説明

急性腎臓損傷を検出またはモニターするための方法、装置およびキット

個体における急性腎臓損傷を検出する方法であって、該方法は、(a)個体由来の体液サンプルと、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)抗体および検出可能な標識を含む分析装置とを接触させて、サンプル中のNGALタンパク質をNGAL抗体と複合体化すること、および、サンプル由来のNGALタンパク質と分析装置中のNGAL抗体とで形成された複合体の量を、検出可能な標識を用いて決定すること、を含み、ここで装置中のNGAL抗体は、2種より多くのNGALタンパク質エピトープとの結合能力を有しており、形成された複合体の量は、急性腎臓損傷のレベルを示す。個体由来のサンプル中のNGALタンパク質の由来を決定する方法は、サンプル中におけるNGALタンパク質の単量体、二量体およびヘテロ二量体の形態の相対量を決定する工程を含み、それにより改善された診断が可能になり、従ってより優れた標的治療が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、急性腎臓損傷を検出またはモニターするための方法、装置およびキットを対象とし、具体的には、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)タンパク質(またヒト好中球リポカリン(HNL)としても知られている)の測定に基づく上記方法およびキットを対象とする。
【背景技術】
【0002】
[0002]急性腎臓損傷(AKI)は、例えば心臓外科手術または腎臓移植の合併症、例えばX線造影剤または腎毒性の治療剤などの診断薬のインビボでの導入による副作用、および/または、例えば糖尿病、敗血症、出血性ショックなどのその他の病状に関連する副作用のような、手術後に起こる可能性がある重篤な状態である。一例として、急性腎臓損傷は、心臓外科手術を受けた全患者の30%もの患者に起こる可能性があり、高い死亡率、より複雑な病院経過、透析への依存性、生活の質の悪化、および、より高い感染合併症への危険を伴う。急性腎不全の初期段階における治療介入は、死亡率を低くする、および/または、治療計画を短縮することがわかっているが、初期段階で急性腎不全を発見することが難しい場合が多かった。
【0003】
[0003]現在の臨床実践において、AKIの標準的な診断法は、血清クレアチニンの上昇または尿量減少のいずれかに基づいたRIFLE(Rise,Injury,Failure,Loss,End−stage renal disease)と呼ばれるものである。血清クレアチニンは一般的な腎臓機能の信頼できるマーカーであるが、腎臓機能が急激に変化している場合は、信頼性が低く遅い指標である。幸いにも、例えばHNL/NGAL(以降、NGALと称する)、腎障害分子−1(kidney injury molecule−1)、シスタチンCおよびIL−18のような数種の有望な新規のバイオマーカーが見出されている。
【0004】
[0004]NGALタンパク質の急性腎臓損傷のマーカーとしての使用に大きな注目が向けられている。NGALは糖タンパク質であり、元々は好中球特異的な顆粒の構成要素、および、タンパク質のリポカリンファミリーの一種として同定された。このようなタンパク質は、25kDaの単量体と45kDaのジスルフィド結合したホモ二量体との両方として存在することが示されており、さらに、135kDaのヘテロ二量体の形態として、好中球ゼラチナーゼ(また、マトリックスメタロプロテイナーゼ9、MMP−9としても知られている)と分子間のジスルフィド架橋を介して共有結合で複合体化している場合もある。NGALは最初、Xu et al,Journal of Immunological Methods,171:245−252(1994)によりインビボおよびインビトロでの好中球活性の特異的なマーカーとしてのHNLとして説明され、Venge(米国特許第6,136,526号)により炎症の診断マーカーとしての使用に関して説明された(これらは、参照により本明細書に含める)。
【0005】
[0005]つい最近になって、Devarajan等の米国特許公報第2004/0219603A1号および2005/0272101A1号は、尿細管細胞損傷ならびにその他の腎疾患および損傷に関するバイオマーカーとしてのNGALの使用を開示している。バイオボルト・ダイアグノスティクス(BioBorto Diagnostics,ゲントフテ,デンマーク)は近年、急性腎不全を早期診断するための「NGAL ELISAキット」を提供しており、加えてマウスモノクローナル抗ヒトNGAL抗体、および、マウスモノクローナル抗ラットNGAL抗体も提供している。加えて、Dent et al,Critical Care,11(6):R127(2007)は、バイオサイト社(Biosite Inc.,サンディエゴ,カリフォルニア州)製の急性腎臓損傷のバイオマーカーとして、NGALの測定に使用するための蛍光性ナノ粒子に結合させたNGAL特異的モノクローナル抗体を用いたトリアージ(Triage(R))NGALデバイスを説明している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,136,526号
【特許文献2】米国特許公報第2004/0219603A1号
【特許文献3】米国特許公報第2005/0272101A1号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Xu et al, Journal of Immunological Methods, 171:245-252 (1994)
【非特許文献2】Dent et al, Critical Care, 11(6):R127 (2007)
【発明の概要】
【0008】
[0006]しかしながら、急性腎臓損傷の検出および/またはモニターにおけるさらなる改善が求められる。
発明の概要
[0007]従って本発明は、急性腎臓損傷の検出、および、急性腎臓損傷の治療有効性のモニターのための方法、装置およびキットを提供する。
【0009】
[0008]一実施態様において、本発明は、個体における急性腎臓損傷を検出する方法を対象とし、本方法は、(a)個体由来の体液サンプルと、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)抗体および検出可能な標識を含む分析装置とを接触させて、サンプル中のNGALタンパク質をNGAL抗体と複合体化すること、および、(b)サンプル由来のNGALタンパク質と分析装置中のNGAL抗体とで形成された複合体の量を、検出可能な標識を用いて決定することを含み、ここで装置中のNGAL抗体は、2種より多くのNGALタンパク質エピトープとの結合能力を有しており、形成された複合体の量は、急性腎臓損傷のレベルを示す。
【0010】
[0009]その他の実施態様において、本発明は、個体における急性腎臓損傷を検出する方法を対象とし、本方法は、(a)個体由来の体液サンプルを、ポリクローナル好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)抗体と接触させること、および、(b)サンプル由来のNGALとポリクローナルNGAL抗体の間で形成された複合体の量を、検出可能な標識を用いて決定することを含み、ここで該複合体の量は、急性腎臓損傷のレベルを示す。
【0011】
[0010]追加の実施態様において、本発明は、急性腎臓損傷治療の有効性をモニターする方法を対象とし、本方法は、以下の工程:(a)個体由来の第一の体液サンプルを、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)抗体および検出可能な標識を含む第一の分析装置と接触させ、第一のサンプル中のNGALタンパク質をNGAL抗体と複合体化すること、(b)第一のサンプル由来のNGALタンパク質と第一の分析装置中のNGAL抗体とで形成された複合体の量を、検出可能な標識を用いて決定すること(ここで装置中のNGAL抗体は、2種より多くのNGALタンパク質エピトープとの結合能力を有する)、(c)治療を行った後に得られた個体由来の第二の体液サンプルを、NGAL抗体および検出可能な標識を含む第二の分析装置と接触させ、第二のサンプル中のNGALタンパク質をNGAL抗体と複合体化すること、(d)第二のサンプル由来のNGALと第二の分析装置中のNGAL抗体との間に形成された第二の複合体の量を、検出可能な標識を用いて決定すること(ここで装置中のNGAL抗体は、2種より多くのNGALタンパク質エピトープとの結合能力を有する)、および、(e)第一の複合体の量と第二の複合体の量とを比較することを含み、ここで第二の複合体の量が第一の複合体の量と比較して減少していることは、治療が有効であることを示す。
【0012】
[0011]さらなる実施態様において、本発明は、急性腎臓損傷治療の有効性をモニターする方法を対象とし、本方法は、以下の工程:(a)治療前に得られた個体由来の第一の体液サンプルを、ポリクローナル好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)抗体と接触させること、(b)第一のサンプル由来のNGALタンパク質とポリクローナルNGAL抗体との間に形成された第一の複合体の量を、検出可能な標識を用いて決定すること、(c)治療を行った後に得られた個体由来の第二の体液サンプルを、ポリクローナルNGAL抗体と接触させること、(d)第二のサンプル由来のNGALとポリクローナルNGAL抗体との間に形成された第二の複合体の量を、検出可能な標識を用いて決定す
ること、および、(e)第一のサンプル由来のNGALとポリクローナルNGAL抗体との間に形成された第一の複合体の量を、第二のサンプル由来のNGALとポリクローナルNGAL抗体との間に形成された第二の複合体の量と比較することを含み、ここで第二の複合体の量が第一の複合体の量と比較して減少していることは、治療が有効であることを示す。
【0013】
[0012]さらなる追加の実施態様において、本発明は、個体における急性腎臓損傷を検出するためのキットを対象とする。一実施態様において、本キットは、体液サンプル中のNGALとNGAL抗体とで形成された複合体の量の決定に使用するのに適した好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)抗体および検出可能な標識を含む分析装置を含み、ここで装置中のNGAL抗体は、2種より多くのNGALタンパク質エピトープとの結合能力を有する。
