁液の導電率は特定の数値であってもよいし、ある範囲を設定してテーブルを作成してもよい。制御演算部6は、与えられた導電率に該当する交流電圧の振幅と最適周波数を選択する。尚、導電率300μS/cm〜に対応する周波数の“E”は、エラーであることを示しており、あまりにも導電率が高い場合には測定が出来ないことを表している。
【0080】
【表1】
【0081】
次に、最適周波数について説明する。(数1)において、誘電泳動力FDEPは、クラウジウス・モソッティ数Kの実部、すなわちRe[K]に比例する。そして、Re[K]は、(数2)および(数3)から明らかなように、懸濁液の導電率に依存する。懸濁液の導電率が変化した場合、Re[K]すなわち誘電泳動力がどのように変化するかを示したものが図8である。
【0082】
図8においては、誘電泳動に用いる電界、言い換えれば印加電圧の周波数をパラメータに、懸濁液の導電率の関数として示している。Re[K]は、誘電泳動力FDEPに対応しており、その正負は誘電泳動力が引力として作用するか、あるいは斥力として作用するかにそれぞれ対応する。
【0083】
図8(a)に示すように、たとえば、誘電泳動用交流電圧の周波数が(1)10KHzの場合は、溶液導電率3μS/cm付近でRe[K]が正から負に変わっており、微粒子に作用する誘電泳動力FDEPが引力から斥力に変化する。
【0084】
一方、誘電泳動用交流電圧の周波数が(2)100KHzの場合は、溶液導電率30μS/cm付近でRe[K]が正から負に変わっており、微粒子に作用する誘電泳動力FDEPが引力から斥力に変化する。
【0085】
なお、図8(b)は、誘電泳動用交流電圧の周波数が(2)100KHzおよび(3)800KHzの場合に、溶液導電率を1μS/cm〜1000μS/cmまで変化させた場合の誘電泳動力FDEPの変化を示す。周波数が(2)100KHzの場合、約20μS/cm以上でRe[K]<0となるが、800KHzでは導電率上昇に対する誘電泳動力の低下が抑えられ、約250μS/cmまでRe[K]>0となり引力によりギャップ13のエッジ部にトラップすることができる。
【0086】
このことは、懸濁液の導電率上昇に対して最も誘電泳動力の低下が小さくなる最適な周波数が存在することを示している。この最適周波数を決定するには、次のような実験を行って決定するのがよい。すなわち、同じ微粒子濃度で、導電率を変えた複数の懸濁液を用意し、それぞれの懸濁液に対して印加電圧の周波数を変えながら測定を行う。その結果、測定応答が最も大きくなった周波数が、それぞれの懸濁液導電率に対する最適周波数となる。表1に示した最適周波数は、このようにして決定する。
【0087】
しかしながら、あまりにも周波数が高いと測定回路の実現が困難となり、あまりにも周波数が低いとジュール熱による対流や、極端な場合、電気分解による気泡発生が測定に悪影響をもたらす。このため、最適周波数は、誘電泳動にとって最適とはいえないが、微粒子測定を行うのに十分な誘電泳動を働かせることの出来る、許容範囲の周波数が存在する。
【0088】
図9は、溶液導電率(μS/cm)をパラメータとした場合における、誘電泳動用交流電圧の周波数(Hz)とクラウジウス・モソッティ数の実部(Re[K])の関係を示すグラフである。懸濁液の導電率100μS/cmにおいて、正の誘電泳動を利用して微粒子の測定を行う場合、測定応答を得られる十分な誘電泳動力がRe[K]>0.4であったとすると、最適周波数は約700KHz〜4MHzとなる。この場合、高周波による測定回路の複雑化を避けるために、下限の周波数である700KHzを最適周波数として採用することも可能である。
【0089】
また、測定する必要がある懸濁液導電率の範囲内で、ある特定の一つの周波数で十分に誘電泳動力が得られることがある。その場合は、表2に示すような周波数選択テーブルになる。
【0090】
【表2】
【0091】
例えば、測定する必要のある懸濁液導電率の範囲が0〜100μS/cmであった場合、周波数800KHzであれば、全ての導電率領域に対してRe[K]>0.4となり、単一の周波数で所望の懸濁液導電率の範囲で測定を行うことができるため、回路構成が簡易となり好都合である。この場合、懸濁液導電率が100μS/cmを超えた場合には、周波数選択テーブルに示されるよう、エラーに該当するデータが書き込まれている。
【0092】
図10は、本実施形態にかかる微生物測定方法を説明するためのフローチャートである。以下、フローチャートを参照して、試料の導入からチャンバ1内の微生物の濃縮、測定、結果提示にいたるまでの一連の流れを説明する。まず、初期状態では、チャンバ1に測定対象の微生物が含有された懸濁液を投入する(ステップS11)。
【0093】
次に、導電率入力手段7によって、投入した懸濁液の導電率を入力する。入力された導電率は、制御演算部6に渡される(ステップS12)。
【0094】
懸濁液の導電率を渡された制御演算部6は、メモリ6aに備わる最適周波数テーブルを参照し、電極に印加すべき電圧振幅値および周波数を選択する(ステップS13)。この時の電圧振幅値(以下、「誘電泳動のための電圧」と呼ぶ)は、微生物を微細孔にトラップするために十分な値を選択すればよく、本実施の形態では5Vp−pとしている。
【0095】
また、表1および表2では、誘電泳動のための電圧は導電率に対して一定の値としているが、それぞれの導電率で最適な値を選択することができる。例えば、導電率が高い場合は、あまりに電圧が高すぎるとジュール熱が発生し、誘電泳動による微生物トラップに影響が出るため、導電率が高くなるに従い、誘電泳動のための電圧を低くする、などとする。
【0096】
次いで、制御演算部6は、メモリ上に保存された、入力された導電率に対応する周波数がエラーコード(E)であるか判断する(ステップS14)。エラーコード(E)であった場合には、ステップS16に進み、制御演算部6は、入力された導電率が測定範囲外であることを表示手段9に表示するよう指示し、測定を終了する(ステップS22)。
【0097】
ステップS14において、選択した周波数がエラーコード(E)でなかった場合、制御演算部6は泳動電源部4に対し、最適周波数テーブルで選択した電圧振幅および周波数にて、電極3間に電圧を印加させる(ステップS15)。
【0098】
電極3間に所定の電圧が印加されると、測定部5は直ちに電圧印加直後の初期状態のデータとして、電極3間のインピーダンスを測定し、測定結果は制御演算部6に渡され、メモリ6aに初期のインピーダンス値として保存する(ステップS17)。
【0099】
ここでは、インピーダンス測定を例として記載するが、測定部5が光学的な手段を用いてギャップの状態を測定するのであれば、電圧を印加しなくても初期状態が測定できるので、ステップS17はステップS15の前に行うことも可能である。なお、測定部5が光学測定を行う場合、透明電極及び透明基板を用いる。
【0100】
次に、制御演算部6は、図示しない時計手段によって所定の時間が経過するまで待つ。この時、泳動電源部4は電圧印加を保持したままである(ステップS18)。
