説明

微粒子濃度測定装置

【課題】微粒子濃度測定装置の測定精度を向上させる。
【解決手段】ディーセルエンジンの排気ラインを流れる排ガス中の微粒子濃度を測定する微粒子濃度測定装置は、前記排気ラインから分岐され、前記排気ラインの流路断面積よりも小さい流路断面積を有する排ガス採取ラインと、前記排ガス採取ラインに設置され、微粒子を捕集する微粒子検出フィルタと、捕集した微粒子を加熱する加熱部と、前記微粒子検出フィルタの入口と出口の間に生じる差圧を検知する差圧検知部と、を備え、前記加熱部が、前記微粒子検出フィルタの排ガス流れ上流側30%の部分に、前記微粒子を加熱する熱量の50%以上を加える

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃エンジンの排ガス浄化技術に係り、特にディーゼルエンジンの排ガス中に含まれる微粒子(PM)の濃度を測定する微粒子濃度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼルエンジンの排ガス中のC(炭素)を主とする微粒子(PM:particulate matter)の濃度を検出する装置として、図1に示す特許文献1の装置20PM(PMセンサ)が知られている。この微粒子濃度測定装置20PMは、排気ライン21から分岐された副排気ライン21Aと、副排気ライン21Aに設置された微粒子検出フィルタ22Aと、微粒子検出フィルタ22Aの入り口と出口の間に生じる差圧を測定する差圧測定部22Bとを含み、さらに副排気ライン21Aには、流量測定部24および温度測定部T1が設けられ、微粒子検出フィルタ22Aにはヒータが設けられている。
【0003】
特許文献1による微粒子濃度測定装置20PMでは、微粒子検出フィルタ22Aの前後における差圧ΔPと、副排気ライン21Aにおける排ガスの温度Tと、副排気ライン21Aにおける排ガスの流量Q2とが測定される。測定された差圧ΔPと排ガス温度Tと排ガス流量Q2とから、単位時間あたりに微粒子検出フィルタに捕捉される微粒子の質量PM[g/h]が算出される。この微粒子の質量PM[g/h]から、排ガス中の微粒子の濃度PMconc[g/m3]が算出される。
【0004】
また特許文献1には、排ガス浄化装置20として、排気ライン21に多孔質セラミックより構成される微粒子捕捉フィルタ(DPF:diesel particulate filter)21が開示されている。微粒子濃度測定装置20PMの上記副排気ライン21Aは、微粒子捕捉フィルタ(DPF)22の排ガス流れ上流側に接続され、求められた排ガス中の微粒子の濃度PMconc[g/m3]と、エンジン運転状況もしくは排気ライン21の微粒子捕捉フィルタ(DPF)22に流入するガス流量Q1とから、微粒子捕捉フィルタ22に流入する微粒子の質量PMenter full filter[g/h]を算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】EP1916394A1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、微粒子濃度測定装置の測定精度を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一の側面によれば本発明は、ディーセルエンジンの排気ラインを流れる排ガス中の微粒子濃度を測定する微粒子濃度測定装置であって、上記排気ラインから分岐され、上記排気ラインの流路断面積よりも小さい流路断面積を有する排ガス採取ラインと、上記排ガス採取ラインに設置され、微粒子を捕集する微粒子検出フィルタと、捕集した微粒子を加熱する加熱部と、上記微粒子検出フィルタの入口と出口の間に生じる差圧を検知する差圧検知部と、を備え、上記加熱部が、上記微粒子検出フィルタの排ガス流れ上流側30%の面積に、上記微粒子を加熱する熱量の50%以上を加える微粒子濃度測定装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、微粒子検出フィルタの均一で効率的な再生が保証され、微粒子濃度の測定精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】従来の排ガス浄化装置の構成を示す図である。
