説明

患部洗浄装置

【課題】 患部に必要以上の刺激を与えることなく患部を洗浄又は消毒することで患部の洗浄と血行の促進を実現し、患部の痛みの緩和や術後の消毒に有効であって、洗浄後の汚水に含まれている細菌による感染のおそれを防止することができる患部洗浄装置を提供する。
【解決手段】 平面から見て流体溜部材8は座部部材4の開口3内に位置し、流体溜部材8には常時上昇方向の弾発力が作用しており、使用時には流体溜部材8の開口部12の端面が患部に接触した後、患部の移動に追従して僅かに下降しつつ患部との密着状態を維持する構造を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、患部を洗浄又は消毒するための患部洗浄装置に関し、特に、肛門部に適用した場合に、痔の予防及び治療に効果的な患部洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、痔には、体質、生活様式、食生活に関係があるとされている肛門の粘膜下にある痔静脈叢の瘤状拡張を示す「痔核」、肛門の感染と肛門括約筋の痙攣が原因の一つであるとされている肛門の粘膜が裂け難治性の潰瘍をつくりやすい「痔裂」、肛門の感染が原因で肛門周囲膿瘍が自潰した結果生ずる瘻孔からなる「痔瘻」などが知られている。
【0003】
痔の中で最も一般的な「痔核」は、便秘、妊婦、分娩などで肛門が鬱血をきたすことが原因とされ、その症状としては排便時の出血で、排便後滴下したり噴出したりすることがあり、出血を繰り返すと貧血症状をきたすことがある。また、細菌感染を起こすと疼痛を生じ、ときには直腸下部が肛門外へ脱出嵌頓し耐え難い苦痛を伴うが、軽度のものでは便通の調節、温浴、座薬挿入で治るといわれている。
【0004】
ところで、肛門の鬱血を緩和の1つとして血行の促進が考えられ、痔の予防及び治療に効果的であるといえる。
【0005】
そこで、患部の血行の促進という観点から、ノズルから適度な温度の洗浄水を患部に当てることによって血管が膨張して血行が促進されるだけでなく、適度な温度の洗浄水を噴出圧力を有する噴水状にして患部に当てることにより血管を機械的に刺激し、マーサージ効果による血行の促進を実現しているものとして、特開2001−258987号公報に記載された人体局部洗浄装置に係る技術が知られている(特許文献1を参照)。
【0006】
この人体局部洗浄装置に係る技術は、さらに、患部に到達する洗浄水が温水と冷水とで交互に切り替わるようにして、血管の膨張と収縮を繰り返し行うことにより、血管壁を強化するといった副次的な効果をも狙ったものとなっている。そのために、洗浄水を吐出するノズルに温水を吐出する温水吐出孔と冷水を吐出する冷水吐出孔とを備え、温水吐出孔と冷水吐出孔から略同時にそれぞれ温水及び冷水を吐出させつつ、ノズルを往復動させる構造を採用している。
【0007】
したがって、この人体局部洗浄装置に係る技術は、温水を患部に当てて血管の膨張させて血行を促進する「温水効果」と、噴水を患部に当てることにより血管を機械的に刺激して血行を促進する「マッサージ効果」と、温水と冷水を交互に患部に当てて血管の膨張と収縮を繰り返し行うことにより、血管壁の強化を図る「温冷効果」が得られる点で優れている。
【0008】
しかしながら、患部の状態によっては、噴水を患部に当てることにより血管を機械的に刺激されると痛みが増すといったことあり、そのような装置の使用を避ける患者も多かった。
【0009】
また、赤外線ランプを設けたボウル状の温水浴槽と、この温水浴槽の上部に設けられ、臀部を温水浴槽内に浸漬するように支持する環状の座部と、この座部の外側に設けられ気泡を発生するバブリング装置と、温水浴槽内に設けられた座部に腰掛けた臀部の肛門に向かって薬液を噴射する薬液噴射ノズルとからなる特開2006−14919号公報に記載された肛門加熱洗浄装置に係る技術が知られている(特許文献2を参照)。
【0010】
この肛門加熱洗浄装置に係る技術は、バブリングされた温水が肛門を適度にマッサージしながら洗浄して加熱し、洗浄が終わったら肛門が赤外線ランプで加熱して乾燥される。その後、薬液噴射ノズルから肛門に向けて霧状の薬液が噴射されて肛門に塗布される。
【0011】
したがって、この肛門加熱洗浄装置に係る技術によれば、肛門の傷口を清潔に保持し、血行を促進すると共に、薬液による傷口の回復を早めることができるといった効果が期待できる。
【0012】
この肛門加熱洗浄装置に係る技術では、環状の座部の周りには皿状のオーバーフロー受け部が形成されており、座部から溢れた温水がオーバーフロー受け部に流れて、その底部に設けられているドレイン管を通って外部の汚水を入れる容器に流れ込むようになっている。また、温水浴槽の底部には排水口が形成され、ここにドレイン管が接続され、その下端は本体部の外部に取り付けたドレインコックに接続され、外部の汚水を入れる容器に排水するようになっている。
【0013】
そのため、肛門を洗浄した洗浄後の汚水が上方に向けて開放されているオーバーフロー受け部を通過することで、ほぼ全面が空気に触れているオーバーフロー受け部に細菌が付着するおそれがある。
【0014】