【0101】
所定の時間が経過すると、制御演算部6は所定の測定回数が満了したかを判断し(ステップS19)、満了していなければステップS17に戻る。ステップS17に戻り、制御演算部6は測定部5に命じ、電極3間のインピーダンスを測定し、その結果をメモリ6aに所定時間経過後の結果として保存する。
【0102】
所定の測定回数が満了した場合、制御演算部6は泳動電源部4に電圧印加を止めるよう指示する(ステップS20)。
【0103】
電圧印加を停止後、制御演算部6は、メモリ6aに保存された、電極3間インピーダンスの経時変化データから、懸濁液2中の微粒子濃度を算出し、表示手段9に結果を表示させ(ステップS21)、一連の測定動作を終了する(ステップS22)。
【0104】
微生物濃度の算出は、メモリ6aに予め保存された、検量線から求めることができる。この検量線は、微生物濃度が明らかな校正用試料を、本実施の形態で説明した微生物測定装置の測定系を用いて予め測定し、その時の微生物数とインピーダンス変化の相関関係からばらつきを回帰分析して得られる曲線をあらわす関数を使用する。
【0105】
この変換式を制御演算部6のメモリ6aに記憶させ、微生物濃度が未知の試料を測定する場合には、所定時間内におけるインピーダンス変化の値を代入することにより、セル1内の微生物濃度を算出できる。なお、換算テーブルを用いる場合は、変換式による演算結果を予めメモリさせている。
【0106】
以上説明したように、本実施形態の微粒子測定装置によれば、微粒子含有の液体を導入するチャンバ1と、チャンバ1内に設けられた一対の電極3と、一対の電極3間に配置され、電界の不均一性を誘起する構造体35等と、一対の電極3間に交流電圧を印加し、微粒子に誘電泳動力を作用させる泳動電源部4と、一対の電極3間のインピーダンスの時間変化を演算し、チャンバ1内の微粒子数を算出する測定部5とを備えるので、懸濁液中の微粒子に誘電泳動力を作用させる電極3の構造を簡素化して微粒子測定装置のコストを低減することが可能になる。
【0107】
なお、チャンバ1内には、検出物質に特異的に結合し、凝集塊を形成する試薬を含む液体を導入してもよい。前述したように、誘電泳動力は泳動する対象の大きさによって変化する力であり、実効的な粒子径が大きくなるほど働く誘電泳動力は大きくなる。このため、懸濁液2内に測定対象である検出物質と、測定対象で無い挟雑物が混在した場合に、凝集塊を形成した検出物質は実効的な粒子径が大きくなっていることになり、挟雑物質に比べ大きな誘電泳動力が働くことになる。印加する電圧値を調整すれば、挟雑物質にはトラップするのに不十分な誘電泳動力しか働かず、測定対象の凝集塊には十分な誘電泳動力を働かせることができる。この条件下では、測定される結果は、測定対象物質のみによる反応であると考えられる。よって、この構成によれば、他の物質(挟雑物)が混在した中でも、検出物質を特異的に測定することが可能になる。
【0108】
以下に、本発明の実施例を示す。
[実施例1]
(1)試料液の調整
標準寒天培地(MB0010、栄研器材(株))上で37℃、16時間の好気培養を行った大腸菌K−12株(NBRC3301、製品評価技術基盤機構)をコンラージ棒で採取し、0.1M D−マニトール溶液(導電率、約1μS/cm)に懸濁したものを標準試料とし、適宜希釈して測定に用いる試料液を作成した。
(2)測定装置
図3の測定装置を使用した。構造体としてのメンブレンフィルタには、有効径0.2μmのポリカーボネイト製メンブレンフィルタ(K020N025A、ADVANTEC)を用いた。印加電圧振幅は5Vp−p、周波数は100KHzとした。まず、試料液中に大腸菌を含まないブランク溶液を用いて測定を行った後に、大腸菌を含む試料液の測定を行ない、それぞれの測定のインピーダンス値、具体的にはインピーダンスから算出したキャパシタンス値を記録した。
(3)結果
図9に、測定結果を示す。図9において、横軸は測定時間(秒)、縦軸は、大腸菌を含む試料液のキャパシタンス増加分から、ブランクのキャパシタンス変化分を差し引いた容量変化CT(pF)である。電圧を印加し、大腸菌がフィルタのエッジ部にトラップされるに従って、電極間のキャパシタンス値が増加しており、本測定装置によって試料液中の大腸菌を測定することが可能であることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明は、電界の不均一性を誘起するための電極構造を簡素化してコストを低減することが可能な微粒子測定装置およびそれに用いる電極として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の実施形態にかかる微粒子測定装置を説明するための概略構成図(1)
【図2】本発明の実施形態にかかる微粒子測定装置のチャンバ1の構成を説明するための図
【図3】本発明の実施形態にかかる微粒子測定装置のチャンバ1の具体的構成を説明するための図
【図4】本発明の実施形態にかかる微粒子測定装置のチャンバ1のバリエーションを示す図
【図5】本発明の実施形態にかかる微粒子測定装置を説明するための概略構成図(2)
【図6】本発明の実施形態にかかる微粒子測定装置を説明するための概略構成図(3)
【図7】誘電泳動用交流電圧の周波数をパラメータとした場合に、溶液導電率(μS/cm)とRe[K]の関係を示すグラフ
【図8】誘電泳動用交流電圧の周波数(Hz)とクラウジウス・モソッティ数の実部(Re[K])の関係を示すグラフ
【図9】本発明の実施形態にかかる微粒子測定方法を説明するためのフローチャート
【図10】本発明の実施例1にかかる微粒子測定結果を示すグラフ
【図11】チャンネル内に満たされた液体51のインピーダンスを測定する従来の装置を示す図
【符号の説明】
【0111】
1 チャンバ
2,36 懸濁液
3,11a,11b 電極
4 泳動電源部
5 測定部
6 制御演算部
6a メモリ
7 導電率入力手段
9 表示手段
13 ギャップ
14 微粒子
17 攪拌手段
21 光源
22 受光部
31,32 基板
33,34 平面電極
35,41,42,43 構造体
37 試料導入口
38 流出口
45,46,47 仕切り板
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電泳動を用いて懸濁液中の微粒子数を測定するための微粒子測定装置およびそれに用いる電極に関する。更に詳しくは、電界の不均一性を誘起するための電極構造を簡素化して簡易な製造を可能とし、コストを低減することが可能な微粒子測定装置およびそれに用いる電極に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、食中毒や感染症などの原因となり、人体に何らかの害を及ぼす可能性がある微生物を、迅速、簡便、高感度に定量測定するニーズは特に高い。食品の製造工程や微生物検査施設を備えない診療所などにおいて、その場で微生物検査を実施することで、食中毒や感染症などの防止、予防が可能になるためである。
