説明

急須

【課題】 お湯と茶葉等を急須内で攪拌させ、効率的な抽出と注ぎ出しを実現できるようにする。
【解決手段】 上部に開口部21と側面に注ぎ口22とを設けた急須本体2と、開口部21に嵌合する蓋体3とからなる急須10において、蓋体3の上面中心につまみ32を形成し、外周とつまみ32との略中間位置に吸気口31を穿設する。吸気口31に通気管1の上端を連通させ、下端部を濾し穴面24の高さに位置するように延出させる。下端部の噴出し口11を、濾し穴面24に面するように傾斜して開口する。急須10を傾けてお茶51を注ぐと、急須10内部は負圧状態となる。これによって外気が吸気口31から吸い込まれ、噴出し口11から気泡6となって噴出す。お湯5には急須本体2の底方向への水流が誘導される。この誘導された水流によって茶葉4とお湯5とが攪拌される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑茶や紅茶などのお茶類、またはハーブティなどを煎じてカップなどに注ぎいれる急須またはティーポットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、緑茶や紅茶などお茶類など(以下、お茶)を煎じるために急須やティーポットに茶葉等とお湯とを入れてなされている。お茶が適切に抽出されるためには、水温や抽出時間などといった人為的な条件を適切にする必要がある。これに加えて、効率的な抽出と注ぎ出しをするためには急須内での適度な攪拌がなされると共に、注ぎ口手前の濾し穴面に茶葉が必要以上に堆積しないようにする必要性がある。
【0003】
このような急須内での攪拌を目的として提案されたものとして、例えば、急須の本体容器の注ぎ口側の上縁縦方向に、通気孔を形成するようにしたものがある。(特許文献1参照。)この提案の原理では、急須を傾けてお茶を注ぐことにより、通気孔から外気が吸気されて泡沫が発生し、それによって内部のお湯に水流が発生し、内部が攪拌されるというものである。
【0004】
【特許文献1】実開昭61−45873号公報
【0005】
しかしながら、この提案に示された内容を、位置関係などを自然法則に則して作用を見てみると、実際には水面は通気孔より高く位置するため、通気孔から外気が吸気されるどころか、重力によって通気孔から外へお茶がこぼれ出る結果となって、この提案に示されているような効果は得られない。
【0006】
本発明者は、独自の発想から効率的な抽出と注ぎ出しを確実に達成できる急須を発明している。これは、上部に開口部を有し、側面に注ぎ口を備えた急須本体と、前記開口部に嵌合する蓋体からなる急須において、前記蓋体の上面の略中心に近接して設けられ、且つ空気を前記急須本体内に吸入する吸気孔と、該吸気孔に連通すると共に、前記蓋体の略中心部から外周方向に向けて設けられた通気孔と、該通気孔に連通され前記吸気孔から吸入された空気を前記急須本体内に吹き出す吹き出し口とを設け、前記通気孔を介した前記吸気孔から前記吹き出し口までの連通が機密性を有し、前記蓋体を前記開口部に嵌合させた際に、その嵌合部分に機密性を有すると共に、前記吹き出し口が前記注ぎ口の方向に位置できるようにしたものである。(特許文献2参照。)
【0007】
【特許文献2】特許第2676133号公報
【0008】
この特許文献2の構造によると、特許文献1で提案されているものとは異なり、実際に外気が吸気されて、内部のお湯に水泡が発生して、その結果、内部は攪拌されるという優れたものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、発明者自らが特許文献2で提案している技術より、さらに確実に急須内で攪拌を発生させて、より効率的な抽出と注ぎ出しを実現できる急須を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため本発明は、上部に開口部を有し、側面に注ぎ口を備えた急須本体と、前記開口部に嵌合する蓋体とからなる急須において、蓋体に吸気口を穿設し、この吸気口に通気管の上端部を連通状態で接続するとともに、この通気管の開口している下端部を、急須本体の濾し穴面に近傍する位置に臨ませることができるようにした。
そして、例えば急須本体と蓋体自体は一般的な陶器で製造して、蓋体に吸気口を穿設し、通気管そのものは樹脂製で別途製造し、それに連通するように通気管を取り付けるとともに、通気管の下端部が濾し穴面近傍に位置するよう蓋体を被せることによって、本発明の構成を得ることが出来る。
【0011】
これによって、茶葉とお湯を急須内に入れて煎じる際、急須を傾けて注ぎ口からお茶を注ぐと、急須内は負圧となり、吸気口から外気が吸入され、通気管を通って急須内に噴き出す。これによってお湯に水流が発生して、濾し穴面付近に堆積しようとする茶葉と共に急須内のお湯が攪拌される。これによって、より効率的な抽出と注ぎ出しがなされる。
【0012】
また、本発明では、前記吸気口の位置が蓋体の外周と中心との略中間に位置するようにした。
これによって、急須を傾斜した際に、吸気口の位置が保持されると共に、通気管の下端部はお湯の中に保たれるようになり、お湯が吸気口から逆流出するような不具合を抑制できる。
【0013】
