心肺蘇生中の胸部圧迫の深度を決定する方法
加速度測定器に基づく圧迫モニタで測定された生の加速度信号を処理する方法で、胸部圧迫の正確で精密な推定の実際深度を生成する。生の加速度信号は統合過程でフィルタに通され、過去の開始点の移動平均により実際現在の開始点が推定される。次に圧迫の推定の実際ピークを同様に決定する。推定の実際ピークから推定の実際開始点を差し引いて、胸部圧迫の推定の実際深度を計算する。さらに、1つまたは複数の基準センサ(例えば、心電図ノイズセンサ)を使用して圧迫開始点の確立を支援する。基準センサを単独であるいは他の信号処理技術と組み合わせて用いて、圧迫の推定の実際深度の正確さと精密さを上げる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の方法と装置は、心肺蘇生(CPR)の分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
心肺蘇生(CPR)の正しい適用に関するアメリカ心臓協会のガイドラインでは、胸部圧迫は1分間に80〜100回の割合で脊椎に対し深さ1.5〜2.0インチ(約3.8〜5.1 cm)で実施するよう規定されている(心肺蘇生および救急心血管系医療のための2000年ガイドライン、102 循環補遺I(2000))。しかし、心肺蘇生は訓練を受けた専門家にとっても身体的、感情的に挑戦となるものである。研究によれば、人の手による胸部圧迫がガイドラインを満たすことはまれであることが分かっている。例えば、オチョアら(Ochoa et al.)の「The Effect of Rescuer Fatigue on the Quality of Chest Compressions (蘇生実施者の疲労が胸部圧迫の質に及ぼす影響)」(Resuscitation, vol. 37, p.149-52)を参照されたい。またハイタワーら(Hightower et al.)の「Decay in Quality of Closed-Chest Compressions over Time(閉鎖式胸部圧迫の経時的な質の低下)」(Ann Emerg Med, 26(3):300-333, Sept. 1995)を参照されたい。正しい胸部圧迫を実施するのが困難な理由のひとつは、蘇生実施者が胸部圧迫のタイミングや深度を的確に知ることができないことで、とくにこれは実施者が疲れてくると顕著になる。したがって、患者からの情報が適宜正確に得られるならば、蘇生実施者はより的確に心肺蘇生を行うことができると考えられる。
【0003】
心肺蘇生を正しく実施できるよう蘇生実施者を補助するための様々な装置が考案されてきた。例えば、ケリー(Kelley)は「Apparatus for Assisting in the Application of Cardiopulmonary Resuscitation(心肺蘇生のための補助装置)」(米国特許 5,496,257、1996年3月5日)にて、胸部を圧迫する力とタイミングをモニタする圧センサを使用した装置を発表している。グレンクら(Groenke et al.)は「AED with Force Sensor(加圧センサ付きAED)」(米国特許 6,125,299、2000年9月26日)にて、患者の胸部を圧迫している力を測定する加圧センサを使用した装置を発表している。しかし、これらの装置は胸部にかかっている圧力のみを測定し、圧迫された実際深度は測定しない。ある圧力を加えると患者によって胸部の圧迫される深さは異なるはずであり、圧力だけを測定するのでは蘇生実施者に十分なあるいは一貫した情報を提供することはできない。さらに、患者によって胸部の形態や柔軟性が異なることから、圧力の測定が不正確になることもある。
【0004】
ハルペリンら(Halperin et al.)の「CPR Chest Compression Monitor(心肺蘇生胸部圧迫モニタ)」(米国特許 6,390,996、2002年5月21日)に示されている我々の特許を得た装置以外の加速度測定器のみにより圧迫深度を測定する心肺蘇生装置は、加速度の測定間違いに十分にあるいは正確に対応することはなく、また圧迫開始点のドリフトに対応することもない。さらに、加速度の測定にエラーがあれば、圧迫深度を導き出すのに必要な統合処理でエラーが増幅されてしまう。
【0005】
圧迫深度は1.5〜2.0インチ(3.8〜5.1 cm)の比較的狭い範囲でなければならないため、測定した加速度のエラーを修正することは重要である。数値的なシミュレーションでは、加速度の0.02インチ(0.5 mm)/秒2という小さな総エラーが0.25インチ(6 mm)の深度のエラーになることが示されている。圧迫深度の最適範囲を狭く設定すると0.25インチ(6 mm)のエラーは許容できない。例えば、フリーマン(Freeman)の「Integrated Resuscitation(統合的な蘇生法)」(米国刊行物 2001/0047140、2001年11月29日)は、圧迫センサとして加速度測定器を使用する装置を示し、加速度測定器による胸部深度測定法について述べている。しかし、フリーマンは加速度測定器だけを使った場合の宿命的なエラーに対応できる方法はないとしている。したがってフリーマンは、胸部圧迫深度の測定は不正確になるとしている。
【0006】
ミクルバーストら(Myklebust et al.)の「System for Measuring and Using Parameters During Chest Compression in a Life-Saving Situation or a Practice Situation and Also Application Thereof(救命現場および練習現場における胸部圧迫中のパラメータの測定と使用のためのシステムおよびその応用)」(米国特許 6,306,107、2001年10月23日)は、胸部陥凹の深さを決定するために、加速度測定器および圧力によりオンとなるスイッチを含んだ圧力パッドを使用した装置を記載している。しかし、ミクルバーストらは加速度測定器のみにより圧迫深度を測定する方法については述べていないばかりか、胸部圧迫深度の測定値におけるある種のエラー(ドリフトなど)についても説明していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の装置の宿命的な問題は、加速度測定器のみの使用で胸部圧迫深度の問題を解決するのが困難なことを示している。そうではあるが、加速度の測定により位置の変化を決定できるという基本的な考え方は、分かり易いものである(開始位置が分かっているシステムの場合)。位置の変化は、加速度の測定値を2回統合することにより決定される。
【0008】
しかし、胸部の圧迫深度を測定するこの方法には少なくとも3つの主要なエラー発生源があり複雑である。すなわち、信号のエラー、外部加速度のエラー、最初の圧迫開始点からの実際あるいは測定した圧迫開始点のドリフトである。信号のエラーは、電気的ノイズやワイヤあるいはケーブルの揺れによる加速度測定エラー、加速度測定器に内在する宿命的なエラー、加速そのものに存在するその他のノイズ発生源からなる。
【0009】
外部加速度エラーには、心肺蘇生による加速度以外の原因で患者ならびに加速度測定器にかかる加速度によるエラーがある。例えば、救急車で搬送中の患者に蘇生実施者が圧迫モニタを用いながら手で心肺蘇生を行う場合、加速度測定器は心肺蘇生の加速度と共に道路からの振動を感知する。(救急車が道路の穴に車輪を落とすと、圧迫波形に大きなスパイクが現れる。)加速度測定器そのものも、道路からの振動と圧迫による加速度を区別することはできない。言い換えれば、加速測定器は総合的な加速度を測定するのであり、圧迫による加速度のみを測定するわけではない。したがって、圧迫モニタは実際胸部位置変化とは異なる変位を報告することになる。
【0010】
その他のエラー発生源であるドリフトは、一連の圧迫全体における各圧迫の実際あるいは報告される圧迫開始点の総合的な移動である。加速度測定器は最初の開始位置を記憶していない。そのため、蘇生実施者が圧迫を加えるにつれ、現れる深度波形はドリフトしてゆくことがある。圧迫モニタは、報告される深度波形が実際波形よりも徐々に深くなってゆくことを示すことになる。このようなドリフト様式は陽性ドリフトと呼ばれている。一方、ドリフトにより圧迫モニタが実際波形よりも徐々に浅くなってゆく深度波形を報告するようになることもある。言い換えれば、実際圧迫開始点は徐々に深くなるのに、圧迫モニタは開始点が最初の開始点とほとんど変わらないと報告することがある。このようなドリフト様式は陰性ドリフトと呼ばれている。
【0011】
陰性ドリフトの原因のひとつに、胸部が完全にリラックスした位置に戻るのが妨げられている場合がある。修正することなく、加速度測定器は新しい「初期」の位置に基づいて位置の変化を測定し始める。こうして圧迫モニタは蘇生実施者に、現在の開始点が最初の開始点と同じであるという間違った情報を伝える。しかし、現在の開始点の実際深度は圧迫モニタが報告している深度より深いのである。その結果、蘇生実施者は圧迫モニタが示す間違った深度を達成しようと、行うべき圧迫よりも強く胸部を圧迫することになる。
【0012】
両方のタイプのドリフトを引き起こすもうひとつの原因に、加速度測定器の患者に対する総合的な位置の変化がある。例えば、加速度測定器がしっかり固定されていないと全体の位置がずれる。(これは外部加速度エラーの原因となる。)またその他のドリフトの原因に、圧迫と同時に行われる換気による胸部の拡張と縮小がある。その他にもドリフトの原因はあると思われる。各原因は互いに無関係で、互いが相殺することはなく、圧迫モニタは陽性および陰性ドリフトの両方を説明できなければならない。
【0013】
間違った運用によるドリフトにもかかわらず、実際圧迫開始点の変化が起こる。例えば、心肺蘇生中に1本か複数の肋骨が折れると、各回の実際圧迫開始点が脊柱に近づくことがある(胸部リモデリングとして知られている現象)。胸郭の構造や強度に影響するその他の種類の胸部傷害あるいは疾患も、胸部リモデリングを起こし得る。胸部リモデリングは徐々に起こり、圧迫の実際初期開始点が次第にドリフトする。圧迫モニタは、圧迫開始点のエラー的なドリフトと実際移動の違いを区別できなければならない。
【0014】
これらのエラーやその他のエラーの加速度が統合されてまとめられる。信号のノイズやドリフトによるエラーは、統合定数をゼロ以外の値にする。ゼロではない定数は、加速度にすでに存在するエラーを大きくする。このように、圧迫モニタが報告する総合的な圧迫深度は極めて不正確となり得る。したがって、加速度の測定値から胸部圧迫の深度を正確かつ精密に導き出す方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
以下に記す方法と装置は、胸部圧迫の加速度測定値から胸部圧迫の深度を精密かつ正確に導き出すための信号処理技術に関するものである。とくに、以下に示す方法と装置は、信号エラー、外部加速度エラー、ドリフトにより生じる胸部位置変化のエラーを修正するための手段に関するものである。ひとつの方法によれば、移動平均技術が圧迫深度を正確に測定するために使用される。2つ目の方法によれば、患者の心電図の変化を圧迫開始点の決定に使用することができる。胸部深度測定の正確さを一層増すためにこれらの方法を組み合わせることができる。
【0016】
広い意味で移動平均技術は複数の圧迫サイクルをまとめて平均化するが、時間が経った圧迫動作よりも新しい圧迫動作に重きを置いている。移動平均技術のひとつは、できるだけ多くのノイズを除去するために生の加速度信号にフィルタをかけることから始める。次いで圧迫速度を導き出すためにフィルタをかけた加速度信号を統合する。累積した低周波成分を除去するために速度をフィルタにかける。胸部の位置変化を導き出すためにフィルタがかけられた速度測定値を統合する。胸部の位置変化は次いでベースライン制限装置およびピーク制限装置を通して処理される。ベースライン制限装置は移動平均プロセッサから、ピーク制限装置は移動平均プロセッサから構成される。ベースライン制限装置は現在の圧迫の実際開始点を、ピーク制限装置は現在の圧迫の実際ピーク深度を推定する。ベースライン検出装置は次いで現在の圧迫の開始点を特定する。ピーク検出装置は次いで現在の圧迫のピーク深度を特定する。信号を統合するための方法は、現在の圧迫の推定の実際深度を導き出すために、推定開始点および推定ピーク深度を組み合わせる。最後に、現在の圧迫の推定の実際深度は手での蘇生実施者、自動心肺蘇生装置、あるいは心電図操作者に知的な情報を提供する1つまたは複数の装置に提供される。
【0017】
別の方法では、患者心電図のノイズ成分の変化を胸部圧迫の開始に関連づける。患者心電図の信号ノイズ成分が事前に設定された閾値を越えたとき、加速度測定器が加速度を測定し始める。こうして現在の圧迫の実際開始点が確立される。この方法はある種の外部加速度エラーを減少させるとともに、ドリフトを減少させた。この方法はまた、統合定数をゼロに設定するのを助ける。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、患者1および患者に取り付けられた加速度測定器の圧迫モニタ2を示している。加速度測定器による圧迫モニタは、圧迫深度を決定するために1つまたは複数の加速度測定器を使用する。加速度測定器による圧迫モニタの例は、我々の特許であるHalperin et al., CPR Chest Compression Monitor(心肺蘇生胸部圧迫モニタ)、米国特許6,390,996、2002年5月21日に見られる。参考のためそのままここに転載する。圧迫モニタ2を患者1の胸骨3の上、蘇生実施者の手か腕、または、自動心肺蘇生装置の上に配置する。そして胸部を圧迫する。加速度測定器は圧迫の加速度を測定し、プロセッサ4は加速度測定値に基づいて加速度測定器の実際位置変化を推定する。以下に示す信号処理技術は、推定の実際位置変化が正確で精密であることを確証する。
【0019】
推定の実際位置変化が位置変化ディスプレイ5に表示され、手での蘇生実施者や自動心肺蘇生装置に分かり易いフィードバック情報を提供する。同様に、他の心肺蘇生関連パラメータが1つまたは複数の圧迫装置のディスプレイに提供される(または別の手段で使用者にフィードバックされる)。心肺蘇生関連パラメータには、胸部圧迫深度、胸部圧迫速度、胸部圧迫加速度、および、患者心電図がある。
【0020】
患者心電図の場合、1つまたは複数の電極から圧迫モニタに情報が提供される。胸部圧迫中、プロセッサは患者心電図を処理して推定の実際心電図を作成する。その後、推定の実際心電図は心電図ディスプレイ7(またはその他のフィードバック手段)に提供され、手での蘇生実施者、自動心肺蘇生装置、あるいは患者の心電図をモニタしているその他の人や装置に分かり易いフィードバック情報を提供する。
【0021】
明細書の中で用いられている用語の定義を以下に記す。
実際圧迫深度:ある瞬間の実際の圧迫深度。
実際圧迫開始点:胸部圧迫が開始された実際の位置または点。
自動回帰移動平均:過去のデータサンプルを現在のデータサンプルの修正に使用する機能。
圧迫深度波形のベースライン位置:深度波形の実際開始点が最も多く集まっている位置。
ベースライン制限装置:圧迫深度波形のベースラインの位置で作動するプロセッサまたは機能。
圧迫ピーク:圧迫深度が最大になる位置または点。
現在の圧迫深度:ある瞬間の圧迫深度。
現在の開始点:現在の圧迫の開始点。
圧迫深度:圧迫された胸部のある瞬間の深度で、リラックスした胸部位置からの相対的な深さ。
推定の実際圧迫開始点:胸部圧迫が開始された実際位置または点の推定値。
圧迫の初期開始点:一連の胸部圧迫が開始された位置または点。
測定された圧迫開始点:胸部圧迫が開始された位置または点の測定値。
移動平均:過去のデータサンプルを現在のデータサンプルの修正に使用する機能。
過去の開始点:すでに観測された圧迫開始点。
圧迫深度波形のピーク位置:深度波形の実際ピーク位置が最も多く集まっている位置。
圧迫開始点:胸部圧迫が開始された位置または点。
【0022】
図2〜図4は、4つの仮説的圧迫の一期間の圧迫深度、速度、加速度のグラフを示している。図2〜図4に示されている波形のどれにも信号の処理は施されていない。図2の圧迫深度は陽性値―数値が大きいほど胸部は深く圧迫されている―として示されている。点線の波形12は圧迫深度、速度、加速度の実際波形を表している(加速度測定器にてそれぞれ独立して測定)。実線の波形13は圧迫モニタ加速度測定器にて測定された加速度から導き出された波形を表している。波形13はまた、圧迫モニタによって信号処理システム4に報告された波形である。圧迫深度は1インチ(2.5 cm)間隔でマークされたインチ単位で測定され、圧迫速度は1インチ/秒間隔でマークされた秒当たりのインチ(in/s)単位で測定され、圧迫加速度は1インチ/秒2間隔でマークされた秒2当たりのインチ(in/s2)単位で測定されている。3つの図すべてで、時間は1秒間隔でマークされた秒単位で測定されている。圧迫の開始は時間ゼロの時点である。圧迫の初期深度は深度ゼロの点である。
【0023】
点線14,15は3つのグラフすべてで交差している。点線14は最大圧迫深度が得られた時点に対応している。点線15は最小圧迫深度が得られた時点に対応している。さらに、点線14は圧迫深度最大16が圧迫速度ゼロに対応していることを示している。点線14はまた、加速度最大17が最大圧迫深度から少し外れていることを示している。同様に、点線15は圧迫最大18(または開始点またはゼロ点)が、圧迫速度ゼロに対応していることを示している。点線15はまた、加速度最小19が圧迫深度最小18から少し外れていることを示している。圧迫速度最大20および最小21は圧迫の中間点付近で認められる。
【0024】
実線の波形は3つの主要な種類のエラーである信号エラー、外部加速度エラー、ドリフトを示している。信号エラーは、主に実線の波形の「ノイズ」(粗さ)に現れるが、外部加速度エラーも「ノイズ」となって現れることがある。加速度波形がノイズとしては小さくても、加速度全体には速度波形のノイズを大きくする作用がある。速度波形全体はやはりノイズの影響を大きくする。このように、図2の圧迫深度ノイズは図2の圧迫速度ノイズよりも大きくなり、したがって図4の圧迫加速度ノイズよりも大きくなる。すなわち、圧迫モニタは非常にノイズの多い圧迫深度波形を報告することになる。
【0025】
外部加速度エラーは図2〜図4の実線の波形に主に大きな陽性スパイク22で現れる。(図2〜図4のスパイクは最大時に発生しているが、スパイクは圧迫サイクルのどこにでも発生し、加速度測定値に陽性にあるいは陰性に影響する)。スパイクは圧迫に関係のない大きな加速度で発生するが、加速度測定器で測定されてしまう。したがって、3つの図すべての実際波形は、対応するピーク23がスパイク22よりもはるかに小さくなっている。すなわち、ここに示す修正をしなければ、圧迫モニタはその圧迫サイクルにおいて圧迫深度が実際圧迫深度よりもはるかに大きいものとして報告してしまう。
【0026】
ドリフトは主に、図2〜図4の矢印24,25で示されている実際の波形と報告された波形のそれぞれの最小値間の距離の増加で現れる。ドリフトは圧迫モニタが圧迫波形を誤って徐々に深くなっている(陽性ドリフト)と報告する原因となる。しかし、実際波形は最初の開始点付近に戻っていることから、図2〜図4に示すドリフトは陽性ドリフトとされる。同様に、図3と図4の矢印24,25は、報告された速度および報告された加速度に徐々に大きく影響することを示す。このドリフトの影響は、最初の圧迫開始点をすべての圧迫の信頼できる開始点として使用できないことを意味している。したがって、圧迫開始点は圧迫サイクルごとに決定しなければならない。さらに、その他のノイズ発生源を取り除くか十分小さくする必要がある。
【0027】
図5は、生の加速度を総圧迫深度の推定の実際値に変換する信号処理技術のフローチャートである。生の加速度34は、フィルタ処理済み加速度に変えるためステップ35の第1のフィルタでフィルタ処理される。第1のフィルタは高パス・フィルタからなり、ほとんどの形態の信号ノイズを大きく減少させる。(別の実施形態では、最初のフィルタをバンド・パス・フィルタ、移動平均フィルタ、無限インパルス・フィルタ、自動回帰フィルタ、自動回帰移動平均フィルタにすることができる)。図5に示すその他のステップの効果については図7〜図18との関連において記載する。
【0028】
図6は、生の圧迫加速度を推定の実際圧迫深度に変換する別の信号処理技術のフローチャートである。このフローチャートについては図7〜図18の説明の後に解説する。
【0029】
フィルタ処理35の効果は図7〜図9に認められる。ここで、第1のフィルタステップ35の後の4つの仮定の圧迫について一期間の圧迫深度、速度、加速度を示している。(図7〜図9は第1のフィルタステップの出力を示す)。図9の測定された加速度波形13は、図4のフィルタ処理されていない対応する波形13よりもノイズがはるかに少ない。図8と図9の速度波形および深度波形は、ノイズの少ない加速度波形から導き出されている。それにもかかわらず、統合処理では速度波形が加速度波形よりもノイズが大きくなり、深度波形が速度波形よりもノイズが大きくなる。さらに、外部加速度スパイク22は、(矢印24,25で示すように)変動により生じたエラーのようにまだ残っている。
【0030】
図5に戻って、フィルタ処理された加速度は最初の統合ステップ36で統合され、圧迫速度が導き出される。しかし、図8に示すように、さらにフィルタ処理をしないと速度波形にはまだノイズが残る。このように速度は、フィルタ済み速度に変えるため2番目のフィルタステップ37でフィルタ処理される。2番目のフィルタは高パス・フィルタからなり、速度波形および深度波形のほとんどの信号ノイズをさらに減少させる。(別の実施形態では、2番目のフィルタをバンド・パス・フィルタ、移動平均フィルタ、無限インパルス・フィルタ、自動回帰フィルタ、自動回帰移動平均フィルタにすることができる)。
【0031】
フィルタ処理37の効果は図10〜図12に認められる。ここで、2番目のフィルタステップ37の後の4つの仮定の圧迫について一期間の圧迫深度、速度、加速度を示している。(図10〜図12は2番目のフィルタステップ37の出力を示す)。図11の測定された速度波形13は図8の波形よりノイズが少ない。(最初のフィルタステップ後の速度波形)。深度波形は速度波形から導き出されているため、同様にノイズが少ない。それにもかかわらず、統合処理では加速度波形や速度波形よりも深度波形に少しノイズが多くなる。さらに、外部加速度スパイク22は、(矢印24,25で示すように)ドリフトにより生じたエラーのようにまだ残っている。
【0032】
図5に戻って、フィルタ処理された速度は2番目の統合ステップ38で統合され、胸部圧迫深度が計算される。信号ノイズは相当除去され3番目のフィルタステップは不要である。しかし、図10に示すように、深度波形のノイズは図11の速度波形のノイズよりまだ少し多い。したがって、別の実施形態では、深度波形のノイズをさらに減少させるために高パス・フィルタ、バンド・パス・フィルタ、その他からなる3番目のフィルタを使用することができる。
【0033】
最初のフィルタステップ(35と37)と統合ステップ(36と38)の後、ベースライン制限装置はステップ39の実際圧迫開始点を推定する。ベースライン制限装置は現在の圧迫開始点を推定するために、以下に記載する他の技術と共に、過去の圧迫における開始点を使用する。ベースライン制限装置そのものは、図10の圧迫深度波形のベースライン部分に基づいて作動するデジタルまたはアナログ信号プロセッサからなる。圧迫深度波形のベースライン部分は、実際開始点が最も多く集まっている位置の深度波形の部分から形成される。例えば、ベースラインは圧迫深度に等しい深度波形と1.1インチ(2.79 cm)低い深度波形の部分を形成する(圧迫の開始時点の大きな変化はまれで大きな変化を示す信号は恐らく異常である)。このように、制限装置は無視するか、あるいは現実的な深度値をその深度の1.1インチ上方に「開始点」を暫定的に割り当てる。1つの実施形態では、ベースラインより上方の過去の開始点を無視して、ベースラインより上方の現在の開始点を報告するか、エラーとして処理する。(過去の開始点はすでに観測された圧迫開始点のことである。現在の開始点とは現在の圧迫の開始点である。)別の実施形態では、ベースラインより上方の現在の開始点はまれなものとし、過去の開始点を平均化することができる。
【0034】
別の実施形態では、ベースライン制限装置が、すべての開始点が深度波形のベースライン部分内に収まるように全開始点を移動平均して現在の圧迫の開始点を推定するようにする。移動平均とは、過去のデータサンプルを現在のデータサンプルの修正に使用する機能である。(その他の移動平均技術を以下に記す。)ベースライン制限装置の場合、ベースライン制限装置が過去の開始点より最近の開始点に重きを置く、すなわち時間の経過とともに開始点の重要度が低下するようにできる。深度波形のベースライン部分に入らない開始点には軽い重さを与えるか、または重さを与えない。すべての開始点に移動平均を適用することにより、ベースライン制限装置は外部加速度エラーやドリフトが現在の開始点に影響しないようにすることができる。言い換えれば、すべての開始点の移動平均は統計学的に、加速度の組み入れから導き出された現在の測定開始点よりも現在の実際開始点により近いことになる。
【0035】
以下は移動平均法の実施形態の一つの例である。この実施形態では、各圧迫開始点は1つ前の圧迫開始点に1.25%加算した重さ(重要度)にする。別の実施形態では、約0.1%から約12.5%の範囲(約1分後にはデータの重みが0.3%から90%の範囲になる)で重みをつけることができる。言い換えれば、現在の開始点の測定値(開始点1)は重みが100%、前回の開始点(開始点2)が重み98.75%、そのひとつ前の開始点(開始点3)が重み97.5%、そのひとつ前の開始点(開始点4)が重み96.25%、以後同様にすべての開始点に重みを付ける。最終的に遠い過去の圧迫には重みが全く加えられない。そして加重化された全開始点の深度を平均する。全開始点の加重平均を現在の開始点とし、また報告する。
【0036】
別の実施形態では、事前に設定された特定の時間(例えば約1分から約15分)後のすべての圧迫を無視する。こうして、過去1〜15分内の圧迫のみを平均する。別の実施形態では、事前に設定された特定の圧迫回数(例えば約5回から約15回)後のすべての圧迫を無視する。
【0037】
さらに例を挙げると、1つの実施形態では、開始点1の測定値= 0.5インチ、開始点2の測定値= 1.1インチ(2.79 cm)、開始点3の測定値= 4.0インチ、開始点4の測定値= 0.9インチであったとする。開始点3は深度波形のベースライン部分の範囲外(ベースライン部分は1.1インチでこの例ではその下である)である。この例でベースライン範囲外の開始点を無視することから、開始点3は無視される。このように、現在の開始点は以下のように報告される。
[(0.5*100%)+(1.1*98.75%)+(0.9*96.25%)] ÷ 3 = 0.853 インチ、
初期開始点に対する相対位置。
【0038】
開始点3を移動平均の計算に含めると、現在の開始点は以下のように報告される。
[(0.5*100%)+(1.1*98.75%)+(4.0*97.5%)+(0.9*96.25%)] ÷ 4 = 0.853 インチ、
初期開始点に対する相対位置。
別の言い方をすれば、この値は現在の圧迫の推定の実際開始点である。
【0039】
数学的には、現在の開始点の報告値は以下のように表現される。
ここで DBi > B の場合、DBi = 0
ここで、Dsは現在の開始点の深度、nrはベースラインを超えている開始点すべてを削除した後に残っている開始点の数、iは開始点の数(または加算指数)、DBiはith 番目の開始点の測定深度、ωは重み定数、Bはベースラインである。別の言い方をすれば、DBi*ωi-1 をiが1からnrまで加算し、その加算値をnrで割る。DBiがBより大きい場合、そのDBiはゼロとする。
【0040】
ベースライン制限装置は、現在の開始点の推定深度の正確度と精密度をさらに向上させるため別の機能を発揮することもできる。例えば、現在の開始点とそのすぐ前の開始点の間の変化を確率で表すことができる。(同様に、現在の開始点と以前の開始点すべての移動平均の間の変化を確率で表すことができる。)大きな変化をした開始点の重みを、小さな変化の重みより小さくすることができる。この方法は「加重移動平均」法と呼ばれる。
【0041】
上記の例を続けると、測定深度1は発生確率100%を持っているとみなす。そして、現在の開始点(深度1)と前回の開始点(深度2)の間の差は、1.1 - 0.5 = 0.6インチとなる。0.6インチとなるステップの確率は、以前の経験から97%とされる。確率が100%でないことから、現在の開始点が0.6インチ移動しているとみなすことはできない。その代わり、現在の開始点が0.6 * 0.97 = 0.582インチ移動しているとみなすことができる。したがって、加重移動平均を計算することにより、深度2は1.082インチであり1.1インチではないとみなすことができる。開始点3はここでも無視される。開始点2(1.1インチ)と開始点4(0.9インチ)の差は0.2インチで、99%の確率となる。このように、深度2と深度4のステップの有効距離は0.2*99% = 0.198となる。したがって、深度4は0.9インチではなく0.902インチとみなされる。上記と同じ移動平均を用いて、現在の開始点を以下のように報告できる。
[(0.5*100%)+(1.082*98.75%)+(0.902*96.25%)] ÷ 3 = 0.812 インチ、
初期開始点に対する相対位置。
別の言い方をすれば、この値は現在の圧迫の推定の実際開始点である。
【0042】
数学的には、現在の開始点の報告値は以下のように表現される。
ここで DBi > B の場合、DBi = 0
ここで、Dsは現在の開始点の深度、nrはベースラインを超えている開始点すべてを削除した後に残っている開始点の数、iは開始点数、DBiはith 番目の開始点の測定深度、jはベースライン内にある最近のほとんどの開始点の指数、DBi-jはベースライン内にある最近のほとんどの開始点、PSはDBi - DBi-jの大きさのステップが生じる確率、ωは重み定数、Bはベースラインである。結果のDsは現在の開始点の報告深度である。別の言い方をすれば、[DBi-j+(DBi - DBi-j)*PS]*ωi-1 をiが1からnまで加算し、その加算値をnrで割る。DBiがB(ベースライン)より大きい場合、そのDBiはゼロとする。
【0043】
別の実施形態では、現在の開始点の深度と以前のすべての開始点の加重平均との間の段階の大きさ(step size)に確率を当てはめることができる。(上記の例で、確率は現在の開始点とひとつ前の開始点の間の段階の大きさに当てはめることができる)。この方法は「記憶式加重移動平均」法と呼ぶことができる。この方法では、現在の開始点の報告深度は数学的に以下のように表現される。
ここで変数は上記のように定義される。再び、Dsの値は現在の圧迫の推定の実際開始点である。
【0044】
別の実施形態では、自動減衰移動平均(ARMA)フィルタをベースライン制限装置として使用できる。ARMAフィルタは、古いデータより最近のデータに重みをおく、指数関数的に衰えてゆく「忘却」フィルタである。ARMAは圧迫開始点またはピークの値以外にも作用する。というより、ARMAフィルタは短時間の間隔で得られた圧迫加速度、速度、あるいは深度のデータサンプルに作用する。データサンプルは1秒間に約100サンプルから約2000サンプルの割合で得られる(望ましくは1秒間に約1000サンプルの割合)。このように、ARMAフィルタは全波形に作用し、圧迫ピークや開始点のみに留まらない。
【0045】
低いパス様式(ベースラインで高周波成分を除去)の場合、ARMAフィルタは数学的に以下のように表現される。
y[n] = (1-α)*y[n-1] + α*x[n].