【0003】
また、いわゆるバイオセンサにおいて、抗体など、測定対象に特異的に結合する物質を標識したポリスチレンなどの人工微粒子を用いて、検体中の生化学的物質を定量測定する際に、検体中の微粒子数あるいはその結合状態を定量測定する必要がある。このように、昨今、液体中に含まれる微粒子を迅速、簡便、定量的に測定する要求は高い。
【0004】
ここで、本願における微粒子の定義について説明する。本願で言う微粒子とは、ポリスチレンやそれらに何らかのコーティングを施した粒子、カーボンナノチューブ、金コロイドなどの金属粒子、細菌、真菌、放線菌、リケッチア、マイコプラズマ、ウイルス、として分類されているいわゆる微生物、原生動物や原虫のうちの小型のもの、生物体の幼生、動植物細胞、精子、血球、核酸、蛋白質等も含む広い意味での生体または生体由来の微粒子である。この他にも、本願で言う微粒子とは、誘電泳動可能な大きさのあらゆる粒子を意味する。本願では特に、微生物の測定を想定しており、以下、測定対象を微生物として説明を行う。
【0005】
従来、微生物の検査法として最も一般的に用いられるのは培養法である。培養法は、培地上に微生物検体を塗抹し、微生物が生育条件下で培養を行い、形成される培地上のコロニー数を計数することで微生物数を定量する方法である。
【0006】
しかし、コロニー形成までに通常1〜2日、微生物種によっては数週間を要するため、迅速な検査を実施できない問題があった。また、濃縮や希釈、培地への塗抹などが必要なため、専門家による操作が必要であり、簡便な検査が実施できない、あるいは操作上のバラツキによる精度低下の問題があった。
【0007】
これら従来の問題を解決するため、本発明者は他の発明者らと共に、迅速、簡便、高感度な微生物数測定法として、誘電泳動とインピーダンス計測を組み合わせたDEPIM(Dielectrophoretic Impedance Measurement Method)法を提案した(例えば、特許文献1を参照)。
【0008】
DEPIM法は、微生物を誘電泳動力によってマイクロ電極に捕集し、同時にマイクロ電極のインピーダンス変化を測定することによって試料液中の微生物数を定量測定する方法である。以下、その測定原理について概説する。
【0009】
微生物は一般に、イオンリッチで誘電率および導電率の高い細胞質および細胞壁が、比較的誘電率および導電率の低い細胞膜に囲まれた構造を有し、誘電体粒子とみなすことができる。DEPIM法では、電界中で分極した誘電体粒子に一定方向に働く力である誘電泳動力を利用し、誘電体粒子である微生物をマイクロ電極のギャップ間に捕集する。
【0010】
誘電体粒子に働く誘電泳動力FDEPは、以下の(数1)で与えられることが公知である(例えば、非特許文献1を参照)。以下、誘電体粒子が、微生物である場合を例として説明する。
【0011】
【数1】
【0012】
ここで、a:球形近似したときの微生物の半径、ε0:真空の誘電率、εm:試料液の比誘電率、E:電界強度であり、▽は演算子で勾配(gradient)を表す。この場合、▽E2は、電界E2の勾配なので、その位置でどれだけE2が傾斜を持っているか、つまり電界Eが空間的にどれだけ急に変化をするかを意味する。また、Kはクラウジウス・モソッティ数と呼ばれ、(数2)で表され、Re[K]>0は正の誘電泳動を表し、微生物は電界勾配と同方向、つまり、電界集中部に向かって泳動される。Re[K]<0は負の誘電泳動を表し、電解集中部から遠ざかる方向、すなわち弱電界部に向かって泳動される。
【0013】
【数2】
【0014】
ここで、εb*およびεm*はそれぞれ、微生物および溶液の複素誘電率を表し、一般に複素誘電率εr*は(数3)で表される。
【0015】
【数3】
【0016】
ここで、εr:微生物あるいは試料液の比誘電率、σ:微生物あるいは試料液の導電率、ω:印加電界の角周波数を表す。
【0017】
(数1)(数2)(数3)から、誘電泳動力は、微生物の半径、クラウジウス・モソッティ数の実部(以下、Re[K]と表す)および電界強度に依存することが分かる。また、Re[K]は、試料液および微生物の複素誘電率、電界周波数に依存して変化することが分かる。
【0018】
そのため、DEPIM法では、これらのパラメータを適切に選択し、微生物に働く誘電泳動力を十分大きくし、微生物を電極ギャップに確実に捕集する必要がある。また、DEPIM法では、上記誘電泳動による電極への微生物捕集と同時に、電気的計測を行い、試料液中の微生物数を定量測定することを特徴としている。
【0019】
微生物は、前述した構造を有するため、電気的には固有のインピーダンスを持った微粒子と考えることができる。そのため、誘電泳動によりマイクロ電極のギャップ間に捕集される微生物数が増加すると、その捕集数に応じて電極間のインピーダンスが変化する。
【0020】
従って、電極間インピーダンス時間変化の傾きは、単位時間当たりに電極ギャップ間に捕集される微生物数に応じた値となり、傾きの大きさは試料液中の微生物濃度に対応する。よって、電極間インピーダンス時間変化の傾きを測定することで、試料液中の微生物濃度、言い換えれば微生物数を測定することが可能となる。
【0021】
更に、DEPIM法では、誘電泳動を開始直後のインピーダンス時間変化の傾きから微生物数を定量することで、短時間での微生物測定を実現している。以上、DEPIM法の測定原理について概説したが、詳しくは非特許文献2を参照されたい。
【0022】
一方、媒体中の物体、特にはセル、リポソームもしくは同様な微小物体の電気的測定をするための装置及び方法が知られている。図11は、チャンネル内に満たされた液体51のインピーダンスを測定する装置を示す。この装置では、電極52がチャンネル内の液体にそれぞれ電気接触するよう設けられ、さらに電極52がその電流及び電圧を測定するために図示しない電気的測定装置に接続されている(例えば、特許文献2参照)。
【0023】
【特許文献1】特開2000−125846号公報
【特許文献2】特表2003−527581号公報
【非特許文献1】Hywel Morgan、他:「AC Electrokinetics:colloids and nanoparticles」、RESERCH STUDIES PRESS LTD.2003年出版、pp.15〜63
【非特許文献2】J.Suehiro, R.Yatsunami, R.Hamada, M,Hara,J.Phys. D: Appl. Phys. 32(1999)2814-2820
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
従来、DEPIMに用いる電極は、電極ギャップ間に生じる電界歪を利用した誘電泳動により細菌をトラップするために微細なギャップ(5μm程度)を用いる必要があるため製造上の困難がある。また、電極ギャップ間に生じる電界歪みは、電極エッジの限られた領域のみであるため、トラップの空間的な効率も悪く、測定感度が制限されている。
