説明

心臓血管および血栓の造影剤、方法、およびキット

【課題】心臓血管組織および血栓の診断のための画像化方法の提供。
【解決手段】123I、99mTc、18F、68Ga、62Cu、および111Inからなる群より選択される放射性核種をキレートするキレート構造を結合させたヌクレオチドポリリン酸誘導体。キレート形成物質は、-N2S2構造、-NS3構造、-N4構造、イソニトリル、ヒドラジン、HYNIC基を含む構造、2-メチルチオールニコチン酸基を含む構造、およびカルボン酸基を含む構造からなる群より選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核医学の分野に属する。より具体的には、本発明は、心臓血管組織および血栓の診断のための画像化に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
臨床的画像化技術は、損傷および疾病の経過を診断する際に重要な役割を担っている。今日では、さまざまな画像化技術を用いて、人体の多くの部分が、診断目的で調べられている。長い間、X線撮影法を用いて、外部で発生させたX線を通過させて身体の一部を画像化してきた。コンピュ−タ連動断層撮影法は、身体の一つの面の断面のX線画像を提供する。陽電子射出断層撮影法(PET)、シングルフォトンエミッションCT(SPECT)、およびガンマシンチグラフィ−においては、特定の組織や器官が標的となりうる。PET、SPECT、およびガンマシンチグラフィ−では、標的組織や器官の中で、ある程度まで分離(濃縮)できる放射性薬剤を患者の体内に投与すると、濃縮された放射性薬剤からの射出を検出することによって、画像が作成される。現在、心臓血管造影剤として用いられている放射線薬剤には、201T1、99mTc、133Xeなどの核種;核種のキレ−ト;11Cデオキシ-D−グルコース、18F-2−フルオロデオキシ-D−グルコース、[1-11C]−および[123I]-β−メチル脂肪酸類似化合物13N-アンモニアなどの放射性標識代謝物質、99mTc−テトラサイクリン、99mTc-ピロリン酸、203Hg−水銀製剤、67Ga-クエン酸などの梗塞部に親和的な物質、ならびに、放射性標識したリガンド、蛋白質、ペプチド、およびモノクローナル抗体が含まれる。赤血球、血小板、白血球、その他の細胞などの全細胞を放射性核種で標識して、放射性薬剤として機能させることもできる。
【0003】
PET、SPECT、およびガンマシンチグラフィーの画像から得られる臨床情報の量とタイプは、標的組織または器官の中で放射性薬剤を濃縮できる能力と部分的に相関する。多くの放射性薬剤を臨床用に利用することができるが、作成される画像の解像度は、さまざまな要素によって制約を受ける。疾病または損傷された組織を画像化するための個々の造影剤の解像度は、損傷または疾病部位に対する放射性薬剤の、周囲の健常な組織と比較したときの親和性に部分的に依存する。
【0004】
さまざまなタイプの心臓血管研究で、異なった種類の情報を得るために、放射性薬剤が用いられる。例えば、心臓の血液流および血液貯留の研究で用いられる放射性薬剤は、チアノーゼ心臓疾患、および虚血性心臓疾患に関する情報を提供する。灌流用シンチグラフィー薬剤は、冠状動脈疾患における血流測定、冠状動脈造影後の病理学的な評価、冠状動脈疾患の手術前後の評価、および急性心筋梗塞の検出に有用な血流の測定法を提供する。梗塞親和性薬剤は、「ホットスポット」の梗塞を画像化するために有用である。放射性核種を含む抗体を用いて、急性の心筋壊死領域を同定することが提案されており、内皮の損傷が始まって間もない段階におけるアテローム性傷害を検出するために、99mTcで標識した低密度リポ蛋白質を用いることが提案された。
【0005】
エルマレーらにおける総説(Elmaleh, D. R., et al.、E. E. van der Wall編、心臓代謝の非侵襲的画像化(Martinus Nijhoff社、ボストン、1987年)1〜37ページ;非特許文献1より)によるところ、β-アドレナリン作用性レセプターに特異的な放射性薬剤リガンドは、肺での取り込みを示すため、心臓組織に対する十分な特異性を示さない。同じ参照論文で、心臓に対し、いくらかの特異性を示す心臓画像化のために標識されたムスカリン様レセプターリガンドの予備的な研究が説明されている。心臓のインシュリンレセプターを画像化するために111Inで標識したインシュリンを用いた実験では、心臓血管組織に対する特異性が低いことが示された。
【0006】
ジアデノシン5'、5'"、P、P四リン酸(APA)は、生細胞中に普遍的に存在するアデニンの類似体で、さまざまな組織における外部シグナル現象において重要な役割を演じると考えられている。特に、APAは、アデノシン二リン酸に誘導される血小板凝集で、血小板と巨核球に見られるプリンレセプターの特定のクラスへのADPに結合によって起こるものの競合的阻害因子である。米国特許第5,049,550号;特許文献1は、APA坑血栓類似体で、その治療効果が、血栓(血餅)の形成には、まず血小板の凝集段階が含まれるという観察と、血小板の凝集を阻害すれば、血餅の形成が阻害されるという仮定を前提としているものを開示している。米国特許第5,219,841号;特許文献2は、心臓疾患の治療のための活性成分としてAPAを含む薬学的組成物を開示している。米国特許第5,380,715号;特許文献3は、低血圧剤としてのAPAの使用、特に、低血圧麻酔を用いる外科手術処理に伴う使用を開示している。
【0007】
