説明

情報処理端末、モジュールアップデート方法およびプログラム

【課題】モジュールアップデート時のデータ消失を回避できる、信頼性の高い、情報処理端末を提供する。
【解決手段】POS端末20は、プログラムを実行する制御部21を備え、制御部21は、モジュール単位でアップデートを行うモジュールアップデートツールおよび特定のアプリケーションをOSの起動時に実行するための動作設定がなされる。制御部21は、サーバ10から配信される設定変更ツールを、上記モジュールアップデートツールの機能を通じて実行する。この実行された設定変更ツールに従って、制御部21は、上記モジュールアップデートツールによるモジュールアップデートの処理を行い、該処理が終了した後に、上記特定のアプリケーションを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理端末、例えば、コンビニエンスストアーやショッピングセンター等の販売店に設置されるPOS(Point Of Sales)端末のモジュールアップデート技術に関し、特に、OS(Operating system)再起動を伴うモジュールアップデート技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、OS再起動を伴うモジュールアップデートの関連技術として、ソフトウェア更新システムが記載されている。このソフトウェア更新システムは、サーバと、このサーバに通信回線を介して接続される端末装置とを有する。端末装置は、メインプログラムおよびモジュールが格納された記憶手段を備える。
【0003】
新たなバージョンのモジュールがサーバから端末装置に配信される。端末装置では、記憶手段に格納されているモジュールをバックアップ手段に格納した上で、そのモジュールを新たなバージョンのモジュールにアップデートする。アップデート後、端末装置は再起動される。アップデートが正常に終了していなかった場合は、バックアップ手段に格納したモジュールを記憶手段に書き戻す。
【特許文献1】特開2005−56319号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のもののような、OS再起動を伴うモジュールアップデートにおいては、一般に、OSを再起動させる際に、アプリケーションが実行されている場合、そのアプリケーションは強制的に終了される。このため、実行中のアプリケーションにて参照されているデータが、強制終了により消失する場合がある。
【0005】
例えば、OSとして「Windows」(マイクロソフト社の登録商標)を用いるPOS端末では、スタートアップのフォルダに登録されたPOSアプリケーションがOS起動時に自動的に実行される。POSアプリケーションが実行中に、モジュールのアップデートが行われてOSが再起動されると、その実行中のPOSアプリケーションは強制的に終了させられる。この結果、強制終了時にPOSアプリケーションが参照していたデータが消失する場合がある。
【0006】
本発明の目的は、上記のモジュールアップデート時のデータ消失の問題を解決し、信頼性の高い、情報処理端末、モジュールアップデート方法、モジュールアップデートシステムおよびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の情報処理端末は、プログラムを実行する実行部を備え、該実行部は、前記プログラムとしての、モジュール単位でアップデートを行うモジュールアップデートツールおよび特定のアプリケーションを、OSの起動時に実行するための動作設定がなされる情報処理端末であって、
外部サーバから配信される設定変更ツールが格納される格納部を有し、
前記実行部は、前記モジュールアップデートツールの機能を通じて、前記格納部に格納された前記設定変更ツールを実行し、該実行された設定変更ツールに従って、前記モジュールアップデートツールによるモジュールアップデートの処理を行い、該処理が終了した後に、前記特定のアプリケーションを実行する。
【0008】
本発明のモジュールアップデート方法は、プログラムを実行する実行部を備え、該実行部は、前記プログラムとしての、モジュール単位でアップデートを行うモジュールアップデートツールおよび特定のアプリケーションを、OSの起動時に実行するための動作設定がなされる情報処理端末のモジュールアップデート方法であって、
前記実行部が、外部サーバから設定変更ツールを受信するステップと、
前記設定変更ツールが、前記モジュールアップデートツールによるモジュールアップデートの処理が実行され、該処理が終了した後に、前記特定のアプリケーションが実行されるように、前記実行部の動作設定を変更するステップを含む。
