説明

微粒子状物体の拡散装置及び拡散方法

【課題】装置が大型化することなく、乾燥した微粒子状物体を均一に近い状態に拡散できる拡散装置を提供する。
【解決手段】微粒子状物体の集まりSを設置する設置部2aと、超音波の放射軸を上記設置部2aに向けて配置した段つき円形振動板3とを、拡散瓶1内の閉塞空間Aに配置する。そして、上記段つき円形振動板3を振動させて、上記設置部2aに設置した微粒子状物体の集まりSに向けて超音波を放射して、当該微粒子状物体を拡散させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子状物体を均一に近い状態に拡散して、当該微粒子状物体を散布若しくは飛散するために使用する微粒子状物体の拡散装置及び拡散方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空中浮遊微生物の除去装置や防止機器を評価する場合、曝露チャンバー内へ微生物を散布し、除去装置や防止機器による微生物の減少具合などを調べる方法が一般的である。その微生物を曝露チャンバーの空間に分散散布させる方法としては、従来、ネブライザーが使用されている。ネブライザーは、液体(水)に微生物を混合させ霧状にして噴霧させることで、散布するものである。
【0003】
また、微生物を拡散して散布するための装置ではないが、特許文献1には、超音波を使用した剥離技術が開示されている。この技術は、クリーンルームなどで使用される技術である。その技術の構成は、拡散容器カバーに配置した超音波発生装置と、測定試料に対し、空中で、矩形振動板を使用した超音波発生装置からの超音波を照射して、試料表面の微粒子を剥離する微粒子剥離手段とを備える。その微粒子剥離手段内には、該超音波を反射して該試料表面上の一点に集束させるための集束方向変換器が設けられている。
【0004】
さらに、微粒子剥離手段に設けられた空気導入手段と、導入空気によって、剥離された微粒子を微粒子カウンターに導く空気導出手段と、余剰空気を微粒子剥離手段外に排出する排気手段と、を有する。
【特許文献1】特開平10−185795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記ネブライザーを使用して微生物を散布する場合、例えば、カビ胞子は、細菌よりも粒子径が大きく自然落下し易いことから、均一に散布できにくく、再現性が良くない。
また、微生物と共に水分を噴霧することから、試験室の壁面に水分が付着するなどの点で、目的とした試験環境を再現出来ないおそれがある。すなわち、ネブライザーを使用した場合には、乾燥した微生物、特にカビ胞子を、所定の空間内に対し均一に近い状態に散布することが困難であった。
【0006】
また、特許文献1に記載の装置では、超音波を反射して該試料表面上に集束させる集束方向変換器を設ける必要があるなど、持ち運びが出来ないほど装置が大型なものとなる。すなわち、仮に、微生物を散布する装置として転用するにしても、装置が大がかり過ぎて適用が困難である。
また、特許文献1に記載の装置では、試料表面上の点に近い微小位置に対して所定強度の超音波を集束するため、所定面積に集合している微粒子状物体に対して超音波を放射するためには、集束点を順次変更していく必要もある。
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、装置が大型化することなく、乾燥した微粒子状物体を均一に近い状態に拡散できることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のうち請求項1に記載した発明は、微粒子状物体の集まりを設置する設置部と、超音波の放射軸を上記設置部に向けて配置した振動板と、上記設置部及び振動板を内部に収容し閉塞した空間を形成する拡散容器と、上記振動板を振動させて超音波を発振させる超音波発生装置と、を備え、上記振動板は、段つき円形振動板であることを特徴とする微粒子状物体の拡散装置を提供するものである。
【0008】
次に、請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した構成に対し、上記拡散容器内に気体を圧入可能な気体導入装置と、拡散容器内に連通して拡散容器内の空気を外部に導出可能な気体導出部と、を備えることを特徴とするものである。
次に、請求項3に記載した発明は、請求項1又は請求項2に記載した構成に対し、上記設置部に設置する微粒子状物体は、カビ胞子その他の菌類であることを特徴とするものである。