エルマレーら(D. R. Elmaleh, et al. (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81,918-921;非特許文献2)は、ラットに移植した腫瘍を画像化するために、99mTcで標識したAPA(99mTc-APA)を開示している。この研究では、99mTcでAPAをキレート化するために用いられる方法は、APA二リン酸に付着した99mTcを含み、キレートしていない99mTcも含まれているかもしれないという混合物を生じた。この研究は、ヒトの腫瘍細胞には、外からのATPとADPを透過させることができるものがあり、これらの細胞が正常な細胞と対比して、細胞内貯留中の無処理のヌクレオチドを取り込むという前提に立っている。APAは、肝癌細胞の中に浸透するが、形質転換されていない哺乳動物の細胞系の中には浸透しないことが分かった。移植された腫瘍の中に蓄積することに加えて、1984年の研究の99mTc-APAは、腎臓、肝臓、骨組織、筋肉、および肺臓の中にも蓄積する。本研究では、心臓の中での99mTc-APAの蓄積は観察されなかった。
【特許文献1】米国特許第5,049,550号
【特許文献2】米国特許第5,219,841号
【特許文献3】米国特許第5,380,715号
【非特許文献1】Elmaleh, D. R., et al.、E. E. van der Wall編、心臓代謝の非侵襲的画像化(Martinus Nijhoff社、ボストン、1987年)1〜37ページ
【非特許文献2】D. R. Elmaleh, et al. (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81,918-921
【発明の開示】
【0008】
発明の概要
放射性核種で標識したヌクレオチドポリリン酸は、高度の特異性をもって、アテローム硬化性病変部と心臓組織の中に蓄積するため、本発明の一つの態様は、一般的に、標的部分であるヌクレオチドポリリン酸に結合した放射性核種を含む、心臓血管(血栓を含む)の造影剤を特徴とする。
【0009】
別の態様において、本発明は、ヌクレオチドポリリン酸の標的部分に結合した放射性核種を含む心臓血管造影剤を提供する。典型的には、標的部分は、標的前駆体であり、例えば、標的前駆体は、放射性核種と、放射性核種に対するキレート剤を含む標識体と反応する。この結合には、キレート化、共有結合、または静電気結合の一つ以上が含まれ、または、標的分子に空間的に近いところにあるヌクレオシドを維持する別の力、または力を組み合わせたものを含んでいるかもしれない。造影剤は、上で定義された、標的前駆体が、放射性核種を含む部分と反応した産物であるかもしれず、このような反応は、キレート化、または共有反応の産物を含むかもしれない。または、キレート化と共有反応の両方を含むかもしれない。典型的には、標的前駆体は、下記の化学式A)、B)、C)またはD)の分子である:
【化1】

式中、
(1)Nu〜Nuは、それぞれ独立に選択されたヌクレオシドであり、
(2)pは、リン酸部分、ホスホロチオ酸部分、アルキルホスホネート(alkylphosphonate)部分、ホスホロジチオ酸部分、ホスホルアミデート(phosphoramidate)部分、アミノアルキルホスホルアミデート(aminoalkylphosphoramidate)部分、アミノアルキルホスホトリエステル部分、アミノアルキルホスホロチオアミデート(aminoalkylphosphorothioamidate)部分、およびチオリン酸部分からなる群より選択され、
(3)X、X、X、およびXの各々は、アルキル基、ハロゲン化されたアルキル基、窒素を含むアルキル基、硫黄を含むアルキル基、アルキレン基、窒素を含むアルキレン基、および硫黄を含むアルキレン基からなる群より選択され、
(4)(n+m)は、2から8であり、また、(r+q)も2から8である。
キレート化、または結合を促進するための、その他の因子(標的部分と反応する、それらの残基)が、造影剤の中に存在しているかもしれない。
【0010】
B)に記載した好ましい化学式において、Xは選択的ではなく、NuとNuは同一のもので、アデノシン、グアニン、シチジン、チミジン、ウラシル、またはイノシンである。
【0011】
好ましくは、Nu〜Nuの少なくとも一つ(最も好ましくは、Nu〜Nuすべて)はアデノシンである。放射性核種には、123I、99mTc、18F、68Ga、62Cu、および111Inがあるが、99mTcが好ましい。この薬剤が、特に、99mTcにとってのキレート構造を含んでいるとすると、このキレート構造は、-NS構造、-N構造、-N構造、イソニトリル、ヒドラジン、NYNIC(ヒドラジノニコチン酸)を含む構造、2-メチルチオールニコチン酸を含む構造、リン酸を含む基、またはカルボン酸基でありうる。X(それが存在する場合)にとって好ましい部分は、アルキル部分、またはクロロアルキル部分であり、pは、好ましくは、リン酸部分である。Xが存在しない場合には、放射性核種を含む構造は、リン酸の水素原子によってキレート化される。好ましくは、ヌクレオシドがアデノシンで、pはリン酸、n=2、またm=2である。
【0012】
一つの特異的な態様において、造影剤は、以下の化学式を有する99mTcの複合体である。
【化2】

式中、Adはアデノシンであり、pは、POH、また、Xは、99mTcを含む部分である。
【0013】
上記の造影剤を、哺乳動物の心臓血管組織を画像化するために投与してもよい。特異的な心臓血管画像化法は、造影剤を哺乳動物に投与し、その哺乳動物の心臓血管系に蓄積された薬剤の空間分布を検出することによって心臓血管の病変を検出する。薬剤の異なった蓄積が病変部を示している。
【0014】
