説明

患者看護について教示するインタラクティブな教育システム

【解決手段】 患者看護について教示する患者シミュレータシステムが提供される。当該システムには、患者シミュレータが含まれる。前記患者シミュレータには、1若しくはそれ以上のシミュレートされた身体部分を有する患者身体が含まれる。前記1若しくはそれ以上のシミュレートされた身体部分には、一部の場合、肺コンプライアンスシミュレーションシステムが含まれる。その場合、前記肺コンプライアンスシステムは、呼気終末陽圧(positive end−expiratory pressure:PEEP)および補助・調節換気を含む、体外人工呼吸器と共に使用されるように構成されている。一部の場合、前記肺コンプライアンスシステムは、肺区画と、前記肺区画内に配置されたシミュレートされた肺とを含み、前記肺区画は前記シミュレートされた肺が拡張可能な容積を有し、当該シミュレートされた肺が拡張可能な容積は、前記シミュレートされた肺のコンプライアンスを制御するように調整可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、全体として患者看護について教示するインタラクティブな教育システムに関する。
【背景技術】
【0002】
患者看護プロトコルに関する医療従事者の訓練は、実際に患者と接触することを医療従事者に許可する前に行うことが望ましいが、教科書とフラッシュカードでは、実地練習で得られる重要な利点を学生に提供することができない。一方、実際の患者への医療処置を経験の浅い学生に許可して実地練習できるようにすると患者にリスクが生じるため、これも現実的な代替案とは見なせない。これらの要因から、患者看護に関する教育は、マネキン(人体模型)などのシミュレータに医療器具を使って患者看護活動を行い実施されることが多い。そのようなシミュレータの例としては、米国特許出願第11/952,559号、米国特許出願第11/952,606号、米国特許出願第11/952,636号、米国特許出願第11/952,669号、米国特許出願第11/952,698号、米国特許第7,114,954号、米国特許第6,758,676号、米国特許第6,503,087号、米国特許第6,527,558号、米国特許第6,443,735号、米国特許第6,193,519号、および米国特許第5,853,292号などに開示されたものがあり、この参照によりこれら各々の全体が本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のシミュレータはこれまで多くの点で十分だったが、すべての点で十分とはいえなかった。そのため、患者看護の研修セッションを行う際に使用するインタラクティブな教育システムで、いっそう写実的で、および/または追加シミュレート機能を含むものが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、患者看護について教示するインタラクティブな教育システムと、装置と、構成要素と、方法とを提供する。
【0005】
一実施形態では、患者看護について教示するシステムが提供される。前記システムには、1若しくはそれ以上のシミュレートされた身体部分から成る患者身体を有する患者シミュレータが含まれる。前記1若しくはそれ以上のシミュレートされた身体部分には、少なくとも1本のシミュレートされた指が含まれ、当該指は、パルスオキシメーターと連動して前記患者シミュレータの酸素飽和度をシミュレートするように構成される。一部の場合、前記シミュレートされた指は、さらに、パルスオキシメーターと連動して前記患者シミュレータの脈拍数をシミュレートするように構成される。一部の実施形態において、前記シミュレートされた指は、前記パルスオキシメーターから第1の波長の光を受光する第1のセンサーと、前記パルスオキシメーターから第2の波長の光を受光する第2のセンサーと、前記第1および第2の波長で光を発生させて前記患者シミュレータの酸素飽和度をシミュレートする少なくとも1つの発光部とを含む。一部の場合、前記少なくとも1つの発光部は、前記シミュレートされた指内で前記第1のおよび第2のセンサーとは反対側に配置される。その場合、前記少なくとも1つの発光部は、前記パルスオキシメーターから受け取られた前記第1および第2の波長の光を、前記少なくとも1つの発光部から隔絶する仕切りによって、前記第1および第2のセンサーから分離できる。一部の場合、前記少なくとも1つの発光部は、当該発光部によって前記第1および第2の波長で発生される光の量を制御するように構成された処理ユニットと通信可能であり、これにより、前記患者シミュレータの酸素飽和度がシミュレートされる。前記処理ユニットは、一部の場合、前記シミュレートされた指から遠隔的に配置される。
【0006】
別の実施形態では、パルスオキシメーターと連動して患者シミュレータの酸素飽和度をシミュレートするように構成された、少なくとも1本のシミュレートされた指が提供される。この少なくとも1本のシミュレートされた指は、前記パルスオキシメーターから発せられた第1の波長の光を受光する第1のセンサーと、前記パルスオキシメーターから発せられた第2の波長の光を受光する第2のセンサーと、前記パルスオキシメーターの受光部で受光した光が前記患者シミュレータの酸素飽和度をシミュレートするように当該少なくとも1本のシミュレートされた指から前記パルスオキシメーターの受光部に向かって前記第1および第2の波長で光を発生させる発光部とを含む。一部の場合、前記第1の光波長は、約630nm〜約700nmであり、前記第2の光波長は、約800nm〜約1000nmである。一部の実施形態では、前記発光部に、発光ダイオードとそれに伴う光ファイバーケーブルが含まれる。一部の実施形態において、前記発光部は、前記少なくとも1本の指内で前記第1のおよび第2のセンサーとは反対側に配置される。特定の一実施形態において、前記パルスオキシメーターが前記少なくとも1本のシミュレートされた指上に配置される場合、前記発光部および前記第1および第2のセンサーは、前記パルスオキシメーターから発せられた前記第1および第2の波長の光を前記パルスオキシメーターの前記受光部から隔絶する仕切りによって分離される。一部の場合、前記第1および第2のセンサーは、前記仕切りに取り付けられる。一部の実施形態において、前記発光部は、当該発光部によって前記第1および第2の波長で発生される光の量を制御する処理ユニットと通信可能であり、これにより、前記患者シミュレータの酸素飽和度がシミュレートされる。この場合、前記処理ユニットは前記少なくとも1つの発光部により発生される光の量を較正して前記パルスオキシメーターの設定に合致させるようにプログラム可能であり、これにより、前記パルスオキシメーターで測定されるシミュレートされた前記患者シミュレータの酸素飽和度が当該患者シミュレータの望ましいシミュレートされた酸素飽和度に合致するようにできる。この場合、前記処理ユニットは、一部のケースで、ユーザーインターフェースを介してプログラムできる。一部の実施形態において、このユーザーインターフェースはコンピュータベースのものであり、前記患者シミュレータの種々の態様を制御するユーザーインターフェース全体の一部であってよい。
【0007】
別の態様では、患者看護について教示するシステムが提供される。このシステムには、シミュレートされた臍(へそ)が含まれる。このシミュレートされた臍には、その長手方向に沿って3つの経路を形成する柔軟な細長い本体が含まれ、前記3つの経路は、静脈および一対の動脈をシミュレートする。前記柔軟な細長い本体の前記3つの経路には、流体を収容するリザーバが流体連通している。さらに、前記リザーバに隣接して配置されたアクチュエータは、前記リザーバと前記3つの経路との間で前記流体の流れを制御して臍帯脈をシミュレートするように構成される。一部の場合、前記アクチュエータには、空気弁が含まれる。一部の場合、前記アクチュエータは、さらに、ベローズ(蛇腹構造体)を含み、前記空気弁の作動により前記ベローズが選択的に拡張および収縮して、前記リザーバと前記3つの経路との間で前記流体の流れが制御される。一部の場合、前記ベローズは、拡張すると前記リザーバを圧縮して前記リザーバから前記経路へと流体を流すように構成される。一部の実施形態において、前記シミュレートされた臍は、患者シミュレータ、例えば新生児患者シミュレータの胴の開口部に挿入するようにサイズ調整および成形される。その場合、前記シミュレートされた臍は、前記患者シミュレータの使い捨て構成要素である。一部の場合、前記新生児患者シミュレータは、分娩シナリオをシミュレートするため、母体患者シミュレータと併用されるように構成される。一部の実施形態では、自然な臍の静脈または動脈に対する標準的なカニューレ挿入技術を使って、前記3つの経路の各々にカニューレを挿入することが可能である。前記シミュレートされた臍を使用して自然な臍帯の切断に適した技術について医療従事者を訓練することができる。一部の場合、前記シミュレートされた臍は臍帯クランプと併用することを意図して構成され、前記柔軟な本体に臍帯クランプが適切に適用された場合、前記リザーバの前記流体が臍帯クランプより外側へ流出することが防止される。
【0008】
別の実施形態では装置が提供される。この装置は、自然な臍をシミュレートするようにサイズ調整および成形された柔軟な細長い本体を有する。この柔軟な細長い本体は、近位部分から遠位部分へと延長し、前記柔軟な細長い本体の長さの大半に沿って延在する3つの経路を有する。前記柔軟な細長い本体の前記3つの経路は、自然な臍の静脈および一対の動脈をシミュレートする。前記装置には、さらに、前記柔軟な細長い本体の近位部分に隣接して配置されたリザーバが含まれる。前記リザーバは、流体を収容し、前記柔軟な細長い本体と流体連通している。前記リザーバと前記柔軟な細長い本体との間の前記流体の流れは、臍帯脈をシミュレートする。一部の場合、前記柔軟な細長い本体は、臍帯クランプと併用することを意図して構成され、前記柔軟な本体に臍帯クランプが適切に適用された場合、前記流体が臍帯クランプより外側へ流出することが防止される。さらに、一部の場合では、自然な臍の静脈または動脈に対する標準的なカニューレ挿入技術を使って、前記3つの経路の各々にカニューレを挿入することが可能である。一部の実施形態において、前記柔軟な細長い本体は、自然な臍帯の切断に適した技術について医療従事者を訓練するように構成される。一部の実施形態において、前記装置は、臍帯脈をシミュレートするため、前記リザーバと前記柔軟な細長い本体との間の前記流体の流れを選択的に作動させる可動アクチュエータを含む。その場合、一部の実施形態において、前記アクチュエータは、前記リザーバに隣接して配置された拡張可能な部材を有し、これにより前記拡張可能な部材を拡張させると、当該拡張可能な部材が前記リザーバの少なくとも一部を圧縮する。
【0009】
別の実施形態では、硬膜外訓練装置が提供される。この硬膜外訓練装置には、シミュレートされた皮膚層、シミュレートされた脂肪層、シミュレートされた組織層、および少なくとも1つのシミュレートされた脊椎が含まれる。前記シミュレートされた組織層および前記シミュレートされた脊椎の少なくとも一部には、硬膜外腔をシミュレートする空洞が形成される。一部の場合、前記シミュレートされた組織層には、シミュレートされた筋肉組織および/またはシミュレートされた結合組織が含まれる。一部の実施形態において、硬膜外腔をシミュレートする前記空洞は、流体注入(注射)を受容するように構成される。一部の場合、前記シミュレートされた組織層は、シリコーン発泡材およびシリコーン油の混合物を有する。一部の場合、前記シミュレートされた皮膚層は、シリコーン熱硬化性樹脂を有する。一部の場合、前記硬膜外訓練装置は、患者シミュレータの腰背部の開口部に挿入するようにサイズ調整および成形される。前記硬膜外訓練装置には、望ましい硬膜外経路外で硬膜外針から注射が行われた場合にそれを示す機構が含まれる。場合により、その機構は、前記硬膜外針が望ましい硬膜外経路の外に出た時点で、視覚的信号および聴覚的信号の少なくとも一方を有効にするように構成される。一部の実施形態では、前記機構に、前記硬膜外針の位置を検出するセンサーが含まれる。
【0010】
別の実施形態では、患者シミュレータが提供される。この患者シミュレータには、シミュレートされた硬膜外腔を形成するシミュレートされた腰椎部分が含まれる。前記シミュレートされた腰椎部分は自然な腰椎の少なくとも触覚特性を模倣する材料で形成され、当該シミュレートされた腰椎部分への硬膜外針による注射により、自然な腰椎への硬膜外針による注射に伴う触覚が模倣される。前記シミュレートされた腰椎部分には、一部の場合、シミュレートされた皮膚層、シミュレートされた脂肪層、シミュレートされた組織層、および少なくとも1つのシミュレートされた脊椎が含まれる。一部の実施形態では、前記患者シミュレータは、可動脚部を有する母体シミュレータである。一部の場合、前記シミュレートされた腰椎部分は、前記患者シミュレータの着脱自在な一部である。その場合、前記患者シミュレータには、前記シミュレートされた腰椎部分を受容するようにサイズ調整および成形された凹部を含めることができる。
【0011】
