説明

情報システム

【課題】車載システムにおいて全く利用できないオーディオファイルが生じないようにオーディオファイルのダウンロードを行う「情報システム」を提供する。
【解決手段】ユーザ宅内に設置されたユーザコンピュータ21は、車載システム1からダウンロードを要求されると、ダウンロード対象ファイルのうち、車載システム1との通信が保証される時間内に転送が完了する1からm番目のファイルについては、ファイル毎に順次、車載システム1に転送する。また、残りのm+1からm+n番目のダウンロード対象ファイルについては、各ダウンロード対象ファイルのデータをLバイトずつ車載システム1に送信する処理を、全てのダウンロード対象ファイルのデータの全ての送信が完了するまで繰り返す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、車載システムに、LANを介してオーディオファイルなどのデータをダウンロードする技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車載システムに、LANを介してオーディオファイルなどのデータをダウンロードする技術としては、ユーザの宅内に配置されたホームサーバから無線LANを介して、自動車に搭載された車載システムにオーディオファイルをダウンロードする技術が知られている(たとえば、特許文献1)。
【0003】
また、このようなホームサーバから車載システムにオーディオファイルをダウンロードする場合には、併せて、プレイリストなどと呼ばれる、ダウンロードするオーディオファイルに格納された楽曲の楽曲名などの情報のリストを、ホームサーバから車載システムにダウンロードすることが一般的である。車載システムでは、このようなリストを、楽曲名などの楽曲の情報をユーザに提示したり、再生する楽曲の選択を受け付けるためなどに用いる。
【特許文献1】特開2004-37981号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて、車載システムに、ユーザの宅内に配置されたホームサーバから無線LANを介してオーディオファイルなどをダウンロードする期間中は、車載システムが無線LANに接続し続けることができるように、自動車はユーザ宅の近くに位置していなくてはならない。したがって、このようなダウンロードは、ユーザが自動車を使用していない駐車中に行うことが合理的である。
【0005】
一方、自動車の駐車中は、車載システムが動作できる期間に制限が生じる。すなわち、車載システムが自動車のバッテリから電力の供給を受けて動作する場合には、自動車のバッテリの電力を使い果たさないように、車載システムの駐車中の一定期間以上の動作を制限する必要がある。また、車載システムが、自動車のバッテリから内蔵バッテリに充電した電力を用いて動作する場合には、内蔵バッテリの容量や充電状態に応じて、車載システムが動作できる期間が制限されることになる。
【0006】
また、このために、ホームサーバから、駐車中の車載システムに、所定の一群のオーディオファイルをダウンロードしようとした場合に、実際には、一部のオーディオファイルしかダウンロードできない場合がある。そして、このような場合には、ユーザは、ダウンロードしようとした一群のオーディオファイルのうちの、一部のオーディオファイルの楽曲を全く利用できないことになる。
【0007】
またホームサーバから、駐車中の車載システムに、所定の一群のオーディオファイルをダウンロードする場合に、車載システムに確実に前述したリストをダウンロードできるように、まずリストを車載システムにダウンロードし、その後に、当該リストに楽曲名などの楽曲の情報が含まれる楽曲のデータを格納した各オーディオファイルをダウンロードすることとすると、車載システムにダウンロードしたリストに楽曲の情報が含まれていながら、その楽曲のデータを格納したオーディオファイルが車載システムに存在しない状況が生じる。
【0008】
そして、このような車載システムにおける、リストとオーディオファイルの不整合は、リストに基づいて情報が表示される楽曲が、実際には再生されない楽曲となるために、ユーザに強い不信感を与えるものとなる。