薬剤を哺乳動物に投与し、血栓中でのそれの蓄積を検出することによって、上記の薬剤を用いて、哺乳動物の中の血栓を画像化することができる。ある領域で、他の領域に較べて高量に蓄積することが、血栓の位置を示している。
【0015】
本発明は、また、心臓血管を画像化するためのキットで、造影剤を含むものを特徴とする。このキットは、キレート剤、および/または、マンニトール、グルコン酸、グルコヘプトン酸(glucoheptonate)、および酒石酸;SnCl、または酒石酸化スズなど、スズを含む還元剤をからなる群より選択される補助分子を含んでいてもよい。
【0016】
好ましい態様の詳細な説明
本明細書において参照される特許および科学文献によって、当業者にとって利用可能な知識が確立される。本明細書において引用される、発行された特許および認可された出願は、参照として本明細書に組み入れられる。
【0017】
本発明は、ヌクレオチドポリリン酸の類似化合物が放射性核種と結合している、新しい心臓血管造影剤を提供する。本発明の造影剤は、心臓血管組織、すなわち、心臓、動脈、および静脈の中で特異的に蓄積される。また、本発明の造影剤は、心臓血管病変部の中、および血栓または塞栓が定着した部位に蓄積する。
【0018】
本発明の造影剤には、特異的に心臓血管組織の中に蓄積する標的分子が含まれる。一般的には、好ましい標的分子は、下記の化学式(または、この化学式の二量体または多量体)を有する:
【化3】

式中、Nuは、アデノシン、グアニン、シチジン、チミジン、ウラシル、およびイノシンからなる群より選択され、pは、リン酸部分、ホスホロチオ酸部分、アルキルホスホネート(alkylphosphonate)部分、ホスホロジチオ酸部分、ホスホルアミデート(phosphoramidate)部分、アミノアルキルホスホルアミデート(aminoalkylphosphoramidate)部分、アミノアルキルホスホトリエステル部分、アミノアルキルホスホロチオアミデート(aminoalkylphosphorothioamidate)部分、およびチオリン酸部分からなる群より選択され、Xは、酸素、アルキル基、ハロゲン化されたアルキル基、窒素を含むアルキル基、硫黄を含むアルキル基、アルキレン基、ハロゲン化されたアルキル基、窒素を含むアルキレン基、および硫黄を含むアルキレン基からなる群より選択され、かつ(n+m)は、2〜8である。本発明の心臓血管造影剤は、1種類以上の核種で標識された標的分子を処方したものを含む。
【0019】
いかなるヌクレオシドを、標的分子の「Nu」成分として用いてもよい。上に列挙したリボヌクレオシドの他に、標的分子の「Nu」成分は、デオキシヌクレオシド、置換されていないリボヌクレオシド、または置換されたデオキシヌクレオシドでもよい。置換は、本発明に従い、ヌクレオシドの核酸塩基部分またはヌクレオシドの糖部分で生じる。リボースまたはデオキシリボースでなく、糖が、標的分子の「Nu」成分として存在していてもよい。好ましくは、標的分子のヌクレオシドは、アデノシンである。
【0020】
いかなる分子を、標的分子のヌクレオシド成分を結合させるための「p」部位として用いてもよい。標的分子は、上記の、置換されたリン酸である「p」部位以外に、合成されたヌクレオシド間結合部位を含んでもよい。例えば、置換されたリン酸「p」部位は、一つ以上のアルキル基、カルバミル酸基、アセトアミド酸(acetamidate)基などを含んでいてもよい。さらに、「p」部位は、生成された標的分子のコンフォメーションが、APAのような調節ジヌクレオシドのコンフォメーションに近ければ、カルボキシメチルエステルや炭酸のような、非リン酸含有基でもよい。
【0021】
生成された標的分子のコンフォメーションが、APA、またはAPAの二量体などの調節ジヌクレオシドのコンフォメーションに近ければ、いかなる分子も、標的分子の「X」成分として用いることができる。
【0022】
標的分子を合成するための方法は、一般的に、ブラックバーンら(G.M. Blackburn et al. (1986) 「生物リン酸とその類似体−合成、構造、金属、および活性(Biophosphates and Their Analogues--Sunthesis, Structure, Metal and Activity)」より、ブルジックとステック編(Bruzik, K.S. & Stec, W.J.)(Elsevier, amsterdam)のpp.451-464;G.M. Blackburn, et al., (1987) Nucleics Acid Res. 17, 6991-7004;A.Guranowski, et al. (1987) Biochemistry 26, 3425-3429; およびG.M. Blackburn,et al. (1992) 「ジヌクレオシドポリリン酸(Dinucleoside Polyphosphates)」McLennan, A.G.編 (CRC, Boca Raton, FL)の第11章に示されている。
【0023】
本発明に従えば、標的分子は、核種と(空間的に近い位置で)結合している。標的分子と核種の間の空間的な近接性は、標的分子の標的組織に対する特異性を保存するような様式で影響を受ける。例えば、標的分子と核種との空間的な近接性は、共有的または非共有的な化学結合によって影響を受けるかもしれない。このような化学結合は、キレート物質、ならびに/またはマンニトール、グルコン酸、グルコヘプトン酸(glucoheptonate)、および酒石酸などの補助分子によって影響を受けるかもしれない。または、標的分子と核種との空間的な近接性は、ミセルまたはリポソームの中に、核種および標的分子を取り込むことによって、標的分子の標的組織に対する親和性が維持されるような態様で影響を受けるかもしれない。標的分子と核種との空間的な近接性は、ミクロスフェアやリポソームなどの基質に、核種と標的分子を付着させることによっても影響を受けるかもしれない。
