説明

患者に気道陽圧を供給する装置

閉塞性睡眠時無呼吸又は鬱血性心不全等の医学的疾患を治療する方法と装置を含むシステム。このシステムは、呼吸周期の吸気段階及び/又は呼気段階の間に患者(12)に供給される加圧気体の流量に利得を適用して、吸気動作及び/又は呼気動作の間に各利得に比例する加圧気体を供給する過程を含む。基礎圧力を利得修正圧力に重畳し、高変動圧力を使用して吸気動作を支援又は制御できる。持続気道陽圧(CPAP)又は二段階気道陽圧装置等の従来の持続気道陽圧処理にこのシステムを利用して、種々の効果的な治療を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【優先権主張】
【0001】
米国特許法第120条の規定により、本願は、2002年11月26日に出願された米国特許出願10/304,590号の優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、約言すれば、呼吸障害及び/又は心臓疾患を治療する方法と装置、特に、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、慢性閉塞性肺疾患、鬱血性心不全及び他の呼吸器疾患及び/又は呼吸疾患を治療するため、呼吸サイクルの少なくとも一部間で患者の気道に呼吸気体圧力を供給する方法と装置に関する。
【背景技術】
【0003】
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)に罹る患者の気道は、睡眠中に狭窄状態及び/又は圧潰状態になる傾向がある。持続気道陽圧(CPAP)療法は、気道を強制的に拡張する圧力を供給して狭窄状態を回避する気道拡張(副木的)機能がある。持続気道陽圧では、気道拡張圧力は、睡眠研究の間、気道の狭窄を防止するのに十分な大きさに最適化され一定に保持される。一定の強制気道拡張圧力、即ち持続気道陽圧の供給は、圧潰気道に起因する症例の単純な解決法である。しかしながら、この解決法は、主呼吸周期中に気道の拡張に必要な圧力より高い圧力を患者に供給しなければならない。
【0004】
吸気動作の間、肺内に生ずる圧力は、鼻での圧力より低い。この圧力差は、肺内への空気流を発生する。この圧力差は、肺と鼻を接続する気道内に気圧勾配を形成する。即ち、患者の肺内及び気道内は大気圧より低い(下位圧力)か又は負圧であるのに対し、鼻内は通常大気圧である。この負圧は、気道に作用して、気道を圧潰する。吸気動作により発生する低周囲圧力を除去すると共に、気道組織の構造、筋肉の緊張状態及び身体状態から生ずる全ての機械的圧潰力を克服するのに必要なレベルまで全呼吸器系の圧力レベルを上昇するレベルに持続気道陽圧(CPAP)が設定される。二段階の気道陽圧装置の吸入圧力、即ち気道吸気陽圧又はIPAPも同様の方法で設定される。
【0005】
呼気間に、肺の内部と身体の外部との間に陽圧勾配が存在する。呼気間に、陽圧勾配は、気道を拡張状態に保持するのに役立つ。呼気の終期に気圧勾配は本質的に零となり、呼吸気体流は同様に零となるので、気道は呼吸動作の影響を受けない。呼気の終期での全気道圧潰は、気道組織の構造、筋肉の緊張状態及び身体状態の純粋な機能に起因する。二段階装置は、呼気の終期に気道の拡張に必要な呼気圧力を供給することが要求される。
【0006】
呼吸周期を通じて、肺と身体の外部との間の圧力勾配が一定でない点に留意を要する。吸気圧力勾配は、吸気開始時の零から負ピーク値に向かい、その後、吸気動作の終期に零に向かって上昇する。呼気圧力勾配は、呼気開始時の零からピーク値に向かい、その後、呼気の終期に零に戻る。呼吸周期を通じて気圧勾配が変化するので、理想的には呼気周期を通じて気道圧潰の克服に必要な圧力を変化させなければならない。
【0007】
従来の持続気道陽圧(CPAP)療法は、これらの圧力条件変化を無視して、単一の圧力レベルで行われる療法である。従来の持続気道陽圧(CPAP)は、単に最悪時の治療要因を示す吸気動作間のピーク圧力条件にのみ基づくため、持続気道陽圧は、包括的に制御するに過ぎず最適な療法からほど遠い。
【0008】
従来の持続気道陽圧(CPAP)から進歩した二段階気道陽圧(bi-level PAP)療法は、異なる圧力条件を利用して、呼気間に圧力を低下する。しかしながら、二段階気道陽圧(bi-level PAP)の吸気気道陽圧は、吸気動作間に発生する患者の必要なピーク圧力に基づいて、全吸気段階を通じて一定に保持されるに過ぎないから、二段階療法も最適の治療を行うことができない。また、二段階治療の間、呼気状態気道圧力(EPAP)は、一定のままで、呼気の終期の拡張条件にのみに基づくに過ぎない。
【0009】
睡眠時無呼吸症候群(OSAS)に加えて、二段階気道陽圧療法等の気道陽圧治療は、例えば慢性閉塞性肺疾患(COPD)等の他の呼吸疾患の治療に適用された。しかし、この態様の治療法の一課題は、被験者が吸気流を停止することが困難となる点にある。この現象は、吸気動作の終期に患者の呼吸抵抗を克服するのに必要な圧力と、印加される気道吸気陽圧(IPAP)との差により発生する。印加される圧力は、通常、呼吸抵抗を克服する圧力を上回るので、吸気動作の終期に生ずる「剰余」気道吸気陽圧(IPAP)は、不快で潜在的に有害な患者の肺の超膨張を招来する。
【0010】
逆に、吸気流を開始するために、慢性閉塞性肺疾患の患者は、呼吸器系の入口で周囲圧力に満たない圧力まで、肺内部の圧力を低下しなければならない。「自動呼気終末陽圧(Auto-PEEP)」として一般に知られる条件のために、被験者の肺の圧力は、通常呼気の終期では周辺圧力より高い。従って、患者の呼吸する筋肉は、肺への空気流が発生する前に、肺を拡張する追加の動作を実行して、肺の圧力を周辺圧力のレベルより低く減圧しなければならない。呼気終末陽圧(PEEP)として知られる抵抗性逆圧力によって、自動呼気終末陽圧を、通常取り扱わなければならない。呼気終末陽圧は、患者の自動呼気終末陽圧直下のレベルに設定され、吸気流の開始に必要な呼吸動作量を低減できる。
【0011】
例えば圧力支援(サポート)、持続気道陽圧(CPAP)又は二段階療法等の従来の治療法では、全呼気段階、例えば二段階の気道陽圧療法の呼気状態気道圧力段階を通じて同一の圧力を印加することにより呼気終末陽圧を達成できる。呼気状態気道圧力(EPAP)が呼気終末陽圧(PEEP)と同義でない点に留意する必要がある。呼気状態気道圧力(EPAP)は呼気全体にわたり患者に供給される一定の圧力を示すのに対し、PEEPは呼気終末陽圧を示す。自明であるが、呼気終末陽圧(PEEP)は、呼気の終期で必要なだけである。このように、呼気周期を通じて呼気状態気道圧力(EPAP)を実施すると、満足な呼気終末陽圧(PEEP)を維持できる反面、呼気の間に患者が実行しなければならない呼吸動作に不都合な影響が与えられる。
【0012】
持続気道陽圧(CPAP)及び二段階の気道陽圧(PAP)に加えて、被験者の呼吸動作を誘発し、無用にし、援助し及び/又は抵抗することによる方法及び装置の集合機能を付与する睡眠時無呼吸症候群(OSAS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)及び他の呼吸疾患の治療を含む臨床の調査及び/又は治療の適用に対する他の装置が提案された。前記装置には、例えば、これらに限られないが、吸気流及び/又は呼気流、吸気圧及び/又は呼気圧力、1回呼吸量並びに鼾音等の気道障害を表す徴候を含む被験者の呼吸活動に関連する1又はそれ以上の要因に応答する所定の機能を実行するものもある。また、経胸腔的に目的を達成するものもあれば、正圧又は負圧を被験者の気道に直接供給するものもある。
【0013】
「鉄肺」と一般に呼称するこの種の装置の初期の例は、非特許文献1に掲載された。前記刊行物に提案された鉄肺は、広い加圧室内で着座する被験者の身体の外面に対して経胸腔的な圧力を印加し又は除去することにより、患者の呼吸動作(即ち、鉄肺は、吸気動作間、負圧を印加し、呼気動作間に周辺空気圧又は陽圧を印加する)を補助する人工呼吸装置である。その日のために精巧に作動する人工呼吸装置は、具体的には、患者の自然発生的な一呼吸を構成する検出呼吸の気体流量又は気体容積に応答して絶えず内部室圧力を制御する。実際に、患者の胸部に取り付けられる歪み計呼吸曲線記録器から得られる信号は、気体容積に比例するもの、吸気流量に比例するもの及び呼気流量に比例するものの3つの成分に電気的に分割される。各成分は、個別の利得制御装置に割り当てられる。その後、成分信号は再結合され、送風機と加圧室との間に設けられた電動可変バルブにより加圧室内の圧力が制御される。
【0014】
所期の目的に対して有効であるが、通常、サイズが大きく、取り扱いが煩雑で、コストが高くかつ応用範囲が制限されるため、前記及び他の鉄肺装置は嫌われる。即ち、サイズが大きく価格が高いため、病院及び診療所等の医療設備によって、ほぼ独占的に購入され維持される。更に、患者の協力及び治療の有効性に対し安心感及び謙虚さが決定的な場合に、鉄肺は、睡眠時無呼吸症候群(OSAS)及び関連する疾患の治療に役立たない。これは、吸気動作間に印加される負圧が、吸気段階の間に気道を圧潰させる要因を構成するためである。
【0015】
非特許文献2は、被験者の呼吸動作に負荷を与え又は負荷を除去して種々の呼吸応答性を生ずるシステムを開示する。このシステムは、吸気動作、呼気動作又はこれらの両方で負荷を発生し又は負荷を除去して被験者の自然発生的な呼吸動作を補助し又は抵抗できる。このシステムは、連続的な正圧又は負圧を被験者の気道に直接印加して、検出された呼吸気体の流量、容積、印加した電圧、外部機能又は他の信号源により発生する指令信号を通して、負荷を加え又は負荷除去が行われる。
【0016】
しかしながら、この装置に対する欠点は、抵抗性の負荷又は負荷除去に対して、単一の抵抗利得のみしか選択できない点にある。単一の利得は、呼吸周期の「半波」(吸気動作か呼気動作)又は呼吸周期の「全波」(吸気動作及び呼気動作の両方)に適用される。換言すれば、全波呼吸の負荷又は負荷解除に従って、吸気動作及び呼気動作の両方の間に、選択された単一の利得値が使用される。このように、吸気動作間、呼吸動作の低減について良好な結果を生ずる利得により、例えば、呼気動作間にとても望ましいとはいえず、有害でさえある結果が生じることがある。逆に、呼気動作の低減を最適化するために特に選択された利得に対しても、同様の作用がある。
【0017】
また、ヨウンズその他が提案する装置は、閉鎖された密封装置として作動する。解放式の耐漏洩装置で機能する能力を予測することには問題がある。このように、装置が睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の治療に適するか否か、どの装置がある程度の公知の装置漏洩及び不可避の未知の装置漏洩を一定不変に含むか否かは疑わしい。
【0018】
ヨウンズ名義の特許文献1は、前記非特許文献2のヨウンズ他に開示された「呼吸補助」(負荷解除)の全てを本質的に反復する。しかしながら、特許文献1に開示された装置では、呼気の間に、圧力出力が零に設定されるので、吸気動作間のみ調節可能な圧力増加を実現できる。また、検出された患者の吸気流量及び吸気容積の両方の関数として、出力圧力が算出される。更に、装置は慢性閉塞性肺疾患(COPD)に適用できるが、睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の治療には適用できない。