また、温水浴槽内に入って洗浄後の汚水はドレインコックを開くことで外部の汚水を入れる容器に排水されるが、汚水を入れる容器は本体とは別個独立したものであって、ドレインコックの吐出口と汚水を入れる容器の口とが両者とも外気に開放された状態で存在しているため、地震などによって不意に本体部や汚水を入れる容器に働いた場合には、洗浄後の汚水が汚水を入れる容器の外に流れ出すおそれもある。仮に、ドレインコックの吐出口と汚水を入れる容器の口とを直結したとしても、別個独立した容器内の汚水を捨てる場合には、その直結部分から汚水容器を取り外して汚水を捨てて、再度ドレインコックの吐出口と汚水を入れる容器の口とを直結する作業が必要になる。この場合は、この取り付け取り外し作業の際に、汚水が床面などにこぼれるおそれがある。
【0015】
したがって、この肛門加熱洗浄装置に係る技術では、肛門を洗浄した洗浄後の汚水が空気に触れることで、洗浄後の汚水に含まれている細菌による感染のおそれを防止することができない。
【特許文献1】特開2001−258987号公報
【特許文献2】特開2006−14919号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
この発明は、以上のような従来の技術の問題点を解消し、患部に必要以上の刺激を与えることなく患部を洗浄又は消毒することで患部の洗浄と血行の促進を実現し、患部の痛みの緩和や術後の消毒に有効であって、洗浄後の汚水に含まれている細菌による感染のおそれを防止することができる患部洗浄装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、洗浄水又は消毒液が吐出する吐出孔と患部を洗浄した後の洗浄後の流体を吸引する吸引孔とを底面部に備えると共に上面に開口部を有する椀状の流体溜部材と、中央部に開口を備えた平面から見て略U字形乃至略O字形をした座部部材と、洗浄水又は消毒液が前記吐出孔から吐出されて前記流体溜部材の流体溜本体を充満しつつ前記洗浄後の流体を前記吸引孔から吸引し、前記洗浄後の流体を浄化した洗浄水又は消毒液を前記吐出孔から連続して吐出する循環流を生成する循環浄化装置と、を有する患部洗浄装置であって、平面から見て前記流体溜部材は前記座部部材の開口内に位置し、前記流体溜部材には常時上昇方向の弾発力が作用しており、使用時には前記流体溜部材の開口部の端面が患部の周囲に接触した後、患部の移動に追従して僅かに下降しつつ患部の周囲との密着状態を維持する構造を有していることを特徴としている。
【0018】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記座部部材と前記流体溜部材との間には、漏斗状の流体受けを有し、該流体受けの開口部と前記流体溜部材の外形との間には流体が通過できる間隙が形成されており、前記流体溜部材の開口部から溢れ出た流体が前記流体受けを通過して前記循環洗浄装置へ導入されるようになっていることを特徴としている。
【0019】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記流体溜部材の開口部は、人体の陰部を除いた人体の会陰部と肛門部を含む領域を下方から覆うことのできる大きさであることを特徴としている。
【0020】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の構成に加え、前記流体溜部材の開口部の端面には、シリコーンゴムからなる緩衝部材が着脱自在に取り付けられていることを特徴としている。
【0021】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、人間が前記座部部材に腰掛けた状態において、前記座部部材の前方中央部に前記循環洗浄装置の動作スイッチが配置されていることを特徴としている。
【0022】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記流体溜部材の下降開始及び上昇終了を感知するセンサーを有し、前記センサーが前記流体溜部材の下降開始を感知した場合に前記循環浄化装置が作動し、前記センサーが前記流体溜部材の上昇終了を感知した場合に前記循環浄化装置が停止するようにしていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0023】
請求項1に記載の発明によれば、洗浄水又は消毒液が吐出孔から吐出されて流体溜部材の流体溜本体を充満しつつ洗浄後の流体を吸引孔から吸引し、洗浄後の流体を浄化した洗浄水又は消毒液を吐出孔から連続して吐出する循環流を生成する循環浄化装置を有しているので、循環浄化装置によって浄化された清浄な流体が流体溜部材の底面部から吐出孔されて流体溜部材を充満する清浄な流体の表面部に向かい、その後その表面部から流体溜部材の底面部の吸引孔へ向かうといった循環流が連続して発生するため、湧き水のような緩やかな流れによる洗浄水又は消毒液によって患部が洗浄されることになり、患部に必要以上の刺激を与えることないから洗浄による痛みを感じることなく使用することができる。
【0024】
また、平面から見て流体溜部材は座部部材の開口内に位置し、流体溜部材には常時上昇方向の弾発力が作用しており、使用時には流体溜部材の開口部の端面が患部の周囲に接触した後、患部の移動に追従して僅かに下降しつつ患部の周囲との密着状態を維持する構造を有しているので、患者が座部部材に腰掛けた場合に、患部の周囲と流体溜部材の開口部とが常時密着した状態で患部を流体溜部材内の洗浄水又消毒液で洗浄することになり、洗浄水又は消毒液が流体溜部材から溢れ出すようなことはない。さらに、循環浄化装置によって洗浄後の汚水は雑菌等が除去された洗浄水又は消毒液に変換する循環方式を採用しているため、洗浄後の汚水が装置の外部へ排出されることもない。したがって、この発明によれば、洗浄後の汚水に含まれている細菌による感染のおそれを防止することができる。