【0024】
当業者は、造影剤を合成する方法が多数あることを認識している。一つの合成方法において、Nu-p-CHCl-pNuをX-Rと反応させるが、式中、Xは、上記のX1-3として定義され、また、Rは、99mTcキレート剤のような放射性核種キレート剤である。典型的な99mTcキレート剤には、アルキルアミンもしくはアリルアミン、またはアルキルチオールもしくはアリルチオールが含まれる。この他の99mTcキレート基には、NS、Sが含まれる。-Rキレート剤を含む前駆体が形成され、標準的な99mTc還元キットから生成された99mTcと順々に反応する。例えば、-Rがアルキルチオールであるとき、-NSキレート反応により、下記の構造が形成される:
【化4】

この組成物が、特に、99mTcに対するキレート構造を含むとき、このキレート構造は、NS構造、-N構造、-N構造、イソニトリル、ヒドラジン、NYNIC(ヒドラジノニコチン酸)基、カルボン酸基でありうる。当業者は、非常に多数のキレート剤を用いることができることを理解していると思われる。
【0025】
上で説明されている造影剤は、本発明に記載された放射性核種を含みうる。好ましくは、本発明の造影剤は、PET、またはSPECT画像化において使用するのに適している。より好ましくは、本発明の造影剤には、123I、99mTc、18F、68Ga、62Cu、および111Inなどが含まれる。このような放射性核種は、標的分子の原子に直接共有結合して造影剤に取り込まれるか、またはキレート構造を通して、もしくはマンニトール、グルコン酸、グルコヘプトン酸(glucoheptonate)、および酒石酸などの補助分子を通して、標的分子と非共有的または共有的に結合しうる。キレート構造により放射性核種と標的分子との空間的な近接性が提供される場合には、このキレート構造は、直接、標的分子に結合しているか、またはマンニトール、グルコン酸、グルコヘプトン酸(glucoheptonate)、および酒石酸などの補助分子を通して標的分子と結合していると考えられる。
【0026】
適当なキレート構造を用い、共有結合または非共有結合を通して、薬剤の放射性核種と標的分子との空間的な近接性を提供してもよい。このようなキレート構造の多くは、当技術分野において公知である。好ましくは、キレート構造は、NS構造、-N構造、-N構造、イソニトリルを含む構造、ヒドラジンを含む構造、NYNIC(ヒドラジノニコチン酸)基を含む構造、2-メチルチオールニコチン酸を含む構造、カルボン酸基などである。場合によっては、放射性核種が、標的部位の原子に直接キレートするため、例えば、リン酸基またはカルボン酸基の酸素原子に直接キレートするため、別々のキレート構造を含まなくてもキレート化を行なうことができる。
【0027】
標的分子が、心臓血管組織中のレセプターと相互作用するのを妨害しないような標的分子の部位に、キレート構造、補助分子、または放射性核種を空間的に近接させて配置することができる。
【0028】
したがって、キレート構造、補助分子、または放射性核種は、標的分子のいずれかの部分でレセプター結合部位以外の部分に、共有的または非共有的に結合していればよい。例えば、キレート構造、補助分子、または放射性核種は、標的分子のリン酸部位、標的分子の-X-部分に結合していてもよい。
【0029】
特異的な放射性核種のリガンドへのキレート化、結合、または接着をもたらすか、最適にするような既知の処理方法を用いて、放射性核種を標的分子に空間的に近接したところに置くことができる。例えば、123Iが放射性核種の場合、クロラミンTによる直接的放射性ヨウ素化、ハロゲンまたは有機金属基との放射性ヨウ素化交換などの既知の放射性ヨウ素化処理によって、造影剤を直接標識することができる。放射性核種が99mTcの場合には、99mTcをリガンド分子に接着させるのに適したいずれかの方法を用いて、造影剤を標識することができる。好ましくは、放射性核種が99mTcの場合には、マンニトール、グルコン酸、グルコヘプトン酸(glucoheptonate)、および酒石酸などの補助分子が、キレート構造を有するか、またはもたない状態で、標識反応混合液中に含まれる。より好ましくは、マンニトールおよび標的分子の存在下で、スズによって99mTcOを還元することによって、標的分子の空間的な近接位置に99mTcを置く。APAまたはAPA類似体が標的分子の場合、本発明の心臓血管造影剤は、好ましくは、APAまたはAPA類似体1 mg当たり約1 mg〜20 mgのマンニトールの存在下で、0.05 mg〜1 mgのSnClによって、約50〜100mCiの99mTcOを還元して作成される。より好ましくは、APAまたはAPA類似体1 mgにつき、約0.05 mgのSnClと、約10 mgのマンニトールを用いて、99mTcOを還元する。その他の還元剤、例えば、酒石酸スズを用いて、本発明に係る心臓血管の造影剤を作成してもよい。「X」部分が-CHCl-であるAPAまたはAPA類似体の空間的に近い位置に99mTcを置くための具体的な処理手順を、実施例1に示す。
【0030】
標識反応が完了した後に、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)段階を用いて、反応混合液を選択的に精製してもよい。精製段階を行なうのであれば、適当なHPLCシステムを用いてもよく、HPLC段階から得られた心臓血管の造影剤の収量は、当技術分野において知られているように、HPLCシステムのパラメータを変更することによって最適化することができる。どのHPLCシステムのパラメータも、本発明の心臓血管の造影剤の収量を最適化させるために変更することができる。例えば、本発明の心臓血管造影剤に相当するピークの溶出時間を短縮するために上げたりして、pHを変化させてもよい。