【0019】
非特許文献3は、ヨウンズの両刊行物に記載された操作モードの1つに幾分類似する機能を生ずる装置を示す。即ち、プーン他の装置は被験者の呼吸負荷を解除する作用があるが、それは吸気の間に過ぎない。プーン他の装置は、瞬間的な流れに対して一定の比率で全吸気動作を通じて口腔陽圧を確立することによって、呼吸補助機能を実施する。(1)検出した口腔陽圧信号に対し所望の利得を選択する、(2)瞬間的な流れを反映する検出信号を超えて利得修正された口腔圧力信号の比率を算出する、(3)算出した比率を選択された基準比率と比較して、弁モータ制御信号を発生する、(4)弁モータ制御信号を使用してサーボバルブを駆動するモータを操作して、被験者の気道に印加される陽圧を制御することにより、一定の比率を達成できる。このように、装置の出力圧力は、検出される圧力及び流量の両方の関数として決定される。更に、圧力対流量の一定比率を維持するのに十分な値で、この圧力を出力しなければならない。
【0020】
非特許文献4は、横隔膜導出性の呼吸呼気量に比例する経胸腔的な圧力を生成する「デマンド型」面体として機能する改善された人工呼吸装置を示す。横隔膜導出性の呼吸呼気量は、横隔膜機能を制御する横隔膜神経への脳出力信号を示す。横隔膜導出性の呼吸呼気量信号によって、横隔膜を収縮させ、これにより被験者が吸気動作を行うことができる。横隔膜導出性の呼吸呼気量は装置の指令信号として役立ち、電気的に処理されて平均動作時間(MTA)を生じ、被験者の気管圧力は負帰還信号として役立つ。プーン他による装置と同様に、レマース他の装置は、吸気動作間だけ、呼吸動作を補助するに過ぎない。
【0021】
人工呼吸装置の流量出力及び圧力出力を自動的に制御する装置は、エルンスト他名義の特許文献2に開示される。しかしながら、前記プーン他等の装置と同様に、送出される出力流量及び出力圧力を算出する場合に、エルンスト他の装置は、検出される呼吸圧力及び呼吸流量に基づき過度に複雑な構成に依存する。詳述すると、エルンスト他の装置は、呼吸周期の間に人工呼吸装置内の呼吸気体の送出される流量及び圧力を制御することにより、患者の界面材に隣接して配置される測定装置により呼吸気体の実際の流量と圧力を測定する技術を提案する。測定された値は電気信号に変換され、呼吸気体源と測定装置との間に配置されたバルブを通じて呼吸周期の吸気動作の部分及び呼気動作の部分の間に呼吸気体の流量及び圧力を制御する。流量出力及び圧力出力を制御する方法は、(1)患者に隣接する呼吸気体の実際の流量を測定する、(2)患者に隣接する呼吸気体の実際の圧力を測定する、(3)予め選択された固定値及び実際の値から流量及び圧力の名目値を算出する、(4)流量及び圧力に対する実測値を名目値と比較する、(5)この比較からバルブを調整する制御信号を形成して呼吸気体の流量と圧力を制御する、ことにより行う。
【0022】
また、検出した2つの呼吸要因(流量及び圧力)を利用すること及び前記変数及び他の変数を反復して処理して装置の流量出力及び圧力出力を発生する複雑な方法からとは別に、患者に必要な呼気終末陽圧に等しい基礎圧力を送出できるが、エルンスト他の装置では、それにも関わらず、基礎圧力より小さい如何なる圧力も送出することができない。従って、エルンスト他の装置は、特に呼吸周期の呼気段階で患者が呼吸に必要な動作以上の動作を行うことが必要であるため、患者の安心感及び治療に対する連続的な協力に有害な影響を与える。
【0023】
呼吸不全の治療に加えて、気道陽圧治療は、鬱血性心不全(CHF)の治療に適用されてきた。鬱血性心不全(CHF)に持続気道陽圧(CPAP)を使用する際に、持続気道陽圧(CPAP)の効果は、心臓を包囲する胸腔内の圧力を増加することにある。これは、体内に血液を送るポンプ作用を行う心臓の圧力量を減少する影響がある。心臓が発生する圧力を減少することによって、心臓に必要な動作は減少する。これは、潜在的に病気の心臓に休息を与え、心不全を改善する。
【0024】
また、胸腔内の圧力は、呼吸動作に影響される。吸気動作では、胸内の圧力は、吸気動作のために減少する(休息時の圧力に対して負となる)。これは、体内に血液を強く送ることを心臓に強制する。呼気動作では、胸の弾力特性のために、胸の圧力はわずかに増加する(休息時の圧力に対して正となる)。これにより血液を送る心臓の負担を減少させる。従来の持続気道陽圧(CPAP)は、心臓の負担を軽減できるが、呼気動作が増加して、圧力により不快が増加するので、患者には容認できない欠陥がある。
【特許文献1】米国特許第5,107,830号
【特許文献2】米国特許第3,961,627号
【特許文献3】米国特許第5,148,802号
【特許文献4】米国特許第5,203,343号
【特許文献5】米国特許第5,458,137号
【特許文献6】米国特許第6,087,747号
【特許文献7】米国特許第5,645,053号
【特許文献8】米国特許第5,433,193号
【特許文献9】米国特許第5,632,269号
【特許文献10】国際特許出願公開第WO00/18347号
【特許文献11】米国特許第5,492,114号
【特許文献12】米国特許第5,551,418号
【特許文献13】米国再発行特許第RE35,295号
【非特許文献1】「肺気腫での呼吸に対する機械的補助、患者により制御されたサーボ式人工呼吸装置の成果」と題する刊行物(ジェームズ・アール・ハリース(医学博士)及びジョン・エム・タイラー(医学博士)共著、アメリカ医学ジャーナルにて公表、1964年1月刊行、第36巻、第68〜78頁)
【非特許文献2】「呼吸器系機械的負荷を変更する装置」と題する論文(エム・ヨウンズ、ディ・ビラン、ディ・ユング及びエッチ・クロークス共著、1987年アメリカ生理学協会発行、第2491頁〜第2499頁)
【非特許文献3】「呼吸気管の機械的負荷除去を行う装置」と題する記事(チ・サン・プーン及びスーザン・エイ・ワード共著、1987年3月発行、電気電子技術者学会(IEEE)生物工学報告、第BME-33巻、第3号、第361頁〜第365頁)
【非特許文献4】「陽圧人工呼吸装置により構成されるサーボ式面体」と題する刊行物「ジャーナルオブアプライドフィシオロジィ」(ジョン・イー・レマース及びヘンリイ・ガウチャー共著、1976年8月発行第41巻、第2号、第252頁〜第255頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明の目的は、加圧空気を患者の気道に供給でき、睡眠時無呼吸症候群(OSAS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)及び他の呼吸疾患及び/又は肺疾患の治療に容易に適応でき、従来の加圧技術の欠点のない簡単な装置を提供することである。患者の気道に加圧された呼吸用気体を供給する装置を設けることにより、この目的を達成できる。「比例気道陽圧」装置又は「PPAP」装置として後述する装置は、気体流発生器と、気体流発生器を患者の気道に連結する患者の界面材と、患者の界面材内を流れる気体に関する流体特性を検出するセンサと、患者に供給される呼吸用気体の圧力を制御する圧力制御装置と、圧力制御装置を制御する制御装置とを含む。
【0026】
制御装置は、圧力制御装置を制御するので、呼吸周期の少なくとも一部の間に、最小限に十分な圧力で呼吸用気体が患者に供給され、最小限に十分な圧力は、患者の構造から生ずる機械力による気道圧潰の防止に必要な圧力と、患者の呼吸動作による気道圧潰の防止に必要な圧力との和となる最小限に十分な圧力で気道圧潰を防ぐ。この装置は、第1の利得を確立するセレクタユニットを含む。制御装置は、圧力制御装置を制御して、第1の利得及びセンサからの検出信号に基づいて呼吸周期の少なくとも一部の間に、最小限に十分な圧力で呼吸用気体を送出する。
【0027】
本発明の比例気道陽圧(PPAP)装置は、従来の持続気道陽圧(CPAP)又は二段階気道陽圧(bi-level PAP)療法を使用して通常治療する睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の治療に一般に必要な圧力に満たない気道圧力を形成する。比例気道陽圧(PPAP)では、患者は、従来の呼気の二段階気道陽圧(bi-level PAP)レベルより低くかつ従来の持続気道陽圧(CPAP)レベルより十分に低い呼気圧力を受ける。また、従来の又は吸気の二段階気道陽圧(bi-level PAP)気道吸気陽圧又は持続気道陽圧(CPAP)のレベルより吸気動作間に送出される平均圧力を低くすることができるのに対し、比例気道陽圧(PPAP)のピーク圧力は、従来の吸気気道陽圧(IPAP)又は持続気道陽圧(CPAP)のレベルにほぼ等しい。比例気道陽圧(PPAP)圧力範囲(最小限の呼気圧力に対するピーク吸入圧力)は、2〜20cmH2Oの間にほぼ該当し、通常の値は8〜14cmH2Oの範囲内にある。これは、6cmH2O又はそれ以上の最小呼気圧力差でピーク吸気が発生すると十分な安心感及び対応性が得られる二段階気道陽圧療法に調和する。本発明の装置を使用する滴定(タイトレーション)の複雑さは、現在の二段階気道陽圧滴定にほぼ等しい。また、帰還(フィードバック)回路に滴定装置を組み合わせて、十分に自動化された比例気道陽圧(PPAP)を得ることができる。
【0028】
睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の治療と同様に、呼気終末陽圧(PEEP)を有する従来の二段階気道陽圧(bi-level PAP)療法を使用し又は呼気終末陽圧(PEEP)を有する比例補助換気(PAV)を使用して慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療に通常必要な圧力より低い中間気道圧力を比例気道陽圧(PPAP)により送出できる。即ち、比例気道陽圧(PPAP)では、従来の呼気状態気道圧力(EPAP)レベルより低い平均呼気圧力と、従来の吸気気道陽圧(IPAP)より低い平均吸気動作圧力と、従来の吸気気道陽圧(IPAP)及び従来のピークの比例補助換気(PAV)レベルにほぼ等しいピークの比例気道陽圧(PPAP)とを患者が受けることができる。従って、呼吸動作は、比例気道陽圧(PPAP)では従来の比例補助換気(PAV)又は慢性閉塞性肺疾患(COPD)又は睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の二段階の治療より少なくてよい。
【0029】
本発明の他の目的は、患者に極めて快適な比例気道陽圧と持続気道陽圧とを組合せた陽圧供給装置を提供することにある。この目的は、気体流発生器と、気体流発生器に連結され、気体流発生器から呼吸用気体流を患者の気道に連絡する患者界面材と、気体流発生器又は患者界面材に設けられ、かつ患者界面材内の呼吸用気体流に関連する流体特性を検出して、流体特性に対応する信号を出力するセンサとを含む陽圧供給装置を提供することにより達成される。気体流発生器又は患者界面材に接続される圧力制御装置は、患者に供給される呼吸用気体流の圧力を制御する。また、この陽圧供給装置は、入力装置と、センサから出力される信号出力、持続気道陽圧(CPAP)の値及び入力装置からの呼気利得GainExpを受ける処理手段とを備える。
