説明

恒温試験方法およびそれに用いる恒温室用温度保護容器

【課題】恒温室内に収納される被検査品に電気信号を与える電子装置を、恒温室内の環境温度に影響されることなく一定温度を確保でき、かつ安価に実現できる恒温試験方法およびそれに用いる恒温室用温度保護容器を提供する。
【解決手段】恒温槽1内に収容される被検査品2の特性等を測定する電子装置3を、恒温槽1内に設置された断熱容器内4に収納し、恒温槽1の外部の空気を断熱容器4内部に供給する空気供給パイプ5と、断熱容器4内部から恒温槽1の外部に空気を排出する空気排出パイプ6とを設け、空気供給パイプ5から、外部の空気を断熱容器4内部に圧送すると共に、空気排出パイプ6から、断熱容器4内部の空気を恒温槽1外部に排出することにより、断熱容器4内部の電子機器3を常温に保ちながら、被検査品2の所定温度における検査を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査品の温度特性測定や動作試験、耐熱、耐寒試験等に用いられる恒温室による恒温試験方法およびそれに用いる恒温室用温度保護容器に関する。
【背景技術】
【0002】
電気・電子部品やFPD(Flat Panel Display)等の機器(以下、「被検査品」と称することがある。)の温度特性を測定したり、動作試験、耐熱、耐寒試験等を行ったりするために、環境温度をコントロールできる恒温槽が用いられている。恒温槽は、ヒータと冷却装置を備えており、例えば−40℃〜90℃程度の温度設定が可能である。
【0003】
この恒温槽内に被検査品を収容し、槽内温度を設定し、被検査品に電気信号を与え、その動作、応答を電気的出力信号、あるいは目視にて観測する。その際、被検査品に与える電気信号を生成したり被検査品からの応答信号を測定したりする電子装置も恒温槽内に入れて、被検査品と同様に低温あるいは高温雰囲気に曝すと、電子装置を構成する半導体や素子の動作範囲を超えて規定の電気信号が出力できなくなるか、半導体や素子が破壊して、正常な試験が行えないという問題が生じる。
【0004】
そこで、従来は、電子装置は恒温槽外に設置し、電子装置と恒温槽内の被検査品とを接続する電線やケーブル(以下「電線等」という。)を、恒温槽の壁面に設けられた電線通し穴に通して、恒温槽外の電子装置から信号の授受を行っている。
【0005】
そのためには、恒温槽外の電子装置と恒温槽内の被検査品とを接続する電線等を、恒温槽に入れない場合の電線等の長さに比べて相当長くしなければならない。その場合、電線等の本数が非常に多い場合には、接続が煩雑であるし、電線等を流れる信号のレベルが微小であると、ノイズが増えたりインピーダンスが増加したりして不都合が生じる。
【0006】
また、電線等の本数が多いと、恒温槽に本来設けられている電線通し穴では大きさが小さく、大きめの恒温槽を設置するか、恒温槽を改造する必要があり、スペースやコストの無駄が生じる。
【0007】
このような、電線等の問題を解消するために、特許文献1には、既知の温度で動作する電子部品が収納される室を形成し、かつ断熱材からなる筐体と、前記室あるいは前記筐体の内部に配置され、かつ前記電子部品に接続されると共に、その筐体の外部に配置されたアンテナとの間に無線伝送路を形成する結合手段とを備えた断熱槽が開示されている。
【0008】
【特許文献1】特開2000−114609号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、特許文献1記載の断熱槽(恒温槽)では、電子部品と筐体外部のアンテナとの間を無線伝送路で結合するため、電線等を必要としないが、通常は電線等で結合される電子装置と被検査品を無線結合するための回路を新たに設計、製作する必要があり、煩雑となる上に、被検査品側の回路が恒温槽の温度変化を受けるためにうまく動作しなかったり、破損したりするおそれがある。
【0010】
そこで本発明は、恒温室内に収納される被検査品に電気信号を与える電子装置を、恒温室内の環境温度に影響されることなく使用可能温度範囲に維持でき、かつ安価に実現できる恒温試験方法およびそれに用いる恒温室用温度保護容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明の恒温試験方法は、恒温室内に収容される被検査品を検査ないし駆動するための電子装置を、当該恒温室内に設置された断熱容器内に収納し、前記恒温室の外部の空気または温度調節された空気を前記断熱容器内部に供給する空気供給手段と、前記断熱容器内部から空気を排出する空気排出手段とを設け、前記空気供給手段から、外部の空気または温度調節された空気を前記断熱容器内部に圧送すると共に、前記空気排出手段から、前記断熱容器内部の空気を排出することにより、前記断熱容器内部の電子機器を使用可能温度範囲に保ちながら、前記被検査品の所定温度における検査を行うことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の恒温室用温度保護容器は、恒温室内に設置され、前記恒温室内に収容される被検査品を検査ないし駆動するための電子装置が内部に収納される断熱容器と、前記恒温室の外部の空気または温度調節された空気を前記断熱容器内部に供給する空気供給手段と、前記断熱容器内部から空気を排出する空気排出手段とを備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明においては、電子装置も、断熱容器内に収納して被検査品と共に恒温室内に入れるので、電線を長いものにつなぎ変えたり恒温室の壁部の電線通し穴に通したりする必要が無くなる。断熱容器には、空気供給手段を介して恒温室外の空気または温度調節された空気を導入し、また空気排出手段を介して恒温室外に排出するので、断熱容器内の温度は使用可能温度範囲(電子装置が正常に動作する温度範囲)に保たれ、断熱容器内の電子装置は、恒温室設定温度とは無関係に使用可能温度範囲で動作できるため、電子装置を構成する半導体や素子の動作不良や破損を防止することができる。