そこで、本発明は、LANを介して車載システムに、一群のオーディオファイルをダウンロードする場合に、通信の途絶のために、当該一群のオーディオファイルの内に、車載システムにおいて全く利用できないオーディオファイルが生じないようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題達成のために、本発明は、自動車に搭載された車載システムと、LANに接続された情報処理装置とを備えた情報システムにおいて、前記車載システムに、記憶手段と、前記LANを介して前記情報処理装置に接続し、情報処理装置から転送されたファイルのデータを受信し、少なくとも一部のデータを受信したファイルを前記記憶手段に記憶するダウンロード手段とを備え、前記情報処理装置に、当該情報処理装置に前記無線LANを介して接続した前記車載システムに転送すべき複数のファイルを第1のファイルのグループと、第2のファイルのグループに分類する分類手段と、第1のファイルのグループに属する各ファイルのデータを、ファイル毎に順次車載システムに前記LANを介して転送し、前記第1のファイルのグループに属する各ファイルのデータの転送完了後に、前記第2のグループに属する各ファイルのデータを、時分割多重化して、前記車載システムに前記LANを介して転送する転送手段とを備えたものである。ここで、前記LANは、無線LANで形成される区間を含むものであってよく、前記車載システムは前記無線LANを介して前記情報処理装置に接続するものであってよい。
【0010】
このような情報システムによれば、情報処理装置において前記第1のファイルのグループを適当に選定するようにすることにより、車載システムが情報処理装置との通信を、情報処理装置から全てのファイルの転送が完了する前に行えなくなってしまった場合でも、通信が行えなくなる前に、第1のファイルのグループに属する各ファイルと、第2のファイルのグループに属する各ファイルの少なくとも一部のデータを車載システムにダウンロードできる確率を、全てのファイルをファイル毎に順次転送する場合に比べ高めることができる。したがって、車載システムに完全に転送できるファイルを一定数確保しつつ、情報処理装置から車載システムに転送すべきファイルのうちに、全てのファイルの全てのデータの転送が完了する前に通信が行えなくなってしまったために、車載システムにおいて全く利用できないファイルが生じてしまうことを抑制することができるようになる。
【0011】
より具体的には、前記第1のファイルのグループの分類は、たとえば、前記分類手段において、情報処理装置に接続した前記車載システムと通信を継続することが可能と推定される時間を推定残通信時間として算出し、前記車載システムに転送すべき複数のファイルのうちの、算出した推定残通信時間内に、前記車載システムに転送を終了することができるファイルを第1のファイルのグループに分類し、残りのファイルを第2のファイルのグループに分類することにより行うことができる。このようにすることにより、情報処理装置から車載システムに転送すべきファイルのうちに、全てのファイルの転送が完了する前に通信が行えなくなってしまったために、車載システムにおいて全く利用できないファイルが生じることを抑制しつつ、車載システムに完全に転送できるファイルを可能な限り多く確保することができるようになる。
【0012】
または、こ前記第1のファイルのグループの分類は、たとえば、前記分類手段において、情報処理装置に接続した前記車載システムと通信を継続することが可能と推定される時間を推定残通信時間として算出し、推定残通信時間内に、前記車載システムに転送すべき全てのファイルの少なくとも一部のデータを前記車載システムに転送しつつ、前記車載システムに全てのデータの転送を終了することができるファイルを第1のファイルのグループに分類し、残りのファイルを第2のファイルのグループに分類するように行うようにしてもよい。このようにすることにより、車載システムに完全に転送できるファイルを一定数確保しつつ、情報処理装置から車載システムに転送すべきファイルのうちに、全てのファイルの転送が完了する前に通信が行えなくなってしまったために、車載システムにおいて全く利用できないファイルが生じることを、より確実に抑制することができるようになる。
【0013】
なお、これらのように情報システムを構成する場合、前記車載システムにおいて、前記情報処理装置に接続したときに、当該車載システムが動作可能な残り時間を前記情報処理装置に通知し、前記情報処理装置の分類手段において、前記車載システムから通知された残り時間に基づいて、前記推定残通信時間を算出するようにすることも、より正確な推定残通信時間を算出できるようにする上で好ましい。
【0014】
ここで、以上の各情報システムにおいて、前記ファイルはオーディオデータを格納したオーディオファイルであってよく、この場合、前記情報処理装置において、前記車載システムに転送すべき複数のファイルのデータの転送に先立って、前記車載システムに転送すべき各のファイルに格納されたオーディオデータの情報を前記車載システムに転送し、前記車載システムにおいて、前記情報処理装置から転送された前記情報を前記記憶手段に格納するようにしてもよい。前述のように、本発明によれば、情報処理装置から車載システムに転送すべきファイルのうちに、全てのファイルの転送が完了する前に通信が行えなくなってしまったために、車載システムにおいて全く利用できないファイルが生じることが抑制されるので、この場合には、車載システムにおいて、オーディオデータの情報が存在するにもかかわらず、当該オーディオデータを格納したファイルが存在しないといった状況の発生を抑制できることになる。
