説明

情報交換方法

【課題】ライフサイエンス分野の研究者を対象とするSNSを利用した情報交換システムにおいて、検索の曖昧性及び漏れを回避し、検索の網羅性を確保する。
【解決手段】SNSを利用した情報交換システムにおいて、参加者のプロフィールとして、従来のキーワードや自然文に代わり、オントロジーを使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソーシャルネットワーキングサイト(以下、SNS)を利用した情報交換方法に関し、特に、ライフサイエンス分野の研究者を対象とするSNSを利用した情報交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ライフサイエンス分野ではマイクロアレイやツーハイブリッド法など研究手法のハイスループット化が進み実験結果の解釈には自分の専門分野のみならず、他の専門分野の知識が必要とされるようになった。また、複雑な生命現象を理解するためには、細分化された個々の研究領域での結果を横断して理解する必要があり、そのためにも他の専門分野の知識を効率よく処理する必要がある。
【0003】
専門外の分野の知識を得るためには、他の専門分野の研究者と情報を交換することが重要である。これまで、ライフサイエンス分野においては、電話・Eメールによる「個人対個人」の情報交換手段が主流であったが、新たな情報交換の手段として近年注目されているのがソーシャルネットワーキングサイト(以下、SNS)である。
【0004】
SNSは、新たな知人関係を広げることを目的に開設された会員制のコミュニティ型のWebサイトで、本来は「既存の参加者からの招待がないと参加できない」というシステムになっている。
【0005】
SNSは、参加者のプロフィールや写真を公開する機能や、「友人」を登録するアドレス帳、友人に別の友人を紹介する機能、サイト内の友人のみ閲覧できる日記帳、友人間でのメッセージ交換に使う掲示板やカレンダーなど、コミュニケーションを取るための豊富な機能が提供され、実名性が高く、ブログと共に、最近、インターネットの信頼性を高めるために、非常に注目が高まっているサービスである。
【0006】
近年、ライフサイエンス分野の研究者を対象とするSNSもいくつか登場している。参加者(ここでは研究者)は、自分のプロフィールとして、専門分野を登録する。特定の分野の情報を入手したい場合には、その分野をプロフィールとして登録している参加者を検索し、情報交換を行うことができる。
【0007】
本発明のようなインターネット上でコミュニケーションを行うサイトに関連するものとしては下記公報がある。
【特許文献1】特開2005-4342号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のSNSにおいては、参加者のプロフィールの入力方法に課題がある。一般的にSNSのプロフィールは、指定されたキーワードを選択するかあるいは自然文による記述という方式をとる。しかし、自然文による記述では、書く人により同じ意味の単語に対し異なる表現が用いられる場合があり、検索時の曖昧性に課題が残る。また、曖昧性をなくすためにキーワードを選択する方式を採用しても、全ての領域をカバーしているかどうかという網羅性や、逆にキーワードの数が増えた場合に必要なものが漏れなく選択されているかという課題が生じる。
【0009】
本発明の目的は、ライフサイエンス分野の研究者を対象とするSNSを利用した情報交換システムにおいて、検索の曖昧性及び漏れを回避し、検索の網羅性を確保することができる手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によると、ライフサイエンス分野の研究者を対象とするSNSを運営する情報交換システムにおいて、参加者のプロフィールとして、従来のキーワードや自然文に代わり、オントロジーを使用する。
【0011】
情報交換システムは、参加者のID、参加者のプロフィールであるオントロジーID、及び、参加者が使用するリソーステーブルIDを参加者情報テーブルに登録する。
【0012】
クライアントコンピュータからのアクセス要求があったらそれに応答してWebブラウザに検索条件入力画面を表示する。クライアントコンピュータでは、検索条件入力画面に検索条件としてオントロジーID入力する。情報交換システムは、オントロジーIDを受信すると、参加者情報テーブルを検索して、受信したオントロジーIDと同一のオントロジーIDをプロフィールとして登録している参加者を検索する。検索された参加者のIDを検索結果としてクライアントコンピュータに送信する。
【0013】
