説明

情報伝送システム、移動体位置検知装置、発信装置、および受信装置

【課題】移動体を見失うことなく確実に追跡することができる情報伝送システムを得る。
【解決手段】発光部421を備える発信装置403、および、二次元受光面を有する撮像部431を備える受信装置405を含み、発信装置403側の識別情報を含む伝送対象情報を、発信装置403から移動体Wに設けた受信装置405へ伝送する情報伝送システム401である。発信装置403は、符号化区間601,901において、伝送対象情報、および、移動体Wを追跡するための追跡情報415を、発光部421を常時点灯し、かつ、前記常時点灯の際の光の強度を時系列的に変化させる複合発光パターンに符号化する符号化部417と、この符号化部417で符号化された複合発光パターンに従って発光部421の発光制御を行う発光制御部419とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時系列順に並んだ光の強度変化に基づく発光パターンを伝送媒体として情報を伝送する際に用いられる情報伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、時系列順に並んだ光の強度変化に基づく発光パターンを伝送媒体として情報を伝送する情報伝送システムが知られている。この情報伝送システムは、LED等の発光部を有する発信装置と、動画カメラ等の撮像部を有する受信装置とを備える。発信装置は移動体側に取り付けられる一方、受信装置は固定側に取り付けられる。
【0003】
このように構成された情報伝送システムでは、発信装置の発光部によって照射される、時系列順に並んだ光の強度変化に基づく発光パターンを、受信装置の撮像部を用いて撮像する。この発光パターンには、予め定められる符号化手順を用いて、例えば移動体識別情報が符号化されている。受信装置では、撮像した光の発光パターンに係る時系列情報を、予め定められる解読手順を用いて解読して、移動体識別情報を復元する。これにより、発信装置から受信装置へ、どの移動体がいまどこにいるのかに係る情報を伝送することができる。
【0004】
ところで、前記した従来の情報伝送システムでは、移動体を見失うことなく追跡することが求められている。この課題を満たすために、移動体に関する動きベクトルを検出し、検出した動きベクトルを移動体の追跡に役立てる技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に係る技術によれば、移動体を見失うことなく追跡することができるという。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−056343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1に係る技術では、例えば、移動体側の発光部が消灯している(消灯により表されたビット情報を伝送している)期間は、受信装置の撮像部には何も映らない。仮に、この消灯期間が長く続いた場合であって、この消灯期間に移動体(発信装置)が大きく移動したときには、受信装置において、撮像部で撮像した二次元画像上のどこに移動体が位置しているのかを予測することが困難であった。また、この際において、移動体を見失った地点のそばに別の移動体が存在する場合、その別の移動体を目標となる移動体と混同してしまうおそれがあった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、移動体を見失うことなく確実に追跡することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、発光部を備える発信装置、および、二次元受光面を有する撮像部を備える受信装置を含み、前記発信装置または前記受信装置のいずれか一方を移動体に設け、前記発信装置側の識別情報を含む伝送対象情報を、前記発信装置から前記受信装置へ伝送する情報伝送システムが前提となる。
【0009】
前記発信装置は、予め定められる符号化手順を用いた符号化が行われる符号化区間において、前記伝送対象情報、および、前記移動体を追跡するための追跡情報を、前記発光部を常時点灯し、かつ、前記常時点灯の際の光の強度を時系列的に変化させる複合発光パターンに符号化する符号化部と、前記符号化部で符号化された前記複合発光パターンに従って前記発光部の発光制御を行う発光制御部と、をさらに備える。前記受信装置は、前記撮像部の前記二次元受光面上に投影された前記複合発光パターンを、前記追跡情報に係る発光パターンおよび前記伝送対象情報に係る発光パターンにそれぞれ分離する分離部と、前記分離部で分離された前記追跡情報および前記伝送対象情報のそれぞれに係る発光パターンに対し、前記符号化を解く解読手順を用いて、前記追跡情報および前記伝送対象情報をそれぞれ復元する復元部と、をさらに備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る情報伝送システムによれば、移動体を見失うことなく確実に追跡することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】比較例に係る情報伝送システムであって、作業者Wの頭部に取り付けられた撮像部を用いて発光部の画像を撮像する様子を表す説明図である。
【図2】比較例に係る情報伝送システムであって、発光部の点滅を用いて発信装置識別情報を受信装置109側へ伝送する際に用いる発光パターンの説明図である。
【図3】比較例に係る情報伝送システムであって、作業者Wの頭部の時系列的な動きを模式的に表す説明図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る情報伝送システムの概要を表す機能ブロック図である。
【図5】発光部に含まれる複合発光パターン生成回路の回路図である。
【図6】第1実施形態に係る発信装置の符号化部で符号化された複合発光パターンを表す説明図である。
【図7】第1実施形態に係る発信装置の処理の流れを表すフローチャート図である。
【図8】第1実施形態に係る受信装置の処理の流れを表すフローチャート図である。
【図9】第1実施形態に係る撮像部を用いて撮像して時系列順に並べた複数のフレーム画像であって、追跡情報用しきい値を用いて2値化後のフレーム画像を重ね合わせた発光領域を表す説明図である。
【図10】図9に表す発光領域を、伝送対象情報用しきい値を用いて2値化した画像を表す説明図である。
【図11】第1実施形態の変形例に係る情報伝送システムの符号化部で符号化される複合発光パターンを表す説明図である。
【図12】第2実施形態に係る情報伝送システムにおいて、発光部の構成例を表す説明図である。
【図13】図13(a)〜(e)は、第2実施形態に係る情報伝送システムにおいて用いられる複合発光パターンの設定例を表す説明図である。
【図14】周辺部の構成を含む移動体位置検知装置の機能ブロック図である。
【図15】移動体位置検知装置における移動体(作業者)の位置検知原理に係る説明図である。
【図16】変形例に係る移動体位置検知装置の概要を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る情報伝送システム、移動体位置検知装置、発信装置、および受信装置について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
(比較例に係る情報伝送システム101の概要)
はじめに、本発明の実施形態に係る情報伝送システムの説明に先立って、比較例に係る情報伝送システム101の概要について、図1〜図3を参照しながら説明する。図1は、比較例に係る情報伝送システム101において、作業者Wの頭部に取り付けられた撮像部107を用いて発光部103の画像を撮像する様子を表す説明図である。図2は、発光部103の点滅を用いて発信装置IDを受信装置109側へ伝送する際に用いる発光パターンの説明図である。
【0014】
比較例に係る情報伝送システム101は、図1に示すように、例えば白熱灯や蛍光灯などの発光部103を備える発信装置105と、二次元受光面を有する動画カメラなどの撮像部107を備える受信装置109とを含んで構成される。発光部103における発光色は単色である。発信装置105は、例えば作業者Wの作業スペースにおける壁面などに取り付けられる。受信装置109は、作業者Wが頭部にかぶる不図示のヘルメットなどに取り付けられる。つまり、受信装置109は、移動体側に設けられる。
【0015】
このように構成された比較例に係る情報伝送システム101は、発信装置105側の発信装置識別情報を含む伝送対象情報を、発信装置105から受信装置109へ伝送するように動作する。具体的には、比較例に係る情報伝送システム101では、光の点滅に係る発光パターンを伝送媒体として用いて伝送対象情報が符号化された発光部103の画像を、撮像部107を用いて撮像し、撮像した時系列の光の点滅に係る発光パターンを解読し、伝送対象情報を復元することによって情報伝送を行う。
【0016】
前記した通り、作業者Wの頭部(ヘルメット)には、受信装置109の撮像部107が取り付けられるため、作業者Wが静止している前提では、撮像部107の二次元受光面上における発光部103の投影位置は変わらない。このため、撮像部107の二次元受光面上における発光部103の投影位置を抽出し、同抽出部分の光強度を時系列順に並べると、図2に示すように、発光部103の発光パターンを復元することができる。