【図2】第1の実施形態による微粒子濃度測定装置を使った排ガス浄化装置の構成を示す図である。
【図3】第1の実施形態による微粒子濃度測定装置における微粒子検出フィルタの作用を説明する図である。
【図4】第1の実施形態による微粒子濃度測定装置における微粒子検出フィルタの変形例を示す図である。
【図5】第1の実施形態による微粒子濃度測定装置の構成をより詳細に示す図である。
【図6】第1の実施形態による微粒子濃度測定装置において、セル上流側領域に導入される熱量割合と測定誤差の関係を示すグラフである。
【図7A】第1の実施形態における加熱部の一実施例を示す図である。
【図7B】第1の実施形態における加熱部の他の実施例を示す図である。
【図7C】第1の実施形態における加熱部のさらに他の実施例を示す図である。
【図7D】第1の実施形態における加熱部のさらに他の実施例を示す図である。
【図8】図6のグラフにおける微粒子濃度の真値を求める実験を説明する図である。
【図9】第2の実施形態による微粒子濃度測定装置の全体を示す図である。
【図10】第1の実施形態による微粒子濃度測定装置の一変形例を示す図である。
【図11】第2の実施形態による微粒子濃度測定装置を使った排ガス浄化装置の構成を示す図である。
【図12】第1の実施形態における一変形例による微粒子検出フィルタの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1の実施形態]
図2は、本発明の第1の実施形態による微粒子濃度測定装置40PM(PMセンサ)の構成を示す。ただし図2中、先に説明した部分には同一の参照符号を付し、説明を省略する。図2の微粒子濃度測定装置40PMは、微粒子捕捉フィルタ(DPF)22に異常が発生し、微粒子が排ガスライン21中を微粒子捕捉フィルタ(DPF)22の下流側に閾値以上に漏れ出した場合に、これを検出し、アラームや、ランプの点灯、点滅等を発するために使うことができる。
【0011】
図2を参照するに、微粒子捕捉フィルタ(DPF)22が形成されたディーゼルエンジンの排気ライン21には、微粒子捕捉フィルタ(DPF)22の下流側において、一端に排ガス採取部41aを有する排ガス採取ライン41Aが接続されており、排ガス採取ライン41Aには、図3に示す微粒子検出フィルタ42Aと、排ガス採取ラインの流量Q2を測定する流量計44と、流量調整バルブ43が直列に接続されている。さらに排ガス採取ライン41Aは、下流側の端部が、負圧タンクや、エアインテーク部などの微粒子検出フィルタ41Aの入口よりも圧力の低い部分に接続され、排気ライン21中の排ガスが、微粒子検出フィルタ42Aに吸引される。これは、排ガス採取ライン41Aの下流側に吸引ポンプを接続したのと同じであり、微粒子検出フィルタ42Aに排ガスを確実に供給することが可能となる。
【0012】
また、微粒子検出フィルタ42Aには、微粒子検出フィルタ42Aの温度を測定する温度測定部T1が設けられ、また差圧測定部42Bが設けられ、差圧測定部42Bにより、微粒子検出フィルタ42Aの前後の差圧ΔPが測定される。排ガス採取部41aは、排ガスライン21の流路断面積よりも小さな流路断面積を有している。
【0013】
なお先に説明した差圧測定部42Bとしてはダイヤフラム圧力計や、例えばゲージ式、ベローズ式、熱式などの公知の圧力計を使うことができ、また流量測定部44としては、ホットワイヤ流量計やベンチュリ流量計など、公知の流量計を使うことができる。
【0014】
図3は微粒子検出フィルタ42Aの例を示す。ただし図3の例では、微粒子検出フィルタ42A中に単一のセル42bのみが形成されているが、図12に示すように微粒子検出フィルタ42Aは、複数のセル42bが形成されたものであってもよい。