【0030】
処理手段は、吸気間に患者に供給すべき吸気圧力(Pinhalation)を次の通り決定し、
Pinhalation=CPAP
呼気間に患者に供給すべき圧力(Pexhalation)を次の通り決定する。
Pexhalation=CPAP+GainExp*(Flow-FlowOffset)
【0031】
「Flow」は、センサにより測定する実時間患者流量である。「FlowOffset」は、陽圧の最終値に応答する吸気間の患者流量の最終値に相当し、又は流量オフセットは、零に設定される。処理手段は、圧力制御装置を制御して、呼吸周期の吸気段階の間の吸気圧力Pinhalationに対応しかつ呼吸周期の呼気段階の間の呼気圧力Pexhalationに対応する圧力を供給する。
【0032】
更に本発明の他の目的は、比例気道陽圧(PPAP)装置の使用により発生するおそれのある患者の呼気間に供給される振動流を排除する装置を提供することにある。本発明の第1の実施の形態では、(1)センサから出力する信号に利得を加えて決定される最小でかつ十分な第1の圧力、及び(2)患者に供給される実時間圧力に一致する最小でかつ十分な第2の圧力、より高い圧力を呼気間に圧力制御装置により患者に供給して本目的を達成できる。患者に供給する圧力を常に前記2つの圧力より高い状態に確保することによって、呼気間に患者が受ける気体圧力は、振動せず、患者に供給すべき圧力が実時間の圧力未満に低下し始めれば、陽圧供給装置は、計算された圧力値を使用しないが、実時間の圧力で患者に供給し続けるため、圧力が実時間の圧力未満に低下することを防止できる。
【0033】
本発明の第2の実施の形態では、呼気量及び利得に基づいて圧力制御装置が決定する呼気圧を供給することによって、呼気間に供給される患者の流れの振動流を防止する目的を達成できる。この利得は、(存在すれば)吸気間にセンサから信号を送る利得と同一の利得又は異なる利得でもよい。呼気量は、実時間の患者気体量と患者気体の残量との差異に一致する。
【0034】
種々の図で同一の部分に同様の参照符号を付し、全て本明細書の一部を構成する添付図面、下記の詳細な説明及び特許請求の範囲を考慮すれば、本発明の前記目的及び他の目的、特徴並びに特性に加えて、操作法、構造の関連要素及び組合せ部品の機能並びに製造の経済性は、明らかとなろう。しかしながら、図面は、例示及び図示の目的に過ぎず、本発明の限界を定義する意味ではないことを明瞭に理解すべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
図1は、本発明の好適な実施の形態による比例気道陽圧装置10の機能ブロック図である。比例気道陽圧装置10は、新規な工程に従って操作され、睡眠時無呼吸症候群(OSAS)、鼾、鬱血性心不全、慢性閉塞性肺疾患(COPD)及び他の呼吸不全又は心肺機能障害を治療するため、患者12の呼吸気体流量に比例して、比較的高い圧力及び低い圧力(即ち、周辺気圧にほぼ等しいか又はこれより高い)で、例えば空気、酸素又はこれらの混合気体である呼吸用気体が患者12に供給される。
【0036】
比例気道陽圧装置10は、例えば、酸素若しくは空気、周辺空気又はこれらの組合せを含む加圧気体容器16等の適当な加圧気体源から呼吸用気体を受ける遠心送風機等の従来の持続気道陽圧(CPAP)又は二段階気道陽圧(bi-level PAP)送風機により構成される気体流発生器14を備えている。気体流発生器14からの気体流は、配給導管18を通じて患者12が着用する適切な公知の構造を有する呼吸用器具又は患者界面材(インターフェイス)20に供給される。本発明の例示的な実施の形態では、配給導管18は、大きい口径の可撓性チューブであり、患者の界面材20は、図示のように、鼻マスク又は全面型面体(フェースマスク)である。マスクの代わりに使用できる他の呼吸器具は、口金(マウスピース)と、鼻シールと、鼻プロング又はカニューレと、気管内チューブと、気管アダプタ又は呼吸用気体源と患者とを相互に連結する他のいかなる適切な器具とを備えている。また、用語「患者界面材」は、患者が着用する界面材(インターフェイス)を含む。例えば、患者の界面材は、配給導管18及び加圧呼吸用気体の供給源を患者に接続する他のいかなる構造も含む。
【0037】
比例気道陽圧装置10は、患者の界面材20、配給導管18又は気体流発生器14を含む呼吸気体管路の内部又は付近に設けられた流量センサ22又は類似するセンサ要素により構成されるセンサを備える。流量センサ22は、例えば双方向性の力学的流量センサ等のいかなる適切なガス(気体)流量計でよい。しかしながら、流量センサ22は、患者の気道の入口と肺との間の気圧勾配の大きさを検出する圧力応答型センサが好ましい。本発明の範囲内では、流量と呼吸圧力勾配とは、相互に関連する。
【0038】
導管18に直接流量センサを取付ける必要はない。他方、本発明では、導管18内の呼吸用気体の流量を測定できる如何なる単一又は複数のセンサでも使用できる。例えば、陽圧供給装置内の流量を患者界面材装置で測定でき又は気体流発生器14により高圧力を供給するのに使用されるモータ速度若しくはピストン速度、電力、電流、トルク又は帰還(フィードバック)制御から流量を測定し算定できる。従って、センサは、直接流量を測定するものである必要はないが、気体流発生器から得られる測定値から流量を間接的に決定することもできる。約言すると、本発明は、流量センサ22(流量電気信号変換器)として患者に供給する気体流量を測定する如何なる従来法も企図する。
【0039】
好適な本実施の形態では、導管手段18に連絡する管路中、特に圧力制御装置24の下流に流量センサ22を配置することが最も好ましい。流量センサ22は、後述する気道比例陽圧(PPAP)回路28に送信する出力信号26を発生する。出力信号26は、患者の吸気作用を表す第1の流量信号と、患者の呼気作用を表す第2の流量信号とを含む。導管手段18内の呼吸用気体の瞬間的な流量に相当する信号は、連続的に伝達される。
【0040】
また、流量センサ22の出力30は、漏洩検出装置32に供給される。本目的に対し適当な漏洩検出器は、本明細書の一部として参照される特許文献3に開示する。しかしながら、例えば、マスク排気ポート34を通じて放出される公知の漏洩及び例えば多様な配給導管継手又は患者の界面材20の接触部分での未知の漏洩を含むほぼ瞬間的な漏洩を算出するシステムの他の技術も使用できる。即ち、本発明の如何なる非侵襲性の実施の形態では、気管内管又は気管アダプタを構成の一部とせずに、前記公知及び未知のシステム漏洩を考慮して患者の呼吸流量を見積らなければならない。
【0041】
漏洩検出装置32からの出力信号36は、気道比例陽圧(PPAP)回路28に送信される。このように、気道比例陽圧(PPAP)回路28は、流量センサ22からの出力信号を漏洩検出装置32からの出力信号と理論上連続的に比較して、患者の呼吸に関連する装置流量部分を装置漏洩によって発生する部分から区別できる。その結果、気道比例陽圧(PPAP)回路28は、装置全流量でなく患者による呼吸流量の関数として圧力制御装置24の出力を一層正確に制御できる。
【0042】
図示のように、マスクとして形成される患者界面材20は、呼気間に呼吸用気体を排出するため、略示する適切な排気装置34を通常備える。排気装置34は、排気ガス流に適切な流動抵抗を与える連続的に開放する開口部であることが好ましく、気体流発生器14と患者界面材20との間の導管18に設けられる圧力制御装置24により導管18内及び患者の気道内の気流圧力を制御できる。例えば、排気開口部34は、10cmH2Oの装置圧力で毎分ほぼ15リットルの連続する排気流量を維持するのに十分な流動断面積を有するとよい。排気開口部34を通る流れは、一漏洩要素、即ち装置操作に重要な要因である全装置漏洩の主要部である。他の実施の形態では、連続的に開口する開口部の代わりに、非再呼吸式弁を使用できることが判明した。
【0043】
圧力制御装置24は、導管18内及び患者の気道内の呼吸用気体圧力を制御する。必ずしも限定されないが、気体流発生器14の下流に圧力制御装置24を配置し、調節可能な電子制御弁を使用することが好ましい。勿論、本発明は、例えば単独で又は圧力制御弁と組合せで圧力発生器の動作を制御する別の圧力制御法も企図する。例えば、本発明の一実施の形態では、圧力発生器は、ハウジング内に取り付けられかつモータにより回転される羽根を含む送風機を企図する。本実施の形態では、圧力制御装置は、専用の流量制御弁を必要としない送風機のモータ動作速度を制御する制御装置である。
【0044】
また、比例気道陽圧装置10は、圧力制御装置24に作動接続された調節可能な最大圧力設定制御装置38及び調節可能な最小圧力設定制御装置40を備える安全管路を含む。製造業者、患者又は患者の健康を管理するヘルスケアの専門家は、安全管路によって、比例気道陽圧装置10の最低装置出力圧力及び最大装置出力圧力を選択的に設定することができ、比例気道陽圧装置10は、最低装置出力圧力及び最大装置出力圧力を超えて加圧気体を発生しない。最低装置出力圧力は、勿論少なくとも零であり、呼気間に咽頭の開通を維持するのに十分な閾値圧力が好ましい。他方、最大装置出力圧力は、患者に過膨張肺及び場合により肺破裂の発生する圧力より幾分低い圧力である。安全管路は、例えば、持続気道陽圧(CPAP)規定圧力又は二段階気道陽圧(bi-level PAP)療法に使用される気道吸気陽圧(IPAP)及び呼気状態気道圧力(EPAP)規定圧力を決定する圧力制御とは異なる機能を有する。即ち、気道比例陽圧装置(気道比例陽圧(PPAP)回路28の影響を受ける)を通常使用する間に、管理すべき下方規定圧力及び上方規定圧力を設定する代わりに、最大圧力設定制御装置38及び最小圧力設定装置40は、超えてはならない絶対安全(フェイルセーフ)最小出力圧力限界値及び絶対安全(フェイルセーフ)最大出力圧力限界値を設定する。このように、例えば、処方圧力制御装置等の他の装置構成部が故障した場合に、患者に物理的な傷害を与える潜在的な危険性を効果的に除去できる。
【0045】
本発明では、気道比例陽圧(PPAP)回路28は、基礎圧力制御装置42と、吸気利得設定制御装置44と、呼気利得設定制御装置46とを含む追加された本質的な制御装置の影響を受ける。基礎圧力制御装置42は、呼気の始期及び終期に気道開通を維持するのに十分な二段階療法での呼気状態気道圧力(EPAP)レベルに概念上等しく、通常零より大きいか零に等しい基線圧力(Pbase)を確立する。吸気利得設定制御装置44により検出された吸気流量に適用すべき抵抗利得(GainInsp)を選択できる。同様に、呼気利得設定制御装置46により検出された呼気流量に適用すべき抵抗利得(GainInsp)を選択できる。
【0046】
気道比例陽圧(PPAP)療法及び気道比例陽圧(PPAP)装置10は、広義には、鼻界面材、鼻及び口腔界面材、口腔界面材又は気管界面材を通して患者に圧力を供給して、睡眠時無呼吸症候群(OSAS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)及び他の呼吸疾患を治療する新規な装置を構成する。患者に供給される圧力は、患者への気体流量の関数である。その関数を下式に表す:
Pdelivered=Pbase+Gain*Flow
但し、「Pdelivered」は、患者の界面材に供給される圧力、「Pbase」は、基線圧力(零より大きいか零に等しく、概念上呼気状態気道圧力(EPAP)に等しい)、「Flow」は、流量センサにより決定される患者の概算流量、「Gain」は、流量に基づく圧力の増加に用いる定数である。利得定数は、吸気動作(正流れ)に対する一定数を精密に選択し、呼気動作(負流れ)に対する異なる一定数を選択できる。
【0047】
図3A及び図3Bは、呼吸周期の吸気段階及び呼気段階の両方で流量センサ22により検出される患者の気体流量に対して比例関係で加圧され、呼吸用気体を比例気道陽圧装置10が出力する際の流量及び圧力をそれぞれ視覚的に示すグラフである。図3Bの圧力曲線は、吸気流量及び呼気流量の両方に同一の利得を選択した場合の状況を反映する。ヨウンズ他による非特許文献2に開示された装置により、恐らく本質的に同一の圧力曲線を生ずることができ、吸気動作及び呼気動作の両方に適用できる単一の抵抗利得を使用できる。
【0048】
しかしながら、気道比例陽圧(PPAP)装置10では、吸気動作及び呼気動作に対して、別個の独立する利得を選択することができ、これにより性能の最適化、即ち呼吸動作の最小化に最も適する利得を吸気段階及び呼気段階の各々に正確に合致させることができる。このように、ヨウンズ他の非特許文献2に記載された装置の機能は、選択された吸気利得と呼気利得とが同一となる本発明の特定な比較的制限された適用法に相当する。
【0049】
しかしながら、この場合から離れて、最適な吸気利得は、最適な呼気利得にはならず、その逆も同じである。従って、気道比例陽圧(PPAP)回路28内に符号化できる下記機能により気道比例陽圧(PPAP)装置10の出力をより正確に説明する。
Pinhalation=Pbase+GainInsp*Flow
及び
Pexhalation=Pbase+GainExp*Flow
但し、「GainInsp」は、吸気動作(正流れ)間に流量に基づいて圧力を上昇する定数、「GainExp」は、呼気動作(負流れ)間に流量に基づいて圧力を減少する定数である。
【0050】
通常選択される利得は、吸気動作に対し約0〜10cmH2O/リットル/秒の範囲を有する。所望又は必要により吸気動作及び/又は呼気動作に対してより高い増加値を選択できるが、呼気に対して選択できる利得は、例えば、0〜4cmH2O/リットル/秒の範囲の値で吸気利得より通常低い。
【0051】
選択される利得値に関係なく、通常の呼吸パターンから誘導される流量信号を適用することにより、呼吸気体圧力は、吸気動作間にPbaseより高く上昇し、呼気動作間にPbaseより低下する。即ち、呼気動作の始期及び終期と同様に吸気動作の始期及び終期で患者の呼吸気体流が零に近いときに、出力圧力はPbaseに接近する。
【0052】
図4A及び図4Bは、呼吸周期の吸気段階及び呼気段階の両方で異なる利得を選択したときに圧力出力曲線上に生ずる効果を明らかに例示する。GainInsp(a)、GainInsp(b)、GainInsp(c)及びGainInsp(d)は、吸気動作間に印加できる無限の幅のある利得値のいくつかを減少順序で表す。同様に、GainExp(e)、GainExp(f)、GainExp(g)及びGainExp(h)は、増大する呼気利得値を示す。異なる利得設定では、いかなる数の波形式も発生できる。例えば、GainInspに対して高く設定でき、GainExpに対して低く設定でき、その逆も成立し、吸気流量及び呼気流量に対する利得の設定を同一にすることができる。
【0053】
本発明の実施の形態では、気道比例陽圧(PPAP)療法は、呼吸周期間のいかなる所与の瞬間にも気道虚脱崩壊の防止に必要な圧力のみを提供する目的がある。これにより、一般的に、負の気道吸入ピーク圧力を検出したときのみ適当な時期に最大圧力を適用し、正の気道呼気ピーク圧力を検出したときのみ適当な時期に最小圧力を適用する。呼吸周期間の他の全時間に、気道比例陽圧(PPAP)装置は、最大圧力と最小圧力との間の範囲の可変圧力で患者の呼吸動作に応答して空気を供給する。前記のように、気道比例陽圧(PPAP)治療は、選択された利得と瞬間的な流量(吸気及び呼気)との積を零又はそれより大きい基礎圧力に連続的に加えて、気道比例陽圧(PPAP)装置の瞬間的な出力圧力を作成する過程をも含む。吸気及び呼気に対する同一の利得を選択できるが、吸気及び呼気に対して異なる利得値を個別に選択することもできる。基線圧力は、気道組織構造、筋肉の緊張状態及び身体状態から生じるいかなる機械的な圧潰力も克服するのに必要な圧力である。換言すれば、基線圧力は、呼気気道陽圧又は二段階の気道比例陽圧(PPAP)療法に通常使用される「呼気状態気道圧力(EPAP)」にほぼ等しい。
【0054】
これに関連して、図5Bは、単一の呼吸周期にわたり従来の持続気道陽圧(CPAP)及び二段階気道陽圧(bi-level PAP)装置と比較して気道比例陽圧(PPAP)装置10によって、発生する圧力の出力曲線を示す。点48(ピーク吸気流)、点50(呼気開始)及び点52(呼気終期)で適切な気道拡張吸気圧力及び気道拡張呼気圧力を印加する限り、呼吸周期の間の他の全時間で従来の持続気道陽圧(CPAP)又は二段階の気道陽圧(bi-level PAP)療法により供給される圧力より低い圧力が通常供給される。図5Bの「気道比例陽圧(PPAP)」曲線は、この減少出力圧力を表す。図5Bのハッチング領域は、通常の呼吸周期間に、二段階気道陽圧(bi-level PAP)の比例気道陽圧(PPAP)、気道吸気陽圧(IPAP)及び呼気状態気道圧力(EPAP)段階により印加される圧力の相違を反映する。ハッチング領域は、比例気道陽圧(PPAP)に起因する呼吸動作又は動作軽減を概念化して示すことができる。期待される動作軽減により、比例気道陽圧(PPAP)により支援される患者に大きな安心感が与えられ、呼吸治療に対する協力が増加する。従って、本発明による比例気道陽圧(PPAP)療法は、患者の安心感(及び治療への協力)により持続気道陽圧(CPAP)又は二段階気道陽圧(bi-level PAP)療法による治療法による治療効果を上回る新規な呼吸不全治療効果を示す。
【0055】
再び図1に示す比例気道陽圧(PPAP)回路28の指令信号54に応答して圧力制御装置24は、連続的に制御されかつ可変圧力を発生する。次に、指令信号54は、流量センサ22、漏洩検出装置32、基礎圧力制御装置42、吸気利得設定制御装置44、呼気利得設定制御装置46及び他の実施の形態で後述する圧力変動制御装置56からの1つ又はそれ以上の出力誘導値の積である。
【0056】
通常の呼吸では、呼吸気体流が発生する前に、負の気圧勾配を発生しなければならない。従って、気道に発生する負圧波形は、吸気動作の開始時に先行して、吸気流を誘発しなければならない。例えば睡眠時無呼吸症候群(OSAS)に特有の不安定な気道では、適切な補償処置によって、適応できない限り、負圧勾配と吸気流開始とが非同期状態となり、気道内の負圧を克服するのに十分な圧力(低流量のため)を比例気道陽圧(PPAP)療法が生成せずに、全気道崩壊又は部分気道崩壊が発生することがある。多くの方法によりこの課題を解決できる。例えば、より高い比例気道陽圧(PPAP)基線圧力を使用して、圧力を増加し、吸気動作の開始時に気道を拡張し支えることができる。別法として、図6A及び図6Bに示すように、吸気動作の開始時に比例気道陽圧(PPAP)法を実施する十分な流れが発生するまで、一時的に圧力を増加して気道を拡張支持することが可能である。本発明では、吸気流が増加するとき、吸気動作の初期段階の間に気道を拡張支持する圧力を加えるいくつかの現実的な方法を提供する。
【0057】
比例気道陽圧(PPAP)回路28に作動接続された圧力変動制御装置56を使用して、吸気動作の初期段階に所望の高圧力波形を選択し、一時的に圧力を増加できる。これに関連して、吸気動作初期の出力圧力の最小値として、吸気動作間の出力圧力に利用できる下記代替式に示す変動圧力を使用できる。
Pinhalation=以下のより大きい方:
Pbase+GainInsp*Flow
又は
Pbase+Pprofile
但し、「Pinhalation」は吸気動作間に患者の界面材に供給される圧力、「Pbase」は、基線圧力(概念上呼気状態気道圧力(EPAP)に等しい)、「Flow」は、患者の見積気体流量、「GainInsp」は、吸気動作(正流れ)間に流量に基づいて圧力を増加する定数、「Pprofile」は、吸気動作の開始時に気道を拡張支持する圧力変動関数である。この種の圧力変動関数は、例えば図6Bの点線58で示すように、一定、即ちステップ関数、経時変化関数(例えば図6Bの点線60で示す後方傾斜変化)又は他の形状関数でよい。
【0058】
別法として、吸気動作の予め決められた初期部分の間に出力圧力を制御する専用圧力変動特性を使用できる。下式は、この種の制御条件で吸気動作間に発生する装置出力圧力を示す。
Pinhalation=Pprofile呼吸開始からXまでの圧力特性
及び
Pinhalation=Pbase+GainInsp*Flow Xから呼気開始までの流量
但し、「Pinhalation」は、吸気動作間に患者の界面材に供給される圧力、「Pbase」は、基線圧力(概念上呼気状態気道圧力(EPAP)に等しい)、「Flow」は、患者の見積気体流量、「GainInsp」は、吸気動作(正流れ)間に流量に基づいて圧力を増加する定数、「Pprofile」は、吸気動作の開始時に気道を拡張支持する圧力特性を生成する全ての関数である。前記関数は、例えばステップ関数のように一定、例えば後方傾斜変化のように経時変化関数又は他の形状関数でもよい。「X」は、曲率、ピーク流量からの低下百分率、積分値、微分値(導関数)前呼吸分析若しくは流量分析と時間との組合せ等の流量信号の解析又は時間により決定される予め選択された過渡点である。
【0059】
比例気道陽圧(PPAP)装置10は、一回呼吸量、吸気時間、呼気時間、ピーク圧力、ピーク流量、O2飽和値(外部電源からの入力電圧として)、複数の圧力(外部電源からの入力電圧として)、面体圧力、見積漏洩量等の要因及び例えばPbase、Auto GainInsp、GainInsp、GainEsp、気道吸気陽圧(IPAP)及び呼気状態気道圧力(EPAP)等の装置要因を測定しかつ記憶装置62(図1)内に記憶する性能を有する。前記要因は、限定的列挙でなく、他の要因も記憶装置62内に記憶できる。
【0060】
患者が要求を変更することにより発生する問題を解決する本発明の装置による別の気道陽圧供給法は、比例気道陽圧(PPAP)の有益な特徴を図7A及び図7Bに示す持続気道陽圧(CPAP)等の更に制御される療法に組み合わせることにある。
【0061】
持続気道陽圧(CPAP)では、単一レベルの圧力を発生し全睡眠時間中に患者に供給される。比例気道陽圧(PPAP)を持続気道陽圧(CPAP)に好適に組み合わせて、呼気間に患者に供給される圧力を低下できる。組み合わされる比例気道陽圧(PPAP)−持続気道陽圧(CPAP)の下で供給される圧力に下式が得られる:
Pinhalation=CPAP
及び
Pexhalation=CPAP+GainExp*Flow
但し、「CPAP」は、持続気道陽圧、「Flow」は、流量、「GainExp」は、呼気動作(負流れ)間に流量に基づいて圧力を減少する定数である。
【0062】
本実施の形態では、治療の全期間、持続気道陽圧(CPAP)を固定することができ又は処理期間を通じて持続気道陽圧を変更できる点に留意すべきである。例えば、患者の監視状態、圧力支援装置の状態又はその両方に基づいて持続気道陽圧を変化させるオートタイトレーティング持続気道陽圧(auto-titrating CPAP)を患者に供給することは公知である。従って、本発明は、全てアクセ他名義の特許文献4、特許文献5及び特許文献6又はルマース他名義の特許文献7等に開示される従来のオートタイトレーション技術を使用して持続気道陽圧を決定する吸気動作間のオートタイトレーティング持続気道陽圧と、呼気動作間の比例気道陽圧とを組み合わせることも企図する。
【0063】
更に、比例気道陽圧−持続気道陽圧の組合せを使用すると、患者の快適性が増大することが判明した。患者の流量が零に到達する前、吸気動作から呼気動作への動機を検出する従来の動機検出技術を使用するとき、患者の快適性が増大する。換言すれば、零流量点ではないが、零流量点の僅かに前の時間に、患者の呼気動作が開始される。例えば、圧力支援装置は、図7Aの時点「p」で患者が呼吸周期の呼気段階にあると判断できる。
【0064】
患者流量が正の時点「p」にある呼気圧力Pexhalationが算出されると、徐々に圧力を減少し又は「圧力を除去」すべきとき、患者は、圧力増加を受けるであろう。これは、流量が実際に零未満になるまで、呼気圧力Pexhalationの算出を遅延させて回避できる。しかしながら、患者は、圧力除去の遅延を感じることができる。従って、本発明の他の実施の形態では、吸気動作から呼気動作までの動機で呼気圧力Pexhalationを下式の通り算出する。
Pexhalation=CPAP+GainExp*(Flow-FlowOffset)
但し、「Flow」は、実時間患者流量、「FlowOffset」は、吸気間の患者流量(正流の場合)の最終値に相当する。本質的に、FlowOffset値によって、図7Aの時点「p」での呼気圧力Pexhalationを算出できるが、FlowOffset値を使用してFlowOffset値に等しいか又はこれより大きい流量を減算することにより、この点での流量が正である事実を説明できる。Flowが正の場合だけ、FlowOffsetを使用してPexhalationが算出される。別法として、FlowOffsetを除去し又は零に設定できる。
【0065】
呼気段階の間にFlowOffset値を減少して、呼気の終期、即ち患者流量が増加して零に戻るときまでには、オフセット値を確実に零に戻して、その時点で除去圧力を零に戻さなければならない。全呼気段階にわたって周期的に又は連続的にFlowOffsetを減少できる。
【0066】
図8A及び図8Bは、有効な治療圧力波形を形成することを示す多くの方法で比例気道陽圧(PPAP)を二段階気道陽圧(bi-level PAP)療法と組み合わせられることを示す。前記比例気道陽圧(PPAP)−持続気道陽圧(CPAP)の組合せ療法とほぼ同様であるが、呼気間に圧力を低下する比例気道陽圧(PPAP)法を使用する一適用例がある。比例気道陽圧−二段階気道陽圧の複合圧力を供給する結論式を下記に示す:
Pinhalation=IPAP
及び
Pexhalation=EPAP+GainExp*Flow
但し、IPAPは、気道吸気陽圧、EPAPは、呼気状態気道圧力、Flowは、流量、「GainExp」は、呼気(負流れ)間に流量に基づいて圧力を減少する定数である。
【0067】
比例気道陽圧(PPAP)を二段階の療法に併合する他の方法は、図9A及び図9Bに示すように、吸気周期の前段で患者に気道吸気陽圧(IPAP)を適用し、呼吸周期の後段で比例気道陽圧(PPAP)を適用するものである。気道吸気陽圧(IPAP)及び流量に基づき各呼吸に対して、GainInspは下式により自動的に算出される:
Pinhalation(t0〜t1)=IPAP
及び
Pinhalation(t1〜t2)=Pbase+AutoGainInsp*Flow
及び
Pexhalation=Pbase+GainExp*Flow
但し、「Flow」は、見積流量、「t0」は、呼吸開始時点、「t1」は、見積流量が吸気ピーク流量の予め決められた百分率である時点、「t2」は、呼気開始時点、「IPAP」は、連続的に印加される気道吸気陽圧、「Pinhalation(t0〜t1)」は、時点t0からt1まで患者に供給される圧力、「Pbase」は、連続的基礎圧力、「AutoGainInsp」は、時点t1での(IPAP-Pbase)/Flowに等しく、「Pinhalation(t1〜t2)」は、時点t1からt2まで患者に供給される圧力、「GainExp」は、呼気間に患者に供給される圧力を減少する定数、「Pexhalation」は、呼気間に患者に供給される圧力である。
【0068】
図3A〜図9Bに示す流量出力曲線及び比例気道陽圧(PPAP)圧力出力曲線は、単一の呼吸周期の吸気段階と呼気段階との間に陽圧供給装置が出力する圧力及び流量を示す。比例気道陽圧(PPAP)曲線及び流量曲線は、勿論、下記のように、特に十分に自動化された比例気道陽圧(PPAP)療法の下に、患者の呼吸条件により呼吸周期から呼吸周期まで幾分変化するであろう。更に、拡張治療期間の種々の段階に関連する呼吸周期の間、特に睡眠時無呼吸症候群(OSAS)治療の間に、幾分大きい変動が発生することもある。
【0069】
図2は、本発明による比例気道陽圧(PPAP)装置10'の他の好適な実施の形態を示す。加算気道吸気陽圧(IPAP)/呼気状態気道圧力(EPAP)、二段階比例気道陽圧(bi-level PPAP)回路64を除き、比例気道陽圧(PPAP)装置10'は、比例気道陽圧(PPAP)装置10に対して構造及び機能の点で同一である。本実施の形態では、流量センサ22からの出力66は、二段階気道陽圧(bi-level PAP)回路64に供給される。二段階気道陽圧回路64は、例えば特許文献3、特許文献8及び特許文献9に開示される従来の回路を使用でき、前記特許の内容を本明細書に引用する。二段階比例気道陽圧回路64からの出力68は、比例気道陽圧(PPAP)回路28に送られる。患者が息を吸い込んでいる場合、出力68は、気道吸気陽圧(IPAP)信号から成り、患者が息を吐き出している場合、出力68は、呼気状態気道圧力(EPAP)から成る。比例気道陽圧(PPAP)回路28の論理は、比例気道陽圧(PPAP)−二段階療法の前記組合せのうちの予め選択された一つに従ってこの入力を利用して、所望の圧力指令信号54を発生する。
【0070】
本発明では、基礎圧力、流量及び利得(及び使用すれば圧力変動)により患者に供給する圧力が決定される。所与の患者条件に対し、気道を安定化する必要性に応じて、これらの設定値を調整できる。睡眠時無呼吸症候群(OSAS)では、患者の周期的な条件、即ち最低限度でも瞬間的な条件は、睡眠状態及び体位によって変化する。従って、一部の睡眠期間の間では設定値は十分良好に機能しても、異なる時間にも同様には機能するとは限らない。換言すれば、最も不安定な状態で気道を拡張支持する設定値によって、より安定な時間中に必要なレベルより高い圧力を付与するかもしれない。同様に、その期間中の1時点で良好に機能する設定値は、他の時点では不十分かもしれない。
【0071】
本発明は、比例気道陽圧(PPAP)療法の最適化に対して患者が変化する必要性による影響を最小にするいくつかの方法を提案する。その一方法は、利得、圧力変動及び基線圧力を自動的に調整して患者の要求に合致させることである。この調整は、例えば大きさ、形、微分値、積分値(容積)、圧力、鼾、動脈の酸素飽和度、吐出CO2、気道直径又は他の要因等の流量に関する患者要因の分析値に基づき行うことができる。
【0072】
前記要因(パラメータ)の1つ又はそれ以上を使用して、陽圧供給装置のGainInspを調整し、部分的な気道の呼吸障害(低下)を防止できる。この装置の目標は、以下の患者条件のいずれにも応答するGainInspを増加することにある:
・吸気流量の減少、
・吸気容積の減少、
・流量信号分析又は圧力信号分析により定まる気道抵抗の増加、
・圧力変化又は音の変化により示される気道不安定性、
・動脈中の酸素飽和度の低下、又は
・気道直径の減少
また、本発明による陽圧供給装置では、これらの条件が存在しない場合、最小のGainInspを維持できる。
【0073】
また、本発明による陽圧供給装置では、基礎圧力(Pbase)を調整して、気道の完全な崩壊(呼吸停止)又は危険な圧潰(危険な呼吸低下)を防止できる。流量信号の分析及び/又は反射圧力波又は圧力と流量との組合せにより呼吸停止を検出して、気道開通時期を決定できる。更に、気道圧潰又は呼吸運動の欠陥の何れかによって、呼吸停止の発生を決定することが重要な場合もある。呼吸妨害事象を検出した場合、基礎圧力を増加して、気道を拡張支持できる。本発明の陽圧供給装置の他の性能は、前記の条件が存在しない場合に、最小のPbaseを維持することである。
【0074】
また、本発明の陽圧供給装置では、変動圧力(Pprofile)を調整して吸気動作の開始時に呼吸停止又は呼吸低下を防止できる。このように、本発明の陽圧供給装置では、気道抵抗の増大、気道不安定性を示す圧力変動若しくは音の変化、動脈内の酸素飽和度の低下、気道直径の減少又は吐出されるCO2の変化等を示す吸気流量の減少、呼吸容量の減少、流量波形分析に応答して圧力(Pprofile)を増加できる。本発明は、前記の条件が存在しない場合、最小圧力変動を維持する機能がある。
【0075】
図10は、本発明により構成されかつ十分に自動化された比例気道陽圧(PPAP)装置10"の現在好適な実施の形態を示す。図1の比例気道陽圧(PPAP)装置の構造及び機能とほぼ同様に、比例気道陽圧(PPAP)装置10"は、マイクロプロセッサ又は中央制御装置70を備え、中央制御装置70は、連続的帰還信号として流量センサ22からの出力信号72を利用して、Pbase、Pprofile、GainInsp及びGainExpを必要に応じて連続的に調節できる。しかしながら、呼吸気体流に関連する又は関連しない前記患者要因の何れかに応答して、連続的な装置制御機能を行うように中央制御装置70を構成できる。
【0076】
また、比例気道陽圧装置10"は、所定期間の間のピーク流量及び/又は一回呼吸量の減少により呼吸低下を検出し、所定期間の間の微少流量により呼吸停止の発生を検出する性能がある。例えば、呼吸低下を検出するために、吸気ピーク流量又は一回呼吸量の短期平均値(例えば3息平均値)と、ピーク流量又は一回呼吸量の長期平均(例えば20息以上)とを比較するように中央制御装置70をプログラム制御できる。25%を超える減少値を検出する場合、装置は呼吸低下の存在を決定する。漏洩量が正しく見積もられかつ安定する場合にのみ、この決定は好適に行われる。従って、漏洩量の大きな変化又は漏洩回復初期のデータは無視される。
