説明

情報処理装置および方法、並びにプログラム

【課題】DSDデータを扱う場合においても、波形情報に基づく処理を行うことができるようにする。
【解決手段】録音時にDSDデバイス2からI/O51を介して供給されてきたDSDデータはLPF57によりPCMデータに変換される。LPF57による変換には、タップ数が少なく、演算を容易に行うことが可能な変換、すなわち、粗い変換が用いられる。LPF57により得られるPCMデータがメータ表示用のPCMデータとなり、そのPCMデータに基づいて、メータ表示制御部58により、録音が行われているDSDデータの音量のメータ表示が行われる。本発明は、DSDデータを処理することが可能なパーソナルコンピュータなどに適用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置および方法、並びにプログラムに関し、特に、DSD(Direct Stream Digital)データを扱う場合においても、波形情報に基づく処理を行うことができるようにする情報処理装置および方法、並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、レコードやカセットテープなどのアナログ音源からのオーディオ信号や、CD(Compact Disk)やDAT(Digital Audio Tape)などのディジタル音源からのディジタルオーディオデータをパーソナルコンピュータに取り込み、エフェクトやアレンジなどの各種の編集を施すことによって自分好みのオーディオデータを作成する、いわゆるDTM(Desk Top Music)が人気を博している。
【0003】
このようなDTMにおいては、高音質化の要望も高く、例えば、44.1KHz/16bitの音楽CDのオーディオデータ(PCM(Pulse Code Modulation)方式によって符号化されたオーディオデータ)を、96KHzやそれ以上のサンプリング周波数にアップサンプリングしたり、20bit、24bitなどの量子ビット数により再量子化したりすることが行われている。これにより、基本的に、音楽CDのものよりも高音質なオーディオデータが得られる。
【0004】
ところで、音楽CDよりも高音質なオーディオデータのフォーマットとしてSACD(Super Audio CD)フォーマットがあり、SACDに記録されているオーディオデータの符号化方式にはDSD方式が採用されている。
【0005】
ここで、DSD方式について簡単に説明する。
【0006】
DSD方式は、図1に示すように、PCM方式が、例えば、サンプリング周波数44.1KHz(以下、適宜、1fsと示す)、量子ビット数16bitで音声信号を表すものであるのに対して、その64倍のサンプリング周波数44.1KHz×64=2.8224MHz(64fs)、1bitのデータで音声信号を表す符号化方式である。図1の1つのブロックは1bitのデータを表す。
【0007】
DSD方式によれば、音声信号のレベルの大小をパルス波形(1,0)の密度で表すことができるから、空間を伝達する音波そのものに近い波形を表現することができ、100KHzを超える再生帯域と、高いダイナミックレンジを確保することが可能となる。
【0008】
DSDについては特許文献1に開示されている。また、CDから取り込んだマルチビットデータ(16bit)であるオーディオデータをDSDデータ(DSD方式により符号化されたオーディオデータ)に変換する技術が特許文献2に開示されている。さらに、DSDデータに対して、フェードイン/アウトなどの振幅成分の処理を施すことを可能にする技術が特許文献3に開示されている。
【0009】
【特許文献1】特開平6−232755号公報
【特許文献2】特開平9−261071号公報
【特許文献3】特開平8−274644号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、1fsの期間に64個だけ現れるDSDデータの1,0の並びそのものは、直接、元のオーディオ信号の波形情報(振幅情報)を持たないことから、例えば、外部の機器からパーソナルコンピュータにDSDデータを取り込むときに、取り込んでいるDSDデータの音量をメータ表示させることや、所定の閾値以上の音量が検出されたときに自動的に録音を開始させることなどの、波形情報に基づく処理を行うことができないという課題があった。
【0011】
これらの処理は、いずれも、16bitなどの所定のbit数で元のオーディオ信号の波形情報が表されるPCMデータを扱う場合は可能な処理である。
【0012】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、DSDデータを扱う場合においても、波形情報に基づく処理を行うことができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の情報処理装置は、DSDデータを録音または再生するとき、録音または再生対象のDSDデータを、元のオーディオ信号の波形情報を有する他の符号化方式のオーディオデータに粗変換する変換手段と、変換手段による粗変換によって得られたオーディオデータに基づいて、波形情報に基づく処理を行う処理手段とを備えることを特徴とする。