【0014】
[0013]その他の実施態様において、本キットは、体液サンプルとの接触に適した第一のポリクローナル好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)抗体、体液サンプル中のNGALタンパク質と第一のポリクローナルNGAL抗体の間で形成された複合体の量の決定に使用するのに適した第二のNGAL抗体、および、体液サンプル中のNGALと第一のポリクローナルNGAL抗体とで形成された複合体の量の決定に使用するのに適した検出可能な標識を含む。
【0015】
[0014]さらなる実施態様において、本発明は、個体における急性腎臓損傷を検出するための分析装置を対象とし、本装置は、基板に固定された、体液サンプルとの接触に適したポリクローナルNGAL抗体、および、NGALタンパク質と固定されたポリクローナルNGAL抗体との複合体に結合するように適応させた検出可能な標識を含む。
【0016】
[0015]このような本発明の方法、装置およびキットは2種より多くのNGALタンパク質エピトープとの結合能力を有するNGAL抗体を用いるため、本方法およびキットは、驚くべきことに、NGALに関してバイオマーカーとして改善された感度を示し、それゆえに急性腎臓損傷の検出において改善された感度を示す。この改善された感度によってこのような損傷の早期発見を提供することができ、その結果として早期の治療効果が得られると予想される。
【0017】
[0016]さらなる実施態様において、本発明は、個体由来のサンプル中の好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)タンパク質の由来を決定する方法を対象とする。より具体的な実施態様において、本方法は、腎臓に由来するNGALと好中球に由来するNGALとを区別するのに用いることが可能である。具体的な一実施態様において、このような方法は、(a)サンプル中におけるNGALタンパク質の単量体、二量体およびヘテロ二量体の形態の相対量を決定すること、および、(b)決定された量を比較すること、を含み、ここで単量体および/またはヘテロ二量体のNGALタンパク質の量が、二量体のNGALタンパク質と比較して優勢であるならば、個体の腎臓に由来するNGALタンパク質であることを示し、一方で、二量体のNGALタンパク質の量が、単量体またはヘテロ二量体のNGALタンパク質と比較して等しいかまたは優勢であるならば、個体の好中球に由来するNGALタンパク質であることを示す。NGALタンパク質の由来を決定することは、状態を診断するのに役立つと予想され、とりわけ改善された標的治療を可能にすると予想される。
【0018】
[0017]以下の詳細な説明を参照することにより、上述の、および追加の利点および改善がよりよく理解されるものと予想される。
図面の簡単な説明
[0018]以下の図面を参照することにより、詳細な説明がよりよく理解されるものと予想される:
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】[0019]図1は、実施例1で説明されているように、血漿クレアチニンの手術前および手術後のレベルを示す。男性および女性の正常な上限レベルはそれぞれ、100μmol/Lおよび90μmol/Lである。手術前のレベルは、男性および女性両方の正常なレベルと比較して有意に高かった(p<0.001)。
【図2A】[0020]図2Aおよび2Bは、実施例1で説明されているように、ポリクローナル抗体を用いたRIA分析、および、2種のモノクローナル抗体を用いた分析それぞれを利用して測定された、尿中のNGALの手術前および手術後のレベルを示す。健康な被検体のレベルも示した。水平線は上限の97.5を示し、これは健康なコントロールの百分位数である。ANOVAで手術前および手術後レベル間の全体的な差を概算し、それを図に示した。両方の分析において、3つ全てのタイムポイントで、手術後レベルが手術前レベルと有意に異なっていた(p<0.001)。
【図2B】[0020]同上。
【図3A】[0021]図3A〜3Cは、実施例1で説明されているように、ポリクローナル抗体を用いたRIA分析、ポリクローナルとモノクローナル抗体とを用いたELISA分析、および、2種のモノクローナル抗体を用いた分析それぞれを用いて測定された、手術後2時間における尿中のNGALレベルと体外循環時間(ECC時間)との関係のボックスプロットを示す。統計学的差異および中央値の増加倍率を示す。
【図3B】[0021]同上。
【図3C】[0021]同上。
【図4A】[0022]図4Aおよび4Bは、実施例1で説明されているように、ポリクローナル抗体を用いたRIA分析、および、2種のモノクローナル抗体を用いた分析それぞれを利用して測定された、尿中のNGALレベルとGFR(血漿シスタチンC)との関係を示す。線形回帰分析の結果を示す。
【図4B】[0022]同上。
【図5】[0023]図5は、実施例1で説明されているように、ポリクローナルNGAL抗体を用いたRIA、および、2種のモノクローナル抗体を用いた分析を利用した尿中のNGALタンパク質測定の関係を示す。線形回帰分析は以下の通り:r=0.86、p<0.0001、n=331。挿入図は、濃度の下端におけるこれら2つの分析間の関係を示す。
【図6】[0024]図6は、実施例2で説明されているように、心臓外科手術を受けた2人の患者から得られた尿サンプルU1およびU2中のNGALの異なる分子形態のウェスタンブロッティングの結果を示す。
【図7】[0025]図7は、実施例2で説明されているように、異なる抗体に基づく分析を用いた、尿をスーパーデックス(SuperdexTM)−75でゲルろ過することによって得られた分画中のNGALの測定を示す。ピーク1およびピーク2におけるNGALの主要な分子形態は、それぞれ二量体および単量体である。挿入図は、ピーク1を拡大した図である。
【図8】[0026]図8は、実施例2で説明されているように、指定された時間で決定された、調整培地中で培養されたHK−2細胞によるNGAL合成の時間経過を示す。値は、3つの独立した実験の二連での分析からの平均±標準偏差である。マーカー*および**は、それぞれp<0.05、および、p<0.01を示す。
【図9A】[0027]図9Aおよび9Bは、完全培地または刺激因子が添加された完全培地(図9A)のいずれかのなかで増殖させたHK−2細胞、または、ケラチノサイト無血清培地(K−SFM)、または、刺激因子が添加されたK−SFM(図9B)のなかで増殖させたHK−2細胞のいずれかから分泌されたNGALのレベルを示す。値は、3つの独立した実験の二連での分析からの平均±標準偏差である。マーカー*、**および***は、それぞれp<0.05、p<0.01、および、p<0.001を示す。
【図9B】[0027]同上。
【図10】[0028]図10は、下のパネルに、調整培地で培養されたHK−2細胞から分泌されたNGALのウェスタンブロッティングによる検出を示し、上のパネルに、新しい培地(C)、または、1ng/mLのIL−βが添加された培地(S)添加後の指定されたタイムポイントで回収されたHK−2細胞のNGALのmRNA発現を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[0029]本発明の様々な形態、特徴および実施態様は、詳細な説明を考慮すればよ
りよく理解されるものと予想される。
詳細な説明
[0030]NGALは、最初にヒト好中球から単離され、以前の研究によれば、血液中のNGALの測定が、細菌およびウイルスによって引き起こされる急性感染と区別する優れた手段であることが示された。近年、例えば尿のような体液サンプル中へのNGAL排出と、急性腎臓損傷との密接な関係が研究されている。驚くべきことに、NGAL測定と、モノクローナル−モノクローナル分析およびポリクローナル抗体を用いた分析との比較から、これらの分析の臨床能力における重要な違いが示された。この結果から、分析における抗体の選択が重要であり、特に、2種より多くのNGALタンパク質エピトープと反応する能力を有する抗体を使用すれば、高感度での分析が提供されることが証明され、従ってこれらの分析で、様々な条件下で排出された異なるNGAL変異体が同定されることが証明される。それゆえに本発明の方法、装置およびキットは、2種より多くのNGALタンパク質エピトープと反応する能力を有するNGAL抗体を用いる。これに関して、このようなNGAL抗体は、以下でさらに詳細に説明されているように、1種またはそれ以上のポリクローナルNGAL抗体、および/または、1種またはそれ以上のポリクローナルNGAL抗体と、1種またはそれ以上のモノクローナルNGAL抗体との組み合わせを含んでもよい。さらに、NGAL抗体または抗体群は、NGALタンパク質の捕獲のために用いられる場合もあるし、および/または、検出可能な標識と共に用いられる場合もある。
【0021】
[0031]個体における急性腎臓損傷を検出する方法は、あらゆるヒト個体に適合させることができ、具体的には急性腎臓損傷の危険性がある可能性がある個体に適合させることができる。このような個体としては、これらに限定されないが、心臓外科手術または腎臓移植、例えばX線造影剤または腎毒性の治療剤などの診断薬のインビボでの導入を受けた個体、および/または、糖尿病、敗血症、出血性ショックなどを有する個体が挙げられる。具体的な実施態様において、このような個体は心臓外科手術を受けた患者であり、サンプルは、心臓外科手術を受けた患者から心臓外科手術の3時間以内に得られる。追加の実施態様において、検出方法は、心臓外科手術後の連続した期間に得られたそれぞれのサンプルに対して繰り返され、例えば外科手術後の2時間および5時間、外科手術後の2時間および12時間、外科手術後の2時間、12時間および24時間などに繰り返される。
【0022】
[0032]本方法は、検出のために体液サンプルを用いる。より具体的な実施態様において、このようなサンプルは、尿、血液、血清もしくは血漿、または、それらの精製した成分を含む。より具体的な実施態様において、このようなサンプルは尿である。
【0023】