【0077】
更に、本発明は、呼吸停止の間に、気道が開放(中心性呼吸停止)しているか又は遮断(遮断性呼吸停止)しているかを決定する方法を含む。相当の持続時間の呼吸停止を一度検出すると、この装置は、中央制御装置70の指令に従ってGainInspを2cmH2Oだけ自動的に増加し、約1秒間待ってから圧力を初期値に減少する。この圧力変化の間に、相当の流量変化が発生すれば、この装置は気道が開いている(中心性呼吸停止)と判断する。相当の流量変化が発生しなければ、この装置は気道が遮断されている(閉鎖性呼吸停止)と判断する。この装置は、周期的な時間間隔で全持続時間の間各呼吸停止を連続的に監視して、呼吸停止の特質を決定する。
【0078】
好適な実施の形態では、比例気道陽圧(PPAP)装置10"の制御は、下記のように自動的に調整される。呼吸低下のとき、2cm/リットル/秒だけGainInspを増加する。閉鎖性呼吸停止のとき、1cmH2OだけPbaseを増加する。相当持続時間閉鎖性呼吸停止を検出する限り、この装置は、Pbaseを増加し続ける。必要に応じて5息が経過するまで、この装置は、再びGainInspを増加しない。30息の期間を超えて呼吸低下又は呼吸停止が起こらない場合、1cm/リットル/秒だけGainInspを減少する。50息の期間を超えて呼吸低下又は呼吸停止が起こらない場合、1cmH2OだけPbaseを減少する。更に、患者の呼吸気体流量が零より大きい間、必要又は所望に応じて、この装置は、酸素O2の供給を制御できる。
【0079】
図示しないが、本発明の更なる実施の形態では、十分に自動化された比例気道陽圧(PPAP)と、持続気道陽圧(CPAP)及び/又は二段階気道陽圧(bi-level PAP)療法とを組み合わせることができる。これらの場合に、十分に自動化された前記比例気道陽圧(PPAP)装置内のGainInspを制御する同一の論理を使用して、持続気道陽圧(CPAP)又は気道吸気陽圧(IPAP)を制御できる。同様に、十分に自動化された比例気道陽圧(PPAP)について説明した方法に類似する方法でPbaseを制御できる。
【0080】
十分に自動化された比例気道陽圧(PPAP)−持続気道陽圧(CPAP)又は比例気道陽圧(PPAP)−二段階気道陽圧(bi-level PAP)装置により、Pprofileを調整して、吸気動作の開始時に呼吸停止又は呼吸低下を防止できる。従って、この種の装置では、患者の下記条件のいずれかに直面しても、持続気道陽圧(CPAP)、又は気道吸気陽圧、IPAP又はPprofileを増加できる:
・吸気流量の減少、
・吸気容積の減少、
・流量信号分析又は圧力信号分析により決定される気道抵抗の増加、
・圧力変化又は音変化により示される気道不安定性、
・動脈酸素飽和度の低下、
・気道直径の減少。
前記の条件が存在しないとき、持続気道陽圧(CPAP)又は気道吸気陽圧(IPAP)は最小レベルに維持される。
【0081】
従って、比例気道陽圧(PPAP)療法を使用しかつ呼気流量に応答する比例気道陽圧(PPAP)を使用すれば、睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の治療で呼気間に圧力をPbaseより低く減少する前記方法と同様に、呼気段階の全終期を通じて患者の呼気終末陽圧(PEEP)レベルより少ないレベルに呼気間に印加される圧力を更に減少できる。このように、呼気段階で印加される圧力を呼気終末陽圧(PEEP)より低く減少することにより、呼気状態気道圧力(EPAP)間に印加される一定の呼気段階圧力と比較して呼吸動作を減らし、患者の快適性を増進できる。実際に、呼気終末陽圧(PEEP)を使用するいかなる換気モードにも比例気道陽圧(PPAP)を適合できる。この適用例は、呼気終末陽圧(PEEP)による圧力支援、呼気終末陽圧(PEEP)による比例援助換気(PAV)又は呼吸援助療法での呼気終末陽圧(PEEP)の他の応用法を含むことができる。
【0082】
前記の通り、本発明は、患者の圧力支援の要求に依存する種々の吸気利得又は呼気利得を提供することを企図する。例えば図4B及び明細書の関連部分を参照されたい。本発明の他の実施の形態では、患者が利得(吸気利得又は呼気利得)を選択することにより、使用者が種々の利得を試みて、何れの利得が最適な圧力支援治療かを決定できることを企図する。医師が吸気陽圧、従って吸気利得を設定し、患者は、吸気利得を変更すべきでないと通常認識されるので、例えば比例気道陽圧(PPAP)−持続気道陽圧(CPAP)の組合せを使用するとき、患者が呼気利得を選択するのに本実施の形態は最適であろう。
【0083】
例えば、本発明は、使用者が最初(第1)の呼気利得の設定値を選択し、最初の呼気利得で圧力支援装置を使用することを企図する。患者に質問事項を回答させる従来法を使用して、最初の呼気利得で作動する圧力支援装置の有効性、快適性又はその両方を監視できる。圧力支援装置を提供する方法及び有効な質問事項を開示する特許文献10を参照されたい。後続の治療期間では、使用者は、最初の呼気利得と異なる第2の呼気利得を選択する。その後、第2の呼気利得で作動する圧力支援装置の有効性、快適性又はその両方を監視し、第1の呼気利得を使用して得られた結果と比較できる。更に他の利得を使用してこの過程を反復してもよい。前記方法では、最適な利得を決定できる。また、本発明では、前記技術を使用して使用者が基礎圧力を調節し、最適レベルを決定できることも企図する。
【0084】
更に、本発明は、光学利得又は基礎圧力の帰還量を前記のように患者が決定することを自動的に実行できることも企図する。例えば、種々の治療期間の間に異なる利得又は基礎圧力を自動的に提供するように、圧力支援装置をプログラム制御することができる。各治療期間の後、使用者は、その治療期間の有効性、快適性又はその両方を測定する調査を行うように促される。十分なデータが収集された後、患者に最適な調査結果に基づいて、圧力支援装置は、利得又は基礎圧力を自動的に選択できる。
【0085】
更に、吸気段階では、比例気道陽圧(PPAP)療法に対して酸素の管理を容易に組み合わせて、補助的酸素を必要とする慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者を治療できる。
【0086】
本発明は、患者に供給する気体圧力を時間と共に変化するように制御できる。例えば、本発明の一実施の形態では、全期間にわたり第1の最小圧力から所望の治療圧力まで患者に供給する圧力を増加できる。この傾斜圧力増加により、時間を通じて治療圧力まで増加される比較的低い圧力の下で患者に睡眠に入る時間を与えることができる。その後、圧力は増加して、患者が眠った後に治療圧力が印加されている。患者が起床しようとする直前に圧力を治療圧力から減少させて、朝には逆の過程を実行できる。図10に示す傾斜制御装置120は、比例気道陽圧(PPAP)回路28に指令信号を付与し、傾斜周期に従って圧力を供給する手動動作制御装置を略示するものである。また、中央制御装置70の出力により傾斜制御装置120を調整できる。傾斜制御装置120を使用して、圧力傾斜期間、傾斜圧力開始時間、傾斜圧力終了時間、圧力傾斜形状等の圧力傾斜関数(圧力傾斜作用)に関する要因(パラメータ)を設定できる。
【0087】
患者への圧力を制御する他の方法のみならず、1つ又はそれ以上の圧力傾斜作用により患者に供給される圧力レベルを制御する技術の例は、本願明細書の一部として参照される特許文献11及び特許文献12並びに特許文献13に開示される。前記米国特許に開示される多くの技術を本発明の装置及び方法に組み合わせて、患者の治療に必要な最適の治療法を提供できる。
【0088】
本発明の更に他の実施の形態では、比例気道陽圧(PPAP)回路28及び/又は中央制御装置70に警報装置122が接続される。様々な状況の結果を報知するように、警報装置122を制御して作動させることができる。しかしながら、本発明の好適な実施の形態では、自動的に決定されかつ所定値範囲から外れる利得に対応して、警報装置122を作動できる。
【0089】
本発明では、前記AutoGainInsp等の自動的に決定される利得の値を限定して、自動的に決定される利得が、所定の限界値を超えること、例えば患者に供給される過度に高い圧力を発生する限界値を超えることを防止できる。予め決められた期間にわたり前記限界値を変更して、利得自体を変更することもできる。また、予め決められた期間にわたり自動的に決定される利得で実施できる変更値を変更制御して、自動的に決定される利得が予め決められた期間にわたり予め決められた値を超えて変化することを防止できる。
【0090】
鬱血性心不全(CHF)の治療に比例気道陽圧(PPAP)を使用する場合に、本発明では、中間圧力及び呼気動作を減少させて、心臓を安静させるのと同一レベルの圧力を供給する。心臓の前負荷及び後負荷の減少に必要な圧力にほぼ等しい正の基礎圧力(好ましくは5〜10cmH2Oの範囲)を印加することにより、本発明では、心臓の負担を軽減する。吸気動作間に呼吸動作に比例する付加的陽圧を吸気気体に印加することにより、患者は吸気動作間に発生する負圧作用を克服して吸気動作を行うことができる。通常の鬱血性心不全(CHF)患者は、正常な肺の順応性を有する点で、比例気道陽圧(PPAP)は、特に鬱血性心不全(CHF)患者に適合する。前記患者では、呼吸負荷を、多く流量信号から見積もることができる。呼気動作間に圧力を基礎圧力より低く低減することにより、患者は、心臓への治療効果を減少せずに呼気動作を減少させることができる。呼吸動作が減少して平均圧力が低下しても、正味効果による心臓に対する治療効果は同一である。
【0091】
気道圧潰を防ぐ比例気道陽圧(PPAP)療法を使用する場合と同様に、鬱血性心不全(CHF)を治療する比例気道陽圧(PPAP)療法は、心臓の前負荷及び後負荷の減少に必要な最小圧力のみを供給する。これにより、呼吸負荷がなく、心臓の前負荷及び後負荷の減少に必要な圧力に等しい基礎圧力を心臓の外部に供給すると共に、呼吸動作を最小化しながら、心臓の前負荷及び後負荷に対する呼吸負荷の影響を克服するのに必要な変動圧力を供給できる。
【0092】
呼吸器系を介して心臓の外部に陽圧を供給することは、2つの利点があり、第1に鬱血性心不全(CHF)患者の肥大した心臓を陽圧により正常に近いサイズに小型化する利点がある。心臓を正常のサイズに戻すことにより、心臓の筋肉をより効率的に動作させることができる。第2に、胸腔内に陽圧を印加することにより、身体の他の部分に血液を圧送するのに打ち勝つ心臓の圧力値を低減する。
【0093】
心臓と胸腔とは、同一圧力である。この圧力は、呼吸負荷の影響により周囲圧力付近で通常変動する。循環器系の動作圧力は、心臓がポンプ作用を行うとき、変化するが、通常の緊張作用のある患者では平均100mmHgの動作圧力を生ずる。心臓は、胸腔から加圧された循環器系に血液を圧送する力を発生しなければならない。胸腔内の圧力を増加することにより、心臓が血液を圧送しなければならない圧力値を減少できる。10cmH2O又はほぼ10mmHgである胸腔内の圧力により、10mmHg/100mmHg又はほぼ10%だけ心臓の負担を軽減できる。