【0046】
この場合、nは現在のサンプルの指標(nth番目のサンプル)、y[n]は現在のサンプルの出力、x[n]は現在のサンプルの入力、y[n-1]は1つ前のサンプルの出力、αはフィルタが過去の出力をどのくらいの速さで「忘れる」か、すなわち現在の入力が出力に及ぼす影響力の大きさを示す独立した用語である。αの値は約0.02から約0.0002の範囲に入り、0.002が多くの心肺蘇生関連フィルタの適用に適している。ベースライン制限装置のための高パスARMAフィルタを実施したい場合、ARMAの等式は以下のようになる。
y[n](high pass) = 1 - {(1-α)*y[n-1] + α*x[n]},
ここで、y[n](高パス)は高パス・フィルタ出力であり、その他の変数は低パスARMAフィルタの関連において定義される。高パス・フィルタは、深度、速度、あるいは加速度信号の低周波成分を除去するのに使用する。
【0047】
上記の例の移動平均法は、圧迫深度波形の処理に関連して記載されている。しかし、圧迫の速度および加速度の正確な値を報告することが望まれている場合、この方法は速度波形および加速度波形の処理に使用できるに違いない。移動平均法は各波形に別々に適用できる。言い換えれば、移動平均法を加速度波形に適用し、次いで加速度波形を一体化し、次に2回目の移動平均法を速度波形に適用し、次に速度波形を一体化し、最後にする3回目の移動平均法を深度波形に適用する必要がない。しかし、別の実施形態では、この手順を使用することができる。
【0048】
ベースラインの信号を分析する別の方法を、推定の実際圧迫開始点の決定に使用することができる。ベースライン制限装置の別の実施形態には、移行確率マップを使用して測定開始点の特定のシフトの確率を確認する信号プロセッサからなる。(密度推定装置または核(カーネル)推定装置を使って確率マップを予め決定し、それから圧迫モニタソフトウェアにコードすることができる。)特定の開始点測定値を確率マップと比較し、システムは測定開始点の変動がどれほど間違っている(エラー)かを決定する。報告された開始点を適切に調整する。(同様に、移行確率マップは各圧迫の実際ピークおよび実際最大深度を推定するのに使用できる。)
【0049】
ベースライン制限装置39の効果は図13〜図15に認められる。ここでは、4つの仮定の圧迫について一期間の圧迫深度、速度、加速度を示している。図13〜図15はまた、図5のステップの出力(35〜39)を示している。ベースライン制限装置はステップ47の速度波形(図14)とステップ48の加速度波形(図15)に別々に適用される。
【0050】
図13〜図15は、移動平均法が各圧迫における報告開始点のドリフトの影響を少なくすることを示している。(移動平均法はまた、波形のベースライン部分に現れる外部加速度エラーの影響を少なくする。)補正する前は、報告開始点が徐々に深くなってゆくのに対し、実際開始点は実際初期開始点に戻るように近づいて行った。移動平均法を測定した波形のベースラインに適用することにより、各圧迫で報告される開始点は統計学的に実際開始点に近づいてゆく。したがって、圧迫モニタは実際圧迫深度に近い推定の圧迫実深度を報告する。図2〜図4および図7〜12の矢印24,25よりも短い矢印49,50は、移動平均法を各波形に適用することの有益な効果を示している。
【0051】
図5に戻って、ベースライン制限装置により補正された圧迫深度波形は、それに累積しているあらゆる信号ノイズを減少させるためにステップ50の第3のフィルタに通される。第3のフィルタは高パス・フィルタからなり、別の実施形態では第3のフィルタはバンド・パス・フィルタからなる。
【0052】
引き続いて、深度波形(フィルタ処理の有無にかかわらず)がステップ52の開始点検出器に提供される。開始点検出器は現在の推定開始点の値を同定する。続いて現在の推定開始点は、(線54で示されるように)信号を組み合わせる手段53に提供される。信号組み合わせ手段53は、後で推定の実際圧迫深度を計算するために現在の推定開始点を使用する。信号組み合わせ手段は、信号追加装置、直線システムモデル、非直線システムモデル、あるいはその他の組み合わせ信号からなる。
【0053】
次に、圧迫波形がステップ55のピーク制限装置に提供される。ピーク制限装置は、ベースライン制限装置と同じような機能を持つが、圧迫波形のピーク部分に作用する信号プロセッサである。波形のピーク部分とは、ピークが認められると思われる波形部分のことである。1つの実施形態では、ピーク部分はベースライン上方の波形部分のことである。ベースライン制限装置で使用した例を考えると、深度波形のピーク部分は1.1インチ(2.79 cm)上方の深度波形の部分である。このようにピーク制限装置は、ベースライン制限装置が波形のベースライン部分を滑らかにするように、波形のピーク部分を滑らかにする。
【0054】
1つの実施形態では、ピーク制限装置は最大圧迫深度の大きさの外側の境界を設定する。このように、ピーク制限装置は、既知の起こりそうもないピーク値よりも大きなピークすべてを無視する(捨て去る)か、すべてに適当な値を代入する(例えば、大きな体格の人の胸部深度は、心肺蘇生の圧迫深度にとって起こり得る値ではない)。このように、ピーク制限装置は圧迫モニタが起こりそうもない圧迫深度値を報告しないようにする。
【0055】
ピーク制限装置の効果は図16〜図18にみられる。ここでは図5のピーク制限装置ステップ55の後の4つの仮説的圧迫における圧迫深度、速度、加速度のグラフを示している。(図16〜図18はステップ35〜55の出力を示している)。ピーク制限装置はステップ56の速度波形とステップ57の加速度波形に別々に適用されている。圧迫波形のピーク部分に移動平均法を適用することにより、外部加速度のスパイク22の影響が大きく抑えられる。前の処理ステップで考察した方法と合わせることにより、報告された波形は実際波形に近づく。
【0056】
図5に戻って、残っている信号ノイズを取り除くため、推定ピークをオプションで第4のフィルタ58に提供することができる。第4のフィルタは高パス・フィルタからなり、別の実施形態では第4のフィルタはバンド・パス・フィルタまたはその他のフィルタからなる。
【0057】
それに引き続き、深度波形がステップ59のピーク検出器に提供される。ピーク検出器は推定ピーク(現在の圧迫の推定最大深度)の値を特定する。次に、推定ピークは信号組み合わせ手段53に提供される。信号組み合わせ手段53は、推定開始点52を推定ピーク59と合わせて、現在の圧迫61の推定の実際圧迫深度を提供する。次に推定の実際深度はユーザフィードバック手段62(ユーザフィードバック装置)に提供される。ユーザフィードバック手段は、スピーカー、視覚ディスプレイ、1つまたは複数のLED、振動機、ラジオ、その他の蘇生実施者に伝達する手段からなる。ユーザフィードバック装置はまた、現在の圧迫の推定の実際深度に関する情報を蘇生実施者に提供する。
【0058】
図5の方法において、ベースライン部分およびピーク部分は重ならない。このように、圧迫深度波形はベースライン部分とピーク部分の2つの部分から構成されていると考えられる。深度波形の各部分は、異なる情報を抽出するために2つの異なる手順(ベースライン制限装置およびピーク制限装置)で別々に処理される。このように、ベースライン制限装置とピーク制限装置の両方が同じ深度波形に作用する。これの効果は、深度波形を形成している信号がまずベースライン制限装置に、次にピーク制限装置に提供されることにある(信号を分割しない)。
【0059】
図6に示した方法は、ベースライン部分およびピーク部分が重なった場合に使用される(しかし、この方法はベースライン部分およびピーク部分が重なっていない場合にも使用される)。例えば、図6の方法は、ベースライン部分が(胸部がリラックスしている状態に比べて)1.5インチ上方に設定され、ピーク部分が(胸部がリラックスしている状態に比べて)1.0インチ上方に設定されている場合に使用される。この場合、深度波形を代表している信号が分割され、ベースライン制限装置とピーク制限装置の2つの別々のプロセッサに提供される各プロセッサはすでに説明している制限装置と同じ機能を実行する。このように、ベースライン制限装置とピーク制限装置は互いに独立して作動するが、図6の方法は、図5に示す方法とほぼ同じように、推定開始点と推定ピークを生成する。信号を組み合わせるための方法は、次に現在の圧迫の推定の実際深度を生成するためにステップ53の推定開始点および推定ピークを結合させる。現在の圧迫の推定の実際深度はステップ62のユーザフィードバック装置に提供される。ユーザフィードバック装置はまた、現在の圧迫の推定の実際深度を蘇生実施者に提供する。
【0060】
図5および図6の信号処理法に加えて、別の技術を圧迫深度波形のエラーを修正するために使用することもできる。例えば、図19は、加速度測定器が加速度測定をいつ開始するかを代わってコントロールするスイッチ64をオンにするのに心電図ノイズ63の変化を使用する信号処理技術のフローチャートである。
【0061】
この方法を実施するために、圧迫モニタには患者心電図を測定するために、1つまたは複数の電極もしくはその他の手段が提供されている。蘇生実施者が胸部を圧迫するたびに、患者心電図にノイズが入る。患者の実際心電図が(電気活性を示さない)平坦であって、報告される心電図には胸部圧迫によるノイズが示される。事実、体動によるアーチファクトの信号(胸部圧迫による心電図のノイズ成分)が心電図の律動に組み入れられる。実際心電図律動がどうであっても、心電図ノイズが分離されて得られる。
【0062】
胸部圧迫中に大量の心電図ノイズが生じることから、圧迫の開始点は心電図ノイズが事前に設定された閾値を越える点に関連付けられる。しかしながら、圧迫の動作と心電図のノイズの発生の間にいくらかの遅れあるいはずれが生じる。時間のずれはミリ秒から10分の1秒の単位である。圧迫のいずれの部分も逃さないために、バッファ(デジタル、アナログのいずれでも)を適用して時間のずれを修正する。その後、心電図のノイズが特定の閾値を越えると、加速度測定器が作動する(そして加速度測定値を得始める)ようにスイッチをプログラムする。測定加速度を2回統合することにより総圧迫深度を決定する。
【0063】
圧迫開始点を確立するための基準センサとして心電図ノイズを使用する効果は、4つの仮説的圧迫における一定期間の圧迫深度、速度、加速度を示す図20〜図25に認められる。図20〜図22の波形には信号の処理が何もなされていない。点線の波形12は、圧迫深度、速度、(加速度測定器とは独立して測定された)加速度の実際波形を表し、実線の波形は加速度測定器にて測定された加速度から導き出された波形を表している。実線の波形13は圧迫モニタにより報告された波形でもある。信号ノイズの影響は実線の波形の粗さに現れている。外部加速度ノイズの影響は、報告された波形中の2つのスパイク65,66に現れている。(徐々に圧迫が浅くなる)陰性ドリフトの影響は、報告された波形や実際波形の最小値間の(矢印67,68で表される)距離が増大することに認められる。
【0064】
圧迫開始点を確立するための基準センサとして心電図ノイズを使用する効果は、仮説的圧迫における一定期間の圧迫深度、速度、加速度のグラフを示す図23〜図25に認められる。基準センサとして心電図ノイズを用いることにより、外部加速度のある種のエラーが減少し、陰性ドリフトの影響が小さくなる。(心電図ノイズ基準センサは陽性ドリフトの影響も小さくすることができる)。特に心電図ノイズ基準センサは、圧迫最小値近くで起こる外部加速度ノイズの影響を小さくする。加速度測定器の電源が「オン」になっていないと、外部加速度のスパイク部分は「無視」される。実際には、加速度測定器がデータをまだ収集していても、心電図ノイズが設定レベルに達していない期間に発生する加速度データあるいは信号をソフトウェアまたはハードウェアによって除外される。別の方法では、心電図ノイズが予め設定されている閾値内になったときに、推定の実際圧迫深度を計算する。いずれの場合でも、報告される波形の中のスパイク65の影響を小さくする。しかし、加速度測定器それ自身は圧迫関係の加速度と外部加速度の違いを区別できない。このように、報告される波形にはスパイク66にみられるように圧迫動作中に起こった外部加速度ノイズが含まれることがある。
【0065】
そうではあるが、心電図ノイズ基準センサはドリフトの影響を小さくする。圧迫開始点を独立して確立することにより、波形が陽性ドリフトや陰性ドリフトのいずれかに至ることがはるかに小さくなる。言い換えると、加速度測定器は常に圧迫が実際に開始された後の加速度を測定する。このように、図23の報告波形は、蘇生実施者が実際何を行っているか、すなわち徐々に深くなってゆく開始点から圧迫していることをもっと明らかに示している。このように、ピーク69,70は測定された波形が実際波形ともっと強く一致していることを示している。
【0066】
心電図ノイズ基準センサはドリフトの影響を小さくし、ある種の外部加速度ノイズを減少させることができるが、信号ノイズの問題は残されたままである。したがって、図23〜図25は依然として図20〜図22に示されている信号ノイズと同じレベルを示している。すべての形態のノイズを減少させるため、心電図ノイズ基準センサを図5または図6の信号処理技術と組み合わせることができる。複合技術により実際波形に近い報告深度波形になる。
【0067】
その他の基準センサを用いて圧迫の実際開始点を確立することができる。図26は、平面80に横たわっている患者1に取り付けた、加速度測定器に基づく圧迫モニタを示している。加速度測定器81、荷重センサ82、スイッチ83からなる基準センサのシステムは、各センサが胸部圧迫に関する様々なパラメータを測定できるように配置されている。基準加速度測定器の場合、基準加速度測定器を患者の体表、または患者と同じ外部加速度が発生する基準物体の上に配置する。基準加速度測定器は3つの軸からなる加速度測定器からなるが、その他に1つの軸からなる加速度測定器を3つ用いて互いに軸を直交させるか、または1つの軸からなる加速度測定器1つを用いる(この場合、他の2つの軸方向の加速度は無視できるものとする)こともできる。
【0068】
基準加速度測定器81は、信号プロセッサが患者の搬送により生じるこれらの加速度のような外部加速度エラーを除外するようにする。1つの方法は、圧迫モニタまたは自動心肺蘇生装置(デバイス加速度)により感知された加速度を信号プロセッサに提供する。デバイス加速度には、圧迫により生じた加速度(圧迫加速度)および外部加速度により生じた加速度(外部加速度)が含まれる。次に、基準加速度測定器または加速度測定器が信号プロセッサに基準加速度を提供する。基準加速度測定器には患者の外部加速度のみが含まれる。それから、基準加速度は推定の実際加速度を生成するためにデバイス加速度と組み合わされる。(基準加速度に対する圧迫加速度の影響は、平面および患者が圧迫モニタに対して動かないため、無視できる。)
【0069】
一旦獲得したら、推定の実際加速度は推定の実際胸部深度を得るために2回統合される(integrated)。このように、圧迫深度は大きな外部加速度があっても決定される。さらに位置信号は、実際加速度を図5および図6の信号処理法または他の信号処理法と組み合わせることによりもっと正確かつ精密にすることができる。
【0070】
心電図ノイズセンサおよび基準加速度測定器の代わりに(または追加として)、別の基準センサを実際圧迫開始点の設定に使用することができる。基準センサは、荷重センサ82、スイッチ83、経胸腔インピーダンス検出器、(上記に記載の)心電図ノイズ検出器、自動心肺蘇生装置中の電圧または電流センサ、自動心肺蘇生装置中の開始信号、自動心肺蘇生装置中のエンコーダ、あるいは圧迫の実際開始を独立して検出可能なその他のセンサからなる。基準センサが圧迫の開始を検出すると開始点がゼロにセットされる。それから加速度が処理されて圧迫深度が導き出される。基準センサが圧迫の開始を検出したとき開始点をゼロに設定する技術を、図5および図6の信号処理技術と組み合わせることができる。
【0071】
スイッチ83について言えば、圧迫が始まるとスイッチが閉じられるようにスイッチを配置することができる。例えば、スイッチは圧迫モニタの下または上、患者1の上、患者が横になっている平面80の上、蘇生実施者の手、心肺蘇生装置の上、患者の上、その他圧迫が始まったことをスイッチが察知できる部位に配置することができる。
【0072】
スイッチは様々な種類のスイッチとセンサから構成される。それらには、接触スイッチ、動作スイッチ、自動心肺蘇生装置上の電圧センサ、自動心肺蘇生装置上の光学式、回転式またはその他のエンコーダ、シャフトなど自動心肺蘇生装置の構成要素の位置変化計、電位差計、ひずみゲージ、圧電抵抗トランスデューサ、差動変圧器、同期電導電位差計、様々な電導および様々な電気抵抗の感知器、過電流非電導トランスデューサー、容量トランスデューサ、電気光学トランスデューサ、写真スイッチ、ビデオテープスイッチ、ホログラフィースイッチ、光弾性技術、並進運動エンコーダ、超音波トランスデューサ、移動コイルおよび移動磁石感知、交流または直流タコメータ、過電流ドラグカップタコメータ、その他の加速度測定器、または位置変化スイッチがある。
【0073】
荷重センサ82の場合、荷重センサは蘇生実施者、患者、自動心肺蘇生装置、患者の下、または圧迫が始まるときに荷重センサが荷重状況を感知するようなその他の部位に接続される。荷重状況に関する荷重センサの測定値が事前に定められた閾値を越えたとき、測定開始点がゼロに設定される。荷重センサは荷重センサが荷重状況を感知したときに活性化されるスイッチに操作上接続されるか、単に信号処理システム識別装置(詳細は以下に記す)に信号を送る。圧迫深度は加速度を2回統合されて決定される。荷重センサが圧迫の開始を検出したとき開始点をゼロに設定する技術を、図5および図6の信号処理技術と組み合わせることができる。
【0074】
荷重センサ82の別の実施形態では、荷重センサを患者の体重および圧迫力の両方を感知できるように配置することができる。荷重センサ82は患者が横になっている台80の下に配置することができる。圧迫中、患者を押す力により荷重センサは患者の体重よりも大きな総合力を報告することになる。したがって、総合力が患者の体重にほぼ等しいときに開始点がゼロに設定される。
【0075】
この技術とともに使用できる力センサの例には、圧力センサ、弾性力トランスデューサ、自動心肺蘇生装置のシャフトの位置変化計、自動心肺蘇生装置の電圧または電流センサ、自動心肺蘇生装置の光学的、回転式あるいはその他のエンコーダ、固定したひずみゲージ、光線ひずみゲージ、差動変圧器、圧電トランスデューサ、様々な電気抵抗/FM発振器、ジャイロスコープ圧力トランスデューサ、振動ワイヤー力検出器などがある。この技術とともに使用できる圧力センサの例には、重量品計測器、マノメータ、弾性トランスデューサ、圧電トランスデューサ、力平衡トランスデューサなどがある。
【0076】
経胸腔的インピーダンス検出器の場合、1つあるいは複数の心電図用電極、心房細動用電極、またはその他の電極を患者の胸壁に配置する。圧迫を開始すると、胸壁のインピーダンスが変化する。胸壁インピーダンスはどれでも2つの電極の間にある皮膚および胸腔内構造物によるインピーダンスからなる。胸部インピーダンスの変化は、小さな試験電流あるいはインピーダンスを測定するその他の方法で測定される。インピーダンスが事前に設定された量だけ変化したときに、開始点がゼロに設定される。測定加速度を処理することにより総圧迫深度を決定できる。
【0077】
圧迫モニタが圧迫波形を測定できることから、特定の圧迫波形を実行するとき圧迫モニタを蘇生実施者あるいは自動心肺蘇生装置の誘導とすることができる。図27は、圧迫モニタが蘇生実施者に実施を先導する圧迫波形を示している。深度はインチで測定され、時間は秒で刻まれる。図27の目盛りは0.5秒間隔、1.0インチ間隔で印が付いている。サイクルの圧迫段階は、陽性に傾斜した曲線84として示される。サイクルの圧迫段階は最大圧迫深度85(圧迫ピーク)で終了する。サイクルの圧迫解除段階は、陰性に傾斜した曲線86として示される。圧迫解除段階は蘇生実施者が次の開始点87(またはベースライン)で新たに圧迫を開始するときに終了する。この開始点は最初のものと異なることもある。圧迫は、時間=0、深度=0で開始され、圧迫の総深度は矢印88で示されている距離である。
【0078】
圧迫波形には、蘇生実施者が最大圧迫深度で短時間同じ位置を保つ圧迫保持期間89が認められ、蘇生実施者が最初の開始点より深い点で短時間位置を保つ不完全圧迫解除維持期間90が認められる。それぞれの圧迫および圧迫解除は、圧迫段階84および圧迫解除段階86の比較的急峻な波形で示されるように速い加速度と速度ですばやく実施される。デューティサイクルは50%より少し低い(圧迫と圧迫解除の時間の比は1)。これは、矢印89間の距離によって示されるように圧迫段階に費やされる時間は矢印90間の距離によって示されるように圧迫解除ステップに費やされる時間より少し短いことを意味している。
【0079】
図27の圧迫波形は、圧迫モニタが蘇生実施者に圧迫するための指示を与えることができる特定の波形の例を示しているが、別の波形になる可能性もある、例えば、別の波形では圧迫保持時間が認められないことがある。さらに別の波形ではデューティサイクルが異なったり、圧迫保持時間が増加したりすることもある。正確な波形は、特定の患者に対する最適の圧迫波形を構成する圧迫波形の種類に関する現在の科学水準にかかっている。加えて、圧迫モニタにはスイッチ、ボタン、ソフトウェア、あるいは蘇生実施者が患者の体格や体形を入力できるようにするためのその他のユーザ入力手段を装備することができる。圧迫モニタは、波形ライブラリから特定の波形を選択するのにこの情報を使用できる。圧迫波形は将来の検討、AHAガイドライン、蘇生実施者の注意事項、医療専門家の参考のための所見として採用できる。したがって、下記に詳しく記すように、様々なときに異なる波形がユーザフィードバック装置に提供される。
【0080】
ユーザフィードバック装置により先導用波形が提供される(図5のステップ62)。さらに、ユーザフィードバック装置は蘇生実施者または自動心肺蘇生装置に圧迫関連情報を提供する。例えば、ユーザフィードバック装置は圧迫開始点、圧迫深度波形、圧迫速度波形、圧迫加速度に関する情報を表示することができる。このように、ユーザフィードバック装置は蘇生実施者または自動心肺蘇生装置に、心肺蘇生のすべての段階を通して、胸部の位置、速度、加速度の状況を確認するのに必要なすべてのデータを提供できる。この情報はまた、蘇生実施者または自動心肺蘇生装置の実施状況を評価するのに使用できる。
【0081】
ユーザフィードバック装置は、蘇生実施者または自動心肺蘇生装置に圧迫ステップの質および圧迫解除段階の質に関する情報を提供する。圧迫段階の質は、総圧迫深度、デューティサイクル、圧迫の加速度、圧迫の滑らかさ、圧迫段階に関連するその他の因子に関する圧迫の品質である。圧迫解除段階の質は、蘇生実施者が実際開始位置に戻ってくるかどうか、デューティサイクル、圧迫解除の加速度、圧迫解除の滑らかさ、圧迫解除段階に関連するその他の因子に関する圧迫の品質である。蘇生実施者または自動心肺蘇生装置は、圧迫の種類および品質を評価あるいは先導するためにこの情報を使用する。
【0082】
ユーザフィードバック装置62は、加速度、速度、位置の波形から得られた情報を組み合わせて、蘇生実施者または自動心肺蘇生装置に圧迫ステップの質に関する情報を提供する。例えば、ユーザフィードバック装置は、圧迫深度が推奨ガイドラインよりも小さい場合は圧迫する力を増すように、また圧迫深度が推奨ガイドラインよりも大きい場合は圧迫する力を減らすように蘇生実施者に指示を出す。ユーザフィードバック装置は、圧迫波形のその他の圧迫ステップパラメータに関して蘇生実施者に指示を出す。例えば、ユーザフィードバック装置は、適切な圧迫深度を達成するのに圧迫時間が短すぎるか長すぎるかについて、蘇生実施者または自動心肺蘇生装置に情報を与える。
【0083】
ユーザフィードバック装置62は、加速度、速度、位置の波形から得られた情報を組み合わせて、蘇生実施者または自動心肺蘇生装置に圧迫解除ステップの質に関する情報を提供する。例えば、ユーザフィードバック装置はユーザや装置に、圧迫解除後の適切な待機位置に関する指示を与える。このように、ユーザフィードバック装置は、蘇生実施者または装置が胸部を最初の開始位置まで十分戻らせていない場合に、ユーザまたは装置に胸部を十分リラックスさせることを指示できる。逆に医学的に示される必要がある場合、ユーザフィードバック装置はユーザまたは装置に最初の胸部位置の真下の深度まで戻るよう指示できる。この場合、蘇生実施者または装置は圧迫解除維持時間に入り、圧迫サイクルが最小深度の時間になっても胸部に一定の力を加え続ける。その他の場合として、ユーザフィードバック装置は別の時間に異なる圧迫開始点を示すことができる。このように、ユーザフィードバック装置は蘇生実施者または装置に、圧迫サイクル中、不完全な圧迫解除維持時間を適用するが、換気中には十分リラックスした位置に戻るように指示することができる。ユーザフィードバック装置は蘇生実施者または装置に、圧迫解除の割合と圧迫解除段階のデューティサイクルなど、その他の圧迫解除段階のパラメータに関して指示することができる。
【0084】
これらを一緒にして、圧迫段階の質および圧迫解除段階の質から得られた情報はユーザフィードバック装置が最適な圧迫波形および最適の圧迫デューティサイクルを作るよう蘇生実施者を誘導できるようにする。蘇生実施者は、事前に設定された深度と割合で圧迫し、事前に設定された圧迫深度で事前に設定された時間だけ胸部を保持することで特定の圧迫波形を実施する。蘇生実施者は、事前に設定された時間だけ胸部を圧迫し、別の事前に設定された期間胸部をリラックスさせることで特定のデューティサイクルを実施する。
【0085】
このように、ユーザフィードバック装置は蘇生実施者または自動心肺蘇生装置が圧迫サイクルの各段階(圧迫および圧迫解除)を適切な圧迫の割合、圧迫深度、圧迫速度(患者の圧迫および圧迫解除にかかる時間)、圧迫加速度、圧迫保持時間で実施するように誘導することができる。したがって、蘇生実施者または装置が実際に適用する圧迫波形は複合圧迫波形を形成することができる。ほとんどの患者がより複雑な波形から益を受けていることを研究で示されていることから、自動心肺蘇生装置が圧迫モニタをこのユーザフィードバック装置とともに使用するなら、患者の生存率は上昇すると思われる。
【0086】
同様に、図5のユーザフィードバック装置62は蘇生実施者または心肺蘇生装置に圧迫デューティサイクルに関するフィードバックを提供することができる。デューティサイクルとは、各圧迫サイクルにおける圧迫中の時間と圧迫解除中の時間の比である(しかし、デューティサイクルには換気中など胸部圧迫を実施していないときの時間は入れない)。
デューティサイクルが事前に設定されたパラメータ内に収まっていない場合は、適切なデューティサイクルに影響するために圧迫のタイミングと圧迫の割合を調整するよう、ユーザフィードバック装置は蘇生実施者を誘導する。
【0087】
上述のユーザフィードバック装置は、生の加速度信号から胸部位置変化の正確な値を決定する際の問題を特別に解決する最後のステップからなる(図5はこの解決のためのフローチャートである)。一般的な視点から問題を眺め一般的な解決に導くことが可能であるが、すでに記述したように、様々な解決法がある。
【0088】
図28および図29は、心肺蘇生中に測定される加速度から正確な位置を決定するときの一般的な問題を提示し、位置を決定するための一般的な解決法を示したブロック図である。図28は、実際胸部圧迫加速度が胸部位置の不正な値にどのように変換されるかを示すブロック図である。大まかに言えば、実際加速度105、信号ノイズ106、外部加速度ノイズ107、ある種のドリフト108は、未知の機能109(それは線形あるいは非線形で、無作為のあるいは決定的な入力を含んでいる)で結び付けられている。未知の非線形機能は、加速度測定器で測定された不正な加速度110を生成するシステムとして知られている。不正な加速度は2回統合され、加速度に不正を入れることにより生じる問題を大きくしてしまう。増加するエラーは組み込みエラー111と呼ばれる(しかし、統合技術そのものが直接位置にエラーを持ち込むことはないと考えられる)。最後にドリフト112のその他の原因が最終値の不正な位置113に影響することがある。
【0089】
図29は、不正な胸部圧迫加速度を胸部圧迫の推定の実際深度に変換するための一般的な解決のブロック図である。まず、基準センサ119が実際圧迫開始点を確立する。このようにして、加速度の開始点を知ることができる(助けとなるが、基準センサ119は一般的な解決策とはならない)。実際加速度105および真実のまたは推定のノイズ源1220(図28の106〜108のブロックからなる)がシステム109によって未知の機能により統合される。その結果は不正な加速度110である。測定された加速度は次にデータ統合手段121(これは線形もしくは非線形機能からなる)に提供されるとともに、システム識別装置122に提供される。
【0090】
システム識別装置は1つもしくは複数の機能(線形もしくは非線形)からなり、システムをモデル化する。ノイズ源120に相関する1つもしくは複数の関連は、システム識別機能122に提供される。例えば、低周波フィルタにより同定されたノイズは信号ノイズに関連し、基準加速度測定器は外部加速度ノイズに関連する。
【0091】
基準そのものは加速度にノイズを起こさないとしても、システム識別機能はノイズ源基準値として自動心肺蘇生装置の様々なパラメータを使用する。しかし、ノイズ源基準値は加速度信号のノイズの原因といくらか関連しているに違いない。例えば、加速度測定器に基づく深度測定値は0.5インチの胸部深度を報告する。しかし、自動心肺蘇生装置に同時に起こる電流のスパイクは、心肺蘇生装置が0.5インチの深度で胸部を圧迫するのに必要な力よりも強く圧迫していることをシステムに伝えている。この矛盾は外部加速度ノイズまたはドリフトにより生じることがある。このように、電流スパイクはシステムのノイズ源と関連している。この情報はシステムのモデル化を支援するために、システム識別装置により使用される。同様に、電圧、シャフト位置変化、あるいは光学式または回転式エンコードは、システムのモデル化を支援するためにシステム識別装置により参照として使用される(ここでも、ノイズ基準値が利用されるが必須ではない)。
【0092】
システム識別装置は次に、測定された加速度の推定ノイズ123を生成するために、ノイズ源基準値と測定された加速度を組み合わせるか、関連付ける。次に、推定ノイズ123はデータ121を組み合わせるための手段に提供される。データを組み合わせる手段は推定ノイズ123と測定された加速度110を組み合わせて、推定の実際加速度124を生成する。推定の実際加速度は次に2回統合される(125)。フィルタ126は、推定の実際加速度にまだ残っているエラーの複合の影響を減らすために、オプションで片方または両方の統合ステップで使用される。最終結果は、加速度測定器の実際位置127を正確で精密に推定することになる。
【0093】
システム識別機能122はシステムをモデル化し、加速度のノイズを推定するのに使用できる。(ノイズがあることが分かったら、ノイズの加速度と測定された加速度を組み合わせることによりノイズは容易に除去できる。)言い換えれば、システム識別は入力および出力データを使用して実際加速度と加速度のノイズ源を組み合わせる機能をモデル化する過程である。システム識別の問題には、既知あるいは推定の出力および既知か未知の入力がある。既知または未知の入力の追加はシステム識別には有益であるが、必須ではない。何らかの境界条件は知られていても、システムそのものが線形か非線形の未知の適当な機能である。
【0094】
