情報処理装置、その付属装置、情報処理システム、その制御方法並びに制御プログラム
【課題】予め多数の雑音情報を記憶することなく、未知な雑音を含む多種多様な雑音を抑圧する雑音抑圧技術を提供すること。
【解決手段】 情報処理装置に接続可能な付属装置であって、情報処理装置は、雑音情報を用いて劣化信号中の雑音を抑圧する雑音抑圧劣化信号中の雑音を抑圧し、雑音抑圧結果に基づいて雑音情報を生成し、生成された雑音情報を用いて劣化信号中の雑音を抑圧する手段と、劣化信号中の雑音を抑圧した結果に基づいて雑音情報を生成する雑音情報生成手段と、を備え、付属装置は、雑音抑圧手段が抑圧すべき雑音を発生させる機構部と、雑音抑圧手段が雑音抑圧処理を行なうタイミングで雑音が発生するように機構部を制御する機構制御部と、を備える。
【解決手段】 情報処理装置に接続可能な付属装置であって、情報処理装置は、雑音情報を用いて劣化信号中の雑音を抑圧する雑音抑圧劣化信号中の雑音を抑圧し、雑音抑圧結果に基づいて雑音情報を生成し、生成された雑音情報を用いて劣化信号中の雑音を抑圧する手段と、劣化信号中の雑音を抑圧した結果に基づいて雑音情報を生成する雑音情報生成手段と、を備え、付属装置は、雑音抑圧手段が抑圧すべき雑音を発生させる機構部と、雑音抑圧手段が雑音抑圧処理を行なうタイミングで雑音が発生するように機構部を制御する機構制御部と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、劣化信号中の雑音を抑圧して所望の信号を強調するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
劣化信号(所望の信号と雑音とが混合された信号)から、雑音の一部又は全部を抑圧し、強調信号(所望の信号を強調した信号)を出力する信号処理技術として、雑音抑圧技術(noise suppressing technology)が知られている。例えば、ノイズサプレッサは、所望の音声信号に重畳されている雑音(ノイズ)を抑圧するシステムであり、携帯電話など様々な音声端末において利用されている。
【0003】
この種の技術の一例として、特許文献1には、入力信号に1より小さな抑圧係数を乗算することによって、雑音を抑圧する方法が開示されており、特許文献2には、推定された雑音を劣化信号から直接減算することによって、雑音を抑圧する方法が開示されている。
【0004】
特許文献1及び2に記載の技術によれば、既に雑音が混合されて劣化している所望信号から、雑音を推定しなければならない。しかし、劣化信号だけから正確に雑音を推定することには限界があり、特許文献1及び2に記載された方法は、一般的に、雑音が所望信号に対して十分小さい場合のみ有効である。雑音が所望信号に対して十分に小さいという条件が満たされない場合は、雑音推定値の精度が低いため、特許文献1及び2に記載された方法では、十分な雑音抑圧の効果が得られず、さらに強調信号に大きな歪が含まれていた。
【0005】
これに対し、雑音が所望信号に対して十分に小さいという条件が満たされない場合にも、十分な雑音抑圧効果と強調信号における小さな歪とを実現できる雑音抑圧システムが、特許文献3に開示されている。特許文献3に記載された方法は、所望信号に混入する雑音の特性が事前にある程度わかる場合を想定しており、事前に記録しておいた雑音情報(雑音の特性に関する情報)を、劣化信号から減算することで、雑音を抑圧する。また、入力信号を分析して得られた入力信号パワーが大きいときは大きな係数を、その入力信号パワーが小さいときは小さな係数を、雑音情報に積算して、その積算結果を劣化信号から減算する方法も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4282227号公報
【特許文献2】特開平8−221092号公報
【特許文献3】特開2006−279185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の特許文献3に開示された構成では、雑音特性情報を予め記憶する必要があり、消去できる雑音の種類が非常に限定されてしまう。消去できる雑音の種類を増やそうとすると、雑音情報を多数記録する必要が生じるため、必要な記憶容量が増大し、装置の製造コストが増加する。さらに、予め記憶した雑音情報は、環境の変化などに伴い、実際に抑圧しようとする雑音情報と乖離している可能性もある。
【0008】
以上を踏まえ、本発明は、上述の課題を解決する信号処理技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る装置は、情報処理装置に接続可能な付属装置であって、
前記情報処理装置は、
雑音情報を用いて劣化信号中の雑音を抑圧する雑音抑圧手段と、
前記劣化信号中の雑音を抑圧した結果に基づいて前記雑音情報を生成する雑音情報生成手段と、
を備え、
前記付属装置は、
前記雑音抑圧手段が抑圧すべき雑音を発生させる機構部と、
前記雑音抑圧手段が雑音抑圧処理を行なうタイミングで雑音が発生するように前記機構部を制御する機構制御部と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る装置は、
付属装置を接続可能な情報処理装置であって、
前記付属装置は、雑音を発生させる機構部を備え、
前記情報処理装置は、
雑音情報を用いて劣化信号中の雑音を抑圧する雑音抑圧手段と、
前記劣化信号中の雑音を抑圧した結果に基づいて前記雑音情報を生成する雑音情報生成手段と、
を備え、
前記雑音抑圧手段は、前記機構部が発生させた雑音を抑圧し、
前記雑音情報生成手段は、前記機構部が発生させた雑音を抑圧した結果に基づいて前記雑音情報を生成することを特徴とする。
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係るシステムは、
情報処理装置と、該情報処理装置に接続された付属装置とを含む情報処理システムであって、
前記情報処理装置は、
雑音情報を用いて劣化信号中の雑音を抑圧する雑音抑圧手段と、
前記劣化信号中の雑音を抑圧した結果に基づいて前記雑音情報を生成する雑音情報生成手段と、
を備え、
前記付属装置は、
前記雑音抑圧手段が抑圧すべき雑音を発生させる機構部と、
前記雑音抑圧手段が雑音抑圧処理を行なうタイミングで雑音が発生するように前記機構部を制御する機構制御部と、
を備えることを特徴とする。
【0012】
上記目的を達成するため、本発明に係る方法は、
情報処理装置に接続可能な付属装置の制御方法であって、
前記情報処理装置は、
雑音情報を用いて劣化信号中の雑音を抑圧する雑音抑圧手段と、
前記劣化信号中の雑音を抑圧した結果に基づいて前記雑音情報を生成する雑音情報生成手段と、
を備え、
前記付属装置は、前記雑音抑圧手段が抑圧すべき雑音を発生させる機構部を備え、
前記雑音抑圧手段が雑音抑圧処理を行なうタイミングで雑音が発生するように機構部を制御することを特徴とする。
【0013】
上記目的を達成するため、本発明に係る他の方法は、
雑音を発生させる機構部を備えた付属装置を接続可能な情報処理装置の制御方法であって、
劣化信号中において、前記機構部が発生させた雑音を抑圧し、
前記劣化信号中の前記雑音を抑圧した結果に基づいて雑音情報を生成することを特徴とする。
【0014】
上記目的を達成するため、本発明に係るさらに他の方法は、
情報処理装置と、該情報処理装置に接続された付属装置とを含む情報処理システムの制御方法であって、
抑圧すべき雑音を前記付属装置において発生させ、
前記付属装置において発生した前記雑音が混在する劣化信号を入力し、
前記劣化信号中の前記雑音を抑圧し、
前記劣化信号中の雑音を抑圧した結果に基づいて雑音情報を生成することを特徴とする。
【0015】
上記目的を達成するため、本発明に係るプログラムは、
情報処理装置に接続可能な付属装置の制御プログラムであって、
前記情報処理装置は、
雑音情報を用いて劣化信号中の雑音を抑圧する雑音抑圧手段と、
前記劣化信号中の雑音を抑圧した結果に基づいて前記雑音情報を生成する雑音情報生成手段と、
を備え、
前記付属装置は、前記雑音抑圧手段が抑圧すべき雑音を発生させる機構部を備え、
前記雑音抑圧手段が雑音抑圧処理を行なうタイミングで雑音が発生するように機構部を制御する処理をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0016】
上記目的を達成するため、本発明に係る他のプログラムは、雑音を発生させる機構部を備えた付属装置を接続可能な情報処理装置の制御プログラムであって、
劣化信号中において、前記機構部が発生させた雑音を抑圧する処理と、
前記劣化信号中の前記雑音を抑圧した結果に基づいて雑音情報を生成する処理と、
をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、予め多数の雑音情報を記憶することなく、未知な雑音を含む多種多様な雑音を抑圧する信号処理技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態としての情報処理システムの概略構成を示すブロック図。
【図2】本発明の第1実施形態に係る情報処理装置に含まれる変換部の構成を示すブロック図。
【図3】本発明の第1実施形態に係る情報処理装置に含まれる逆変換部の構成を示すブロック図。
【図4】本発明の第2実施形態としての情報処理システムの概略構成を示すブロック図。
【図5】本発明の第3実施形態としての情報処理システムの概略構成を示すブロック図。
【図6】本発明の第4実施形態としての情報処理システムの概略構成を示すブロック図。
【図7】本発明の第5実施形態としての情報処理システムの概略構成を示すブロック図。
【図8】本発明の第6実施形態としての情報処理システムの概略構成を示すブロック図。
【図9】本発明の第7実施形態としての情報処理システムの概略構成を示すブロック図。
【図10】本発明の第8実施形態としての情報処理システムの概略構成を示すブロック図。
【図11】本発明の他の実施形態としての信号処理プログラムを実行するコンピュータシステムの概略構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態について例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施の形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、本発明の技術範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0020】
(第1実施形態)
<全体構成>
本発明の第1実施形態としての情報処理装置及びその付属装置について説明する。図1は、付属装置100と情報処理装置200とが接続された情報処理システムを示すブロック図である。情報処理装置200の具体例としては、デジタルカメラ、ノートパソコン、PDA、携帯電話などといった装置が挙げられる。一方、付属装置100の具体例としては、カメラに接続されるレンズやフラッシュライトデバイス、ノートパソコンやPDAや携帯電話に接続されるメディアドライブや外付けキーボードが挙げられる。すなわちこれらの製品は全て本発明の範疇に含まれうる。もちろん、本発明はこれらに限定されるものではなく、入力信号からの雑音除去を要求されるあらゆる情報処理装置及び/又は雑音を発生させる付属装置に適用可能である。