【0025】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の構成による効果に加え、座部部材と流体溜部材との間には、漏斗状の流体受けを有し、該流体受けの開口部と流体溜部材の外形との間には流体が通過できる間隙が形成されており、流体溜部材の開口部から溢れ出た流体が流体受けを通過して循環洗浄装置へ導入されるようになっているので、何らかの原因で洗浄前の洗浄水又は消毒液や洗浄後の流体が流体溜部材の開口部から溢れ出たとしても、これらの流体は流体受けを通って循環洗浄装置へ導入されることになるから、この発明の係る患部洗浄装置の周辺を洗浄前の洗浄水又消毒液や洗浄後の流体で汚すおそれはない。
【0026】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1に記載の構成による効果に加え、流体溜部材の開口部は、人体の陰部を除いた人体の会陰部と肛門部を含む領域を下方から覆うことのできる大きさであるので、痔の患部以外には流体溜部材内の洗浄水又は消毒液が接触することがないので、最小限の洗浄水又は消毒液で患部の治療を的確に実現することができ、環境への負荷を少なくすることができる。
【0027】
請求項4に記載の発明によれば、請求項3に記載の構成による効果に加え、流体溜部材の開口部の端面には、シリコーンゴムからなる緩衝部材が着脱自在に取り付けられているので、人体に触れる緩衝部材が人体との親和性の高いシリコーンゴムのため患部近傍の人体に緩衝部材が接触しても接触した箇所が炎症を起こす心配がない。また、緩衝部材の流体溜部材に対する取り付け取り外し作業が可能であることから、必要なときにいつでも流体溜部材から緩衝部材を取り外して緩衝部材の洗浄、滅菌処理をして、再度流体溜部材へ取り付けることができるため、常に衛生的に使用することができる。
【0028】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1に記載の構成による効果に加え、人間が座部部材に腰掛けた状態において、座部部材の前方中央部に循環洗浄装置の動作スイッチが配置されているので、座部部材に腰掛けている患者は足を僅かに開いた状態でいることから、患者は人体で隠れない目視できる座部部材の上面部に動作スイッチに手を伸ばすだけで動作スイッチを操作することができる。また、動作スイッチを座部部材内に組み込んでいるため、動作スイッチのための空間を座部部材と別個に設ける必要がない。したがって、構造が簡単でコスト低減が図れると共にこの発明に係る患部洗浄装置の外観もすっきりしたものとなる。
【0029】
請求項6に記載の発明によれば、請求項1に記載の構成による効果に加え、流体溜部材の下降開始及び上昇終了を感知するセンサーを有し、センサーが流体溜部材の下降開始を感知した場合に循環浄化装置が作動し、センサーが流体溜部材の上昇終了を感知した場合に循環浄化装置が停止するようにしているので、患者が座部部材に腰掛けているときは流体溜部材内に洗浄水又は消毒液が充満しつつ循環流が発生し、患者が立ち上がって座部部材から離れているときは流体溜部材への洗浄水又は消毒液の供給がなく、したがって循環流も発生しないことになる。このため、患者は座部部材に腰掛ける前乃至腰掛けた後にメインスイッチのONにし、患部の洗浄治療を止めるとき乃至座部部材から立ち上がった後にメインスイッチをOFFにする操作をするだけで、必要とする痔の予防及び治療ができることになるから、初心者や高齢者にも簡単に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0031】
図1は、この発明の実施の形態に係る患部洗浄装置の内部構造を示したものであり、一部を断面とした正面図である。図2は、この発明の実施の形態に係る患部洗浄装置の平面図である。
【0032】
この発明の実施の形態に係る患部洗浄装置は、全体が略楕円柱状の立体形状をした本体部1の下面に、床面との滑り止めのための脚部材2が取り付けられており、家庭用の三面鏡に付随している腰掛け程度の大きさの手に持って移動できる程度の重量のものであって、建物の床面に設置して使用するものである。ここで、脚部材2は図示したような固定式に代えて、キャスタのような可動式のものを採用してもよい。可動式の脚部材を採用した場合には、患部洗浄装置を床面から持ち上げることなく任意の箇所へ移動できるので、女性や高齢者でも容易に移動できるものとなる。
【0033】
本体部1の上面には、中央部に開口3を備えた平面から見て略U字形乃至略O字形をした座部部材4を設けている。座部部材4には緩衝材としてのウレタンフォーム5が内蔵されており、ウレタンフォーム5の下面にシートヒーター6が設けられている。これにより、患者は柔らかで暖かな座面に腰を降ろすことができるため、この発明の実施の形態に係る患部洗浄装置を快適に使用できる。
【0034】
座部部材4に人間が腰掛けた状態での座部部材4の前方中央部に当たる位置にスイッチパネル7が配置されている。スイッチパネル7の表面には、後述するメインスイッチやその他の動作スイッチの押し釦が設けられており、その下部にはメインスイッチやその他の動作スイッチの機能を実現するためのスイッチユニット58が組み込まれている。したがって、座部部材4に腰掛けている患者は足を僅かに開いた状態でいることから、患者は人体で隠れることのない目視できる座部部材4の上面部にあるスイッチパネル7に手を伸ばすだけで、患部洗浄装置のメインスイッチやその他の各種動作スイッチを操作することができる。しかも、平面から見てスイッチパネル7やスイッチユニット58のための空間を座部部材4のスペースと別個に設ける必要がなく、製作にかかるコストが低減できると共に外観もすっきりしたものとなる。