なお、本発明において、「恒温室」には、部屋自体の温度を所定の温度に調節する室のほか、断熱された筐体内部を所定の温度に調節する恒温槽を含むものとする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、恒温室内に収容される被検査品を検査ないし駆動するための電子装置を、当該恒温室内に設置された断熱容器内に収納し、前記恒温室の外部の空気または温度調節された空気を前記断熱容器内部に供給する空気供給手段と、前記断熱容器内部から空気を排出する空気排出手段とを設け、前記空気供給手段から、外部の空気または温度調節された空気を前記断熱容器内部に圧送すると共に、前記空気排出手段から、前記断熱容器内部の空気を排出することにより、前記断熱容器内部の電子機器を使用可能温度範囲に保ちながら、前記被検査品の所定温度における検査ないし駆動を行うこととしているため、恒温室内に収納される被検査品を検査し、また電気信号を与える電子装置を、恒温室内の環境温度に影響されることなく一定温度を確保でき、かつ安価に実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら具体的に説明する。
図1は、本発明の実施の形態を示す概略図である。本実施の形態においては、恒温槽1の内部に、被検査品2と、この被検査品2に与える電気信号を生成しまた被検査品2からの応答信号を計測する電子装置3とが収納され、電子装置3は、発泡樹脂や木材等の断熱材からなる断熱容器4内に収納されている。断熱容器4には、恒温槽1外部からの空気を導入する空気供給パイプ5と、恒温槽1外部へ空気を排出する空気排出パイプ6が設けられている。断熱容器4内部の電子装置3と恒温槽1内部の被検査品2とは、第1電線7で接続され、また恒温槽1外の電源や通信を行う第2電線8が電子装置3に接続されている。
【0016】
空気供給パイプ5には、工場内等に通常設置されている圧縮空気配管から分岐して圧縮空気を供給することで、断熱容器4内部に常温空気を容易に供給することができる。なお、断熱容器4内部に供給する空気の温度は、電子装置3が動作可能な温度範囲(使用可能温度範囲)であれば、常温に限定されない。空気供給パイプ5と空気排出パイプ6は、断熱構造とすることにより、恒温槽1内部の温度を変動させないようにする。
【0017】
このように、断熱容器4に圧縮された外部の空気を入れて、反対側から出すことにより、断熱容器4の中は、常温に近い温度範囲、あるいは使用可能温度範囲に保たれる。その断熱容器4の中に電子装置3を入れて動作させることで、恒温槽1内部の、低温から高温の環境下でも常温下と同様に電子装置3を使用できる。また、断熱容器4自体は発泡樹脂や木材等で構成できるため、安価に実現することができる。
【0018】
被検査品2と断熱容器4とは、恒温槽1内部に近接して設置できるため、第1電線7は恒温槽1に入れる前に被検査品2の動作試験等で使用していたものをそのまま使用できる。単に、断熱容器4で電子装置3と第1電線7の基部を覆うだけで断熱することができる。
なお、本実施の形態では、恒温槽を例示したが、恒温室でも、同様に適用することができる。また、本実施の形態では、断熱容器4内部の空気を空気排出パイプ6を介して恒温槽1外部に排出するようにしたが、恒温槽1内部との温度差が無い(小さい)場合や、恒温室のように容量の大きな空間では、恒温槽1や恒温室の外部に排出せず、内部に排出しても、影響が少ない。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、恒温室内の環境温度に影響されることなく一定温度を確保でき、かつ安価に実現できる恒温試験方法およびそれに用いる恒温室用温度保護容器として、各種電気・電子部品やFPD等の機器の温度特性の測定、動作試験、耐熱、耐寒試験等の分野において利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態を示す概略図である。
【符号の説明】
【0021】
1 恒温槽
2 被検査品
3 電子装置
4 断熱容器
5 空気供給パイプ
6 空気排出パイプ
7 第1電線
8 第2電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
恒温室内に収容される被検査品を検査ないし駆動するための電子装置を、当該恒温室内に設置された断熱容器内に収納し、前記恒温室の外部の空気または温度調節された空気を前記断熱容器内部に供給する空気供給手段と、前記断熱容器内部から空気を排出する空気排出手段とを設け、
前記空気供給手段から、外部の空気または温度調節された空気を前記断熱容器内部に圧送すると共に、前記空気排出手段から、前記断熱容器内部の空気を排出することにより、前記断熱容器内部の電子機器を使用可能温度範囲に保ちながら、前記被検査品の所定温度における検査を行うことを特徴とする恒温試験方法。
【請求項2】
恒温室内に設置され、前記恒温室内に収容される被検査品を検査ないし駆動するための電子装置が内部に収納される断熱容器と、前記恒温室の外部の空気または温度調節された空気を前記断熱容器内部に供給する空気供給手段と、前記断熱容器内部から空気を排出する空気排出手段とを備えた恒温室用温度保護容器。

【図1】
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【公開番号】特開2009−115510(P2009−115510A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−286600(P2007−286600)
【出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【出願人】(591202122)株式会社メック (14)
【Fターム(参考)】