【0015】
図3を参照するに、微粒子検出フィルタ42Aは、全体として、主微粒子捕捉フィルタ22(DPF)中における排ガス通路の総容積の5%以下、例えば0.05〜5%、あるいは65ml以下、例えば0.05〜65mlの容積、あるいは0.1〜1000cmの濾過面積(好ましくは1〜10cmの濾過面積)を有する一または複数のガス通路42aが、例えば矩形断面形状で、またいずれか一端が閉じられた状態(1セルの場合は後方が閉じられた状態)で、形成されている。
【0016】
図3を参照するに、多孔質セラミックよりなる各々のセル42bは一端が開放され他端が閉じられたガス通路42aを形成し、ガス通路42aに導入された排ガスは、多孔質セラミックよりなるセル壁を通過して隣接するガス通路へと移動する。その際、セル42bの内壁面に、微粒子が捕捉され、微粒子層42cが形成される。
【0017】
図4は、図3のセル42bの一変形例を示す。図4のセルでは、排ガスはセル外部からセル壁を通過して、セル内部のガス通路42aへと流れ、その際前記セル42bの外面に前記微粒子層42cの堆積が生じる。前記図12のフィルタでは、図2のセルと図4のセルが交互に隣接して形成されている。
【0018】
なお、同様なセルは図1で説明した微粒子捕捉フィルタ(DPF)22にも形成されているが、ガス通路42aおよびセル42bの外形は、必ずしも微粒子捕捉フィルタ(DPF)22中のガス通路と同一サイズあるいは同一の断面形状で形成される必要はなく、円形、四角形、八角形、だ円等の任意の形状にしてもよい。また微粒子検出フィルタ42A(セル42b)を構成する多孔質セラミックの材質が、主微粒子捕捉フィルタ(DPF)22を構成する多孔質セラミックと同一である必要もなく、セラミックでなくてもよいことに注意すべきである。ガス通路42aの総容積を、微粒子捕捉フィルタ(DPF)22中における排ガス通路の総容積の5%以下、あるいは65ml以下の容積、あるいは0.1〜1000cmの濾過面積(好ましくは1〜10cmの濾過面積)を有するように形成することにより、セル42bには煤層の一様な堆積が生じ、以下に説明するように、微粒子捕捉フィルタ(DPF)22における微粒子堆積量を、簡単かつ正確に測定することが可能になる。
【0019】
図2の微粒子濃度測定装置40PMでは、微粒子検出フィルタ42Aに捕捉された微粒子の蓄積量が、以下の形の式により算出される。
【0020】
【数1】

(式1)
ただしΔPは[Pa]単位で表した差圧を、μは[Pa・s]単位で表した動粘性係数を、Qは[m3/s]単位で表した排ガス流量を、αは[m]単位で表したセルの一辺の長さを、ρ[g/m]単位で表した排ガス密度を、Vtrapは[m3]単位で表したフィルタ体積を、Wsは[m]単位で表した壁厚を、Kwは[m−1]単位で表した壁のガス透過率(パーマビリティ)を、Ksootは[m−1]単位で表した捕捉微粒子層のガス透過率(パーマビリティ)を、Wは[m]単位で表した捕捉微粒子層の厚さを、Fは係数(=28.454)を、Lは[m]単位で表した有効フィルタ長さを、βは[m−1]単位で表した多孔質壁のフォルヒハイマー係数を、ζは[Pa]単位で表したフィルタ通過による差圧を表す。
【0021】
次に、微粒子検出フィルタ22A(セル21b)に捕捉された微粒子の質量msootが、式
【0022】
【数2】

(式2)
により求められる。ただしmsootは、捕捉された微粒子の質量[g]、Ncellsは、入口側セルの開口数、ρsootは、捕捉された微粒子の密度である。
【0023】
そして、msootを、微粒子検出フィルタ42Aの前回の再生からの経過時間[s]で割れば、単位時間あたりの捕捉量PM[g/s]が得られる。
【0024】
このようにして単位時間当たりで堆積する微粒子の質量PM[g/s]が求められると、排ガス中の微粒子濃度PMconc[g/m]が、微粒子検出フィルタ22Aを通過する排ガス流量Q2[m3/s]を使って、