【0021】
<本体構成>
まず、本体としての情報処理装置200の構成について説明する。入力端子1には、劣化信号(所望信号と雑音の混在する信号)が、サンプル値系列として供給される。入力端子1に供給された劣化信号は、変換部2においてフーリエ変換などの変換を施されて複数の周波数成分に分割される。複数の周波数成分のうち振幅スペクトルは雑音抑圧部3へ供給され、位相スペクトルは、逆変換部4に伝達される。なお、ここでは、雑音抑圧部3に振幅スペクトルを供給しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、その二乗に相当するパワースペクトルを雑音抑圧部3に供給しても良い。
【0022】
一時記憶部6は、半導体メモリなどの記憶素子を含み、雑音情報(雑音の特性に関する情報)を記憶することができる。雑音情報としては、例えば、雑音のスペクトルの形状を記憶している。しかし、スペクトルに加えて、位相の周波数特性、特定の周波数における強弱や時間変化などの特徴量などを用いることもできる。雑音情報は、その他、統計量(最大、最小、分散、メジアン)などでも良い。
【0023】
雑音抑圧部3は、変換部2から供給された劣化信号振幅スペクトルと一時記憶部6から供給された雑音情報とを用いて、各周波数で雑音を抑圧し、雑音抑圧結果としての強調信号振幅スペクトルを逆変換部4に伝達する。逆変換部4は、雑音抑圧部3から供給された強調信号振幅スペクトルと変換部2から供給された劣化信号の位相とを合わせて逆変換を行い、強調信号サンプルとして、出力端子5に供給する。
【0024】
雑音抑圧結果としての強調信号振幅スペクトルは、同時に、雑音情報生成部7にも伝達される。雑音情報生成部7は、雑音抑圧結果としての強調信号振幅スペクトルに基づいて、新しい雑音情報を生成し、一時記憶部6に供給する。一時記憶部6は、雑音情報生成部7から供給された新しい雑音情報を用いて、現在の雑音情報を更新する。
【0025】
<変換部の構成>
図2は、変換部2の構成を示すブロック図である。図2に示すように、変換部2はフレーム分割部21、窓がけ処理部(windowing unit)22、及びフーリエ変換部23を含む。劣化信号サンプルは、フレーム分割部21に供給され、K/2サンプル毎のフレームに分割される。ここで、Kは偶数とする。フレームに分割された劣化信号サンプルは、窓がけ処理部22に供給され、窓関数(window function)であるw(t)との乗算が行なわれる。第nフレームの入力信号yn(t) (t=0, 1, ..., K/2-1) に対するw(t)で窓がけ(windowing)された信号は、次式(1)で与えられる。
【数1】
【0026】
また、連続する2フレームの一部を重ね合わせ(オーバラップ)して窓がけしてもよい。オーバラップ長としてフレーム長の50%を仮定すれば、t=0, 1, ..., K/2-1 に対して、以下の式(2)で得られる左辺が、窓がけ処理部22の出力となる。
【数2】
【0027】
実数信号に対しては、左右対称窓関数が用いられる。また、窓関数は、MMSE STSA法における抑圧係数を1に設定したとき、またはSS法においてゼロを減算したときの入力信号と出力信号が計算誤差を除いて一致するように設計される。これは、w(t)+w(t+K/2)=1 となることを意味する。
【0028】
以後、連続する2フレームの50%をオーバラップして窓がけする場合を例として説明を続ける。w(t)としては、例えば、次式(3)に示すハニング窓を用いることができる。
【数3】
【0029】
このほかにも、ハミング窓、ケイザー窓、ブラックマン窓など、様々な窓関数が知られている。窓がけされた出力はフーリエ変換部23に供給され、劣化信号スペクトルYn(k)に変換される。劣化信号スペクトルYn(k)は位相と振幅に分離され、劣化信号位相スペクトル arg Yn(k)は、逆変換部4に、劣化信号振幅スペクトル|Yn(k)|は、雑音抑圧部3に供給される。既に説明したように、振幅スペクトルの代わりにパワースペクトルを利用することもできる。
【0030】
<逆変換部の構成>
図3は、逆変換部4の構成を示すブロック図である。図3に示すように、逆変換部4は逆フーリエ変換部43、窓がけ処理部42、及び、フレーム合成部41を含む。逆フーリエ変換部43は、雑音抑圧部3から供給された強調信号振幅スペクトルと変換部2から供給された劣化信号位相スペクトル arg Yn(k)とを乗算して、強調信号(以下の式(4)の左辺)を求める。
【数4】
【0031】
得られた強調信号に逆フーリエ変換を施し、1フレームがKサンプルを含む時間領域サンプル値系列xn(t) (t=0, 1, ..., K-1)として、窓がけ処理部42に供給され、窓関数w(t)との乗算が行なわれる。第nフレームの入力信号xn(t) (t=0, 1, ..., K/2-1) に対してw(t)で窓がけされた信号は、次式(5)の左辺で与えられる。
【数5】
【0032】
また、連続する2フレームの一部を重ね合わせ(オーバラップ)して窓がけしてもよい。フレーム長の50%をオーバラップ長として仮定すれば、t=0, 1, ..., K/2-1 に対して、以下の式の左辺が、窓がけ処理部42の出力となり、フレーム合成部41に伝達される。
【数6】
【0033】
フレーム合成部41は、窓がけ処理部42からの隣接する2フレームの出力を、K/2サンプルずつ取り出して重ね合わせ、以下の式(7)によって、t=0, 1, ..., K-1における出力信号(式(7)の左辺)を得る。得られた出力信号は、フレーム合成部41から出力端子5に伝達される。
【数7】
【0034】
なお、図2と図3において変換部と逆変換部における変換をフーリエ変換として説明したが、フーリエ変換に代えて、コサイン変換、修正コサイン変換、アダマール変換、ハール変換、ウェーブレット変換など、他の変換を用いることもできる。例えば、コサイン変換や修正コサイン変換は、変換結果として振幅だけしか得られない。このため、図1における変換部2から逆変換部4に至る経路は不要になる。また、一時記憶部6に記録する雑音情報も、振幅(またはパワー)だけとなり、記憶容量の削減、雑音抑圧処理における演算量の削減に貢献する。ハール変換は、乗算が不要となり、LSI化したときの面積を小さくすることができる。ウェーブレット変換は、周波数によって時間解像度を異なったものに変更できるために、雑音抑圧効果の向上が期待できる。
【0035】
また、変換部2において得られる周波数成分を複数統合してから、雑音抑圧部3で実際の抑圧を行うこともできる。その際、聴覚特性の弁別能力が高い低周波領域から、能力が低い高周波領域に向かって、よりたくさんの周波数成分を統合して、高い音質を達成することができる。このように、複数の周波数成分を統合してから雑音抑圧を実行すると、雑音抑圧を適用する周波数成分の数が少なくなり、全体の演算量を削減することができる。
【0036】
<雑音抑圧部の処理>
雑音抑圧部3においては、様々な抑圧を行うことが可能であるが、代表的なものとして、SS(Spectrum Subtraction:スペクトル減算)法とMMSE STSA(Minimum Mean-Square Error Short-Time Spectral Amplitude Estimator:最小二乗平均誤差短時間振幅スペクトル推定)法とがある。SS法の場合は、一時記憶部6から供給された雑音情報を、変換部2から供給された劣化信号振幅スペクトルから減算する。MMSE STSA法の場合は、一時記憶部6から供給された雑音情報と変換部2から供給された劣化信号振幅スペクトルを用いて、複数の周波数成分それぞれに対して抑圧係数を計算し、この抑圧係数を劣化信号振幅スペクトルに乗算する。この抑圧係数は、強調信号の平均二乗パワーを最小化するように決定される。
【0037】
雑音抑圧部3における雑音の抑圧に際しては、過剰な抑圧を避けるために、フロアリングを適用することができる。フロアリングとは、最大抑圧量を超える抑圧を避ける方法であり、フロアリングパラメータが最大抑圧量を決定する。SS法の場合は、雑音情報を劣化信号振幅スペクトルから減算した結果が、フロアリングパラメータより小さくならないように制約をかける。具体的には、減算結果がフロアリングパラメータよりも小さいときには、減算結果をフロアリングパラメータで置換する。また、MMSE STSA法の場合には、雑音情報と劣化信号振幅スペクトルから求めた抑圧係数が、フロアリングパラメータよりも小さいときに、抑圧係数をフロアリングパラメータで置換する。フロアリングの詳細に関しては、文献「M. Berouti, R. Schwartz and J. Makhoul, "Enhancement of speech corrupted by acoustic noise," Proceedings of ICASSP'79, pp. 208--211, Apr. 1979」に開示されている。フロアリングパラメータを導入することによって、過剰な抑圧を生じることがなく、強調信号の歪が大きくなることを防止することができる。
【0038】
雑音抑圧部3において、雑音情報の周波数成分数を劣化信号振幅スペクトルの周波数成分数よりも小さく設定することもできる。このとき、複数の雑音情報が複数の周波数成分に対して共用されることになる。劣化信号振幅スペクトルと雑音情報の双方に対して、複数の周波数成分を統合する場合と比べて、劣化信号振幅スペクトルの周波数分解能が高いので、周波数成分の統合が全くない場合よりも少ない演算量で、高い音質を達成することができる。劣化信号振幅スペクトルの周波数成分数よりも少ない周波数成分数の雑音情報を用いた抑圧の詳細は、特開2008-203879号に開示されている。
【0039】
<雑音情報生成部の構成>
雑音情報生成部7には、雑音抑圧結果としての強調信号振幅スペクトルが供給される。雑音情報生成部7は、この雑音抑圧結果を用いて、新しい雑音情報を生成し、これを用いて一時記憶部6に記憶されている雑音情報を更新する。一時記憶部6に記憶されている雑音情報の初期値としては、例えば、フラットな形状の信号スペクトルが用意されている。その信号スペクトルを雑音情報として用いた雑音抑圧結果に応じて、新しい雑音情報を生成する。この新しい雑音情報を用いて、一時記憶部6に記憶されている、既に抑圧に使用された雑音情報を更新する。
【0040】
雑音情報生成部7に帰還(feedback)された雑音抑圧結果を用いて新しい雑音情報を求めるときには、所望信号が入力されていないタイミングでの雑音抑圧結果が大きいほど(抑圧されずに残った雑音が大きいほど)雑音情報が大きくなるように、雑音情報を生成する。所望信号が入力されていないタイミングでの雑音抑圧結果が大きいということは、抑圧が不十分であることを示し、雑音情報を大きくすることが望ましいからである。雑音情報が大きいときには、SS法では減算する値が大きくなり、雑音抑圧結果は小さくなる。また、MMSE STSA法のような乗算型の抑圧では、抑圧係数の計算に用いる信号対雑音比の推定値が小さくなり、小さな抑圧係数が得られる。これは、より強力な雑音抑圧をもたらす。新しい雑音情報を生成するにあたって、複数の方法が考えられる。例として、再計算法及び逐次更新法について説明する。
【0041】