【0017】
図2中の横軸は経過時間tを表し、縦軸は発光部103の発光強度を表す。これは、後記する図6、図11、および図13でも同じである。図2において、点灯時の発光強度を“High”で示し、消灯時の発光強度を“Low”で示す。点灯時とは、発光部103の光強度が、例えば図2に示すような符号化に係るしきい値TH0を超えて発光している状態をいう。消灯時とは、発光部103がまったく発光していない状態をいう。図2に示す例では、対象情報を伝送するために予め定められる符号化手順を用いた符号化が行われる符号化区間201において、ビット列番号がA01〜A14である14ビットの情報を、発光部103の光強度変化に係る発光パターンに符号化している。
【0018】
この符号化区間201において、発光部103の点灯状態(High;図2の例えば符号203参照)に対して符号“1”を割り当てる一方、消灯状態(Low;図2の例えば符号205参照)に対して符号“0”を割り当てることにより、伝送対象情報としての発信装置識別情報を符号化する。図2に示す例では、伝送対象情報(発信装置識別情報)として、“11110100011001”に係る符号化ビット列データが伝送される。
【0019】
従って、受信装置109において、符号化に係るしきい値TH0を用いて、時系列順に並んだ光の強度変化に係る符号化ビット列データを2値化することにより、伝送対象情報を復元することができる。
【0020】
ところで、比較例に係る情報伝送システム101では、前記した通り、受信装置109の撮像部107は作業者Wの頭部(ヘルメット)に取り付けられている。このため、作業者Wが図1の矢印付き直線111で示す方向に歩行移動すると、撮像部107は、図1の矢印付き曲線113で示すような上下方向にぶれた移動軌跡を描く。しかも、作業者Wの頭の動きに伴って、撮像部107の向きもピッチ方向(上下方向)115およびヨー方向(左右方向)117に変動する。従って、撮像部107の二次元受光面上における発光部103の位置は、同じ場所には投影されず、大きく変動する傾向がある。
【0021】
図3は、撮像部107の二次元受光面上における発光部103の時系列な投影位置の変位(作業者Wの頭部の時系列的な動き)を模式的に表す説明図である。撮像部107の二次元受光面301上における発光部103の投影位置は、作業者Wの動きに伴って、例えば図3に示すように、ビット列番号A01に係る投影位置303から、ビット列番号A14に係る投影位置305へと、図3の矢印付き曲線307で示すような上下方向にぶれた移動軌跡を描く。
なお、図3に示す撮像部107の二次元受光面301上には、発光部103が点灯状態にある場合の投影位置のみが表されており、発光部103が消灯状態にある場合の投影位置は表されていない。発光部103が消灯状態にある場合は、撮像部107の二次元受光面301上に発光部103が投影されないからである。
【0022】
ここで、時々刻々とその位置を変える移動体側の発光部103を追跡するためには、発光部103の投影位置(時刻)での光強度をそれぞれ検出しなければならない。発光部103が点灯状態を継続している場合(例えば、図3に示す撮像部107の二次元受光面301上に連なるビット列番号A01〜A04に係る投影位置を参照)は、連続するビット列番号のそれぞれに係る投影位置が相互に隣接している。このため、例えば、進行方向におけるビット列番号A01に係る投影位置の近傍に存在する発光点をビット列番号A02に係る投影位置とすることによって、発光部103の位置を追跡することができる。
【0023】
ところが、動きベクトルを用いて発光部103の位置を予測する比較例に係る情報伝送システム101では、発光部103が消灯している(消灯により表されたビット情報を伝送している)期間は、受信装置109の撮像部107には何も映らない。仮に、この消灯期間(例えば、図3に示す撮像部107の二次元受光面301上におけるビット列番号A06とA10間の空白期間309を参照)が長く続いた場合であって、受信装置109の位置が大きく移動したときには、受信装置109において、撮像部107で撮像した二次元画像上のどこに発光部103が位置しているのかを予測することが困難であった。
【0024】
ここで、受信装置109が発光部103の位置を予測することが困難であるとは、比較例に係る情報伝送システム101において、移動体としての作業者Wを見失うことを意味する。また、この際において、作業者W(移動体)を見失った地点のそばに別の作業者W(移動体)が存在すると、その別の作業者W(移動体)を目標となる作業者W(移動体)と混同してしまうおそれがあったのである。
【0025】
(本発明の第1実施形態に係る情報伝送システム401の概要)
次に、前記した比較例に係る情報伝送システム101が有する課題を解決する、本発明の第1実施形態に係る情報伝送システム401について、図4〜図11を参照して説明する。
図4は、本発明の第1実施形態に係る情報伝送システム401の概要を表す機能ブロック図である。第1実施形態に係る情報伝送システム401は、図4に示すように、時系列順に並んだ光の強度変化に基づく発光パターンを伝送媒体407として伝送対象情報を発信する発信装置403と、発信装置403から発信されてきた発光パターンを受信して元の伝送対象情報を復元する受信装置405と、を備えて構成されている。発信装置403は、例えば作業者Wの作業スペースにおける壁面などに取り付けられる。受信装置405は、例えば作業者Wが頭部にかぶるヘルメットなどに取り付けられる。つまり、受信装置405は、移動体(作業者W)側に設けられる。
【0026】
〔第1実施形態に係る発信装置403の概要〕
第1実施形態に係る発信装置403は、図4に示すように、識別情報記憶部411と、符号化部417と、発光制御部419と、発光部421とを備えて構成されている。
なお、第1実施形態に係る発信装置403は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを備えた不図示のマイクロコンピュータ(以下“マイコン”という。)により構成される。このマイコンは、ROMに記憶されているプログラムを読み出して実行し、符号化部417や発光制御部419などの各種機能部の実行制御を行うように機能する。
【0027】
識別情報記憶部411は、発信装置403側の識別情報を記憶する機能を有する。発信装置403側の識別情報としては、例えば、発信装置403を一意に識別するための発信装置識別情報(以下、“発信装置ID”と省略する場合がある。)や、発信装置403に固有の放送情報などの、様々な情報を適宜採用することができる。本第1実施形態では、説明の簡素化のため、発信装置403側の識別情報として発信装置IDを用いるケースを例示して説明する。
【0028】
なお、符号化対象となる伝送対象情報413は、識別情報記憶部411に予め記憶させておいてもよいし、不図示の外部装置から通信回線414を介して入力してもよい。また、伝送対象情報413は、識別情報記憶部411に予め記憶させておいた識別情報と、外部装置から通信回線414を介して入力した情報とを組み合わせたものであってもよい。
【0029】
符号化部417は、予め定められる符号化手順を用いた符号化が行われる符号化区間において、伝送対象情報413、および、移動体としての受信装置405を追跡するための追跡情報415を、発光部421を常時点灯し、かつ、前記常時点灯の際の光の強度を時系列的に変化させる複合発光パターンに符号化する機能を有する。
【0030】
なお、追跡情報415としては、例えば、発光部421が有する光源(例えば、図5の発光ダイオード(LED)507参照)を常時点灯させるための様々な発光パターンを適宜採用することができる。本第1実施形態では、説明の簡素化のため、追跡情報415として、後記する暗灯に係る常時発光パターンを用いるケースを例示して説明する。
【0031】
発光制御部419は、符号化部417で符号化された複合発光パターンに従って発光部421の発光制御を行う機能を有する。発光部421は、例えば、複合発光パターン生成回路501(図5参照)を含んで構成され、発光制御部419による複合発光パターンに係る発光制御指令に従って、後記するように、明灯もしくは暗灯のうちいずれかによる点灯または消灯を繰り返すように動作する。
【0032】
ここで、発光部421に含まれる複合発光パターン生成回路501の構成について、図5を参照して説明する。図5は、発光部421に含まれる複合発光パターン生成回路501の回路図である。複合発光パターン生成回路501は、図5に示すように、直流電源503とアース端子505との間に、第1抵抗R1、LED(Light Emitting Diode)507、第1スイッチSW1および第2抵抗R2の並列回路509、並びに、第2スイッチSW2を、順次直列接続して構成されている。
【0033】
図5に示す複合発光パターン生成回路501によれば、第1および第2スイッチSW1,SW2のオンオフ状態を組み合わせることによって、明るい点灯状態(明灯)、暗い点灯状態(暗灯)、および、消灯状態の三つのパターンを生成することができる。
【0034】
〔第1実施形態に係る受信装置405の概要〕
第1実施形態に係る受信装置405は、図4に示すように、撮像部431と、発光パターン分離部433と、第1発光パターン取得部435と、第2発光パターン取得部437と、復元部439と、伝送対象情報出力部441と、を備えて構成されている。