[0033]一実施態様において、本方法は、(a)個体由来の体液サンプルと、NGAL抗体および検出可能な標識を含む分析装置とを接触させ、サンプル中のNGALタンパク質をNGAL抗体と複合体化すること、および、(b)サンプル由来のNGALタンパク質と分析装置中のNGAL抗体とで形成された複合体の量を、検出可能な標識を用いて決定すること、を含み、ここで装置中のNGAL抗体は、2種より多くのNGALタンパク質エピトープとの結合能力を有しており、形成された複合体の量は、急性腎臓損傷のレベルを示す。上記で考察したように、2種より多くのNGALタンパク質エピトープとの結合能力を有するNGAL抗体は、1種またはそれ以上の異なるNGAL抗体によって提供されてもよい。
【0024】
[0034]形成された急性腎臓損傷を示す複合体の、定性的または定量的な量を決定するために、特定の装置または技術を用いた較正を行ってもよい。測定がラジオイムノアッセイ(RIA)によってなされる具体的な実施態様において、急性腎臓損傷を示すNGALタンパク質の量は、60ng/mlであるか、またはそれより高い。測定が酵素結合免疫吸着検査法(ELISA)によってなされるその他の実施態様において、急性腎臓損傷を示すNGALタンパク質の量は、100ng/mlであるか、またはそれより高い。
【0025】
[0035]一実施態様において、本方法は、ポリクローナルNGAL抗体を用い、例えばXu等,Journal of Immunological Methods,1
71:245−252(1994)(参照により本明細書に含める)によって開示されたポリクローナルNGAL抗体を用いる。例えばXu等によって説明されているように、NGAL(HNL)に対するポリクローナル抗体は、フロイント完全および不完全アジュバント中でホモジナイズした合計72μgの精製タンパク質を、ウサギの複数の部位に皮内注射することによって、ウサギで発生させる。抗体の特異性は、アガロース中での二重免疫拡散法(Devereux et al.,Nucleic Acid Research,12(1):387−394(1984))によって評価することができ、さらに、好中性顆粒の抽出物、および、以下の精製タンパク質:カテプシンG、エラスターゼ、ミエロペルオキシダーゼ、リゾチーム、ラクトフェリン、好酸球カチオン性タンパク質(ECP)、および、好酸球タンパク質X(EPX/EDN)に対して試験することができる。当然ながらその他のNGAL抗体を用いてもよい。
【0026】
[0036]一実施態様において、本発明に係る方法は、(a)個体由来の体液サンプルをポリクローナルNGAL抗体と接触させること、および、(b)サンプル由来のNGALとポリクローナルNGAL抗体の間で形成された複合体の量を、検出可能な標識を用いて決定すること、を含み、ここで該複合体の量は、急性腎臓損傷のレベルを示す。具体的な実施態様において、例えばNGAL抗体は、ポリクローナル抗体を含み、サンプル中のNGALタンパク質とNGAL抗体との間に形成された複合体の量は、従来のラジオイムノアッセイ技術によって決定される。このような技術は当業界公知であり、例えば、二重ラジオイムノアッセイ技術の使用などが挙げられ、この場合、2種のポリクローナル抗体を使用する場合もあるし、または、1種のポリクローナル抗体と1種のモノクローナル抗体が用いられる場合もある。その他の実施態様において、サンプル中のNGALタンパク質とNGAL抗体との間に形成された複合体の量は、酵素結合免疫吸着検査法(ELISA)によって決定され、ここでELISAは、少なくとも1種のポリクローナルNGAL抗体を用いる。ELISA技術も当業界公知である。ELISA法を用いる具体的な実施態様において、分析装置は、ポリクローナルNGAL抗体、および、モノクローナルNGAL抗体を含み、これらNGAL抗体のうち一方は基板に結合し、これらのNGAL抗体のうち他方は検出可能な標識に結合する。より具体的な実施態様において、ポリクローナルNGAL抗体は基板に結合しており、すなわち基板に固定されている。さらなる実施態様において、ポリクローナルNGAL抗体は基板に結合しており、モノクローナルNGAL抗体は検出可能な標識に結合する。あるいは、ELISAは、2種の異なるポリクローナルNGAL抗体を含む分析装置を用いてもよく、ここで、これらNGAL抗体のうち一方は基板に結合し、これらのNGAL抗体のうち他方は検出可能な標識に結合する。当業界でよく知られているその他の分析技術を用いてもよく、ここで、例えば、少なくとも1種のポリクローナルNGAL抗体は基板に固定されており、より具体的な実施態様において、検出可能な標識は他方のNGAL抗体に結合しており、ここでこの抗体は、モノクローナルNGAL抗体または第二のポリクローナルNGAL抗体のいずれであってもよい。
【0027】
[0037]従って、本発明はまた、このような方法のための装置およびキットも対象とする。一実施態様において、本発明に係る分析装置は、基板に固定された、体液サンプルとの接触に適したポリクローナルNGAL抗体、および、NGALタンパク質と固定されたポリクローナルNGAL抗体との複合体に結合するように適応させた検出可能な標識を含む。具体的な実施態様において、検出可能な標識は、固定されたポリクローナルNGAL抗体と複合体化するNGALタンパク質に結合するように、モノクローナルまたはポリクローナルいずれかのNGAL抗体と複合体化していてもよい。本分析装置は、医療関係者による使用を容易にする「ポイント・オブ・ケア(point of care)」のための装置またはキットとして提供されてもよい。
【0028】
[0038]当然のことながら、本発明はさらに、治療計画の前およびその後に、または、その最中に、複数の個体由来のサンプルを解析することによって急性腎臓損傷の治療をモニターするのにも使用できる。このような方法は、一般的には、個体由来の第一の体液サンプルを第一の分析装置と説明したようにして接触させること、および、第一のサン
プル由来のNGALタンパク質と第一の分析装置中のNGAL抗体とで形成された複合体の量を決定すること、治療を行った後に得られた個体由来の第二の体液サンプルを第二の分析装置と説明したようにして接触させること、および、第二のサンプル由来のNGALと第二の分析装置中のNGAL抗体との間に形成された第二の複合体の量を決定すること、および、第一の複合体の量と第二の複合体の量とを比較することを含む。第二の複合体の量が、第一の複合体の量と比較して減少していることは、治療が有効であることを示す。
【0029】
[0039]その他の実施態様において、本発明は、個体由来のサンプル中の好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)タンパク質の由来を決定する方法を対象とする。このような方法は特に、腎臓のNGALタンパク質と好中球のNGALタンパク質とを区別するのに有効である。一実施態様において、本方法は、(a)サンプル中におけるNGALタンパク質の単量体、二量体およびヘテロ二量体の形態の相対量を決定すること、および、(b)決定された量を比較すること、を含み、ここで、単量体および/またはヘテロ二量体のNGALタンパク質の量が、二量体のNGALタンパク質と比較して優勢であるならば、個体の腎臓に由来するNGALタンパク質であることを示し、一方で、二量体のNGALタンパク質の量が、単量体またはヘテロ二量体のNGALタンパク質と比較して等しいかまたは優勢であるならば、個体の好中球に由来するNGALタンパク質であることを示す。腎臓由来のNGALタンパク質は、例えばウェスタンブロッティングで示したように、NGALタンパク質の二量体の形態を実質的に含まないことが発見されている。具体的な実施態様において、このようなサンプルは、尿を含む。その他の具体的な実施態様において、サンプル中のNGALタンパク質それぞれの量は、サンプルを、モノクローナルNGAL抗体を含む分析装置と接触させることによって決定される。その他の実施態様において、サンプル中のNGALタンパク質それぞれの量は、サンプルを、ポリクローナルNGAL抗体を含む分析装置と接触させることによって決定される。上述のような分析装置および技術、ウェスタンブロッティングまたはその他の従来技術および/または装置のどれを用いてもよい。
【0030】
[0040]以下の実施例2で示すように、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体は、単量体、二量体およびヘテロ二量体のNGALタンパク質の形態を同定する(すなわち、それらと複合体化する)。しかしながら腎臓由来のNGALにおいて、その結果は、実質的にNGALタンパク質の二量体の形態を含まないが、一方で、NGALの二量体の形態は、好中球由来のNGALタンパク質から得られた結果において優勢である。理論に拘束されることは望まないが、異なるNGALは異なるエピトープを提示するため、それらは例えばモノクローナル抗体によって異なってピックアップされると考えられる。従って、説明したような比較によって、腎臓由来のNGALタンパク質と、好中球由来のNGALタンパク質とを区別することができる。
【0031】
[0041]以下の実施例で、本発明の様々な形態を説明する。
【実施例】
【0032】
実施例1
[0042]この実施例では、2種より多くのNGALタンパク質エピトープとの結合能力を有するNGAL抗体を用いたNGAL決定、および、モノクローナル抗体を2種だけ用いたNGAL決定との比較の研究を説明する。
【0033】
[0043]患者およびサンプル
[0044]本研究に、ウプサラ大学病院(Uppsala University Hospital)で心臓外科手術を受けた合計59人の成人患者を採用した。患者の年齢は27〜85歳の範囲(平均63歳)であり、患者の42人が男性で、17人が女性であった。この心臓外科手術には、23例の冠状動脈バイパス移植術、15例の大動脈弁置換術、4例の僧帽弁修復、3例の複合術、83例の左心室補助装置の埋め込み術、および、63例のその他の手法が含まれる。
【0034】
[0045]手術前、および、心臓外科手術後の様々なタイムポイント(2、24、48および72時間)で尿および血液サンプルを回収した。尿サンプルを即座に3,000
rpm、4℃で15分間で遠心分離した。3,000rpm、4℃で15分間血液を遠心分離することによって、EDTA−血漿を得た。全てのサンプルの上清をアリコートにして即座に−20℃で保存した。加えて、健康な社員および生徒から追加の101種の尿サンプルを回収し、正常なコントロールとして利用した。
【0035】
[0046]尿中NGAL濃度の分析