雑音抑圧結果としては、雑音が完全に抑圧された状態が理想である。このため、例えば、劣化信号の振幅又はパワーが小さいときに雑音が完全に抑圧されるように、雑音情報を再計算又は逐次更新することができる。劣化信号の振幅又はパワーが小さいときには、抑圧しようとする雑音以外の信号のパワーも小さい確率が高いからである。劣化信号の振幅又はパワーが小さいことは、劣化信号のパワー又は振幅の絶対値が閾値よりも小さいことを用いて検出できる。
【0042】
また、劣化信号の振幅又はパワーと一時記憶部6に記録されている雑音情報との差分が、閾値より小さいことを用いても検出できる。すなわち、劣化信号の振幅又はパワーが雑音情報と似ているときに、劣化信号における雑音情報の占有率が高い(信号対雑音比が低い)ことを利用する。特に、複数の周波数点における情報を複合的に用いることにより、スペクトル概形を比較することが可能となり、検出精度を高くすることができる。
【0043】
SS法における雑音情報は、各周波数において所望信号が入力されていないタイミングでの劣化信号振幅スペクトルと等しくなるように、再計算する。言い換えれば、雑音だけを入力した時点で変換部2から供給された劣化信号振幅スペクトル|Yn(k)|が、雑音情報νn(k)に一致することが求められる。ここでnはフレーム番号、kは、周波数番号である。すなわち、雑音情報νn(k)を次式(8)で計算する。
νn(k)=|Yn(k)| ・・・(8)
また、雑音情報νn(k)を直接利用する代わりに、その平均を用いてもよい。平均は、FIRフィルタに基づく平均(スライド窓を用いた移動平均)やIIRフィルタに基づく平均(漏れ積分)などを用いて計算できる。
【0044】
一方、SS法における雑音情報の逐次更新は、各周波数において、所望信号が入力されていないタイミングでの強調信号振幅スペクトルがゼロに近づくように、雑音情報を少しずつ更新する。逐次更新に摂動法を用いる場合には、n番目フレーム、周波数番号kの誤差en(k)を用いて、νn+1(k)を次式(9)で計算する。
νn+1(k)=νn(k)+μen(k)・・・(9)
但し、μはステップサイズと呼ばれる微小定数である。計算して得られた雑音情報νn(k)を直ちに利用するときには、数式(9)の代わりに以下の数式(10)を用いる。
νn(k)=νn-1(k)+μen(k) ・・・(10)
すなわち、現在の誤差を用いて現在の雑音情報νn(k)を計算し、直ちに適用する。雑音情報を直ちに更新することにより、リアルタイムで高精度の雑音抑圧を実現できる。
【0045】
また、誤差の符号だけ表わす符号関数sgn{en(k)}を用いて、以下の式(11)によって雑音情報νn+1(k)を計算しても良い。
νn+1(k)=νn(k)+μ・sgn{en(k)}・・・(11)
同様に、その他の適応アルゴリズム(逐次更新アルゴリズム)を用いてもよい。
【0046】
MMSE STSA法においては、雑音情報を逐次更新する。各周波数において、数式(9)から数式(11)を用いて説明した方法と同様の方法で、雑音情報νn(k)を更新する。
【0047】
雑音情報の更新方法としての再計算と逐次更新について、再計算は追従速度が速く、逐次更新は精度が高いという特徴がある。これらの特徴を活かすために、最初は再計算を行い、後に逐次更新を行なう、というように更新方法を変更することも可能である。更新方法の変更のタイミングを決定するにあたり、雑音情報が最適値に十分近くなったこと条件とすることもできる。また、例えば、予め定められた時間が経過したときに更新方法を変更してもよい。またさらに、雑音情報の補正量が予め定められた閾値よりも小さくなったときに変更することもできる。
【0048】
<付属装置の構成>
次に、付属装置100の構成について説明する。付属装置100は、雑音の発生源となる機構部11と、機構部11を制御する機構制御部12とを備え、接続部13を介して情報処理装置200に接続されている。
【0049】
例えば、付属装置100が情報処理装置200に取り付けられて付属装置100に電力が供給されると、機構制御部12は、所定のタイミングで機構部11を動作させる。これにより、所定のタイミングで機構部11から雑音が発生する。この雑音は、雑音抑圧部3が抑圧すべき雑音である。
【0050】
一方、情報処理装置200側では、付属装置100の電源投入などを検知し、機構部11から雑音が発生しているタイミングで、雑音抑圧部3及び雑音情報生成部7を動作させる。具体的には機構部11から発生した雑音を入力端子1から入力して、それを抑圧し、雑音抑圧結果を雑音情報生成部7に提供して、雑音抑圧結果に応じた雑音情報を生成して、一時記憶部6に上書き保存する。
【0051】
所定のタイミングについては、例えば「取付後2秒間」などと、予め、付属装置100及び情報処理装置200のそれぞれに記憶させておく。そして、付属装置100では機構部11を、情報処理装置では雑音抑圧部3及び雑音情報生成部7をほぼ同じタイミングで制御して、発生した雑音から雑音情報を生成すればよい。
【0052】
このように本実施形態の構成によれば、機構制御部12は、雑音抑圧部3が雑音抑圧処理を行なうタイミングで雑音が発生するように機構部11を制御する。そして、抑圧対象となる雑音を故意に発生させ、発生した雑音を用いて雑音情報を生成することができる。
【0053】
すなわち、環境の変化などに拘わらず、実際に劣化信号に混入する可能性の高い雑音から雑音情報を生成するため、劣化信号中の雑音を的確に抑圧することが可能となる。そして、予め多数の雑音情報を記憶することなく、未知な雑音を含む多種多様な雑音を抑圧することができる。なお、雑音信号を生成する際に、雑音抑圧結果を用いて雑音情報を直接生成したが、本発明はこれに限定されるものではない。基準情報に倍率係数を乗算することで雑音情報を生成する構成として倍率係数を更新したり、基準情報に倍率係数を乗算した後にオフセットを加えた値を雑音情報とする構成として倍率係数とオフセットを更新することもできる。その他、多項式や非線形関数を用いて基準情報から雑音情報を生成してもよい。さらに、倍率係数やオフセットだけでなく、これらと同時に基準情報を更新する構成とすることもできる。
【0054】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について、図4を用いて説明する。本実施形態における付属装置300と情報処理装置400は、第1実施形態の構成に加えてさらに、取付センサ14と取付センサ8とを有している。
【0055】
付属装置300が情報処理装置400に取り付けられると、取付センサ14がその旨を機構制御部12に通知する。機構制御部12はこの通知に応じて、所定のタイミングで機構部11を動作させる。これにより、所定のタイミングで機構部11から雑音抑圧部3が抑圧すべき雑音が発生する。
【0056】
一方、情報処理装置400側では、付属装置300が情報処理装置400に取り付けられた旨の通知が、取付センサ8から、雑音抑圧部3及び雑音情報生成部7に伝達され、所定のタイミングでそれらを動作させる。具体的には、機構部11で発生した雑音を入力端子1から入力して、雑音抑圧部3で抑圧する。雑音抑圧結果を雑音情報生成部7に提供して、雑音抑圧結果に応じた雑音情報を生成して、一時記憶部6に上書き保存する。すなわち、機構部11の雑音のみが入力される条件下で、雑音抑圧部3の抑圧結果がゼロになるように、雑音情報を生成する。
【0057】
所定のタイミングについては、例えば「付属装置取付後2秒間」などと、予め、付属装置300及び情報処理装置400で記憶しておき、付属装置300では機構部11を制御し、情報処理装置400は発生した雑音から雑音情報を生成すればよい。
【0058】
これにより、特定の雑音が存在しているタイミングで、確実に雑音を抑圧し、同時に、雑音情報の生成を行なうことができる。その他の構成及び動作については第1実施形態と同様であるためここでは詳細な説明を省略する。
【0059】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について、図5を用いて説明する。本実施形態における情報処理装置600は、制御部9を有しており、付属装置500の機構制御部12は、制御部9からの制御を受ける。また、制御部9は、変換部2から出力されたスペクトル信号を入力して解析し、抑圧すべき雑音以外の信号の混在レベルが所定の閾値よりも小さいか否かを判定する。このような解析の一例として、スペクトル信号パワーの評価を行うことができる。この場合、パワーが閾値より小さいか否かを判定する。
【0060】
雑音の混在レベルが小さい場合には、制御部9は、機構制御部12に対して、機構部11の動作を指示し、雑音を発生させる。これにより、入力端子1から入力した劣化信号は、ほぼ全て機構部11で発生した雑音から構成される。そして、そのタイミングで、制御部9は、雑音抑圧部3と雑音情報生成部7とを動作させる。そして、雑音抑圧部3での抑圧結果がゼロになるように、雑音情報生成部7で雑音情報を生成するか、或いは倍率係数などを調整すれば、雑音抑圧精度を非常に高くすることができる。その他の構成及び動作については第1実施形態と同様であるためここでは詳細な説明を省略する。
【0061】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態について、図6を用いて説明する。本実施形態における情報処理装置650は、制御部95を有しており、付属装置550の機構制御部12は、制御部95からの制御を受ける。制御部95は、第1実施形態と同様に機構部11を動作させる。また、制御部95は、変換部2から出力されたスペクトル信号を入力して解析し、その信号が一時記憶部65から供給される雑音情報に似ているか否かを判定する。さらに、雑音情報生成部75を有し、制御部95から解析結果を供給される。
変換部2から出力されたスペクトル信号が雑音情報に似ている場合には、制御部95は、雑音抑圧部3と雑音情報生成部75とを動作させる。そして、雑音抑圧部3での抑圧結果がゼロになるように、雑音情報生成部75で雑音情報を生成するか、或いは倍率係数などを調整すれば、雑音抑圧精度を非常に高くすることができる。その他の構成及び動作については第1実施形態と同様であるためここでは詳細な説明を省略する。
【0062】
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態について、図7を用いて説明する。本実施形態における情報処理装置800は、制御部9を有している一方で、付属装置700は、機構制御部を備えず、機構部11は、制御部9からの制御を受ける。また、制御部9は、変換部2から出力されたスペクトル信号を入力して解析し、雑音以外の信号[aks1]の入力が所定の閾値よりも小さいか否かを判定する。
この場合も第3実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0063】
(第6実施形態)
本発明の第6実施形態について、図8を用いて説明する。本実施形態における付属装置900は、操作部15を有している。操作部15は、ユーザからのノイズ発生操作を受け付け、機構制御部12にその操作入力を通知する。機構制御部12は、その操作入力に応じて機構部11を動作させ雑音を発生させる。また同時に、機構制御部12は、操作入力があったことを、情報処理装置1000に通知する。