【0009】
本発明のモジュールアップデートシステムは、
プログラムを実行する実行部を備え、該実行部は、前記プログラムとしての、モジュール単位でアップデートを行うモジュールアップデートツールおよび特定のアプリケーションを、OSの起動時に実行するための動作設定がなされる情報処理端末と、
前記情報処理端末がネットワークを介して接続されるサーバを有し、
前記実行部は、前記サーバから設定変更ツールを受信し、前記モジュールアップデートツールの機能を通じて、受信した設定変更ツールを実行し、該実行された設定変更ツールに従って、前記モジュールアップデートツールによるモジュールアップデートの処理を行い、該処理が終了した後に、前記特定のアプリケーションを実行する。
【0010】
本発明のプログラムは、
プログラムを実行する実行部を備え、該実行部は、前記プログラムとしての、モジュール単位でアップデートを行うモジュールアップデートツールおよび特定のアプリケーションを、OSの起動時に実行するための動作設定がなされる情報処理端末のプログラムであって、
外部サーバから配信された設定変更ツールを、前記モジュールアップデートツールの機能を通じて実行する処理と、
実行された前記設定変更ツールに従って、前記モジュールアップデートツールによるモジュールアップデートの処理を行い、該処理が終了した後に、前記特定のアプリケーションを実行する処理を、前記実行部であるコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、モジュールアップデートの処理を実行中は、特定のアプリケーション(POSアプリケーション)は実行されないので、モジュールのアップデート後の再起動によって特定のアプリケーション(POSアプリケーション)が参照しているデータが消失することはない。したがって、信頼性の高い情報処理端末(POS端末)を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態であるPOSシステムの構成を示すブロック図である。
【0014】
図1を参照すると、POSシステムは、サーバ10と、このサーバ10とネットワーク30を介して接続され、モジュール単位での更新が行われるPOS端末20とを有する。サーバ10とPOS端末20は、相互通信可能である。ネットワーク30は、公衆回線等の通信ネットワークである。
【0015】
サーバ10とPOS端末20は、通信機能を備えた、プログラムにより動作するコンピュータシステムである。POS端末20は、店舗に設置される。図1中、POS端末20は1台しか示されていないが、通常は、複数のPOS端末20がサーバ10と接続される。
【0016】
サーバ10は、制御部11、表示部12、入力部13、通信部14および記憶部15を有する。表示部12は、液晶ディスプレイに代表される表示装置である。入力部13は、マウスやキーボードなどの入力装置である。通信部14は、モデム等の通信装置である。
【0017】
記憶部15には、サーバ10を動作させるのに必要な各種プログラムやデータが格納される。記憶部15は、POS端末20のアップデートに必要な設定変更ツール152が格納される配信用フォルダ151を有する。
【0018】
設定変更ツール152は、プログラム(例えば、スクリプトファイル等の集合)であって、スタートアップ設定変更機能部153および配信設定変更機能部154を含む。スタートアップ設定変更機能部153は、POS端末のスタートアップの設定を変更するためのプログラムであって、チェンジスタートプログラムとスタートアッププログラムを含む。配信設定変更機能部154は、OSによって管理されるPOS端末20の設定情報、すなわち、POS端末20における再起動が必要となる設定情報(コンピュータ名、ドメイン名、ワークグループ名、店コード、lmhosts等)を変更する。配信設定変更機能部154は、設定情報の変更後に、POS端末20のOSを再起動させる。
【0019】
制御部11は、記憶部15に格納されたプログラムに従ってサーバ10の種々の動作を実現する。制御部11は、入力部13からの入力を受け付けて、サーバ10の各部の動作を制御する。POSシステムの管理者は、入力部13における入力操作を通じて、必要なデータの入力や設定を行うことができる。これにより、POSシステムの管理者は、例えば設定変更ツール152を作成することができる。制御部11は、POS端末20の起動時に、配信用フォルダ151から設定変更ツール152を読み出し、その読み出した設定変更ツール152を、通信部14からPOS端末20へ配信(リモート配信)する。このリモート配信において、制御部11は、POS端末20のモジュールの更新に必要性を判断し、必要な場合にのみ、設定変更ツール152を配信する。
