情報処理機器室の空調システム
【課題】情報処理機器を収容したラックへ冷気を適正に供給可能な情報処理機器室の空調システムを提供することを課題とする。
【解決手段】情報処理機器を収容したラックが整列する情報処理機器室の空調システムであって、前記情報処理機器室内において前記ラックへ向けて開口する、前記情報処理機器を冷却するための冷気を前記情報処理機器室内へ吹き出す空気吹出口と、前記冷気を前記ラック内に吸引するために前記ラックに設けられている吸気面の縁のうち前記空気吹出口から吹き出た前記冷気が通過する部位の少なくとも一部分から、周面が吸気面の延長方向であって前記空気吹出口の方へ向けて膨らむように半円柱状の部材を前記ラックから突出させた縮流軽減装置と、を備える。
【解決手段】情報処理機器を収容したラックが整列する情報処理機器室の空調システムであって、前記情報処理機器室内において前記ラックへ向けて開口する、前記情報処理機器を冷却するための冷気を前記情報処理機器室内へ吹き出す空気吹出口と、前記冷気を前記ラック内に吸引するために前記ラックに設けられている吸気面の縁のうち前記空気吹出口から吹き出た前記冷気が通過する部位の少なくとも一部分から、周面が吸気面の延長方向であって前記空気吹出口の方へ向けて膨らむように半円柱状の部材を前記ラックから突出させた縮流軽減装置と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理機器室の空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
情報処理技術の発展に伴い、情報処理機器の発熱量は増大の一途を辿っている。これに伴い、情報処理機器を冷却する情報処理機器室の空調システムの処理量も増大しており、情報処理機器を効率的に冷却できる空調技術の開発が行われている。
【0003】
ところで、情報処理機器室には、情報処理機器を収容したラックが整列しているため、空調の吹出口から流れる気流がラックやラックの端部で剥離し、縮流を発生させる場合がある。例えば、特許文献1には、機器の端部に生ずる気流の剥離を防止する技術が開示されている。また、特許文献2には、気流の剥離を抑制して騒音の低減を図った空気調和機が開示されている。また、特許文献3には、吹出風の吹き出しの広がり角度を調整可能な車両用空調装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−72587号公報
【特許文献2】特開2007−57182号公報
【特許文献3】特開2002−316533号公報
【特許文献4】特許第3835615号公報
【特許文献5】特許第3682154号公報
【特許文献6】実公昭55−14991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
データセンタ等の大規模な情報処理設備においては、情報処理機器を収容したラックが室内に多数並べられている。各情報処理機器へ冷気を過不足なく行き渡らせるためには、ラック列の吸気面に冷気が適正に供給される必要がある。ここで、情報処理機器は、所定の上限温度を超えると停止や破損に至ることがある。よって、情報処理機器を管理する管理者は、情報処理機器が必要とする風量よりも若干多い風量で空調システムを運転することが多い。この場合、空調システムの風量は、情報処理機器が必要とする風量を十分に満足するものの、情報処理機器を収容する各ラックへの給気風量のばらつきや情報処理機器の負荷密度の違いなどに起因し、情報処理機器の排気が吸気側へ回り込むなどしてラックが局所的に高温になり、ホットスポットが発生する場合がある。
【0006】
ラックの吸気面に生ずるホットスポットを以下に例示する。例えば、図18に示すように、壁に設けた空気吹出口から冷気が吹き出す場合、空気吹出口に近いラック端部では、冷気が流路の狭い部分(ラックとラックの間)に流入する際の縮流によってホットスポットが形成される場合がある。すなわち、縮流が発生してコールドアイルに流入する冷気の風速が速くなり、この動圧上昇に伴い空気吹出口に近いラック列端部側の吸気面付近の静圧が下がることで、ラック内の空気がコールドアイル側に誘引されて、ホットアイル側の高温空気がコールドアイル側へ回り込みやすくなり、ホットスポットが形成される。また、例えば、図19に示すように、壁に設けた空気吹出口から吹き出た冷気が斜めに流入する場合、空気吹出口に近いラック端部で偏流による渦が生じ、ホットスポットが形成される場合がある。すなわち、偏流が発生して、空気吹出口に近いラック列端部の吸気面付近の静圧が下がることで、ラック内の空気が誘引されてホットアイルの熱気がラック内を逆
流しやすくなり、ラックの一部にホットスポットが形成される。このような現象は、例えば、冗長性が求められるサーバールームなどにおいて特に著しく、空調機器の運転台数の変更に伴って風量バランスが崩れると、空気吹出口から吹き出る冷気の風速や風向が変化してホットスポットが形成されることが多い。
【0007】
そこで、本願は、情報処理機器を収容したラックへ冷気を適正に供給可能な情報処理機器室の空調システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、周面が吸気面の延長方向へ向けて膨らむように半円柱状の部材を前記ラックから突出させることにした。
【0009】
詳細には、本発明は、情報処理機器を収容したラックが整列する情報処理機器室の空調システムであって、前記情報処理機器室内において前記ラックへ向けて開口する、前記情報処理機器を冷却するための冷気を前記情報処理機器室内へ吹き出す空気吹出口と、前記冷気を前記ラック内に吸引するために前記ラックに設けられている吸気面の縁のうち前記空気吹出口から吹き出た前記冷気が通過する部位の少なくとも一部分から、周面が吸気面の延長方向であって前記空気吹出口の方へ向けて膨らむように半円柱状の部材を前記ラックから突出させた縮流軽減装置と、を備える。
【0010】
上記情報処理機器室の空調システムは、縮流軽減装置の周面が吸気面の延長方向であって空気吹出口の方へ向けて膨らむように半円柱状の部材をラックから突出させているため、空気吹出口から吹き出て縮流軽減装置を通過する冷気の流路が、縮流軽減装置に備わっている半円柱状の部材の周面によって徐々に変更されることになり、ラックの吸気面へ流れ込む冷気の急激な流路の変化が緩和され、ラックの吸気面で生ずる縮流の発生が防止される。この結果、情報処理機器を収容したラックの吸気面へ冷気を適正に供給することが可能となる。
【0011】
なお、前記縮流軽減装置は、前記半円柱状の部材と前記ラックとの間に角柱状の部材を挟むようにして前記半円柱状の部材を前記ラックから突出させたものであってもよい。半円柱状の部材が角柱状の部材を挟んでラックから突出するように設けられていれば、空気吹出口から吹き出た冷気の縮流が半円柱状の部材によって軽減されながら角柱状の部材の横を通過し、その後にラックの吸気面へ流れるため、縮流軽減装置における流れの変化がより安定した状態で冷気がラックの吸気面へ流入することになり、角柱状の部材を設けない場合に比べてより適正に冷気を供給することが可能になる。
【0012】
また、前記情報処理機器室の空調システムは、前記空気吹出口から吹き出た冷気の気流が前記ラックの吸気面に沿うように、前記空気吹出口から前記ラックへ流れる前記冷気を整流する整流装置を更に備えるものであってもよい。この整流装置は、空気吹出口から吹き出た冷気がラックの吸気面に沿って流れるように、冷気の進路を整えるものである。よって、空気吹出口が如何なる箇所に設けられていても、空気吹出口側のラック間の入口で冷気を均してガイドしラックの吸気面に沿って流れることになり、偏流に起因するホットスポットの出現が防止される。この結果、整流装置による冷気の整流方向と縮流軽減装置に備わっている半円柱状の部材の周面の膨らみ方向とが有機的に作用することで、整流装置の整流機能と縮流軽減装置の縮流軽減機能とが相乗的に効果を発揮する。この結果、情報処理機器を収容したラックへ冷気を適正に供給することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、情報処理機器を収容したラックへ冷気を適正に供給可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第一の実施形態に係る情報処理機器室の空調システムを設けたデータセンタの構成図である。