【0031】
画像化のためのキットとして具体化した本発明には、ヒト血清アルブミンなど薬学的に許容される担体と組み合わされた、上述の一つ以上の造影剤が含まれる。本発明のキットにおいて用いられるヒト血清アルブミンは、例えば、ヒトの血清から蛋白質を精製したり、ヒト血清アルブミンをコードする遺伝子を含むベクターを組換え発現させるなど、いかなる方法で作成してもよい。本発明のこの態様に従う担体として、例えば、界面活性剤、希釈アルコール、炭水化物、補助分子など、別の物質を用いてもよい。また本発明のキットは勿論、注射器、指示書、反応用ガラス瓶など、キットの使用を容易にするような、その他の品目を含んでいてもよい。
【0032】
一つの態様において、本発明に係るキットは、薬学的に許容される担体と組み合わせて、約1 mCi〜約30 mCiの放射性核種で標識された上記の心臓血管造影剤を含む。本発明のキットは、放射性核種で標識されたAPA類似体を含んでいてもよい。心臓血管造影剤および担体は、溶液または凍結乾燥粉末の形で提供することができる。キットの心臓血管造影剤および担体が凍結乾燥させた形の場合には、キットは、選択的に、水、食塩水、緩衝食塩水などの滅菌された理学的に許容される再構成培地を含みうる。
【0033】
別の態様において、本発明のキットは、キレート剤; マンニトール、グルコン酸、グルコヘプトン酸(glucoheptonate)、および酒石酸などの補助分子;ならびにSnClまたは酒石酸化スズなどの還元剤と共有的または非共有的に結合している非標識の標的分子を含んでいてもよい。本態様においては、キットには、非標識のAPAまたはAPA類似体が含まれうる。非標識の標的分子/キレート剤、および補助分子は、キットの別個の成分として存在するかもしれないし、または一つのキット成分として結合されているかもしれない。非標識の標的分子/キレート剤、補助分子、および還元剤は、溶液または凍結乾燥させた形で提供することができ、キットのこれらの成分は、NaCl、珪酸、リン酸緩衝液、アスコルビン酸、ゲンチシン酸などの安定剤を選択的に含むことができる。本態様においては、例えば、酸化抵抗的な形の還元剤を提供することによって、キットの成分のさらなる安定化が提供されうる。このような安定剤の決定と最適化、および安定化の方法は、当技術分野における技術水準の範囲内に十分ある。本態様の標識されていない標的分子/キレート剤が凍結乾燥の形である場合、このキットは、選択的に、水、食塩水、緩衝食塩水などの滅菌された生理学的に許容される再構成媒体を含むことができる。本態様における標識されていない標的分子/キレート剤、補助分子、および還元剤の量は、上で示した心臓血管造影剤を作成するための方法にしたがって最適化される。市販されている99Mo/99mTc発生器から生じさせた99mTc、または市販されている123Iなどの放射性核種を、放射性核種を標的分子/キレート剤にキレートするのに十分な時間と温度で、非標識の標的分子/キレート剤および還元剤と結合させることができ、このようにして形成された造影剤を患者に注入する。
【0034】
例えば、核医学の専門家などの当業者により発明された方法により、本発明の心臓血管造影剤を用いて、哺乳動物の心臓血管組織を画像化してもよい。本発明の造影剤によって、哺乳動物のいかなる心臓血管組織も画像化されうる。例えば、本発明の心臓血管造影剤は、心臓、心臓の周囲の血管組織、肺の脈管組織、四肢の脈管組織、脳血管組織などを画像化するのに適している。本発明に従い、本明細書において説明されている心臓血管造影剤を、哺乳動物において血栓、塞栓、梗塞、虚血領域などの心臓血管の病変部を検出するために用いてもよい。本発明の方法には、放射性核種標識したAPA、または放射性核種標識したAPA類似体を用いることができる。
【0035】
哺乳動物のさまざまな組織および器官に蓄積する造影剤の空間的な分布の違いによって、画像が生成される。哺乳動物、器官、または組織の中に蓄積された心臓血管造影剤の空間的分布を、例えば、ガンマカメラ、PET装置、SPECT装置などを用いて測定することができる。画像の中に、例えば、99mTc-APA標識された心臓の中に、より弱いスポットが現れた場合に心臓血管の病変が示されるものがあり、これは、周囲の心臓血管組織の中に蓄積する造影剤の濃度に較べて、より低濃度の造影剤が蓄積する組織が存在することを示している。または、心臓血管の病変部は、画像の中でより強度のスポットとして検出できるかもしれず、これは、周囲の心臓血管組織の中に蓄積する薬剤の濃度に較べて、病変部での造影剤の濃度が増加していることを示している。血栓および塞栓は、本発明の造影剤の濃度が増加して蓄積する心臓血管病変の例である。または、放射性射出を定量するための方法を用いて、造影剤の蓄積の程度を定量することができる。特に有用な画像化法では、並行して実験を行なうために、一つ以上の造影剤を用いる。例えば、灌流と代謝機能とを同時に実験すれば、代謝の流れと結合させたり、結合させなかったりする実験が可能になり、それによって、心臓の損傷後の組織の生存能力を判定することが容易になる。このような判定は、心臓虚血、心筋症、組織の生存能力、ハイブリネイティング・ハート(hybrinating heart)、および、その他の心臓の異常を診断する上で有用である。
【0036】