【0025】
また、電極を櫛歯状に形成して電界歪を生成していたが、電極を櫛歯状に加工することは製造上の困難性がありコストの上昇を招いていた。特に、電極は測定の都度交換することが望ましく、構造を簡素化してコストを低減させることが望まれていた。
【0026】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、電界の不均一性を誘起するための電極構造を簡素化してコストを低減することが可能な微粒子測定装置およびそれに用いる電極を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明の微粒子測定装置は、微粒子含有の液体を導入するチャンバと、前記チャンバ内に設けられた少なくとも一対の電極と、前記一対の電極間に配置され、電界の不均一性を誘起する構造体と、前記一対の電極間に交流電圧を印加し、前記微粒子に誘電泳動力を作用させる泳動電源部と、前記一対の電極間のインピーダンスの時間変化を演算し、前記チャンバ内の微粒子数を算出するインピーダンス計測装置とを備える。
【0028】
上記構成によれば、構造体が一対の電極間に配置され電界の不均一性を誘起するので、懸濁液中の微粒子に誘電泳動力を作用させる電極の構造を簡素化しつつ、微生物をトラップする空間を多く取れるため、微粒子測定装置のコストを低減しながらも測定感度を向上することが可能になる。
【0029】
また、本発明の微粒子測定装置は、前記構造体が微細孔を持つフィルタである。
【0030】
上記構成によれば、簡単な構造で微粒子を微細孔に泳動させ、懸濁液のインピーダンスを変化させることができる。
【0031】
また、本発明の微粒子測定装置は、前記微細孔の有効径が異なる複数のフィルタを備え、前記複数のフィルタに対応させて、前記一対の電極を複数組設ける。
【0032】
上記構成によれば、微細孔の有効径によってトラップする菌の種類を変えることができ、測定のダイナミックレンジを向上することができる。また、大きさの異なる測定対象を選択的に検出することができる。
【0033】
また、本発明の微粒子測定装置は、前記構造体中あるいはその表面にインピーダンス計測電極を含む。
【0034】
上記構成によれば、懸濁液のインピーダンスを測定するインピーダンス計測電極を容易に製造することができ、微粒子測定装置のコストを低減することが可能になる。
【0035】
また、本発明の微粒子測定装置は、前記構造体がイオン吸着体で構成されるものあるいはイオン吸着体を一部に含むものである。
【0036】
上記構成によれば、イオン吸着体が懸濁液中のイオンを吸着し、懸濁液の導電率を下げることができるため、導電率の上昇による誘電泳動力の低下を防ぎ、高い導電率の測定試料も高感度に測定することが可能になる。
【0037】
また、本発明の微粒子測定装置は、前記フィルタが前記一対の電極の表面にある。
【0038】
上記構成によれば、フィルタの微細孔に微粒子を泳動させ、簡素な構成で懸濁液のインピーダンスを変化させることができる。
【0039】
また、本発明の微粒子測定装置は、前記フィルタが前記一対の電極の両方の電極の表面にある。
【0040】
上記構成によれば、一対の電極の両方に設けられたフィルタの微細孔に微粒子を泳動させ、懸濁液のインピーダンスを効率よく変化させることができる。
【0041】
また、本発明の微粒子測定装置は、前記フィルタが前記一対の電極の中間に位置する。
【0042】
上記構成によれば、フィルタを一対の電極の中間に配置し、フィルタの両側に微粒子をトラップすることができ、微粒子のトラップ効率を向上させることができる。
【0043】
また、本発明の微粒子測定装置において、前記インピーダンス計測装置は、インピーダンスの初期変化により前記微粒子数を測定する。
【0044】
上記構成によれば、インピーダンスの初期変化により微粒子数を測定するので、測定時間を短縮することができる。
【0045】
また、本発明の微粒子測定装置は、検出物質に特異的に結合し、凝集塊を形成する試薬を含む。
【0046】
上記構成によれば、検出物質に特異的に結合し凝集塊を形成するので、凝集塊の大きさに応じて誘電泳動力が大きくなり、他の物質が混在した中でも、検出物質を特異的に測定することが可能になる。
【0047】
また、本発明の微粒子測定装置は、前記一対の電極が透明であり、前記構造体を透明基板上に構成し、前記チャンバ内の微粒子数を光学測定する。
【0048】
上記構成によれば、チャンバ内の微粒子数を光学測定するので、懸濁液の導電率に依存することなく微粒子数を測定することができる。
【0049】
また、本発明は、上記の微粒子測定装置に用いる電極である。
【0050】
上記構成によれば、電極の構造を簡素化して微粒子測定装置のコストを低減することが可能になる。
【発明の効果】
【0051】
本発明によれば、構造体が一対の電極間に配置され電界の不均一性を誘起するので、懸濁液中の微粒子に誘電泳動力を作用させる電極の構造を簡素化して微粒子測定装置のコストを低減することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
以下、本発明の実施の形態の微生物測定装置について、図面を用いて説明する。図1は、本実施形態の微生物測定装置の構成図である。
【0053】
図1において、1は測定対象の微生物が含まれる懸濁液2を保持するチャンバ、3は誘電泳動で微生物を捕集する電極対を含む電極、4は泳動電源部、5は誘電泳動によってトラップされた微生物によって生じた光学的あるいは電気的な変化を測定する測定部、6は微生物測定装置全体の制御や測定結果の解析演算や入出力処理などを行う制御演算部、7は試料液2の導電率を入力するための導電率入力手段である。
【0054】
図2(a)は、本実施形態の微生物測定装置におけるチャンバ1の構成を説明するための図である。本実施形態のチャンバ1は、基板31,32間に平面電極33,34を設け、一方の平面電極34上に電界歪を作るための構造体35(絶縁体など)を設ける。そして、平面電極33と構造体35の間を懸濁液2で満たし、平面電極33,34に泳動電源部4を接続して電界を印加する。
【0055】
誘電泳動は、空間的に不均一な電界が形成された箇所で働く力なので、通常のDEP(誘電泳動)では、薄膜電極が対向した構成として、断面で見た鋭利なエッジ同士の対向部分で不均一な電界を作る。本実施形態では、電界中にメンブレンフィルタなどの構造体35を配置することで不均一な電界(電界歪)を作り、そこで誘電泳動を働かせる現象(iDEP;insulator-based DiElectroPhoresis)を利用する。構造体35は、不均一な電界を形成させられればいずれの材料も使用できるが、試料液(懸濁液2)との誘電率の差が大きいほど、大きな電界歪を形成することができるため、そのような材料が望ましい。本実施の形態では、懸濁液を比誘電率80程度の水と想定しているため、比誘電率の小さな樹脂材料などの絶縁体、もしくは比誘電率が無限大とみなせる金属で形成するのが望ましい。
