患者に口腔内陰圧を用いることにより閉塞性睡眠時無呼吸を治療するための方法と装置
【課題】 閉塞性睡眠時無呼吸を治療するための高い有効性、及び、患者の高いコンプライアンス性を有する方法及び装置を提供する。
【解決手段】 本発明は、閉塞性睡眠時無呼吸を、患者に口腔内陰圧を用いることにより治療するための方法及び装置を提供する。本発明の装置は、患者の口腔の陰圧を制御及び維持するための減圧ユニットと、口腔内に陰圧を発生させるために口腔内の空気を吸い出すために減圧ユニットにその一端が連結されたチューブと、チューブの他端に連結されたマウスピースであって、口腔が空気を漏らすことを防止するために、患者の口に嵌り込み、且つ患者の口を封止するマウスピースとを含む。口腔内に陰圧を用いることにより、患者の軟口蓋及び周囲軟組織が口腔に向って引張られ、また、患者の舌が上口蓋に向って引張られ、これにより、患者の鼻腔の気道が開放状態に維持される。
【解決手段】 本発明は、閉塞性睡眠時無呼吸を、患者に口腔内陰圧を用いることにより治療するための方法及び装置を提供する。本発明の装置は、患者の口腔の陰圧を制御及び維持するための減圧ユニットと、口腔内に陰圧を発生させるために口腔内の空気を吸い出すために減圧ユニットにその一端が連結されたチューブと、チューブの他端に連結されたマウスピースであって、口腔が空気を漏らすことを防止するために、患者の口に嵌り込み、且つ患者の口を封止するマウスピースとを含む。口腔内に陰圧を用いることにより、患者の軟口蓋及び周囲軟組織が口腔に向って引張られ、また、患者の舌が上口蓋に向って引張られ、これにより、患者の鼻腔の気道が開放状態に維持される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者に口腔内陰圧を用いことにより閉塞性睡眠時無呼吸を治療するための方法と装置に関する。
【背景技術】
【0002】
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は、人間の喉の筋肉が弛緩するときに生じ、このとき人間は、一晩のうちに数百回、1回につき1分間もの間呼吸を止めることがある。図1Aは、人間の睡眠時の正常な呼吸状態を示し、この状態において、鼻呼吸の気道は開いた状態に維持されている。図1Bは、人間の上気道抵抗症候群を示し、この状態において、喉の後筋(back muscle)の弛緩により、鼻呼吸の気道の寸法が狭くされている。図1Cは、睡眠時に閉塞性睡眠時無呼吸が生じている様子を示し、この状態において、鼻呼吸の気道は、喉の後部の筋肉が潰れていることにより閉塞されている。
【0003】
睡眠時無呼吸の症状を有する人口は10%より多いが、治療を受けているのは患者のごく一部に過ぎない。睡眠時無呼吸を患う人々の生命の危険性はかなり高く、例えば、死亡率が過剰であり、すなわち、無呼吸指数が≧20の未治療の患者の、8年間を超える期間の生存率は、無呼吸指数が<20の未治療の患者と比較して36% 低い。また、高血圧
の危険性が過剰であり、すなわち、呼吸障害指数(Respiration Disorder Index)(RDI)=5の患者は、睡眠時無呼吸を生じない人と比較して、高血圧のオッズ比が2:1であり、また、RDI=25の患者は、睡眠時無呼吸を生じない人と比較して、高血圧のオッズ比が5:1である。また、心筋梗塞(MI)を生じる危険性が過剰であり、睡眠時無呼吸を患う患者は、再発性心筋梗塞の危険度が23倍増大する。また、卒中の危険性が過剰であり、睡眠時無呼吸を患う患者は、睡眠時無呼吸を生じない人と比較して、卒中のオッズ比が3:2にもなる。また、交通事故の危険性があり、睡眠時無呼吸を治療していない患者は、睡眠時無呼吸を生じない人と比較して交通事故が7倍多く、この未治療患者の交通事故は、走行距離に関して補正したならば12倍多い。
【0004】
完全な解決策は存在しない。図2Aに示されているような持続的気道内陽圧(CPAP)法は、最も一般的な方法であり、この方法において、鼻呼吸の気道を開かせておくために、持続陽圧エアがマスク20を通して患者に供給されるが、この方法は、陽圧及び高気流により生じる不快さのために、患者のコンプライアンス(遵守率)が40〜50%と低いという欠点がある。他の治療法は、軟組織除去、骨格の手術、及び、口腔用装置の装着を含む。図2Bを参照すると、軟組織除去は、軟組織、例えば、軟口蓋、口蓋垂及び扁桃など(部分Bに示されている)を、鼻呼吸の気道の寸法を拡大するために除去することである。図2Cは、両顎前出(bimaxillary advancement)と称される種類の骨格手術を示し、この手術により、第1の固定具が下顎部に、下顎部を前方に押すために配置され、また、第2の固定具24が上口蓋に、上口蓋が下顎部と位置合わせされることができるように配置される。下顎部を前方に押すことにより、舌が前方に引かれて鼻呼吸の気道の寸法が拡大される。閉塞性睡眠時無呼吸を治療するための様々な方法の比較を表1に示す。