次に、請求項4に記載した発明は、段つき円形振動板を音源として、微粒子状物体の集まりに向けて、超音波を放射することで、上記微粒子状物体の集まりを拡散させることを特徴とする微粒子状物体の拡散方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、一瞬に、所定の面積に設置した微粒子状物体を、拡散容器内の閉鎖空間に対し、均一に近い状態に拡散させることが出来る。また、指向性の良い段つき円形振動板を使用することで、集束方向変換器が不要になるなど、装置の小型化及び簡易化を図ることが出来る。
また、請求項2に係る発明によれば、拡散容器内で均一に近い状態に拡散した微粒子状物体を、短時間で目的の空間に、分散(散布若しくは飛散)させることが可能となる。
さらに、請求項3に係る発明によれば、カビ胞子などの菌類を、乾燥した状態で拡散させて、分散可能となる。
また、請求項4に係る発明によれば、所定の面積に位置する微粒子状物体の集まりを一度に拡散させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態の拡散装置を示す概要構成図である。
(構成)
本実施形態の拡散装置は、図1に示すように、円筒形状の微粒子拡散瓶1の内部に形成された閉鎖空間A内に、設置部材2と振動板3とを配置する。
上記微粒子拡散瓶1は、内径80mm×高さ175mm(閉鎖空空間の高さは170mm)の円筒形状の容器である。その微粒子拡散瓶1の上端開口部は、着脱可能な蓋体4で閉塞されることで密封状態を確保している。なお、蓋体4は、ゴムなどの弾性体から構成すればよい。図1では、中央部だけ別に脱着出来る場合を例示してある。
上記設置部材2は、微粒子拡散瓶1の底部1a中心から上方に立設した柱状部材であって、その設置部材2の上面中央部分が、微粒子状物体の集まりSを設置する、所定面積を有する設置部2aとなっている。
【0011】
その設置部材2の上方に、上記設置部2aと上下に対向させて振動板3が配置してある。その振動板3は、図2に示すような、段つき円形振動板3である。本実施形態では、円形振動板3の一方の面の外周側に同心状(リング状)の凹部3aを形成することで、半波長分の段を構成して、2節円モードの段つき円形振動板3とする。図2に、その寸法例も例示する。この段つき円形振動板3は、振動すると、中心部に対し凹部3aで逆相に相対的に振動するが、半波長分だけの深さの段を形成することで、実質的に同方向に向けて超音波が放射可能となって指向性がよい。このため、円形振動板3の面積相当の部分に対し、一度に且つ所定強度の超音波を集中して放射することが可能となる。このように、本実施形態では、27kHz用2節円モード段つき円形振動板3を空中超音波の音源としている。
【0012】
その振動板3の上面中央部には、半波長共振棒5を介して、エクスポネンシャルホーン6が一体に連結している。また、エクスポネンシャルホーン6に27kHz用BLT7が一体に連結している。そのBLT7は、アンプ8を介して信号発生器9に接続する。
そして、上記BLT7、エクスポネンシャルホーン6、半波長共振棒5、及び振動板3を、微粒子拡散瓶1の中心軸P上に配置し、上記振動板3を、上述のように微粒子拡散瓶1内に収容している。このとき、この中心軸Pに対し、振動板3の超音波の放射軸を一致させている。すなわち、本実施形態の場合には、中心軸Pが超音波の放射軸の向きとなる。もっとも、中心軸Pと、振動板3の超音波の放射軸とを必ずしも一致させる必要は無い。
そして、半波長共振棒5を、上記蓋体4に固定しておくことで、上記姿勢を保持させる。
【0013】
また、気体導入管10及び気体導出管11を備える。
気体導入管10は、上記蓋体4を貫通して下流端10aを、微粒子拡散瓶1内における底部1a近傍に位置させている。その気体導入管10の上流端10bには、ポンプ12の吐出口を接続する。これによって、空気を微粒子拡散瓶1内に圧送可能となっている。
また、気体導出管11は、上記蓋体4を貫通して一端部11aを微粒子拡散瓶1内の上部に配置している。そして、気体導出管11の他端部11bから微粒子状物体を含んだ空気を、微粒子拡散瓶1の外部に排出可能となっている。
【0014】
本実施形態では、振動源である振動板3から27.4kHzで超音波を放射する構造となっている。また、微粒子状物体の集まりSを設置する設置部2aと振動板3との距離を、中心軸上で4cmに設置した。
ここで、微粒子拡散瓶1は拡散容器を構成する。気体導入管10及びポンプ12は、気体導入装置を構成する。気体導出管11は気体導出部を構成する。半波長共振棒5、エクスポネンシャルホーン6、BLT7、アンプ8、及び信号発生器9は、超音波発生装置を構成する。
【0015】
(使用例その他)
上記蓋体4を一旦開けて、設置部2aの上に微粒子状物体の集まりSを設置する。微粒子状物体の例としては、カビ胞子がある。
微粒子状物体の集まりSを設置したら、信号発生器9を作動させて、振動板3から超音波を放射させる。超音波を微粒子状物体の集まりSに放射すると、1秒もかからず瞬時に微粒子状物体は、微粒子拡散瓶1内で均一に近い状態に拡散する。