【0015】
なお、以上の情報システムの構成は、以上の情報処理装置と車載システムの構成を交換することにより、車載システムから情報処理装置に複数のファイルを転送する場合にも適用することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、LANを介して車載システムに、一群のオーディオファイルをダウンロードする場合に、通信の途絶のために、当該一群のオーディオファイルの内に車載システムにおいて全く利用できないオーディオファイルが生じてしまうことを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1aに、本実施形態に係る情報システムの構成を示す。
図示するように情報システムは、ユーザの自動車に搭載された車載システム1、ユーザの宅内に配置された宅内システム2とを有している。そして、宅内システム2は、ユーザコンピュータ21、ユーザコンピュータ21が接続した無線LAN22とを有している。ここで、無線LAN22は、無線アクセスポイントによって形成されており、ユーザコンピュータ21は、この無線アクセスポイントが形成する無線LAN22に無線通信を介して直接接続していてもよく、有線LANなどを介して無線アクセスポイントに接続することにより無線アクセスポイントを介して無線LAN22に接続していてもよい。以下では、一例として、ユーザコンピュータ21が無線通信を介して無線アクセスポイントに接続しているものとして説明を行う。
【0018】
ここで、ユーザの車載システム1は、自宅車庫など自宅近傍に自動車が位置するときには、自宅に配置された宅内システム2の無線LAN22を利用してユーザコンピュータ21と通信を行うことができる。
次に、図1bに、車載システム1、ユーザコンピュータ21の内部構成を示す。
図示するように、車載システム1は、楽曲データなどのオーディオデータのファイルであるオーディオファイルを記憶するHDD11、HDD11に記憶されたオーディオファイルを再生しスピーカ12に出力するオーディオプレイヤ13、無線LAN22に無線通通信を介して接続する無線LANインタフェース14、無線LANインタフェース14を介した無線LAN22との通信を制御する無線LANドライバ15、ダウンロードクライアント16、通信可能時間予想部17、以上各部を制御する制御部18とを備えている。なお、HDD11には、HDD11に格納した各オーディオファイルの情報のリストであるプレイリストも格納される。このプレイリストには、たとえば、HDD11に格納した各オーディオファイルが格納する楽曲の楽曲名などの情報が含まれる。そして、このような構成において、オーディオプレイヤ13は、HDD11に格納されたプレイリストで楽曲の情報が示される各オーディオファイルの再生や、プレイリストで示されるHDD11に格納した各オーディオファイルの楽曲の楽曲名などの情報のユーザへの提示や、提示した情報を用いた再生するオーディオファイルのユーザ選択の受け付けなどの処理を行う。
【0019】
次に、ユーザコンピュータ21は、楽曲データなどのオーディオデータのファイルであるオーディオファイルを記憶するHDD211、HDD211に記憶されたオーディオファイルを再生しスピーカ212に出力するオーディオプレイヤ213、無線LAN22に無線通通信を介して接続する無線LANインタフェース214、無線LANインタフェース214を介した無線LAN22との通信を制御する無線LANドライバ215、ダウンロードサーバ216、以上各部を制御するサーバ制御部217とを備えている。なお、HDD211には、HDD211に格納した各オーディオファイルの情報のリストであるプレイリストも格納される。そして、このプレイリストには、たとえば、HDD211に格納した各オーディオファイルが格納する楽曲の楽曲名などの情報が含まれる。そして、このような構成において、オーディオプレイヤ213は、HDD211に格納されたプレイリストで楽曲の情報が示される各オーディオファイルの再生や、プレイリストで示されるHDD211に格納した各オーディオファイルの楽曲の楽曲名などの情報のユーザへの提示や、提示した情報を用いた再生するオーディオファイルのユーザ選択の受け付けなどの処理を行う。
【0020】
以下、このような情報システムの構成において行う、ユーザコンピュータ21から車載システム1へのオーディオファイルのダウンロードの動作について説明する。
