説明

患者の病院内利用システム

【課題】本人の確認、病院内の施設の利用及び施錠又は解錠、料金の清算、並びに医療行為の処置の履歴の記録などを一つの電子媒体キーでできるようにする。
【解決手段】患者が保持する電子媒体キー24の無線タグ25に当該患者のIDを設定すると共に、患者が利用できるロッカー17,23等の病院内施設の電子錠に、前記患者のIDを照合して施錠又は解錠する機能を付与する。検査,診察,治療等の医療行為時に前記電子媒体キー24の患者のIDを読み取ることによって当該患者であることを確認する。また病院内施設の利用に際して前記電子媒体キー24の患者のIDを読み取ることによって累計利用料金等を記録し、所定期間ごとに又は退院時等に全ての料金を清算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入院患者に割り当てられた電子媒体キーに、当該入院患者のIDを登録しておき、入院患者が病院内の施設を利用する場合に、前記電子媒体キーで施錠又は解錠できるようにし、また料金の清算及び医療行為の処置の履歴をも記録することで、病院内における利便性を飛躍的に向上させることのできる患者の病院内利用システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近では、病院内において、ICカードを利用する技術が増えて来ている。特許文献1の発明のように、健康保険証及び診察券をICカード化したものもその一つである。ICカードは、健康保険証の場合には、表面に氏名、生年月日、保険組合のID情報などが印刷され、診察券の場合には、病院名、氏名、生年月日などが印刷されている。裏面には、それぞれ補足情報が印刷されている。
この特許文献1の発明では、健康保険証のICカードと、診察券のICカードのリーダを電気的に接続してこれらに記憶されている情報を併用すると共に、また診察券のICカードに健康保険証の共通情報を記憶させ、病院内における健康保険証の利用を最小限に減らすようにし、効率的な利用を実現するようにしている。
【0003】
またこの特許文献1には、診察券のICカードがICクレジットカードであれば、同時に病院内における決済も、当該診察券ICクレジットカードで行え、便利である旨の記載がある。
【0004】
一方、ICカードを利用した一般的なカード決済システムでは、病院内の有料施設を利用した場合、その都度、個別にその有料施設に対する利用料金をカード決済するだけである。そのため、病院側が各業者からその売り上げ金額に対する手数料を徴収する場合や逆に手数料を支払う場合は、各有料施設ごとに集計して行う必要があり、その作業に手間取るという欠点があった。そこで、この特許文献2の技術では、病院内の多数の有料施設の利用状況をICカードに記憶させておき、これを一定期間ごとにリーダで読み取り、コンピュータで演算処理して集計するようにしている。
【特許文献1】特開2002−366650号公報
【特許文献2】特開2004−86253号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に記載された健康保険証のICカードと、診察券のICカードとを利用する発明では、健康保険証の情報と診察券の情報との共通情報を利用して、病院内における健康保険証の利用状態を減らそうとするものであって、これらのICカードの本質的な性質は、あくまでも健康保険証であり、また診察券である。従って、病院内におけるあらゆる設備の利用などをも兼用することができるというものではなく、また患者情報や治療の履歴なども容易に確認できるという便利なICカードではなかった。
【0006】
また特許文献2に記載されたICカード決済システムの発明においても、このカードの本質は集計を容易にすることのできるICカードを利用した決済方法であり、その他の病院内における患者情報を記したり、治療の履歴などを記載したものではなく、利用方法が単純であり、限定されていた。
【0007】
本発明は従来の前記課題に鑑みてこれを改良除去したものであって、本人の確認、病院内の施設の利用及び施錠又は解錠、料金の清算、並びに医療行為の処置の履歴をも記録できる電子媒体キーによる患者の病院内利用システムを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
而して、前記課題を解決するために本発明が採用した請求項1の手段は、患者が保持する電子媒体キーの無線タグに当該患者のIDを設定すると共に、患者が利用できるロッカー等の病院内施設の電子錠に、前記患者のIDを照合して施錠又は解錠する機能を付与し、検査,診察,治療等の医療行為時に前記電子媒体キーの患者のIDを読み取ることによって当該患者であることを確認し、病院内施設の利用に際して前記電子媒体キーの患者のIDを読み取ることによって累計利用料金等を記録し、所定期間ごとに又は退院時等に全ての料金を清算するようにしたことを特徴とする患者の病院内利用システムである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明にあっては、電子媒体キーの無線タグに対して患者のIDを設定している。そして、本発明では、この電子媒体キーの患者IDを確認して病院内のロッカーや病室などの電子錠の開閉と、病院内におけるあらゆる有料施設の利用と、検査,診察,処置などにおける本人確認とを行えるようにしている。そのため、患者自身は、電子媒体キーで本人であることを証明しながら病院内のあらゆる行動ができるようになり、極めて利便性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明の構成を図面に示す発明の実施の形態に基づいて説明すると次の通りである。図1及び図2は本発明の一実施の形態に係るものであり、図1は患者の病院内利用システムの全体を示す構成図、図2は電子媒体キーの無線タグのブロック回路図である。図1に示す如く、この実施の形態に係る患者の病院内利用システムは、病院データベース1に接続された病院システム(医事システム)2と、施設利用管理サーバー3とを上位システムとして有している。これらの上位システムに対しては、病院内の医療関係の機器及び端末装置と、病院内の利用できる施設などがアクセスできるように接続されている。