【0014】
処理手段は、DSDデータを録音または再生するときの波形情報に基づく処理として、DSDデータの音量の表示を行うようにすることができる。
【0015】
処理手段は、DSDデータを録音するときの波形情報に基づく処理として、所定の閾値以上の音量が検出されたとき、DSDデータの録音を開始するようにすることができる。
【0016】
処理手段は、DSDデータを録音するときの波形情報に基づく処理として、所定の閾値以下の音量が検出されたとき、その検出されたDSDデータの位置を曲の切れ目と判断するようにすることができる。
【0017】
本発明の情報処理方法は、DSDデータを録音または再生するとき、録音または再生対象のDSDデータを、元のオーディオ信号の波形情報を有する他の符号化方式のオーディオデータに粗変換する変換ステップと、変換ステップの処理による粗変換によって得られたオーディオデータに基づいて、波形情報に基づく処理を行う処理ステップとを含むことを特徴とする。
【0018】
本発明のプログラムは、DSDデータを録音または再生するとき、録音または再生対象のDSDデータを、元のオーディオ信号の波形情報を有する他の符号化方式のオーディオデータに粗変換する変換ステップと、変換ステップの処理による粗変換によって得られたオーディオデータに基づいて、波形情報に基づく処理を行う処理ステップとを含む処理をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0019】
本発明の情報処理装置および方法、並びにプログラムにおいては、DSDデータを録音または再生するとき、録音または再生対象のDSDデータが、元のオーディオ信号の波形情報を有する他の符号化方式のオーディオデータに粗変換され、粗変換によって得られたオーディオデータに基づいて、波形情報に基づく処理が行われる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、DSDデータを扱う場合においても、波形情報に基づく処理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、本明細書に記載の発明と、発明の実施の形態との対応関係を例示すると、次のようになる。この記載は、請求項に記載されている発明をサポートする実施の形態が本明細書に記載されていることを確認するためのものである。従って、発明の実施の形態中には記載されているが、発明に対応するものとして、ここには記載されていない実施の形態があったとしても、そのことは、その実施の形態が、その発明に対応するものではないことを意味するものではない。逆に、実施の形態が発明に対応するものとしてここに記載されていたとしても、そのことは、その実施の形態が、その発明以外の発明には対応しないものであることを意味するものでもない。
【0022】
さらに、この記載は、本明細書に記載されている発明の全てを意味するものではない。換言すれば、この記載は、本明細書に記載されている発明であって、この出願では請求されていない発明の存在、すなわち、将来、分割出願されたり、補正により追加される発明の存在を否定するものではない。
【0023】
請求項1に記載の情報処理装置は、DSDデータを録音または再生するとき、録音または再生対象の前記DSDデータを、元のオーディオ信号の波形情報を有する他の符号化方式のオーディオデータ(例えば、PCMデータ)に粗変換する変換手段(例えば、図5のLPF57)と、前記変換手段による粗変換によって得られた前記オーディオデータに基づいて、前記波形情報に基づく処理を行う処理手段(例えば、図5のメータ表示制御部58)とを備えることを特徴とする。
【0024】
請求項5に記載の情報処理方法は、DSDデータを録音または再生するとき、録音または再生対象の前記DSDデータを、元のオーディオ信号の波形情報を有する他の符号化方式のオーディオデータに粗変換する変換ステップ(例えば、図7のステップ2)と、前記変換ステップの処理による粗変換によって得られた前記オーディオデータに基づいて、前記波形情報に基づく処理を行う処理ステップ(例えば、図7のステップS3)とを含むことを特徴とする。
【0025】
請求項6に記載のプログラムにおいても、各ステップが対応する実施の形態(但し一例)は、請求項5に記載の情報処理方法と同様である。
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【0027】
図2は、本発明を適用した録音・再生システムの構成例を示す図である。
【0028】
図2の録音・再生システムは、パーソナルコンピュータ1とDSDデバイス2が、例えば、USB(Universal Serial Bus)ケーブル3を介して接続されることによって構成される。
【0029】