[0047]NGALレベルを3回の異なる分析で測定した。第一の分析技術では、全般的に上記のXu等の教示に従って、ポリクローナルベースのRIAが用いられた。第二の分析技術では、ポリクローナル−モノクローナルベースのELISAが用いられた。第三の分析技術では、モノクローナル−モノクローナルベースの分析が用いられた。従って、最初の2つの技術は本発明に従って行われたが、第三の技術は比較目的で用いられた。
【0036】
[0048]より具体的に言えば、ポリクローナル抗体ベースのラジオイムノアッセイ(RIA)は、Xu等によってこれまでに述べられた通りに行われた(ただしいくつかの変更を含む)。50μLのサンプルまたは標準のいずれかの溶液(2μg/L〜128μg/L)を、50μLのI125で標識されたNGALおよび50μLの特異的な抗体と連続的に混合し、RIA分析緩衝液で適切に希釈した。この混合物を室温で3時間インキュベートした。その後、500μLの固相が第二抗体でコーティングしたセルロース懸濁液(AA−SAC1、IDS LTD,英国)を添加し、4℃で1時間インキュベートした。抗ウサギIgG抗体でコーティングしたセルロースに結合させたNGAL抗体複合体を分離し、遠心分離を3400rpmで15分間用いでペレット化した。デカンテーション後に、放射活性を測定した。イントラおよびインターアッセイの変動係数(CV)は、それぞれ6%および10%未満であった。RIA分析装置によって測定された尿中のNGAL濃度の結果は、NGAL RIAと名付けた。
【0037】
[0049]この研究で、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体ベースのELISA装置を開発した。簡単に言えば、マイクロタイタープレート(ヌンク・マックスソープ(Nunc Maxsorp),アゴジェント(Agogent),デンマーク)を、4℃で、炭酸塩−炭酸水素塩緩衝液(0.05MのNaCO−NaHCO,pH9.6,インビトロジェン社(Invitrogen Corporation),英国)中で希釈した抗NGALモノクローナル抗体(100μL/ウェル,1μg/mL)で一晩コーティングした。追加の結合部位を、2%ウシ血清アルブミン(200μL/ウェル,シグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich),シュタインハイム,ドイツ)を含む炭酸塩−炭酸水素塩緩衝液で37℃で1時間ブロックした。100μLの標準(0.1ng/ml〜6.4ng/ml)、または、分析溶液(0.2%ウシ血清アルブミン、0.1%トゥイーン(Tween)−20、0.05%CTABおよび0.02%NaNを含むPBS)中で希釈した希釈サンプルを二連で添加し、室温で2時間インキュベートした。その後、1ウェルあたり100μLの希釈したウサギ抗NGALポリクローナル抗体を添加し、室温で1時間インキュベートし、続いて100μLの希釈したホースラディッシュペルオキシダーゼ結合抗体(GEヘルスケア(GE Healthcare),英国)を添加し、室温でもう1時間インキュベートした。プレートの酵素反応を、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン溶液(100μL/ウェル,シグマ−アルドリッチ,シュタインハイム,ドイツ)で室温で20分間可視化し、100μL/ウェルの1MのHSOを添加することによって止めた。全ての工程の間に、マイクロプレート洗浄機(アントス・フルイド(Anthos fluido),ザルツブルク,オーストリア)を用いて洗浄緩衝液(0.05%トゥイーン−20を含むPBS)でプレートを4回洗浄した。吸光度を、マイクロプレートリーダー(スペクトラマックス(SPECTRAmax)250,GMI社(GMI,Inc.),米国)で、ブランクウェルにおける540nmでの測定値を参照にして、450nmで測定した。平均イントラアッセイCVは2.8%(0.5%〜4.7%の範囲)であり、インターアッセイCVは6.3(2.1〜10.4%の範囲)であった。平均回収率は99%(93〜105%の範囲)であった。ELISAによって測定された尿中のNGAL濃度の結果は、NGAL ELISAと名付けた。
【0038】
[0050]二重のモノクローナル分析におけるNGALの分析を、製造元の説明書に従って行った。イントラおよびインターアッセイの変動係数(CV%)は、6%未満であった。この装置によって測定された尿中のNGAL濃度の結果は、NGALモノ−モノと名付けた。
【0039】
[0051]一般的なウプサラ大学病院の臨床化学科(Department of Clinical Chemistry)におけるアーキテクト(Architect)装置で尿中クレアチニン濃度を測定し、これを、尿で希釈される際の変動について尿中NGAL濃度を修正するのに利用した。従って、尿中NGAL濃度は、NGAL(μg/mmolクレアチニン)として示された。全ての測定を二連で行い、実験室の研究者には、実験が終わるまでサンプル源と臨床評価を知らせなかった。
【0040】
[0052]尿中のNGALのウェスタンブロッティング
[0053]ウェスタンブロッティングは、Towbin et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,76:4350−4(1979)によってこれまでに述べられた通りに行われた。簡単に言えば、20μLの尿サンプルを、Nu−PAGE(R)4〜12%ビストリスゲル(インビトロジェン社,米国)に適用した。SDS−PAGEの後に、Nu−PAGE(R)トランスファーバッファー(インビトロジェン社,米国)を25Vで1時間用いることによってタンパク質をPVDFメンブレン上に移した。PVDFメンブレンの追加の結合部位を、ブロッキング溶液(GEヘルスケア,英国)で1時間ブロックした。ブロットを、マウス抗NGALモノクローナル抗体と1時間インキュベートし、続いてペルオキシダーゼ標識二次抗体(GEヘルスケア,英国)と45分間インキュベートした。免疫ブロットを、製造元(アマシャムECL(Amersham ECLTM)ウェスタンブロッティングシステム,GEヘルスケア,英国)の説明書に従って強化された化学発光を用いて検出した。
【0041】
[0054]追加の分析
[0055]クレアチニンおよびシスタチンCの血漿濃度を、ウプサラ大学病院臨床化学科で慣例的な手法を用いて測定した。
【0042】
[0056]統計的分析
[0057]対応のない(unpaired)、および、対応のある(paired)比較のためのマン‐ホイットニーおよびウィルコクソンのノンパラメトリック検定、線形回帰分析、一元配置の分散分析(ANOVA)を、メディカルク9.5(Medcalc 9.5)(メディカルク・ソフトウェア(MedCalc Software),マリアケルク(Mariakerke),ベルギー)、および、スタティスティカ8.0(STATISTICA
8.0)(スタットソフト社(StatSoft,Inc.),タルサ,米国)によって行った。統計的有意性は、p<0.05に設定した。
【0043】
[0058]結果
[0059]図1に、手術前および手術後の78時間までの血漿クレアチニン濃度を示し、これは、期間の間に差がないことを示す。臨床転帰から、3つの被検体は急性腎臓損傷の徴候を示し、手術後の血漿クレアチニンが50%より多く上昇していたことが示された。
【0044】
[0060]尿中NGAL濃度
[0061]健康な被検体および心臓外科手術を受けた患者から得られた尿中のNGAL濃度を、3つの上述した技術を用いて測定した。図2Aおよび2Bに、RIAおよびモノ−モノ技術それぞれを用いて決定された結果を示す。手術前のレベルは、正常なコントロールと類似していた。手術の2時間後、レベルは有意に増加し(p<0.0001)、約半分の患者が、正常値上限を超えるレベルを示した。中央値の増加倍率は、RIAで測定した場合は18.7であり、ELISAおよびモノ−モノ分析で測定した場合はそれぞれ、15.6および11.4倍の増加であった。24時間後、このレベルは再度減少したが、それでもなお手術前のレベルよりも高かった。このレベルは、手術後の期間中ずっとより有意に高い状態を維持した(p<0.0001)。72時間で、増加倍率は、RIA、ELISAおよびモノ−モノ分析でそれぞれ6.8、8.5および5.9であった。3つ
全ての分析で、長期にわたり類似のパターンが観察された。
【0045】
[0062]体外循環時間(ECC)との関係
[0063]RIA技術(r=0.30、p<0.0001)、および、ELISA技術(r=0.16、p=0.006)で尿で測定した際に、ECC時間と手術後2時間で得られたNGALレベルとの有意な正相関が見出された。しかしながらこれらの相関はモノ−モノ技術では見出されなかった。90分間より長い、または、それより短いECC時間でさらに分けたところ、RIAの結果は手術後2時間のサンプルで12.6倍増加した(p=0.006)。図3A〜3Cで示されるように、ELISAの結果は6.5倍増加し(p=0.027)、モノ−モノの結果は5.2倍増加した(p=0.07)。
【0046】
[0064]尿中NGAL濃度と腎臓機能との関係
[0065]腎臓機能の指標としてクレアチニンおよびシスタチンCの血漿濃度を測定した。上記で示したように、ほとんどの被検体においてクレアチニン濃度は変わらないままであり、手術後に急性腎臓損傷の徴候(50%を超える増加で定義される)を示したのは3人の被検体だけであった。シスタチンC濃度を用いて、糸球体ろ過率(GFR)を計算した。単変量解析において、図4Aおよび4Bで示されるように、GFRは、NGAL(RIA)(r=0.28、p<0.001)、および、NGAL(モノ−モノ)(r=0.25、p<0.001)に関連していた。また尿中のNGALと血漿クレアチニンとの関係も解析した。手術後72時間の間、基準と比較して血漿クレアチニンが増加したパーセンテージ(<120%、または、>119%)に従って、被検体を2つのグループに分類した。手術後2時間でのNGALレベル(RIA)は、クレアチニン濃度が119%(p=0.03)より多く上昇したグループでより有意に上昇したが、それに対してNGALレベル(モノ−モノ)は有意に上昇しなかった(結果は示さず)。
【0047】
[0066]3つのNGAL分析の相関