線形でも非線形でも数多くの方法がシステムのモデル化に使用される。これらの方法のそれぞれは、ステップ122のシステム識別機能の単独あるいは組み合わせからなる。これらの方法は、圧迫開始点またはピーク点のみを操作するのではなく、毎秒多くのデータサンプルを取ることにより操作する。それにもかかわらず、これらの方法は圧迫開始点または圧迫ピークに対しても実施される。これらの方法には、自動回帰、余分の入力を伴う自動回帰、自動回帰移動平均(図5および図6にみられる技術に使用される方法の1つ)、余分の入力を伴う自動回帰移動平均、自動回帰一体化移動平均、余分の入力を伴う自動回帰一体化移動平均、ボックス・ジェンキンス(Box-Jenkins)モデル、出力エラーモデル、隠蔽マルコフ(Markov)モデル、フーリエ変換、微小波変換、微小波ノイズ削減、微小波フィルタリング、適応神経ネットワーク、再発性神経ネットワーク、放射状機能ネット、適応曲線フィッティング(たわみ定規様)、カルマンフィルタ(Kalman filter)、拡大カルマンフィルタ、適応カルマンフィルタ、無香カルマンフィルタ、カーネル推定がある。システム識別機能を見つけるために使用されるアルゴリズムによるアプローチには、最大エントロピー、最大見込み、帰納的最小二乗法(または類似の技法)、数値的方法、拘束のない世界的検索または最適化、期待値最小化、高速フーリエ変換がある。
【0095】
帰納的同定(recursive identification)の場合、一般的帰納的同定のための方程式は以下のとおりである。
(1) X(t) = H(t, X(t-1), y(t), u(t)) および
(2) θ(t) = h(X(t))
ここで、X(t)は時間tにおけるシステムの状態、Hは変換関数の状態、X(t-1)は以前のシステムの状態、Y(t)は測定した出力、u(t)は測定した入力、θ(t)はシステムであり、hはシステムの状態を出力に変換する。 システムの状態は、h(X(t))によりシステム出力に転換される。
【0096】
X(t)とθ(t)はu(t)とy(t)を収集するたびに評価されることから、最も新しく収集されたデータよりもそれまでに収集されたデータの総計の方はるかに大きな影響をシステムに与える。
【0097】
等式(1)と(2)は等式(3)と(4)のように簡略化できる。
(3) X(t) = X(t-1) + μQx(X(t-1), y(t), u(t)) および
(4) θ(t) = θ(t-1) + γQθ(X(t-1), y(t), u(t))
ここで、μとγは最新の段階で提供される情報の相対的な量を反映する小さな値である。Qは入力、出力、状態に関係する代数である。等式(3)と(4)は、等式(1)と(2)よりも帰納的に等式の計算が簡単であるという意味でより簡略化されている。
【0098】
数的アルゴリズムの数値は、等式(3)と(4)を解くのに使用される。数的アルゴリズムの部分的なリストには、帰納的最小二乗法、帰納的器具変数、帰納的予測誤差法、帰納的偽直線回帰、帰納的カルマンフィルタ(時間変動パラメータを含む)、時間変動システムの帰納的カルマンフィルタが含まれる。これらの数的技術は、カルマンフィルタ、拡大カルマンフィルタ、拡大機能的最小二乗法、その他を含む特別なケースとして、有名な「名のある」技術の多くを包含している。各アルゴリズムはそれぞれ強さと弱さを持っているが、すべては漸近的に等式(3)と(4)の解に近づく。
【0099】
「名のある」特別なケースは、ある条件または推定がある場合に一般的な等式(3)と(4)から導き出される。このように、リストされたアルゴリズムのそれぞれの等式はさらに具体化され得る。例えば、帰納的最小二乗法アルゴリズムを使用すれば等式(4)は以下のようになる。
【0100】
等式5〜5(b)において、L(t)、P(t)およびP(t-1)は等式を簡略化するために使用された用語、φ(t)は回帰ベクター、λ(t)は忘却因子(以下で詳細に説明)、φT(t)は回帰ベクターの転置行列である。
【0101】
さらに、等式(4)は帰納的器具変数、帰納的予測誤差法、帰納的偽直線回帰、時間変動システムの帰納的カルマンフィルタ、パラメトリック多様性の帰納的カルマンフィルタのケースとして表現できる。
【0102】
上記のアルゴリズムのセットからシステム識別アルゴリズムを一旦選択すると、そのモデルの質に影響するその他のいくつかのパラメータが出てくる。これらのパラメータには、データの重みづけ、最新化のステップの選択、最新化の取得の選択、モデルの順序の選択がある。データの重みづけについては、システムが経時的に変動する場合、現在に近いときの入力出力データの方がシステムの現在の性質をより正確に反映する。時間的に古くなったデータはその時のシステムの状態を反映するに過ぎない。この事実を反映させるため、現在のシステムの状態を表すデータに重きを置くことができる。実際データの重みづけは、等式5〜5bの「忘却因子(λ)」によって実行される。λの選択は、システムの状態がどれほど迅速に変化しているかという情報に基づいて行われる。λの典型的な範囲は約0.9800から約0.9999である(忘却因子が不必要なときにλが1.0000となる)。
【0103】
λがシステム識別装置に与える影響について考慮している別の方法は、データサンプルに約36%の重みが付けられるポイントを評価するものである(36%は数e-1の値であり、これはデータサンプルが統計学的に有意ではないとみなされるポイントの値である)。この重みのときデータサンプルの統計学的有意性は相対的に小さくなる。データサンプルが約36%の重みを付けられたときのサンプル数(T0として知られている)は、数学的に以下のように表される。
T0(したがってλ)は、実際加速度が独立して測定された場合に推定の実際加速度が実際加速度に最も近似するように、システム状態の適切な知識をもって選択しシステム識別の整調に使用する。このように、T0は圧迫モニタが測定を開始する前に事前に設定される。
【0104】
λが1に近いほど、あるデータサンプルが約36%の重みを与えられるまでに必要なサンプル数が多い。λが小さいということは、あるデータサンプルが「忘れ去られる」までの時間が短いことを意味する。例えば、λが0.9800すなわちT0 = 50サンプルの場合、50番目のサンプルに約36%の重みが付けられることを意味する。しかし、λが0.9999すなわちT0 = 10,000の場合は、10,000番目のサンプルに36%の重みが付けられることを意味する。上限については、λが1すなわちT0 = ∞ の場合、どのデータサンプルも「忘れ去られる」ことがない(常に100%の重みが付けられる)ことを意味する。
【0105】
サンプリングの割合(1秒間に加速度が測定される回数)は、λがシステム識別装置を変化させるかに影響する。毎秒1000回サンプルが採取された場合、心肺蘇生の圧迫の時間目盛り上、データは迅速に「忘れ去られる」。例えば、毎秒1000回サンプルが採取される、すなわちT0 = 1000の場合、採取後1秒経過したデータに36%の重みが付けられる。実際、サンプリングの割合は毎秒約100個から毎秒約2000個まで様々である。心肺蘇生中の加速度測定値の信号処理にとって有用なサンプル採取割合は、毎秒約500個である。別の実施形態では、サンプル採取割合を速くすることができるが、一定の割合でサンプルが無視される。例えば、毎秒1000個のサンプルを採取すると、1個おきにサンプルが無視される。デシメーションとして知られているこの過程は、これよりゆっくりしたサンプル採取割合でも同じ効果を持つ。
【0106】
前述の議論で、忘却因子は時間と共に変化しない固定した数であった。しかし、λはシステム識別装置が変化に適応できるよう、時間と共に変化し得るものであった。例えば、換気休止中にλが変化することがあり、ある実施形態では換気休止中にλが大きくなる。換気休止中にλが増大する影響は、データ点が短時間で捨てられることである。それゆえ、圧迫モニタは換気休止中の圧迫深度の変化を報告しない。
【0107】
忘却因子をシステム識別機能に追加することに加えて、最新化ステップの選択はモデルの質に影響する(とはいえ、最新化を必要とするのはシステム識別技術の一部だけである。例えば、カルマンフィルタは最新化ステップを必要とする)。最新化ステップは様々な方法で履行可能である。カルマンフィルタなどいくつかのシステム識別装置は分析的に解決可能であり、最新化ステップは分析的に解決される。他のシステム識別装置は数的に解決される必要がある。数的解決が必要の場合に使用可能な3つの最新化方法は、ガウス-ニュートン(Gauss-Newton)最新化、グラジエント最新化、およびレーベンバーグ-マルカート(Levenberg-Marquardt)最新化である。ガウス-ニュートン最新化は非常に多数のステップ(したがってより多くの計算時間)を必要とするが、実際解決の正確な適合値に収束する。グラジエント最新化は迅速に収束するが、ガウス-ニュートン最新化ほど正確に実際解決値に収束しない。これらの方法は組み合わせることができる。最初にグラジエント最新化を使用して迅速に適合値に収束させてから、識別装置は最終的な適合値を得るためにガウス-ニュートン最新化へ転換する。この組み合わせ法はレーベンバーグ-マルカート最新化として知られている。
【0108】
数学的には、ガウス-ニュートン最新化は以下のように表現される。
R(t) = R(t=1) + γ(t)[φ(t)φT(t) - R(t-1)]
数学的には、グラジエント最新化は以下のように表現される。
両方の等式において、R(t)は識別分類基準のヘッセ行列式、R(t−1)は1つ前の段階での識別分類基準のヘッセ行列式、y(t)は最新化ゲイン(これは忘却因子に関連する)、そしてφ(t)は回帰ベクトルである。
【0109】
最新化ゲインの選択は、多くの帰納的システム識別機能で使用されているもう一つの段階である。最新化ゲインの選択は数学的には以下のように表現される。
γ(t) = (1+λ(t)/γ(t-1))-1
よって、最新化ゲインは忘却因子に関連している。
【0110】
モデル使用順の選択に関しては、帰納的システム識別技術はシステムモデルを入力出力データに適合させる。帰納的手法の前に、そのモデルの構造を決定する必要がある。モデル構造の問題を解決する標準的な方法は、モデル全体の構造を把握してから、どのモデルがデータに最も適合するかを選択する。モデル適合度の簡潔な判定手段は、平均二乗誤差のように、モデル階数を過大評価し、処理または測定ノイズに適合してしまう傾向がある。モデルが過小評価された場合、システムの重要な成分が評価し損なわれる。モデル適合度のいくつかの判定手段または計量法は、モデル階数の範囲全体で評価される。モデル階数とはモデルが使用した項目の数である。適合度を小さくする最小モデル階数がふさわしいモデルである。
【0111】
最小モデル階数を予測するため、最終予測誤差(FPE)、赤池の情報分類(AIC)、最大描写の長さ(AICの変異体である)、および統計学的仮説テスト(t検定など)を含むいくつかの手法が使用可能である。最終予測誤差は数学的に以下のように表現できる。
ここで、Vは二次損失代数、dはモデル階数の大きさ、Nはデータポイントの数である。
赤池情報分類は以下のように表現される。
(12) AIC = log[V(1+2(d/N))],
ここで、Vは二次損失代数である。二次損失代数は追加の用語を使用する追加の費用代数に関係するすべての二次代数である。
【0112】
上述のシステム識別技術は、生の加速度測定から実際圧迫深度を推定することの問題の解決に関係して記載されている。これらの技術はノイズ的な心電図信号の処理にも使用される。図30は、心肺蘇生およびその他のノイズ源からの心電図ノイズの問題を描写しているブロック図である。別の言い方をすれば、図30は論理的な実際心電図信号135およびノイズ源が測定された心電図を生成するためにどのように組み合わせられるかを示す図である(これには不正動作アーチファクトが含まれる)。圧迫による心電図ノイズ136およびその他のノイズ源137からなる心電図ノイズが、システム138として知られている未知の直線または非直線機能により実際心電図と組み合わされる。心電図の主要なノイズ源は圧迫の動作であるが、その他のノイズ源が存在し以下に示す解決策により説明される。システムは不正な心電図139を生成し、もし処理されないならば、患者の心臓の電気的活動を正確に報告するためには使用できない。さらに、システムは、頻度領域の実際心電図に心電図ノイズを重ねる方法で心電図ノイズと実際心電図を組み合わせる。このように、単純なバンドパス・フィルタは不正な心電図を正確に処理するには不十分である。(単純なバンドパス・フィルタは、心電図ノイズを除外するとともに実際心電図の重要な成分を除外する)。
【0113】
図31は、図30に示した問題に対する一般的な解決策のブロック図で、体動による不正な心電図信号を推定の実際心電図信号に変換する過程を描写している。図30のように、システム138は観察者により測定される不正な心電図139を生成するため、実際心電図135および心電図ノイズ136を組み合わせる。次に、測定した心電図139および心電図ノイズ136に関連する基準信号が、システム識別装置140に提供される。例えば、心肺蘇生による動きは心電図ノイズの最大の原因であることから、心肺蘇生による動きに相応の信号はシステム識別装置に提供される。特に圧迫中の力を測定できるように、力トランスデューサは圧迫モニタ(または患者あるいは蘇生実施者)に配置される。力に相応する信号は基準信号としてシステム識別装置に提供される。心肺蘇生による動きに相応するその他の信号は、自動心肺蘇生装置の様々なパラメータからなる。例えば、デバイスシャフトまたはその他のコンポーネントに位置変化に関連する信号は心肺蘇生の動きに関連付けることができ、デバイスの駆動に必要な電流あるいは電圧の変化に関連する信号は心肺蘇生の動きに関連付けることができ、光学式または回転式エンコーダにより生成された信号は心肺蘇生の動きに関連する。
【0114】
システム識別装置はシステムをモデル化し、次いで測定された心電図信号のノイズ成分(推定ノイズ141)を推定する。推定の心電図ノイズ141および測定された心電図139は、続いて信号を組み合わせる手段142に提供され、推定の実際心電図143を生成するために心電図ノイズと測定された心電図を組み合わせる。推定の実際心電図は圧迫中に生成されるため、信号処理技術により圧迫中であっても心電図センサが心臓の正常の洞律動を検出できるようにする。したがって、定期的に圧迫を停止して律動の存在を確認する必要がない。その結果、心肺蘇生の全体的な質が向上し、患者生存の可能性が高まる。
【0115】
システム識別装置140は図29の信号処理法に関連して記載されているものと同じ種類の機能や方法からなる。例えば、図29に関連して記載されている帰納的最小二乗法は、測定された心電図信号のノイズ成分を同定するために使用される。
【0116】
図32〜図35は、胸部圧迫中に心電図を測定するとき、ブタの実際心電図を推定するのに図31の方法を使用することの効果を示している。4つのグラフすべてについて、時間スケール151に伴うそれぞれの時間マーカ150は他の3つのグラフと同じ時間マーカにし、ひとつのグラフを他のグラフと直接比較できるようにする。しかし、図32、34、35の電圧スケール152は互いに少し異なっている。
【0117】
図32は、胸部圧迫によって引き起こされたノイズにより不正となった実際ブタ心電図信号のグラフ(ミリボルト対ミリ秒)である。図32は圧迫中に測定された信号処理されていない心電図である。
【0118】
図33は実際心肺蘇生の動きによる信号の力対時間のグラフである。動きの信号は時間がまちまちの力信号からなり、胸部圧迫の実施中ブタの胸部に置かれた心肺蘇生装置にかかる力に相応する。力のピーク153は圧迫の最大深度に相応する。圧迫モニタの場合、動きの信号は蘇生実施者または自動心肺蘇生装置が胸部圧迫を実施する間、患者胸部にかけられた力に相応する時間がまちまちの力信号よりなり得る。この場合、圧迫モニタ(圧迫モニタの後部など)に配置された力トランスデューサが圧迫の力を測定し、力信号を生成する。力信号は後に心電図ノイズと相応する。力トランスデューサまたはその他の力センサを患者の背中に配置しから圧迫モニタに接続する。
【0119】
図34は、図33に示す胸部圧迫により生じた、推定の心電図ノイズ信号の電圧対時間のグラフである。図33と図34の比較は、時間が様々な圧力信号が心電図ノイズの頻度に直接相応していることを示す。言い換えれば、胸部圧迫で生じた圧力ピーク153は、ノイズピーク154の発生率に相応する。
【0120】
ノイズを発する心電図の推定ノイズ成分を生成するために使用されるシステム識別装置140は、図29に関連して記載されている帰納的最小二乗法よりなる。自動回帰の順序は1と同じになるように選択された。移動平均順序は10となるように選択された。自動回帰の順序は10になるように選択された。派生的順序も0となるように選択された。(派生的順序はシステムモデルの中で用いられている直線あるいは非直線の用語である。特に先端を切ったような陽性派生物または先端を切ったような陰性派生物のどちらかである。非直線の用語は帰納的最小二乗法に適合するアルゴリズムの延長である。)忘却因子λは1.0000となるように選択した。
【0121】
図35は、ブタの推定の実際心電図信号のグラフである。図35のグラフは、図32の測定した心電図信号から図34の推定ノイズ信号を差し引いて作成したものである。推定の実際心電図信号はブタの実際心電図信号に近似している。
【0122】
ノイズ的な心電図信号(図30および図31)に関連して記載されている信号処理方法およびノイズ的な加速度信号(図28および図29)、またベースライン制限装置およびピーク制限装置に関連して記載されている技術は、患者の経胸腔インピーダンス(胸部の電気的抵抗またはインピーダンス)の実際値を推定するのにも使用される。患者の経胸腔インピーダンスの推定の実際値は、患者に徐細動器で電撃を与えるときに必要な電圧を決定するのに使用される。
【0123】
患者に圧迫を加えるときの経胸腔インピーダンスの測定値はノイズとなる。すでに記載した一般的な信号処理の解決法と制限装置は、測定された経胸腔インピーダンスのノイズ成分の特定、分離、除去に使用される。こうして、経胸腔インピーダンスの実際値を推定する。
【0124】
経胸腔インピーダンスの推定の実際値は患者の除細動を行う手段に提供される。患者の除細動を行う手段は、経胸腔インピーダンスの推定の実際値を使用して、患者の効果的な電撃に必要な適切な電圧を決定する。必要な電圧の正確な値はすでに知られているため、徐細動器を効果的に使用することができる(こうしてバッテリの消耗を防ぎデバイスの安全を確保する)。
【0125】
推定の実際心電図および推定の実際経胸腔インピーダンスが分かっているため、AED(自動外部除細動器)を備えた自動心肺蘇生装置は、圧迫を中断することなく患者に除細動電撃を実施することができる。デバイスは推定の実際心電図に基づいて除細動が適切であるときを判断し、推定の実際経胸腔インピーダンスに基づいて適切な除細動電圧を適用する。除細動のとき圧迫が中止されないため、患者の血流は停止しない(患者の生存がより確かなものとなることを意味する)。
【0126】
これらの信号処理技術(胸部深度測定または心電図測定のためのもの)を使用する圧迫モニタは、患者の胸部を圧迫するどのような手段にも応用できる。胸部を圧迫する手段は、手による心肺蘇生、電気刺激、自動心肺蘇生のための手段(モーターまたは手動レバーで操作するベルト、帯、ピストン、プレートなど)、または胸部圧迫のために適切なその他のデバイスからなる。自動心肺蘇生装置の例として、我々の特許(Sherman et al., Modular CPR Assist Device (シャーマンら「モジュラー心肺蘇生補助装置」);米国特許 6,066,106、2000年5月23日)、および我々の出願(CPR Assist Device with Pressure Bladder Feedback 「圧力嚢フィードバック式心肺蘇生補助装置」); 米国出願番号 09/866,377、2001年5月25日提出)がある。(両デバイスは、ベルトの短縮長または圧迫深度を測定するため、圧迫ベルトまたはドライブシャフトまたはスプールに配置した光学式または回転式エンコーダを使用する)。加速度測定器そのものは、圧迫による上下方向の加速度を感知できる部位に配置する。例えば、加速度測定器を圧迫ベルトのような胸部を圧迫する手段の中あるいは上に配置する。(手で圧迫する場合は、蘇生実施者が圧迫を行う間、圧迫モニタを蘇生実施者の手の下に配置することができ、また蘇生実施者の手、手首、腕に配置することができる。)
【0127】
我々の米国特許(6,390,996、Halperin et al.)で示した三軸加速度測定器、三軸荷重センサ、三軸位置変化測定装置、傾きセンサのような加速度測定器の傾きを感知する手段を圧迫モニタに提供すると、圧迫効果に関連して蘇生実施者を誘導することができる。ほとんどの患者にとって、圧迫を胸骨に対して直角に(ほとんどの場合まっすぐ下に向かって)実施すると圧迫は最も効果的になる。傾きセンサが圧迫方向の角度を測定し、特定の角度から外れた場合に角度を調整するため圧迫モニタが蘇生実施者を誘導する。
【0128】
圧迫モニタおよび信号処理装置は操作上徐細動器に接続される。蘇生実施者または装置が圧迫を実施している間、除細動器あるいは圧迫モニタは患者の心電図を追跡する。圧迫モニタの処理装置が患者に電撃を与えたほうが有益といえる心電図信号を測定した場合、除細動電撃を与えるよう、またはAEDに電撃を許可するよう蘇生実施者に指示が与えられる。圧迫中に患者の実際心電図を推定する手段は、米国特許(6,390,996、Halperin et al.)に開示されている我々の方法およびこの出願に開示されている方法からなる。
【0129】
圧迫モニタは換気を行うための手段にも接続される。蘇生実施者が15回など適切な回数の圧迫を実施した後、圧迫モニタは圧迫を一旦停止するよう蘇生実施者に指示を出す。換気を実施する手段は適切な回数だけ換気を行う。換気の後、圧迫モニタは患者の状態を評価する。さらに圧迫が必要な場合は、圧迫モニタは圧迫を再開するよう蘇生実施者に指示を与える。換気を実施する手段は、蘇生実施者、バッグまたはバルーン、陽圧人工呼吸装置、我々の特許(Sherman et al., Chest Compression Device with Electro-Stimulation 「電気刺激による胸部圧迫装置」、米国特許6,213,960、2001年4月10日)に示した電気式呼吸装置、その他の換気を実施する手段からなる。
【0130】
圧迫モニタにはさらに、圧迫モニタが遠隔ネットワークと交信できるようにする通信手段が設けられてもよい。通信手段は、信号伝達装置と圧迫モニタ通信装置からなる。信号伝達体は電話回線、直通ケーブル、専用デジタルネットワーク、携帯電話ネットワーク、衛星通信アレイ、ラジオ、その他の電磁波、LED、インターネット、信号を伝達するその他の手段からなる。圧迫モニタ通信装置は、ラジオまたはその他の電磁波送信装置および受信装置、LED、モデム、信号伝達体を送り出す装置と受ける装置からなる。通信手段は圧迫モニタが遠隔ネットワークから情報をアップロードあるいはダウンロードできるようにする。圧迫モニタには、グローバルポジショニングシステムリーダ(GPSリーダ)、スピーカ、キーパッド、電話、モデム、マイクロフォン、カメラ、視覚ディスプレイを装備し、ユーザが情報を受けたり入力したりできるようにする。データはブルーツース標準のような既知の通信標準を使って通信のための手段で交換することができる。
【0131】
遠隔ネットワークは、その他の情報を圧迫モニタに提供し、圧迫モニタから情報を受信することができる。例えば、現在およびその後の緊急事態の中で圧迫モニタを追加の波形、患者の治療歴、換気率、その他の圧迫関連情報で最新化することができる。一群のモニタを1つのネットワークで使用している場合、遠隔ネットワークから各圧迫モニタを別々に追跡し、別々の情報を提供することができる(確証されている場合に限る)。遠隔ネットワークそのものは、1つまたは複数のコンピュータ、インターネット、別の心肺蘇生関連装置、また圧迫モニタを遠隔からプログラムできるあるいは蘇生実施者に指示を与えることができる操作者からなる。
【0132】
使用中、圧迫モニタはショッピングモールや公共の場所などの現場で提供され、必要になるまで保管される。一旦作動されたら、圧迫モニタは緊急電話センタのコンピュータである遠隔ネットワークとの間に通信ラインを確立する。警察、消防署、救急車サービスなどの緊急電話に応答する部署は、活性化を感知しGPSリーダによりピンポイントで現場への経路を指示するか、圧迫モニタを活性化させた人に連絡を取る。遠隔ネットワークのコンピュータおよびコンピュータの使用訓練を受けた人が、圧迫モニタからのリアルタイムの血流データをモニタしながら蘇生実施者に音声で指示を与えることができる。操作者またはコンピュータは、圧迫モニタまたは蘇生実施者に別の情報を時間を追って提供する。例えば、圧迫モニタは蘇生実施者に指示を出すべき圧迫波形に関するデータを提供され、操作者は声で蘇生実施者を指導することができる。それに変わって、圧迫モニタは医療分析のために、圧迫深度、割合、力、波形、デューティサイクルなどのデータを操作者およびコンピュータに提供する。蘇生実施者が疲れてきた場合、操作者は蘇生実施者が蘇生を実施し易くなるよう代わりの波形を提供することができる。同様に、操作者は蘇生実施者に声で激励することができる。
【0133】
通信手段の別の用法は、圧迫モニタの自動または誘導式メンテナンスを可能にすることである。定期的にまたは持続的に圧迫モニタは遠隔ネットワークと交信し、バッテリの寿命と状態、使用回数、パーツの交換の必要性、その他のメンテナンスに関係する情報などのデータを送信する。応答として、圧迫モニタはソフトウェアの更新などのメンテナンスを自動的に実施するか、またはユーザにメンテナンスを実施するよう誘導する。通信手段の別の用法は、圧迫モニタが緊急応答の間に使用されたその他の製品と交信できるようにすることである。そのような製品の例には、上記の製品、薬物ディスペンサ、緊急事態に応答するための有用なその他の製品が含まれる。
【0134】
製品を組み合わせての使用例では、蘇生実施者が圧迫モニタを用いた手による蘇生を開始することから始まる。救急医療の人員は現場に到着したら、AEDを装備した自動胸部圧迫装置を展開する。自動胸部圧迫装置は圧迫モニタと情報を交換するようになっている。自動胸部圧迫装置を展開した後、圧迫モニタは自動的に胸部圧迫装置と通信を交わし、圧迫下の時間、理想的な波形と比較したときの圧迫の質、心電図歴、その他の関連する医療データなどの治療歴をそれに送付する。圧迫モニタから与えられた情報に基づいて、自動胸部圧迫装置は圧迫を開始する前に除細動電撃を患者に提供することがある。逆に、自動胸部圧迫装置は転送されたデータに基づいて、胸部圧迫が電撃を与える前まで継続する必要があることを決定する。
【0135】
製品を組み合わせた別の例には、圧迫モニタおよび分離信号処理装置がある。信号処理装置は、1つまたは複数のフィジカルクリップ(ハードウェア)コンピュータプログラム(ソフトウェア)として提供される。どちらの場合も、信号処理装置は別々のユニットまたはモジュールにして、モニタに直接内蔵させる必要はない。したがって、信号処理ユニットは独立した製品として提供される。このように、この装置と方法の望ましい実施形態は開発の土台となった状況に関連して記載してきたが、これはこの発明の基本的な概要を単に説明したものである。この発明の精神および添付の特許請求の範囲から離れることなく、その他の実施形態および構成が工夫されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】図1は、患者および患者に取り付けられた加速度測定器の圧迫モニタを示している。
【図2】図2は、一期間の信号処理前の圧迫深度のグラフを示す。ここで圧迫深度は加速度測定値から導き出されている。
【図3】図3は、一期間の信号処理前の圧迫速度のグラフを示す。ここで圧迫速度は加速度測定値から導き出されている。
【図4】図4は、一期間の信号処理前の圧迫加速度のグラフを示す。ここで圧迫加速度は加速度測定器によって測定されている。
【図5】図5は、生の圧迫加速度を推定の実際圧迫深度に変換する信号処理技術のフローチャートである。
【図6】図6は、生の圧迫加速度を推定の実際圧迫深度に変換する別の信号処理技術のフローチャートである。
【図7】図7は、生の加速度をフィルタにかけた後の一期間の圧迫深度のグラフを示す。
【図8】図8は、生の加速度をフィルタにかけた後の一期間の圧迫速度のグラフを示す。
【図9】図9は、生の加速度をフィルタにかけた後の一期間の圧迫加速度のグラフを示す。
【図10】図10は、生の加速度と導き出された速度の両方をフィルタにかけた後の一期間の圧迫深度のグラフを示す。
【図11】図11は、生の加速度と導き出された速度の両方をフィルタにかけた後の一期間の圧迫速度のグラフを示す。
【図12】図12は、生の加速度をフィルタにかけた後の一期間の圧迫加速度のグラフを示す。
【図13】図13は、生の加速度と導き出された速度の両方をフィルタにかけ、ベースライン制限装置を圧迫深度の波形に適用した後の一期間の圧迫深度のグラフを示す。
【図14】図14は、生の加速度と導き出された速度の両方をフィルタにかけ、ベースライン制限装置を圧迫速度の波形に適用した後の一期間の圧迫速度のグラフを示す。
【図15】図15は、生の加速度をフィルタにかけ、ベースライン制限装置を圧迫加速度の波形に適用した後の一期間の圧迫加速度のグラフを示す。
【図16】図16は、生の加速度と導き出された速度の両方をフィルタにかけ、ベースライン制限装置およびピーク制限装置を圧迫深度の波形に適用した後の一期間の圧迫深度のグラフを示す。
【図17】図17は、生の加速度と導き出された速度の両方をフィルタにかけ、ベースライン制限装置およびピーク制限装置を圧迫速度の波形に適用した後の一期間の圧迫速度のグラフを示す。
【図18】図18は、生の加速度をフィルタにかけ、ベースライン制限装置およびピーク制限装置を圧迫加速度の波形に適用した後の一期間の圧迫加速度のグラフを示す。
【図19】図19は、加速度測定器が加速度測定をいつ開始するかをコントロールするスイッチをオンにするのに心電図ノイズの変化を使用する信号処理技術のフローチャートである。
【図20】図20は、報告された圧迫深度波形に陰性ドリフトを伴う、一期間の信号処理前の圧迫深度のグラフを示す。
【図21】図21は、報告された圧迫速度波形に陰性ドリフトを伴う、一期間の信号処理前の圧迫速度のグラフを示す。
【図22】図22は、報告された圧迫加速度波形に陰性ドリフトを伴う、一期間の信号処理前の圧迫加速度のグラフを示す。
【図23】図23は、実際開始点を確立するために心電図ノイズの変化を利用して修正された図のグラフを示す。
【図24】図24は、実際開始点を確立するために心電図ノイズの変化を利用して修正された図のグラフを示す。
【図25】図25は、実際開始点を確立するために心電図ノイズの変化を利用して修正された図のグラフを示す。
【図26】図26は、患者に取り付けた加速度測定器に基づく圧迫モニタおよび基準加速度測定器、スイッチ、胸部圧迫に関するさまざまなパラメータを測定するように配置されたいくつかの荷重センサからなる基準センサのシステムを示す。
【図27】図27は、ユーザフィードバック装置が蘇生実施者へ圧迫実施のための先導となる圧迫波形を描いている。
【図28】図28は、実際胸部圧迫加速度が胸部位置の不正な値にどのように変換されるかを示すブロック図である。
【図29】図29は、不正な胸部圧迫加速度を胸部圧迫の推定の実際深度に変換するための一般的な解決のブロック図である。
【図30】図30は、実際心電図信号が不正な心電図信号にどのように変換されるかを示すブロック図である。
【図31】図31は、動きにより不正となった心電図信号を推定の実際心電図信号に変換するための一般的な解決のブロック図である。
【図32】図32は、胸部圧迫によって引き起こされたノイズにより不正となったブタ心電図信号のグラフである。