パーソナルコンピュータ1は、DSDデバイス2から供給されてきたDSDデータ(DSD方式により符号化されたオーディオデータ)をUSBケーブル3を介して受信し、受信したDSDデータを内蔵するHDD(Hard Disk Drive)に記憶(録音)させる。HDDに録音されたDSDデータは、適宜、それを対象としてユーザにより再生、編集等が行われる。
【0030】
DSDデータの録音時には、例えば、DSDデータが、波形情報を有するPCMデータ(PCM方式により符号化されたオーディオデータ)に変換され、変換により得られたPCMデータに基づいて、図3に示すような、録音中の楽曲の音量を表すメータが表示される。録音時には、例えば、そのとき録音されている部分の音量が色の分布で表される。
【0031】
DSDデータの1,0の並びそのものは、直接、元のオーディオ信号(DSDデータを生成する元になったオーディオ信号)の波形情報を持たず、DSDデータそのままでは、波形情報に基づく音量のメータ表示などはできないことから、一旦、メータ表示用のものとしてPCMデータへの変換が行われ、変換により得られたPCMデータに基づいてメータ表示が行われる。なお、PCMデータは、16bitなどの所定の量子化ビット数のそれぞれのサンプル値により、元のオーディオ信号の波形情報を有するデータである。
【0032】
これにより、ユーザは、DSDデータを録音する場合であっても、PCMデータを録音する場合と同様、録音されている部分の音量を確認しながら、それを行うことができる。
【0033】
また、パーソナルコンピュータ1においては、DSDデータの録音時のメータ表示の他に、閾値以上の音量が検出されたときに、ユーザ操作によらずに録音を開始するDSDデータの自動録音、閾値以下の音量が検出されたときに、その検出された位置を楽曲の切れ目として判断する切れ目の自動検出処理などが、録音対象のDSDデータを変換して得られるPCMデータの波形情報に基づいて行われる。
【0034】
さらに、録音されたDSDデータを再生するときの音量のメータ表示なども、再生対象のDSDデータを変換して得られるPCMデータの波形情報に基づいて行われる。
【0035】
DSDデバイス2は、DSDデータを処理可能なオーディオデバイスであり、パーソナルコンピュータ1によりUSBケーブル3を介して行われる制御に従って駆動する。DSDデバイス2は、例えば、外部から入力されたアナログオーディオ信号からDSDデータを生成し、生成したDSDデータをパーソナルコンピュータ1に出力する。
【0036】
以上のような、DSDデータを変換して得られるPCMデータの波形情報に基づいて行われるパーソナルコンピュータ1の処理についてはフローチャートを参照して後述する。
【0037】
図4は、図2のパーソナルコンピュータ1の構成例を示すブロック図である。
【0038】
CPU(Central Processing Unit)11は、ROM(Read Only Memory)12に記憶されているプログラム、または、HDD19からRAM(Random Access Memory)13にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM13にはまた、CPU11が各種の処理を実行する上において必要なデータなどが適宜記憶される。
【0039】
CPU11、ROM12、およびRAM13は、バス14を介して相互に接続されている。このバス14にはまた、入出力インタフェース15も接続されている。
【0040】
入出力インタフェース15には、入力部16、表示部17、PCMデバイス18、HDD19、通信部20、およびUSBインタフェース21が接続される。
【0041】
入力部16は、キーボード、マウスなどよりなり、表示部17は、LCD(Liquid Crystal Display)などよりなる。DSDデータの録音時、表示部17には、図3に示すような音量のメータが表示される。
【0042】
PCMデバイス18は、CPU11による制御に従って、例えば、HDD19に記憶されているDSDデータから生成されたPCMデータを再生し、得られた音声信号を図示せぬスピーカから出力する。
【0043】
HDD19は、内蔵するハードディスクにDSDデータなどの各種のデータを記憶する。図4の例においては、HDD19にはオーディオデータ処理アプリケーション31も記憶されている。オーディオデータ処理アプリケーション31は、CPU11により実行され、DSDデータ、PCMデータ等のオーディオデータの処理に関する各種の機能を実現する。
【0044】
通信部20は、ネットワークを介しての通信処理を行い、USBインタフェース21は、USBケーブル3を介してDSDデバイス2との間で通信を行う。DSDデバイス2からUSBインタフェース21に対しては、上述したように、DSDデバイス2により生成されたDSDデータが供給されてくる。
【0045】
入出力インタフェース15にはまた、必要に応じてドライブ22が接続される。ドライブ22には、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリなどよりなるリムーバブルメディア23が適宜装着され、リムーバブルメディア23から読み出されたコンピュータプログラムが、必要に応じてHDD19にインストールされる。