【0094】
心臓に対する呼吸作用の影響として、吸気動作間に、胸部(心臓を包囲する)内の圧力は、身体の他の部分より負圧となる。この増大する負圧により、心臓が胸腔から身体に血液を圧送する圧力値を増加して発生しなければならない。吸気動作間に基礎圧力を超える圧力を供給することにより、比例気道陽圧(PPAP)は、胸腔圧力の減少を補いかつ胸部内の圧力を比較的一定に維持できる。
【0095】
呼気動作間に胸部内の圧力は、身体の他の部分より小さい負圧になる。呼気動作間に圧力を減少することにより、比例気道陽圧(PPAP)は、胸腔内の圧力の増加を補いかつ胸部内を比較的一定の圧力に維持できる。
【0096】
呼気動作間に圧力減少量を最小にしかつ増加する圧力を利用して、比例気道陽圧(PPAP)の変動圧力によって、一定圧力の使用に対しより低い基線圧力を設定して、心臓に同一の治療効果を与えることができる。呼気動作間に基線圧力を下げかつ圧力を低減することにより呼吸動作を軽減し、患者の快適性を増進できる。
【0097】
既存の持続気道陽圧(CPAP)装置について図7に示す構造と同様型式の比例気道陽圧(PPAP)装置を実施することが望ましい。既存の持続気道陽圧(CPAP)装置に適合する型式の比例気道陽圧(PPAP)装置を設けることにより患者の快適性が増進され、比例気道陽圧(PPAP)モードを含む新規な持続気道陽圧(CPAP)装置の製造と導入に伴う重大な財政的負担又は他の負担がなく患者の協力が得られる。例えば図7A及び図7Bについて説明したように、様々な方法で持続気道陽圧(CPAP)装置により比例気道陽圧(PPAP)療法を実行できる。
【0098】
呼気動作間に減少する図7に示す圧力曲線を生成するのに用いられる無効成分を減少する所定の圧力変動に切り替えれば、より経済的な方法の持続気道陽圧(CPAP)装置により比例気道陽圧(PPAP)療法を実施できる。患者の呼吸周期の呼気段階の間に持続気道陽圧(CPAP)装置が異なる状態で適用する一定の持続気道陽圧(CPAP)をこの圧力変動が交換される。本発明の好適な実施の形態では、所定の圧力変動は、患者の通常の流量にほぼ符号する圧力波形状を有する。
【0099】
図11A及び図11Bは、変動圧力を発生する単純化法を利用する本発明の他の実施の形態による装置圧力の出力曲線を示す図7A及び図7Bに類似する流量と圧力を示すグラフである。図11Aの流量信号80は、患者の吸気段階82及び呼気段階84を示す。図11Bに示すように、吸気段階82の間に持続気道陽圧(CPAP)86が供給される。呼気段階の間、圧力支援装置が制御され、予め決められた変動圧力88に続く減少圧力が供給される。持続気道陽圧(CPAP)と比例気道陽圧(PPAP)とを組合せて供給される圧力を表す式は、次の通りである:
Pinhalation=CPAP
及び
Pexhalation=CPAP-Predetermined Pressure profile
持続気道陽圧(CPAP)圧力の減少に使用される予め決められた圧力変動(Predetermined Pressure profile)は、呼吸治療専門家が0〜4cmH2Oの範囲内で通常選択する量Mと、図7Bの圧力曲線とは異なり患者の瞬間的な流量又は容積に基づいて直接決定されない持続時間Dとを有する。量Mは、一定の持続気道陽圧(CPAP)値からの降下圧力を示す。持続時間Dの値は、患者の平均呼気期間の分数であることが好ましい。
【0100】
異なる量、持続時間又はこれらの両方を有する予め限定された多数の変動圧力値を持続気道陽圧(CPAP)/比例気道陽圧(PPAP)装置に記憶させて患者に供給できる。図11Bは、各量M1、M2及びM3並びに持続時間D1、D2及びD3を有する3つの予め決められた変動圧力P1、P2及びP3を示す。本発明の好適な実施の形態では、例えば図3A及び図3Bに示すように、流量又は容積に基づく比例気道陽圧(PPAP)から発生する変動圧力にほぼ符号する圧力を呼気動作間に患者に供給するように変動圧力が選択される。図11Bに示すように、圧力は、呼気動作の開始時に急激に低下し、その後基線の持続気道陽圧(CPAP)に向かって徐々に上昇する。
【0101】
持続気道陽圧(CPAP)/比例気道陽圧(PPAP)装置を使用するこの実施の形態は、比例気道陽圧(PPAP)装置及び前記技術の場合のように、患者からの流量信号又は圧力信号に基づいて患者に供給する流量及び/又は圧力を制御せず、単に開始時又は吸気動作及び/又は呼気動作を検出するに過ぎないので、この実施の形態に必要なセンサは、前記実施の形態ほど精密でなくともよい。例えば、呼気状態及び呼気状態を決定する高価な呼吸流量計をサーミスタ又は熱電対に置き換えることができる。また、モータの速度を制御して呼気段階の間に患者に供給される圧力を変動化させれば、圧力制御弁を省略できる。
【0102】
予め決められた変動圧力を使用して、呼気動作間に持続気道陽圧(CPAP)を減少する実施の形態について説明したが、その方法を二段階圧力支援装置に適用して、例えば予め決められた変動圧力により二段階呼気状態気道圧力(bi-level EPAP)を減少して、図8Bに示す圧力曲線を達成できる。
【0103】
比例気道陽圧(PPAP)を実行する際に、ある値を超えて、例えば2〜3cm/リットル/秒の範囲を超えて利得を設定する場合に、圧力支援装置から発生する圧力が不安定になる傾向のあることが判明した。即ち、図12に示すように、患者の呼気段階94の間に患者に加えられる圧力波形92内に圧力振動90が発生する。前記圧力振動は、呼気段階の開始に続く最初の圧力低下の後に通常発生し、患者の気体流量と得られる圧力減少との相互作用の結果発生すると考えられる。
【0104】
この圧力振動が発生する可能性があっても、呼気段階の残り時間の間に、極力円滑な変動圧力を維持しながら、呼気動作の開始時に患者に供給される圧力を比較的大きく減少することが望ましい。本発明の一実施の形態では、最大圧力減少する呼気動作の間に患者に下式による圧力を供給することによって、圧力減少を達成できる:
Pexhalation=以下のより大きい方:
Pbase-(GainExp*Flow)
又は
Current Pressure、
但し、「Current Pressure」は、呼気段階間の実時点で患者に供給される圧力である。
【0105】
図13は、前記技術を使用して呼気段階の間に発生する振動を除去する点を除き、図12に示す変動圧力92に類似する変動圧力92'を示す。例えば、時点95での最大減少圧力の後に時点96の圧力は、圧力振動により直前の圧力から減少し始める。前記振動防止技術は、Pbase+GainExp*Flowの算出圧力が時点96での圧力に満たないその後の全時点で時点96の圧力を置換することにより、この圧力減少を防止し、これにより、算出圧力が時点96での実時間の圧力より大きくなる時点100まで実時間の圧力、即ち時点96の圧力に符号する安定領域98を形成する。本発明の目的に対して、Flowは、呼気段階の間に負の流れと判断されることに留意すべきである。
【0106】
実時間の圧力及び算出圧力より常に大きい圧力を患者に確実に供給することによって、呼気動作間に患者が受ける圧力は、振動しない。患者に供給すべき圧力が実時間の圧力未満に減少し始める場合、圧力支援装置は算出圧力を使用せずに、患者に実時間の圧力を供給し続けることにより、実時間の圧力に満たない圧力減少を防止する。
【0107】
しかしながら、第1の最小流量に到達した後、流量は第1の最小流量以下に再び低下する。例えば、患者流量が領域150で第1の最小流量に到達し、領域152で上昇した後、領域154で第1の最小流量未満に降下する例を図15に示す。この場合、患者に供給する圧力を実時間の圧力Pcurrentに固定すべきではない。その代わりに、比例気道陽圧法、即ちPexhalation=Pbase+GainExp*Flowを用いて供給圧力を計算すべきである。従って、患者流量が前の最小レベル未満まで再び降下する領域154では、供給される圧力は、Pexhalation=Pbase+GainExp*Flowとして算出される。勿論、前記の通り、本発明は、Pbaseが持続気道陽圧(CPAP)又は吸気気道陽圧(IPAP)であることを企図する。
【0108】
本発明による第2の実施の形態では、呼気段階の間に患者に供給される圧力を決定する完全に異なる算出法を使用して、圧力振動を回避できる。前記実施の形態のように、手動又は自動のいずれかで選択される利得により操作される患者流量に基づいて、患者に供給される圧力を算出する代わりに、吐出すべき量を意味する肺にまだ含まれる気体量に基づいて、患者に供給すべき圧力を算出できる。吐出すべき量は、患者内の実時間の気体容積と、安静状態の患者内の気体容積との差異に相当する。肺内の実時間の気体容積を流量信号から容易に見積ることができる。安静状態の患者内の気体容積は、従来の技術を使用して決定され、周期的に更新して確実にかつ高精度で算出できる。
【0109】
本実施の形態では、比例気道陽圧(PPAP)装置による少なくとも呼気段階の間の圧力出力を、比例気道陽圧(PPAP)回路内に符号化できる下式で表わす:
Pexhalation=Pbase(Volumeto be exhaled*GainExp)
但し、「Pbase」は、基線圧力(零以上で概念上呼気状態気道圧力(EPAP)に等しい)、「Volumeto be exhaled」は、患者内の実時間の気体容積から安静状態の患者の気体容積を引いた差、「GainExp」は、呼気(負流れ)間に圧力を減少する定数である。
【0110】
吸気段階の間の圧力出力は、前記技術を使用して決定される。図14は、上式を使用して患者に供給すべき圧力を決定する圧力曲線102を示す。図14から明らかなように、圧力曲線102は、呼気動作間に圧力を低下しかつ呼気段階の終期に圧力を基線に戻し気道圧潰を防ぐ関数を完成する。
【0111】
吐出すべき気体容量(Volumeto be exhaled)は、呼気段階の開始時に比較的大きいので、呼気段階初期の圧力低下を非常に大きくできる。患者に供給すべき圧力の算出に減衰要因を加味して、呼気段階の開始時の大きな圧力降下を平滑化することが好ましい。
【0112】
呼気段階の開始時に初期圧力降下の減衰に使用できる多くの技術が存在する。しかしながら、本発明の好適な実施の形態では、呼気段階の間に患者に供給される圧力は、下式で表される:
呼気段階の開始(t0)からXまで:
【式1】
【0113】

【0114】
Xから呼気段階の終期(t1)まで:
【0115】
Pexhalation=Pbase-(Volumeto be exhaled*GainExp)
【0116】
但し、「t」は、呼気段階の開始時に起算される実時間、「X」は、例えば曲率、ピーク流量からの降下百分率、積分値、微分値、事前の呼吸分析若しくは流量分析と時間との組合せ等の流量信号の分析又は時間により、決定される呼気段階の開始後に予め決められた過渡点である。
【0117】
図14に示すように、減衰係数t/Xを考慮して、t0からXまでの初期期間中に患者に供給される圧力を算出することにより、呼気動作の開始時の圧力降下を減少するようにX値が選択される。その後、減衰要因を考慮せず、上記2式中第2式に従って患者に印加すべき呼気圧力が算出される。従って、本発明の本実施の形態では、呼気動作開始時の初期圧力降下を確実に予想可能な要因内に維持しながら、全呼気段階にわたり圧力曲線を円滑にすることができる。