【0035】
座部部材4の開口3には、洗浄水又は消毒液が溜まる流体溜部材8が設けられている。流体溜部材8は、洗浄水又は消毒液が吐出する吐出孔9と患部を洗浄した後の洗浄後の流体を吸引する吸引孔10とを底面部11に備えた、上面に開口部12を有する椀状の形状をしている。開口部12の上端面には、弾性を有する合成樹脂材料からなる緩衝部材13が着脱自在に取り付けられており、必要に応じて、緩衝部材13を流体溜部材8から取り外して、洗浄、滅菌処理が可能となっている。ここで、緩衝部材13の材料としては、シリコーンゴムを採用することが好ましい。シリコーンゴムは人体との親和性の高いため、患部近傍の人体に緩衝部材13が接触しても接触した箇所が炎症を起こす心配がない。
【0036】
流体溜部材8の開口部12は、会陰部と肛門部を含む領域を囲うように、平面から見て略ハート形をしており、略ハート形の凹部14の近傍に吐出孔9が設けられ、略ハート形の凸部15の近傍に吸引孔10が設けられている。吐出孔9から吐出された洗浄水又は消毒液で直接肛門を洗浄しようとする場合には、図2で示したように、吐出孔9の中心から直近の緩衝部材13の側面(略ハート形の凹部14側)までの寸法Lが患者の会陰の寸法と一致していることが望ましい。具体的には、成人男子の会陰は5〜6cm、成人女子の会陰は3〜4cmといわれているので、吐出孔9の中心から直近の緩衝部材13の側面までの寸法Lを、約3〜6cmの範囲で設定するとよい。たとえば、予め流体溜部材8を成人男子用と成人女子用の二種類を用意するものとし、成人男子用ではL≒5cm、成人女子用ではL≒3cmにしたものを製作し、患者によって二種類の流体溜部材8を使い分けるようにするとよい。
【0037】
流体溜部材8の吐出孔9と吸引孔10とは、本体部1の下部に内蔵された循環浄化装置16に接続されている。吐出孔9には、洗浄水又は消毒液が逆流することがないように逆止弁17が設けられている。逆止弁17は、吐出孔9が連通する流体溜部材8の斜面の出口部9aを塞ぐ大きさをした蓋体17aと、この蓋体17aの天面の一部に垂設した係止片17bと、蓋体17aの一部に設けられたヒンジ部1(図示せず)とを有し、流体溜部材8の斜面の出口部9aの近傍にヒンジ部を介して揺動自在に取り付けられている。これにより、吐出孔9から洗浄水又は消毒液が吐出する場合は、洗浄水又は消毒液の勢いで蓋体17aが押し上げられて係止片17bが出口部9aの下方の流体溜部材8の斜面に当接して全開位置で停止し、吐出孔9からの洗浄水又は消毒液の吐出がなくなった場合には、逆止弁17の重みと流体溜部材8内の洗浄水又は消毒液の重みにより蓋体17aが押し下げられて流体溜部材8の斜面の出口部9aを塞ぐ全閉位置で停止する。
【0038】
循環浄化装置16は、循環浄化装置16から流体溜部材8へ、流体溜部材8から循環浄化装置16へといった循環流を発生させるためのポンプ(図示せず)が組み込まれた駆動体ユニット18と、循環流を浄化するための浄化物質19を有する流体槽20とで構成されている。
【0039】
循環浄化装置16の上部には、駆動体ユニット18が配置され、駆動体ユニット18は本体部1に固定されている。駆動体ユニット18の上面には流体溜部材8の吸引孔10と連通する流入孔21と、流体溜部材8の吐出孔9と連通する吐出流路22とが設けられている。流入孔21の下部には、濾過材(図示せず)が組み込まれた濾過カートリッジ23を有している。濾過カートリッジ23は必要に応じて交換可能なように、駆動体ユニット18に対して着脱自在な状態に備え付けられている。
【0040】
図3は、濾過カートリッジの駆動体ユニットに対する着脱構造を示した要部拡大の右側面図であり、図4はその要部拡大の正面図を示している。
【0041】
図3及び図4では、濾過カートリッジ部の蓋Hを取り外した状態を示している。濾過カートリッジ23の外周の上端部と下端部には左右水平方向に張り出した四つの突片24,24,24,24が設けられている。他方、濾過カートリッジ23が組み込まれる駆動体ユニット18の該当個所には、予め濾過カートリッジ23が入れられる大きさの空間25が形成されている。空間25は挿入側から見て略十字形をしており、水平方向の空間部26の水平方向の寸法は濾過カートリッジ23の幅より左右に指の太さ分だけ大きめにしている。これは、濾過カートリッジ23を片手で掴んで出し入れする際に水平方向の空間部26の壁面27が邪魔にならないようにするためである。
【0042】
垂直方向の空間部28の壁面29には、濾過カートリッジ23の上端部と下端部に設けた突片24が嵌合する溝30が形成されており、この溝30が濾過カートリッジ23を駆動体ユニット18に組み込む際の突片24の案内を果たすこととなる。
【0043】
濾過カートリッジ23の上面31と下面32にはOリング33が取り付けられており、濾過カートリッジ23を駆動体ユニット18に組み込んだ際に、濾過カートリッジ23のOリング33と密着するように、予め垂直方向の空間部28の天面34に設けられている流入孔21と床面35に設けられている流出孔36には、それぞれパッキン37が取り付けられている。
【0044】
