説明

情報処理装置および情報処理方法

【課題】ユーザによる表示画像のスクロール操作を支援する。
【解決手段】コンテンツ表示開始操作に応じて初期画像をディスプレイに表示させる(S10、S12)。さらにユーザがタッチパネルに対しスクロール操作を行うと(S14)、表示対象の画像の基準位置と、それに対応する画面の基準位置とにずれが発生したか否かを監視し、ずれがない場合はスクロール操作に応じて表示領域を移動させる(S16のN、S20)。ずれが発生したらスクロール調整のための表示領域移動速度を各時刻のずれ量に基づき算出し、本来の表示領域の位置に当該移動速度による変位を加算したうえ、当該位置に表示領域を移動させる(S16のY、S18、S20)。変位の加算はスクロール操作の有無にかかわらずずれがなくなるまで継続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示を伴う情報処理を行う情報処理装置、および当該装置で用いられる情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯ゲーム機、携帯電話、PDA(Personal Data Asistance)、タブレット端末など、携帯を想定した情報機器が普及している。このような機器はサイズ上の制約や携帯した際の利便性などの観点からその入力手段が制約される。結果として、これらの機器に特化した入力手段や機能が独自の発達を遂げてきた。
【0003】
その一端として近年では、ディスプレイにタッチパネルを搭載することにより表示と入力を同じ領域で行える装置が一般的になってきた。タッチパネルを導入すると、アイコンなどの対象物の選択や移動、ウェブページや文書の表示画面のページめくりなどを、2次元平面にありながらあたかも現物があるかのように行うことができ、直感的な操作が可能となる。
【0004】
一方、多くの情報を提供する文書や画像を、見やすい文字やオブジェクトのサイズで表示させるためには、限られた面積のディスプレイにおいてその一部を表示しスクロールさせる必要性が出てくる。スクロール操作として、ページを表示させた状態でタッチパネルに接触させた指やポインティングデバイスで操作可能な画像上のポインタを任意の方向に移動させることにより、ページが同方向に移動するように表示領域を移動させることが考えられる。これによりページを実際にさわって移動させているのと同様の感覚が得られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような任意方向へのスクロール操作を可能とする環境は、一方で、表示中の領域が表示対象のページ全体のどこに位置するのか、所望の領域を表示させるのにどの方向へスクロールすればよいか、表示中の領域以外の領域にどのような情報や画像があったか、といった大局的な把握がしづらい、という側面を有する。このように、タッチパネルやポインティングデバイスによって実現される自由なスクロール操作によって、場合によっては情報取得の効率性が妨げられることが考えられる。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的はユーザによる表示画像のスクロール操作を支援する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は情報処理装置に関する。この情報処理装置は、ディスプレイに表示させた画像に対しユーザが入力した指示点に係る情報を取得し、当該指示点の移動を表示画像のスクロール操作として検知する操作情報取得部と、スクロール操作がなされたことが検知されたら、当該スクロール操作に応じて表示領域を移動させるとともに、表示対象の画像に設定された基準位置と、それに対応づけて画面に設定された基準位置とのずれの発生を監視し、ずれが発生した場合は、スクロール操作中か否かに関わらず、表示領域の位置に、ずれを解消する方向の変位を加えるスクロール制御部と、スクロール制御部が決定した動きで表示領域が移動するように、各時刻の出力画像を生成しディスプレイに表示させる表示画像生成部と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明の別の態様は情報処理方法に関する。