なお、第1実施形態に係る受信装置405は、第1実施形態に係る発信装置403と同様に、CPU、ROM、RAMなどを備えたマイコンにより構成される。このマイコンは、ROMに記憶されているプログラムを読み出して実行し、発光パターン分離部433や復元部439などの各種機能部の実行制御を行うように機能する。
【0035】
撮像部431は、例えば、CCD(Charge-Coupled Devices)やCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)などの二次元受光面を有するイメージセンサによって構成される。撮像部431は、二次元受光面を介して所定の周期(例えば、毎秒480フレームなど)で取り込んだ発信装置403の発光部421を含む二次元画像をフレーム信号に変換し、変換した時系列のフレーム信号を不図示のフレームメモリに蓄える機能を有する。
【0036】
発光パターン分離部433は、撮像部431の二次元受光面上に投影された複合発光パターンを、追跡情報に係る発光パターンおよび伝送対象情報に係る発光パターンにそれぞれ分離する機能を有する。第1発光パターン取得部435は、発光パターン分離部433で分離された追跡情報に係る発光パターンを取得する機能を有する。第2発光パターン取得部437は、発光パターン分離部433で分離された伝送対象情報に係る発光パターンを取得する機能を有する。
【0037】
復元部439は、第2発光パターン取得部437で取得された伝送対象情報に係る発光パターン、および、第1発光パターン取得部435で取得された追跡情報に係る発光パターンのそれぞれに対し、前記符号化を解く解読手順を用いて、追跡情報および伝送対象情報を復元する機能を有する。復元部439で復元された伝送対象情報は、伝送対象情報出力部441へ送られる。伝送対象情報出力部441は、復元部439で復元された伝送対象情報を、通信回線443を介して外部装置などへ出力する。
【0038】
〔第1実施形態に係る発信装置403の動作〕
次に、第1実施形態に係る発信装置403の動作について、図6〜図7を参照して説明する。図6は、第1実施形態に係る発信装置403の符号化部417で符号化された複合発光パターンを表す説明図である。
なお、第1実施形態に係る発信装置403の伝送対象情報(図6参照)は、比較例に係る発信装置105の伝送対象情報(図2参照)と同じ(“11110100011001”に係る14ビット長の符号化ビット列データ)である。また、第1実施形態に係る発信装置403の複合発光パターンにおいて、比較例に係る発信装置105の発光パターンと同様に、発光部421における発光色は単色である。
【0039】
比較例に係る発信装置105の発光パターンでは、図2に示す符号化区間201において、発光部103の点灯状態(High)に対して符号“1”を割り当てる一方、消灯状態(Low)に対して符号“0”を割り当てることにより、発信装置IDを符号化した。
【0040】
これに対し、第1実施形態に係る発信装置403の複合発光パターンでは、図6に示す符号化区間601において、発光部421が明るく点灯(明灯;図6の例えば符号603参照)している明灯状態に対して符号“1”を割り当てる一方、発光部421が暗く点灯(暗灯;図6の例えば符号605参照)している暗灯状態に対して符号“0”を割り当てる。そして、符号化区間601を除く区間では、発光部421を消灯状態にしている。
【0041】
要するに、第1実施形態に係る発信装置403の複合発光パターンでは、図6に示すように、消灯すると移動体側の受信装置405の追跡に支障を生じる符号化区間601においては、少なくとも暗灯での常時点灯状態を維持することによって、移動体の追跡を確実に行えるようにしている。
なお、暗灯に係る光強度は、移動体側の受信装置405の追跡に支障を生じることのないように設定される。追跡用の暗灯での常時点灯状態をせっかく設けたのに、これが移動体の追跡用途に役立たないのでは本末転倒だからである。
【0042】
次に、第1実施形態に係る発信装置403の処理の流れについて、図7を参照して説明する。図7は、第1実施形態に係る発信装置403の処理の流れを表すフローチャート図である。図7の発信処理は、例えば、原子力発電所の原子炉建屋(不図示)において、原子炉(不図示)の点検作業を開始するために、原子炉建屋内に作業者Wが入ったときに開始される。
【0043】
図7に示すステップS701において、符号化部417は、伝送対象情報413および追跡情報415を読み込む。
【0044】
ステップS702において、符号化部417は、伝送対象情報413を符号化する際の処理中のビット列番号がnビット目である旨を表す符号化カウンタの値nを“0”に初期化する。
なお、以下の説明において、図6に示すように、nビット目のビット列番号を“An”と表記する。
【0045】
ステップS703において、符号化部417は、符号化カウンタの値nをインクリメントする。
【0046】
ステップS704において、符号化部417は、伝送対象情報413を符号化したときのnビット目のビット列番号(An)が“1”か否かを判定する。
【0047】
ステップS704の判定の結果、nビット目のビット列番号(An)が“1”である旨の判定が下された場合(ステップS704の“Yes”)、発光制御部419は、図5に示す発光部421に含まれる複合発光パターン生成回路501の第1スイッチSW1をオンすると共に、第2スイッチSW2をオンするように動作制御を行う。この動作制御を行った状態では、LED507に流れる電流の大きさは、第1抵抗R1の電圧降下分しか制限されない。これが明灯状態である。
【0048】
一方、ステップS704の判定の結果、nビット目のビット列番号(An)が“0”である旨の判定が下された場合(ステップS704の“No”)、発光制御部419は、図5に示す発光部421に含まれる複合発光パターン生成回路501の第1スイッチSW1をオフすると共に、第2スイッチSW2をオンするように動作制御を行う。この動作制御を行った状態では、LED507に流れる電流の大きさは、第1抵抗R1および第2抵抗R2の電圧降下分だけ制限される。これが暗灯状態である。
【0049】
ステップS707において、符号化部417および発光制御部419は、所定時間だけ待機する。この待機によって、ステップS705またはS706の点灯状態は、予め設定された所定時間だけ保持される。
【0050】
ステップS708において、符号化部417は、符号化カウンタの値nを調べて、nが最終ビット(n=14)に到達しているか否かを判定する。
【0051】
ステップS708の判定の結果、nが最終ビット(伝送対象情報用に予め定められるビット長であって、本第1実施形態ではn=14)に到達していない旨の判定が下された場合(ステップS708の“No”)、発信装置403は、処理の流れをステップS703へ戻し、以下の処理を順次行わせる。
【0052】
一方、ステップS708の判定の結果、nが最終ビット(n=14)に到達している旨の判定が下された場合(ステップS708の“Yes”)、ステップS709において、発光制御部419は、図5に示す発光部421に含まれる複合発光パターン生成回路501の第2スイッチSW2をオフするように動作制御を行う。この動作制御を行った状態では、LED507には電流が流れない。これが消灯状態である。
【0053】
ステップS710において、符号化部417および発光制御部419は、所定時間待機する。この待機によって、ステップS709の消灯状態は、前記の所定時間が経過するまで保持される。
この待機時間の経過後に、発信装置403は、処理の流れをステップS702へ戻し、伝送対象情報(発信装置ID)413を繰り返し再送するために、以下の処理を順次行わせる。
【0054】
〔第1実施形態に係る受信装置405の動作〕
次に、第1実施形態に係る受信装置405の動作について、図8を参照して説明する。図8は、第1実施形態に係る受信装置405の処理の流れを表すフローチャート図である。図8の受信処理は、図7の送信処理と同様に、原子力発電所の原子炉建屋において、原子炉の点検作業を開始するために、原子炉建屋内に作業者Wが入ったときに開始される。
【0055】
図8に示すステップS801において、発光パターン分離部433は、発光領域の存否を監視する。この監視は、発光パターン分離部433において、撮像部431のフレームメモリから読み出した最初フレームの画像の光強度を、追跡情報に係る発光パターンの存否を検出するための追跡情報用しきい値TH−L(図6参照)を用いて2値化することにより行われる。具体的には、発光パターン分離部433は、最初フレームの画像の光強度が追跡情報用しきい値TH−Lを超える画像の領域を、発光領域として抽出する。
発光領域が抽出された場合、発光パターン分離部433は、抽出された発光領域を、ラベリング処理を用いてラベル化し、ラベル化した発光領域を、ラベル識別番号に対応付けて登録する。
ステップS801の監視は、原子炉建屋内に作業者Wが存在している限り、発光領域の存在が検出されるまで繰り返される。
【0056】
ステップS801の監視中に、最初フレームの画像中の光強度が追跡情報用しきい値TH−Lを超える発光領域が抽出されると、ステップS802において、復元部439は、伝送対象情報413を復元する際の処理中のビット列番号を表す復元カウンタの値mを“1”に初期化する。また、発光パターン分離部433は、ステップS801で抽出された発光領域に関するデータ(追跡情報に係る発光パターン)を、第2発光パターン取得部437へと送る。これにより、第2発光パターン取得部437は、追跡情報に係る発光パターンのデータを取得することができる。
