説明

微粒物質の捕集装置

【課題】簡単な構成でありながら、フィルターの寿命を大幅に延ばして高い効率での微粒物質の捕集を可能にし、長時間に亙って能力の低下を抑制するとともに捕集した粉塵などの再飛散がなく、アスベストを含む建築物などの解体現場における作業環境を改善できる微粒物質の捕集装置を提供する。
【解決手段】筒体の上方に空気排出口を開口させ底壁を閉塞した外筒2と、外筒の中央高さ部分に一部空間20を残して設けた上下の仕切壁6、およびその端縁から下方に垂下する分離壁7によって区画形成したコンタクター5と、コンタクター内に外部空気を流入させる吸込み管8、および噴霧器10と、これらの下方に位置して空気中の微粒物質と吸着液とを密集させて混合する気液混合器11と、その下方に配置した微粒物質を含む吸着液の捕集タンク15と、仕切壁上方に設置され気液を分離するデミスター19とから構成され、デミスターと捕集タンクとの間を前記空間で連通させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物など構造体壁面からのアスベストなどの繊維状あるいは粉末状の有害物質を含む粉塵が発生する作業場におけるこれら粉塵など微粒物質の捕集装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アスベスト(石綿)は、天然の繊維性鉱物であって、耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性などの優れた特性を保有しており、しかも安価であることから、従来は、建築物の保護材、種々の保温材、広範囲に使用されてきたが、現在は、肺ガンや悪性中皮種などの発ガン性から人体への健康に対する悪影響が指摘され、その使用および生産が原則的に禁止されている。
【0003】
しかし、過去の高度成長期には、ビルの断熱保熱などにアスベストが大量に消費されており、近年、これらのビルの老朽化による建て替えが急増していることから、これらの古い建築物の解体作業現場や改修作業に際しては、ほとんどの場合、アスベスト含有粉塵が発生する状況にある。
【0004】
アスベストは、非常に微細な繊維であることから粉塵となって飛散し易く、吸引によって疾病を引き起こす確率が高いものであり、現在は、特別管理産業廃棄物に指定されているが、ビルの解体現場などにおける作業場で使用されている除塵機(51)は、図5に示すように、ファン(79)を作動させることでアスベストの微細粉末を含む空気を本体(52)の一端側に設けた吸込み口(59)から吸入し、これを1次フィルター(55a)、2次フィルター(55b)およびHEPAフィルター(77)を経由させることで塵芥を濾過し、吐出口(53)から再び外気中に排気する構成であるが、各フィルター(55a)(55b)(77)の目詰まりが早いため圧損が高くなり除塵効果が低下することから、フィルター交換を2〜3回/日と頻繁におこなう必要があった。
【0005】
前記除塵機(51)は、各フィルター(55a)(55b)(77)の交換作業時にアスベストの微細粉末が再飛散することから、アスベストの捕集装置として作業場外に設置することはできないものである。そして、作業場内で使用することから、装置自体がアスベストに暴露されることになり、そのまま作業場外に搬出することができないので、セキュリティゾーンなどでの清掃を余儀なくされる煩雑さがある。また、高所の作業場などでは、装置の搬入が困難となるので装置の大型化にも限界があり、複数の装置を併用しなければならないケースも発生する。
【0006】
上記問題に対して、図6に示すように、吸引装置(79′)を作動させることで、塵芥を含む空気を1〜4の除塵ユニット(52a)(52b)(52c)(52d)の先端側に設けた吸込み口(59′)から吸入し、1〜3次のフィルター(75a)(75b)(75c)およびHEPAフィルター(77′)を経由させることで塵芥を濾過し、送気パイプ(53′)から再び外気中に排気する構成により、フィルターの目詰まりを少なくして寿命を延ばすようにしたり、送気用のパイプを封止することでアスベストを含む塵芥が外部に暴露されることなくフィルターの交換作業がおこなえるようにした除塵装置の構成が特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開2008―055390号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献1に記載の構成においても、塵芥の捕集効率を保持するためには、依然として1日に数回に亙るフィルターの交換作業が必要であることから、このフィルター交換作業自体の煩雑さを解消することにはならず、フィルター交換作業におけるパイプ封止のための構成も複雑であった。