【0046】
図5は、パーソナルコンピュータ1の機能構成例を示すブロック図である。図5に示すパーソナルコンピュータ1の各機能部は、図4のCPU11によりオーディオデータ処理アプリケーション31が実行されることによって実現される。なお、図5には、DSDデバイス2の一部の機能部も示されている。
【0047】
オーディオデータ処理アプリケーション31のI/O(Input/Output)51はオーディオドライバであり、DSDデバイス2を制御するとともに、DSDデバイス2から供給されてきたDSDデータを受信し、受信したDSDデータを録音制御部52とLPF(Low Pass Filter)57に出力する。例えば、図6Aに示すように、64samples(64fsの期間内に現れる64個の1bit)のDSDデータが所定の数だけまとまって構成されるブロック単位のDSDデータがDSDデバイス2から供給されてくる。
【0048】
図6Bは、DSDデバイス2がPCMデータも扱うことができる場合に、パーソナルコンピュータ1とDSDデバイス2の間で行われるPCMデータの送受信の単位であるブロックの例を示す図である。図6Bに示されるように、PCMデータの場合の送受信の単位となるブロックは、DSDデータの場合と較べて、1ブロックを構成するサブブロックの内容(DSDデータの場合は64samples、PCMデータの場合は1sample(16bit))だけが異なる。従って、DSDデータを扱う場合と、PCMデータを扱う場合とでは、1サブブロックの内容だけを異なるものとすれば、基本的に、同じ機構を用いることができる。
【0049】
また、I/O51は、ΔΣモジュレータ56から供給されてきたDSDデータをDSDデバイス2に送信する。例えば、HDD19に記憶されているDSDデータの再生時に、ΔΣモジュレータ56からDSDデータが供給されてくる。
【0050】
録音制御部52は、I/O51から供給されてきたDSDデータをHDD19に記憶させる。
【0051】
マルチビットデータ変換部53は、例えば、DSDデータの再生時に、HDD19から読み出されたDSDデータの足し算、掛け算の演算処理の前処理として、その演算処理において桁あふれが生じないように、DSDデータの1サンプルのデータである1bitを1,−1に置き換えるマルチビットデータへの変換を行う。マルチビットデータ変換部53により得られたマルチビットデータは足算掛算部54に出力される。
【0052】
足算掛算部54は、マルチビットデータ変換部53から供給されてきたデータに対して、必要に応じて、足し算・掛け算によるクロスフェード処理や、掛け算によるボリューム調整処理を施し、得られたデータ(マルチビットデータ)をLPF55に出力する。
【0053】
LPF55は、高域成分を除去し、得られたデータをΔΣモジュレータ56に出力する。ここで、LPF55により高域成分を除去するのは、DSDデータにはΔΣ変調のノイズシェーピング効果により高域に多くの量子化ノイズが含まれており、演算を繰り返すことによって量子化ノイズが蓄積され、そのようなDSDデータをそのまま再生した場合、ツィータなどのハードウェアを破壊するおそれがあるためである。
【0054】
ΔΣモジュレータ56は、LPF55から供給されてきたデータにΔΣ変調を施すことによって64fs/1bitのDSDデータを取得し、取得したDSDデータをI/O51に出力する。ΔΣ変調のノイズシェーピング効果によって原信号と分離され、高域成分に形成された量子化ノイズはDSDデバイス2のLPF74により除去される。なお、ΔΣモジュレータ56により得られたDSDデータはLPF57にも供給される。
【0055】
LPF57は、録音時にI/O51から供給されてきたDSDデータ、または、再生時にΔΣモジュレータ56から供給されてきたDSDデータをPCMデータに変換し、得られたPCMデータをメータ表示制御部58に出力する。LPF57により得られるPCMデータが、メータ表示用のPCMデータとなる。
【0056】
なお、LPF57による変換には、タップ数が少なく、演算を容易に行うことが可能な変換、すなわち、粗い変換が用いられる。すなわち、音量を表示するための波形情報を得ることができればよいだけであるから、一般的な音楽CDに記録されているものと同様の1fs/16bitほどの量子化精度は求められず、例えば、LPF57により得られるPCMデータは、1fs/5bitなどの量子化精度の低いデータとされる。
【0057】
これにより、メータを表示させるためにパーソナルコンピュータ1に負荷がかかってしまうのを防止することができる。
【0058】
メータ表示制御部58は、LPF57から供給されてきたPCMデータに基づいて、元のオーディオ信号の音量を算出し、算出した音量を表示部17にメータ表示させる。
【0059】
