患者の位置決め装置
特に照射治療のために、患者を座った姿勢で位置決めするための装置は、動力で駆動可能な変位ユニット(3)およびこの変位ユニットと機械的に結合された患者スツール(4)を有しており、この患者スツールが交換可能なシートシェルとして形成されており、そのシートシェルの座面(6)が可逆的に変位ユニット(3)と結合されており、かつシートシェルの背もたれ(7)が放射線を透過する材料から形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力で駆動される変位ユニットと機械的に結合された患者スツールを有する、特に照射治療のために、座る姿勢で患者を位置決めする装置に関する。この種の装置は、たとえば、DE10025913A1から知られている。
【背景技術】
【0002】
DE10025913A1から知られた装置は、頭部−首領域に腫瘍を有する患者を位置決めするために設けられている。装置は、患者スツールを有しており、その背もたれが複数の駆動ユニットを介して自由支持するプラットフォームと機械的に結合されている。患者スツールは、全体として種々の軸線を中心に回動し、あるいは並進的に変位することができる。それにもかかわらず、高い位置決め精度を得るためには、患者スツールは鋼または他の高い剛性を有する材料から形成されなければならない。その極めて複雑な構造にもかかわらず、装置は、頭部−首領域に腫瘍を有する患者のためだけに設けられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、構造的に簡単な構造において拡張された利用可能性を提供する、特に照射治療のために、座る姿勢で患者を位置決めする装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、本発明によれば、請求項1の特徴を有する装置によって解決される。この装置は、患者スツールとして交換可能なシートシェルを有している。交換可能性は、シートシェルと動力で駆動可能な変位ユニットとの可逆的な結合に関する。その場合にシートシェルの座面は、変位ユニットと機械的に結合可能である。それに対して変位ユニットにシートシェルの背もたれを直接的に機械的に結合することは行われない。むしろ、背もたれは、患者を照射する場合に背もたれが透過照射できるように、形成されている。それによって装置は、患者の頭部−首領域を照射するためだけでなく、骨盤ゾーンへ至るまでの照射のためにも適している。座面の上方には、好ましくはシートシェルと動力で駆動される変位ユニットとの間の直接的な機械的結合は何ら存在しないので、同ユニットは頭部領域から骨盤領域までの照射可能性を損なわない。シートシェルは、少なくとも透過照射すべき領域においては、治療および/または検査のために使用される放射、例えばフォトン放射、エレクトロン放射または粒子放射、特にカーボン−イオン−放射またはプロトン放射をほとんど弱めない、かつほとんどアーティファクトを形成しない材料から形成されている。
【0005】
シートシェルは、好ましくは、その中で患者が部分的または完全に動くことができないように、形成されている。そのためにシートシェルは、変位可能な支持部材および/または別の支持部材のための固定装置を有している。シートシェル内に変位可能に内蔵された支持部材は、特にフットサポート、アームサポートおよびヘッドサポートである。シートシェルに固定可能な付加的な支持部材として、特にフェースマスク、腹部マスクおよび全身マスクが考えられる。頭部と腹部のためには、必要な限りにおいて、ステレオタクティカルフレームを使用することができる。動力的な変位ユニットとは異なり、シートシェルは種々のイモビライジングホルダ、傾斜および摺動部材を含めて、好ましくは電気的な駆動装置を持たない。
【0006】
シートシェルを、好ましくは並進的変位可能性も回転的変位可能性も提供する、変位ユニットと容易に取外し可能に結合することによって、装置は特に、患者を照射空間の外部でシートシェル上で位置決めするのに、適している。位置決めされて、場合によっては動けないようにされた患者は、移送システムを用いて照射空間内へ移動させることができる。その後、患者はこの移送システムから動力化された駆動システムに引き取られて、照射装置のアイソセンター内に位置決めされる。治療空間の外部で患者を照射に向けて準備することが、解剖学的に正しい姿勢での位置決めを容易にし、それがまた腹部の器官への呼吸運動の影響を著しく減少させる。極めて多くの適用において、装置は、照射品質を低下させることなしに、たとえばDE19904675A1から知られているように、極端に複雑なプロトンガントリーまたはイオンガントリーを省くことを許す。シートシェルと変位ユニットの分離によって得られる、装置の他の利点は、簡単な方法で、照射空間の外部にあるシートシェル上の動けないようにされた患者を検証することが可能なことにある。そのために、患者を検査するためにたとえば、垂直のコンピュータトモグラフィースキャンまたは他のイメージング方法、たとえば超音波検査が適している。