また本発明では、前記蓋体の中心と急須本体の濾し穴面とを結ぶ線上に吸気口を位置させた場合に、通気管の下端部の開口面が、濾し穴面に面するよう傾斜するようにした。
このように傾斜させることによって、通気管から噴出される空気が、濾し穴面近くの茶葉へより効率的に作用し、茶葉の攪拌への効果が向上する。
【0014】
また本発明では、前記蓋体の中心と急須本体の濾し穴面とを結ぶ線上に吸気口を位置させた場合に、通気管の下端部が、濾し穴面側から急須内部方向に湾曲するようにした。
これによって、空気の噴き出しにより発生する水流は、急須内の底面に向いて湾曲した方向で発生するようになり、お湯の効率的攪拌がなされる。
【0015】
また本発明では、前記通気管下端部の開口部に逆止弁を設けるようにした。
これによって、吸気口の位置の制約等により、その位置が水面より低かったり、不適切な操作などで、通気管内を逆流しようとした場合は、それを防止できる。尚、逆止弁の形状は特に限定されるものではなく、実質的に逆止機能を有しておればよい。
【発明の効果】
【0016】
上部に開口部を有し、側面に注ぎ口を備えた急須本体と、前記開口部に嵌合する蓋体とからなる急須において、蓋体に吸気口を穿設し、この吸気口に通気管の上端部を連通状態で接続するとともに、この通気管の開口している下端部を、急須本体の濾し穴面に近傍する位置に臨ませることにより、茶葉とお湯を急須内に入れて煎じる際、急須を傾けて注ぎ口からお茶を注ぐと、急須内は負圧となり、吸気口から外気が吸入され、通気管を通って急須内に噴き出す。これによってお湯に水流が発生して、濾し穴面付近に堆積しようとする茶葉と共に急須内のお湯が攪拌される。
【0017】
この際、吸気口の位置が蓋体の外周と中心との略中間に位置するようにすれば、急須を傾けた際において、吸気口の位置が水面より高く保持されると共に、通気管の下端部はお湯の中に保たれるようになり、吸気口からお湯が逆流出することが無く、通気管の下端部から継続的に空気が噴出される。
また、通気管の下端部の開口面を、濾し穴面に面するように傾斜させれば、通気管から噴出される空気が、濾し穴面近くの茶葉へより効率的に作用し、茶葉の攪拌への効果が向上する。
【0018】
また、通気管の下端部を、濾し穴面側から急須内部方向に湾曲させることにより、空気の噴き出しにより発生する水流は、急須内の底面に向いて湾曲した方向で発生し、お湯の効率的攪拌がなされる。
そして、通気管下端部の開口部に逆止弁を設ければ、吸気口の位置が水面より低かったり、不適切な操作などで、お湯が通気管内を逆流しようとした場合に、それを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施の形態について添付した図面に基づき説明する。ここで図1は本発明に係る急須の一実施形態を示す斜視図、図2は図1の急須の作用を示す側断面図、図3は急須の他の実施形態を示す側断面図、図4は通気管の逆止弁の一形態を示す斜視図、図5は通気管の逆止弁の他の実施形態を示す側面図である。
【0020】
本発明に係る急須は、たとえば緑茶を煎じるためのものである。したがって、図1、2に示した急須10は陶器製であって、上部に開口部21と側面に注ぎ口22が設けられた急須本体2と、開口部21に嵌合する蓋体3とからなる。急須本体2の注ぎ口22取り付け部分には濾し穴23が複数穿設された濾し穴面24がある。
【0021】
蓋体3の上面中心には、つまみ32が形成され、外周とつまみ32との略中間位置に吸気口31が穿設され、上端がこの吸気口31に連通した通気管1が設けられている。この通気管1は蓋体3の底面方向に延出し、下端部は濾し穴面24の高さに位置するように設けられている。また、通気管1の下端部には噴出し口11が傾斜して開口されるように形成され、この傾斜方向は、蓋体3のつまみ32と、急須本体2の注ぎ口22を結ぶ線上に吸気口31が位置するよう蓋体3をセットした場合、濾し穴面24に面するように設けられている。
【0022】
この急須10の作用を説明する。
急須本体2内に茶葉4とお湯5を入れ、蓋体3のつまみ32と、急須本体2の注ぎ口22を結ぶ線上に吸気口31が位置するよう蓋体を被せる。すると、お湯5の量にもよるが、通気管1の噴出し口11はお湯の中に浸った状態、またはその水面近傍に位置することとなり、また、傾斜した噴出し口11が濾し穴面24の近傍に臨むようになる。所要の抽出時間を置いたのちに、急須10を傾けて、注ぎ口22から湯呑にお茶51を注ぎいれる。これによって、お湯5の水面の位置が移動し、注ぎ口22は水没するが、吸気口31はその形成位置のため、水面より高い位置を維持する。特に、上記した特許文献1における提案では、自然法則を無視した提案であるのに対して、この先行技術では実際に無し得なかった作用を、本発明の構造によって達成されることが次のように明確にわかる。
【0023】
お茶51が急須10の外に出ることによって、急須10内部は負圧状態となる。これによって外気が吸気口31から吸い込まれ、噴出し口11から気泡6となって噴き出す。噴出し口11は濾し穴面24に面するように形成されているため、気泡6は当初下方向に噴出してから水面方向へ上昇する。これによって、お湯5には急須本体2の底方向への水流が誘導される。この誘導された水流によってお湯5全体に対流が発生して攪拌される。