この情報処理方法は、情報処理装置において、ディスプレイに表示させた画像に対しユーザが入力した指示点に係る情報を取得し、当該指示点の移動を表示画像のスクロール操作として検知するステップと、スクロール操作がなされたことが検知されたら、当該スクロール操作に応じて表示領域を移動させるとともに、表示対象の画像に設定された基準位置と、それに対応づけて画面に設定された基準位置とのずれの発生を監視し、ずれが発生した場合は、スクロール操作中か否かに関わらず、表示領域の位置に、ずれを解消する方向の変位を加えるステップと、最終的に決定した動きで表示領域が移動するように、各時刻の出力画像を生成し前記ディスプレイに表示させるステップと、を含むことを特徴とする。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、ユーザは表示画像のスクロール操作を良好に行える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施の形態における情報処理装置の外観例を示す図である。
【図2】本実施の形態における情報処理装置の構成を詳細に示す図である。
【図3】本実施の形態における表示画像のスクロールの制御手法を説明するための図である。
【図4】本実施の形態において基準位置を設定しスクロール調整を行ったときの画面例を示す図である。
【図5】本実施の形態においてスクロール調整動作を着目点の位置合わせに用いた場合の処理について説明するための図である。
【図6】本実施の形態においてスクロール調整動作を着目点の位置合わせに用いた別の例を示す図である。
【図7】本実施の形態において情報処理装置が表示画像のスクロールを制御する処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は本実施の形態における情報処理装置の外観例を示している。情報処理装置10は携帯電話、PDA、携帯ゲーム機、タブレット端末など、表示機能とその他の情報処理機能を一体的に備えた装置のいずれでもよい。あるいは図1で示した情報処理装置10の外観を有する装置を表示および入力のための装置とし、その他の情報処理機能は当該装置と接続した別の筐体に設けるようにしてもよい。情報処理装置10は機能に応じた様々な処理機構を備えてよいが、それらは一般的な技術を利用できるため適宜説明を省略する。
【0013】
情報処理装置10は、ディスプレイ14が本体前面に配置され、その上面をタッチパネル12が覆う構成を有する。ディスプレイ14の背面にはCPU、グラフィックプロセッサ、サウンドプロセッサ、メモリなど各種情報処理に必要な機構が内蔵されている(図示せず)。ディスプレイ14は液晶ディスプレイ、EL(Electronic Luminescence)ディスプレイ、プラズマディスプレイなど一般的なディスプレイのいずれかでよい。
【0014】
タッチパネル12は抵抗膜方式、光学式、静電容量結合式など実用化されている方式のいずれかで実現し、指7やタッチペンなどによる接触点を検知する。情報処理装置10はそのほか、音声を出力するスピーカ、イヤホン接続端子、他の装置との通信を行う赤外線ポートや無線LANの機構、電池ボックスなどを備えてよいが、ここでは図示を省略している。ディスプレイ14には、メニュー画面、アイコンなどユーザの操作入力に必要な画面、情報処理の結果であるゲーム画面、動画再生画面、テキスト表示画面、静止画表示画面などを情報処理装置10の機能に応じて表示する。
【0015】
図2は情報処理装置10の構成を詳細に示している。情報処理装置10は上述したタッチパネル12、ディスプレイ14のほか、コンテンツのプログラムや各種データを記憶したコンテンツファイル記憶部16、タッチパネル12からの入力信号受信、画像データのディスプレイ14への出力を制御する入出力制御部20、タッチパネルからの入力信号を操作内容の情報に変換する操作情報変換部22、操作内容に応じてコンテンツを処理するコンテンツ処理部24、画像のスクロールを制御するスクロール制御部26、および表示画像を生成する表示画像生成部30を含む。
【0016】
図2において、様々な処理を行う機能ブロックとして記載される各要素は、ハードウェア的には、CPU、メモリ、その他のLSIで構成することができ、ソフトウェア的には、コンテンツを処理したり画像処理を行うプログラムなどによって実現される。したがって、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは当業者には理解されるところであり、いずれかに限定されるものではない。
【0017】