【0057】
ステップS803において、発光パターン分離部433は、ステップS801で抽出されて登録された発光領域の画像を対象として、さらに、伝送対象情報用しきい値TH−H(図6参照)を用いて2値化処理を行う。伝送対象情報用しきい値TH−Hは、発光領域に対応する発光部421の点灯状態が、明灯または暗灯のうちいずれであるのかを検出するために用いられる。ステップS803の処理によって、発光パターン分離部433は、ステップS801で抽出された発光領域に対応する発光部421の点灯状態(伝送対象情報に係る発光パターン)が、明灯または暗灯のうちいずれであるのかを検出することができる。
なお、ステップS803の2値化処理によって時々刻々と検出される情報であって、ステップS801で抽出された発光領域に対応する発光部421の点灯状態が明灯または暗灯のうちいずれであるのかに関する情報は、伝送対象情報として、発光パターン分離部433から、第2発光パターン取得部437へと送られる。
【0058】
ステップS804において、復元部439は、第2発光パターン取得部437で取得された伝送対象情報に係る発光パターンに対し、前記符号化を解く解読手順を用いて、伝送対象情報を復元する。
具体的には、復元部439は、ステップS803の2値化処理後において、ステップS801で抽出されて登録された発光領域の画像に関する光強度が、伝送対象情報用しきい値TH−Hを超える場合、(m=1)ビット目の伝送対象情報に係る信号を“1”(A1=1;ただし、“Am”はmビット目のビット列番号を意味し、以下、同様とする。)と判定する一方、前記発光領域の画像に関する光強度が、伝送対象情報用しきい値TH−H以下の場合、(m=1)ビット目の伝送対象情報に係る信号を“0”(A1=0)と判定する。こうして復元された伝送対象情報は、復元部439が有する不図示の伝送対象情報メモリに蓄積される。
なお、復元部439は、第1発光パターン取得部435で取得された追跡情報に係る発光パターンに対し、前記符号化を解く解読手順を用いて、追跡情報を復元する。図6に示す例の場合、復元部439は、少なくとも暗灯を常時発光させる旨を追跡情報として復元する。
【0059】
ステップS805において、発光パターン分離部433は、最初フレームに時系列的に連なる次フレームの画像を、撮像部431のフレームメモリから読み込む。また、復元部439は、復元カウンタの値mをインクリメントする。
【0060】
ステップS806において、発光パターン分離部433は、ステップS805で読み込んだ次フレームの画像の光強度を、追跡情報検出用しきい値TH−Lを用いて2値化する。具体的には、発光パターン分離部433は、次フレームの画像の光強度が追跡情報検出用しきい値TH−Lを超える画像の領域を、発光領域として抽出する。
発光領域が抽出された場合、発光パターン分離部433は、抽出された発光領域を、ラベリング処理を用いてラベル化し、ラベル化した発光領域を、ラベル識別番号に対応付けて登録する。
【0061】
また、ステップS806において、発光パターン分離部433は、次フレームの画像中であって、前フレームで抽出された発光領域の近傍に、他の発光領域が存在するか否かを調べる。この調査は、例えば、前フレームの画像と次フレームの画像とを重ね合わせた複合画像を生成し、この複合画像を用いて、前フレームで抽出された発光領域を中心として、所定の範囲以内に存在する他の発光領域を抽出することによって行う。
【0062】
ステップS806の調査の結果、次フレームの画像中であって、前フレームで抽出された発光領域の近傍に、他の発光領域が存在する旨の調査結果が得られた場合、ステップS807において、発光パターン分離部433は、さらに、伝送対象情報用しきい値TH−Hを用いて2値化処理を行う。ステップS807の処理によって、発光パターン分離部433は、ステップS806で抽出されて登録された他の発光領域に対応する発光部421の点灯状態(伝送対象情報に係る発光パターン)が、明灯または暗灯のうちいずれであるのかを検出することができる。
【0063】
ステップS808において、復元部439は、ステップS807の2値化処理後において、ステップS806で抽出されて登録された他の発光領域の画像に関する光強度が、伝送対象情報用しきい値TH−Hを超える場合、(m=m+1)ビット目の伝送対象情報に係る信号を“1”(Am=1)と判定する一方、前記他の発光領域の画像に関する光強度が、伝送対象情報用しきい値TH−H以下の場合、(m=1)ビット目の伝送対象情報に係る信号を“0”(Am=0)と判定する。
【0064】
ステップS809において、復元部439は、復元カウンタの値mを調べて、mが最終ビット(m=14)に到達しているか否かを判定する。
【0065】
ステップS809の判定の結果、mが最終ビット(伝送対象情報用に予め定められるビット長であって、本第1実施形態ではm=14)に到達していない旨の判定が下された場合(ステップS809の“No”)、受信装置405は、処理の流れをステップS805へ戻し、以下の処理を順次行わせる。
【0066】
一方、ステップS809の判定の結果、mが最終ビット(m=14)に到達している旨の判定が下された場合(ステップS809の“Yes”)、ステップS810において、発光パターン分離部433は、次フレームの画像の光強度を、追跡情報検出用しきい値TH−Lを用いて2値化する。具体的には、発光パターン分離部433は、次フレームの画像の光強度が追跡情報検出用しきい値TH−Lを超える画像の領域を、発光領域として抽出する。
発光領域が抽出された場合、発光パターン分離部433は、抽出された発光領域を、ラベリング処理を用いてラベル化し、ラベル化した発光領域を、ラベル識別番号に対応付けて登録する。
【0067】
また、ステップS810において、発光パターン分離部433は、次フレームの画像中であって、前フレームで抽出された発光領域の近傍に、他の発光領域が存在するか否かを調べる。この調査は、ステップS806と同様に、前フレームの画像と次フレームの画像とを重ね合わせた複合画像を生成し、この複合画像を用いて、前フレームで抽出された発光領域を中心として、所定の範囲以内に存在する他の発光領域を抽出することによって行うことができる。
【0068】
ステップS810の調査の結果、次フレームの画像中であって、前フレームで抽出された発光領域の近傍に、他の発光領域が存在しない旨の調査結果が得られた場合、つまり、符号化区間601の範囲内において発光領域が正常に収束している場合、ステップS811において、伝送対象情報出力部441は、復元部439が有する伝送対象情報メモリに蓄積された伝送対象情報を読み出して、読み出した伝送対象情報を、通信回線443を介して外部装置などへ出力する。
その後、受信装置405は、処理の流れを最初のステップS801へ戻し、以下の処理を順次行わせる。
【0069】
一方、ステップS810の調査の結果、次フレームの画像中であって、前フレームで抽出された発光領域の近傍に、他の発光領域が存在する旨の調査結果が得られた場合、つまり、符号化区間601の範囲外にまで発光領域が存在している場合、ステップS812において、受信装置405は、本第1実施形態で定められたビット長(14ビット)を超えるビット長のデータを伝送している発光部の画像、または、常時点灯の発光部の画像を誤って受信したとみなして誤受信エラー出力を行う。
その後、受信装置405は、処理の流れを最初のステップS801へ戻し、以下の処理を順次行わせる。
【0070】
そして、ステップS806の調査の結果、次フレームの画像中であって、前フレームで抽出された発光領域の近傍に、他の発光領域が存在しない旨の調査結果が得られた場合、つまり、ステップS801で抽出されて登録された発光領域は、例えば2値化誤差などによって誤って抽出された領域であるとみなして発光領域誤抽出エラー出力を行う。
その後、受信装置405は、処理の流れを最初のステップS801へ戻し、以下の処理を順次行わせる。
【0071】
(本発明の第1実施形態に係る情報伝送システム401が奏する作用効果)
次に、本発明の第1実施形態に係る情報伝送システム401が奏する作用効果について、図9,図10を参照して説明する。図9は、第1実施形態に係る撮像部431を用いて撮像して時系列順に並べた複数のフレーム画像であって、追跡情報用しきい値TH−Lを用いて2値化後のフレーム画像を重ね合わせた発光領域を表す説明図である。図10は、図9に表す発光領域を、伝送対象情報用しきい値TH−Hを用いて2値化した画像を表す説明図である。
【0072】
比較例に係る情報伝送システム101では、図3に示すように、時系列順に並んだ光の強度変化に係る符号化ビット列データを、符号化に係るしきい値TH0を用いて2値化すると、しきい値TH0以下の光強度(消灯)を有するビット列番号A05,A07,A08,A09,A12,A13に係る画像が、符号化ビット列データの画像から歯抜け状に消えてしまうため、発光部103の追跡を難しくしていた。
【0073】
第1実施形態に係る情報伝送システム401では、発信装置403は、予め定められる符号化手順を用いた符号化が行われる符号化区間において、伝送対象情報、および、受信装置(移動体としての作業者Wに設けられる)405を追跡するための追跡情報を、発光部421を常時点灯し、かつ、前記常時点灯の際の光の強度を時系列的に変化させる複合発光パターンに符号化する符号化部417と、符号化部417で符号化された複合発光パターンに従って発光部421の発光制御を行う発光制御部419とを備える構成を採用した。