【図2】空気吹出口付近の上面図である。
【図3】空気吹出口から吹き出た冷気の流れを示した図である。
【図4】縮流軽減装置の適用効果を示した図である。
【図5】第二の実施形態に係る情報処理機器室の空調システムを設けたデータセンタの構成図である。
【図6】空気吹出口付近の上面図である。
【図7】空気吹出口から吹き出た冷気の流れを示した図である。
【図8】第三の実施形態に係る情報処理機器室の空調システムを設けたデータセンタの構成図である。
【図9】空気吹出口付近の上面図である。
【図10】空気吹出口から吹き出た冷気の流れを示した図である。
【図11】整流装置の適用効果を示した図である。
【図12】解析モデルを示した図である。
【図13】縮流を軽減する装置の態様を示した図である。
【図14】実施例および比較例1,2のそれぞれのラック吸込み最大温度の解析結果を示すグラフである。
【図15】第一変形例に係る空調システムを設けたデータセンタの構成図である。
【図16】第二変形例に係る空調システムを設けたデータセンタの構成図である。
【図17】第三変形例に係る空調システムを設けたデータセンタの構成図である。
【図18】ラックの吸気面に生ずるホットスポットの第一例を示した図である。
【図19】ラックの吸気面に生ずるホットスポットの第二例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態は、本発明の一態様を例示するものであり、本発明の技術的範囲を以下の態様に限定するものではない。
【0016】
図1は、第一の実施形態に係る情報処理機器室の空調システム1を設けたデータセンタ2の構成図である。データセンタ2には、図1に示すように、各種の演算処理やデータベースの管理を行なうサーバや通信機等の情報処理機器が収容されたラック3が列をなしてサーバールーム4に多数列並んでいる。また、サーバールーム4の側壁には、各ラック3へ冷気を供給する空気吹出口5(図1では、HS型(縦羽根型吹出口・シャッター付)のグリルを例示している)が設けられている。空気吹出口5から吹き出る冷気は、サーバールーム4の室外に設けられた図示しない空調機器によって生成される。
【0017】
なお、各ラック3へ供給する冷気は、サーバールーム4の壁に設けた空気吹出口5から吹き出したものに限定されるものではない。例えば、クーリングコイルや電動ファンを内蔵した空調ユニットをサーバールーム4内に設置し、この空調ユニットの空気吹出口から冷気を直接吹き出すようにしてもよい。この場合、空調ユニットは側壁に沿って室内側に、または側壁に設けた開口に埋め込まれるように設置される。また、空気吹出口5は、壁に配置される態様に限定されるものでなく、例えば、天井や床に配置されていてもよい。
【0018】
各ラック3には、情報処理機器を冷却する冷却ファンが内部あるいは外部に設けられており、ラックの正面あるいは背面の何れかが吸気面となり、他方が排気面となるように構成されている。なお、ラックの上面が排気面となっていてもよい。各ラック3の冷却ファンは、ラック3内に収容されている情報処理機器の負荷状態や吸込み温度に応じて時々刻々と変化するように回転数が制御されるものであってもよいし、一定の回転数で動くものであってもよい。なお、情報処理機器が据え付けられていない等の理由により、ラック3
内や隣接するラック3間に隙間があるような場合は、暖気の回り込みを防ぐようなパネル等で隙間を防ぐことが好ましい。
【0019】
データセンタ2は、各ラック3へ冷気が効率的に供給されるよう、一つのラック列6を構成する各ラック3の吸気面と排気面の向きが揃えられている。そして、対峙する2つのラック列6が、共に吸気面あるいは排気面で向き合うように配置される。各ラック3がこのように設置されていることにより、各ラック列6の間には、冷気が流れる通路と暖気が流れる通路とが交互に形成されることになる。以下、吸気面が向かい合う一対のラック列6に囲まれた、冷気が流れる通路をコールドアイルCといい、排気面が向かい合う一対のラック列6によって囲まれた、暖気が流れる通路をホットアイルHという。
【0020】
ここで、空気吹出口5は、2つのラック列6によって囲まれたコールドアイルCの両端のうち少なくとも何れかの端部付近の壁に設けられており、冷気がコールドアイルCに向かって吹き出るように構成されている。これにより、コールドアイルCには、空気吹出口5から吹き出た冷気が、コールドアイルCの長手方向に沿って流入する。
【0021】
また、コールドアイルCを囲むラック列6の側端部のうち、空気吹出口5から吹き出た冷気が通過するコールドアイルCの入り口部分を形成するラック列6の角の部分には、周面がラック列6の端部から側方へ向けて膨らむように、半円柱状の部材が床から立設して取り付けられている。この半円柱状の部材は、角柱状で半円柱部材と同じ高さのスペーサを介してラック列6の端部にラック列と同じ高さか若干高く取り付けられており、半円柱状の部材の周面がラック3の縁からスペーサの厚さ分だけ離間するように取り付けられている。半円柱状の部材および角柱状のスペーサによって構成されるこれらの部材を、以下、縮流軽減装置8Sという。縮流軽減装置8Sは、空気吹出口5から吹き出た冷気が、サーバールーム4の壁とラック列6との間にある空間から、幅の狭いコールドアイルCに流入する際に生ずる縮流を軽減する。なお、スペーサは必ずしも必須の構成ではなく、ホットスポットの発生状況等に応じて適宜省略してもよい。
【0022】
図2は、空気吹出口5付近の上面図である。縮流軽減装置8Sは、図2に示されるように、コールドアイルCを挟む2つのラック列6の各側端部や各上端部に設けられている。なお、図2では、コールドアイルCの一端側のみを図示しているが、コールドアイルCの他端側の壁にも空気吹出口5が設けられている場合には、他端側にも縮流軽減装置8Sを設けることが望ましい。
【0023】
このように構成される空調システム1では、空気吹出口5から吹き出た冷気が、次のようにしてコールドアイルCに流入する。図3は、空気吹出口5から吹き出た冷気の流れを示した図である。空気吹出口5から吹き出た冷気のうちラック列6の角の部分を流れる冷気は、縮流軽減装置8Sの周面に沿って徐々にその流れを変えていき、ラック列6の吸気面に縮流を発生させることなく、コールドアイルCに流入する。よって、ラック3にホットスポットが生じることもなく、各ラック3内に収容されている情報処理機器を適正に冷却することができる。
【0024】
縮流軽減装置の適用効果について検証する。図4は、縮流軽減装置8Sの適用効果を示した図である。例えば、図4(A)に示すように、空気吹出口5から吹き出た冷気がコールドアイルCに流入する場合、空気吹出口5に近いラック列6の端部付近では、冷気が通過する進路が急激に狭くなることによる縮流が発生し、コールドアイルCに流入する冷気の風速が速くなる。この動圧上昇に伴い、空気吹出口5に近いラック列6の端部付近ではラック3内の空気が誘引されるので、ホットアイルH側の高温空気がコールドアイルC側へ回り込みやすくなり、ホットスポットが形成される。しかしながら、縮流軽減装置8Sが設けられていると、図4(B)に示すように、冷気が通過する進路の横幅が徐々に狭く
なるため、縮流の発生が緩和され、ホットスポットが出現しなくなる。
【0025】
上記空調システム1であれば、各ラック列6の吸気面が空気吹出口5と直接連結されていないような施設であっても、各ラック3に冷気を効率よく供給し、ホットスポットの出現を抑制することができる。すなわち、熱気廻り込みの対策として給気面以外を囲う等の必要もなく、建設費も低減でき、保守作業の自由度も向上する。特に、コールドアイルCへ流入する冷気は、空気吹出口5とラック列6との位置関係によりその流入角度や速度は大きく変化する。また、ラック3に収容されているサーバ等の情報処理機器の負荷の変化や、空調機器のメンテナンスに伴う輪番停止などの影響によっても、その風量や風向が変化してコールドアイルCに流入する冷気の流入角度や速度が大きく変化する。しかしながら、上記空調システム1であれば、縮流軽減装置8Sが作用することにより、空気吹出口5の位置が変更されたり、冷気の風量、風向が変化した場合であっても、ホットスポットの出現を防ぐことができる。また、縮流軽減装置は既設の空調システムに取り付け容易であるため、新築のみならず、改修の場合にも容易に適用可能である。また、冷気をラックへ適正に供給可能となるため、冷却風量等を抑制して空調エネルギーを削減することが可能である。