別の実施形態では、硬膜外注射をシミュレートする方法が提供される。この方法は、シミュレートされた硬膜外腔が形成されたシミュレートされた腰椎部分を取得する工程を含む。前記シミュレートされた腰椎部分は自然な腰椎の少なくとも前記触覚特性を模倣する材料で形成され、当該シミュレートされた腰椎部分への硬膜外針による注射により、自然な腰椎への前記硬膜外針による注射に伴う触覚が模倣される。前記方法は、さらに、前記シミュレートされた腰椎部分に硬膜外針を穿刺して硬膜外注射をシミュレートする工程を含む。一部の場合、前記方法には、前記硬膜外針が望ましい硬膜外経路の外に配置された場合、警告信号を作動させる工程が含まれる。一部の実施形態において、前記警告信号を作動させる工程は、視覚的信号および聴覚的信号の少なくとも一方を生成する工程を有する。一部の場合、前記方法には、前記硬膜外針からプランジャを抜去して前記硬膜外針カテーテルを取り付ける工程が含まれる。
【0012】
別の実施形態では、患者看護について教示するシステムが提供される。このシステムは、1若しくはそれ以上のシミュレートされた身体部分を有する患者身体を含んだ患者シミュレータを有する。前記1若しくはそれ以上のシミュレートされた身体部分には、少なくとも1つのシミュレートされた腕部が含まれる。前記少なくとも1つのシミュレートされた腕部は、標準的な血圧計用カフと連動して前記患者シミュレータの血圧をシミュレートするように構成される。一部の場合、前記少なくとも1つのシミュレートされた腕部には、前記血圧計用カフから前記腕に加えられた力を監視するセンサーが含まれる。このセンサーは、負荷センサー、圧力センサー、または他の適切なセンサーである。一実施形態において、前記センサーは負荷センサーであり、この負荷センサーの一部のたわみが前記腕に加えられた圧力を示す一部の場合、前記センサーは、前記少なくとも1つのシミュレートされた腕部のシミュレートされた皮膚層の下に配置される。さらに、一部の実施形態において、前記センサーは、処理モジュールと通信可能である。当該処理モジュールは、前記センサーで測定された前記血圧計用カフから前記腕に加えられた力を、それに対応する当該血圧計用カフの圧力測定値と連動させるようにプログラム可能である。一部の場合、前記処理モジュールは、前記血圧計用カフから前記腕に加えられた力に基づいた1若しくはそれ以上の音の生成を制御する。例えば、前記1若しくはそれ以上の音としては、コロトコフ音、上腕動脈の拍動、橈骨動脈の拍動、および関連する他の血圧音などがある。その点で、前記少なくとも1つのシミュレートされた腕部には、一部の場合、前記1若しくはそれ以上の音を生じる1若しくはそれ以上のスピーカーが含まれる。前記処理モジュールは、一部の実施形態において、前記少なくとも1つのシミュレートされた腕部から遠隔的に配置される。
【0013】
別の実施形態において、装置はシミュレートされた腕を有し、このシミュレートされた腕は、標準的な血圧計用カフと連動して、前記シミュレートされた腕のシミュレートされた血圧が前記標準的な血圧計用カフにより測定できるように構成される。前記シミュレートされた腕には、前記標準的な血圧計用カフから前記シミュレートされた腕に加えられた圧力を監視する負荷センサーが含まれる。前記シミュレートされた腕は、一部の実施形態において、患者シミュレータのシミュレートされた胴に取り付けられる。通信可能な処理モジュールは、一部の場合、前記負荷センサーと通信可能である。その場合、前記処理モジュールは、前記標準的な血圧計用カフから前記シミュレートされた腕に加えられた圧力を、前記標準的な血圧計用カフの圧力測定値と相関させるようにプログラム可能である。前記処理モジュールは、一部の場合、前記シミュレートされた腕内に配置される。前記処理モジュールは、一部の実施形態において、コンピュータベースのユーザーインターフェース、例えば患者シミュレータのユーザーインターフェースを介してプログラムできる。
【0014】
本開示の別の態様において、方法は、標準的な血圧計用カフと連動するように構成された、シミュレートされた腕を取得する工程であって、これにより、前記シミュレートされた腕のシミュレートされた血圧は標準的な血圧計用カフによって測定が可能となるものであり、前記シミュレートされた腕は、前記標準的な血圧計用カフから前記シミュレートされた腕に加えられた圧力を監視する負荷センサーを含むものである、前記取得する工程と、標準的な血圧計用カフを前記シミュレートされた腕と連動させる工程と、前記シミュレートされた腕と連動中の前記標準的な血圧計用カフを利用して前記シミュレートされた腕の前記シミュレートされた血圧を取得する工程とを含む。一部の場合、前記方法は、少なくとも2つの異なる圧力について、前記標準的な血圧計用カフから前記シミュレートされた腕に加えられた圧力を、前記標準的な血圧計用カフの圧力測定値と相関させる工程も含む。
【0015】
本開示の別の実施形態によれば、患者看護について教示するシステムが提供される。このシステムには、肺コンプライアンスシミュレーションシステムが含まれる。前記肺コンプライアンスシミュレーションシステムは、肺区画と、当該肺区画内に配置されたシミュレートされた肺とを有する。前記シミュレートされた肺は、拡張可能かつ収縮可能である。前記肺区画は前記シミュレートされた肺が拡張可能な容積を有するものであり、当該拡張可能な容積は、前記シミュレートされた肺のコンプライアンスを制御するように調整可能である。前記肺コンプライアンスシミュレーションシステムは、一部の場合、さらに、前記肺区画内で前記シミュレートされた肺に隣接して配置された圧縮袋を有する。前記圧縮袋は、前記シミュレートされた肺が拡張可能な容積を調整するように拡張可能かつ収縮可能である。一部の場合、前記圧縮袋は、加圧空気源と流体連通している。一部の実施形態において、前記肺コンプライアンスシステムは、さらに、前記圧縮袋内の空気圧を制御する制御弁を含むものであるシステム。前記制御弁は、一部の場合、前記圧縮袋と前記加圧空気源との間に配置される。前記肺コンプライアンスシステムは、患者シミュレータ内に配置される。一部の場合、前記患者シミュレータは、シミュレートされた口およびシミュレートされた鼻の少なくとも一方を有するシミュレートされた頭部を含む。その場合、一部の実施形態において、前記患者シミュレータは、さらに、前記シミュレートされた口および前記シミュレートされた鼻の少なくとも一方に前記シミュレートされた肺を連通させるシミュレートされた気道を含む。さらに、前記患者シミュレータおよび前記肺コンプライアンスシステムは、一部の場合、人工呼吸器と連動するように構成される。特定の一実施形態において、前記人工呼吸器はバッグバルブマスク(bag valve mask)である。
【0016】
別の実施形態において、装置は、最大容積を有する肺区画と、前記肺区画内に配置され、自然な肺の機能をシミュレートするように拡張可能かつ収縮可能な第1の袋と、前記肺区画内で前記第1の袋に隣接して配置された第2の袋であって、可変量の前記最大容積を占有するように拡張可能かつ収縮可能であり、これにより前記第1の袋のシミュレートされた肺コンプライアンスを制御する第2の袋とを有する。前記第1および第2の袋は、一部の場合、ラテックスで形成される。前記肺区画は、一部の場合、ラテックスより柔軟性の低い材料で形成される。一般に、前記第2の袋により占有される最大容積の増加により、前記第1の袋の前記シミュレートされた肺コンプライアンスが減少し、前記第2の袋により占有される最大容積の減少により、前記第1の袋の前記シミュレートされた肺コンプライアンスが増加する。一部の場合、前記装置には、加圧空気源および前記第2の袋と連通した制御弁であって、前記第2の袋の容積を制御する制御弁が含まれる。
【0017】
別の実施形態では、患者シミュレータは、右肺および左肺コンプライアンスシミュレーションを含む。例えば、1つの患者シミュレータは、右肺区画と、前記右肺区画内に配置され、自然な肺の機能をシミュレートするように拡張可能かつ収縮可能なシミュレートされた右肺と、前記右肺区画内で前記シミュレートされた右肺に隣接して配置された右圧縮袋であって、前記右肺区画の可変量を占有するように拡張可能かつ収縮可能であり、これにより前記シミュレートされた右肺の右肺コンプライアンスを制御するものである、前記右圧縮袋と、左肺区画と、前記左肺区画内に配置され、自然な肺の機能をシミュレートするように拡張可能かつ収縮可能なシミュレートされた左肺と、前記左肺区画内で前記シミュレートされた左肺に隣接して配置された左圧縮袋であって、前記左肺区画の可変量を占有するように拡張可能かつ収縮可能であり、これにより前記シミュレートされた左肺の左肺コンプライアンスを制御するものである、前記左圧縮袋とから成る。前記患者シミュレータは、さらに、加圧空気源と連通した制御弁であって、前記右および左圧縮袋の各々の容積を制御する制御弁を含む。さらに、一部の場合、前記シミュレートされた右肺および前記シミュレートされた左肺は、それぞれシミュレートされた気道と連通している。前記シミュレートされた気道は、一部の実施形態において、シミュレートされた口およびシミュレートされた鼻の少なくとも一方に連通している。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本開示の他の特徴および利点は、例示的な実施形態に関する以下の詳細な説明を、添付の図面を参照しながら読むことにより、明確に理解されるであろう。
【図1】図1は、本開示の態様を実装した患者シミュレータの斜視図である。
【図2】図2は、図1の前記患者シミュレータの斜視図であるが、当該シミュレータの正面カバーを取り外したものである。
【図3】図3は、図1の前記患者シミュレータの一部の斜視図であり、当該患者シミュレータの子宮頸部を示している。
【図4】図4は、図1の前記患者シミュレータの一部の斜視図であり、シミュレートされた分娩の態様を例示している。
【図5】図5は、図1の前記患者シミュレータの指の横断面図であり、本開示の一態様に係る酸素飽和度シミュレーション構成要素を例示している。
【図6】図6は、図1の前記患者シミュレータの腕の正面図であり、本開示の一態様に係る血圧シミュレーション構成要素を例示している。
【図7】図7は、図6の前記腕の側面図である。
【図8】図8は、図6および図7に示した本開示の一態様に係る前記腕に実装できる血圧シミュレーション構成要素の図式的な概略図である。
【図9】図9は、本開示の一実施形態に係る硬膜外挿入部材を有する患者シミュレータの背面図である。
【図10】図10は、図9の前記患者シミュレータの一部および前記硬膜外挿入部材の斜視図である。
【図11】図11は、本開示の一態様に係る硬膜外挿入部材の側面図である。
【図12】図12は、本開示の態様を実装した患者シミュレータの斜視図である。
【図13】図13は、図9の前記患者シミュレータのシミュレートされた臍(へそ)の部分破断斜視図である。
【図14】図14は、本開示の別の態様に係る肺コンプライアンスシステムの図式的な概略図である。
【図15】図15は、本開示の一実施形態に係る硬膜外および腰椎穿刺作業訓練器の基部の図式的な概略図である。
【図16】図16は、図15の硬膜外および腰椎穿刺作業訓練器の基部と同様な、ただし本開示の代替実施形態を例示した硬膜外および腰椎穿刺作業訓練器の基部の図式的な概略図である。
【図17】図17は、本開示の一実施形態に係る成形システムを分離した状態の斜視図である。
【図18】図18は、図17の前記成形システムを組み立てた状態の斜視図である。
【図19】図19は、本開示の別の一実施形態に係る肺コンプライアンスシステムの図式的な概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の原理について理解を助けるため、図面に示した実施形態を参照し、特定の用語を使って、これらの実施形態を説明する。ただし、これらは本開示の範囲を限定ために意図されたものではないことが理解されるであろう。本明細書に説明する装置、器具、方法のいかなる修正形態および変更形態も、また本明細書で開示する原理のいかなる付加的な用途・応用も、本開示の関連分野の当業者であれば、通常、理解されるものと考えられる。特に、本開示の一実施形態を参照して説明する特徴、構成要素、および/または工程(工程段階)は、本開示の他の実施形態を参照して説明する特徴、構成要素、および/または工程との組み合せが完全に可能であると考えられる。
【0020】
ここで図1、2、3、および4を参照すると、本開示の態様を例示した患者シミュレータ100が示されている。図2からもっともよくわかるように、患者シミュレータ100には、母体シミュレータ102および胎児シミュレータ104が含まれる。図1は、前記母体シミュレータ内に前記胎児シミュレータ104を有する前記患者シミュレータ100の斜視図である。図2は、図1に類似した前記患者シミュレータ100の斜視図であるが、前記母体シミュレータ内に配置された前記胎児シミュレータ104を例示している。図3は、本開示の一実施形態に係る拡張可能な子宮頸部を例示した前記母体シミュレータ102内部の斜視図である。図4は、前記母体シミュレータ102の前記子宮頸部を通じた胎児シミュレータ104の誕生シミュレーションを例示した前記患者シミュレータ100の斜視図である。
【0021】