【0074】
第1実施形態に係る情報伝送システム401によれば、図9に示すように、符号化が行われる符号化区間901において、撮像部431の二次元受光面903上に連なるビット列番号A01〜A14に係る位置905には、常時点灯する発光部421の画像が連続して投影されるため、発光部421を見失うことなく確実に追跡することができる。
【0075】
なお、受信装置405が発光部421を見失うことなく確実に追跡することができるとは、発信装置403側から視ると、第1実施形態に係る情報伝送システム401において、移動体としての作業者Wに設けられる受信装置405を見失うことなく確実に追跡することができることを意味する。
従って、第1実施形態に係る情報伝送システム401によれば、移動体を見失うことなく確実に追跡することができる。
【0076】
また、図10に示すように、符号化が行われる符号化区間1001において、撮像部431の二次元受光面1003上に連なるビット列番号A01〜A14に係る位置のうち、図10中の実線丸印で示す位置1005には、明灯状態の発光部421の画像が投影される一方、図10中の破線丸印で示す位置1007には、暗灯状態の発光部421の画像が投影されるため、移動体を見失うことなく確実に追跡することができると共に、伝送対象情報を確実に伝送することができる。
【0077】
なお、第1実施形態に係る情報伝送システム401では、発光部421が有する光源として、LED507を採用している。また、図6に示す例では、符合化区間601を除く区間では、発光部421が有するLED507は消灯している。そのため、LED固有の問題として、照度の低下やちらつきの原因になるおそれがある。
【0078】
そこで、第1実施形態の変形例として、符号化部417で符号化される複合発光パターンを、図11に示すように、照度の低下やちらつきの改善を考慮したものに改良してもよい。図11は、第1実施形態の変形例に係る情報伝送システムの符号化部で符号化される複合発光パターンを表す説明図である。
【0079】
第1実施形態の変形例に係る複合発光パターン401では、図11に示すように、符合化区間1101を挟む時間軸上の前後に、符合化区間1101に係る符号化ビット列データの区切り位置を表現するための消灯区間(例えば、1ビット長)1103,1105を設けている。消灯区間1103における時間軸上の前側、および、消灯区間1105における時間軸上の後ろ側には、それぞれ明灯区間1107,1109を設けている。復元は、最初の消灯区間1103を検出したとき、その次のフレーム画像を最初のビット列番号に係るものとし、以後、図8に示す受信装置405側の処理の流れと同様の処理を行えばよい。
【0080】
第1実施形態の変形例に係る情報伝送システム401によれば、発光部421がLED507を有して構成される場合であっても、照度の低下やちらつきを抑えることができる。
【0081】
また、撮像部431がフレーム画像を取り込む周期を表すフレームレートは、例えば、毎秒480フレームなどの、動画像において常用される毎秒30フレーム程度と比べて高いフレームレートを採用するのが好ましい。こうした高いフレームレートの撮像部431を採用した場合、仮に、発光部421の点滅周期を短く(例えば、毎秒200回程度)したとしても、この発光部421の点滅を正確に検出することができる。
なお、ヒトの目のちらつきの感知限界はおよそ50Hz〜60Hzであるため、前記のように発光部421の点滅周期を短く(例えば、毎秒200回程度)した場合、ちらつきを感じることのない照明を兼ねた情報伝送システムを実現することができる。
【0082】
(本発明の第2実施形態に係る情報伝送システム401の概要)
次に、本発明の第2実施形態に係る情報伝送システム401について、図12および図13を参照して説明する。
第1実施形態に係る情報伝送システム401では、図4および図6に示すように、符号化部417は、所定の符号化手順を用いた符号化が行われる符号化区間601において、伝送対象情報413、および、追跡情報415を、発光部421を常時点灯し、かつ、前記常時点灯の際の光の強度を時系列的に変化させる複合発光パターンに符号化する構成を採用した。
【0083】
これに対し、本第2実施形態に係る情報伝送システム401では、発光部421は、相互に異なる複数の色の光を発光する機能を有し、撮像部431は、複数の色の光のそれぞれに感度を有し、符号化部417は、図13に示すように、所定の符号化手順を用いた符号化が行われる符号化区間1301において、伝送対象情報413、および、追跡情報415を、発光部421を常時点灯し、かつ、前記常時点灯の際の光の強度および色の組み合わせを時系列的に変化させる複合発光パターンに符号化する構成を採用した。
【0084】
要するに、本第2実施形態に係る情報伝送システム401では、発光部421は、相互に異なる複数の色の光を発光する機能を有する点、撮像部431は、相互に異なる複数の色の光を識別して受光する機能を有する点、並びに、伝送対象情報413、および、追跡情報415を複合発光パターンに符号化する際に、光の強度および色の組み合わせを時系列的に変化させる点が、第1実施形態に係る情報伝送システム401と比べて相違している。
【0085】
ただし、前記の相違点以外の部分(図4に示す情報伝送システムの機能ブロック構成など)については、第1および第2実施形態間で共通である。そこで、第2実施形態に係る情報伝送システムに付す符号として、第1実施形態に係る情報伝送システムの符号“401”を共用すると共に、前記の相違点を中心に説明を進めることとする。
【0086】
図12は、第2実施形態に係る情報伝送システム401において、発光部421の構成例を表す説明図である。
第2実施形態に係る情報伝送システム401において、発光部421は、図12に示すように、LEDパッケージ1201を備えて構成されている。このLEDパッケージ1201は、図12に示すように、赤色光を発するLED_R1203と、緑色光を発するLED_G1205と、青色光を発するLED_B1207との光の三原色からなる各色のLEDを、正三角形の頂点にそれぞれ配置して設けられている。
【0087】
これらの三色のLED_R1203,LED_G1205,LED_B1207は、発光制御部419からの発光制御信号に従ってそれぞれオン/オフ制御される。これにより、LEDパッケージ1201は、三色のLED_R1203,LED_G1205,LED_B1207のオン/オフ制御に係る組み合わせに応じた色の光(LED_R1203,LED_G1205,LED_B1207のすべてがオンの場合、白色の光)を発するように構成されている。
【0088】
第2実施形態に係る情報伝送システム401において、撮像部431は、赤色R・緑色G・青色Bのそれぞれに固有の感度を有する3セットの撮像素子によって構成されている。説明の便宜上、これらをRプレーン、Gプレーン、Bプレーンと呼ぶ。撮像部431は、各色のR・G・Bプレーン毎に光源に係る画像部分を抽出することによって、どの色のLEDが点灯しているのかを判別することができる。
【0089】
図13(a)〜(e)は、第2実施形態に係る情報伝送システム401において用いられる複合発光パターンの設定例を表す説明図である。図13(a)は、LED_R1203の発光パターン、図13(b)は、LED_G1205の発光パターン、図13(c)は、LED_B1207の発光パターン、図13(d)は、三色のLED_R1203,LED_G1205,LED_B1207の発光パターンに対してOR演算後の複合発光パターン、図13(e)は、三色のLED_R1203,LED_G1205,LED_B1207の発光パターンに対してAND演算後の複合発光パターンをそれぞれ表す。
伝送対象情報としては、図13に示すように、“00011101010101”に係る14ビット長の符号化ビット列データを用いる。
【0090】
〔第2実施形態に係る情報伝送システム401の動作〕
はじめに、伝送対象情報の符号化および伝送について説明する。第2実施形態に係る情報伝送システム401において、発信装置403による伝送対象情報の符号化および伝送は、図13(a)〜(c)の矢印で示すように、各色のLED_R1203,LED_G1205,LED_B1207を順番に用いて行われる。
【0091】
先頭のビット列番号“A01”において、伝送対象情報に係る符号“0”を、LED_R1203の消灯(LED_G1205、および、LED_B1207は点灯)に関する複合発光パターンによって伝送する。
【0092】
次に、ビット列番号“A02”において、伝送対象情報に係る符号“0”を、LED_G1205の消灯(LED_R1203、および、LED_B1207は点灯)に関する複合発光パターンによって伝送する。
【0093】
次に、ビット列番号“A03”において、伝送対象情報に係る符号“0”を、LED_B1207の消灯(LED_R1203、および、LED_G1205は点灯)に関する複合発光パターンによって伝送する。
【0094】
次に、ビット列番号“A04”において、伝送対象情報に係る符号“1”を、LED_R1203の点灯(LED_G1205、および、LED_B1207も点灯)に関する複合発光パターンによって伝送する。