この状態で、ポンプ12を稼働させて空気を拡散瓶1内の底側に圧送すると、閉鎖空間Aの上部に配置した気体導出管11から、微粒子状物体を含んだ空気が連続して排出されて、対象とする空間に微粒子状物体を分散させることができる。符号13は、上記気体導出管11に接続した管路であって、気体導出管11から排出した空気を所定の空間まで案内するものである。
【0016】
ここで、ポンプ12によって毎分5リットルの空気を拡散瓶1内に圧送すると、5分以内という短い時間で、微粒子状物質が微粒子拡散瓶1内からほとんど排出されることを確認している。
また後述するように、段つき円形振動板3は、指向性が非常に高い。このため、超音波を設置部2aに集束させる集束方向変換器などが無くても、段つき円形振動板3と対向する所定の面積部分に対し、同時に所定強度の超音波を放射させることが出来る。すなわち、振動板3を駆動する機構が不要である。このようなことから、拡散装置に対し、携帯可能なように小型化を図ることが出来る。
【0017】
また、後述するように、微粒子状物体としてカビ胞子を採用して、気体導出管11から排出するカビ胞子を含んだ空気を曝露チャンバーに吹き出して分散させたところ、カビ胞子が曝露チャンバー内の空間にほぼ均一に分散していることを確認した。すなわち、空中浮遊微生物の除去装置及び防止機器の評価のために均一に微生物を散布する装置として、有用であることを確認した。
【0018】
(振動板3による超音波の物理量とその効果について)
強力な超音波を空中に放射すると、超音波の物理量としての粒子変位の大きさ、速度、加速度、あるいは強さなどに関係する直流的な力が発生する。一方で空中に放射した強力超音波は、空気の圧縮、膨張が非線形のため波形歪が生じ、直流的な流れや空中に微小物体を空中に浮揚(保持あるいは固定)させるような効果も発生する。例えば粉体に対し垂直に空中から強力超音波を放射すると、超音波の振幅、速度などにより粉体微粒子は激しく振動し、瞬時に空中に飛散する。その後、微粒子は音圧分布により音場内に拡散する。従って、上述のように非接触で微粒子状物体を空中に拡散させることが可能となる。
【0019】
なお、振動板3として段つき円形振動板を利用し、この音源から放射された音場内には直流的な流れや微小物体を浮揚させることが出来ることを確認している。また、音場内を熱線型流速計で測定した結果、中心軸上には秒速1m以上となる流れが発生することを確認している。実験の諸元は上述と同様である。
ここで、微粒子拡散瓶1内の音場は非常に狭い空間であり、音圧分布の測定が困難で有る。このため、微粒子拡散瓶1を除去して、振動板3の中心軸上4cmまでの音圧分布をB&K4138で測定した。その結果を図3に示す。この図3に示すように、拡散瓶1が存在しない状態では定在波音場が形成されている。もっとも、微粒子拡散瓶1内では振動板3裏面からの超音波の放射や、拡散瓶1の壁面からの反射が複雑に重畳した音圧分布になると考えられる。すなわち、より微粒子状物体の拡散分布が均一に近づくと思われる。
【0020】
また、同じ条件下(微粒子拡散瓶1を外した状態)で、第4種タルクを用いた拡散実験を行い、高速度カメラで測定した。その結果、超音波放射後48msでタルク粒子が空中に拡散する様子が確認でき、部分的には粒子が剥離するような現象も確認できた。また、音圧を上げることにより、粒子の拡散量が増加することがみられた。
さらに微粒子の拡散について検討した。基礎実験として音響管内に定在波音場を構築し、タルクの拡散実験を行った結果、音圧分布の節(粒子速度の腹)に置かれた粒子が顕著に拡散することが分かった。この現象を超音波領域の音源に適応し、27kHzの段つき円形振動板3(直径60mm)を拡散瓶1内に設置してタルクの拡散実験を行った結果、拡散可能であることが分かった。
【0021】
このように、限られた空間内で微粒子状物体の拡散を行う場合、段つき円形振動板3を使った音源が有効であることが分かった。なお、周波数を40kHzにすることで、より小型化が可能となる。
また上述のことから、微粒子状物体の設置位置は、音圧分布の節(粒子速度の腹)に置く方が、より確実に拡散できることも分かる。
【0022】
(超音波によるカビ胞子の拡散及び分散の確認について)
設置部2aに設置するカビ胞子として、PenicilliumH15株を用いた。また予めPenicilliumH15カビセンサーを培養し、胞子を着生させておき、胞子着生済みのカビセンサーを、拡散瓶1としてのアクリル製ボックス内(約70リットル)中央に設置した。ここで、上記カビセンサーが設置部となり、カビセンサーに着生している胞子が、微粒子状物体の集まりSとなる。
【0023】