図示した前記患者シミュレータ100の実施形態は、治療を受ける患者を表すようサイズ調整および成形されることを理解すべきである。その点で、この患者シミュレータは多様な形態をとってよく、早産児から実物大の成人に至るまで任意のサイズ、年齢、および/または健康状態の男性または女性の患者を表すようサイズ調整および成形されたマネキンなどが含まれる。さらに、この患者シミュレータには、シミュレートされる患者の一部だけを含めることができる(例えば、特定の身体部分または身体部分の組み合わせ)。そのため、本開示の態様は患者シミュレータの特定の実施形態を参照して説明するが、これは限定を意図したものではない。本開示の特徴は、任意の適切な患者シミュレータに導入し、またはこれと併用できることを理解すべきである。一部の場合、本開示の態様は、米国特許出願第11/952,559号、米国特許出願第11/952,606号、米国特許出願第11/952,636号、米国特許出願第11/952,669号、米国特許出願第11/952,698号、米国特許第7,114,954号、米国特許第6,758,676号、米国特許第6,503,087号、米国特許第6,527,558号、米国特許第6,443,735号、米国特許第6,193,519号、および米国特許第5,853,292号に開示されたシミュレータおよびそれに関連する特徴と併用するように構成され、この参照によりこれら各々の全体が本明細書に組み込まれる。
【0022】
より具体的に図1を参照すると、前記母体シミュレータ102は、頭髪108と、眼110と、鼻112と、口114と、耳116とを有する頭部106を有する。頚部118は、前記母体シミュレータ102の前記頭部106を胴120に連結する。左腕122および右腕124は、前記胴120から延出する。前記左腕122には、上部126および下部128が含まれ、その下部から手130が延長する。その手130の指132には、以降でより詳しく説明する第二指(人差し指)134と、拇指(親指)136とが含まれる。例示した実施形態において、前記上部126は、以降でより詳しく説明するセンサー138を含む。場合により、前記左腕122は、注入される薬剤を受容できる点滴レセプタクル140を含む。この点滴レセプタクルに隣接してRFIDリーダーが配置され、このRFIDリーダーにより、注入される薬剤に関連付けられたRFIDタグが読み取られる場合もある。一部の実施形態において、前記RFIDリーダーは、前記患者シミュレータ100の制御ユニットへ、注入される薬剤に関する通信を行える。その場合、一部のケースでは、前記RFIDリーダーは、注入される薬剤の量または用量についても通信できる。一部の実施形態では、前記右腕124が前記左腕122と実質的に同様である。他の実施形態では、前記右腕124に、前記左腕より多い若しくは少ない特徴が含まれる。その場合、本明細書に開示するいかなる特徴の組み合わせも、本開示に基づいて患者シミュレータの腕に利用できることを理解すべきである。
【0023】
前記胴120には、乳房140および腹部142が含まれる。この腹部142には、カバー144が含まれる。この場合、前記カバー144は、固定手段、例えばスナップ、フック・アンド・ループ閉鎖部、ボタン、接着剤、または他のリリース可能な取り付け装置により胴120に取り付けることができる。図2に示すように、このカバー144は、当該患者シミュレータ100の種々の構成要素148を収容する前記胴120内の空洞146を覆う場合もある。その場合、例示した実施形態では、前記胎児シミュレータ104が、当該胎児シミュレータ104の動きを制御する構成要素148とともに、前記空洞146内に配置される。その場合、前記構成要素148は、1若しくはそれ以上の分娩シナリオをシミュレートするため、前記胎児シミュレータ104を選択的に回転させ、平行移動させ、およびリリースする(外に出す)ように構成される。一部の場合、前記構成要素148は、さらに、1若しくはそれ以上の分娩シナリオ中、前記胎児シミュレータに加えられた力を監視するように構成される。
【0024】
さらに、場合により、前記構成要素148は、肩甲難産、介助分娩(例えば、鉗子分娩または吸引分娩)、および骨盤位分娩を含み、かつこれらに限定されない特定の分娩シナリオをシミュレートするため、前記胎児シミュレータ104を選択的に保持またはリリースするように構成される。一部の場合、前記構成要素148は、前記母体シミュレータ102内に前記胎児シミュレータ104を保持または維持するように構成され、あるいは自然分娩と同様な触感を提供するため、前記母体シミュレータ102から前記胎児シミュレータ104を取り出す際に少なくとも張力または抵抗を生じるように構成される。その場合は、前記構成要素148が前記胎児シミュレータ104の実際のサイズに関係なく、特定サイズの胎児(例えば、40週、36週、32週、28週、または他の週齢の平均サイズ)用に適切な触感を提供することもある。これにより、単一の胎児シミュレータを利用して、胎児の週齢とそれに対応したサイズが異なる広範囲な分娩シナリオをシミュレートできる。あるいは、サイズが異なる複数の胎児シミュレータを前記母体シミュレータ102に使用することもできる。一部の場合、前記構成要素148および/または前記母体シミュレータ102または関連するソフトウェアまたはハードウェアの他の態様は、利用中の前記胎児シミュレータ104のサイズを自動的に検出してそれに対応した分娩シナリオを適切にシミュレートすることができる。他の場合では、利用中の前記胎児シミュレータのサイズを、利用者が入力する。
【0025】
一実施形態において、前記カバー144は、前記母体シミュレータ102の収縮をシミュレートするように構成される。その場合、前記カバー144の全部または一部は、収縮をシミュレートするため、より硬質に若しくは固く感じられるよう選択的に作製される。この収縮は、種々の機構を利用してシミュレートできる。一実施形態では、前記カバー144を減圧手段と連通させることにより、減圧を開始すると当該カバーの一部に張力が生じ、より硬質に感じられるようにできる。別の実施形態では、前記カバー144に袋を含め、その袋内の圧力を制御する手段(例えば、空気圧縮機または流体リザーバ)と連通させて、その袋内の圧力を選択的に増減させて前記母体シミュレータ102の収縮をシミュレートする。種々のレベルの強度、例えば軽い、中程度の、および強い収縮をシミュレートするよう、種々のレベルの硬度を生成できることを理解すべきである。さらに、種々の分娩シナリオを適切にシミュレートするため、収縮のタイミングも変更できることを理解すべきである。一般に、前記カバー144は、分娩過程をより正確にシミュレートするため、また利用者の診断能力をより現実に沿ったものにするため、前記母体シミュレータ102内の前記胎児シミュレータ104を覆って見えなくするように設計されている。
【0026】
一部の実施形態では、前記母体シミュレータ102はテザーレス(tetherless)である。すなわち、前記母体シミュレータ102は、当該シミュレータ外部の他の装置に配線または配管接続しなくとも機能するため、完全に機能させる上で当該母体シミュレータからワイヤー、管(チューブ)、または他のラインを延出させる必要がない。むしろ、当該母体シミュレータ102は必要なものを完備している。このように、当該母体シミュレータ102は、内部電源、例えば充電式電池を含むことができ、空気および流体の接続は、すべて当該母体シミュレータ102内で対応する圧縮機または他の装置へと行われる。当該母体シミュレータ102は自給式であるため、可搬式であるだけでなく、ある場所から別の場所へ移動する間も使用し続けることができる。さらに、そのような実施形態において、当該母体シミュレータ102は、無線通信を介して他の装置、例えば制御インターフェースと通信することができる。そのため、このシミュレータシステム全体は、前記無線通信の限界まで機能できる。さらに、一部の実施形態では、前記母体シミュレータ102がコンピュータまたはネットワークシステムに無線接続すると、それらのコンピュータまたはネットワークシステムが有線または無線のネットワークを介して他の遠隔装置に接続し、当該母体シミュレータ102が機能できる距離をほぼ無制限に伸ばせる。同様に、一部の実施形態において、前記胎児シミュレータ104は前記母体シミュレータ102から誕生した新生児として使用され、こちらもテザーレスモードで動作可能である。
【0027】
より具体的に図3および4を参照すると、前記母体シミュレータ102には、産道150が含まれ、これを前記胎児シミュレータ104が貫通して自然分娩がシミュレートされる。その場合、前記産道150には、拡張可能な子宮頸部152のほか、フラップ154および156が含まれる。一部の場合、これらフラップ154、156は、前記母体シミュレータ102の一部と連動して前記空洞146内における子宮頸部の相対位置を維持するように構成される。したがって、これらフラップ154、156には、少なくとも前記子宮頸部152を前記母体シミュレータ102に固定するスナップ、フック・アンド・ループ閉鎖部、および/または他の可逆的固定手段が含まれる場合もある。一部の実施形態において、前記フラップは、それに対応した解剖学的特徴、例えば卵巣、卵管、およびその周辺組織をシミュレートするようにサイズ調整および成形される。前記子宮頸部150は、拡張可能なポート158を画成し、これを通じて前記胎児シミュレータ104の分娩が行われる。一部の場合、前記ポート158は、約2センチメートルの直径を有する初期構成から、約8センチメートル〜約12センチメートルの直径を有する完全に拡張した構成まで拡大する。場合により、前記完全に拡張した構成において、前記ポート158の直径は約10センチメートルになる。このポート158のサイズは、直径に関して説明したが、必ずしも円形の外形を有するわけではなく、長円形状および/または不規則形状を有する場合もあることを理解すべきである。
【0028】
前記子宮頸部150は、実際の骨盤領域をシミュレートした解剖学的特徴を含む前記母体シミュレータ102の骨盤領域内に設けられる。例えば、一部のケースでは、前記骨盤領域に、恥骨領域160および外陰部162が含まれる。前記骨盤には、尿路、直腸、または他の解剖学的特徴をシミュレートする形状を含められることを理解すべきである。その場合、前記恥骨領域160、前記外陰部162、および/または前記骨盤領域の他の部分は、種々の患者病態を表すため他の挿入部材または構成要素と交換可能な挿入部材または構成要素であってよい。
【0029】
分娩シミュレーション中、前記胎児シミュレータ104は、前記子宮頸部150を通過し、前記外陰部162から外に出る。その場合、前記子宮頸部150の直径は、前記胎児シミュレータ104の分娩に伴い、約1cmから約10センチメートルに拡張する。前記胎児シミュレータの頭部166の形状と、前記子宮頸部150の伸縮性とにより、拡張は、前記胎児の下降とともに自動的にシミュレートされる。そのため、利用者は、子宮頸部拡張を測定し、パルトグラフ(分娩経過図)として分娩の経過をプロットする練習ができる。前記子宮頸部150の伸縮性は、例えば、より厚い若しくはより薄い壁材料を使って、通常よりそれぞれ迅速または緩慢に拡張する子宮頸部を作製することで調整できる。前記外陰部162は、利用者が当該外陰部を操作し、および/または会陰切開術を行って前記胎児シミュレータ104の分娩を行えるよう、柔軟な材料で作製される。さらに、分娩後、利用者は、分娩後の練習、例えば子宮挿入部材(図示せず)をマッサージして望ましいサイズに戻す練習、残留胎盤部分(図示せず)を取り除く練習、または前記子宮頸部150および/または外陰部162を修復する練習を行える。
【0030】
前記子宮頸部150および/または外陰部162は、それに対応するヒトの天然組織を模倣した材料で作製される場合もある。一実施形態では、ヒト生体組織を模倣するポリシロキサン混合物が利用される。この混合物にはシリコーン発泡材およびシリコーンオイルが含まれ、これらは、ヒトの天然生体組織を模倣する物理的材料特性を有するように混合される。一部の場合、前記シリコーン発泡材は、前記混合物重量全体に対し約10〜45重量パーセント含まれ、前記シリコーンオイルは、前記混合物重量全体に対し約55〜90重量パーセント含まれる。ある特定の場合において、前記シリコーン発泡材は、前記混合物重量全体に対し約25重量パーセント含まれ、前記シリコーンオイルは、前記混合物重量全体に対し約75重量パーセント含まれる。場合により、前記ポリシロキサン混合物は、シリコーン熱硬化性樹脂をさらに有する。一部の実施形態において、前記シリコーン発泡材および前記シリコーン熱硬化性樹脂は、白金触媒シリコーンを有する。一般に、米国特許出願第61/305,982号「POLYSILOXANE MATERIALS AND METHODS THAT MIMIC TISSUE」(組織を模倣するポリシロキサン材料および方法)(弁護士整理番号第16844.106号)、2011年2月18日付で出願された米国特許出願第__/___,___号「BREAST TISSUE MODELS,MATERIALS,AND METHODS」(乳房組織のモデル、材料、および方法)(弁護士整理番号第16844.125号)、および2011年2月18日付で出願された米国特許出願第__/___,___号「ULTRASOUND PHANTOM MODELS,MATERIALS,AND METHODS」(超音波ファントムのモデル、材料、および方法)(弁護士整理番号第16844.127号)は、それぞれこの参照により全体が本明細書に組み込まれるが、これらに開示された材料を利用すると、前記子宮頸部150、外陰部162、および/または前記材料および/または胎児シミュレータの他の組織構成要素を成形できる。
【0031】