PM[g/s]=PMconc[g/m]×Q2[m3/s] (式3)
により求められる。
【0025】
図2に示すように、このような微粒子濃度測定装置40PMを微粒子捕捉フィルタ(DPF)22の下流側に配設することにより、微粒子捕捉フィルタ(DPF)22に異常が生じ微粒子が排気ライン21中を微粒子捕捉フィルタ(DPF)22の下流側に閾値以上に漏れ出した場合、本実施形態によればこのような異常を直ちに検出してアラームやランプの点灯、点滅等を発することができる。
【0026】
ところで図2の構成で使われる微粒子濃度測定装置40PMでは、経時的に微粒子検出フィルタ42A中に微粒子の堆積が生じる。このため図5に示すように、本実施形態では微粒子検出フィルタ42A(セル42b)上にヒータ42hが形成されており、ヒータ42hを必要に応じて駆動することにより、セル42bに捕捉されたカーボン(C)を主とする微粒子を燃焼させ、微粒子検出フィルタ42Aを再生する。
【0027】
図5は、図2の微粒子濃度測定装置40PMの構成をより詳細に示す図である。
【0028】
図5を参照するに、微粒子検出フィルタ42Aは一端が排ガス採取部41aを構成し、排ガス採取ライン41Aに連続するハウジング42E中に格納されており、差圧検知部42Bを構成するダイヤフラム圧力計は、微粒子検出フィルタの下流側に形成されている。圧力測定部42Bの一端は、微粒子検出フィルタ42Aの上流側に接続され、また他端は微粒子検出フィルタ42Aの下流側において排ガス採取ライン41Aに接続されており、その結果、差圧検知部42Bは微粒子検出フィルタ42Aを構成するセル42bの前後の差圧を測定することができる。
【0029】
セル42bは、セル42bを通過する排ガスの流れ方向の上流側端から下流側端までLの長さを有しており、図5の微粒子濃度測定装置40PMではさらに、微粒子検出フィルタ42Aを構成するセル42bのうち、セル42b中における上流側の例えば30%にあたる上流側領域L1に、セル42b中に蓄積した微粒子を燃焼させ微粒子検出フィルタ42Aを再生するためにヒータよりなる加熱部42Hが集中して形成されている。かかる構成では、上流側領域L1の下流側にあたる下流側領域L2には、加熱部42Hは形成されない。あるいは加熱部42Hは、下流側領域L2において、上流側領域L1よりも弱い加熱が生じるように形成される。
【0030】
図6は、図7A〜7Dに概略的に示すセルをセル42bとして使い、セル42bの上流側領域L1に投入される熱量(電力)の、セル全体に投入される熱量(電力)に対する割合を様々に変化させた場合の、式(1)〜(3)に従って求めた排ガス中の微粒子濃度と、実際に排ガス中に含まれる微粒子を実測して求めた微粒子濃度(真値)との測定誤差を示すグラフである。ただし図6の実験では、上流側領域L1を全体の長さLの30%に設定している。
【0031】
図7A,7Bの試料を参照するに、セル42bは全体の長さLが15mmで、一辺が4.0mmの正方形断面を有し、内部に一辺が3.2mmの正方形断面を有するガス通路が、ガス通路42aとして形成されている。セル42bは、0.4mmの壁厚を有している。図7Aのセルの例では、加熱部42Hとして線ヒータ(カンタル線ヒータ)42hが、上流側領域L1にのみ、18回巻回されている。一方図7Bのセルでは、ヒータ42Hとして線ヒータ(カンタル線ヒータ)42hが、上流側領域L1において12回、下流側領域L2において6回巻回されている。
【0032】