入出力制御部20は既存の方法で、タッチパネル12およびディスプレイ14と接続し、データの入出力を制御する。タッチパネル12から受信する入力信号は、タッチパネル12上でユーザが触れた接触点の座標、接触点が連続的に移動したときの座標の移動経路などを表す。タッチパネル12における接触点の検知手法はその方式によって異なるためここでは言及しない。入出力制御部20はまた、ディスプレイ14に表示画像のビデオ信号を出力する。
【0018】
コンテンツファイル記憶部16は、ユーザによるタッチパネル操作などに応じ、コンテンツ表示に係る情報処理を行うのに必要な各種データを格納する。ここで「コンテンツ」は、コンピュータゲーム、映画、音楽、小説、写真、地図、ウェブページなど、電子的な処理により表現が可能な対象であればその種類やデータの格納経路は限定されない。なお本実施の形態は、一般的な「コンテンツ」以外に、通信、スケジュール管理、住所録、表計算など一般的な情報処理に対しても適用できるが、以下の説明ではそれらも含め全て「コンテンツ」とする。
【0019】
例えばコンテンツがゲームであれば、コンテンツファイル記憶部16はそのプログラム、プレイヤーの情報、前回のプレイ時の到達レベルなどの情報を記憶する。コンテンツが映画や音楽であれば、圧縮符号化されたビデオデータ、オーディオデータと、それを復号再生するためのプログラムなどを記憶する。コンテンツファイル記憶部16は、ハードディスクドライブでもよいし、メモリカード、ROMディスク、光ディスク、光磁気ディスクなどのリムーバブル記録媒体とそれに対応した読み取り装置との組み合わせでもよい。
【0020】
操作情報変換部22は、タッチパネル12からの入力信号を入出力制御部20から取得し、当該信号に含まれる接触点の座標に基づき、ユーザが意図した操作内容を特定する。例えば表示画像中にGUI(Graphical User Interface)をオンスクリーン表示している場合は、接触点の座標とGUIの位置との対応関係に基づき、接触対象のGUIに対応する操作内容を特定し、コンテンツ処理部24に通知する。
【0021】
また操作情報変換部22は、GUI以外の表示画像上で1点の接触が発生し、当該接触点が移動していく場合に、それをスクロール操作と認識し、接触点の位置の時間変化をスクロール制御部26に通知する。このとき操作情報変換部22は、必要に応じてタッチパネル上の接触点の座標をスクリーン座標系の値に変換しておく。
【0022】
スクロール制御部26は、通知された接触点の位置の時間変化に基づき表示画像のスクロール制御を行う。基本的には、接触が発生したときの接触点の画像上の位置を特定し、当該位置が、スクリーン座標系において移動する接触点の座標に追随するように、画像上の表示領域を決定していく。表示領域は、例えばディスプレイ14の出力フレームに対応させて順次決定する。
【0023】
スクロール制御部26はさらに、表示対象の画像に設定された基準位置と、それに対応してディスプレイ14の画面に設定された基準位置とのずれを監視し、表示領域の決定時に、当該ずれ量に応じた動きを自動で加える。詳細は後述するが、当該ずれがある場合は、ユーザがスクロール操作をしているか否かに関わらず、ずれを解消する方向への表示領域の動きを加える。結果としてスクロール操作中は、スクロール操作によって定まる表示領域の位置に、当該動きによる変位を加算することになる。
【0024】
スクロール制御部26は、ずれ検出の対象となる画像の基準位置と画面の基準位置の組、およびずれとみなす条件を記述した基準位置設定ファイル28を内部のメモリなどに記憶する。コンテンツファイル記憶部16に格納されるコンテンツファイルとともに提供された基準位置設定ファイル28を読み出して当該メモリに格納してもよい。
【0025】
コンテンツ処理部24は、コンテンツファイル記憶部16が記憶するプログラムや画像データなどを用い、操作内容に応じてゲームを進捗させたり動画や音楽を再生するために必要な処理を行う。具体的な処理手順はコンテンツの内容によって既存の技術を適用できる。表示画像生成部30は、コンテンツ処理部24またはスクロール制御部26からの要求に従い、出力すべき画像のデータを生成し、入出力制御部20に出力する。表示画像生成部30が生成する画像は、コンテンツ処理部24が処理した結果として新たに表示すべき画像、あるいは表示中の画像の表示領域をスクロール制御部26が決定した領域に移動させた画像である。
【0026】