ここで図5を参照すると、本開示の一態様に係る図1の前記患者シミュレータ102の指134の図式的な横断面図が示されている。この場合、この指134は、パルスオキシメーター170が取り付けられた状態で示されている。一般に、このパルスオキシメーター170は、市販されている任意のパルスオキシメーターであってよい。以降より詳しく説明するように、前記患者シミュレータの酸素飽和度および/または脈拍数をシミュレートするため、前記指134は、特定のパルスオキシメーターと適切に連動するように較正できる。前記パルスオキシメーター170は、指に装着する汎用パルスオキシメーターとして例示しており、前記指の片側に配置するアーム172と、同じ指の反対側に配置するアーム172と反対側のアーム174とを含む。前記アーム172、174は、互いに枢着され、当該オキシメーター170を前記指に装着する際、動かせるものであってよい。前記アーム172には、発光部176が含まれ、前記アーム174には、受光部178が含まれる。一般に、前記オキシメーター170は、前記発光部176から前記指へ赤色光および赤外線を発生させることにより機能する。一般に、前記パルスオキシメーター170は、約630nm〜約700nmの第1の波長の光と、約800nm〜約1000nmの第2の波長の光を発生させる。ヒトの自然な指では、前記赤色光および赤外線の相対吸収により、血中酸素量が示される。その相対吸収は、前記受光部178で受け取られた赤色光および赤外線の量により決定される。前記指134は、ヒトの自然な指の吸収特性をシミュレートできるため、利用者は、前記パルスオキシメーター170を利用して前記患者シミュレータ102の酸素飽和度および脈拍数に関する情報を得ることができる。
【0032】
その場合、前記シミュレートされる指134には、前記パルスオキシメーターから発せられた赤外線を受けるセンサー180と、前記パルスオキシメーターから発せられた赤色光を受光するセンサー182とが含まれる。前記センサー180および182は、処理ユニット184と通信可能である。前記センサー180および182は、前記処理ユニット184と有線通信するとして示されているが、これらのセンサーが前記処理ユニット184と無線通信する態様も完全に考慮されている。その場合、前記処理ユニット184は、前記指134内に配置されることもある。ただし、他の場合、前記処理ユニット184は前記指134から離れた位置にあり、場合によっては、前記シミュレータ102の外部に配置される。この処理ユニット184は、一般に、光源186を制御するように構成される。一部の実施形態において、前記光源186は赤色LEDである。この光源186は、光ファイバーケーブル188と光学的に通信可能である。そのため、この光源186から発せられた光は、前記光ファイバーケーブル188を通じて移動し、当該ケーブルから発せられる。前記光ファイバーケーブル188は、光の伝達を促進する材料190に囲まれている。一部の場合、前記材料190は、シリコーンである。その場合、前記材料190は、前記指の表面全体にわたり光が若干均一に伝達される態様で光を伝達し、自然な指を最適にシミュレートして、前記オキシメーター170による確実な読み取りを可能にする。前記発光部176から発せられる光が前記受光部178に達することを防ぐため、前記指134には、前記発光部176からの光の伝達を防ぐ障害物192が含まれる。一部の実施形態では、この障害物192はPC基板である。その場合、その障害物192は、一部の実施形態において前記センサー180、182の取り付け部として利用できる。
【0033】
前記処理ユニット184は、前記光源186の強度(光度)およびタイミングを制御して、前記患者シミュレータ102の酸素飽和度および/または脈拍をシミュレートする。オキシメーター製造元が異なると利用される光波長も異なるため、特定のパルスオキシメーターについて前記処理ユニットを適切に機能させるには、当該処理ユニットを較正する必要がある。その場合、前記処理ユニット184をプログラム可能にすると、前記光源186の生成する光量を較正して、対応するパルスオキシメーターの設定に合わせやすくなり、前記パルスオキシメーターで測定される前記患者シミュレータの酸素飽和度が当該患者シミュレータの望ましい酸素飽和度シミュレート値に合致するようにできる。そのため、一部の場合、シミュレートされる望ましい酸素飽和度が、前記オキシメーター170で測定される酸素飽和度に合致するように前記光源186の相対出力を調整するため、複数の較正点が利用される。場合により、前記処理ユニット184および光源186は、100%、80%、および60%の酸素飽和度で較正される。ただし、いかなる点の組み合わせを利用しても、前記処理ユニット184および光源186を較正でき、また較正点の数を増やすほど、当該システム全体の正確さも増す可能性が高いことを理解すべきである。
【0034】
前記処理ユニット184は、一部の場合、ユーザーインターフェースを介してプログラムできる。一部の実施形態において、このユーザーインターフェースはコンピュータベースのものであり、前記患者シミュレータの種々の態様を制御するユーザーインターフェース全体の一部であってよい。前記患者シミュレータ102の脈拍は、望ましい心拍数で前記光源をパルシングすることによりシミュレートされる。その場合、前記指134内のパルスは、前記患者シミュレータ102の心拍数と同期される。一般に、異なるオキシメーター用に脈拍数を制御する目的で前記処理ユニット184を較正する必要はない。ただし、酸素飽和度レベルと同様な態様で、必要に応じ、較正点(すなわち、1分あたり異なる脈拍)を利用して脈拍数を較正することはできる。
【0035】
ここで図6、7、8を参照すると、前記患者シミュレータ102の前記左腕122の上部126の態様が示されている。この場合、前記腕122にはセンサー138が含まれ、このセンサー138を利用して収縮期血圧および拡張期血圧を含む前記患者シミュレータ102の血圧がシミュレートされる。この場合、前記センサー138は、標準的な血圧計用カフを使って前記患者シミュレータ102の血圧が測定できるように構成される。図示したように、このセンサー138には、メインハウジング200および検出部202が含まれる。前記検出部202は、血圧計用カフから前記腕122に加えられた圧力を監視することができる。一部の場合、この検出部202は、ロードセルである。その場合、前記ロードセルのたわみの量は、前記腕122に加えられた圧力に基づく。前記ロードセルに適切なたわみが生じるようにするには、前記腕122に対して前記センサー138を固定しなければならない。その場合、前記センサー138には、その本体から延出した取り付け用延出部204が含まれる。前記取り付け用延出部204は、留め具206を受容する。例示した実施形態において、前記留め具206は、ナット208に嵌合するネジである。前記センサー138には、取り付け用延出部204と実質的に反対側にある別の取り付け用延出部210が含まれる。ここでも、前記取り付け用延出部210は留め具212を受容し、例示した実施形態において、前記留め具212は、ナット214に嵌合するネジである。前記取り付け用延出部204、210および留め具206、212は、前記ナット208、214とともに、前記腕122の定位置に前記センサー138を固定するため利用される。ただし、前記センサー138が利用者に見えないよう、シミュレートされる皮膚層が前記センサーの上に存在することを理解すべきである。
【0036】
一般に、前記検出部202は、当該検出部202の測定値またはたわみが前記血圧計用カフから加えられた圧力の測定値に対応するように較正可能である。図8に示すように、前記センサー138は、一部の場合、処理モジュール216と通信可能である。前記処理モジュール216は、一部の場合、前記検出部202が測定する負荷を監視するように構成される。その場合、前記処理モジュール216は、測定された負荷または圧力を、それに対応する前記血圧計用カフの圧力測定値と調整しやすくするようにプログラム可能である。一般に、前記ロードセルは、測定された圧力と相関した電圧出力を生じる。その電圧出力に基づき、複数の較正点を利用して、前記検出部202の検出値を前記血圧計用カフの圧力測定値に合致させる場合もある。異なる圧力測定値点については、任意数の検出値を利用して前記処理モジュール216を較正できるが、較正点の数を増やすほど、当該システム全体の正確さも増す可能性が高いことを理解すべきである。前記処理モジュール216は、一部の場合、ユーザーインターフェースを介してプログラムできる。一部の実施形態において、このユーザーインターフェースはコンピュータベースのものであり、前記患者シミュレータの種々の態様を制御するユーザーインターフェース全体の一部であってよい。
【0037】
一部の場合、前記センサー138の測定値を利用すると、前記シミュレータ102がいつ特定の音を発生させるべきか決定できる。例えば、一部の場合、前記センサー138の測定値を利用すると、いつコロトコフ音を再生すべきか決定できる。さらに、上腕動脈および橈骨動脈の拍動により前記患者シミュレータ102の収縮期および拡張期血圧を計測することもできる。この場合、前記処理モジュール216は、これら種々の音を発生させる別のモジュールまたはコントローラと通信可能である。あるいは、前記処理モジュール216自体が、これらの音を発生させる1つまたは複数のスピーカーを制御できる。このように、前記センサー138とそれに関連する前記患者シミュレータ102の構成要素を利用すると、利用者は、テザーレス血圧計用カフを含む標準的な血圧計用カフを利用して、現実的な態様で、前記患者シミュレータのシミュレートされた血圧を測ることができる。
【0038】
ここで図9、10、および11を参照すると、本開示の一態様に係る硬膜外挿入部材220が示されている。一般に、前記硬膜外挿入部材220は、硬膜外注射を行う適切な手順について医療従事者を訓練するように構成される。一般に、硬膜外注射は、脊椎の硬膜外腔への薬剤投与である。硬膜外注射は、神経根に影響を及ぼす神経疾患に伴う腫れ、痛み、および炎症、例えば椎間板ヘルニアを治療するため使用されるが、分娩中に行われることが多い。硬膜外注射は複雑な作業であり、高度な手技と精確さが医療従事者に求められる。硬膜外注射を不適切に行うと、患者が麻痺し、場合により死亡するなど、重篤な合併症が生じるおそれがある。そのため、前記硬膜外挿入部材220では、実際の患者を危険にさらすことなく極めて重要な訓練を行うことができる。
【0039】
その場合、前記硬膜外挿入部材220は、硬膜外処置の最も一般的かつ重要な態様を学習、練習、および経験する目的で設計され、その態様としては、硬膜外針の挿入に適した位置を特定する、硬膜外針を挿入する、硬膜外針を異なる組織層に挿通して硬膜外腔まで達する感覚をシミュレートする、および硬膜外腔に流体を注射するなどが含まれる。前記硬膜外挿入部材220は、外観が実物に近く、解剖学的特徴が正しく、感覚も実物どおりであるため、自然な人体と実質的に同じ触覚を得ることができる。この場合、前記硬膜外挿入部材220では、硬膜外針内で空気または生理食塩水を使用する際における抵抗の消失をシミュレートできる。さらに、この硬膜外挿入部材220を利用すると、穿刺による流体排除・採取および硬膜穿刺の手技について医療従事者を訓練することができる。前記硬膜外挿入部材220は、硬膜外注射を適切に行えるよう医療従事者を訓練する安全な手段を提供し、また各利用者の手技について現実的なフィードバックを提供する。
【0040】
図9および10に示すように、一部の場合、前記硬膜外挿入部材220は、患者シミュレータ222の腰背部に挿入するようにサイズ調整および成形される。特に、前記硬膜外挿入部材220は、腰椎部に挿入するように構成される。一般に、前記患者シミュレータ222には、少なくとも患者の胴が含まれる。例示した実施形態では、この患者シミュレータ222に、胴224および脚部226、228が含まれる。その場合、一部のケースでは、前記胴および脚部226、228は、前記患者シミュレータ222の体位を調節できるよう、動かし、また曲げることができる。その場合、一部の手技において、患者は、腰を曲げ、および/または胸の前で膝を抱えるよう要請される。そのため、場合により、前記患者シミュレータ222は、そのような体位にできるよう動かすことができる。さらに、前記患者シミュレータ222の前記胴224には、前記硬膜外挿入部材220を受容するようにサイズ調整された凹部または開口部230が含まれる。一部の場合、この凹部230は、腰椎部内に配置される。例示した実施形態において、この凹部230は、略矩形の外形を有する。ただし、この凹部230は幾何学的および不規則な形状を含むいかなる形状でもよいことを理解すべきである。この凹部230は、表面232により境界を成す。一部の場合、前記表面232は、皮膚と同じ深さの凹部である。すなわち、前記表面232は、前記シミュレータ222の皮膚のおおよその厚さを有する縁部(リム)または縁部(エッジ)234により境界を成す。その場合、前記硬膜外挿入部材220は、シミュレートされた皮膚層240を含み、この皮膚層240は、前記表面232に嵌合するようにサイズ調整および成形された張り出し部またはリップ242を含むため、前記凹部230内に前記硬膜外挿入部材が受容されると、当該硬膜外挿入部材の皮膚層240と前記胴の皮膚層240とが実質的に位置合わせされて連続した皮膚層を形成するようにできる。
【0041】