【0056】
本実施の形態では、構造体35として、一般的な材料で簡易に入手可能なフィルタを用いている。フィルタとは、その面に垂直な方向に微細な孔を有する構造体であって、一般的にはメンブレンフィルタなどが容易に入手可能である。メンブレンフィルタの材料は様々であり、ポリカーボネイトなどの樹脂材料などがある。樹脂材料の比誘電率は2〜3程度であるので、電界歪を形成するために好適である。入手性と物理的な特性により、本実施の形態では、ポリカーボネイト性のメンブレンフィルタを用いている。
【0057】
図2(b)は、構造体35の穴のエッジにp-DEP(positive DiElectroPhoresis;正の誘電泳動)が作用し菌がトラップされている顕微鏡写真を示す。誘電泳動は、電界の周波数、粒子・溶液の物性値(誘電率、導電率)の条件によって、正の誘電泳動(p-DEP)と負の誘電泳動(n-DEP ; negative DiElectroPhoresis)の2つの現象が見られる。正の誘電泳動は、電界が集中する箇所に向かって粒子が動き、負の誘電泳動は、電界が集中する箇所から遠ざかる方向(つまり、正の誘電泳動と逆方向)に向かって粒子が動く。この場合、穴のエッジが電界集中部になり、ここに向かって誘電泳動力が働き、菌がトラップされる。
【0058】
図2(c)は、チャンバ1のインピーダンス等価回路を示す。懸濁液2のインピーダンスをZm、構造体35のインピーダンスをZs、菌のインピーダンスをZbとすると、チャンバ1のインピーダンスZcは、
【数4】
で表わされる。懸濁液2のインピーダンスZmおよび構造体35のインピーダンスZsは略一定なので、チャンバ1のインピーダンスの時間変化は、菌のインピーダンスZbの増分に依存する。
【0059】
また、本実施形態の微生物測定装置において、構造体35をイオン吸着体で構成することもできる。前述した通り、誘電泳動力は懸濁液2の導電率に依存して変化する力であり、一般的には導電率が高くなると、誘電泳動力は低下する傾向にある。そこで、この構成によれば、イオン吸着体が懸濁液2中のイオンを吸着し、懸濁液2の導電率を下げることができるため、導電率の上昇による誘電泳動力の低下を防ぎ、測定を行うために必要十分な微生物を、十分な強度の誘電泳動力によってトラップすることができるため、高い導電率の測定試料も高感度に測定することが可能になる。
【0060】
図3は、本実施形態の微生物測定装置におけるチャンバ1の具体的構成を説明するための図である。本実施形態の微生物測定装置は、基板31,32間に電極33,34を設け、一方の電極34上に電界歪を作るための構造体35を設けてチャンバ1を構成する。また、チャンバ1の一方の端に試料導入口37を設け、他方の端に流出口38を設ける。そして、チャンバ1内を懸濁液で満たし、電極33,34を泳動電源部4に接続して電界を印加する。
【0061】
図4(a)は、本実施形態の微生物測定装置におけるチャンバ1のバリエーション(1)を示す。バリエーション(1)は、懸濁液36内に中空状態でフィルタ41(構造体)を配置してトラップ効率を更に向上させるものである。フィルタ41を中空状態にすることで、フィルタ41の図4中の上側および下側の両方に微生物をトラップすることが可能となる。
【0062】
図4(b)は、本実施形態の微生物測定装置におけるチャンバ1のバリエーション(2)を示す。バリエーション(2)は、基板31,32上に電極33,34を配置し、電極33,34の両方にフィルタ42,43を配置し、フィルタ42,43間に懸濁液36を満たすものである。この構成によれば、一対の電極33,34の両方に設けられたフィルタ42,43の微細孔に微粒子を泳動させ、懸濁液のインピーダンスを効率よく変化させることができる。
【0063】
図4(c)は、本実施形態の微生物測定装置におけるチャンバ1のバリエーション(3)を示す。バリエーション(3)は、複数の電極対33a,34a,33b,34bの間に、それぞれ目の粗さが異なるフィルタ41a,41bを設け、電極対33a,34aおよびフィルタ41aと、電極対33b,34bおよびフィルタ41bを仕切り板45,46,47で区分するものである。
【0064】
バリエーション(3)によれば、フィルタ41a,41bの径によってトラップする菌の種類を変えることができ、測定のダイナミックレンジを向上することができる。また、大きさの異なる測定対象を選択的に検出することができ、免疫凝集した粒子を検出することができる。
【0065】
電極33,34はそれぞれ泳動電源部4に接続されており、泳動電源部4は電極33,34間に特定周波数の交流電圧を印加する。なお、ここで交流電圧というのは、正弦波のほか、ほぼ一定の周期で流れの向きを変える電圧のことであり、かつ両方向の電流の平均値が等しいものである。後述するが、泳動電源部4が印加する周波数は、制御演算部6(図1参照)によって適切に決定される。
【0066】
電極33,34が懸濁液36に接した状態で、電極33,34間に交流電圧が印加されると、懸濁液36中に含まれる微生物が、電極33,34に挟まれた構造体41等の微細孔に誘電泳動力によって捕捉される。
【0067】
微生物に十分な大きさの正の誘電泳動力が働く場合は、図2(a)のように電界集中部である孔のエッジ部に微生物がトラップされる。
【0068】
測定部5は、このようにして構造体35にトラップされた微生物によるインピーダンス変化を測定する。具体的には、図6に示すように、泳動電源部4と電極3の間に、測定部5を電極3間のインピーダンスを測定する回路を構成する。
【0069】
この場合、測定部5は電極3間に流れる電流値と、泳動電源部4が印加した電圧と電流の位相差を測定するための回路等から構成される。測定部5は、誘電泳動によって微生物が移動し電界集中部近傍に濃縮されることに起因する電極3間の電流および位相差の変化を測定する。
【0070】
測定部5で測定した電流値と位相差は、制御演算部6に渡される。制御演算部6は、これら電流、位相差、および、泳動電源部4が印加している電圧および周波数の情報から、電極3間のインピーダンス値を計算する。
【0071】
電圧印加前、電極3間の懸濁液36のみで満たされた領域が、誘電泳動によるトラップによって誘電率の異なる微生物で置き換えられることで、電極3間のインピーダンスはトラップされた微生物数に応じて変化する。
【0072】
従って、ある時間におけるインピーダンス値と、電圧印加直後の初期インピーダンス値との差分、言い換えれば変化分から、微細孔にトラップされた微生物数を推定することが可能である。そして、トラップされた微生物数は懸濁液中に含まれる微生物濃度に依存するものであるから、懸濁液中の微生物数を測定することが可能になる。
【0073】