一方図7C,7Dの試料では、図7A,7Bの場合と同じセル42b上に抵抗ヒータパタ―ン42hRが、Cr膜の溶射あるいは印刷、あるいはPt膜のスパッタにより形成されている。以下の表1を参照。ただし図7Cの例では抵抗ヒータパターン42hRが、領域L1では幅が0.8mmのジグザグパタ―ンの形状に、また領域L2では幅が1.2mmの直線パタ―ン形状に形成されている。同じ抵抗ヒータパターン42hRは、セル42bの対向面にも形成されている。またただし図7Cの例では抵抗ヒータパターン42hRが、領域L1では幅が0.8mmのジグザグパタ―ンの形状に、また領域L2では幅が1.2mmの直線パタ―ン形状に形成されている。同じ抵抗ヒータパターン42hRは、セル42bの対向面にも形成されている。図7Cの試料では、抵抗ヒータパターン42hRの幅W1,W2を領域L1およびL2で様々に、例えば0.8mmと1.2mmなどに変化させ、また領域L1において抵抗ヒータパターン42hRがなすジグザグパタ―ンの折り返し回数、ピッチを変化させる又はヒータパターニングの厚みを変化させることにより、領域L1に投入される熱量の割合(%)を変化させている。
【0033】
図7Dの試料では、抵抗ヒータパターン42hRが領域L1およびL2において直線形状に形成され、その幅を、領域L1およびL2でW1およびW2と変化させている。一の例では幅W1は0.93mmに設定され、幅W2は3.7mmに設定される。
【0034】
以下に説明する図6の実験では、線ヒータ(カンタル線ヒータ)の巻き数を上流側領域L1および下流側領域L2で様々に変化させ、微粒子検出フィルタ42Aの再生時に上流側領域L1に投入される熱量の割合(%)を、様々に変化させている。またセル42bには排ガスを0.14l/分の割合で導入している。
【0035】
図8に示すようにディーゼルエンジン11から排気ライン21に排出された排ガスを、清浄な空気が導入される希釈トンネル111に導き、これを52℃以下の温度まで希釈および冷却し、1次捕集フィルタ115および2次捕集フィルタ116上に採取し、その質量をマイクロ天秤で測定することにより、排ガス中の微粒子量を直接に実測し、これを排気ライン21の濃度に換算しこれを真値とした。同じ排気ライン21に設けられた微粒子濃度検出装置40PM(ディーゼルエンジンE/Gからの距離1.5〜2.0m)の算出値(PMconc)と真値とを比較することにより測定誤差を求めている。なお図8の構成では、ダイリューショントンネル111を通過した後、排ガスは熱交換機112および臨界流ベンチュリ管113を介してブロワ114により吸引される。また1次捕集フィルタ115および2次捕集フィルタの下流側にもブロワ117が設けられ、排ガスを吸引している。
【0036】
再び図6のグラフを参照するに、セル42bの下流側領域L2に熱量を集中的に投入した場合、すなわちセル42bの上流側30%の領域L1への投入熱量の割合(%)を、セル全体への投入熱量の40%とした場合には、微粒子濃度測定装置40PMによる微粒子濃度の測定誤差は±10%を超え、±11%あるいは±13%に達する大きな測定誤差が生じることがわかる。
【0037】
これに対しセル42bの上流側30%の領域L1への投入熱量の割合(%)を、セル全体への投入熱量の50%〜70%とした場合には、測定誤差は、図6より±6%未満に抑制されることがわかる。
【0038】
一方、セル42bの上流側30%の領域L1へ100%の熱量を投入した場合には、測定誤差は再び増大し、±6%を超えるのがわかる。
【0039】
表1は、セル42bにおいて線ヒータ(カンタル線ヒータ)42hあるいは抵抗ヒータパタ―ン42hRとして様々な材料を用い、領域L1,L2への投入熱量の比率を様々に変化させた場合の再生率と測定誤差を求めた結果を示す。
【0040】
【表1】

表1を参照するに、「再生率」は、線ヒータ(カンタル線ヒータ)42hあるいは抵抗ヒータパタ―ン42hRを駆動してセル42b中に蓄積した微粒子を燃焼させ微粒子検出フィルタ42Aを再生した後に残留した微粒子量を表しており、セル42bの初期重量と再生後の重量を比較することで求められる。測定誤差は、図6の場合と同様にして求められる。
【0041】
表1を参照するに、測定誤差は再生率が低下するとともに増大しており、このことから、図6のグラフにおける測定誤差の原因は、セル42b中に再生後も未燃焼の微粒子が残留していることにあると考えられる。
【0042】