DSDデバイス2のΔΣモジュレータ71は、図示せぬ外部機器から供給されてきたアナログオーディオ信号に対してΔΣ変調を施し、得られた64fs/1bitのDSDデータをバッファ72に出力する。なお、DSDデバイス2はダイレクトモニタリング機能を有しており、DSDデバイス2(ΔΣモジュレータ71)に入力されるアナログオーディオ信号は出力側にも供給され、遅延なしにモニタリングされる。
【0060】
バッファ72は、ΔΣモジュレータ71から供給されてきた64fs/1bitのDSDデータをバッファリングし、図6Aに示すようなブロックからなるDSDデータをまとめてパーソナルコンピュータ1のI/O51に出力する。
【0061】
バッファ73は、パーソナルコンピュータ1のI/O51から供給されてきたDSDデータをバッファリングし、1sampleの64fs/1bitのDSDデータをLPF74に出力する。
【0062】
LPF74は、バッファ73から供給されてきた64fs/1bitのDSDデータの高域に蓄積された量子化ノイズを除去し、アナログ化することによって得られたアナログオーディオ信号をスピーカ等の外部機器に出力する。
【0063】
次に、以上のような構成を有するパーソナルコンピュータ1の動作について説明する。
【0064】
始めに、図7のフローチャートを参照して、DSDデータを録音するパーソナルコンピュータ1の処理について説明する。
【0065】
この処理は、例えば、パーソナルコンピュータ1にDSDデバイス2が接続された状態でオーディオデータ処理アプリケーション31が実行され、DSDデバイス2にアナログオーディオ信号が入力されたときに行われる。DSDデバイス2にアナログオーディオ信号が入力されたとき、DSDデバイス2においては、ΔΣモジュレータ71によりΔΣ変調が施されることによってDSDデータが生成され、生成されたDSDデータがパーソナルコンピュータ1に出力される。
【0066】
ステップS1において、録音制御部52は、DSDデバイス2から、I/O51を介して供給されてきたDSDデータを受信し、それをHDD19に記憶させる。I/O51からのDSDデータはLPF57にも供給されている。
【0067】
ステップS2において、LPF57は、I/O51から供給されてきたDSDデータを粗変換し、粗変換により得られた、例えば、1fs/5bitなどのPCMデータをメータ表示制御部58に出力する。
【0068】
ステップS3において、メータ表示制御部58は、LPF57から供給されてきたPCMデータに基づいて音量をメータ表示する。
【0069】
ステップS4において、録音終了か否かが判定され、録音終了であると判定されるまで、ステップS1に戻り、それ以降の処理が繰り返される。録音終了であると判定された場合、処理は終了される。
【0070】
以上の処理により、ユーザは、DSDデータの録音時にも、PCMデータの録音時と同様、音量を見ながら、それを行うことができる。
【0071】
次に、図8のフローチャートを参照して、HDD19に記憶されているDSDデータを再生するパーソナルコンピュータ1の処理について説明する。
【0072】
ステップS11において、再生が開始される。具体的には、HDD19に記憶されているDSDデータの64fs/1bitがマルチビットデータ変換部53によりマルチビットデータに変換され、変換により得られたマルチビットデータに対して、足算掛算部54によりクロスフェード処理やボリューム調整処理が施される。また、足算掛算部54により処理が施されることによって得られたデータの高域成分がLPF55により除去され、LPF55を通過したデータに対してΔΣモジュレータ56によりΔΣ変調が施される。ΔΣ変調が施されることによって生成されたDSDデータはI/O51によりDSDデバイス2に送信され、DSDデバイス2により出力される。
【0073】
なお、このとき、ΔΣモジュレータ56により得られたDSDデータはLPF57にも供給されている。
【0074】
ステップS12以降の処理は、図7のステップS2以降の処理と基本的に同様である。すなわち、ステップS12において、LPF57は、ΔΣモジュレータ56から供給されてきたDSDデータをPCMデータに粗変換し、得られたPCMデータをメータ表示制御部58に出力する。
【0075】
ステップS13において、メータ表示制御部58は、LPF57から供給されてきたPCMデータに基づいて音量をメータ表示する。
【0076】
ステップS14において、再生終了か否かが判定され、再生終了であると判定された場合、処理は終了される。
【0077】
以上の処理により、ユーザは、DSDデータの再生時にも、PCMデータの再生時と同様、音量を見ながら、それを行うことができる。
【0078】
次に、DSDデータを変換して得られるPCMデータが有する波形情報に基づいて行われる他の処理について説明する。ここでは、DSDデータの自動録音が行われる場合について主に説明する。
【0079】
図9は、パーソナルコンピュータ1の他の機能構成例を示すブロック図である。図9の構成は、LPF57の出力が、メータ表示制御部58だけでなく録音制御部52にも供給されている点を除いて図5の構成と同じである。重複する説明については適宜省略する。
【0080】