より具体的に図11を参照すると、前記硬膜外挿入部材220は、腰椎の解剖学的構造を正確にモデル化しており、脊椎、周辺の筋肉、脂肪、および結合組織を含む。特に、この硬膜外挿入部材には、上述のように皮膚層またはシミュレートされた真皮240が含まれる。前記皮膚層240の下には、脂肪層244があり、さらにその下にシミュレートされた黄色靱帯を含む結合組織層246がある。前記結合組織層246内には、シミュレートされた腰椎248、250、および252がある。この場合、これら腰椎248、250、および252は、脊椎L3、L4、およびL5を表している。他の場合、前記硬膜外挿入部材220には、シミュレートされた他の脊椎(腰椎および/または胸椎を含む)および/またはシミュレートされた仙骨が含まれる。別の例示的な実施形態において、前記挿入部材は、脊椎L2、L3、L4、およびL5を表すシミュレートされた脊椎を含む。
【0042】
一般に、前記硬膜外挿入部材220は、現実的な組織の感覚と、位置および相対寸法とを正確にシミュレートして、実際のヒトの解剖学的構造を反映する。そのため、前記挿入部材220には付加的な特徴および/または層が含まれる場合がある。他方、前記挿入部材220には、別個の脂肪および結合組織層244、246が含まれず、代わりに一般的な皮下組織層が含まれる場合もある。その場合、一部のケースでは、その皮下層が種々の材料特性を有し、それに対応した自然な組織をシミュレートする。他の場合、前記皮下層は、全体にわたり実質的に均一な材料特性を有する。前記硬膜外挿入部材220は、硬膜外針から注入された流体を受容するリザーバ(貯留部)として機能する中空の硬膜外腔を画成する。一部の場合、この硬膜外腔はドレーンまたはより大きいリザーバと流体連通しており、これにより当該硬膜外腔に注入された流体が、当該硬膜外腔から直接排出可能になり、当該硬膜外腔に追加で流体を注入することができる。これにより、注入した流体を前記挿入部材および/またはシミュレータから排出または除去する必要なく、当該挿入部材220で硬膜外シミュレーションを複数回行うことが容易になる。
【0043】
硬膜外注射に関係する手技は感覚に大きく依存するため、前記硬膜外挿入部材220の各種解剖学的構造の形成に利用する材料の触覚特性は、自然な組織の触覚特性を模倣するものでなければ、効果的に訓練を支援できない。その点で、前記腰椎248、250、および252は、硬質材料、例えば硬質ポリウレタン熱硬化性樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリカーボネート、および高密度ポリエチレン(HDPE)で作製され、骨を現実的に表している。一般に、この材料は、約50D〜約90Dのショア硬度を有し、より具体的には約60D〜約80Dのショア硬度を有する場合もある。さらに、この材料は、一部の実施形態において、自然な脊椎をシミュレートするように着色される。一般に、前記腰椎248、250、および252にはシミュレートされた棘突起が含まれているため、利用者は、前記皮膚層および脂肪層140、144を介して当該腰椎248、250、および252を感じることによりこれらを針穿刺の適切な配置決定基準点として使用することができる。
【0044】
前記結合組織層246は、強固でありながら密な材料、例えばシリコーン熱硬化性樹脂で作製される。一般に、この材料は、約10D〜約50Dのショア硬度を有し、より具体的には約20D〜約35Dのショア硬度を有する場合もある。前記脂肪層244は柔らかく可鍛性で、注射に対する摩擦抵抗が低く、一部の場合、適切に反発し、形状を記憶する。皮膚の外層および/またはその下の組織層は、自然なヒトの皮膚を模倣する材料から形成される。その点に関し、一部の場合、前記皮膚外層および/またはその下の組織層は、2010年2月19日付で出願された米国特許出願第61/305,982号「POLYSILOXANE MATERIALS AND METHODS THAT MIMIC TISSUE」(組織を模倣するポリシロキサン材料および方法)(弁護士整理番号第16844.106号)、2011年2月18日付で出願された米国特許出願第__/___,___号「BREAST TISSUE MODELS,MATERIALS,AND METHODS」(乳房組織のモデル、材料、および方法)(弁護士整理番号第16844.125号)、および2011年2月18日付で出願された米国特許出願第__/___,___号「ULTRASOUND PHANTOM MODELS,MATERIALS,AND METHODS」(超音波ファントムのモデル、材料、および方法)(弁護士整理番号第16844.127号)に開示された材料で形成され、この参照によりこれら各々の全体が本明細書に組み込まれる。特に、特定の一実施形態において、前記皮膚外層140は約00〜約10のショア硬度を有したシリコーン熱硬化性樹脂で形成され、その下の前記組織層は、上記特許出願のいくつかの実施形態で開示されているように、シリコーン発泡材と、シリコーン熱硬化性樹脂と、シリコーンオイルとの組み合わせで形成される。
【0045】
前記硬膜外挿入部材220の材料は、悪影響なく何度も使用することができる。さらに、一部の場合、後続利用者は、それ以前の利用者がどこに針を刺したか認識することはできない。これは、前記シリコーン混合物の優れた自己密閉特性により可能となっている。このシリコーン混合物は自動的に穴を密閉し、多数回の針穿刺後でさえ元の状態に戻る。ただし、前記硬膜外挿入部材220の材料は、最終的には元の状態に戻れなくなって損耗の兆候を呈し、訓練の目的に適さなくなる。そのため、場合により、前記硬膜外挿入部材220は、利用者が容易に交換できる使い捨てユニットである。長期の使用後、前記硬膜外挿入部材220は、単に前記患者シミュレータ222の前記凹部230から取り出され、その凹部内に交換用の硬膜外挿入部材220が配置される。
【0046】
前記硬膜外挿入部材220を使用する際、操作者は、まず空気、生理食塩水、または他の適切な流体を硬膜外針に充填する。その針を、前記腰椎の特徴を参考にしながら適切な位置に配置する。次に、シリンジプランジャに軽く圧力をかけながら、その針を前進させる。一部の場合、硬膜外腔を特定するには、注入に対する抵抗の消失に基づく手技が使用される。当該装置に前記針を挿入するに伴い、当該針の先端から負圧または中立圧力が感じられる空間に入った位置がすなわち硬膜外腔であり、抵抗が消失し、前記針を通じて流体を注入しやすくなる。進歩性のある当該装置における材料および構成技術の組み合わせにより、この触覚フィードバックがもたらされる。前記針が硬膜外腔に進入した時点で、利用者は、軽く何かがはじけた、または何かに当たった感触を得て、前記針が硬膜外腔に入ったことを知ることができ、前記針のシリンジプランジャは圧力の影響を受け始める。
【0047】
硬膜外腔へと針を進める際は、その位置決めに細心の注意を払わなければならない。その場合、利用者は、硬膜を穿刺しないよう、狭い硬膜外腔内でただちに停止しなければならない。現実に硬膜を穿刺してしまうと、患者に重篤な合併症を起こすおそれがある。一部の場合、前記硬膜外挿入部材220には、望ましい硬膜外経路外で硬膜外針から注射が行われた場合にそれを示す機構が含まれる。場合により、その機構は、前記硬膜外針が望ましい硬膜外経路の外に出た時点で、視覚的信号および聴覚的信号の少なくとも一方を有効にするように構成される。その場合、前記機構には、前記硬膜外針の位置を検出するセンサーが含まれることがある。一実施形態では、前記センサーに、前記針の接触により作動されるスナップスイッチ(レバースイッチ)が含まれる。他の場合は、視覚的監視装置を利用して、前記針の位置が監視され、および/またはアラートが起動される。前記針が硬膜外腔内に位置付けられると、前記シリンジおよびプランジャが抜去され、可撓性のカテーテルチューブが前記硬膜外針に挿入される。通常の用途では、前記可撓性のカテーテルチューブを使って、必要に応じ、硬膜外腔に追加薬剤を注入する。
【0048】
ここで図12および13を参照すると、本開示の一態様に基づいてシミュレートされた臍(へそ)302を実装した新生児シミュレータ300が示されている。一実施形態において、この新生児シミュレータ300は、実質的に平均的な在胎28週の新生児サイズである。別の実施形態において、この新生児シミュレータ300は、実質的に平均的な在胎40週の新生児サイズである。一般に、この新生児シミュレータ300は、従来の計測器を使って検出可能な心拍数、拍動、酸素飽和度、および種々の身体音を含む多くの生理学的特性を呈する。この場合、前記臍302は、前記新生児シミュレータの他の部分と同期するように構成される。例えば、前記臍302は、前記新生児シミュレータ300の心臓拍動と同時に起こるようタイミングを合わせて臍帯脈をシミュレートするように構成される。
【0049】
より具体的に図13を参照すると、前記臍302には、その長手方向に沿って延長する3つの経路306、308、および310を有した柔軟な細長い本体またはチューブ304が含まれる。前記3つの経路306、308、および310は、それぞれ静脈および一対の動脈をシミュレートする。この場合、これら3つの経路306、308、および310には、自然な臍の静脈または動脈に対する標準的なカニューレ挿入技術を使ってカニューレを挿入できることがある。場合により、これら3つの経路306、308、および310は、図13で前記チューブ304の端部に示すように、前記チューブ304の外周について略等間隔で離間される。ただし、これら3つの経路306、308、および310は、前記チューブ内で長手方向に沿ってらせん形状にすることができる。その場合、これら3つの経路306、308、および310は、一部の実施形態において、自然な臍の静脈および動脈の自然な構成をシミュレートするように配向される。
【0050】
前記3つの経路306、308、および310は、リザーバ312と流体連通している。その場合、そのリザーバ312には液体が含まれる。一部の場合、前記リザーバ312内の流体は、前記臍302の血液をシミュレートする。前記リザーバには、アクチュエータ314が隣接している。このアクチュエータ314は、前記リザーバ312と前記3つの経路306、308、および310との間で前記流体の流れを制御して臍帯脈をシミュレートするように構成される。一般に、このアクチュエータ314は、流体の流れを制御して臍帯脈をシミュレートする任意の適切な機構であってよく、機械的な、空気圧式の、電気機械的な、および/またはこれらの組み合わせによるものを含む。一実施形態では、前記アクチュエータに、空気弁とそれに伴うベローズが含まれ、この空気弁の作動により前記ベローズが選択的に拡張および収縮して、前記リザーバ312と前記3つの経路306、308、および310との間で前記流体の流れが制御される。その場合、前記ベローズは、拡張すると、前記レザーバ312の少なくとも一部を圧縮して当該レザーバから前記3つの経路306、308、および310内へ流体を押し出し、収縮すると当該レザーバを拡張させて元の状態に戻し、前記流体を当該レザーバへ還流させる。
【0051】
一部の場合、前記臍302は、自然な臍帯の切断に適した技術について医療従事者を訓練するように構成される。その場合、一部のケースでは、前記臍302は、前記柔軟な本体に臍帯クランプを適切に適用すると前記リザーバの前記流体が臍帯クランプより外へ流出しないよう、臍帯クランプと併用することを意図して構成される。さらに、一部の場合、前記臍302は、その材料の切断に必要な力の観点から、自然な臍をシミュレートする材料で形成される。
【0052】
場合により、前記臍302は、前記新生児シミュレータ300の使い捨て構成要素である。その場合、前記新生児シミュレータ300には、前記臍302を受容する凹部または開口部が含まれる。よって、1つの臍は、必要に応じて別の臍と容易に交換できることを理解すべきである。あるいは、前記臍のチューブ304を使い捨て構成要素にして、必要に応じ、当該チューブを交換可能とし、前記リザーバを充填可能としながら、当該臍の残りの部分は、前記新生児シミュレータ300にとどまるようにもできる。
【0053】
ここで図14を参照すると、本開示の別の態様に係る肺コンプライアンスシステム400の図式的な概略図が示されている。この肺コンプライアンスシステム400は、自然な肺機構をシミュレートするように構成されている。特に、この肺コンプライアンスシステム400は、自然な肺を体外式人工呼吸器に接続した場合について、自然な肺機構をシミュレートするように構成されている。一般に、肺コンプライアンスは、加えられた圧力の変化に対する空気体積変化についての指標である。過度に伸張する(過度に柔軟な)肺は、肺コンプライアンスが高いといい、ほとんど伸張しない(過度に剛性の)肺は、肺コンプライアンスが低いという。この肺コンプライアンスシステム400では、コンプライアンスが正常な、高い、および低い肺のシミュレーションが容易になる。その場合、この肺コンプライアンスシステム400は、シミュレートされた1若しくはそれ以上の肺の容積を増減させて、自然な肺コンプライアンスを再現する。
【0054】