前者の場合、表示画像生成部30は、コンテンツ処理部24からの指示に従い、コンテンツファイル記憶部16から必要な画像データを読み出すなどして新たな画像を描画する。後者の場合、表示画像生成部30は、スクロール制御部26から表示領域の情報を受け取り、既存の技術により描画対処の領域を移動させる。生成した画像は入出力制御部20内のフレームバッファに格納され、入出力制御部20が適当なタイミングでディスプレイ14に出力することにより表示される。
【0027】
図3はスクロール制御部26が行う表示画像のスクロールの制御手法を説明するための図である。まず表示対象の画像42中、表示領域40が表示されているとする。この状態で画面上の点44を始点としたユーザの接触が発生し、そのまま終点46まで接触点が移動したとする。この操作における始点44のスクリーン座標系の座標(Xs1,Ys1)を操作情報変換部22から通知されると、スクロール制御部26は、それを画像42上の座標に変換する。この座標は、同図三角印を付した破線および丸印を付した破線の長さに対応する。
【0028】
そして当該画像42上の座標が、画面における始点座標(Xs1,Ys1)から終点座標(Xs2,Ys2)への接触点の移動に追随するように、表示領域40を移動させる。結果として接触点移動後の画像と表示領域の位置関係は、画像48と表示領域40として図示するようになる。すなわち接触点の座標は画像上では移動しない。なお画面の領域が表示領域に対応するため、説明上、同図では表示領域40を固定させ、相対的に画像が移動するように表されている。
【0029】
このように表示領域40の位置を、出力フレームに対応する各時刻で決定することにより、タッチパネル12に接触した指などで表示画像を押さえて移動させるような表現により画像のスクロールが行える。この例において、接触点が終点46へ到達した際の表示領域40は、画像48の上端および左端からはみ出した状態となっている。はみ出した部分は本来の画像のデータがないため、黒い塗りつぶし画像や所定の背景画像などを表示する。
【0030】
本実施の形態では、このように表示対象の画像の周囲に所定幅のマージン領域を設けるとともに、表示領域が当該マージン領域側へはみ出したら、表示領域を表示画像側へ戻す動きを加える。このスクロール調整処理は、ユーザがスクロール操作を行っているか否か、ユーザがタッチパネル12に触れているか否かに関わらず実施する。これによりスクロール操作中に画面が画像の端へ到達し、突然止まってしまうことによる唐突感がなくなるとともに、画像として意味をなさないマージン領域からの表示領域の復帰を自然な動きでサポートする。
【0031】
加える動きを決定づけるため、画像および画面に設定した対応する基準位置のずれ量を利用する。この場合に設定される画像の基準位置は画像の矩形の4つの辺(例えば画像48における辺AB、BC、CD、DA)であり、各辺に対し、画面の矩形における同じ位置の辺(表示領域40を画面として頂点A’B’、B’C’、C’D’、D’A’)がそれぞれ基準位置として対応づけられる。また画面の基準位置が画像の外側に位置する場合にずれが生じていると判断し、対応する基準位置の距離をずれ量として取得する。
【0032】
例えば同図において、画面の辺A’B’および辺D’A’が画像48の外側にあるため、当該辺A’B’の位置Syと画像48の対応する辺ABの位置Iyとの距離Δy、辺D’A’の位置Sxと画像48の対応する辺DAの位置Ixとの距離Δxを取得する。基準位置はこのように線として設定し、それと垂直な方向の距離をずれ量として取得してもよいし、頂点Aなどの点として設定し要素ごとに計算してもよい。
【0033】
そして当該ずれ量が大きいほど早い速度、または加速度で、画像と画面の対応する基準位置が一致する方向に表示領域を移動させる。具体的には出力するフレームに対応する各時刻でずれ量を取得することにより、フレーム間での表示領域の移動速度を算出し、次の時刻の表示領域を決定する。例えば次の式で、各時刻tにおける速度ベクトル(Vx(t),Vy(t))を決定する。
Vx(t)=kx×Δx(t)
Vy(t)=ky×Δy(t)
ここでkx、kyは所定の定数である。
【0034】
そして表示領域の本来の位置座標に、上記速度ベクトルで規定されるスクロール調整動作による変位を加算することにより、各時刻の表示領域の位置座標を最終決定する。ここで「本来の位置座標」とは、スクロール操作が行われている場合にあっては、その接触点の移動に追随する表示領域の位置座標であり、スクロール操作がなされていなかったり接触点が停止しているときはその時点での表示領域の位置座標である。結果として時刻tにおける表示領域の位置座標(例えば左上の座標)(x(t),y(t))は、表示領域の本来の位置座標を(x’(t),y’(t))、フレーム間の時間間隔をΔtとすると、次のように決定できる。