測定部5はまた、図7に示すように、光学的測定手段によっても実現可能である。この場合、光源21と受光部22の光路内にギャップが含まれるような位置関係にチャンバ1を配置する。ギャップにトラップされた微生物数によって、受光部21に入射する光量が変化することを利用して、ギャップにトラップされた微生物数を推定することができる。
【0074】
あるいは、受光部22の情報を制御演算部6に渡して画像化し、制御演算部6が粒子判定アルゴリズムなどを用いて直接粒子数を計数してもよいし、視野面積に対する微粒子面積を求めることで微粒子数に換算してもよい。このようにして得られたギャップにトラップされた微生物数は懸濁液中に含まれる微生物濃度に依存するものであるから、懸濁液中の微生物数を測定することが可能になる。
【0075】
以上のように微生物をギャップにトラップするためには、微生物に働く粘性力や重力、ブラウン運動など、誘電泳動以外の全ての外力に対して十分大きな誘電泳動力を誘起する必要がある。これが不十分であれば、測定部5が測定できる微生物数が減少するため、測定感度および精度が著しく低下し、測定部5が測定可能な信号の大きさを下回ると微生物の測定が出来なくなる。
【0076】
従って、本実施の形態では、微生物をギャップにトラップするために十分な誘電泳動力が働くような周波数を、制御演算部6が適切に決定し、泳動電源部4が決定した周波数の電圧を印加する。これにより、測定部5が十分に検出可能な信号を取り出すことが出来るため、微生物濃度の測定が高精度かつ高感度に行える。
【0077】
制御演算部6は、図示しないCPUや、一連の動作を規定するプログラムや各種データが格納されたメモリ6aなどの回路から構成され、一連の測定動作を制御する。導電率入力手段7は、懸濁液の導電率を、測定前に入力できるようになっている。例えば、テンキーで数値入力する方法や、「0〜50μS/cm」、「50〜100μS/cm」など複数の導電率範囲に対応したスイッチを押下するなどの方法で実現できる。
【0078】
メモリ6aは、導電率入力手段7から与えられた懸濁液の導電率の値から、泳動電源部4が印加する電圧の適切な周波数を選択するための周波数選択テーブルを有する。周波数選択テーブルには、懸濁液の導電率毎に、微生物に十分な誘電泳動力が働く最適な周波数と印加電圧値がテーブル化されている。
【0079】
ここで、メモリ6aに格納されている周波数選択テーブルについて詳説する。表1に示すように、周波数選択テーブルは少なくとも、懸濁液の導電率、印加する交流電圧の振幅、最適周波数が互いに関連付けられて格納されている。懸濁液の導電率は特定の数値であってもよいし、ある範囲を設定してテーブルを作成してもよい。制御演算部6は、与えられた導電率に該当する交流電圧の振幅と最適周波数を選択する。尚、導電率300μS/cm〜に対応する周波数の“E”は、エラーであることを示しており、あまりにも導電率が高い場合には測定が出来ないことを表している。
【0080】
【表1】
【0081】
次に、最適周波数について説明する。(数1)において、誘電泳動力FDEPは、クラウジウス・モソッティ数Kの実部、すなわちRe[K]に比例する。そして、Re[K]は、(数2)および(数3)から明らかなように、懸濁液の導電率に依存する。懸濁液の導電率が変化した場合、Re[K]すなわち誘電泳動力がどのように変化するかを示したものが図8である。
【0082】
図8においては、誘電泳動に用いる電界、言い換えれば印加電圧の周波数をパラメータに、懸濁液の導電率の関数として示している。Re[K]は、誘電泳動力FDEPに対応しており、その正負は誘電泳動力が引力として作用するか、あるいは斥力として作用するかにそれぞれ対応する。
【0083】
図8(a)に示すように、たとえば、誘電泳動用交流電圧の周波数が(1)10KHzの場合は、溶液導電率3μS/cm付近でRe[K]が正から負に変わっており、微粒子に作用する誘電泳動力FDEPが引力から斥力に変化する。
【0084】
一方、誘電泳動用交流電圧の周波数が(2)100KHzの場合は、溶液導電率30μS/cm付近でRe[K]が正から負に変わっており、微粒子に作用する誘電泳動力FDEPが引力から斥力に変化する。
【0085】
なお、図8(b)は、誘電泳動用交流電圧の周波数が(2)100KHzおよび(3)800KHzの場合に、溶液導電率を1μS/cm〜1000μS/cmまで変化させた場合の誘電泳動力FDEPの変化を示す。周波数が(2)100KHzの場合、約20μS/cm以上でRe[K]<0となるが、800KHzでは導電率上昇に対する誘電泳動力の低下が抑えられ、約250μS/cmまでRe[K]>0となり引力によりギャップ13のエッジ部にトラップすることができる。
【0086】
このことは、懸濁液の導電率上昇に対して最も誘電泳動力の低下が小さくなる最適な周波数が存在することを示している。この最適周波数を決定するには、次のような実験を行って決定するのがよい。すなわち、同じ微粒子濃度で、導電率を変えた複数の懸濁液を用意し、それぞれの懸濁液に対して印加電圧の周波数を変えながら測定を行う。その結果、測定応答が最も大きくなった周波数が、それぞれの懸濁液導電率に対する最適周波数となる。表1に示した最適周波数は、このようにして決定する。
【0087】
しかしながら、あまりにも周波数が高いと測定回路の実現が困難となり、あまりにも周波数が低いとジュール熱による対流や、極端な場合、電気分解による気泡発生が測定に悪影響をもたらす。このため、最適周波数は、誘電泳動にとって最適とはいえないが、微粒子測定を行うのに十分な誘電泳動を働かせることの出来る、許容範囲の周波数が存在する。
【0088】
図9は、溶液導電率(μS/cm)をパラメータとした場合における、誘電泳動用交流電圧の周波数(Hz)とクラウジウス・モソッティ数の実部(Re[K])の関係を示すグラフである。懸濁液の導電率100μS/cmにおいて、正の誘電泳動を利用して微粒子の測定を行う場合、測定応答を得られる十分な誘電泳動力がRe[K]>0.4であったとすると、最適周波数は約700KHz〜4MHzとなる。この場合、高周波による測定回路の複雑化を避けるために、下限の周波数である700KHzを最適周波数として採用することも可能である。
【0089】
また、測定する必要がある懸濁液導電率の範囲内で、ある特定の一つの周波数で十分に誘電泳動力が得られることがある。その場合は、表2に示すような周波数選択テーブルになる。
【0090】
【表2】
【0091】
例えば、測定する必要のある懸濁液導電率の範囲が0〜100μS/cmであった場合、周波数800KHzであれば、全ての導電率領域に対してRe[K]>0.4となり、単一の周波数で所望の懸濁液導電率の範囲で測定を行うことができるため、回路構成が簡易となり好都合である。この場合、懸濁液導電率が100μS/cmを超えた場合には、周波数選択テーブルに示されるよう、エラーに該当するデータが書き込まれている。
【0092】
図10は、本実施形態にかかる微生物測定方法を説明するためのフローチャートである。以下、フローチャートを参照して、試料の導入からチャンバ1内の微生物の濃縮、測定、結果提示にいたるまでの一連の流れを説明する。まず、初期状態では、チャンバ1に測定対象の微生物が含有された懸濁液を投入する(ステップS11)。