図示したように、この肺コンプライアンスシステム400には、右肺区画402および左肺区画404が含まれる。前記右肺区画402には、肺406および圧縮袋408が含まれ、前記左肺区画402には、肺410および圧縮袋412が含まれる。前記肺区画402、404の各々は、肺406、410および圧縮袋408、412をそれぞれ含む閉じ込められた領域を画成する。一部の場合、前記肺区画402、404は、最低限の伸縮性を有する布帛、プラスチック(ビニール)、ポリマー、または他の材料で、および/または所定の最大容積を有するように形成され、後述するように、前記肺406、410および圧縮袋408、412の拡張および収縮中であっても、当該肺区画402、404が前記最大容積を超えて拡張または伸張しないようにされる。前記肺406、410および圧縮袋408、412は、当該肺および圧縮袋の容積の拡張および収縮を可能にするラテックスまたは他の柔軟な材料で形成される。
【0055】
前記肺406、410は、気道414に接続される。特に、前記右肺406は枝部416を通じて前記気道414に接続され、前記左肺410は枝部418を通じて前記気道414に接続される。前記気道414は、体外式人工呼吸器420と連通した外口につながっている。一部の場合、前記気道414は、患者シミュレータの外口、例えばシミュレートされた口および/または鼻につながっている。そのような場合、前記外口を通じた前記体外式人工呼吸器420および前記気道414間の前記インターフェースまたは接続部は、体外式人工呼吸器および自然な患者間のインターフェースまたは接続部を模倣する。この場合、前記体外式人工呼吸器420は、一般に、医療現場で利用される任意の体外式人工呼吸器を表している。一般に、前記肺コンプライアンスシステム400は、市販されている全タイプの人工呼吸器との併用に適している(バッグバルブマスクのほか、コンピュータ制御または自動化された人工呼吸器を含む)。そのため、前記肺コンプライアンスシステム400は、医療従事者が勤務する病院その他の医療現場で使用される特定の人工呼吸器の適切な利用態様について、当該医療従事者を訓練する上で適している。一般に、前記体外式人工呼吸器420と、前記気道414と、前記枝部416、418と、前記肺406、410との間の接続により、前記体外式人工呼吸器420と前記肺406、410との間の空気移動が可能になり、呼吸補助をシミュレートできる。
【0056】
一方、前記圧縮袋408、412は、可変圧力制御弁424を通じて圧縮空気源422に接続される。その場合、前記可変圧力制御弁424は、前記圧縮袋408、412内の空気圧を制御し、ひいてはそれに対応する前記袋の容積を制御する。その場合、前記圧縮袋408、412は、前記区画402、404内の利用可能な空間で拡張され、それに対応して前記肺406、410の拡張が低減される。このように、肺コンプライアンスは前記圧縮袋408、412内の空気圧を増減させて変更され、これにより前記区画402、404内で前記肺406、410が拡張可能な望ましい容積が得られる。この場合、前記袋408、412内の圧力が上昇すると、当該圧縮袋の容積が増えて前記肺406、410の拡張可能な容積が減少し、肺コンプライアンスの低下がシミュレートされる。一方、前記袋408、412内の圧力が低下すると、当該圧縮袋の容積が減って前記肺406、410の拡張可能な容積が増加し、肺コンプライアンスの上昇がシミュレートされる。そのため、前記圧縮袋の圧力とそれに対応する容積を調整すると、肺のサイズも同様に調整されて、肺コンプライアンスが高い値から、正常値、低い値へとシミュレートされる。
【0057】
前記肺コンプライアンスシステム400は左右の肺区画を有するものとして示しているが、他の実施形態では肺区画を1つだけ含む。さらに、前記圧縮袋408、412については、単一の制御弁424に接続されているものとして示しているが、各前記圧縮袋408、412内の圧力が別個に制御される場合もあることを理解すべきである。そのような一部の場合、前記システムには、一対の制御弁が含まれ、その各々が前記圧縮袋の1つに伴う。あるいは、前記単一の制御弁424は、個別に制御される2若しくはそれ以上の出力を有することができ、これにより前記圧縮袋408、412内の圧力を別個に制御できる。さらに、一部の実施形態において、前記圧縮袋408、412は空気または他の気体の代わりに液体で充填される。他の実施形態において、前記圧縮袋408、412は、前記肺区画402、404内で前記肺406、410が拡張できる容積を選択的に増減させる可動部材で置き換えられる。例えば、一実施形態では、前記肺区画402、404の各々に可動壁が含まれ、この可動壁は、前記肺区画内で当該壁の位置を制御するモーター、空気弁、または他のアクチュエータに接続される。前記壁の動きは、前記肺区画内の容積を選択的に増減させる。
【0058】
ここで図15を参照すると、本開示の一実施形態に係る硬膜外および腰椎穿刺作業訓練器500の一部の図式的な概略図が示されている。その場合、この作業訓練器500には、背面プレートまたはシミュレートされた胴502が含まれる。本実施形態において、前記背面プレート502は、シミュレートされた胴の単なる一部であり、作業訓練器500は小型で携帯性の高いものになっている。ただし、他の実施形態において、前記背面プレート502は、マネキン全身の一部である。一般に、前記背面プレート502には、硬膜外および腰椎穿刺処置に関し、腸骨稜を含む非常に重要な解剖学的目印が含まれる。当該作業訓練器500の前記背面プレート502には、硬膜外・腰椎穿刺用挿入部材を受容するようにサイズ調整および成形された凹部または開口部504が含まれる。その点で、前記硬膜外・腰椎穿刺用挿入部材は、一部の場合、上述の挿入部材220と同様なものである。前記開口部504は、シミュレートされた腰椎部内に配置される。例示した実施形態において、この開口部504は、略矩形の外形を有する。ただし、この開口部504は幾何学的および不規則な形状を含むいかなる形状でもよいことを理解すべきである。この開口部504には、前記背面プレート502の外面に対し陥凹した表面508により境界を成す凹部506が含まれる。一部の場合、この凹部506は、後述するように、シミュレートされた硬膜および脳脊髄液を形成する流体を充填したチューブを配向させるための設備(例えば、構造、凹部、コネクタ)を有する。一部の場合、前記表面508は、皮膚と同じ深さの凹部である。すなわち、前記表面508は、前記背面プレート502のシミュレートされた皮膚のおおよその厚さを有する前記背面プレートの縁部(リム)または縁部(エッジ)により境界を成す。その場合、前記硬膜外・腰椎穿刺用挿入部材は、シミュレートされた皮膚層を含むことができ、この皮膚層は、前記表面508に嵌合するようにサイズ調整および成形された張り出し部またはリップを含むため、前記凹部504内に前記硬膜外挿入部材が受容されると、当該硬膜外・腰椎穿刺用挿入部材の皮膚層と前記背面プレート502の皮膚層とが実質的に位置合わせされて連続した皮膚層を形成するようにできる。場合により、前記硬膜外・腰椎穿刺用挿入部材を前記背面プレート502から取り外す際に役立つよう、前記挿入部材の頂部側に構造(例えば、布製のタブ)が取り付けられる。
【0059】
前記背面プレート502および前記硬膜外・腰椎穿刺用挿入部材に加え、前記作業訓練器500は、流体供給システム510を含む。この場合、前記流体供給システム510により、当該作業訓練器500は、腰椎穿刺訓練器および硬膜外穿刺訓練器およびの双方として使用できる。当該流体供給システム500は、圧力源または流体供給源512(例えば、シリンジアセンブリ(組み立て品)、点滴袋アセンブリ、またはポンプ)と、前記流体供給512と連通して硬膜およびくも膜下腔をシミュレートするチューブ514とを含む。その場合、前記チューブ514は、チューブ516、518を通じて前記流体供給512に接続される。一部の場合、チューブ516、518は、互いに、および/またはチューブ514と、一体的に形成される。他の場合、チューブ514、516、および518のうち1若しくはそれ以上は、互いに接続された別個の構成要素である。当該流体供給システムには、チューブの排液または通気を容易にする追加チューブ(図示せず)も含まれる。その場合、前記流体供給システム500のチューブおよびコネクタの構成により、当該システムを閉じ、または開くことができる。その場合は、通常、前記システムでシミュレートされた脳脊髄液を充填または排液するとき、開いたシステムが必要とされる。施術中は、流体ループが望ましい圧力(正常または異常な髄液圧をシミュレートする)に加圧されるよう、閉じたシステムが好ましい。さらに、腰椎穿刺術の開始時に髄液初圧を測定することが望ましく、または必要な場合もある。そのため、望ましいレベルに加圧できる閉ループを使用することで、測定技術の訓練が可能になる。この圧力を柔軟に変更できることから、訓練セッションに、正常な圧力値に対する異常な圧力値の分析を含めることができる。
【0060】
その場合、一部の実施形態では、前記作業訓練器500に、少なくとも前記チューブ514内の圧力を正確に監視および/または設定するように前記流体供給システム510と連通した圧力測定回路も含まれる。一実施形態では、圧力トランスデューサが前記流体ループに組み込まれ、ディスプレイ(表示装置)が設けられて圧力の読み出しを可能にする。このディスプレイは、圧力レベルを示すアナログ(例えば、ダイヤル)式またはデジタル(例えば、LED)式の読み出し値を含んでよい。一部の場合、この圧力ディスプレイは、前記背面プレート502の側壁または他の表面に埋め込まれる。さらに、一部の場合、前記圧力測定回路により、利用者は望ましい圧力を設定でき、また設定した圧力が前記流体供給システムにより達成されるよう制御することができる。前記流体供給システムおよび圧力測定回路は、一部の場合電池式であり、当該システムを小型かつ携帯可能なものにしている。他の場合、前記作業訓練器500では有線電源が利用される。一部の場合、作業訓練器500の装着用に支持用スタンドが設けられる。その場合、前記スタンドを使うと、前記訓練器を座位または左側臥位で使用することができる。
【0061】
図16は、硬膜外および腰椎穿刺作業訓練器520の図式的な概略図である。作業訓練器520は多くの点で作業訓練器500と同様なものであるが、流体供給システムを、当該作業訓練器520の基部522内に含む。一部の場合、前記基部522には、前記作業訓練器に必要なチューブおよび電子機器をすべて含むようサイズ調整および成形された開口部、区画、および/または他の構造が含まれる。図示したように、前記作業訓練器522の前記基部520には、前記硬膜外・腰椎穿刺用挿入部材を受容するようにサイズ調整および成形された凹部または開口部524が含まれる。この開口部524には、前記基部502の外面に対し陥凹した表面528により境界を成す凹部526が含まれる。当該作業訓練器520には流体供給システムも含まれ、これにより当該作業訓練器500を腰椎穿刺訓練器および硬膜外訓練器の双方として使用できるようになる。当該流体供給システム500は、圧力源または流体供給源530(例えば、シリンジアセンブリ(組み立て品)、点滴袋アセンブリ、またはポンプ)と、前記流体供給源と連通して硬膜およびくも膜下腔をシミュレートするチューブ532とを含む。図示したように、この流体供給システム500は、その全体が前記基部522の外形内に収容される。
【0062】
ここで図17および18を参照すると、本開示の一実施形態に係る成形システム540が示されている。より具体的にいうと、図17は、前記成形システム540が分離された状態の斜視図であり、一方、図18は、この硬膜外成形システムを組み立てた状態の斜視図である。この場合、当該成形システム540は、特に本開示の硬膜外・腰椎穿刺用挿入部材を成形する上で適している。前記腰椎も、前記硬膜外・腰椎穿刺用挿入部材アセンブリも、割型で製造される。前記腰椎は、割型を備えたグローブ成形装置で製造される。硬質な脊椎は、幾何学的構造が複雑であるため、離型しやすいよう二分割される柔軟なグローブ成形装置内で成形する必要がある。2部品からなるグローブ成形装置は、腰椎の基礎を形成する解剖学的モデルの周囲に設置および注型される。一部の場合、このグローブ成形装置は、矩形箱内に流し込まれる。その結果、グローブ成形装置の幾何学的外形は矩形になり、内部の空洞は、前記解剖学的モデルの外形に沿ったものとなる。場合により、前記グローブ成形装置は、ショア硬度が約10A〜30Aの白金硬化シリコーン熱硬化性樹脂から製造される。一実施形態において、前記グローブ成形装置は、ショア硬度が約10Aのシリコーン熱硬化性樹脂(例えば、Dragon Skin(登録商標)10 Medium、Smooth−On,Inc.、米国ペンシルバニア州Easton)で形成される。
【0063】
より具体的に図17を参照すると、成形システム540は、割型部分544と割型部分546との間に腰椎542が配置された状態で示されている。この場合、前記硬膜外・腰椎穿刺用挿入部材アセンブリを成形する割型を画成する前記割型部分544、546は、複雑な幾何学的形状を有し、ラピッドプロトタイピングおよび/または直接金属レーザー焼結(direct metal laser sintering:DMLS)などの工程を使って製造すると最適に機能する。ラピッドプロトタイピングの場合は、3DプリンタでABS製の型が作製される。DMLSを利用する場合は、アルミニウム製の型が作製される。前記割型部分544、546には複数の位置決め用突出部が含まれ、これらを利用して当該割型部分544、546が互いに連結され、当該割型部分544、546に対し、定位置に前記腰椎542が固定される。例示した実施形態では、割型部分544から延出した突出部548がそれに対応した割型部分546の凹部に係合する。同様に、割型部分544、546から延出した突出部552は、それに対応した前記腰椎542の凹部またはくぼみに係合する。その場合、前記位置決め用突出部548および/または552は、ネジまたは他の係合構造であることもある。図18を参照すると、前記割型部分544、546は、前記腰椎542と組み合わされた状態で示されている。この割型構成により、当該アセンブリの離型が可能になる。