クライアントコンピュータでは、検索条件入力画面に検索条件としてオントロジーID及びリソース名を入力してよい。情報交換システムは、オントロジーIDに基づいて検索した参加者より、受信したリソース名と同一のリソース名を登録している参加者を選択することにより絞り込む。絞り込まれた参加者のIDを検索結果としてクライアントコンピュータに送信する。
【0014】
SNSを運営する情報交換システムは、リソーステーブルID、リソース名、及び、リソースURLを格納したリソーステーブルを有する。情報交換システムは、参加者情報テーブルより、絞り込まれた参加者のリソーステーブルIDを読み取り、読み取ったリソーステーブルIDを検索キーとしてリソーステーブルよりリソース名及びリソースURLを読み取る。絞り込まれた参加者のID、オントロジーID、リソース名及びリソースURLを検索結果としてクライアントコンピュータに送信する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、ライフサイエンス分野の研究者を対象とするSNSを利用した情報交換システムにおいて、検索の曖昧性及び漏れを回避し、検索の網羅性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照して具体的に説明する。図1は、本発明による情報交換ネットワークシステムの概念図である。本例の情報交換ネットワークシステムは、SNSを運営する情報交換システム11、SNSの参加者が登録情報入力・検索条件入力を行うクライアントコンピュータ13、14を有し、情報交換システム11とクライアントコンピュータ13、14はインターネット12によって接続されている。情報交換システム11が運営するSNSはライフサイエンス分野の研究者を対象とするものであり、参加者はライフサイエンス分野の研究者である。
【0017】
情報交換システム11はサーバコンピュータによって構成され、中央演算装置、CDROM、ハードディスク装置等の記憶装置、RAM等の記憶装置、入出力インターフェース、通信インターフェース等を有する。
【0018】
情報交換システム11は、参加者の登録受付を行う参加受付プログラム11A、参加者の登録情報を格納した参加者情報テーブル11B、参加者が普段使用するリソースの情報を記載したリソーステーブル11C、参加者のプロフィールを特定するために使用するオントロジー11D、参加者の検索を行う参加者検索プログラム11E、及び、参加者の検索結果を表示する検索結果表示プログラム11Fを備えている。これらのプログラム及びテーブルは、記憶装置に格納されている。
【0019】
クライアントコンピュータ13は、Webブラウザ13A、及び、電子メールソフトウエア13Bを備えており、クライアントコンピュータ14も同様にWebブラウザ14A、及び、電子メールソフトウエア14Bを備えている。図1では、2つのクライアントコンピュータ13、14が示されているが、これらと同等の機能を有するクライアントコンピュータが更に複数個接続されていてもかまわない。
【0020】
図2は、ライフサイエンス分野のオントロジーの一例を示す。オントロジーでは、上位概念と下位概念が”is_a”関係22や”part_of”関係23で階層化されている。例えば、”biological process”21と”physiological process”24は、”is_a”関係22にある。”morphogenesis”25と”development”26は”part_of”関係23にある。
【0021】
”is_a”関係22及び”part_of”関係23はそれぞれ英語表現に由来している。例えば、概念”biological process”21、”is_a”関係22、概念”physiological process”24の組によって、”physiological process is a biological process.”という英文を表現している。同様に、”morphogenesis”25、”part_of”関係23、”development”26によって、”morphogenesis is part of development”という英文を表現している。
【0022】
更に各概念には固有のIDが割り当てられている。例えば、”biological process”21にはIDとして”GO:0008150”が付されている。
【0023】
上述のように、オントロジーは階層的構造を持っており、一つの概念に対して数個しか下位概念を持たないのが通例である。このように、数個の選択肢を階層的にたどっていくことができることがオントロジーの利点である。ライフサイエンス分野では、多数のオントロジーが構築されている。例えば、Gene Ontology(http://www.geneontology.org/)が挙げられる。