【0093】
次に、導電率入力手段7によって、投入した懸濁液の導電率を入力する。入力された導電率は、制御演算部6に渡される(ステップS12)。
【0094】
懸濁液の導電率を渡された制御演算部6は、メモリ6aに備わる最適周波数テーブルを参照し、電極に印加すべき電圧振幅値および周波数を選択する(ステップS13)。この時の電圧振幅値(以下、「誘電泳動のための電圧」と呼ぶ)は、微生物を微細孔にトラップするために十分な値を選択すればよく、本実施の形態では5Vp−pとしている。
【0095】
また、表1および表2では、誘電泳動のための電圧は導電率に対して一定の値としているが、それぞれの導電率で最適な値を選択することができる。例えば、導電率が高い場合は、あまりに電圧が高すぎるとジュール熱が発生し、誘電泳動による微生物トラップに影響が出るため、導電率が高くなるに従い、誘電泳動のための電圧を低くする、などとする。
【0096】
次いで、制御演算部6は、メモリ上に保存された、入力された導電率に対応する周波数がエラーコード(E)であるか判断する(ステップS14)。エラーコード(E)であった場合には、ステップS16に進み、制御演算部6は、入力された導電率が測定範囲外であることを表示手段9に表示するよう指示し、測定を終了する(ステップS22)。
【0097】
ステップS14において、選択した周波数がエラーコード(E)でなかった場合、制御演算部6は泳動電源部4に対し、最適周波数テーブルで選択した電圧振幅および周波数にて、電極3間に電圧を印加させる(ステップS15)。
【0098】
電極3間に所定の電圧が印加されると、測定部5は直ちに電圧印加直後の初期状態のデータとして、電極3間のインピーダンスを測定し、測定結果は制御演算部6に渡され、メモリ6aに初期のインピーダンス値として保存する(ステップS17)。
【0099】
ここでは、インピーダンス測定を例として記載するが、測定部5が光学的な手段を用いてギャップの状態を測定するのであれば、電圧を印加しなくても初期状態が測定できるので、ステップS17はステップS15の前に行うことも可能である。なお、測定部5が光学測定を行う場合、透明電極及び透明基板を用いる。
【0100】
次に、制御演算部6は、図示しない時計手段によって所定の時間が経過するまで待つ。この時、泳動電源部4は電圧印加を保持したままである(ステップS18)。
【0101】
所定の時間が経過すると、制御演算部6は所定の測定回数が満了したかを判断し(ステップS19)、満了していなければステップS17に戻る。ステップS17に戻り、制御演算部6は測定部5に命じ、電極3間のインピーダンスを測定し、その結果をメモリ6aに所定時間経過後の結果として保存する。
【0102】
所定の測定回数が満了した場合、制御演算部6は泳動電源部4に電圧印加を止めるよう指示する(ステップS20)。
【0103】
電圧印加を停止後、制御演算部6は、メモリ6aに保存された、電極3間インピーダンスの経時変化データから、懸濁液2中の微粒子濃度を算出し、表示手段9に結果を表示させ(ステップS21)、一連の測定動作を終了する(ステップS22)。
【0104】
微生物濃度の算出は、メモリ6aに予め保存された、検量線から求めることができる。この検量線は、微生物濃度が明らかな校正用試料を、本実施の形態で説明した微生物測定装置の測定系を用いて予め測定し、その時の微生物数とインピーダンス変化の相関関係からばらつきを回帰分析して得られる曲線をあらわす関数を使用する。
【0105】
この変換式を制御演算部6のメモリ6aに記憶させ、微生物濃度が未知の試料を測定する場合には、所定時間内におけるインピーダンス変化の値を代入することにより、セル1内の微生物濃度を算出できる。なお、換算テーブルを用いる場合は、変換式による演算結果を予めメモリさせている。
【0106】
以上説明したように、本実施形態の微粒子測定装置によれば、微粒子含有の液体を導入するチャンバ1と、チャンバ1内に設けられた一対の電極3と、一対の電極3間に配置され、電界の不均一性を誘起する構造体35等と、一対の電極3間に交流電圧を印加し、微粒子に誘電泳動力を作用させる泳動電源部4と、一対の電極3間のインピーダンスの時間変化を演算し、チャンバ1内の微粒子数を算出する測定部5とを備えるので、懸濁液中の微粒子に誘電泳動力を作用させる電極3の構造を簡素化して微粒子測定装置のコストを低減することが可能になる。
【0107】
なお、チャンバ1内には、検出物質に特異的に結合し、凝集塊を形成する試薬を含む液体を導入してもよい。前述したように、誘電泳動力は泳動する対象の大きさによって変化する力であり、実効的な粒子径が大きくなるほど働く誘電泳動力は大きくなる。このため、懸濁液2内に測定対象である検出物質と、測定対象で無い挟雑物が混在した場合に、凝集塊を形成した検出物質は実効的な粒子径が大きくなっていることになり、挟雑物質に比べ大きな誘電泳動力が働くことになる。印加する電圧値を調整すれば、挟雑物質にはトラップするのに不十分な誘電泳動力しか働かず、測定対象の凝集塊には十分な誘電泳動力を働かせることができる。この条件下では、測定される結果は、測定対象物質のみによる反応であると考えられる。よって、この構成によれば、他の物質(挟雑物)が混在した中でも、検出物質を特異的に測定することが可能になる。
【0108】
以下に、本発明の実施例を示す。
[実施例1]
(1)試料液の調整
標準寒天培地(MB0010、栄研器材(株))上で37℃、16時間の好気培養を行った大腸菌K−12株(NBRC3301、製品評価技術基盤機構)をコンラージ棒で採取し、0.1M D−マニトール溶液(導電率、約1μS/cm)に懸濁したものを標準試料とし、適宜希釈して測定に用いる試料液を作成した。
(2)測定装置
図3の測定装置を使用した。構造体としてのメンブレンフィルタには、有効径0.2μmのポリカーボネイト製メンブレンフィルタ(K020N025A、ADVANTEC)を用いた。印加電圧振幅は5Vp−p、周波数は100KHzとした。まず、試料液中に大腸菌を含まないブランク溶液を用いて測定を行った後に、大腸菌を含む試料液の測定を行ない、それぞれの測定のインピーダンス値、具体的にはインピーダンスから算出したキャパシタンス値を記録した。
(3)結果
図9に、測定結果を示す。図9において、横軸は測定時間(秒)、縦軸は、大腸菌を含む試料液のキャパシタンス増加分から、ブランクのキャパシタンス変化分を差し引いた容量変化CT(pF)である。電圧を印加し、大腸菌がフィルタのエッジ部にトラップされるに従って、電極間のキャパシタンス値が増加しており、本測定装置によって試料液中の大腸菌を測定することが可能であることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明は、電界の不均一性を誘起するための電極構造を簡素化してコストを低減することが可能な微粒子測定装置およびそれに用いる電極として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の実施形態にかかる微粒子測定装置を説明するための概略構成図(1)