【0008】
本発明は上記の点を考慮してなされたものであり、簡単な構成でありながら、フィルターの寿命を大幅に延ばして高い効率でのSPM(浮遊粒子状物質)を含む粉塵などの微粒物質の捕集を可能にし、しかも長時間に亙って能力の低下を抑制するとともに捕集した微粒物質の再飛散がなく、アスベストを含む建築物などの解体現場における作業環境を大きく改善することができる微粒物質の捕集装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明による微粒物質の捕集装置は、上下方向に長い筒体の上方に空気排出口を開口させるとともに下方は底壁によって液密に閉塞した外筒と、この外筒の高さ方向の中間部に外筒横断面の一部空間を残して設けた前記筒体内を上下に区分する仕切壁およびこの仕切壁の端縁から下方に垂下する分離壁によって区画形成されるコンタクターと、このコンタクター内の上部に開口して外部から浄化対象空気を流入させる吸込み管と、この吸込み管の開口近傍に設けた浄化対象空気中の粉塵などの微粒物質を吸着する液を吐出する噴霧器と、これら吸込み管と噴霧器の下方に位置して前記浄化対象空気中の微粒物質と吸着液とを密集させて混合する気液混合器と、前記コンタクターの下方に配置した微粒物質を含む吸着液の捕集タンクと、前記仕切壁上方の筒体内の空間を塞ぐように設置され空気と液体とを分離するデミスターとから構成され、前記デミスターと捕集タンクとの間を前記一部空間によって連通するようにしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の構成によれば、簡単、且つコンパクトな構成で、粉塵を含む微粒物質の高い捕集効率を得てこれを長時間保持することができ、しかもフィルターの目詰まりを抑制してその交換作業をほとんど不要にするとともに粉塵の再飛散を抑制し、アスベスト除去作業など建築物解体現場における微粒物質の捕集作業環境を大きく改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の1実施形態を図面に沿って説明する。図1に全体の斜視図、図2に正面からの縦断面図を示す粉塵を含む微粒物質の捕集装置(1)は、立設した上下方向に長い断面矩形状の筒体により本体を形成する外筒(2)を設けており、この外筒(2)の上方には空気排出口(3)を開口させるとともに下方は底壁(4)によって液密に閉塞している。
【0012】
この外筒(2)は、幅70cm、奥行き80cm、高さ寸法を200cmとし、その高さ方向のほぼ中央部分には、外筒(2)の横断面である矩形の一辺側に所定空間を残して筒体内を上下に区分する仕切壁(6)を設け、さらに、この仕切壁(6)の端縁から下方に垂下して前記一辺側との間に上下に亙る間隙を形成した分離壁(7)によってコンタクター(5)となる空間を形成している。
【0013】
コンタクター(5)は、解体作業場などにおけるアスベスト粉塵を含むSPM(浮遊粒子状物質)などの微粒物質を含有した空気を導入することで有害粒子を吸着し捕集するものであり、このコンタクター(5)上部の側壁面には、外部に位置する解体作業場から浄化対象空気を流入させる吸込み管(8)に繋がる吸込み口(9)を開口させている。
【0014】
そして、吸込み口(9)の近傍には、流入する空気中のアスベスト粉塵などの微粒物質に接触してこれを吸着する吸着液、例えば、水を噴霧するスプレーノズルなどの噴霧器(10)を配設し、さらに、これら吸込み口(9)と噴霧器(10)の下方には、浄化対象空気中の粉塵などの微粒物質と吸着液とを密集させて混合する気液混合器(11)を位置させている。
【0015】
気液混合器(11)は、直径2mmの小孔を3.5mmピッチで多数穿設し開口率を30%程度としたパンチングメタル(12)と、この上に不織布で形成した捕集体(13)を配置したものを適宜の間隔を置いて複数層、例えば、3層に設置したものであり、前記捕集体(13)を形成する不織布は、ポリエステル、若しくはモダアクリル繊維を厚み寸法を20mm程度として風速2.5m/秒で初期圧損を93Paとした多孔質シートである。
【0016】
上記構成により、気液混合器(11)の上層部においては、上方から噴霧された水がパンチングメタル(12)上の捕集体(13)内で密度を増すとともに、パンチングメタル(12)の多数の小孔により広く拡散して流下させ、再び下方の捕集体(13)内で密度を増すものであり、この密度を増した水粒子に、流入する空気に含有されているアスベスト粉塵などの微粒物質が吸着し、混合体となって下方に位置する捕集タンク(15)内に流下するように作用する。このとき、最下層に設置する捕集体(13′)の底部には、パンチングメタルを配設せず、捕集体(13′)のみで水を粗粒化して流下させることで気液の分離効率を高める。