【0007】
特に好ましい展開によれば、シートシェルは、その上で患者を背もたれへ胸を向けて位置決めできるように形成されている。それによって簡単な方法で、患者の背中をスツールの前側から照射することが可能である。背もたれの放射線吸収の正確な程度に関係なく、照射の目的のためにこの背もたれに切欠きを形成することが不要になる。これが、背もたれとシートシェル全体の簡単かつ安定した形態を可能にする。シートシェルと好ましくは工具なしで結合することができる、変位ユニットとは異なり、シートシェルはこの形態においても動力による変位可能性を持たない。
【0008】
本発明の特別な利点は、透過照射可能なシートシェルを動力的な変位装置から簡単に分離できることによって、照射装置は照射に向けて患者を準備する間ブロックされないので、照射装置の極めて高い利用度が達成できることにもある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明の複数の実施例を詳細に説明する。
【0010】
互いに相当し、あるいは同じ作用をする部分は、すべての図において同一の参照符号を有している。
【0011】
図1は、動力で駆動可能な変位ユニット3とその上に保持された、患者スツールとしてのシートシェル4から形成された、照射治療または照射検査のために患者2を位置決めするための装置1を示している。図2において患者2と共に分離して示されているシートシェル4は、簡単な方法で留め具5、たとえばスナップ留め具を用いて、変位ユニット3と結合可能である。シートシェル4は、わずかしか放射線を吸収せず、かつほとんどアーティファクトを形成しない、たとえば木および/またはプラスチックおよび/またはカーボンファイバーを含む材料のような、材料から形成されて、座面6、背もたれ7、フットサポート8、アームサポート9およびヘッドサポート10を有しており、その場合に最後に挙げた3つのサポート8、9、10は、手動で変位させることができる。それに対して座面6に対する背もたれ7の変位は、図示の実施例においては設けられていない。この変位は、たとえば、駆動ユニットを用いて行われる。これが、シートシェル4の簡単でありながら、安定した構造を可能にする。
【0012】
留め具5が、シートシェル4の座面6をすべての軸線内で変位可能な、変位ユニット3のスタンド11と結合し、変位ユニットは特にロボットとして形成することもでき(図9cを参照)、背もたれ7は変位ユニット3と直接結合できず、座面6を介してこの変位ユニットと結合されている。従って空間内に自由に立つ、放射をほぼ透過する背もたれ7が、頭部−首領域においてだけでなく、腹部領域および骨盤領域においても、患者2の照射治療を可能にする。ほぼ水平の放射方向Sにおいて患者2へ作用する放射として、電磁放射、フォトン放射または粒子放射、たとえばプロトン放射またはイオン放射を利用することができる。
【0013】
患者2は、詳しく図示されない方法でシートシェル4上で動かないようにされている。そのために、好ましくはマスクまたはフレーム、そしてまたステレオタクティカルフレーム、真空クッション、ベルト、発泡材クッション、顎または肩のサポートあるいは上述した部材のコンビネーションが用いられ、それらはシートシェル4に固定可能である。動かないようにすることを含めてシートシェル4上で患者2を位置決めすることは、好ましくは、シートシェル4が変位ユニット3上へ取り付けられる前に、実施される。シートシェル4を変位ユニット3へ移送するために、図示されていない機械的補助手段を使用することができる。変位ユニット3は、双方向矢印によって示唆されるように、種々の回転または並進の変位可能性を有しており、全体としてローラ12上で摺動可能である。特に、変位ユニットは、各空間方向におけるシートシェル4の摺動も、垂直軸を中心とするシートシェル4の回転と1つまたは複数の方向におけるシートシェル4の揺動も可能にする。図示されていない方法で、レール上で変位ユニット3全体を摺動させることもできる。変位ユニット3の全部の変位が、好ましくは油圧駆動および/または動力駆動、特に電動の駆動によって可能である。
【0014】