本発明の心臓血管造影剤は、以下の態様で用いられる。画像化実験で使用するために、少なくとも1種類の標的分子と核種(1から50 mCi)とを含む、有効量の造影剤を、薬学的に許容された担体と組み合わせてもよい。本発明によれば、本発明に係る造影剤の「有効量」とは、臨床的に使用可能な装置を用いて、許容できる画像が得られるのに十分な量と定義される。本発明に係る造影剤の有効量は、一回以上の注射によって投与することができる。本発明に係る造影剤の有効量は、各個人の感受性の程度、各人の年齢、性別、および体重、各個人の特異体質反応、線量測定法などの要素により多様である。また、本発明に係る造影剤の有効量は、器具およびフィルムに関する要素によっても変化しうる。このような要素を最適化することは、当技術分野における技術の範囲内に十分含まれる。
【0037】
本明細書で用いられる「薬学的に許容される担体」という用語には、溶媒、分散媒体、コーティング、坑細菌剤および坑真菌剤、等張剤、吸収遅延剤などのいずれかまたはすべてが含まれる。本発明において用いられる処方剤には、安定剤、保存剤劑、緩衝剤、坑酸化剤、または当業者に既知の添加剤が含まれる。薬学的に活性のある物質のために、このような媒体と薬剤を使用することは、当技術分野ではよく知られている。補助的な活性化合物も、本発明の造影剤の中に取り込むことができる。さらに、本発明の造影剤は、適当な希釈剤またはアジュバントに入れて投与したり、酵素阻害剤とともに投与したり、またはヒト血清アルブミンもしくはリポソームなどの適当な担体に入れて投与してもよい。薬学的に許容される希釈剤には、滅菌食塩水およびその他の水性緩衝液が含まれる。本明細書において企図されているアジュバントには、レゾルシノール、ポリオキシエチレンオレイルエーテル(polyoxyethylene oleyl ether)のような非イオン性界面活性物質、およびn-ヘキサデシルポリエチレンエーテル(n-hexadecyl polyethylene ether)が含まれる。酵素阻害剤には、膵臓トリプシンインヒビター、ジエチルピロカルボネート、およびトラシロール(trasylol)が含まれる。リポソーム阻害剤には、水中油中水型CGF乳剤および従来のリポソームが含まれる(Strejan et al. (1984) J. Neuroimmunol. 7, 27)。
【0038】
好ましくは、本発明の造影剤は、静脈内投与されるため、この造影剤は、滅菌された非経口的に許容される発熱物質を含まない水溶液として処方される。このような非経口的に許容される水溶液の調製で、pH、等張性、安定性などを適正にしたものは、当技術分野の範囲内にある。静脈注射にとって好ましい処方剤には、心臓血管造影剤に加えて、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、デキストロース注射液、デキストロースと塩化ナトリウムの注射液、乳酸加リンゲル注射液などの等張賦形剤、または当技術分野において知られているその他の賦形剤が含まれる。
【0039】
診断目的で使用される造影剤の量および画像化実験の期間は、治療すべき病状の性質や重篤度により、患者が経験してきた治療処置の性質により、また患者の異常体質反応にもよる。最終的には、担当の医師が、各患者に投与する造影剤の量および画像化実験の期間を決める。
以下の実施例は、例示目的のためだけに含まれており、本発明の範囲を制約することを意図するものではない。
【0040】
実施例1
99mTc-APA-コリガンド(マンニトールまたはグルコン酸)、および99mTc-APCHClPA-コリガンド(マンニトールまたはグルコン酸)の合成
50 mCi〜100 mCiの99mTcOを、99Mo/99mTc発生器(デュポン・メルク社(DuPont Merk), マサチューセッツ州ビレリカ(Billerica, MA))から、1.5 mlの滅菌水中に得て、1 mgのAPA溶液(シグマ社(Sigma) ミズーリ州セントルイス (St.Louis, MO))、50 mgのマンニトール、および100μgのSnClと、200μlの滅菌水の中で混合した。この溶液を撹拌して、室温で10分間反応させた。そして、反応混合液を、直径5 mm、長さ25 cmのC8-ODS逆相カラム(ウォーターズ社 (Waters)、マサチューセッツ州ミルフォード (Milford, MA))に吸着させ、CHCN:緩衝液(20:80)で溶出して精製した。溶出段階のための緩衝液は、3.1 mlの濃縮HPO、3.9 mlのt-ブチルアンモニウムヒドロキシドを含んでおり、これらは、混合してからNaOHでpH 2.4に滴定した。図1は、太線で示された非標識材料(A254で測定)、薄い直線で示された標識材料(γ射出で測定)により、この処理手順を用いた溶出プロフィールを示している。図1の点線が、放射活性溶出プロフィールである。15.826分後に溶出する放射活性のピークが99mTc-APAであるので、心臓血管組織を画像化するために、実施例2で示されているようにしてウサギに注射した。このクロマトグラフィーで1〜3分後に溶出する放射活性のピークが99mTc-マンニトールであったため、実施例2で説明されている実験の対照として用いた。
【0041】
同様の処理手順を用いて、下記の化学式のAPA類似体を99mTcで標識した:
【化5】

図2は、99mTc-APA調製物の逆相HPLC溶出プロフィールであるが、ここでは、1 mgのAPAの還元を行うために約10 mgのマンニトールと40μgのSnClを用いた。この反応混合液も撹拌して、室温で10分間反応させた。CHCN:緩衝液の比を15:85とし、溶出緩衝液が3.0 mlの濃縮HPOと3.36 mlのt-ブチルアンモニウムヒドロキシドをNaOHでpH 3.4に滴定したことを除いては、上述したところにしたがって反応混合液のHPLC精製を行った。図2は、反応混合液の溶出プロフィールを示しており、13.430分後に溶出するピークが99mTc-APAに相当する。