【0005】
【表1】
【0006】
表1によれば、上記の方法の幾つかは、患者のコンプライアンス性が高いが有効性が低く、且つ価格が高い。また、上記の方法の幾つかは、有効性が高く、低価格であるが、患者のコンプライアンス性が低く、且つ利便性が低い。
【0007】
上記の方法の欠点を解消することができる、OSAを治療するための方法及び装置を提供することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0166928号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の主な目的は、閉塞性睡眠時無呼吸を治療するための高い有効性、及び、高いコンプライアンス性を有する方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は、いびき又は睡眠時無呼吸を治療するための方法を提供する。この方法は、ユーザの口腔内に陰圧を用い、それによりユーザの軟口蓋及び周囲軟組織を口腔に向って引張り、且つ、ユーザの舌を上口蓋に向って引張り、それによりユーザの鼻腔内気道を開放状態に維持する。
【0011】
別の態様において、本発明は、閉塞性睡眠時無呼吸を、患者に口腔内陰圧を用いることにより治療するための装置を提供する。この装置は、患者の口腔の陰圧を制御及び維持するための減圧ユニットと、口腔内に陰圧を発生させるために口腔内の空気を吸い出すために減圧ユニットにその一端が連結されたチューブと、チューブの他端に連結されたマウスピースであって、口腔が空気を漏らすことを防止するために患者の口に嵌り込み、且つ患
者の口を封止するマウスピースとを含む。
【0012】
本発明の装置は、容易に製造される簡単な構造を有し、また、閉塞性睡眠時無呼吸を治療するための高い有効性、及び、患者への高コンプライアンス性をもたらす。本発明の装置の商業的可能性は非常に大きい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1A】人間の睡眠時の正常な鼻呼吸状態を示す概略図。
【図1B】人間の上気道抵抗症候群の睡眠時の様子を示す概略図。
【図1C】睡眠時に閉塞性睡眠時無呼吸が生じている様子を示す概略図。
【図2A】閉塞性睡眠時無呼吸を治療するために持続的気道内陽圧(CPAP)装置を用いている様子を示す。
【図2B】人間の顔の断面図。
【図2C】閉塞性睡眠時無呼吸を治療するために骨格手術を用いた様子を示す。
【図3A】本発明の第1の実施形態に従う本発明の装置の概略図。
【図3B】本発明の第2の実施形態に従う装置の概略図。
【図3C】本発明の第3の実施形態に従う装置の概略図。
【図3D】本発明の第4の実施形態に従う装置の概略図。
【図3E】本発明の第4の実施形態に従う装置の概略図。
【図3F】本発明の第5の実施形態に従う装置の概略図。
【図3G】本発明の第6の実施形態に従う装置の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、閉塞性睡眠時無呼吸を、患者に口内陰圧を用いることにより治療するための装置を提供する。図3Aは、本発明の第1の実施形態に従う本発明の装置の概略図である。第1実施形態において、閉塞性睡眠時無呼吸を治療するための本発明の装置3は、患者の口腔の陰圧を制御及び維持するための減圧ユニット30;口腔内に陰圧を発生させるために口腔内の空気を吸い出すために減圧ユニット30にその一端が連結されたチューブ32;及び、チューブ32の他端に連結されたマウスピース34を含み、マウスピース34は、口腔が空気を漏らすことを防止するために、患者の口に嵌り込み、且つ患者の口を封止する。