【図33】図33は、心肺蘇生をブタに施行したときの、心肺蘇生の動作のグラフである。
【図34】図34は、ブタの推定心電図ノイズ信号のグラフである。
【図35】図35は、ブタの推定の実際心電図信号のグラフである。
【符号の説明】
【0137】
1…患者
2…圧迫モニタ
3…胸骨
4…プロセッサ
5…位置変化ディスプレイ
7…心電図ディスプレイ
34…生の加速度信号
35…フィルタ
36…統合
37…フィルタ
38…統合
39,47,48…ベースライン制限装置
51…フィルタ
52…開始点検出器
55,56,57…ピーク制限装置
58…フィルタ
59…ピーク検出器
61…推定の実際深度
62…ユーザフィードバック
【技術分野】
【0001】
本発明の方法と装置は、心肺蘇生(CPR)の分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
心肺蘇生(CPR)の正しい適用に関するアメリカ心臓協会のガイドラインでは、胸部圧迫は1分間に80〜100回の割合で脊椎に対し深さ1.5〜2.0インチ(約3.8〜5.1 cm)で実施するよう規定されている(心肺蘇生および救急心血管系医療のための2000年ガイドライン、102 循環補遺I(2000))。しかし、心肺蘇生は訓練を受けた専門家にとっても身体的、感情的に挑戦となるものである。研究によれば、人の手による胸部圧迫がガイドラインを満たすことはまれであることが分かっている。例えば、オチョアら(Ochoa et al.)の「The Effect of Rescuer Fatigue on the Quality of Chest Compressions (蘇生実施者の疲労が胸部圧迫の質に及ぼす影響)」(Resuscitation, vol. 37, p.149-52)を参照されたい。またハイタワーら(Hightower et al.)の「Decay in Quality of Closed-Chest Compressions over Time(閉鎖式胸部圧迫の経時的な質の低下)」(Ann Emerg Med, 26(3):300-333, Sept. 1995)を参照されたい。正しい胸部圧迫を実施するのが困難な理由のひとつは、蘇生実施者が胸部圧迫のタイミングや深度を的確に知ることができないことで、とくにこれは実施者が疲れてくると顕著になる。したがって、患者からの情報が適宜正確に得られるならば、蘇生実施者はより的確に心肺蘇生を行うことができると考えられる。
【0003】
心肺蘇生を正しく実施できるよう蘇生実施者を補助するための様々な装置が考案されてきた。例えば、ケリー(Kelley)は「Apparatus for Assisting in the Application of Cardiopulmonary Resuscitation(心肺蘇生のための補助装置)」(米国特許 5,496,257、1996年3月5日)にて、胸部を圧迫する力とタイミングをモニタする圧センサを使用した装置を発表している。グレンクら(Groenke et al.)は「AED with Force Sensor(加圧センサ付きAED)」(米国特許 6,125,299、2000年9月26日)にて、患者の胸部を圧迫している力を測定する加圧センサを使用した装置を発表している。しかし、これらの装置は胸部にかかっている圧力のみを測定し、圧迫された実際深度は測定しない。ある圧力を加えると患者によって胸部の圧迫される深さは異なるはずであり、圧力だけを測定するのでは蘇生実施者に十分なあるいは一貫した情報を提供することはできない。さらに、患者によって胸部の形態や柔軟性が異なることから、圧力の測定が不正確になることもある。
【0004】
ハルペリンら(Halperin et al.)の「CPR Chest Compression Monitor(心肺蘇生胸部圧迫モニタ)」(米国特許 6,390,996、2002年5月21日)に示されている我々の特許を得た装置以外の加速度測定器のみにより圧迫深度を測定する心肺蘇生装置は、加速度の測定間違いに十分にあるいは正確に対応することはなく、また圧迫開始点のドリフトに対応することもない。さらに、加速度の測定にエラーがあれば、圧迫深度を導き出すのに必要な統合処理でエラーが増幅されてしまう。
【0005】
圧迫深度は1.5〜2.0インチ(3.8〜5.1 cm)の比較的狭い範囲でなければならないため、測定した加速度のエラーを修正することは重要である。数値的なシミュレーションでは、加速度の0.02インチ(0.5 mm)/秒2という小さな総エラーが0.25インチ(6 mm)の深度のエラーになることが示されている。圧迫深度の最適範囲を狭く設定すると0.25インチ(6 mm)のエラーは許容できない。例えば、フリーマン(Freeman)の「Integrated Resuscitation(統合的な蘇生法)」(米国刊行物 2001/0047140、2001年11月29日)は、圧迫センサとして加速度測定器を使用する装置を示し、加速度測定器による胸部深度測定法について述べている。しかし、フリーマンは加速度測定器だけを使った場合の宿命的なエラーに対応できる方法はないとしている。したがってフリーマンは、胸部圧迫深度の測定は不正確になるとしている。
【0006】
ミクルバーストら(Myklebust et al.)の「System for Measuring and Using Parameters During Chest Compression in a Life-Saving Situation or a Practice Situation and Also Application Thereof(救命現場および練習現場における胸部圧迫中のパラメータの測定と使用のためのシステムおよびその応用)」(米国特許 6,306,107、2001年10月23日)は、胸部陥凹の深さを決定するために、加速度測定器および圧力によりオンとなるスイッチを含んだ圧力パッドを使用した装置を記載している。しかし、ミクルバーストらは加速度測定器のみにより圧迫深度を測定する方法については述べていないばかりか、胸部圧迫深度の測定値におけるある種のエラー(ドリフトなど)についても説明していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の装置の宿命的な問題は、加速度測定器のみの使用で胸部圧迫深度の問題を解決するのが困難なことを示している。そうではあるが、加速度の測定により位置の変化を決定できるという基本的な考え方は、分かり易いものである(開始位置が分かっているシステムの場合)。位置の変化は、加速度の測定値を2回統合することにより決定される。
【0008】
しかし、胸部の圧迫深度を測定するこの方法には少なくとも3つの主要なエラー発生源があり複雑である。すなわち、信号のエラー、外部加速度のエラー、最初の圧迫開始点からの実際あるいは測定した圧迫開始点のドリフトである。信号のエラーは、電気的ノイズやワイヤあるいはケーブルの揺れによる加速度測定エラー、加速度測定器に内在する宿命的なエラー、加速そのものに存在するその他のノイズ発生源からなる。
【0009】
外部加速度エラーには、心肺蘇生による加速度以外の原因で患者ならびに加速度測定器にかかる加速度によるエラーがある。例えば、救急車で搬送中の患者に蘇生実施者が圧迫モニタを用いながら手で心肺蘇生を行う場合、加速度測定器は心肺蘇生の加速度と共に道路からの振動を感知する。(救急車が道路の穴に車輪を落とすと、圧迫波形に大きなスパイクが現れる。)加速度測定器そのものも、道路からの振動と圧迫による加速度を区別することはできない。言い換えれば、加速測定器は総合的な加速度を測定するのであり、圧迫による加速度のみを測定するわけではない。したがって、圧迫モニタは実際胸部位置変化とは異なる変位を報告することになる。
【0010】
その他のエラー発生源であるドリフトは、一連の圧迫全体における各圧迫の実際あるいは報告される圧迫開始点の総合的な移動である。加速度測定器は最初の開始位置を記憶していない。そのため、蘇生実施者が圧迫を加えるにつれ、現れる深度波形はドリフトしてゆくことがある。圧迫モニタは、報告される深度波形が実際波形よりも徐々に深くなってゆくことを示すことになる。このようなドリフト様式は陽性ドリフトと呼ばれている。一方、ドリフトにより圧迫モニタが実際波形よりも徐々に浅くなってゆく深度波形を報告するようになることもある。言い換えれば、実際圧迫開始点は徐々に深くなるのに、圧迫モニタは開始点が最初の開始点とほとんど変わらないと報告することがある。このようなドリフト様式は陰性ドリフトと呼ばれている。
【0011】
陰性ドリフトの原因のひとつに、胸部が完全にリラックスした位置に戻るのが妨げられている場合がある。修正することなく、加速度測定器は新しい「初期」の位置に基づいて位置の変化を測定し始める。こうして圧迫モニタは蘇生実施者に、現在の開始点が最初の開始点と同じであるという間違った情報を伝える。しかし、現在の開始点の実際深度は圧迫モニタが報告している深度より深いのである。その結果、蘇生実施者は圧迫モニタが示す間違った深度を達成しようと、行うべき圧迫よりも強く胸部を圧迫することになる。
【0012】
両方のタイプのドリフトを引き起こすもうひとつの原因に、加速度測定器の患者に対する総合的な位置の変化がある。例えば、加速度測定器がしっかり固定されていないと全体の位置がずれる。(これは外部加速度エラーの原因となる。)またその他のドリフトの原因に、圧迫と同時に行われる換気による胸部の拡張と縮小がある。その他にもドリフトの原因はあると思われる。各原因は互いに無関係で、互いが相殺することはなく、圧迫モニタは陽性および陰性ドリフトの両方を説明できなければならない。
【0013】
間違った運用によるドリフトにもかかわらず、実際圧迫開始点の変化が起こる。例えば、心肺蘇生中に1本か複数の肋骨が折れると、各回の実際圧迫開始点が脊柱に近づくことがある(胸部リモデリングとして知られている現象)。胸郭の構造や強度に影響するその他の種類の胸部傷害あるいは疾患も、胸部リモデリングを起こし得る。胸部リモデリングは徐々に起こり、圧迫の実際初期開始点が次第にドリフトする。圧迫モニタは、圧迫開始点のエラー的なドリフトと実際移動の違いを区別できなければならない。
【0014】
これらのエラーやその他のエラーの加速度が統合されてまとめられる。信号のノイズやドリフトによるエラーは、統合定数をゼロ以外の値にする。ゼロではない定数は、加速度にすでに存在するエラーを大きくする。このように、圧迫モニタが報告する総合的な圧迫深度は極めて不正確となり得る。したがって、加速度の測定値から胸部圧迫の深度を正確かつ精密に導き出す方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
以下に記す方法と装置は、胸部圧迫の加速度測定値から胸部圧迫の深度を精密かつ正確に導き出すための信号処理技術に関するものである。とくに、以下に示す方法と装置は、信号エラー、外部加速度エラー、ドリフトにより生じる胸部位置変化のエラーを修正するための手段に関するものである。ひとつの方法によれば、移動平均技術が圧迫深度を正確に測定するために使用される。2つ目の方法によれば、患者の心電図の変化を圧迫開始点の決定に使用することができる。胸部深度測定の正確さを一層増すためにこれらの方法を組み合わせることができる。
【0016】
広い意味で移動平均技術は複数の圧迫サイクルをまとめて平均化するが、時間が経った圧迫動作よりも新しい圧迫動作に重きを置いている。移動平均技術のひとつは、できるだけ多くのノイズを除去するために生の加速度信号にフィルタをかけることから始める。次いで圧迫速度を導き出すためにフィルタをかけた加速度信号を統合する。累積した低周波成分を除去するために速度をフィルタにかける。胸部の位置変化を導き出すためにフィルタがかけられた速度測定値を統合する。胸部の位置変化は次いでベースライン制限装置およびピーク制限装置を通して処理される。ベースライン制限装置は移動平均プロセッサから、ピーク制限装置は移動平均プロセッサから構成される。ベースライン制限装置は現在の圧迫の実際開始点を、ピーク制限装置は現在の圧迫の実際ピーク深度を推定する。ベースライン検出装置は次いで現在の圧迫の開始点を特定する。ピーク検出装置は次いで現在の圧迫のピーク深度を特定する。信号を統合するための方法は、現在の圧迫の推定の実際深度を導き出すために、推定開始点および推定ピーク深度を組み合わせる。最後に、現在の圧迫の推定の実際深度は手での蘇生実施者、自動心肺蘇生装置、あるいは心電図操作者に知的な情報を提供する1つまたは複数の装置に提供される。
【0017】
別の方法では、患者心電図のノイズ成分の変化を胸部圧迫の開始に関連づける。患者心電図の信号ノイズ成分が事前に設定された閾値を越えたとき、加速度測定器が加速度を測定し始める。こうして現在の圧迫の実際開始点が確立される。この方法はある種の外部加速度エラーを減少させるとともに、ドリフトを減少させた。この方法はまた、統合定数をゼロに設定するのを助ける。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、患者1および患者に取り付けられた加速度測定器の圧迫モニタ2を示している。加速度測定器による圧迫モニタは、圧迫深度を決定するために1つまたは複数の加速度測定器を使用する。加速度測定器による圧迫モニタの例は、我々の特許であるHalperin et al., CPR Chest Compression Monitor(心肺蘇生胸部圧迫モニタ)、米国特許6,390,996、2002年5月21日に見られる。参考のためそのままここに転載する。圧迫モニタ2を患者1の胸骨3の上、蘇生実施者の手か腕、または、自動心肺蘇生装置の上に配置する。そして胸部を圧迫する。加速度測定器は圧迫の加速度を測定し、プロセッサ4は加速度測定値に基づいて加速度測定器の実際位置変化を推定する。以下に示す信号処理技術は、推定の実際位置変化が正確で精密であることを確証する。
【0019】
推定の実際位置変化が位置変化ディスプレイ5に表示され、手での蘇生実施者や自動心肺蘇生装置に分かり易いフィードバック情報を提供する。同様に、他の心肺蘇生関連パラメータが1つまたは複数の圧迫装置のディスプレイに提供される(または別の手段で使用者にフィードバックされる)。心肺蘇生関連パラメータには、胸部圧迫深度、胸部圧迫速度、胸部圧迫加速度、および、患者心電図がある。
【0020】
患者心電図の場合、1つまたは複数の電極から圧迫モニタに情報が提供される。胸部圧迫中、プロセッサは患者心電図を処理して推定の実際心電図を作成する。その後、推定の実際心電図は心電図ディスプレイ7(またはその他のフィードバック手段)に提供され、手での蘇生実施者、自動心肺蘇生装置、あるいは患者の心電図をモニタしているその他の人や装置に分かり易いフィードバック情報を提供する。
【0021】
明細書の中で用いられている用語の定義を以下に記す。
実際圧迫深度:ある瞬間の実際の圧迫深度。
実際圧迫開始点:胸部圧迫が開始された実際の位置または点。
自動回帰移動平均:過去のデータサンプルを現在のデータサンプルの修正に使用する機能。
圧迫深度波形のベースライン位置:深度波形の実際開始点が最も多く集まっている位置。
ベースライン制限装置:圧迫深度波形のベースラインの位置で作動するプロセッサまたは機能。
圧迫ピーク:圧迫深度が最大になる位置または点。
現在の圧迫深度:ある瞬間の圧迫深度。
現在の開始点:現在の圧迫の開始点。
圧迫深度:圧迫された胸部のある瞬間の深度で、リラックスした胸部位置からの相対的な深さ。
推定の実際圧迫開始点:胸部圧迫が開始された実際位置または点の推定値。
圧迫の初期開始点:一連の胸部圧迫が開始された位置または点。
測定された圧迫開始点:胸部圧迫が開始された位置または点の測定値。
移動平均:過去のデータサンプルを現在のデータサンプルの修正に使用する機能。
過去の開始点:すでに観測された圧迫開始点。
圧迫深度波形のピーク位置:深度波形の実際ピーク位置が最も多く集まっている位置。
圧迫開始点:胸部圧迫が開始された位置または点。
【0022】
図2〜図4は、4つの仮説的圧迫の一期間の圧迫深度、速度、加速度のグラフを示している。図2〜図4に示されている波形のどれにも信号の処理は施されていない。図2の圧迫深度は陽性値―数値が大きいほど胸部は深く圧迫されている―として示されている。点線の波形12は圧迫深度、速度、加速度の実際波形を表している(加速度測定器にてそれぞれ独立して測定)。実線の波形13は圧迫モニタ加速度測定器にて測定された加速度から導き出された波形を表している。波形13はまた、圧迫モニタによって信号処理システム4に報告された波形である。圧迫深度は1インチ(2.5 cm)間隔でマークされたインチ単位で測定され、圧迫速度は1インチ/秒間隔でマークされた秒当たりのインチ(in/s)単位で測定され、圧迫加速度は1インチ/秒2間隔でマークされた秒2当たりのインチ(in/s2)単位で測定されている。3つの図すべてで、時間は1秒間隔でマークされた秒単位で測定されている。圧迫の開始は時間ゼロの時点である。圧迫の初期深度は深度ゼロの点である。
【0023】
点線14,15は3つのグラフすべてで交差している。点線14は最大圧迫深度が得られた時点に対応している。点線15は最小圧迫深度が得られた時点に対応している。さらに、点線14は圧迫深度最大16が圧迫速度ゼロに対応していることを示している。点線14はまた、加速度最大17が最大圧迫深度から少し外れていることを示している。同様に、点線15は圧迫最大18(または開始点またはゼロ点)が、圧迫速度ゼロに対応していることを示している。点線15はまた、加速度最小19が圧迫深度最小18から少し外れていることを示している。圧迫速度最大20および最小21は圧迫の中間点付近で認められる。
【0024】
実線の波形は3つの主要な種類のエラーである信号エラー、外部加速度エラー、ドリフトを示している。信号エラーは、主に実線の波形の「ノイズ」(粗さ)に現れるが、外部加速度エラーも「ノイズ」となって現れることがある。加速度波形がノイズとしては小さくても、加速度全体には速度波形のノイズを大きくする作用がある。速度波形全体はやはりノイズの影響を大きくする。このように、図2の圧迫深度ノイズは図2の圧迫速度ノイズよりも大きくなり、したがって図4の圧迫加速度ノイズよりも大きくなる。すなわち、圧迫モニタは非常にノイズの多い圧迫深度波形を報告することになる。
【0025】
外部加速度エラーは図2〜図4の実線の波形に主に大きな陽性スパイク22で現れる。(図2〜図4のスパイクは最大時に発生しているが、スパイクは圧迫サイクルのどこにでも発生し、加速度測定値に陽性にあるいは陰性に影響する)。スパイクは圧迫に関係のない大きな加速度で発生するが、加速度測定器で測定されてしまう。したがって、3つの図すべての実際波形は、対応するピーク23がスパイク22よりもはるかに小さくなっている。すなわち、ここに示す修正をしなければ、圧迫モニタはその圧迫サイクルにおいて圧迫深度が実際圧迫深度よりもはるかに大きいものとして報告してしまう。
【0026】
ドリフトは主に、図2〜図4の矢印24,25で示されている実際の波形と報告された波形のそれぞれの最小値間の距離の増加で現れる。ドリフトは圧迫モニタが圧迫波形を誤って徐々に深くなっている(陽性ドリフト)と報告する原因となる。しかし、実際波形は最初の開始点付近に戻っていることから、図2〜図4に示すドリフトは陽性ドリフトとされる。同様に、図3と図4の矢印24,25は、報告された速度および報告された加速度に徐々に大きく影響することを示す。このドリフトの影響は、最初の圧迫開始点をすべての圧迫の信頼できる開始点として使用できないことを意味している。したがって、圧迫開始点は圧迫サイクルごとに決定しなければならない。さらに、その他のノイズ発生源を取り除くか十分小さくする必要がある。
【0027】
図5は、生の加速度を総圧迫深度の推定の実際値に変換する信号処理技術のフローチャートである。生の加速度34は、フィルタ処理済み加速度に変えるためステップ35の第1のフィルタでフィルタ処理される。第1のフィルタは高パス・フィルタからなり、ほとんどの形態の信号ノイズを大きく減少させる。(別の実施形態では、最初のフィルタをバンド・パス・フィルタ、移動平均フィルタ、無限インパルス・フィルタ、自動回帰フィルタ、自動回帰移動平均フィルタにすることができる)。図5に示すその他のステップの効果については図7〜図18との関連において記載する。
【0028】
図6は、生の圧迫加速度を推定の実際圧迫深度に変換する別の信号処理技術のフローチャートである。このフローチャートについては図7〜図18の説明の後に解説する。
【0029】
フィルタ処理35の効果は図7〜図9に認められる。ここで、第1のフィルタステップ35の後の4つの仮定の圧迫について一期間の圧迫深度、速度、加速度を示している。(図7〜図9は第1のフィルタステップの出力を示す)。図9の測定された加速度波形13は、図4のフィルタ処理されていない対応する波形13よりもノイズがはるかに少ない。図8と図9の速度波形および深度波形は、ノイズの少ない加速度波形から導き出されている。それにもかかわらず、統合処理では速度波形が加速度波形よりもノイズが大きくなり、深度波形が速度波形よりもノイズが大きくなる。さらに、外部加速度スパイク22は、(矢印24,25で示すように)変動により生じたエラーのようにまだ残っている。
【0030】
図5に戻って、フィルタ処理された加速度は最初の統合ステップ36で統合され、圧迫速度が導き出される。しかし、図8に示すように、さらにフィルタ処理をしないと速度波形にはまだノイズが残る。このように速度は、フィルタ済み速度に変えるため2番目のフィルタステップ37でフィルタ処理される。2番目のフィルタは高パス・フィルタからなり、速度波形および深度波形のほとんどの信号ノイズをさらに減少させる。(別の実施形態では、2番目のフィルタをバンド・パス・フィルタ、移動平均フィルタ、無限インパルス・フィルタ、自動回帰フィルタ、自動回帰移動平均フィルタにすることができる)。
【0031】
フィルタ処理37の効果は図10〜図12に認められる。ここで、2番目のフィルタステップ37の後の4つの仮定の圧迫について一期間の圧迫深度、速度、加速度を示している。(図10〜図12は2番目のフィルタステップ37の出力を示す)。図11の測定された速度波形13は図8の波形よりノイズが少ない。(最初のフィルタステップ後の速度波形)。深度波形は速度波形から導き出されているため、同様にノイズが少ない。それにもかかわらず、統合処理では加速度波形や速度波形よりも深度波形に少しノイズが多くなる。さらに、外部加速度スパイク22は、(矢印24,25で示すように)ドリフトにより生じたエラーのようにまだ残っている。
【0032】
図5に戻って、フィルタ処理された速度は2番目の統合ステップ38で統合され、胸部圧迫深度が計算される。信号ノイズは相当除去され3番目のフィルタステップは不要である。しかし、図10に示すように、深度波形のノイズは図11の速度波形のノイズよりまだ少し多い。したがって、別の実施形態では、深度波形のノイズをさらに減少させるために高パス・フィルタ、バンド・パス・フィルタ、その他からなる3番目のフィルタを使用することができる。
【0033】
最初のフィルタステップ(35と37)と統合ステップ(36と38)の後、ベースライン制限装置はステップ39の実際圧迫開始点を推定する。ベースライン制限装置は現在の圧迫開始点を推定するために、以下に記載する他の技術と共に、過去の圧迫における開始点を使用する。ベースライン制限装置そのものは、図10の圧迫深度波形のベースライン部分に基づいて作動するデジタルまたはアナログ信号プロセッサからなる。圧迫深度波形のベースライン部分は、実際開始点が最も多く集まっている位置の深度波形の部分から形成される。例えば、ベースラインは圧迫深度に等しい深度波形と1.1インチ(2.79 cm)低い深度波形の部分を形成する(圧迫の開始時点の大きな変化はまれで大きな変化を示す信号は恐らく異常である)。このように、制限装置は無視するか、あるいは現実的な深度値をその深度の1.1インチ上方に「開始点」を暫定的に割り当てる。1つの実施形態では、ベースラインより上方の過去の開始点を無視して、ベースラインより上方の現在の開始点を報告するか、エラーとして処理する。(過去の開始点はすでに観測された圧迫開始点のことである。現在の開始点とは現在の圧迫の開始点である。)別の実施形態では、ベースラインより上方の現在の開始点はまれなものとし、過去の開始点を平均化することができる。
【0034】
別の実施形態では、ベースライン制限装置が、すべての開始点が深度波形のベースライン部分内に収まるように全開始点を移動平均して現在の圧迫の開始点を推定するようにする。移動平均とは、過去のデータサンプルを現在のデータサンプルの修正に使用する機能である。(その他の移動平均技術を以下に記す。)ベースライン制限装置の場合、ベースライン制限装置が過去の開始点より最近の開始点に重きを置く、すなわち時間の経過とともに開始点の重要度が低下するようにできる。深度波形のベースライン部分に入らない開始点には軽い重さを与えるか、または重さを与えない。すべての開始点に移動平均を適用することにより、ベースライン制限装置は外部加速度エラーやドリフトが現在の開始点に影響しないようにすることができる。言い換えれば、すべての開始点の移動平均は統計学的に、加速度の組み入れから導き出された現在の測定開始点よりも現在の実際開始点により近いことになる。
【0035】
以下は移動平均法の実施形態の一つの例である。この実施形態では、各圧迫開始点は1つ前の圧迫開始点に1.25%加算した重さ(重要度)にする。別の実施形態では、約0.1%から約12.5%の範囲(約1分後にはデータの重みが0.3%から90%の範囲になる)で重みをつけることができる。言い換えれば、現在の開始点の測定値(開始点1)は重みが100%、前回の開始点(開始点2)が重み98.75%、そのひとつ前の開始点(開始点3)が重み97.5%、そのひとつ前の開始点(開始点4)が重み96.25%、以後同様にすべての開始点に重みを付ける。最終的に遠い過去の圧迫には重みが全く加えられない。そして加重化された全開始点の深度を平均する。全開始点の加重平均を現在の開始点とし、また報告する。
【0036】
別の実施形態では、事前に設定された特定の時間(例えば約1分から約15分)後のすべての圧迫を無視する。こうして、過去1〜15分内の圧迫のみを平均する。別の実施形態では、事前に設定された特定の圧迫回数(例えば約5回から約15回)後のすべての圧迫を無視する。
【0037】
さらに例を挙げると、1つの実施形態では、開始点1の測定値= 0.5インチ、開始点2の測定値= 1.1インチ(2.79 cm)、開始点3の測定値= 4.0インチ、開始点4の測定値= 0.9インチであったとする。開始点3は深度波形のベースライン部分の範囲外(ベースライン部分は1.1インチでこの例ではその下である)である。この例でベースライン範囲外の開始点を無視することから、開始点3は無視される。このように、現在の開始点は以下のように報告される。
[(0.5*100%)+(1.1*98.75%)+(0.9*96.25%)] ÷ 3 = 0.853 インチ、
初期開始点に対する相対位置。
【0038】
開始点3を移動平均の計算に含めると、現在の開始点は以下のように報告される。
[(0.5*100%)+(1.1*98.75%)+(4.0*97.5%)+(0.9*96.25%)] ÷ 4 = 0.853 インチ、
初期開始点に対する相対位置。
別の言い方をすれば、この値は現在の圧迫の推定の実際開始点である。
【0039】
数学的には、現在の開始点の報告値は以下のように表現される。
ここで DBi > B の場合、DBi = 0
ここで、Dsは現在の開始点の深度、nrはベースラインを超えている開始点すべてを削除した後に残っている開始点の数、iは開始点の数(または加算指数)、DBiはith 番目の開始点の測定深度、ωは重み定数、Bはベースラインである。別の言い方をすれば、DBi*ωi-1 をiが1からnrまで加算し、その加算値をnrで割る。DBiがBより大きい場合、そのDBiはゼロとする。
【0040】
ベースライン制限装置は、現在の開始点の推定深度の正確度と精密度をさらに向上させるため別の機能を発揮することもできる。例えば、現在の開始点とそのすぐ前の開始点の間の変化を確率で表すことができる。(同様に、現在の開始点と以前の開始点すべての移動平均の間の変化を確率で表すことができる。)大きな変化をした開始点の重みを、小さな変化の重みより小さくすることができる。この方法は「加重移動平均」法と呼ばれる。
【0041】
上記の例を続けると、測定深度1は発生確率100%を持っているとみなす。そして、現在の開始点(深度1)と前回の開始点(深度2)の間の差は、1.1 - 0.5 = 0.6インチとなる。0.6インチとなるステップの確率は、以前の経験から97%とされる。確率が100%でないことから、現在の開始点が0.6インチ移動しているとみなすことはできない。その代わり、現在の開始点が0.6 * 0.97 = 0.582インチ移動しているとみなすことができる。したがって、加重移動平均を計算することにより、深度2は1.082インチであり1.1インチではないとみなすことができる。開始点3はここでも無視される。開始点2(1.1インチ)と開始点4(0.9インチ)の差は0.2インチで、99%の確率となる。このように、深度2と深度4のステップの有効距離は0.2*99% = 0.198となる。したがって、深度4は0.9インチではなく0.902インチとみなされる。上記と同じ移動平均を用いて、現在の開始点を以下のように報告できる。
[(0.5*100%)+(1.082*98.75%)+(0.902*96.25%)] ÷ 3 = 0.812 インチ、
初期開始点に対する相対位置。
別の言い方をすれば、この値は現在の圧迫の推定の実際開始点である。
【0042】
数学的には、現在の開始点の報告値は以下のように表現される。
ここで DBi > B の場合、DBi = 0
ここで、Dsは現在の開始点の深度、nrはベースラインを超えている開始点すべてを削除した後に残っている開始点の数、iは開始点数、DBiはith 番目の開始点の測定深度、jはベースライン内にある最近のほとんどの開始点の指数、DBi-jはベースライン内にある最近のほとんどの開始点、PSはDBi - DBi-jの大きさのステップが生じる確率、ωは重み定数、Bはベースラインである。結果のDsは現在の開始点の報告深度である。別の言い方をすれば、[DBi-j+(DBi - DBi-j)*PS]*ωi-1 をiが1からnまで加算し、その加算値をnrで割る。DBiがB(ベースライン)より大きい場合、そのDBiはゼロとする。
【0043】
別の実施形態では、現在の開始点の深度と以前のすべての開始点の加重平均との間の段階の大きさ(step size)に確率を当てはめることができる。(上記の例で、確率は現在の開始点とひとつ前の開始点の間の段階の大きさに当てはめることができる)。この方法は「記憶式加重移動平均」法と呼ぶことができる。この方法では、現在の開始点の報告深度は数学的に以下のように表現される。
ここで変数は上記のように定義される。再び、Dsの値は現在の圧迫の推定の実際開始点である。
【0044】
別の実施形態では、自動減衰移動平均(ARMA)フィルタをベースライン制限装置として使用できる。ARMAフィルタは、古いデータより最近のデータに重みをおく、指数関数的に衰えてゆく「忘却」フィルタである。ARMAは圧迫開始点またはピークの値以外にも作用する。というより、ARMAフィルタは短時間の間隔で得られた圧迫加速度、速度、あるいは深度のデータサンプルに作用する。データサンプルは1秒間に約100サンプルから約2000サンプルの割合で得られる(望ましくは1秒間に約1000サンプルの割合)。このように、ARMAフィルタは全波形に作用し、圧迫ピークや開始点のみに留まらない。
【0045】
低いパス様式(ベースラインで高周波成分を除去)の場合、ARMAフィルタは数学的に以下のように表現される。
y[n] = (1-α)*y[n-1] + α*x[n].