図2に、このダウンロードのシーケンスの一例を、図3に、ユーザコンピュータ21のダウンロードサーバ216のダウンロード処理の手順を示す。
まず、車載システム1のダウンロードクライアント16は、車載システム1が無線LAN22に接続していないときには、定期的に、無線LANドライバ15に無線LAN22を探索させる。そして、無線LAN22が探索されたならば、無線LANドライバ15、無線LANインタフェース14を介して無線LAN22にアクセスする(図2S202)。そして、無線LAN22を介してユーザコンピュータ21のダウンロードサーバ216に接続し、ダウンロード要求を発行する(S204)。
【0021】
ダウンロードサーバ216は、図3のダウンロード処理において、ダウンロード要求の受信を監視し(ステップ302)、ダウンロード要求を受信したならば、車載システム1にダウンロードするオーディオファイルであるダウンロード対象ファイルを算定する(ステップ304)。ここでは、たとえば、ダウンロードクライアント16とダウンロードサーバ216の間で、車載システム1のHDD11に格納されているプレイリストとユーザコンピュータ21のHDD211に格納されているプレイリストの情報を交換し、ダウンロードサーバ216において、ユーザコンピュータ21のHDD211に格納されているプレイリストにのみ情報が格納されているオーディオファイルをダウンロード対象ファイルとする(図2S206)。
【0022】
次に、車載システム1のダウンロードクライアント16は、通信可能時間予想部17から、通信可能予想時間を取得し、ダウンロードサーバ216に通知する(S208)。ここで、通信可能時間予想部17は、たとえば、車載システム1の内蔵バッテリの蓄電状態を検出するものであり、内蔵バッテリの現在の蓄電量より、車載システム1がユーザコンピュータ21と無線LAN22を介して通信可能な残り時間を通信可能予想時間として算出する。ただし、自動車のアクセサリ電源オフから所定時間のみ動作するように車載システム1が構成されている場合には、通信可能時間予想部17は、アクセサリ電源オフから所定時間が経過するまでの、現在からの残り時間を通信可能予想時間として算出するものとしてもよい。
【0023】
さて、図3において、通信可能予想時間をダウンロードクライアント16から通知されたダウンロードサーバ216は(ステップ306)、通信保証時間を算出する(ステップ308)。ここで、通信保証時間とは、通信可能予想時間から見て、車載システム1との実際の通信に確実に用いることができると推定される時間であり、たとえば、通信可能予想時間の1/4の時間を通信保証時間とすることにより求める。
【0024】
次に、ダウンロードサーバ216は、通信保証時間とダウンロードクライアント16との間の実データ転送レートに基づいて、ダウンロード保証ファイルを算定する(ステップ312)。ダウンロード保証ファイルとは、ダウンロード対象ファイルのうちで通信保証時間中にダウンロードが完了すると推定されるファイルである。すなわち、ダウンロード保証ファイルは、ダウンロード対象ファイルの先頭からm個のファイルであり、mは、ダウンロード対象ファイル数以下の数であって、このm個のファイルの総データ量が、通信保証時間×実データ転送レートで求められるデータ転送量以下となる最大値をとる。たとえば、通信保証時間×実データ転送レートで求められるデータ転送量が、5MBで、ダウンロード対象ファイルが、2.5MBのファイルA、2MBのファイルB、1MBのファイルC....であれば、ファイルAとファイルBがダウンロード保証ファイルとなる。
【0025】
なお、ダウンロードクライアント16との間の実データ転送レートは、テストデータをダウンロードクライアント16に送信し、ダウンロードクライアント16においてテストデータの転送速度を計測してダウンロードサーバ216に通知するなどの手法により実測してもよいが、たとえば、ダウンロードサーバ216の無線LAN22上の転送速度の1/K(Kはたとえば8)としたり、予め定めた固定値などとしてもよい。
【0026】
次に、ダウンロードサーバ216は、HDD211に格納されているプレイリストをダウンロードクライアント16に送信する(ステップ312、図2S210)。ダウンロードクライアント16は、ダウンロードサーバ216から送信されたプレイリストで、HDD11中のプレイリストを更新する。
【0027】
そして、ダウンロードサーバ216は、ダウンロード対象ファイル数をm+n、ダウンロード保証ファイル数をmとして(ステップ314)、m個のダウンロード保証ファイルを順次、ダウンロードクライアント16に送信し(ステップ316、318、334、図2S212、S214、S216)、ダウンロードクライアント16はダウンロードサーバ216から受信したオーディオファイルをHDD11に格納する。