【0026】
図5は、第二の実施形態に係る情報処理機器室の空調システム1’を設けたデータセンタ2の構成図である。なお、第一の実施形態に係る情報処理機器室の空調システム1と同様の構成については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。データセンタ2には、ラック3が列をなしてサーバールーム4に多数列並んでおり、また、サーバールーム4の側壁には、各ラック3へ冷気を供給する空気吹出口5が設けられている。
【0027】
図5に示すように、空気吹出口5から吹き出た冷気が通過するコールドアイルCの入り口部分には、整流装置7Lが設けられている。整流装置7Lは、平らな板であり、空気吹出口5から吹き出た冷気がコールドアイルCの長手方向と平行に、換言すると、冷気の気流がラック3の吸気面に沿うように、空気吹出口5から吹き出た冷気の気流を整える。また、整流装置7Lは床からラック列6の天面より高い位置に床で支持されて立設され、その一端辺はラック端部と略面一で、他端面は空気吹出口5側に位置する。なお、整流装置7Lは、板状の部材に限られるものでなく、例えば、多数の板を格子状に組み合わせたものであってもよい。
【0028】
図6は、空気吹出口5付近の上面図である。整流装置7Lは、図6に示されるように、コールドアイルCの入り口部分のほぼ中央に1つ設けられている。また、縮流軽減装置8Sは、図6に示されるように、コールドアイルCを挟む2つのラック列6の各側端部に設けられている。なお、図6では、整流装置7Lが一つ示されているが、整流装置の個数はこれに限定されるものでなく、適宜変更してもよい。また、図6では、コールドアイルCの一端側のみを図示しているが、コールドアイルCの他端側の壁にも空気吹出口5が設けられている場合には、他端側にも整流装置7Lや縮流軽減装置8Sを設けることが望ましい。
【0029】
このように構成される空調システム1’では、空気吹出口5から吹き出た冷気が、次のようにしてコールドアイルCに流入する。図7は、空気吹出口5から吹き出た冷気の流れを示した図である。空気吹出口5から吹き出た冷気は、図7に示すように、整流装置7Lによって整流され、冷気の気流がラック3の吸気面に沿う。また、整流装置7Lによって整流された冷気のうち、ラック列6の角の部分を流れる冷気は、縮流軽減装置8Sの周面に沿って徐々にその流れを変えていき、ラック列6の吸気面に縮流を発生させることなく、コールドアイルCに流入する。よって、ラック3にホットスポットが生じることもなく、各ラック3内に収容されている情報処理機器を適正に冷却することができる。
【0030】
図8は、第三の実施形態に係る情報処理機器室の空調システム1”を設けたデータセンタ2の構成図である。なお、第一の実施形態に係る情報処理機器室の空調システム1や第二の実施形態に係る情報処理機器室の空調システム1’と同様の構成については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。データセンタ2には、ラック3が列をなしてサーバールーム4に多数列並んでおり、また、サーバールーム4の側壁には、各ラック3へ冷気を供給する空気吹出口5が設けられている。また、空気吹出口5から吹き出た冷気が通過するコールドアイルCの入り口部分には、整流装置7Lが設けられている。
【0031】
また、空気吹出口5から吹き出た冷気が通過するサーバールーム4の天井とラック列6との隙間の入り口部分には、整流装置7Sが設けられている。整流装置7Sは、整流装置7Lと同様、平らな板であり、空気吹出口5から吹き出た冷気がコールドアイルCの長手方向と平行に、換言すると、冷気の気流がラック3の吸気面に沿うように、空気吹出口5から吹き出た冷気の気流を整える。整流装置7Sは、サーバールーム4の天井からラック3上端まで伸びる板であり、整流装置7Lに比べて短い。整流装置7S,7Lの支持は天井から取ってもよいが、必ずしも天井からラックまでを整流する必要はなく、空気吹出口5からラック上部に流れる気流を整えてラック上部の暖気回り込みを防止する目的からラック上端に接していれば天井との間が空いていてもよい。その場合は、ラック3の上端で金具等を介して支持をとる。なお、整流装置7Lや整流装置7Sは、板状の部材に限られるものでなく、例えば、多数の板を格子状に組み合わせたものであってもよい。
【0032】
また、コールドアイルCを囲むラック列6の上端部のうち、空気吹出口5から吹き出た冷気が通過するコールドアイルCの入り口部分を形成するラック列6の角の部分には、周面が上方へ向けて膨らむように半円柱状の部材がコールドアイルCの長手方向に沿って延在するように取り付けられている。この半円柱状の部材は、角柱状のスペーサを介してラック列6の上部に取り付けられている。半円柱状の部材および角柱状のスペーサによって構成されるこれらの部材を、以下、縮流軽減装置8Uという。縮流軽減装置8Uは、空気吹出口5から吹き出た冷気が、サーバールーム4の天井とラック列6の上端部との間にある空間から、幅の狭いコールドアイルCに流入する際に生ずる縮流を軽減する。なお、天井とラック列6の上端部との間を通る冷気もラック3の冷却ファンの吸引力により、ラック列6の上部に滞留することなくコールドアイルCに流入することができるようになっている。
【0033】
図9は、空気吹出口5付近の上面図である。整流装置7Lは、図9に示されるように、コールドアイルCの入り口部分のほぼ中央に1つ設けられている。一方、整流装置7Sは、整流装置7Lの両脇にそれぞれ2つずつ、ラック列6の端部に設けられている。また、縮流軽減装置8S,8Uは、図9に示されるように、コールドアイルCを挟む2つのラック列6の各側端部や各上端部に設けられている。
【0034】
なお、図9では、整流装置7L,7Sの間隔が均等に図示されているが、整流装置7L,7Sの間隔は不均等であってもよい。また、図9では、整流装置7Lが一つで、整流装置7Sが4つ示されているが、整流装置の個数はこれに限定されるものでなく、適宜変更してもよい。また、図9では、コールドアイルCの一端側のみを図示しているが、コールドアイルCの他端側の壁にも空気吹出口5が設けられている場合には、他端側にも整流装置7L,7Sや縮流軽減装置8S,8Uを設けることが望ましい。
【0035】
このように構成される空調システム1”では、空気吹出口5から吹き出た冷気が、次のようにしてコールドアイルCに流入する。図10は、空気吹出口5から吹き出た冷気の流れを示した図である。空気吹出口5から吹き出た冷気は、図10に示すように、整流装置7L,7Sによって整流され、冷気の気流がラック3の吸気面に沿う。また、整流装置7L,7Sによって整流された冷気のうち、ラック列6の角の部分を流れる冷気は、縮流軽
減装置8S,8Uの周面に沿って徐々にその流れを変えていき、ラック列6の吸気面に縮流を発生させることなく、コールドアイルCに流入する。よって、ラック3にホットスポットが生じることもなく、各ラック3内に収容されている情報処理機器を適正に冷却することができる。
【0036】
整流板の適用効果について検証する。図11は、整流装置7L,7Sの適用効果を示した図である。ラック列の吸気面が空気吹出口と直接連結されていない施設において、例えば、図11(A)に示すように、コールドアイルCの中心線が空気吹出口の吹出気流の中心から外れている場合、すなわち空気吹出口5から吹き出た冷気がコールドアイルCへ斜めに流入する場合、コールドアイルC内で偏流が生ずる。この結果、空気吹出口5に近いラック列6の端部付近では、空気吹出口5から吹き出た冷気によってラック3内の空気が誘引されるので、ホットアイルHの熱気がラック内を逆流し、ラック3の一部にホットスポットが形成される。しかしながら、整流装置7L,7Sが設けられていると、図11(B)に示すように、空気吹出口5から吹き出た冷気は、ラック3の吸気面に沿って流れる。このため、コールドアイルC内の偏流が生じなくなる。
【0037】