特に図6のグラフにおいてセル上流側領域L1に投入される熱量が40%の実験例では、熱量は60%が下流側領域L2に投入されており、上流側領域L1での微粒子の燃焼が不十分となり、下流側領域L2でもみ燃焼の微粒子が残留する。これが理由で、上記実験例では微粒子濃度測定において大きな測定誤差が発生している。
【0043】
これに対し、上流側領域L1および下流側領域L2に適正に熱量を配分すると、すなわち、上流側領域L1に投入される熱量の全投入熱量に対する割合(%)を50%以上、90%以下とすることにより、微粒子濃度の測定誤差を±6%以下に抑制することが可能である。
【0044】
また図6のグラフにおいて上流側領域L1にのみ100%の熱量を投入した場合には、測定誤差の値が再び増大しているが、これは下流側領域L2への熱量の投入が全くないと、微粒子捕集フィルタを伝導する熱のみに頼ることとなるため、下流側への熱が不足し、再生の際に下流側領域L2において微粒子の燃焼が不完全となり、測定誤差が増大するものと考えられる。
【0045】
本実施形態では、図5あるいは図7A〜7Dに示すように、加熱部42Hを、副微粒子検出フィルタの一部に集中的に配置することにより、微粒子検出フィルタ42Aの再生を良好に行うことが可能となり、微粒子濃度検出装置40PMの測定誤差を低減することが可能となる。
【0046】
また加熱部42Hは、表1に示すように線ヒータ(カンタル線)、Cr膜あるいはPt膜より構成する(抵抗ヒータパタ―ン)ことができるが、これらの材料に限定されるものではない。さらに表1に記載したように、抵抗ヒータパタ―ン42hRは、溶射やスパッタ、印刷、特にスクリーン印刷など、様々な方法により形成することができる。
【0047】
線ヒータは、例えばカンタル線が挙げられ、その他の線ヒータであってもよい。また線ヒータ、抵抗パターンを抵抗ヒータともいい、抵抗ヒータは線ヒータ、抵抗パターンに限定されるものではない。
【0048】
なお、図9に示す本実施形態の微粒子濃度測定装置40PMは、図2に示す排気ライン21に微粒子捕捉フィルタ22(DPF)の下流側において差し込まれ、固定されるヘッド部42eを形成された例えばステンレスなどの耐熱金属よりなるパイプ形状のハウジング42Eを含み、ハウジング42E中には微粒子検出フィルタ42Aが、好ましくはSiC(炭化珪素)などの多孔質セラミックにより構成され配設されている。ここでヘッド部42eは、排気ライン21に挿入される排ガス採取ラインの一部を構成する。
【0049】
図9に示すようにハウジング42Eからは排ガスが通る可撓性ホース42Fが延在し、可撓性ホース42Fの下流側端には、差圧測定部42Bおよび流量測定部44を格納した制御ユニット42Gが形成されている。制御ユニット42Gを通過した排ガスは、排気管42gへと排出される。
【0050】
このような構成によれば、所望の微粒子濃度測定装置を小型に構成でき、その結果、微粒子濃度測定装置を車両の任意の部位に、必要に応じて取り付けることが可能となる。
【0051】
なお本実施形態において、図10に示すように、図9の構成において流量制御ユニット42Gから排ガスを排出する排気管42gにポンプ42Pを接続し、排ガスを強制的に排気するように構成することもできる。かかる構成では、ヘッド部42eが静止した、すなわち流れのない排ガス雰囲気中に設けられても、排ガスが、ポンプ42Pが発生する負圧により吸い込まれ、所望の微粒子濃度測定を行うことが可能となる。
[第2の実施形態]
図11は、本発明の第2の実施形態による微粒子濃度検出装置60PM(PMセンサ)を有するディーゼルエンジンの排ガス浄化装置60の構成を示す。
【0052】
図11を参照するに、排ガス浄化装置60は図1の排ガス浄化装置20と類似した構成を有し、排気ライン21から微粒子捕捉フィルタ(DPF)22の上流側において分岐した排ガス採取ライン41Aを有している。
【0053】
図11の構成では、微粒子捕捉フィルタ(DPF)22を通過していない排ガスが微粒子検出フィルタ42Aに捕捉され、微粒子検出フィルタ42Aに捕捉された微粒子の量をもとに、先の式(1)〜(3)に加えて、以下の処理を行っている。