x(t)=x’(t)+Vx(t−1)Δt
y(t)=y’(t)+Vy(t−1)Δt
【0035】
図4は上述のように基準位置を設定しスクロール調整を行ったときの画面例を示している。同図において画面50には、ウェブページなどの画像52が表示されているとする。そこでユーザの指7により右斜め下方向にスクロール操作がなされ、表示領域が画像52からはみ出すと、黒い塗りつぶしなどのマージン領域54が表示される。この状態において指7が接触したまま停止した状態であっても、上記のとおり各基準位置を一致させる方向、すなわちマージン領域54をなくす方向に、表示領域が移動する。
【0036】
指7によるスクロール操作が、このスクロール調整動作と逆方向に継続している場合でも、スクロール操作の速度がスクロール調整動作の速度より小さければ、表示領域はマージン領域54をなくす方向に移動する。相対的にみると、画面50内で画像52が同図矢印方向に移動する。結果としてマージン領域54がなくなり、画像52の上端および左端が画面50の上端および左端にそれぞれ一致すると、各基準位置のずれ量が0となるため、スクロール調整動作は停止する。
【0037】
なおずれ量から表示領域の動きを決定する規則は、上記した関数に限られない。例えば切片を加えた1次関数、2次以上の関数などでもよいし、それらの関数のいずれかによって加速度を決定してもよい。いずれにしろずれ量の増加に伴いスクロール調整動作がより強く働くようにすればよい。
【0038】
図3、4の例は、画面が画像からはみ出した場合に対するスクロール調整であったが、本実施の形態はそれに限らない。図5はスクロール調整動作を着目点の位置合わせに用いた場合の処理について説明するための図である。同図において画面60には、「ディスク」および「データ」なる2列のカラムが表示されている。「ディスク」のカラムには、「ディスクA」、「ディスクB」、「ディスクC」、「ディスクD」、・・・といった「ディスク」の選択肢の配列が、「データ」のカラムには、「データa」、「データb」、「データc」、・・・といった「データ」の選択肢の配列が、ボタン状のGUIによって表されている。
【0039】
このような画面60において、タッチパネル12へのスクロール操作により、各カラムに属するボタンの配列を画面外にある配列も含め、縦方向に順次移動できるようにする。そしてそのうちのいずれかのボタンへの短期間の接触により選択入力がなされると、当該ボタンを選択対象として強調表示する。同図の例では「ディスクC」および「データb」が強調表示されている。しかしスクロール操作を可能としたことにより、選択されたボタンは縦方向の様々な位置にある可能性がある。
【0040】
そこで選択入力がなされたら、画面の縦方向の中央など所定の位置に選択対象のボタンが表示されるようにスクロール調整を行う。これにより、選択後にスクロール操作を自由に行っても、いずれは選択したボタンが所定位置に戻るため、当該ボタンを見失ってしまうなどの不都合が発生しない。また同図のように異なるカラムを並べて表示するような場合には、選択対象のボタンが同じ高さで表示されるため、全選択対象の把握や比較が容易である。
【0041】
このような態様においては、選択肢たる各ボタンの縦方向の中央の位置にそれぞれ基準位置を設定するとともに、それらに対応づけて画面の縦方向の中央の位置に基準位置Syを設定しておく。そして選択入力がなされた際、対象となったボタンの基準位置を有効とすることにより、画面の基準位置Syとのずれ量を取得する。この態様では、画面の基準位置Syに対し上側、下側のどちらにずれていても、ずれとみなしてスクロール調整を行う。
【0042】
図5の例では、ボタン「データb」はスクロール調整が終了するなどして、その基準位置Iy2が画面の基準位置Syと一致している。一方、ボタン「ディスクC」はその基準位置Iy1が画面の基準位置Syより下側にΔyだけずれている。そこで図3で説明したのと同様に速度、または加速度を決定し、この場合は全表示領域に代わり1つのカラムのボタン配列のみを、それに則り上側に移動させることによりスクロール調整を行う。
【0043】