【0028】
次に、ダウンロードサーバ216は、ダウンロードクライアント16に送信していないダウンロード対象ファイルが存在するかどうかを調べ(ステップ320)、存在していなければステップ302に戻り、次のダウンロード要求の受信を待つ。
一方、ダウンロードクライアント16に送信していないダウンロード対象ファイルが存在する場合には、m+1番目からm+n番目のダウンロード対象ファイルのデータを時分割多重化してダウンロードクライアント16に送信する。すなわち、m+1番目からm+n番目のダウンロード対象ファイルの順に(ステップ322、330、336)、各ダウンロード対象ファイルのデータをLバイトずつダウンロードクライアント16に送信する処理を(ステップ328、図2S218-234)を、全てのダウンロード対象ファイルのデータの全ての送信が完了するまで(ステップ324)、繰り返す(ステップ332)。
【0029】
すなわち、図4に示すように、m+n個のダウンロード対象ファイルのうちの、1番目からm番目までのダウンロード保証ファイルをオーディオファイルを単位として順次ダウンロードクライアント16に送信したならば、残りのm+1番目からm+n番目のダウンロード対象ファイルの送信は、次のように時分割多重化して行う。なお、図中の#xは、x番目のファイルを表し、#X_yは、x番目のファイルのY番目のLバイトのデータを示し、#X_Eはx番目のファイルの最後のLバイト以下のデータを示す。
【0030】
さて、残りのm+1番目からm+n番目のダウンロード対象ファイルの送信では、まず、m+1番目からm+n番目のダウンロード対象ファイルの順に、各ダウンロード対象ファイルの先頭のLバイト(1バイト目からLバイト目のデータ)を送信する。ただし、Lバイト未満のデータしか存在しないダウンロード対象ファイルについては、その存在したデータを送信する。
【0031】
次に、m+1番目からm+n番目のダウンロード対象ファイルの順に、各ダウンロード対象ファイルの2番目のLバイト(L+1バイト目から2Lバイト目のデータ)を送信する。ただし、Lバイト未満のデータしか存在しないダウンロード対象ファイルについては、その存在したデータを送信する。また、2番目のLバイトのデータが存在しないダウンロード対象ファイルについては、データの送信は行わない。
【0032】
以降、m+1番目からm+n番目のダウンロード対象ファイルの全てのデータの送信が完了するまで、同様にして、各ダウンロード対象ファイルのデータをLバイトづつ送信する。
さて、このようにしてLバイトずつダウンロード対象ファイルとなった各オーディオファイルのデータを受信したダウンロードクライアント16は、次のようにして各データをHDD11に格納する。すなわち、まず、あるオーディオファイルの先頭のLバイトのデータを受信したならば、そのデータをファイルとしてHDD11に格納する。そして、以降、そのオーディオファイルのLバイトのデータを受信するたびに、HDD11にそのオーディオファイルにの先頭のLバイトのデータを受信したときに作成したファイルに受信したデータを追加していく。なお、ダウンロードサーバ216からダウンロードクライアント16に送信される各Lバイトのデータと、オーディオファイルとの対応の識別は、次のように行うようにしてよい。すなわち、ダウンロードサーバ216は、各Lバイトのデータをファイルとしてダウンロードクライアント16に送信する。また、Lバイトのデータのファイルのファイル名は、そのLバイトのデータが含まれていたオーディオファイルのファイル名に、そのLバイトのデータのオーディオファイル中での順番を示す枝番を連結したものとする。そして、ダウンロードクライアント16は、枝番1を持つファイルを受信したならば、そのファイル名の枝番を除く部分をファイル名とするファイルをHDD11上に作成し、受信したファイルに含まれるLバイトのデータを格納する。また、枝番1以外の枝番を持つファイルを受信したならば、そのファイル名の枝番を除く部分をファイル名とするHDD11上のファイルに、受信したファイルに含まれるLバイトのデータを追加する。
【0033】
さて、車載システム1のダウンロードクライアント16は、以上のようにしてプレイリストと各オーディオファイルを、ダウンロードサーバ216からHDD11にダウンロードしたならば、HDD11に格納しているダウンロードしたプレイリストに情報が含まれないオーディオファイルをHDD11から削除することにより、車載システム1のHDD11とユーザコンピュータ21のHDD211に格納されるプレイリストとオーディオファイルを一致させる。
【0034】
以上、本発明の実施形態について説明した。