[0067]NGAL(RIA)とNGAL(モノ−モノ)との全体的な相関を、図5(r=0.86、p<0.0001、n=331)にに示す。表1に異なるタイムポイントにおける相関を示したところ、rとの極めて優れた相関が0.952〜0.996の範囲で示された(ただし手術後2時間で得られた結果を除く)。この段階では、rは0.680であり、その他よりも有意に低かった(p<0.0001)。外見的に健康な被検体の同齢集団におけるNGAL(RIA)とNGAL(モノ−モノ)との関係はr=0.887であり、これもまた2時間での結果とは有意に異なっていた(p=0.001)。331の全ての結果のパッシング−バブロック(Passing−Bablok)の回帰分析によれば、HNL(RIA)=0.6553±0.5358×NGAL(モノ−モノ)の方程式が線形性からの有意な逸脱(p<0.01)と共に示され、またこれは、NGAL(モノ−モノ)分析とNGAL(ELISA)分析とを比較した場合、NGAL(ELISA)=0.0370±0.1135×NGAL(モノ−モノ)であった。しかしながら、NGAL(RIA)分析とNGAL(ELISA)分析との比較から、方程式NGAL(ELISA)=−0.002192±0.2002×NGAL(RIA)が得られ、線形性からの逸脱もなかった。
【0048】
[0068]尿中のNGALの分子形態
[0069]心臓外科手術後前および手術後の尿中に見出されたNGALの主要な形態の見かけの分子量は、それぞれ25(単量体)、45(ホモ二量体)、および、90〜130kDa(MMP−9との複合体)であった。これらの異なる形態の存在は外科手術の前後で変動した。ウェスタンブロットによるスキャンに基づくホモ二量体と単量体との比率を試験した。相対的なホモ二量体の存在量は、手術後24時間までに(p=0.02)増加し、その後、比率は減少傾向を示したことが示された。
【0049】
[0070]考察
[0071]本明細書で示した結果によれば、様々な条件下で尿中に排出された多くの様々なNGAL変異体を同定するために、NGAL分析における抗体の選択が重要であることが示される。特に、2種より多くのNGALタンパク質エピトープと反応する能力を有するNGAL抗体を用いる分析は、改善された感度を提供する。
【0050】
[0072]この研究では、心臓外科手術を受けた成人患者を用いた。急性腎臓損傷は、これらの患者に影響を与える可能性がある最も重篤な手術後合併症の1つである。この研究において、血漿クレアチニンの平均レベルは変わらないままであり、急性腎臓損傷の徴候として50%を超える上昇を示した被検体は3人だけであった。それにもかかわらず、手術終了後のたった2時間で、約半分の患者に尿中NGAL濃度の10〜100倍の増加が見出された。その上、NGALレベルは観察期間全体にわたり高いままであった。総合的に言えば、尿中NGAL濃度から、シスタチンCまたはクレアチニンの血漿濃度によって測定されたように腎臓機能と弱いが有意な関係が示され、これは、NGALは、腎臓機能不全の早期のより高感度のマーカーであるという考えの裏付けとなる。実際に、50%を超えるクレアチニンの上昇を示した3人の患者のうち2人は、手術後2時間で高度に増加したNGALレベルを示した。この研究から、NGALの主な増加は、患者の半分において手術後初期に起こるが、この増加は単に一時的なものであり、続いて数日のうちに、全ての患者において段階的な増加が起こることが明らかになった。従って、理論に制限されることは望まないが。このようなパターンは、尿中におけるNGALの尿中排出に関して異なるメカニズムがあることを反映している可能性がある。初期は、腎臓上皮や蓄積した好中球のような異なる源から予め形成されたNGALの排出を反映している可能性があり、それに対してそれに遅れて起きる排出は腎臓でのデノボ合成を反映している可能性がある。また多くの様々な分子サイズのNGALが異なる時点で尿中に発生する程度にばらつきがあるという発見から、異なるメカニズムが関与していることも示唆される。
【0051】
[0073]3回の異なる分析の比較から、有意差が示された。総合的に言えば、これらの分析は高度に相関しているが、明らかな例外がいくつかある。これらの環境下で行われた3回の分析は、NGALの異なる分子変異体を部分的に測定しているという予測から、これらの例外は、手術後2時間で得られたサンプル中に集中していることがわかった。これらの差はさらに、ポリクローナル抗体を用いたRIAおよびELISA分析の結果から、モノ−モノ分析に比べて、体外循環時間の長さや腎臓機能のような臨床的変数とより密接な関係が示されたことによっても証明された。それゆえにこれらの結果によれば、分析の臨床能力にとって、尿中の全てのNGALの形態の同定が重要であることが示される。RIAは、ポリクローナルベースの分析であり、この分析は分子中の全ての利用可能なエピトープを扱えるようであるが、それに対してモノクローナル−モノクローナルベースの分析は選択されたエピトープしか扱えず、そのうちいくつかは、複合体形成およびその他の分子の改変によって変化する場合もあるし、そうでない場合もある。ポリクローナル−モノクローナルベースのELISA分析は、これらの2つの極端な例のだいたい中間の特徴を有しており、このことは、この立体配置によれば、二重のモノクローナル分析よりも多くのエピトープの認識が可能になるが、純粋なポリクローナルベースの分析よりもいくらか少ないというということからも証明することができる。まとめると、説明した結果は、尿で測定する場合、NGALは、手術後の腎臓損傷の有用な初期のバイオマーカーであることを立証するものであり、さらに、NGALの形態のうちいくつかは制限された抗体特異性での分析では同定されない場合があることから、これらの分析における抗体の立体配置が分析の臨床能力に強い影響を与えていることも新たに示された。
【0052】
実施例2
[0074]この実施例は、NGALタンパク質の由来を決定することにおいて、NGALが単量体、二量体およびヘテロ二量体の形態のいずれであるかを決定する実験を説明する。
【0053】
[0075]尿サンプルおよびゲルろ過での分離
[0076]手術前、ならびに心臓外科手術後2時間および24時間で、合計で33種の尿サンプルを回収した。これらの尿サンプルを即座に、4℃、3,000rpmで15分間遠心分離し、アリコートにして−20℃で保存した。手術後2時間における1つの尿サンプルのゲルろ過は、FPLC−システムを用いたスーパーデックスTM75HR10/30プレ充填カラム(アマシャム・ファルマシア・バイオテク社(Amersham Pharmacia Biotech AB),ウプサラ,スウェーデン)で行われた。2
50Lの分画を回収し、−20℃で保存した。溶出緩衝液はPBSであった。分画中のNGALを、以下で説明されているように、RIAおよびELISAを用いて決定した。
【0054】
[0077]NGAL定量化のための高感度ELISA
[0078]NGALの定量化のための異なる抗体をベースとした6種のELISAを用いた:すなわち、1)Mab697−ポリクローナル(実施例1で説明されているようなモノクローナル−ポリクローナルELISA)、2)Mab764−Mab765、3)Mab764−ポリクローナル、4)ポリクローナル−Mab765、5)ポリクローナル−ポリクローナル、および、Mab−697−Mab765である。これら5種のELISAの基本的なプロトコールは、実施例1で説明したものと同じであるが、分析では特異的な抗体が用いられた。簡単に言えば、96−ウェルのマイクロタイタープレート(ヌンク・マックスソープ,アゴジェント(Agogent),デンマーク)を、ヒトNGAL%に対するウサギポリクローナルまたはマウスモノクローナル抗体(Mab697およびMab764)でコーティングした。(ダイアグノスティクス・デベロップメント(Diagnostics Development),ウプサラ,スウェーデン)。サンプルおよび標準(0.039〜5μg/Lの範囲)(100μL/ウェル)を、60分間(尿サンプルおよびゲルろ過分画)または90分間(細胞培養上清)、室温(RT)でインキュベートした。その後、100μL/ウェルのヒトNGALに対する希釈したビオチン化ウサギポリクローナル抗体、または、マウスモノクローナル抗体(Mab765)を添加し、室温で60分間インキュベートし、続いて100μL/ウェルの希釈したストレプトアビジン結合ホースラディッシュペルオキシダーゼ(GEヘルスケア,英国)(室温で30分間)を添加した。全ての工程の間に、マイクロプレート洗浄機(アントス・フルイド,ザルツブルク,オーストリア)を用いて洗浄緩衝液(0.05%トゥイーン−20を含むPBS)でプレートを4回洗浄した。酵素反応を、基質として3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン溶液(100μL/ウェル)(シグマ−アルドリッチ,シュタインハイム,ドイツ)を室温で15分間用いて可視化し、1MのHSO(100μL/ウェル)を添加することによって反応を止めた。吸光度を分光光度計(スペクトラマックス250,GMI社,米国)を用いて450nmで読んだ。
【0055】
[0079]NGAL定量化のためのポリクローナル抗体ベースのRIA
[0080]RIAを上述のようにして行った。簡単に言えば、50μLのサンプルまたは標準のいずれか(2μg/L〜128μg/L)を、50μLのI125で標識されたNGALおよび50μLの特異的な抗体と混合した。この混合物を室温で3時間インキュベートした。その後、500μLの固相の第二抗体でコーティングしたセルロースの懸濁液(AA−SAC1,IDSLTD,英国)を添加し、4℃で1時間インキュベートした。抗ウサギIgG抗体でコーティングしたセルロースに結合したNGAL−抗体複合体を遠心分離でペレット化した。デカンテーション後に、放射活性を測定した。
【0056】
[0081]HK−2の培養およびNGALタンパク質の発現