上記空調システム1”であれば、各ラック列6の吸気面が空気吹出口5と直接連結されていないような施設であっても、コールドアイルCへ冷気を適正に分配して各ラック3に冷気を効率よく供給し、ホットスポットの出現を抑制することができる。すなわち、熱気廻り込みの対策として給気面以外を囲う等の必要もなく、建設費も低減でき、保守作業の自由度も向上する。特に、コールドアイルCへ流入する冷気は、空気吹出口5とラック列6との位置関係によりその流入角度や速度は大きく変化する。また、ラック3に収容されているサーバ等の情報処理機器の負荷の変化や、空調機器のメンテナンスに伴う輪番停止などの影響によっても、その風量や風向が変化してコールドアイルCに流入する冷気の流入角度や速度が大きく変化する。しかしながら、上記空調システム1”であれば、整流装置7S,7Lおよび縮流軽減装置8S,8Uが組み合わさって有機的に作用することにより、空気吹出口5の位置が変更されたり、冷気の風量、風向が変化した場合であっても、コールドアイルCへ冷気を適正に分配して各ラック3に冷気を効率よく供給し、ホットスポットの出現を防ぐことができる。また、縮流軽減装置および整流板は既設の空調システムに取り付け容易であるため、新築のみならず、改修の場合にも容易に適用可能である。また、冷気をラックへ適正に供給可能となるため、冷却風量等を抑制して空調エネルギーを削減することが可能である。
【0038】
なお、縮流軽減装置の効果について解析を行ったので、解析結果を以下に示す。図12は、解析モデルを示した図である。本解析では、図12に示すように、2つのラック列6を配したサーバールーム4の壁面に空気吹出口5を一つ設け、空気吹出口5から吹き出た冷気が、2つのラック列6の間に形成されるコールドアイルCに流入する空調システム1をモデルにしている。
【0039】
また、本解析では、縮流を軽減する装置を3種類用意し、これらについて比較を行っている。図13は、縮流軽減装置の態様を示した図である。図13(A)に示す比較例1は、単なる板状の部材で構成した縮流軽減装置である。また、図13(B)に示す比較例2は、半円柱状の部材のみで構成した縮流軽減装置である。一方、図13(C)に示す実施例は、上述した実施形態に係る空調システム1の縮流軽減装置8Sに相当するものであり、半円柱状の部材と角柱状の部材とを組み合わせて構成した縮流軽減装置である。
【0040】
図14は、実施例および比較例1,2のそれぞれのラック吸込み最大温度を、ラック端部からの突き出し量Tを0.1m刻みで解析した場合の解析結果を示すグラフである。なお、本解析において、比較例2の半円柱状の部材の周面の曲率半径は、突き出し量Tを半分に割った値である。また、本解析において、比較例3の半円柱状の部材の周面の曲率半
径は、0.10mとしている。
【0041】
図14のグラフから明らかなように、ラック吸込み最大温度が最も低くなる場合の突き出し量Tの大きさは、比較例1では0.4mであり、比較例2では0.3mであり、実施例では0.2mである。この結果から、実施例が、比較例1,2に比べてラック端部からの突き出し量を小さくすることができることが判る。縮流軽減装置のラック端部からの突き出し量が大きいと、人が移動する際の障害となり得るが、実施例であれば、比較例1,2に比べてコンパクト化を図ることが可能である。
【0042】
なお、上記実施形態に係る空調システム1は、次のように変形してもよい。以下、空調システム1の各変形例について説明する。なお、下記に示す各変形例は、上記実施形態に係る空調システム1を変形したものであるため、以下、実施形態に係る空調システム1との相違点についてのみ説明し、その他の構成については同様であるものとする。
【0043】
図15は、第一変形例に係る空調システム1”を設けたデータセンタ2の構成図である。第一変形例に係る空調システム1”は、空気吹出口5が壁のみならず、天井にも設けられている。そして、冷気が壁の空気吹出口5と天井の空気吹出口5からコールドアイルCへ流入する。空気吹出口5がこのように設けられていても、縮流軽減装置8S,8Uや整流装置7L,7Sが有機的に作用することにより、ホットスポットの発生が防止される。なお、天井に設けられている空気吹出口5がコールドアイルCの直上ではなく、異なる位置にある場合、例えば、コールドアイルCの上側に、コールドアイルCの長手方向に沿って延在する整流板を設けてもよい。このような整流板を設ければ、壁の空気吹出口5から吹き出る冷気を整流する整流装置7Lと同様、天井の空気吹出口5から吹き出る冷気が整流されるので、ホットスポットの発生を防止することができる。
【0044】
図16は、第二変形例に係る空調システム1”を設けたデータセンタ2の構成図である。第二変形例に係る空調システム1”は、空気吹出口5が壁や天井のみならず、床にも設けられている。そして、冷気が壁の空気吹出口5と天井の空気吹出口5と床の空気吹出口5からコールドアイルCへ流入する。空気吹出口5がこのように設けられていても、縮流軽減装置8S,8Uや整流装置7L,7Sが有機的に作用することにより、ホットスポットの発生が防止される。
【0045】
図17は、第三変形例に係る空調システム1”を設けたデータセンタ2の構成図である。第三変形例に係る空調システム1”は、空気吹出口5が壁、天井および床に設けられている他、ラック3が床から離間するように設置されている。ラック3は、例えば、脚が設けられていることにより床から離間していてもよいし、通気性の架台の上に設置されることで床から離間していてもよいし、床と天井との間に配した支柱に支持されることで床から離間していてもよい。
【0046】
第三変形例に係る空調システム1”は、整流装置7Sが、天井とラック列6との隙間の入り口部分のみならず、床とラック列6との隙間の入り口部分にも設けられている。また、第四変形例に係る空調システム1”は、ラック列6の側端部に設けた縮流軽減装置8Sや上端部に設けた縮流軽減装置8Uのみならず、コールドアイルCを囲むラック列6の下端部にも、周面が下方へ向けて膨らむ縮流軽減装置8Bが設けられている。ラック列6がこのように床から離間することにより、ラック列6の下を冷気が通過する場合であっても、縮流軽減装置8S,8U,8Bや整流装置7L,7Sが有機的に作用することにより、ホットスポットの発生が防止される。
【0047】
なお、上記各変形例において、空気吹出口5を天井に設ける場合は、天井を二重構造とし、二重構造の天井内部に設けた空調ダクトを通った冷気が空気吹出口から吹き出るよう
にしてもよいし、あるいは、一重構造の天井に吊るした空調ダクトを通った冷気が、天井から吊り下げられた空気吹出口から吹き出るようにしてもよい。また、空気吹出口5を床に設ける場合は、床を二重構造とし、二重構造の床内部に設けた空調ダクトを通った冷気が空気吹出口から吹き出るようにしてもよいし、あるいは、二重構造の床内部に送り込まれた冷気が、床に設けた空気吹出口から吹き出るようにしてもよい。
【0048】
また、縮流軽減装置8Uは、必ずしもラック列の長手方向全体に渡って取り付けられている必要はなく、例えば情報処理機器が収容されていないラックの上端部などに途切れている箇所があってもよい。
【符号の説明】
【0049】
1,1’,1”・・・空調システム;2・・・データセンタ;3・・・ラック;4・・・サーバールーム;5・・・空気吹出口;6・・・ラック列;7L,7S・・・整流装置;8S,8U,8B・・・縮流軽減装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理機器室の空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
情報処理技術の発展に伴い、情報処理機器の発熱量は増大の一途を辿っている。これに伴い、情報処理機器を冷却する情報処理機器室の空調システムの処理量も増大しており、情報処理機器を効率的に冷却できる空調技術の開発が行われている。
【0003】
ところで、情報処理機器室には、情報処理機器を収容したラックが整列しているため、空調の吹出口から流れる気流がラックやラックの端部で剥離し、縮流を発生させる場合がある。例えば、特許文献1には、機器の端部に生ずる気流の剥離を防止する技術が開示されている。また、特許文献2には、気流の剥離を抑制して騒音の低減を図った空気調和機が開示されている。また、特許文献3には、吹出風の吹き出しの広がり角度を調整可能な車両用空調装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−72587号公報