【0017】
なお、特に図示しないが、前記コンタクター(5)の横断内面形状を円弧状に形成するとともに、吸込み口(9)をコンタクター(5)空間内の一方に偏倚させて開口させることにより、流入させる浄化対象空気をコンタクター(5)内の円弧面に沿って流すことで渦流状態にし、噴霧器(10)からの吸着液との吸着効率を向上させるようにしてもよい。また、前記気液混合器(11)の構成材料としては、前記パンチングメタルに限らず、目の粗い不織布、あるいは連続気泡の水透過性のシート材であってもよく、捕集体(13)についても、前述の多孔質シートにではなく、いわゆる、スチールウールと呼ばれる鉄やステンレスなどの細い金属線を絡合させてシート状に形成して所定の初期圧損を保持させるようにしたものでもよい。
【0018】
前記気液混合器(11)の下端部は前記分離壁(7)の下端部と合わせることで、気液混合器(11)を通過した空気の流出口(16)を形成しており、この気液混合器(11)の設置箇所に対応する外筒(2)の壁面には、開口(17)およびこれを閉塞する蓋(18)が設けられており、必要時には任意に蓋(18)を取り外して開口(17)から気液混合器(11)を取り出し、洗浄あるいは交換できるようにしている。
【0019】
前記仕切壁(6)の上方における外筒(2)には、筒体内部を覆うように多孔質シート層を配設して気液分離器であるデミスター(19)を形成している。デミスター(19)を構成する前記多孔質シート層は、前記気液混合器(11)を形成する捕集体(13)(13′)と同様のポリエステル、若しくはモダアクリル繊維からなる不織布で形成されており、厚み寸法を前記同様の20mm程度とするとともに、風速2.5m/秒で初期圧損を93Paとしたものと密度の粗い圧損を64Paとしたものとを交互に複数層に亙って積層したものである。
【0020】
なお、デミスター(19)としては、前記不織布からなる多孔質シート層に代えて、空気は通過するが粉塵の通過は遮断する気泡密度にしたガラス繊維などの連続気泡体であってもよく、前述したように、所定の圧損を有するスチールウールで形成してもよい。
【0021】
前記デミスター(19)と前記外筒(2)の下端部に形成した捕集タンク(15)との間は、前記コンタクター(5)部分の横断面図である図3に示すように、前記コンタクター(5)部分の分離壁(7)と前記外筒(2)の一辺との間に形成された断面矩形の空間を前記コンタクター(5)の流出口(16)から前記デミスター(19)への空気の連通路(20)として上下方向に連通しており、この連通路(20)の内周壁面は、前記同様のポリエステル、若しくはモダアクリル繊維からなり、20mm程度の厚み寸法で、風速2.5m/秒で初期圧損を93Paとした不織布からなる多孔質シート(21)で覆われている。
【0022】
そして、この多孔質シート(21)についても、前記同様に、空気は通過するが粉塵の通過は遮断する気泡密度にしたガラス繊維などの連続気泡体や所定の圧損を有するスチールウールに代えてもよい。
【0023】
前記粉塵などの微粒物質の捕集装置(1)の本体を形成する外筒(2)は、前記各機能部材毎に個々に独立形成されており、例えば、最下方に位置して捕集タンク(15)となる上方を開放したボックスA(22)、その上部に設置され、コンタクター(5)および連通路(20)を収納した上下開放のボックスB(23)、およびその上部に位置し、デミスター(19)を収納して下方を開放させているボックスC(24)を断面矩形の筒状体で形成し、これらボックスA(22)、B(23)、C(24)の各接合端縁にはフランジ部(25)を設けてシール材を介在させ、下から順に積み重ねてネジなどで固定することでそれぞれを液密に接合している。
【0024】
さらに、本実施例においては、前記デミスター(19)を収納したボックスC(24)の上層にはHEPAフィルター(27)を収納したボックスD(26)を設置している。前記HEPAフィルター(High Efficiency Particulate Air Filter)とは、定格風量で粒径0.3μmの粒子に対して99.97%以上の捕集率を有し、初期圧力損失が245Pa以下の性能をもつエアフィルタであって、外筒(2)としては、HEPAフィルター(27)専用のボックスD(26)とすることで、デミスター(19)を収納したボックスC(24)とは別個に取り外せるようにしており、上記実施例構成によってHEPAフィルター(27)を設置しても、フィルターの交換時期を大幅に延長できるとともに微粒物質の捕集性能を格段に向上させることができる。