[0082]HK−2(ヒト腎臓2,CRL−2190)を、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection;ATCC)から購入した。これは、正常な腎臓から誘導されたヒト腎近位尿細管の上皮細胞系である。この細胞をヒトパピローマウイルス16(HPV−16)E6/E7遺伝子の導入によって不死化した。この細胞を、5%COを含む湿気のある雰囲気中、37℃で、完全増殖培地(0.05mg/mlウシ脳下垂体抽出物(BPE)、および、5ng/mlヒト組換え上皮増殖因子(EGF)が添加されたケラチノサイト無血清培地(K−SFM)(インビトロジェン−ギブコ(Invitrogen−Gibco(R)),英国))、または、不完全な増殖培地のいずれかで培養した。加えて、この細胞を、サイトカイン(IL−1βまたはTNF−α)(シグマ−アルドリッチ,シュタインハイム,ドイツ)、および、LPS(インビトロジェン−ギブコ(R),英国)などの特異的な刺激因子と共に培養した。ウェルあたり0.5×10個の細胞および1mlの完全増殖培地を24ウェルプレート(ファルコン(FALCON(R)),米国)にシーディングした。48時で継代培養した後、完全増殖培地を除去し、単分子層(約90%の密集
度)をPBS(インビトロジェン−ギブコ(R),英国)で2回洗浄した。この細胞を調整培地で72時間培養した。NGAL定量化のために、培地の上清を2時間、12時間、24時間、48時間および72時間それぞれの時点で回収した。
【0057】
[0083]RT−PCRによるNGALの遺伝子発現の評価
[0084]トータルRNAの単離のために、正常な培養したHK−2細胞、および、1ng/mLのIL−1βで誘導されたHK−2細胞を2時間、4時間、6時間、8時間、12時間および24時間で回収した。RNイージー(RNeasy(R))ミニキット(Mini Kit)(キアゲン(QIAGEN),英国)を製造元のプロトコールに従って用いて、RNAを抽出した。スーパースクリプトIII(Superscript III)逆転写酵素(インビトロジェン(Invitrogen),英国)を200ngのトータルRNAと共に用いて第一のcDNA鎖を合成した。DNAエンジン(DNA Engine)PCR装置(PTC−200)(バイオ・ラッド(Bio−Rad),米国)でTaqDNAポリメラーゼ(インビトロジェン,英国)を用いることによってポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行った。NGAL(5’−TCACCTCCGTCCTGTTTAGC−3’、および、5’−CGAAGTCAGCTCCTTGGTTC−3’)、および、β−アクチン(5’−TTCTACAATGAGCTGCGTGTGG−3’、および、5’−GTGTTGAAGGTCTCAAACATGAT−3’)に関する特異的なオリゴヌクレオチドプライマーの配列を文献に従って選択し、サーモ・サイエンティフィック(Thermo SCIENTIFIC)(ドイツ)が合成した。最初の変性条件は、94℃で2分間である。PCR増幅は、94℃で30秒の変性工程、続いて60℃(NGALの場合)または59℃(β−アクチンの場合)で30秒のアニーリング工程、および、72℃で30秒の伸長を用いて行われた。両方の遺伝子で合計30サイクルを行い、続いて最終的な伸長を72℃で10分間行った。2%アガロースゲル電気泳動でPCR産物を分離し、エチジウムブロマイド染色で検出した。50bpのDNAラダー(ダイレクトロード(DirectLoadTM)DNAマーカー)(シグマ−アルドリッチ,シュタインハイム,ドイツ)を参照することによって、PCR産物の期待されるサイズ(NGALおよびβ−アクチンそれぞれについて、242bpおよび119bp)を検証した。
【0058】
[0085]ウェスタンブロッティング
[0086]好中球顆粒放出産物を、説明されているようにして得た。72時間の時点でのHK−2調整培地上清を回収し、0.1mMのPMSF(シグマ−アルドリッチ,シュタインハイム,ドイツ)、および、コンプリート(CompleteTM)プロテアーゼ阻害剤カクテル錠剤(ロシュ(Roche),マンハイム,ドイツ)を添加した。アミコン(Amicon(R))・ウルトラ−4(Ultra−4)遠心ろ過装置(10,000MW)(ミリポア(Millipore),米国)を用いて上清を濃縮した。SDS−PAGEおよびウェスタンブロッティングを製造元の説明書に従って行った。簡単に言えば、25μLの尿または濃縮した上清のいずれか、または、好中球放出産物を、非還元条件下でNu−PAGE(R)4〜12%ビストリスゲル(インビトロジェン,米国)に適用した。Nu−PAGE(R)トランスファーバッファー(インビトロジェン,米国)を25Vで1時間用いることによってタンパク質をハイボーン−P(Hybone−P)PVDFメンブレン(GEヘルスケア,英国)上に移した。PVDFメンブレンの追加の結合部位を、ブロッキング溶液(GEヘルスケア,英国)で1時間ブロックした。このブロットを、ヒトNGALに対するウサギポリクローナル抗体もしくはマウスモノクローナル抗体(Mab697、Mab699、Mab763、Mab764またはMab765)、または、モノクローナル抗体の混合物のいずれかと共に室温で一晩インキュベートし、続いてペルオキシダーゼ標識二次抗体(GEヘルスケア,英国)と共に1時間インキュベートした。免疫ブロットを、製造元の説明書(アマシャム(Amersham)ECLTMウェスタンブロッティングシステム,GEヘルスケア,英国)に従って強化された化学発光を用いて検出した。
【0059】
[0087]統計的分析
[0088]スチューデントのt検定および一元配置の分散分析(ANOVA)を、スタティスティカ8.0(スタットソフト社,タルサ,米国)、および、メディカルク(Medcalc)9.5(メディカルク(Medcalc)ソフトウェア,マリアケルク(Mariakerke),ベルギー)によって行った。値は、平均±標準偏差、および、四分位数間範囲と共に中央値として示した。p<0.05を有意とみなした。
【0060】
[0089]結果
[0090]ウェスタンブロッティングによる尿中のNGAL分子の形態の検出
[0091]NGALに対する1種のウサギポリクローナル、および、5種のマウスモノクローナル抗体を用いて、心臓外科手術を受けた患者から得られた尿中に存在するNGAL分子の形態を同定した。ビアコア(BIAcore)の実験により、5種のモノクローナル抗体は、異なるエピトープと反応することが示された。2つの代表的な尿サンプル(U1およびU2)を示した図6からわかるように、抗体間の性能に顕著な差があることが見出された。ポリクローナル抗体によって3つの主要なバンドが定期的に同定され、NGALの単量体および二量体の形態、ならびにNGALの複合体化したヘテロ二量体の形態として同定された。またこれらの3つの形態は、Mabs764および765によっても検出された。しかしながら、追加のバンドもいずれかの抗体で観察された。しかしながら、ポリクローナル抗体は、二量体に対して、2種のモノクローナル抗体よりも強い親和性を有し、ヘテロ二量体に対して、それよりも弱い親和性を有するようである。Mabs764および765は、3種全ての分子形態の検出において極めて類似した性能を有していた。Mab764およびMab765のNGALに対する親和性は、高いほうから低いほうに言えば、それぞれ単量体、ヘテロ二量体および二量体の形態であった。また、Mab763、699および697は、ヘテロ二量体の形態に強い親和性を有するが、それに対して二量体および単量体の形態への親和性は弱いことも示された。しかしながら、刺激された好中球顆粒球の上清中の単量体および二量体の形態を検出することにおけるポリクローナル抗体、ならびにMabs765および697の能力は、極めて類似しているようである。
【0061】
[0092]尿中のNGALを測定するためのRIAおよび5種のELISAの性能
[0093]表1に、RIAおよび5種のELISAの性能特性を示す:
【0062】
【表1】

【0063】
[0094]手術前、ならびに手術後2時間および24時間で得られた尿中NGAL濃度を測定し、表1に、上記分析により得られたNGALの中央値レベルを示した。RIAによって測定された手術前および手術後2時間のNGALの中央値レベルは、7種の分析のなかでも最高であった。一方で、Mab697ベースのELISA(ELISA1およびELISA6)により得られたレベルは、その他の分析よりも有意に低かった。表1は、手術前および手術後2時間のレベルにおける差、加えて24時間にわたる全体的な差を示す。全ての分析で、手術前および手術後における高度な有意差が観察された。手術前と手術後2時間とを比較した中央値レベルの増加倍率は最高であり、ELISA3(Mab764−ポリクローナル)、ELISA5(ポリクローナル−ポリクローナル)、または、ELISA4(ポリクローナル−Mab765)によって測定した場合は70を超え、RIA、ELISA2(Mab764−Mab765)、ELISA1(Mab697−ポリクローナル)、または、ELISA6(Mab697−Mab765)によって測定した場合、23〜34倍であった。
【0064】
[0095]尿のゲルろ過後の様々な分析によるNGALの測定
[0096]ウェスタンブロッティングの結果に基づいて、以下の2セットの実験を行い、NGALの異なる形態の検出における分析の性能を調査した。手術後2時間における1つの尿サンプルのゲルろ過を、スーパーデックスTM75HRカラムで行った。分画中のNGALレベルをRIAおよび5種のELISAで測定し、図7に示した。5種のELISAでは、それぞれ単量体および二量体の形態の溶出量に相当する2つのピークが得られたが、RIAでは1つのピークしか得られなかった。後者は恐らく、RIAの感度が不十分であることによるものである。RIAでは、ピーク2においてNGALの最高レベルが得られ、ELISA1(Mab697−ポリクローナルベースのELISA)では最も低いレベルが得られた。ELISA1以外の全てのELISA分析では、ピーク1で、すなわち二量体のNGALの同様のレベルが測定された(図2の挿入図)。ELISA1では、二量体のNGALのより高レベルが測定された。
【0065】
[0097]ストレスの多い条件下で増殖させた場合、HK−2細胞においてNGALはアップレギュレートされる
[0098]HK−2細胞を、異なる時間の長さで、ケラチノサイト無血清培地(K−SFM)、0.05mg/mLのウシ脳下垂体抽出物(BPE)、もしくは、5ng/mLのヒト組換え上皮増殖因子(EGF)のいずれかが添加されたK−SFM、または、ATCC推奨の完全増殖培地(0.05mg/mLのBPEおよび5ng/mLのEGFが添加されたK−SFM)で培養し、続いて標準条件下で48時間培養した。培養上清中のNGALレベルを、ELISA4によって、72時間にわたり、異なるタイムポイント(2時間、12時間、24時間、48時間および72時間)で決定した。培養の12時間〜72時間後に、K−SFM培養上清中のNGALレベルは、その他の3つの培養培地よりも高かった(図8)。完全増殖培地で増殖させた細胞に、最も低いレベルが見出された。また結果から、BPEが添加されたK−SFM中で増殖させた細胞の上清中のNGALレベルは、rEGFが添加されたK−SFM中で増殖させた細胞と比較してより高かったこともわかる。総合的に言えば、これらの結果から、細胞を必須の増殖因子を欠乏させた状態にしたストレスの多い条件下では、NGAL生産がアップレギュレーションされることが示された。