【図2】本発明の実施形態にかかる微粒子測定装置のチャンバ1の構成を説明するための図
【図3】本発明の実施形態にかかる微粒子測定装置のチャンバ1の具体的構成を説明するための図
【図4】本発明の実施形態にかかる微粒子測定装置のチャンバ1のバリエーションを示す図
【図5】本発明の実施形態にかかる微粒子測定装置を説明するための概略構成図(2)
【図6】本発明の実施形態にかかる微粒子測定装置を説明するための概略構成図(3)
【図7】誘電泳動用交流電圧の周波数をパラメータとした場合に、溶液導電率(μS/cm)とRe[K]の関係を示すグラフ
【図8】誘電泳動用交流電圧の周波数(Hz)とクラウジウス・モソッティ数の実部(Re[K])の関係を示すグラフ
【図9】本発明の実施形態にかかる微粒子測定方法を説明するためのフローチャート
【図10】本発明の実施例1にかかる微粒子測定結果を示すグラフ
【図11】チャンネル内に満たされた液体51のインピーダンスを測定する従来の装置を示す図
【符号の説明】
【0111】
1 チャンバ
2,36 懸濁液
3,11a,11b 電極
4 泳動電源部
5 測定部
6 制御演算部
6a メモリ
7 導電率入力手段
9 表示手段
13 ギャップ
14 微粒子
17 攪拌手段
21 光源
22 受光部
31,32 基板
33,34 平面電極
35,41,42,43 構造体
37 試料導入口
38 流出口
45,46,47 仕切り板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒子含有の液体を導入するチャンバと、
前記チャンバ内に設けられた少なくとも一対の電極と、
前記一対の電極間に配置され、電界の不均一性を誘起する構造体と、
前記一対の電極間に交流電圧を印加し、前記微粒子に誘電泳動力を作用させる泳動電源部と、
前記一対の電極間のインピーダンスの時間変化を演算し、前記チャンバ内の微粒子数を算出するインピーダンス計測装置と、を備える微粒子測定装置。
【請求項2】
請求項1記載の微粒子測定装置であって、
前記構造体が、微細孔を持つフィルタである微粒子測定装置。
【請求項3】
請求項2記載の微粒子測定装置であって、
前記微細孔の有効径が異なる複数のフィルタを備え、
前記複数のフィルタに対応させて、前記一対の電極を複数組設ける微粒子測定装置。
【請求項4】
請求項2記載の微粒子測定装置であって、
前記構造体中あるいはその表面にインピーダンス計測電極を含む微粒子測定装置。
【請求項5】
請求項2記載の微粒子測定装置であって、
前記構造体が、イオン吸着体で構成されるものあるいはイオン吸着体を一部に含むものである微粒子測定装置。
【請求項6】
請求項2記載の微粒子測定装置であって、
前記フィルタが、前記一対の電極の表面にある微粒子測定装置。
【請求項7】
請求項2記載の微粒子測定装置であって、
前記フィルタが、前記一対の電極の両方の電極の表面にある微粒子測定装置。
【請求項8】
請求項2記載の微粒子測定装置であって、
前記フィルタが、前記一対の電極の中間に位置する微粒子測定装置。
【請求項9】
請求項1記載の微粒子測定装置であって、
前記インピーダンス計測装置は、インピーダンスの初期変化により前記微粒子数を測定する微粒子測定装置。
【請求項10】
請求項1記載の微粒子測定装置であって、
検出物質に特異的に結合し、凝集塊を形成する試薬を含む微粒子測定装置。
【請求項11】
請求項1記載の微粒子測定装置であって、
前記一対の電極が透明であり、
前記構造体を透明基板上に構成し、
前記チャンバ内の微粒子数を光学測定する微粒子測定装置。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか一項記載の微粒子測定装置に用いる電極。
【請求項1】
微粒子含有の液体を導入するチャンバと、
前記チャンバ内に設けられた少なくとも一対の電極と、
前記一対の電極間に配置され、電界の不均一性を誘起する構造体と、
前記一対の電極間に交流電圧を印加し、前記微粒子に誘電泳動力を作用させる泳動電源部と、
前記一対の電極間のインピーダンスの時間変化を演算し、前記チャンバ内の微粒子数を算出するインピーダンス計測装置と、を備える微粒子測定装置。
【請求項2】
請求項1記載の微粒子測定装置であって、
前記構造体が、微細孔を持つフィルタである微粒子測定装置。
【請求項3】
請求項2記載の微粒子測定装置であって、
前記微細孔の有効径が異なる複数のフィルタを備え、
前記複数のフィルタに対応させて、前記一対の電極を複数組設ける微粒子測定装置。
【請求項4】
請求項2記載の微粒子測定装置であって、
前記構造体中あるいはその表面にインピーダンス計測電極を含む微粒子測定装置。
【請求項5】
請求項2記載の微粒子測定装置であって、
前記構造体が、イオン吸着体で構成されるものあるいはイオン吸着体を一部に含むものである微粒子測定装置。
【請求項6】
請求項2記載の微粒子測定装置であって、
前記フィルタが、前記一対の電極の表面にある微粒子測定装置。
【請求項7】
請求項2記載の微粒子測定装置であって、
前記フィルタが、前記一対の電極の両方の電極の表面にある微粒子測定装置。
【請求項8】
請求項2記載の微粒子測定装置であって、
前記フィルタが、前記一対の電極の中間に位置する微粒子測定装置。
【請求項9】
請求項1記載の微粒子測定装置であって、
前記インピーダンス計測装置は、インピーダンスの初期変化により前記微粒子数を測定する微粒子測定装置。
【請求項10】
請求項1記載の微粒子測定装置であって、
検出物質に特異的に結合し、凝集塊を形成する試薬を含む微粒子測定装置。
【請求項11】
請求項1記載の微粒子測定装置であって、
前記一対の電極が透明であり、
前記構造体を透明基板上に構成し、
前記チャンバ内の微粒子数を光学測定する微粒子測定装置。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか一項記載の微粒子測定装置に用いる電極。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−192479(P2009−192479A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−36045(P2008−36045)
【出願日】平成20年2月18日(2008.2.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月18日(2008.2.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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