1 mgのマンニトールを、標識反応における補助分子として用いると、99mTc-APAの収量が非常に低くなった。
【0042】
実施例2
ウサギにおける実験的なアテローム性硬化病変部の画像化
ナルラら(Narula et al., Circulation 92, 474-484 (1995))で示されているように、横隔膜下大動脈の内皮除去(deendothelialization)を行い、その後、6%ピーナッツ油−2%コレステロールの食餌によって、ウサギで実験的なアテローム性硬化病変を誘導した。2 mCiまたは4 mCiの99mTc-APA、実施例1で作出された99mTc標識APA類似体、または99mTc-マンニトールを、実験的な病変が誘導されているウサギの耳静脈の周縁部と、実験的な病変処理を行っていない対照用の動物に注射した。注射後の最初の5分間は1分ごとに、次の30分間は2分ごとに、その後の3時間は5分ごとに、中度エネルギーで平行穴コリメータ装備の標準視野ガンマカメラ(シリーズ100 (Series 100) オハイオヌクリア社(Ohio Nuclear))を用いて、臥位の前面と側面から見た連続的なガンマ画像を集めた。99mTcの光化学ピークを記録するために、パルス強度分析器を調整した。256×256のマトリクスで、心臓および損傷を受けた大動脈の二次元画像が得られた。次に、ウサギを殺して、心臓、大動脈、およびその他の組織を取出し、食塩水で洗浄し、重量を量って、自動ウェル型ガンマ計数器(モデル1282、LKBコンピュガンマ社(Compugamma), フィンランド、ヘルシンキ)で数を計測した。
【0043】
99mTc-APAおよび99mTc標識APA類似体は、アテローム硬化病変部の中に速やかに蓄積し、3時間以上病変部に滞留することが示された。病変部の放射活性と血液中の放射活性との1時間での比は、6対1以上であった。99mTc-APAおよび99mTc標識APA類似体は、心組織の中にも蓄積するが、他の組織には蓄積しない。これに対し、99mTc-マンニトールを注射した場合には、病変部にも心組織にも放射活性は蓄積しなかった。対照用動物では、これらの組織中での、99mTc-APAまたは99mTc標識APA類似体の蓄積が示されなかった。
【0044】
本発明のいくつかの具体的な態様が、上で詳細に説明されているが、当業者は、本発明が新規に開示するところと利点から実質的に逸脱することなく、具体的な態様において、多くの改変を加えることが可能であることを、容易に認識すると思われる。例えば、診断的に画像化する目的で、標的分子の活性を有意に変更することなく、さまざまな置換された部分で、多くの化学基を標的分子上で交換することが可能である。したがって、このような改変のすべてが、以下の請求項で定義される本発明の範囲の中に含まれることが意図されている。
【0045】
本発明の前記の目的およびその他の目的、それらのさまざまな特徴、ならびに本発明自体が、以下の説明を添付の図面とともに読むことにより、より完全に理解されると思われる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は、補助分子として、50 mgのマンニトールを用いて得られた反応混合液のHPLCクロマトグラフィーを示している。溶出プロフィールのピークは、溶出プロフィールの下に作表されたクロマトグラムのピークの下の領域から推定したものである。
【図2】図2は、補助分子として、10 mgのマンニトールを用いた、別の反応混合液のHPLCクロマトグラムを示している。溶出プロフィールのピークは、溶出プロフィールの下に作表されたクロマトグラムのピークの下の領域から推定したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヌクレオチドポリリン酸残基を含む標的部分に結合した放射性核種を含む心臓血管造影剤。
【請求項2】
下記の式A)、B)、C)、またはD)を有するヌクレオチドポリリン酸前駆体の残基を有する標的部分に結合した放射性核種を含む心臓血管造影剤:
【化1】

上記のA)〜D)の式中、
(1)Nu〜Nuが、それぞれ独立に選択されたヌクレオシドであり、
(2)pが、リン酸部分、ホスホロチオエート部分、アルキルホスホネート(alkylphosphonate)部分、ホスホロジチオエート部分、ホスホルアミデート(phosphoramidate)部分、アミノアルキルホスホルアミデート(aminoalkylphosphoramidate)部分、アミノアルキルホスホトリエステル部分、アミノアルキルホスホロチオアミデート(aminoalkylphosphorothioamidate)部分、およびチオリン酸部分からなる群より選択され、
(3)X、X、X、およびXの各々が、選択的なものであり、アルキル基、ハロゲン化されたアルキル基、窒素を含むアルキル基、硫黄を含むアルキル基、アルキレン基、ハロゲン化されたアルキレン基、窒素を含むアルキレン基、および硫黄を含むアルキレン基からなる群より選択され、
(4)(n+m)が2から8であり、かつ(r+q)が2から8である。
【請求項3】
Nu〜Nuの各々が、アデノシン、グアニン、シチジン、チミジン、ウラシル、およびイノシンからなるヌクレオシドの群より独立に選択される、請求項2記載の薬剤。
【請求項4】
Nu〜Nuの少なくとも一つがアデノシンである、請求項2記載の薬剤。
【請求項5】
Nu〜Nuの各々がアデノシンである、請求項4記載の薬剤。