【0046】
この場合、nは現在のサンプルの指標(nth番目のサンプル)、y[n]は現在のサンプルの出力、x[n]は現在のサンプルの入力、y[n-1]は1つ前のサンプルの出力、αはフィルタが過去の出力をどのくらいの速さで「忘れる」か、すなわち現在の入力が出力に及ぼす影響力の大きさを示す独立した用語である。αの値は約0.02から約0.0002の範囲に入り、0.002が多くの心肺蘇生関連フィルタの適用に適している。ベースライン制限装置のための高パスARMAフィルタを実施したい場合、ARMAの等式は以下のようになる。
y[n](high pass) = 1 - {(1-α)*y[n-1] + α*x[n]},
ここで、y[n](高パス)は高パス・フィルタ出力であり、その他の変数は低パスARMAフィルタの関連において定義される。高パス・フィルタは、深度、速度、あるいは加速度信号の低周波成分を除去するのに使用する。
【0047】
上記の例の移動平均法は、圧迫深度波形の処理に関連して記載されている。しかし、圧迫の速度および加速度の正確な値を報告することが望まれている場合、この方法は速度波形および加速度波形の処理に使用できるに違いない。移動平均法は各波形に別々に適用できる。言い換えれば、移動平均法を加速度波形に適用し、次いで加速度波形を一体化し、次に2回目の移動平均法を速度波形に適用し、次に速度波形を一体化し、最後にする3回目の移動平均法を深度波形に適用する必要がない。しかし、別の実施形態では、この手順を使用することができる。
【0048】
ベースラインの信号を分析する別の方法を、推定の実際圧迫開始点の決定に使用することができる。ベースライン制限装置の別の実施形態には、移行確率マップを使用して測定開始点の特定のシフトの確率を確認する信号プロセッサからなる。(密度推定装置または核(カーネル)推定装置を使って確率マップを予め決定し、それから圧迫モニタソフトウェアにコードすることができる。)特定の開始点測定値を確率マップと比較し、システムは測定開始点の変動がどれほど間違っている(エラー)かを決定する。報告された開始点を適切に調整する。(同様に、移行確率マップは各圧迫の実際ピークおよび実際最大深度を推定するのに使用できる。)
【0049】
ベースライン制限装置39の効果は図13〜図15に認められる。ここでは、4つの仮定の圧迫について一期間の圧迫深度、速度、加速度を示している。図13〜図15はまた、図5のステップの出力(35〜39)を示している。ベースライン制限装置はステップ47の速度波形(図14)とステップ48の加速度波形(図15)に別々に適用される。
【0050】
図13〜図15は、移動平均法が各圧迫における報告開始点のドリフトの影響を少なくすることを示している。(移動平均法はまた、波形のベースライン部分に現れる外部加速度エラーの影響を少なくする。)補正する前は、報告開始点が徐々に深くなってゆくのに対し、実際開始点は実際初期開始点に戻るように近づいて行った。移動平均法を測定した波形のベースラインに適用することにより、各圧迫で報告される開始点は統計学的に実際開始点に近づいてゆく。したがって、圧迫モニタは実際圧迫深度に近い推定の圧迫実深度を報告する。図2〜図4および図7〜12の矢印24,25よりも短い矢印49,50は、移動平均法を各波形に適用することの有益な効果を示している。
【0051】
図5に戻って、ベースライン制限装置により補正された圧迫深度波形は、それに累積しているあらゆる信号ノイズを減少させるためにステップ50の第3のフィルタに通される。第3のフィルタは高パス・フィルタからなり、別の実施形態では第3のフィルタはバンド・パス・フィルタからなる。
【0052】
引き続いて、深度波形(フィルタ処理の有無にかかわらず)がステップ52の開始点検出器に提供される。開始点検出器は現在の推定開始点の値を同定する。続いて現在の推定開始点は、(線54で示されるように)信号を組み合わせる手段53に提供される。信号組み合わせ手段53は、後で推定の実際圧迫深度を計算するために現在の推定開始点を使用する。信号組み合わせ手段は、信号追加装置、直線システムモデル、非直線システムモデル、あるいはその他の組み合わせ信号からなる。
【0053】
次に、圧迫波形がステップ55のピーク制限装置に提供される。ピーク制限装置は、ベースライン制限装置と同じような機能を持つが、圧迫波形のピーク部分に作用する信号プロセッサである。波形のピーク部分とは、ピークが認められると思われる波形部分のことである。1つの実施形態では、ピーク部分はベースライン上方の波形部分のことである。ベースライン制限装置で使用した例を考えると、深度波形のピーク部分は1.1インチ(2.79 cm)上方の深度波形の部分である。このようにピーク制限装置は、ベースライン制限装置が波形のベースライン部分を滑らかにするように、波形のピーク部分を滑らかにする。
【0054】
1つの実施形態では、ピーク制限装置は最大圧迫深度の大きさの外側の境界を設定する。このように、ピーク制限装置は、既知の起こりそうもないピーク値よりも大きなピークすべてを無視する(捨て去る)か、すべてに適当な値を代入する(例えば、大きな体格の人の胸部深度は、心肺蘇生の圧迫深度にとって起こり得る値ではない)。このように、ピーク制限装置は圧迫モニタが起こりそうもない圧迫深度値を報告しないようにする。
【0055】
ピーク制限装置の効果は図16〜図18にみられる。ここでは図5のピーク制限装置ステップ55の後の4つの仮説的圧迫における圧迫深度、速度、加速度のグラフを示している。(図16〜図18はステップ35〜55の出力を示している)。ピーク制限装置はステップ56の速度波形とステップ57の加速度波形に別々に適用されている。圧迫波形のピーク部分に移動平均法を適用することにより、外部加速度のスパイク22の影響が大きく抑えられる。前の処理ステップで考察した方法と合わせることにより、報告された波形は実際波形に近づく。
【0056】
図5に戻って、残っている信号ノイズを取り除くため、推定ピークをオプションで第4のフィルタ58に提供することができる。第4のフィルタは高パス・フィルタからなり、別の実施形態では第4のフィルタはバンド・パス・フィルタまたはその他のフィルタからなる。
【0057】
それに引き続き、深度波形がステップ59のピーク検出器に提供される。ピーク検出器は推定ピーク(現在の圧迫の推定最大深度)の値を特定する。次に、推定ピークは信号組み合わせ手段53に提供される。信号組み合わせ手段53は、推定開始点52を推定ピーク59と合わせて、現在の圧迫61の推定の実際圧迫深度を提供する。次に推定の実際深度はユーザフィードバック手段62(ユーザフィードバック装置)に提供される。ユーザフィードバック手段は、スピーカー、視覚ディスプレイ、1つまたは複数のLED、振動機、ラジオ、その他の蘇生実施者に伝達する手段からなる。ユーザフィードバック装置はまた、現在の圧迫の推定の実際深度に関する情報を蘇生実施者に提供する。
【0058】
図5の方法において、ベースライン部分およびピーク部分は重ならない。このように、圧迫深度波形はベースライン部分とピーク部分の2つの部分から構成されていると考えられる。深度波形の各部分は、異なる情報を抽出するために2つの異なる手順(ベースライン制限装置およびピーク制限装置)で別々に処理される。このように、ベースライン制限装置とピーク制限装置の両方が同じ深度波形に作用する。これの効果は、深度波形を形成している信号がまずベースライン制限装置に、次にピーク制限装置に提供されることにある(信号を分割しない)。
【0059】
図6に示した方法は、ベースライン部分およびピーク部分が重なった場合に使用される(しかし、この方法はベースライン部分およびピーク部分が重なっていない場合にも使用される)。例えば、図6の方法は、ベースライン部分が(胸部がリラックスしている状態に比べて)1.5インチ上方に設定され、ピーク部分が(胸部がリラックスしている状態に比べて)1.0インチ上方に設定されている場合に使用される。この場合、深度波形を代表している信号が分割され、ベースライン制限装置とピーク制限装置の2つの別々のプロセッサに提供される各プロセッサはすでに説明している制限装置と同じ機能を実行する。このように、ベースライン制限装置とピーク制限装置は互いに独立して作動するが、図6の方法は、図5に示す方法とほぼ同じように、推定開始点と推定ピークを生成する。信号を組み合わせるための方法は、次に現在の圧迫の推定の実際深度を生成するためにステップ53の推定開始点および推定ピークを結合させる。現在の圧迫の推定の実際深度はステップ62のユーザフィードバック装置に提供される。ユーザフィードバック装置はまた、現在の圧迫の推定の実際深度を蘇生実施者に提供する。
【0060】
図5および図6の信号処理法に加えて、別の技術を圧迫深度波形のエラーを修正するために使用することもできる。例えば、図19は、加速度測定器が加速度測定をいつ開始するかを代わってコントロールするスイッチ64をオンにするのに心電図ノイズ63の変化を使用する信号処理技術のフローチャートである。
【0061】
この方法を実施するために、圧迫モニタには患者心電図を測定するために、1つまたは複数の電極もしくはその他の手段が提供されている。蘇生実施者が胸部を圧迫するたびに、患者心電図にノイズが入る。患者の実際心電図が(電気活性を示さない)平坦であって、報告される心電図には胸部圧迫によるノイズが示される。事実、体動によるアーチファクトの信号(胸部圧迫による心電図のノイズ成分)が心電図の律動に組み入れられる。実際心電図律動がどうであっても、心電図ノイズが分離されて得られる。
【0062】
胸部圧迫中に大量の心電図ノイズが生じることから、圧迫の開始点は心電図ノイズが事前に設定された閾値を越える点に関連付けられる。しかしながら、圧迫の動作と心電図のノイズの発生の間にいくらかの遅れあるいはずれが生じる。時間のずれはミリ秒から10分の1秒の単位である。圧迫のいずれの部分も逃さないために、バッファ(デジタル、アナログのいずれでも)を適用して時間のずれを修正する。その後、心電図のノイズが特定の閾値を越えると、加速度測定器が作動する(そして加速度測定値を得始める)ようにスイッチをプログラムする。測定加速度を2回統合することにより総圧迫深度を決定する。
【0063】
圧迫開始点を確立するための基準センサとして心電図ノイズを使用する効果は、4つの仮説的圧迫における一定期間の圧迫深度、速度、加速度を示す図20〜図25に認められる。図20〜図22の波形には信号の処理が何もなされていない。点線の波形12は、圧迫深度、速度、(加速度測定器とは独立して測定された)加速度の実際波形を表し、実線の波形は加速度測定器にて測定された加速度から導き出された波形を表している。実線の波形13は圧迫モニタにより報告された波形でもある。信号ノイズの影響は実線の波形の粗さに現れている。外部加速度ノイズの影響は、報告された波形中の2つのスパイク65,66に現れている。(徐々に圧迫が浅くなる)陰性ドリフトの影響は、報告された波形や実際波形の最小値間の(矢印67,68で表される)距離が増大することに認められる。
【0064】
圧迫開始点を確立するための基準センサとして心電図ノイズを使用する効果は、仮説的圧迫における一定期間の圧迫深度、速度、加速度のグラフを示す図23〜図25に認められる。基準センサとして心電図ノイズを用いることにより、外部加速度のある種のエラーが減少し、陰性ドリフトの影響が小さくなる。(心電図ノイズ基準センサは陽性ドリフトの影響も小さくすることができる)。特に心電図ノイズ基準センサは、圧迫最小値近くで起こる外部加速度ノイズの影響を小さくする。加速度測定器の電源が「オン」になっていないと、外部加速度のスパイク部分は「無視」される。実際には、加速度測定器がデータをまだ収集していても、心電図ノイズが設定レベルに達していない期間に発生する加速度データあるいは信号をソフトウェアまたはハードウェアによって除外される。別の方法では、心電図ノイズが予め設定されている閾値内になったときに、推定の実際圧迫深度を計算する。いずれの場合でも、報告される波形の中のスパイク65の影響を小さくする。しかし、加速度測定器それ自身は圧迫関係の加速度と外部加速度の違いを区別できない。このように、報告される波形にはスパイク66にみられるように圧迫動作中に起こった外部加速度ノイズが含まれることがある。
【0065】
そうではあるが、心電図ノイズ基準センサはドリフトの影響を小さくする。圧迫開始点を独立して確立することにより、波形が陽性ドリフトや陰性ドリフトのいずれかに至ることがはるかに小さくなる。言い換えると、加速度測定器は常に圧迫が実際に開始された後の加速度を測定する。このように、図23の報告波形は、蘇生実施者が実際何を行っているか、すなわち徐々に深くなってゆく開始点から圧迫していることをもっと明らかに示している。このように、ピーク69,70は測定された波形が実際波形ともっと強く一致していることを示している。
【0066】
心電図ノイズ基準センサはドリフトの影響を小さくし、ある種の外部加速度ノイズを減少させることができるが、信号ノイズの問題は残されたままである。したがって、図23〜図25は依然として図20〜図22に示されている信号ノイズと同じレベルを示している。すべての形態のノイズを減少させるため、心電図ノイズ基準センサを図5または図6の信号処理技術と組み合わせることができる。複合技術により実際波形に近い報告深度波形になる。
【0067】
その他の基準センサを用いて圧迫の実際開始点を確立することができる。図26は、平面80に横たわっている患者1に取り付けた、加速度測定器に基づく圧迫モニタを示している。加速度測定器81、荷重センサ82、スイッチ83からなる基準センサのシステムは、各センサが胸部圧迫に関する様々なパラメータを測定できるように配置されている。基準加速度測定器の場合、基準加速度測定器を患者の体表、または患者と同じ外部加速度が発生する基準物体の上に配置する。基準加速度測定器は3つの軸からなる加速度測定器からなるが、その他に1つの軸からなる加速度測定器を3つ用いて互いに軸を直交させるか、または1つの軸からなる加速度測定器1つを用いる(この場合、他の2つの軸方向の加速度は無視できるものとする)こともできる。
【0068】
基準加速度測定器81は、信号プロセッサが患者の搬送により生じるこれらの加速度のような外部加速度エラーを除外するようにする。1つの方法は、圧迫モニタまたは自動心肺蘇生装置(デバイス加速度)により感知された加速度を信号プロセッサに提供する。デバイス加速度には、圧迫により生じた加速度(圧迫加速度)および外部加速度により生じた加速度(外部加速度)が含まれる。次に、基準加速度測定器または加速度測定器が信号プロセッサに基準加速度を提供する。基準加速度測定器には患者の外部加速度のみが含まれる。それから、基準加速度は推定の実際加速度を生成するためにデバイス加速度と組み合わされる。(基準加速度に対する圧迫加速度の影響は、平面および患者が圧迫モニタに対して動かないため、無視できる。)
【0069】
一旦獲得したら、推定の実際加速度は推定の実際胸部深度を得るために2回統合される(integrated)。このように、圧迫深度は大きな外部加速度があっても決定される。さらに位置信号は、実際加速度を図5および図6の信号処理法または他の信号処理法と組み合わせることによりもっと正確かつ精密にすることができる。
【0070】
心電図ノイズセンサおよび基準加速度測定器の代わりに(または追加として)、別の基準センサを実際圧迫開始点の設定に使用することができる。基準センサは、荷重センサ82、スイッチ83、経胸腔インピーダンス検出器、(上記に記載の)心電図ノイズ検出器、自動心肺蘇生装置中の電圧または電流センサ、自動心肺蘇生装置中の開始信号、自動心肺蘇生装置中のエンコーダ、あるいは圧迫の実際開始を独立して検出可能なその他のセンサからなる。基準センサが圧迫の開始を検出すると開始点がゼロにセットされる。それから加速度が処理されて圧迫深度が導き出される。基準センサが圧迫の開始を検出したとき開始点をゼロに設定する技術を、図5および図6の信号処理技術と組み合わせることができる。
【0071】
スイッチ83について言えば、圧迫が始まるとスイッチが閉じられるようにスイッチを配置することができる。例えば、スイッチは圧迫モニタの下または上、患者1の上、患者が横になっている平面80の上、蘇生実施者の手、心肺蘇生装置の上、患者の上、その他圧迫が始まったことをスイッチが察知できる部位に配置することができる。
【0072】
スイッチは様々な種類のスイッチとセンサから構成される。それらには、接触スイッチ、動作スイッチ、自動心肺蘇生装置上の電圧センサ、自動心肺蘇生装置上の光学式、回転式またはその他のエンコーダ、シャフトなど自動心肺蘇生装置の構成要素の位置変化計、電位差計、ひずみゲージ、圧電抵抗トランスデューサ、差動変圧器、同期電導電位差計、様々な電導および様々な電気抵抗の感知器、過電流非電導トランスデューサー、容量トランスデューサ、電気光学トランスデューサ、写真スイッチ、ビデオテープスイッチ、ホログラフィースイッチ、光弾性技術、並進運動エンコーダ、超音波トランスデューサ、移動コイルおよび移動磁石感知、交流または直流タコメータ、過電流ドラグカップタコメータ、その他の加速度測定器、または位置変化スイッチがある。
【0073】
荷重センサ82の場合、荷重センサは蘇生実施者、患者、自動心肺蘇生装置、患者の下、または圧迫が始まるときに荷重センサが荷重状況を感知するようなその他の部位に接続される。荷重状況に関する荷重センサの測定値が事前に定められた閾値を越えたとき、測定開始点がゼロに設定される。荷重センサは荷重センサが荷重状況を感知したときに活性化されるスイッチに操作上接続されるか、単に信号処理システム識別装置(詳細は以下に記す)に信号を送る。圧迫深度は加速度を2回統合されて決定される。荷重センサが圧迫の開始を検出したとき開始点をゼロに設定する技術を、図5および図6の信号処理技術と組み合わせることができる。
【0074】
荷重センサ82の別の実施形態では、荷重センサを患者の体重および圧迫力の両方を感知できるように配置することができる。荷重センサ82は患者が横になっている台80の下に配置することができる。圧迫中、患者を押す力により荷重センサは患者の体重よりも大きな総合力を報告することになる。したがって、総合力が患者の体重にほぼ等しいときに開始点がゼロに設定される。
【0075】
この技術とともに使用できる力センサの例には、圧力センサ、弾性力トランスデューサ、自動心肺蘇生装置のシャフトの位置変化計、自動心肺蘇生装置の電圧または電流センサ、自動心肺蘇生装置の光学的、回転式あるいはその他のエンコーダ、固定したひずみゲージ、光線ひずみゲージ、差動変圧器、圧電トランスデューサ、様々な電気抵抗/FM発振器、ジャイロスコープ圧力トランスデューサ、振動ワイヤー力検出器などがある。この技術とともに使用できる圧力センサの例には、重量品計測器、マノメータ、弾性トランスデューサ、圧電トランスデューサ、力平衡トランスデューサなどがある。
【0076】
経胸腔的インピーダンス検出器の場合、1つあるいは複数の心電図用電極、心房細動用電極、またはその他の電極を患者の胸壁に配置する。圧迫を開始すると、胸壁のインピーダンスが変化する。胸壁インピーダンスはどれでも2つの電極の間にある皮膚および胸腔内構造物によるインピーダンスからなる。胸部インピーダンスの変化は、小さな試験電流あるいはインピーダンスを測定するその他の方法で測定される。インピーダンスが事前に設定された量だけ変化したときに、開始点がゼロに設定される。測定加速度を処理することにより総圧迫深度を決定できる。
【0077】
圧迫モニタが圧迫波形を測定できることから、特定の圧迫波形を実行するとき圧迫モニタを蘇生実施者あるいは自動心肺蘇生装置の誘導とすることができる。図27は、圧迫モニタが蘇生実施者に実施を先導する圧迫波形を示している。深度はインチで測定され、時間は秒で刻まれる。図27の目盛りは0.5秒間隔、1.0インチ間隔で印が付いている。サイクルの圧迫段階は、陽性に傾斜した曲線84として示される。サイクルの圧迫段階は最大圧迫深度85(圧迫ピーク)で終了する。サイクルの圧迫解除段階は、陰性に傾斜した曲線86として示される。圧迫解除段階は蘇生実施者が次の開始点87(またはベースライン)で新たに圧迫を開始するときに終了する。この開始点は最初のものと異なることもある。圧迫は、時間=0、深度=0で開始され、圧迫の総深度は矢印88で示されている距離である。
【0078】
圧迫波形には、蘇生実施者が最大圧迫深度で短時間同じ位置を保つ圧迫保持期間89が認められ、蘇生実施者が最初の開始点より深い点で短時間位置を保つ不完全圧迫解除維持期間90が認められる。それぞれの圧迫および圧迫解除は、圧迫段階84および圧迫解除段階86の比較的急峻な波形で示されるように速い加速度と速度ですばやく実施される。デューティサイクルは50%より少し低い(圧迫と圧迫解除の時間の比は1)。これは、矢印89間の距離によって示されるように圧迫段階に費やされる時間は矢印90間の距離によって示されるように圧迫解除ステップに費やされる時間より少し短いことを意味している。
【0079】
図27の圧迫波形は、圧迫モニタが蘇生実施者に圧迫するための指示を与えることができる特定の波形の例を示しているが、別の波形になる可能性もある、例えば、別の波形では圧迫保持時間が認められないことがある。さらに別の波形ではデューティサイクルが異なったり、圧迫保持時間が増加したりすることもある。正確な波形は、特定の患者に対する最適の圧迫波形を構成する圧迫波形の種類に関する現在の科学水準にかかっている。加えて、圧迫モニタにはスイッチ、ボタン、ソフトウェア、あるいは蘇生実施者が患者の体格や体形を入力できるようにするためのその他のユーザ入力手段を装備することができる。圧迫モニタは、波形ライブラリから特定の波形を選択するのにこの情報を使用できる。圧迫波形は将来の検討、AHAガイドライン、蘇生実施者の注意事項、医療専門家の参考のための所見として採用できる。したがって、下記に詳しく記すように、様々なときに異なる波形がユーザフィードバック装置に提供される。
【0080】
ユーザフィードバック装置により先導用波形が提供される(図5のステップ62)。さらに、ユーザフィードバック装置は蘇生実施者または自動心肺蘇生装置に圧迫関連情報を提供する。例えば、ユーザフィードバック装置は圧迫開始点、圧迫深度波形、圧迫速度波形、圧迫加速度に関する情報を表示することができる。このように、ユーザフィードバック装置は蘇生実施者または自動心肺蘇生装置に、心肺蘇生のすべての段階を通して、胸部の位置、速度、加速度の状況を確認するのに必要なすべてのデータを提供できる。この情報はまた、蘇生実施者または自動心肺蘇生装置の実施状況を評価するのに使用できる。
【0081】
ユーザフィードバック装置は、蘇生実施者または自動心肺蘇生装置に圧迫ステップの質および圧迫解除段階の質に関する情報を提供する。圧迫段階の質は、総圧迫深度、デューティサイクル、圧迫の加速度、圧迫の滑らかさ、圧迫段階に関連するその他の因子に関する圧迫の品質である。圧迫解除段階の質は、蘇生実施者が実際開始位置に戻ってくるかどうか、デューティサイクル、圧迫解除の加速度、圧迫解除の滑らかさ、圧迫解除段階に関連するその他の因子に関する圧迫の品質である。蘇生実施者または自動心肺蘇生装置は、圧迫の種類および品質を評価あるいは先導するためにこの情報を使用する。
【0082】
ユーザフィードバック装置62は、加速度、速度、位置の波形から得られた情報を組み合わせて、蘇生実施者または自動心肺蘇生装置に圧迫ステップの質に関する情報を提供する。例えば、ユーザフィードバック装置は、圧迫深度が推奨ガイドラインよりも小さい場合は圧迫する力を増すように、また圧迫深度が推奨ガイドラインよりも大きい場合は圧迫する力を減らすように蘇生実施者に指示を出す。ユーザフィードバック装置は、圧迫波形のその他の圧迫ステップパラメータに関して蘇生実施者に指示を出す。例えば、ユーザフィードバック装置は、適切な圧迫深度を達成するのに圧迫時間が短すぎるか長すぎるかについて、蘇生実施者または自動心肺蘇生装置に情報を与える。
【0083】
ユーザフィードバック装置62は、加速度、速度、位置の波形から得られた情報を組み合わせて、蘇生実施者または自動心肺蘇生装置に圧迫解除ステップの質に関する情報を提供する。例えば、ユーザフィードバック装置はユーザや装置に、圧迫解除後の適切な待機位置に関する指示を与える。このように、ユーザフィードバック装置は、蘇生実施者または装置が胸部を最初の開始位置まで十分戻らせていない場合に、ユーザまたは装置に胸部を十分リラックスさせることを指示できる。逆に医学的に示される必要がある場合、ユーザフィードバック装置はユーザまたは装置に最初の胸部位置の真下の深度まで戻るよう指示できる。この場合、蘇生実施者または装置は圧迫解除維持時間に入り、圧迫サイクルが最小深度の時間になっても胸部に一定の力を加え続ける。その他の場合として、ユーザフィードバック装置は別の時間に異なる圧迫開始点を示すことができる。このように、ユーザフィードバック装置は蘇生実施者または装置に、圧迫サイクル中、不完全な圧迫解除維持時間を適用するが、換気中には十分リラックスした位置に戻るように指示することができる。ユーザフィードバック装置は蘇生実施者または装置に、圧迫解除の割合と圧迫解除段階のデューティサイクルなど、その他の圧迫解除段階のパラメータに関して指示することができる。
【0084】
これらを一緒にして、圧迫段階の質および圧迫解除段階の質から得られた情報はユーザフィードバック装置が最適な圧迫波形および最適の圧迫デューティサイクルを作るよう蘇生実施者を誘導できるようにする。蘇生実施者は、事前に設定された深度と割合で圧迫し、事前に設定された圧迫深度で事前に設定された時間だけ胸部を保持することで特定の圧迫波形を実施する。蘇生実施者は、事前に設定された時間だけ胸部を圧迫し、別の事前に設定された期間胸部をリラックスさせることで特定のデューティサイクルを実施する。
【0085】
このように、ユーザフィードバック装置は蘇生実施者または自動心肺蘇生装置が圧迫サイクルの各段階(圧迫および圧迫解除)を適切な圧迫の割合、圧迫深度、圧迫速度(患者の圧迫および圧迫解除にかかる時間)、圧迫加速度、圧迫保持時間で実施するように誘導することができる。したがって、蘇生実施者または装置が実際に適用する圧迫波形は複合圧迫波形を形成することができる。ほとんどの患者がより複雑な波形から益を受けていることを研究で示されていることから、自動心肺蘇生装置が圧迫モニタをこのユーザフィードバック装置とともに使用するなら、患者の生存率は上昇すると思われる。
【0086】
同様に、図5のユーザフィードバック装置62は蘇生実施者または心肺蘇生装置に圧迫デューティサイクルに関するフィードバックを提供することができる。デューティサイクルとは、各圧迫サイクルにおける圧迫中の時間と圧迫解除中の時間の比である(しかし、デューティサイクルには換気中など胸部圧迫を実施していないときの時間は入れない)。
デューティサイクルが事前に設定されたパラメータ内に収まっていない場合は、適切なデューティサイクルに影響するために圧迫のタイミングと圧迫の割合を調整するよう、ユーザフィードバック装置は蘇生実施者を誘導する。
【0087】
上述のユーザフィードバック装置は、生の加速度信号から胸部位置変化の正確な値を決定する際の問題を特別に解決する最後のステップからなる(図5はこの解決のためのフローチャートである)。一般的な視点から問題を眺め一般的な解決に導くことが可能であるが、すでに記述したように、様々な解決法がある。
【0088】
図28および図29は、心肺蘇生中に測定される加速度から正確な位置を決定するときの一般的な問題を提示し、位置を決定するための一般的な解決法を示したブロック図である。図28は、実際胸部圧迫加速度が胸部位置の不正な値にどのように変換されるかを示すブロック図である。大まかに言えば、実際加速度105、信号ノイズ106、外部加速度ノイズ107、ある種のドリフト108は、未知の機能109(それは線形あるいは非線形で、無作為のあるいは決定的な入力を含んでいる)で結び付けられている。未知の非線形機能は、加速度測定器で測定された不正な加速度110を生成するシステムとして知られている。不正な加速度は2回統合され、加速度に不正を入れることにより生じる問題を大きくしてしまう。増加するエラーは組み込みエラー111と呼ばれる(しかし、統合技術そのものが直接位置にエラーを持ち込むことはないと考えられる)。最後にドリフト112のその他の原因が最終値の不正な位置113に影響することがある。
【0089】
図29は、不正な胸部圧迫加速度を胸部圧迫の推定の実際深度に変換するための一般的な解決のブロック図である。まず、基準センサ119が実際圧迫開始点を確立する。このようにして、加速度の開始点を知ることができる(助けとなるが、基準センサ119は一般的な解決策とはならない)。実際加速度105および真実のまたは推定のノイズ源1220(図28の106〜108のブロックからなる)がシステム109によって未知の機能により統合される。その結果は不正な加速度110である。測定された加速度は次にデータ統合手段121(これは線形もしくは非線形機能からなる)に提供されるとともに、システム識別装置122に提供される。
【0090】
システム識別装置は1つもしくは複数の機能(線形もしくは非線形)からなり、システムをモデル化する。ノイズ源120に相関する1つもしくは複数の関連は、システム識別機能122に提供される。例えば、低周波フィルタにより同定されたノイズは信号ノイズに関連し、基準加速度測定器は外部加速度ノイズに関連する。
【0091】
基準そのものは加速度にノイズを起こさないとしても、システム識別機能はノイズ源基準値として自動心肺蘇生装置の様々なパラメータを使用する。しかし、ノイズ源基準値は加速度信号のノイズの原因といくらか関連しているに違いない。例えば、加速度測定器に基づく深度測定値は0.5インチの胸部深度を報告する。しかし、自動心肺蘇生装置に同時に起こる電流のスパイクは、心肺蘇生装置が0.5インチの深度で胸部を圧迫するのに必要な力よりも強く圧迫していることをシステムに伝えている。この矛盾は外部加速度ノイズまたはドリフトにより生じることがある。このように、電流スパイクはシステムのノイズ源と関連している。この情報はシステムのモデル化を支援するために、システム識別装置により使用される。同様に、電圧、シャフト位置変化、あるいは光学式または回転式エンコードは、システムのモデル化を支援するためにシステム識別装置により参照として使用される(ここでも、ノイズ基準値が利用されるが必須ではない)。
【0092】
システム識別装置は次に、測定された加速度の推定ノイズ123を生成するために、ノイズ源基準値と測定された加速度を組み合わせるか、関連付ける。次に、推定ノイズ123はデータ121を組み合わせるための手段に提供される。データを組み合わせる手段は推定ノイズ123と測定された加速度110を組み合わせて、推定の実際加速度124を生成する。推定の実際加速度は次に2回統合される(125)。フィルタ126は、推定の実際加速度にまだ残っているエラーの複合の影響を減らすために、オプションで片方または両方の統合ステップで使用される。最終結果は、加速度測定器の実際位置127を正確で精密に推定することになる。
【0093】
システム識別機能122はシステムをモデル化し、加速度のノイズを推定するのに使用できる。(ノイズがあることが分かったら、ノイズの加速度と測定された加速度を組み合わせることによりノイズは容易に除去できる。)言い換えれば、システム識別は入力および出力データを使用して実際加速度と加速度のノイズ源を組み合わせる機能をモデル化する過程である。システム識別の問題には、既知あるいは推定の出力および既知か未知の入力がある。既知または未知の入力の追加はシステム識別には有益であるが、必須ではない。何らかの境界条件は知られていても、システムそのものが線形か非線形の未知の適当な機能である。
【0094】