本発明は、口腔内で陰圧が維持されることができるように患者の口腔内の空気を吸い出すために、減圧ユニット30を、チューブ32及びマウスピース34を介して用いる。鼻腔と口腔との圧力差により、軟口蓋及び周囲軟組織312が、口腔に向って押され、また、減圧により、舌311が上口蓋に向って引かれる。こうして、上気道(すなわち、鼻呼吸の気道)が開かれることができ、それにより、患者が閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)を生じることが防止される。マウスピース34は、口腔と減圧ユニット30とのインタフェースである。マウスピース34は、口腔内の減圧が失われないように、患者の口に嵌り込んで患者の口を封止する。減圧ユニット30は、口腔内の陰圧を長時間にわたって維持するための、圧力調節式及び/又は流量調節式の減圧ポンプであることができる。手動ポンプも減圧ユニット30として用いられることができる。
図3Bは、本発明の第2の実施形態に従う装置の概略図である。第2の実施形態においては、切換弁36がマウスピース34に関連付けられているが、装置のその他の部分は第1実施形態と同じである。切換弁36は、口腔を、チューブ32、及び、動作中の減圧ユニット30に接続することができる。切換弁36は、チューブ32及び減圧ユニット30がマウスピース34との接続を外されても、口腔の陰圧を維持するために口腔を閉鎖することができる。切換弁36は、また、減圧を解除して口腔内の通常の圧力を回復するために、口腔を外気に接続することもできる。
図3Cは、本発明の第3の実施形態に従う装置の概略図である。第3の実施形態においては、歯と係合する部分38がマウスピース34と協働し、これにより、患者の下顎位置を
、上気道の開放性をさらに高めるように保持する。第3実施形態の装置のその他の部分は第1実施形態と同一である。或いは、歯と係合する部分38と弁36とを共に第3実施形態に用いることもできる(図示せず)。
図3D及び図3Eは、本発明の第4の実施形態に従う装置の概略図である。第4の実施形態においては、舌を保持する部分40が、舌が仰臥睡眠姿勢にて後退しないように舌を保持するためにマウスピース34の一端(チューブ32に対して反対側)に固定されている。舌保持部40の使用は、上気道の開放性も高める。舌保持部40には、互いに対向して配置された1対の磁気プレート401が、舌を磁気力により保持するために設けられることができ、又は、舌保持部40は、ばね荷重クランプにより形成されることができる。図3Eを参照すると、舌保持部40は、舌を減圧力により保持するための減圧導管402であってもよい。
図3Fは、本発明の第5の実施形態に従う装置の概略図である。第5の実施形態においては、鼻腔内の陽圧と口腔内の陰圧とが、上気道の開放性を維持するために組み合わされている。持続的気道内陽圧(CPAP)装置(図示せず)に接続された鼻チューブ42がチューブ32に関連付けられている。鼻チューブ42とチューブ32とは一体的に形成されることができる。陽圧エアが鼻腔内に、持続的気道内陽圧装置により、鼻腔チューブ42を通して供給される。第5の実施形態においては、鼻腔内の陽圧と口腔内の陰圧とが、持続的気道内陽圧装置が高空気圧及び高空気流を鼻腔内に供給する必要がないように組み合わされる。上気道内の高空気圧及び高空気流により生じる不快感が排除され、この装置への患者のコンプライアンスが高められる。すなわち、この装置及びこの方法は、閉塞性睡眠時無呼吸を治療するための伝統的な持続的気道内陽圧装置に必要である圧力設定を減らすことができる。それゆえ、この装置及びこの方法は、高圧及び高空気流により生じる不快感を減じることができる。
図3Gは、本発明の第6の実施形態に従う装置の概略図である。第6の実施形態においては、フローセンサ39がマウスピース34に関連付けられており、装置のその他の部分は第1実施形態と同一である。フローセンサ39は、鼻腔内のフローパターン(空気流パターン)を検知するために用いられる。例えば、フローセンサ39は、正常な、及び異常な呼吸中に上気道流が変化するときに温度変化又は圧力変化を検知し得る。フローセンサ39からの信号が、減圧ユニット30内のコントローラ301にフィードバックされる。コントローラ301は、検知された上気道のフローパターンに基づいて、減圧ユニット30の圧力及び流量設定を、開始、停止し、又は調節し得る。
本発明を、例を用いて、好ましい実施形態に関して記載してきたが、本発明の記載に関し、当業者が、様々な変型、並びに類似の構成及び手順を実行し、且つ本発明の効果も得られることが理解されよう。従って、本発明の記載は、当分野に精通している者の最も広範囲の解釈に従うべきであり、また、本発明がその解釈に限定されないことが理解されよう。
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者に口腔内陰圧を用いことにより閉塞性睡眠時無呼吸を治療するための方法と装置に関する。
【背景技術】
【0002】