【0066】
[0099]HK−2細胞中で、IL−β、LPSおよびTNF−αによってNGALはアップレギュレートされる
[0100]HK−2細胞を完全増殖培地で48時間増殖させ、その後にこの細胞を、IL−β(1ng/mL,ヒト)、LPS(125ng/mL,クレブシェラ肺炎杆菌(Klebsiella pneumonia))、または、TNF−α(20ng/mL,ヒト)のいずれかが添加された完全増殖培地の存在下で、様々なの長さの時間さらに増殖させた。図9Aに示したように、IL−βは、上清中でNGALレベルの非常に有意な上昇を誘導した(8.9〜41.9倍の増加)。またTNF−αおよびLPSとインキュベートすることによっても、上清中である程度のNGAL上昇(それぞれ2.2および1.6倍)を誘導したが、IL−βよりも有意に低かった(p<0.001)。またHK−2細胞を、IL−β、TNF−αまたはLPSが添加されたK−SFMでも培養した。IL−βではNGALの有意な上昇(1.3〜12.8倍の増加)が観察されたが、TNF−αまたはLPSでは観察されなかった(図9B)。しかしながら、完全増殖培地中で増殖させた細胞と比較すると、これらの上昇は、有意に低かった(p<0.001)。
【0067】
[0101]HK−2細胞によって生産されたNGALの分子の形態
[0102]HK−2細胞によって分泌されたNGALの分子の形態を、抗体を検出する際に、混合型のモノクローナル抗体(Mab697、Mab764およびMab765)を用いたウェスタンブロッティングによって決定した。図10(下のパネル)に示した結果によれば、完全培養培地、または、ストレスの多い条件下では、K−SFM、もしくは、サイトカイン(IL−β、または、TNF−α)またはLPSが添加された培地のいずれかで増殖させたHK−2細胞によって分泌されたNGALの主要な形態は、単量体の形態であることが示される。またIL−βで刺激した後はNGALのヘテロ二量体の形態も観察されたが、一方で、ヒト好中球の上清中に見出されたのとは対照的に、二量体の形態は見出されなかった(図6)。図10で、IL−βとインキュベートした後の、HK−2細胞中のNGALのmRNAレベルを示す。結果から発現が増加したことがわかり、これは、HK−2細胞によるNGALの活性な合成を示す。
【0068】
[0103]考察
[0104]元々NGALはヒト好中球から単離されたが、これまでに、血液中のNGALの測定は、細菌またはウイルスによって引き起こされる急性感染を区別する優れた手段であることが示されてきた。それに続く研究では、NGALはまた、所定の条件下で、腎臓、肝臓および上皮組織のようなその他の細胞でも発現される可能性があること、および、尿および血漿中のNGALの測定は、急性腎臓損傷のバイオマーカーとして役立つ可能性があることが見出された。実施例1によれば、NGAL分析の抗体の立体配置は、分析の臨床能力に強い影響を与えることが示される。AKIを有する患者の尿中で、数種のNGALの形態が同定された。さらにこの実施例によれば、尿細管上皮細胞によって生産された優勢な形態は、単量体の形態およびある程度のヘテロ二量体の形態であることが示さ
れる、それに対して、二量体の形態は、好中球に特有であると考えられる(図6を参照)。また単量体の形態も好中球によって生産される。本発明の研究における一つの興味深い発見は、好中球に由来する単量体および二量体の形態は、全てのモノクローナル抗体、加えてポリクローナル抗体によって同定されたことから、これらの異なる形態の用いられる抗体による認識に差があることである。これは、Mab697は、これらの尿中の形態をほぼ完全に認識することができないこととは対照的である。またMab765は好中球の上清中のこれらの形態に対しても強い反応を示したが、尿中の二量体の形態はわずかな認識しか示さなかった。理論に制限されることは望まないが、異なるNGAL形態のエピトープへの曝露における差、従って分子構造における差が原因であると考えられる。
【0069】
[0105]また尿中の異なるNGALの分子の形態の存在、および、抗体のエピトープ認識における差は、用いられる分析によって、尿中のNGALの定量化に大きい差が生じることによっても反映される。分析で用いられる較正物質が同じなのに、手術前のレベルが極めて異なっており、加えて手術後の相対的な変化も異なっていた。ポリクローナル抗体を単独で用いるか、または、ポリクローナル抗体をMab764またはMab765のいずれかと組み合わせて用いるかのいずれかのELISAで、増加倍率が最高であったことは明白である。これらの2種のMabはまた、ウェスタンブロッティングで尿中のほとんどの形態を認識した。しかしながらこれら2種のMabの組み合わせが認識したものはより少なく、これは、ポリクローナル抗体によって追加の分子の形態がピックアップされたことを示す。ゲルろ過実験において、たった1つの分析でも二量体の形態が異なって認識されていることから、これらの様々な形態の認識における差は主として単量体のNGALの認識における差に関連しているようである。このような差は、全てが似たような感度、不正確、回収率等を示したため、分析の全体的な分析性能で説明することができなかった。
【0070】
[0106]以前の報告では、ヒトにおけるNGAL(CNGAL/CCr)の分画排出率、マウスにおけるインサイチュハイブリダイゼーション、および、NGALは急性期のタンパク質であるということに基づいて、尿中のNGAL蓄積は、腎臓での局所的な合成(これが尿中NGALの大部分を構成する)、ならびに遠隔臓器および免疫細胞に起因する可能性があると主張していた。しかしながら、腎臓において、糸球体ろ過率、尿細管での再吸収および尿での希釈という観点でのNGAL処理に関していくつか疑念があることにより、加えてマウスでインサイチュハイブリダイゼーションが行われたこと、および、このような技術では、細胞がタンパク質を生産する能力を十分に反映していないことからも、このような結論は弱くなる。しかしながら、我々の発見は、例えば体外循環を行っている間に観察されるようなストレスの多い条件または炎症を起こした条件下で生きている腎臓に関連するいくつかの条件によってmRNA発現およびタンパク質生産が誘導されることから、ヒト尿細管上皮細胞は、NGALを生産する能力を有するという観念を実際に裏付けるものである。我々は、サイトカインIL−1Rが最も有力な刺激因子であることを見出し、これは、肺上皮細胞系を用いた他者の研究とも一致する。多くの以前の研究でも、高レベルの好中球分泌タンパク質、および、IL−βやTNF−αのようなサイトカインは、心臓外科手術中と心臓外科手術後に観察されている。それゆえに本発明の結果は、NGALは、尿中に多くの様々な形態で存在すること、および、この多様性の原因となる尿中のNGALを定量化するための分析が有利であること実証する。従って、一実施態様において、本発明は、NGALの分子構造が、好中球由来のNGALの構造とわずかに異なっているようであることから、尿細管上皮に由来するNGALを選択的に同定する分析を対象とする。従ってこのような分析は、より高度に特異的であり、AKI検出における感度が高く、腎臓機能障害を発症させる危険性がある患者にとって特に有用である。
【0071】
[0107]本発明の方法、装置およびキットを具体的な実施態様を参照しながら説明し、さらに実施例で本発明の具体的な形態を示した。しかし当然のことながら、本発明の追加の実施態様、形態、バリエーションおよび改変は、当業界における通常の技術を有するものによって、本発明の範囲から逸脱することなく、特許請求されたように実行することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体における急性腎臓損傷を検出する方法であって、該方法は、
(a)個体由来の体液サンプルと、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)抗体および検出可能な標識を含む分析装置とを接触させて、サンプル中のNGALタンパク質をNGAL抗体と複合体化すること、および、
(b)サンプル由来のNGALタンパク質と分析装置中のNGAL抗体とで形成された複合体の量を、検出可能な標識を用いて決定すること、
を含み、ここで装置中のNGAL抗体は、2種より多くのNGALタンパク質エピトープとの結合能力を有しており、形成された複合体の量は、急性腎臓損傷のレベルを示す、上記方法。
【請求項2】
前記サンプルが、尿、血液、血清もしくは血漿、または、それらの精製された成分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記サンプルが、尿である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記個体が、心臓外科手術を受けた患者、または、敗血症患者である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記個体が、心臓外科手術を受けた患者であり、前記サンプルが、心臓外科手術を受けた患者から心臓外科手術の3時間以内に得られたものである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