【0020】
POS端末20は、制御部21、表示部22、入力部23、通信部24、記憶部25およびレジストリ26を有する。表示部22は、液晶ディスプレイに代表される表示装置である。入力部23は、マウスやキーボードなどの入力装置である。通信部24は、モデム等の通信装置である。
【0021】
記憶部25には、POS端末20を動作させるのに必要な各種プログラムやデータが格納される。記憶部25は、サーバ10から配信された設定変更ツール152が格納される設定変更ツール格納部251、POS端末20の設定情報が格納される設定情報格納部252、OS起動時に自動的に実行されるアプリケーション(プログラム)のショートカットが登録されるスタートアップフォルダ253、およびアプリケーションやプログラムが格納されるアプリケーション/プログラム格納部254を有する。ショートカットは、アプリケーション/プログラム格納部254に格納されたアプリケーションやプログラムを実行可能なファイルへのリンク情報を示す。レジストリ26は、モジュールアップデートツールやPOSツールを実行するためのRUNキーが登録されるRUNレジストリである。
【0022】
プログラム実行部である制御部21は、記憶部25に格納されたプログラムに従ってPOS端末20の種々の動作を実現する。制御部21は、入力部13からの入力を受け付けて、POS端末20の各部の動作を制御する。また、制御部21は、OSの起動時に、スタートアップフォルダ253に登録されたショートカットを通じて特定のアプリケーション(POSアプリケーションを含む)やプログラムを実行するとともに、レジストリ26に登録されているRUNキーに従って対応するツールのプログラムを実行する。POSアプリケーションは、商品に関する情報管理(売上げ管理、在庫管理、発注管理等)やレシート発行を行うためのものである。
【0023】
本実施形態のPOSシステムを構成するPOS端末20では、OS起動時に、POSアプリケーションが実行されるとともに、レジストリ26に登録されているモジュールアップデートツールやPOSツールが実行される。POSアプリケーションが、サーバ10から設定変更ツール152を取得する。そして、設定変更ツール152によるモジュールの自動更新処理が実行される。
【0024】
図2に、設定変更ツール152がサーバ10の配信用フォルダ151にセットされてからPOS端末10のモジュールアップデートが行われるまでの一連の処理の流れを示す。図2に示した例では、設定変更ツール152がセットされた日を一日目として処理の流れが日毎に説明されている。
【0025】
まず、一日目の処理を説明する。
【0026】
サーバ10において、POSシステム管理者は、変更設定ツール152を配信用フォルダ151にセットする(ステップS100)。
【0027】
一方、POS端末20では、業務開始時にOSが起動される(ステップS200)。OSが起動されると、スタートアップフォルダ253に登録されたショートカットを通じてPOSアプリケーションが実行されるとともに、レジストリ26に登録されているRUNキーに従ってモジュールアップデートツールやPOSツールが実行される(ステップS201)。次に、POSアプリケーション、モジュールアップデートツールおよびPOSツールによる通常運用を経た後、POS端末20は定常状態となる(ステップS202)。そして、業務終了後、POS端末20の電源が切られる(ステップS203)。
【0028】
なお、ステップS200のOS起動時において、サーバ10側では、変更設定ツール152は配信用フォルダ151にセットされていないものと仮定する。したがって、ステップS201で実行されたPOSアプリケーションによる変更設定ツール152の取得の処理は行われない。
【0029】
次に、二日目の処理を説明する。
【0030】
POS端末20において、業務開始時にOSが起動される(ステップS204)。OSが起動されると、スタートアップフォルダ253に登録されたショートカットを通じてPOSアプリケーションが実行されるとともに、レジストリ26に登録されているRUNキーに従ってモジュールアップデートツールやPOSツールが実行される(ステップS205)。
【0031】