【0024】
図3は、本発明による情報交換システムが運営するSNSへ参加希望者が登録する方法を示すフローチャートの一例である。ステップS31Aにて、参加希望者は、自身のクライアントコンピュータの電子メールソフトウエアを使用して、既存の参加者(招待者)から、SNSのURLおよび招待者のIDが記載された電子メールを受け取る。ステップS31Bにて、参加希望者は、Webブラウザを使用して、SNSのURLにアクセスする。ステップS31Cにて、情報交換システム11では参加受付プログラム11Aが起動し、参加希望者のクライアントコンピュータに参加者登録画面(図4参照)を表示する。参加希望者は、参加者登録画面にて、招待者ID、氏名、オントロジーID、メールアドレス、リソース等を入力する。こうして本例では、参加希望者のプロフィールとしてオントロジーIDを登録する。ステップS31Dにて、参加希望者は、全ての情報を入力したら、参加者登録画面上のID発行ボタンをクリックする。それにより登録が完了する。
【0025】
図4は、情報交換システム11の参加受付プログラム11Aによってクライアントコンピュータに表示される参加者登録画面の例である。参加者登録画面は、招待者ID入力欄41、氏名入力欄42、オントロジーID入力欄43、メールアドレス入力欄44、リソース入力欄45、およびID発行ボタン46を有する。リソース入力欄45には、参加希望者が最もよく使用するリソースの名前(データベース名、ソフトウェア名、論文名等)と、そのURLの組を入力する。こうして本例では、参加希望者のプロフィールとしてオントロジーIDを登録する。参加希望者は、全ての入力欄に対する入力が完了すると、ID発行ボタン46をクリックする。こうして登録が完了し、IDが発行される。
【0026】
オントロジーID入力欄43には、参加希望者が容易にオントロジーIDを入力することができるように、オントロジーのリストを直接表示するか、あるいは、オントロジーのURLへのリンクを表示する。
【0027】
図5は、情報交換システム11の参加者情報テーブル11Bに格納されている情報の一例を示す。参加者情報テーブル11Bには、参加者のID51を主キーとして、招待者ID52、氏名53、オントロジーID54、メールアドレス55、及び、リソーステーブルID56が格納されている。即ち、参加者のプロフィールとしてオントロジーIDが登録されている。招待者ID52は図4における招待者ID41で入力された値に対応している。同様に、氏名53は図4の氏名42、オントロジーID54は図4のオントロジーID43、メールアドレス55は図4のメールアドレス44で入力された値に対応している。リソーステーブルID56はリソーステーブル11C(図6参照)への参照IDである。
【0028】
図6は、情報交換システム11のリソーステーブル11Cに格納されている情報の一例を示す。リソーステーブル11Cには、リソーステーブルID61、リソース名62、及び、リソースURL63が格納されている。リソーステーブルID61は参加者情報テーブル11BのリソーステーブルID56に対応している。リソース名62およびリソースURL63は、図4のリソース入力欄45にて入力された値に対応している。
【0029】
図7は、参加者が本発明による情報交換システムを利用して検索を行う方法を示すフローチャートの一例である。ステップS71Aにて、検索を希望する参加者は、自身のクライアントコンピュータのWebブラウザを使用して情報交換システム11が運営するSNSにアクセスする。ステップS71Bにて、情報交換システム11の参加者検索プログラム11Eが起動し、参加者のクライアントコンピュータに、検索条件入力画面を送信する。参加者は検索条件入力画面にて検索条件を入力する。検索条件は、情報交換システム11に送られる。情報交換システム11では、検索条件に従って検索処理を行う。ステップS71Cにて、情報交換システム11では、検索処理が終了すると、検索結果表示プログラム11Fが起動し、参加者のクライアントコンピュータのWebブラウザに検索結果が表示される。
【0030】
図8は、参加者検索プログラム11Eが起動したとき、クライアントコンピュータに表示される検索条件入力画面の例を示す。検索条件入力画面は、オントロジーID入力欄81、キーワード入力欄82、及び、検索実行ボタン83を有する。
【0031】
オントロジーID入力欄81に検索条件としてオントロジーIDを入力し、キーワード入力欄82に検索条件としてリソース名を入力する。
【0032】