そして、アクリル製ボックス内のカビセンサーに放射軸を設定して横方向から超音波を5分間放射して拡散させ、その後15分間放置した。その後、ボックス底面に並べた5プレートの寒天平板培地を回収し、直ちに培養してカビ生育の経過を観察した。その結果、培養14日後の5箇所プレートは同様の生育状態を示し、アクリル製ボックス内の設置位置による違いは認めなかった。
【0024】
この実験から、上記のような超音波によって拡散させた胞子が、少なくとも上面視において均一に近い状態で拡散していることが分かる。
次に、ナイロン不織布を使用したリバーシブル簡易クリーンブース(陰陽圧切替型のフィルターファンユニット装備(株式会社アメニティ・テクノロジー))を曝露チャンバーとし、口径50mmのチューブで、そのクリーンブースとアクリル製ボックスと接続した。
【0025】
そして、上述のようにしてPenicilliumH15を培養させたカビセンサー(微粒子状物体の集まりS及び設置部2a)をアクリル製ボックス内にクリップで固定し、そのカビセンサーに放射軸を設定して上述のように超音波を5分間放射して拡散した。その後に、上記アクリル製ボックス内からクリーンブースにカビ胞子を含んだ空気を分散させた。
【0026】
簡易クリーンルーム内のカビ胞子存在状態のモニターにはレーザーパーティクルカウンターMODEL3886(日本カノマックス株式会社)を用い、粒度別粉塵数の経時的な変動を測定した。空中浮遊菌の測定、つまり空中浮遊菌の経時的変動の測定には、スリット式空中浮遊菌オートサンプラー装置(BAS−1型)を用いた。1プレート(DG18培地)に5分間隔で菌を連続捕集した。捕集した空中浮遊菌について、培養後のコロニー数を計数した。また、簡易クリーンブースの四隅(A、B、C、D)および中央(E、F)の床面にプレート(DG18培地)を置き、落下菌を採取した。
【0027】
さらに、空中にて超音波によるカビ胞子の分散状態を確認するために、簡易クリーンブース内にカビ胞子を導入後、四隅(A、B、C、D)および中央(E、F)の床面にプレート(DG18培地)を置き、落下したPenicilliumH15を採取し培養した。その結果、A〜Fは同様のコロニーを形成していた。また、レーザーパーティクルカウンターによる粒度別粉塵数の経時的な変動を同時に測定した結果、超音波を発振した直後から簡易クリーンブース内の粒子数は増加し、一時間経過後において、0.3μmの粒子は増加し続けた。その結果を図4に示す。この図4から分かるように、0.5、1.0、3.0μmの粒子径は一定の推移を示していた。5.0μmの粒子径は時間経過と共に僅かながら減少した。なお、この実験は予備的な試験であり、この簡易な実験装置にも拘わらず、比較的良好な成績を得たことから、空気清浄装置の性能評価方法への応用が可能であると考えられる。
【0028】
(円形振動板3について)
上述の通り、27kH用の段つき円形振動板3の直径は、約60mmである。更に、段つき円形振動板3の小型化を目的として設計周波数40kHzとし、厚さ2mmの平面振動板を基本として、2節円モードの段つき円形振動板3を設計すると、外径42mmで指向性9度を持つ段つき円形振動板3を設計することができた。その寸法を図5に示す。
【0029】
この2節円モード段つき円形振動板3を中心駆動し、1/4インチコンデンサマイクロホーンを半径50cmの円周上で回転し、中心軸上で規格化した結果、図6の指向特性を得た。図6中、右端が40kHz用振動板3からの指向特性であり、これよりビーム幅9度が得られた。併せて、20kHz、28kHz用の振動板3についても測定した結果を示す。20kHz、28kHz用の振動板3では、それぞれ約8度、9度のビーム幅が得られた。なお、20kHzでは段つき円形振動板3の直径は84mmであり、28kHzでは段つき円形振動板3の直径は62mmである。
【0030】
ここで、振動板3の外径Dと駆動周波数から求めた波長λとの比D/λを求めると4.9〜5となり、波長に対し5倍の外径で20kHzから40kHzの2節円モード段つき円形振動板3が設計でき、ビーム幅約8〜9度の指向特性が得られることを示している。
次に、中心軸上音圧分布を、振動板3から500mmまで測定した結果、中心から約42mmで最大音圧が得られることがわかった。
【0031】
また、40kHz用段つき円形振動板3の振動子入力(W)に対する音圧(Pa)を、マイクロホーン(B&K4138)を、振動板3から42mmの位置に固定して測定した。その結果を図7に示す。図7から、この振動板3では、入力10Wまではほぼ比例して音圧が増加することが分かり、さらに入力15Wで測定した結果、1650Pa(158dB)が得られた。なお、図中の実線は振動子入力(W)の1/2乗を示している。
【0032】
このように、段つき円形振動板3は、音源としての特性として、指向特性は中心軸上に主極が発生し、ビーム幅が例えば8度や9度などの範囲に集束していることが分かる。