サーバ10では、制御部11が、POS端末20のPOSアプリケーションを通じて、POS端末20のモジュールのアップデートが必要であるか否かを判定する。この判定では、例えば、配信用フォルダ151にセットされた変更設定ツール152の更新対象であるモジュールのバーション情報とPOS端末20のモジュールのバージョン情報を比較する。POS端末20のモジュールのバージョン情報が古いバーションである場合に、制御部11は、配信用フォルダ151にセットされた変更設定ツール152をPOS端末20に配信する(ステップS101)。
【0032】
POS端末20では、ステップS205で実行されたPOSアプリケーションが、サーバ10から配信された変更設定ツール152を設定変更ツール格納部251に格納する(ステップS206)。次に、POSアプリケーション、モジュールアップデートツールおよびPOSツールによる通常運用を経た後、POS端末20は定常状態となる(ステップS207)。そして、業務終了後、POS端末20の電源が切られる(ステップS208)。
【0033】
次に、三日目の処理について説明する。
【0034】
POS端末20において、業務開始時にOSが起動される(ステップS209)。OSが起動されると、スタートアップフォルダ253に登録されたショートカットを通じてPOSアプリケーションが実行されるとともに、レジストリ26に登録されているRUNキーに従ってモジュールアップデートツールやPOSツールが実行される(ステップS210)。
【0035】
次に、ステップS210で実行されたモジュールアップデートツールが、設定変更ツール格納部251に格納された変更設定ツール152に含まれているスタートアップ設定変更機能部153のチェンジスタートプログラムを実行する。そして、チェンジスタートプログラムが、スタートアップの設定を変更する(ステップS211)。
【0036】
ここで、チェンジスタートプログラムにより行われるスタートアップ設定変更処理について具体的に説明する。
【0037】
この設定変更処理では、まず、POSアプリケーションへのショートカットをスタートアップフォルダ253から削除するとともに、モジュールアップデートツールのRUNキーをレジストリ26から削除する。次に、ステップS206で設定変更ツール格納部251に格納された変更設定ツール152に含まれているスタートアップ設定変更機能部153のスタートアッププログラムのコピーをアプリケーション/プログラム格納部254に格納する。そして、そのスタートアッププログラム(コピー)へのショートカットをスタートアップフォルダ253に登録する。なお、図2において、このスタートアッププログラム(コピー)によるスタートアップ起動が「スタートアップ起動(2)」として示されている。一日目〜三日目におけるOS起動時に実行された「スタートアップ起動(1)」は、予めインストールされているスタートアッププログラム(これは、スタートアッププログラム(コピー)とは異なる)により実行されたものである。
【0038】
上記の設定変更処理の後、POSアプリケーションおよびPOSツールによる通常運用(定常状態)が行われる(ステップS212)。そして、業務終了後、POS端末20の電源が切られる(ステップS213)。
【0039】
最後に、四日目の処理について説明する。
【0040】
POS端末20において、業務開始時にOSが起動される(ステップS214)。OSが起動されると、スタートアップフォルダ253に登録されたショートカットを通じてスタートアッププログラム(コピー)が実行される。制御部21は、そのスタートアッププログラム(コピー)に従い、モジュールアップデートツールの実行ファイルを直接実行する(ステップS215)。
【0041】
次に、モジュールアップデートツールが、変更設定ツール格納部251に格納されている変更設定ツール152の配信設定変更機能部154を実行する。次に、配信設定変更機能部154が、モジュールアップデートに必要な情報、すなわち、OSによって管理されるPOS端末20の設定情報(コンピュータ名、ドメイン名、ワークグループ名、店コード、lmhosts等)を変更する。そして、配信設定変更機能部154が、スタートアップの設定を、ステップS211でのチェンジスタートプログラムによるスタートアップの設定変更前の状態に戻し、その後、OSを再起動する(ステップS216)。
【0042】
ここで、スタートアップの設定を変更前の状態に戻す処理について簡単に説明する。この処理では、スタートアッププログラム(コピー)へのショートカットをスタートアップフォルダ253から削除し、POSアプリケーションへのショートカットをスタートアップフォルダ253に登録する。そして、モジュールアップデートツールのRUNキーをレジストリ26に登録する。POSアプリケーションへのショートカットおよびモジュールアップデートツールのRUNキーは、削除の際に、制御部が、記憶部にバックアップとして格納しておいてもよい。