【特許文献2】特開2007−57182号公報
【特許文献3】特開2002−316533号公報
【特許文献4】特許第3835615号公報
【特許文献5】特許第3682154号公報
【特許文献6】実公昭55−14991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
データセンタ等の大規模な情報処理設備においては、情報処理機器を収容したラックが室内に多数並べられている。各情報処理機器へ冷気を過不足なく行き渡らせるためには、ラック列の吸気面に冷気が適正に供給される必要がある。ここで、情報処理機器は、所定の上限温度を超えると停止や破損に至ることがある。よって、情報処理機器を管理する管理者は、情報処理機器が必要とする風量よりも若干多い風量で空調システムを運転することが多い。この場合、空調システムの風量は、情報処理機器が必要とする風量を十分に満足するものの、情報処理機器を収容する各ラックへの給気風量のばらつきや情報処理機器の負荷密度の違いなどに起因し、情報処理機器の排気が吸気側へ回り込むなどしてラックが局所的に高温になり、ホットスポットが発生する場合がある。
【0006】
ラックの吸気面に生ずるホットスポットを以下に例示する。例えば、図18に示すように、壁に設けた空気吹出口から冷気が吹き出す場合、空気吹出口に近いラック端部では、冷気が流路の狭い部分(ラックとラックの間)に流入する際の縮流によってホットスポットが形成される場合がある。すなわち、縮流が発生してコールドアイルに流入する冷気の風速が速くなり、この動圧上昇に伴い空気吹出口に近いラック列端部側の吸気面付近の静圧が下がることで、ラック内の空気がコールドアイル側に誘引されて、ホットアイル側の高温空気がコールドアイル側へ回り込みやすくなり、ホットスポットが形成される。また、例えば、図19に示すように、壁に設けた空気吹出口から吹き出た冷気が斜めに流入する場合、空気吹出口に近いラック端部で偏流による渦が生じ、ホットスポットが形成される場合がある。すなわち、偏流が発生して、空気吹出口に近いラック列端部の吸気面付近の静圧が下がることで、ラック内の空気が誘引されてホットアイルの熱気がラック内を逆
流しやすくなり、ラックの一部にホットスポットが形成される。このような現象は、例えば、冗長性が求められるサーバールームなどにおいて特に著しく、空調機器の運転台数の変更に伴って風量バランスが崩れると、空気吹出口から吹き出る冷気の風速や風向が変化してホットスポットが形成されることが多い。
【0007】
そこで、本願は、情報処理機器を収容したラックへ冷気を適正に供給可能な情報処理機器室の空調システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、周面が吸気面の延長方向へ向けて膨らむように半円柱状の部材を前記ラックから突出させることにした。
【0009】
詳細には、本発明は、情報処理機器を収容したラックが整列する情報処理機器室の空調システムであって、前記情報処理機器室内において前記ラックへ向けて開口する、前記情報処理機器を冷却するための冷気を前記情報処理機器室内へ吹き出す空気吹出口と、前記冷気を前記ラック内に吸引するために前記ラックに設けられている吸気面の縁のうち前記空気吹出口から吹き出た前記冷気が通過する部位の少なくとも一部分から、周面が吸気面の延長方向であって前記空気吹出口の方へ向けて膨らむように半円柱状の部材を前記ラックから突出させた縮流軽減装置と、を備える。
【0010】
上記情報処理機器室の空調システムは、縮流軽減装置の周面が吸気面の延長方向であって空気吹出口の方へ向けて膨らむように半円柱状の部材をラックから突出させているため、空気吹出口から吹き出て縮流軽減装置を通過する冷気の流路が、縮流軽減装置に備わっている半円柱状の部材の周面によって徐々に変更されることになり、ラックの吸気面へ流れ込む冷気の急激な流路の変化が緩和され、ラックの吸気面で生ずる縮流の発生が防止される。この結果、情報処理機器を収容したラックの吸気面へ冷気を適正に供給することが可能となる。
【0011】
なお、前記縮流軽減装置は、前記半円柱状の部材と前記ラックとの間に角柱状の部材を挟むようにして前記半円柱状の部材を前記ラックから突出させたものであってもよい。半円柱状の部材が角柱状の部材を挟んでラックから突出するように設けられていれば、空気吹出口から吹き出た冷気の縮流が半円柱状の部材によって軽減されながら角柱状の部材の横を通過し、その後にラックの吸気面へ流れるため、縮流軽減装置における流れの変化がより安定した状態で冷気がラックの吸気面へ流入することになり、角柱状の部材を設けない場合に比べてより適正に冷気を供給することが可能になる。
【0012】
また、前記情報処理機器室の空調システムは、前記空気吹出口から吹き出た冷気の気流が前記ラックの吸気面に沿うように、前記空気吹出口から前記ラックへ流れる前記冷気を整流する整流装置を更に備えるものであってもよい。この整流装置は、空気吹出口から吹き出た冷気がラックの吸気面に沿って流れるように、冷気の進路を整えるものである。よって、空気吹出口が如何なる箇所に設けられていても、空気吹出口側のラック間の入口で冷気を均してガイドしラックの吸気面に沿って流れることになり、偏流に起因するホットスポットの出現が防止される。この結果、整流装置による冷気の整流方向と縮流軽減装置に備わっている半円柱状の部材の周面の膨らみ方向とが有機的に作用することで、整流装置の整流機能と縮流軽減装置の縮流軽減機能とが相乗的に効果を発揮する。この結果、情報処理機器を収容したラックへ冷気を適正に供給することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、情報処理機器を収容したラックへ冷気を適正に供給可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第一の実施形態に係る情報処理機器室の空調システムを設けたデータセンタの構成図である。
【図2】空気吹出口付近の上面図である。
【図3】空気吹出口から吹き出た冷気の流れを示した図である。
【図4】縮流軽減装置の適用効果を示した図である。
【図5】第二の実施形態に係る情報処理機器室の空調システムを設けたデータセンタの構成図である。
【図6】空気吹出口付近の上面図である。
【図7】空気吹出口から吹き出た冷気の流れを示した図である。
【図8】第三の実施形態に係る情報処理機器室の空調システムを設けたデータセンタの構成図である。
【図9】空気吹出口付近の上面図である。
【図10】空気吹出口から吹き出た冷気の流れを示した図である。
【図11】整流装置の適用効果を示した図である。
【図12】解析モデルを示した図である。
【図13】縮流を軽減する装置の態様を示した図である。
【図14】実施例および比較例1,2のそれぞれのラック吸込み最大温度の解析結果を示すグラフである。
【図15】第一変形例に係る空調システムを設けたデータセンタの構成図である。
【図16】第二変形例に係る空調システムを設けたデータセンタの構成図である。
【図17】第三変形例に係る空調システムを設けたデータセンタの構成図である。
【図18】ラックの吸気面に生ずるホットスポットの第一例を示した図である。
【図19】ラックの吸気面に生ずるホットスポットの第二例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態は、本発明の一態様を例示するものであり、本発明の技術的範囲を以下の態様に限定するものではない。
【0016】
図1は、第一の実施形態に係る情報処理機器室の空調システム1を設けたデータセンタ2の構成図である。データセンタ2には、図1に示すように、各種の演算処理やデータベースの管理を行なうサーバや通信機等の情報処理機器が収容されたラック3が列をなしてサーバールーム4に多数列並んでいる。また、サーバールーム4の側壁には、各ラック3へ冷気を供給する空気吹出口5(図1では、HS型(縦羽根型吹出口・シャッター付)のグリルを例示している)が設けられている。空気吹出口5から吹き出る冷気は、サーバールーム4の室外に設けられた図示しない空調機器によって生成される。
【0017】