以上のように本実施形態によれば、ユーザコンピュータ21は、車載システム1とユーザコンピュータ21が確実に通信を継続できる期間中にデータの全てをダウンロードできるオーディオファイルについては、ファイル毎に順次ファイルのデータを車載システム1にダウンロードしつつ、その他のオーディオファイルについては、各ファイルのデータを時分割多重化して車載システム1にダウンロードする。したがって、確実に通信を継続できる期間中に完全にダウンロードできるオーディオファイルについては、その全てをダウンロードしつつ、その他のオーディオファイルについては、少なくとも一部のデータが車載システム1に高確率でダウンロードされるようにすることができる。よって、ダウンロード対象ファイルであったにもかかわらず車載システム1で全く利用できないこととなるオーディオファイルの発生や、車載システム1のHDD11に格納されたプレイリストの情報と車載システム1のHDD11に格納されたオーディオファイルの不整合の発生を抑制することができる。
【0035】
なお、以上の実施形態では、ファイル毎にダウンロードを行うオーディオファイルであるダウンロード保証ファイルを、ダウンロード対象ファイルのうちの通信保証時間中にダウンロードが完了すると推定されるファイルとしたが、このファイル毎にダウンロードを行うオーディオファイルであるダウンロード保証ファイルは次のように定めるようにしてもよい。すなわち、通信保証時間から、全てのダウンロード対象ファイルの先頭Lバイトのデータをダウンロードクライアント16に送信するのに要する時間を減算し、猶予時間とする。そしてダウンロード保証ファイルを、ダウンロード対象ファイルの先頭からm個のファイルとする。ただし、mは、ダウンロード対象ファイル数以下の数であって、このm個のファイルの総データ量-L×mバイトが、猶予時間×実データ転送レートで求められるデータ転送量以下となる最大値をとるように定める。
【0036】
このようにすることにより、通信保証時間内に確実に全てのダウンロード対象ファイルの少なくとも一部が車載システム1に、より確実にダウンロードされるようにすることができる。
また、以上の実施形態では、ユーザ宅内に設置したユーザコンピュータ21から車載システム1にオーディオファイルをダウンロードする場合について説明したが、本実施形態に係るダウンロードの技術は、逆に車載システム1からユーザコンピュータ21にオーディオファイルをダウンロードする場合にも同様に適用することができる。また、本実施形態は、ムービーファイルなどの、オーディオファイル以外の任意のファイルのダウンロードにも、同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態に係る情報システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る情報システムにおけるダウンロード動作例を示すシーケンス図である。
【図3】本発明の実施形態に係るダウンロードサーバが行うダウンロード処理を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態に係るダウンロードサーバが行うオーディオファイルのデータのダウンロード順序を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
1…車載システム、2…宅内システム、11…HDD、12…スピーカ、13…オーディオプレイヤ、14…無線LANインタフェース、15…無線LANドライバ、16…ダウンロードクライアント、17…通信可能時間予想部、18…制御部、21…ユーザコンピュータ、22…無線LAN、211…HDD、212…スピーカ、213…オーディオプレイヤ、214…無線LANインタフェース、215…無線LANドライバ、216…ダウンロードサーバ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車に搭載された車載システムと、LANに接続された情報処理装置とを備えた情報システムであって、
前記車載システムは、
記憶手段と、
前記LANを介して前記情報処理装置に接続し、情報処理装置から転送されたファイルのデータを受信し、少なくとも一部のデータを受信したファイルを前記記憶手段に記憶するダウンロード手段とを有し、
前記情報処理装置は、
前記LANを介して当該情報処理装置に接続した前記車載システムに転送すべき複数のファイルを第1のファイルのグループと、第2のファイルのグループに分類する分類手段と、
第1のファイルのグループに属する各ファイルのデータを、ファイル毎に順次車載システムに前記LANを介して転送し、前記第1のファイルのグループに属する各ファイルのデータの転送完了後に、前記第2のグループに属する各ファイルのデータを、時分割多重化して、前記車載システムに前記LANを介して転送する転送手段を有することを特徴とする情報システム。