図9のLPF57は、録音時にI/O51から供給されてきたDSDデータをPCMデータに変換し、変換により得られたPCMデータを録音制御部52とメータ表示制御部58に出力する。メータ表示制御部58においては、上述したように、LPF57から供給されてきたPCMデータに基づいて音量のメータ表示が行われる。
【0081】
録音制御部52は、LPF57から供給されてきたPCMデータに基づいて、DSDデバイス2により取り込まれているDSDデータ(DSDデバイス2により取り込まれ、録音制御部52に供給されているDSDデータ)の音量を監視し、その音量が所定の閾値以上であると判定したとき、録音を開始させる。すなわち、音量がほとんど検出されない、曲が始まる前の無音区間のDSDデータなどは録音されずに、曲が始まったときに自動的に録音が開始される。
【0082】
図10は、図9の録音制御部52の構成例を示すブロック図である。
【0083】
音量判定部81は、LPF57から供給されてきたPCMデータに基づいて、制御部82に供給されているDSDデータの音量が閾値以上であるか否かを判定し、閾値以上であると判定した場合、そのことを制御部82に通知する。
【0084】
制御部82は、I/O51から供給されてきたDSDデータが、閾値以上の音量のDSDデータであることが音量判定部81から通知されてきたとき、そのDSDデータの録音を開始する。
【0085】
ここで、図11のフローチャートを参照して、自動録音を行うパーソナルコンピュータ1の処理について説明する。
【0086】
この処理も、例えば、パーソナルコンピュータ1にDSDデバイス2が接続された状態でオーディオデータ処理アプリケーション31が実行され、DSDデバイス2にアナログオーディオ信号が入力されたときに行われる。DSDデバイス2にアナログオーディオ信号が入力されたとき、DSDデバイス2においては、ΔΣモジュレータ71によりΔΣ変調が施されることによってDSDデータが生成され、生成されたDSDデータがパーソナルコンピュータ1に出力される。
【0087】
ステップS21において、LPF57は、DSDデバイス2から、I/O51を介して供給されてきたDSDデータを粗変換し、粗変換により得られたPCMデータを録音制御部52とメータ表示制御部58に出力する。LPF57による変換は、I/O51からDSDデータが供給されてくる毎に繰り返され、LPF57により得られたPCMデータが録音制御部52とメータ表示制御部58に繰り返し供給される。
【0088】
ステップS22において、録音制御部52の音量判定部81は、制御部82に供給されているDSDデータが閾値以上の音量であるか否かを判定し、閾値以上の音量ではないと判定した場合、ステップS21に戻り、それ以降の処理を行う。
【0089】
一方、ステップS22において、録音制御部52の音量判定部81は、制御部82に供給されているDSDデータが閾値以上の音量であると判定した場合、そのことを制御部82に通知し、ステップS23に進み、録音を開始させる。
【0090】
ステップS24において、メータ表示制御部58は、LPF57から供給されてきたPCMデータに基づいて音量をメータ表示する。
【0091】
ステップS25において、音量判定部81は、制御部82に供給されているDSDデータが閾値以上の音量であるか否かを判定し、閾値以上の音量であると判定した場合、ステップS23に戻り、制御部82に録音を継続させる。ステップS25において、制御部82に供給されているDSDデータが閾値以上の音量ではないと判定した場合、音量判定部81は、制御部82に録音を終了させ、処理を終了させる。
【0092】
これにより、ユーザ操作によらずに、DSDデータの録音開始、録音終了が行われる。
【0093】
なお、以上においては、録音が開始された後に、閾値以下の音量が検出された場合、そこで録音が終了されるものとしたが、録音は継続され、その、閾値以下の音量が検出された位置が曲の切れ目として認識されるようにしてもよい。そのようにして認識された曲の切れ目を表す情報はHDD19に供給され、DSDデータとともに記憶される。
【0094】
以上においては、DSDデータから生成されるメータ表示用などのオーディオデータがPCMデータである場合について説明したが、例えば、ATRAC(Adaptive Transform Acoustic Coding)3,MP3(MPEG Audio Layer-3),WMA(Windows(登録商標) Media Audio)などの、波形情報を有しているオーディオデータであれば、所定のフォーマットで圧縮されたデータがメータ表示用などのデータとして用いられるようにしてもよい。
【0095】
上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるが、ソフトウェアにより実行させることもできる。
【0096】
一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば、汎用のパーソナルコンピュータなどに、ネットワークや記録媒体からインストールされる。
【0097】
