説明

悪臭をともなう半流動物質の混気圧送装置

【目的】 悪臭公害を起こさないヘドロ,軟泥,下水汚泥,その他の悪臭をともなう半流動物質の混気圧送装置を提供する。
【構成】 圧送装置50と圧送管55と貯蔵庫60aとを連接し,圧送管55に圧送エアを供給するコンプレッサ70およびエゼクタ54を接続するとともに,コンプレッサ70の吸気側に貯蔵庫60a内の圧送エアを導く戻り管62ならびに空気取入管72を連結し,コンプレッサ70の吐出エアの一部を導入して消臭する処理液槽80を備えた。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,たとえば,海底,発電所の取水口,湖沼,河川,港湾などに堆積したヘドロ,軟泥や下水処理場における下水汚泥,脱水汚泥や糞尿処理場における処理汚泥など悪臭をともなう半流動物質の混気圧送装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来,これらの悪臭をともなう半流動物の輸送は,トラック輸送を行なったり,たとえば下水処理場内で脱水処理をした後にベルトコンベヤ輸送を行なったり,あるいは常時排送管内に圧縮エアを送入することによって輸送物を圧送するプラグ輸送(栓流輸送)を行なっていた。すなわち,図3に示すように,給泥ホッパ1に受入れた輸送物をスクリュコンベヤ2で横送りし,吐出口3を経由して圧送ポンプ4で加圧しながら圧送管へ送り出し,コンプレッサ9により圧縮エアを圧縮エア供給管8,電磁開閉弁7,エゼクタ6を介して圧送管5へ吹き込んで輸送物をプラグ20としながらプラグ輸送していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】以上述べたように,下水処理場内ではトラック輸送やコンベヤ輸送やそれらの組み合わせによって脱水汚泥の輸送を行なっていた。しかしながら,近年,都市の宅地化が急速に進展し,従来住宅地より相当離れた場所に立地していた下水処理場等の周辺にも宅地化され居住するようになり,こうした悪臭をともなう輸送物をむき出しで輸送する際には隣接住民に悪臭公害を及ぼし,苦情が続発するようになった。したがって,露出搬送に代わり,前記の管路(パイプ)によるプラグ輸送が多用されることになったが,プラグ輸送の場合には,少なくとも輸送物は搬送中外界と遮断されて悪臭を放散することがなく悪臭公害を軽減できるものの,プラグ輸送の輸送エネルギとして使用した圧縮エアは悪臭をともなったものとなり,これを輸送の終点において排出するとやはり悪臭公害を発生することになっていた。また,圧送空気の密閉パイプによる環境使用を行なったとしても配管途中のリークによる悪臭の防止は完全には行なえなかった。
【0004】
【課題を解決するための手段】これらの課題を解決するために,本発明においては,ヘドロ,軟泥,下水汚泥,その他の悪臭をともなう半流動物質の混気圧送装置であって,圧送装置と圧送管と該圧送管出口に接続され密閉された貯蔵庫とを連接し,該圧送管に圧送エアを供給するコンプレッサおよびエゼクタを接続するとともに,該コンプレッサの吸気側に前記貯蔵庫内の圧送エアを導く戻り管ならびに空気取入管を連結し,かつ,該コンプレッサの吐出エアの一部を導入して消臭する処理液槽を備えた構成とした。
【0005】
【作用】本発明の悪臭をともなう半流動物質の混気圧送装置は,圧送装置により吐出された輸送物は圧送管内をエゼクタを介してコンプレッサから注入された圧送エアによりプラグ輸送され,輸送終端の貯蔵庫へ搬送される。搬送に寄与した圧送エアは輸送終端で大気放出されることなくコンプレッサに戻り管を経由して返送され,再び昇圧され再度圧送管へ供給されるが,吐出される圧気の一部は消臭用の処理液槽をくぐらせて脱臭後大気放出されるから悪臭公害の発生を防止する。大気放出される圧気分の大気はコンプレッサの空気取入管により補う。
【0006】