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は、人間の喉の筋肉が弛緩するときに生じ、このとき人間は、一晩のうちに数百回、1回につき1分間もの間呼吸を止めることがある。図1Aは、人間の睡眠時の正常な呼吸状態を示し、この状態において、鼻呼吸の気道は開いた状態に維持されている。図1Bは、人間の上気道抵抗症候群を示し、この状態において、喉の後筋(back muscle)の弛緩により、鼻呼吸の気道の寸法が狭くされている。図1Cは、睡眠時に閉塞性睡眠時無呼吸が生じている様子を示し、この状態において、鼻呼吸の気道は、喉の後部の筋肉が潰れていることにより閉塞されている。
【0003】
睡眠時無呼吸の症状を有する人口は10%より多いが、治療を受けているのは患者のごく一部に過ぎない。睡眠時無呼吸を患う人々の生命の危険性はかなり高く、例えば、死亡率が過剰であり、すなわち、無呼吸指数が≧20の未治療の患者の、8年間を超える期間の生存率は、無呼吸指数が<20の未治療の患者と比較して36% 低い。また、高血圧
の危険性が過剰であり、すなわち、呼吸障害指数(Respiration Disorder Index)(RDI)=5の患者は、睡眠時無呼吸を生じない人と比較して、高血圧のオッズ比が2:1であり、また、RDI=25の患者は、睡眠時無呼吸を生じない人と比較して、高血圧のオッズ比が5:1である。また、心筋梗塞(MI)を生じる危険性が過剰であり、睡眠時無呼吸を患う患者は、再発性心筋梗塞の危険度が23倍増大する。また、卒中の危険性が過剰であり、睡眠時無呼吸を患う患者は、睡眠時無呼吸を生じない人と比較して、卒中のオッズ比が3:2にもなる。また、交通事故の危険性があり、睡眠時無呼吸を治療していない患者は、睡眠時無呼吸を生じない人と比較して交通事故が7倍多く、この未治療患者の交通事故は、走行距離に関して補正したならば12倍多い。
【0004】
完全な解決策は存在しない。図2Aに示されているような持続的気道内陽圧(CPAP)法は、最も一般的な方法であり、この方法において、鼻呼吸の気道を開かせておくために、持続陽圧エアがマスク20を通して患者に供給されるが、この方法は、陽圧及び高気流により生じる不快さのために、患者のコンプライアンス(遵守率)が40〜50%と低いという欠点がある。他の治療法は、軟組織除去、骨格の手術、及び、口腔用装置の装着を含む。図2Bを参照すると、軟組織除去は、軟組織、例えば、軟口蓋、口蓋垂及び扁桃など(部分Bに示されている)を、鼻呼吸の気道の寸法を拡大するために除去することである。図2Cは、両顎前出(bimaxillary advancement)と称される種類の骨格手術を示し、この手術により、第1の固定具が下顎部に、下顎部を前方に押すために配置され、また、第2の固定具24が上口蓋に、上口蓋が下顎部と位置合わせされることができるように配置される。下顎部を前方に押すことにより、舌が前方に引かれて鼻呼吸の気道の寸法が拡大される。閉塞性睡眠時無呼吸を治療するための様々な方法の比較を表1に示す。
【0005】
【表1】
【0006】
表1によれば、上記の方法の幾つかは、患者のコンプライアンス性が高いが有効性が低く、且つ価格が高い。また、上記の方法の幾つかは、有効性が高く、低価格であるが、患者のコンプライアンス性が低く、且つ利便性が低い。
【0007】
上記の方法の欠点を解消することができる、OSAを治療するための方法及び装置を提供することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0166928号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の主な目的は、閉塞性睡眠時無呼吸を治療するための高い有効性、及び、高いコンプライアンス性を有する方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は、いびき又は睡眠時無呼吸を治療するための方法を提供する。この方法は、ユーザの口腔内に陰圧を用い、それによりユーザの軟口蓋及び周囲軟組織を口腔に向って引張り、且つ、ユーザの舌を上口蓋に向って引張り、それによりユーザの鼻腔内気道を開放状態に維持する。
【0011】
別の態様において、本発明は、閉塞性睡眠時無呼吸を、患者に口腔内陰圧を用いることにより治療するための装置を提供する。この装置は、患者の口腔の陰圧を制御及び維持するための減圧ユニットと、口腔内に陰圧を発生させるために口腔内の空気を吸い出すために減圧ユニットにその一端が連結されたチューブと、チューブの他端に連結されたマウスピースであって、口腔が空気を漏らすことを防止するために患者の口に嵌り込み、且つ患