【0054】
排ガス中の微粒子濃度PMconcは、排ガス採取ライン21A中においても排ガスライン21中においても同じであり、従って、排ガスライン21を通過する微粒子の量(PM enter full filter [g/h])は、
PM enter full filter [g/h]=PMconc[g/m]×Q1[m3/h]
(式4)
により求められる。ここでQ1は排ガスラインの排ガス流量を表す。
【0055】
これにより、微粒子捕捉フィルタ(DPF)22中に蓄積した微粒子の量を推定することができる。ただしQ1は微粒子捕捉フィルタ(DPF)22を通過する排ガスの流量である。Q1は、実測して求めてもよいし、エンジンの運転状態から見積もってもよい。
【0056】
図11の構成では、さらに排ガス採取ライン41A中にバルブ43が設けられ、バルブ43は、図1の排ガス浄化装置20の場合と同様に、流量計44により制御され、排ガス採取ライン41A中の排ガス流量が所定値Q2に制御される。
【0057】
一方、かかる構成では、経時的に微粒子検出フィルタ42A中に微粒子の堆積が生じるため、微粒子検出フィルタ42Aの再生を行っている。
【0058】
このため先に説明したように、本実施形態では微粒子検出フィルタ42A(セル42b)上にヒータ42hが形成されており、ヒータ42hを駆動ラインからの電力により必要に応じて駆動することにより、セル42bに捕捉されたカーボン(C)を主とする微粒子を燃焼させ、微粒子検出フィルタ42Aを再生する。
【0059】
本実施形態においても、第一実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0060】
以上、本発明を好ましい実施例について説明したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した要旨内において様々な変形・変更が可能である。たとえば、上記実施形態における流量測定部は、予め排ガス採取ラインを流れる流量が判っていれば、無くすことができる。また、温度測定部は排ガスの特性を一定と考えれば無くしてもよい。さらに、流量を精確に測定していれば、バルブを無くすことができる。
【0061】
また図4に示すように、セルの内側(径内方向)に加熱部(ヒータ)を配置してもよく、セルの外側(径外方向)に加熱部(ヒータ)を配置してもよい。
【0062】
以上、本発明を好ましい実施形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した要旨内において様々な変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0063】
11 ディーゼルエンジン
20 排ガス浄化装置
20PM 微粒子濃度測定装置
21 排気ライン
21A 副排気ライン
22 微粒子捕捉フィルタ
22A,42A 微粒子検出フィルタ
22B,42B 差圧測定部
42H,42h ヒータ
23,43 流量調整バルブ
24,44 流量測定部
41A 排ガス採取ライン
41a 排ガス採取部
42E ハウジング
42F 可撓性ホース
42G 制御ユニット
42P ポンプ
42a 排ガス通路
42b セル
42c 微粒子層
42e ヘッド部
42g 排気管
42hR 抵抗ヒータパタ―ン
60PM 微粒子濃度検出装置
111 希釈トンネル
112 熱交換器
113 臨界流ベンチュリ管
114,117 ブロワ
115 1次捕集フィルタ
116 2次捕集フィルタ
L1 上流側領域
L2 下流側領域
T1,T2 温度測定部
W1,W2 抵抗ヒータパタ―ン幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディーセルエンジンの排気ラインを流れる排ガス中の微粒子濃度を測定する微粒子濃度測定装置であって、
前記排気ラインから分岐され、前記排気ラインの流路断面積よりも小さい流路断面積を有する排ガス採取ラインと、