【0025】
また、本実施例においては、前記デミスター(19)の上部に設置したHEPAフィルター(27)の上部、すなわち微粒物質の捕集装置(1)の最下流側に、活性炭層(28)を設置している。
【0026】
これは、前記コンタクター(5)、捕集タンク(15)、連通路(20)およびデミスター(19)からなる捕集装置(1)により、吸引された浄化対象空気中に含まれる0.7μm以上の微粒子を捕集できることで、前記HAPAフィルター(27)の捕集負担が50分の1以下に軽減でき、これによって、活性炭による微粒子吸着の前処理装置としてHEPAフィルターの使用を可能にしたことによるものであり、前記活性炭層(28)の設置により、SPM(浮遊粒子状物質)を含む粉塵などの微粒物質のみでなく、VOC(揮発性有機化合物)をも吸着し捕集することができる。
【0027】
VOCに代表される有害ガス成分の除去へのニーズは、近年の居住空間における空気質改善の要望の高まりから住宅建材に対して大きくなっており、有害ガス成分の除去については、従来より活性炭によって吸着する方法が採用されてきたが、吸着量には限界があり、長期間に亙る使用に際しては吸着フィルタの交換が不可欠となれい煩雑であった。
【0028】
特に、粉塵などの微粒物質が活性炭に付着した場合は、活性炭の細孔が目詰まり状態になり、細孔にVOCが入らないことからこれを吸着することができず、結果として頻繁なフィルター交換が必要になる難点があったが、上記実施例構成によれば、粉塵などの微粒物質による活性炭の目詰まりを大幅に低減できることから、活性炭層(28)の交換頻度を50分の1に低減でき、コストも抑制することができる。
【0029】
なお、活性炭層(28)に関しては、必要に応じて設置すればよく、上記組み合わせのほか、デミスター(19)の下流側に、HEPAフィルター(27)に代えて活性炭層(28)のみを設けるように構成してもよい。
【0030】
上記のように形成した捕集装置(1)の外筒(2)の上方における空気排出口(3)には、微粒物質を含む外気をコンタクター(5)内に吸引するためのブロワー(29)を連結して配置する。このブロワー(29)はターボファンからなり、駆動により、作業場内のアスベスト粉塵などの微粒物質を含む浄化対象空気を吸込み管(8)から吸引しコンタクター(5)内に吐出するようにしている。前記ブロワー(29)の吸引能力は、3.09kPaで31m/分である。
【0031】
さらに、前記外筒(2)の近傍には、前記捕集タンク(15)から前記噴霧器(10)のスプレーノズルに微粒物質捕集用の水を供給するノズルポンプ(30)を設置し、ディストリビューターからノズルホース(31)を介して噴霧器(10)のノズルヘッダーに接続するとともに、このノズルポンプ(30)に隣接して排水ポンプ(32)を設置し、前記捕集タンク(15)内に貯留された水を別途行程により無害化して廃棄処理する。
【0032】
前記捕集タンク(15)の容量は、80Lであり、ノズルポンプ(30)は、入力0.22kWで43L/分の能力、排水ポンプ(32)は入力90Wで70L/分の排水能力を有するものである。なお、前記排水ポンプ(32)により排水する代わりに、捕集水の浄化用ポンプ(32′)を設け、図2に示すように、捕集タンク(15)内の水を浄化槽(33)に送水してこれを浄化するようにしてもよい。
【0033】
また、図1の裏面側からの斜視図である図4に示すように、(34)は、レベルホースであり、捕集タンク(15)内の水量を確認するためのものであるが、別途捕集タンク(15)内の貯留水を一定に保つのために電磁バルブ(35)や捕集タンク(15)内の液面を計るレベルスイッチ(36)を設けて、捕集タンク(15)の水面が低下した場合には、前記レベルスイッチ(36)からの信号を受けて電磁バルブ(35)を開閉し、捕集タンク(15)と水道とを直結して自動的に水の補給をおこなうようにしてもよい。
【0034】
しかして、建物の解体作業現場などにおいて、前述の粉塵などの微粒物質の捕集装置(1)を使用する際には、隔離された作業室に対して、前記捕集装置(1)を室外に設置し、前記吸込み管(8)の先端側を作業室壁面に穿設した開口から作業室内に臨ませて設置する。
【0035】
作業場で解体作業を開始した場合は、前記捕集装置(1)におけるブロワー(29)を駆動させ、同時にノズルポンプ(30)も駆動させる。解体作業の進行とともに作業場で発生したアスベスト粉塵を含んだ微粒物質は、ブロワー(29)によって吸込み管(8)に吸い込まれ、室外の捕集装置(1)におけるコンタクター(5)内に吐出される。このときの吐出風量は12m/分程度である。そして、同時に駆動されるノズルポンプ(30)により、捕集タンク(15)内の水を捕集用水としてコンタクター(5)内の噴霧器(10)から気液混合器(11)に向け噴霧する循環サイクルを形成している。