図3から図6には、シートシェル4の他の形態が示されている:図3に示す実施例においては、背もたれ7に変位可能な顎サポート15が固定されている。図4に示すシートシェル4は、アームサポート9に加えて、同様に背もたれ7に固定された肩サポート17を有している。図5に示すシートシェル4は、図3に示す実施例にほぼ相当するが、リンク16によって可能とされる、フットサポート8のより平坦な調節を有しており、それによって患者2は必要な場合には特に低く位置決めすることができる。図6に示すシートシェル4は、肩サポート17に加えてハンドグリップ18を有しており、そのハンドグリップは図示されていない方法で変位可能に座面6または背もたれ7に固定されている。それぞれ必要に応じて、シートシェル4は、図1から図6に示される支持部材8、9、10、15、17、18の図示されていない組合わせを有することもできる。
【0015】
図1から図6に示す位置とは異なり、患者2は、図7と図8に示すように、シートシェル4上に、その胸が背もたれ7へ向けられるようにも、位置決め可能である。この位置においても、患者2は、シートシェル4上で動かないようにすることができる。従って検査および/または治療に使用される放射は、ほぼ水平の放射方向Sにおいて患者2の背へ直接向けることができる。図7に示す実施例においては、背もたれ7は座面6に対して摺動可能であって、図示の調節においては座面6上のほぼ中央に位置している。患者2は、図1から図6の実施例におけるように、左を見ているが、背もたれ7が胸に接触している。それに対して図8に示す実施例における患者は右を見ており、その場合に座面6に対する背もたれ7の配置は、原理的に図1から図6に示す配置に相当する。図1から図7に示す実施例とは異なり、フットサポート8が背もたれ7に隣接する前方の領域ではなく、後方の領域において座面6に固定されている。
【0016】
図9aからcは、照射治療の準備の種々の段階を表している:最初、シートシェル4は照射ルームの外部にあって、そこでシートシェルは好ましくは少なくとも高さ調節可能なベース13上に載置されている(図9a)。次に、シートシェル4がここに図示されていない患者と共に移送装置14を用いて照射ルームへ移送される(図9b)。そこでシートシェル4がその上で動けないようにされて座っている患者と共に、この例においては折れ曲がりアームロボットとして形成されている変位ユニット3によって自動的に引き取られて、所望の照射位置へ移動される(図9c)。折れ曲がりアームロボット3は、図1から図8に示す実施例の任意の実施形態におけるシートシェル4の取扱いを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】照射治療のための装置をシートシェル内に位置決めされた患者と共に図式的に示す横断面図である。
【図2】図1に基づく装置の一部としてのシートシェルを図式的に示す横断面図である。
【図3】付加的な顎サポートを有するシートシェルを図式的に示す横断面図である。
【図4】付加的な肩サポートを有するシートシェルを図式的に示す横断面図である。
【図5】図3に基づくシートシェルを、変化して調節されたフットサポートと共に図式的に示す横断面図である。
【図6】付加的なハンドクリップを有するシートシェルを図式的に示す横断面図である。
【図7】患者の背側を照射するために変位された背もたれを有するシートシェルを図式的に示す横断面図である。
【図8】逆の座り姿勢で背側を照射するためのシートシェルを図式的に示す横断面図である。
【図9】a−cは、照射治療の準備の種々の段階においてシートシェルを図式的に示す横断面図である。
【符号の説明】
【0018】
1 患者を位置決めする装置
2 患者
3 変位ユニット
4 シートシェル
5 留め具
6 座面
7 背もたれ
8 フットサポート
9 アームサポート
10 ヘッドサポート
11 スタンド
12 ローラ
15 顎サポート
17 肩サポート
18 ハンドグリップ
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力で駆動される変位ユニットと機械的に結合された患者スツールを有する、特に照射治療のために、座る姿勢で患者を位置決めする装置に関する。この種の装置は、たとえば、DE10025913A1から知られている。
【背景技術】
【0002】
DE10025913A1から知られた装置は、頭部−首領域に腫瘍を有する患者を位置決めするために設けられている。装置は、患者スツールを有しており、その背もたれが複数の駆動ユニットを介して自由支持するプラットフォームと機械的に結合されている。患者スツールは、全体として種々の軸線を中心に回動し、あるいは並進的に変位することができる。それにもかかわらず、高い位置決め精度を得るためには、患者スツールは鋼または他の高い剛性を有する材料から形成されなければならない。その極めて複雑な構造にもかかわらず、装置は、頭部−首領域に腫瘍を有する患者のためだけに設けられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、構造的に簡単な構造において拡張された利用可能性を提供する、特に照射治療のために、座る姿勢で患者を位置決めする装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、本発明によれば、請求項1の特徴を有する装置によって解決される。