この記録媒体は、図4に示されるように、装置本体とは別に、ユーザにプログラムを提供するために配布される、プログラムが記録されている磁気ディスク(フレキシブルディスクを含む)、光ディスク(CD-ROM(Compact Disk-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disk)を含む)、光磁気ディスク(MD(登録商標)(Mini-Disk)を含む)、もしくは半導体メモリなどよりなるリムーバブルメディア23により構成されるだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供される、プログラムが記録されているROM12や、HDD19などで構成される。
【0098】
なお、本明細書において、各ステップは、記載された順序に従って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
【0099】
また、本明細書において、システムとは、複数の装置により構成される装置全体を表すものである。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】PCMデータとDSDデータのサンプリングの例を示す図である。
【図2】本発明を適用した録音・再生システムの構成例を示す図である。
【図3】音量のメータ表示の例を示す図である。
【図4】図2のパーソナルコンピュータの構成例を示すブロック図である。
【図5】パーソナルコンピュータの機能構成例を示すブロック図である。
【図6】DSDデータとPCMデータの送受信の単位の例を示す図である。
【図7】パーソナルコンピュータの録音処理について説明するフローチャートである。
【図8】パーソナルコンピュータの再生処理について説明するフローチャートである。
【図9】パーソナルコンピュータの他の機能構成例を示すブロック図である。
【図10】図9の録音制御部の構成例を示すブロック図である。
【図11】パーソナルコンピュータの他の録音処理について説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0101】
1 パーソナルコンピュータ, 2 DSDデバイス, 3 USBケーブル, 52 録音制御部, 57 LPF, 58 メータ表示制御部, 81 音量判定部, 82 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
DSD(Direct Stream Digital)データを録音または再生するとき、録音または再生対象の前記DSDデータを、元のオーディオ信号の波形情報を有する他の符号化方式のオーディオデータに粗変換する変換手段と、
前記変換手段による粗変換によって得られた前記オーディオデータに基づいて、前記波形情報に基づく処理を行う処理手段と
を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記処理手段は、前記DSDデータを録音または再生するときの前記波形情報に基づく処理として、前記DSDデータの音量の表示を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記処理手段は、前記DSDデータを録音するときの前記波形情報に基づく処理として、所定の閾値以上の音量が検出されたとき、前記DSDデータの録音を開始する
ことを特徴とする請求項1に記載に情報処理装置。
【請求項4】
前記処理手段は、前記DSDデータを録音するときの前記波形情報に基づく処理として、所定の閾値以下の音量が検出されたとき、その検出された前記DSDデータの位置を曲の切れ目と判断する
ことを特徴とする請求項1に記載に情報処理装置。
【請求項5】
DSD(Direct Stream Digital)データを録音または再生するとき、録音または再生対象の前記DSDデータを、元のオーディオ信号の波形情報を有する他の符号化方式のオーディオデータに粗変換する変換ステップと、
前記変換ステップの処理による粗変換によって得られた前記オーディオデータに基づいて、前記波形情報に基づく処理を行う処理ステップと
を含むことを特徴とする情報処理方法。
【請求項6】
DSD(Direct Stream Digital)データを録音または再生するとき、録音または再生対象の前記DSDデータを、元のオーディオ信号の波形情報を有する他の符号化方式のオーディオデータに粗変換する変換ステップと、
前記変換ステップの処理による粗変換によって得られた前記オーディオデータに基づいて、前記波形情報に基づく処理を行う処理ステップと
を含む処理をコンピュータに実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−79740(P2006−79740A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−263253(P2004−263253)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】