【0095】
次に、ビット列番号“A05”において、伝送対象情報に係る符号“1”を、LED_G1205の点灯(LED_R1203、および、LED_B1207も点灯)に関する複合発光パターンによって伝送する。
【0096】
次に、ビット列番号“A06”において、伝送対象情報に係る符号“1”を、LED_B1207の点灯(LED_R1203、および、LED_G1205も点灯)に関する複合発光パターンによって伝送する。
【0097】
以下、前記と同様の手順を用いて、伝送対象情報の符号化および伝送を繰り返し行う。この手順は、最終のビット列番号“A14”において、伝送対象情報に係る符号“1”を、LED_G1205の点灯(LED_R1203、および、LED_B1207も点灯)に関する複合発光パターンによって伝送が完了するまで繰り返される。
【0098】
次に、追跡情報の符号化および伝送について説明する。第2実施形態に係る情報伝送システム401において、追跡情報の符号化および伝送は、図13(a)〜(c)に示すように、A01〜A14にわたるすべてのビット列番号に係るタイミングに関し、三色のLED_R1203,LED_G1205,LED_B1207のうち、少なくともひとつのLEDを点灯させることによって行われる。
【0099】
一方、追跡情報の受信装置405側では、A01〜A14にわたるすべてのビット列番号に係るタイミングの画像をそれぞれ少なくとも1フレーム分以上(好ましくは複数フレーム分)含むように、撮像部431によってLEDパッケージ(光源)1201のフレーム画像を撮像する。次いで、撮像部431では、R・G・Bの各プレーン毎の光源に係る画像部分を抽出し、抽出した部分に2値化処理を施すことによって、R・G・Bのうちどの色の光源が点灯しているのかに係る判別が行われる。次に、A01〜A14にわたるすべてのビット列番号に係る個々のタイミングにおいて、第1パターン取得部435は、R・G・Bに係る光源の点灯判別結果に対して論理和演算(OR)を施す。その演算結果が図13(d)である。
【0100】
追跡情報の受信装置405側では、R・G・Bに係る光源の点灯判別結果に対して論理和演算(OR)を施すことによって、図6の暗灯に係る光強度および図13(d)のOR演算後に係る光強度を対比して示すように、符合化区間に係る符号化ビット列データの値はすべて“1”となる。従って、第2実施形態に係る受信装置405によれば、第1実施形態と同様に、追跡情報に係る発光パターンを忠実に復元することができる。
【0101】
また、伝送対象情報の受信装置405側では、A01〜A14にわたるすべてのビット列番号に係るタイミングの画像をそれぞれ少なくとも1フレーム分以上(好ましくは複数フレーム分)含むように、撮像部431によってLEDパッケージ(光源)1201のフレーム画像を撮像する。次いで、撮像部431では、R・G・Bの各プレーン毎の光源に係る画像部分を抽出し、抽出した部分に2値化処理を施すことによって、R・G・Bのうちどの色の光源が点灯しているのかに係る判別が行われる。次に、A01〜A14にわたるすべてのビット列番号に係る個々のタイミングにおいて、第1パターン取得部435は、R・G・Bに係る光源の点灯判別結果に対して論理積演算(AND)を施す。その演算結果が図13(e)である。
【0102】
伝送対象情報の受信装置405側では、R・G・Bに係る光源の点灯判別結果に対して論理積演算(AND)を施すことによって、図6の明灯に係る光強度および図13(e)のAND演算後に係る光強度を対比して示すように、符合化区間に係る符号化ビット列データの値は、伝送対象情報に従うものとなる。従って、第2実施形態に係る受信装置405によれば、第1実施形態と同様に、伝送対象情報に係る発光パターンを忠実に復元することができる。
【0103】
なお、本第2実施形態では、相互に異なる複数の色の光を発光する発光部421の構成として、R/G/B三色のLEDを一体に設けたLEDパッケージ1201を例示して説明したが、本発明はこの例に限定されない。
発光部421の構成として、少なくとも二色(色の種別は任意である)以上のLEDなどの発光体を採用し、例えば、二色以上の発光体を順番に情報伝送用の光源として用い、受信装置405側では、各色に係る光源の点灯判別結果に対して、論理和演算(OR)を施すことにより追跡用の発光パターンを復元すると共に、論理積演算(AND)を施すことにより情報伝送用の発光パターンを復元することができる。
このように構成すれば、光源の追跡、および、伝送対象情報の復元を確実に行うことができる。
【0104】
また、本第2実施形態の変形例として、第1の色に係る発光体(例えば、赤色)を常時点灯することによって追跡情報を符号化・伝送・復元すると共に、第2の色に係る発光体(例えば、青色)を点滅することによって伝送対象情報を符号化・伝送・復元する構成を採用してもよい。
【0105】
なお、本第2実施形態に係る発光部421の構成としてLEDを採用し、例えば、図13に示す発光パターンを用いて追跡情報および伝送対象情報を符号化して伝送する場合には、図6に示す例と同様に、照度が低下したりちらつきが発生したりする。そこで、図11と同様に、符号化区間1101を挟む時間軸上の前後に、符合化区間1101に係る符号化ビット列データの区切り位置を表現するための消灯区間(例えば、1ビット長)1103,1105を設けると共に、消灯区間1103における時間軸上の前側、および、消灯区間1105における時間軸上の後ろ側に、それぞれ明灯区間1107,1109を設ける構成を採用してもよい。
【0106】
このように構成すれば、図13(d)に示すOR演算後における発光部421の発光パターンは、符号化区間1301を挟む時間軸上の前後に生じる消灯区間(例えば、1ビット長)の値が“0”となり、その他の区間の値は全て“1”となる。復元は、最初の消灯区間を検出したとき、その次のフレーム画像を最初のビット列番号に係るものとし、以後、図8に示す受信装置405側の処理の流れと同様の処理を行えばよい。
従って、時間軸上での消灯時間が少なくなる結果として、照度の低下やちらつきの防止を確実に実現することができる。
【0107】
(移動体位置検知装置1400の概要)
次に、本発明の第1または第2実施形態に係る情報伝送システム401で復元された伝送対象情報を用いて、移動体としての作業者Wの位置を検知する移動体位置検知装置1400について、図14を参照して説明する。図14は、周辺部の構成を含む移動体位置検知装置1400の機能ブロック図である。
【0108】
図14に示すように、移動体位置検知装置1400が適用される情報伝送システム1430では、移動体位置検知装置1400に対して伝送対象情報(発信装置ID)を供給する3以上の発信装置が設けられている。図14の例では、4つの発信装置1401,1403,1405,1407が、作業者Wの作業スペースである例えば原子力発電所の原子炉建屋の天井部(不図示)に設けられている。
【0109】
4つの発信装置1401,1403,1405,1407のそれぞれには、各自を相互に識別可能とする発信装置IDが付与されている。具体的には、発信装置1401には“A”が、発信装置1403には“B”が、発信装置1405には“C”が、発信装置1407には“D”が、発信装置IDとしてそれぞれ割り当てられている。
【0110】
また、4つの発信装置1401,1403,1405,1407のそれぞれには、LED照明からなる発光部1402,1404,1406,1408が設けられている。
【0111】
作業者Wが頭にかぶるヘルメットには、受信装置1409が取り付けられている。受信装置1409には、例えば、CCDやCMOSなどの二次元受光面を有するイメージセンサよりなる撮像部1410が備えられている。
4つの発信装置1401,1403,1405,1407、および、受信装置1409により、情報伝送システム1430が構成されている。
【0112】
受信装置1409には、通信線1411を介して移動体位置検知装置1400が接続されている。これにより、4つの発信装置1401,1403,1405,1407から、受信装置1409宛に送信されてきた伝送対象情報(発信装置ID)は、通信線1411を介して移動体位置検知装置1400宛に送信される。
なお、図14では、受信装置1409と、移動体位置検知装置1400とを別体に構成する例をあげて説明したが、受信装置1409と、移動体位置検知装置1400とを一体に構成してもよい。
【0113】
移動体位置検知装置1400は、図14に示すように、位置情報記憶部1413と、移動体位置検知部1415と、検知位置出力部1417とを備えて構成されている。位置情報記憶部1413は、4つの(3以上の)発信装置1401,1403,1405,1407のそれぞれに固有の発信装置IDに関連づけて、取付位置情報を記憶する機能を有する。発信装置1401,1403,1405,1407の取付位置情報としては、三次元座標系からなる相対位置情報であってもよいし、絶対位置情報であってもよい。また、これら以外にも、発信装置1401,1403,1405,1407の取付位置を一意に特定することができる限り、いかなる情報であってもよい。
【0114】
移動体位置検知部1415は、伝送対象情報のうち、4つの(3以上の)発信装置1401,1403,1405,1407側の発信装置ID(図14の例では、A/B/C/D)と、位置情報記憶部1413の記憶内容と、受信装置1409が備える撮像部1410の画角情報とに基づいて、移動体(作業者W)の位置を検知する機能を有する。