なお、各ラック3へ供給する冷気は、サーバールーム4の壁に設けた空気吹出口5から吹き出したものに限定されるものではない。例えば、クーリングコイルや電動ファンを内蔵した空調ユニットをサーバールーム4内に設置し、この空調ユニットの空気吹出口から冷気を直接吹き出すようにしてもよい。この場合、空調ユニットは側壁に沿って室内側に、または側壁に設けた開口に埋め込まれるように設置される。また、空気吹出口5は、壁に配置される態様に限定されるものでなく、例えば、天井や床に配置されていてもよい。
【0018】
各ラック3には、情報処理機器を冷却する冷却ファンが内部あるいは外部に設けられており、ラックの正面あるいは背面の何れかが吸気面となり、他方が排気面となるように構成されている。なお、ラックの上面が排気面となっていてもよい。各ラック3の冷却ファンは、ラック3内に収容されている情報処理機器の負荷状態や吸込み温度に応じて時々刻々と変化するように回転数が制御されるものであってもよいし、一定の回転数で動くものであってもよい。なお、情報処理機器が据え付けられていない等の理由により、ラック3
内や隣接するラック3間に隙間があるような場合は、暖気の回り込みを防ぐようなパネル等で隙間を防ぐことが好ましい。
【0019】
データセンタ2は、各ラック3へ冷気が効率的に供給されるよう、一つのラック列6を構成する各ラック3の吸気面と排気面の向きが揃えられている。そして、対峙する2つのラック列6が、共に吸気面あるいは排気面で向き合うように配置される。各ラック3がこのように設置されていることにより、各ラック列6の間には、冷気が流れる通路と暖気が流れる通路とが交互に形成されることになる。以下、吸気面が向かい合う一対のラック列6に囲まれた、冷気が流れる通路をコールドアイルCといい、排気面が向かい合う一対のラック列6によって囲まれた、暖気が流れる通路をホットアイルHという。
【0020】
ここで、空気吹出口5は、2つのラック列6によって囲まれたコールドアイルCの両端のうち少なくとも何れかの端部付近の壁に設けられており、冷気がコールドアイルCに向かって吹き出るように構成されている。これにより、コールドアイルCには、空気吹出口5から吹き出た冷気が、コールドアイルCの長手方向に沿って流入する。
【0021】
また、コールドアイルCを囲むラック列6の側端部のうち、空気吹出口5から吹き出た冷気が通過するコールドアイルCの入り口部分を形成するラック列6の角の部分には、周面がラック列6の端部から側方へ向けて膨らむように、半円柱状の部材が床から立設して取り付けられている。この半円柱状の部材は、角柱状で半円柱部材と同じ高さのスペーサを介してラック列6の端部にラック列と同じ高さか若干高く取り付けられており、半円柱状の部材の周面がラック3の縁からスペーサの厚さ分だけ離間するように取り付けられている。半円柱状の部材および角柱状のスペーサによって構成されるこれらの部材を、以下、縮流軽減装置8Sという。縮流軽減装置8Sは、空気吹出口5から吹き出た冷気が、サーバールーム4の壁とラック列6との間にある空間から、幅の狭いコールドアイルCに流入する際に生ずる縮流を軽減する。なお、スペーサは必ずしも必須の構成ではなく、ホットスポットの発生状況等に応じて適宜省略してもよい。
【0022】
図2は、空気吹出口5付近の上面図である。縮流軽減装置8Sは、図2に示されるように、コールドアイルCを挟む2つのラック列6の各側端部や各上端部に設けられている。なお、図2では、コールドアイルCの一端側のみを図示しているが、コールドアイルCの他端側の壁にも空気吹出口5が設けられている場合には、他端側にも縮流軽減装置8Sを設けることが望ましい。
【0023】
このように構成される空調システム1では、空気吹出口5から吹き出た冷気が、次のようにしてコールドアイルCに流入する。図3は、空気吹出口5から吹き出た冷気の流れを示した図である。空気吹出口5から吹き出た冷気のうちラック列6の角の部分を流れる冷気は、縮流軽減装置8Sの周面に沿って徐々にその流れを変えていき、ラック列6の吸気面に縮流を発生させることなく、コールドアイルCに流入する。よって、ラック3にホットスポットが生じることもなく、各ラック3内に収容されている情報処理機器を適正に冷却することができる。
【0024】
縮流軽減装置の適用効果について検証する。図4は、縮流軽減装置8Sの適用効果を示した図である。例えば、図4(A)に示すように、空気吹出口5から吹き出た冷気がコールドアイルCに流入する場合、空気吹出口5に近いラック列6の端部付近では、冷気が通過する進路が急激に狭くなることによる縮流が発生し、コールドアイルCに流入する冷気の風速が速くなる。この動圧上昇に伴い、空気吹出口5に近いラック列6の端部付近ではラック3内の空気が誘引されるので、ホットアイルH側の高温空気がコールドアイルC側へ回り込みやすくなり、ホットスポットが形成される。しかしながら、縮流軽減装置8Sが設けられていると、図4(B)に示すように、冷気が通過する進路の横幅が徐々に狭く
なるため、縮流の発生が緩和され、ホットスポットが出現しなくなる。
【0025】
上記空調システム1であれば、各ラック列6の吸気面が空気吹出口5と直接連結されていないような施設であっても、各ラック3に冷気を効率よく供給し、ホットスポットの出現を抑制することができる。すなわち、熱気廻り込みの対策として給気面以外を囲う等の必要もなく、建設費も低減でき、保守作業の自由度も向上する。特に、コールドアイルCへ流入する冷気は、空気吹出口5とラック列6との位置関係によりその流入角度や速度は大きく変化する。また、ラック3に収容されているサーバ等の情報処理機器の負荷の変化や、空調機器のメンテナンスに伴う輪番停止などの影響によっても、その風量や風向が変化してコールドアイルCに流入する冷気の流入角度や速度が大きく変化する。しかしながら、上記空調システム1であれば、縮流軽減装置8Sが作用することにより、空気吹出口5の位置が変更されたり、冷気の風量、風向が変化した場合であっても、ホットスポットの出現を防ぐことができる。また、縮流軽減装置は既設の空調システムに取り付け容易であるため、新築のみならず、改修の場合にも容易に適用可能である。また、冷気をラックへ適正に供給可能となるため、冷却風量等を抑制して空調エネルギーを削減することが可能である。
【0026】
図5は、第二の実施形態に係る情報処理機器室の空調システム1’を設けたデータセンタ2の構成図である。なお、第一の実施形態に係る情報処理機器室の空調システム1と同様の構成については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。データセンタ2には、ラック3が列をなしてサーバールーム4に多数列並んでおり、また、サーバールーム4の側壁には、各ラック3へ冷気を供給する空気吹出口5が設けられている。
【0027】
図5に示すように、空気吹出口5から吹き出た冷気が通過するコールドアイルCの入り口部分には、整流装置7Lが設けられている。整流装置7Lは、平らな板であり、空気吹出口5から吹き出た冷気がコールドアイルCの長手方向と平行に、換言すると、冷気の気流がラック3の吸気面に沿うように、空気吹出口5から吹き出た冷気の気流を整える。また、整流装置7Lは床からラック列6の天面より高い位置に床で支持されて立設され、その一端辺はラック端部と略面一で、他端面は空気吹出口5側に位置する。なお、整流装置7Lは、板状の部材に限られるものでなく、例えば、多数の板を格子状に組み合わせたものであってもよい。
【0028】
図6は、空気吹出口5付近の上面図である。整流装置7Lは、図6に示されるように、コールドアイルCの入り口部分のほぼ中央に1つ設けられている。また、縮流軽減装置8Sは、図6に示されるように、コールドアイルCを挟む2つのラック列6の各側端部に設けられている。なお、図6では、整流装置7Lが一つ示されているが、整流装置の個数はこれに限定されるものでなく、適宜変更してもよい。また、図6では、コールドアイルCの一端側のみを図示しているが、コールドアイルCの他端側の壁にも空気吹出口5が設けられている場合には、他端側にも整流装置7Lや縮流軽減装置8Sを設けることが望ましい。
【0029】