【0043】
上記のOSの再起動後、スタートアップフォルダ253に登録されたショートカットを通じてPOSアプリケーションが実行されるとともに、レジストリ26に登録されているRUNキーに従ってモジュールアップデートツールやPOSツールが実行される(ステップS217)。モジュールアップデートツールは、設定変更ツール152の実行ログを調べ、設定変更ツール152によるモジュール更新処理が終了したか否かを調べる。モジュール更新処理が終了していると判定した場合は、モジュールアップデートツールは、設定変更ツール152を削除する。この時点で、モジュール更新処理は終了しているので、モジュールアップデートツールは、設定変更ツール152を削除する。
【0044】
次に、POSアプリケーション、モジュールアップデートツールおよびPOSツールによる通常運用を経た後、POS端末20は定常状態となる(ステップS218)。そして、業務終了後、POS端末20の電源が切られる(ステップS219)。
【0045】
以上の処理によれば、モジュールのアップデートの処理を実行中は、POSアプリケーションが実行されることはないので、モジュールのアップデート後の再起動によってPOSアプリケーションが参照しているデータが消失する、といった問題は生じない。
【0046】
図3に、図2に示したモジュールアップデート処理の適用前と適用後の、POSアプリケーション、モジュールアップデートツールおよびPOSツールによるプロセスの実行工程を模式的に示す。
【0047】
図3を参照すると、適用前のOS起動時の自動起動プロセスでは、スタートアップ起動により、POSアプリケーションによるプロセスが実行され、RUNレジストリ起動により、モジュールアップデートツール「UPDATE」によるプロセスおよびPOSツールによるプロセスが実行される。モジュールアップデートツール「UPDATE」によるプロセスにおいて、設定変更ツールによる再起動が行われ、設定情報の変更が反映される。この場合は、POSアプリケーションの実行中に再起動が行われ、POSアプリケーションが強制終了される。その結果、実行中のPOSアプリケーションが参照しているデータが消失する場合がある。
【0048】
一方、適用後のOS起動時の自動起動プロセスでは、スタートアップ起動により、モジュールアップデートツール「UPDATE」によるプロセスが実行され、RUNレジストリ起動により、POSツールによるプロセスが実行される。モジュールアップデートツール「UPDATE」によるプロセスにおいて、設定変更ツールによる再起動が行われ、設定情報の変更が反映される。その後、POSアプリケーションによるプロセスが実行される。このように、「UPDATE」プロセスによる更新処理が終了するまで、スタートアップ起動によるPOSアプリケーションのプロセスの実行を待機させる同期実行が行われる。この同期実行によれば、POSアプリケーションの実行中に再起動が行われることはない。よって、POSアプリケーションが参照しているデータが消失することはない。なお、更新処理後のスタートアップ起動によるPOSアプリケーションのプロセスの実行は、非同期実行であり、スタートアッププログラムが終了しても、POSアプリケーションは起動状態を維持する。
【0049】
また、本実施形態のPOSシステムによれば、強制終了によるデータ消失の抑制に加えて、以下のような効果を得ることもできる。
【0050】
配信設定変更機能部154が、スタートアップ設定変更機能部153によって変更されたスターアップの設定内容を元の状態に戻した上で、OSの再起動を行うので、各店舗に設置されたPOS端末間のスタートアップによる起動方式の整合性をとることができる。なお、スターアップの設定内容を元の状態に戻す処理を行わない場合は、各店舗に設置されたPOS端末間のスタートアップによる起動方式が、適用前と適用後で異なることになる。
【0051】
また、モジュールのアップデートは、自動的に行われるので、POS端末の使用者による、モジュールのアップデートのための入力操作は不要である。
【0052】
さらに、POS端末側でのモジュールのアップデートの所要日数は3日(図2の二日目から四日目)であるが、その間も、POSアプリケーションやPOSツールによる通常運用が可能である。したがって、アップデートのためにPOS端末の運用を停止する必要はない。
【0053】