【0064】
情報処理装置1000は、操作入力があった旨の通知を機構制御部12から受け取ると、所定のタイミングで雑音抑圧部3及び雑音情報生成部7を動作させる。そして、機構部11で発生した雑音を入力端子1から入力して、雑音抑圧部3で抑圧し、雑音抑圧結果を雑音情報生成部7に提供して、雑音抑圧結果に応じた雑音情報を生成して、一時記憶部6に上書き保存する。
【0065】
所定のタイミングについては、例えば「操作入力後2秒間」などと、予め、付属装置900及び情報処理装置1000に記憶させておく。そして、付属装置900では機構部11を制御し、情報処理装置1000は雑音情報生成部7を動作させて発生した雑音から雑音情報を生成すればよい。
【0066】
これにより、特定の雑音が存在しているタイミングで、確実に雑音を抑圧し、同時に、雑音情報の生成を行なうことができる。その他の構成及び動作については第1実施形態と同様であるためここでは詳細な説明を省略する。
【0067】
(第7実施形態)
本発明の第7実施形態について、図9を用いて説明する。本実施形態における情報処理装置1200は、操作部10を有している。操作部10は、ユーザからの雑音発生操作を受け付け、制御部9を介して付属装置1100の機構制御部12にその操作入力を通知する。機構制御部12は、その操作入力に応じて機構部11を動作させ雑音を発生させる。また同時に、制御部9は、所定のタイミングで雑音抑圧部3と雑音情報生成部7とを制御して発生した雑音から雑音情報を生成する。
【0068】
これにより、特定の雑音が存在しているタイミングで、確実に雑音を抑圧し、同時に、雑音情報の生成を行なうことができる。その他の構成及び動作については第1実施形態と同様であるためここでは詳細な説明を省略する。
【0069】
(第8実施形態)
本発明の第8実施形態について、図10を用いて説明する。本実施形態における付属装置1300は、タイマ16を有している。タイマ16は、機構制御部12に所定時間の経過を通知する。機構制御部12は、その通知に応じて機構部11を動作させ雑音を発生させる。また同時に、機構制御部12は、所定時間経過したことを、情報処理装置1400に通知する。
【0070】
情報処理装置1400は、所定時間経過の通知を機構制御部12から受け取ると、所定のタイミングで雑音抑圧部3及び雑音情報生成部7を動作させる。そして、機構部11で発生した雑音を入力端子1から入力して、雑音抑圧部3で抑圧し、雑音抑圧結果を雑音情報生成部7に提供して、雑音抑圧結果に応じた雑音情報を生成して、一時記憶部6に上書き保存する。
【0071】
所定のタイミングについては、例えば「所定時間経過後2秒間」などと、予め、付属装置1300及び情報処理装置1400に記憶させておく。そして、付属装置1300では機構部11を制御し、情報処理装置1400は雑音情報生成部7を動作させて発生した雑音から雑音情報を生成すればよい。
【0072】
タイマ16によって計測される時間としては、例えば、電源投入後の経過時間や、前回の雑音生成動作からの経過時間や、雑音発生操作を受け付けてからの経過時間などが挙げられる。なお、タイマ16は、機構制御部12の一部として構成されていても良い。
本実施形態により、特定の雑音が存在しているタイミングで、確実に雑音を抑圧し、同時に、雑音情報の生成を行なうことができる。その他の構成及び動作については第1実施形態と同様であるためここでは詳細な説明を省略する。
【0073】
(他の実施形態)
以上説明してきた第1乃至第8実施形態は、それぞれ別々の特徴を持つ情報処理装置及びその付属装置について説明したが、それらの特徴を如何様に組み合わせた情報処理装置及びその付属装置も、本発明の範疇に含まれる。例えば、付属装置900が取付センサ14と操作部15とタイマ16とを備え、機構制御部12が、これら何れかからの通知に応じて、機構部11を制御して雑音を発生させる構成でも良い。
【0074】
さらに、本発明は、上述の実施形態の機能を実現するソフトウェアの信号処理プログラムが、システム或いは装置に直接或いは遠隔から供給される場合にも適用可能である。したがって、本発明の機能をコンピュータで実現するためにコンピュータにインストールされるプログラム、或いはそのプログラムを格納した媒体、そのプログラムをダウンロードさせるWWWサーバも、本発明の範疇に含まれる。
【0075】
図11は、本発明の実施形態を信号処理プログラムにより構成した場合に、その信号処理プログラムを実行する広義のコンピュータ1500、1600の構成図である。コンピュータ1500は、CPU1501とメモリ1502と通信部1503と機構部1504とを備え、上記実施形態における付属装置として機能する。一方、コンピュータ1600は、CPU1601とメモリ1602と通信部1603と入力部1604と出力部1605とを備え、上記実施形態における情報処理装置として機能する。
【0076】
CPU1501は、情報処理プログラムを読み込むことにより、コンピュータ1500の動作を制御する。すなわち、付属装置用の情報処理プログラムを実行したCPU1501は、所定のタイミングで機構部1504を動作させ(S901)、雑音情報生成を目的とする雑音を発生する(S902)。
【0077】
一方、情報処理装置用の情報処理プログラムを実行したCPU1601は、入力部1604を介して、機構部で発生した雑音を入力する(S801)。そして、劣化信号中の雑音を抑圧し(S802)、雑音抑圧結果に基づいて、雑音情報を生成する(S803)。
【0078】
このように構成したコンピュータシステムにより、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、劣化信号中の雑音を抑圧して所望の信号を強調するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
劣化信号(所望の信号と雑音とが混合された信号)から、雑音の一部又は全部を抑圧し、強調信号(所望の信号を強調した信号)を出力する信号処理技術として、雑音抑圧技術(noise suppressing technology)が知られている。例えば、ノイズサプレッサは、所望の音声信号に重畳されている雑音(ノイズ)を抑圧するシステムであり、携帯電話など様々な音声端末において利用されている。
【0003】
この種の技術の一例として、特許文献1には、入力信号に1より小さな抑圧係数を乗算することによって、雑音を抑圧する方法が開示されており、特許文献2には、推定された雑音を劣化信号から直接減算することによって、雑音を抑圧する方法が開示されている。
【0004】
特許文献1及び2に記載の技術によれば、既に雑音が混合されて劣化している所望信号から、雑音を推定しなければならない。しかし、劣化信号だけから正確に雑音を推定することには限界があり、特許文献1及び2に記載された方法は、一般的に、雑音が所望信号に対して十分小さい場合のみ有効である。雑音が所望信号に対して十分に小さいという条件が満たされない場合は、雑音推定値の精度が低いため、特許文献1及び2に記載された方法では、十分な雑音抑圧の効果が得られず、さらに強調信号に大きな歪が含まれていた。
【0005】
これに対し、雑音が所望信号に対して十分に小さいという条件が満たされない場合にも、十分な雑音抑圧効果と強調信号における小さな歪とを実現できる雑音抑圧システムが、特許文献3に開示されている。特許文献3に記載された方法は、所望信号に混入する雑音の特性が事前にある程度わかる場合を想定しており、事前に記録しておいた雑音情報(雑音の特性に関する情報)を、劣化信号から減算することで、雑音を抑圧する。また、入力信号を分析して得られた入力信号パワーが大きいときは大きな係数を、その入力信号パワーが小さいときは小さな係数を、雑音情報に積算して、その積算結果を劣化信号から減算する方法も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4282227号公報
【特許文献2】特開平8−221092号公報
【特許文献3】特開2006−279185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の特許文献3に開示された構成では、雑音特性情報を予め記憶する必要があり、消去できる雑音の種類が非常に限定されてしまう。消去できる雑音の種類を増やそうとすると、雑音情報を多数記録する必要が生じるため、必要な記憶容量が増大し、装置の製造コストが増加する。さらに、予め記憶した雑音情報は、環境の変化などに伴い、実際に抑圧しようとする雑音情報と乖離している可能性もある。
【0008】
以上を踏まえ、本発明は、上述の課題を解決する信号処理技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る装置は、情報処理装置に接続可能な付属装置であって、
前記情報処理装置は、
雑音情報を用いて劣化信号中の雑音を抑圧する雑音抑圧手段と、
前記劣化信号中の雑音を抑圧した結果に基づいて前記雑音情報を生成する雑音情報生成手段と、
を備え、
前記付属装置は、
前記雑音抑圧手段が抑圧すべき雑音を発生させる機構部と、
前記雑音抑圧手段が雑音抑圧処理を行なうタイミングで雑音が発生するように前記機構部を制御する機構制御部と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る装置は、
付属装置を接続可能な情報処理装置であって、
前記付属装置は、雑音を発生させる機構部を備え、
前記情報処理装置は、
雑音情報を用いて劣化信号中の雑音を抑圧する雑音抑圧手段と、
前記劣化信号中の雑音を抑圧した結果に基づいて前記雑音情報を生成する雑音情報生成手段と、
を備え、
前記雑音抑圧手段は、前記機構部が発生させた雑音を抑圧し、
前記雑音情報生成手段は、前記機構部が発生させた雑音を抑圧した結果に基づいて前記雑音情報を生成することを特徴とする。
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係るシステムは、
情報処理装置と、該情報処理装置に接続された付属装置とを含む情報処理システムであって、
前記情報処理装置は、
雑音情報を用いて劣化信号中の雑音を抑圧する雑音抑圧手段と、
前記劣化信号中の雑音を抑圧した結果に基づいて前記雑音情報を生成する雑音情報生成手段と、
を備え、
前記付属装置は、
前記雑音抑圧手段が抑圧すべき雑音を発生させる機構部と、
前記雑音抑圧手段が雑音抑圧処理を行なうタイミングで雑音が発生するように前記機構部を制御する機構制御部と、
を備えることを特徴とする。
【0012】
上記目的を達成するため、本発明に係る方法は、
情報処理装置に接続可能な付属装置の制御方法であって、
前記情報処理装置は、
雑音情報を用いて劣化信号中の雑音を抑圧する雑音抑圧手段と、
前記劣化信号中の雑音を抑圧した結果に基づいて前記雑音情報を生成する雑音情報生成手段と、
を備え、
前記付属装置は、前記雑音抑圧手段が抑圧すべき雑音を発生させる機構部を備え、
前記雑音抑圧手段が雑音抑圧処理を行なうタイミングで雑音が発生するように機構部を制御することを特徴とする。
【0013】
上記目的を達成するため、本発明に係る他の方法は、
雑音を発生させる機構部を備えた付属装置を接続可能な情報処理装置の制御方法であって、