前記排ガス採取ラインに設置され、微粒子を捕集する微粒子検出フィルタと、
捕集した微粒子を加熱する加熱部と、
前記微粒子検出フィルタの入口と出口の間に生じる差圧を検知する差圧検知部と、
を備え、
前記加熱部が、前記微粒子検出フィルタの排ガス流れ上流側30%の部分に、前記微粒子を加熱する熱量の50%以上を加えることを特徴とする微粒子濃度測定装置。
【請求項2】
前記加熱部が、前記微粒子検出フィルタの排ガス流れ上流側30%の部分に、前記微粒子を加熱する熱量の50%以上90%以下の熱量を加えることを特徴とする請求項1に記載の微粒子濃度測定装置。
【請求項3】
前記微粒子検出フィルタは、少なくとも前記排ガス流れ下流側に向かう軸方向に延在する筒形状と、前記筒形状の排ガス流れ下流側に配置される底形状を有しており、
前記加熱部は前記筒形状の径外方向に設けられることを特徴とする請求項1または2に記載の微粒子濃度測定装置。
【請求項4】
前記微粒子検出フィルタは、少なくとも前記排ガス流れ下流側に向かう軸方向に延在する筒形状と、前記筒形状の排ガス流れ上流側に配置される底形状を有しており、
前記加熱部は、前記筒形状の径内方向に設けられることを特徴とする請求項1または2に記載の微粒子濃度測定装置。
【請求項5】
前記加熱部は、前記微粒子検出フィルタに巻き回された抵抗ヒータよりなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の微粒子濃度測定装置。
【請求項6】
前記加熱部は、前記微粒子検出フィルタに印刷された抵抗ヒータよりなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の微粒子濃度測定装置。
【請求項7】
前記加熱部は、前記微粒子検出フィルタに溶射された抵抗ヒータよりなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の微粒子濃度測定装置。
【請求項8】
前記加熱部は、前記微粒子検出フィルタにスパッタリングされた抵抗ヒータよりなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の微粒子濃度測定装置。
【請求項9】
前記排ガス採取ラインに挿入され、前記排ガス採取ライン中における排ガス流量を測定する流量測定部を備える請求項1〜8のうち、いずれか一項記載の微粒子濃度測定装置。
【請求項10】
前記排ガス採取ラインに挿入され、前記排ガス採取ライン中における排ガス流量を制御する流量制御バルブと、
前記流量測定部で測定された前記排ガス流量に基づいて前記流量制御バルブを制御し、前記排ガス採取ライン中における排ガス流量を所定値に制御する制御装置とを備える請求項9に記載の微粒子濃度測定装置。
【請求項11】
前記微粒子検出フィルタの排ガス流れ下流側に配置されるポンプを備える請求項1〜10のうち、いずれか一項記載の微粒子濃度測定装置。
【請求項12】
前記排気ラインに前記微粒子検出フィルタよりも容量の大きい微粒子捕捉フィルタが配置される請求項1〜11のうち、いずれか一項記載の微粒子濃度測定装置。
【請求項13】
前記排気ラインにおいて、前記排ガス採取ラインが前記微粒子捕捉フィルタの下流側に接続されることを特徴とする請求項12記載の微粒子濃度測定装置。
【請求項14】
前記排気ラインにおいて、前記排ガス採取ラインが前記微粒子捕捉フィルタの上流側に接続されることを特徴とする請求項12記載の微粒子濃度測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−37237(P2012−37237A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20755(P2010−20755)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【出願人】(507271802)