者の口を封止するマウスピースとを含む。
【0012】
本発明の装置は、容易に製造される簡単な構造を有し、また、閉塞性睡眠時無呼吸を治療するための高い有効性、及び、患者への高コンプライアンス性をもたらす。本発明の装置の商業的可能性は非常に大きい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1A】人間の睡眠時の正常な鼻呼吸状態を示す概略図。
【図1B】人間の上気道抵抗症候群の睡眠時の様子を示す概略図。
【図1C】睡眠時に閉塞性睡眠時無呼吸が生じている様子を示す概略図。
【図2A】閉塞性睡眠時無呼吸を治療するために持続的気道内陽圧(CPAP)装置を用いている様子を示す。
【図2B】人間の顔の断面図。
【図2C】閉塞性睡眠時無呼吸を治療するために骨格手術を用いた様子を示す。
【図3A】本発明の第1の実施形態に従う本発明の装置の概略図。
【図3B】本発明の第2の実施形態に従う装置の概略図。
【図3C】本発明の第3の実施形態に従う装置の概略図。
【図3D】本発明の第4の実施形態に従う装置の概略図。
【図3E】本発明の第4の実施形態に従う装置の概略図。
【図3F】本発明の第5の実施形態に従う装置の概略図。
【図3G】本発明の第6の実施形態に従う装置の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、閉塞性睡眠時無呼吸を、患者に口内陰圧を用いることにより治療するための装置を提供する。図3Aは、本発明の第1の実施形態に従う本発明の装置の概略図である。第1実施形態において、閉塞性睡眠時無呼吸を治療するための本発明の装置3は、患者の口腔の陰圧を制御及び維持するための減圧ユニット30;口腔内に陰圧を発生させるために口腔内の空気を吸い出すために減圧ユニット30にその一端が連結されたチューブ32;及び、チューブ32の他端に連結されたマウスピース34を含み、マウスピース34は、口腔が空気を漏らすことを防止するために、患者の口に嵌り込み、且つ患者の口を封止する。
本発明は、口腔内で陰圧が維持されることができるように患者の口腔内の空気を吸い出すために、減圧ユニット30を、チューブ32及びマウスピース34を介して用いる。鼻腔と口腔との圧力差により、軟口蓋及び周囲軟組織312が、口腔に向って押され、また、減圧により、舌311が上口蓋に向って引かれる。こうして、上気道(すなわち、鼻呼吸の気道)が開かれることができ、それにより、患者が閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)を生じることが防止される。マウスピース34は、口腔と減圧ユニット30とのインタフェースである。マウスピース34は、口腔内の減圧が失われないように、患者の口に嵌り込んで患者の口を封止する。減圧ユニット30は、口腔内の陰圧を長時間にわたって維持するための、圧力調節式及び/又は流量調節式の減圧ポンプであることができる。手動ポンプも減圧ユニット30として用いられることができる。
図3Bは、本発明の第2の実施形態に従う装置の概略図である。第2の実施形態においては、切換弁36がマウスピース34に関連付けられているが、装置のその他の部分は第1実施形態と同じである。切換弁36は、口腔を、チューブ32、及び、動作中の減圧ユニット30に接続することができる。切換弁36は、チューブ32及び減圧ユニット30がマウスピース34との接続を外されても、口腔の陰圧を維持するために口腔を閉鎖することができる。切換弁36は、また、減圧を解除して口腔内の通常の圧力を回復するために、口腔を外気に接続することもできる。
図3Cは、本発明の第3の実施形態に従う装置の概略図である。第3の実施形態においては、歯と係合する部分38がマウスピース34と協働し、これにより、患者の下顎位置を
、上気道の開放性をさらに高めるように保持する。第3実施形態の装置のその他の部分は第1実施形態と同一である。或いは、歯と係合する部分38と弁36とを共に第3実施形態に用いることもできる(図示せず)。
図3D及び図3Eは、本発明の第4の実施形態に従う装置の概略図である。第4の実施形態においては、舌を保持する部分40が、舌が仰臥睡眠姿勢にて後退しないように舌を保持するためにマウスピース34の一端(チューブ32に対して反対側)に固定されている。舌保持部40の使用は、上気道の開放性も高める。舌保持部40には、互いに対向して配置された1対の磁気プレート401が、舌を磁気力により保持するために設けられることができ、又は、舌保持部40は、ばね荷重クランプにより形成されることができる。図3Eを参照すると、舌保持部40は、舌を減圧力により保持するための減圧導管402であってもよい。