濾過カートリッジ23の上端部と下端部に設けた突片24の挿入側の先端は濾過カートリッジ23の外周より僅かに長い突出部38を有しており、この突出部38には垂直方向に向う凸部39を形成している。他方、突出部38が挿入される垂直方向の空間部28の閉塞壁面40に設けられている溝30には、凸部39が嵌合する凹部41が形成されている。なお、突出部38の凸部39と溝30の凹部41との位置関係は、濾過カートリッジ23の流入口42、流出口43の軸心と駆動体ユニット18の流入孔21、流出孔36の軸心とが互いに一致するように予め設定されている。
【0045】
濾過カートリッジ23に組み込む濾過材としては、活性炭と中空糸膜フィルタを組み合わせたものの他、必要に応じてイオン交換樹脂の粒状物を付加したものが好ましい。活性炭は塩素やその他の汚物などの臭いを除き、中空糸膜フィルタは大腸菌などの病原細菌、雑菌、カビ、濁りなどを除くことができる。イオン交換樹脂としては、硬水を軟水に変える場合にカチオン交換樹脂が効果的である。
活性炭、中空糸膜フィルタ、イオン交換樹脂を併用する場合には、流体の上流側から下流側へ向かってイオン交換樹脂、活性炭、中空糸膜フィルタの順序で配置することが好ましい。
【0046】
なお、図示した実施の形態では、以上のような濾過カートリッジ23を採用しているが、濾過カートリッジ23に替わって、又は濾過カートリッジ23と併用して、たとえば、流体溜部材8の吸引孔10と連通する吸引管69に組み込める大きさの円筒状の濾過器(図示せず)に濾過材を入れた程度の簡便なものを採用してもよい。
【0047】
循環浄化装置16の下部には、流体槽20が配置され、流体槽20は駆動体ユニット18に対して着脱自在に設けられている。
【0048】
図5は、流体槽の駆動体ユニットに対する着脱構造を示した拡大正面図であり、図6はその拡大右側面図を示している。
【0049】
図6に示したように、右側面から見て駆動体ユニット18の下端部には、左右一対のコの字形の開口部を向かい合わせた状態に配置したガイドレール部材44,44と、挿入側に配置した開閉自在のロック部材45とが設けられている。ここで、ガイドレール部材44とロック部材45とを合成樹脂製の一体成形品とした場合には、材料として繰り返しの折り曲げ応力に耐え得るポリプロピレンを採用すれば蝶番部46も一体で形成できるため、コスト低減が図れるので好ましい。
【0050】
流体槽20の上端部には、ガイドレール部材44の溝部47に嵌合するフランジ48が形成されており、このフランジ48を左右一対のガイドレール部材44,44の溝部47に挿入させた状態で流体槽20を水平に移動させることで、駆動体ユニット18に対する流体槽20の取り付け取り外しを容易に実現できるようにしている。駆動体ユニット18に流体槽20が装着された状態では、駆動体ユニット18の下面と流体槽20の上面とが密着できるように、それぞれの面にシール部材49が取り付けられている。
【0051】
流体槽20の内部には、図1に示したように、底部に連通口50を有する水平方向に二分する隔壁51が設けられており、下降流路52と上昇流路53が確保されている。上昇流路53の下端部には、流体を浄化し流体に薬効機能を付与するための数種類の浄化物質19を入れた浄化物質容器54が備え付けられている。具体的には、隔壁51の下端部に内側に向けた支持片55を形成し、この支持片55が浄化物質容器54の下面の周辺部を支持できるようにしている。また、浄化物質容器54は、流体が直接浄化物質19に接触できるように、浄化物質19が飛び出すことがない程度の大きさの網目を有する籠状のものが望ましい。
【0052】
浄化物質19としては、ゲルマニュウム、麦飯石(花崗班岩)、アルミナ、ヨウド、セラミックなどの粒状物が考えられる。
【0053】
ゲルマニュウムの粒状物は、接触面の温度が32℃以上になるとマイナス電子を放出し体内の電流バランスを正常化するといわれている。これにより、血流が改善され、自然治癒力が高まり、痛みの緩和、基礎代謝向上、冷え性の改善、ストレスの減少などの効果が期待できる。麦飯石(花崗班岩)の粒状物は、ミネラル分をたっぷりと含み、水にいれるとミネラル分が溶け出す性質があるため、肌が滑らかになると共に爽快感を与える効果がある。また、多孔質で表面積が非常に大きいなどの理由から、優れた吸着作用を発揮し、水道水に混入しているカルキや有害な重金属、あるいは雑菌などを除去し、水を浄化することができ、悪臭を吸収することもできる。アルミナの粒状物は、遠赤外線のエネルギーと金属イオンの触媒作用により水の活性化が図られ、水の浄化作用とゲルマニュウムの粒状物と同様の効果が期待できる。ヨウドは、大腸菌・黄色ブドウ球菌・緑膿菌・ヘルペスウイルス・レジオネラ菌に対して強力な殺菌効果を発揮するだけでなく、悪臭の除去、ぬめりの除去の効果が得られる。セラミックは、(たとえば、多孔質の球形の粒状物に抗菌性金属を混合し、約1000℃前後で焼成した殺菌用ボール((株)長野セラミックス製C−005等)が使用できる)一般大腸菌や黄色ブドウ球菌やレジオネラ菌の滅菌、抑制に有効である。
【0054】
本体部1の底面部には、流体槽20の底面全面に接触するステンレス製の板材56が設けられており、ステンレス製の板材56にはヒーター57が取り付けられている。これにより、ヒーター57の熱がステンレス製の板材56に伝わり、ステンレス製の板材56上に載せられる流体槽20内の流体を温めることができる。なお、座部部材4を温めるシートヒーター6と、循環流を発生するためのポンプ(図示せず)と、流体槽20内の流体を温めるヒーター57とは、スイッチパネル7の下に組み込まれているスイッチユニット58を経由して、コンセントに挿入できるプラグ(図示せず)に接続されている。