オントロジーID入力欄81には、参加希望者が容易にオントロジーIDを入力することができるように、オントロジーのリストを直接表示するか、あるいは、オントロジーのURLへのリンクを表示する。キーワード入力欄82には、参加希望者が容易にリソース名を入力することができるように、リソース名のリストを直接表示してよい。
【0033】
検索条件の入力が終わると、検索実行ボタン83をクリックすることにより検索処理が実行される。
【0034】
検索処理では、まず、参加者情報テーブル11Bを検索し、オントロジーID入力欄81に入力されたオントロジーIDと同一のオントロジーIDをプロフィールとして登録している参加者をリストアップする。次に、リストアップした参加者より、キーワード入力欄82に入力されたリソース名と同一のリソース名を登録している参加者を絞り込む。最終的に絞り込まれた参加者のIDを検索結果としてクライアントコンピュータに送信する。
【0035】
検索結果として参加者のIDが得られると、それを検索キーとして、参加者情報テーブル11Bを検索し、その参加者が登録したリソーステーブルIDを読み出す。このリソーステーブルIDを検索キーとして、リソーステーブル11Cを検索し、そのリソーステーブルIDに含まれるリソース名62及びリソースURL63を読み取る。こうして得られた参加者IDとリソース名62及びリソースURL63が、検索結果として得られる。
【0036】
図9は、検索結果表示プログラム11Fを起動したとき、クライアントコンピュータに表示される検索結果出力画面の例を示す。検索結果出力画面には、参加者ID91、氏名92、メールアドレス93、オントロジーID94、リソース名95、及び、リソースURL96が表示される。検索処理の仕様から、オントロジーID94は図8のオントロジーID入力欄81に入力された値が、リソース名95は図8のキーワード入力欄82に入力された値が表示されていることに留意されたい。
【0037】
以上、本発明の例を説明したが本発明は上述の例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲にて様々な変更が可能であることは当業者に容易に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明による情報交換ネットワークシステムの概念図である。
【図2】ライフサイエンス分野におけるオントロジーの一例を示した図である。
【図3】本発明による情報交換システムのSNSへの参加登録方法のフローチャートの例を示す図である。
【図4】本発明による参加受付プログラムによる参加者登録画面の例を示す図である。
【図5】本発明による参加者情報テーブルの例を示す図である。
【図6】本発明によるリソーステーブルの例を示す図である。
【図7】本発明による情報交換システムのSNSによる参加者検索方法のフローチャートの例を示す図である。
【図8】本発明による参加者検索プログラムによる検索条件入力画面の例を示す図である。
【図9】本発明による検索結果表示プログラムによる検索結果出力画面の例を示す図である。
【符号の説明】
【0039】
11…情報交換システムコンピュータ、12…インターネット、13,14…クライアントコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
参加者のID、参加者のプロフィールであるオントロジーID、及び、参加者が使用するリソーステーブルIDを参加者情報テーブルに登録する参加者情報登録ステップと、
クライアントコンピュータからのアクセス要求に応答してWebサイトに検索条件入力画面を表示する検索条件入力画面表示ステップと、
上記検索条件入力画面に入力されたオントロジーIDを受信する検索条件受信ステップと、
上記参加者情報テーブルを検索して、上記受信したオントロジーIDと同一のオントロジーIDをプロフィールとして登録している参加者を検索する参加者検索ステップと、
上記検索された参加者のIDを検索結果としてクライアントコンピュータに送信する検索結果送信ステップと、
を含む情報交換方法をコンピュータに実行させるためにコンピュータによって読み取り可能なプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−293586(P2007−293586A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−120560(P2006−120560)
【出願日】平成18年4月25日(2006.4.25)
【出願人】(000233055)日立ソフトウエアエンジニアリング株式会社 (1,610)
【Fターム(参考)】