【0011】
上位システムへアクセスできる病院内の医療関係の機器としては、例えば、臨床検査の採血台4及びこれに付属するリーダライタ5、医師が利用するノートパソコンなどの端末装置6及びこれに付属するリーダライタ7、ナースステーションなどの処置室に設置されたノートパソコンなどの端末装置8及びこれに付属するリーダライタ9、会計に使用するノートパソコンなどの端末装置10及びこれに付属するリーダライタ11などがある。
【0012】
また上位システムへアクセスできる病院内の利用できる施設としては、入院病棟の病室にあっては、テレビ12、電話13、インターネット接続機器14、冷蔵庫15、洗濯機16、ロッカー17などがある。また外来患者及び入院患者や病院側スタッフ、見舞い客などのあらゆる人が利用できる施設として、食道18、売店19、コインランドリー20、自動販売機21、公衆電話22、ロッカー23などがある。
【0013】
本発明ではこれらの医療関係機器及び利用可能な施設に対して、患者のIDを登録した電子媒体キー24によって当該患者であることの認証を行い、これらの施設の利用ができるようにし、また電子媒体キー24の記憶部に検査結果や診察結果並びに処置の履歴などの記録などが行えるようにしている。
【0014】
このような機能を有する電子媒体キー24は、図2に示すように回路構成された無線タグ25を有している。無線タグ25は、リーダライタ側からの無線電波をアンテナ26で受信して各部に動作用の電源を発生させる電源再生回路27と、患者のIDや臨床検査結果や診察結果並びに処置の履歴などの読み書きを行う記憶回路28と、所定のプロセス制御及び演算処理を行う非同期マイクロプロセッサ(MPU)29と、記憶回路27のデータを送受信するための高周波回路30とを有している。また前記マイクロプロセッサ29は、外部通信ポート31を介してデータ通信を行うこともできるようになっている。また而して、電子媒体キー24は、例えば、カード形状、ラベル形状、コイン形状、スティック形状、円筒形状、箱形状などの形態が可能であり、患者の腕に巻き付けておくリストバンドとしてもよい。
【0015】
次に、このように構成された患者の病院内利用システムの動作態様を、先ず、医療関係の場合について説明する。患者は、個別に与えられた電子媒体キー14を所持しており、その記憶回路28には患者に関する氏名、生年月日、年齢、入院日、病棟名、主治医、病名などの情報(患者ID)が予め登録されている。入院患者が血液検査を受ける場合は、臨床検査室へ行き、そこで電子媒体キー14をリーダライタ5へ近づければよい。リーダライタ5からは質問電波が発信されており、電子媒体キー14のアンテナ26がこれを受信すると、電源再生回路27に動作用の電源が発生し、各部へ供給される。そのため、無線タグ25が動作状態となる。そして、非同期MPU29は、記憶回路28にメモリーされている患者IDを、高周波回路30の発信回路からアンテナ26を通じて発信させるようになり、前記質問に対して応答する。
【0016】
またリーダライタ5は、そのアンテナで前記無線タグ25からの応答電波(患者のID情報)を受診し、その内容を表示する。一方、採血台4に対しては、上位システムである病院システム2から特定患者に対する採血指示が出されている。そのため、採血台4で採血を担当する病院側スタッフは、電子媒体キー24を所持し、これに登録されている患者のIDと、前記病院システム2から採血指示の出されている患者とが一致するかどうかの確認を行い、一致した場合は指示通りの採血を行い、一致しない場合は、採血せずに病院システム2へ報告している。
【0017】
また診察室においては、電子媒体キー14を医師の端末装置(ノートパソコン)6に接続されたリーダライタ7へ近づけると、前記と同様にして患者IDが読み込まれてこのリーダライタ7の表示部及び医師の端末装置6に表示される。一方、医師の端末装置6には、上位システムである病院私費テム2からこれから診察する患者のIDや電子カルテなどが入力されて表示されている。そのため、医師は、端末装置6において、診察しようとする患者が本人であるかどうかの確認を行うことができる。また念のために、直接問診を行って、本人であることを確認することも併せて行われる。
診察が終了した後は、必要な事項を端末装置6のキーボードなどから入力し、病院システム2及びそのデータベース1へ出力し、これに記録すると共に、リーダライタ7を通じて電子媒体キー24の記憶回路28に出力し、記録しておけばよい。このような本人確認と、必要事項の記録とは、処置室における端末装置8とリーダライタ9及び会計窓口における端末装置10とリーダライタ11とによっても行われる。
【0018】