また、既存のPOSシステムにおいては、アップデートにより変更された情報を有効にするために、起動中のPOSアプリケーションに対して、再起動をリモートで行う。このリモートによる再起動は、遠隔GUI(Graphical User Interface)操作ツールを用いて手動で行うのが一般的である。POS端末は多数あるため、そのような遠隔GUI操作ツールを用いた手動操作をPOS端末毎に行うことは、煩わしく、また多くの労力を費やすことになる。本実施形態のPOSシステムによれば、設定変更ツールにより自動的に再起動が行われるので、POSシステムの管理者への負担を軽減することができる。
【0054】
また、チェンジスタートプログラムにより行われる処理は、POSアプリケーションだけでなく、他のプログラムを対象とすることもできる。この場合は、POSアプリケーションを他のプログラムに置き換えて説明することができる。
【0055】
また、配信設定変更機能部は、モジュールアップデートツールに係る処理を実行させるものに限定されない。配信設定変更機能部は、他のツールに係る処理を実行させるものであってもよい。
【0056】
(他の実施形態)
POS端末では、他のPOSユーティリティソフトウェア(プログラム)のRUNキーもRUNレジストリに登録されているので、OSの起動時は、POSアプリケーションだけでなく、他のPOSユーティリティソフトウェアも実行される。この場合、POSユーティリティソフトウェア実行中にOSの再起動が発生すると、実行中のPOSユーティリティソフトウェアにより参照されているデータが消失する場合がある。他のPOSユーティリティソフトウェアによるプロセスは、図3に示したPOSツールプロセスに対応する。
【0057】
本他の実施形態のPOSシステムも、基本的には、前述の実施形態のPOSシステムと同様の構成を有する。本他の実施形態のPOSシステムでは、プログラム実行部である制御部21が、CPUを含み、プログラム(POSアプリケーションやPOSユーティリティソフトウェアなどを含む)のうちの実行中のプログラムがCPUを占有している時間の割合(CPU使用率)を監視する。制御部21は、CPU使用率が閾値未満の場合に、POS端末20が定常状態である(各プログラムによるプロセスが定常状態である)と判定する。閾値は、各プログラム(POSアプリケーションやPOSユーティリティソフトウェアなどを含む)が起動中か定常状態であるかの判定を行うことができる値、例えば5%である。
【0058】
制御部21は、CPU使用率が閾値未満の場合に、モジュールアップデートツールの機能を通じて、設定変更ツール格納部251に格納された変更設定ツール152に含まれているスタートアップ設定変更機能部153のチェンジスタートプログラムを実行する。これ以降の処理は、前述の実施形態における処理と同じである。
【0059】
上記の処理によれば、各プログラム(POSアプリケーションやPOSユーティリティソフトウェアなどを含む)が定常状態である場合に、設定変更ツール152によるモジュールアップデートの処理が行われる。POSユーティリティソフトウェアの起動中は、CPU使用率が閾値を超えるので、設定変更ツール152によるモジュールアップデートの処理は行われない。したがって、POSユーティリティソフトウェアの起動中に、OSの再起動が実行されることはない。
【0060】
また、本他の実施形態において、POSユーティリティソフトウェアへのショートカットを特定のフォルダ(図1のスタートアップフォルダ253)に登録してもよい。この場合、POSユーティリティソフトウェアのRUNキーはRUNレジストリから削除する。
【0061】
上記の場合、制御部21は、設定変更ツール152に従って、次のように動作する。まず、POSアプリケーションおよびPOSユーティリティソフトウェアへのショートカットをスタートアップフォルダ253から削除するとともにレジストリ26からモジュールアップデートツールのRUNキーを削除する。その後、OSが起動されると、モジュールアップデートツールのプログラムが格納された実行ファイルを直接実行し、該実行したモジュールアップデートツールによりモジュールアップデートの処理を実行させる。モジュールアップデートの処理後に、モジュールアップデートツールのキーをレジストリ26に再登録するとともにPOSアプリケーションおよびPOSユーティリティソフトウェアへのショートカットをスタートアップフォルダ253に再登録し、その後、OSを再起動させる。
【0062】
なお、上記の動作によれば、図3に示した適用後の例において、スタートアップ起動により、モジュールアップデートツールによるプロセス、設定変更ツール152による再起動、POSアプリケーションによるプロセス、POSユーティリティソフトウェアによるプロセスといった処理がこの順番で実行される。ここで、POSアプリケーションおよびPOSユーティリティソフトウェアは非同期実行である。
