説明

微細凹凸模様を有するシートの製造方法。

【課題】 伸縮性及び復元性に優れ、着色及び色調整加工並びに製造が容易であり、量産車の内装品表面と同等の微細凹凸模様を有するシートを提供する。
【解決手段】 シボ加工2が施された金属板1の表面に溶融軟質プラスチック4を吹き付け、該軟質プラスチック4を乾燥させた後、前記金属板1から剥離することを特徴とする微細凹凸模様5を有するシートの製造方法、好ましくは、前記軟質プラスチックがビニール系であり、さらに着色剤を含むことを特徴とする微細凹凸模様5を有するシートの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細凹凸模様を有するシートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の内装品には、軽量化、量産化などの目的で多くのプラスチックが用いられており、該プラスチックからなる内装品の表面には高級感、重量感などを醸し出すためにシボ加工などが施されている。前記シボ加工などが施された内装品は、予め金型を製作することにより容易に製造(量産化)することができる。
【0003】
しかしながら、モーターショーへの展示用あるいはカタログ製作などの試作車の段階で全ての内装品の金型を製作することは時間的及びコストなどの関係で問題である。
【0004】
そこで、従来、感光性樹脂フィルムに、透孔部と遮光部を有するネガフィルムを被せて露光を行い、該露光後の感光性フィルムを試作車の内装品の表面に接着し、該接着後のフィルムの未露光部分を除去して製品の表面に凸模様を形成し、さらに該凸模様の上から塗装を行う方法が提案されている(特許第3401463号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3401463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、量産車の内装品と同等の微細凹凸模様を有するシートを提供することができ、伸縮性及び復元性を有し内装品の表面への接着作業性に優れ、さらに着色、色調整加工が容易であるとともに従来の塗装方式と異なり着色剤の剥離現象が生じることがない、微細凹凸模様を有するシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の微細凹凸模様を有するシートの製造方法は、シボ加工が施された金属板のシボ加工面に溶融軟質プラスチックを吹き付け、該軟質プラスチックを乾燥させた後、前記金属板のシボ加工面から剥離することを特徴とする(請求項1)。
【0008】
この請求項1の発明によれば、予め用意した金属板の表面に量産車の内装品表面と同等の微細凹凸模様を得るためのシボ加工を施し、つぎに前記シボ加工面に溶融状態の軟質プラスチックを吹き付け、該軟質プラスチックの乾燥を待って前記金属板のシボ加工面から剥離することにより伸縮性及び復元性を有する量産車の内装品表面と同等の微細凹凸模様を有するシートを提供することができる。
【0009】
本発明の実施の一形態は、前記軟質プラスチックがビニール系であることを特徴とする(請求項2)。この請求項2の発明によれば、前記金属板のシボ加工面への密着性に優れ、さらに伸縮性及び復元性を有する量産車の内装品表面と同等の微細凹凸模様を有するシートを提供することができる。
【0010】
本発明の実施の一形態は、前記ビニール系溶剤の吹き付けをスプレーガンで行うことを特徴とする(請求項3)。この請求項3の発明によれば、前記金属板に施されたシボ加工面に前記軟質プラスチックを強力に密着させて量産車の内装品表面と同等のシボ面を有する伸縮性及び復元性を有する微細凹凸模様を有するシートを提供することができる。
【0011】
本発明の実施の一形態は、前記軟質プラスチックが着色剤を含むことを特徴とする請求項3)。この請求項3の発明によれば、前記従来例の塗装による着色工程を必要とせず色調整加工が容易であり、さらに着色剤の剥離現象が生じることがない微細凹凸模様を有するシートを提供することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、量産車の内装品表面と同等の微細凹凸模様を有するシートを提供することができ、伸縮性及び復元性に優れ内装品の表面への接着作業性に優れ、さらに塗装による着色工程を必要とせず色調整加工が容易であるとともに着色剤の剥離現象が生じない微細凹凸模様を有するシートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】シボ加工が施された金属板の斜視図である。
【図2】シボ加工が施された金属板のシボ加工面に軟質プラスチックの吹き付け状態を示す側面図である。
【図3】シボ加工が施された金属板のシボ加工面から乾燥した軟質プラスチックの剥離状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施の一形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。図1中、1は、量産車の内装品表面と同等の微細凹凸模様を得るためのボ加工2が施された金属板であり、前記シボ加工2は、例えば、前記金属板1の表面に感光性耐酸膜を形成し、つぎに該感光性耐酸膜上面に遮光性を有する液体を吹き付けてエッチング(特許第3080367号)を行うなどの公知の方法を採用して行うことができる。
【0015】
つぎに、前記金属板1のシボ加工面2にスプレーガン3によって溶融状態のビニール系のプラスチック4が吹き付けられる(図2参照)。該ビニール系のプラスチック4には必要とする色調を得るために予め着色剤が混合される。
【0016】
また、前記ビニール系のプラスチック4の吹き付けは、前記金属板1のシボ加工面2上に後の貼り付け作業性を考えた厚さ、例えば、30〜40μmとなるように均等に行われる。
【0017】
つぎに、前記ビニール系のプラスチック4が乾燥させられる。該乾燥工程は自然乾燥のほか温風等による乾燥であってもよい。該乾燥によってビニール系のプラスチック4の揮発成分が除去される。前記乾燥を確認して前記金属板1から剥離することによって伸縮性及び復元性を有する微細凹凸模様5を有するシートSが完成する(図3参照)。
【0018】
前記微細凹凸模様5を有するシートSは、該シートSの微細凹凸模様5と反対側面が試作車の内装品の表面に形成した接着剤層に貼り付けて使用される。なお、前記微細凹凸模様5と反対側面に予め接着剤及び剥離紙を設けておき、該剥離紙を除去して試作車の内装品の表面に貼り付け使用することもできる。本発明の前記シートは、伸縮性及び復元性を有するため内装品の複雑な形状にも柄の繋ぎ模様を発生させずに貼り付けることができる。
【符号の説明】
【0019】
1 金属板
2 シボ加工面
3 スプレーガン
4 ビニール系のプラスチック
5 微細凹凸模様
S 微細凹凸模様を有するシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シボ加工が施された金属板のシボ加工面に溶融軟質プラスチックを吹き付け、該軟質プラスチックを乾燥させた後、前記金属板から剥離することを特徴とする微細凹凸模様を有するシートの製造方法。
【請求項2】
前記軟質プラスチックがビニール系であることを特徴とする請求項1に記載の微細凹凸模様を有するシートの製造方法。
【請求項3】
前記軟質プラスチックの吹き付けをスプレーガンで行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の微細凹凸模様を有するシートの製造方法。
【請求項4】
前記軟質プラスチックが着色剤を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の微細凹凸模様を有するシートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−25087(P2012−25087A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−167701(P2010−167701)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【出願人】(510204677)株式会社モールドテック (1)