なお上記のとおり、この段階でユーザによるスクロール操作が行われていても、スクロール調整動作はそれに関わらずなされ、各時刻でのボタンの位置が、両動作の和によって決定する。図5の例は縦方向に配列されたボタンからなるカラムが横に2つ並んだ画面であったが、本実施の形態はそれに限らず、横方向の配列でもよいし、1つまたは3つ以上の配列でもよい。さらに一方向のみのスクロールでなくてもよく、任意の方向のスクロールを可能にしたうえ、画面中央など2次元座標で表される位置に、ボタンなど画像上の着目点を戻すようにしてもよい。2次元空間での調整は図3で説明したとおりである。
【0044】
図6はスクロール調整動作を着目点の位置合わせに用いた別の例を示している。画面62の構成は図5の画面60と同様、「ディスク」および「データ」なる2列のカラムからなり、それぞれを縦方向にスクロール可能とする点も同様である。そして左のカラムと右のカラムのボタンに表象される情報には親子関係があるとする。例えば「ディスク」のカラムで選択されたディスクに格納されたデータが「データ」のカラムに表示される。同図ではボタン「ディスクB」が選択対象として強調表示され、それに格納されたデータとして「データa」、「データb」、「データc」、・・・・のボタンが表示されているとする。
【0045】
そしてこの例では、「親」である「ディスク」のカラムで選択されたボタン「ディスクB」の位置合わせを行わず、当該ボタンの位置を、「子」である「データ」のカラムのボタン配列の画像に対する画面の基準位置とする。すなわち「ディスク」のカラムで選択したボタンの位置に応じて、「データ」のカラムの画面の基準位置を変化させる。例えば選択対象である「ディスクB」ボタンの上端を画面の基準位置Syとし、「データ」カラムのボタン配列の上端、すなわち最上のボタン「データa」の上端を画像の基準位置Iyとする。
【0046】
この場合も図5と同様、画面の基準位置Syに対し画像の基準位置Iyが上側、下側のどちらにずれていても、ずれとみなしてスクロール調整を行う。同図においてボタン「データa」はその基準位置Iyが画面の基準位置Syより上側にΔyだけずれている。そこで図3で説明したのと同様に速度、または加速度を決定し、「データ」のカラムのボタン配列のみを、それに則り下側に移動させることによりスクロール調整を行う。
【0047】
結果として、どちらのカラムをどのようにスクロールさせようと、「子」であるカラムにおける最上のボタンが「親」であるカラムにおいて選択中のボタンと同じ位置に戻るようになる。このように、画面の基準位置を固定せずユーザの入力などに応じて動的に決定することにより、データの親子関係など様々な情報を画面における表示位置で表現することができる。例えば図5の例における画面の基準位置Syを、ユーザ入力により移動できるようにしてもよい。そのとき図5の画面に、画面の基準位置Syを決定づける「親」となるボタン配列からなるカラムをさらに表示してもよい。
【0048】
次にこれまで述べた構成によって実現できる情報処理装置10の動作について説明する。なお画像のスクロールに係る処理以外の情報処理および画像表示処理は、コンテンツや操作内容によって様々考えられ、一般的な技術を用いて適宜実施できるため、ここでは説明を省略する。図7は情報処理装置10が表示画像のスクロールを制御する処理手順を示すフローチャートである。まずユーザが、ディスプレイ14に表示されたメニュー画面からコンテンツを選択するなどして表示を開始する指示をタッチパネル12を介して入力すると(S10)、コンテンツ処理部24および表示画像生成部30は、コンテンツファイル記憶部16から必要なデータを読み出し初期画像をディスプレイ14に表示させる(S12)。
【0049】
この状態で、ユーザがタッチパネル12に対しスクロール操作を行うと(S14)、スクロール制御部26は、基準位置設定ファイル28に設定されている表示対象の画像の基準位置と、それに対応する画面の基準位置とにずれが発生したか否かを監視する(S16)。なお図3で説明したように、基準位置設定ファイル28において設定された条件によっては、ずれていてもその方向から、ずれと判定されない場合がある。また図5に示した態様の場合、S14のスクロール操作の代わりにボタン選択操作をきっかけにずれの発生を監視するようにしてもよい。
【0050】
ずれがない場合は(S16のN)、接触開始時の画像上の位置がタッチパネル12上の接触点の移動に追随するように表示領域を移動させる(S20)。一方、ずれが発生したら(S16のY)、スクロール調整のための表示領域移動速度を各時刻のずれ量に基づき順次算出し、スクロール操作による本来の表示領域の位置に、当該移動速度による変位を加算したうえ(S18)、当該位置に表示領域を移動させる(S20)。S18の処理は、S14のスクロール操作が継続しているか否かに関わらず、ずれが発生している期間の各時刻において行う。