【0055】
図7は、スイッチパネルの一例を示した平面図である。
【0056】
スイッチパネル7には、メインスイッチ59の他に、駆動体ユニット18内のポンプの出力の大きさを決める弱、中、強三段階の水圧切替スイッチ60と、シートヒーター6のON/OFFスイッチ61と、洗浄水又は消毒液の水温を常温(室温)、低温(たとえば38℃)、中温(たとえば40℃)、高温(たとえば42℃)のいずれかに設定する水温設定スイッチ62が配置されている。各スイッチには、それぞれどのスイッチが働いているかがわかる指標灯63を組み込んでおくとよい。なお、指標灯63は、図示したように各スイッチと別個に設けてもよく、各スイッチの内部に組み込んでもよい。また、シートヒーター6のON/OFFスイッチ61を座面の温度を何段階かに設定できるような切替スイッチに変更してもよいし、水圧切替スイッチ60の切替数と水温設定スイッチ62の設定数を、図示した実施の形態より少なく又はより多くしてもよい。
【0057】
ここで、メインスイッチ59をONにした場合には、シートヒーター6、駆動体ユニット18内のポンプと、ヒーター57に電流が流れているスタンバイ状態になるだけであって、シートヒーター6による加熱、駆動体ユニット18内のポンプの作動、ヒーター57による加熱、といった実作動状態にはならないようにしている。したがって、メインスイッチ59をONにした場合に限って、シートヒーター6のON/OFFスイッチ61をONにしてからシートヒーターの加熱が始まり、水圧切替スイッチ60の弱、中、強のいずれかが押させてから駆動体ユニット18内のポンプが作動し、いずれかの水温設定スイッチ62が押されてからヒーター57による加熱が始まることになっている。
【0058】
座部部材4と流体溜部材8との間には漏斗状をした流体受け64が設けられており、この流体受け64の開口部65と流体溜部材8の外形との間には流体が通過できる間隙Kが形成されており、流体溜部材8の開口部12から溢れ出た流体が流体受け64の内面に沿って循環洗浄装置12へ導入されるようになっている。流体溜部材8の椀状の外周面には垂直下方に延びる複数の取付片66が設けられており、他方、流体受け64には取付片66が挿入される取付孔(図示せず)を形成した複数の支持部材67が設けられている。そのため、流体溜部材8を流体受け64に対して、所定の位置に容易に取り付けられ、また、所定の位置から容易に取り外すことができる。また、流体溜部材8が流体受け64に取り付けられている状態では、流体溜部材8と流体受け64とが一体となっているため、流体溜部材8に下方へ向かう荷重が働いた場合には、流体受け64も一緒に下降するようになっている。
【0059】
流体受け64の底面部には、流体溜部材8の吐出孔9と連通する吐出管68と、流体溜部材8の吸引孔10と連通する吸引管69とが設けられている。流体溜部材8の吐出孔9と流体受け64の吐出管68とは、必要に応じてパッキンを介して水漏れがないように直結されている。また、流通溜部材8内の洗浄後の流体が流通溜部材8の吸引孔10へ導かれて駆動体ユニット18の流入孔21へ入る流れと、流通溜部材8の開口部12から溢れた流体が流体受け64を通過して駆動体ユニット18の流入孔21へ入る流れとを実現するため、流通溜部材8の吸引孔10と流体受け64の吸引管69とはあえて直結していない。
【0060】
本体部1は、垂直方向を二分する水平板材70で、流体溜部材8と流体受け64とを収容する上部室71と、循環浄化装置16が収容される下部室72とに、区分されている。上部室71にある流体受け64の吐出管68は、伸縮自在の可撓性管73を介して下部室72にある駆動体ユニット18の吐出流路22と接続されており、上部室71にある流体受け64の吸引管69は、下部室72にある駆動体ユニット18の流入孔21と接続されている。
【0061】
水平板材70には少なくとも二本の支柱74,74が立設されており、支柱74の中央部には、上面が開口した垂直方向の軸心を有する軸受75が設けられている。さらに、支柱74の上面の座面76には、常時垂直方向の弾発力を発生することのできる圧縮バネ77が取り付けられている。実施の形態では二本の支柱74,74を示しているが、流体受け64の上下の動きをより円滑にするには、支柱74を三本又は四本配置するとよい。
【0062】
漏斗状の流体受け64の開口部65の外周には、座部部材4と開口部65との隙間を埋めるに十分な大きさをした水平方向に伸びる鍔部材78が形成されており、鍔部材78の下面には垂直方向に延び、かつ、軸受75に嵌合する太さを有するガイドピン79が設けられている。ガイドピン79は、支柱74の座面76に取り付けられている圧縮バネ77の中心部を貫通し支柱74の軸受75に挿入されている。また、圧縮バネ77は、その下面が支柱74の座面76に接触し、その上面が流体受け64の鍔部材78の下面に接触した状態で組み付けられているため、流体受け64は常時上方へ向かう弾発力が与えられた状態にある。
【0063】
流体受け61の鍔部材78にはストッパー80が設けられており、座部部材4の下面に形成されている位置決めガイド81にストッパー80が当接することで流体受け64の上限位置が設定されている。
【0064】