この装置は、患者スツールとして交換可能なシートシェルを有している。交換可能性は、シートシェルと動力で駆動可能な変位ユニットとの可逆的な結合に関する。その場合にシートシェルの座面は、変位ユニットと機械的に結合可能である。それに対して変位ユニットにシートシェルの背もたれを直接的に機械的に結合することは行われない。むしろ、背もたれは、患者を照射する場合に背もたれが透過照射できるように、形成されている。それによって装置は、患者の頭部−首領域を照射するためだけでなく、骨盤ゾーンへ至るまでの照射のためにも適している。座面の上方には、好ましくはシートシェルと動力で駆動される変位ユニットとの間の直接的な機械的結合は何ら存在しないので、同ユニットは頭部領域から骨盤領域までの照射可能性を損なわない。シートシェルは、少なくとも透過照射すべき領域においては、治療および/または検査のために使用される放射、例えばフォトン放射、エレクトロン放射または粒子放射、特にカーボン−イオン−放射またはプロトン放射をほとんど弱めない、かつほとんどアーティファクトを形成しない材料から形成されている。
【0005】
シートシェルは、好ましくは、その中で患者が部分的または完全に動くことができないように、形成されている。そのためにシートシェルは、変位可能な支持部材および/または別の支持部材のための固定装置を有している。シートシェル内に変位可能に内蔵された支持部材は、特にフットサポート、アームサポートおよびヘッドサポートである。シートシェルに固定可能な付加的な支持部材として、特にフェースマスク、腹部マスクおよび全身マスクが考えられる。頭部と腹部のためには、必要な限りにおいて、ステレオタクティカルフレームを使用することができる。動力的な変位ユニットとは異なり、シートシェルは種々のイモビライジングホルダ、傾斜および摺動部材を含めて、好ましくは電気的な駆動装置を持たない。
【0006】
シートシェルを、好ましくは並進的変位可能性も回転的変位可能性も提供する、変位ユニットと容易に取外し可能に結合することによって、装置は特に、患者を照射空間の外部でシートシェル上で位置決めするのに、適している。位置決めされて、場合によっては動けないようにされた患者は、移送システムを用いて照射空間内へ移動させることができる。その後、患者はこの移送システムから動力化された駆動システムに引き取られて、照射装置のアイソセンター内に位置決めされる。治療空間の外部で患者を照射に向けて準備することが、解剖学的に正しい姿勢での位置決めを容易にし、それがまた腹部の器官への呼吸運動の影響を著しく減少させる。極めて多くの適用において、装置は、照射品質を低下させることなしに、たとえばDE19904675A1から知られているように、極端に複雑なプロトンガントリーまたはイオンガントリーを省くことを許す。シートシェルと変位ユニットの分離によって得られる、装置の他の利点は、簡単な方法で、照射空間の外部にあるシートシェル上の動けないようにされた患者を検証することが可能なことにある。そのために、患者を検査するためにたとえば、垂直のコンピュータトモグラフィースキャンまたは他のイメージング方法、たとえば超音波検査が適している。
【0007】
特に好ましい展開によれば、シートシェルは、その上で患者を背もたれへ胸を向けて位置決めできるように形成されている。それによって簡単な方法で、患者の背中をスツールの前側から照射することが可能である。背もたれの放射線吸収の正確な程度に関係なく、照射の目的のためにこの背もたれに切欠きを形成することが不要になる。これが、背もたれとシートシェル全体の簡単かつ安定した形態を可能にする。シートシェルと好ましくは工具なしで結合することができる、変位ユニットとは異なり、シートシェルはこの形態においても動力による変位可能性を持たない。
【0008】
本発明の特別な利点は、透過照射可能なシートシェルを動力的な変位装置から簡単に分離できることによって、照射装置は照射に向けて患者を準備する間ブロックされないので、照射装置の極めて高い利用度が達成できることにもある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明の複数の実施例を詳細に説明する。
【0010】
互いに相当し、あるいは同じ作用をする部分は、すべての図において同一の参照符号を有している。
【0011】