【請求項6】
放射性核種が、123I、99mTc、18F、68Ga、62Cu、および111Inからなる群より選択される、請求項1または請求項2記載の薬剤。
【請求項7】
造影剤が、放射性核種をキレートするキレート構造に標的前駆体を結合させた産物を含む、請求項2記載の薬剤。
【請求項8】
キレート構造が、-NS構造、-NS構造、-N構造、イソニトリル、ヒドラジン、HYNIC基を含む構造、2-メチルチオールニコチン酸基を含む構造、およびカルボン酸基を含む構造からなる群より選択される、請求項7記載の薬剤。
【請求項9】
放射性核種が99mTcである、請求項7〜8のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項10】
Xが、アルキル部分またはクロロアルキル部分であり、pが、リン酸部分である、請求項2〜5のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項11】
下記の式を有する99mTcの複合体を含む心臓血管造影剤:
【化2】

式中、Adがアデノシンであり、pがPOHであり、かつXが99mTcを含むキレート部分である。
【請求項12】
哺乳動物に、請求項1、請求項2、または請求項11記載の造影剤を投与する段階を含む、哺乳動物の心臓血管組織を画像化する方法。
【請求項13】
哺乳動物に造影剤を投与する段階と、ある領域で検出された薬剤の蓄積が、別の領域で検出された薬剤の蓄積とは異なっていることから病変の存在が示される、哺乳動物の心臓血管系に蓄積された薬剤の空間的な分布を検出する段階とを含む、哺乳動物において心臓血管の病変を検出する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
哺乳動物に、請求項1、請求項2、または請求項11記載の造影剤を投与する段階を含む、哺乳動物において血栓を画像化する方法。
【請求項15】
造影剤が請求項10記載の造影剤である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
標的前駆体を、放射性核種を含む部分と反応させることをさらに含む、請求項14記載の方法。
【請求項17】
下記の式A)、B)、C)、またはD)である標的前駆体の供給を含む、心臓血管を画像化するためのキット:
【化3】

上記のA)〜D)の式中
(1)Nu〜Nuが、それぞれ独立に選択されたヌクレオシドであり、
(2)pが、リン酸部分、ホスホロチオエート部分、アルキルホスホネート(alkylphosphonate)部分、ホスホロジチオエート部分、ホスホルアミデート(phosphoramidate)部分、アミノアルキルホスホルアミデート(aminoalkylphosphoramidate)部分、アミノアルキルホスホトリエステル部分、アミノアルキルホスホロチオアミデート(aminoalkylphosphorothioamidate)部分、およびチオリン酸部分からなる群より選択されており、
(3)X、X、X、およびXの各々が、選択的なものであり、アルキル基、ハロゲン化されたアルキル基、窒素を含むアルキル基、硫黄を含むアルキル基、アルキレン基、ハロゲン化されたアルキレン基、窒素を含むアルキレン基、および硫黄を含むアルキレン基からなる群より選択され、
(4)(n+m)が2から8であり、かつ(r+q)が2から8である。
【請求項18】
マンニトール、グルコン酸、グルコヘプトン酸(glucoheptonate)、および酒石酸からなる群より選択される補助分子と、
b)スズを含む還元剤
とを含有するキレート剤をさらに含む、請求項17記載のキット。
【請求項19】
Nu〜Nuの各々が、アデノシン、グアニン、シチジン、チミジン、ウラシル、およびイノシンからなるヌクレオシドの群より独立に選択される、請求項17記載のキット。
【請求項20】
Nu〜Nuの少なくとも一つがアデノシンである、請求項17記載のキット。
【請求項21】
Nu〜Nuの各々がアデノシンである、請求項20記載のキット。
【請求項22】
放射性核種が、123I、99mTc、18F、68Ga、62Cu、および111Inからなる群より選択される、請求項17記載のキット。
【請求項23】
少なくとも一つのキレート形成物質をさらに含む、請求項17記載のキット。
【請求項24】
キレート形成物質が、-NS構造、-NS構造、-N構造、イソニトリル、ヒドラジン、HYNIC基を含む構造、2-メチルチオールニコチン酸基を含む構造、およびカルボン酸基を含む構造からなる群より選択される、請求項23記載のキット。
【請求項25】
放射性核種が99mTcである、請求項23または24のいずれか一項に記載のキット。
【請求項26】
Xがアルキル部分またはクロロアルキル部分であり、pがリン酸部分である、請求項17記載のキット。
【請求項27】
ヌクレオシドがアデノシンであり、pがリン酸であり、n=2、かつm=2である、請求項17記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−291134(P2007−291134A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−180475(P2007−180475)
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【分割の表示】特願平9−524543の分割
【原出願日】平成8年12月27日(1996.12.27)
【出願人】(505164025)ザ ジェネラル ホスピタル コーポレーション (20)
【Fターム(参考)】