【0036】
噴霧器(10)からの捕集用水の噴霧により、コンタクター(5)内に流入した浄化対象空気中のアスベスト粉塵を含む微粒物質は捕集用水に接触してこれに吸着されるとともに、下方に位置する密集器である気液混合器(11)により、噴霧されている水がパンチングメタル(12)の板面に衝突して捕集体(13)内で密度を増し、微粒物質のほとんどを吸着して混合液として凝縮し、下方の捕集タンク(15)内に流下させる。
【0037】
前記排水ポンプ(32)は、レベルホース(34)やレベルスイッチ(36)による捕集タンク(15)内の水位チェックにより貯留水量が増えた際に駆動させて、捕集タンク(15)内の水位を一定に保つように制御する。
【0038】
気液混合器(11)によりほぼ浄化された空気は、前記分離壁(7)の下端部から連通路(20)に流入し、上昇して上方のデミスター(19)に至る。このとき、ブロワー(29)の風力が強いため、上昇する霧状の捕集水は連通路(20)の壁面に凝縮し風とともに上昇しようとするが、連通路(20)の壁面には、前述のように、多孔質シート(21)が配設されているため、凝縮したアスベスト粉塵などの微粒物質を含む水滴は多孔質シート(21)による毛細管現象によって粗粒化され、壁面を上昇することなく重力によって下方の捕集タンク(15)内に落下する。
【0039】
上方のデミスター(19)に至った霧状の空気は、前述までの行程によりそのほとんどの微粒物質は捕捉され除去されているものであるが、複数層に積み重ねた粗さの異なる不織布からなる多孔質シートの存在でこれを通過することによって水を粗粒化し、空気と分離する気液分離作用によりさらに清浄化されるものである。そしてさらに、外筒(2)の最上部に配設したHEPAフィルター(27)の高い微粒物質捕集率により、最終的に空気排出口(3)からは、99.99%のアスベスト粉塵が除去されたクリーンな空気のみを排出することができるものである。
【0040】
前記により空気排出口(3)から排出された空気は、浄化されているだけでなく、気液混合器(11)や多孔質シート(21)およびデミスター(19)を通過することで熱交換されることから水冷により低温化しており、この低温浄化空気を再び前記解体作業場に戻すことで、隔離された作業場の冷房装置として活用するようにしてもよい。
【0041】
また、外筒(2)は、前記説明のごとく、各要素部材毎にボックスA(22)〜D(26)に区分したので、各要素毎にボックスとして本体から取り外し、清掃や部品交換をおこなうことができ、また組立作業も容易におこなえる効果を有するものであるが、これに限らず、一体化させてもよいものであり、この場合は、捕集タンク(15)の部分を別部材として着脱自在とし、随時保守点検ができるようにすればよい。
【0042】
以上により、捕集装置(1)の本体を形成する外筒(2)は、そのほぼ中央部にコンタクター(5)を設け、この内部に粉塵などの微粒物質含有空気を導入してこれを気液分離し、微粒物質を捕集した吸着液は下方の捕集タンク(15)内に落下させて貯留し、筒体上方のデミスター(19)および空気排出口(3)には、コンタクター(5)の断面空間の一部に形成した連通路(20)により残余の空気を通過させて排気するようにしたものであり、装置を大型化せずとも縦長のコンパクトな筒体で構成することができるとともに、その据え付け面積を最小にすることができるので、台車(37)へ載置することで設置や移動も容易におこなうことができ、良好な使い勝手が得られるものである。
【0043】
また、前記ブロワー(29)についても、前記捕集装置(1)の本体と同様、ダクトを介して前記空気排出口(3)と接続し、図1に示すように台車(38)に載置して移動できるようにすればよい。
【0044】
なお、前記ブロワー(29)は、前述のように空気排出口(3)側ではなく、前記吸込み管(8)側に配置して、浄化対象空気をコンタクター(5)に圧送するようにしてもよいものであり、HEPAフィルター(27)や活性炭層(28)の設置場所についても、前記デミスター(19)を収納したボックスC(24)の上部でなくとも、その下流側における前記ブロワー(29)近傍の床部分に設置するようにしてもよい。
【0045】
本発明は以上のように構成されており、粉塵などの微粒物質の捕集を水などの液体と不織布などの多孔質シートとを使用することにより、簡単でコンパクトな構成でありながら、高い効率で作業現場におけるアスベスト粉塵など微粒物質の捕集を可能にするとともに、前記微粒物質の高い捕集効率を長時間に亙って保持することができる。同時に、デミスター(19)における捕集の前行程までにほとんどの微粒物質の捕集を済ませるので、多孔質シートなどによる微粒物質捕集の絶対量が少なくなり、よって、デミスター(19)やHEPAフィルター(27)の交換メンテナンスをほとんど不要にすることができる。