このように構成される空調システム1’では、空気吹出口5から吹き出た冷気が、次のようにしてコールドアイルCに流入する。図7は、空気吹出口5から吹き出た冷気の流れを示した図である。空気吹出口5から吹き出た冷気は、図7に示すように、整流装置7Lによって整流され、冷気の気流がラック3の吸気面に沿う。また、整流装置7Lによって整流された冷気のうち、ラック列6の角の部分を流れる冷気は、縮流軽減装置8Sの周面に沿って徐々にその流れを変えていき、ラック列6の吸気面に縮流を発生させることなく、コールドアイルCに流入する。よって、ラック3にホットスポットが生じることもなく、各ラック3内に収容されている情報処理機器を適正に冷却することができる。
【0030】
図8は、第三の実施形態に係る情報処理機器室の空調システム1”を設けたデータセンタ2の構成図である。なお、第一の実施形態に係る情報処理機器室の空調システム1や第二の実施形態に係る情報処理機器室の空調システム1’と同様の構成については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。データセンタ2には、ラック3が列をなしてサーバールーム4に多数列並んでおり、また、サーバールーム4の側壁には、各ラック3へ冷気を供給する空気吹出口5が設けられている。また、空気吹出口5から吹き出た冷気が通過するコールドアイルCの入り口部分には、整流装置7Lが設けられている。
【0031】
また、空気吹出口5から吹き出た冷気が通過するサーバールーム4の天井とラック列6との隙間の入り口部分には、整流装置7Sが設けられている。整流装置7Sは、整流装置7Lと同様、平らな板であり、空気吹出口5から吹き出た冷気がコールドアイルCの長手方向と平行に、換言すると、冷気の気流がラック3の吸気面に沿うように、空気吹出口5から吹き出た冷気の気流を整える。整流装置7Sは、サーバールーム4の天井からラック3上端まで伸びる板であり、整流装置7Lに比べて短い。整流装置7S,7Lの支持は天井から取ってもよいが、必ずしも天井からラックまでを整流する必要はなく、空気吹出口5からラック上部に流れる気流を整えてラック上部の暖気回り込みを防止する目的からラック上端に接していれば天井との間が空いていてもよい。その場合は、ラック3の上端で金具等を介して支持をとる。なお、整流装置7Lや整流装置7Sは、板状の部材に限られるものでなく、例えば、多数の板を格子状に組み合わせたものであってもよい。
【0032】
また、コールドアイルCを囲むラック列6の上端部のうち、空気吹出口5から吹き出た冷気が通過するコールドアイルCの入り口部分を形成するラック列6の角の部分には、周面が上方へ向けて膨らむように半円柱状の部材がコールドアイルCの長手方向に沿って延在するように取り付けられている。この半円柱状の部材は、角柱状のスペーサを介してラック列6の上部に取り付けられている。半円柱状の部材および角柱状のスペーサによって構成されるこれらの部材を、以下、縮流軽減装置8Uという。縮流軽減装置8Uは、空気吹出口5から吹き出た冷気が、サーバールーム4の天井とラック列6の上端部との間にある空間から、幅の狭いコールドアイルCに流入する際に生ずる縮流を軽減する。なお、天井とラック列6の上端部との間を通る冷気もラック3の冷却ファンの吸引力により、ラック列6の上部に滞留することなくコールドアイルCに流入することができるようになっている。
【0033】
図9は、空気吹出口5付近の上面図である。整流装置7Lは、図9に示されるように、コールドアイルCの入り口部分のほぼ中央に1つ設けられている。一方、整流装置7Sは、整流装置7Lの両脇にそれぞれ2つずつ、ラック列6の端部に設けられている。また、縮流軽減装置8S,8Uは、図9に示されるように、コールドアイルCを挟む2つのラック列6の各側端部や各上端部に設けられている。
【0034】
なお、図9では、整流装置7L,7Sの間隔が均等に図示されているが、整流装置7L,7Sの間隔は不均等であってもよい。また、図9では、整流装置7Lが一つで、整流装置7Sが4つ示されているが、整流装置の個数はこれに限定されるものでなく、適宜変更してもよい。また、図9では、コールドアイルCの一端側のみを図示しているが、コールドアイルCの他端側の壁にも空気吹出口5が設けられている場合には、他端側にも整流装置7L,7Sや縮流軽減装置8S,8Uを設けることが望ましい。
【0035】
このように構成される空調システム1”では、空気吹出口5から吹き出た冷気が、次のようにしてコールドアイルCに流入する。図10は、空気吹出口5から吹き出た冷気の流れを示した図である。空気吹出口5から吹き出た冷気は、図10に示すように、整流装置7L,7Sによって整流され、冷気の気流がラック3の吸気面に沿う。また、整流装置7L,7Sによって整流された冷気のうち、ラック列6の角の部分を流れる冷気は、縮流軽
減装置8S,8Uの周面に沿って徐々にその流れを変えていき、ラック列6の吸気面に縮流を発生させることなく、コールドアイルCに流入する。よって、ラック3にホットスポットが生じることもなく、各ラック3内に収容されている情報処理機器を適正に冷却することができる。
【0036】
整流板の適用効果について検証する。図11は、整流装置7L,7Sの適用効果を示した図である。ラック列の吸気面が空気吹出口と直接連結されていない施設において、例えば、図11(A)に示すように、コールドアイルCの中心線が空気吹出口の吹出気流の中心から外れている場合、すなわち空気吹出口5から吹き出た冷気がコールドアイルCへ斜めに流入する場合、コールドアイルC内で偏流が生ずる。この結果、空気吹出口5に近いラック列6の端部付近では、空気吹出口5から吹き出た冷気によってラック3内の空気が誘引されるので、ホットアイルHの熱気がラック内を逆流し、ラック3の一部にホットスポットが形成される。しかしながら、整流装置7L,7Sが設けられていると、図11(B)に示すように、空気吹出口5から吹き出た冷気は、ラック3の吸気面に沿って流れる。このため、コールドアイルC内の偏流が生じなくなる。
【0037】
上記空調システム1”であれば、各ラック列6の吸気面が空気吹出口5と直接連結されていないような施設であっても、コールドアイルCへ冷気を適正に分配して各ラック3に冷気を効率よく供給し、ホットスポットの出現を抑制することができる。すなわち、熱気廻り込みの対策として給気面以外を囲う等の必要もなく、建設費も低減でき、保守作業の自由度も向上する。特に、コールドアイルCへ流入する冷気は、空気吹出口5とラック列6との位置関係によりその流入角度や速度は大きく変化する。また、ラック3に収容されているサーバ等の情報処理機器の負荷の変化や、空調機器のメンテナンスに伴う輪番停止などの影響によっても、その風量や風向が変化してコールドアイルCに流入する冷気の流入角度や速度が大きく変化する。しかしながら、上記空調システム1”であれば、整流装置7S,7Lおよび縮流軽減装置8S,8Uが組み合わさって有機的に作用することにより、空気吹出口5の位置が変更されたり、冷気の風量、風向が変化した場合であっても、コールドアイルCへ冷気を適正に分配して各ラック3に冷気を効率よく供給し、ホットスポットの出現を防ぐことができる。また、縮流軽減装置および整流板は既設の空調システムに取り付け容易であるため、新築のみならず、改修の場合にも容易に適用可能である。また、冷気をラックへ適正に供給可能となるため、冷却風量等を抑制して空調エネルギーを削減することが可能である。
【0038】
なお、縮流軽減装置の効果について解析を行ったので、解析結果を以下に示す。図12は、解析モデルを示した図である。本解析では、図12に示すように、2つのラック列6を配したサーバールーム4の壁面に空気吹出口5を一つ設け、空気吹出口5から吹き出た冷気が、2つのラック列6の間に形成されるコールドアイルCに流入する空調システム1をモデルにしている。
【0039】
また、本解析では、縮流を軽減する装置を3種類用意し、これらについて比較を行っている。図13は、縮流軽減装置の態様を示した図である。図13(A)に示す比較例1は、単なる板状の部材で構成した縮流軽減装置である。また、図13(B)に示す比較例2は、半円柱状の部材のみで構成した縮流軽減装置である。一方、図13(C)に示す実施例は、上述した実施形態に係る空調システム1の縮流軽減装置8Sに相当するものであり、半円柱状の部材と角柱状の部材とを組み合わせて構成した縮流軽減装置である。
【0040】