図1は、動力で駆動可能な変位ユニット3とその上に保持された、患者スツールとしてのシートシェル4から形成された、照射治療または照射検査のために患者2を位置決めするための装置1を示している。図2において患者2と共に分離して示されているシートシェル4は、簡単な方法で留め具5、たとえばスナップ留め具を用いて、変位ユニット3と結合可能である。シートシェル4は、わずかしか放射線を吸収せず、かつほとんどアーティファクトを形成しない、たとえば木および/またはプラスチックおよび/またはカーボンファイバーを含む材料のような、材料から形成されて、座面6、背もたれ7、フットサポート8、アームサポート9およびヘッドサポート10を有しており、その場合に最後に挙げた3つのサポート8、9、10は、手動で変位させることができる。それに対して座面6に対する背もたれ7の変位は、図示の実施例においては設けられていない。この変位は、たとえば、駆動ユニットを用いて行われる。これが、シートシェル4の簡単でありながら、安定した構造を可能にする。
【0012】
留め具5が、シートシェル4の座面6をすべての軸線内で変位可能な、変位ユニット3のスタンド11と結合し、変位ユニットは特にロボットとして形成することもでき(図9cを参照)、背もたれ7は変位ユニット3と直接結合できず、座面6を介してこの変位ユニットと結合されている。従って空間内に自由に立つ、放射をほぼ透過する背もたれ7が、頭部−首領域においてだけでなく、腹部領域および骨盤領域においても、患者2の照射治療を可能にする。ほぼ水平の放射方向Sにおいて患者2へ作用する放射として、電磁放射、フォトン放射または粒子放射、たとえばプロトン放射またはイオン放射を利用することができる。
【0013】
患者2は、詳しく図示されない方法でシートシェル4上で動かないようにされている。そのために、好ましくはマスクまたはフレーム、そしてまたステレオタクティカルフレーム、真空クッション、ベルト、発泡材クッション、顎または肩のサポートあるいは上述した部材のコンビネーションが用いられ、それらはシートシェル4に固定可能である。動かないようにすることを含めてシートシェル4上で患者2を位置決めすることは、好ましくは、シートシェル4が変位ユニット3上へ取り付けられる前に、実施される。シートシェル4を変位ユニット3へ移送するために、図示されていない機械的補助手段を使用することができる。変位ユニット3は、双方向矢印によって示唆されるように、種々の回転または並進の変位可能性を有しており、全体としてローラ12上で摺動可能である。特に、変位ユニットは、各空間方向におけるシートシェル4の摺動も、垂直軸を中心とするシートシェル4の回転と1つまたは複数の方向におけるシートシェル4の揺動も可能にする。図示されていない方法で、レール上で変位ユニット3全体を摺動させることもできる。変位ユニット3の全部の変位が、好ましくは油圧駆動および/または動力駆動、特に電動の駆動によって可能である。
【0014】
図3から図6には、シートシェル4の他の形態が示されている:図3に示す実施例においては、背もたれ7に変位可能な顎サポート15が固定されている。図4に示すシートシェル4は、アームサポート9に加えて、同様に背もたれ7に固定された肩サポート17を有している。図5に示すシートシェル4は、図3に示す実施例にほぼ相当するが、リンク16によって可能とされる、フットサポート8のより平坦な調節を有しており、それによって患者2は必要な場合には特に低く位置決めすることができる。図6に示すシートシェル4は、肩サポート17に加えてハンドグリップ18を有しており、そのハンドグリップは図示されていない方法で変位可能に座面6または背もたれ7に固定されている。それぞれ必要に応じて、シートシェル4は、図1から図6に示される支持部材8、9、10、15、17、18の図示されていない組合わせを有することもできる。
【0015】
図1から図6に示す位置とは異なり、患者2は、図7と図8に示すように、シートシェル4上に、その胸が背もたれ7へ向けられるようにも、位置決め可能である。この位置においても、患者2は、シートシェル4上で動かないようにすることができる。従って検査および/または治療に使用される放射は、ほぼ水平の放射方向Sにおいて患者2の背へ直接向けることができる。図7に示す実施例においては、背もたれ7は座面6に対して摺動可能であって、図示の調節においては座面6上のほぼ中央に位置している。患者2は、図1から図6の実施例におけるように、左を見ているが、背もたれ7が胸に接触している。それに対して図8に示す実施例における患者は右を見ており、その場合に座面6に対する背もたれ7の配置は、原理的に図1から図6に示す配置に相当する。図1から図7に示す実施例とは異なり、フットサポート8が背もたれ7に隣接する前方の領域ではなく、後方の領域において座面6に固定されている。
【0016】