【0046】
しかもHEPAフィルター(27)の交換作業時などにおける粉塵など微粒物質の再飛散を抑制することができるので、アスベストを含む有害微粒物質を外部に流出させないようにして排出気体を清浄なものとすることができるものであり、建築物などの解体現場における作業環境を大きく改善することができる。
【0047】
本発明については、建物に限らず、船舶、トンネル、種々の施設や溝渠の壁面、あるいは、工場や船舶の煙突、配管、ダクト、ボイラーその他の作業現場で適用することができる。なお、前記実施例においては、浄化対象空気を、アスベストを含む粉塵としたが、これに限らず、他の有害微粒物質の捕集にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の1実施形態を示す粉塵など微粒物質の捕集装置の斜視図である。
【図2】図1の正面からの縦断面図である。
【図3】図2におけるコンタクター部分の横断面図である。
【図4】図1の微粒物質捕集装置の裏面からの概略斜視図である。
【図5】従来の粉塵捕集装置を示す断面図である。
【図6】他の従来の粉塵捕集装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 捕集装置 2 外筒 3 空気排出口
4 底壁 5 コンタクター 6 仕切壁
7 分離壁 8 吸込み管 9 吸込み口
10 噴霧器 11 気液混合器 12 パンチングメタル
13、13′捕集体 15 捕集タンク 16 流出口
17 開口 18 蓋 19 デミスター
20 連通路 21 多孔質シート 22 ボックスA
23 ボックスB 24 ボックスC 25 フランジ部
26 ボックスD 27 HEPAフィルター 28 活性炭層
29 ブロワー 30 ノズルポンプ 31 ノズルホース
32 排水ポンプ 32′浄化用ポンプ 33 浄化槽
34 レベルホース 35 電磁バルブ 36 レベルスイッチ
37、38 台車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に長い筒体の上方に空気排出口を開口させるとともに下方は底壁によって液密に閉塞した外筒と、この外筒の高さ方向の中間部に外筒横断面の一部空間を残して設けた前記筒体内を上下に区分する仕切壁およびこの仕切壁の端縁から下方に垂下する分離壁によって区画形成されるコンタクターと、このコンタクター内の上部に開口して外部から浄化対象空気を流入させる吸込み管と、この吸込み管の開口近傍に設けた浄化対象空気中の粉塵などの微粒物質を吸着する液を吐出する噴霧器と、これら吸込み管と噴霧器の下方に位置して浄化対象空気中の微粒物質と吸着液とを密集させて混合する気液混合器と、前記コンタクターの下方に配置した微粒物質を含む吸着液の捕集タンクと、前記仕切壁上方の筒体内の空間を塞ぐように設置され空気と液体とを分離するデミスターとから構成され、前記デミスターと捕集タンクとの間を前記一部空間によって連通するようにしたことを特徴とする微粒物質の捕集装置。
【請求項2】
微粒物質を含む外気をコンタクター内に吸引するブロワーを、デミスターの下流側に連結したことを特徴とする請求項1記載の微粒物質の捕集装置。
【請求項3】
外部から流入する浄化対象空気がアスベスト粉塵を含むものであることを特徴とする請求項1または2記載の微粒物質の捕集装置。
【請求項4】
捕集装置は、少なくとも、デミスターを収納したボックス、気液混合器を収納したボックス、および捕集タンクを、個々に空気流出入口を有するようにして独立形成し、上方から順に分離可能に積み重ねて配置したことを特徴とする請求項1記載の微粒物質の捕集装置。
【請求項5】
デミスターの下流側にはHEPAフィルターあるいは活性炭、若しくはその双方を配置設置したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の微粒物質の捕集装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−46612(P2010−46612A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−213550(P2008−213550)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(597001648)株式会社ビッグバン (4)
【Fターム(参考)】