【0115】
検知位置出力部1417は、移動体位置検知部1415で検知された移動体(作業者W)の位置に関するデータを、不図示の表示装置や外部装置へと出力する機能を有して構成される。
【0116】
なお、4つの発信装置1401,1403,1405,1407、および、受信装置1409の構成については、第1または第2実施形態に係る情報伝送システム401で開示した発信装置403、受信装置405と同じである。
【0117】
(移動体位置検知装置1400の位置検知原理)
次に、移動体位置検知装置1400の位置検知原理について、図15を参照して説明する。図15は、移動体位置検知装置1400における移動体(作業者W)の位置検知原理に係る説明図である。
【0118】
図15に示す例では、発信装置ID:Aの発信装置1401は三次元位置座標(Xa,Ya,Za)に、発信装置ID:Bの発信装置1403は三次元位置座標(Xb,Yb,Zb)に、発信装置ID:Cの発信装置1405は三次元位置座標(Xc,Yc,Zc)に、発信装置ID:Dの発信装置1407は三次元位置座標(Xd,Yd,Zd)に、それぞれ取り付けられている。これらの取付位置情報は、対応する発信装置IDにそれぞれ対応付けて、位置情報記憶部1413に登録されている。
【0119】
図15は、4つの発信装置1401,1403,1405,1407の発光部1402,1404,1406,1408に係る照明画像が、受信装置1409における撮像部1410が有する二次元受光面1500上に投影される様子を概念的に示している。
ただし、実際の撮像部1410では、二次元受光面1500は、撮像部1410が有する不図示のレンズの背面側に設けられている。
【0120】
撮像部1410を用いて4つの発信装置1401,1403,1405,1407をそれぞれ撮像すると、図15に示すように、発信装置ID:Aの発信装置1401は二次元受光面1500上の二次元座標(Pxa,Pya)に、発信装置ID:Bの発信装置1403は二次元座標(Pxb,Pyb)に、発信装置ID:Cの発信装置1405は二次元座標(Pxc,Pyc)に、発信装置ID:Dの発信装置1407は三次元位置座標(Pxd,Pyd)に、それぞれ投影される。
【0121】
移動体位置検知装置1400は、4つ(3以上)の発信装置1401,1403,1405,1407側の発信装置ID(A/B/C/D)を用いて、位置情報記憶部1413の記憶内容から、各発信装置1401,1403,1405,1407毎の三次元位置情報を読み出す。次に、移動体位置検知装置1400は、各発信装置1401,1403,1405,1407毎の三次元位置情報、撮像部1410の二次元受光面1500上に投影された発信装置側の二次元位置情報、および、撮像部1410の画角情報に基づいて、受信装置1409の撮像位置に係る情報(Mx,My,Mz)を求めることができる。
なお、受信装置1409は、移動体としての作業者Wに一体に取り付けられているため、移動体として取り扱うことができる。
【0122】
ここで、受信装置1409の撮像位置(Px,Py)を元に撮影したカメラの位置座標(Mx,My,Mz)やその姿勢を求める手順は、コンピュータビジョンの分野で古くから扱われており、PnP(Perspective n-Points)問題と呼ばれている(例えば、大隈他、「拡張現実感システムのための画像からの実時間カメラ位置推定」、電子情報通信学会論文誌、D-II Vol.J82-D-II No.10 pp.1789-1792 1999年10月)。以下にPnP問題の処理の概要を述べる。
【0123】
まず、撮像位置(Px,Py)より撮影したカメラの位置座標(Mx,My,Mz)を求める処理を説明する前に、発信装置1401がカメラの位置座標(Mx,My,Mz)に置かれた二次元受光面1500へ投影される過程を説明する(カメラが二次元受光素子(フィルム)に画像を投影する過程に相当)。
【0124】
発信装置1401の座標値(Xa,Ya,Za)は、実世界基準座標系における座標値である。これを、カメラの位置座標(Mx,My,Mz)に原点を置きカメラの視点方向をZ軸としたカメラ座標系を基準とした座標系に変換する。この処理はつまり、カメラ位置より発信装置を見渡した座標系である。なお、この状態ではまだ3次元である。この座標系における発信装置の座標値を、カメラの画角を考慮し透視変換(遠くの物が小さく見える変換)する。これにより、受信装置が二次元受光面1500へ投影される。
【0125】
撮像位置(Px,Py)より撮影したカメラの位置座標(Mx,My,Mz)を求める操作は、二次元受光面へ変換した手法の逆の処理を行う。概念的には、透視変換の逆演算を行う。すなわち、カメラ座標系へ変換すると共に、実世界基準座標系における発信装置の位置とカメラ座標系で観測される発信装置の位置が一致するようにカメラの平行移動量および姿勢角を繰り返し演算する。これにより、カメラ座標系の原点の位置座標(Mx,My,Mz)およびその姿勢角を求めることができることになる。
【0126】
(移動体位置検知装置1400の効果)
移動体位置検知装置1400によれば、受信装置(移動体W)1409の現在位置を検知することができる。
【0127】
なお、移動体位置検知装置1400は、例えば、原子力発電所の原子炉建屋内において、原子炉設備の維持点検作業などを行う作業者Wの、居場所管理の用途に用いて好適である。原子力発電所の原子炉建屋内は、窓がないコンクリート製の遮蔽空間であって、金属製の構成物が多く設けられている。こうした環境では、不図示の監視装置側と作業者Wとの間の情報通信を、電波を媒体として用いて行った場合、電波の干渉により情報通信に支障を生じがちであった。
【0128】
この点、光の強度を伝送媒体として用いる、本発明に係る移動体位置検知装置1400によれば、電波の干渉により情報通信に支障を生じることなしに、作業者W(移動体)の居場所に関する情報を確実に伝送すると共に、作業者W(移動体)の居場所を実時間で正確に求めることができる。
【0129】
前記の手順により求めた作業者W(移動体)の居場所情報を、作業スペースにおける設備品の設置場所に重ねて適用すると、設備品と作業者W(移動体)との間の干渉の有無を把握することができる。したがって、この干渉の有無に関する情報を作業者W(移動体)へ与えることにより、作業者W(移動体)に対する設備品への干渉に関し、例えば、“頭部がパイプに当たります。ご注意ください。”などといったような注意を喚起することができる。
【0130】
(変形例に係る移動体位置検知装置1600の概要)
次に、変形例に係る移動体位置検知装置1600について、図16を参照して説明する。図16は、変形例に係る移動体位置検知装置1600の概要を表す説明図である。
【0131】
変形例に係る移動体位置検知装置1600が適用される情報伝送システム1630は、図16に示すように、図14に示す移動体位置検知装置1400が適用される情報伝送システム1430とは逆に、受信装置1601が、作業者Wの作業スペースである原子力発電所の原子炉建屋の天井部に固定される一方、4つの発信装置1603,1605,1607,1609が、作業者Wのヘルメットに取り付けられている。
【0132】
変形例に係る移動体位置検知装置1600には、受信装置1601の取付場所に係る三次元位置情報を予め登録しておくと共に、受信装置1601が備える撮像部1602の画角や向いている方向も予め設定し登録しておく。
【0133】
変形例に係る移動体位置検知装置1600によれば、図14に示す移動体位置検知装置1400とは異なる交点計算を行うことにより、発信装置(移動体W)1603〜1609の現在位置を検知することができる。
【0134】
ここで、交点計算に係る手順は次の通りである。前提として、受信装置1601の位置、その姿勢角、画角、作業者が居る床面、および、作業者の身長が既知であるとする。この場合、受信装置1601の中心位置と、二次元受光面に映った作業者の位置を表すIDの点灯位置とを結ぶ直線を延長すると、その延長線上に作業者が居ることになる。さらに、作業者は床面に立位の状態で移動しているという条件を与えると、床面に平行で床面から身長分だけかさ上げした平面と延長線との交点は、作業者の実世界基準座標系上での位置を表すことになる。この原理を用いて、作業員の位置を検知することができる。
なお、交点計算に基づく本位置検知手法は、カメラ1台で作業員の位置を検出するために、作業員が立位の状態で居るという条件を与えたが、ステレオカメラなどのように複数のカメラを用いて位置検知を行えば、作業員の姿勢の制約条件は不要である。
【0135】
[その他の実施形態]
以上説明した実施形態は、本発明に係る具現化の例を示したものである。従って、本実施形態の記載事項によって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならない。本発明はその要旨またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形態で実施することができるからである。
【0136】
具体的には、例えば、第1および第2実施形態に係る情報伝送システム401の説明において、発信装置403を固定して設ける一方、受信装置405を移動体側に設ける例をあげて説明したが、本発明はこの例に限定されない。これとは逆に、発信装置403を移動体側に設ける一方、受信装置405を固定して設ける情報伝送システム401の態様も、本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0137】