劣化信号中において、前記機構部が発生させた雑音を抑圧し、
前記劣化信号中の前記雑音を抑圧した結果に基づいて雑音情報を生成することを特徴とする。
【0014】
上記目的を達成するため、本発明に係るさらに他の方法は、
情報処理装置と、該情報処理装置に接続された付属装置とを含む情報処理システムの制御方法であって、
抑圧すべき雑音を前記付属装置において発生させ、
前記付属装置において発生した前記雑音が混在する劣化信号を入力し、
前記劣化信号中の前記雑音を抑圧し、
前記劣化信号中の雑音を抑圧した結果に基づいて雑音情報を生成することを特徴とする。
【0015】
上記目的を達成するため、本発明に係るプログラムは、
情報処理装置に接続可能な付属装置の制御プログラムであって、
前記情報処理装置は、
雑音情報を用いて劣化信号中の雑音を抑圧する雑音抑圧手段と、
前記劣化信号中の雑音を抑圧した結果に基づいて前記雑音情報を生成する雑音情報生成手段と、
を備え、
前記付属装置は、前記雑音抑圧手段が抑圧すべき雑音を発生させる機構部を備え、
前記雑音抑圧手段が雑音抑圧処理を行なうタイミングで雑音が発生するように機構部を制御する処理をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0016】
上記目的を達成するため、本発明に係る他のプログラムは、雑音を発生させる機構部を備えた付属装置を接続可能な情報処理装置の制御プログラムであって、
劣化信号中において、前記機構部が発生させた雑音を抑圧する処理と、
前記劣化信号中の前記雑音を抑圧した結果に基づいて雑音情報を生成する処理と、
をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、予め多数の雑音情報を記憶することなく、未知な雑音を含む多種多様な雑音を抑圧する信号処理技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態としての情報処理システムの概略構成を示すブロック図。
【図2】本発明の第1実施形態に係る情報処理装置に含まれる変換部の構成を示すブロック図。
【図3】本発明の第1実施形態に係る情報処理装置に含まれる逆変換部の構成を示すブロック図。
【図4】本発明の第2実施形態としての情報処理システムの概略構成を示すブロック図。
【図5】本発明の第3実施形態としての情報処理システムの概略構成を示すブロック図。
【図6】本発明の第4実施形態としての情報処理システムの概略構成を示すブロック図。
【図7】本発明の第5実施形態としての情報処理システムの概略構成を示すブロック図。
【図8】本発明の第6実施形態としての情報処理システムの概略構成を示すブロック図。
【図9】本発明の第7実施形態としての情報処理システムの概略構成を示すブロック図。
【図10】本発明の第8実施形態としての情報処理システムの概略構成を示すブロック図。
【図11】本発明の他の実施形態としての信号処理プログラムを実行するコンピュータシステムの概略構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態について例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施の形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、本発明の技術範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0020】
(第1実施形態)
<全体構成>
本発明の第1実施形態としての情報処理装置及びその付属装置について説明する。図1は、付属装置100と情報処理装置200とが接続された情報処理システムを示すブロック図である。情報処理装置200の具体例としては、デジタルカメラ、ノートパソコン、PDA、携帯電話などといった装置が挙げられる。一方、付属装置100の具体例としては、カメラに接続されるレンズやフラッシュライトデバイス、ノートパソコンやPDAや携帯電話に接続されるメディアドライブや外付けキーボードが挙げられる。すなわちこれらの製品は全て本発明の範疇に含まれうる。もちろん、本発明はこれらに限定されるものではなく、入力信号からの雑音除去を要求されるあらゆる情報処理装置及び/又は雑音を発生させる付属装置に適用可能である。
【0021】
<本体構成>
まず、本体としての情報処理装置200の構成について説明する。入力端子1には、劣化信号(所望信号と雑音の混在する信号)が、サンプル値系列として供給される。入力端子1に供給された劣化信号は、変換部2においてフーリエ変換などの変換を施されて複数の周波数成分に分割される。複数の周波数成分のうち振幅スペクトルは雑音抑圧部3へ供給され、位相スペクトルは、逆変換部4に伝達される。なお、ここでは、雑音抑圧部3に振幅スペクトルを供給しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、その二乗に相当するパワースペクトルを雑音抑圧部3に供給しても良い。
【0022】
一時記憶部6は、半導体メモリなどの記憶素子を含み、雑音情報(雑音の特性に関する情報)を記憶することができる。雑音情報としては、例えば、雑音のスペクトルの形状を記憶している。しかし、スペクトルに加えて、位相の周波数特性、特定の周波数における強弱や時間変化などの特徴量などを用いることもできる。雑音情報は、その他、統計量(最大、最小、分散、メジアン)などでも良い。
【0023】
雑音抑圧部3は、変換部2から供給された劣化信号振幅スペクトルと一時記憶部6から供給された雑音情報とを用いて、各周波数で雑音を抑圧し、雑音抑圧結果としての強調信号振幅スペクトルを逆変換部4に伝達する。逆変換部4は、雑音抑圧部3から供給された強調信号振幅スペクトルと変換部2から供給された劣化信号の位相とを合わせて逆変換を行い、強調信号サンプルとして、出力端子5に供給する。
【0024】
雑音抑圧結果としての強調信号振幅スペクトルは、同時に、雑音情報生成部7にも伝達される。雑音情報生成部7は、雑音抑圧結果としての強調信号振幅スペクトルに基づいて、新しい雑音情報を生成し、一時記憶部6に供給する。一時記憶部6は、雑音情報生成部7から供給された新しい雑音情報を用いて、現在の雑音情報を更新する。
【0025】
<変換部の構成>
図2は、変換部2の構成を示すブロック図である。図2に示すように、変換部2はフレーム分割部21、窓がけ処理部(windowing unit)22、及びフーリエ変換部23を含む。劣化信号サンプルは、フレーム分割部21に供給され、K/2サンプル毎のフレームに分割される。ここで、Kは偶数とする。フレームに分割された劣化信号サンプルは、窓がけ処理部22に供給され、窓関数(window function)であるw(t)との乗算が行なわれる。第nフレームの入力信号yn(t) (t=0, 1, ..., K/2-1) に対するw(t)で窓がけ(windowing)された信号は、次式(1)で与えられる。
【数1】
【0026】
また、連続する2フレームの一部を重ね合わせ(オーバラップ)して窓がけしてもよい。オーバラップ長としてフレーム長の50%を仮定すれば、t=0, 1, ..., K/2-1 に対して、以下の式(2)で得られる左辺が、窓がけ処理部22の出力となる。
【数2】
【0027】
実数信号に対しては、左右対称窓関数が用いられる。また、窓関数は、MMSE STSA法における抑圧係数を1に設定したとき、またはSS法においてゼロを減算したときの入力信号と出力信号が計算誤差を除いて一致するように設計される。これは、w(t)+w(t+K/2)=1 となることを意味する。
【0028】
以後、連続する2フレームの50%をオーバラップして窓がけする場合を例として説明を続ける。w(t)としては、例えば、次式(3)に示すハニング窓を用いることができる。
【数3】
【0029】
このほかにも、ハミング窓、ケイザー窓、ブラックマン窓など、様々な窓関数が知られている。窓がけされた出力はフーリエ変換部23に供給され、劣化信号スペクトルYn(k)に変換される。劣化信号スペクトルYn(k)は位相と振幅に分離され、劣化信号位相スペクトル arg Yn(k)は、逆変換部4に、劣化信号振幅スペクトル|Yn(k)|は、雑音抑圧部3に供給される。既に説明したように、振幅スペクトルの代わりにパワースペクトルを利用することもできる。
【0030】
<逆変換部の構成>
図3は、逆変換部4の構成を示すブロック図である。図3に示すように、逆変換部4は逆フーリエ変換部43、窓がけ処理部42、及び、フレーム合成部41を含む。逆フーリエ変換部43は、雑音抑圧部3から供給された強調信号振幅スペクトルと変換部2から供給された劣化信号位相スペクトル arg Yn(k)とを乗算して、強調信号(以下の式(4)の左辺)を求める。
【数4】
【0031】
得られた強調信号に逆フーリエ変換を施し、1フレームがKサンプルを含む時間領域サンプル値系列xn(t) (t=0, 1, ..., K-1)として、窓がけ処理部42に供給され、窓関数w(t)との乗算が行なわれる。第nフレームの入力信号xn(t) (t=0, 1, ..., K/2-1) に対してw(t)で窓がけされた信号は、次式(5)の左辺で与えられる。
【数5】
【0032】
また、連続する2フレームの一部を重ね合わせ(オーバラップ)して窓がけしてもよい。フレーム長の50%をオーバラップ長として仮定すれば、t=0, 1, ..., K/2-1 に対して、以下の式の左辺が、窓がけ処理部42の出力となり、フレーム合成部41に伝達される。
【数6】
【0033】
フレーム合成部41は、窓がけ処理部42からの隣接する2フレームの出力を、K/2サンプルずつ取り出して重ね合わせ、以下の式(7)によって、t=0, 1, ..., K-1における出力信号(式(7)の左辺)を得る。得られた出力信号は、フレーム合成部41から出力端子5に伝達される。
【数7】
【0034】
なお、図2と図3において変換部と逆変換部における変換をフーリエ変換として説明したが、フーリエ変換に代えて、コサイン変換、修正コサイン変換、アダマール変換、ハール変換、ウェーブレット変換など、他の変換を用いることもできる。例えば、コサイン変換や修正コサイン変換は、変換結果として振幅だけしか得られない。このため、図1における変換部2から逆変換部4に至る経路は不要になる。また、一時記憶部6に記録する雑音情報も、振幅(またはパワー)だけとなり、記憶容量の削減、雑音抑圧処理における演算量の削減に貢献する。ハール変換は、乗算が不要となり、LSI化したときの面積を小さくすることができる。ウェーブレット変換は、周波数によって時間解像度を異なったものに変更できるために、雑音抑圧効果の向上が期待できる。
【0035】
また、変換部2において得られる周波数成分を複数統合してから、雑音抑圧部3で実際の抑圧を行うこともできる。その際、聴覚特性の弁別能力が高い低周波領域から、能力が低い高周波領域に向かって、よりたくさんの周波数成分を統合して、高い音質を達成することができる。このように、複数の周波数成分を統合してから雑音抑圧を実行すると、雑音抑圧を適用する周波数成分の数が少なくなり、全体の演算量を削減することができる。
【0036】
<雑音抑圧部の処理>