【請求項2】
請求項1記載の情報システムであって、
前記LANは無線LANで形成される区間を含み、前記車載システムは前記無線LANを介して前記情報処理装置に接続することを特徴とする情報システム。
【請求項3】
請求項1または2記載の情報システムであって、
前記分類手段は、情報処理装置に接続した前記車載システムと通信を継続することが可能と推定される時間を推定残通信時間として算出し、前記車載システムに転送すべき複数のファイルのうちの、算出した推定残通信時間内に、前記車載システムに転送を終了することができるファイルを第1のファイルのグループに分類し、残りのファイルを第2のファイルのグループに分類することを特徴とする情報システム。
【請求項4】
請求項1または2記載の情報システムであって、
前記分類手段は、情報処理装置に接続した前記車載システムと通信を継続することが可能と推定される時間を推定残通信時間として算出し、推定残通信時間内に、前記車載システムに転送すべき全てのファイルの少なくとも一部のデータを前記車載システムに転送しつつ、前記車載システムに全てのデータの転送を終了することができるファイルを第1のファイルのグループに分類し、残りのファイルを第2のファイルのグループに分類することを特徴とする情報システム。
【請求項5】
請求項1、2、3または4記載の情報システムであって、
前記車載システムは、前記情報処理装置に接続したときに、当該車載システムが動作可能な残り時間を前記情報処理装置に通知し、
前記情報処理装置の分類手段は、前記車載システムから通知された残り時間に基づいて、前記推定残通信時間を算出することを特徴とする情報システム。
【請求項6】
請求項1、2、3、4または5記載の情報システムであって、
前記ファイルはオーディオデータを格納したオーディオファイルであって、
前記情報処理装置は、前記車載システムに転送すべき複数のファイルのデータの転送に先立って、前記車載システムに転送すべき各ファイルに格納されたオーディオデータの情報を前記車載システムに転送し、
前記車載システムは、前記情報処理装置から転送された前記情報を前記記憶手段に格納することを特徴とする情報システム。
【請求項7】
自動車に搭載された車載システムと、LANに接続された情報処理装置とを備えた情報システムであって、
前記情報処理装置は、
記憶手段と、
記LANを介して前記情報処理装置に接続した車載システムから転送されたファイルのデータを受信し、少なくとも一部のデータを受信したファイルを前記記憶手段に記憶するファイル格納手段とを有し、
前記車載システムは、
前記LANを介して前記情報処理装置に接続する接続手段と、
接続した前記情報処理装置に転送すべき複数のファイルを第1のファイルのグループと、第2のファイルのグループに分類する分類手段と、
第1のファイルのグループに属する各ファイルのデータを、ファイル毎に順次情報処理装置に前記LANを介して転送し、前記第1のファイルのグループに属する各ファイルのデータの転送完了後に、前記第2のグループに属する各ファイルのデータを、時分割多重化して、前記情報処理装置に前記LANを介して転送する転送手段を有することを特徴とする情報システム。
【請求項8】
自動車に搭載された車載システムと、LANに接続された情報処理装置とを備えた情報システムにおいて、前記情報処理装置から車載システムにファイルをダウンロードするダウンロード方法であって、
前記車載システムにおいて、前記LANを介して前記情報処理装置に接続するステップと、
前記情報処理装置において、当該情報処理装置に前記LANを介して接続した前記車載システムに転送すべき複数のファイルを第1のファイルのグループと、第2のファイルのグループに分類するステップと、
前記情報処理装置において、第1のファイルのグループに属する各ファイルのデータを、ファイル毎に順次車載システムに前記LANを介して転送し、前記第1のファイルのグループに属する各ファイルのデータの転送完了後に、前記第2のグループに属する各ファイルのデータを、時分割多重化して、前記車載システムに前記LANを介して転送するステップと、
前記車載システムにおいて、情報処理装置から転送されたファイルのデータを受信し、少なくとも一部のデータを受信したファイルを記憶するステップとを有することを特徴とする車載システムへのダウンロード方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−350186(P2006−350186A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−179028(P2005−179028)
【出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)