【0051】
実際にはスクロール制御部26に、スクロール操作によって表示領域を移動させる機構と、スクロール調整動作を発生させる機構とを独立に設けてもよい。この場合、本来の表示領域の位置に調整による変位を加算するという概念は厳密には生じないが、最終的な表示領域は加算された動きとなる。あるいはスクロール操作による表示領域の本来の移動量に、スクロール調整動作による変位を加算することにより、調整動作を加味した移動量を算出してから、当該移動量を前の時刻の表示領域に加算するようにしても同様の動きが得られる。以後、表示終了の指示入力がなされない間は(S22のN)、S14のスクロール操作に応じてS16からS20の処理を繰り返し、ユーザがコンテンツの表示を終了する指示入力を行ったら処理を終了する(S22のY)。
【0052】
以上述べた本実施の形態によれば、画面および表示対象の画像に対し、対応する基準位置を設定し、ユーザのスクロール操作によって当該基準位置にずれが生じたら、表示領域に、当該ずれをなくす方向の動きを加える。例えば表示対象の画像の周囲にマージン領域を設け、表示領域にマージン領域が含まれたら、それをずれとして、表示領域が画像側に戻るような動きを加える。これにより、ユーザが画像の端を認識することなくスクロール操作を行っても、表示領域が画像端で突然止まるような唐突感がなくなる。
【0053】
またずれ量が大きいほど元に戻す速度を早くすることにより、勢いでマージン領域が増える方向にスクロール操作を進めてしまっても、スクロール途中の段階で表示領域が元に戻っていく状態となりやすい。結果として、自由なスクロールを許容しつつも、意味のない領域が長らく表示されたり、ユーザが現在の表示位置を見失ってしまったりする不都合の発生が抑制され、効率のよい画像表示が実現できる。
【0054】
同様の基準位置を、選択されたGUIなど画像中の着目点と、それを表示させたい画面上の位置に設定することにより、どのようなスクロール操作を行っても最終的には着目点を所定の位置に戻すことができる。これにより、着目点を見失うことがなくなるとともに、他の着目点と位置合わせさせるなどの表現上の工夫を容易に実装できる。
【0055】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。上記実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0056】
例えば本実施の形態では、タッチパネルへのユーザの接触操作を入力情報として検知したが、ユーザが画面上の位置を指示点として入力できればタッチパネルへの接触操作でなくてもよい。例えば表示画面に表示させたポインタやアイコンなどを、マウス、トラックボール、トラックパッド、ジョイスティックなどのポインティングデバイスで操作することによりスクロール操作を行ってもよい。この場合のスクロール操作は、ポインティングデバイスに具備された所定のボタンを押下しながらポインタを移動させるなど一般的に用いられる態様でよく、このようにして移動する指示点を本実施の形態における接触点と同等に扱うことにより同様の効果を得られる。
【符号の説明】
【0057】
10 情報処理装置、 12 タッチパネル、 14 ディスプレイ、 16 コンテンツファイル記憶部、 20 入出力制御部、 22 操作情報変換部、 24 コンテンツ処理部、 26 スクロール制御部、 28 基準位置設定ファイル、 30 表示画像生成部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイに表示させた画像に対しユーザが入力した指示点に係る情報を取得し、当該指示点の移動を表示画像のスクロール操作として検知する機能と、
スクロール操作がなされたことが検知されたら、当該スクロール操作に応じて表示領域を移動させるとともに、表示対象の画像に設定された基準位置と、それに対応づけて画面に設定された基準位置とのずれの発生を監視し、ずれが発生した場合は、スクロール操作中か否かに関わらず、表示領域の位置に、ずれを解消する方向の変位を加える機能と、
最終的に決定した動きで表示領域が移動するように、各時刻の出力画像を生成し前記ディスプレイに表示させる機能と、
をコンピュータに実現させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項2】