【0024】
特に、お茶51を注ぎ出すに伴って、茶葉4は濾し穴面24へ堆積しようとするが、気泡6の噴き出しの勢いで吹き飛ばされてお湯5に拡散され、濾し穴23が目詰まりするのも防止される。そのため、お茶51の注ぎ出る勢いも減少することも無く、負圧も維持されるため、吸気口31からの吸い込みの力も衰えることが無く、気泡6の噴き出しも減少することがないという好循環が維持される。したがって、お茶51を完全に注ぎ出すまで、本発明の目的であるところの、効率的な抽出と注ぎ出しが維持されることになる。特に、上記特許文献2に示した本発明者自らの先の提案では、水面が下がることによって、お茶を完全に注ぎだす前に吹き出し口からの気泡の吹き出しが終わる可能性が有ったのに対し、本発明では、噴出し口11の位置が低いため、その点が改善されている。
【0025】
上記の実施形態においては、本発明の基本的構成を説明したが、さらに攪拌効果等を向上させるために、次に示すような形態も加えることが出来る。
たとえば、図3に示したように、所定の方向に蓋体3をセットした際、通気管1の先端部分を、濾し穴面24側から急須本体2内側方向へと湾曲して形成することができる。これによって、噴出す気泡6の方向が制御され、より対流が起きやすくなる。
【0026】
また、図4に示すように、通気管1の下端部に逆止弁12を取り付けることができる。この逆止弁12は常開タイプのもので、図4(a)にあるように通常は開放した状態であり、一旦、逆流方向の流れが発生すると、その力によって図4(b)にあるように閉鎖される。水面と吸気口31との位置関係が適切でなかったり、注ぎ出しの動作で不可抗力が発生して、通気管1内を逆流する恐れがある場合にはこの方法は有効である。
【0027】
逆止弁の形態としては、常閉タイプのものでも良い。たとえば、図5(a)に示したように、急須内に負圧がかからない状態では弁が閉まった状態で、急須内が負圧となった場合は、図5(b)に示したように負圧によって開放して気泡6を噴き出すように構成することも出来る。
【0028】
尚、本発明は以上のような実施形態に限定されるものではない。本発明の特許請求の範囲に記載した事項と実質的に同一の構成を有し、同一の作用効果を奏するものは本発明の技術的範囲に属する。本発明においては、急須として説明されているが、お茶に限らず煎じる形で抽出するものであれば、同様であって紅茶やハーブティ用のポット類も同様の構成により、同じ効果を得られる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
お茶類を煎じる際に、お湯や茶葉等の攪拌効果が高まって効率的な抽出と注ぎ出しが図られるとともに、注ぎ口手前の濾し面部に茶葉等が必要以上に堆積したり、目が詰まったりするような不具合が防止出来る。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る急須の一実施形態を示す斜視図
【図2】図1の急須の作用を示す側断面図
【図3】急須の他の実施形態を示す側断面図
【図4】通気管の逆止弁の一形態を示す斜視図
【図5】通気管の逆止弁の他の実施形態を示す側面図
【符号の説明】
【0031】
1…通気管、2…急須本体、3…蓋体、4・・・茶葉、5・・・お湯、6・・・気泡、10…急須、11…噴出し口、12・・・逆止弁、21…開口部、22…注ぎ口、23・・・濾し穴、24・・・濾し穴面。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に開口部を有し、側面に注ぎ口を備えた急須本体と、前記開口部に嵌合する蓋体とからなる急須であって、前記蓋体に吸気口を穿設し、この吸気口に通気管の上端部を連通状態で接続するとともに、この連通管の開口している下端部を、前記急須本体の濾し穴面に近傍する位置に臨ませることができるようにしたことを特徴とする急須。
【請求項2】
前記吸気口の位置が蓋体の外周と中心との略中間に位置することを特徴とする請求項1記載の急須。
【請求項3】
前記蓋体の中心と急須本体の濾し穴面とを結ぶ線上に前記吸気口を位置させた場合、前記通気管の下端部の開口面が、濾し穴面に面するように傾斜して形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の急須。
【請求項4】
前記蓋体の中心と急須本体の濾し穴面とを結ぶ線上に前記吸気口を位置させた場合、前記通気管の下端部が、濾し穴面側から急須内部方向へ湾曲して形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の急須。
【請求項5】
前記通気管下端部の開口部に逆止弁が設けられたことを特徴とする請求項1乃至請求項4に記載の急須。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−296773(P2006−296773A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−123284(P2005−123284)
【出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(594078870)
【Fターム(参考)】