雑音抑圧部3においては、様々な抑圧を行うことが可能であるが、代表的なものとして、SS(Spectrum Subtraction:スペクトル減算)法とMMSE STSA(Minimum Mean-Square Error Short-Time Spectral Amplitude Estimator:最小二乗平均誤差短時間振幅スペクトル推定)法とがある。SS法の場合は、一時記憶部6から供給された雑音情報を、変換部2から供給された劣化信号振幅スペクトルから減算する。MMSE STSA法の場合は、一時記憶部6から供給された雑音情報と変換部2から供給された劣化信号振幅スペクトルを用いて、複数の周波数成分それぞれに対して抑圧係数を計算し、この抑圧係数を劣化信号振幅スペクトルに乗算する。この抑圧係数は、強調信号の平均二乗パワーを最小化するように決定される。
【0037】
雑音抑圧部3における雑音の抑圧に際しては、過剰な抑圧を避けるために、フロアリングを適用することができる。フロアリングとは、最大抑圧量を超える抑圧を避ける方法であり、フロアリングパラメータが最大抑圧量を決定する。SS法の場合は、雑音情報を劣化信号振幅スペクトルから減算した結果が、フロアリングパラメータより小さくならないように制約をかける。具体的には、減算結果がフロアリングパラメータよりも小さいときには、減算結果をフロアリングパラメータで置換する。また、MMSE STSA法の場合には、雑音情報と劣化信号振幅スペクトルから求めた抑圧係数が、フロアリングパラメータよりも小さいときに、抑圧係数をフロアリングパラメータで置換する。フロアリングの詳細に関しては、文献「M. Berouti, R. Schwartz and J. Makhoul, "Enhancement of speech corrupted by acoustic noise," Proceedings of ICASSP'79, pp. 208--211, Apr. 1979」に開示されている。フロアリングパラメータを導入することによって、過剰な抑圧を生じることがなく、強調信号の歪が大きくなることを防止することができる。
【0038】
雑音抑圧部3において、雑音情報の周波数成分数を劣化信号振幅スペクトルの周波数成分数よりも小さく設定することもできる。このとき、複数の雑音情報が複数の周波数成分に対して共用されることになる。劣化信号振幅スペクトルと雑音情報の双方に対して、複数の周波数成分を統合する場合と比べて、劣化信号振幅スペクトルの周波数分解能が高いので、周波数成分の統合が全くない場合よりも少ない演算量で、高い音質を達成することができる。劣化信号振幅スペクトルの周波数成分数よりも少ない周波数成分数の雑音情報を用いた抑圧の詳細は、特開2008-203879号に開示されている。
【0039】
<雑音情報生成部の構成>
雑音情報生成部7には、雑音抑圧結果としての強調信号振幅スペクトルが供給される。雑音情報生成部7は、この雑音抑圧結果を用いて、新しい雑音情報を生成し、これを用いて一時記憶部6に記憶されている雑音情報を更新する。一時記憶部6に記憶されている雑音情報の初期値としては、例えば、フラットな形状の信号スペクトルが用意されている。その信号スペクトルを雑音情報として用いた雑音抑圧結果に応じて、新しい雑音情報を生成する。この新しい雑音情報を用いて、一時記憶部6に記憶されている、既に抑圧に使用された雑音情報を更新する。
【0040】
雑音情報生成部7に帰還(feedback)された雑音抑圧結果を用いて新しい雑音情報を求めるときには、所望信号が入力されていないタイミングでの雑音抑圧結果が大きいほど(抑圧されずに残った雑音が大きいほど)雑音情報が大きくなるように、雑音情報を生成する。所望信号が入力されていないタイミングでの雑音抑圧結果が大きいということは、抑圧が不十分であることを示し、雑音情報を大きくすることが望ましいからである。雑音情報が大きいときには、SS法では減算する値が大きくなり、雑音抑圧結果は小さくなる。また、MMSE STSA法のような乗算型の抑圧では、抑圧係数の計算に用いる信号対雑音比の推定値が小さくなり、小さな抑圧係数が得られる。これは、より強力な雑音抑圧をもたらす。新しい雑音情報を生成するにあたって、複数の方法が考えられる。例として、再計算法及び逐次更新法について説明する。
【0041】
雑音抑圧結果としては、雑音が完全に抑圧された状態が理想である。このため、例えば、劣化信号の振幅又はパワーが小さいときに雑音が完全に抑圧されるように、雑音情報を再計算又は逐次更新することができる。劣化信号の振幅又はパワーが小さいときには、抑圧しようとする雑音以外の信号のパワーも小さい確率が高いからである。劣化信号の振幅又はパワーが小さいことは、劣化信号のパワー又は振幅の絶対値が閾値よりも小さいことを用いて検出できる。
【0042】
また、劣化信号の振幅又はパワーと一時記憶部6に記録されている雑音情報との差分が、閾値より小さいことを用いても検出できる。すなわち、劣化信号の振幅又はパワーが雑音情報と似ているときに、劣化信号における雑音情報の占有率が高い(信号対雑音比が低い)ことを利用する。特に、複数の周波数点における情報を複合的に用いることにより、スペクトル概形を比較することが可能となり、検出精度を高くすることができる。
【0043】
SS法における雑音情報は、各周波数において所望信号が入力されていないタイミングでの劣化信号振幅スペクトルと等しくなるように、再計算する。言い換えれば、雑音だけを入力した時点で変換部2から供給された劣化信号振幅スペクトル|Yn(k)|が、雑音情報νn(k)に一致することが求められる。ここでnはフレーム番号、kは、周波数番号である。すなわち、雑音情報νn(k)を次式(8)で計算する。
νn(k)=|Yn(k)| ・・・(8)
また、雑音情報νn(k)を直接利用する代わりに、その平均を用いてもよい。平均は、FIRフィルタに基づく平均(スライド窓を用いた移動平均)やIIRフィルタに基づく平均(漏れ積分)などを用いて計算できる。
【0044】
一方、SS法における雑音情報の逐次更新は、各周波数において、所望信号が入力されていないタイミングでの強調信号振幅スペクトルがゼロに近づくように、雑音情報を少しずつ更新する。逐次更新に摂動法を用いる場合には、n番目フレーム、周波数番号kの誤差en(k)を用いて、νn+1(k)を次式(9)で計算する。
νn+1(k)=νn(k)+μen(k)・・・(9)
但し、μはステップサイズと呼ばれる微小定数である。計算して得られた雑音情報νn(k)を直ちに利用するときには、数式(9)の代わりに以下の数式(10)を用いる。
νn(k)=νn-1(k)+μen(k) ・・・(10)
すなわち、現在の誤差を用いて現在の雑音情報νn(k)を計算し、直ちに適用する。雑音情報を直ちに更新することにより、リアルタイムで高精度の雑音抑圧を実現できる。
【0045】
また、誤差の符号だけ表わす符号関数sgn{en(k)}を用いて、以下の式(11)によって雑音情報νn+1(k)を計算しても良い。
νn+1(k)=νn(k)+μ・sgn{en(k)}・・・(11)
同様に、その他の適応アルゴリズム(逐次更新アルゴリズム)を用いてもよい。
【0046】
MMSE STSA法においては、雑音情報を逐次更新する。各周波数において、数式(9)から数式(11)を用いて説明した方法と同様の方法で、雑音情報νn(k)を更新する。
【0047】
雑音情報の更新方法としての再計算と逐次更新について、再計算は追従速度が速く、逐次更新は精度が高いという特徴がある。これらの特徴を活かすために、最初は再計算を行い、後に逐次更新を行なう、というように更新方法を変更することも可能である。更新方法の変更のタイミングを決定するにあたり、雑音情報が最適値に十分近くなったこと条件とすることもできる。また、例えば、予め定められた時間が経過したときに更新方法を変更してもよい。またさらに、雑音情報の補正量が予め定められた閾値よりも小さくなったときに変更することもできる。
【0048】
<付属装置の構成>
次に、付属装置100の構成について説明する。付属装置100は、雑音の発生源となる機構部11と、機構部11を制御する機構制御部12とを備え、接続部13を介して情報処理装置200に接続されている。
【0049】
例えば、付属装置100が情報処理装置200に取り付けられて付属装置100に電力が供給されると、機構制御部12は、所定のタイミングで機構部11を動作させる。これにより、所定のタイミングで機構部11から雑音が発生する。この雑音は、雑音抑圧部3が抑圧すべき雑音である。
【0050】
一方、情報処理装置200側では、付属装置100の電源投入などを検知し、機構部11から雑音が発生しているタイミングで、雑音抑圧部3及び雑音情報生成部7を動作させる。具体的には機構部11から発生した雑音を入力端子1から入力して、それを抑圧し、雑音抑圧結果を雑音情報生成部7に提供して、雑音抑圧結果に応じた雑音情報を生成して、一時記憶部6に上書き保存する。
【0051】
所定のタイミングについては、例えば「取付後2秒間」などと、予め、付属装置100及び情報処理装置200のそれぞれに記憶させておく。そして、付属装置100では機構部11を、情報処理装置では雑音抑圧部3及び雑音情報生成部7をほぼ同じタイミングで制御して、発生した雑音から雑音情報を生成すればよい。
【0052】
このように本実施形態の構成によれば、機構制御部12は、雑音抑圧部3が雑音抑圧処理を行なうタイミングで雑音が発生するように機構部11を制御する。そして、抑圧対象となる雑音を故意に発生させ、発生した雑音を用いて雑音情報を生成することができる。
【0053】
すなわち、環境の変化などに拘わらず、実際に劣化信号に混入する可能性の高い雑音から雑音情報を生成するため、劣化信号中の雑音を的確に抑圧することが可能となる。そして、予め多数の雑音情報を記憶することなく、未知な雑音を含む多種多様な雑音を抑圧することができる。なお、雑音信号を生成する際に、雑音抑圧結果を用いて雑音情報を直接生成したが、本発明はこれに限定されるものではない。基準情報に倍率係数を乗算することで雑音情報を生成する構成として倍率係数を更新したり、基準情報に倍率係数を乗算した後にオフセットを加えた値を雑音情報とする構成として倍率係数とオフセットを更新することもできる。その他、多項式や非線形関数を用いて基準情報から雑音情報を生成してもよい。さらに、倍率係数やオフセットだけでなく、これらと同時に基準情報を更新する構成とすることもできる。
【0054】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について、図4を用いて説明する。本実施形態における付属装置300と情報処理装置400は、第1実施形態の構成に加えてさらに、取付センサ14と取付センサ8とを有している。
【0055】
付属装置300が情報処理装置400に取り付けられると、取付センサ14がその旨を機構制御部12に通知する。機構制御部12はこの通知に応じて、所定のタイミングで機構部11を動作させる。これにより、所定のタイミングで機構部11から雑音抑圧部3が抑圧すべき雑音が発生する。
【0056】
一方、情報処理装置400側では、付属装置300が情報処理装置400に取り付けられた旨の通知が、取付センサ8から、雑音抑圧部3及び雑音情報生成部7に伝達され、所定のタイミングでそれらを動作させる。具体的には、機構部11で発生した雑音を入力端子1から入力して、雑音抑圧部3で抑圧する。雑音抑圧結果を雑音情報生成部7に提供して、雑音抑圧結果に応じた雑音情報を生成して、一時記憶部6に上書き保存する。すなわち、機構部11の雑音のみが入力される条件下で、雑音抑圧部3の抑圧結果がゼロになるように、雑音情報を生成する。