座部部材4の位置決めガイド81の近傍には、流体溜部材8の下降動作及び上昇動作を感知するセンサー(図示せず)を有し、センサーが流体溜部材8の下降動作を感知した場合に駆動体ユニット18内のポンプが作動し、センサーが流体溜部材8の上昇動作を感知した場合に駆動体ユニット18内のポンプが停止するようにしている。これにより、患者が座部部材4に腰掛けているときは流体溜部材8内に洗浄水又は消毒液が充満しつつ循環流が発生し、患者が立ち上がって座部部材4から離れているときは流体溜部材8への洗浄水又は消毒液の供給がなく、したがって循環流も発生しない。
【0065】
そこで、スイッチユニット55が各種動作スイッチの前回の設定値を記憶できるものとしておけば、シートヒーター6のON/OFFスイッチ61の選択、水圧切替スイッチ60の弱、中、強の選択、水温設定スイッチ62による洗浄水又は消毒液の温度設定といった使用条件が同じ場合には、患者は座部部材4に腰掛ける前乃至腰掛けた後にメインスイッチ59のONにし、患部の洗浄治療を止めるとき乃至座部部材4から立ち上がった後にメインスイッチ59をOFFにする操作をするだけで、常に最適な条件下で手間なく肛門(患部)の洗浄が行えることになる。
【0066】
この発明の実施形態の係る患部洗浄装置は、以上のような構成をしているが、次に、その使用する方法について説明する。
【0067】
まず、患者はメインスイッチ59をONにして、シートヒーター6のON/OFFスイッチ61のON又はOFFを選択にして座部部材4の座面を適温にすると共に、水圧切替スイッチ60の弱、中、強のいずれかを選択して吐出孔9から吐出する洗浄水又は消毒液の好みの圧力を決定し、好みの水温設定スイッチ62を押して適温の洗浄水又は消毒液による洗浄が可能なスタンバイ状態にする。
【0068】
次に、患者はスイッチパネル7が前方、流体溜部材8が後方になるように体の向きを決めてスイッチパネル7を跨ぐくらいの位置に立ち、そのまま腰を降ろしていって座部部材4に腰掛ける。すると、座部部材4に腰掛ける寸前で、流体溜部材8の上面の緩衝部材13が患者の臀部に接触し、その後、臀部の下降に伴って圧縮バネ77の弾発力に抗して流体溜部材8は僅かに押し下げられることになる。そのため、患者が座部部材4に腰掛けた状態では、患部の周りに流体溜部材8の開口部12取り付けられている緩衝部材13が密着した状態になっている。
【0069】
次に、臀部の感触で流体溜部材8の緩衝部材13が人体の会陰部と肛門部を含む領域を囲う正しい位置にあることを確認する。もし、洗浄水又は消毒液の温度や勢いを変更したい場合には、水温設定スイッチ62や水圧切替スイッチ60を操作して好みの温度や勢いにする。
【0070】
センサーの働きにより、座部部材4に腰掛けると同時に駆動体ユニット18内のポンプが作動し、ヒーター57によって温められた流体槽20内の洗浄水又は消毒液は浄化物質容器54内の浄化物質19を通過して上昇流路53を通って汲み上げられ、駆動体ユニット18内の吐出流路22、可撓性管73、流体受け64の吐出管68、流体溜部材8の吐出孔9の出口部9aにある逆止弁17を押し上げて吐出孔9から流体溜部材8の内部へと流れ込み、温かい洗浄水又は消毒液が流体溜部材8を充満する。
【0071】
流体溜部材8の開口部12は、人体の陰部を除いた人体の会陰部と肛門部を含む領域を下方から覆うことのできる大きさであるので、痔の患部以外には流体溜部材8内の洗浄水又は消毒液が接触することがないので、最小限の洗浄水又は消毒液で患部の治療を実現することができ、環境への負荷を少なくすることができる。
【0072】
流体溜部材8を充満して患部を洗浄した流体は、ポンプによって流体槽20内の洗浄水又は消毒液が上昇流路53側から汲み上げられたことによって下降流路52側が負圧になることと、重力の作用により、流体溜部材8の吸引孔10から流体受け64の吸引管68を通って、可撓性管73、駆動体ユニット18内の流入孔21を通って、流体槽20内の下降流路52へと流れ込むことになる。
【0073】
したがって、ポンプが作動している間は、流体槽20の上昇流路53から、駆動体ユニット18内の吐出流路22→可撓性管73→流体受け64の吐出管68→流体溜部材8の吐出孔9→流体溜部材8→流体溜部材8の吸引孔10→流体受け64の吸引管69→可撓性管73→駆動体ユニット18内の流入孔21→流体槽20の下降流路52を通って流体槽20の上昇流路53に流れる循環流が常時起きていることになる。
【0074】
したがって、循環浄化装置16とヒーター57によって浄化された清浄で温かい洗浄水又は消毒液が流体溜部材8の底面部11の吐出孔9から吐出されて流体溜部材8を充満する清浄な温かい流体の表面部に向かい、その後その表面部から流体溜部材8の底面部11の吸引孔10へ向かうといった循環流が連続して発生するため、湧き水のような比較的緩やかな流れによる洗浄水又は消毒液によって患部が洗浄されることになり、患部に必要以上の刺激を与えることないから洗浄による痛みを感じることなく使用することができる。
【0075】
また、使用時には流体溜部材8の開口部12の端面(緩衝部材13)が患部の近傍に接触した後、患部の移動に追従して僅かに下降しつつ患部の近傍との密着状態を維持する構造を有しているので、患者が座部部材4に腰掛けた場合に、患部の近傍と流体溜部材8の開口部12とが常時密着した状態で患部を流体溜部材8内の洗浄水又は消毒液が洗浄することになり、洗浄水又は消毒液が流体溜部材8から溢れ出すようなことはない。さらに、循環浄化装置16によって洗浄後の汚水は雑菌等が除去された洗浄水又は消毒液に変換する循環方式を採用しているため、洗浄後の汚水が装置の外部へ排出されることもない。したがって、この発明の実施形態に係る患部洗浄装置によれば、洗浄後の汚水に含まれている細菌による感染のおそれを防止することができる。