線形でも非線形でも数多くの方法がシステムのモデル化に使用される。これらの方法のそれぞれは、ステップ122のシステム識別機能の単独あるいは組み合わせからなる。これらの方法は、圧迫開始点またはピーク点のみを操作するのではなく、毎秒多くのデータサンプルを取ることにより操作する。それにもかかわらず、これらの方法は圧迫開始点または圧迫ピークに対しても実施される。これらの方法には、自動回帰、余分の入力を伴う自動回帰、自動回帰移動平均(図5および図6にみられる技術に使用される方法の1つ)、余分の入力を伴う自動回帰移動平均、自動回帰一体化移動平均、余分の入力を伴う自動回帰一体化移動平均、ボックス・ジェンキンス(Box-Jenkins)モデル、出力エラーモデル、隠蔽マルコフ(Markov)モデル、フーリエ変換、微小波変換、微小波ノイズ削減、微小波フィルタリング、適応神経ネットワーク、再発性神経ネットワーク、放射状機能ネット、適応曲線フィッティング(たわみ定規様)、カルマンフィルタ(Kalman filter)、拡大カルマンフィルタ、適応カルマンフィルタ、無香カルマンフィルタ、カーネル推定がある。システム識別機能を見つけるために使用されるアルゴリズムによるアプローチには、最大エントロピー、最大見込み、帰納的最小二乗法(または類似の技法)、数値的方法、拘束のない世界的検索または最適化、期待値最小化、高速フーリエ変換がある。
【0095】
帰納的同定(recursive identification)の場合、一般的帰納的同定のための方程式は以下のとおりである。
(1) X(t) = H(t, X(t-1), y(t), u(t)) および
(2) θ(t) = h(X(t))
ここで、X(t)は時間tにおけるシステムの状態、Hは変換関数の状態、X(t-1)は以前のシステムの状態、Y(t)は測定した出力、u(t)は測定した入力、θ(t)はシステムであり、hはシステムの状態を出力に変換する。 システムの状態は、h(X(t))によりシステム出力に転換される。
【0096】
X(t)とθ(t)はu(t)とy(t)を収集するたびに評価されることから、最も新しく収集されたデータよりもそれまでに収集されたデータの総計の方はるかに大きな影響をシステムに与える。
【0097】
等式(1)と(2)は等式(3)と(4)のように簡略化できる。
(3) X(t) = X(t-1) + μQx(X(t-1), y(t), u(t)) および
(4) θ(t) = θ(t-1) + γQθ(X(t-1), y(t), u(t))
ここで、μとγは最新の段階で提供される情報の相対的な量を反映する小さな値である。Qは入力、出力、状態に関係する代数である。等式(3)と(4)は、等式(1)と(2)よりも帰納的に等式の計算が簡単であるという意味でより簡略化されている。
【0098】
数的アルゴリズムの数値は、等式(3)と(4)を解くのに使用される。数的アルゴリズムの部分的なリストには、帰納的最小二乗法、帰納的器具変数、帰納的予測誤差法、帰納的偽直線回帰、帰納的カルマンフィルタ(時間変動パラメータを含む)、時間変動システムの帰納的カルマンフィルタが含まれる。これらの数的技術は、カルマンフィルタ、拡大カルマンフィルタ、拡大機能的最小二乗法、その他を含む特別なケースとして、有名な「名のある」技術の多くを包含している。各アルゴリズムはそれぞれ強さと弱さを持っているが、すべては漸近的に等式(3)と(4)の解に近づく。
【0099】
「名のある」特別なケースは、ある条件または推定がある場合に一般的な等式(3)と(4)から導き出される。このように、リストされたアルゴリズムのそれぞれの等式はさらに具体化され得る。例えば、帰納的最小二乗法アルゴリズムを使用すれば等式(4)は以下のようになる。
【0100】
等式5〜5(b)において、L(t)、P(t)およびP(t-1)は等式を簡略化するために使用された用語、φ(t)は回帰ベクター、λ(t)は忘却因子(以下で詳細に説明)、φT(t)は回帰ベクターの転置行列である。
【0101】
さらに、等式(4)は帰納的器具変数、帰納的予測誤差法、帰納的偽直線回帰、時間変動システムの帰納的カルマンフィルタ、パラメトリック多様性の帰納的カルマンフィルタのケースとして表現できる。
【0102】
上記のアルゴリズムのセットからシステム識別アルゴリズムを一旦選択すると、そのモデルの質に影響するその他のいくつかのパラメータが出てくる。これらのパラメータには、データの重みづけ、最新化のステップの選択、最新化の取得の選択、モデルの順序の選択がある。データの重みづけについては、システムが経時的に変動する場合、現在に近いときの入力出力データの方がシステムの現在の性質をより正確に反映する。時間的に古くなったデータはその時のシステムの状態を反映するに過ぎない。この事実を反映させるため、現在のシステムの状態を表すデータに重きを置くことができる。実際データの重みづけは、等式5〜5bの「忘却因子(λ)」によって実行される。λの選択は、システムの状態がどれほど迅速に変化しているかという情報に基づいて行われる。λの典型的な範囲は約0.9800から約0.9999である(忘却因子が不必要なときにλが1.0000となる)。
【0103】
λがシステム識別装置に与える影響について考慮している別の方法は、データサンプルに約36%の重みが付けられるポイントを評価するものである(36%は数e-1の値であり、これはデータサンプルが統計学的に有意ではないとみなされるポイントの値である)。この重みのときデータサンプルの統計学的有意性は相対的に小さくなる。データサンプルが約36%の重みを付けられたときのサンプル数(T0として知られている)は、数学的に以下のように表される。
T0(したがってλ)は、実際加速度が独立して測定された場合に推定の実際加速度が実際加速度に最も近似するように、システム状態の適切な知識をもって選択しシステム識別の整調に使用する。このように、T0は圧迫モニタが測定を開始する前に事前に設定される。
【0104】
λが1に近いほど、あるデータサンプルが約36%の重みを与えられるまでに必要なサンプル数が多い。λが小さいということは、あるデータサンプルが「忘れ去られる」までの時間が短いことを意味する。例えば、λが0.9800すなわちT0 = 50サンプルの場合、50番目のサンプルに約36%の重みが付けられることを意味する。しかし、λが0.9999すなわちT0 = 10,000の場合は、10,000番目のサンプルに36%の重みが付けられることを意味する。上限については、λが1すなわちT0 = ∞ の場合、どのデータサンプルも「忘れ去られる」ことがない(常に100%の重みが付けられる)ことを意味する。
【0105】
サンプリングの割合(1秒間に加速度が測定される回数)は、λがシステム識別装置を変化させるかに影響する。毎秒1000回サンプルが採取された場合、心肺蘇生の圧迫の時間目盛り上、データは迅速に「忘れ去られる」。例えば、毎秒1000回サンプルが採取される、すなわちT0 = 1000の場合、採取後1秒経過したデータに36%の重みが付けられる。実際、サンプリングの割合は毎秒約100個から毎秒約2000個まで様々である。心肺蘇生中の加速度測定値の信号処理にとって有用なサンプル採取割合は、毎秒約500個である。別の実施形態では、サンプル採取割合を速くすることができるが、一定の割合でサンプルが無視される。例えば、毎秒1000個のサンプルを採取すると、1個おきにサンプルが無視される。デシメーションとして知られているこの過程は、これよりゆっくりしたサンプル採取割合でも同じ効果を持つ。
【0106】
前述の議論で、忘却因子は時間と共に変化しない固定した数であった。しかし、λはシステム識別装置が変化に適応できるよう、時間と共に変化し得るものであった。例えば、換気休止中にλが変化することがあり、ある実施形態では換気休止中にλが大きくなる。換気休止中にλが増大する影響は、データ点が短時間で捨てられることである。それゆえ、圧迫モニタは換気休止中の圧迫深度の変化を報告しない。
【0107】
忘却因子をシステム識別機能に追加することに加えて、最新化ステップの選択はモデルの質に影響する(とはいえ、最新化を必要とするのはシステム識別技術の一部だけである。例えば、カルマンフィルタは最新化ステップを必要とする)。最新化ステップは様々な方法で履行可能である。カルマンフィルタなどいくつかのシステム識別装置は分析的に解決可能であり、最新化ステップは分析的に解決される。他のシステム識別装置は数的に解決される必要がある。数的解決が必要の場合に使用可能な3つの最新化方法は、ガウス-ニュートン(Gauss-Newton)最新化、グラジエント最新化、およびレーベンバーグ-マルカート(Levenberg-Marquardt)最新化である。ガウス-ニュートン最新化は非常に多数のステップ(したがってより多くの計算時間)を必要とするが、実際解決の正確な適合値に収束する。グラジエント最新化は迅速に収束するが、ガウス-ニュートン最新化ほど正確に実際解決値に収束しない。これらの方法は組み合わせることができる。最初にグラジエント最新化を使用して迅速に適合値に収束させてから、識別装置は最終的な適合値を得るためにガウス-ニュートン最新化へ転換する。この組み合わせ法はレーベンバーグ-マルカート最新化として知られている。
【0108】
数学的には、ガウス-ニュートン最新化は以下のように表現される。
R(t) = R(t=1) + γ(t)[φ(t)φT(t) - R(t-1)]
数学的には、グラジエント最新化は以下のように表現される。
両方の等式において、R(t)は識別分類基準のヘッセ行列式、R(t−1)は1つ前の段階での識別分類基準のヘッセ行列式、y(t)は最新化ゲイン(これは忘却因子に関連する)、そしてφ(t)は回帰ベクトルである。
【0109】
最新化ゲインの選択は、多くの帰納的システム識別機能で使用されているもう一つの段階である。最新化ゲインの選択は数学的には以下のように表現される。
γ(t) = (1+λ(t)/γ(t-1))-1
よって、最新化ゲインは忘却因子に関連している。
【0110】
モデル使用順の選択に関しては、帰納的システム識別技術はシステムモデルを入力出力データに適合させる。帰納的手法の前に、そのモデルの構造を決定する必要がある。モデル構造の問題を解決する標準的な方法は、モデル全体の構造を把握してから、どのモデルがデータに最も適合するかを選択する。モデル適合度の簡潔な判定手段は、平均二乗誤差のように、モデル階数を過大評価し、処理または測定ノイズに適合してしまう傾向がある。モデルが過小評価された場合、システムの重要な成分が評価し損なわれる。モデル適合度のいくつかの判定手段または計量法は、モデル階数の範囲全体で評価される。モデル階数とはモデルが使用した項目の数である。適合度を小さくする最小モデル階数がふさわしいモデルである。
【0111】
最小モデル階数を予測するため、最終予測誤差(FPE)、赤池の情報分類(AIC)、最大描写の長さ(AICの変異体である)、および統計学的仮説テスト(t検定など)を含むいくつかの手法が使用可能である。最終予測誤差は数学的に以下のように表現できる。
ここで、Vは二次損失代数、dはモデル階数の大きさ、Nはデータポイントの数である。
赤池情報分類は以下のように表現される。
(12) AIC = log[V(1+2(d/N))],
ここで、Vは二次損失代数である。二次損失代数は追加の用語を使用する追加の費用代数に関係するすべての二次代数である。
【0112】
上述のシステム識別技術は、生の加速度測定から実際圧迫深度を推定することの問題の解決に関係して記載されている。これらの技術はノイズ的な心電図信号の処理にも使用される。図30は、心肺蘇生およびその他のノイズ源からの心電図ノイズの問題を描写しているブロック図である。別の言い方をすれば、図30は論理的な実際心電図信号135およびノイズ源が測定された心電図を生成するためにどのように組み合わせられるかを示す図である(これには不正動作アーチファクトが含まれる)。圧迫による心電図ノイズ136およびその他のノイズ源137からなる心電図ノイズが、システム138として知られている未知の直線または非直線機能により実際心電図と組み合わされる。心電図の主要なノイズ源は圧迫の動作であるが、その他のノイズ源が存在し以下に示す解決策により説明される。システムは不正な心電図139を生成し、もし処理されないならば、患者の心臓の電気的活動を正確に報告するためには使用できない。さらに、システムは、頻度領域の実際心電図に心電図ノイズを重ねる方法で心電図ノイズと実際心電図を組み合わせる。このように、単純なバンドパス・フィルタは不正な心電図を正確に処理するには不十分である。(単純なバンドパス・フィルタは、心電図ノイズを除外するとともに実際心電図の重要な成分を除外する)。
【0113】
図31は、図30に示した問題に対する一般的な解決策のブロック図で、体動による不正な心電図信号を推定の実際心電図信号に変換する過程を描写している。図30のように、システム138は観察者により測定される不正な心電図139を生成するため、実際心電図135および心電図ノイズ136を組み合わせる。次に、測定した心電図139および心電図ノイズ136に関連する基準信号が、システム識別装置140に提供される。例えば、心肺蘇生による動きは心電図ノイズの最大の原因であることから、心肺蘇生による動きに相応の信号はシステム識別装置に提供される。特に圧迫中の力を測定できるように、力トランスデューサは圧迫モニタ(または患者あるいは蘇生実施者)に配置される。力に相応する信号は基準信号としてシステム識別装置に提供される。心肺蘇生による動きに相応するその他の信号は、自動心肺蘇生装置の様々なパラメータからなる。例えば、デバイスシャフトまたはその他のコンポーネントに位置変化に関連する信号は心肺蘇生の動きに関連付けることができ、デバイスの駆動に必要な電流あるいは電圧の変化に関連する信号は心肺蘇生の動きに関連付けることができ、光学式または回転式エンコーダにより生成された信号は心肺蘇生の動きに関連する。
【0114】
システム識別装置はシステムをモデル化し、次いで測定された心電図信号のノイズ成分(推定ノイズ141)を推定する。推定の心電図ノイズ141および測定された心電図139は、続いて信号を組み合わせる手段142に提供され、推定の実際心電図143を生成するために心電図ノイズと測定された心電図を組み合わせる。推定の実際心電図は圧迫中に生成されるため、信号処理技術により圧迫中であっても心電図センサが心臓の正常の洞律動を検出できるようにする。したがって、定期的に圧迫を停止して律動の存在を確認する必要がない。その結果、心肺蘇生の全体的な質が向上し、患者生存の可能性が高まる。
【0115】
システム識別装置140は図29の信号処理法に関連して記載されているものと同じ種類の機能や方法からなる。例えば、図29に関連して記載されている帰納的最小二乗法は、測定された心電図信号のノイズ成分を同定するために使用される。
【0116】
図32〜図35は、胸部圧迫中に心電図を測定するとき、ブタの実際心電図を推定するのに図31の方法を使用することの効果を示している。4つのグラフすべてについて、時間スケール151に伴うそれぞれの時間マーカ150は他の3つのグラフと同じ時間マーカにし、ひとつのグラフを他のグラフと直接比較できるようにする。しかし、図32、34、35の電圧スケール152は互いに少し異なっている。
【0117】
図32は、胸部圧迫によって引き起こされたノイズにより不正となった実際ブタ心電図信号のグラフ(ミリボルト対ミリ秒)である。図32は圧迫中に測定された信号処理されていない心電図である。
【0118】
図33は実際心肺蘇生の動きによる信号の力対時間のグラフである。動きの信号は時間がまちまちの力信号からなり、胸部圧迫の実施中ブタの胸部に置かれた心肺蘇生装置にかかる力に相応する。力のピーク153は圧迫の最大深度に相応する。圧迫モニタの場合、動きの信号は蘇生実施者または自動心肺蘇生装置が胸部圧迫を実施する間、患者胸部にかけられた力に相応する時間がまちまちの力信号よりなり得る。この場合、圧迫モニタ(圧迫モニタの後部など)に配置された力トランスデューサが圧迫の力を測定し、力信号を生成する。力信号は後に心電図ノイズと相応する。力トランスデューサまたはその他の力センサを患者の背中に配置しから圧迫モニタに接続する。
【0119】
図34は、図33に示す胸部圧迫により生じた、推定の心電図ノイズ信号の電圧対時間のグラフである。図33と図34の比較は、時間が様々な圧力信号が心電図ノイズの頻度に直接相応していることを示す。言い換えれば、胸部圧迫で生じた圧力ピーク153は、ノイズピーク154の発生率に相応する。
【0120】
ノイズを発する心電図の推定ノイズ成分を生成するために使用されるシステム識別装置140は、図29に関連して記載されている帰納的最小二乗法よりなる。自動回帰の順序は1と同じになるように選択された。移動平均順序は10となるように選択された。自動回帰の順序は10になるように選択された。派生的順序も0となるように選択された。(派生的順序はシステムモデルの中で用いられている直線あるいは非直線の用語である。特に先端を切ったような陽性派生物または先端を切ったような陰性派生物のどちらかである。非直線の用語は帰納的最小二乗法に適合するアルゴリズムの延長である。)忘却因子λは1.0000となるように選択した。
【0121】
図35は、ブタの推定の実際心電図信号のグラフである。図35のグラフは、図32の測定した心電図信号から図34の推定ノイズ信号を差し引いて作成したものである。推定の実際心電図信号はブタの実際心電図信号に近似している。
【0122】
ノイズ的な心電図信号(図30および図31)に関連して記載されている信号処理方法およびノイズ的な加速度信号(図28および図29)、またベースライン制限装置およびピーク制限装置に関連して記載されている技術は、患者の経胸腔インピーダンス(胸部の電気的抵抗またはインピーダンス)の実際値を推定するのにも使用される。患者の経胸腔インピーダンスの推定の実際値は、患者に徐細動器で電撃を与えるときに必要な電圧を決定するのに使用される。
【0123】
患者に圧迫を加えるときの経胸腔インピーダンスの測定値はノイズとなる。すでに記載した一般的な信号処理の解決法と制限装置は、測定された経胸腔インピーダンスのノイズ成分の特定、分離、除去に使用される。こうして、経胸腔インピーダンスの実際値を推定する。
【0124】
経胸腔インピーダンスの推定の実際値は患者の除細動を行う手段に提供される。患者の除細動を行う手段は、経胸腔インピーダンスの推定の実際値を使用して、患者の効果的な電撃に必要な適切な電圧を決定する。必要な電圧の正確な値はすでに知られているため、徐細動器を効果的に使用することができる(こうしてバッテリの消耗を防ぎデバイスの安全を確保する)。
【0125】
推定の実際心電図および推定の実際経胸腔インピーダンスが分かっているため、AED(自動外部除細動器)を備えた自動心肺蘇生装置は、圧迫を中断することなく患者に除細動電撃を実施することができる。デバイスは推定の実際心電図に基づいて除細動が適切であるときを判断し、推定の実際経胸腔インピーダンスに基づいて適切な除細動電圧を適用する。除細動のとき圧迫が中止されないため、患者の血流は停止しない(患者の生存がより確かなものとなることを意味する)。
【0126】
これらの信号処理技術(胸部深度測定または心電図測定のためのもの)を使用する圧迫モニタは、患者の胸部を圧迫するどのような手段にも応用できる。胸部を圧迫する手段は、手による心肺蘇生、電気刺激、自動心肺蘇生のための手段(モーターまたは手動レバーで操作するベルト、帯、ピストン、プレートなど)、または胸部圧迫のために適切なその他のデバイスからなる。自動心肺蘇生装置の例として、我々の特許(Sherman et al., Modular CPR Assist Device (シャーマンら「モジュラー心肺蘇生補助装置」);米国特許 6,066,106、2000年5月23日)、および我々の出願(CPR Assist Device with Pressure Bladder Feedback 「圧力嚢フィードバック式心肺蘇生補助装置」); 米国出願番号 09/866,377、2001年5月25日提出)がある。(両デバイスは、ベルトの短縮長または圧迫深度を測定するため、圧迫ベルトまたはドライブシャフトまたはスプールに配置した光学式または回転式エンコーダを使用する)。加速度測定器そのものは、圧迫による上下方向の加速度を感知できる部位に配置する。例えば、加速度測定器を圧迫ベルトのような胸部を圧迫する手段の中あるいは上に配置する。(手で圧迫する場合は、蘇生実施者が圧迫を行う間、圧迫モニタを蘇生実施者の手の下に配置することができ、また蘇生実施者の手、手首、腕に配置することができる。)
【0127】
我々の米国特許(6,390,996、Halperin et al.)で示した三軸加速度測定器、三軸荷重センサ、三軸位置変化測定装置、傾きセンサのような加速度測定器の傾きを感知する手段を圧迫モニタに提供すると、圧迫効果に関連して蘇生実施者を誘導することができる。ほとんどの患者にとって、圧迫を胸骨に対して直角に(ほとんどの場合まっすぐ下に向かって)実施すると圧迫は最も効果的になる。傾きセンサが圧迫方向の角度を測定し、特定の角度から外れた場合に角度を調整するため圧迫モニタが蘇生実施者を誘導する。
【0128】
圧迫モニタおよび信号処理装置は操作上徐細動器に接続される。蘇生実施者または装置が圧迫を実施している間、除細動器あるいは圧迫モニタは患者の心電図を追跡する。圧迫モニタの処理装置が患者に電撃を与えたほうが有益といえる心電図信号を測定した場合、除細動電撃を与えるよう、またはAEDに電撃を許可するよう蘇生実施者に指示が与えられる。圧迫中に患者の実際心電図を推定する手段は、米国特許(6,390,996、Halperin et al.)に開示されている我々の方法およびこの出願に開示されている方法からなる。
【0129】
圧迫モニタは換気を行うための手段にも接続される。蘇生実施者が15回など適切な回数の圧迫を実施した後、圧迫モニタは圧迫を一旦停止するよう蘇生実施者に指示を出す。換気を実施する手段は適切な回数だけ換気を行う。換気の後、圧迫モニタは患者の状態を評価する。さらに圧迫が必要な場合は、圧迫モニタは圧迫を再開するよう蘇生実施者に指示を与える。換気を実施する手段は、蘇生実施者、バッグまたはバルーン、陽圧人工呼吸装置、我々の特許(Sherman et al., Chest Compression Device with Electro-Stimulation 「電気刺激による胸部圧迫装置」、米国特許6,213,960、2001年4月10日)に示した電気式呼吸装置、その他の換気を実施する手段からなる。
【0130】
圧迫モニタにはさらに、圧迫モニタが遠隔ネットワークと交信できるようにする通信手段が設けられてもよい。通信手段は、信号伝達装置と圧迫モニタ通信装置からなる。信号伝達体は電話回線、直通ケーブル、専用デジタルネットワーク、携帯電話ネットワーク、衛星通信アレイ、ラジオ、その他の電磁波、LED、インターネット、信号を伝達するその他の手段からなる。圧迫モニタ通信装置は、ラジオまたはその他の電磁波送信装置および受信装置、LED、モデム、信号伝達体を送り出す装置と受ける装置からなる。通信手段は圧迫モニタが遠隔ネットワークから情報をアップロードあるいはダウンロードできるようにする。圧迫モニタには、グローバルポジショニングシステムリーダ(GPSリーダ)、スピーカ、キーパッド、電話、モデム、マイクロフォン、カメラ、視覚ディスプレイを装備し、ユーザが情報を受けたり入力したりできるようにする。データはブルーツース標準のような既知の通信標準を使って通信のための手段で交換することができる。
【0131】
遠隔ネットワークは、その他の情報を圧迫モニタに提供し、圧迫モニタから情報を受信することができる。例えば、現在およびその後の緊急事態の中で圧迫モニタを追加の波形、患者の治療歴、換気率、その他の圧迫関連情報で最新化することができる。一群のモニタを1つのネットワークで使用している場合、遠隔ネットワークから各圧迫モニタを別々に追跡し、別々の情報を提供することができる(確証されている場合に限る)。遠隔ネットワークそのものは、1つまたは複数のコンピュータ、インターネット、別の心肺蘇生関連装置、また圧迫モニタを遠隔からプログラムできるあるいは蘇生実施者に指示を与えることができる操作者からなる。
【0132】
使用中、圧迫モニタはショッピングモールや公共の場所などの現場で提供され、必要になるまで保管される。一旦作動されたら、圧迫モニタは緊急電話センタのコンピュータである遠隔ネットワークとの間に通信ラインを確立する。警察、消防署、救急車サービスなどの緊急電話に応答する部署は、活性化を感知しGPSリーダによりピンポイントで現場への経路を指示するか、圧迫モニタを活性化させた人に連絡を取る。遠隔ネットワークのコンピュータおよびコンピュータの使用訓練を受けた人が、圧迫モニタからのリアルタイムの血流データをモニタしながら蘇生実施者に音声で指示を与えることができる。操作者またはコンピュータは、圧迫モニタまたは蘇生実施者に別の情報を時間を追って提供する。例えば、圧迫モニタは蘇生実施者に指示を出すべき圧迫波形に関するデータを提供され、操作者は声で蘇生実施者を指導することができる。それに変わって、圧迫モニタは医療分析のために、圧迫深度、割合、力、波形、デューティサイクルなどのデータを操作者およびコンピュータに提供する。蘇生実施者が疲れてきた場合、操作者は蘇生実施者が蘇生を実施し易くなるよう代わりの波形を提供することができる。同様に、操作者は蘇生実施者に声で激励することができる。
【0133】
通信手段の別の用法は、圧迫モニタの自動または誘導式メンテナンスを可能にすることである。定期的にまたは持続的に圧迫モニタは遠隔ネットワークと交信し、バッテリの寿命と状態、使用回数、パーツの交換の必要性、その他のメンテナンスに関係する情報などのデータを送信する。応答として、圧迫モニタはソフトウェアの更新などのメンテナンスを自動的に実施するか、またはユーザにメンテナンスを実施するよう誘導する。通信手段の別の用法は、圧迫モニタが緊急応答の間に使用されたその他の製品と交信できるようにすることである。そのような製品の例には、上記の製品、薬物ディスペンサ、緊急事態に応答するための有用なその他の製品が含まれる。
【0134】
製品を組み合わせての使用例では、蘇生実施者が圧迫モニタを用いた手による蘇生を開始することから始まる。救急医療の人員は現場に到着したら、AEDを装備した自動胸部圧迫装置を展開する。自動胸部圧迫装置は圧迫モニタと情報を交換するようになっている。自動胸部圧迫装置を展開した後、圧迫モニタは自動的に胸部圧迫装置と通信を交わし、圧迫下の時間、理想的な波形と比較したときの圧迫の質、心電図歴、その他の関連する医療データなどの治療歴をそれに送付する。圧迫モニタから与えられた情報に基づいて、自動胸部圧迫装置は圧迫を開始する前に除細動電撃を患者に提供することがある。逆に、自動胸部圧迫装置は転送されたデータに基づいて、胸部圧迫が電撃を与える前まで継続する必要があることを決定する。
【0135】
製品を組み合わせた別の例には、圧迫モニタおよび分離信号処理装置がある。信号処理装置は、1つまたは複数のフィジカルクリップ(ハードウェア)コンピュータプログラム(ソフトウェア)として提供される。どちらの場合も、信号処理装置は別々のユニットまたはモジュールにして、モニタに直接内蔵させる必要はない。したがって、信号処理ユニットは独立した製品として提供される。このように、この装置と方法の望ましい実施形態は開発の土台となった状況に関連して記載してきたが、これはこの発明の基本的な概要を単に説明したものである。この発明の精神および添付の特許請求の範囲から離れることなく、その他の実施形態および構成が工夫されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】図1は、患者および患者に取り付けられた加速度測定器の圧迫モニタを示している。
【図2】図2は、一期間の信号処理前の圧迫深度のグラフを示す。ここで圧迫深度は加速度測定値から導き出されている。
【図3】図3は、一期間の信号処理前の圧迫速度のグラフを示す。ここで圧迫速度は加速度測定値から導き出されている。
【図4】図4は、一期間の信号処理前の圧迫加速度のグラフを示す。ここで圧迫加速度は加速度測定器によって測定されている。
【図5】図5は、生の圧迫加速度を推定の実際圧迫深度に変換する信号処理技術のフローチャートである。
【図6】図6は、生の圧迫加速度を推定の実際圧迫深度に変換する別の信号処理技術のフローチャートである。
【図7】図7は、生の加速度をフィルタにかけた後の一期間の圧迫深度のグラフを示す。
【図8】図8は、生の加速度をフィルタにかけた後の一期間の圧迫速度のグラフを示す。
【図9】図9は、生の加速度をフィルタにかけた後の一期間の圧迫加速度のグラフを示す。
【図10】図10は、生の加速度と導き出された速度の両方をフィルタにかけた後の一期間の圧迫深度のグラフを示す。
【図11】図11は、生の加速度と導き出された速度の両方をフィルタにかけた後の一期間の圧迫速度のグラフを示す。
【図12】図12は、生の加速度をフィルタにかけた後の一期間の圧迫加速度のグラフを示す。
【図13】図13は、生の加速度と導き出された速度の両方をフィルタにかけ、ベースライン制限装置を圧迫深度の波形に適用した後の一期間の圧迫深度のグラフを示す。
【図14】図14は、生の加速度と導き出された速度の両方をフィルタにかけ、ベースライン制限装置を圧迫速度の波形に適用した後の一期間の圧迫速度のグラフを示す。
【図15】図15は、生の加速度をフィルタにかけ、ベースライン制限装置を圧迫加速度の波形に適用した後の一期間の圧迫加速度のグラフを示す。
【図16】図16は、生の加速度と導き出された速度の両方をフィルタにかけ、ベースライン制限装置およびピーク制限装置を圧迫深度の波形に適用した後の一期間の圧迫深度のグラフを示す。
【図17】図17は、生の加速度と導き出された速度の両方をフィルタにかけ、ベースライン制限装置およびピーク制限装置を圧迫速度の波形に適用した後の一期間の圧迫速度のグラフを示す。
【図18】図18は、生の加速度をフィルタにかけ、ベースライン制限装置およびピーク制限装置を圧迫加速度の波形に適用した後の一期間の圧迫加速度のグラフを示す。
【図19】図19は、加速度測定器が加速度測定をいつ開始するかをコントロールするスイッチをオンにするのに心電図ノイズの変化を使用する信号処理技術のフローチャートである。
【図20】図20は、報告された圧迫深度波形に陰性ドリフトを伴う、一期間の信号処理前の圧迫深度のグラフを示す。
【図21】図21は、報告された圧迫速度波形に陰性ドリフトを伴う、一期間の信号処理前の圧迫速度のグラフを示す。
【図22】図22は、報告された圧迫加速度波形に陰性ドリフトを伴う、一期間の信号処理前の圧迫加速度のグラフを示す。
【図23】図23は、実際開始点を確立するために心電図ノイズの変化を利用して修正された図のグラフを示す。
【図24】図24は、実際開始点を確立するために心電図ノイズの変化を利用して修正された図のグラフを示す。
【図25】図25は、実際開始点を確立するために心電図ノイズの変化を利用して修正された図のグラフを示す。
【図26】図26は、患者に取り付けた加速度測定器に基づく圧迫モニタおよび基準加速度測定器、スイッチ、胸部圧迫に関するさまざまなパラメータを測定するように配置されたいくつかの荷重センサからなる基準センサのシステムを示す。
【図27】図27は、ユーザフィードバック装置が蘇生実施者へ圧迫実施のための先導となる圧迫波形を描いている。
【図28】図28は、実際胸部圧迫加速度が胸部位置の不正な値にどのように変換されるかを示すブロック図である。
【図29】図29は、不正な胸部圧迫加速度を胸部圧迫の推定の実際深度に変換するための一般的な解決のブロック図である。
【図30】図30は、実際心電図信号が不正な心電図信号にどのように変換されるかを示すブロック図である。
【図31】図31は、動きにより不正となった心電図信号を推定の実際心電図信号に変換するための一般的な解決のブロック図である。
【図32】図32は、胸部圧迫によって引き起こされたノイズにより不正となったブタ心電図信号のグラフである。
【図33】図33は、心肺蘇生をブタに施行したときの、心肺蘇生の動作のグラフである。
【図34】図34は、ブタの推定心電図ノイズ信号のグラフである。
【図35】図35は、ブタの推定の実際心電図信号のグラフである。
【符号の説明】
【0137】
1…患者
2…圧迫モニタ
3…胸骨
4…プロセッサ
5…位置変化ディスプレイ
7…心電図ディスプレイ
34…生の加速度信号
35…フィルタ
36…統合
37…フィルタ
38…統合
39,47,48…ベースライン制限装置
51…フィルタ
52…開始点検出器
55,56,57…ピーク制限装置
58…フィルタ
59…ピーク検出器
61…推定の実際深度
62…ユーザフィードバック
【特許請求の範囲】
【請求項1】
胸部圧迫時の深度測定のための装置であって、
胸部圧迫の加速度に相応する加速度信号を生成可能な加速度測定器と、
前記加速度測定器に接続され、胸部圧迫の測定深度に相応する測定深度信号の生成可能な、前記加速度信号を統合する統合手段と、