次に、入院患者が病院内の施設を利用する場合について説明する。先ず、入院病室においては、テレビ12、電話13、インターネット接続機器14、冷蔵庫15、洗濯機16などの有料レンタル機器が設置されている。これらの各機器12〜16には、図示しないリーダライタが内臓又は付属して設置されている。入院患者は、これらの機器の利用に際し、個別に与えられた電子媒体キー24を各機器のリーダライタに近づけると、前述した無線タグ25の送信機能によって当該患者のIDが各機器側へ送信される。各機器では、患者のIDが確認された以降は、当該機器の利用であると判断し、利用した時間と利用料金とを液晶表示部などに表示する。また同時に、これらの利用に関するデータは、上位システムの施設利用管理サーバー3へ送信され、各患者ごとのファイルに累計利用時間及び累計利用料金として記録される。支払いは、定期的に又は退院時などに前記した会計窓口へ行き、そのリーダライタ11及び端末装置10を通じて患者の確認を行った上で、表示された金額に対して行えばよい。
【0019】
一方、病室には、個人用のロッカー17が設置されている。また病院内には、専用のロッカールームが設けられて、複数のロッカー23が設置されている場合もある。これらのロッカー17,23には、電子錠が取り付けられており、特定の電子キーでなければ施錠又は解錠できないようになっている。本実施の形態では、電子錠がリーダライタの機能を有し、入院患者に与えられた電子媒体キー24の患者IDを、当該電子錠を通じて確認することによって、施錠又は解錠できるようになっている。従って、ロッカー利用者は、各ロッカー17,23の電子錠の前に、電子媒体キー24を近づけるだけで、その無線タグ25の記憶回路28にメモリーされていた当該患者のIDが電子錠に送信されてその認証が行われる。そして、施錠又は解錠できるようになっている。
【0020】
また病院内における食道18での飲食、売店19での各種商品の購買、コインランドリー20の利用や自動販売機21及び公衆電話22の利用に際しては、それらの料金を清算するレジやコイン投入部の近くに、リーダライタが内臓又は付属して設置されている。入院患者は、これらの施設の利用に際し、個別に与えられた電子媒体キー24を各施設のリーダライタに近づけると、前述した無線タグ25の送信機能によって当該患者のIDが送信され、リーダライタ側に読み込まれて確認される。そして、各施設での利用料金、例えば食堂18では飲食した料金、売店19では購買した商品の代金が表示される。
また同時に、これらの利用に関するデータは、各施設機器から上位システムの施設利用管理サーバー3へ送信され、各患者ごとのファイルに累計利用時間及び累計利用料金として記録される。支払いは、定期的に又は退院時などに前記した会計窓口へ行き、そのリーダライタ11及び端末装置10を通じて患者の確認を行った上で、表示された金額に対して行えばよい。
【産業上の利用可能性】
【0021】
ところで、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、適宜の変更が可能である。例えば、電子媒体キー24は市販されているICカードであってもよい。またその場合のICカードのメモリー部に記録されている患者IDなどの読み書きは、リーダライタで行えばよい。機器によっては、ICカードのデータを読み取るだけの機能を有するカードリーダであってもよい。更に、医療関係においては、その他の臨床検査及びレントゲン、心電図、CTなどのあらゆる検査に際しても本人であることの確認を当該電子媒体キー24で行うようにすることが可能であり、薬局窓口での本人確認、診察室の待合順番及び待ち時間を表示させる場合の本人確認などに利用することが可能である。更にまた、病院内の利用できる施設も前述したもの以外の施設への適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施の形態に係る患者の病院内利用システムの全体を示す構成図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る電子媒体キーの無線タグのブロック回路図である。
【符号の説明】
【0023】
1…病院データベース、2…病院システム(医事システム)、3…施設利用管理サーバ ー、4…採血台、5,7,9,11…リーダライタ、6…医師の端末装置、8…処置室 の端末装置、10…会計窓口の端末装置、17,23…ロッカー、18…食堂、19… 売店、20…コインランドリー、21自動販売機、22…公衆電話

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者が保持する電子媒体キーの無線タグに当該患者のIDを設定すると共に、患者が利用できるロッカー等の病院内施設の電子錠に、前記患者のIDを照合して施錠又は解錠する機能を付与し、検査,診察,治療等の医療行為時に前記電子媒体キーの患者のIDを読み取ることによって当該患者であることを確認し、病院内施設の利用に際して前記電子媒体キーの患者のIDを読み取ることによって累計利用料金等を記録し、所定期間ごとに又は退院時等に全ての料金を清算するようにしたことを特徴とする患者の病院内利用システム。

【図1】
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【図2】
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