図9aからcは、照射治療の準備の種々の段階を表している:最初、シートシェル4は照射ルームの外部にあって、そこでシートシェルは好ましくは少なくとも高さ調節可能なベース13上に載置されている(図9a)。次に、シートシェル4がここに図示されていない患者と共に移送装置14を用いて照射ルームへ移送される(図9b)。そこでシートシェル4がその上で動けないようにされて座っている患者と共に、この例においては折れ曲がりアームロボットとして形成されている変位ユニット3によって自動的に引き取られて、所望の照射位置へ移動される(図9c)。折れ曲がりアームロボット3は、図1から図8に示す実施例の任意の実施形態におけるシートシェル4の取扱いを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】照射治療のための装置をシートシェル内に位置決めされた患者と共に図式的に示す横断面図である。
【図2】図1に基づく装置の一部としてのシートシェルを図式的に示す横断面図である。
【図3】付加的な顎サポートを有するシートシェルを図式的に示す横断面図である。
【図4】付加的な肩サポートを有するシートシェルを図式的に示す横断面図である。
【図5】図3に基づくシートシェルを、変化して調節されたフットサポートと共に図式的に示す横断面図である。
【図6】付加的なハンドクリップを有するシートシェルを図式的に示す横断面図である。
【図7】患者の背側を照射するために変位された背もたれを有するシートシェルを図式的に示す横断面図である。
【図8】逆の座り姿勢で背側を照射するためのシートシェルを図式的に示す横断面図である。
【図9】a−cは、照射治療の準備の種々の段階においてシートシェルを図式的に示す横断面図である。
【符号の説明】
【0018】
1 患者を位置決めする装置
2 患者
3 変位ユニット
4 シートシェル
5 留め具
6 座面
7 背もたれ
8 フットサポート
9 アームサポート
10 ヘッドサポート
11 スタンド
12 ローラ
15 顎サポート
17 肩サポート
18 ハンドグリップ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力で駆動可能な変位ユニット(3)と機械的に結合された患者スツール(4)を有する、特に照射治療のために、座る姿勢で患者を位置決めする装置において、
患者スツール(4)が、交換可能なシートシェルとして形成されており、前記シートシェルの座面(6)が変位ユニット(3)と可逆的に結合されており、かつ前記シートシェルの背もたれ(7)が放射線を透過する材料から形成されていることを特徴とする患者を位置決めする装置。
【請求項2】
シートシェル(4)が、特に患者を動けないようにするために、少なくとも1つの調節可能な支持部材あるいは支持部材のための固定装置を有していることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
支持部材として、調節可能なフットサポート(8)が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
支持部材として、調節可能なアームサポート(9)が設けられていることを特徴とする請求項2または3に記載の装置。
【請求項5】
支持部材として、調節可能な顎サポート(15)が設けられていることを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
支持部材として、調節可能な肩サポート(17)が設けられていることを特徴とする請求項2から5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
支持部材として、調節可能なハンドグリップ(18)が設けられていることを特徴とする請求項2から6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
支持部材として、調節可能なヘッドサポート(10)が設けられていることを特徴とする請求項2から7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
シートシェル(4)に固定可能な支持部材として、フェースマスクが設けられていることを特徴とする請求項2から8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
シートシェル(4)に固定可能な支持部材として、腹部マスクが設けられていることを特徴とする請求項2から9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
シートシェル(4)に固定可能な支持部材として、全身マスクが設けられていることを特徴とする請求項2から10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