すなわち、段つき円形振動板3を音源とすることで、集束方向変換器などが不要であるばかりか、所定の面積に設置した微粒子状物体の集まりに対して、一度に且つ所定強さの超音波を放射できることが分かる。
【0033】
(本実施形態の効果)
以上説明してきたように、本実施形態の拡散装置を使用すると、微粒子状物体を、一瞬にして拡散瓶1内の閉鎖空間Aに対し均一に近い状態で拡散させることが出来る。
しかも、音源として段つき振動板3を使用することで、拡散装置を小型化出来て、携帯可能となる。また、所定の面積内に設置した微粒子状物体を一度に拡散させることが出来る。すなわち、超音波の放射軸を移動させる必要がない。
【0034】
また、拡散瓶1内で均一に近い形に拡散した微粒子状物体を、短時間で外部に、分散(散布若しくは飛散)させることが可能となる。
このことは、カビ胞子を、乾燥した状態で、且つ対象とするチャンバー内に分散させることが可能となる。すなわち、チャンバー内の空間に乾燥したカビ胞子を均一に近い状態で分散させることが可能となる。これによって、空中浮遊微生物の除去装置や防止機器の評価を向上させることが可能となる。
【0035】
(変形例)
ここで、上記実施形態では、段つき円形振動板3として、2節円モードとなるように段つきを形成した場合を例示しているが、4節円モードとなるように段つきを形成しても良い。
また、上記実施形態では、空中浮遊微生物の除去装置などのために、微生物を分散する場合を例示しているが、これに限定しない。例えば、日本酒を作成するために種こうじ(カビ胞子)を、超音波によって拡散容器内で拡散させ、こうじ室に分散するために使用しても良い。
【0036】
更に、微粒子状物体の集まりSは、カビ胞子などの微生物でなくても良い。微粒子状物体の集まりSを拡散して分散処理する必要のある、当該微粒子状物体の集まりSであれば、適用することが出来る。
また、上記実施形態では、上下方向から超音波を放射させているが、横方向や斜め方向から超音波を放射するように設定しても良い。
また、拡散瓶1内に圧入する気体は、空気以外、例えば窒素や酸素などであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に基づく実施形態に係る拡散装置を示す概念図である。
【図2】本発明に基づく実施形態に係る段つき円形振動板を示す図である。
【図3】音圧分布を示す図である。
【図4】胞子の分散状態を示す図である。
【図5】40kH用の段つき円形振動板を示す図である。
【図6】指向性を示す図である。
【図7】中心軸上の音圧を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
1 微粒子拡散瓶
2a 設置部
3 段つき円形振動板
3a 凹部
4 蓋体
5 半波長共振棒
6 エクスポネンシャルホーン
8 アンプ
9 信号発生器
10 気体導入管
11 気体導出管
12 ポンプ
A 閉塞空間
P 中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒子状物体の集まりを設置する設置部と、超音波の放射軸を上記設置部に向けて配置した振動板と、上記設置部及び振動板を内部に収容し閉塞した空間を形成する拡散容器と、上記振動板を振動させて超音波を発振させる超音波発生装置と、を備え、上記振動板は、段つき円形振動板であることを特徴とする微粒子状物体の拡散装置。
【請求項2】
上記拡散容器内に気体を圧入可能な気体導入装置と、拡散容器内に連通して当該拡散容器内の空気を外部に導出可能な気体導出部と、を備えることを特徴とする請求項1に記載した微粒子状物体の拡散装置。
【請求項3】
上記設置部に設置する微粒子状物体は、カビ胞子その他の菌類であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した微粒子状物体の拡散装置。
【請求項4】
段つき円形振動板を音源として、微粒子状物体の集まりに向けて、超音波を放射することで、上記微粒子状物体の集まりを拡散させることを特徴とする微粒子状物体の拡散方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−98059(P2009−98059A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−271242(P2007−271242)
【出願日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 日本エアロゾル学会,第24回エアロゾル科学・技術研究討論会文集,平成19年8月9日発行
【出願人】(899000057)学校法人日本大学 (650)
【出願人】(304032000)
【Fターム(参考)】