【0118】
本実施の形態では、呼気段階開始時に初期圧力降下の大きさを平滑化する他の減衰技術も使用できる。従って、本発明は、前記減衰技術に限定されない。
【0119】
本発明の一実施の形態では、前記技術を使用して決定される患者に供給すべき圧力(Pinhalation、Pexhalation)は、患者の呼吸周期の間に実質的に連続的に決定されることが理解できよう。従って、圧力支援装置は、患者に供給すべき新規の設定点圧力を連続的に算出し、かつ圧力制御装置を介して圧力支援装置を制御して設定点圧力に到達できる。更に本発明の実施の形態では、前記技術を使用して決定される設定点圧力(Pinhalation、Pexhalation)は、低域フィルタを使用して濾波される。これにより、算出された1つの設定点圧力から次の設定点圧力までの過渡変化を平滑化する。本発明の好適な実施の形態では、低域フィルタは、50ミリ秒の時定数を有する。
【0120】
本発明による更に他の実施の形態では、患者に供給される設定点圧力の変化率を監視しかつ制御して、供給される圧力の急激な変化を防止する。比例気道陽圧治療間では、設定点の変化率上の制限値は、患者に供給される圧力変化を患者がより快適になるように制限される。設定点圧力の急激な変化は、患者の自然な波形に影響を与えることがある。この影響を制限することにより、特に比例気道陽圧−持続気道陽圧の組合せでは、より快適な治療結果が得られる。また、患者に供給する圧力を過度に急激に増加すれば、呼気動作から吸気動作までの明らかな初期過渡時に有害な効果を生ずることがある。
【0121】
本発明は、上昇率、即ち圧力の増加及び/又は下降率、即ち圧力の低下を制御して、上昇率及び/又は降下率を設定制限値内に保持することを企図する。例えば、本発明は、患者に供給する設定点圧力の増加を呼気動作終期でより遅らせることを企図する。従って、呼気段階の開始時に降下率を制限する時点での上昇率より呼気段階の終期の上昇率をより制限できる。
【0122】
本発明の例示的な実施の形態では、変化率は、以下のように制御される。圧力の正変化では、算出された実時間の設定点圧力は、上昇率制限値を加えて算出された前の設定点圧力より大きければ、実時間の設定点圧力は、上昇率制限値を加えた前の設定点圧力に設定され、別法としては算出された実時間の圧力は、設定点圧力として使用される。圧力の負変化では、算出された実時間の設定点圧力は、下降率制限値を加えた前の設定点圧力未満であれば、患者に供給される実時間の圧力は、下降率制限値を加えた前の設定点圧力に設定される。別法として、算出された設定点圧力が使用される。本発明のこの特徴は、算出されたPinhalation設定点圧力又は算出されたPexhalation設定点圧力に適用して、呼吸周期の一方又は両方の段階の間に過度に鋭い圧力変化の発生を確実に防止できる。
【0123】
設定点圧力(Pinhalation又はPexhalation)を必ずしも連続的に算出する必要はないであろう。例えば、呼吸周期の異なる段階の間に前記比例気道陽圧(PPAP)法を使用して、設定点圧力を算出できる。この場合、変化率制御技術の他の率を濾波して、1つの設定点圧力から次の設定点圧力まで過渡変化を平滑化できる。
【0124】
現在最も実用的で及び好適と思われる実施の形態を図示して詳述したが、前記記載は単に説明の便宜に過ぎず、本発明を開示した実施の形態に限定されず、本発明は、特許請求の範囲内に該当すると共に、特許請求の範囲と同趣旨の変更態様並びに同等の装置を包含すること意図する。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】本発明による陽圧供給装置の機能ブロック図
【図2】本発明による陽圧供給装置の別の実施の形態による機能ブロック図
【図3A】本発明による陽圧供給装置が単一呼吸周期の吸気段階と呼気段階との両方で、患者流量に比例して加圧される呼吸用気体を出力する一般的な方法を視覚的に表す流量グラフ
【図3B】本発明による陽圧供給装置が単一呼吸周期の吸気段階と呼気段階との両方で、患者流量に比例して加圧される呼吸用気体を出力する一般的な方法を視覚的に表す圧力グラフ
【図4A】図3Aと同様に、本発明の比例気道陽圧回路の吸気−呼気利得設定制御部を選択的に調整することにより達成される複数の陽圧供給装置の出力圧力曲線をそれぞれ例示する流量グラフ
【図4B】図3Bと同様に、本発明の比例気道陽圧回路の吸気−呼気利得設定制御部を選択的に調整することにより達成される複数の陽圧供給装置の出力圧力曲線をそれぞれ例示する圧力グラフ
【図5A】図3Aと同様に、従来の呼吸支援装置の圧力出力曲線に対して、本発明による陽圧供給装置による通常の圧力出力曲線をそれぞれ対比する流量グラフ
【図5B】図3Bと同様に、従来の呼吸支援装置の圧力出力曲線に対して、本発明による陽圧供給装置による通常の圧力出力曲線をそれぞれ対比する圧力グラフ
【図6A】図3Aと同様に、吸気動作を容易に開始するために呼吸の吸気段階の初期に使用される代替圧力変動曲線をそれぞれ表す流量グラフ
【図6B】図3Bと同様に、吸気動作を容易に開始するために呼吸の吸気段階の初期に使用される代替圧力変動曲線をそれぞれ表す圧力グラフ
【図7A】図3Aと同様に、本発明の他の実施の形態により得られる陽圧供給装置の圧力出力曲線をそれぞれ表す流量グラフ
【図7B】図3Bと同様に、本発明の他の実施の形態により得られる陽圧供給装置の圧力出力曲線をそれぞれ表す圧力グラフ
【図8A】図3Aと同様に、従来の二段階気道陽圧治療を本発明による比例気道陽圧治療に組み合わせて得られる陽圧供給装置の圧力出力曲線をそれぞれ表す流量グラフ
【図8B】図3Bと同様に、従来の二段階気道陽圧治療を本発明による比例気道陽圧治療に組み合わせて得られる陽圧供給装置の圧力出力曲線をそれぞれ表す圧力グラフ
【図9A】図3Aと同様に、従来の二段階気道陽圧治療を本発明による比例気道陽圧治療と組み合わせて更に得られる陽圧供給装置の圧力出力曲線をそれぞれ反映する流量グラフ
【図9B】図3Bと同様に、従来の二段階気道陽圧治療を本発明による比例気道陽圧治療と組み合わせて更に得られる陽圧供給装置の圧力出力曲線をそれぞれ反映する圧力グラフ
【図10】本発明による陽圧供給装置の更に別の実施の形態を示すブロック図
【図11A】図7Aと同様に、簡略化された圧力変動法を利用する本発明の他の実施の形態により得られる陽圧供給装置の圧力出力曲線をそれぞれ示す流量グラフ
【図11B】図7Bと同様に、簡略化された圧力変動法を利用する本発明の他の実施の形態により得られる陽圧供給装置の圧力出力曲線をそれぞれ示す圧力グラフ
【図12】呼気間に患者に供給される振動圧力の発生状態を示すグラフ
【図13】図12に示す振動を減衰する第1の方法による圧力を示すグラフ
【図14】図12に示す振動を減衰する第2の方法による圧力を示すグラフ
【図15】呼吸周期の呼気段階の間に圧力振動を処理する別の方法を示す圧力−流量系統図
【符号の説明】
【0126】
(12)・・患者、 (14)・・気体流発生器、 (18)・・導管、 (20)・・患者界面材、 (22)・・センサ、 (24)・・圧力制御装置、 (28)・・処理手段、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体流発生器と、気体流発生器に連結されかつ気体流発生器から呼吸用気体流を患者の気道に連絡する患者界面材と、気体流発生器又は患者界面材に接続され、かつ患者界面材内の呼吸用気体流に関連する流体特性を検出して流体特性に対応する信号を出力するセンサと、気体流発生器又は患者界面材に接続され、かつ患者に供給される呼吸用気体流の圧力を制御する圧力制御装置と、入力装置と、センサから出力される信号並びに入力装置からの持続気道陽圧(CPAP)及び呼気利得GainExpを受信する処理手段とを備え、
処理手段は、吸気動作間に患者に供給する圧力(Pinhalation)を下式の通り決定し、
Pinhalation=CPAP
呼気動作間に患者に供給する圧力(Pexhalation)を下式の通り決定し、
Pexhalation=CPAP+GainExp*(Flow-FlowOffset)
但し、「Flow」は、センサにより測定される実時間の患者流量であり、「FlowOffset」は、陽圧の最終値に応答する吸気動作間の患者流量の最終値に相当し又はFlowOffsetは、零に設定され、処理手段は、圧力制御装置を制御して、呼吸周期の吸気段階の間にPinhalationに相当する圧力を供給し、呼吸周期の呼気段階の間にPexhalationに相当する圧力を供給することを特徴とする患者の気道に加圧呼吸用気体を供給する装置。
【請求項2】
患者界面材は、導管を備え、圧力制御装置は、気体を排出する導管に接続されかつ患者に供給される呼吸用気体流の圧力を制御する弁である請求項1に記載の加圧呼吸用気体供給装置。
【請求項3】
持続気道陽圧のレベルは、入力装置を介して設定される請求項1に記載の加圧呼吸用気体供給装置。
【請求項4】
持続気道陽圧レベルは、センサの出力に基づいて処理手段により決定される請求項1に記載の加圧呼吸用気体供給装置。
【請求項5】
処理手段は、圧力制御装置を制御して、呼気動作間の圧力振動を防止する請求項1に記載の加圧呼吸用気体供給装置。
【請求項6】
処理手段は、圧力制御装置を制御して、(1)Pexhalationと、(2)患者に供給される実時間圧力とのうち、最大圧力減少値がより大きい方に合致した後に、呼気動作間に圧力制御装置から患者に圧力を供給して圧力振動を防止する請求項5に記載の加圧呼吸用気体供給装置。
【請求項7】
処理手段は、患者に供給すべき呼吸用気体流の圧力の変化率を制限する請求項1に記載の加圧呼吸用気体供給装置。
【請求項8】
処理手段は、患者に供給すべき圧力の増加に対する第1の変化率制限値と、患者に供給すべき圧力の減少に対する第2の変化率制限値とを設定する請求項7に記載の加圧呼吸用気体供給装置。
【請求項9】
更に、患者に供給される呼吸用気体流の圧力が変化する間の過渡圧力を平滑化する手段を備える請求項1に記載の加圧呼吸用気体供給装置。
【請求項10】
平滑化する手段は、処理手段により圧力制御装置に供給される信号を濾波するフィルタを備え、信号は、処理手段により決定されるPexhalation又はPinhalationに相当する請求項9に記載の加圧呼吸用気体供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2006−507873(P2006−507873A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−555733(P2004−555733)
【出願日】平成15年11月25日(2003.11.25)
【国際出願番号】PCT/US2003/037697
【国際公開番号】WO2004/047621
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【出願人】(503084303)アールアイシー・インベストメンツ・インコーポレイテッド (7)