【0064】
挿入部材220について上述したように、本開示の前記硬膜外・腰椎穿刺用挿入部材は、皮膚層、皮下層、シミュレートされた黄色靱帯、および腰椎(例えば、L2、L3、L4、およびL5)から成り、それらの特性は、前記注射工程で現実的な触覚フィードバックをもたらすよう最適化される。一部の実施形態において、前記皮膚層は、ショア硬度が約00〜30および約30Aの白金硬化シリコーン熱硬化性樹脂から製造される。一実施形態において、前記皮膚層は、ショア硬度が約10Aのシリコーン熱硬化性樹脂(例えば、Dragon Skin 10 Medium、Smooth−On,Inc.、米国ペンシルバニア州Easton)で形成され、前記背面プレートの皮膚の色合いに合う色をもたらす顔料を含む。一部の実施形態において、前記皮下層は、シリコーン発泡材、シリコーン熱硬化性樹脂、およびシリコーン油の混合物から製造される。一部の実施形態において、前記シリコーン発泡材(例えば、Soma Foama、Smooth−On,Inc.、米国ペンシルバニア州Easton)は、総重量の約10%〜約40%の範囲であり、前記シリコーン熱硬化性樹脂は、ショア硬度が約00〜10(例えば、Silicone 99−255、Smooth−On,Inc.、米国ペンシルバニア州Easton)で総重量の約15%〜約65%範囲であり、前記シリコーン油(例えば、TC−5005 C、BJB Enterprises、米国カリフォルニア州Tustin、またはF−100、SILPAK,Inc.、米国カリフォルニア州Pomona)は、総重量の約10%〜約70%範囲である。特定の一実施形態において、前記皮下層は、発泡材の割合を約15%、シリコーン熱硬化性樹脂の割合を約17%、シリコーン油(TC−5005 C、BJB Enterprises、米国カリフォルニア州Tustin)の割合を約68%にして形成される。本願発明者らは、この混合物により、皮下層の硬度および粘稠度を正確に表す層が生成されることを見出した。一部の実施形態において、前記シミュレートされた黄色靱帯は、ショア硬度が約10A〜50Aの白金硬化シリコーン熱硬化性樹脂から製造される。一実施形態において、前記黄色靱帯層は、ショア硬度が約20Aのシリコーン熱硬化性樹脂(例えば、Dragon Skin(登録商標)20、Smooth−On,Inc.、米国ペンシルバニア州Easton)で形成される。前記腰椎は、骨を現実的に表すよう硬質材料で作製される。一実施形態において、前記脊椎は、ショア硬度が約70Dの成形可能なウレタンプラスチック(例えば、Smooth−Cast(登録商標)305、Smooth−On,Inc.、米国ペンシルバニア州Easton)で形成される。成形可能なウレタンプラスチックを使うと、前記脊椎の成形において、当該脊椎の粘性を低くでき(そのため、注型が容易になる)、顔料を追加しなくとも最終的な硬化済み部品が骨と同様な色に着色され、室温での離型時間が(約30分間に)短縮されるという利点が得られる。
【0065】
前記硬膜外・腰椎穿刺用挿入部材のこれら組織層の特性は、針穿刺中に触覚フィードバックを提供する上で非常に重要である。前記材料層は、それぞれ硬度および厚さの点で異なる。前記硬膜外・腰椎穿刺用挿入部材は、皮膚、皮下、および黄色靱帯を通じて穿刺した際のフィードバック再現を目的としているため、筋膜および筋肉を含めることは重要ではない。ただし、他の実施形態では、完全性のため筋膜および筋肉の層が含まれる。
【実施例1】
【0066】
明るい肌色の硬膜外・腰椎穿刺用挿入部材の製造
以下、本開示に係る硬膜外および腰椎穿刺用挿入部材を製造する一方法について一例を示す。これは、例示および説明を目的として提供するものであり、本開示に係る硬膜外および/または腰椎穿刺用挿入部材を作製する他の代替技術について限定するものと見なすべきではないことを理解すべきである。
【0067】
1.皮膚層の製造:
型(モールド)を洗浄して組み立てたのち、離型剤を適用する。
皮膚混合物を調製する(材料:Dragon Skin 10 Medium)。
パートBを90g測り、Silc Pig Fleshtoneを0.4g加え、Fuse FX Rosy Skinを1滴(約0.05mL)加え、FuseFX Light Skinを2滴(約0.1mL)加え、色が均一になるまで混合する。
パートAを90g加える。
気泡がすべてなくなるまで混合および減圧する。
前記皮膚混合物を前記型に注ぐ(最低点から注ぎ始める)。前記皮膚混合物をすべて前記金型に注ぐ。
66℃で45分間硬化させる。
【0068】
2.腰椎の製造:
前記型をクリーニングして組み立てる。
腰椎混合物を調製する(材料:Smooth−Cast(登録商標)305)。
パートAを40g測り、パートBを40g加える。
白色から透明に変わるまで混合する。
シリコーン型に注ぐ。半分充填した時点で、シリコーン型を軽く叩き、混合物中の気泡をリリースしたのち、頂部まで充填する。
前記型を完全に充填する(頂面の2mm下まで)。
適切に換気された場所、例えばドラフト内に配置して硬化させる。
室温(73℃)で30分間硬化させる。
【0069】
3.脂肪層の製造:
脂肪混合物を調製する(材料:Soma Foama、Silicone 99−255、およびTC 5005C)。
Silicone 99−255パートAを17.5g測り、Soma FoamaパートAを21g加え、TC 5005Cを140g加え、分布が均一になるまで混合する。
Silicone 99−255パートBを17.5g加え、Soma FoamaパートBを10.5g加える。
気泡が形成されて反応が始まるまで混合すると、当該混合物の粘性が高まり始める(73゜Fで約8分間)。
前記混合物を前記型内に移し、硬化し始めるまで引き続き当該材料を混合する。
前記発泡材混合物が完全に硬化する前に、前記位置決め用ネジ内に前記脊椎セグメントを配置する。
室温で2時間硬化させる。
【0070】
黄色靱帯の製造:
靱帯混合物を調製する(材料:Dragon Skin(登録商標)20)。
パートBを60g測り、Silc Pig Bloodを2滴(約0.2mL)加え、色が均一になるまで混合する。
パートAを60g加える。
気泡がすべてなくなるまで混合および減圧する。
前記型に前記混合物を注ぎ、各椎孔の開口部でシミュレートする脂肪層を覆うよう確認する。
室温(73℃)で4時間硬化させる。
【0071】
ここで図19を参照すると、本開示の別の一実施形態に係る肺コンプライアンスシステム600の図式的な概略図が示されている。この肺コンプライアンスシステム600は、自然な肺機構をシミュレートするように構成されている。特に、この肺コンプライアンスシステム600は、自然な肺を体外式人工呼吸器に接続した場合について、呼気終末陽圧(positive end−expiratory pressure:PEEP)および補助・調節換気を含め、自然な肺機構をシミュレートするように構成されている。この場合、PEEPは、肺を空にする受動的な圧力に対抗した圧力をかけて、患者の気道内圧を大気圧より高く維持するため使用される。PEEPは、肺の機能的残気量が低下した患者に使用されることが多く、機能的残気量とは、通常の呼息終了時、肺に残っている気体の容積をいう。機能的残気量は、主に肺コンプライアンスに関係する肺および胸壁の弾性特性により決定される。一般に、肺コンプライアンスは、かけられた圧力の変化に対する空気体積変化についての指標である。過度に伸張する(過度に柔軟な)肺は、肺コンプライアンスが高いといい、ほとんど伸張しない(過度に剛性の)肺は、肺コンプライアンスが低いという。この肺コンプライアンスシステム600では、コンプライアンスが正常な、高い、および低い肺のシミュレーションが容易になる。その場合、この肺コンプライアンスシステム600は、シミュレートされた1若しくはそれ以上の肺の容積を増減させて、自然な肺コンプライアンスを再現する。
【0072】
図示したように、この肺コンプライアンスシステム600には、右肺区画602および左肺区画604が含まれる。前記右肺区画602には、肺606、圧縮袋608、および圧迫袋609が含まれ、前記左肺区画604には、肺610、圧縮袋612、および圧迫袋613が含まれる。前記肺区画602、604の各々は、肺606、610、圧縮袋408、412、および圧迫袋609、613をそれぞれ含む閉じ込められた領域を画成する。一部の場合、前記肺区画602、604は、最低限の伸縮性を有する布帛、プラスチック(ビニール)、ポリマー、または他の材料で、および/または所定の最大容積を有するように形成され、後述するように、前記肺606、610、圧縮袋608、612、および圧迫袋609、613の拡張および収縮中であっても、当該肺区画602、604が前記最大容積を超えて拡張または伸張しないようにされる。前記肺606、610、圧縮袋608、612、および圧迫袋609、613は、当該肺、圧縮袋、および圧迫袋の容積の拡張および収縮を可能にするラテックスまたは他の柔軟な材料で形成される。
【0073】
前記肺606、610は、気道614に接続される。特に、前記右肺606は枝部616を通じて前記気道614に接続され、前記左肺610は枝部618を通じて前記気道614に接続される。前記気道614は、体外式人工呼吸器620と連通した外口につながっている。一部の場合、前記気道614は、患者シミュレータの外口、例えばシミュレートされた口および/または鼻につながっている。そのような場合、前記外口を通じた前記体外式人工呼吸器620および前記気道614間の前記インターフェースまたは接続部は、体外式人工呼吸器および自然な患者間のインターフェースまたは接続部を模倣する。この場合、前記体外式人工呼吸器620は、一般に、医療現場で利用される任意の体外式人工呼吸器を表している。一般に、前記肺コンプライアンスシステム600は、市販されている全タイプの人工呼吸器との併用に適している(バッグバルブマスクのほか、コンピュータ制御または自動化された人工呼吸器を含む)。そのため、前記肺コンプライアンスシステム600は、医療従事者が勤務する病院その他の医療現場で使用される特定の人工呼吸器の適切な利用態様について、当該医療従事者を訓練する上で適している。一般に、前記体外式人工呼吸器620と、前記気道614と、前記枝部616、618と、前記肺606、610との間の接続により、前記体外式人工呼吸器620と前記肺606、610との間の空気移動が可能になり、呼吸補助をシミュレートできる。
【0074】
前記圧縮袋608、612および前記圧迫袋609、613は、圧縮空気源622に接続される。前記圧縮袋608、612は、可変圧力制御弁624を通じて前記空気源622に接続される。その場合、前記可変圧力制御弁624は、前記圧縮袋608、612内の空気圧を制御し、ひいてはそれに対応する前記圧縮袋の容積を制御する。その場合、前記圧縮袋608、612は、前記区画602、604内の利用可能な空間で拡張され、それに対応して前記肺606、610の容積が低減される。このように、肺コンプライアンスは前記圧縮袋608、612内の空気圧を増減させて変更され、これにより前記区画602、604内で前記肺606、610が拡張可能な望ましい容積が得られる。この場合、前記袋608、612内の圧力が上昇すると、当該圧縮袋の容積が増えて前記肺606、610の拡張可能な容積が減少し、肺コンプライアンスの低下がシミュレートされる。一方、前記圧縮袋608、612内の圧力が低下すると、当該圧縮袋の容積が減って前記肺606、610の拡張可能な容積が増加し、肺コンプライアンスの上昇がシミュレートされる。そのため、前記圧縮袋608、612の圧力とそれに対応する容積を調整すると、肺606、610のサイズも同様に調整されて、肺コンプライアンスが高い値から、正常値、低い値へとシミュレートされる。
【0075】
前記圧迫袋609、613は、弁626を通じて前記空気源622に接続される。弁626は、前記圧迫袋609、613への空気の流れを制御する。その場合、前記圧迫袋609、613の拡張は、前記シミュレータの呼吸周期と同期される。より具体的にいうと、前記圧迫袋609、613は、呼息とともに拡張し、吸息とともに収縮する。一部のケースでは、気道614と連通した圧力センサー627を利用して前記人工呼吸器の呼息および吸息のパターンが監視される。その場合、圧力の増加は吸息に関連付けられ、圧力の減少は呼息に関連付けられる。前記圧迫袋609、613(および前記圧縮袋608、612)が拡張すると、前記肺区画602、604内で前記肺606、610が拡張できる容積が減少し、当該肺606、610からの強制排気が促進される(呼息がシミュレートされる)。他方、前記圧迫袋609、613が収縮すると、前記肺区画602、604内で前記肺606、610が拡張できる容積が増加し、当該肺606、610に空気が入れるようになる(吸息がシミュレートされる)。拡張した前記圧迫袋609、613、ならびに前記圧縮袋608、612は、前記区画内に残された、前記肺606、610が拡張できる容積を画成する。これにより、一部の場合、前記圧迫袋609、613および前記圧縮袋608、612の拡張は、前記肺606、610の機能的残気量を画成する態様で制御される。これにより、当該肺システム600は、前記体外人工呼吸器620の呼気終末陽圧(PEEP)の観点で利用可能になる。