【0063】
以上説明した各実施形態のPOSシステムは、本発明の一例である。本発明は、各実施形態で説明した構成に限定されるものではない。本発明の構成および動作は、リモート配信された設定変更ツールに従い、モジュールアップデートツールによるモジュールアップデートの処理の実行後に、特定のアプリケーション(POSアプリケーション)が実行されるという、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更することができる。
【0064】
本発明の一態様によれば、プログラムを実行する実行部を備え、該実行部は、上記プログラムとしての、モジュール単位でアップデートを行うモジュールアップデートツールおよび特定のアプリケーションを、OSの起動時に実行するための動作設定がなされる情報処理端末において、外部サーバから配信される設定変更ツールが格納される格納部を有し、上記実行部が、上記モジュールアップデートツールの機能を通じて上記格納部に格納された上記設定変更ツールを実行し、該実行された設定変更ツールに従って、上記モジュールアップデートツールによるモジュールアップデートの処理を行い、該処理が終了した後に、上記特定のアプリケーションを実行する。ここで、特定のアプリケーションは、POSアプリケーションに対応する。実行部および格納部は、図1に示した制御部21および設定変更ツール格納部251に対応する。
【0065】
本発明は、POS端末の他、OS再起動を伴うプログラム更新処理が実行される情報処理端末全般に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の一実施形態であるPOSシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示すPOSシステムのモジュールアップデート処理を説明するための図である。
【図3】図2に示すモジュールアップデート処理の適用前と適用後におけるPOS端末の状態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0067】
10 サーバ
11、21 制御部
12、22 表示部
13、33 入力部
14、24 通信部
15、25 記憶部
20 POS端末
30 ネットワーク
151 配信用フォルダ
152 設定変更ツール
153 スタートアップ設定変更機能部
154 配信設定変更機能部
251 設定変更ツール格納部
252 設定情報格納部
253 スタートアップフォルダ
254 アプリケーション/プログラム格納部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プログラムを実行する実行部を備え、該実行部は、前記プログラムとしての、モジュール単位でアップデートを行うモジュールアップデートツールおよび特定のアプリケーションを、OSの起動時に実行するための動作設定がなされる情報処理端末であって、
外部サーバから配信される設定変更ツールが格納される格納部を有し、
前記実行部は、前記モジュールアップデートツールの機能を通じて、前記格納部に格納された前記設定変更ツールを実行し、該実行された設定変更ツールに従って、前記モジュールアップデートツールによるモジュールアップデートの処理を行い、該処理が終了した後に、前記特定のアプリケーションを実行する、情報処理端末。
【請求項2】
前記特定のアプリケーションへのショートカットが登録される特定のフォルダと、
前記モジュールアップデートツールを実行するためのキーが登録されるレジストリを、有し、
前記実行部は、前記OSの起動時に、前記特定のフォルダに登録されたショートカットを通じて前記特定のアプリケーションを実行するとともに前記レジストリに登録したキーに従って前記モジュールアップデートツールを実行し、
実行した前記モジュールアップデートツールの機能により前記設定変更ツールが実行されると、該実行された設定変更ツールに従って、前記実行部が、
前記特定のアプリケーションへのショートカットを前記特定のフォルダから削除するとともに前記レジストリから前記モジュールアップデートツールのキーを削除し、その後、前記OSが起動されると、前記モジュールアップデートツールのプログラムが格納された実行ファイルを直接実行し、該実行したモジュールアップデートツールにより前記モジュールアップデートの処理を実行させ、