401 第1実施形態に係る情報伝送システム、第2実施形態に係る情報伝送システム
403 発信装置
405 受信装置
413 伝送対象情報
415 追跡情報
417 符号化部
419 発光制御部
421 発光部
431 撮像部
433 発光パターン分離部
435 第1発光パターン取得部
437 第2発光パターン取得部
439 復元部
441 伝送対象情報出力部
1400 移動体検知装置
1401,1403,1405,1407 発信装置
1402,1404,1406,1408 発光部
1409 受信装置
1410 撮像部
1413 位置情報記憶部
1415 位置検知部
1417 検知位置出力部
1430 情報伝送システム
1500 二次元受光面
1600 変形例に係る移動体検知装置
1601 受信装置
1603,1605,1607,1609, 発信装置
1630 情報伝送システム
TH−L 第一のしきい値
TH−H 第二のしきい値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光部を備える発信装置、および、二次元受光面を有する撮像部を備える受信装置を含み、前記発信装置または前記受信装置のいずれか一方を移動体に設け、前記発信装置側の識別情報を含む伝送対象情報を、前記発信装置から前記受信装置へ伝送する情報伝送システムであって、
前記発信装置は、
予め定められる符号化手順を用いた符号化が行われる符号化区間において、前記伝送対象情報、および、前記移動体を追跡するための追跡情報を、前記発光部を常時点灯し、かつ、前記常時点灯の際の光の強度を時系列的に変化させる複合発光パターンに符号化する符号化部と、
前記符号化部で符号化された前記複合発光パターンに従って前記発光部の発光制御を行う発光制御部と、
をさらに備え、
前記受信装置は、
前記撮像部の前記二次元受光面上に投影された前記複合発光パターンを、前記追跡情報に係る発光パターンおよび前記伝送対象情報に係る発光パターンにそれぞれ分離する分離部と、
前記分離部で分離された前記追跡情報および前記伝送対象情報のそれぞれに係る発光パターンに対し、前記符号化を解く解読手順を用いて、前記追跡情報および前記伝送対象情報をそれぞれ復元する復元部と、
をさらに備える
ことを特徴とする情報伝送システム。
【請求項2】
請求項1に記載の情報伝送システムであって、
前記伝送対象情報に係る発光パターンは、複数の光の強度値によって表され、
前記追跡情報に係る発光パターンは、前記複数の光の強度値のそれぞれとは異なるひとつの光の強度値によって表され、
前記受信装置の分離部は、前記それぞれの光の強度値に基づいて前記分離を行い、
前記受信装置の復元部は、前記それぞれの光の強度値、および、前記解読手順に基づいて、前記追跡情報および前記伝送対象情報の復元を行う、
ことを特徴とする情報伝送システム。
【請求項3】
請求項2に記載の情報伝送システムであって、
前記受信装置の復元部は、前記追跡情報に係る発光パターンに関する前記ひとつの光の強度値と第一のしきい値との大小関係に係る比較判定結果、および、前記解読手順に基づいて、前記追跡情報を復元すると共に、前記伝送対象情報に係る発光パターンに関する前記複数の光の強度値と前記第一のしきい値とは異なる第二のしきい値との大小関係に係る比較判定結果、および、前記解読手順に基づいて、前記伝送対象情報を復元する、
ことを特徴とする情報伝送システム。
【請求項4】
相互に異なる複数の色の光を発光する発光部を備える発信装置、および、二次元受光面を有して前記複数の色の光のそれぞれに感度を有する撮像部を備える受信装置を含み、前記発信装置または前記受信装置のいずれか一方を移動体に設け、前記発信装置側の識別情報を含む伝送対象情報を、前記発信装置から前記受信装置へ伝送する情報伝送システムであって、
前記発信装置は、
予め定められる符号化手順を用いた符号化が行われる符号化区間において、前記伝送対象情報、および、前記移動体を追跡するための追跡情報を、前記発光部を常時点灯し、かつ、前記常時点灯の際の光の強度および色の組み合わせを時系列的に変化させる複合発光パターンに符号化する符号化部と、
前記符号化部で符号化された前記複合発光パターンに従って前記発光部の発光制御を行う発光制御部と、
をさらに備え、
前記受信装置は、
前記撮像部の前記二次元受光面上に投影された前記複合発光パターンを、前記追跡情報に係る発光パターンおよび前記伝送対象情報に係る発光パターンにそれぞれ分離する分離部と、
前記分離部で分離された前記追跡情報および前記伝送対象情報のそれぞれに係る発光パターンに対し、前記符号化を解く解読手順を用いて、前記追跡情報および前記伝送対象情報をそれぞれ復元する復元部と、
をさらに備える
ことを特徴とする情報伝送システム。
【請求項5】
請求項4に記載の情報伝送システムであって、
前記光の時系列的な強度および色の組み合わせに係る変化は、前記相互に異なる複数の色の光を発光する前記発光部の点滅によって表現され、
前記受信装置の復元部は、前記複数の色の光の点滅に係る論理和演算結果に対し、前記解読手順を用いて、前記追跡情報を復元すると共に、前記複数の色の光の点滅に係る論理積演算結果に対し、前記解読手順を用いて、前記伝送対象情報を復元する、
ことを特徴とする情報伝送システム。
【請求項6】
請求項1〜5のうちいずれか一項に記載の情報伝送システムで復元された前記伝送対象情報を用いて、前記移動体の位置を検知する移動体位置検知装置であって、
3以上の前記発信装置側の三次元位置情報を予め記憶する位置情報記憶部と、
前記伝送対象情報のうち3以上の前記発信装置側の識別情報、前記位置情報記憶部の記憶内容、前記撮像部の前記二次元受光面上に投影された前記発信装置側の二次元位置情報、および、前記撮像部の画角情報に基づいて、前記移動体の位置を検知する移動体位置検知部と、
を備えることを特徴とする移動体位置検知装置。
【請求項7】
移動体に設けられる受信装置へ情報を伝送する発信装置であって、
発光部と、
予め定められる符号化手順を用いた符号化が行われる符号化区間において、前記発信装置側の識別情報を含む伝送対象情報、および、前記移動体を追跡するための追跡情報を、前記発光部を常時点灯し、かつ、前記常時点灯の際の光の強度を時系列的に変化させる複合発光パターンに符号化する符号化部と、
前記符号化部で符号化された前記複合発光パターンに従って前記発光部の発光制御を行う発光制御部と、
を備えることを特徴とする発信装置。
【請求項8】
受信装置へ情報を伝送する、移動体に設けられる発信装置であって、
発光部と、
予め定められる符号化手順を用いた符号化が行われる符号化区間において、前記発信装置側の識別情報を含む伝送対象情報、および、前記移動体を追跡するための追跡情報を、前記発光部を常時点灯し、かつ、前記常時点灯の際の光の強度を時系列的に変化させる複合発光パターンに符号化する符号化部と、
前記符号化部で符号化された前記複合発光パターンに従って前記発光部の発光制御を行う発光制御部と、
を備えることを特徴とする発信装置。
【請求項9】
移動体に設けられる発信装置から伝送される情報を受信する受信装置であって、
予め定められる符号化手順を用いた符号化が行われる符号化区間において、前記発光部を常時点灯し、かつ、前記常時点灯の際の光の強度を時系列的に変化させる複合発光パターンを伝送媒体として、前記発信装置側から伝送されてきた、前記発信装置側の識別情報を含む伝送対象情報、および、前記移動体を追跡するための追跡情報を、二次元受光面を介して撮像する撮像部と、
前記撮像部の前記二次元受光面上に投影された前記複合発光パターンを、前記追跡情報に係る発光パターンおよび前記伝送対象情報に係る発光パターンにそれぞれ分離する分離部と、
前記分離部で分離された前記追跡情報および前記伝送対象情報のそれぞれに係る発光パターンに対し、前記符号化を解く解読手順を用いて、前記追跡情報および前記伝送対象情報をそれぞれ復元する復元部と、
を備えることを特徴とする受信装置。
【請求項10】
発信装置から伝送される情報を受信する、移動体に設けられる受信装置であって、
予め定められる符号化手順を用いた符号化が行われる符号化区間において、前記発光部を常時点灯し、かつ、前記常時点灯の際の光の強度を時系列的に変化させる複合発光パターンを伝送媒体として、前記発信装置側から伝送されてきた、前記発信装置側の識別情報を含む伝送対象情報、および、前記移動体を追跡するための追跡情報を、二次元受光面を介して撮像する撮像部と、
前記撮像部の前記二次元受光面上に投影された前記複合発光パターンを、前記追跡情報に係る発光パターンおよび前記伝送対象情報に係る発光パターンにそれぞれ分離する分離部と、
前記分離部で分離された前記追跡情報および前記伝送対象情報のそれぞれに係る発光パターンに対し、前記符号化を解く解読手順を用いて、前記追跡情報および前記伝送対象情報をそれぞれ復元する復元部と、
を備えることを特徴とする受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−38489(P2013−38489A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170827(P2011−170827)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】