前記統合手段に接続され、測定された深度信号の自動回帰移動平均を計算することにより胸部圧迫の推定の実際深度に相応する推定の実際深度信号を生成するようにプログラムされたプロセッサと、を備えた装置。
【請求項2】
前記プロセッサに接続されたディスプレイをさらに備え、前記ディスプレイは推定の実際深度信号を表示可能であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記プロセッサに接続されたユーザフィードバック手段をさらに備え、前記ユーザフィードバック手段は、胸部圧迫が事前に設定された数値範囲内に収まっているかどうかを示すフィードバックを提供可能であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
実際成分のほかにノイズ成分が含まれている患者の心電図信号を測定する手段と、
前記心電図信号を測定する手段と前記プロセッサとに接続され、前記心電図信号のノイズ成分を推定する手段とをさらに備え、
前記プロセッサは、前記心電図信号のノイズ成分が予め定められている範囲内になったとき、推定の実際深度信号を生成するようさらにプログラムされていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記プロセッサに接続されたディスプレイをさらに備え、前記ディスプレイは推定の実際深度信号を表示可能であることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記プロセッサに接続されたユーザフィードバック手段をさらに備え、
前記ユーザフィードバック手段は、胸部圧迫が事前に設定された数値範囲内に収まっているかどうかを示すフィードバックを提供可能であることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項7】
プロセッサはさらに胸部圧迫の割合を測定可能であり、前記ユーザフィードバック手段はさらに胸部圧迫の割合を表示可能であることを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記プロセッサはさらに胸部圧迫のデューティサイクルを測定可能であり、前記ユーザフィードバック手段はさらに胸部圧迫のデューティサイクルを表示可能であることを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項9】
心肺蘇生中に患者の換気を行うことができる換気手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記換気手段は電気的換気を実施する手段からなることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
胸部圧迫を実施するための装置であって、
患者の胸部圧迫を実施する手段と、
胸部圧迫の加速度に相応する加速度信号を生成可能な加速度測定器と、
前記加速度測定器に接続され、胸部圧迫の測定深度に相応する測定深度信号を生成可能な、前記加速度信号を統合する統合手段と、
前記統合手段と前記胸部圧迫を実施する手段とに接続され、測定された深度信号の自動回帰移動平均を計算することにより胸部圧迫の推定の実際深度に相応する推定の実際深度信号を生成可能なプロセッサとを備え、
前記胸部圧迫を実施する手段は前記推定の実際深度信号に基づいて胸部圧迫の深度を調整可能であることを特徴とする装置。
【請求項12】
前記胸部圧迫を実施する手段は自動胸部圧迫装置からなることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
実際成分のほかにノイズ成分が含まれている患者の心電図信号を測定する手段と、
前記心電図信号を測定するための手段と前記プロセッサとに接続され、前記心電図信号のノイズ成分を推定する手段とをさらに備え、
前記プロセッサは、前記心電図信号のノイズ成分が予め定められている範囲内になったとき、推定の実際深度信号を生成するようさらにプログラムされていることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項14】
前記胸部圧迫を実施する手段は自動胸部圧迫装置からなることを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項15】
心肺蘇生中に患者の換気を行うことができる換気手段をさらに備えていることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項16】
前記換気手段は電気的換気を実施する手段からなることを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記プロセッサに接続されたディスプレイをさらに備え、前記ディスプレイは推定の実際深度信号を表示可能であることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項18】
前記プロセッサに接続されたユーザフィードバック手段をさらに備え、前記ユーザフィードバック手段は、胸部圧迫が事前に設定された数値範囲内に収まっているかどうかを示すフィードバックを提供可能であることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項19】
前記プロセッサはさらに胸部圧迫の割合を測定可能であり、前記ユーザフィードバック手段はさらに胸部圧迫の割合を表示可能であることを特徴とする請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記プロセッサはさらに胸部圧迫のデューティサイクルを測定可能であり、前記ユーザフィードバック手段はさらに胸部圧迫のデューティサイクルを表示可能であることを特徴とする請求項18に記載の装置。
【請求項21】
胸部圧迫時の深度測定のための装置であって、
胸部圧迫の加速度に相応する、ノイズ成分と実際成分とが含まれる加速度信号を生成する加速度測定器と、
前記加速度測定器に接続され、胸部圧迫の推定の実際加速度に相応する推定の実際加速度信号を前記加速度信号から生成可能であるプロセッサとを備え、
前記プロセッサは、前記加速度測定器に接続され、前記加速度信号のノイズ成分に相応する推定ノイズ信号を生成可能で、かつ、測定された加速度と少なくとも1つのエラー源基準とを処理して推定ノイズ信号を生成するシステム識別装置と、前記システム識別装置および前記加速度測定器に接続され、推定の実際加速度信号を生成するために前記加速度信号と前記推定ノイズ信号とを組み合わせることができる信号組み合わせ手段とを有し、
さらに、前記胸部圧迫時の深度測定のための装置は、前記プロセッサに接続され、推定の実際加速度信号を統合して胸部圧迫の推定の実際深度に相応する推定の実際深度信号を生成可能である統合手段を備えたことを特徴とする装置。
【請求項22】
前記プロセッサに接続されたディスプレイをさらに備え、前記ディスプレイは推定の実際深度信号を表示可能であることを特徴とする請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記プロセッサに接続されたユーザフィードバック手段をさらに備え、前記ユーザフィードバック手段は、胸部圧迫が事前に設定された数値範囲内に収まっているかどうかを示すフィードバックを提供可能であることを特徴とする請求項21に記載の装置。
【請求項24】
前記プロセッサはさらに胸部圧迫の割合を測定可能であり、前記ユーザフィードバック手段はさらに胸部圧迫の割合を表示可能であることを特徴とする請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記プロセッサはさらに胸部圧迫のデューティサイクルを測定可能であり、前記ユーザフィードバック手段はさらに胸部圧迫のデューティサイクルを表示可能であることを特徴とする請求項23に記載の装置。
【請求項26】
実際成分のほかにノイズ成分が含まれている患者の心電図信号を測定する手段と、
前記心電図信号測定手段と前記プロセッサとに接続され、前記心電図信号のノイズ成分を推定する手段とをさらに備え、
前記プロセッサは、前記心電図信号のノイズ成分が予め定められている範囲内になったとき、推定の実際深度信号を生成するようさらにプログラムされていることを特徴とする請求項21に記載の装置。
【請求項27】
前記プロセッサに接続されたディスプレイをさらに備え、前記ディスプレイは推定の実際深度信号を表示可能であることを特徴とする請求項26に記載の装置。
【請求項28】
前記プロセッサに接続されたユーザフィードバック手段をさらに備え、前記ユーザフィードバック手段は、胸部圧迫が事前に設定された数値範囲内に収まっているかどうかを示すフィードバックを提供可能であることを特徴とする請求項26に記載の装置。
【請求項29】
前記プロセッサはさらに胸部圧迫の割合を測定可能であり、前記ユーザフィードバック手段はさらに胸部圧迫の割合を表示可能であることを特徴とする請求項28に記載の装置。
【請求項30】
前記プロセッサはさらに胸部圧迫のデューティサイクルを測定可能であり、前記ユーザフィードバック手段はさらに胸部圧迫のデューティサイクルを表示可能であることを特徴とする請求項28に記載の装置。
【請求項31】
心肺蘇生中に患者の換気を行うことができる換気手段をさらに備えたことを特徴とする請求項21に記載の装置。
【請求項32】
前記換気手段は電気的換気を実施する手段からなることを特徴とする請求項31に記載の装置。
【請求項33】
胸部圧迫を実施するための装置であって、
患者の胸部圧迫を実施する手段と、
胸部圧迫の加速度に相応する、ノイズ成分と実際成分が含まれている加速度信号を生成する加速度測定器と、
前記加速度測定器に接続され、胸部圧迫の推定の実際加速度に相応する推定の実際加速度信号を前記加速度信号から生成可能であるプロセッサとを備え、
前記プロセッサは、前記加速度測定器に接続され、前記加速度信号のノイズ成分に相応する推定ノイズ信号を生成可能であり、かつ、測定された加速度と少なくとも1つのエラー源基準とを処理して推定ノイズ信号を生成するシステム識別装置と、前記システム識別装置および前記加速度測定器に接続され、前記推定の実際加速度信号を生成するために前記加速度信号と前記推定ノイズ信号とを組み合わせることができる信号組み合わせ手段とを有し、
さらに、前記胸部圧迫を実施するための装置は、前記プロセッサに接続され、前記推定の実際加速度信号を統合して胸部圧迫の前記推定の実際深度に相応する前記推定の実際深度信号を生成可能な、前記推定の実際加速度信号を統合する手段を備え、
前記胸部圧迫を実施する手段は前記推定の実際深度信号に基づいて胸部圧迫の深度を調整可能であることを特徴とする装置。
【請求項34】
前記プロセッサに接続されたディスプレイをさらに備え、前記ディスプレイは前記推定の実際深度信号を表示可能であることを特徴とする請求項33に記載の装置。
【請求項35】
前記プロセッサに接続されたユーザフィードバック手段をさらに備え、前記ユーザフィードバック手段は、胸部圧迫が事前に設定された数値範囲内に収まっているかどうかを示すフィードバックを提供可能であることを特徴とする請求項33に記載の装置。
【請求項36】
前記プロセッサはさらに胸部圧迫の割合を測定可能であり、前記ユーザフィードバック手段はさらに胸部圧迫の割合を表示可能であることを特徴とする請求項35に記載の装置。
【請求項37】
前記プロセッサはさらに胸部圧迫のデューティサイクルを測定可能であり、前記ユーザフィードバック手段はさらに胸部圧迫のデューティサイクルを表示可能であることを特徴とする請求項35に記載の装置。
【請求項38】
実際成分のほかにノイズ成分が含まれている患者の心電図信号を測定する手段と、
前記心電図信号を測定するための手段と前記プロセッサとに接続され、前記心電図信号のノイズ成分を推定する手段とをさらに備え、
前記プロセッサは、前記心電図信号のノイズ成分が予め定められている範囲内になったとき、前記推定の実際深度信号を生成するようさらにプログラムされていることを特徴とする請求項33に記載の装置。
【請求項39】
前記プロセッサに接続されたディスプレイをさらに備え、前記ディスプレイは前記推定の実際深度信号を表示可能であることを特徴とする請求項38に記載の装置。
【請求項40】
前記プロセッサに接続されたユーザフィードバック手段をさらに備え、前記ユーザフィードバック手段は、胸部圧迫が事前に設定された数値範囲内に収まっているかどうかを示すフィードバックを提供可能であることを特徴とする請求項38に記載の装置。
【請求項41】
前記プロセッサはさらに胸部圧迫の割合を測定可能であり、前記ユーザフィードバック手段はさらに胸部圧迫の割合を表示可能であることを特徴とする請求項40に記載の装置。
【請求項42】
前記プロセッサはさらに胸部圧迫のデューティサイクルを測定可能であり、前記ユーザフィードバック手段はさらに胸部圧迫のデューティサイクルを表示可能であることを特徴とする請求項40に記載の装置。
【請求項43】
心肺蘇生中に患者の換気を行うことができる換気手段をさらに備えたことを特徴とする請求項33に記載の装置。
【請求項44】
前記換気手段は電気的換気を実施する手段からなることを特徴とする請求項43に記載の装置。
【請求項45】
胸部圧迫を実施しながら患者の実際の心電図信号を推定するための装置であって、
患者の胸部圧迫を実施する手段と、
患者の前記心電図信号を感知し、患者の実際成分およびノイズ成分からなる前記心電図信号の測定値に相応する測定された心電図信号を生成可能な手段と、
前記胸部圧迫を実施する手段に接続され、胸部圧迫が存在するときに応答する圧迫信号を生成可能な圧迫センサと、
前記圧迫センサと前記心電図信号を感知する手段とに接続され、患者の前記推定の実際心電図信号に相応する推定の実際心電図信号を生成可能なプロセッサとを備え、
前記プロセッサは、
前記圧迫センサに接続され、前記心電図信号の推定ノイズ成分を生成可能で、かつ、前記測定された心電図信号および前記圧迫信号を処理することにより前記心電図信号の推定ノイズ成分を生成するシステム識別装置と、
前記システム識別装置および前記心電図信号を感知する手段に接続され、前記推定の実際心電図信号を生成するために、前記測定された心電図信号と前記心電図信号の推定ノイズ成分とを組み合わせることができる信号組み合わせ手段とを有する、ことを特徴とする装置。
【請求項46】
前記圧迫センサは荷重センサからなることを特徴とする請求項45に記載の装置。
【請求項47】
前記荷重センサは患者の下に配置されることを特徴とする請求項46に記載の装置。
【請求項48】
前記圧迫センサは圧迫ベルトの位置変化を測定する手段からなることを特徴とする請求項45に記載の装置。
【請求項49】
前記圧迫ベルトの位置変化を測定する手段はエンコーダからなることを特徴とする請求項48に記載の装置。
【請求項50】
前記エンコーダは回転式エンコーダからなることを特徴とする請求項49に記載の装置。
【請求項51】
前記エンコーダは光学エンコーダからなることを特徴とする請求項49に記載の装置。
【請求項52】
前記圧迫センサは加速度測定器からなることを特徴とする請求項45に記載の装置。
【請求項53】
前記システム識別装置は移動平均フィルタからなることを特徴とする請求項45に記載の装置。
【請求項54】
前記システム識別装置は自動回帰移動平均フィルタからなることを特徴とする請求項45に記載の装置。
【請求項55】
前記システム識別装置は先端を切ったような派生的自動回帰移動平均フィルタからなることを特徴とする請求項45に記載の装置。
【請求項56】
前記システム識別装置はカルマンフィルタからなることを特徴とする請求項45に記載の装置。
【請求項57】
前記システム識別装置は帰納的最小二乗法フィルタからなることを特徴とする請求項45に記載の装置。
【請求項58】
前記システム識別装置は帰納的器具変数フィルタからなることを特徴とする請求項45に記載の装置。
【請求項59】
前記システム識別装置は帰納的予測誤差フィルタからなることを特徴とする請求項45に記載の装置。
【請求項60】
前記システム識別装置は帰納的偽直線回帰フィルタからなることを特徴とする請求項45に記載の装置。
【請求項61】
前記システム識別装置は時間変動システムフィルタのための帰納的カルマンフィルタからなることを特徴とする請求項45に記載の装置。
【請求項62】
前記システム識別装置はパラメトリック多様性フィルタを有する帰納的カルマンフィルタからなる。
【請求項63】
胸部圧迫中の胸部圧迫の推定の実際深度を決定する方法であって、
胸部圧迫で生じる加速度を感知可能な加速度測定器を提供するステップと、
胸部圧迫を実施し、前記加速度測定器で胸部圧迫中の加速度信号を測定するステップと、
胸部圧迫の測定深度に相応する測定された深度信号を生成するために前記加速度信号を2回統合するステップと、
測定された圧迫深度信号の自動回帰移動平均を計算するステップと、を含み、
圧迫の推定の実際深度は測定された圧迫深度信号の自動移動平均からなることを特徴とする方法。
【請求項64】
圧迫開始を特定可能な基準センサを提供するステップと、
前記基準センサで圧迫開始を特定するステップと、
圧迫開始が特定されたときの圧迫の推定の実際深度を計算するステップと、をさらに含むことを特徴とする請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記基準センサの提供ステップは、患者の心電図信号を測定可能なセンサを提供することからなり、
圧迫中、ノイズ成分と実際成分からなる患者の心電図信号を測定するステップと、
前記心電図信号のノイズ成分を特定するステップと、をさらに含み、
各圧迫の開始は前記心電図信号のノイズ成分の事前に設定された変化によって特定されることを特徴とする請求項64に記載の方法。
【請求項66】
胸部圧迫中の胸部圧迫の実際深度を推定する方法であって、
胸部圧迫で生じる加速度を感知可能な加速度測定器を提供するステップと、
圧迫を実施し、前記加速度測定器で胸部圧迫の前記加速度に相応する加速度信号を生成するステップと、
前記加速度信号を第1のフィルタに通し、前記第1のフィルタがフィルタ済み加速度信号を生成するステップと、
前記フィルタ済み加速度信号をプロセッサに提供し、前記プロセッサが前記フィルタ済み加速度信号を統合して胸部圧迫の速度に相応する速度信号を生成するステップと、
前記速度信号を第2のフィルタに通し、前記第2のフィルタがフィルタ済み速度信号を生成するステップと、
前記フィルタ済み速度信号を前記プロセッサに提供し、前記プロセッサが前記フィルタ済み速度信号を統合して胸部圧迫の深度に相応する胸部深度信号を生成するステップと、
前記胸部深度信号をベースライン制限装置に提供し、前記ベースライン制限装置が処理済みベースライン成分付きの胸部深度信号を生成するステップと、
前記処理済みベースライン成分付きの胸部深度信号を開始点検出器に提供し、前記開始点検出器が胸部圧迫の開始点を特定し、さらに胸部圧迫開始点に相応する開始点信号を、信号組み合わせ手段に提供するステップと、
前記処理済みベースライン成分付きの胸部深度信号をピーク制限装置に提供し、前記ピーク制限装置が処理済みピーク成分付きの胸部深度信号を生成するステップと、
前記処理済みピーク成分付きの胸部深度信号をピーク検出器に提供し、前記ピーク検出器は圧迫の最大深度に相応する胸部圧迫のピークを特定し、さらに胸部圧迫のピークに相応するピーク信号を前記信号組み合わせ手段に提供するステップと、
前記開始点信号を前記ピーク信号と組み合わせることにより胸部圧迫の推定の実際深度を計算するステップと、を含む方法。
【請求項67】
処理済みベースライン成分付きの前記胸部深度信号をフィルタに通すステップをさらに含むことを特徴とする請求項66に記載の方法。
【請求項68】
処理済みピーク成分付きの前記胸部深度信号をフィルタに通すステップをさらに含むことを特徴とする請求項66に記載の方法。
【請求項69】
前記プロセッサに接続されたユーザフィードバック手段に圧迫の推定の実際深度を提供するステップと、
胸部圧迫が事前に設定された数値範囲内にあるか否かを示すフィードバックをユーザに提供するステップと、をさらに含むことを特徴とする請求項66に記載の方法。
【請求項70】
圧迫開始を特定可能な基準センサを提供するステップと、
前記基準センサで圧迫開始を特定するステップと、
圧迫開始が特定されたときに圧迫の推定の実際深度を計算するステップと、をさらに含むことを特徴とする請求項66に記載の方法。
【請求項71】
前記基準センサを提供するステップは、患者の心電図を測定可能なセンサを提供ことからなり、
圧迫中、ノイズ成分と実際成分からなる患者の心電図信号を測定するステップと、
前記心電図信号のノイズ成分を特定するステップと、をさらに含み、
各圧迫の開始は前記心電図信号のノイズ成分の事前に設定された変化によって特定されることを特徴とする請求項70に記載の方法。
【請求項72】
胸部圧迫中の胸部圧迫の実際深度を推定する方法であって、
患者に胸部圧迫を実施する手段を提供するステップと、
患者の心電図信号を測定可能なセンサを提供するとともに、胸部圧迫の加速度を測定可能な加速度測定器を提供するステップと、
患者の胸部圧迫を実施し、前記加速度測定器が胸部圧迫の加速度に相応する加速度信号を生成するステップと、
測定済み心電図信号は実際成分およびノイズ成分からなり、少なくともノイズ成分の一部は胸部圧迫により生じることとなる患者の心電図信号を測定するステップと、
前記心電図信号のノイズ成分を特定し、圧迫の開始点が前記心電図信号のノイズ成分の変化で特定されるステップと、
圧迫の開始点が特定されたときに前記加速度信号を2回統合することにより圧迫の推定の実際深度を計算するステップと、を含む方法。
【請求項73】
患者に心肺蘇生を実施する方法であって、
胸部圧迫で生じる加速度を感知可能な加速度測定器を提供するステップと、
胸部圧迫を実施し、前記加速度測定器で胸部圧迫中の加速度信号を測定するステップと、
胸部圧迫の測定深度に相応する測定された深度信号を生成するために前記加速度信号を2回統合するステップと、
測定された圧迫深度信号の自動回帰移動平均を計算し、ここでは圧迫の推定の実際深度が前記測定された圧迫深度信号の自動移動平均からなるステップと、
患者を換気する手段を提供するステップと、
心肺蘇生中に患者を換気するステップと、を含む方法。
【請求項74】
患者を換気する方法を提供するステップは電気的換気手段を提供することからなることを特徴とする請求項73に記載の方法。
【請求項75】
圧迫開始を特定可能な基準センサを提供するステップと、
前記基準センサで圧迫開始を特定するステップと、
圧迫開始が同定されたときに圧迫の推定の実際深度を計算するステップと、をさらに含むことを特徴とする請求項73に記載の方法。
【請求項76】
前記基準センサを提供するステップは、患者の心電図信号を測定可能なセンサを提供することからなり、
圧迫中、ノイズ成分と実際成分からなる患者の心電図信号を測定するステップと、
前記心電図信号のノイズ成分を特定するステップと、をさらに含み、
各圧迫の開始が前記心電図信号のノイズ成分の事前に設定された変化によって特定されることを特徴とする請求項75に記載の方法。
【請求項77】
自動胸部圧迫装置により胸部圧迫を行いながら患者の実際心電図信号を推定する方法であって、
患者の心電図信号を測定可能な心電図センサを提供し、前記心電図センサが実際成分およびノイズ成分を含んだ、測定された心電図信号を生成するステップと、
患者に胸部圧迫を実施するために配置された自動胸部圧迫装置を提供し、前記胸部圧迫装置はそれにより感知された荷重が事前に設定された数値を超えるときに胸部圧迫の存在を決定可能である荷重センサを有し、前記荷重センサが胸部圧迫の存在に相応する圧迫信号を生成するステップと、
圧迫を実施するステップと、
測定された心電図信号をシステム識別装置に提供するステップと、
前記圧迫信号を前記システム識別装置に提供するステップと、
前記システム識別装置で、前記測定された心電図信号と前記圧迫信号を処理することにより前記測定された心電図信号のノイズ成分を推定するステップと、
前記測定された心電図信号および前記測定された心電図信号の推定ノイズ成分を、信号組み合わせ手段に提供するステップと、
前記測定された心電図信号と前記測定された心電図信号のノイズ成分とを組み合わせることにより、前記推定の実際心電図を前記信号組み合わせ手段で計算するステップと、を含む方法。
【請求項78】
前記荷重センサを有する前記自動胸部圧迫装置を提供するステップは、圧迫中患者の下に配置される荷重センサを有する自動胸部圧迫装置を提供することからなることを特徴とする請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記システム識別装置は移動平均フィルタからなることを特徴とする請求項77に記載の方法。
【請求項80】
前記システム識別装置は自動回帰移動平均フィルタからなることを特徴とする請求項77に記載の方法。
【請求項81】
前記システム識別装置は先端を切ったような派生的自動回帰移動平均フィルタからなることを特徴とする請求項77に記載の方法。
【請求項82】
前記システム識別装置はカルマンフィルタからなることを特徴とする請求項77に記載の方法。
【請求項83】
前記システム識別装置は帰納的最小二乗法フィルタからなることを特徴とする請求項77に記載の方法。
【請求項84】
前記システム識別装置は帰納的器具変数フィルタからなることを特徴とする請求項77に記載の方法。
【請求項85】
前記システム識別装置は帰納的予測誤差フィルタからなることを特徴とする請求項77に記載の方法。
【請求項86】
前記システム識別装置は帰納的偽直線回帰フィルタからなることを特徴とする請求項77に記載の方法。
【請求項87】
前記システム識別装置は時間変動システムフィルタのための帰納的カルマンフィルタからなることを特徴とする請求項77に記載の方法。
【請求項88】
前記システム識別装置はパラメトリック多様性フィルタを有する帰納的カルマンフィルタからなることを特徴とする請求項77に記載の方法。
【請求項89】
自動胸部圧迫装置により胸部圧迫を行いながら患者の実際心電図信号を推定する方法であって、
患者の心電図信号を測定可能な心電図センサを提供し、前記心電図センサが実際成分およびノイズ成分を含んだ、測定された心電図信号を生成するステップと、
患者に胸部圧迫を実施するために配置される自動胸部圧迫装置を提供し、前記胸部圧迫装置は胸部圧迫の存在を決定可能なエンコーダを有し、前記エンコーダが胸部圧迫の存在に相応する圧迫信号を生成するステップと、
圧迫を実施するステップと、
前記測定された心電図信号をシステム識別装置に提供するステップと、
前記圧迫信号を前記システム識別装置に提供するステップと、
前記システム識別装置で、前記測定された心電図信号と前記圧迫信号とを処理することにより前記測定された心電図信号のノイズ成分を推定するステップと、
前記測定された心電図信号および前記測定された心電図信号の推定ノイズ成分を、信号組み合わせ手段に提供するステップと、
前記測定された心電図信号と前記測定された心電図信号のノイズ成分とを組み合わせることにより、前記推定の実際心電図を前記信号組み合わせ手段で計算するステップと、を含む方法。
【請求項90】
前記エンコーダを有する自動胸部圧迫装置を提供するステップは、光学エンコーダを有する自動胸部圧迫装置を提供することからなることを特徴とする請求項89に記載の方法。
【請求項91】
前記エンコーダを有する自動胸部圧迫装置を提供するステップは、回転式エンコーダを有する自動胸部圧迫装置を提供することからなることを特徴とする請求項89に記載の方法。
【請求項92】
前記システム識別装置は移動平均フィルタからなることを特徴とする請求項89に記載の方法。
【請求項93】
前記システム識別装置は自動回帰移動平均フィルタからなることを特徴とする請求項89に記載の方法。
【請求項94】
前記システム識別装置は先端を切ったような派生的自動回帰移動平均フィルタからなることを特徴とする請求項89に記載の方法。
【請求項95】
前記システム識別装置はカルマンフィルタからなることを特徴とする請求項89に記載の方法。
【請求項96】
前記システム識別装置は帰納的最小二乗法フィルタからなることを特徴とする請求項89に記載の方法。
【請求項97】
前記システム識別装置は帰納的器具変数フィルタからなることを特徴とする請求項89に記載の方法。
【請求項98】
前記システム識別装置は帰納的予測誤差フィルタからなることを特徴とする請求項89に記載の方法。
【請求項99】
前記システム識別装置は帰納的偽直線回帰フィルタからなることを特徴とする請求項89に記載の方法。
【請求項100】
前記システム識別装置は時間変動システムフィルタのための帰納的カルマンフィルタからなることを特徴とする請求項89に記載の方法。
【請求項101】
前記システム識別装置はパラメトリック多様性フィルタを有する帰納的カルマンフィルタからなることを特徴とする請求項89に記載の方法。
【請求項102】
自動胸部圧迫装置により胸部圧迫を行いながら患者の実際心電図信号を推定する方法であって、
患者の心電図信号を測定可能な心電図センサを提供し、前記心電図センサが実際成分およびノイズ成分を含んだ、測定された心電図信号を生成するステップと、
患者に胸部圧迫を実施するために配置される自動胸部圧迫装置を提供し、前記胸部圧迫装置は胸部圧迫の存在を決定可能な加速度測定器を有し、前記加速度測定器が胸部圧迫の存在に相応する圧迫信号を生成するステップと、
圧迫を実施するステップと、
測定された心電図信号をシステム識別装置に提供するステップと、
圧迫信号を前記システム識別装置に提供するステップと、
前記システム識別装置で、前記測定された心電図信号と前記圧迫信号とを処理することにより前記測定された心電図信号のノイズ成分を推定するステップと、
前記測定された心電図信号および前記測定された心電図信号の推定ノイズ成分を、信号組み合わせ手段に提供するステップと、
前記測定された心電図信号と前記測定された心電図信号のノイズ成分とを組み合わせることにより、前記推定の実際心電図を前記信号組み合わせ手段で計算するステップと、を含む方法。
【請求項103】
前記システム識別装置は移動平均フィルタからなることを特徴とする請求項102に記載の方法。
【請求項104】
前記システム識別装置は自動回帰移動平均フィルタからなることを特徴とする請求項102に記載の方法。
【請求項105】
前記システム識別装置は先端を切ったような派生的自動回帰移動平均フィルタからなることを特徴とする請求項102に記載の方法。
【請求項106】
前記システム識別装置はカルマンフィルタからなることを特徴とする請求項102に記載の方法。
【請求項107】
前記システム識別装置は帰納的最小二乗法フィルタからなることを特徴とする請求項102に記載の方法。
【請求項108】
前記システム識別装置は帰納的器具変数フィルタからなることを特徴とする請求項102に記載の方法。
【請求項109】
前記システム識別装置は帰納的予測誤差フィルタからなることを特徴とする請求項102に記載の方法。
【請求項110】
前記システム識別装置は帰納的偽直線回帰フィルタからなることを特徴とする請求項102に記載の方法。
【請求項111】
前記システム識別装置は時間変動システムフィルタのための帰納的カルマンフィルタからなることを特徴とする請求項102に記載の方法。
【請求項112】
前記システム識別装置はパラメトリック多様性フィルタを有する帰納的カルマンフィルタからなることを特徴とする請求項102に記載の方法。
【請求項1】
胸部圧迫時の深度測定のための装置であって、
胸部圧迫の加速度に相応する加速度信号を生成可能な加速度測定器と、
前記加速度測定器に接続され、胸部圧迫の測定深度に相応する測定深度信号の生成可能な、前記加速度信号を統合する統合手段と、
前記統合手段に接続され、測定された深度信号の自動回帰移動平均を計算することにより胸部圧迫の推定の実際深度に相応する推定の実際深度信号を生成するようにプログラムされたプロセッサと、を備えた装置。
【請求項2】
前記プロセッサに接続されたディスプレイをさらに備え、前記ディスプレイは推定の実際深度信号を表示可能であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記プロセッサに接続されたユーザフィードバック手段をさらに備え、前記ユーザフィードバック手段は、胸部圧迫が事前に設定された数値範囲内に収まっているかどうかを示すフィードバックを提供可能であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