【0076】
仮に、ポンプ作動中にも拘わらず患部を流体溜部材8から離してしまった場合や水圧の調整を誤ったりして、流体溜部材8から洗浄水又は消毒液が溢れ出した場合には、流体溜部材8の開口部12から溢れ出した洗浄水又は消毒液が重力の作用により、流体受け64の開口部65と流体溜部材8の外形との間の間隙Kに入り込んで、流体受け64を通過して流体受け64の吸引管69を通って可撓性管73へと導かれる。そのため、以上のような誤使用によって流体溜部材8の開口部12から溢れ出した洗浄水又は消毒液もすべて循環洗浄装置16へ導入されるようになっているので、外部に洗浄水又は消毒液が漏れるようなことはない。
【0077】
患部の洗浄が終了したら、座部部材4から腰を上げると、患者の臀部に追従して流体溜部材8が上昇する。すると、この上昇動作をセンサーの感知して駆動体ユニット18内のポンプの動作が停止し、流体溜部材8の吐出孔9から吐出する洗浄水又は消毒液がなくなるため、逆止弁17が閉じる。流体溜部材8に入っていた洗浄水又は消毒液は重力の作用で流体溜部材8の吸引孔10から排出されて可撓性管73を経て流体槽20へと導かれる。
【0078】
ポンプが停止し流体溜部材8の吐出孔9から洗浄水又は消毒液が吐出されなくなったら、メインスイッチ59をOFFにして、この発明の実施形態に係る患部洗浄装置から離れて使用を終了する。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】この発明の実施の形態に係る患部洗浄装置の内部構造を示したものであり、一部を断面とした正面図である。
【図2】同発明の実施の形態に係る患部洗浄装置の平面図である。
【図3】同実施の形態に係る濾過カートリッジの駆動体ユニットに対する着脱構造を示した要部拡大の右側面図である。
【図4】同実施の形態に係る濾過カートリッジの駆動体ユニットに対する着脱構造を示した要部拡大の正面図である。
【図5】同実施の形態に係る流体槽の駆動体ユニットに対する着脱構造を示した拡大正面図である。
【図6】同実施の形態に係る流体槽の駆動体ユニットに対する着脱構造を示した拡大右側面図である。
【図7】同実施の形態に係るメインスイッチを備えたスイッチパネルの一例を示した平面図である。
【符号の説明】
【0080】
1 本体部
3 開口
4 座部部材
6 シートヒーター
7 スイッチパネル
8 流体溜部材
9 吐出孔
10 吸引孔
12 開口部
13 緩衝部材
14 略ハート形の凹部
16 循環浄化装置
17 逆止弁
18 駆動体ユニット
19 浄化物質
20 流体槽
23 濾過カートリッジ
56 板材
57 ヒーター
59 メインスイッチ
64 流体受け
65 開口部
74 支柱
75 軸受
76 座面
77 圧縮バネ
78 鍔部材
79 ガイドピン
80 ストッパー
81 位置決めガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水又は消毒液が吐出する吐出孔と患部を洗浄した後の洗浄後の流体を吸引する吸引孔とを底面部に備えると共に上面に開口部を有する椀状の流体溜部材と、中央部に開口を備えた平面から見て略U字形乃至略O字形をした座部部材と、洗浄水又は消毒液が前記吐出孔から吐出されて前記流体溜部材の流体溜本体を充満しつつ前記洗浄後の流体を前記吸引孔から吸引し、前記洗浄後の流体を浄化した洗浄水又は消毒液を前記吐出孔から連続して吐出する循環流を生成する循環浄化装置と、を有する患部洗浄装置であって、平面から見て前記流体溜部材は前記座部部材の開口内に位置し、前記流体溜部材には常時上昇方向の弾発力が作用しており、使用時には前記流体溜部材の開口部の端面が患部の周囲に接触した後、患部の移動に追従して僅かに下降しつつ患部の周囲との密着状態を維持する構造を有していることを特徴とする患部洗浄装置。
【請求項2】
前記座部部材と前記流体溜部材との間には、漏斗状の流体受けを有し、該流体受けの開口部と前記流体溜部材の外形との間には流体が通過できる間隙が形成されており、前記流体溜部材の開口部から溢れ出た流体が前記流体受けを通過して前記循環洗浄装置へ導入されるようになっていることを特徴とする請求項1に記載の患部洗浄装置。
【請求項3】
前記流体溜部材の開口部は、人体の陰部を除いた人体の会陰部と肛門部を含む領域を下方から覆うことのできる大きさであることを特徴とする請求項1に記載の患部洗浄装置。
【請求項4】
前記流体溜部材の開口部の端面には、シリコーンゴムからなる緩衝部材が着脱自在に取り付けられていることを特徴とする請求項3に記載の患部洗浄装置。
【請求項5】
人間が前記座部部材に腰掛けた状態において、前記座部部材の前方中央部に前記循環洗浄装置の動作スイッチが配置されていることを特徴とする請求項1に記載の患部洗浄装置。
【請求項6】
前記流体溜部材の下降開始及び上昇終了を感知するセンサーを有し、前記センサーが前記流体溜部材の下降開始を感知した場合に前記循環浄化装置が作動し、前記センサーが前記流体溜部材の上昇終了を感知した場合に前記循環浄化装置が停止するようにしていることを特徴とする請求項1に記載の患部洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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