【0057】
所定のタイミングについては、例えば「付属装置取付後2秒間」などと、予め、付属装置300及び情報処理装置400で記憶しておき、付属装置300では機構部11を制御し、情報処理装置400は発生した雑音から雑音情報を生成すればよい。
【0058】
これにより、特定の雑音が存在しているタイミングで、確実に雑音を抑圧し、同時に、雑音情報の生成を行なうことができる。その他の構成及び動作については第1実施形態と同様であるためここでは詳細な説明を省略する。
【0059】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について、図5を用いて説明する。本実施形態における情報処理装置600は、制御部9を有しており、付属装置500の機構制御部12は、制御部9からの制御を受ける。また、制御部9は、変換部2から出力されたスペクトル信号を入力して解析し、抑圧すべき雑音以外の信号の混在レベルが所定の閾値よりも小さいか否かを判定する。このような解析の一例として、スペクトル信号パワーの評価を行うことができる。この場合、パワーが閾値より小さいか否かを判定する。
【0060】
雑音の混在レベルが小さい場合には、制御部9は、機構制御部12に対して、機構部11の動作を指示し、雑音を発生させる。これにより、入力端子1から入力した劣化信号は、ほぼ全て機構部11で発生した雑音から構成される。そして、そのタイミングで、制御部9は、雑音抑圧部3と雑音情報生成部7とを動作させる。そして、雑音抑圧部3での抑圧結果がゼロになるように、雑音情報生成部7で雑音情報を生成するか、或いは倍率係数などを調整すれば、雑音抑圧精度を非常に高くすることができる。その他の構成及び動作については第1実施形態と同様であるためここでは詳細な説明を省略する。
【0061】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態について、図6を用いて説明する。本実施形態における情報処理装置650は、制御部95を有しており、付属装置550の機構制御部12は、制御部95からの制御を受ける。制御部95は、第1実施形態と同様に機構部11を動作させる。また、制御部95は、変換部2から出力されたスペクトル信号を入力して解析し、その信号が一時記憶部65から供給される雑音情報に似ているか否かを判定する。さらに、雑音情報生成部75を有し、制御部95から解析結果を供給される。
変換部2から出力されたスペクトル信号が雑音情報に似ている場合には、制御部95は、雑音抑圧部3と雑音情報生成部75とを動作させる。そして、雑音抑圧部3での抑圧結果がゼロになるように、雑音情報生成部75で雑音情報を生成するか、或いは倍率係数などを調整すれば、雑音抑圧精度を非常に高くすることができる。その他の構成及び動作については第1実施形態と同様であるためここでは詳細な説明を省略する。
【0062】
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態について、図7を用いて説明する。本実施形態における情報処理装置800は、制御部9を有している一方で、付属装置700は、機構制御部を備えず、機構部11は、制御部9からの制御を受ける。また、制御部9は、変換部2から出力されたスペクトル信号を入力して解析し、雑音以外の信号[aks1]の入力が所定の閾値よりも小さいか否かを判定する。
この場合も第3実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0063】
(第6実施形態)
本発明の第6実施形態について、図8を用いて説明する。本実施形態における付属装置900は、操作部15を有している。操作部15は、ユーザからのノイズ発生操作を受け付け、機構制御部12にその操作入力を通知する。機構制御部12は、その操作入力に応じて機構部11を動作させ雑音を発生させる。また同時に、機構制御部12は、操作入力があったことを、情報処理装置1000に通知する。
【0064】
情報処理装置1000は、操作入力があった旨の通知を機構制御部12から受け取ると、所定のタイミングで雑音抑圧部3及び雑音情報生成部7を動作させる。そして、機構部11で発生した雑音を入力端子1から入力して、雑音抑圧部3で抑圧し、雑音抑圧結果を雑音情報生成部7に提供して、雑音抑圧結果に応じた雑音情報を生成して、一時記憶部6に上書き保存する。
【0065】
所定のタイミングについては、例えば「操作入力後2秒間」などと、予め、付属装置900及び情報処理装置1000に記憶させておく。そして、付属装置900では機構部11を制御し、情報処理装置1000は雑音情報生成部7を動作させて発生した雑音から雑音情報を生成すればよい。
【0066】
これにより、特定の雑音が存在しているタイミングで、確実に雑音を抑圧し、同時に、雑音情報の生成を行なうことができる。その他の構成及び動作については第1実施形態と同様であるためここでは詳細な説明を省略する。
【0067】
(第7実施形態)
本発明の第7実施形態について、図9を用いて説明する。本実施形態における情報処理装置1200は、操作部10を有している。操作部10は、ユーザからの雑音発生操作を受け付け、制御部9を介して付属装置1100の機構制御部12にその操作入力を通知する。機構制御部12は、その操作入力に応じて機構部11を動作させ雑音を発生させる。また同時に、制御部9は、所定のタイミングで雑音抑圧部3と雑音情報生成部7とを制御して発生した雑音から雑音情報を生成する。
【0068】
これにより、特定の雑音が存在しているタイミングで、確実に雑音を抑圧し、同時に、雑音情報の生成を行なうことができる。その他の構成及び動作については第1実施形態と同様であるためここでは詳細な説明を省略する。
【0069】
(第8実施形態)
本発明の第8実施形態について、図10を用いて説明する。本実施形態における付属装置1300は、タイマ16を有している。タイマ16は、機構制御部12に所定時間の経過を通知する。機構制御部12は、その通知に応じて機構部11を動作させ雑音を発生させる。また同時に、機構制御部12は、所定時間経過したことを、情報処理装置1400に通知する。
【0070】
情報処理装置1400は、所定時間経過の通知を機構制御部12から受け取ると、所定のタイミングで雑音抑圧部3及び雑音情報生成部7を動作させる。そして、機構部11で発生した雑音を入力端子1から入力して、雑音抑圧部3で抑圧し、雑音抑圧結果を雑音情報生成部7に提供して、雑音抑圧結果に応じた雑音情報を生成して、一時記憶部6に上書き保存する。
【0071】
所定のタイミングについては、例えば「所定時間経過後2秒間」などと、予め、付属装置1300及び情報処理装置1400に記憶させておく。そして、付属装置1300では機構部11を制御し、情報処理装置1400は雑音情報生成部7を動作させて発生した雑音から雑音情報を生成すればよい。
【0072】
タイマ16によって計測される時間としては、例えば、電源投入後の経過時間や、前回の雑音生成動作からの経過時間や、雑音発生操作を受け付けてからの経過時間などが挙げられる。なお、タイマ16は、機構制御部12の一部として構成されていても良い。
本実施形態により、特定の雑音が存在しているタイミングで、確実に雑音を抑圧し、同時に、雑音情報の生成を行なうことができる。その他の構成及び動作については第1実施形態と同様であるためここでは詳細な説明を省略する。
【0073】
(他の実施形態)
以上説明してきた第1乃至第8実施形態は、それぞれ別々の特徴を持つ情報処理装置及びその付属装置について説明したが、それらの特徴を如何様に組み合わせた情報処理装置及びその付属装置も、本発明の範疇に含まれる。例えば、付属装置900が取付センサ14と操作部15とタイマ16とを備え、機構制御部12が、これら何れかからの通知に応じて、機構部11を制御して雑音を発生させる構成でも良い。
【0074】
さらに、本発明は、上述の実施形態の機能を実現するソフトウェアの信号処理プログラムが、システム或いは装置に直接或いは遠隔から供給される場合にも適用可能である。したがって、本発明の機能をコンピュータで実現するためにコンピュータにインストールされるプログラム、或いはそのプログラムを格納した媒体、そのプログラムをダウンロードさせるWWWサーバも、本発明の範疇に含まれる。
【0075】
図11は、本発明の実施形態を信号処理プログラムにより構成した場合に、その信号処理プログラムを実行する広義のコンピュータ1500、1600の構成図である。コンピュータ1500は、CPU1501とメモリ1502と通信部1503と機構部1504とを備え、上記実施形態における付属装置として機能する。一方、コンピュータ1600は、CPU1601とメモリ1602と通信部1603と入力部1604と出力部1605とを備え、上記実施形態における情報処理装置として機能する。
【0076】
CPU1501は、情報処理プログラムを読み込むことにより、コンピュータ1500の動作を制御する。すなわち、付属装置用の情報処理プログラムを実行したCPU1501は、所定のタイミングで機構部1504を動作させ(S901)、雑音情報生成を目的とする雑音を発生する(S902)。
【0077】
一方、情報処理装置用の情報処理プログラムを実行したCPU1601は、入力部1604を介して、機構部で発生した雑音を入力する(S801)。そして、劣化信号中の雑音を抑圧し(S802)、雑音抑圧結果に基づいて、雑音情報を生成する(S803)。
【0078】
このように構成したコンピュータシステムにより、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置に接続可能な付属装置であって、
前記情報処理装置は、
雑音情報を用いて劣化信号中の雑音を抑圧する雑音抑圧手段と、
前記劣化信号中の雑音を抑圧した結果に基づいて前記雑音情報を生成する雑音情報生成手段と、
を備え、
前記付属装置は、
前記雑音抑圧手段が抑圧すべき雑音を発生させる機構部と、
前記雑音抑圧手段が雑音抑圧処理を行なうタイミングで雑音が発生するように前記機構部を制御する機構制御部と、
を備えることを特徴とする付属装置。
【請求項2】
さらに、前記情報処理装置との接続を検知するセンサを備え、
前記機構制御部は、前記センサからの検知信号を受けて、雑音が発生するように前記機構部を制御することを特徴とする請求項1に記載の付属装置。
【請求項3】
前記機構制御部は、前記情報処理装置に設けられた制御部からの指示を受けて、雑音が発生するように前記機構部を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の付属装置。
【請求項4】
さらに、ユーザからの雑音発生操作を受け付ける操作部を備え、
前記機構制御部は、前記操作部に対する雑音発生操作を受けて、雑音が発生するように前記機構部を制御することを特徴とする請求項1、2又は3に記載の付属装置。
【請求項5】
さらに、経過時間を測定するタイマを備え、