【0076】
また、この肺コンプライアンスシステム600は、CO呼気をシミュレートするとともに、前記シミュレータをいつでも移動できるように構成されている。その点で、これまでのシステムは、外部CO源、例えば容器(患者シミュレータ内に収容するには大きすぎる)または配管(定位置に配置した)に依存しており、シミュレータの移動性が制限されてきた。これと対照的に、前記肺コンプライアンスシステム600には、患者シミュレータ内に容易に設置できるCOシステム628が含まれる。この場合、当該COシステム628には、小型CO容器630と、圧力調整器632と、弁634とが含まれ、これらは前記気道614と連通している。一部の実施形態において、前記CO容器630は、約2g〜約250gのCOを収容する。その場合、一部のケースにおいて、このCO容器630は、多くの娯楽目的(例えば、自転車のタイヤ再充填、ペイントボールガン)で利用されるものと同様な市販のCO容器である。前記圧力調整器632は、CO容器630から加えられた圧力を低減する。一部の場合、この圧力調整器632は、前記圧力を約3psiまで低減する。前記弁634は、前記シミュレータの呼吸周期と連動して開くため、当該シミュレータが息を吐き出すたびに少量のCOが排出されるようにできる。
【0077】
また、前記肺コンプライアンスシステム600は、補助・調節換気面でも前記体外人工呼吸器620と併用できるように構成されている。その点について、この肺コンプライアンスシステム400は、前記人工呼吸器に前記シミュレータの呼吸を補助させるように当該人工呼吸器を起動することができる。補助・調節換気は、自力ではまだ呼吸できない患者に使用される。そのため、前記肺コンプライアンスシステム400は、患者の自然な呼吸が不十分であると感知した場合、前記人工呼吸器620を利用して患者の呼吸を補助する。肺コンプライアンスシステム600については、空気流システム636を利用して、補助・調節換気面で人工呼吸器と併用できる態様で患者の自然な呼吸がシミュレートされる。その場合、前記空気流システムには、真空タンク638と、圧縮機640と、真空バルブ644と、逆止弁646とが含まれる。使用時、前記圧縮機640は、前記真空タンク638から空気を抽出し、前記逆止弁646を通じて、抽出した空気を気道614へ送る。この場合、逆止弁646は一方向弁であるため、空気は圧縮機640から気道614へ向かう方向のみ流れることができる。前記真空バルブ644は、前記シミュレータの呼吸数と連動して、前記気道614を前記真空タンク638と接続する。前記気道614を前記真空タンク638に接続すると、空気は当該気道614から除去される。これを利用して、前記人工呼吸器620の補助機能が起動される。その点に関して、人工呼吸器の多くは、患者体内を出入りする空気量を監視する。それらの量が等しくないと決定されると、人工呼吸器はアラーム音を発生させる。そのため、前記空気流システム636は閉ループシステムとなっており、前記シミュレータに入る空気量と前記シミュレータから出る空気量が確実に等しくなるようにする。その場合、前記真空タンク638から抽出された空気は、前記シミュレータの前記気道(場合により、枝部616、618および肺606、610を含む)に入り、前記真空タンク638が前記真空バルブ644を通じて前記気道に接続されると、前記気道からの空気が前記真空タンクを充填する。
【0078】
前記肺コンプライアンスシステム600は左右の肺区画を有するものとして示しているが、他の実施形態では肺区画を1つだけ含む。さらに、前記圧縮袋608、612については、単一の制御弁624に接続されているものとして示しているが、各前記圧縮袋608、612内の圧力が別個に制御される場合もあることを理解すべきである。そのような一部の場合、前記システムには、一対の制御弁が含まれ、その各々が前記圧縮袋の1つに伴う。あるいは、前記単一の制御弁624は、個別に制御される2若しくはそれ以上の出力を有することができ、これにより前記圧縮袋608、612内の圧力を別個に制御できる。同様に、前記圧迫袋609、613は、1若しくはそれ以上の弁を使って個別に制御できる。さらに、一部の実施形態において、前記圧縮袋608、612および/または前記圧迫袋609、613は、空気または他の気体の代わりに液体で充填される。他の実施形態において、前記圧縮袋608、612および/または前記圧迫袋609、613は、前記肺区画602、604内で前記肺606、610が拡張できる容積を選択的に増減させる可動部材で置き換えられる。例えば、一実施形態では、前記肺区画602、604の各々に1若しくはそれ以上の可動壁が含まれ、各可動壁は、前記肺区画内で当該壁の位置を制御するモーター、空気弁、または他のアクチュエータに接続される。前記壁の動きは、前記肺区画内の容積を選択的に増減させ、および/または肺の収縮または拡張を補助する。
【0079】
例示的な諸実施形態について示し、説明してきたが、以上の開示においては広範囲な修正形態、変更形態、および置換形態が考えられ、本開示の一部の特徴は、それに対応した他の特徴の使用を伴わなわずに使用される場合もある。そのような変形形態は、上記において、前記実施形態の範囲を逸脱しない範囲で可能であることを理解すべきである。そのため、添付の請求項は、本開示の範囲と一貫した態様で広義に解釈することが適切である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者看護について教示するシステムであって、
肺コンプライアンスシミュレーションシステムであって、
肺区画と、
前記肺区画内に配置され、拡張可能かつ収縮可能なシミュレートされた肺と
を有するものである、前記肺コンプライアンスシミュレーションシステムを有し、
前記肺区画は、前記シミュレートされた肺が拡張可能な容積を有し、当該シミュレートされた肺が拡張可能な容積は、前記シミュレートされた肺のコンプライアンスを制御するために調整可能である
システム。
【請求項2】
請求項1記載のシステムにおいて、前記肺コンプライアンスシミュレーションシステムは、さらに、前記肺区画内に配置された圧縮袋を含むものであるシステム。
【請求項3】
請求項2記載のシステムにおいて、前記圧縮袋は、前記シミュレートされた肺が拡張可能な容積を調整するために拡張可能かつ収縮可能であるシステム。
【請求項4】
請求項3記載のシステムにおいて、前記圧縮袋は、加圧空気源と流体連通しているものであるシステム。
【請求項5】
請求項4記載のシステムにおいて、前記肺コンプライアンスシステムは、さらに、前記圧縮袋内の空気圧を制御する制御弁を含むものであるシステム。
【請求項6】
請求項5記載のシステムにおいて、前記制御弁は、前記圧縮袋と前記加圧空気源との間に配置されるものであるシステム。
【請求項7】
請求項2記載のシステムにおいて、前記肺コンプライアンスシステムは、さらに、前記肺区画内に配置された圧迫袋を有するものであるシステム。
【請求項8】
請求項7記載のシステムにおいて、前記圧迫袋は、呼息とともに拡張し、吸息とともに収縮するように構成されるものであるシステム。
【請求項9】
請求項8記載のシステムにおいて、前記圧迫袋は加圧空気源と流体連通し、前記圧迫袋と前記加圧空気源との間に弁が配置され、前記弁は、呼息および吸息と連動して前記圧迫袋内へと空気の流れを制御するように構成されるものであるシステム。
【請求項10】
請求項1記載のシステムにおいて、前記肺コンプライアンスシステムは、患者シミュレータ内に配置されるものであるシステム。
【請求項11】
請求項10記載のシステムにおいて、前記患者シミュレータは、シミュレートされた口およびシミュレートされた鼻の少なくとも一方を有するシミュレートされた頭部を含むものであるシステム。
【請求項12】
請求項11記載のシステムにおいて、前記患者シミュレータは、さらに、前記シミュレートされた口および鼻の少なくとも一方に前記シミュレートされた肺を連通させるシミュレートされた気道をさらに含むものであるシステム。
【請求項13】
請求項12記載のシステムにおいて、前記患者シミュレータおよび前記肺コンプライアンスシステムは、人工呼吸器と連動するように構成されるものであるシステム。
【請求項14】
請求項13記載のシステムにおいて、前記人工呼吸器はバッグバルブマスク(bag valve mask)であるシステム。
【請求項15】
請求項13記載のシステムにおいて、前記肺コンプライアンスシステムは、前記人工呼吸器の補助・調節機能を起動するように構成されるものであるシステム。
【請求項16】
請求項15記載のシステムにおいて、前記肺コンプライアンスシステムは、前記患者シミュレータのシミュレートされた呼吸パターンと連動して前記人工呼吸器の前記補助・調節機能を起動させる真空タンクおよび真空バルブを含むものであるシステム。
【請求項17】
請求項10記載のシステムにおいて、前記肺コンプライアンスシステムは、CO呼気をシミュレートするように構成されるものであるシステム。
【請求項18】
請求項17記載のシステムにおいて、前記肺コンプライアンスシステムは、前記患者シミュレータの一部に完全に収納されたCO容器と、当該CO容器と流体連通する圧力調整器と、当該圧力調整器と連通した弁とを含み、前記弁は、前記患者シミュレータのシミュレートされた呼吸パターンと連動してCO呼気をシミュレートするものであるシステム。
【請求項19】
装置であって、
最大容積を有する肺区画と、
前記肺区画内に配置され、自然な肺の機能をシミュレートするように拡張可能かつ収縮可能な第1の袋と、
前記肺区画内で前記第1の袋に隣接して配置された第2の袋であって、可変量の前記最大容積を占有するように拡張可能かつ収縮可能であり、これにより前記第1の袋のシミュレートされた肺コンプライアンスを制御する第2の袋と
を有する装置。
【請求項20】
請求項19記載の装置において、前記第1の袋はラテックスで形成されるものである装置。
【請求項21】
請求項20記載の装置において、前記第2の袋はラテックスで形成されるものである装置。
【請求項22】
請求項21記載の装置において、前記肺区画はラテックスより柔軟性の低い材料で形成されるものである装置。
【請求項23】
請求項19記載の装置において、前記第2の袋により占有される最大容積の増加により前記第1の袋の前記シミュレートされた肺コンプライアンスが減少するものである装置。
【請求項24】
請求項23記載の装置において、前記第2の袋により占有される最大容積の減少により前記第1の袋の前記シミュレートされた肺コンプライアンスが増加するものである装置。
【請求項25】
請求項24記載の装置において、加圧空気源および前記第2の袋と連通した制御弁は、前記第2の袋の容積を制御するものである装置。
【請求項26】
患者シミュレータであって、
右肺区画と、
前記右肺区画内に配置され、自然な肺の機能をシミュレートするように拡張可能かつ収縮可能なシミュレートされた右肺と、
前記右肺区画内で前記シミュレートされた右肺に隣接して配置された右圧縮袋であって、前記右肺区画の可変量を占有するように拡張可能かつ収縮可能であり、これにより、前記シミュレートされた右肺の右肺コンプライアンスを制御するものである、前記右圧縮袋と、
左肺区画と、
前記左肺区画内に配置され、自然な肺の機能をシミュレートするよう拡張可能かつ収縮可能なシミュレートされた左肺と、
前記左肺区画内で前記シミュレートされた左肺に隣接して配置された左圧縮袋であって、前記左肺区画の可変量を占有するように拡張可能かつ収縮可能であり、これにより、前記シミュレートされた左肺の左肺コンプライアンスを制御するものである、前記左圧縮袋と
を有する患者シミュレータ。
【請求項27】
請求項26記載の患者シミュレータにおいて、加圧空気源と連通する制御弁は、前記右および左圧縮袋の各々の容積を制御するものである患者シミュレータ。
【請求項28】
請求項27記載の患者シミュレータにおいて、前記シミュレートされた右肺および左肺は、それぞれシミュレートされた気道と連通しているものである患者シミュレータ。
【請求項29】
請求項28記載の患者シミュレータにおいて、前記シミュレートされた気道は、シミュレートされた口およびシミュレートされた鼻の少なくとも一方に連通するものである患者シミュレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2013−520688(P2013−520688A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−554070(P2012−554070)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【国際出願番号】PCT/US2011/025519
【国際公開番号】WO2011/103495
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(506177659)ゴーマード サイエンティフィック カンパニー、インク. (5)
【Fターム(参考)】