シートシェル(4)に固定可能な支持部材として、ステレオタクティカルフレームが設けられていることを特徴とする請求項2から11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
シートシェル(4)が、患者が胸を背もたれ(7)へ向けて位置決め可能であるように、形成されていることを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項1】
動力で駆動可能な変位ユニット(3)と機械的に結合された患者スツール(4)を有する、特に照射治療のために、座る姿勢で患者を位置決めする装置において、
患者スツール(4)が、交換可能なシートシェルとして形成されており、前記シートシェルの座面(6)が変位ユニット(3)と可逆的に結合されており、かつ前記シートシェルの背もたれ(7)が放射線を透過する材料から形成されていることを特徴とする患者を位置決めする装置。
【請求項2】
シートシェル(4)が、特に患者を動けないようにするために、少なくとも1つの調節可能な支持部材あるいは支持部材のための固定装置を有していることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
支持部材として、調節可能なフットサポート(8)が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
支持部材として、調節可能なアームサポート(9)が設けられていることを特徴とする請求項2または3に記載の装置。
【請求項5】
支持部材として、調節可能な顎サポート(15)が設けられていることを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
支持部材として、調節可能な肩サポート(17)が設けられていることを特徴とする請求項2から5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
支持部材として、調節可能なハンドグリップ(18)が設けられていることを特徴とする請求項2から6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
支持部材として、調節可能なヘッドサポート(10)が設けられていることを特徴とする請求項2から7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
シートシェル(4)に固定可能な支持部材として、フェースマスクが設けられていることを特徴とする請求項2から8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
シートシェル(4)に固定可能な支持部材として、腹部マスクが設けられていることを特徴とする請求項2から9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
シートシェル(4)に固定可能な支持部材として、全身マスクが設けられていることを特徴とする請求項2から10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
シートシェル(4)に固定可能な支持部材として、ステレオタクティカルフレームが設けられていることを特徴とする請求項2から11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
シートシェル(4)が、患者が胸を背もたれ(7)へ向けて位置決め可能であるように、形成されていることを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9a】
【図9b】
【図9c】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9a】
【図9b】
【図9c】
【公表番号】特表2008−504089(P2008−504089A)
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−518602(P2007−518602)
【出願日】平成17年6月28日(2005.6.28)
【国際出願番号】PCT/EP2005/053020
【国際公開番号】WO2006/003143
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月28日(2005.6.28)
【国際出願番号】PCT/EP2005/053020
【国際公開番号】WO2006/003143
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】
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