図3Fは、本発明の第5の実施形態に従う装置の概略図である。第5の実施形態においては、鼻腔内の陽圧と口腔内の陰圧とが、上気道の開放性を維持するために組み合わされている。持続的気道内陽圧(CPAP)装置(図示せず)に接続された鼻チューブ42がチューブ32に関連付けられている。鼻チューブ42とチューブ32とは一体的に形成されることができる。陽圧エアが鼻腔内に、持続的気道内陽圧装置により、鼻腔チューブ42を通して供給される。第5の実施形態においては、鼻腔内の陽圧と口腔内の陰圧とが、持続的気道内陽圧装置が高空気圧及び高空気流を鼻腔内に供給する必要がないように組み合わされる。上気道内の高空気圧及び高空気流により生じる不快感が排除され、この装置への患者のコンプライアンスが高められる。すなわち、この装置及びこの方法は、閉塞性睡眠時無呼吸を治療するための伝統的な持続的気道内陽圧装置に必要である圧力設定を減らすことができる。それゆえ、この装置及びこの方法は、高圧及び高空気流により生じる不快感を減じることができる。
図3Gは、本発明の第6の実施形態に従う装置の概略図である。第6の実施形態においては、フローセンサ39がマウスピース34に関連付けられており、装置のその他の部分は第1実施形態と同一である。フローセンサ39は、鼻腔内のフローパターン(空気流パターン)を検知するために用いられる。例えば、フローセンサ39は、正常な、及び異常な呼吸中に上気道流が変化するときに温度変化又は圧力変化を検知し得る。フローセンサ39からの信号が、減圧ユニット30内のコントローラ301にフィードバックされる。コントローラ301は、検知された上気道のフローパターンに基づいて、減圧ユニット30の圧力及び流量設定を、開始、停止し、又は調節し得る。
本発明を、例を用いて、好ましい実施形態に関して記載してきたが、本発明の記載に関し、当業者が、様々な変型、並びに類似の構成及び手順を実行し、且つ本発明の効果も得られることが理解されよう。従って、本発明の記載は、当分野に精通している者の最も広範囲の解釈に従うべきであり、また、本発明がその解釈に限定されないことが理解されよう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔内陰圧を患者に用いることにより閉塞性睡眠時無呼吸を治療するための装置(3)であって、
前記患者の口腔の陰圧を制御及び維持するための減圧ユニット(30)と、
口腔内に陰圧を発生させるために口腔内の空気を吸い出すために前記減圧ユニット(30)にその一端が連結されたチューブ(32)であって、前記チューブ(32)は、前記口腔内の空気を吸い出すことによって、前記口腔内に陰圧を発生させることと
を備え、
前記装置(3)はさらに、前記チューブの他端に連結されたマウスピース(34)を備え、前記マウスピース(34)は、前記患者の口に嵌り込み、且つ前記患者の口を封止することによって、前記口腔が空気を漏らすことを防止し、
前記マウスピース(34)は、前記患者の歯に係合せずに、前記患者の口を封止する、装置。
【請求項2】
前記装置(3)はさらに、前記マウスピース(34)に関連付けられた切換弁(36)を含み、
前記切換弁(36)は、前記口腔を、前記チューブ(32)と、動作中の前記減圧ユニット(30)に連結し、
前記切換弁(36)は、前記チューブ及び前記減圧ユニットが前記マウスピース(34)との連結を外されても、前記口腔を閉鎖することによって前記口腔の陰圧を維持し、又は、前記切換弁(36)は、前記口腔内の通常の圧力を回復するために、前記口腔を外気に接続させる、
請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記装置(3)はさらに、舌保持部(40)を備え、
前記舌保持部(40)は、患者の下顎位置を保持するために前記チューブ(32)に対して反対側の前記マウスピース(34)の一端に固定される、
請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記舌保持部(40)は、患者の舌(311)位置を保持するために、減圧力、磁気力、又はばね荷重力を用いる、
請求項3記載の装置。
【請求項5】
前記装置(3)はさらに、前記チューブ(32)と関連付けられた鼻腔用チューブ(42)を含み、前記鼻腔用チューブ(42)は、持続的気道内陽圧(CPAP)装置に連結されている、