【実施例】以下実施例に基づいて本発明の詳細を説明する。図1〜図2は本発明の実施例に係り,図1は本発明の混気圧送装置の全体系統図,図2は本発明の1実施例を示し,浚渫船と運搬船に適用した混気圧送装置の全体概要図である。図1に示すように,圧送ポンプ53を具備した圧送装置50と貯蔵庫60aとの間には固定もしくは1部伸縮管を有する圧送管55が配設され,圧送管55の始点近傍に圧気封入用のエゼクタ54が取り付けられてコンプレッサ70の吐出圧縮空気が圧送管55内へ注入される。貯蔵庫60aは密閉式構造とし,使用済みの圧気をコンプレッサ70へ戻す戻り管62がコンプレッサ70の吸入側へ接続されるとともに空気取入管72が設けられる。コンプレッサ70の吐出管74は2叉に分岐し,1方がエゼクタ54へ向かうとともに他の1方は処理液槽80へ導かれる。処理液槽80は消臭用の薬液を注入した水槽で撹拌機80aを具備し,処理済の清浄空気は大気放出される。圧送空気量Q1 と消費空気量(大気放出量)Q2 との和が吐出空気量Q3 となり,圧送空気量Q1 と消費空気量Q2 との比率は3つの電磁開閉弁90,90,90の開度により調整される。
【0007】本発明では,圧送空気は圧送管55,密閉状態の貯蔵庫60aならびに戻り管62間を循環し,一見すると悪臭を外部へ排出することはないので,処理液槽80は不要のように思えるが,実際には配管の継目や貯蔵庫等の漏洩があり悪臭公害を発生し,完全とは言えないので,循環する圧送管内の空気を1部を取り出し消臭処理を行ない,悪臭度の劣悪化を一定限度内に留めることを企図している。したがって,処理輸送物の悪臭度に応じて前述した空気比率Q2 /Q1 を調整することが望ましい。なお,図1において空気取入管72をコンプレッサ70の吸入側直近に配置したが,これを貯蔵庫60aに設けると貯蔵庫60a内は負圧となるので貯蔵庫60aのエアシールが不完全でも貯蔵庫60a内の悪臭ガスが外部へ吐出することは避けられる。
【0008】図2に示すものは,本発明の技術思想を浚渫船51と運搬船60間に適用したものである。圧送装置50の代わりに,竪型スクリュコンベヤ52aの下端にインレット装置52bを取り付けて海底などのヘドロ,軟泥をパイプ輸送するものである。53は圧送ポンプを示す。図2の例では,圧送管は約200mmの鋼管を使用し,輸送距離50〜100m,圧縮エアの吐出圧は3〜5kg/cm2 とし,特に500〜1000mの長距離輸送では7kg/cm2 に設定することもできる。
【0009】以上説明したように,本発明の悪臭をともなう半流動物質の混気圧送装置においては,密閉された経路を空気とともに搬送するものであり,輸送用の圧送空気をクリーンな状態として大気放出し,清浄な大気を常時加えて循環させるから,たとえ,配管中やその他の個所より漏洩するリークエアがあっても悪臭の発生を許容限界内に留めることができる。
【0010】
【発明の効果】本発明の装置においては,悪臭をともなう半流動物質を比較的長距離に亘ってほぼ完全密閉で安定的に連続輸送できるとともに,輸送用の圧縮エアの循環使用に対してその悪臭度を一定限度以内に留めて運転することができるので,万一リークエアが生じても悪臭公害を未然に防止する。したがって住居に近接した個所においても支障なく操業できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係る混気圧送装置の全体系統図である。
【図2】本発明の1実施例を示す混気圧送装置の全体概要図である。
【図3】従来の混気圧送装置の全体系統図である。
【符号の説明】
1 給泥ホッパ
3 吐出口
4 圧送ポンプ
5 圧送管
6 エゼクタ
7 電磁開閉弁
8 圧縮エア供給管
9 コンプレッサ
10 電磁開閉弁
20 プラグ(輸送物)
50 圧送装置
51 浚渫船
52 浚渫装置
52a 竪型スクリュコンベヤ
52b インレット装置
53 圧送ポンプ
54 エゼクタ
55 圧送管
60 運搬船
60a 貯蔵庫
62 戻り管
70 コンプレッサ
72 空気取入管
74 吐出管
80 処理液槽
80a 撹拌機
90 電磁開閉弁
100 混気圧送装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ヘドロ,軟泥,下水汚泥,その他の悪臭をともなう半流動物質の混気圧送装置であって,圧送装置と圧送管と該圧送管出口に接続され密閉された貯蔵庫とを連接し,該圧送管に圧送エアを供給するコンプレッサおよびエゼクタを接続するとともに,該コンプレッサの吸気側に前記貯蔵庫内の圧送エアを導く戻り管ならびに空気取入管を連結し,かつ,該コンプレッサの吐出エアの一部を導入して消臭する処理液槽を備えた悪臭をともなう半流動物質の混気圧送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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