実際成分のほかにノイズ成分が含まれている患者の心電図信号を測定する手段と、
前記心電図信号を測定する手段と前記プロセッサとに接続され、前記心電図信号のノイズ成分を推定する手段とをさらに備え、
前記プロセッサは、前記心電図信号のノイズ成分が予め定められている範囲内になったとき、推定の実際深度信号を生成するようさらにプログラムされていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記プロセッサに接続されたディスプレイをさらに備え、前記ディスプレイは推定の実際深度信号を表示可能であることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記プロセッサに接続されたユーザフィードバック手段をさらに備え、
前記ユーザフィードバック手段は、胸部圧迫が事前に設定された数値範囲内に収まっているかどうかを示すフィードバックを提供可能であることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項7】
プロセッサはさらに胸部圧迫の割合を測定可能であり、前記ユーザフィードバック手段はさらに胸部圧迫の割合を表示可能であることを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記プロセッサはさらに胸部圧迫のデューティサイクルを測定可能であり、前記ユーザフィードバック手段はさらに胸部圧迫のデューティサイクルを表示可能であることを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項9】
心肺蘇生中に患者の換気を行うことができる換気手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記換気手段は電気的換気を実施する手段からなることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
胸部圧迫を実施するための装置であって、
患者の胸部圧迫を実施する手段と、
胸部圧迫の加速度に相応する加速度信号を生成可能な加速度測定器と、
前記加速度測定器に接続され、胸部圧迫の測定深度に相応する測定深度信号を生成可能な、前記加速度信号を統合する統合手段と、
前記統合手段と前記胸部圧迫を実施する手段とに接続され、測定された深度信号の自動回帰移動平均を計算することにより胸部圧迫の推定の実際深度に相応する推定の実際深度信号を生成可能なプロセッサとを備え、
前記胸部圧迫を実施する手段は前記推定の実際深度信号に基づいて胸部圧迫の深度を調整可能であることを特徴とする装置。
【請求項12】
前記胸部圧迫を実施する手段は自動胸部圧迫装置からなることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
実際成分のほかにノイズ成分が含まれている患者の心電図信号を測定する手段と、
前記心電図信号を測定するための手段と前記プロセッサとに接続され、前記心電図信号のノイズ成分を推定する手段とをさらに備え、
前記プロセッサは、前記心電図信号のノイズ成分が予め定められている範囲内になったとき、推定の実際深度信号を生成するようさらにプログラムされていることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項14】
前記胸部圧迫を実施する手段は自動胸部圧迫装置からなることを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項15】
心肺蘇生中に患者の換気を行うことができる換気手段をさらに備えていることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項16】
前記換気手段は電気的換気を実施する手段からなることを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記プロセッサに接続されたディスプレイをさらに備え、前記ディスプレイは推定の実際深度信号を表示可能であることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項18】
前記プロセッサに接続されたユーザフィードバック手段をさらに備え、前記ユーザフィードバック手段は、胸部圧迫が事前に設定された数値範囲内に収まっているかどうかを示すフィードバックを提供可能であることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項19】
前記プロセッサはさらに胸部圧迫の割合を測定可能であり、前記ユーザフィードバック手段はさらに胸部圧迫の割合を表示可能であることを特徴とする請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記プロセッサはさらに胸部圧迫のデューティサイクルを測定可能であり、前記ユーザフィードバック手段はさらに胸部圧迫のデューティサイクルを表示可能であることを特徴とする請求項18に記載の装置。
【請求項21】
胸部圧迫時の深度測定のための装置であって、
胸部圧迫の加速度に相応する、ノイズ成分と実際成分とが含まれる加速度信号を生成する加速度測定器と、
前記加速度測定器に接続され、胸部圧迫の推定の実際加速度に相応する推定の実際加速度信号を前記加速度信号から生成可能であるプロセッサとを備え、
前記プロセッサは、前記加速度測定器に接続され、前記加速度信号のノイズ成分に相応する推定ノイズ信号を生成可能で、かつ、測定された加速度と少なくとも1つのエラー源基準とを処理して推定ノイズ信号を生成するシステム識別装置と、前記システム識別装置および前記加速度測定器に接続され、推定の実際加速度信号を生成するために前記加速度信号と前記推定ノイズ信号とを組み合わせることができる信号組み合わせ手段とを有し、
さらに、前記胸部圧迫時の深度測定のための装置は、前記プロセッサに接続され、推定の実際加速度信号を統合して胸部圧迫の推定の実際深度に相応する推定の実際深度信号を生成可能である統合手段を備えたことを特徴とする装置。
【請求項22】
前記プロセッサに接続されたディスプレイをさらに備え、前記ディスプレイは推定の実際深度信号を表示可能であることを特徴とする請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記プロセッサに接続されたユーザフィードバック手段をさらに備え、前記ユーザフィードバック手段は、胸部圧迫が事前に設定された数値範囲内に収まっているかどうかを示すフィードバックを提供可能であることを特徴とする請求項21に記載の装置。
【請求項24】
前記プロセッサはさらに胸部圧迫の割合を測定可能であり、前記ユーザフィードバック手段はさらに胸部圧迫の割合を表示可能であることを特徴とする請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記プロセッサはさらに胸部圧迫のデューティサイクルを測定可能であり、前記ユーザフィードバック手段はさらに胸部圧迫のデューティサイクルを表示可能であることを特徴とする請求項23に記載の装置。
【請求項26】
実際成分のほかにノイズ成分が含まれている患者の心電図信号を測定する手段と、
前記心電図信号測定手段と前記プロセッサとに接続され、前記心電図信号のノイズ成分を推定する手段とをさらに備え、
前記プロセッサは、前記心電図信号のノイズ成分が予め定められている範囲内になったとき、推定の実際深度信号を生成するようさらにプログラムされていることを特徴とする請求項21に記載の装置。
【請求項27】
前記プロセッサに接続されたディスプレイをさらに備え、前記ディスプレイは推定の実際深度信号を表示可能であることを特徴とする請求項26に記載の装置。
【請求項28】
前記プロセッサに接続されたユーザフィードバック手段をさらに備え、前記ユーザフィードバック手段は、胸部圧迫が事前に設定された数値範囲内に収まっているかどうかを示すフィードバックを提供可能であることを特徴とする請求項26に記載の装置。
【請求項29】
前記プロセッサはさらに胸部圧迫の割合を測定可能であり、前記ユーザフィードバック手段はさらに胸部圧迫の割合を表示可能であることを特徴とする請求項28に記載の装置。
【請求項30】
前記プロセッサはさらに胸部圧迫のデューティサイクルを測定可能であり、前記ユーザフィードバック手段はさらに胸部圧迫のデューティサイクルを表示可能であることを特徴とする請求項28に記載の装置。
【請求項31】
心肺蘇生中に患者の換気を行うことができる換気手段をさらに備えたことを特徴とする請求項21に記載の装置。
【請求項32】
前記換気手段は電気的換気を実施する手段からなることを特徴とする請求項31に記載の装置。
【請求項33】
胸部圧迫を実施するための装置であって、
患者の胸部圧迫を実施する手段と、
胸部圧迫の加速度に相応する、ノイズ成分と実際成分が含まれている加速度信号を生成する加速度測定器と、
前記加速度測定器に接続され、胸部圧迫の推定の実際加速度に相応する推定の実際加速度信号を前記加速度信号から生成可能であるプロセッサとを備え、
前記プロセッサは、前記加速度測定器に接続され、前記加速度信号のノイズ成分に相応する推定ノイズ信号を生成可能であり、かつ、測定された加速度と少なくとも1つのエラー源基準とを処理して推定ノイズ信号を生成するシステム識別装置と、前記システム識別装置および前記加速度測定器に接続され、前記推定の実際加速度信号を生成するために前記加速度信号と前記推定ノイズ信号とを組み合わせることができる信号組み合わせ手段とを有し、
さらに、前記胸部圧迫を実施するための装置は、前記プロセッサに接続され、前記推定の実際加速度信号を統合して胸部圧迫の前記推定の実際深度に相応する前記推定の実際深度信号を生成可能な、前記推定の実際加速度信号を統合する手段を備え、
前記胸部圧迫を実施する手段は前記推定の実際深度信号に基づいて胸部圧迫の深度を調整可能であることを特徴とする装置。
【請求項34】
前記プロセッサに接続されたディスプレイをさらに備え、前記ディスプレイは前記推定の実際深度信号を表示可能であることを特徴とする請求項33に記載の装置。
【請求項35】
前記プロセッサに接続されたユーザフィードバック手段をさらに備え、前記ユーザフィードバック手段は、胸部圧迫が事前に設定された数値範囲内に収まっているかどうかを示すフィードバックを提供可能であることを特徴とする請求項33に記載の装置。
【請求項36】
前記プロセッサはさらに胸部圧迫の割合を測定可能であり、前記ユーザフィードバック手段はさらに胸部圧迫の割合を表示可能であることを特徴とする請求項35に記載の装置。
【請求項37】
前記プロセッサはさらに胸部圧迫のデューティサイクルを測定可能であり、前記ユーザフィードバック手段はさらに胸部圧迫のデューティサイクルを表示可能であることを特徴とする請求項35に記載の装置。
【請求項38】
実際成分のほかにノイズ成分が含まれている患者の心電図信号を測定する手段と、
前記心電図信号を測定するための手段と前記プロセッサとに接続され、前記心電図信号のノイズ成分を推定する手段とをさらに備え、
前記プロセッサは、前記心電図信号のノイズ成分が予め定められている範囲内になったとき、前記推定の実際深度信号を生成するようさらにプログラムされていることを特徴とする請求項33に記載の装置。
【請求項39】
前記プロセッサに接続されたディスプレイをさらに備え、前記ディスプレイは前記推定の実際深度信号を表示可能であることを特徴とする請求項38に記載の装置。
【請求項40】
前記プロセッサに接続されたユーザフィードバック手段をさらに備え、前記ユーザフィードバック手段は、胸部圧迫が事前に設定された数値範囲内に収まっているかどうかを示すフィードバックを提供可能であることを特徴とする請求項38に記載の装置。
【請求項41】
前記プロセッサはさらに胸部圧迫の割合を測定可能であり、前記ユーザフィードバック手段はさらに胸部圧迫の割合を表示可能であることを特徴とする請求項40に記載の装置。
【請求項42】
前記プロセッサはさらに胸部圧迫のデューティサイクルを測定可能であり、前記ユーザフィードバック手段はさらに胸部圧迫のデューティサイクルを表示可能であることを特徴とする請求項40に記載の装置。
【請求項43】
心肺蘇生中に患者の換気を行うことができる換気手段をさらに備えたことを特徴とする請求項33に記載の装置。
【請求項44】
前記換気手段は電気的換気を実施する手段からなることを特徴とする請求項43に記載の装置。
【請求項45】
胸部圧迫を実施しながら患者の実際の心電図信号を推定するための装置であって、
患者の胸部圧迫を実施する手段と、
患者の前記心電図信号を感知し、患者の実際成分およびノイズ成分からなる前記心電図信号の測定値に相応する測定された心電図信号を生成可能な手段と、
前記胸部圧迫を実施する手段に接続され、胸部圧迫が存在するときに応答する圧迫信号を生成可能な圧迫センサと、
前記圧迫センサと前記心電図信号を感知する手段とに接続され、患者の前記推定の実際心電図信号に相応する推定の実際心電図信号を生成可能なプロセッサとを備え、
前記プロセッサは、
前記圧迫センサに接続され、前記心電図信号の推定ノイズ成分を生成可能で、かつ、前記測定された心電図信号および前記圧迫信号を処理することにより前記心電図信号の推定ノイズ成分を生成するシステム識別装置と、
前記システム識別装置および前記心電図信号を感知する手段に接続され、前記推定の実際心電図信号を生成するために、前記測定された心電図信号と前記心電図信号の推定ノイズ成分とを組み合わせることができる信号組み合わせ手段とを有する、ことを特徴とする装置。
【請求項46】
前記圧迫センサは荷重センサからなることを特徴とする請求項45に記載の装置。
【請求項47】
前記荷重センサは患者の下に配置されることを特徴とする請求項46に記載の装置。
【請求項48】
前記圧迫センサは圧迫ベルトの位置変化を測定する手段からなることを特徴とする請求項45に記載の装置。
【請求項49】
前記圧迫ベルトの位置変化を測定する手段はエンコーダからなることを特徴とする請求項48に記載の装置。
【請求項50】
前記エンコーダは回転式エンコーダからなることを特徴とする請求項49に記載の装置。
【請求項51】
前記エンコーダは光学エンコーダからなることを特徴とする請求項49に記載の装置。
【請求項52】
前記圧迫センサは加速度測定器からなることを特徴とする請求項45に記載の装置。
【請求項53】
前記システム識別装置は移動平均フィルタからなることを特徴とする請求項45に記載の装置。
【請求項54】
前記システム識別装置は自動回帰移動平均フィルタからなることを特徴とする請求項45に記載の装置。
【請求項55】
前記システム識別装置は先端を切ったような派生的自動回帰移動平均フィルタからなることを特徴とする請求項45に記載の装置。
【請求項56】
前記システム識別装置はカルマンフィルタからなることを特徴とする請求項45に記載の装置。
【請求項57】
前記システム識別装置は帰納的最小二乗法フィルタからなることを特徴とする請求項45に記載の装置。
【請求項58】
前記システム識別装置は帰納的器具変数フィルタからなることを特徴とする請求項45に記載の装置。
【請求項59】
前記システム識別装置は帰納的予測誤差フィルタからなることを特徴とする請求項45に記載の装置。
【請求項60】
前記システム識別装置は帰納的偽直線回帰フィルタからなることを特徴とする請求項45に記載の装置。
【請求項61】
前記システム識別装置は時間変動システムフィルタのための帰納的カルマンフィルタからなることを特徴とする請求項45に記載の装置。
【請求項62】
前記システム識別装置はパラメトリック多様性フィルタを有する帰納的カルマンフィルタからなる。
【請求項63】
胸部圧迫中の胸部圧迫の推定の実際深度を決定する方法であって、
胸部圧迫で生じる加速度を感知可能な加速度測定器を提供するステップと、
胸部圧迫を実施し、前記加速度測定器で胸部圧迫中の加速度信号を測定するステップと、
胸部圧迫の測定深度に相応する測定された深度信号を生成するために前記加速度信号を2回統合するステップと、
測定された圧迫深度信号の自動回帰移動平均を計算するステップと、を含み、
圧迫の推定の実際深度は測定された圧迫深度信号の自動移動平均からなることを特徴とする方法。
【請求項64】
圧迫開始を特定可能な基準センサを提供するステップと、
前記基準センサで圧迫開始を特定するステップと、
圧迫開始が特定されたときの圧迫の推定の実際深度を計算するステップと、をさらに含むことを特徴とする請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記基準センサの提供ステップは、患者の心電図信号を測定可能なセンサを提供することからなり、
圧迫中、ノイズ成分と実際成分からなる患者の心電図信号を測定するステップと、
前記心電図信号のノイズ成分を特定するステップと、をさらに含み、
各圧迫の開始は前記心電図信号のノイズ成分の事前に設定された変化によって特定されることを特徴とする請求項64に記載の方法。
【請求項66】
胸部圧迫中の胸部圧迫の実際深度を推定する方法であって、
胸部圧迫で生じる加速度を感知可能な加速度測定器を提供するステップと、
圧迫を実施し、前記加速度測定器で胸部圧迫の前記加速度に相応する加速度信号を生成するステップと、
前記加速度信号を第1のフィルタに通し、前記第1のフィルタがフィルタ済み加速度信号を生成するステップと、
前記フィルタ済み加速度信号をプロセッサに提供し、前記プロセッサが前記フィルタ済み加速度信号を統合して胸部圧迫の速度に相応する速度信号を生成するステップと、
前記速度信号を第2のフィルタに通し、前記第2のフィルタがフィルタ済み速度信号を生成するステップと、
前記フィルタ済み速度信号を前記プロセッサに提供し、前記プロセッサが前記フィルタ済み速度信号を統合して胸部圧迫の深度に相応する胸部深度信号を生成するステップと、
前記胸部深度信号をベースライン制限装置に提供し、前記ベースライン制限装置が処理済みベースライン成分付きの胸部深度信号を生成するステップと、
前記処理済みベースライン成分付きの胸部深度信号を開始点検出器に提供し、前記開始点検出器が胸部圧迫の開始点を特定し、さらに胸部圧迫開始点に相応する開始点信号を、信号組み合わせ手段に提供するステップと、
前記処理済みベースライン成分付きの胸部深度信号をピーク制限装置に提供し、前記ピーク制限装置が処理済みピーク成分付きの胸部深度信号を生成するステップと、
前記処理済みピーク成分付きの胸部深度信号をピーク検出器に提供し、前記ピーク検出器は圧迫の最大深度に相応する胸部圧迫のピークを特定し、さらに胸部圧迫のピークに相応するピーク信号を前記信号組み合わせ手段に提供するステップと、
前記開始点信号を前記ピーク信号と組み合わせることにより胸部圧迫の推定の実際深度を計算するステップと、を含む方法。
【請求項67】
処理済みベースライン成分付きの前記胸部深度信号をフィルタに通すステップをさらに含むことを特徴とする請求項66に記載の方法。
【請求項68】
処理済みピーク成分付きの前記胸部深度信号をフィルタに通すステップをさらに含むことを特徴とする請求項66に記載の方法。
【請求項69】
前記プロセッサに接続されたユーザフィードバック手段に圧迫の推定の実際深度を提供するステップと、
胸部圧迫が事前に設定された数値範囲内にあるか否かを示すフィードバックをユーザに提供するステップと、をさらに含むことを特徴とする請求項66に記載の方法。
【請求項70】
圧迫開始を特定可能な基準センサを提供するステップと、
前記基準センサで圧迫開始を特定するステップと、
圧迫開始が特定されたときに圧迫の推定の実際深度を計算するステップと、をさらに含むことを特徴とする請求項66に記載の方法。
【請求項71】
前記基準センサを提供するステップは、患者の心電図を測定可能なセンサを提供ことからなり、
圧迫中、ノイズ成分と実際成分からなる患者の心電図信号を測定するステップと、
前記心電図信号のノイズ成分を特定するステップと、をさらに含み、
各圧迫の開始は前記心電図信号のノイズ成分の事前に設定された変化によって特定されることを特徴とする請求項70に記載の方法。
【請求項72】
胸部圧迫中の胸部圧迫の実際深度を推定する方法であって、
患者に胸部圧迫を実施する手段を提供するステップと、
患者の心電図信号を測定可能なセンサを提供するとともに、胸部圧迫の加速度を測定可能な加速度測定器を提供するステップと、
患者の胸部圧迫を実施し、前記加速度測定器が胸部圧迫の加速度に相応する加速度信号を生成するステップと、
測定済み心電図信号は実際成分およびノイズ成分からなり、少なくともノイズ成分の一部は胸部圧迫により生じることとなる患者の心電図信号を測定するステップと、
前記心電図信号のノイズ成分を特定し、圧迫の開始点が前記心電図信号のノイズ成分の変化で特定されるステップと、
圧迫の開始点が特定されたときに前記加速度信号を2回統合することにより圧迫の推定の実際深度を計算するステップと、を含む方法。
【請求項73】
患者に心肺蘇生を実施する方法であって、
胸部圧迫で生じる加速度を感知可能な加速度測定器を提供するステップと、
胸部圧迫を実施し、前記加速度測定器で胸部圧迫中の加速度信号を測定するステップと、
胸部圧迫の測定深度に相応する測定された深度信号を生成するために前記加速度信号を2回統合するステップと、
測定された圧迫深度信号の自動回帰移動平均を計算し、ここでは圧迫の推定の実際深度が前記測定された圧迫深度信号の自動移動平均からなるステップと、
患者を換気する手段を提供するステップと、
心肺蘇生中に患者を換気するステップと、を含む方法。
【請求項74】
患者を換気する方法を提供するステップは電気的換気手段を提供することからなることを特徴とする請求項73に記載の方法。
【請求項75】
圧迫開始を特定可能な基準センサを提供するステップと、
前記基準センサで圧迫開始を特定するステップと、
圧迫開始が同定されたときに圧迫の推定の実際深度を計算するステップと、をさらに含むことを特徴とする請求項73に記載の方法。
【請求項76】
前記基準センサを提供するステップは、患者の心電図信号を測定可能なセンサを提供することからなり、
圧迫中、ノイズ成分と実際成分からなる患者の心電図信号を測定するステップと、
前記心電図信号のノイズ成分を特定するステップと、をさらに含み、
各圧迫の開始が前記心電図信号のノイズ成分の事前に設定された変化によって特定されることを特徴とする請求項75に記載の方法。
【請求項77】
自動胸部圧迫装置により胸部圧迫を行いながら患者の実際心電図信号を推定する方法であって、
患者の心電図信号を測定可能な心電図センサを提供し、前記心電図センサが実際成分およびノイズ成分を含んだ、測定された心電図信号を生成するステップと、
患者に胸部圧迫を実施するために配置された自動胸部圧迫装置を提供し、前記胸部圧迫装置はそれにより感知された荷重が事前に設定された数値を超えるときに胸部圧迫の存在を決定可能である荷重センサを有し、前記荷重センサが胸部圧迫の存在に相応する圧迫信号を生成するステップと、
圧迫を実施するステップと、
測定された心電図信号をシステム識別装置に提供するステップと、
前記圧迫信号を前記システム識別装置に提供するステップと、
前記システム識別装置で、前記測定された心電図信号と前記圧迫信号を処理することにより前記測定された心電図信号のノイズ成分を推定するステップと、
前記測定された心電図信号および前記測定された心電図信号の推定ノイズ成分を、信号組み合わせ手段に提供するステップと、
前記測定された心電図信号と前記測定された心電図信号のノイズ成分とを組み合わせることにより、前記推定の実際心電図を前記信号組み合わせ手段で計算するステップと、を含む方法。
【請求項78】
前記荷重センサを有する前記自動胸部圧迫装置を提供するステップは、圧迫中患者の下に配置される荷重センサを有する自動胸部圧迫装置を提供することからなることを特徴とする請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記システム識別装置は移動平均フィルタからなることを特徴とする請求項77に記載の方法。
【請求項80】
前記システム識別装置は自動回帰移動平均フィルタからなることを特徴とする請求項77に記載の方法。
【請求項81】
前記システム識別装置は先端を切ったような派生的自動回帰移動平均フィルタからなることを特徴とする請求項77に記載の方法。
【請求項82】
前記システム識別装置はカルマンフィルタからなることを特徴とする請求項77に記載の方法。
【請求項83】
前記システム識別装置は帰納的最小二乗法フィルタからなることを特徴とする請求項77に記載の方法。
【請求項84】
前記システム識別装置は帰納的器具変数フィルタからなることを特徴とする請求項77に記載の方法。
【請求項85】
前記システム識別装置は帰納的予測誤差フィルタからなることを特徴とする請求項77に記載の方法。
【請求項86】
前記システム識別装置は帰納的偽直線回帰フィルタからなることを特徴とする請求項77に記載の方法。
【請求項87】
前記システム識別装置は時間変動システムフィルタのための帰納的カルマンフィルタからなることを特徴とする請求項77に記載の方法。
【請求項88】
前記システム識別装置はパラメトリック多様性フィルタを有する帰納的カルマンフィルタからなることを特徴とする請求項77に記載の方法。
【請求項89】
自動胸部圧迫装置により胸部圧迫を行いながら患者の実際心電図信号を推定する方法であって、
患者の心電図信号を測定可能な心電図センサを提供し、前記心電図センサが実際成分およびノイズ成分を含んだ、測定された心電図信号を生成するステップと、
患者に胸部圧迫を実施するために配置される自動胸部圧迫装置を提供し、前記胸部圧迫装置は胸部圧迫の存在を決定可能なエンコーダを有し、前記エンコーダが胸部圧迫の存在に相応する圧迫信号を生成するステップと、
圧迫を実施するステップと、
前記測定された心電図信号をシステム識別装置に提供するステップと、
前記圧迫信号を前記システム識別装置に提供するステップと、
前記システム識別装置で、前記測定された心電図信号と前記圧迫信号とを処理することにより前記測定された心電図信号のノイズ成分を推定するステップと、
前記測定された心電図信号および前記測定された心電図信号の推定ノイズ成分を、信号組み合わせ手段に提供するステップと、
前記測定された心電図信号と前記測定された心電図信号のノイズ成分とを組み合わせることにより、前記推定の実際心電図を前記信号組み合わせ手段で計算するステップと、を含む方法。
【請求項90】
前記エンコーダを有する自動胸部圧迫装置を提供するステップは、光学エンコーダを有する自動胸部圧迫装置を提供することからなることを特徴とする請求項89に記載の方法。
【請求項91】
前記エンコーダを有する自動胸部圧迫装置を提供するステップは、回転式エンコーダを有する自動胸部圧迫装置を提供することからなることを特徴とする請求項89に記載の方法。
【請求項92】
前記システム識別装置は移動平均フィルタからなることを特徴とする請求項89に記載の方法。
【請求項93】
前記システム識別装置は自動回帰移動平均フィルタからなることを特徴とする請求項89に記載の方法。
【請求項94】
前記システム識別装置は先端を切ったような派生的自動回帰移動平均フィルタからなることを特徴とする請求項89に記載の方法。
【請求項95】
前記システム識別装置はカルマンフィルタからなることを特徴とする請求項89に記載の方法。
【請求項96】
前記システム識別装置は帰納的最小二乗法フィルタからなることを特徴とする請求項89に記載の方法。
【請求項97】
前記システム識別装置は帰納的器具変数フィルタからなることを特徴とする請求項89に記載の方法。
【請求項98】
前記システム識別装置は帰納的予測誤差フィルタからなることを特徴とする請求項89に記載の方法。
【請求項99】
前記システム識別装置は帰納的偽直線回帰フィルタからなることを特徴とする請求項89に記載の方法。
【請求項100】
前記システム識別装置は時間変動システムフィルタのための帰納的カルマンフィルタからなることを特徴とする請求項89に記載の方法。
【請求項101】
前記システム識別装置はパラメトリック多様性フィルタを有する帰納的カルマンフィルタからなることを特徴とする請求項89に記載の方法。
【請求項102】
自動胸部圧迫装置により胸部圧迫を行いながら患者の実際心電図信号を推定する方法であって、
患者の心電図信号を測定可能な心電図センサを提供し、前記心電図センサが実際成分およびノイズ成分を含んだ、測定された心電図信号を生成するステップと、
患者に胸部圧迫を実施するために配置される自動胸部圧迫装置を提供し、前記胸部圧迫装置は胸部圧迫の存在を決定可能な加速度測定器を有し、前記加速度測定器が胸部圧迫の存在に相応する圧迫信号を生成するステップと、
圧迫を実施するステップと、
測定された心電図信号をシステム識別装置に提供するステップと、
圧迫信号を前記システム識別装置に提供するステップと、
前記システム識別装置で、前記測定された心電図信号と前記圧迫信号とを処理することにより前記測定された心電図信号のノイズ成分を推定するステップと、
前記測定された心電図信号および前記測定された心電図信号の推定ノイズ成分を、信号組み合わせ手段に提供するステップと、
前記測定された心電図信号と前記測定された心電図信号のノイズ成分とを組み合わせることにより、前記推定の実際心電図を前記信号組み合わせ手段で計算するステップと、を含む方法。
【請求項103】
前記システム識別装置は移動平均フィルタからなることを特徴とする請求項102に記載の方法。
【請求項104】
前記システム識別装置は自動回帰移動平均フィルタからなることを特徴とする請求項102に記載の方法。
【請求項105】
前記システム識別装置は先端を切ったような派生的自動回帰移動平均フィルタからなることを特徴とする請求項102に記載の方法。
【請求項106】
前記システム識別装置はカルマンフィルタからなることを特徴とする請求項102に記載の方法。
【請求項107】
前記システム識別装置は帰納的最小二乗法フィルタからなることを特徴とする請求項102に記載の方法。
【請求項108】
前記システム識別装置は帰納的器具変数フィルタからなることを特徴とする請求項102に記載の方法。
【請求項109】
前記システム識別装置は帰納的予測誤差フィルタからなることを特徴とする請求項102に記載の方法。
【請求項110】
前記システム識別装置は帰納的偽直線回帰フィルタからなることを特徴とする請求項102に記載の方法。
【請求項111】
前記システム識別装置は時間変動システムフィルタのための帰納的カルマンフィルタからなることを特徴とする請求項102に記載の方法。
【請求項112】
前記システム識別装置はパラメトリック多様性フィルタを有する帰納的カルマンフィルタからなることを特徴とする請求項102に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【公表番号】特表2006−503659(P2006−503659A)
【公表日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−547205(P2004−547205)
【出願日】平成15年10月23日(2003.10.23)
【国際出願番号】PCT/US2003/034035
【国際公開番号】WO2004/037154
【国際公開日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【出願人】(500087017)レビバント・コーポレイション (13)
【氏名又は名称原語表記】Revivant Corporation
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年10月23日(2003.10.23)
【国際出願番号】PCT/US2003/034035
【国際公開番号】WO2004/037154
【国際公開日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【出願人】(500087017)レビバント・コーポレイション (13)
【氏名又は名称原語表記】Revivant Corporation
【Fターム(参考)】
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