工程(a)および(b)が、心臓外科手術後の連続した期間に得られたそれぞれのサンプルに対して繰り返される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記分析装置が、ポリクローナルNGAL抗体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記分析装置が、ポリクローナルNGAL抗体、および、モノクローナルNGAL抗体を含み、これらNGAL抗体のうち一方は基板に結合し、これらのNGAL抗体のうち他方は検出可能な標識に結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリクローナルNGAL抗体が基板に結合し、前記モノクローナルNGAL抗体が、検出可能な標識に結合する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記分析装置が、2種の異なるポリクローナルNGAL抗体を含み、これらNGAL抗体のうち一方は基板に結合し、これらのNGAL抗体のうち他方は検出可能な標識に結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記サンプル中のNGALタンパク質とNGAL抗体との間に形成された複合体の量が、ラジオイムノアッセイによって決定され、ここで該NGAL抗体は、ポリクローナル抗体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記サンプル中のNGALタンパク質とNGAL抗体との間に形成された複合体の量が、酵素結合免疫吸着検査法(ELISA)によって決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ELISAが、少なくとも1種のポリクローナルNGAL抗体を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1種のポリクローナルNGAL抗体が、基板に固定されている、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
前記検出可能な標識が、他方のNGAL抗体に結合する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記検出可能な標識が、モノクローナルNGAL抗体に結合する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記検出可能な標識が、第二のポリクローナルNGAL抗体に結合する、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
個体における急性腎臓損傷を検出する方法であって、該方法は、
(a)個体由来の体液サンプルを、ポリクローナル好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)抗体と接触させること、および、
(b)サンプル由来のNGALとポリクローナルNGAL抗体の間で形成された複合体の量を、検出可能な標識を用いて決定すること、
を含み、ここで該複合体の量は、急性腎臓損傷のレベルを示す、上記方法。
【請求項19】
前記サンプルが、尿を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ポリクローナルNGAL抗体が基板に固定され、前記検出可能な標識が、第二のNGAL抗体に結合する、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
急性腎臓損傷治療の有効性をモニターする方法であって、該方法は、以下の工程:
(a)個体由来の第一の体液サンプルを、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)抗体および検出可能な標識を含む第一の分析装置と接触させ、第一のサンプル中のNGALタンパク質をNGAL抗体と複合体化すること、
(b)第一のサンプル由来のNGALタンパク質と第一の分析装置中のNGAL抗体とで形成された複合体の量を、検出可能な標識を用いて決定すること(ここで装置中のNGAL抗体は、2種より多くのNGALタンパク質エピトープとの結合能力を有する)、
(c)治療を行った後に得られた個体由来の第二の体液サンプルを、NGAL抗体および検出可能な標識を含む第二の分析装置と接触させ、第二のサンプル中のNGALタンパク質をNGAL抗体と複合体化すること、
(d)第二のサンプル由来のNGALと第二の分析装置中のNGAL抗体との間に形成された第二の複合体の量を、検出可能な標識を用いて決定すること(ここで装置中のNGAL抗体は、2種より多くのNGALタンパク質エピトープとの結合能力を有する)、および、
(e)第一の複合体の量と第二の複合体の量とを比較すること、
を含み、ここで第二の複合体の量が第一の複合体の量と比較して減少していることは、治療が有効であることを示す、上記方法。
【請求項22】
第一の装置中のNGAL抗体はポリクローナルNGAL抗体、そして、第二の装置中のNGAL抗体はポリクローナルNGAL抗体を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
急性腎臓損傷治療の有効性をモニターする方法であって、該方法は、以下の工程:
(a)治療前に得られた個体由来の第一の体液サンプルを、ポリクローナル好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)抗体と接触させること、
(b)第一のサンプル由来のNGALタンパク質とポリクローナルNGAL抗体との間に形成された第一の複合体の量を、検出可能な標識を用いて決定すること、
(c)治療を行った後に得られた個体由来の第二の体液サンプルを、ポリクローナルNGAL抗体と接触させること、
(d)第二のサンプル由来のNGALとポリクローナルNGAL抗体との間に形成された第二の複合体の量を、検出可能な標識を用いて決定すること、および、
(e)第一のサンプル由来のNGALとポリクローナルNGAL抗体との間に形成された第一の複合体の量を、第二のサンプル由来のNGALとポリクローナルNGAL抗体との間に形成された第二の複合体の量と比較すること、
を含み、ここで第二の複合体の量が第一の複合体の量と比較して減少していることは、治療が有効であることを示す、上記方法。
【請求項24】
前記サンプルが、尿を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
個体における急性腎臓損傷を検出するためのキットであって、該キットは、体液サンプルとの接触に適した第一のポリクローナル好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)抗体、体液サンプル中のNGALタンパク質と第一のポリクローナルNGAL抗体の間で形成された複合体の量の決定に使用するのに適した第二のNGAL抗体、および、体液サンプル中のNGALと第一のポリクローナルNGAL抗体とで形成された複合体の量の決定に使用するのに適した検出可能な標識を含む、上記キット。
【請求項26】
前記検出可能な標識が、放射性標識、または、蛍光標識である、請求項25に記載のキット。
【請求項27】
前記検出可能な標識が、第一のポリクローナルNGAL抗体、および、第二のNGAL抗体のうち一方と結合する、請求項25に記載のキット。
【請求項28】
前記検出可能な標識が、酵素が結合した標識である、請求項25に記載のキット。
【請求項29】
前記第一のポリクローナルNGAL抗体が、基板に固定されている、請求項25に記載のキット。
【請求項30】
個体における急性腎臓損傷を検出するためのキットであって、該キットは、体液サンプル中のNGALとNGAL抗体とで形成された複合体の量の決定に使用するのに適した、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)抗体および検出可能な標識を含む分析装置を含み、ここで装置中のNGAL抗体は、2種より多くのNGALタンパク質エピトープとの結合能力を有する、上記キット。
【請求項31】
前記NGAL抗体が、少なくとも1種のポリクローナルNGAL抗体を含む、請求項30に記載のキット。
【請求項32】
前記ポリクローナルNGAL抗体が、基板に固定されている、請求項31に記載のキット。
【請求項33】
前記検出可能な標識が、モノクローナルNGAL抗体と結合する、請求項32に記載のキット。
【請求項34】
個体における急性腎臓損傷を検出するための分析装置であって、該装置は、基板に固定された、体液サンプルとの接触に適したポリクローナルNGAL抗体、および、NGALタンパク質と固定されたポリクローナルNGAL抗体との複合体に結合するように適応させた検出可能な標識を含む、上記装置。
【請求項35】
個体由来のサンプル中の好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)タンパク質の由来を決定する方法であって、該方法は、
(a)サンプル中におけるNGALタンパク質の単量体、二量体およびヘテロ二量体の形態の相対量を決定すること、および、
(b)決定された量を比較すること、
を含み、ここで、単量体および/またはヘテロ二量体のNGALタンパク質の量が、二量体のNGALタンパク質と比較して優勢であるならば、個体の腎臓に由来するNGALタンパク質であることを示し、一方で、二量体のNGALタンパク質の量が、単量体またはヘテロ二量体のNGALタンパク質と比較して等しいかまたは優勢であるならば、個体の好中球に由来するNGALタンパク質であることを示す、上記方法。
【請求項36】
前記サンプルが、尿を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記サンプル中のNGALタンパク質のそれぞれの量が、サンプルを、モノクローナルNGAL抗体を含む分析装置と接触させることによって決定される、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記サンプル中のNGALタンパク質のそれぞれの量が、サンプルを、ポリクローナルNGAL抗体を含む分析装置と接触させることによって決定される、請求項35に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【公表番号】特表2012−509477(P2012−509477A)
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−537003(P2011−537003)
【出願日】平成21年11月23日(2009.11.23)
【国際出願番号】PCT/IB2009/055299
【国際公開番号】WO2010/058378
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(506329801)ファディア・アクチボラグ (7)