前記モジュールアップデートの処理後に、前記モジュールアップデートツールのキーを前記レジストリに再登録するとともに前記特定のアプリケーションへのショートカットを前記特定のフォルダに再登録し、その後、前記OSを再起動させる、請求項1に記載の情報処理端末。
【請求項3】
前記プログラムは、前記特定のアプリケーションとは異なるユーティリティソフトウェアを含み、
前記実行部は、CPUを含み、前記プログラムのうちの実行中のプログラムが前記CPUを占有している時間の割合を監視するとともに、該時間の割合が閾値未満である場合に、前記設定変更ツールを実行する、請求項1に記載の情報処理端末。
【請求項4】
前記特定のアプリケーションおよびユーティリティソフトウェアへのショートカットが登録される特定のフォルダと、
前記モジュールアップデートツールを実行するためのキーが登録されるレジストリを、有し、
前記実行部は、前記OSの起動時に、前記特定のフォルダに登録されたショートカットを通じて前記特定のアプリケーションおよびユーティリティソフトウェアを実行するとともに前記レジストリに登録したキーに従って前記モジュールアップデートツールを実行し、
実行した前記モジュールアップデートツールの機能により前記設定変更ツールが実行されると、該実行された設定変更ツールに従って、前記実行部が、
前記特定のアプリケーションおよびユーティリティソフトウェアへのショートカットを前記特定のフォルダから削除するとともに前記レジストリから前記モジュールアップデートツールのキーを削除し、その後、前記OSが起動されると、前記モジュールアップデートツールのプログラムが格納された実行ファイルを直接実行し、該実行したモジュールアップデートツールにより前記モジュールアップデートの処理を実行させ、
前記モジュールアップデートの処理後に、前記モジュールアップデートツールのキーを前記レジストリに再登録するとともに前記特定のアプリケーションおよびユーティリティソフトウェアへのショートカットを前記特定のフォルダに再登録し、その後、前記OSを再起動させる、請求項3に記載の情報処理端末。
【請求項5】
プログラムを実行する実行部を備え、該実行部は、前記プログラムとしての、モジュール単位でアップデートを行うモジュールアップデートツールおよび特定のアプリケーションを、OSの起動時に実行するための動作設定がなされる情報処理端末のモジュールアップデート方法であって、
前記実行部が、外部サーバから設定変更ツールを受信するステップと、
前記設定変更ツールが、前記モジュールアップデートツールによるモジュールアップデートの処理が実行され、該処理が終了した後に、前記特定のアプリケーションが実行されるように、前記実行部の動作設定を変更するステップを含む、モジュールアップデート方法。
【請求項6】
プログラムを実行する実行部を備え、該実行部は、前記プログラムとしての、モジュール単位でアップデートを行うモジュールアップデートツールおよび特定のアプリケーションを、OSの起動時に実行するための動作設定がなされる情報処理端末と、
前記情報処理端末がネットワークを介して接続されるサーバを有し、
前記実行部は、前記サーバから設定変更ツールを受信し、前記モジュールアップデートツールの機能を通じて、受信した設定変更ツールを実行し、該実行された設定変更ツールに従って、前記モジュールアップデートツールによるモジュールアップデートの処理を行い、該処理が終了した後に、前記特定のアプリケーションを実行する、モジュールアップデートシステム。
【請求項7】
プログラムを実行する実行部を備え、該実行部は、前記プログラムとしての、モジュール単位でアップデートを行うモジュールアップデートツールおよび特定のアプリケーションを、OSの起動時に実行するための動作設定がなされる情報処理端末のプログラムであって、
外部サーバから配信された設定変更ツールを、前記モジュールアップデートツールの機能を通じて実行する処理と、
実行された前記設定変更ツールに従って、前記モジュールアップデートツールによるモジュールアップデートの処理を行い、該処理が終了した後に、前記特定のアプリケーションを実行する処理を、前記実行部であるコンピュータに実行させる、プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−140316(P2010−140316A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−316922(P2008−316922)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(000227205)NECインフロンティア株式会社 (1,047)
【Fターム(参考)】