前記機構制御部は、前記タイマが、所定時間の経過を検知した場合に、雑音が発生するように前記機構部を制御することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の付属装置。
【請求項6】
付属装置を接続可能な情報処理装置であって、
前記付属装置は、雑音を発生させる機構部を備え、
前記情報処理装置は、
雑音情報を用いて劣化信号中の雑音を抑圧する雑音抑圧手段と、
前記劣化信号中の雑音を抑圧した結果に基づいて前記雑音情報を生成する雑音情報生成手段と、
を備え、
前記雑音抑圧手段は、前記機構部が発生させた雑音を抑圧し、
前記雑音情報生成手段は、前記機構部が発生させた雑音を抑圧した結果に基づいて前記雑音情報を生成することを特徴とする情報処理装置。
【請求項7】
前記機構部を制御して雑音を発生させる制御部をさらに備えることを特徴とする請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記制御部は、入力した前記劣化信号中に含まれる雑音以外の信号の混在レベルを判定し、前記混在レベルが所定値以下であれば、前記機構部を制御して雑音を発生させることを特徴とする請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
さらに、ユーザからのノイズ発生操作を受け付ける操作部を備え、
前記制御部は、前記操作部に対するノイズ発生操作を受けて、雑音が発生するように前記機構部を制御することを特徴とする請求項6、7又は8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記付属装置は、前記機構部を制御する機構制御部を備え、
前記雑音抑圧手段及び前記雑音情報生成手段は、
前記機構制御部からの指示に応じて、雑音の抑圧及び雑音情報の生成を行なうことを特徴とする請求項6乃至9の何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項11】
情報処理装置と、該情報処理装置に接続された付属装置とを含む情報処理システムであって、
前記情報処理装置は、
雑音情報を用いて劣化信号中の雑音を抑圧する雑音抑圧手段と、
前記劣化信号中の雑音を抑圧した結果に基づいて前記雑音情報を生成する雑音情報生成手段と、
を備え、
前記付属装置は、
前記雑音抑圧手段が抑圧すべき雑音を発生させる機構部と、
前記雑音抑圧手段が雑音抑圧処理を行なうタイミングで雑音が発生するように前記機構部を制御する機構制御部と、
を備えることを特徴とする情報処理システム。
【請求項12】
情報処理装置に接続可能な付属装置の制御方法であって、
前記情報処理装置は、
雑音情報を用いて劣化信号中の雑音を抑圧する雑音抑圧手段と、
前記劣化信号中の雑音を抑圧した結果に基づいて前記雑音情報を生成する雑音情報生成手段と、
を備え、
前記付属装置は、前記雑音抑圧手段が抑圧すべき雑音を発生させる機構部を備え、
前記雑音抑圧手段が雑音抑圧処理を行なうタイミングで雑音が発生するように機構部を制御することを特徴とする付属装置の制御方法。
【請求項13】
雑音を発生させる機構部を備えた付属装置を接続可能な情報処理装置の制御方法であって、
劣化信号中において、前記機構部が発生させた雑音を抑圧し、
前記劣化信号中の前記雑音を抑圧した結果に基づいて雑音情報を生成することを特徴とする情報処理装置の制御方法。
【請求項14】
情報処理装置と、該情報処理装置に接続された付属装置とを含む情報処理システムの制御方法であって、
抑圧すべき雑音を前記付属装置において発生させ、
前記付属装置において発生した前記雑音が混在する劣化信号を入力し、
前記劣化信号中の前記雑音を抑圧し、
前記劣化信号中の雑音を抑圧した結果に基づいて雑音情報を生成することを特徴とする情報処理システムの制御方法。
【請求項15】
情報処理装置に接続可能な付属装置の制御プログラムであって、
前記情報処理装置は、
雑音情報を用いて劣化信号中の雑音を抑圧する雑音抑圧手段と、
前記劣化信号中の雑音を抑圧した結果に基づいて前記雑音情報を生成する雑音情報生成手段と、
を備え、
前記付属装置は、前記雑音抑圧手段が抑圧すべき雑音を発生させる機構部を備え、
前記雑音抑圧手段が雑音抑圧処理を行なうタイミングで雑音が発生するように機構部を制御する処理をコンピュータに実行させることを特徴とする付属装置の制御プログラム。
【請求項16】
雑音を発生させる機構部を備えた付属装置を接続可能な情報処理装置の制御プログラムであって、
劣化信号中において、前記機構部が発生させた雑音を抑圧する処理と、
前記劣化信号中の前記雑音を抑圧した結果に基づいて雑音情報を生成する処理と、
をコンピュータに実行させることを特徴とする情報処理装置の制御プログラム。
【請求項1】
情報処理装置に接続可能な付属装置であって、
前記情報処理装置は、
雑音情報を用いて劣化信号中の雑音を抑圧する雑音抑圧手段と、
前記劣化信号中の雑音を抑圧した結果に基づいて前記雑音情報を生成する雑音情報生成手段と、
を備え、
前記付属装置は、
前記雑音抑圧手段が抑圧すべき雑音を発生させる機構部と、
前記雑音抑圧手段が雑音抑圧処理を行なうタイミングで雑音が発生するように前記機構部を制御する機構制御部と、
を備えることを特徴とする付属装置。
【請求項2】
さらに、前記情報処理装置との接続を検知するセンサを備え、
前記機構制御部は、前記センサからの検知信号を受けて、雑音が発生するように前記機構部を制御することを特徴とする請求項1に記載の付属装置。
【請求項3】
前記機構制御部は、前記情報処理装置に設けられた制御部からの指示を受けて、雑音が発生するように前記機構部を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の付属装置。
【請求項4】
さらに、ユーザからの雑音発生操作を受け付ける操作部を備え、
前記機構制御部は、前記操作部に対する雑音発生操作を受けて、雑音が発生するように前記機構部を制御することを特徴とする請求項1、2又は3に記載の付属装置。
【請求項5】
さらに、経過時間を測定するタイマを備え、
前記機構制御部は、前記タイマが、所定時間の経過を検知した場合に、雑音が発生するように前記機構部を制御することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の付属装置。
【請求項6】
付属装置を接続可能な情報処理装置であって、
前記付属装置は、雑音を発生させる機構部を備え、
前記情報処理装置は、
雑音情報を用いて劣化信号中の雑音を抑圧する雑音抑圧手段と、
前記劣化信号中の雑音を抑圧した結果に基づいて前記雑音情報を生成する雑音情報生成手段と、
を備え、
前記雑音抑圧手段は、前記機構部が発生させた雑音を抑圧し、
前記雑音情報生成手段は、前記機構部が発生させた雑音を抑圧した結果に基づいて前記雑音情報を生成することを特徴とする情報処理装置。
【請求項7】
前記機構部を制御して雑音を発生させる制御部をさらに備えることを特徴とする請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記制御部は、入力した前記劣化信号中に含まれる雑音以外の信号の混在レベルを判定し、前記混在レベルが所定値以下であれば、前記機構部を制御して雑音を発生させることを特徴とする請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
さらに、ユーザからのノイズ発生操作を受け付ける操作部を備え、
前記制御部は、前記操作部に対するノイズ発生操作を受けて、雑音が発生するように前記機構部を制御することを特徴とする請求項6、7又は8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記付属装置は、前記機構部を制御する機構制御部を備え、
前記雑音抑圧手段及び前記雑音情報生成手段は、
前記機構制御部からの指示に応じて、雑音の抑圧及び雑音情報の生成を行なうことを特徴とする請求項6乃至9の何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項11】
情報処理装置と、該情報処理装置に接続された付属装置とを含む情報処理システムであって、
前記情報処理装置は、
雑音情報を用いて劣化信号中の雑音を抑圧する雑音抑圧手段と、
前記劣化信号中の雑音を抑圧した結果に基づいて前記雑音情報を生成する雑音情報生成手段と、
を備え、
前記付属装置は、
前記雑音抑圧手段が抑圧すべき雑音を発生させる機構部と、
前記雑音抑圧手段が雑音抑圧処理を行なうタイミングで雑音が発生するように前記機構部を制御する機構制御部と、
を備えることを特徴とする情報処理システム。
【請求項12】
情報処理装置に接続可能な付属装置の制御方法であって、
前記情報処理装置は、
雑音情報を用いて劣化信号中の雑音を抑圧する雑音抑圧手段と、
前記劣化信号中の雑音を抑圧した結果に基づいて前記雑音情報を生成する雑音情報生成手段と、
を備え、
前記付属装置は、前記雑音抑圧手段が抑圧すべき雑音を発生させる機構部を備え、
前記雑音抑圧手段が雑音抑圧処理を行なうタイミングで雑音が発生するように機構部を制御することを特徴とする付属装置の制御方法。
【請求項13】
雑音を発生させる機構部を備えた付属装置を接続可能な情報処理装置の制御方法であって、
劣化信号中において、前記機構部が発生させた雑音を抑圧し、
前記劣化信号中の前記雑音を抑圧した結果に基づいて雑音情報を生成することを特徴とする情報処理装置の制御方法。
【請求項14】
情報処理装置と、該情報処理装置に接続された付属装置とを含む情報処理システムの制御方法であって、
抑圧すべき雑音を前記付属装置において発生させ、
前記付属装置において発生した前記雑音が混在する劣化信号を入力し、
前記劣化信号中の前記雑音を抑圧し、
前記劣化信号中の雑音を抑圧した結果に基づいて雑音情報を生成することを特徴とする情報処理システムの制御方法。
【請求項15】
情報処理装置に接続可能な付属装置の制御プログラムであって、
前記情報処理装置は、
雑音情報を用いて劣化信号中の雑音を抑圧する雑音抑圧手段と、
前記劣化信号中の雑音を抑圧した結果に基づいて前記雑音情報を生成する雑音情報生成手段と、
を備え、
前記付属装置は、前記雑音抑圧手段が抑圧すべき雑音を発生させる機構部を備え、
前記雑音抑圧手段が雑音抑圧処理を行なうタイミングで雑音が発生するように機構部を制御する処理をコンピュータに実行させることを特徴とする付属装置の制御プログラム。
【請求項16】
雑音を発生させる機構部を備えた付属装置を接続可能な情報処理装置の制御プログラムであって、
劣化信号中において、前記機構部が発生させた雑音を抑圧する処理と、
前記劣化信号中の前記雑音を抑圧した結果に基づいて雑音情報を生成する処理と、
をコンピュータに実行させることを特徴とする情報処理装置の制御プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−100031(P2011−100031A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−255421(P2009−255421)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
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