図14は、実施例および比較例1,2のそれぞれのラック吸込み最大温度を、ラック端部からの突き出し量Tを0.1m刻みで解析した場合の解析結果を示すグラフである。なお、本解析において、比較例2の半円柱状の部材の周面の曲率半径は、突き出し量Tを半分に割った値である。また、本解析において、比較例3の半円柱状の部材の周面の曲率半
径は、0.10mとしている。
【0041】
図14のグラフから明らかなように、ラック吸込み最大温度が最も低くなる場合の突き出し量Tの大きさは、比較例1では0.4mであり、比較例2では0.3mであり、実施例では0.2mである。この結果から、実施例が、比較例1,2に比べてラック端部からの突き出し量を小さくすることができることが判る。縮流軽減装置のラック端部からの突き出し量が大きいと、人が移動する際の障害となり得るが、実施例であれば、比較例1,2に比べてコンパクト化を図ることが可能である。
【0042】
なお、上記実施形態に係る空調システム1は、次のように変形してもよい。以下、空調システム1の各変形例について説明する。なお、下記に示す各変形例は、上記実施形態に係る空調システム1を変形したものであるため、以下、実施形態に係る空調システム1との相違点についてのみ説明し、その他の構成については同様であるものとする。
【0043】
図15は、第一変形例に係る空調システム1”を設けたデータセンタ2の構成図である。第一変形例に係る空調システム1”は、空気吹出口5が壁のみならず、天井にも設けられている。そして、冷気が壁の空気吹出口5と天井の空気吹出口5からコールドアイルCへ流入する。空気吹出口5がこのように設けられていても、縮流軽減装置8S,8Uや整流装置7L,7Sが有機的に作用することにより、ホットスポットの発生が防止される。なお、天井に設けられている空気吹出口5がコールドアイルCの直上ではなく、異なる位置にある場合、例えば、コールドアイルCの上側に、コールドアイルCの長手方向に沿って延在する整流板を設けてもよい。このような整流板を設ければ、壁の空気吹出口5から吹き出る冷気を整流する整流装置7Lと同様、天井の空気吹出口5から吹き出る冷気が整流されるので、ホットスポットの発生を防止することができる。
【0044】
図16は、第二変形例に係る空調システム1”を設けたデータセンタ2の構成図である。第二変形例に係る空調システム1”は、空気吹出口5が壁や天井のみならず、床にも設けられている。そして、冷気が壁の空気吹出口5と天井の空気吹出口5と床の空気吹出口5からコールドアイルCへ流入する。空気吹出口5がこのように設けられていても、縮流軽減装置8S,8Uや整流装置7L,7Sが有機的に作用することにより、ホットスポットの発生が防止される。
【0045】
図17は、第三変形例に係る空調システム1”を設けたデータセンタ2の構成図である。第三変形例に係る空調システム1”は、空気吹出口5が壁、天井および床に設けられている他、ラック3が床から離間するように設置されている。ラック3は、例えば、脚が設けられていることにより床から離間していてもよいし、通気性の架台の上に設置されることで床から離間していてもよいし、床と天井との間に配した支柱に支持されることで床から離間していてもよい。
【0046】
第三変形例に係る空調システム1”は、整流装置7Sが、天井とラック列6との隙間の入り口部分のみならず、床とラック列6との隙間の入り口部分にも設けられている。また、第四変形例に係る空調システム1”は、ラック列6の側端部に設けた縮流軽減装置8Sや上端部に設けた縮流軽減装置8Uのみならず、コールドアイルCを囲むラック列6の下端部にも、周面が下方へ向けて膨らむ縮流軽減装置8Bが設けられている。ラック列6がこのように床から離間することにより、ラック列6の下を冷気が通過する場合であっても、縮流軽減装置8S,8U,8Bや整流装置7L,7Sが有機的に作用することにより、ホットスポットの発生が防止される。
【0047】
なお、上記各変形例において、空気吹出口5を天井に設ける場合は、天井を二重構造とし、二重構造の天井内部に設けた空調ダクトを通った冷気が空気吹出口から吹き出るよう
にしてもよいし、あるいは、一重構造の天井に吊るした空調ダクトを通った冷気が、天井から吊り下げられた空気吹出口から吹き出るようにしてもよい。また、空気吹出口5を床に設ける場合は、床を二重構造とし、二重構造の床内部に設けた空調ダクトを通った冷気が空気吹出口から吹き出るようにしてもよいし、あるいは、二重構造の床内部に送り込まれた冷気が、床に設けた空気吹出口から吹き出るようにしてもよい。
【0048】
また、縮流軽減装置8Uは、必ずしもラック列の長手方向全体に渡って取り付けられている必要はなく、例えば情報処理機器が収容されていないラックの上端部などに途切れている箇所があってもよい。
【符号の説明】
【0049】
1,1’,1”・・・空調システム;2・・・データセンタ;3・・・ラック;4・・・サーバールーム;5・・・空気吹出口;6・・・ラック列;7L,7S・・・整流装置;8S,8U,8B・・・縮流軽減装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理機器を収容したラックが整列する情報処理機器室の空調システムであって、
前記情報処理機器室内において前記ラックへ向けて開口する、前記情報処理機器を冷却するための冷気を前記情報処理機器室内へ吹き出す空気吹出口と、
前記冷気を前記ラック内に吸引するために前記ラックに設けられている吸気面の縁のうち前記空気吹出口から吹き出た前記冷気が通過する部位の少なくとも一部分から、周面が吸気面の延長方向であって前記空気吹出口の方へ向けて膨らむように半円柱状の部材を前記ラックから突出させた縮流軽減装置と、を備える、
情報処理機器室の空調システム。
【請求項2】
前記縮流軽減装置は、前記半円柱状の部材と前記ラックとの間に角柱状の部材を挟むようにして前記半円柱状の部材を前記ラックから突出させたものである、
請求項1に記載の情報処理機器室の空調システム。
【請求項3】
前記空気吹出口から吹き出た冷気の気流が前記ラックの吸気面に沿うように、前記空気吹出口から前記ラックへ流れる前記冷気を整流する整流装置を更に備える、
請求項1または2に記載の情報処理機器室の空調システム。
【請求項1】
情報処理機器を収容したラックが整列する情報処理機器室の空調システムであって、
前記情報処理機器室内において前記ラックへ向けて開口する、前記情報処理機器を冷却するための冷気を前記情報処理機器室内へ吹き出す空気吹出口と、
前記冷気を前記ラック内に吸引するために前記ラックに設けられている吸気面の縁のうち前記空気吹出口から吹き出た前記冷気が通過する部位の少なくとも一部分から、周面が吸気面の延長方向であって前記空気吹出口の方へ向けて膨らむように半円柱状の部材を前記ラックから突出させた縮流軽減装置と、を備える、
情報処理機器室の空調システム。
【請求項2】
前記縮流軽減装置は、前記半円柱状の部材と前記ラックとの間に角柱状の部材を挟むようにして前記半円柱状の部材を前記ラックから突出させたものである、
請求項1に記載の情報処理機器室の空調システム。
【請求項3】
前記空気吹出口から吹き出た冷気の気流が前記ラックの吸気面に沿うように、前記空気吹出口から前記ラックへ流れる前記冷気を整流する整流装置を更に備える、
請求項1または2に記載の情報処理機器室の空調システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2013−104627(P2013−104627A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249392(P2011−249392)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000169499)高砂熱学工業株式会社 (287)
【出願人】(509086464)株式会社関電エネルギーソリューション (9)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000169499)高砂熱学工業株式会社 (287)
【出願人】(509086464)株式会社関電エネルギーソリューション (9)
【Fターム(参考)】
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