前記変位を加える機能は、前記基準位置のずれ量が大きいほど大きい速度によって、前記ずれを解消する方向の変位を決定することを特徴とする請求項1に記載のコンピュータプログラム。
【請求項3】
前記変位を加える機能は、表示対象の画像に表された選択肢を示すGUI(Graphical User Interface)のそれぞれに設定された基準位置のうち、ユーザにより選択されたGUIに設定された基準位置を有効として、画面内部に設定された基準位置とのずれの発生を監視することを特徴とする請求項1または2に記載のコンピュータプログラム。
【請求項4】
前記変位を加える機能は、表示対象の画像の辺に設定された基準位置と、画面における同じ位置の辺に設定された基準位置とのずれの発生を監視し、画面に設定された基準位置が表示対象の画像の外側にあるとき、ずれが発生したと判定することを特徴とする請求項1または2に記載のコンピュータプログラム。
【請求項5】
前記変位を加える機能は、前記画面に設定された基準位置を、ユーザの入力によって変化させることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のコンピュータプログラム。
【請求項6】
前記表示対象の画像は、同方向に個別にスクロールする複数のGUIの配列を含む構成を有し、
前記変位を加える機能は、配列ごとに選択されたGUIに設定された基準位置と、画面内部に設定された全配列に共通の基準位置とのずれの発生を監視し、配列ごとにずれを解消する方向の変位を加えることを特徴とする請求項3に記載のコンピュータプログラム。
【請求項7】
ディスプレイに表示させた画像に対しユーザが入力した指示点に係る情報を取得し、当該指示点の移動を表示画像のスクロール操作として検知する操作情報取得部と、
スクロール操作がなされたことが検知されたら、当該スクロール操作に応じて表示領域を移動させるとともに、表示対象の画像に設定された基準位置と、それに対応づけて画面に設定された基準位置とのずれの発生を監視し、ずれが発生した場合は、スクロール操作中か否かに関わらず、表示領域の位置に、ずれを解消する方向の変位を加えるスクロール制御部と、
前記スクロール制御部が決定した動きで表示領域が移動するように、各時刻の出力画像を生成し前記ディスプレイに表示させる表示画像生成部と、
を備えたことを特徴とする情報処理装置。
【請求項8】
情報処理装置において、ディスプレイに表示させた画像に対しユーザが入力した指示点に係る情報を取得し、当該指示点の移動を表示画像のスクロール操作として検知するステップと、
スクロール操作がなされたことが検知されたら、当該スクロール操作に応じて表示領域を移動させるとともに、表示対象の画像に設定された基準位置と、それに対応づけて画面に設定された基準位置とのずれの発生を監視し、ずれが発生した場合は、スクロール操作中か否かに関わらず、表示領域の位置に、ずれを解消する方向の変位を加えるステップと、
最終的に決定した動きで表示領域が移動するように、各時刻の出力画像を生成し前記ディスプレイに表示させるステップと、
を含むことを特徴とする情報処理方法。
【請求項9】
ディスプレイに表示させた画像に対しユーザが入力した指示点に係る情報を取得し、当該指示点の移動を表示画像のスクロール操作として検知する機能と、
スクロール操作がなされたことが検知されたら、当該スクロール操作に応じて表示領域を移動させるとともに、表示対象の画像に設定された基準位置と、それに対応づけて画面に設定された基準位置とのずれの発生を監視し、ずれが発生した場合は、スクロール操作中か否かに関わらず、表示領域の位置に、ずれを解消する方向の変位を加える機能と、
最終的に決定した動きで表示領域が移動するように、各時刻の出力画像を生成し前記ディスプレイに表示させる機能と、
をコンピュータに実現させるコンピュータプログラムを記録したことを特徴とする記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−109667(P2013−109667A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255503(P2011−255503)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(310021766)株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメント (417)
【Fターム(参考)】