請求項1記載の装置。
【請求項6】
前記チューブ(32)と前記鼻腔用チューブ(42)とは、一体的に形成されている、
請求項5記載の装置。
【請求項7】
前記装置(3)はさらに、鼻腔のフローパターンを検知するための、前記マウスピース(34)と関連付けられたフローセンサを含み、前記フローセンサが前記減圧ユニット(30)内部のコントローラに接続されている、
請求項1記載の装置。
【請求項1】
口腔内陰圧を患者に用いることにより閉塞性睡眠時無呼吸を治療するための装置(3)であって、
前記患者の口腔の陰圧を制御及び維持するための減圧ユニット(30)と、
口腔内に陰圧を発生させるために口腔内の空気を吸い出すために前記減圧ユニット(30)にその一端が連結されたチューブ(32)であって、前記チューブ(32)は、前記口腔内の空気を吸い出すことによって、前記口腔内に陰圧を発生させることと
を備え、
前記装置(3)はさらに、前記チューブの他端に連結されたマウスピース(34)を備え、前記マウスピース(34)は、前記患者の口に嵌り込み、且つ前記患者の口を封止することによって、前記口腔が空気を漏らすことを防止し、
前記マウスピース(34)は、前記患者の歯に係合せずに、前記患者の口を封止する、装置。
【請求項2】
前記装置(3)はさらに、前記マウスピース(34)に関連付けられた切換弁(36)を含み、
前記切換弁(36)は、前記口腔を、前記チューブ(32)と、動作中の前記減圧ユニット(30)に連結し、
前記切換弁(36)は、前記チューブ及び前記減圧ユニットが前記マウスピース(34)との連結を外されても、前記口腔を閉鎖することによって前記口腔の陰圧を維持し、又は、前記切換弁(36)は、前記口腔内の通常の圧力を回復するために、前記口腔を外気に接続させる、
請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記装置(3)はさらに、舌保持部(40)を備え、
前記舌保持部(40)は、患者の下顎位置を保持するために前記チューブ(32)に対して反対側の前記マウスピース(34)の一端に固定される、
請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記舌保持部(40)は、患者の舌(311)位置を保持するために、減圧力、磁気力、又はばね荷重力を用いる、
請求項3記載の装置。
【請求項5】
前記装置(3)はさらに、前記チューブ(32)と関連付けられた鼻腔用チューブ(42)を含み、前記鼻腔用チューブ(42)は、持続的気道内陽圧(CPAP)装置に連結されている、
請求項1記載の装置。
【請求項6】
前記チューブ(32)と前記鼻腔用チューブ(42)とは、一体的に形成されている、
請求項5記載の装置。
【請求項7】
前記装置(3)はさらに、鼻腔のフローパターンを検知するための、前記マウスピース(34)と関連付けられたフローセンサを含み、前記フローセンサが前記減圧ユニット(30)内部のコントローラに接続されている、
請求項1記載の装置。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図3G】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図3G】
【公開番号】特開2012−179404(P2012−179404A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−117723(P2012−117723)
【出願日】平成24年5月23日(2012.5.23)
【分割の表示】特願2007−141778(P2007−141778)の分割
【原出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(598132657)インダストリアル テクノロジー リサーチ インスティチュート (26)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年5月23日(2012.5.23)
【分割の表示】特願2007−141778(P2007−141778)の分割
【原出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(598132657)インダストリアル テクノロジー リサーチ インスティチュート (26)
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